(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】記録ヘッド、ヘッドカートリッジ及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/15 20060101AFI20240909BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240909BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240909BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
B41J2/15
B41J2/14 611
B41J2/14 605
B41J2/175 119
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2022129594
(22)【出願日】2022-08-16
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 岳穂
(72)【発明者】
【氏名】戸田 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】來山 泰明
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073000(JP,A)
【文献】特開2019-142052(JP,A)
【文献】特開2017-124607(JP,A)
【文献】特開2018-012305(JP,A)
【文献】特開2016-215570(JP,A)
【文献】特開2016-179575(JP,A)
【文献】特開2012-148571(JP,A)
【文献】特開2010-199330(JP,A)
【文献】特開2005-193579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出しながら記録媒体に対し第1の方向に移動する記録走査と、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記記録媒体を搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録するための記録装置に搭載可能な記録ヘッドであって、
インクを吐出するために前記記録装置本体から送られた第1の吐出信号を受け取ることが可能に前記記録ヘッドの背面部に配置された、第1の電気基板と、
前記記録装置に搭載された状態で、前記第1の吐出信号に従ってインクを吐出可能な複数の吐出素子が前記第2の方向に配列して成る第1の吐出素子列と、前記第1の吐出信号を受信するための複数の端子が前記第2の方向に配列して成る第1の端子列とを有する、第1の記録素子基板と、
前記第1の電気基板、及び、前記第1の記録素子基板を電気的に接続する第1の接続基板と、
インクを吐出するために前記記録装置本体から送られた前記第1の吐出信号とは異なる第2の吐出信号を受け取ることが可能に前記背面部に配置された、前記第1の電気基板とは異なる第2の電気基板と、
前記記録装置に搭載された状態で、前記第2の吐出信号に従ってインクを吐出可能な複数の吐出素子が前記第2の方向に配列して成る第2の吐出素子列と、前記第2の吐出信号を受信するための複数の第2の端子が前記第2の方向に配列して成る第2の端子列とを有する、第2の記録素子基板と、
前記第2の電気基板、及び、前記第2の記録素子基板を電気的に接続する第2の接続基板と、
を有し、
前記記録ヘッドの底面部において、前記第1の記録素子基板、及び、前記第2の記録素子基板は、離して配置され、
前記第1の端子列、前記第1の吐出素子列、前記第2の吐出素子列、及び、前記第2の端子列は、前記第1の方向に沿って配置され、前記第1の端子列、及び、前記第2の端子列は、前記第1の吐出素子列、及び、前記第2の吐出素子列よりも前記記録ヘッドの底面部の外側に位置する、
ことを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
前記第1の記録素子基板及び前記第2の記録素子基板は、同一の構成を有する、
請求項1に記載の記録ヘッド。
【請求項3】
前記記録ヘッドの前記背面部において、前記第1の電気基板、及び、前記第2の電気基板は、前記第1の方向に沿って配置される、
請求項1又は2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記第1の電気基板、及び、前記第2の電気基板は、同一の構成を有する、
請求項1又は2に記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記第1の記録素子基板及び前記第2の記録素子基板を支持する支持部を更に有し、
前記第1の記録素子基板には、前記吐出素子に液体を供給するための第1の供給開口と、前記吐出素子で吐出されなかった液体を回収するための第1の回収開口と、が形成されており、
前記第2の記録素子基板には、前記吐出素子に液体を供給するための第2の供給開口と、前記吐出素子で吐出されなかった液体を回収する際に液体が流れる第2の回収開口と、が形成されており、
前記支持部には、前記支持部が前記第1の記録素子基板及び前記第2の記録素子基板と接合した状態で、前記第1の供給開口と連通する第1の供給流路と、前記第1の回収開口と連通する第1の回収流路と、前記第2の供給開口と連通する第2の供給流路と、前記第2の回収開口と連通する第2の回収流路と、が形成されている、
請求項1又は2に記載の記録ヘッド。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の記録ヘッドと、
前記第1の記録素子基板に供給するためのインクが収容された第1のインクタンクと、
前記第2の記録素子基板に供給するためのインクが収容された第2のインクタンクと、
を備える、
ことを特徴とするヘッドカートリッジ。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを前記第1の方向に移動させる移動手段と、
前記第2の方向に前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
を備える、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、記録ヘッド、ヘッドカートリッジ及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録装置の記録ヘッドから多種多様な液体を吐出することが求められている。一般的なシリアル型の記録装置における記録ヘッドでは、複数の記録素子基板を配し、各記録素子基板に形成されている複数の吐出口列における吐出口列毎に異なる液体を吐出することで、種々の液体を吐出することを実現している場合がある。
