(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】ラマンスペクトルを測定するための装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
G01J 3/44 20060101AFI20240909BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G01J3/44
G01N21/65
(21)【出願番号】P 2022511192
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 FI2020050710
(87)【国際公開番号】W WO2021089913
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-16
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】521527141
【氏名又は名称】タイムゲイト インストルメンツ オーユー
【氏名又は名称原語表記】TimeGate Instruments Oy
【住所又は居所原語表記】Tutkijantie 7 90590 Oulu Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】クルキ ラウリ
(72)【発明者】
【氏名】アラッサレラ イルッカ
(72)【発明者】
【氏名】テンフネン ユッシ
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0067003(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0252978(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0025917(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/74
G01J 3/00- 4/04
G01J 7/00- 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間ゲートラマンスペクトルを測定するための装置(100)であって、
目標(110)に向けて光のパルスを生成するための光源(102)であって、前記目標は、その後、少なくとも第1の部分(208、508、604)及び第2の部分(216)を含む光放射を放出する、光源(102)と、
前記光放射の強度を測定するためのセンサ機構(118、200)と、
前記光源及び前記センサ機構に動作可能に接続されたコントローラ(120、228)と、
を備え、
前記第1の部分及び前記第2の部分は、それぞれ、前記光放射の平面状の波面の第1の部分及び第2の部分であり、
前記センサ機構は、
前記放出された光放射(210、302、412、706)の前記第1の部分(208、508、604)に時間遅延を提供するための少なくとも1つの光遅延要素(212、214、402、404、406)であって、前記放出された光放射の前記第2の部分(216)は、前記少なくとも1つの光遅延要素をバイパスする、少なくとも1つの光遅延要素(212、214、402、404、406)と、
前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させるための光スペクトル分散器(220)であって、前記分散放射(122)の各波長は、角度分離方向に分割され、各部分の前記分散放射は、所定の相対遅延を伴って前記光スペクトル分散器を出る、光スペクトル分散器(220)と、
前記分散放射の各波長をその異なる空間領域で受け取り、前記分散放射の各波長に対応付けられた光強度を測定するように構成された、センサ要素(226、314、426、612)と、
を備え、
前記コントローラは、前記センサ要素によって測定される前記分散放射の各波長に対応付けられた前記測定された光強度を記録して、時間分解光スペクトルを形成するように動作可能である、
装置。
【請求項2】
前記時間分解光スペクトルを測定するための前記装置は、前記生成された光のパルスを前記光源(102)から前記目標(110)に向けるための第1の光ファイバー(104)と、
前記放出された光放射(204、210、302、412、706)を前記光スペクトル分散器(220)に向けるための第2の光ファイバー(116、202)と、
を更に備える、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記時間分解光スペクトルを測定するための前記装置は、前記生成された光のパルスを前記光源(102)から集め、前記生成された光のパルスを前記目標(110)に向けて集中させるための少なくとも1つの光学部材(106)を更に備える、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光遅延要素(212、214、402、404、406)は、自由空間の長さ、ガラス製のプリズム、ガラス製の立方体、ガラス製のダブプリズム、ガラス製のペンタプリズム、結晶材料製のプリズム、結晶材料製の立方体、結晶材料製のダブプリズム、結晶材料製のペンタプリズム、ミラー機構、レンズ、光ファイバーのうちの少なくとも1つを備える、請求項1から3のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項5】
