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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】像加熱装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022113363
(22)【出願日】2022-07-14
(65)【公開番号】P2024011412
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相場 洋彦
(72)【発明者】
【氏名】倉田 宗人
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032951(JP,A)
【文献】特開2019-215409(JP,A)
【文献】特開2019-109493(JP,A)
【文献】特開2019-113585(JP,A)
【文献】特開2021-140191(JP,A)
【文献】特開2014-178633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフィルムと、
前記フィルムの外周面に接触するローラと、
前記フィルムの内部空間に設けられ、前記フィルムを介して前記ローラとニップ部を形成するニップ形成部材と、
を備え、前記フィルムと前記ニップ形成部材の間に潤滑剤が塗布され、前記ニップ部で記録媒体を挟持搬送する像加熱装置において、
前記ローラのトルク情報として、前記ローラのトルク、又は前記ローラの前記トルクと相関のある物理量を取得するトルク検知部と、
前記トルク情報から前記トルクが所定の閾値を超えて低下したと判断されると、前記ニップ部における非通紙部の昇温を抑制する昇温抑制動作を行う制御部と、
を更に備えることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記トルク検知部は、前記トルク情報として、前記ローラの第1のトルク情報と、前記第1のトルク情報より後に取得される前記ローラの第2のトルク情報を取得し、
前記制御部は、前記第1のトルク情報と前記第2のトルク情報に基づいて、前記昇温抑制動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1のトルク情報に対する前記第2のトルク情報の低下量が所定の値以上となった場合に、前記昇温抑制動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のトルク情報の前記第2のトルク情報に対する割合が所定の値以上となった場合に、前記昇温抑制動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記第1のトルク情報、及び前記第2のトルク情報は、像加熱装置が一定の温度かつ一定の搬送速度で稼働している期間の前記トルク情報であることを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記第1のトルク情報は、第1の記録媒体が前記ニップ部に突入する前の前記トルク情報であり、
前記第2のトルク情報は、前記第1の記録媒体より後に前記ニップ部に突入する第2の記録媒体が、前記ニップ部を通過した後の前記トルク情報であることを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
【請求項7】
画像形成装置に備えられる像加熱装置であって、
前記第1のトルク情報は、第1の記録媒体の印刷動作中の前記トルク情報であり、
前記第2のトルク情報は、前記第1の記録媒体より後に前記ニップ部に突入する第2の記録媒体の印刷動作中の前記トルク情報であることを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記昇温抑制動作として、記録媒体の搬送停止、記録媒体の搬送間隔の拡張、ユーザへの報知、の少なくともいずれか一つの動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項9】
コイルに流れる電流により駆動されるモータであって、前記ローラを回転駆動させるモータを更に備え、
前記トルク検知部は、前記ローラの前記トルクと相関のある前記物理量として、前記モータのトルクを取得することを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項10】
コイルに流れる電流により駆動されるモータであって、前記ローラを回転駆動させるモータを更に備え、
前記トルク検知部は、前記ローラの前記トルクと相関のある前記物理量として、前記コイルに流れる電流の大きさを取得することを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項11】
前記ニップ形成部材は、前記フィルムを加熱するヒータであることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項12】
前記フィルムを加熱するハロゲンヒータを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項13】
前記ニップ形成部材は、摺動板であることを特徴とする請求項12に記載の像加熱装置。
【請求項14】
磁性コアや励磁コイルにより構成され、前記フィルムを加熱する加熱部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項15】
前記ニップ形成部材は、前記フィルムの回転を案内するガイド部材であることを特徴とする請求項14に記載の像加熱装置。
【請求項16】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する請求項1~15のいずれか1項に記載の像加熱装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真記録方式の画像形成装置に搭載する定着器、あるいは記録媒体上の定着済みトナー画像を再度加熱することにより画像の光沢度を向上させる光沢付与装置等の像加熱装置に関する。また、像加熱装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置に搭載される像加熱装置として、筒状の定着フィルムと、定着フィルムの内面に接触するヒータで定着部材を構成し、定着フィルムを介してヒータと共にニップ部を形成する加圧ローラとを有する装置がある。このような像加熱装置では、熱源たるセラミックヒータの熱を、定着フィルムを介して記録媒体へ供給することで記録媒体上のトナー画像を加熱定着させている。
【0003】
上述のような構成の像加熱装置において、B5サイズ紙や封筒などの幅狭の記録媒体の通紙を行うと、ニップ部の長手方向において記録媒体が通過する領域と比較して、記録媒体が通過しない領域の温度が徐々に上昇する現象が発生する。このような現象は一般的に非通紙部昇温と称され、非通紙部昇温は定着不良や部材の損傷を引き起こすため、その発生を抑制することが望まれる。
【0004】
特許文献1には、非通紙部昇温による像加熱装置の破損を防止するために、像加熱装置の長手方向端部に温度検知素子が配置され、その検知温度に応じて印刷動作を停止したり、給紙間隔を低下させたりする制御を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005―284021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、装置の小型化等が原因で、像加熱装置の長手方向端部に温度検知素子を配置できない構成の場合、上述の方法では非通紙部昇温を検知して抑制することができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、温度検知素子によらず、像加熱装置の非通紙部昇温を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、
