IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュランの特許一覧

特許7551733N-置換イミダゾリジノン官能基を有する少なくとも1つの化合物をベースとするゴム組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】N-置換イミダゾリジノン官能基を有する少なくとも1つの化合物をベースとするゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240909BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240909BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20240909BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240909BHJP
   C08K 5/32 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/3445
B60C1/00 Z
C08K5/32
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022507466
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 FR2020051440
(87)【国際公開番号】W WO2021023949
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】1909030
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト-ディ-ドミニク フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ガンダー ソフィー
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531726(JP,A)
【文献】特表2016-535807(JP,A)
【文献】特表2017-501240(JP,A)
【文献】国際公開第2019/007884(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/007883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/-21/
C08K 3/
C08K 5/
B60C 1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのジエンエラストマー、
少なくとも1つの補強充填剤、
少なくとも1つの化学架橋系、及び
少なくとも1つの式(I)の化合物であって、任意に前記ジエンエラストマーに予めグラフトされていてもよい式(I)の化合物、
をベースとするゴム組成物であって:
【化1】
式中、
Aは、アレーンジイル環であり、前記アレーンジイル環は、1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で任意に置換されていてもよく、前記脂肪族炭化水素鎖は、1つ又は複数のヘテロ原子で任意に置換又は中断されていてもよい、アレーンジイル環である;
Eは、1つ又は複数のヘテロ原子を任意に含んでいてもよい、二価炭化水素基である;並びに
Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を示す
前記ゴム組成物における式(I)の化合物のモル含有量は、0.1モル%~5モル%の範囲内であり、モル%は、モル百分率で表される、前記ゴム組成物のジエンエラストマー100単位当りの、前記ゴム組成物中に存在する前記式(I)の化合物の単位を意味する、
ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエンエラストマーが、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、(Ia)及び(Ib)の化合物から選択されるゴム組成物であって:
【化2】
式中、
前記式(Ia)のR1~R5から選択される1つの基、及び前記式(Ib)のR1~R7から選択される1つの基は、次の式(II)の基を示し:
【化3】
(II)
式中、E及びXは請求項1に記載の通りであり;並びに
前記式(Ia)のR1~R5から選択される、前記式(II)の基を示すもの以外の4つの基、及び前記式(Ib)のR1~R7から選択される、前記式(II)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、互いに独立して、水素原子、又は、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖であり、前記脂肪族炭化水素鎖は1つ若しくは複数のヘテロ原子で任意に置換若しくは中断されていてもよい、
請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記Eが、好ましくは飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24、より優先的にC1-C10、更により優先的にC1-C6炭化水素鎖であり、前記脂肪族炭化水素鎖は、1つ又は複数の窒素、硫黄、若しくは酸素原子で任意に中断されていてもよい、請求項1~3のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が前記式(Ib)の化合物である、請求項3又は4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が式(III)の化合物である、請求項1~5のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
【化4】
(III)
【請求項7】
任意に前記ジエンエラストマーに予めグラフトされていてもよい少なくとも1つの式(V)の化合物を追加的に含むゴム組成物であって:
【化5】
(V)
式中、
1は、アレーンジイル環であり、前記アレーンジイル環は、1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で任意に置換されていてもよく、前記脂肪族炭化水素鎖は、1つ又は複数のヘテロ原子で任意に置換又は中断されていてもよい、アレーンジイル環である;並びに
1は、1つ又は複数のヘテロ原子を任意に含んでいてもよい二価炭化水素基である
請求項1~6のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記式(V)の化合物が、式(Va)及び(Vb)の化合物から選択されるゴム組成物であって:
【化6】
式中、
前記式(Va)のR8~R12から選択される1つの基、及び前記式(Vb)のR8~R14から選択される1つの基は、次の式(VI)の基を示し:
【化7】
(VI)
1は請求項7に記載の通りであり;並びに
前記式(Va)のR8~R12から選択される、前記式(VI)の基を示すもの以外の4つの基、及び前記式(Vb)のR8~R14から選択される、前記式(VI)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、互いに独立して、水素原子、又は、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖であり、前記脂肪族炭化水素鎖は1つ若しくは複数のヘテロ原子で任意に置換若しくは中断されていてもよい、
請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記式(V)の化合物のE1が、好ましくは飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6炭化水素鎖であり、前記脂肪族炭化水素鎖は1つ若しくは複数のヘテロ原子で任意に置換若しくは中断されていてもよい、請求項7又は8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記式(V)の化合物が前記式(Vb)の化合物である、請求項8又は9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記式(V)の化合物が式(VII)の化合物である、請求項7~10のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
【化8】
(VII)
【請求項12】
前記補強充填剤が、カーボンブラック、補強無機充填剤、及びカーボンブラックと無機充填剤との混合物から選択される、請求項1~11のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項13】
追加的に可塑剤を含む、請求項1~12のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項14】
請求項1~13のうちいずれか一項に記載の少なくとも1つのゴム組成物を含むことを特徴とする、タイヤ用ゴムで作られた半製品。
【請求項15】
請求項14に記載の少なくとも1つの半製品、又は請求項1~13のうちいずれか一項に記載の少なくとも1つの組成物を含むことを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、少なくとも1つのジエンエラストマー、少なくとも1つの補強充填剤、少なくとも1つの化学架橋系、及びN-置換イミダゾリジノン官能基を有する少なくとも1つの化合物をベースとする、タイヤ用製品の製造に使用できるゴム組成物に関する。また本発明は、そのような組成物を含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物から製造される対象物、特にタイヤの産業領域では、補強充填剤を含むポリマーの混合物が使用されることが多い。このような組成物が良好な特性を示すよう、これらのポリマー中で補強充填剤の分散を向上させる手段が継続的に探索されている。これらのポリマー中でこれらの充填剤の分散が良好であれば、大抵はヒステリシスも低く、従ってこれらのゴム組成物をタイヤに使用した場合、転がり抵抗が向上するのがその理由である。一方、燃料の節約や環境保護の必要性が優先事項となっていることから、転がり抵抗の向上はタイヤ製造業者にとって継続的な課題である。ヒステリシスを低下させるという目的を達成するために、多くの解決策が提案されている。特に、ポリマー、特にジエンエラストマーの構造を、重合終了時に改質剤を用いて構造を変性させることに言及し得るが、その目的は、このように変性させたポリマーと、カーボンブラックであれシリカのような補強無機充填剤であれ補強充填剤との間の良好な相互作用をもたらすことである。例えば、鎖末端をシラノール基で官能基化したジエンポリマーの使用を記述している欧州特許第0778311号明細書に言及し得る。より最近では、国際公開第2009/077837号が、1つの鎖末端をシラノール基で、もう1つの鎖末端をアミノ基で官能基化したエラストマーについて記述している。これらの変性ポリマーは、ヒステリシスを低下させるのに有効である。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、タイヤ製造業者は、なおもゴム組成物のヒステリシスを低下させようと試みている。このため、ヒステリシスが小さいゴム組成物を得る目的で、ポリマー、特にジエンエラストマーを変性させる他の反応に関する調査研究が行われている。この点で、ゴム組成物に使用するポリマーを変性させるために、水素結合を介して互いに会合することを可能にする少なくとも1つの単位を含む窒素会合性基を有する化合物の使用について言及し得る。非置換イミダゾリジノン官能基を有するこれらの変性ポリマーは、国際公開第2019/007884号に記載されている。しかしながら、タイヤ製造業者の間では、なおもゴム組成物のヒステリシスをより一層低下させることが求められており、これが本発明の目的である。驚いたことに、出願企業の調査研究において、N-置換イミダゾリジノン官能基を有する化合物をゴム組成物で使用すると、非置換イミダゾリジノン官能基を有する化合物を含む組成物と比べてこの組成物のヒステリシスが低下することが発見され、この目的が達成されている。
【0004】
本発明の主題は、少なくとも1つのジエンエラストマー、少なくとも1つの補強充填剤、少なくとも1つの化学架橋系、及び任意で前記ジエンエラストマーに予めグラフトされた少なくとも1つの式(I)の化合物をベースとするゴム組成物であり:
【化1】
式中、
Aは、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたアレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている;
Eは、任意で1つ又は複数のヘテロ原子を含む二価炭化水素基である;並びに
Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を示す。
本発明の別の主題は、上記に定義したゴム組成物を含むことを特徴とする、タイヤ用のゴム半製品に関する。本発明の別の主題は、上述の少なくとも1つの半製品、又は上記に定義した少なくとも1つのゴム組成物に関する。
【0005】
本発明の第1の主題は、少なくとも1つのジエンエラストマー、少なくとも1つの補強充填剤、少なくとも1つの化学架橋系、及び任意で前記ジエンエラストマーに予めグラフトされた少なくとも1つの式(I)の化合物をベースとするゴム組成物に関し:
【化2】
式中、
Aは、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたアレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている;
Eは、任意で1つ又は複数のヘテロ原子を含む二価炭化水素基である;並びに
Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を示す。
【0006】
「をベースとする組成物」という語句は、使用される様々な成分の混合物及び/又はin situ反応生成物を含む組成物を意味すると理解されるべきであり、これらの成分の一部は、組成物の様々な製造段階で、互いに、少なくとも部分的に反応が可能であり、及び/又は反応するよう意図されており、従って、組成物は完全又は部分的に架橋状態若しくは非架橋状態であることが可能である。本明細書では、明示的に別段の指示がない限り、全ての百分率(%)は質量百分率(%)を示す。更に、「aとbの間」という語句で表される任意の値の区間は、aより大きくbより小さい値の範囲(即ち、限界値のa及びbは除外される)を示すのに対し、「a~b」という語句で表される任意の値の区間は、aからb以下の値の範囲(即ち、限界値のa及びbを含む)を意味する。説明で言及する化合物は、化石起源又は生物由来であってよい。後者の場合、部分的又は完全にバイオマスに由来するか、又はバイオマスに由来する再生可能な出発物質から得てよい。用語「会合性基」は、水素結合、イオン結合、及び/又は疎水結合を介して、特に互いに会合することが可能な基を意味すると理解される。本発明の好ましい形態に従って、これらは水素結合を介した会合が可能な基である。会合性基が水素結合を介して会合できる場合、各会合性基は、好ましくは、少なくとも1つのドナー部位と、水素結合に関して受容的である1つの部位とを含み、そのため2つの同一の会合性基が自己相補的となり、少なくとも2つの水素結合の形成と共に会合できる。本発明による会合性基は、充填剤上、特に補強充填剤上、とりわけシリカなどの補強無機充填剤上に存在する官能基と水素結合、イオン結合、及び/又は疎水結合を介して会合することも可能である。用語「非会合性基」は、水素結合、イオン結合、及び/又は疎水結合を介して、特に互いに会合することが不可能な基を意味すると理解される。優先的に、これらは水素結合を介した会合が不可能な基である。これらの基は、ドナー部位、及び水素結合に関して受容的である部位を含まず、そのためこれらの同一基のいずれも自己相補的でない。これらは少なくとも2つの水素結合の形成と共に会合できない。別途記載のない限り、用語「ヘテロ原子」は、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群から選択される原子を意味すると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一般式(I)の化合物
