(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】放射線撮影システム、放射線撮像装置、および放射線撮影システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240909BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
(21)【出願番号】P 2022103659
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小鳥 準也
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-191391(JP,A)
【文献】特開2017-094010(JP,A)
【文献】特開2014-090868(JP,A)
【文献】特開2017-196308(JP,A)
【文献】特開2018-183397(JP,A)
【文献】特開2014-057831(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021588(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
G01T 7/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線発生装置を制御する制御装置と、
前記放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と、前記センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を前記制御装置に送信する通信部と、を有する放射線撮像装置と、を有し、
前記通信部は、一つの前記照射停止信号を少なくとも含む制御信号を、複数を1セットとして前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させること
を特徴とする放射線撮影システム。
【請求項2】
前記制御信号は、前記照射停止信号に付加する付加信号を含むことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
1セットのうちの複数の前記制御信号において、それぞれの前記付加信号は同一の信号であることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
1セットのうちの複数の前記制御信号において、それぞれの前記付加信号は一部または全てが相互に異なる信号であることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記付加信号は、前記制御信号が前記照射停止信号を含むことを示す識別情報を含むことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記付加信号は、前記制御信号の送信順序を示す情報を含むことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記線量を演算する演算部を有し、
前記付加信号は、前記演算部で演算された前記線量に関する情報を含むことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記付加信号は、時刻に関する情報を含むことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記付加信号は、複数の放射線撮影を区別するための撮影IDを含むことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
前記付加信号は、ダミーデータを含むことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項11】
前記通信部は、1セットとして送信する前記制御信号の信号数が1回あたり1000個以下であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項12】
前記通信部は、1セットの前記制御信号の送信から前記制御装置より第一の期間に応答がない場合に、1セットの前記制御信号の再送を第二の期間の間隔で繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項13】
前記通信部は、前記放射線発生装置による放射線の照射開始から前記放射線撮像装置において照射停止の判定を完了するまでの間は、前記制御装置からの要求がない限り前記制御装置に対して信号の送信を行わないことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項14】
前記通信部は、前記制御装置より前記照射停止信号に対する応答を受信した時点で、前記制御信号のうち前記時点より後に送信する予定の制御信号を破棄することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項15】
前記通信部は、一度の送信で複数を1セットとして前記制御信号を送信する、または、一度の送信で1個の前記制御信号のみ送信する、のいずれか一方を選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項16】
前記制御装置は、前記通信部から1セットとして複数送信された前記制御信号のうち、最初に受信した前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項17】
前記制御装置に接続され、前記放射線撮像装置からの信号を受信するアクセスポイントを有することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項18】
放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を、前記放射線発生装置を制御する制御装置に送信する通信部と、を有し、
前記通信部は、一つの前記照射停止信号を少なくとも含む制御信号を、複数を1セットとして前記制御装置に送信すること
を特徴とする放射線撮像装置。
【請求項19】
放射線発生装置を制御する制御装置と、前記放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と該センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を前記制御装置に送信する通信部とを有する放射線撮像装置と、を有する放射線撮影システムの制御方法であって、
前記通信部から、一つの前記照射停止信号を少なくとも含む制御信号を、複数を1セットとして前記制御装置に送信する送信工程と、
前記制御装置が前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させる停止工程と、を行う
ことを特徴とする制御方法。
【請求項20】
コンピュータに請求項