前記放出された光放射の少なくとも前記第1の部分は、少なくとも1つの光遅延要素を複数回通過するように構成されている、請求項1から4のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項6】
前記光スペクトル分散器(220)は、回折格子(304、420、606、710、714、718、720、722、724)、プリズム、ファブリ・ペローエタロンのうちの少なくとも1つを備える、請求項1から5のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項7】
前記光スペクトル分散器(220)は、回折格子(304、420、606、710、714、718、720、722、724)を備え、
前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分は、光透過セグメンテーション、光反射セグメンテーション、光分割セグメンテーションのうちの少なくとも1つを使用する前記回折格子を採用した前記光スペクトル分散器を介して前記センサ要素(226、314、426、612)に向けられるように構成されている、
請求項6に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記センサ要素(226、314、426、612)は、異なる空間領域の各々での複数のピクセルを更に備え、
前記空間領域の各々での前記複数のピクセルは、前記分散放射の別々の波長を受け取り、前記分散放射の各波長に対応付けられた前記光強度を測定するように構成されている、
請求項1から7のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項9】
前記センサ要素(226、314、426、612)は、前記分散放射が前記センサ要素によって受光されるとき、所定の期間、「オン状態」になるように動作可能である、請求項1から8のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項10】
前記目標から受光される前記光放射をコリメートするための少なくとも1つのコリメート要素(206、310、414)を更に備え、
前記少なくとも1つのコリメート要素は、前記目標と前記少なくとも1つの遅延要素との間の光路上に配置されている、
請求項1から9のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項11】
前記目標から受光される前記光放射をコリメートするための少なくとも1つのコリメート要素(206、310、414)を更に備え、
前記少なくとも1つのコリメート要素は、前記少なくとも1つの遅延要素と前記センサ要素との間の光路上に配置されている、
請求項1から9のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのコリメート要素は、レンズ機構、ミラー機構、ピンホール又はスリット(308、410)を介して組み込まれた開口部、光導波路のうちの少なくとも1つを備える、請求項10又は11に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記光源(102)はレーザーである、請求項1から12のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項14】
時間ゲートラマンスペクトルを測定するための方法であって、
目標(110)に向けて光のパルスを生成することであって、前記目標は、その後、少なくとも第1の部分(208、508、604)及び第2の部分(216)を含む光放射を放出する、光のパルスを生成すること
を含み、ただし前記第1の部分及び前記第2の部分は、それぞれ、前記光放射の平面状の波面の第1の部分及び第2の部分であり、前記方法は更に、
前記放出された光放射(210、302、412、706)の前記第1の部分(208、508、604)に時間遅延を提供することであって、前記放出された光放射の前記第2の部分(216)は、少なくとも1つの光遅延要素(212、214、402、404、406)をバイパスする、時間遅延を提供することと、
前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させることであって、前記分散放射(122)の各波長は、角度分離方向に分割され、各部分の前記分散放射は、所定の相対遅延を伴って光スペクトル分散器(220)を出る、分散放射に分散させることと、
前記分散放射の各波長をその異なる空間領域で受け取ること、及び前記分散放射の各波長に対応付けられた光強度を測定することと、
センサ要素(226、314、426、612)によって測定される前記分散放射の各波長に対応付けられた前記測定された光強度を記録して、時間分解光スペクトルを形成することと、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、該方法は前記時間分解光スペクトルを測定する方法であり、