上述の通り、本発明のゴム組成物は少なくとも1つの式(I)の化合物をベースとし:
【化3】
式中、
Aは、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたアレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている;
Eは、任意で1つ又は複数のヘテロ原子を含む二価炭化水素基である;並びに
Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を示す。
Aは、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたアレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている。
【0008】
本発明の意味において、用語「アレーンジイル環」は、2個の水素原子が除去されたアレーンに由来する単環又は多環芳香族炭化水素基を意味すると理解される。従って、アレーンジイル環は二価基である。本発明の意味において、用語「単環又は多環芳香族炭化水素基」は、炭素原子からなる骨格を有する1つ又は複数の芳香環を意味すると理解される。つまり、環の骨格にはヘテロ原子が存在しない。アレーンジイル環は、単環式、即ち単一の環からなるものでも、多環式、即ち複数の芳香族炭化水素環が縮合したものでもよく、そのような縮合環は少なくとも2つの連続する炭素原子を共有している。これらの環は、オルト縮合、又はオルト縮合及びペリ縮合していてよい。好ましくは、アレーンジイル環は6~14個の炭素原子を含む。アレーンジイル環は非置換であっても、部分的又は完全に置換されていてもよい。アレーンジイル環が部分的に置換されている場合、1個又は2個以上の水素原子(ただし、全ての原子ではない)が、1個又は2個以上の、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置き換えられており、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換されている。前記鎖は置換基とも呼ばれる。全ての水素原子が前記鎖によって置き換えられている場合、アレーンジイル環は完全に置換されている。アレーンジイル環の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。好ましくは、アレーンジイル環が1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されており、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている場合、この又はこれらの鎖は、N-置換イミダゾリジノン官能基及びニトリルオキシドに対して不活性であってよい。
【0009】
本発明の意味において、用語「N-置換イミダゾリジノン官能基及びニトリルオキシドに対して不活性である炭化水素鎖」は、前記N-置換イミダゾリジノン官能基とも前記ニトリルオキシドとも反応しない炭化水素鎖を意味すると理解される。従って、前記N-置換イミダゾリジノン官能基及び前記ニトリルオキシドに対して不活性である前記炭化水素鎖は、好ましくは、前記官能基又は前記基と反応が可能なアルケニル又はアルキニル官能基を持たない脂肪族炭化水素鎖、即ち飽和、直鎖状、又は分岐状脂肪族炭化水素鎖であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されており、且つ優先的に1~24個の炭素原子を含む。好ましくは、基Aは、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたC6-C14アレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている。より優先的に、基Aは、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、飽和、直鎖状、若しくは分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖で置換されたC6-C14アレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数の窒素、硫黄、若しくは酸素ヘテロ原子で置換又は中断されている。更により優先的に、基Aは、任意でC1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択される1つ又は複数の同一若しくは異なる置換基で置換されたC6-C14アレーンジイル環であり、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキル基である。
【0010】
好ましくは、式(I)の化合物は式(Ia)及び(Ib)の化合物から選択され:
【化4】
式中、
式(Ia)のR1~R5から選択される1つの基、及び式(Ib)のR1~R7から選択される1つの基は、次の式(II)の基を示す:
【化5】
(II)
式中、E及びXは上記定義と同じであり、
式(Ia)のR1~R5から選択される、式(II)の基を示すもの以外の4つの基、及び式(Ib)のR1~R7から選択される、式(II)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、互いに独立して、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖である。
好ましくは、(Ia)及び(Ib)の化合物において、式(Ia)のR1~R5から選択される、式(II)の基を示すもの以外の4つの基、及び式(Ib)のR1~R7から選択される、式(II)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、互いに独立して、水素原子、又は、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断された飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。更により優先的に、(Ia)及び(Ib)の化合物において、式(Ia)のR1~R5から選択される、式(II)の基を示すもの以外の4つの基、及び式(Ib)のR1~R7から選択される、式(II)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基によって形成される群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。
【0011】
本発明の好ましい実施形態に従って、式(Ia)において、R2は上記に定義した式(II)の基であり、R1、R3、R4、及びR5は、同一又は異なり、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。より優先的に、R2は上記に定義した式(II)の基であり、R1、R3、R4、及びR5は、同一又は異なり、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。この実施形態において更により優先的に、R2は上記に定義した式(II)の基であり、R4は水素原子であり、R1、R3、及びR5は、好ましくは、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断された飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。更により優先的に、R2は上記に定義した式(II)の基であり、R4は水素原子であり、R1、R3、及びR5は、同一又は異なり、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。
【0012】
本発明の別の好ましい実施形態に従って、式(Ib)において、R1は上記に定義した式(II)の基であり、R2~R7は、同一又は異なり、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。より優先的に、R1は上記に定義した式(II)の基であり、R2~R7は、同一又は異なり、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。この実施形態において更により優先的に、R1は上記に定義した式(II)の基であり、R2~R7は同一であり、水素原子である。式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは二価炭化水素基であり、任意で1つ又は複数のヘテロ原子を含んでよい。本発明の意味において、用語「二価炭化水素基」は、基AとN-置換イミダゾリジノン基とを架橋するスペーサー基(又は結合基)を意味すると理解され、このスペーサー基は飽和又は不飽和で、好ましくは飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24炭化水素鎖であり、任意で、例えばN、O、及びSなど1つ又は複数のヘテロ原子を含んでよい。前記炭化水素鎖は、任意で置換されていてよく、ただし、置換基はニトリルオキシド及び上記に定義したN-置換イミダゾリジノン基と反応しないものとする。優先的に、式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは、好ましくは、任意で1つ又は複数の窒素、硫黄、若しくは酸素原子で中断された飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24、より優先的にC1-C10、更により優先的にC1-C6炭化水素鎖である。好ましくは、式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは-R-、-NH-R-、-O-R-、及び-S-R-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである。更により優先的に、式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである。更により優先的に、式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、及び-O-CH2-CH2-CH2-CH2-から選択される。
【0013】
好ましい実施形態に従って、式(I)の化合物は式(Ib)の化合物である。この好ましい実施形態に従って、特に、基Eが-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンであり、且つ基Xが塩素原子である、上記に定義した式(Ib)の化合物が優先される。この実施形態に従って、更により優先的に、式(I)の化合物は、以下のような式(Ib)の化合物である。
1は式(II)の基であり、基Eは-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンであり、且つ基Xが塩素原子を表す;並びに
2~R7は、同一又は異なり、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。
この実施形態に従って、更により優先的に、式(I)の化合物は、以下のような式(Ib)の化合物である。
1は式(II)の基であり、基Eは-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンであり、且つ基Xが塩素原子を表す;並びに
2~R7は、同一又は異なり、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。
この実施形態に従って、更により優先的に、式(I)の化合物は、以下のような式(Ib)の化合物である。
1は式(II)の基であり、基Eは-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンであり、且つ基Xが塩素原子を表す;並びに
2~R7は同一であり、水素原子である。
【0014】
特定の実施形態に従って、式(I)の化合物は式(III)及び式(IV)の化合物からなる群から選択され、より優先的に式(III)の化合物である。
【化6】
【0015】
任意でジエンエラストマーに予めグラフトされた、N-置換イミダゾリジノン基、即ち非会合性窒素基を有する少なくとも1つの式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、及び更により優先的に式(III)の化合物を含む本発明によるゴム組成物は、驚くことに、ヒステリシスの著しい低下、即ち転がり性能の向上を示す。式(I)の化合物、特に式(Ia)、(Ib)、(III)及び(IV)の化合物は、以下の連続的なステップを含む合成工程から得ることができる。
(b1)以下の式(IX)の化合物の反応:
【化7】
(IX)
式中、Aは上記に定義した通りであり、Yは以下の式(X)の化合物を有する求核基であり:
【化8】
(X)
式中、Eは上記に定義した通りであり、Zは離核基である。
少なくとも1つの極性溶媒S1、少なくとも1つの塩基の存在下で、70~150℃の温度T1で、以下の式(XI)化合物を形成する。
【化9】
(XI)
(b2)前記式(XI)の化合物とヒドロキシルアミン水溶液との30~70℃の温度T2での反応により、以下の式(XII)のオキシム化合物を得る。
【化10】
(XII)
(c)前記式(XII)のオキシム化合物の回収ステップ;
(d)少なくとも1つの有機溶媒S2存在下での、酸化剤を用いた式(XII)のオキシム化合物の酸化ステップであり、酸化剤の含有量が、式(XII)のオキシム化合物のモル量に対して少なくとも6モル当量である。
本願の意味において、用語「極性溶媒」は、誘電率が2.2より大きい溶媒を意味すると理解される。本願の意味において、用語「離核基」は、結合対を取り除く脱離基を意味すると理解される。本願の意味において、用語「求核基」は、自由対を有する少なくとも1つの原子又は負の電荷を持つ1つの原子を含む化合物を意味すると理解される。
【0016】
上記に説明した通り、式(I)の化合物の合成方法は、特に連続的な段階(b1)及び(b2)を含む。特定の実施形態に従って、2つのステップ(b1)及び(b2)は、式(XI)の化合物の分離ステップと精製ステップに分けられる。別の実施形態に従って、2つのステップ(b1)及び(b2)はワンポット合成により実施する。つまりステップ(b1)及び(b2)は「ワンポット」(2段階ワンポット合成法)であり、即ち式(XI)の中間体化合物の分離を行わない。方法は、基Yを有する上述の式(IX)の化合物と、基Zを有する上述の式(X)の化合物との反応ステップ(b1)を含む。好ましくは、基Yはヒドロキシル、チオール、及び第一級又は第二級アミン官能基から選択する。基Zは、塩素、臭素、ヨウ素、メシラート基、トシラート基、アセテート基、及びトリフルオロメチルスルホネート基から選択してよい。方法の前記ステップ(b1)は、少なくとも1つの極性溶媒S1及び少なくとも1つの塩基の存在下で、70~150℃の温度T1で行われる。方法の特定の実施形態に従って、極性溶媒S1は水混和性極性溶媒、優先的にプロトン性溶媒である。ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノール、n-ブタノール、及びn-プロパノールは、方法で使用してよい溶媒S1の例である。好ましくは、プロトン性溶媒はアルコール溶媒である。