19に記載される制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム、放射線撮像装置、および放射線撮影システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)機能を有する放射線撮像装置が知られている。このような放射線撮像装置は、照射中の放射線量を測定し、その結果に応じて放射線の照射を終了させることができる。放射線撮像装置は、例えば、放射線検出用に設定された画素のみを放射線照射中に高速に動作させることによって放射線量を監視する。
【0003】
このような放射線撮像装置として、例えば、特許文献1には、放射線撮像装置の撮像領域内に、撮像領域に到達する放射線の線量を検出する線量検出部を備える放射線撮像装置が開示されている。
【0004】
特許文献1では、線量検出部で検出する線量と予め設定された線量目標値とに基づいて、放射線発生装置において放射線の照射を停止すべき停止タイミングを予測し、放射線発生装置に対して放射線の照射停止タイミングを知らせるための照射停止タイミング通知を、通信遅延時間を考慮し照射停止タイミングが到来する所定時間前に発信する。このとき、通信遅延時間は通信経路に応じた平均的な値を用い、また照射停止タイミング通知は通信障害発生を考慮し所定間隔で繰り返すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の記載の技術では、放射線発生装置からの放射線の照射停止制御の精度に課題がある。即ち、特許文献1の記載の技術では、被写体を透過する放射線の透過線量率が高くなる場合、照射時間が短くなり照射停止タイミング通知が間に合わず放射線の累積線量が線量目標値よりも大きくなってしまうという問題が生じうる。特に通信遅延時間はその時々でばらつきを持つ値であり、放射線の累積線量が閾値に達するまでの時間が数ms程度の場合、わずかな通信遅延時間の変動が最終的な放射線の累積線量に大きな誤差を与えうる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、放射線発生装置に対する放射線の照射停止制御を高精度で行える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、放射線発生装置を制御する制御装置と、前記放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と、前記センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を前記制御装置に送信する通信部と、を有する放射線撮像装置と、を有し、前記通信部は、一つの前記照射停止信号を少なくとも含む制御信号を、複数を1セットとして前記制御装置に送信し、前記制御装置は、前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させることを特徴とする放射線撮影システムにより解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、放射線発生装置に対する放射線の照射停止制御を高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る放射線撮像装置の構成を示す図。
【
図5】実施形態に係る放射線撮影システムの構成例を示す図。
【
図6】実施形態に係る放射線撮影システムの動作例を示す図。
【
図7】実施形態に係る照射停止信号を送信するフロー例を示す図。
【
図8】実施形態に係る照射停止信号の再送を含むフロー例を示す図。
【
図9】実施形態に係る不要な照射停止信号の削減を含むフロー例を示す図。
【
図10】実施形態に係る放射線撮影システムの照射停止制御のシーケンス例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について以下に説明する。様々な実施形態を通じて同様の要素には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、各実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る放射線撮像装置100の構成例を示す。放射線撮像装置100は、複数の行及び複数の列を構成するように撮像領域IRに配列された複数の画素と、複数の駆動線110と、複数の信号線120とを有する。複数の駆動線110は、画素の複数の行に対応して配置されており、各駆動線110が何れか1つの画素行に対応する。複数の信号線120は、画素の複数の列に対応して配置されており、各信号線120が何れか1つの画素列に対応する。
【0013】
複数の画素は、放射線画像を取得するために用いられる複数の撮像画素101と、放射線の照射量をモニターするために用いられる1つ以上の検出画素104と、放射線の照射量を補正するために用いられる1つ以上の補正画素107とを含む。放射線に対する補正画素107の感度は、放射線に対する検出画素104の感度よりも低い。すなわち、複数の画素で構成された撮像領域IRは、後述する放射線発生装置506からの放射線507を検出するセンサ部である。
【0014】
撮像画素101は、放射線を電気信号に変換する変換素子102と、対応する信号線120と変換素子102とを互いに接続するスイッチ素子103とを含む。検出画素104は、放射線を電気信号に変換する変換素子105と、対応する信号線120と変換素子105とを互いに接続するスイッチ素子106とを含む。
【0015】
検出画素104は、複数の撮像画素101によって構成される行及び列に含まれるように配置される。補正画素107は、放射線を電気信号に変換する変換素子108と、信号線120と変換素子108とを互いに接続するスイッチ素子109とを含む。補正画素107は、複数の撮像画素101によって構成される行及び列に含まれるように配置される。
図1及び後続の図面では、変換素子102、変換素子105及び変換素子108に対して相異なるハッチングを付すことによって撮像画素101、検出画素104及び補正画素107を区別する。
【0016】
変換素子102、変換素子105及び変換素子108は、放射線を光に変換するシンチレータと、光を電気信号に変換する光電変換素子と、によって構成されてもよい。シンチレータは、一般的に、撮像領域IRを覆うようにシート状に形成され、複数の画素によって共有される。これに代えて、変換素子102、変換素子105及び変換素子108は、放射線を直接に電気信号に変換する変換素子で構成されてもよい。
【0017】
スイッチ素子103、スイッチ素子106及びスイッチ素子109は、例えば、非晶質シリコンまたは多結晶シリコンなどの半導体で活性領域が構成された薄膜トランジスタ(TFT)を含んでもよい。
【0018】
変換素子102の第1電極は、スイッチ素子103の第1主電極に接続され、変換素子102の第2電極は、バイアス線130に接続される。1つのバイアス線130は、列方向に延びていて、列方向に配列された複数の変換素子102の第2電極に共通に接続される。バイアス線130は、電源回路140からバイアス電圧Vsを受ける。1つの列に含まれる1つ以上の撮像画素101のスイッチ素子103の第2主電極は、1つの信号線120に接続される。1つの行に含まれる1つ以上の撮像画素101のスイッチ素子103の制御電極は、1つの駆動線110に接続される。
【0019】