筒状のフィルムと、
前記フィルムの外周面に接触するローラと、
前記フィルムの内部空間に設けられ、前記フィルムを介して前記ローラとニップ部を形成するニップ形成部材と、
を備え、前記フィルムと前記ニップ形成部材の間に潤滑剤が塗布され、前記ニップ部で記録媒体を挟持搬送する像加熱装置において、
前記ローラのトルク情報として、前記ローラのトルク、又は前記ローラの前記トルクと相関のある物理量を取得するトルク検知部と、
前記トルク情報から前記トルクが所定の閾値を超えて低下したと判断されると、前記ニップ部における非通紙部の昇温を抑制する昇温抑制動作を行う制御部と、
を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度検知素子によらず、像加熱装置の非通紙部昇温を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施例に係る画像形成装置の概略断面図である。
図2】第1の実施例に係る像加熱装置の概略断面図である。
図3】第1の実施例に係るモータの概略構成図である。
図4】第1の実施例に係るモータの制御回路図である。
図5】モータのコイル電流とトルクの相関を示すグラフである。
図6】第1の実施例に係る駆動トルクの推移を示すグラフである。
図7】第1の実施例に係るヒータ温度と駆動トルクの相関を示すグラフである。
図8】第1の実施例に係る非通紙部のヒータ温度の推移を示すグラフである。
図9】第1の実施例に係る駆動トルクの推移を示すグラフである。
図10】第1の実施例に係る印刷動作のフローチャートである。
図11】比較例に係る画像形成装置の生産性を示すグラフである。
図12】第1の実施例に係る駆動トルク差の推移を示すグラフである。
図13】第1の実施例に係る画像形成装置の生産性を示すグラフである。
図14】変形例に係る輻射加熱方式の像加熱装置の概略断面図である。
図15】変形例に係る電磁誘導加熱方式の像加熱装置の概略断面図である。
図16】第2の実施例に係る画像形成装置の概略断面図である。
図17】第2の実施例に係るトルクの推移を示すグラフである。
図18】第2の実施例に係る印刷動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対位置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定するものではない。
【0012】
<第1の実施例>
(1)画像形成装置1の構成
図1を参照して、第1の実施例に係る画像形成装置1の構成について説明する。図1は、画像形成装置1の概略断面図である。画像形成装置1は、電子写真方式を利用してシート状の記録媒体P上に画像を形成するレーザプリンタである。
【0013】
画像形成装置1は、像担持体としての感光体ドラム19と、帯電手段としての帯電ローラ16と、現像手段としての現像ローラ17と、クリーニング手段としてのクリーニングブレード18を含むクリーニングユニットと、を備える。これらの部材は、プロセスカートリッジ10として画像形成装置1の装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、画像形成装置1は、給紙カセット21と、ピックアップローラ22と、給紙ローラ23と、レジローラ対24と、転写部材としての転写ローラ12と、を備える。更に、画像形成装置1は、像加熱装置(定着装置)13と、定着排紙ローラ対25と、本体排紙ローラ対26と、制御部40と、像加熱装置13の駆動手段としての定着モータ20と、それ以外の部材の駆動手段としてのメインモータ50と、を備える。
【0014】
感光体ドラム19は、所定の周速度(プロセススピード)で、図1中の時計方向に回転駆動される。帯電ローラ16は、感光体ドラム19の周面を所定の極性・電位に一様に帯電処理する。帯電された感光体ドラム19は、帯電処理面にレーザスキャナ11から出射
されたレーザ光が走査露光される。画像露光手段としてのレーザスキャナ11は、不図示のイメージスキャナやコンピュータ等の外部機器から画像情報を伝達されて、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応してオン/オフ変調したレーザ光を出力する。この走査露光により、感光体ドラム19の周面の露光明部の電荷が除電され、目的の画像情報に対応した静電潜像が感光体ドラム19の周面に形成される。
【0015】
現像ローラ17は、現像剤(トナー)を表面に担持し、感光体ドラム19の周面にトナーを供給して、感光体ドラム19の周面に形成された静電潜像をトナー像として順次に現像する。レーザプリンタの場合、一般的に、静電潜像の露光明部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。
【0016】
給紙カセット21は、画像形成装置1に対して着脱可能であり、シート状の記録媒体Pを積載・収納する。給紙カセット21内の記録媒体Pは、給紙スタート信号に基づいてピックアップローラ22によって給紙ローラ23に搬送され、給紙ローラ23によって一枚ずつ画像形成装置1本体内へ分離給送される。給紙ローラ23によって画像形成装置1内へ給紙された記録媒体Pは、搬送路30を通過し、レジローラ対24へと搬送される。レジローラ対24へと搬送された記録媒体Pは、レジローラ対24によって、搬送路31を通過して、感光体ドラム19と転写ローラ12とで形成される画像形成部の転写ニップTへと導入される。
【0017】
転写ニップTに導入された記録媒体Pは、転写ニップTに挟持搬送され、その間、転写ローラ12には不図示の転写電圧印加電源から制御された所定の転写電圧が印加される。転写ローラ12にトナーと逆極性の転写電圧が印加されることで、感光体ドラム19の周面に形成されたトナー像が記録媒体Pの表面へと静電的に転写される。トナー像が転写された記録媒体Pは、転写ニップTから搬送路32を搬送されて像加熱装置13へ導入される。
【0018】
像加熱装置13は、定着フィルム14と加圧ローラ15を備える。像加熱装置13へと導入された記録媒体Pは、定着フィルム14と加圧ローラ15とで形成される定着ニップFに挟持搬送される。その間、所定の温度(定着温度)になるように制御された定着フィルム14によって記録媒体Pは加熱され、記録媒体P上のトナー像は、記録媒体Pへと定着処理される。像加熱装置13によりトナー像が定着させられた記録媒体Pは、記録媒体Pを排出する定着排紙ローラ対25によって像加熱装置13から排出され、搬送路33を搬送される。そして、記録媒体Pは、搬送路33の終端に設けられる本体排紙ローラ対26によって画像形成装置1内から排紙トレイ27へと排紙され、画像形成が完了する。
【0019】
両面印刷の場合には、記録媒体Pが本体排紙ローラ対26に送られた後、本体排紙ローラ対26が所定のタイミングで逆回転することによって、記録媒体Pは再び画像形成装置1内に引き戻される。引き戻された記録媒体Pは、両面搬送路34を搬送され、2面目の画像形成が行われる。
【0020】
記録媒体Pへトナー像が転写された後、感光体ドラム19の周面は、クリーニングブレード18によって転写残トナーや紙粉等が除去され、再び帯電されて、次の画像形成に供される。
【0021】
以上の動作を繰り返すことで、連続した画像形成を行うことができる。なお、本実施例の画像形成装置1は、A4サイズ(210mm×297mm)の普通紙に対し、295mm/secのプロセススピードで毎分52枚の白黒画像をプリントすることが可能である
【0022】
(2)像加熱装置13の構成