第1の光ファイバー(104)を使用して、前記生成された光のパルスを光源(102)から前記目標(110)に向けることと、
第2の光ファイバー(116、202)を使用して、前記放出された光放射(204、210、302、412、706)を前記光スペクトル分散器(220)に向けることと、
を更に含む、方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法であって、該方法は前記時間分解光スペクトルを測定する方法であり、
前記生成された光のパルスを光源(102)から集めることと、
少なくとも1つの光学部材(106)を使用して、前記生成された光のパルスを前記目標(110)に向けて集中させることと、
を更に含む、方法。
【請求項17】
前記センサ要素(226、314、426、612)は、異なる空間領域の各々での複数のピクセルを更に備え、
前記空間領域の各々での前記複数のピクセルは、前記分散放射の別々の波長を受け取り、前記分散放射の各波長に対応付けられた前記光強度を測定する、請求項14から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記センサ要素(226、314、426、612)は、前記分散放射が前記センサ要素によって受光されるとき、所定の期間、「オン状態」のままである、請求項14から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記光放射をコリメートすることを更に含む、請求項14から18のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して分光法に関し、より具体的には、時間分解光分光法に関し、更に具体的には、時間ゲートラマン分光法に関する。更に、本開示は、時間分解光スペクトル、又はより具体的には時間ゲートラマンスペクトルを測定するための装置に関する。更に、本開示は、時間分解光スペクトル、又はより具体的には時間ゲートラマンスペクトルを測定するための方法に関する。
【背景】
【0002】
光分光法は、物質と光、特に電磁放射との相互作用の研究である。光分光法の種類としては、一般に、原子分光法、紫外・可視分光法、赤外分光法、ラマン分光法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ラマン分光法は、レーザー光などの光が物質に入射すると、分子振動をもたらし、非弾性散乱が生じるという現象に基づくものである。このような散乱光は、ラマン分光計によって検出され、それに基づいて、物質及びその物質に対応付けられるスペクトル情報が決定され得る。
【0003】
ラマン分光法は、分子の同定、化学結合及び分子間結合の研究、材料の特性決定、物質の結晶方位の発見、固体の低周波励起の観察、医薬品有効成分及びその多形体の同定などの様々な用途で利用される。一般に、基本的な物質同定のための日常分析は、低分解能又は中程度の分解能を必要とする。一方、多形体及び結晶性の特性決定は、これらの現象が低分解能ラマン分光法では見えないラマンスペクトルの微妙な変化を呈するため、多くの場合、高スペクトル分解能を必要とする。角度分散に基づく分光器は、同時にスペクトル全体の測定も可能にしつつ、優れたスペクトル分解能の達成を可能にする。これは、例えばファブリ・ペローフィルタや回転格子などに基づく、例えば走査型モノクロメータと対照的な、分光器の有益な特性である。
【0004】
典型的には、ラマンスペクトルを測定するときに存在する、蛍光及び背景光又は目標の熱放出は、スペクトル情報の喪失につながり、それによって、物質の正確な特性決定が妨げられる。時間ゲートラマン分光法技術は、測定を向上させ得る。ある種類の時間ゲートラマン分光法では、センサアレイが、ラマン散乱を測定するために特定の期間のみオン状態で動作する。一方、センサアレイは、ラマン散乱以外の現象が観察されるとき、オフ状態のままである。一例として、蛍光は、ラマン散乱と比較して長寿命であり得るため、時間ゲートラマン分光法は、非常に大部分の蛍光の発光までも除去するために使用され得、したがって、それに関する信号歪みを軽減し得る。しかしながら、時間ゲートラマン分光法には、それ自体の欠点がある。
【0005】
特に、例えば100ピコ秒の時間の幅を有する短いレーザーパルスを使用して目標が励起されるとき、この目標が光学的に薄く、例えば弾性拡散によって時間の広がりをもたらさないと仮定すると、放出されたラマン散乱パルスは、ほぼ同じ時間の幅を有する。したがって、理想的には、センサアレイのオン状態は、同じ時間である。本開示に関連する分光計は、角度分散を使用してセンサアレイ上にスペクトルを形成する。高スループット分光器の角度分散は、受光された発光パルスの過剰な時間の広がりにつながる。多色光ビームをスペクトル分解するとき、ある程度の時間の広がりは避けられないが、同時に高スループット(大きな光エテンデュ)を要求することで、本開示でのいわゆる過剰な時間の広がりにもつながることに留意されたい。いくつかの時間ゲーティング方法では、光パルスの時間ゲーティングは、このパルスが分光計に入る前に実行されることに留意されたい。これらの方法では、分光計によってもたらされる時間の広がりは問題ではない。本開示は、時間ゲーティングが、光パルスが分光器を出た後にその光パルスについて実行される時間ゲート分光法の方法にのみ関係する。これらのシステムでは、過剰な時間の広がりは、時間の分解能の低下につながり、それ自体、時間分解分光法の多くの用途にとって好ましくない。特に、これは、過剰な時間の広がりを完全に回避した場合と比較して、時間ゲーティングの効果の低下、したがって、時間ゲートラマンスペクトルの信号対雑音比の低下を伴う。