検出画素104及び補正画素107も撮像画素101と同様の画素構成を有しており、対応する駆動線110及び対応する信号線120に接続される。検出画素104と補正画素107とは、信号線120に排他的に接続されている。すなわち、検出画素104が接続されている信号線120に補正画素107は接続されていない。また、補正画素107が接続されている信号線120に検出画素104は接続されていない。撮像画素101は、検出画素104又は補正画素107と同じ信号線120に接続されてもよい。
【0020】
駆動回路150は、制御部180からの信号に従って、複数の駆動線110を通じて、駆動対象の画素に対して駆動信号を供給するように構成される。本実施形態では、駆動信号は、駆動対象の画素に含まれるスイッチ素子をオンにするための信号である。各画素のスイッチ素子は、ハイレベルの信号でオンとなり、ローレベルの信号でオフとなる。そのため、このハイレベルの信号を駆動信号と呼ぶ。
【0021】
画素に駆動信号が供給されることによって、この画素の変換素子に蓄積された信号が読出し回路160によって読み出し可能な状態となる。駆動線110が検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続されている場合に、その駆動線110を検出駆動線111と呼ぶ。
【0022】
読出し回路160は、複数の信号線120を通じて、複数の画素から信号を読み出すように構成される。読出し回路160は、複数の増幅部161と、マルチプレクサ162と、アナログデジタル変換器(以下、AD変換器)163とを含む。
【0023】
複数の信号線120のそれぞれは、読出し回路160の複数の増幅部161のうち対応する増幅部161に接続される。1つの信号線120は、1つの増幅部161に対応する。マルチプレクサ162は、複数の増幅部161を所定の順番で選択し、選択した増幅部161からの信号をAD変換器163に供給する。AD変換器163は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0024】
撮像画素101から読み出された信号は、信号処理部170に供給され、信号処理部170によって演算、記憶などの処理がなされる。具体的に、信号処理部170は演算部171及び記憶部172を含んでおり、演算部171が撮像画素101から読み出された信号に基づいて放射線画像を生成し、制御部180へ供給する。
【0025】
検出画素104及び補正画素107から読み出された信号は、信号処理部170に供給され、その演算部171によって演算、記憶などの処理がなされる。具体的に、信号処理部170は、検出画素104及び補正画素107から読み出された信号に基づいて、放射線撮像装置100に対する放射線の照射を示す情報を出力する。例えば、信号処理部170は、放射線撮像装置100に対する放射線の照射を検出したり、放射線の照射量及び/または積算照射量を決定したりする。
【0026】
制御部180は、信号処理部170からの情報に基づいて、駆動回路150及び読出し回路160を制御する。制御部180は、信号処理部170からの情報に基づいて、例えば、露出(撮像画素101による照射された放射線に対応する電荷の蓄積)の開始及び終了を制御する。制御部180は、マイクロプロセッサのような汎用処理回路で構成されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のような専用処理回路で構成されてもよい。制御部180が汎用処理回路で構成される場合に、制御部180はメモリをさらに含んでもよい。
【0027】
放射線の照射量を決定するために、制御部180は、駆動回路150を制御することによって、検出駆動線111のみを走査し、検出画素104及び補正画素107からの信号だけを読み出し可能な状態にする。次に、制御部180は、読出し回路160を制御することによって、検出画素104及び補正画素107に対応する列の信号を読み出し、放射線の照射量を示す情報として出力する。そのような動作により、放射線撮像装置100は、検出画素104における照射情報を放射線照射中に得ることができる。
【0028】
通信部190は制御部180により制御され、放射線撮像装置100と外部機器との通信を行う機能を有する。通信は有線通信、無線通信など望む方式や規格の通信を実現する通信部190を使用すればよく、特定の規格に限定されない。また複数の通信規格に対するために通信部190を複数搭載してもよい。
【0029】
図2は、増幅部161の詳細な回路構成例を示す。増幅部161は、差動増幅回路AMP及びサンプルホールド回路SHを含む。差動増幅回路AMPは、信号線120に現れた信号を増幅して出力する。制御部180は、差動増幅回路AMPのスイッチ素子に信号φRを供給することによって、信号線120の電位をリセットできる。
【0030】
差動増幅回路AMPからの出力は、サンプルホールド回路SHによって保持可能である。制御部180は、サンプルホールド回路SHのスイッチ素子に信号φSHを供給することによって、サンプルホールド回路SHに信号を保持させる。サンプルホールド回路SHに保持された信号は、マルチプレクサ162によって読み出される。
【0031】
図3及び
図4を参照して、放射線撮像装置100の画素の構造例について説明する。
図3は、放射線撮像装置100における撮像画素101、検出画素104及び補正画素107の構成を示す平面図である。平面図は、放射線撮像装置100の撮像領域IRに平行な面への正投影と等価である。ハッチングで示すように、補正画素107の変換素子108の上に金属層が配置されており、この金属層によって変換素子108が遮光されている。
【0032】
図4(a)は、
図3のA-A’線に沿った撮像画素101の断面図である。検出画素104の断面図は撮像画素101の断面図と同様である。ガラス基板等の絶縁性の支持基板400の上にスイッチ素子103が配置されている。スイッチ素子103は、TFT(薄膜トランジスタ)であってもよい。
【0033】
スイッチ素子103の上に、層間絶縁層401が配置されている。層間絶縁層401の上に変換素子102が配置されている。この変換素子102は、光を電気信号に変換可能な光電変換素子である。変換素子102は、例えば電極402、PINフォトダイオード403、電極404で構成される。変換素子102は、PIN型のフォトダイオードであるかわりに、MIS型のセンサによって構成されてもよい。
【0034】
変換素子102の上に、保護膜405、層間絶縁層406、バイアス線130、保護膜407が順に配置されている。保護膜407の上に、不図示の平坦化膜及びシンチレータが配置されている。電極404は、コンタクトホールを介してバイアス線130に接続されている。電極404の材料として、光透過性を有するITOが用いられ、不図示のシンチレータで放射線から変換された光を透過可能である。
【0035】
図4(b)は、
図3のB-B’線に沿った補正画素107の断面図である。補正画素107は、変換素子108が遮光部材408によって覆われている点で撮像画素101及び検出画素104とは異なり、他の点は同じであってもよい。遮光部材408は、例えばバイアス線130と同層の金属層によって形成される。補正画素107の変換素子108は遮光部材408によって覆われているので、放射線に対する補正画素107の感度は、撮像画素101及び検出画素104の感度と比べて著しく低い。補正画素107の変換素子108に蓄積される電荷は放射線に起因しないということもできる。