図2を参照して、第1の実施例に係る像加熱装置13の詳細構成について説明する。図2は、本実施例の像加熱装置13を示す概略断面図である。像加熱装置13は、定着フィルム14と、定着フィルム14の外周面に当接する加圧ローラ15と、定着フィルム14の内部空間に設けられる加熱体としてのヒータ60と、を備える。定着フィルム14や加圧ローラ15、ヒータ60は、記録媒体Pの搬送方向と直交する加圧ローラ15の回転軸方向に長い部材である。
【0023】
定着フィルム14は、筒状に形成された複層構成の高耐熱性部材であり、厚み100μm以下のポリイミド等の耐熱樹脂で形成される基層と、定着フィルム14の表層に当たるPFA等の離型性に優れたフッ素樹脂を被覆した離型層と、を有する。
【0024】
加圧ローラ15は、鉄やアルミニウム等からなる芯金と、シリコーンゴム当の高耐熱性のゴム材質からなる弾性層を有する。
【0025】
ヒータ60は、基材であるアルミナ等のセラミック基板上に銀ペースト等からなる発熱体がスクリーン印刷等で塗工され、その上に絶縁保護層としてガラスコートが形成されているセラミックヒータである。ヒータ60のガラスコートは、定着フィルム14の内面に接触する。
【0026】
ヒータ60のガラスコート上には、あらかじめ潤滑剤としてのグリースGが塗布されている。定着フィルム14の内面とヒータ60のガラスコートの間にグリースGが介在することで、良好な摺動性が確保される。グリースGとしては、例えばパーフロロポリエーテル基油をフッ素樹脂で増ちょうしたグリースを用いることができる。
【0027】
ヒータ60は、ヒータ保持部材61によって保持される。また、ヒータ60を保持したヒータ保持部材61は、金属ステー部材63によって保持される。加圧ローラ15には不図示の加圧機構によって加圧力が加えられており、定着フィルム14を介して加圧ローラ15がヒータ60に向けて加圧されることにより、定着ニップFが形成される。すなわち、ヒータ60は、加熱体として定着フィルム14を加熱するだけでなく、ニップ形成部材として加圧ローラ15と共に定着ニップF(ニップ部)を形成する。
【0028】
加圧ローラ15の芯金は定着モータ20にカップリングギア等によって接続されており、定着モータ20によって加圧ローラ15が回転駆動されるに伴い、定着フィルム14が従動回転される。記録媒体Pが定着ニップFで加熱されながら挟持搬送されることで、記録媒体P上の未定着トナー像Tnが定着される。
【0029】
ヒータ60には、温度検知素子としてのサーミスタ62が当接している。本実施例において、サーミスタ62は、ヒータ60の長手方向の中央部に当接している。制御部40は、サーミスタ62の検知結果に基づいて、サーミスタ62の検知温度が所望の目標温度となるようにヒータ60への通電を制御している。制御部40は、ユーザが設定した印刷モードに応じた画像形成条件、定着温度で画像形成、定着動作を行う。
【0030】
(3)定着モータ20の構造と定着モータ20の駆動トルク検知
次に、第1の実施例における加圧ローラ15の駆動トルク検出方法について説明する。加圧ローラ15は、ブラシレスモータである定着モータ20によって回転駆動される。画像形成装置1には、定着モータ20が駆動される際に、定着モータ20のコイルに通電される電流(コイル電流)を検知する機構が設けられている。
【0031】
図3を参照して、加圧ローラ15を駆動する駆動源である定着モータ20の構造につい
て説明する。図3は、定着モータ20の概略構成図である。定着モータ20は、6スロットのステータ240と、4極のロータ241からなる。ステータ240は、U相のコイル235と、V相のコイル236と、W相のコイル237と、を2個ずつ備える。ロータ241は、永久磁石によって構成され、2組のN極/S極を備える。コイル235、236、237は、それぞれ後述のインバータ出力233に接続されている。
【0032】
次に、図4を参照して、定着モータ20を駆動する回路で構成されるモータ制御部220と駆動電流検知機構について説明する。図4は、定着モータ20の制御回路図である。モータ制御部220は、マイコン221を用いた演算処理手段を備える。マイコン221は、通信ポート222、ADコンバータ229、カウンタ223、不揮発メモリ224、基準クロック生成部225、PWMポート227、電流値算出部228を内蔵する。
【0033】
基準クロック生成部225は、モータ制御部220に設けられた水晶発振子226の出力に基づいて基準クロックを生成する。カウンタ223は、基準クロック生成部225が生成した基準クロックを基にカウント動作を行い、該カウント値により入力されたパルスの周期の計測や、PWM信号の生成などを行う。PWMポート227は、6本の端子を備え、ハイ側信号3本(U-H、V-H、W-H)と、ロー側信号3本(U-L、V-L、W-L)のPWM信号を出力する。モータ制御部220は、ハイ側3個、ロー側3個のスイッチング素子により構成された3相のインバータ231を備える。スイッチング素子としては、例えばトランジスタやFETが使用できる。各スイッチング素子は、ゲートドライバ232を介してPWMポート227に接続され、PWMポート227から出力されるPWM信号によってON/OFFの制御が可能である。なお、各スイッチング素子は、PWM信号がHでONし、LでOFFするものとする。
【0034】
インバータ231のインバータ出力(U、V、W相出力)233は、定着モータ20のコイル235、236、237に接続されており、各コイル235、236、237に流すコイル電流を制御できる。各コイル235、236、237に流れたコイル電流は、電流検知部により検知される。電流検知部は、電流センサ230、アンプ部234、ADコンバータ229、電流値算出部228から構成される。
【0035】
コイル235、236、237に流れた電流は、まず、電流センサ230により電圧に変換される。該電圧は、アンプ部234で増幅及びオフセット電圧の印加が行われ、マイコン221のADコンバータ229に入力される。例えば、電流センサ230が、1A当たり0.01Vの電圧を出力し、アンプ部234での増幅率が10倍、印加されるオフセット電圧が1.6Vとすると、-10A~+10Aの電流が流れた際のアンプ部234の出力電圧は0.6~2.6Vとなる。ADコンバータ229は、例えば0~3Vの電圧を0~4095のAD値として出力する。従って、-10A~+10Aの電流が流れた際のAD値は、おおよそ819~3549となる。なお、電流の正負は、電流が3相のインバータ231から定着モータ20に流れる場合を+とする。
【0036】
電流値算出部228は、AD変換されたデータ(以後、AD値と記述する)に所定の演算を施し、電流値を算出する。すなわち、AD値から、オフセット値を減算し、更に所定の係数を乗算して、電流値が求められる。上述の場合、オフセット値は、オフセット電圧1.6VのAD値となるので、おおよそ2184となり、係数は、おおよそ0.00733となる。オフセット値の算出に当たっては、コイル電流を流していないときのAD値が読み込まれ、記憶され、使用される。所定の係数は、あらかじめ不揮発メモリ224に標準係数として保存されている。マイコン221によってゲートドライバ232を介して3相のインバータ231が制御されることで、定着モータ20のコイル235、236、237に電流が流される。マイコン221は、電流センサ230、アンプ部234、ADコンバータ229によってコイル電流を検知し、検知したコイル電流から定着モータ20の
ロータ位置及び速度を算出する。以上に説明した構成により、マイコン221は、定着モータ20を回転制御することができる。
【0037】