【0017】
有利には、式(IX)の化合物は、溶媒の質量に対して5~40質量%、好ましくは10~30質量%である。塩基は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、及びこれらの混合物から選択してよい。有利には、以下を添加してよい。
銀(I)塩系触媒、第四級アンモニウム系相間移動触媒、及びこれらの混合物から選択される1つ又は複数の触媒;
1つ又は複数のイオン性液体。
優先的に、塩基はナトリウムメトキシド、炭酸カリウム、及び水酸化ナトリウムから選択し、より優先的に炭酸カリウムである。方法の特定の実施形態に従って、塩基のモル量は、式(IX)の化合物のモル量に対して1.5~8モル当量、好ましくは2~6モル当量である。上述の通り、方法のステップ(b1)は70~150℃の温度T1で実施する。好ましくは、温度T1は70~120℃、より優先的に80~110℃である。上述の通り、方法のステップ(b1)の後に、式(XI)の化合物を含む反応媒体にヒドロキシルアミン水溶液を30~70℃の温度T2で添加するステップ(b2)が続く。優先的に、ヒドロキシルアミン水溶液の添加は、式(IX)の化合物の変換が少なくとも70質量%のときに実施する。有利には、温度T2は40~60℃である。
【0018】
方法は、上述した、式(XII)のオキシム化合物の回収ステップ(c)も含む。好ましくは、式(XII)のオキシム化合物を水で沈殿させ、続いて任意で水で洗浄して回収する。方法は、酸化剤を用いて式(XII)のオキシム化合物を酸化させ、少なくとも1つの有機溶媒S2の存在下で式(I)の化合物、特に好ましい化合物を得るステップ(d)も含み、酸化剤の量は、式(XII)のオキシム化合物のモル量に対して少なくとも6モル当量、優先的に6.5~15モル当量である。この量の酸化剤は、ステップ(d)で一度に、又は複数回に分けて添加してよく、好ましくはステップ(d)で2回に分けて添加してよい。好ましくは、前記酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウム、塩基存在下のN-ブロモスクシンイミド、及び塩基存在下のN-クロロスクシンイミドから選択され、好ましくは、前記酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムである。優先的に、有機溶媒S2は、塩素系、エステル系、エーテル系、及びアルコール系の溶媒から選択される、より優先的にジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、イソプロパノール、及びエタノールから選択される、更により優先的に酢酸エチル及び酢酸ブチルから選択される有機溶媒である。好ましくは、式(XII)のオキシム化合物は、前記式(XII)のオキシム化合物、前記有機溶媒S2、及び前記酸化剤を含む組み合わせの総質量に対して1~30質量%、好ましくは1~20質量%である。優先的に、方法はステップ(d)の後に、式(I)の化合物の回収ステップ(e)を含む。
【0019】
特定の実施形態に従って、方法は、ステップ(b1)の前に、以下の式(XIII)の化合物を反応させることによる式(X)の化合物の製造ステップ(a2)を含んでよい:
【化11】
(XIII)
式中、
Eは上記に定義した通りであり;
離核基Zの形成を可能にする作用物質を用いる。
好ましくは、前記作用物質は塩化チオニルである。好ましくは、ステップ(a2)は、少なくとも1つの溶媒S4、優先的に塩素系溶媒、より優先的にジクロロメタンの非存在又は存在下で実施する。有利には、ステップ(a2)の直後に、式(X)の化合物の回収ステップ(a3)を、優先的にトルエンを用いた精製によって、より優先的にトルエンから式(X)の化合物を結晶化することによって実施する。優先的に、本発明によるゴム組成物中の式(I)の化合物のモル含有量は、ジエン単位か非ジエン単位かの区別は関係なく、0.01~5モル%、好ましくは0.01~1モル%、より優先的に0.1~1モル%の範囲内である。モル百分率で表される、ゴム組成物中に存在する「式(I)の化合物の含有量」という用語は、組成物のジエンエラストマー100単位当りの、ゴム組成物中に存在する式(I)の化合物の数を意味すると理解される。例えば、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)に対する式(I)の化合物の含有量が0.2モル%の場合、SBRスチレン及びブタジエン100単位当たり、式(I)の化合物が0.2単位存在することになる。式(I)の化合物で予めグラフト化したエラストマーと、式(I)の化合物でグラフト化していないジエンエラストマーの両方を組成物で使用する場合、式(I)の化合物の含有量は、ジエンエラストマー100単位当たりの、グラフトされた式(I)の化合物の数を表し、その単位数は、両方のエラストマー(グラフト化及び非グラフト化)を考慮に入れており、予めグラフトされていない他の式(I)の化合物は組成物に添加されていないと仮定されている。
【0020】
エラストマー
上述の通り、本発明のゴム組成物は少なくとも1つのジエンエラストマーをベースとする。「ジエン」エラストマー(又は、区別せずにゴム)は、天然であれ合成であれ、既知のように、少なくとも部分的に(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)、ジエンモノマー単位(2つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合を持つモノマー)からなるエラストマーを意味すると理解されるべきである。これらのジエンエラストマーは、「本質的に不飽和」又は「本質的に飽和」の2つに分類できる。「本質的に不飽和」は、一般に、ジエン起源(共役ジエン)の単位を15%(モル%)より多く含有する共役ジエンモノマーに、少なくとも部分的に由来するジエンエラストマーを意味すると理解される。従って、ブチルゴム、又はジエンとEPDM系のαオレフィンとのコポリマーなどのジエンエラストマーは前記定義に含まれず、特に、「本質的に飽和」のジエンエラストマー(ジエン起源の単位の含有量が常に15%未満で低い又は非常に低い)と記述してよい。
【0021】
本発明の状況で使用できるジエンエラストマーは、特に以下を意味すると理解される。
4~18個の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー;
4~18個の炭素原子の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンと、少なくとも1つの他のモノマーとの任意のコポリマー。
他のモノマーは、エチレン、オレフィン、又は共役又は非共役ジエンであってよい。共役ジエンとして好適なのは、4~12個の炭素原子を有する共役ジエン、とりわけ1,3-ジエン、例えば特に1,3-ブタジエン及びイソプレンである。非共役ジエンとして好適なのは、6~12個の炭素原子を有する非共役ジエン、例えば1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、又はジシクロペンタジエンである。オレフィンとして好適なのは、8~20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、及び3~12個の炭素原子を有する脂肪族αモノオレフィンである。ビニル芳香族化合物として好適なのは、例えばスチレン、オルト、メタ、若しくはパラメチルスチレン、市販の「ビニルトルエン」混合物、又はパラ(tert-ブチル)スチレンである。脂肪族αモノオレフィンとして好適なのは、特に3~18個の炭素原子を有する非環式脂肪族αモノオレフィンである。より具体的には、ジエンエラストマーは以下であってよい。
・共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー、特に4~12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー;
・1つ若しくは複数の共役ジエン同士の共重合、又は1つ若しくは複数の共役ジエンと8~20個の炭素原子を有する1つ若しくは複数のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマー;
・イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、及び、この種のコポリマーのハロゲン化形、特に塩素化形又は臭素化形;
・1つ又は複数の共役又は非共役ジエンと、エチレン、αモノオレフィン、又はこれらの混合物との共重合によって得られる任意のコポリマー、例えば、エチレンから得られるエラストマー、プロピレンと上記の種の非共役ジエンモノマーから得られるエラストマー。
【0022】
優先的に、ジエンエラストマーは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマー、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。優先的に、ジエンエラストマーは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマー、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、エチレン/ブタジエンコポリマー(EBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)又はイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム-IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。優先的に、ジエンエラストマーは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、及びこれらのゴムの混合物からなる群から選択される。優先的に、ジエンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。より優先的に、ジエンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。優先的に、ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。より優先的に、ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。
【0023】
好適であるのは、ポリブタジエン、特に1,2単位の含有量(モル%)が4%と80%の間であるもの、若しくはシス-1,4単位の含有量(モル%)が80%より多いもの、ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、特にTg(ガラス転移温度(ASTM D3418(2015)に従って測定したTg)が0℃と-90℃の間、及びより具体的には-10℃と-70℃の間であり、スチレン含有量が1質量%と60質量%の間、及びより具体的には20%と50%の間であり、ブタジエン部の1,2結合の含有量(モル%)が4%と75%の間、並びにトランス-1,4結合の含有量(モル%)が10と80%の間であるもの、ブタジエン/イソプレンコポリマー、とりわけイソプレン含有量が5質量%と90質量%の間、及びTgが-40℃と-80℃の間であるもの、又はイソプレン/スチレンコポリマー、とりわけスチレン含有量が5質量%と50質量%の間、及びTgが-5℃と-50℃の間であるものである。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、スチレン含有量が5質量%と50質量%の間、及びより具体的には10%と40%の間、イソプレン含有量が15質量%と60質量%の間、及びより具体的には20%と50%の間、ブタジエン含有量が5質量%と50質量%の間、及びより具体的には20%と40%の間、ブタジエン部の1,2単位の含有量(モル%)が4%と85%の間、ブタジエン部のトランス-1,4単位の含有量(モル%)が6%と80%の間、イソプレン部の1,2-と3,4単位の含有量(モル%)が5%と70%の間、並びにイソプレン部のトランス-1,4単位の含有量(モル%)が10%と50%の間、並びにより一般的に、Tgが-5℃と-70℃の間である任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に好適である。ジエンエラストマーは、使用する重合条件に応じて、任意の微細構造を有してよい。これらのポリマーは、例えば、ブロック、ランダム、シーケンシャル、又はマイクロシーケンシャルポリマーであってよく、分散液、エマルジョン、又は溶液中で調製してよい。これらは、例えばポリマー鎖を連結するシリコン原子又はスズ原子によって、結合及び/又は星型分岐させてよい。
【0024】
本発明の第1の好ましい実施形態では、本発明のゴム組成物は、少なくとも1つのジエンエラストマー、及び上記に定義した、ジエンエラストマーに予めグラフトされた少なくとも1つの式(I)の化合物をベースとする。用語「少なくとも1つの式(I)の化合物で予めグラフト化したジエンエラストマー」は、その鎖に官能基、特にN-置換イミダゾリジノン官能基が導入されたジエンエラストマーを意味すると理解される。実際には、変性ジエンエラストマーは、置換N-イミダゾリジノン官能基を有し、且つ最初のジエンエラストマーの鎖の不飽和部分と共有結合を形成できる官能基を有する少なくとも1つの式(I)の化合物のグラフト反応によって得られ、この官能基はニトリルオキシドである。グラフト反応時に、グラフトされる化合物の1つ又は複数のニトリルオキシド官能基は、ジエンエラストマーの鎖の1つ又は複数の不飽和部分と共有結合を形成する。用語「不飽和部分」は、2つの炭素原子間の多重共有結合を意味すると理解される。この多重共有結合は、炭素-炭素二重結合、又は炭素-炭素三重結合、好ましくは炭素-炭素二重結合であってよい。本発明の意味において、用語「最初のジエンエラストマーの鎖」は、グラフト反応前のジエンエラストマーの鎖を意味すると理解され、この鎖は、ニトリルオキシド官能基を有する化合物と反応できる少なくとも1つの不飽和部分、より優先的に少なくとも2つの不飽和部分を有する。従って最初のジエンエラストマーは、グラフト反応時に出発反応物として機能するジエンエラストマーである。グラフト反応によって、最初のエラストマーから出発し、変性ジエンエラストマー(予めグラフト化したジエンエラストマーともいう)を得ることが可能となる。式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物でジエンエラストマーを予めグラフト化する方法は、本明細書の以下で説明する。
【0025】
本発明の第2の好ましい実施形態に従って、本発明のゴム組成物は、少なくとも1つのジエンエラストマー、及び上記に定義した少なくとも1つの式(I)の化合物をベースとする。従って本発明のゴム組成物は、式(I)の化合物でグラフト化した単一のジエンエラストマー(組成物に導入する前にグラフト化、又は組成物の製造時に式(I)の化合物と反応させることでグラフト化)、又は複数のジエンエラストマーの混合物(全部がグラフト化されている、又は一部がグラフト化されており、他はそうでない)を含むことができる。本発明の組成物のジエンエラストマーとのブレンドとして使用される、任意で少なくとも1つの式(I)の化合物で予めグラフト化した1つ又は複数の他のジエンエラストマーは、星型分岐、結合、又は官能基化されているかは関係なく、上述した従来のジエンエラストマーである。任意で少なくとも1つの式(I)の化合物で予めグラフト化した本発明の組成物のジエンエラストマーは、ジエンエラストマー以外の任意の種類の合成エラストマーと組み合わせて使用してよく、さらにはエラストマー以外のポリマーと組み合わせて使用してもよい。