【0036】
図5は、放射線撮像装置100を含む放射線撮影システム500の構成例を示す。放射線撮影システム500は、放射線撮像装置100、情報処理装置502、アクセスポイント503、通信デバイス504、同期制御装置505、放射線発生装置506を有している。
【0037】
放射線撮像装置100は、被写体Hを透過した放射線507に基づき放射線画像を撮影する。放射線撮像装置100に入射した放射線は電荷へと変換され、さらに画像データとして処理され情報処理装置502へと送られる。
【0038】
情報処理装置502は、汎用のコンピュータ等の公知の技術で実現される制御装置であり、表示部、入力部、および制御部を有する。情報処理装置502は、放射線撮像装置100から受信した画像データに対する補正や保存・表示のための画像処理を行う。このとき、画像処理の一部または全部の機能を放射線撮像装置100に行わせてもよい。
【0039】
また、情報処理装置502は表示部を通して、操作者に対する放射線画像の表示や、撮影の指示などを行う。また、情報処理装置502は入力部により、撮影条件の指示等を操作者が入力する機能を有する。また、情報処理装置502の制御部は、取得した信号強度と閾値との比較を行ったり、接続要求に対する返答を行ったり、後述する無線情報などの無線通信部で通信を行うための情報を送信したりする機能を有する。
【0040】
アクセスポイント503は、放射線撮像装置100と情報処理装置502との間で無線にて情報をやり取りするための電波の中継を行う機器である。この時、放射線撮像装置100は制御部180が通信部190を制御し無線通信を行う。なお、
図5ではアクセスポイント503が同期制御装置505を介して情報処理装置502に接続されているが、情報処理装置502に直接接続されていてもよい。
【0041】
通信デバイス504は、情報処理装置502に接続されており、放射線撮像装置100と情報処理装置502との間で無線での近距離通信を行うための電波の送受信を行う機器である。例えば、通信デバイス504は、USB(Universal Serial Bus)インターフェースにより情報処理装置502と接続されるドングルである。また、通信デバイス504はBluetooth(登録商標) Basic Rate/Enhanced Data Rate(BR/EDR)規格もしくはBluetooth Low Energy(BLE)規格の少なくとも一つに対応した機器である。
【0042】
また、通信デバイス504は、ID情報を埋め込んだタグから、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりするRFID(radio frequency IDentifier)デバイスであってもよい。RFIDの交信方式は、電磁誘導方式、電波方式を問わない。また、通信デバイス504は、アクセスポイントの機能を有していてもよい。
【0043】
なお、上記の説明および
図5において通信デバイス504は情報処理装置502に接続されている例を示したが、この限りではない。通信デバイス504は、放射線発生装置506などの放射線撮影システム500を構成する他の装置に接続されていてもよい。また、通信デバイス504は、放射線撮影システム500に予め組み込まれている機器を使用することにより代用してもよい。
【0044】
情報処理装置502には操作者への報知手段として状態通知デバイス509が接続されている。状態通知デバイス509は、放射線撮像装置100からアクセスポイント503を経由して受信、もしくは通信デバイス504から受信した放射線撮像装置100の情報に基づき放射線撮像装置100の現在の状態や特定の処理が完了したこと操作者へ通知する。
【0045】
状態通知デバイス509は、例えばLED等の発光体が用いられ、複数の点灯パターンを放射線撮像装置100の現在の状態を事前に紐づけておくことで操作者への通知を行う。また、状態通知デバイス509はスピーカ等の音源を用いてもよく、その場合はブザー音のパターンを放射線撮像装置100の現在の状態を事前に紐づけておき、操作者への通知を行う。またこれらの形態を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、状態通知デバイス509は情報処理装置502に接続されている例を示したが、情報処理装置502に備えられたディスプレイやスピーカといった機器を使用することにより代用してもよい。
【0047】
同期制御装置505は、通信を媒介する回路を保有し、放射線撮像装置100と放射線発生装置506の状態を監視する。例えば、同期制御装置505は、放射線発生装置506からの放射線507の照射を制御したり、放射線撮像装置100による被写体Hの撮影を制御したりする。また、同期制御装置505は、複数のネットワーク機器を接続するHUBなどを内蔵していてもよい。
【0048】
放射線発生装置506は、X線等の放射線507を発生させるために、例えば電子を高電圧で加速して陽極に衝突させる放射線管を有している。なお、放射線507は、典型的にはX線が用いられるが、α線、β線、γ線、中性子線が用いられてもよい。
【0049】
院内LAN508は、病院内に構築されたローカル・エリア・ネットワークであり、放射線撮影システム500で撮影された放射線画像を、院内の各所と送受信する機能を有する。
【0050】
図5に示す放射線撮影システム500において、放射線発生装置506から照射された放射線507は、患者である被写体Hに照射される。放射線撮像装置100は、被写体Hを透過した放射線107に基づく放射線画像を生成する。
【0051】
放射線撮影システム500は、同期撮影と非同期撮影により撮影を行い得る。同期撮影とは、放射線撮像装置100と放射線発生装置506との間で同期制御装置505を介して電気的な同期信号をやり取りすることで、放射線照射と撮影のタイミングを合わせる撮影方法である。
【0052】
一方、非同期撮影とは、放射線撮像装置100と放射線発生装置506との間で、電気的な同期信号をやりとりすることなく、放射線撮像装置100が、放射線の入射を検知することにより撮影を開始する撮影方法である。非同期撮影において、放射線撮像装置100は、撮影毎に放射線画像を転送してもよいし、撮影した画像を撮影毎に転送せずに放射線撮像装置100内部に記憶しておいてもよい。
【0053】
また、放射線撮影システム500は、透視撮影、連続撮影、静止画撮影、DSA撮影、ロードマップ撮影、プログラム撮影、断層撮影、トモシンセシス撮影など、放射線撮影にて一般的に撮影される撮影条件により撮影を行い得る。
【0054】
放射線撮影システム500には、撮影フレームレート、管電圧、管電流、センサ読出しエリア、センサ駆動ビニング設定、コリメータ絞り設定、放射線ウインドウ幅、放射線撮像装置100へ放射線画像を撮り溜めるか否かなどの各種の機能の設定が行われる。加えて、放射線撮影システム500には自動電圧制御(ADC:Auto Dose Contorol)、自動露出制御定(AEC:Auto Exposure Contorol)などの機能の設定が行われる。
【0055】