図5は、定着モータ20のトルクと定着モータ20を駆動するコイル電流の関係(T-I特性)を示すグラフである。図5のグラフは、縦軸が定着モータ20のコイル電流、横軸が定着モータ20のトルクである。図5に示すように、定着モータ20のトルクとコイル電流はほぼ比例するため、定着モータ20のコイル電流から定着モータ20のトルクが算出可能である。第1の実施例においては、定着モータ20のT-I特性の測定結果から得られる変換式を制御部40の不揮発メモリ224にあらかじめ記憶しておき、検知したコイル電流から定着モータ20のトルクが換算できるようにしている。像加熱装置13においては、定着モータ20と加圧ローラ15の芯金がカップリングギア等で接続されており、定着モータ20のトルクと加圧ローラ15の駆動トルクは同様の値となる。従って、トルク検知部としてのモータ制御部220は、加圧ローラ15の駆動トルクに相関のある物理量である定着モータ20のコイル電流とトルクから、加圧ローラ15の駆動トルクを取得可能である。このように、像加熱装置13においては、定着モータ20のコイル電流とトルクを利用して、加圧ローラ15の駆動トルクの検出が可能である。
【0038】
(4)非通紙部昇温検知方法
次に、本実施例の像加熱装置13における非通紙部昇温の検知方法について説明する。本実施例においては、所定温度で動作している期間の加圧ローラ15の駆動トルクに基づいて、非通紙部昇温を検出する。なお、ここでいう「非通紙部昇温」とは、像加熱装置13に幅狭の記録媒体Pを通紙した際に、定着ニップFの長手方向において、定着ニップFの記録媒体Pが通過しない領域の温度が、記録媒体Pが通過する領域の温度と比較して過度に高くなることを指す。
【0039】
まず、幅が異なる記録媒体Pを通紙した際の、加圧ローラ15の駆動トルクの違いについて、図6を参照して説明する。図6は、2種類の記録媒体Pが20枚、連続して通紙された場合における、記録媒体Pの19枚目と20枚目の通紙時と通紙後の加圧ローラ15の駆動トルクの推移を示すグラフである。図6のグラフは、縦軸が加圧ローラ15の駆動トルク、横軸が時間である。記録媒体Pとしては、182mm×257mmの用紙(B5用紙)と、105mm×257mmの用紙が用いられ、図6には、182mm×257mmの用紙の結果が破線で示され、105mm×257mmの用紙の結果が破線で示されている。
【0040】
図6においては、19枚目と20枚目の用紙の印刷動作中の期間をそれぞれ2つの期間に分けて示している。期間Th19は、19枚目の用紙が像加熱装置13を通過している期間であり、期間Th20は20枚目の用紙が像加熱装置13を通過している期間である。更に、期間Ti19は19枚目の用紙が像加熱装置13を抜けて、用紙が像加熱装置13を通過していない期間であり、期間Ti20は20枚目の用紙が像加熱装置13を抜けて、用紙が像加熱装置13を通過していない期間である。
【0041】
図6に示すように、各期間において加圧ローラ15の駆動トルクは、182mm×257mmの用紙が通紙した場合よりも、105mm×257mmの用紙を通紙した場合の方が小さくなる。すなわち、通紙される記録媒体Pの幅が狭い方が加圧ローラ15の駆動トルクが小さくなっている。以下、図7~9を参照してこの理由を説明する。
【0042】
図7は、加圧ローラ15の駆動トルクとヒータ60の温度の関係を示したグラフであり、縦軸が加圧ローラ15の駆動トルク、横軸がヒータ60の温度である。図7のグラフには、記録媒体Pが像加熱装置13を通過していない状態において、ヒータ60を所定温度に制御しつつ、定着モータ20を295mm/secで回転した場合の加圧ローラ15の
駆動トルクが示される。上述の通り、加圧ローラ15の駆動トルクは、定着モータ20のトルクと略同一の値であり、定着モータ20のコイル電流から換算して得られる。
【0043】
図7に示すように、ヒータ60の温度が高いほど、加圧ローラ15の駆動トルクは小さくなる。これは、ヒータ60と定着フィルム14の間にはグリースGが塗布されており、ヒータ60の温度が高くなると、グリースGの粘度が温度上昇ともに低下し、摺動抵抗が小さくなるためである。すなわち、像加熱装置13を駆動するために必要なトルクである加圧ローラ15の駆動トルクは、ヒータ60の温度が上昇すると低下する傾向にある。
【0044】
本実施例の像加熱装置13のヒータ60は、210mm幅のA4用紙に対応可能な長さを有するヒータである。上述の通り、ヒータ60は、ヒータ60の長手中央部に当接するサーミスタ62により温度が検知されて、所定の温度となるように温度制御される。そのため、像加熱装置13において、182mm幅、105mm幅などのA4用紙よりも幅狭の用紙で印刷動作が行われると、定着ニップFの用紙幅よりも長手方向外側の用紙が通過しない領域において非通紙部昇温が発生する。特に、幅狭の用紙に印刷動作を行う際に、誤ってA4用紙用の印刷条件が用いられると、非通紙部の昇温は大きくなる。そこで、182mm幅、105mm幅の用紙を像加熱装置13に30枚、連続して通紙して、非通紙部のヒータ温度と加圧ローラ15の駆動トルクがどのように推移するか確認した。
【0045】
図8は、182mm×257mmの用紙と105mm×257mmの用紙を30枚通紙した場合の、非通紙部に該当する領域のヒータ温度の推移を表したグラフである。図8は、縦軸が非通紙部のヒータの温度、横軸が通紙枚数である。各用紙は、サーミスタ62が検知するヒータ60の温度が160℃になるように、ヒータ60は温調制御される設定の元、通紙された。図8に示すように、通紙枚数が増加する程、どちらの用紙においても非通紙部の温度が徐々に増加する。更に、182mm幅の用紙よりも105mm幅の用紙を用いて印刷動作が行われた場合の方が、通紙枚数が増加する程、非通紙部が高温となっている。すなわち、用紙の幅が狭いほど非通紙部が高温になる傾向があることが分かる。
【0046】
図9は、182mm×257mmの用紙と105mm×257mmの用紙を30枚通紙した場合の、加圧ローラ15の駆動トルクの推移を表したグラフである。図9は、縦軸が加圧ローラ15の駆動トルク、横軸が通紙枚数である。ここで、図9のグラフ中の加圧ローラ15の駆動トルクは、用紙が通過していない期間の駆動トルクであり、用紙が1枚通紙されるごとに取得されたものである。図9に示すように、通紙枚数が増加する程、どちらの用紙においても加圧ローラ15の駆動トルクは徐々に低減する。これは、図8で示したように、通紙枚数の増加に伴い、非通紙部の温度が高くなることによって、ヒータ60と定着フィルム14の間に介在するグリースGの粘度が低下して、摺動抵抗が小さくなるためである。
【0047】
また、通紙枚数の増加に伴う駆動トルクの低下量は、非通紙部昇温が小さい182mm幅の用紙を通紙した場合よりも、非通紙部昇温が大きい105mm幅の用紙を通紙した場合の方が大きい。すなわち、幅狭の用紙が繰り返し通紙された場合に、非通紙部の温度上昇量が大きいほど、加圧ローラ15の駆動トルクの低下量が大きくなるといえる。本願発明者らは、この関係性に着目し、加圧ローラ15の駆動トルクに基づいて、非通紙部昇温の発生を検知することを着想した。
【0048】
本発明に特徴的な、像加熱装置13の非通紙部昇温の検知方法について説明する。本実施例では、以上説明してきたような、非通紙部昇温の発生に伴い定着モータ20の駆動トルクが小さくなることを利用して、非通紙部昇温の検知を行う。本実施例は、特に、ユーザが指定したサイズと異なるサイズの用紙で印刷してしまった場合等に発生する想定外の非通紙部昇温を検知できることを目的としている。
【0049】
本実施例においては、1枚目の用紙が像加熱装置13に突入する直前の加圧ローラ15の駆動トルクTi0と、x枚目の用紙が像加熱装置13を抜けた直後の加圧ローラ15の駆動トルクTixを非通紙部昇温検知に利用する。具体的には、駆動トルクTi0と駆動トルクTixの差である駆動トルク差ΔTi(ΔTi=Ti0-Tix)が予め定められた閾値以上だった場合に、制御部40が誤ったサイズの用紙で印刷されており非通紙部昇温が発生していると判定する。そして、非通紙部昇温が発生していると判断されると、昇温抑制動作として制御部40が、記録媒体Pの搬送間隔を広げ、印刷間隔を広げることで生産性を低下させる構成とした。
【0050】