【0003】
特許文献1には、吐出口列と、この吐出口列に供給する電力を受容するための電気接続部とを有する記録素子基板を、吐出口列と交差する方向に複数配列させた記録ヘッドが開示されている(
図12及び
図13参照)。特許文献1の構成において、記録ヘッド500の電気接続部542は、吐出口列5411~5413の先端及び後端に配されている。そして、複数の記録素子基板540(540a~540g)は、吐出口列5411~5413が延在している方向(つまり、Y方向)と交差する方向(つまり、X方向)に並列配置されている。
【0004】
また、近年では、
図14に示す様に、記録ヘッドを小型化するために、1つの記録素子基板640に複数の吐出口列(6411~6414)を配列させ、これらに電力を供給するための複数の端子6421を、吐出口列に平行に配列させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インク色数を増加させるために、
図14の様な複数の記録素子基板を1つのシリアル型の記録ヘッドに並列配置しようとすると、電気接続部642に接続される配線が、複数の吐出口列の間に存在することになり、記録ヘッドの大型化を招いてしまう。
【0007】
そこで、本開示は、シリアル型の記録装置において、複数の記録素子基板を並列配置した小型の記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の記録ヘッドは、インクを吐出しながら記録媒体に対し第1の方向に移動する記録走査と、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記記録媒体を搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録するための記録装置に搭載可能な記録ヘッドであって、インクを吐出するために前記記録装置本体から送られた第1の吐出信号を受け取ることが可能に前記記録ヘッドの背面部に配置された、第1の電気基板と、前記記録装置に搭載された状態で、前記第1の吐出信号に従ってインクを吐出可能な複数の吐出素子が前記第2の方向に配列して成る第1の吐出素子列と、前記第1の吐出信号を受信するための複数の端子が前記第2の方向に配列して成る第1の端子列とを有する、第1の記録素子基板と、前記第1の電気基板、及び、前記第1の記録素子基板を電気的に接続する第1の接続基板と、インクを吐出するために前記記録装置本体から送られた前記第1の吐出信号とは異なる第2の吐出信号を受け取ることが可能に前記背面部に配置された、前記第1の電気基板とは異なる第2の電気基板と、前記記録装置に搭載された状態で、前記第2の吐出信号に従ってインクを吐出可能な複数の吐出素子が前記第2の方向に配列して成る第2の吐出素子列と、前記第2の吐出信号を受信するための複数の第2の端子が前記第2の方向に配列して成る第2の端子列とを有する、第2の記録素子基板と、前記第2の電気基板、及び、前記第2の記録素子基板を電気的に接続する第2の接続基板と、を有し、前記記録ヘッドの底面部において、前記第1の記録素子基板、及び、前記第2の記録素子基板は、離して配置され、前記第1の端子列、前記第1の吐出素子列、前記第2の吐出素子列、及び、前記第2の端子列は、前記第1の方向に沿って配置され、前記第1の端子列、及び、前記第2の端子列は、前記第1の吐出素子列、及び、前記第2の吐出素子列よりも前記記録ヘッドの底面部の外側に位置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、シリアル型の記録装置において、複数の記録素子基板を並列配置した小型の記録ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態における記録装置に適用可能な記録ヘッドの一例を示す図である。
【
図3】一実施形態における記録ヘッドが備える記録素子基板ユニットの説明図である。
【
図4】一実施形態における第1の記録素子基板と第2の記録素子基板とが、支持部材に配列された状態を示す図である。
【
図5】一実施形態における記録ヘッドを底面側から見た斜視図である。
【
図6】一実施形態における記録素子基板ユニットの説明図である。
【
図7】一実施形態における記録ヘッドを底面側から見た斜視図である。
【
図8】一実施形態における記録素子基板ユニットの説明図である。
【
図10】一実施形態における記録素子基板の支持部材との接着面の一例を示す図である。
【
図11】一実施形態における支持部材の記録素子基板との接着面の一例を示す図である。
【
図12】一比較例における記録ヘッドの模式的な斜視図である
【
図13】一比較例における記録素子基板ユニットの模式図である
【
図14】一比較例におけるライン型の記録ヘッドに使用される記録素子基板の模式的な底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
<座標軸>
まず、各図面で用いる座標軸について説明する。以下の説明では、図中の座標軸について、
図2(b)に示す複数の記録素子基板が並列配置している方向をX方向と呼ぶ。X方向は、記録ヘッドを記録装置に搭載した状態において、記録ヘッドの走査方向に相当する。そして、複数の記録素子基板が並列配置しているに対して平面上で直交する方向をY方向と呼ぶ。尚、記録ヘッドを記録装置に搭載した状態において、記録媒体(不図示)が搬送される方向が+Y方向であり、その反対方向が-Y方向である。また、+Y方向を向いて左が+X方向であり、その反対方向が-X方向である。そして、反重力方向を+Z方向と呼び、重力方向を-Z方向と呼ぶ。
【0012】
また、第1の記録ヘッド100(
図2(a)参照)における±X方向側を向く面を記録ヘッドの側面と呼ぶ。記録ヘッドにおける+Y方向を向く面を記録ヘッドの正面と呼ぶ。反対に、記録ヘッドにおける-Y方向を向く面を記録ヘッドの背面と呼ぶ。他方、記録ヘッドにおける+Z方向を向く面を記録ヘッドの上面と呼ぶ。反対に、記録ヘッドにおける-Z方向を向く面を記録ヘッドの底面と呼ぶ。以上が、座標軸についての説明である。
【0013】
<記録装置10>
図1は、第1の実施形態に係る記録装置10の概略構成を示す斜視図である。
【0014】
図1に示す様に、記録装置10は、自動給送部11、排出部12、搬送部13、キャリッジ軸14、キャリッジ15、及び、回復部18等を含んで構成されている。
【0015】
自動給送部11は、紙等のシート状の記録媒体を装置本体内へと自動的に給送する。搬送部13は、自動給送部11から1枚ずつ送出される記録媒体を所定の記録位置へと導くと共に、記録媒体を記録位置から排出部12へと間欠的に搬送する。回復部18は、キャリッジ15に搭載され、記録位置に搬送された記録媒体に液体を吐出して記録を行う第1の記録ヘッド100(