【0006】
従来技術の問題は、時間の広がりが増大し、信号対雑音比が低下し、それにより、時間ゲートラマンスペクトルの測定の効果が低下することである。したがって、角度分散を使用し、検出要素によって又は検出要素で時間ゲーティングが実行されるような時間ゲートラマン分光法の方法に存在する、過剰な時間の広がり及び信号対雑音比の低減の問題を克服する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、時間分解発光スペクトルを測定するための装置を提供しようとするものである。本開示はまた、時間分解発光スペクトルを測定するための方法を提供しようとするものである。本開示は、時間分解光分光法に適用されるときに高スループット分光器の時間の分解能が低下するという既存の問題に対するソリューションを提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術にまつわる問題を少なくとも部分的に克服するソリューションを提供することであり、時間分解光スペクトルを効率的に測定するための装置を提供する。
【0008】
一態様では、本開示の一実施形態は、時間ゲートラマンスペクトルを測定するための装置を提供する。前記装置は、
目標に向けて光のパルスを生成するための光源であって、前記目標は、その後、少なくとも第1の部分及び第2の部分を含む光放射を放出する、光源と、
前記光放射の強度を測定するためのセンサ機構と、
前記光源及び前記センサ機構に動作可能に接続されたコントローラと、を備える。
前記センサ機構は、
前記放出された光放射の前記第1の部分に時間遅延を提供するための少なくとも1つの光遅延要素であって、前記放出された光放射の前記第2の部分は、前記少なくとも1つの光遅延要素をバイパスする、少なくとも1つの光遅延要素と、
前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させるための光スペクトル分散器であって、前記分散放射の各波長は、角度分離方向に分割され、各部分の前記分散放射は、所定の相対遅延を伴って前記光スペクトル分散器を出る、光スペクトル分散器と、
前記分散放射の各波長をその異なる空間領域で受け取り、前記分散放射の各波長に対応付けられた光強度を測定するように構成された、センサ要素と、を備える。
前記コントローラは、前記センサ要素によって測定される前記分散放射の各波長に対応付けられた前記測定された光強度を記録して、時間分解光スペクトルを形成するように動作可能である。
【0009】
別の態様では、本開示は、時間分解光スペクトルを測定するための方法を提供する。前記方法は、
目標に向けて光のパルスを生成することであって、前記目標は、その後、少なくとも第1の部分及び第2の部分を含む光放射を放出する、光のパルスを生成することと、
前記放出された光放射の前記第1の部分に時間遅延を提供することであって、前記放出された光放射の前記第2の部分は、少なくとも1つの光遅延要素をバイパスする、時間遅延を提供することと、
前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させることであって、前記分散放射の各波長は、角度分離方向に分割され、各部分の前記分散放射は、所定の相対遅延を伴って光スペクトル分散器を出る、分散放射に分散させることと、
前記分散放射の各波長をその異なる空間領域で受け取ること、及び前記分散放射の各波長に対応付けられた光強度を測定することと、
センサ要素によって測定される前記分散放射の各波長に対応付けられた前記測定された光強度を記録して、時間分解光スペクトルを形成することと、を含む。
【0010】
本開示の実施形態は、従来技術での過剰な時間の広がりの前述の問題を実質的に除去するか、又は少なくとも部分的にそれに対処し、時間分解光スペクトルを測定するための装置及び方法を提供する。このような装置は、光遅延要素を採用して、時間分解光スペクトル測定を向上させるように光放射のビームを操作する。したがって、本開示は、時間分解光スペクトルを測定するための装置を提供する。更に、本開示は、効率的で正確であって、向上した時間分解能を提供する時間ゲートラマンスペクトルの測定に対する向上を提供する。
【0011】
本開示の追加の態様、利点、特徴、及び目的は、以下の添付の請求項と共に解釈される例示的な実施形態の図面及び詳細説明から明確になるであろう。
【0012】
本開示の特徴は、添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組合せで組み合わせ可能であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上記摘要及び例示的な実施形態の以下の詳細説明は、添付の図面と共に読むとより十分に理解される。本開示を示す目的で、本開示の例示的な構成が図面で示されている。しかしながら、本開示は、本明細書で開示される特定の方法及び手段に限定されない。更に、当業者は、図面が縮尺通りでないことを理解するであろう。可能な限り、同様の要素は、同一の番号で示されている。