駆動トルクTi0、Tixは、測定精度向上のために所定期間の平均値を使用することが好ましい。本実施例では、1枚目の用紙が像加熱装置13に突入する直前300ms間の駆動トルクの平均値を駆動トルクTi0とし、また、x枚目の用紙が像加熱装置13を抜けた直後300ms間の平均値を駆動トルクTixとした。
【0051】
以上、本実施例によれば、サーミスタ等の温度検知素子がヒータの中央部のみに設けられている場合でも、加圧ローラの駆動トルクに基づいて、高精度に非通紙部昇温を検知し、抑制できる。
【0052】
なお、本実施例では、第1の期間として1枚目の用紙が像加熱装置13に突入する直前300ms間、第2の期間としてx枚目の用紙が像加熱装置13を抜けた直後300ms間で駆動トルクを取得したが、本発明の適用はこれに限られない。例えば、1枚目の用紙が像加熱装置13を抜けた直後300ms間を第1の期間とするなど、種々の変更が可能である。また、駆動トルクの平均値を計算する期間も300msに限られず、種々の変更が可能である。ただし、駆動トルクの取得期間は、駆動トルクの変動量が小さくなるよう、ヒータ60が所定の温度で稼働し、像加熱装置13が定着温度などの一定の温度で稼働している期間であることが望ましい。
【0053】
更に、本実施例は、駆動トルクの差分量に基づいて非通紙部昇温を検知する構成としたが、第1の期間の駆動トルクTi0と、第2の期間における駆動トルクTixの割合To0/Tixに基づいて非通紙部昇温を検知する構成としても良い。又は、使用可能な用紙種が少ない等、非通紙部昇温が発生する条件が限定される場合は、駆動トルクTixの値のみに基づいて、駆動トルクTixが所定の値を下回った場合に非通紙部昇温が発生したと判定する構成としても良い。こういった構成においても、加圧ローラの駆動トルクから、非通紙部昇温を検知することが可能である。
【0054】
また、本実施例は、加圧ローラ15の駆動トルクに基づいて、非通紙部昇温を検知して昇温抑制動作を行う構成としたが、定着モータ20の電流値など、駆動トルクに相関のある物理量に基づいて非通紙部昇温を検知して昇温抑制動作を行う構成としても良い。この場合、第1の期間における定着モータ20の電流値を第1のトルク情報、第2の期間における定着モータ20の電流値を第2のトルク情報として、これらのトルク情報に基づいて非通紙部昇温が発生したか判定する構成とすれば良い。すなわち、加圧ローラ15の駆動トルクに換算することなく、駆動トルクに相関のある物理量などの駆動トルク情報をそのまま非通紙部昇温の検知に用いることが可能である。
【0055】
(5)画像形成装置1の印刷フロー
本実施例の画像形成装置1における印刷動作について、図10を参照して説明する。図10は、画像形成装置1の印刷動作フローである。以下、複数枚の用紙を連続して印刷を行う場合を例に説明する。
【0056】
印刷動作が開始されると(S100)、まずメインモータ50や定着モータ20により画像形成装置1の各部材の駆動が開始される。そして、ステップS101で、ユーザが設定した印刷条件に基づいて、制御部40が未定着トナーを定着するために必要な所定の温度でヒータ60を温調する。そして、ヒータ60の温度が所定温度に到達すると、ステップS102で1枚目の用紙が給紙カセット21から給紙搬送される。次に、ステップS103で、制御部40が、画像形成部で画像が形成された1枚目の用紙が像加熱装置13に突入するタイミングを計算し、突入直前300ms間の加圧ローラ15の駆動トルクの平均値である駆動トルクTi0を取得し、記録する。そして、ステップS104で、1枚目の用紙の定着動作が行われる。
【0057】
次に、ステップS105で、x枚目(xは2以上の整数)の用紙の給紙動作や定着動作などの印刷動作が行われる。そして、ステップS106において、制御部40は、x枚目の用紙が像加熱装置13を抜けた直後300ms間の駆動トルクの平均値である駆動トルクTixを取得し、駆動トルクTi0との差分から駆動トルク差ΔTiを算出する。
【0058】
駆動トルク差ΔTiの算出後、ステップS107において印刷終了枚数に到達しているかどうかの判定が行われる。印刷終了枚数に到達していた場合(S107でYES)、ステップS111へ進み、印刷動作が終了する。
【0059】
一方、印刷終了枚数に到達してない場合(S107でNO)、ステップS108で、制御部40は駆動トルク差ΔTiが所定の閾値以上かどうかの判定を行う。駆動トルク差ΔTiが閾値未満である場合(S108でNO)、非通紙部昇温は発生していないと判定され、ステップS105へ進み、同様の印刷条件で次の用紙の給紙動作が開始され、印刷動作が継続される。一方、駆動トルク差ΔTiが閾値以上だった場合(S108でYES)、非通紙部昇温が発生していると判定され、ステップS109へ進み、昇温抑制動作として印刷間隔が広がるように印刷条件が変更される。そして、ステップS110へ進み、非通紙部昇温を緩和するために印刷間隔を広げた状態で、印刷終了枚数まで印刷動作が継続される。その後、印刷終了枚数に到達したらステップS111で印刷動作を終了する。
【0060】
なお、本発明の適用は、上述の印刷動作フローに限られず、種々の変更が可能である。例えば、ステップS105における2枚目の給紙動作は、駆動トルクTi0取得(S103)や1枚目の用紙の定着動作(S104)と同タイミングで行われても良い。すなわち、必ずしもx枚目の定着動作が完了しないとx+1枚目の給紙動作が開始できないわけではない。また、駆動トルク差ΔTiの算出(S106)は、印刷終了枚数に到達しているかの判定(S107)を行い、到達していないと判定された後に行うこととしても良い。また、駆動トルク差ΔTiの算出(S106)は、用紙1枚ごとではなく、所定の通紙枚数毎に行こととしても良い。
【0061】
また、上述の実施例においては、一度駆動トルク差ΔTiが閾値以上となると、その後は駆動トルク差ΔTiの算出を行わず、非通紙部昇温を抑制する条件で印刷動作を継続していた。しかし、駆動トルク差ΔTiの閾値を2つ以上設けて、印刷間隔を段階的に広げるように、制御部40が非通紙部昇温動作を2回以上行う構成としても良い。また、昇温抑制動作として、印刷間隔の拡張を行っていたが、本発明の適用はこれに限られず、例えば、記録媒体の搬送停止やユーザへの報知等その他の動作を個別に又は組み合わせて行っても良い。
【0062】
(6)第1の実施例と比較例の生産性比較
本発明の作用効果について、上述の第1の実施例と比較例の画像形成装置において、B5用紙(182mm×257mm)を連続して印刷する場合を例に説明する。
【0063】
比較例の画像形成装置は、第1の実施例と同様に、非通紙部昇温を検知するための温度検知素子や、用紙の幅を検知するためのセンサを有さず、B5用紙を1分間に30枚印刷可能な画像形成装置である。すなわち、比較例の像加熱装置や画像形成装置の基本構成は第1の実施例と同様であり、非通紙部昇温発生の予測方法が比較例と第1の実施例で異なる。なお、以降、画像形成装置の生産性を表す単位として、ppm(page per minutes)を用いる。すなわち、第1の実施例と比較例の画像形成装置は、30ppmでB5用紙の印刷動作を行うことが可能である。
【0064】
第1の実施例においては、図10で示したフローの通り、加圧ローラ15の駆動トルク差ΔTiに基づいて、非通紙部昇温の発生を予測する。一方、比較例は、通紙枚数に基づいて、非通紙部昇温の発生を予測する構成である。B5サイズの用紙を用いて印刷しようとしているユーザが、誤ってA4サイズ用の印刷条件を選択してしまった場合に、そのままの条件で繰り返し印刷動作が行われると、非通紙部昇温が発生し、装置の破損につながりうる。また、非通紙部昇温が生じている状態で幅広の記録媒体を用いて印刷動作が行われると、幅狭の記録媒体の非通紙部に相当する領域でトナーが定着フィルムに高温オフセットすることもある。そこで、比較例のように、非通紙部昇温を検知する素子や実際に通視されている用紙の幅を検知する機構を持たない画像形成装置の場合、予め定められた通紙枚数で生産性を落とすように設定されることが一般的である。