図2(a)参照)に対し、液体の吐出性能を回復させるための回復処理を行う。第1の記録ヘッド100は、記録走査方向に移動しつつ記録媒体にインクを吐出して記録を行う。その後、搬送部13が記録媒体を所定量搬送し、再び第1の記録ヘッド100が記録走査を行いつつ、記録媒体への記録を行う。この様に、記録装置10は、インクを吐出しながら記録媒体に対し第1の方向に移動する第1の記録ヘッド100の記録走査と、第1の方向と交差する第2の方向に記録媒体を搬送する搬送動作とを繰り返すことにより、記録媒体に画像を記録する。つまり、本実施形態の記録装置10は、所謂、シリアル型の記録装置である。
【0016】
<第1の記録ヘッド100>
図2は、本実施形態における記録装置に適用可能な第1の記録ヘッド100の一例を示す図である。
図2(a)は、本実施形態におけるヘッドカートリッジ16を上面側から見た斜視図である。
図2(b)は、本実施形態における記録ヘッドを底面側から見た斜視図である。
【0017】
図2(a)に示す様に、ヘッドカートリッジ16は、インクを貯留するインクタンク110と、インクタンク110より供給されたインクを吐出する第1の記録ヘッド100と、を含んで構成されている。
【0018】
第1の記録ヘッド100は、記録媒体に画像を記録するための記録装置10(
図1参照)に搭載可能である。第1の記録ヘッド100には、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、及びイエローの各色のインクタンク110が、着脱自在に搭載される。
【0019】
各インクタンク110には、第1の記録素子基板140a(
図2(b)参照)と、第2の記録素子基板140b(
図2(b)参照)と、に供給するための各色のインクが収容されている。第1の記録素子基板140a及び第2の記録素子基板140bには、インクを吐出可能な吐出素子が配されている。
【0020】
第1の記録ヘッド100は、
図1に示すキャリッジ15に対し、着脱可能に搭載される。第1の記録ヘッド100は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録ヘッドあって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えている。即ち、第1の記録ヘッド100は、電気熱変換体が発生する熱エネルギーによってインクを沸騰させ、その発泡エネルギーを利用して、吐出口から記録媒体に向かって液体を吐出する。尚、第1の記録ヘッド100は、液体の吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換体の他、ピエゾ素子等を用いるものであってもよい。
【0021】
図2(b)に示す様に、第1の記録ヘッド100は、支持部材130と、第1の記録素子基板ユニット101と、を含んで構成されている。第1の記録素子基板ユニット101は、第1の記録素子基板140a及び第2の記録素子基板140bと電気的に接続されている接続基板150を含んで構成されている。更に、第1の記録素子基板ユニット101は、接続基板150と電気的に接続され、記録装置本体から送られた電気信号を受け取る電気基板160を含んで構成されている。以下、第1の記録素子基板140aと、第2の記録素子基板140bと、を特に区別する必要がない場合には、記録素子基板140と表記する。
【0022】
記録素子基板140を支持する支持部である支持部材130は、第1の記録ヘッド100の底面部に接合されている。第1の記録ヘッド100の底面部と支持部材130とを接合する手法方法の一例として、接着剤による接着が挙げられる。その他の例として、第1の記録ヘッド100の底面部と支持部材130との間にシール部材を挟み込み、ビス締めして固定する例が挙げられる。本実施形態では、支持部材130には、接続基板150と、第1の記録素子基板140aと、第2の記録素子基板140bと、が接合されている。支持部材130に記録素子基板140を接合する手段の一例として、接着剤による接着が挙げられる。
【0023】
支持部材130には、インクタンク110から供給された液体を記録素子基板140に供給する流路が形成されている。つまり、支持部材130と記録素子基板140とが接合した状態で、各インクタンク110から記録素子基板140まで連通する流路が形成される。記録素子基板140に供給された液体は、後述する電気基板160から受信した吐出信号に従って、記録素子基板140に形成されている吐出口から吐出される。
【0024】
第1の記録ヘッド100の背面部には、第1の記録ヘッド100をキャリッジ15に搭載したときに、キャリッジ15のコンタクトパッド(不図示)と電気的に接続可能なコンタクト面124が形成されている。コンタクト面124には、記録装置10の本体から送られた電気信号を受け取る電気基板160が配されている。電気基板160をコンタクト面124に配する手法の一例として、加締め、又は、接着剤による固定、もしくは両面テープによる固定等が挙げられる。電気基板160と接続基板150とは、電気的に接続されている。電気基板160と接続基板150との接続は、ワイヤボンディングによる接続でもよいし、もしくはACF(異方性導電膜)圧着でもよい。更に、接続基板150と記録素子基板140とが、電気的に接続されている。接続基板150と記録素子基板140との接続は、ワイヤボンディングによる接続でもよいし、フライングリードボンディングによる接続でもよい。これにより、記録装置本体から電気基板160に電気信号が送られると、接続基板150を介して、記録素子基板140に当該電気信号が送られる。
【0025】
<第1の記録素子基板ユニット101>
図3は、本実施形態における第1の記録素子基板ユニット101の説明図である。尚、ここでは、説明の便宜上、第1の記録ヘッド100の底面部と背面部とを同一平面上に表している。図中の矢印30は、液体吐出時における第1の記録ヘッド100(
図2(a)参照)の移動方向(つまり、X方向)を示す。
【0026】
図3に示す様に、電気基板160は、キャリッジ15のコンタクトパッドと電気的に接続され、記録装置本体から送られた電気信号を受け取る本体接続部162と、接続基板150と電気的に接続するための基板接続部161と、を含んで構成されている。
【0027】
電気基板160は、記録装置10(
図1参照)に搭載された状態において、記録装置本体から送られた吐出信号を接続基板150に送信することが可能である。基板接続部161には、複数の端子列が、X方向に配されている。ここでは、基板接続部161に配されている端子の例として、端子PP1~PP40が描かれている。電気基板160と接続基板150とは、電気基板160と接続基板150とに跨る電気接続領域155にて、電気的に接続されている。電気接続領域155では、端子PP1~PP40と、接続基板150と、が電気的に接続されている。