情報処理装置502には、情報処理装置に設けられた入力装置を通して、線量、照射上限時間(ms)、管電流(mA)、管電圧(kV)、放射線をモニターすべき領域である関心領域(ROI)などが入力される。放射線発生装置506に付属された曝射スイッチが操作されると、情報処理装置502は、放射線撮像装置100に開始要求信号を送信する。開始要求信号は、放射線の照射開始を要求する信号である。
【0056】
放射線撮像装置100は、開始要求信号を受信したことに応じて、放射線の照射を受け入れる準備を開始する。放射線撮像装置100は、準備が整ったら、アクセスポイント503もしくは通信デバイス504を介して放射線発生装置506に開始可能信号を送信する。開始可能信号は、放射線の照射開始が可能であることを通知する信号である。放射線発生装置506は、開始可能信号を受信したことに応じて、放射線507の照射を開始する。
【0057】
放射線撮像装置100は、照射された放射線の線量の積算値の閾値に到達したら、アクセスポイント503もしくは通信デバイス504を介して放射線発生装置506に照射停止信号を送信する。照射停止信号は、放射線の照射終了を要求する信号である。放射線発生装置506は、照射停止信号を受信したことに応じて、放射線507の照射を終了する。
【0058】
線量の閾値は、線量の入力値、放射線照射強度、各ユニット間の通信ディレイ、処理ディレイ等に基づいて、例えば制御部180によって決定される。放射線の照射時間が、入力された照射上限時間に達した場合は、放射線発生装置506は、照射停止信号を受信していなくても、放射線の照射を停止してもよい。
【0059】
放射線の照射停止後、放射線撮像装置100は、撮像画素101のみが接続された駆動線110(検出駆動線111以外の駆動線110)を順次走査し、各撮像画素101の画像信号を読出し回路160により読み出すことによって、放射線画像を取得する。
【0060】
検出画素104に蓄積された電荷は放射線の照射中に読み出されており、補正画素107は遮光されているため、これらの画素からの信号は放射線画像の形成に使用できない。そこで、放射線撮像装置100の信号処理部170は、検出画素104及び補正画素107の周囲の撮像画素101の画素値を用いて補間処理を行うことによって、これらの画素の位置における画素値を補間する。
【0061】
図6を参照して、放射線撮像装置100の動作例について説明する。この動作は、駆動回路150及び読出し回路160を制御する制御部180と、信号処理部170とが連携することによって実行される。この動作により、放射線撮像装置100に照射される放射線の量が決定される。
図6において、「放射線」は、放射線撮像装置100に放射線が照射されているか否かを示す。ローの場合に放射線が照射されておらず、ハイの場合に放射線が照射されている。
【0062】
「Vg1」~「Vgn」は、駆動回路150から複数の駆動線110に供給される駆動信号を示す。「Vgk」はk行目(k=1,...,駆動線の合計本数)の駆動線110に対応する。上述のように、複数の駆動線110の一部は、検出駆動線111とも呼ばれる。j番目の検出駆動線111を「Vdj」(j=1,...,検出駆動線の合計本数)と表す。
【0063】
φSHは、増幅部161のサンプルホールド回路SHに供給される信号のレベルを示す。φRは、増幅部161の差動増幅回路AMPに供給される信号のレベルを示す。「検出画素信号」は、検出画素104から読み出された信号の値を示す。「補正画素信号」は、補正画素107から読み出された信号の値を示す。「積算照射量」は、放射線撮像装置100に照射された放射線の積算値を示す。この積算値の決定方法については後述する。
【0064】
時刻t0で、制御部180は、複数の画素のリセット動作を開始する。リセット動作とは、各画素の変換素子に蓄積した電荷を除去する動作のことであり、具体的には駆動線110に駆動信号を供給することによって各画素のスイッチ素子を導通状態にすることである。制御部180は、駆動回路150を制御することによって、1行目の駆動線110に接続された各画素をリセットする。
【0065】
続いて、制御部180は、2行目の駆動線110に接続された各画素をリセットする。制御部180は、この動作を最後の行の駆動線110まで繰り返す。時刻t1において、制御部180は、最後の行の駆動線110のリセット動作を終了した後、再び1行目の駆動線110からリセット動作を繰り返す。
【0066】
時刻t2で、制御部180は、情報処理装置502から開始要求信号を受信する。開始要求信号の受信に応じて、制御部180は、最後の行までリセット動作を行い、リセット動作を終了する。制御部180は、最後の行までリセット動作を行う前にリセット動作を終了し、次の処理に移行してもよい。
【0067】
例えば、制御部180は、k行目の駆動線110のリセット動作中に開始要求信号の受信した場合に、k+1行目以降の駆動線110のリセット動作を行わずに次の処理に移行してもよい。この場合に、放射線画像を取得するための駆動の調整や放射線画像に対する画像処理を行うことによって、放射線画像に発生しうる段差を軽減してもよい。
【0068】
時刻t3で、制御部180は、放射線撮像装置100に照射中の放射線の量を決定するための決定動作を開始する。決定動作において、制御部180は、検出画素104及び補正画素107から読み出す読出し動作を繰り返し実行する。複数回の読出し動作のうち、前半の1回以上の読出し動作は補正値を決定するために行われ、後半の繰り返される読出し動作は、各時点の放射線の量を継続的に決定するために行われる。
【0069】
読出し動作は、検出駆動線111に対して実行され、それ以外の駆動線110に対しては実行されない。具体的に、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続された駆動線110(すなわち検出駆動線111)に駆動信号を供給する。
【0070】
しかし、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の何れにも接続されていない駆動線110に駆動信号を供給しない。また、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続された駆動線110に同時に駆動信号を供給する。それによって、同じ信号線120に接続されている複数の画素からの信号が合わさって読出し回路160に読み出される。検出画素104と補正画素107とは排他的に信号線120に接続されているので、読出し回路160は、感度の異なる画素の信号を分離して読み出せる。
【0071】
1回の読出し動作において、制御部180は、時刻t3~時刻t4の動作を行う。具体的に制御部180は、1つ以上の検出駆動線111に一時的に駆動信号を供給する。その後、制御部180は、信号φSHを一時的にハイレベルにすることによって、信号線120を通じて画素から読出し回路160に読み出された信号をサンプルホールド回路SHに保持する。
【0072】
その後、制御部180は、信号φRを一時的にハイレベルにすることによって、読出し回路160(具体的にはその増幅部161の差動増幅回路AMP)をリセットする。撮像領域IR内に関心領域が設定されている場合に、この関心領域に含まれない検出画素104から信号を読み出さなくてもよい。
【0073】