【0065】
B5サイズよりも幅の狭い用紙に印刷が行われ、非通紙部昇温が発生することを防止するために、比較例においては、B5用紙用の印刷条件として、通紙枚数が20枚に到達した時点で30ppmから15ppmに生産性を低下させる設定とした。図11は、比較例の構成を用いた場合の生産性の推移を示すグラフである。図11は、縦軸を生産性、横軸を通紙枚数として、182mm幅の用紙と105mm幅の用紙を上述の条件で連続して通紙した場合の生産性の推移を示す。図11に示されるように、比較例においては、ユーザがB5サイズを指定した場合、正しいサイズの用紙が使用されているか否かにかかわらず、20枚目までは30ppm、21枚目以降は15ppmで印刷動作が行われる。このような構成とすることで、万が一ユーザが誤ったサイズの用紙を使用した場合でも非通紙部昇温を防げるためである。しかし、このような構成においては、正しいサイズの用紙が使用されており、非通紙部昇温が発生しないような使用条件であっても、生産性を低下させてしまう。
【0066】
一方、第1の実施例の構成によれば、ユーザが誤ったサイズの用紙で印刷を行い、想定以上に非通紙部が昇温した場合には、加圧ローラ15の駆動トルクから非通紙部昇温を検知することができる。図12は、182mm幅の用紙と105mm幅の用紙について、B5用紙用の印刷条件で、連続して印刷動作が行われた場合の駆動トルク差ΔTiの推移を示すグラフである。図10のフローチャートで示したように、第1の実施例においては、用紙の定着動作が完了するたびに、制御部40が駆動トルク差ΔTiを算出する。そして、駆動トルク差ΔTiが所定の閾値を上回った場合には、非通紙部昇温が発生した、又は非通紙部昇温が発生する直前であるとして、制御部40は生産性を低下させる。
【0067】
図12に示されるように、通紙枚数の増加に伴い、駆動トルク差ΔTiは徐々に大きくなる。通紙枚数の増加に伴い、非通紙部が昇温して、加圧ローラ15の駆動トルクが小さくなるためである。特に、幅狭の105mm幅の用紙が用いられた場合、182mm幅の用紙と比較して、非通紙部がより高温となるため、駆動トルク差ΔTiも大きくなる。ユーザが実際に使用した用紙が105mm幅の用紙だった場合、加圧ローラ15の駆動トルクは図8中の破線の様に推移するためである。
【0068】
B5用紙用の印刷条件で、105mm幅の用紙について印刷動作が繰り返し行われると、20枚目の定着動作が完了した時点で、駆動トルク差ΔTiが閾値を超えた。従って、
第1の実施例においては、20枚目の定着動作完了後に、生産性を15ppmに落とすよう制御され、21枚目から15ppmで印刷動作が継続される。
【0069】
一方、正しく182mm幅のB5用紙で印刷が行われている場合には、駆動トルクは図8中の実線の様に推移し、駆動トルク差ΔTiは図12中の実線のように推移する。すなわち、通紙枚数30枚の時点でも駆動トルク差ΔTiが閾値未満であるため、生産性30ppmのまま印刷動作が継続される。
【0070】
図13は、第1の実施例の像加熱装置13を用いた場合の生産性の推移を示すグラフである。図13は、縦軸を生産性、横軸を通紙枚数として、182mm幅の用紙と105mm幅の用紙を上述の条件で連続して通紙した場合の生産性の推移を示す。図13に示されるように、105mm幅の用紙の印刷時は、20枚目の定着動作完了後に、昇温抑制動作として生産性が落ちるよう印刷条件が変更され、非通紙部昇温を適切に抑制できる。また、182mm幅の用紙の印刷時は、非通紙部昇温が発生していないため、生産性を落とすことなく印刷動作が継続された。
【0071】
以上より、本発明によれば、非通紙部昇温検知用の温度検知素子を像加熱装置の長手方向端部に設けることなく、非通紙部昇温を適切に検知できる。ひいては、印刷条件に対して誤った用紙が通紙された場合でも非通紙部昇温を抑制できると共に、高い生産性で印刷動作を行うことができる。また、本発明によれば温度検知素子を像加熱装置の長手方向中央部にのみ設ければよいため、温度検知素子や温度検知素子に接続される配線、回路等の配置スペースが節約できるため、装置の小型化にもつながる。
【0072】
なお、本発明の適用は上述の構成に限られるものではなく、上述の実施例に具現された発明と同一性を失わない範囲で種々の変更が可能である。例えば、第1の実施例ではB5用紙を印刷する場合を例に説明を行ったが、A5用紙などのサイズが異なる用紙を印刷する場合に同様の非通紙部検知を行う構成としても良い。また、その場合、駆動トルク差ΔTiの閾値は、用紙のサイズごとに異なる値を設定しうる。
【0073】
また、図10のフローチャートに示した通り、本実施例の複数枚の印刷を行う場合を例に本発明による非通紙部昇温検知方法について説明したが、1枚のみの印刷タスクが設定された場合でも、非通紙部昇温を検知する構成としても良い。例えば、1枚目の用紙が像加熱装置に突入する直前の駆動トルクと像加熱装置を抜けた直後の駆動トルクを比較し、駆動トルク差ΔTiが所定値以上だった場合には、ユーザに誤ったサイズを使用していたことを報知する構成とすることも可能である。
【0074】
また、本実施例では、ユーザが誤ったサイズの用紙で印刷を行った場合を例に説明したものの、本発明の用途はこれに限らない。ユーザが想定以上に厚い用紙を使用した場合、駆動トルクから非通紙部昇温を検知し、生産性を低下させることも可能である。更に、ユーザが誤った使用をした場合に限らず、小サイズ紙の印刷間隔自体を駆動トルクに基づいて制御することも可能である。
【0075】
また、本実施例では、像加熱装置13に用紙が存在しない期間における駆動トルク情報に基づいて非通紙部昇温を検知していたが、用紙が像加熱装置13を通過している所定の期間における駆動トルク情報に基づいても非通紙部昇温の検出は可能である。この場合は、用紙搬送が駆動トルクに寄与することを考慮する必要がある。具体的には、転写ニップや本体排紙ローラなど、用紙が像加熱装置13の上下流のローラでも搬送されているかどうか等を考慮して、駆動トルクの算出方法を決定することで、正確な非通紙部昇温検知が可能となる。
【0076】
また、上述の実施例においては、本発明をセラミックヒータによりフィルムを加熱する像加熱装置に適用したが、本発明の適用はこれに限られるものではない。例えば、本発明はハロゲンヒータなどを用いた輻射式のフィルム加熱方式の像加熱装置に適用されても良い。図14は、本発明が適用可能な変形例である、輻射加熱方式の像加熱装置113を示す概略断面図である。像加熱装置113は、定着フィルム14の内部空間に、加熱体としてのハロゲンヒータ81と、定着フィルム14を介して加圧ローラ15と定着ニップFを形成する摺動板83と、を備える。像加熱装置113は、更に、摺動板83を支持し、定着フィルム14の回転を案内するガイド部材85と、ガイド部材85を保持する金属ステー部材87と、を備える。ニップ形成部材としての摺動板83は、例えば、アルミ板により形成されることができる。また、定着フィルム14の内周面と摺動板83の間には、グリースGが介在している。
【0077】
ガイド部材85は、ハロゲンヒータ81と摺動板83の間で開口する開口部85aを有し、ハロゲンヒータ81の輻射熱は開口部85aを通って摺動板83まで放射され、摺動板83を介して定着フィルム14が加熱される。また、金属ステー部材87は、ハロゲンヒータ81に対して開口部85aと反対側に位置する開口部87aを有し、ハロゲンヒータ81の輻射熱は、開口部87aを通って定着フィルム14の内周面に直接伝わる。
【0078】