【0028】
接続基板150は、第1の記録素子基板140a及び第2の記録素子基板140bと電気的に接続されている。本実施形態では、接続基板150は、第1の記録素子基板140aにおける第1の端子列1421aと、第2の記録素子基板140bにおける第2の端子列1421bと、に対し、第1の方向において外側から対称的に接続する1つの接続基板である。
【0029】
第1の記録素子基板140aにおける第1の電気接続部142aには、複数の端子がY方向に配列している。第1の電気接続部142aでは、端子P1~端子P20が、+Y方向から-Y方向に向かって配されている。接続基板150と、第1の電気接続部142aに配されている端子P1~端子P20とは、電気的に接続されている。
【0030】
一方、第2の記録素子基板140bにおける第2の記録素子基板140bには、接続基板150と電気的に接続する第2の電気接続部142bが配されている。
第2の電気接続部142bでは、複数の端子がY方向に配列している。第2の電気接続部142bでは、端子P1~端子P20が、-Y方向から+Y方向に向かって配されている。接続基板150と、第2の電気接続部142bに配されている端子P1~端子P20とは、電気的に接続されている。
【0031】
この様な構成によれば、記録装置本体から電気基板160に電気信号が送られると、電気基板160から、接続基板150を介して、記録素子基板140に当該電気信号が送ることができる。
【0032】
<記録素子基板140>
図4は、本実施形態における第1の記録素子基板140aと、第2の記録素子基板140bとが、支持部材130に並列配置された状態を示す図である。つまり、ここでは、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとが、記録装置10(
図1参照)に搭載された状態が示されている。
【0033】
また、第1の液体吐出部141aは、第1の電気接続部142aと、エネルギー発生素子と、吐出素子列とを、3色分含んでいる。第1の電気接続部142aには、複数の端子が含まれる。エネルギー発生素子は、第1の電気接続部142aに含まれている端子のそれぞれと電気的に接続されている。吐出素子列(以下、「吐出口列」ともいう)は、このエネルギー発生素子に対応する位置に設けられた吐出口とで構成される吐出素子が、図中Y方向に複数配列することで形成されている。
【0034】
一方、第2の液体吐出部141bは、第2の電気接続部142bと、エネルギー発生素子と、吐出素子列とを、3色分含んでいる。第2の電気接続部142bには、複数の端子が含まれる。エネルギー発生素子は、第2の電気接続部142bに含まれている端子のそれぞれと電気的に接続されている。第2の電気接続部142bにおける吐出素子列(つまり、吐出口列)も、このエネルギー発生素子に対応する位置に設けられた吐出口とで構成される吐出素子が、図中Y方向に複数配列することで形成されている。
【0035】
第1の液体吐出部141aにおける複数の吐出口列の一例として、第1の吐出口列1411a~第6の吐出口列1411fが示されている。第1の吐出口列1411aと第2の吐出口列1411b、第3の吐出口列1411cと第4の吐出口列1411d、第5の吐出口列1411eと第6の吐出口列1411fは、それぞれ同じ種類のインクを吐出する。そして、第1の記録素子基板140aの長辺の近傍に配されている第1の電気接続部142aでは、端子P1~P20が+Y方向から-Y方向に向かって順に配列しており、第1の端子列1421aを形成している。従って、第1の吐出口列1411a~第6の吐出口列1411fと、第1の端子列1421aと、は互いに、Y方向に延在し、平行になる様に配されているといえる。
【0036】
一方、第2の液体吐出部141bでは、液体を吐出するための複数の吐出口が、第2の記録素子基板140bの長手方向(つまり、図中のY方向)に配列することで複数の吐出口列を形成している。第2の液体吐出部141bにおける複数の吐出口列の一例として、第7の吐出口列1412a~第12の吐出口列1412fが示されている。第7の吐出口列1412aと第8の吐出口列1412b、第9の吐出口列1412cと第10の吐出口列1412d、第11の吐出口列1412eと第12の吐出口列1412fは、それぞれ同じ種類のインクを吐出する。そして、第2の記録素子基板140bの長辺の近傍に配されている第2の電気接続部142bでは、端子P1~P20が-Y方向から+Y方向に向かって順に配列しており、第2の端子列1421bを形成している。従って、第7の吐出口列1412a~第12の吐出口列1412fと、第2の端子列1421bと、は互いに、Y方向に延在し、平行になる様に配されているといえる。尚、吐出口列の本数及び端子列の本数及びインク色の種類は、必要に応じて決まるため、本発明において限定されない。
【0037】
第1の記録素子基板140aは、記録装置10に搭載された状態で、吐出信号に従ってインクを吐出可能な複数の吐出素子が第2の方向(例えば、Y方向)に配列して成る吐出素子列が形成されている。更に、第1の記録素子基板140aには、吐出信号を受信するための複数の端子が第2の方向に配列して成る第1の端子列1421aが第1の方向(例えば、X方向)に形成されている。第1の記録素子基板140aの吐出素子列と第1の端子列1421aとは、第1の方向(X方向)に並列配置されている。
【0038】
第2の記録素子基板140bは、記録装置10に搭載された状態で、吐出信号に従ってインクを吐出可能な複数の吐出素子が第2の方向(例えば、Y方向)に配列して成る吐出素子列が形成されている。更に、第2の記録素子基板140bには、吐出信号を受信するための複数の端子が第2の方向に配列して成る第2の端子列1421bが第1の方向(例えば、X方向)に形成されている。第2の記録素子基板140bの吐出素子列と第2の端子列1421bとは、第1の方向(X方向)に並列配置されている。
【0039】
そして、接続基板150は、第1の記録素子基板140aの第1の端子列1421aと、第2の記録素子基板140bの第2の端子列1421bと、に電気的に接続されている。
【0040】
第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとは、第1の方向において、それぞれの端子列(第1の端子列1421a及び第2の端子列1421b)が外側に位置し、且つ、それぞれの吐出素子列が内側に位置する様に、配されている。具体的には、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとには、複数の吐出素子列が第1の方向に形成されている。そして、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとにおけるそれぞれの端子列は、それぞれの複数の吐出口列から距離を離した第1の方向の端部に配されている。