【0026】
補強充填剤
前記の通り、本発明のゴム組成物は少なくとも1つの補強充填剤をベースとする。補強充填剤は、特にタイヤ製造業者が使用できるゴム組成物を補強できることが知られている任意の種類の「補強」充填剤、例えばカーボンブラックなどの有機充填剤、シリカなどの無機充填剤、又はこれら2種類の充填剤の混合物であってよい。有利には、補強充填剤は、カーボンブラック、補強無機充填剤、及びカーボンブラックと無機充填剤の混合物から選択される。全てのカーボンブラック、特にタイヤ又はそのトレッドに通常使用されるブラックはカーボンブラックとして好適である。ブラックの中で、より具体的に、100、200、及び300シリーズの補強カーボンブラック、又は500、600、若しくは700シリーズのブラック(ASTM D-1765-2017グレード)、例えばN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、N550、N683、及びN772ブラックなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、市販されている分離状態で、又は任意の他の形態で、例えば、使用されるゴム添加剤の一部の担体として使用してよい。カーボンブラックは、例えばジエンエラストマー、特にイソプレンエラストマーに、マスターバッチの形態で予め混入されている可能性がある(例えば国際公開第97/36724号、又は国際公開第99/16600号参照)。カーボンブラック以外の有機充填剤の例として、例えば国際公開第2006/069792号、国際公開第2006/069793号、国際公開第2008/003434号、及び国際公開第2008/003435号に記載されている官能基化ポリビニル有機充填剤に言及し得る。本明細書では、「補強無機充填剤」は、色や由来(天然又は合成)にかかわらず、カーボンブラックに対比して「白色」充填剤、「透明」充填剤、又は「非黒色」充填剤としても知られる任意の無機又は鉱物充填剤を意味すると理解されるべきであり、この充填剤はそれのみで、中間カップリング剤以外の手段を用いずに、タイヤを製造するためのゴム組成物を補強できる。既知のように、一部の補強無機充填剤は、特にその表面にヒドロキシル(-OH)基が存在することを特徴としてよい。シリカ系鉱物充填剤、優先的にシリカ(SiO2)、又はアルミニウム系の鉱物充填剤、とりわけアルミナ(Al23)が、特に補強無機充填剤として好適である。
【0027】
好ましくは、補強無機充填剤はシリカである。使用するシリカは、当業者に既知の任意の補強シリカ、特にBET比表面積とCTAB比表面積がいずれも450m2/g未満、好ましくは30~400m2/g、特に60~300m2/gの範囲内である任意の沈降又はヒュームドシリカであってよい。任意の種類の沈降シリカ、特に高分散性沈降シリカ(「高分散性」又は「高分散性シリカ」の代わりに「HDS」と呼ぶ)を使用してよい。これらの沈降シリカは、高分散性の有無にかかわらず、当業者によく知られている。例えば、国際公開第03/016215号及び国際公開第03/016387号に記載されているシリカに言及し得る。特に市販のHDSシリカの中でも、EvonikのUltrasil(登録商標)5000GR及びUltrasil(登録商標)7000GRシリカ、又はSolvayのZeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)Premium200MP、及びZeosil(登録商標)HRS1200MPシリカを使用し得る。非HDSシリカとして、以下の市販のシリカを使用し得る:EvonikのUltrasil(登録商標)VN2GR及びUltrasil(登録商標)VN3GRシリカ、SolvayのZeosil(登録商標)175GRシリカ、又はPPGのHi-Sil EZ120G(-D)、Hi-Sil EZ160G(-D)、Hi-Sil EZ200G(-D)、Hi-Sil243LD、Hi-Sil210、及びHi-Sil HDP320Gシリカ。補強無機充填剤が提供される物理的状態は重要ではなく、粉末、マイクロビーズ、顆粒などのビーズ状、又はその他適切な高密度化された形態であってよい。当然ながら、補強無機充填剤は様々な補強無機充填剤の混合物、特に上述のシリカの混合物を意味することも理解される。
【0028】
上述の補強無機充填剤の代替として、別の性質の補強充填剤が使用される可能性があるが、この別の性質の補強充填剤は、シリカなどの無機層で覆われているか、又はその表面に官能基部位、特にヒドロキシル部位を含み、この補強充填剤とジエンエラストマーの間に結合を確立するためにカップリング剤の使用が必要となることが、当業者には理解されよう。シリカで部分的又は完全に覆われているカーボンブラックの一例として、シリカで変性させたカーボンブラック、例えば、限定せずに、Cabot CorporationのCRX2000シリーズ又はCRX4000シリーズのEcoblack(登録商標)タイプの充填剤に言及し得る。当業者であれば、用途に応じて、特に関係するタイヤの種類、例えばオートバイ用、乗用車用、又はバンや大型車といった多用途車用タイヤに応じて、補強充填剤の含有量を調節する方法がわかるであろう。好ましくは、補強充填剤(カーボンブラック及び/又は補強無機充填剤、好ましくはカーボンブラック及び/又はシリカ)のこの総含有量は、10~200phr、より優先的に30~180phr、及び更により優先的に40~160phrの範囲内であり、最適な総含有量は、既知のように、目的の特定用途に応じて異なる。本発明の代替的な形態に従って、補強充填剤は、大部分がカーボンブラック以外である。即ち補強充填剤の総質量の50質量%超が、カーボンブラック以外の1つ又は複数の補強充填剤、特にシリカなどの補強無機充填剤であり、実際には、そのような充填剤のみからなることもある(即ち、補強無機充填剤のみからなる、好ましくはシリカのみからなる)。この代替的な形態においてカーボンブラックも存在する場合、カーボンブラックは20phr未満、より優先的に10phr未満(例えば0.5phrから20phrの間、特に1~10phr)の含有量で使用してよい。
【0029】
補強充填剤が、補強充填剤とジエンエラストマーの間に結合を確立するためにカップリング剤の使用が必要な補強無機充填剤を含む場合、本発明のゴム組成物は、通常、この結合を効果的に形成できる作用物質を追加的に含む。本発明のゴム組成物に補強充填剤としてシリカが存在する場合、オルガノシランをカップリング剤として使用してよい。優先的にオルガノシランは、オルガノシランポリスルフィド(対称又は非対称)、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(略してTESPT、EvonikよりSi69の名称で販売されている)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(略してTESPD、EvonikよりSi75の名称で販売されている)、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、ブロックトメルカプトシラン、例えばS-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオエート(MomentiveよりNXT Silaneの名称で販売されている)からなる群から選択される。より優先的に、オルガノシランはオルガノシランポリスルフィドである。本発明の組成物において、カップリング剤の含有量は、有利には20phr未満であり、できるだけ少なく使用することが一般に望ましいと理解される。カップリング剤の含有量は、優先的に0.5phrから12phrの間である。カップリング剤の存在は、補強無機充填剤の存在に依存する。通常、補強無機充填剤の量に対して0.5~15質量%程度である。
【0030】
化学架橋系
本発明のゴム組成物は、少なくとも1つの化学架橋系もベースとする。架橋系は、タイヤ用ゴム組成物の分野において当業者に既知の任意の種類の系であってよい。特に硫黄及び/又はペルオキシド及び/又はビスマレイミドをベースとしてよい。優先的に架橋系は硫黄をベースとし、その場合、加硫系と呼ばれる。硫黄は任意の形態で、特に分子状硫黄又は硫黄供与剤の形態で付与してよい。少なくとも1つの加硫促進剤も優先的に存在し、任意で、同じく優先的に、様々な既知の加硫活性剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸、若しくは等価の化合物、例えばステアリン酸塩及び遷移金属の塩、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)、又は同じく既知の加硫遅延剤を使用し得る。硫黄は、優先的な含有量である0.5から12phrの間、特に0.5から5phrの間で使用する。加硫促進剤は、優先的な含有量である0.5phrから10phrの間、より優先的に0.5から5.0phrの間で使用する。
【0031】
促進剤として、硫黄の存在下でジエンエラストマーの加硫促進剤として機能できる任意の化合物、特にチアゾール系促進剤及びこれらの誘導体、又はスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、チオ尿素、及びキサンテート系促進剤を使用し得る。そのような促進剤の一例として特に以下の化合物を挙げられ得る:2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(略して「MBTS」)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」)、及びこれらの化合物の化合物。化学架橋系として使用してよいペルオキシド化合物として、過酸化アシル、例えばベンゾイルペルオキシド若しくはp-クロロベンゾイルペルオキシド、ケトンペルオキシド、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、例えばt-ブチルペルアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、及びt-ブチルペルオキシフタレート、アルキルペルオキシド、例えばジクミルペルオキシド、ジ(t-ブチル)ペルオキシベンゾエート、及び1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、又はヒドロペルオキシド、例えばt-ブチルヒドロペルオキシドを挙げられ得る。
【0032】
可塑剤
一実施形態に従って、ゴム組成物は追加的に少なくとも1つの可塑剤を含んでよい。タイヤ用ゴム組成物の当業者に既知のように、この可塑剤は、好ましくはガラス転移温度(Tg)が高い炭化水素樹脂、低Tg炭化水素樹脂、可塑化用オイル、及びこれらの混合物から選択される。好ましくは可塑剤は、高Tg炭化水素樹脂、可塑化用オイル、及びこれらの混合物から選択される。定義上、高Tg炭化水素樹脂は環境温度と圧力(20℃、1atm)で固形であるのに対し、可塑化用オイルは環境温度で液体、低Tg炭化水素樹脂は環境温度で粘性である。組成物中の可塑剤の総含有量は1~150phrの範囲内、好ましくは2~120phrの範囲内である。可塑化炭化水素樹脂としても知られる炭化水素樹脂は、当業者によく知られた、本質的に炭素と水素をベースとするポリマーであるが、他の種類の原子、例えば酸素を含むことができ、これは特に可塑剤又は粘着付与剤としてポリマーマトリクス中で使用してよい。これらは、真の希釈剤として機能するように、本質的にそれらの対象となるポリマー組成物と共に使用される内容物において、少なくとも部分的に混和性(即ち相溶性)である。これらは、例えばR.Mildenberg、M.Zander及びG.Collinによる“Hydrocarbon Resins”という著作物(ニューヨーク、VCH,1997,ISBN 3-527-28617-9)に記載されており、第5章で特にタイヤ用ゴムの分野におけるこれらの適用が取り上げられている(5.5.“Rubber Tires and Mechanical Goods”)。既知のように、これらの炭化水素樹脂は、加熱すると軟化して成形できるという意味で、熱可塑性樹脂と記述してもよい。炭化水素樹脂の軟化点は、規格ISO4625(リングアンドボール法)に従って測定する。Tgは規格ASTM D3418(2015)に従って測定する。炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、Mn、及びPI)はサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって測定する(溶媒テトラヒドロフラン;温度35℃;濃度1g/L;流量1mL/分;溶液は注入前に孔径(porosity)0.45μmのフィルタでろ過;ポリスチレン標準物質を用いたMoore較正;連続する3つのWatersカラムのセット(Styragel HR4E、HR1、及びHR0.5);示差屈折計(Waters2410)及び付属のオペレーティングソフトウエア(Waters Empower)で検出。
【0033】
炭化水素樹脂は脂肪族若しくは芳香族、又は脂肪族/芳香族系であってよく、即ち脂肪族及び/又は芳香族モノマーをベースとしてよい。これらは天然又は合成であってよく、石油がベースであってもなくてもよい(石油がベースである場合、石油樹脂という名称でも知られる)。芳香族モノマーとして好適な例に、スチレン、α-メチルスチレン、インデン、オルト、メタ、若しくはパラメチルスチレン、ビニルトルエン、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9カット(又は、より一般的にC8~C10カット)に由来する任意のビニル芳香族モノマーがある。好ましくは、ビニル芳香族モノマーはスチレン、又はC9カット(又は、より一般的にC8~C10カット)に由来するビニル芳香族モノマーである。特に優先的な実施形態に従って、可塑化炭化水素樹脂は、シクロペンタジエン(略してCPD)若しくはジシクロペンタジエン(略してDCPD)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペン/フェノールホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5カットホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9カットホモポリマー又はコポリマー樹脂、α-メチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びこれらの樹脂の混合物からなる群から選択される。
【0034】
既知のように、高Tg炭化水素樹脂は熱可塑性炭化水素樹脂であり、Tgが20℃より高い。好ましくは、高Tg可塑化炭化水素樹脂は以下の特徴の少なくともいずれか1つを示す。
Tgが30℃より高い;
数平均分子量(Mn)が300g/モルから2000g/モルの間、より優先的に400g/モルから1500g/モルの間;
多分散指数(PI)が3未満、より優先的に2未満(念のため、PI=Mw/Mnであり、Mwは質量平均分子量)。
より優先的に、この高Tg可塑化炭化水素樹脂は上記の優先的な特徴を全て示す。上記の優先的な高Tg炭化水素樹脂は当業者によく知られており、例えば以下が市販されている。
ポリリモネン樹脂:DRTよりDercolyte L120(Mn=625g/モル;Mw=1010g/モル;PI=1.6;Tg=72℃)の名称で、又はArizona Chemical CompanyよりSylvagum TR7125C(Mn=630g/モル;Mw=950g/モル;PI=1.5;Tg=70℃)の名称で;