制御部180は、補正値を決定するために、読出し動作を1回以上の所定の回数行う。信号処理部170は、所定の回数の読出し動作によって検出画素104から読み出された信号に基づく補正値Odと、この所定の回数の読出し動作によって補正画素107から読み出された信号に基づく補正値Ocとを決定する。
【0074】
補正値Odの決定について詳細に説明する。所定の回数が1回であれば、検出画素104から読み出される信号は1つであるので、信号処理部170はその信号の値を補正値Odとする。所定の回数が複数回の場合に、信号処理部170は、読み出された複数個の信号の平均値を補正値Odとする。平均値に代えて他の統計値が用いられてもよい。補正画素107から読み出された信号に基づいて、補正値Ocも同様に決定される。信号処理部170は、このようにして決定した補正値Od、Ocを記憶部172に格納し、後続の処理に使用可能にする。
【0075】
1回以上読出し動作を終了すると、制御部180は、時刻t5で、放射線発生装置506へ開始可能信号を送信する。上述の補正値Od、Ocの決定は、開始可能信号の送信前に行われてもよいし、送信後に行われてもよい。制御部180は、開始可能信号を送信した後に、上述の読出し動作を繰り返し実行する。信号処理部170は、読出し動作ごとに放射線の照射量DOSEを測定し、その積算値が閾値を超えたか否かを判定する。時刻t5の後に時刻t6から放射線の照射が開始される。
【0076】
制御部180は、時刻t8で積算照射量が閾値に到達したら、同期制御装置505に照射停止信号を送信する。同期制御装置505は照射停止信号を受け放射線発生装置506の放射線の照射停止制御を行う。
【0077】
時刻t8での照射停止信号の送信に代えて、制御部180は、積算照射量が閾値に到達する時刻t8を推定して照射停止信号を送信してもよい。例えば、積算照射量が閾値に到達する時刻t8を推定した到達予測時刻に対して、通信部190から同期制御装置505に信号が到達するまでの通信遅延時間を加味した推定送信時刻t7を求め、この推定送信時刻t7に照射停止信号を送信してもよい。時刻t9で、放射線発生装置506は、同期制御装置505からの照射停止制御に応じて、放射線の照射を終了する。
【0078】
制御部180は、時刻t9で放射線の照射が終了したら、時刻t10まで時刻t0同様に複数の画素のリセット動作を行う。
【0079】
次に、
図7を参照して、放射線撮像装置100の制御部180が照射停止信号送信を判断し、照射停止信号を送信するフロー例について説明する。
【0080】
S101において、制御部180は積算照射量や通信遅延時間を元に照射停止判定を行う。
【0081】
S102において、制御部180は照射停止信号を含む制御信号を生成する。この時、照射停止信号には、付加信号を付加してもよい。例えば、付加信号は、受信側で容易にフィルタリング処理等を行うことが可能となるように、照射停止信号を含むことを示す識別情報であってもよい。
【0082】
また、付加信号は、同期制御装置505が信号を受信した際に通信環境の状況を推定できるように、送信する一連の信号に連番を付与した送信順序の情報であってもよい。この時、送信順序が前後する場合は通信経路中で遅延などによる順序の入れ替わりが発生したこと、連番に抜けがある場合は途中でパケットロスが発生したこと、などを推定することができる。
【0083】
また、付加信号は、同期制御装置505の内部で保有する時刻情報と付加信号の時刻情報とを比較し通信遅延の程度を推定することができるように、時刻に関する情報であってもよい。また、付加信号は、現時点での線量を把握するために、演算部171で演算された線量の情報であってもよい。
【0084】
また、付加信号は、各撮影を区別するために、撮影ごとに独立の撮影IDを示す情報であってもよい。この場合、同期制御装置505と撮影IDを事前に共有しておくことが好適である。このようにすることで、1回前の撮影時に送信され通信遅延により遅れて同期制御装置505が受信した照射停止信号がある場合、同期制御装置505側で今回の撮影において放射線発生装置506に照射停止制御を行うべきか否かを判断することできる。
【0085】
また、付加信号は、ダミーデータであってもよい。例えば規定サイズ以上のデータを持つ信号については優先して伝送する特徴を持つ通信デバイスに対しては、ダミーデータによりサイズを調整することが好適である。この場合、データサイズは使用している規格からパケットがフラグメント化されない値とすることが望ましい。
【0086】
例えば、イーサネットにおいてはIPフラグメンテーションが行われない最大のデータサイズは一般的に1500byteである。プロトコルとしてUPDを使用して送信する場合、IPヘッダとUPDヘッダとを合わせて28byteを使用するため、実質のデータサイズの最大は1472byteとなる。フラグメント化を避ける理由は、フラグメント化されることにより1つのパケットを復元するためのパケット数が増加し、パケットロスなどによる再送といった遅延の発生頻度が高まるためである。
【0087】
また、照射停止信号を含む制御信号は複数を1セットとして送信してもよい。送信する個数については、データサイズに送信データ数を乗算した結果を実効通信速度で除算した実転送時間を計算し、放射線撮影システム500において放射線撮像装置100と他の機器間での制御コマンドなどの通信が要求する応答時間を考慮して決定すればよい。
【0088】
例えば、実効通信速度が100Mbpsの通信環境を仮定した場合、データサイズ1500byteの信号を10個送信する実転送時間はおよそ1.2ms必要となり、この間通信帯域が占有され制御コマンドなどの他の通信が影響を受ける可能性がある。実用上、一度に送信する制御信号の個数は1000個以下とするのが望ましい。
【0089】
これらの付加信号の用途は本実施例に記載の用途に限定されず、また任意の付加信号を組み合わせて使用してもよい。例えば、一度の送信で照射停止信号を複数個送信する場合、それぞれに付加する付加信号は、同一の信号であってもよい。また、それぞれに付加する付加信号は、一部または全てが相互に異なる信号であってもよい。また、付加信号を付加しないことを選択してもよい。
【0090】
付加信号は受信側で所望の制御に使用することが可能であり、合わせて推定結果や制御結果を送信側である放射線撮像装置100に受信応答信号に付加して送信してもよい。
【0091】
S103において、生成した照射停止信号を含む制御信号をアクセスポイント503に対して事前に規定した信号数まで送信を行う。信号の送信は例えば無線通信規格のIEEE802.11規格に則り行われる。
【0092】
無線通信は半二重通信のため、例えば使用する周波数帯において他の無線機器(不図示)が同時に電波を送信した場合、電波の衝突が起こりアクセスポイント503は正常に照射停止信号を受信できない場合がある。その場合、アクセスポイント503から通信部190へ応答信号(ACK)が返されないこととなる。
【0093】
放射線撮像装置100から複数送信されたうちの最初の照射停止信号を受けて、同期制御装置505は放射線発生装置506の放射線507の照射停止制御を行う。
【0094】
S104において通信部190は応答信号(ACK)を確認することで規定した信号数が正しくアクセスポイント503へ送信されたことを判断することができる。応答信号(ACK)が返されない場合は、送信数が規定した信号数に達するまでS103の制御信号の送信を繰り返す。