【0041】
第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとは、同一の構成を有しする。第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとにおける、それぞれの端子列と、吐出素子列と、が第1の方向において対称的な配置となる様に配されている。例えば、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとは、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとの中間地点に、第2の方向に、引かれた仮想中心線400を中心に線対称となる様に配されている。そして、第1の端子列1421a及び第2の端子列1421bも仮想中心線400を中心に線対称となる様に配されている。同様に、第1の吐出口列1411a~第6の吐出口列1411fと、第7の吐出口列1412a~第12の吐出口列1412fと、が仮想中心線400を中心に線対称となる様に配されている。
【0042】
換言すると、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとは、平面視した際に、互いに対向する長辺の角部と、角部と、を交差させる様に引いた仮想線が交差する交点を中心として点対称となる様に配されている、ともいえる。
【0043】
上述した様に、第1の記録素子基板140a及び第2の記録素子基板140bは、同一の構成を有している。即ち、第1の記録素子基板140a及び第2の記録素子基板140bは、同じ製造工程で製造された記録素子基板140を用いることができる。
【0044】
また、第1の記録素子基板140aでは、第1の液体吐出部141aにおけるX方向の仮想中心線502が、第1の記録素子基板140aにおけるX方向の仮想中心線501よりも第1の電気接続部142aからX方向に離れる位置に位置している。
【0045】
一方、第2の記録素子基板140bでは、第2の液体吐出部141bにおけるX方向の仮想中心線504が、第2の記録素子基板140bにおけるX方向の仮想中心線503よりも第2の電気接続部142bからX方向に離れる位置に位置している。
【0046】
そして、第1の記録素子基板ユニット101では、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとが、第1の電気接続部142aと、第2の電気接続部142bと、を外側に位置した姿勢で互いに左右対称となる様に配される。このため、第1の記録素子基板140aにおける第1の端子列1421aと第2の記録素子基板140bにおける第2の端子列1421bも、X方向において互いに離れる様に配される。つまり、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとは、互いの電気接続部142がX方向に離れ、且つ、互い吐出口列がX方向に近づく様に配されているといえる。
【0047】
この様な構成によれば、第1の電気接続部142aと第2の電気接続部142bとを、互いにX方向において離れる様に配した場合に、互いの液体吐出部をX方向により近づけることができる。
【0048】
ここで、仮に、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとが、同じ向きでX方向に並列配置されているとする。そうすると、第2の記録素子基板140bに接続される配線が、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとの間に存在することとなる。このため、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとにおける互いの電気干渉を避けるには、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとを、ある程度、離して並列配置せざるを得ない。従って、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとが、X方向に、ある程度離されて、並列配置されると、上述した第1の記録ヘッド100もX方向に大型化されることとなる。
【0049】
<まとめ>
上述した様に、本実施形態では、隣接する2つの記録素子基板を、互いの電気接続部がそれぞれ外側に位置した姿勢で対称となる様に並列配置している。この様な構成によれば、記録ヘッドがX方向に大型化してしまうことを抑制することができる。よって、本開示の技術によれば、シリアル型の記録装置において、複数の記録素子基板を並列配置した小型化の記録ヘッドを提供することができる。
【0050】
[第2の実施形態]
以下、図面を参照して本開示の技術における第2の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態と同様の又は対応する構成については、同一の符号及び名称を用いて、適宜に説明を省略し、異なる点を中心に説明する。本実施形態では、2つの接続基板が配されている点と、2つの電気基板が配されている点と、が第1の実施形態と異なる。また、本実施形態では、従来より生産性が向上した記録ヘッドを提供することを目的とする。
【0051】
<第2の記録ヘッド200>
図5は、第2の実施形態における第2の記録ヘッド200を底面側から見た斜視図である。
【0052】
図5に示す様に、本実施形態における第2の記録ヘッド200は、第2の記録素子基板ユニット201を含んで構成されている。第2の記録素子基板ユニット201には、第1の接続基板250aと、第2の接続基板250bと、第1の電気基板260aと、第2の電気基板260bと、が含まれている。以下、第1の接続基板250aと第2の接続基板250bとを、特に区別する必要がない場合には、接続基板250と表記する。第1の電気基板260aと第2の電気基板260bと、特に区別する必要がない場合には、電気基板260と表記する。
【0053】
図示する様に、本実施形態では、第1の電気基板260a及び第2の電気基板260bが、第2の記録ヘッド200の背面側に配されている。これに伴い、記録素子基板140と電気的に接続している接続基板250は、第2の記録ヘッド200の底面側から背面側にかけて折り曲げられた状態で、電気基板260と電気的に接続している。
【0054】
図6は、本実施形態における第2の記録素子基板ユニット201の説明図である。
【0055】