5カット/ビニル芳香族コポリマー樹脂、特にC5カット/スチレン又はC5カット/C9カットコポリマー樹脂:Neville Chemical CompanyよりSuper Nevtac78、Super Nevtac85、及びSuper Nevtac99の名称で、Goodyear ChemicalsよりWingtack Extraの名称で、KolonよりHikorez T1095及びHikorez T1100の名称で、又はExxonよりEscorez2101及びEscorez1273の名称で;
リモネン/スチレンコポリマー樹脂:DRTよりDercolyte TS105の名称で、Arizona Chemical CompanyよりZT115LT及びZT5100の名称で。
【0035】
可塑剤は、20℃で液体であるエクステンダー油(又は可塑化用オイル)を含んでもよく、「低Tg」可塑剤と呼ばれる。即ちこの可塑剤のTgは、定義上、-20℃よりも低く、好ましくは-40℃よりも低い。芳香族性であれ非芳香族性であれ、エラストマーに対する可塑化特性が知られている任意のエクステンダー油を使用してよい。ある程度粘着性のあるこれらの油は、特に環境温度(20℃)で性質的に固体である高Tg炭化水素樹脂とは異なり、環境温度で液体(即ち、念のため、最終的に容器の形状をとることのできる物質)である。特に好適であるのは、ナフテン系オイル(低粘度又は高粘度、特に硬化又は非硬化)、パラフィン系オイル、MES(中度抽出溶媒和物)オイル、TDAE(処理済み留出物芳香族抽出物)オイル、RAE(残留芳香族抽出物)オイル、TRAE(処理済み残留芳香族抽出物)オイル、SRAE(安全残留芳香族抽出物)オイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、スルホン酸エステル可塑剤、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される可塑化用オイルである。
【0036】
添加剤
本発明によるゴム組成物は、例えば非補強充填剤、顔料、保護剤、例えば抗オゾンワックス、化学的オゾン劣化防止剤、若しくは酸化防止剤、抗疲労剤、又は補強樹脂(例えば国際公開第02/10269号に記載)など、当業者に既知で、一般にタイヤ用の、特にトレッド用のゴム組成物に使用される通常の添加剤及び加工助剤の全部又は一部も含んでよい。
【0037】
本発明によるゴム組成物の製造方法
本発明によるゴム組成物は、当業者によく知られた連続する2つの作製段階を用いて、適切な混合機で製造する。第1段階は、最高温度が130~200℃、好ましくは145~185℃の範囲内である高温での熱機械的作業又は混練(「非生産」段階)であり、続く第2段階は、通常は120℃未満、例えば30℃から100℃の間である低めの温度での機械的作業(「生産」段階とも呼ばれる)で、この仕上げ段階において、化学架橋系を混入する。一般に、化学架橋系を除く本発明の組成物の全ての基本構成要素、即ち、選択した実施形態の式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物、1つ又は複数の補強充填剤、及び必要に応じてカップリング剤は、第1の「非生産」段階で、適宜、1つ又は複数のジエンエラストマーに混練によってしっかり混入する。つまり、少なくともこれらの様々な基本構成要素を、適切な混合機、例えば標準的な密閉式混合機(例えば「バンバリー」型)に投入し、1つ又は複数のステップで、最高温度が130~200℃の範囲内、好ましくは145~185℃の範囲内に達するまで熱機械的に混練する。この非生産段階における総混練時間は、一般に2分から10分の間である。
【0038】
一般に、機械的作業である第2段階(「生産」段階)では、第1の非生産段階で得られた混合物を、通常は120℃未満、例えば30℃から100℃の間の温度まで冷却した後に、オープンミルなどの外部混合機で実施する。次いで架橋系を混入し、その後に、合わせた物を数分間、例えば5分から15分間混合する。このようにして得た最終組成物は、続いて、例えば板状又プラーク(plaque)状で、特に研究室での特性評価のためにカレンダー加工し、又は例えばタイヤのトレッドとして使用できるゴム半製品(又は成形要素)の形態で押出成形する。組成物は硬化前の状態(架橋又は加硫前)又は硬化後の状態(架橋又は加硫後)のいずれかであってよく、タイヤで使用できる半製品であってよい。組成物の架橋は、当業者に既知の方法で、例えば130℃から200℃の間の温度と圧力下で実施してよい。
【0039】
本発明の第1の実施形態に従って、ゴム組成物の製造前に、ジエンエラストマーを式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物でグラフト化した。従ってこの場合、第1の「非生産」段階で投入するのはグラフト化したジエンエラストマーである。従って、方法のこの第1の実施形態に従って、方法は以下のステップを含む。
上記に定義した式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物の溶液又はバルクグラフト化によってジエンエラストマーを変性させるステップ;
このように式(I)の化合物(又は好ましい化合物)でグラフト化したジエンエラストマーに、補強充填剤、及び化学架橋系を除く組成物の全ての基本構成要素を混入し、合わせた混合物を、最高温度が130~200℃、好ましくは145~185℃の範囲内に達するまで、1回又は複数回、熱機械的に混練するステップ;
前のステップで得た混合物を100℃以下の温度まで冷却するステップ;
続いて、化学架橋系を混入するステップ;
前のステップで得た混合物を、最高温度が120℃以下になるまで混練するステップ;続いて任意で
このようにして得たゴム組成物を押出成形又はカレンダー加工するステップ。
有利には、方法のこの第1の実施形態のステップは連続している。
【0040】
ジエンエラストマーのグラフト化は、前記ジエンエラストマーと、式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物のニトリルオキシドとの反応により実施する。この反応中、このニトリルオキシド基はポリマーの鎖と共有結合を形成する。式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物のグラフト化は、ニトリルオキシドの[3+2]付加環化及び最初のポリマーの鎖の不飽和化によって実施する。[3+2]付加環化の機構は国際公開第2012/007441号に説明されている。式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物のジエンエラストマーへのグラフト化は、バルクで、例えば押出成形機、密閉式混合機、又はオープンミルなどの外部混合機で実施してよい。溶液中で連続的又はバッチ式に実施してもよい。このように変性させたジエンエラストマーは、当業者に既知の任意の種類の手段で、特にスチームストリッピング法で溶液から分離してよい。本発明に従って、ジエンエラストマーは、その鎖に沿って、上記に定義した式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物のグラフト化の反応に由来する1つ又は複数のペンダント基を有する。有利には、これらのペンダント基は鎖に沿ってランダムに分布している。
【0041】
好ましい実施形態に従って、式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物のグラフト化のモル度は、0.01~5%、好ましくは0.01~1%、より優先的に0.1~1%の範囲内である。用語「グラフト化のモル度」は、ジエンエラストマーを構成するモノマー単位の100モル当たりの、ジエンエラストマーにグラフトされる式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物のモル数を意味すると理解される。グラフト化のモル度はジエンエラストマーの従来の分析法、例えば1H NMR分析によって決定してよい。
【0042】
本発明の第2の実施形態に従って、式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、更により優先的に式(III)の化合物によるジエンエラストマーのグラフト化は、ゴム組成物の製造と同時に実施する。この場合、まだグラフト化していないジエンエラストマーと式(I)の化合物(又は好ましい化合物)の両方を、第1の「非生産」段階で投入する。優先的には、式(I)の化合物と副反応が生じないように、続いて、この同じ非生産段階で、補強充填剤を添加する。従って、方法の第2の実施形態に従って、方法は以下のステップを含む。
バルク配合時に、上記に定義した式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物を、特に60~140℃の範囲内の温度で、特に30秒~3分の範囲内の時間でジエンエラストマーに混入し;これらの温度及び時間条件によって、有利には60%以上、より優先的に80%以上のグラフト率を達成し、好ましくは、続いて、補強充填剤、並びに化学架橋系を除く組成物の全ての基本構成要素を混入し、合わせた混合物を、最高温度が130~200℃、好ましくは145~185℃の範囲内に達するまで、1回又は複数回、熱機械的に混練するステップ;
合わせた物を100℃以下の温度まで冷却するステップ;
続いて、化学架橋系を混入するステップ;
合わせた混合物を、最高温度が120℃以下になるまで混練するステップ;並びに任意で
このようにして得たゴム組成物を押出成形又はカレンダー加工するステップ。
有利には、方法のこの第2の実施形態のステップは連続している。
【0043】
式(V)の化合物を追加的に含む本発明のゴム組成物
本発明の代替的な一形態に従って、ゴム組成物は、任意でジエンエラストマーに予めグラフトされた少なくとも1つの式(V)の化合物を追加的に含み、前記ジエンエラストマーの鎖には、上記に定義した少なくとも1つの式(I)の化合物がすでにグラフトされている可能性があり得る:
【化12】
(V)
式中、
・A1は、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたアレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている;並びに
・E1は、任意で1つ又は複数のヘテロ原子を含む二価炭化水素基である。
【0044】
好ましくは、式(V)の化合物の基A1は、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたC6-C14アレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている。より優先的に、この基A1は、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、飽和、直鎖状、若しくは分岐状C1-C24炭化水素鎖で置換されたC6-C14アレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数の窒素、硫黄、若しくは酸素ヘテロ原子で置換又は中断されている。更により優先的に、この基A1は、任意でC1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択される1つ又は複数の同一若しくは異なる置換基で置換されたC6-C14アレーンジイル環であり、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキル基である。
【0045】
好ましくは、式(V)の化合物は式(Va)及び(Vb)の化合物から選択される:
【化13】
式中、
式(Va)のR8~R12から選択される1つの基、及び式(Vb)のR8~R14から選択される1つの基は、次の式(VI)の基を示し:
【化14】
(VI)
式中、E1は上記定義と同じであり;並びに
・式(Va)のR8~R12から選択される、式(VI)の基を示すもの以外の4つの基、及び式(Vb)のR8~R14から選択される、式(VI)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、互いに独立して、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖である。
好ましくは、(Va)及び(Vb)の化合物において、式(Va)のR1~R5から選択される、式(VI)の基を示すもの以外の4つの基、及び式(Vb)のR1~R7から選択される、式(VI)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、互いに独立して、水素原子、又は、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断された飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。更により優先的に、(Va)及び(Vb)の化合物において、式(Va)のR1~R5から選択される、式(VI)の基を示すもの以外の4つの基、及び式(Vb)のR1~R7から選択される、式(VI)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基によって形成される群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。
【0046】
本発明の好ましい実施形態に従って、式(Va)において、R9は上記に定義した式(VI)の基であり、R8、R10、R11、及びR12は、同一又は異なり、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。より優先的に、R9は上記に定義した式(VI)の基であり、R8、R10、R11、及びR12は、同一又は異なり、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。この実施形態において更により優先的に、式(Va)において、R9は上記に定義した式(VI)の基であり、R11は水素原子であり、R8、R10、及びR12は、好ましくは、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断された飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。更により優先的に、R9は上記に定義した式(VI)の基であり、R11は水素原子であり、R8、R10、及びR12は、同一又は異なり、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態に従って、式(Vb)において、R8は上記に定義した式(VI)の基であり、R9~R14は、同一又は異なり、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。より優先的に、R8は上記に定義した式(VI)の基であり、R9~R14は、同一又は異なり、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。この実施形態において更により優先的に、R8は上記に定義した式(VI)の基であり、R9~R14は同一であり、水素原子である。式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は二価炭化水素基であり、任意で1つ又は複数のヘテロ原子を含んでよい。本発明の意味において、用語「二価炭化水素基」は、基A1とイミダゾリジノン基を架橋するスペーサー基(又は結合基)を意味すると理解され、このスペーサー基は飽和又は不飽和で、好ましくは飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24炭化水素鎖であり、任意で、例えばN、O、及びSなど1つ又は複数のヘテロ原子を含んでよい。前記炭化水素鎖は、任意で置換されていてよく、ただし、置換基はニトリルオキシド及び上記に定義したイミダゾリジノン基と反応しないものとする。優先的に、式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は、好ましくは、任意で1つ又は複数の窒素、硫黄、若しくは酸素原子で中断された飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24、より優先的にC1-C10、更により優先的にC1-C6炭化水素鎖である。好ましくは、式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は-R-、-NH-R-、-O-R-、及び-S-R-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである。更により優先的に、式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである。更により優先的に、式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、及び-O-CH2-CH2-CH2-CH2-から選択される。