【0095】
S105において予定するすべての信号数の送信が完了したことを判断し、予定するすべての信号数に到達していない場合は再度S102の制御信号の生成からシーケンスを繰り返す。この際、S102の制御信号生成では、時刻情報や積算線量といった経過時間に応じて変化する付加信号の更新を行うと好適である。
【0096】
以上より、放射線撮像装置100は照射停止信号に所望の付加信号を付加した制御信号を、任意のタイミングで更新しつつ予定する信号数を1セットとして送信することができる。これにより、放射線撮像装置100からの照射停止信号による放射線発生装置506に対する放射線507の照射停止制御における通信遅延を抑制することができるので、照射停止制御の精度を向上させることが可能となる。
【0097】
なお、「複数を1セットとして」送信するとは、例えば、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術により複数のアンテナから同時に信号を送信して実現できる。また他にも、フレームアグリゲーションにより複数のデータフレームを結合して送信しBlockACKによりまとめて応答信号を受信する手段で実現できる。
【0098】
また他にも、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式に則り実現できる。 また、放射線撮像装置100は上記に説明したような複数の制御信号を1セットとして送信する形態と、1回の送信で1個の制御信号を送信する形態とを選択可能なように構成してもよい。
【0099】
また、S103において通信部190より遅延なく照射停止信号送信を行うには、照射停止信号を送信する事前のタイミングにおいて通信部190に送信パケットのキューを滞留させておかないことが好適である。事前のタイミングとは、放射線発生装置506より放射線507の照射が開始されてから、S101において制御部180により積算照射量や通信遅延時間を元に照射停止判定を行うまでの間である。この間、通信部190はアクセスポイント503を介して同期制御装置505へ信号を送信することを停止することが望ましい。
【0100】
一方、同期制御装置505から放射線撮像装置100に対して応答を求める制御コマンドを受信した場合、制御応答を迅速に行う観点から、放射線507の照射中の場合でも通信部190より応答の信号を送信することが好適である。
【0101】
次に、
図8を参照して、放射線撮像装置100が照射停止信号を送信するフロー例について同期制御装置505からの照射停止信号応答を使用して再送を行う場合について説明する。S105において予定するすべての信号数の送信が完了したことを判断するフローまでは
図7のフローと同一である。
【0102】
その後S110において、同期制御装置505からの照射停止信号応答の確認のため放射線撮像装置100の制御部180は所定の期間(第一の期間)待つ。その後S111において照射停止信号応答の受信を確認し、未受信の場合はS102に戻り照射停止信号を所定の期間(第二の期間)の間隔で再送を繰り返す。再送する照射停止信号についても付加信号の更新などは任意に行ってよい。
【0103】
この時、S110における照射停止信号応答待ちの時間を許容される通信遅延時間から適切に設定することで、照射停止信号による通信トラフィックへの負荷を適切に管理しつつ、通信遅延時間を最小限にとどめることができる。
【0104】
次に、
図9を参照して、放射線撮像装置100が照射停止信号を送信するフロー例について不要な信号の送信を削減し通信トラフィックへの負荷を軽減する場合について説明を行う。S103の照射停止信号送信までのフローは
図7および8のフローと同一である。
【0105】
その後S120において照射停止信号の受信を確認し、受信済みの場合はS121において送信を予定している照射停止信号を含む制御信号を破棄し、制御信号の送信を終了する。このようにすることで、不要な信号の送信を抑制することができ、通信トラフィックへの負荷を軽減することができる。
【0106】
図10を参照して通信部190から照射停止信号が送信され同期制御装置505により照射停止制御が行われるまでの一連のシーケンス例を説明する。
【0107】
S201において通信部190は照射停止信号を含む制御信号を複数送信する、
図10においては例として3個送信するケースを記載している。このとき、アクセスポイント503が受信失敗した場合は応答信号(ACK)が返されないため通信部190は所定の応答信号(ACK)がアクセスポイント503から得られるまで照射停止信号を含む制御信号を送信する。
【0108】
S202においてアクセスポイント503は同期制御装置505に対して照射停止信号を伝送する。この時、アクセスポイント503やスイッチングハブ(不図示)などを含む同期制御装置505に至るまでの通信経路中でパケットロスや伝送遅延などが発生する場合がある。
【0109】
S203において同期制御装置505は照射停止信号を受信し、放射線発生装置506に対して照射停止制御を行う。
【0110】
S204において同期制御装置505は放射線撮像装置100の通信部190に対して照射停止信号応答を送信し、照射停止制御を行ったことを放射線撮像装置100に通知する。
【0111】
S203にて照射停止制御を行った後に伝送遅延の影響を受けた照射停止信号を受信した場合は、撮影IDなどの付加信号を参照し不要な場合は照射停止制御を行わないことが好適である。またこの時、照射停止信号応答を送信してもよいし、送信しなくてもよい。例えば、遅延して受信した情報を付加して照射停止信号応答を送信することで放射線撮像装置100は遅延が発生した情報を得ることができ、その情報を元に送信する照射停止信号の数を更新してもよい。
【0112】
図10においては照射停止信号を含む制御信号の送信数を3個としているが、その限りではない。例えば、アクセスポイント503やスイッチングハブなど、同期制御装置505に至るまでの通信経路中において所定のパケット数に到達するまでパケットが滞留する通信機器が存在する場合がある。この場合、通信トラフィックへの負荷を考慮しつつより多数の送信数に設定することが好適である。
【0113】
以上、実施形態に基づいて詳述してきたが、これらの特定の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明の範疇に含まれる。例えば、複数の通信手段や通信プロトコルによって同時に送信する構成としても良い。また、通信部190は有線通信を使用し、アクセスポイント503を介さず同期制御装置505と有線接続する構成としてもよい。
【0114】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0115】
また、記録媒体は、フレキシブルディスク、光ディスク(例えばCD-ROM、DVD-ROM)、光磁気ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリ(例えばUSBメモリ)、ROM等、種々の記録媒体を用いることができる。また、上述の機能を実施するプログラムを、ネットワークを介してダウンロードしてコンピュータにより実行するようにしてもよい。