図6に示す様に、本実施形態の接続基板は、第1の接続基板250aと、第2の接続基板250bと、を含む。第1の接続基板250aは、第1の記録素子基板140aにおける第1の端子列1421aと電気的に接続される。第2の接続基板250bは、第2の記録素子基板140bにおける第2の端子列1421bと電気的に接続される。そして、第1の接続基板250aと第2の接続基板250bとは、第1の方向において対称的に配置されている。
【0056】
また、本実施形態の電気基板は、第1の電気基板260aと、第2の電気基板260bと、を含んで構成されている。第1の電気基板260aは、上述した記録装置10に搭載された状態において、記録装置本体から送られた吐出信号を第1の接続基板250aに送信することが可能である。第2の電気基板260bは、上述した記録装置10に搭載された状態において、記録装置本体から送られた吐出信号を第2の接続基板250bに送信することが可能である。
【0057】
第1の接続基板250aは、第1の電気接続領域255aにて、第1の電気基板260aの端子PP1~端子PP20に対し、反重力方向に接続する接続基板である。そして、第1の電気基板260aは、第1の接続基板250aと電気的に接続するための第1の基板接続部261aと、キャリッジ15のコンタクトパッドと電気的に接続され、送られた電気信号を受け取る第1の本体接続部262aと、を含んで構成されている。
【0058】
一方、第2の接続基板250bは、第2の電気接続領域255bにて、第2の電気基板260bの端子PP1~端子PP20に対し、反重力方向に接続する接続基板である。そして、第2の電気基板260bは、第2の接続基板250bと電気的に接続するための第2の基板接続部261bと、キャリッジ15のコンタクトパッドと電気的に接続され、送られた電気信号を受け取る第2の本体接続部262bと、を含んで構成されている。
【0059】
この様な構成によれば、第1の電気接続領域255aにおける端子PP1~端子PP20の配列と、第2の電気接続領域255bにおける端子PP1~端子PP20の配列と、が同じ配列になる。このため、第1の電気基板260aと第2の電気基板260bとを同じ構成とすることができる。即ち、第1の電気基板260a及び第2の電気基板260bは、同じ製造工程で製造された電気基板260を用いることができる。
【0060】
従って、例えば、色数が少なく、記録素子基板140を1つしか使用しない記録ヘッドにおいても同じ電気基板260を使用して記録ヘッドを生産することが可能となる。つまり、第2の記録ヘッド200は、汎用性の高い電気基板260を用いて構成されているといえる。よって、本実施形態の電気基板を使用することで、記録ヘッドの生産性を従来より向上させることができる。
【0061】
[第3の実施形態]
以下、図面を参照して本開示の技術における第3の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の又は対応する構成については、同一の符号及び名称を用いて、適宜に説明を省略し、異なる点を中心に説明する。本実施形態では、2つの電気基板が、記録ヘッドの両側面部に配されている点が、第2の実施形態と異なる。また、本実施形態では、シリアル型の記録装置において、複数の記録素子基板を並列配置した、より小型の記録ヘッドを提供することを目的とする。
【0062】
<第3の記録ヘッド300>
図7は、第3の実施形態における第3の記録ヘッド300を底面側から見た斜視図である。
【0063】
図7に示す様に、第3の記録ヘッド300は、第3の記録素子基板ユニット301を含んで構成されている。第3の記録素子基板ユニット301は、第3の接続基板350aと、第4の接続基板350bと、を含んで構成されている。以下、第3の接続基板350aと第4の接続基板350bとを特に区別する必要がない場合には、接続基板350と表記する。
【0064】
第3の記録ヘッド300の第1の電気基板260aは、第3の記録ヘッド300の-X方向を向く側面部に配されている。他方、第2の電気基板260bは、第3の記録ヘッド300の+X方向を向く側面部に配されている。つまり、第1の電気基板260aは、第3の記録ヘッド300における第1の側面部に配され、第2の電気基板260bは、第1の側面部とは反対の方向を向く第2の側面部に配される、といえる。
【0065】
第3の接続基板350aは、第1の記録素子基板140aから支持部材130の外側まで-X方向に延在してから+Z方向に延在することで、第1の記録素子基板140aと第1の電気基板260aとを電気的に接続している。第4の接続基板350bは、第2の記録素子基板140bから支持部材130の外側まで+X方向に延在してから+Z方向に延在することで、第2の記録素子基板140bと第2の電気基板260bとを電気的に接続している。
【0066】
図8は、本実施形態における第3の記録素子基板ユニット301の説明図である。尚、ここでは、説明の便宜上、第3の記録ヘッド300の底面部と側面部とを同一平面上に示している。
【0067】
図8に示す様に、第1の記録素子基板140aと第2の記録素子基板140bとは、X方向において、それぞれの端子列が外側に位置し、且つ、それぞれの端子列と吐出素子列とが、対称的な配置となる様に配されている。つまり、第1の端子列1421a及び第2の端子列1421bは、上述した第1の液体吐出部141a及び第2の液体吐出部141bよりも外側に位置する。そして、第1の端子列1421a及び第2の端子列1421bと、第1の記録素子基板140aの吐出素子列及び第2の記録素子基板140bの吐出素子列と、が対称的な配置となる様に配されている。
【0068】
更に、第1の電気基板260aと第2の電気基板260bとは、X方向において、それぞれの基板接続部(第1の基板接続部261a及び第2の基板接続部261b)が内側に位置している。そして、第1の電気基板260aにおける第1の基板接続部261aは、第1の記録素子基板140aにおける第1の端子列1421aと、平行になる様に配されている。更に、第2の電気基板260bにおける第2の基板接続部261bは、第2の記録素子基板140bにおける第2の端子列1421bと、平行になる様に配されている。
【0069】
第1の記録素子基板140aと第1の電気基板260aとは、第1の電気接続部142aから第2の接続基板250bが延在する方向とは離れる方向に延在する第1の接続基板250aにより電気的に接続されている。一方、第2の記録素子基板140bと第2の電気基板260bとは、第2の電気接続部142bから第1の接続基板250aが延在する方向とは離れる方向に延在する第2の接続基板250bにより電気的に接続されている。
【0070】