また、本発明は、磁性コアや励磁コイルにより構成される加熱部材を用いた誘導加熱を用いたフィルム加熱方式の像加熱装置に適用されてもよい。図15は、本発明が適用可能な変形例として、電磁誘導加熱方式の像加熱装置213を示す概略断面図である。像加熱装置213は、定着フィルム14の内部空間に、加熱体としての磁性コア91及び励磁コイル93と、加圧ローラ15と定着ニップFを形成するガイド部材95と、ガイド部材95を保持する金属ステー部材97と、を備える。ガイド部材95は、定着フィルム14の回転を案内する機能も有し、金属ステー部材97により保持される。ニップ形成部材としてのガイド部材95は、例えば、耐熱性樹脂等で形成されることができる。また、定着フィルム14の内周面とガイド部材95の間には、グリースGが介在している。
【0079】
定着フィルム14の内部空間に挿通されている磁性コア91は、その外周に励磁コイル93が螺旋状に巻かれている。磁性コア91は、励磁コイル93にて生成された交番磁界の磁力線(磁束)を定着フィルム14の発熱層内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する役割がある。磁性コア91は、例えば、焼成フェライト、フェライト樹脂等の高透磁率の強磁性体により形成される。励磁コイル93は、例えば、耐熱性のポリアミドイミドで被覆した直径1~2mmの銅線材(単一導線)により形成される。励磁コイル93は、磁性コア91に定着フィルム14の軸方向に交差する方向に捲回されている。このため、励磁コイル93に高周波電流を流すと、軸方向に平行な方向に交番磁界が発生し、定着フィルム14の発熱層に誘導電流が流れて、定着フィルム14が発熱する。すなわち、加熱される定着フィルムと、定着フィルムの内面に接触し、定着フィルムを介して加圧ローラとニップ部を形成するニップ形成部材と、を備え、定着フィルムとニップ形成部材の間に潤滑剤が介在している像加熱装置に、本発明は適用可能である。
【0080】
<第2の実施例>
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例においては、像加熱装置13を駆動するモータが像加熱装置以外の装置も駆動する点で第1の実施例と異なる。以下の説明においては、第2の実施例の特徴的な部分のみ説明を行い、第1の実施例と同様の画像形成装置1や像加熱装置13の基本構成についての説明は省略する。
【0081】
図16は、第2の実施例における、画像形成装置1の概略断面図である。第1の実施例においては定着モータ20とメインモータ50で駆動されていたすべての部材は、第2の実施例ではモータ70のみで駆動される。
【0082】
第2の実施例においては、モータ70がすべての部材の駆動を担うため、モータ70のトルクは、像加熱装置13の加圧ローラ15の駆動トルク以外のトルクも加算された状態となる。具体的には、感光体ドラム19のトルク、ピックアップローラ22、給紙ローラ23、レジローラ対24等の記録材搬送系のトルクが含まれる。このような場合、モータ70のトルクと加圧ローラ15の駆動トルクは一致しないため、加圧ローラ15の駆動トルクの絶対値を算出することはできない。
【0083】
(1)モータ70のトルクを用いた非通紙部昇温検知方法
本実施例においても、第1の実施例と同様に、像加熱装置13が所定温度で動作している期間のモータ70の駆動トルクに基づいて非通紙部昇温を検知する。図17は、182mm×257mmの用紙(B5用紙)を20枚通紙した場合(実線)と、105mm×257mmの用紙を通紙20枚通紙した場合(破線)の19枚目と20枚目前後におけるモータ70の駆動トルクの推移である。図17のグラフは、縦軸がモータ70のトルク、横軸が時間である。
【0084】
図17においては、19枚目と20枚目の用紙の印刷動作中の期間がそれぞれ3つの期間に分けて示される。期間Tp19は、給紙ローラ23が19枚目の用紙の搬送を開始した際に立つピークである。期間Tt19は、用紙が搬送路30を通過している期間である。本実施例の画像形成装置は給紙ローラ23で給紙を行った後、搬送路30によって用紙の搬送方向を急激に180度変えている。そのため、用紙と搬送路30との摺擦による負荷が生じ、用紙が搬送路30の部分を通過している期間はモータ70で検出されるトルクも高くなる傾向がある。期間Tf19は、用紙が搬送路30を抜け、レジローラ対24の下流に搬送され、転写、定着動作が行われている期間である。この期間は用紙の搬送方向が急激に変わらないため、用紙の搬送負荷は小さく、モータ70のトルクは感光体ドラム19や像加熱装置13など、装置内の部材を回転させるために必要なトルクが主となる。その後、次の20枚目の給紙タイミングである期間Tp20において、再度駆動トルクが増大する。そして、期間Tt20では期間Tt19と同様に、期間Tf20では期間Tf20と同様にモータ70のトルクは推移する。
【0085】
すなわち、期間Tf19においては、画像形成装置1の各部材の駆動トルクが合算した値が、おおよそモータ70のトルクの値となる。そして、期間Tp19においては、期間Tf19におけるトルクに、用紙給紙による負荷が加算された値がモータ70のトルクの値となる。また、期間Tt19においては、期間Tf19におけるトルクに、用紙と搬送路30の摺接による負荷が加算された値がモータ70のトルクの値となる。これらの要因により、モータ70のトルクが図17に示すような波形として表れる。
【0086】
図17に示したように、本実施例においても、182mm×257mmの用紙を通紙した場合のトルクよりも105mm×257mmの用紙を通紙した場合のトルクの方が小さくなっている。これは、図8でも示したように、105mm幅の用紙を通紙した場合、182mm幅の用紙を通紙した場合と比較して、非通紙部が高温となり、像加熱装置13を駆動させるために必要なトルクが低下することで、装置全体としてのトルクが低下するためである。
【0087】
非通紙部昇温の発生により、画像形成装置全体としてのトルクは低下するため、図17に示すような印刷動作中のいずれの期間におけるモータのトルクに基づいて非通紙部昇温の検知は可能である。しかし、検知精度を考慮すると用紙が搬送路30を抜けた後の期間Tfにおけるモータ70のトルクに基づいて、非通紙部昇温を検知することがより好ましい。画像形成装置の生産性が高い場合、x枚目の用紙とx+1枚目の用紙の給紙間隔が短くなり、x枚目の定着動作を行っている最中にx+1枚目の給紙が行われるような状況が
発生する。その場合、画像形成装置を1つのモータで駆動する画像形成装置においては、第1の実施例のように、用紙が搬送されていない期間のトルクを用いた比較が不可能となる。そこで、期間Tfのように、給紙や搬送における負荷が小さく、装置全体のトルクの中で像加熱装置の駆動に用いられるトルクの割合が相対的に大きくなる期間の値を使用することで、検知精度向上が可能となる。
【0088】
本実施例においては、1枚目の用紙が搬送路30を抜けた直後のモータ70のトルクTf1と、x枚目の用紙が搬送路30を抜けた直後のモータ70のトルクTfxを非通紙部昇温検知に利用する。具体的には、トルクTf1とトルクTfxの差であるトルク差ΔTf(ΔTf=Tf1-Tfx)が予め定められた閾値以上だった場合に、制御部40が誤ったサイズの用紙で印刷されており非通紙部昇温が発生していると判定することとした。そして、非通紙部昇温が発生していると判断されると、昇温抑制動作として制御部40が印刷間隔を広げて生産性を低下させる構成とした。
【0089】
第1の実施例と同様に、トルクTf1及びトルクTfxは、精度向上のために所定期間の平均値を使用することが好ましい。本実施例では、1枚目の用紙が搬送路30を抜けた直後300ms間の平均値をTf1、x枚目の用紙が搬送路30を抜けた直後300ms間の平均値をTfxとして使用する。
【0090】
(2)第2の実施例における画像形成装置1の印刷フロー
本実施例の画像形成装置1における印刷動作について、図18を参照して説明する。図18は、画像形成装置1の印刷動作フローである。以下、複数枚の用紙を連続して印刷を行う場合を例に説明する。
【0091】