【0048】
好ましい実施形態に従って、式(V)の化合物は式(Vb)の化合物である。この好ましい実施形態では、特に、基E1が-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである、上記に定義した式(Vb)の化合物が優先される。この実施形態に従って、更により優先的に、式(V)の化合物は、以下のような式(Vb)の化合物である。
8は式(VI)の基であり、基E1は-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである;並びに
9~R14は、同一又は異なり、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状C1-C24脂肪族炭化水素鎖である。
この実施形態に従って、更により優先的に、式(V)の化合物は、以下のような式(Vb)の化合物である。
8は式(VI)の基であり、基E1は-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである;並びに
9~R14は、同一又は異なり、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである。
この実施形態に従って、更により優先的に、式(V)の化合物は、以下のような式(Vb)の化合物である。
8は式(VI)の基であり、基E1は-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである;並びに
9~R14は同一であり、水素原子である。
【0049】
好ましい実施形態に従って、式(V)の化合物は、式(VII)の化合物及び式(VIII)からなる群から選択され、更により優先的に式(VII)の化合物である:
【化15】
式(V)の化合物、特に式(Vb)及び(VII)の化合物は、例えば国際公開第2019007881号に記載されている方法で合成してよい。優先的に、本発明のゴム組成物における式(V)の化合物、好ましくは式(Vb)の化合物、より優先的に化合物(VII)のモル含有量は、ジエン単位か非ジエン単位かの区別は関係なく、0.01~5モル%、好ましくは0.01~1モル%、より優先的に0.1~1モル%の範囲内である。
【0050】
好ましい実施形態に従って、本発明のゴム組成物は、上記に定義した少なくとも1つの式(Ib)の化合物、及び上記に定義した少なくとも1つの式(Vb)の化合物を含み、前記化合物は任意でジエンエラストマーに予めグラフトされている。好ましくは、この実施形態では、本発明のゴム組成物は少なくとも以下を含む。
1を有する式(Ib)の化合物は式(II)の基であり、式(II)において、基Eは-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンであり、また塩素原子である基X、及び同一又は異なるR2~R7は、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである;並びに
8を有する式(Vb)の化合物は式(VI)の基であり、式(VI)において、基E1は-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンであり、また同一又は異なるR9~R14は、水素原子、C1-C12(より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基からなる群から選択され、R’がC1-C12、より優先的にC1-C6、更により優先的にC1-C4アルキルである;並びに
前記化合物が、任意でジエンエラストマーに予めグラフトされている。
更により優先的に、この実施形態では、本発明のゴム組成物は、任意でジエンエラストマーに予めグラフトされた少なくとも1つの式(III)の化合物及び少なくとも1つの式(VII)の化合物を含む。驚くことに、本発明のゴム組成物が、任意でジエンエラストマーに予めグラフトされた、少なくとも1つの式(I)の化合物及び少なくとも1つの式(V)の化合物、好ましくは少なくとも1つの式(Ib)の化合物及び少なくとも1つの式(Vb)の化合物、更により優先的に式(III)の化合物及び少なくとも1つの式(VII)の化合物を含む場合、先行技術のゴム組成物と比べて硬化前の剛性/ヒステリシスの妥協点が改善されるという利点を示す。
【0051】
式(V)の化合物を追加的に含む本発明のゴム組成物の調製
これらの組成物の第1の実施形態に従って、ゴム組成物の製造前に、ジエンエラストマーは、式(I)の化合物及び式(V)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物及び式(Vb)の化合物、より優先的に式(III)の化合物及び式(VII)の化合物でグラフト化されている。従ってこの場合、第1の「非生産」段階で投入されるのは、式(I)及び(V)の化合物でグラフト化したジエンエラストマーとなる。従って、方法のこの第1の実施形態に従って、方法は以下のステップを含む。
上記に定義した式(I)及び式(V)の化合物、好ましくは式(Ib)及び式(Vb)の化合物、より優先的に式(III)の化合物及び式(VII)の化合物の溶液又はバルクグラフト化によってジエンエラストマーを変性させるステップ;
このように式(I)及び式(V)の化合物(又は好ましい化合物)でグラフト化したジエンエラストマーに、補強充填剤、及び化学架橋系を除く組成物の全ての基本構成要素を混入し、合わせた混合物を、最高温度が130~200℃、好ましくは145~185℃の範囲内に達するまで、1回又は複数回、熱機械的に混練するステップ;
前のステップで得た混合物を100℃以下の温度まで冷却するステップ;
続いて、化学架橋系を混入するステップ;
前のステップで得た混合物を、最高温度が120℃以下になるまで混練するステップ;続いて任意で
このようにして得たゴム組成物を押出成形又はカレンダー加工するステップ。
有利には、方法のこの第1の実施形態のステップは連続している。
【0052】
ジエンエラストマーのグラフト化は、前記ジエンエラストマーと、式(I)の化合物のニトリルオキシド及び式(V)の化合物のニトリルオキシドとの反応により実施する。上述の通り、式(I)の化合物及び式(V)の化合物(又は上述の好ましい化合物)のグラフト化は、ニトリルオキシドの[3+2]付加環化及び最初のジエンエラストマーの鎖の不飽和化によって実施する。式(I)及び(V)の化合物、好ましくは式(Ib)及び(Vb)の化合物、より優先的に式(III)及び(VII)の化合物の、最初のポリマーへのグラフト化は、バルクで、例えば押出成形機、密閉式混合機、又はオープンミルなどの外部混合機で実施してよい。溶液中で連続的又はバッチ式に実施してもよい。このように変性させたジエンエラストマーは、当業者に既知の任意の種類の手段で、特にスチームストリッピング法で溶液から分離してよい。式(I)及び(V)の化合物、好ましくは式(Ib)及び(Vb)の化合物、より優先的に式(III)及び(VII)の化合物は、同時に密閉式混合機若しくは外部混合機に、又はグラフト化を溶液中で実施する場合には同時に反応器に投入してよい。これらの化合物は互いに非同時に投入してもよく、その順序は、これらの化合物の、最初のジエンエラストマーの鎖へのグラフト化には重要ではない。グラフト化後、ジエンエラストマーは、その鎖に沿って、式(I)及び式(V)の化合物(又は上述の好ましい化合物)のグラフト化の反応に由来する1つ又は複数のペンダント基を有する。有利には、これらのペンダント基は、ジエンエラストマーの鎖に沿ってランダムに分布している。
【0053】
式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物のグラフト化のモル度は、0.01~5%、好ましくは0.01~1%、より優先的に0.1~1%の範囲内であり、式(V)の化合物、好ましくは式(Vb)の化合物、より優先的に式(VII)の化合物のグラフト化のモル度は、0.01~5%、好ましくは0.01~1%、より優先的に0.1~1%の範囲内である。
【0054】
これらの組成物の第2の実施形態に従って、式(I)及び式(V)の化合物、好ましくは式(Ib)及び式(Vb)の化合物、更により優先的に式(III)及び式(VII)の化合物によるジエンエラストマーのグラフト化は、ゴム組成物の製造と同時に実施する。この場合、まだグラフト化していないジエンエラストマーと式(I)の化合物及び式(V)の化合物(又は好ましい化合物)の両方を、第1の「非生産」段階で投入する。優先的には、式(I)の化合物及び式(V)の化合物と副反応が生じないように、続いて、この同じ非生産段階で、補強充填剤を添加する。従って、方法の第2の実施形態に従って、方法は以下のステップを含む。
バルク配合時に、上記に定義した式(I)の化合物、好ましくは式(Ib)の化合物、より優先的に式(III)の化合物、上記に定義した式(V)の化合物、好ましくは式(Vb)の化合物、より優先的に式(VII)の化合物を、特に60~140℃の範囲内の温度で、特に30秒~3分の範囲内の時間でジエンエラストマーに混入し;これらの温度及び時間条件によって、好ましくは60%以上、より優先的に80%以上のグラフト率を達成し、好ましくは、続いて、補強充填剤、並びに化学架橋系を除く組成物の全ての基本構成要素を混入し、合わせた混合物を、最高温度が130~200℃、好ましくは145~185℃の範囲内に達するまで、1回又は複数回、熱機械的に混練するステップ;
合わせた物を100℃以下の温度まで冷却するステップ;
続いて、化学架橋系を混入するステップ;
合わせた混合物を、最高温度が120℃以下になるまで混練するステップ;並びに任意で
このようにして得たゴム組成物を押出成形又はカレンダー加工するステップ。
有利には、方法のこの第2の実施形態のステップは連続している。
【0055】
タイヤ用半製品及びタイヤ
本発明の別の主題は、上記に定義した本発明のゴム組成物を含むタイヤ用ゴムで作られた半製品である。半製品とは、タイヤの製造を目的としたゴムで作られた製品である。これは、トレッド、下地層、クラウン補強プライ(例えば作業プライ、保護プライ、又はフーピングプライ)、カーカス補強プライ、サイドウォールのプライ、ビードのプライ、プロテクターのプライ、下地層のプライ、ゴムブロックのプライ、及びタイヤの各部間の境界面となる他のプライであってよい。好ましくは、半製品はトレッドである。本発明の別の主題は、本発明による少なくとも1つのゴム組成物を含む、又は上述のタイヤの半製品を含むタイヤである。本発明のタイヤは、特に自転車など原動機が付いていない車両、又は以下の種類の原動機付き車両:乗用車、SUV(スポーツユーティリティビークル)、二輪車(特にオートバイ)、航空機、バン、大型車(即ち、地下鉄車両、バス、道路走行用大型車(トラック及びトレーラー))、オフロード車から選択される産業用車、例えば農業用大型車両若しくは土木機械、又は他の輸送若しくは運搬用車両に装備することを目的としてよい。
【0056】
上述の主題に加えて、本発明は以下の実施に記載する主題の少なくとも1つに関する。
1.少なくとも1つのジエンエラストマー、少なくとも1つの補強充填剤、少なくとも1つの化学架橋系、及び任意で前記ジエンエラストマーに予めグラフトされた少なくとも1つの式(I)の化合物をベースとするゴム組成物であって:
【化16】
式中、
Aは、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたアレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている;
Eは、任意で1つ又は複数のヘテロ原子を含む二価炭化水素基である;並びに
Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を示す
ゴム組成物。
2.ジエンエラストマーが、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、実施1に記載のゴム組成物。
3.式(I)の化合物のグラフト化のモル度が、0.01~5%、好ましくは0.01~1%、より優先的に0.1~1%の範囲内である、実施1又は2に記載のゴム組成物。
4.基Aが、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは直鎖状若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたC6-C14アレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている、実施1~3のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
5.式(I)の化合物が、(Ia)及び(Ib)の化合物から選択されるゴム組成物であって:
【化17】
式中、
式(Ia)のR1~R5から選択される1つの基、及び式(Ib)のR1~R7から選択される1つの基は、次の式(II)の基を示し:
【化18】
(II)
式中、E及びXは実施1に記載の通りであり、
式(Ia)のR1~R5から選択される、式(II)の基を示すもの以外の4つの基、及び式(Ib)のR1~R7から選択される、式(II)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、互いに独立して、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖である
実施1~4のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
6.基Eが、好ましくは、任意で1つ又は複数の窒素、硫黄、若しくは酸素原子で中断された飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24、より優先的にC1-C10、更により優先的にC1-C6炭化水素鎖である、実施1~5のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
7.基Eが、-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである、実施1~6のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
8.式(I)の化合物が式(Ib)の化合物である、実施1~7のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
9.式(I)の化合物が式(III)の化合物である、実施1~8のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
【化19】
(III)
10.任意でジエンエラストマーに予めグラフトされた少なくとも1つの式(V)の化合物を追加的に含むゴム組成物であって:
【化20】
(V)
式中、
1は、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたアレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている;並びに
1は、任意で1つ又は複数のヘテロ原子を含む二価炭化水素基である
実施1~9のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
11.式(V)の化合物のグラフト化のモル度が、0.01~5%、好ましくは0.01~1%、より優先的に0.1~1%の範囲内である、実施10に記載のゴム組成物。
12.基A1が、任意で1つ又は複数の同一若しくは異なる、好ましくは直鎖状若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖で置換されたC6-C14アレーンジイル環であり、この炭化水素鎖が、任意で1つ又は複数のヘテロ原子で置換又は中断されている、実施10又は11に記載のゴム組成物。
13.式(V)の化合物が、式(Va)及び(Vb)の化合物から選択されるゴム組成物であって:
【化21】
式中、
式(Va)のR8~R12から選択される1つの基、及び式(Vb)のR8~R14から選択される1つの基は、次の式(VI)の基を示し:
【化22】
(VI)
1は実施10に記載の通りであり;並びに
式(Va)のR8~R12から選択される、式(VI)の基を示すもの以外の4つの基、及び式(Vb)のR8~R14から選択される、式(VI)の基を示すもの以外の6つの基は、同一又は異なり、互いに独立して、水素原子、又は、好ましくは、任意で1つ若しくは複数のヘテロ原子で置換若しくは中断された飽和、直鎖状、若しくは分岐状脂肪族炭化水素鎖である
実施10~12のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
14.式(V)の化合物の基E1が、
好ましくは、任意で1つ又は複数の窒素、硫黄、若しくは酸素原子で中断された飽和、直鎖状、又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6炭化水素鎖である、実施10~13のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
15.式(V)の化合物の基E1が、-R-及び-OR-からなる群から選択され、Rが直鎖状又は分岐状C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にC1-C6アルキレンである、実施10~14のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
16.式(V)の化合物が式(Vb)の化合物である、実施10~15のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
17.式(V)の化合物が式(VII)の化合物である、実施10~17のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
【化23】
(VII)
18.補強充填剤がカーボンブラック又はカーボンブラック混合物である、実施1~17のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
19.補強充填剤が補強無機充填剤又は補強無機充填剤混合物、好ましくはシリカ又はシリカ混合物である、実施1~18のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
20.補強充填剤が、少なくとも1つのカーボンブラックと少なくとも1つの補強無機充填剤との混合物、好ましくは少なくとも1つのカーボンブラックと少なくとも1つのシリカとの混合物である、実施1~19のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
21.組成物が、補強無機充填剤とジエンエラストマーを結合させるカップリング剤を追加的に含む、実施19又は20に記載のゴム組成物。
22.前記カップリング剤が、オルガノシランポリスルフィド、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、及びブロックトメルカプトシランからなる群から選択される、実施21に記載のゴム組成物。
23.補強充填剤の含有量が、10~200phr、好ましくは30~180phr、より優先的に40~160phrの範囲内である、実施1~23のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
24.追加的に可塑剤を含む、実施1~23のうちいずれか一項に記載のゴム組成物。
25.可塑剤が、Tgが20℃より高い可塑化炭化水素樹脂、可塑化用オイル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施22に記載のゴム組成物。
26.実施1~25のうちいずれか一項に定義するゴム組成物を含むことを特徴とする、タイヤ用ゴムで作られた半製品。
27.実施26に記載の少なくとも1つの半製品、又は実施1~25のうちいずれか一項に記載の少なくとも1つの組成物を含むことを特徴とするタイヤ。
【実施例
【0057】
以下に実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
1 使用する試験と測定
1.1 ガラス転移温度の決定
ポリマーのガラス転移温度Tgは、示差熱量計(示差走査熱量計)を用いて、規格ASTM D3418(2015)に従って測定する。
【0058】
1.2 エラストマーの数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及び多分散指数の測定
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用する。SECによって、多孔質ゲルを充填したカラムを通して、溶液中の高分子を大きさに応じて分離することが可能となる。高分子は流体力学的体積に従って分離され、最大のものが最初に溶出される。SECは絶対法ではないが、エラストマーのモル質量の分布を把握することができる。様々な数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)は市販の標準品を用いて決定してよく、多分散指数(PI=Mw/Mn)は「Moore」較正によって計算してよい。
試験対象のエラストマー試料の調製:
分析前にエラストマー試料に特定の処理は行わない。試料は約1g/Lの濃度でクロロホルム又は混合液[テトラヒドロフラン+1容量%のジイソプロピルアミン+1容量%のトリエチルアミン+1容量%の蒸留水(容量%=容量百分率)]にそのまま溶解する。次いで、溶液を孔径0.45μmのフィルタでろ過してから注入する。
SEC分析
装置はWatersのAllianceクロマトグラフを使用する。エラストマーの溶解に使用する溶媒に応じて、溶出溶媒は混合液[テトラヒドロフラン+1容量%のジイソプロピルアミン+1容量%のトリエチルアミン]又はクロロホルムとする。流量は0.7mL/分、システム温度は35℃、分析時間は90分とする。連続する4つのWatersカラムのセット(商品名Styragel HMW7、Styragel HMW6E、及びStyragel HT6Eが2つ)を使用する。注入するエラストマー試料溶液の容量は100μLとする。検出器は波長810nmのWaters2410示差屈折計である。クロマトグラフデータを使用するソフトウェアはWaters Empowerシステムである。計算した平均モル質量は、市販のPSS Ready Cal-Kitポリスチレン標準から得られる較正曲線検量線と関連している。
【0059】
1.3 分子の特性評価
合成分子の構造分析とモル純度測定はNMR分析で実施する。スペクトルは、「5mm(BBFO)Z軸グラジエントの広域帯」プローブを装備したBrukerの「Avance3400MHz分光計」で得る。定量的1H NMR実験は、30°単一パルスシーケンスを用い、取り込み64回で各間の繰り返し時間を3秒とする。別段の指示がない限り、試料は重水素化溶媒の重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解する。重水素化溶媒はロックシグナルにも使用する。例えば、2.44ppmの重水素化DMSOのプロトンのシグナルについて、0ppmのTMS基準に対して較正を実施する。1H NMRスペクトルと2D 1H/13C HSQC及び1H/13C HMBC実験とを組み合わせることで、分子の構造決定が可能となる(帰属表参照)。モル定量化は、定量1D 1H NMRスペクトルから実施する。質量分析による分析は、エレクトロスプレーイオン化法(DI/ESI)の直接注入によって実施する。分析は、Bruker HCT分光計(流量600μL/分、噴霧器ガス圧68.95kPa(10psi)、噴霧器ガス流量4L/分)で実施した。
【0060】
1.4 ジエンエラストマーにグラフトする化合物の調製
ジエンエラストマーにグラフトする化合物のモル含有量を、NMR分析によって測定する。スペクトルは、5mm(BBFO)Z軸グラジエントのCryoプローブを装備したBrukerの500MHz分光計で獲得する。定量的1H NMR実験は、30°単一パルスシーケンスを用い、各取り込み間の繰り返し時間を5秒とする。ロックシグナルを得るために、試料は重水素化クロロホルム(CDCl3)に溶解する。2D NMR実験により、炭素原子とプロトン原子の化学シフトからグラフト単位の性質を確認できた。
【0061】
1.5 動的特性
動的特性G*及びtan(δ)maxは、粘性分析器(Metravib VA4000)で、規格ASTM D5992-96に従って測定する。10Hzの周波数で交互の単一正弦波のせん断応力を与えた加硫組成物試料(厚さ4mm、断面積400mm2の円筒形試験片)の応答を、基準温度条件(23℃)下で規格ASTM D1349-09に従って記録する。歪み振幅掃引は、0.1~50%のピークツーピーク(外向きサイクル)、次いで50~0.1%のピークツーピーク(戻りサイクル)で実施する。使用する結果は、23℃での複素動的せん断弾性係数G*及び23℃での動的損失係数tan(δ)である。外向きサイクルでは、50%の歪みにおける複素動的せん断弾性係数G*の値(G*50%外向き)を23℃で記録する。戻りサイクルでは、観察された動的損失係数tan(δ)の最大値(tan(δ)max)を23℃で記録する。様々な試験試料の23℃でのtan(δ)max及び23℃でのG*50%外向きを算出し、続いて比較するために、結果は100を基準として、任意の値100を対照として示す。
23℃でのtan(δ)max:100を基準とする試験試料の値を操作に応じて算出する:(試験試料の23℃でのtan(δ)max値/対照の23℃でのtan(δ)max値)×100。このとき、結果が100より小さければ、ヒステリシスの低下と、それに対応する転がり抵抗性能の向上が示される。
23℃でのG*50%外向き:100を基準とする試験試料の値を操作に応じて算出する:(試験試料の23℃でのG*50%外向き値/対照の23℃でのG*50%外向き値)×100。このとき、結果が100より大きければ、23℃での50%の歪みにおける複素動的せん断弾性係数G*50%外向きの向上と、それに対応する材料剛性の向上が示される。
【0062】
2 化合物の合成
2.1 化合物Aの合成:2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド
【化24】
2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドは、ステップa1、ステップa2、ステップb1、ステップb2、ステップc、及びステップdと呼ぶ6つのステップで合成する。ステップa1は手順1に従って、ステップa2は手順2に従って、またステップb1は手順3に従って実施する。ステップb2及びcは手順4に従って実施する。ステップdは手順5に従って実施する。
ステップa1:2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドの調製
【化25】
【0063】
手順1:
この化合物は、Russell,Alfred及びLockhart,Luther B.によるOrganic Syntheses,22,63-4;1942、若しくはWynberg,Hans及びMeijer,Egbert W.によるOrganic Reactions(Hoboken、米国ニュージャージー州),28,1982に記載の「Reimer-Tiemann」手順に従って、又はCasiraghi,Giovanniらによるthe Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 1:Organic and Bio-Organic Chemistry(1972-1999),(9),1862-5,1980に記載の手順に従って、又はJones,Gurnos及びStanforth,Stephen P.によるOrganic Reactions(Hoboken、米国ニュージャージー州),49,1997に記載のビルスマイヤー反応によって、ナフトールからホルミル化反応によって得てよい。2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドは市販されており、例えばAldrich(CAS708-06-5)から入手してよい。
ステップa2:1-(2-クロロエチル)イミダゾリジン-2-オンの調製
【化26】
【0064】
手順2:
この化合物は、国際公開第2012/007684号に記載の手順に従って得てよい。
ステップb1:2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドの調製
【化27】
【0065】
手順3:
DMF(20mL)中の2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド(20.0g、0.116モル)と炭酸カリウム(24.08g、0.174モル)と1-(2-クロロエチル)イミダゾリジン-2-オン(25.9g、0.174モル)の混合物を、75℃(浴温)で3.0~3.5時間加熱する。続いて、1-(2-クロロエチル)イミダゾリジン-2-オン(17.26g、0.116モル)の第2の部分を添加し、反応媒体を75℃(浴温)で9~10時間撹拌する。温度が40~45℃まで低下したら、反応媒体を、水(700mL)中の水酸化ナトリウム溶液(10g、0.25モル)に注ぐ。混合物を10~15分間撹拌する。沈殿物をろ別し、フィルタ上で蒸留水で洗浄する(400mLで3回)。灰色の固体(31.51g、収率95%)が得られる。モル純度は85%(1H NMR)より大きい。
【化28】
【表1】

溶媒:CDCl3
ステップb2及びc:2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドオキシムの調製
【化29】
手順3の最後に分離した生成物を次の手順4で使用する。
【0066】
手順4:
エタノール(5mL)中ヒドロキシルアミン溶液(2.05g、31.0ミリモル、水中50%、Aldrich)をエタノール(30mL)中2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒド(6.3g、22.2ミリモル)溶液に45℃(浴温)で添加する。反応媒体を55℃(浴温)で4時間撹拌する。温度が40℃まで低下したら、酢酸エチル(30mL)を15分かけて滴下する。沈殿物をろ別し、フィルタ上でエタノール/酢酸エチル混合物で洗浄する。白色の固体(4.00g、収率60%)が得られる。モル純度(1H NMRで推定)は95%より大きい。
【化30】
【表2】

溶媒:MeOH