本実施形態のような構成によれば、支持部材130において、接続基板350を配するために必要となる幅(X方向の長さ)を、第1の実施形態及び第2の実施形態に比べると短くすることができる。例えば、第1の実施形態及び第2の実施形態においては、接続基板を支持部材上でY方向に延在させていた。そもそも、接続基板の電気接続領域として必要になる長さは、接続基板の端子と電気的に接続される配線の数に応じて変わる。電気基板が記録ヘッドの背面部に配されている場合、支持部材130を記録素子基板よりX方向の外側に向かって拡大させる必要が生じていた。
【0071】
これに対し、本実施形態のような構成によれば、支持部材130における、接続基板350の電気接続領域として必要になる領域はY方向に延在するため、X方向に支持部材130を拡大させる必要が無い。つまり、この様な構成によれば、隣接する2つの記録素子基板における吐出口列間の距離を近づけるだけでなく、記録ヘッドにおけるX方向の長さも第1の実施形態及び第2の実施形態に比べると短くすることができる。よって、本実施形態における構成によれば、シリアル型の記録装置において、複数の記録素子基板を並列配置した、より小型の記録ヘッドを提供することができる。
【0072】
[第4の実施形態]
近年、吐出口から吐出されなかった液体を、支持部材を介して回収する循環機構を備える記録ヘッドが開発されている。液体を循環させることができる記録ヘッドによれば、液滴の吐出速度の低下、又は色材濃度の変調等の原因となる、吐出口からの水分蒸発等による液体の増粘を抑制することができる。
【0073】
以下、図面を参照して本開示の技術における第4の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態~第3の実施形態と同様の又は対応する構成については、同一の符号及び名称を用いて、適宜に説明を省略し、異なる点を中心に説明する。本実施形態の記録ヘッドには、吐出されなかった液体を回収する回収流路が形成されている点が、第1の実施形態~第3の実施形態と異なる。また、本実施形態では、従来より小型化され、且つ、温度ムラが抑制された記録ヘッドを提供することを目的とする。以下、本実施形態の記録ヘッドが循環機構を備える場合を想定して説明する。
【0074】
<液体の循環>
図9は、液体の循環の一例を示す図である。
【0075】
図9に示す様に、第1の記録素子基板140aには、液体を吐出する際に液体が流れる第1の供給開口143aと、吐出されなかった液体を回収する際に液体が流れる第1の回収開口144aと、が形成されている。第2の記録素子基板140bには、液体を吐出する際に液体が流れる第2の供給開口143bと、吐出されなかった液体を回収する際に液体が流れる第2の回収開口144bと、が形成されている。第1の供給開口143a、第1の回収開口144a、第2の供給開口143b及び第2の回収開口144bは、それぞれの記録素子基板140において、3色分ずつ配されている。以下、第1の供給開口143aと、第2の供給開口143bと、を特に区別する必要がない場合には、供給開口143と表記する。同様に、第1の回収開口144aと第2の回収開口144bと、を特に区別する必要がない場合には、回収開口144と表記する。
【0076】
支持部材130には、第1の記録素子基板140a及び第2の記録素子基板140bと接合した状態で、第1の供給開口143aと連通する第1の供給流路131aと、第1の回収開口144aと連通する第1の回収流路132aと、が形成されている。
【0077】
支持部材130には、第1の記録素子基板140a及び第2の記録素子基板140bと接合した状態で、第2の供給開口143bと連通する第2の供給流路131bと、第2の回収開口144bと連通する第2の回収流路132bと、が形成されている。以下、第1の供給流路131aと、第2の供給流路131bと、を特に区別する必要がない場合には、供給流路131と表記する。同様に、第1の回収流路132aと、第2の回収流路132bと、を特に区別する必要がない場合には、回収流路132と表記する。
【0078】
ここで、液体を吐出する際の液体の流れを説明する。ここでは、一例として、液体が第2の供給流路131bを流れ、第2の記録素子基板140bに供給され、第2の記録素子基板140bから第2の回収流路132bを流れ、回収される例を示す。
【0079】
液体を吐出する際、図中の実線矢印が示す様に、支持部材130の第2の供給流路131bに液体が流入する。そして、液体は、第2の供給流路131bから第2の記録素子基板140bにおける第2の供給開口143bに供給される。第2の供給開口143bに供給された液体は、第2の記録素子基板140bに形成された吐出口から吐出される。しかし、第2の供給開口143bに供給された液体の全てが吐出口から吐出されない場合もある。この場合、吐出されなかった液体は、回収される。
【0080】
液体を回収する際、図中の破線矢印が示す様に、第2の記録素子基板140bの吐出口から吐出されなかった液体は、第2の記録素子基板140bの第2の回収開口144bから支持部材130における第2の回収流路132bに流入する。そして、液体は、支持部材130から回収される。尚、回収された液体は、再び、第2の供給流路131bを流れ、第2の記録素子基板140bの吐出口から吐出される。つまり、液体が循環する。この様に、液体を循環させることで、水分蒸発等により増粘した液体を回収し、再び吐出口から吐出させることができる。
【0081】
図10は、回収開口が形成されている記録素子基板140における支持部材130との接着面の一例を示す図である。上述した様に、同一の構成を有する2つの記録素子基板140が点対称となる様に配すると、図示する様に、供給開口143及び回収開口144の配置も交点60を起点とした点対称となる様に構成される。例えば、第1の記録素子基板140a及び第2の記録素子基板140bは、第1の記録ヘッド100の底面部を平面視した際に、互いに対向する長辺の角部と、角部と、を交差させる様に引いた仮想線が交差する交点60を中心として点対称となる様に配される。つまり、第2の記録素子基板140bは、第1の記録素子基板140aを180度回転させて配されている、ともいえる。
【0082】
<温度ムラの抑制>
図11は、本実施形態における支持部材130の記録素子基板140との接着面の一例を示す図である。
【0083】
図11に示す様に、支持部材130の供給流路131及び回収流路132は、記録素子基板140の供給開口143及び回収開口144に対応する様に形成されている。つまり、第1の記録素子基板140aの供給開口143と連通する第1の供給流路131aと、第2の記録素子基板140bの供給開口143と連通する第2の供給流路131bと、は互いに交点60を回転軸の中心として点対称となる様に配される。同様に、第1の記録素子基板140aの回収開口144と連通する第1の回収流路132aと、第2の記録素子基板140bの回収開口144と連通する第2の回収流路132bも、互いに交点60を回転軸の中心として点対称となる様に配される。
【0084】