印刷動作が開始されると(S200)、まずモータ70により画像形成装置1の各部材の駆動が開始される。そして、ステップS201で、ユーザが設定した印刷条件に基づいて、制御部40が未定着トナーを定着するために必要な所定の温度でヒータ60を温調する。そして、ヒータ60の温度が所定温度に到達すると、ステップS202で1枚目の用紙が給紙カセット21から給紙搬送される。次に、ステップS203で、制御部40が、1枚目の用紙が搬送路30を抜けた直後300ms間のモータ70のトルクの平均値であるトルクTf1を取得し、記録する。そして、ステップS204で、1枚目の用紙の定着動作が行われる。
【0092】
次に、ステップS205で、x枚目(xは2以上の整数)の用紙の給紙動作が行われる。そして、ステップS206において、制御部40は、x枚目の用紙が搬送路30を抜けた直後300ms間のトルクの平均値であるトルクTfxを取得し、トルクTf1との差分からトルク差ΔTfを算出する。
【0093】
トルク差ΔTfの算出後、ステップS207においてx枚目の用紙の定着動作が行われる。そして、その定着動作と並行してステップ208で印刷終了枚数に到達しているかどうかの判定が行われる。印刷終了枚数に到達していた場合(S208でYES)、ステップS212へ進み、印刷動作が終了する。
【0094】
一方、印刷終了枚数に到達してない場合(S208でNO)、ステップS209で、制御部40はトルク差ΔTfが閾値以上であるかどうかの判定を行う。トルク差ΔTfが閾値未満である場合(S209でNO)、非通紙部昇温は発生していないと判定され、ステップS205へ進み、同様の印刷条件で次の用紙の給紙動作が開始され、印刷動作が継続される。一方、トルク差ΔTfが閾値以上である場合(S209でYES)、非通紙部昇温が発生していると判定され、ステップS210へ進み、昇温抑制動作として印刷間隔が広がるように印刷条件が変更される。そして、ステップS211へ進み、非通紙部昇温を
緩和するために印刷間隔を広げた状態で、印刷終了枚数まで印刷動作が継続される。その後、印刷終了枚数に到達したらステップS212で印刷動作を終了する。
【0095】
以上、説明したように、本実施例のようにモータ70が像加熱装置13以外の装置の部材を駆動する構成であっても、本発明によればモータ70のトルクに基づいて、非通紙部昇温を検知できる。すなわち、加圧ローラ15の駆動トルクそのものが算出できない場合であっても、加圧ローラ15の駆動トルクと相関性のある物理量をトルク情報として取得できれば、そのトルク情報に基づいて非通紙部昇温を検知し、抑制できる。特に、第1の記録媒体の印刷動作中の期間におけるモータのトルクと、第1の記録媒体より後に給紙・定着動作が行われる第2の記録媒体の印刷動作中の期間におけるモータのトルクの2つのトルク情報を用いることで、非通紙部昇温を高精度に検知できる。
【0096】
本実施形態の開示は、以下の構成(及び方法)を含む。
(構成1)
筒状のフィルムと、
前記フィルムの外周面に接触するローラと、
前記フィルムの内部空間に設けられ、前記フィルムを介して前記ローラとニップ部を形成するニップ形成部材と、
を備え、前記フィルムと前記ニップ形成部材の間に潤滑剤が塗布され、前記ニップ部で記録媒体を挟持搬送する像加熱装置において、
前記ローラのトルク情報として、前記ローラのトルク、又は前記ローラの前記トルクと相関のある物理量を取得するトルク検知部と、
前記トルク情報に基づいて、前記ニップ部の昇温を抑制する昇温抑制動作を行う制御部と、
を更に備えることを特徴とする像加熱装置。
(構成2)
前記トルク検知部は、前記トルク情報として、前記ローラの第1のトルク情報と、前記第1のトルク情報より後に取得される前記ローラの第2のトルク情報を取得し、
前記制御部は、前記第1のトルク情報と前記第2のトルク情報に基づいて、前記昇温抑制動作を行うことを特徴とする構成1に記載の像加熱装置。
(構成3)
前記制御部は、前記第1のトルク情報と前記第2のトルク情報の差分量が所定の値以上となった場合に、前記昇温抑制動作を行うことを特徴とする構成2に記載の像加熱装置。
(構成4)
前記制御部は、前記第1のトルク情報の前記第2のトルク情報に対する割合が所定の値以上となった場合に、前記昇温抑制動作を行うことを特徴とする構成2に記載の像加熱装置。
(構成5)
前記第1のトルク情報、及び前記第2のトルク情報は、像加熱装置が一定の温度で稼働している期間の前記トルク情報であることを特徴とする構成2~4のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成6)
前記第1のトルク情報は、第1の記録媒体が前記ニップ部に突入する前の前記トルク情報であり、
前記第2のトルク情報は、前記第1の記録媒体より後に前記ニップ部に突入する第2の記録媒体が、前記ニップ部を通過した後の前記トルク情報であることを特徴とする構成2~4のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成7)
画像形成装置に備えられる像加熱装置であって、
前記第1のトルク情報は、第1の記録媒体の印刷動作中の前記トルク情報であり、
前記第2のトルク情報は、前記第1の記録媒体より後に前記ニップ部に突入する第2の記録媒体の印刷動作中の前記トルク情報であることを特徴とする構成2~4のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成8)
前記制御部は、前記昇温抑制動作として、記録媒体の搬送停止、記録媒体の搬送間隔の拡張、ユーザへの報知、の少なくともいずれか一つの動作を行うことを特徴とする構成1~7のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成9)
コイルに流れる電流により駆動されるモータであって、前記ローラを回転駆動させるモータを更に備え、
前記トルク検知部は、前記ローラの前記トルクと相関のある前記物理量として、前記モータのトルクを取得することを特徴とする構成1~8のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成10)
コイルに流れる電流により駆動されるモータであって、前記ローラを回転駆動させるモータを更に備え、
前記トルク検知部は、前記ローラの前記トルクと相関のある前記物理量として、前記コイルに流れる電流の大きさを取得することを特徴とする構成1~8のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成11)
前記ニップ形成部材は、前記フィルムを加熱するヒータであることを特徴とする構成1~10のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成12)
前記フィルムを加熱するハロゲンヒータを更に備えることを特徴とする構成1~10のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成13)
前記ニップ形成部材は、摺動板であることを特徴とする構成12に記載の像加熱装置。
(構成14)
磁性コアや励磁コイルにより構成され、前記フィルムを加熱する加熱部材を更に備えることを特徴とする構成1~10のいずれか一の構成に記載の像加熱装置。
(構成15)
前記ニップ形成部材は、前記フィルムの回転を案内するガイド部材であることを特徴とする構成14に記載の像加熱装置。
(構成16)
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する構成1~13のいずれか一の構成に記載の像加熱装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0097】
13…像加熱装置、14…定着フィルム(フィルム)、15…加圧ローラ(ローラ)、40…制御部、F…定着ニップ(ニップ部)、G…グリース(潤滑剤)、P…記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16
図17
図18