【0116】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけに限定するものではない。そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0117】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれてもよい。そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述の機能が実現される場合も含まれる。
【0118】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0119】
(付記1)
放射線発生装置を制御する制御装置と、
前記放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と、前記センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を前記制御装置に送信する通信部と、を有する放射線撮像装置と、を有し、
前記通信部は、一つの前記照射停止信号を少なくとも含む制御信号を、複数を1セットとして前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させること
を特徴とする放射線撮影システム。
【0120】
(付記2)
前記制御信号は、前記照射停止信号に付加する付加信号を含んでいてもよい。
【0121】
(付記3)
1セットのうちの複数の前記制御信号において、それぞれの前記付加信号は同一の信号であってもよい。
【0122】
(付記4)
1セットのうちの複数の前記制御信号において、それぞれの前記付加信号は一部または全てが相互に異なる信号であってもよい。
【0123】
(付記5)
前記付加信号は、前記制御信号が前記照射停止信号を含むことを示す識別情報を含んでいてもよい。
【0124】
(付記6)
前記付加信号は、前記制御信号の送信順序を示す情報を含んでいてもよい。
【0125】
(付記7)
前記線量を演算する演算部を有し、
前記付加信号は、前記演算部で演算された前記線量に関する情報を含んでいてもよい。
【0126】
(付記8)
前記付加信号は、時刻に関する情報を含んでいてもよい。
【0127】
(付記9)
前記付加信号は、複数の放射線撮影を区別するための撮影IDを含んでいてもよい。
【0128】
(付記10)
前記付加信号は、ダミーデータを含んでいてもよい。
【0129】
(付記11)
前記通信部は、1セットとして送信する前記制御信号の信号数が1回あたり1000個以下であってもよい。
【0130】
(付記12)
前記通信部は、1セットの前記制御信号の送信から前記制御装置より第一の期間に応答がない場合に、1セットの前記制御信号の再送を第二の期間の間隔で繰り返してもよい。
【0131】
(付記13)
前記通信部は、前記放射線発生装置による放射線の照射開始から前記放射線撮像装置において照射停止の判定を完了するまでの間は、前記制御装置からの要求がない限り前記制御装置に対して信号の送信を行わなくてもよい。
【0132】
(付記14)
前記通信部は、前記制御装置より前記照射停止信号に対する応答を受信した時点で、前記制御信号のうち前記時点より後に送信する予定の制御信号を破棄してもよい。
【0133】
(付記15)
前記通信部は、一度の送信で複数を1セットとして前記制御信号を送信する、または、一度の送信で1個の前記制御信号のみ送信する、のいずれか一方を選択可能であってもよい。
【0134】
(付記16)
前記制御装置は、前記通信部から1セットとして複数送信された前記制御信号のうち、最初に受信した前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させてもよい。
【0135】
(付記17)
前記制御装置に接続され、前記放射線撮像装置からの信号を受信するアクセスポイントを有していてもよい。
【0136】
(付記18)
放射線発生装置を制御する制御装置と、
前記放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と、前記センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を前記制御装置に送信する通信部と、を有する放射線撮像装置と、を有し、
前記通信部は、一つの前記照射停止信号と、前記照射停止信号に付加する付加信号と、を少なくとも含む一つの制御信号を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させること
を特徴とする放射線撮影システム。
【0137】
(付記19)
放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を前記放射線発生装置を制御する制御装置に送信する通信部と、を有し、
前記通信部は、一つの前記照射停止信号を少なくとも含む制御信号を、複数を1セットとして前記制御装置に送信すること
を特徴とする放射線撮像装置。
【0138】
(付記20)
放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を、前記放射線発生装置を制御する制御装置に送信する通信部と、を有し、
前記通信部は、一つの前記照射停止信号と、前記照射停止信号に付加する付加信号と、を少なくとも含む一つの制御信号を前記制御装置に送信すること
を特徴とする放射線撮影システム。
【0139】
(付記21)
放射線発生装置を制御する制御装置と、前記放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と該センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を前記制御装置に送信する通信部とを有する放射線撮像装置と、を有する放射線撮影システムの制御方法であって、
前記通信部から、一つの前記照射停止信号を少なくとも含む制御信号を、複数を1セットとして前記制御装置に送信する送信工程と、
前記制御装置が前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させる停止工程と、を行う
ことを特徴とする制御方法。
【0140】
(付記22)
放射線発生装置を制御する制御装置と、前記放射線発生装置から照射され入射した放射線を検出するセンサ部と該センサ部で検出した前記放射線の線量に基づき前記放射線発生装置の放射線の照射を停止させる照射停止信号を前記制御装置に送信する通信部とを有する放射線撮像装置と、を有する放射線撮影システムの制御方法であって、
前記通信部から、一つの前記照射停止信号と、前記照射停止信号に付加する付加信号と、を少なくとも含む一つの制御信号を、前記制御装置に送信する送信工程と、
前記制御装置が前記制御信号に基づいて前記放射線発生装置からの放射線の発生を停止させる停止工程と、を行う
ことを特徴とする制御方法。
【0141】
(付記23)
コンピュータに付記21もしくは22に記載される制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0142】
100 放射線撮像装置
190 通信部
500 放射線撮影システム
505 同期制御装置
506 放射線発生装置