ここで、供給流路131を流れる液体の温度と、回収流路132を流れる液体の温度と、を比較すると、回収流路132を流れる液体は、供給流路131を流れる液体よりも高温になる傾向がある。液体が循環する際、回収流路132を流れる液体は、一度、吐出素子が配されている液体吐出部を経由しているためである。例えば、エネルギー発生素子がヒーターである場合、液体は、ヒーターにより熱せられてから回収流路132を流れることとなる。このため、回収流路132を流れる液体は、供給流路131を流れる液体よりも高温になる傾向がある。仮に、支持部材130において、複数の回収流路132が偏って形成されてしまうと、回収流路132が形成された部分だけが、局所的に高温になってしまう虞がある。つまり、支持部材130に温度ムラが発生し、液体の吐出を均一にすることができなくなる虞があるといえる。
【0085】
そこで、本実施形態における支持部材130では、供給流路131と回収流路132とが、交点60を中心として点対称となる様に形成されている。この様な構成によれば、液体が循環する際、支持部材130における温度ムラを緩和することができる。以上、説明した様に、本実施形態における記録素子基板の配置によれば、従来より記録ヘッドを小型化することができる。加えて、記録ヘッドの温度ムラを抑制することができる。
【0086】
[その他の実施形態]
以上説明した第1の実施形態~第3の実施形態の構成は、互いに組み合わせることもできる。
【0087】
第1の実施形態~第4の実施形態では、液体の例として、インクを挙げたが、液体はインクでなくても構わない。例えば、記録媒体におけるインクの定着性の向上や光沢ムラの軽減、耐擦過性の向上を目的として使用する処理液等を含む種々の記録液を用いる様にしてもよい。
【0088】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
【0089】
[構成1]
インクを吐出しながら記録媒体に対し第1の方向に移動する記録走査と、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記記録媒体を搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録するための記録装置に搭載可能な記録ヘッドであって、
前記記録装置に搭載された状態で、吐出信号に従ってインクを吐出可能な複数の吐出素子が前記第2の方向に配列して成る吐出素子列と、前記吐出信号を受信するための複数の端子が前記第2の方向に配列して成る端子列とが、前記第1の方向に並列配置された第1の記録素子基板及び第2の記録素子基板と、
前記第1の記録素子基板の端子列及び前記第2の記録素子基板の端子列に電気的に接続する接続基板と、
を有し、
前記第1の記録素子基板と前記第2の記録素子基板とは、前記第1の方向において、それぞれの端子列が外側に位置し、且つ、それぞれの吐出素子列が内側に位置する、様に配されている、
ことを特徴とする記録ヘッド。
【0090】
[構成2]
前記第1の記録素子基板及び前記第2の記録素子基板は、同一の構成を有し、それぞれの端子列と、それぞれの吐出素子列とが、前記第1の方向において対称的な配置となる様に配されている、
構成1に記載の記録ヘッド。
【0091】
[構成3]
前記第1の記録素子基板及び前記第2の記録素子基板は、平面視した際に、互いに対向する長辺の角部と、角部と、を交差させる様に引いた仮想線が交差する交点を中心として点対称となる様に配されている、
構成1又は2に記載の記録ヘッド。
【0092】
[構成4]
前記第1の記録素子基板及び前記第2の記録素子基板を支持する支持部を更に有し、
前記第1の記録素子基板には、前記吐出素子に液体を供給するための第1の供給開口と、前記吐出素子で吐出されなかった液体を回収するための第1の回収開口と、が形成されており、
前記第2の記録素子基板には、前記吐出素子に液体を供給するための第2の供給開口と、前記吐出素子で吐出されなかった液体を回収する際に液体が流れる第2の回収開口と、が形成されており、
前記支持部には、前記支持部が前記第1の記録素子基板及び前記第2の記録素子基板と接合した状態で、前記第1の供給開口と連通する第1の供給流路と、前記第1の回収開口と連通する第1の回収流路と、前記第2の供給開口と連通する第2の供給流路と、前記第2の回収開口と連通する第2の回収流路と、が形成されている、
構成1乃至3の何れか1項に記載の記録ヘッド。
【0093】
[構成5]
前記第1の記録素子基板と前記第2の記録素子基板とには、複数の前記吐出素子列が前記第1の方向に形成され、前記第1の記録素子基板と前記第2の記録素子基板とにおけるそれぞれの端子列は、それぞれの複数の吐出口列から距離を離した前記第1の方向の端部に配されている、
構成1乃至4の何れか1項に記載の記録ヘッド。
【0094】
[構成6]
前記接続基板は、前記第1の記録素子基板の端子列と前記第2の記録素子基板の端子列とに対し、前記第1の方向において外側から対称的に接続する1つの接続基板である、
構成1乃至5の何れか1項に記載の記録ヘッド。
【0095】
[構成7]
前記記録装置に搭載された状態において、前記記録装置から送られた前記吐出信号を前記接続基板に送信することが可能な電気基板を更に有する、
構成6記載の記録ヘッド。
【0096】
[構成8]
前記接続基板は、前記第1の記録素子基板の前記端子列に接続する第1の接続基板と、前記第2の記録素子基板の前記端子列に接続する第2の接続基板とを含み、
前記第1の接続基板と前記第2の接続基板は、前記第1の方向において対称的に配置される、
構成1乃至7の何れか1項に記載の記録ヘッド。
【0097】
[構成9]
前記記録装置に搭載された状態において、前記記録装置から送られた前記吐出信号を前記第1の接続基板に送信することが可能な第1の電気基板と、前記第2の接続基板に送信することが可能な第2の電気基板と、を含み、
前記第1の電気基板と前記第2の電気基板は、前記第1の方向において対称的に配置される、
構成8に記載の記録ヘッド。
【0098】
[構成10]
前記第1の電気基板は、前記記録ヘッドにおける第1の側面部に配され、
前記第2の電気基板は、前記記録ヘッドの前記第1の側面部とは反対の方向を向く第2の側面部に配される、
構成9に記載の記録ヘッド。
【0099】
[構成11]
構成1乃至10の何れか1項に記載の記録ヘッド。
前記第1の記録素子基板及び前記第2の記録素子基板に供給するためのインクが収容されたインクタンクと、
を備える、
ことを特徴とするヘッドカートリッジ。
【0100】
[構成12]
構成1乃至10の何れか1項に記載の記録ヘッド。
前記記録ヘッドを前記第1の方向に移動させる移動手段と、
前記第2の方向に前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
を備える、
ことを特徴とする記録装置。