ステップd:2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドの調製
【化31】
【0067】
手順5:
NaOCl水溶液(74.44g/L;98mL;4.0eq.)(eq.=モル当量)を、1℃(浴温=0℃)に冷却した酢酸エチル(230mL)中の上記2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドオキシム(7.30g;24.4ミリモル)懸濁液に10分かけて滴下する。反応媒体を0~2℃(浴温=0℃)で8.5時間撹拌する。NaOCl水溶液(74.44g/L;98mL;4.0eq.)の第2の部分を5分かけて添加する。反応媒体を0~2℃(浴温=0℃)で10~11時間撹拌する。沈殿物をろ別し、フィルタ上で水で(25mLで2回)、次いで酢酸エチルで(10mLで2回)洗浄する。これにより、融点が127.0~127.5℃の白色の固体が得られる(6.24g;18.7ミリモル;収率77%)。化合物A、2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドが、92%超のモル純度(1H NMR)、6モル%未満の2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド、及び2モル%の残留溶媒不純物で得られる。
【化32】
【表3】

溶媒:CDCl3
【0068】
2.2 化合物Bの合成:2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド
2.1項の手順1~4のステップを繰り返して2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドオキシムを得た後に、以下に記載する手順6を実施して、2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドを得る。
【0069】
手順6:
NaOCl水溶液(78g/L;35mL;1.46eq.)を、4℃(浴温=0℃)に冷却したジクロロメタン(300mL)中の2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドオキシム(7.5g;25.06ミリモル)溶液に15分かけて滴下する。反応媒体を4~5℃で60~70分間撹拌する。有機相を分離する。水相をジクロロメタン(25mL)で抽出する。合わせた有機溶液を水で洗浄する(25mLで2回)。溶媒を減圧下で40~50mLまで蒸発させる。40/60石油エーテル(60mL)を添加し、結晶化させる。沈殿物をろ別し、40/60石油エーテルで洗浄する(30mLで2回)。白色の固体(6.46g、収率87%)が得られる。1H NMRで推定したモル純度99%超、残留溶媒不純物1%未満の生成物Bが得られる。
【化33】

【表4】

溶媒:CDCl3
【0070】
3 変性ポリマーの実施
3.1 2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドでグラフト化したスチレン/ブタジエンコポリマー
2.1項に記載する合成方法で得た化合物A、2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド(0.27g;0.81ミリモル)を、オープンミル(外部混合機、23℃)で、20gの非官能基化スチレン/ブタジエンコポリマー(ポリマーの総質量に対して26.5質量%のスチレン及びブタジエン部の質量に対して25質量%の1,2-ブタジエン単位を含有;Mn=150,000g/モル、PI=1.84、1.2項に記載する方法に従って測定)に混入する。混合物を15回の転倒混和でホモジナイズする。この配合段階に続いて、10barの圧力下で、120℃で10分間熱プレス処理を行う。1H NMRによる分析から、グラフト化のモル度が0.29%で、モルグラフト率が96%であることが実証できた。
グラフト化度の判定が可能となる化学シフト:
7.6~8.2ppm:6芳香族H
4.2~4.3ppm:2H CH2-O
3.1~3.8ppm:6H CH2-N
【0071】
3.2 2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドでグラフト化したポリイソプレン
1.2項に記載する合成方法で得た化合物A、2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド(0.29g;0.88ミリモル)、を、オープンミル(外部混合機、23℃)で、20gの合成ポリイソプレン(99.35質量%のシス-1,4-イソプレン単位及び0.65質量%の3,4-イソプレン単位を含有;Mn=375,000g/モル、PI=3.6、1.2項に記載する方法に従って測定)に混入する。混合物を15回の転倒混和でホモジナイズする。この配合段階に続いて、10barの圧力下で、120℃で10分間熱プレス処理を行う。1H NMRによる分析から、グラフト化のモル度が0.2%で、モルグラフト率が66%であることが実証できた。
グラフト化度の判定が可能となる化学シフト:
7.6~8.2ppm:6芳香族H
4.2~4.3ppm:2H CH2-O
3.1~3.8ppm:6H CH2-N
【0072】
4 ゴム組成物の実施例
4.1 実施例1
この試験の目的は、変性エラストマーを含まない従来の非適合組成物及び変性エラストマーを含む先行技術の組成物と比べて、本発明の組成物におけるゴム特性の性能向上を示すことである。特に、これらの組成物は以下のように定義される。
非適合組成物C1は、特に非グラフト化合成ポリイソプレン、シリカ、及びシランポリスルフィドカップリング剤を含む、タイヤのトレッドとして使用される「従来の」ゴム組成物である;
非適合組成物C2は、合成ポリイソプレンにグラフトされている化合物Bを追加的に含む以外は組成物C1と同一である;
本発明による組成物C3は、合成ポリイソプレンにグラフトされている化合物Aを追加的に含む以外は組成物C1と同一の組成物である。
これらの組成物の様々な成分の含有量を、phr(エラストマー100質量部に対する質量部)で表して表1に示す。
【表5】

組成物C2及びC3は、グラフトされた化合物A又はBを同じモル数、即ち0.2モル%含む。
(1)99.35質量%のシス-1,4-イソプレン単位及び0.65質量%の3,4-イソプレン単位を含むポリイソプレン;Mn=375,000g/モル、PI=3.6、1.2項に記載する方法に従って測定;
(2)化合物B:2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド、2.2項に記載する方法に従って合成;
(3)化合物A:2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド、2.1項に記載する方法に従って合成;
(4)シリカ、Zeosil 1165MP、Solvayより販売;
(5)ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TESPT)、Si69の名称でEvonikより販売;
(6)N234グレードのカーボンブラック、Cabot Corporationより販売;
(7)N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-パラ-フェニレンジアミン、Santoflex6-PPDの名称でFlexsysより販売;
(8)2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、Flexsysより販売;
(9)酸化亜鉛(工業用グレード)、Umicoreより販売;
(10)ステアリン、Pristerene4031、Uniqemaより販売;
(11)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、Santocure CBSの名称でFlexsysより販売。
【0073】
組成物C1~C3は以下のように調製する:ジエンエラストマーを85cm3のPolylab密閉式混合機に投入し、70%まで充填する。初期容器温度は約110℃とする。化合物A又は化合物Bに関連する組成物については、化合物A又は化合物Bはジエンエラストマーと同時に投入する。次いで、120℃で1分半熱機械的作業を実施する。続いて、組成物C1~C3のそれぞれについて、1つ又は複数の補強充填剤、充填剤とジエンエラストマーとのカップリング剤を投入し、次いで1~2分間混練した後、加硫系を除く他の様々な成分を投入する。次いで、計約5分間続くステップで、最高落下温度が160℃に達するまで熱機械的作業(非生産段階)を実施する。このようにして得た混合物を回収して冷却した後、25℃の外部混合機(ホモフィニッシャー)で加硫系(硫黄及びスルフェンアミド系促進剤)を添加し、合わせた物を約5~6分間混合(生産段階)する。このようにして得た組成物は、続いて、物理的又は機械的特性の測定のために、ゴムのプラーク状(厚さ2~3mm)又は薄板状にカレンダー加工する。これらの組成物のゴム特性は、150℃で60分間硬化させた後に測定する。得られた結果を表2に示す。
【表6】

表2から、予想通り、非置換イミダゾリジノン官能基を含む化合物で変性させたエラストマーを含む非適合組成物C2は、変性エラストマーを含まない非適合組成物C1と比べて、ヒステリシス(23℃でtan(δ)max)の低下を示すことがわかる。驚くことに、N-置換イミダゾリジノン官能基を含む化合物で変性させたエラストマーを含む本発明の組成物C3は、非適合組成物C1と比べてヒステリシスの著しい低下を示し、また非適合組成物C1と比べてすでに良好なヒステリシス特性を示していた非適合組成物C2と比べてもヒステリシスの著しい低下を示す。従って、本発明の状況で使用する化合物で変性させたエラストマーは、これを含む組成物のヒステリシスの低下を実現し、それによりこれらの組成物の転がり抵抗性能を向上させることができる。
【0074】
4.2 実施2
この試験の目的は、変性エラストマーを含まない従来の非適合組成物及び変性エラストマーを含む先行技術の非適合組成物と比較して、本発明のいくつかの組成物におけるゴム特性の向上を示すことである。特に、これらの組成物は以下のように定義される。
非適合組成物C4は、特に非グラフト化スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)、シリカ、及びシランポリスルフィドカップリング剤を含む、タイヤのトレッドとして使用される「従来の」ゴム組成物である;
非適合組成物C5は、SBRにグラフトされている化合物Bを追加的に含む以外は組成物C4と同一である;
本発明による組成物C6は、SBRにグラフトされている化合物A及びBを追加的に含む以外は組成物C5と同一の組成物である;
非適合組成物C7は、SBRの代わりに合成ポリイソプレンを含む以外は組成物C4と同一である;
非適合組成物C8は、合成ポリイソプレンにグラフトされている化合物Bを追加的に含む以外は組成物C7と同一である;
本発明による組成物C9は、合成ポリイソプレンにグラフトされている化合物A及びBを追加的に含む以外は組成物C7と同一の組成物である。
これらの組成物の様々な成分の含有量を、phr(エラストマー100質量部に対する質量部)で表して表3に示す。
【表7】

(1)99.35質量%のシス-1,4-イソプレン単位及び0.65質量%の3,4-イソプレン単位を含むポリイソプレン;Mn=375,000g/モル、PI=3.6、1.2項に記載する方法に従って測定;
(2)コポリマーの総質量に対して26.5質量%のスチレン及びブタジエン部の質量に対して25質量%の1,2-ブタジエン単位を含む非官能基化スチレン/ブタジエンコポリマー;Mn=150,000g/モル、PI=1.84、1.2項に記載する方法に従って測定;
(3)化合物B:2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド、2.2項に記載する方法に従って合成;
(4)化合物A:2-(2-(3-クロロ-2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド、2.1項に記載する方法に従って合成;
(5)シリカ、Zeosil 1165MP、Solvayより販売;
(6)ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TESPT)、Si69の名称でEvonikより販売;
(7)N234グレードのカーボンブラック、Cabot Corporationより販売;
(8)N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-パラ-フェニレンジアミン、Santoflex6-PPDの名称でFlexsysより販売;
(9)2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、Flexsysより販売;
(10)酸化亜鉛(工業用グレード)、Umicoreより販売;
(11)ステアリン、Pristerene4031、Uniqemaより販売;
(12)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、Santocure CBSの名称でFlexsysより販売。
【0075】
組成物は以下のように調製する:ジエンエラストマーを85cm3のPolylab密閉式混合機に投入し、70%まで充填する。初期容器温度は約110℃とする。化合物B又は化合物Aに関連する組成物については、化合物B又は化合物A及びBはジエンエラストマーと同時に投入する。次いで、120℃で1分半熱機械的作業を実施する。続いて、組成物C4~C9のそれぞれについて、1つ又は複数の補強充填剤、充填剤とジエンエラストマーとのカップリング剤を投入し、次いで1~2分間混練した後、加硫系を除く他の様々な成分を投入する。次いで、計約5分間続くステップで、最高落下温度が160℃に達するまで熱機械的作業(非生産段階)を実施する。このようにして得た混合物を回収して冷却した後、25℃の外部混合機(ホモフィニッシャー)で加硫系(硫黄及びスルフェンアミド系促進剤)を添加し、合わせた物を約5~6分間混合(生産段階)する。このようにして得た組成物は、続いて、物理的又は機械的特性の測定のために、ゴムのプラーク状(厚さ2~3mm)又は薄板状にカレンダー加工する。これらの組成物のゴム特性は、150℃で60分間硬化させた後に測定する。得られた結果を表4に示す。
【表8】

表4から、予想通り、非置換イミダゾリジノン官能基を含む化合物でグラフト化したエラストマーを含む非適合組成物C5及びC8は、変性エラストマーを含まない非適合組成物C4及びC7それぞれと比べて、同じ剛性(23℃でのG*50%外向き)でのヒステリシスの低下を示すことがわかる。驚くことに、N-置換イミダゾリジノン官能基を含む化合物及び非置換イミダゾリジノン官能基を含む化合物で変性させたエラストマーを含む本発明の組成物C6は、非適合組成物C4と比べてすでにヒステリシス低下を示していた非適合組成物C5と比べてヒステリシスの著しい低下を示す。このヒステリシスの低下が生じても硬化後の剛性特性は低下せず、これは驚くべきことである。なぜなら、ヒステリシスと硬化後の剛性特性が、ゴム組成物の2つの拮抗する特性であることは、当業者に既知だからである。硬化前の剛性特性を向上させるとヒステリシスが悪化し、逆も同じであることが知られている。ところが、ここでは、非適合組成物C4及びC5と比べて、本発明による組成物C6の硬化後の剛性/ヒステリシスの妥協点における著しい改善が観察される。非適合組成物C7及びC8と比べると、本発明による組成物C9でこれと同じ結果が観察される。硬化前の剛性で、非適合組成物C8と比べて、本発明による組成物C9が低い場合でもだ。硬化前の剛性におけるこの低下は、本発明による組成物C9のヒステリシスの大幅な低下を考慮すると、依然として非常に小さい。