【0014】
ここで、本開示の実施形態は、以下の図を参照して、例示としてのみ説明される。
【
図1】本開示の一実施形態に係る、時間分解光スペクトルを測定するための装置のブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る、時間分解光スペクトルを測定するための
図1の装置に実装されたセンサ機構の概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る、回折格子を通過したときに分散放射に分割される、コリメートされた放出された光放射を示す機構の概略図である。
【
図4A】本開示の一実施形態に係る、光遅延要素がガラスブロックとして組み込まれた、光透過セグメンテーションを採用した機構の概略図である。
【
図4B】本開示の一実施形態に係る、光遅延要素がガラスブロックとして組み込まれた、光透過セグメンテーションを採用した機構の概略図である。
【
図5A】本開示の一実施形態に係る、光遅延要素がミラーとして組み込まれた、光透過セグメンテーションを採用した機構の概略図である。
【
図5B】本開示の一実施形態に係る、光遅延要素がミラーとして組み込まれた、光透過セグメンテーションを採用した機構の概略図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る、光反射セグメンテーションを採用した機構の概略図である。
【
図7A】本開示の一実施形態に係る、光分割セグメンテーションを採用した機構の概略図である。
【
図7B】本開示の一実施形態に係る、光分割セグメンテーションを採用した機構の概略図である。
【
図7C】本開示の一実施形態に係る、光分割セグメンテーションを採用した機構の概略図である。
【
図8A】コリメートされていない放出された光放射のための光遅延セグメンテーションを配置するための機構の概略図である。
【
図8B】コリメートされていない放出された光放射のための光遅延セグメンテーションを配置するための機構の概略図である。
【0015】
添付図面では、下線付き番号は、その番号が位置している部材、又は下線付き番号が隣接している部材を表すために使用される。下線無しの番号は、その番号を部材につなぐ線によって識別される部材に関する。ある番号が下線無しであり、対応付けられた矢印を伴うとき、その番号は、矢印が指す全体的な部材を識別するために使用される。
【実施形態の詳細説明】
【0016】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態及び実施形態が実装され得る方法を示す。本開示を実行するいくつかのモードが開示されているが、当業者は、本開示を実行又は実施するための他の実施形態もまた可能であることを認識するであろう。
【0017】
一態様では、本開示の一実施形態は、時間分解光スペクトルを測定するための装置を提供する。前記装置は、
目標に向けて光のパルスを生成するための光源であって、前記目標は、その後、光放射を放出する、光源と、
前記光放射の強度を測定するためのセンサ機構と、
前記光源及び前記センサ機構に動作可能に接続されたコントローラと、
を備える。
前記センサ機構は、
前記放出された光放射の第1の部分に時間遅延を提供するための少なくとも1つの光遅延要素であって、前記放出された光放射は、前記少なくとも1つの光遅延要素をバイパスする第2の部分を更に含む、少なくとも1つの光遅延要素と、
前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させるための光スペクトル分散器であって、前記分散放射の各波長は、角度分離方向に分割され、各部分の前記分散放射は、所定の相対遅延を伴って前記光スペクトル分散器を出る、光スペクトル分散器と、
前記分散放射の各波長をその異なる空間領域で受け取り、前記分散放射の各波長に対応付けられた光強度を測定するように構成された、センサ要素と、を備える。
前記コントローラは、前記センサ要素によって測定される前記分散放射の各波長に対応付けられた前記測定された光強度を記録して、時間分解光スペクトルを形成するように動作可能である。
【0018】
別の態様では、本開示は、時間分解光スペクトルを測定するための方法を提供する。前記方法は、
目標に向けて光のパルスを生成することであって、前記目標は、その後、光放射を放出する、光のパルスを生成することと、
前記放出された光放射の第1の部分に時間遅延を提供することであって、前記放出された光放射は、少なくとも1つの光遅延要素をバイパスする第2の部分を更に含む、時間遅延を提供することと、
前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させることであって、前記分散放射の各波長は、角度分離方向に分割され、各部分の前記分散放射は、所定の相対遅延を伴って光スペクトル分散器を出る、分散放射に分散させることと、
前記分散放射の各波長をその異なる空間領域で受け取ること、及び前記分散放射の各波長に対応付けられた光強度を測定することと、
センサ要素によって測定される前記分散放射の各波長に対応付けられた前記測定された光強度を記録して、時間分解光スペクトルを形成することと、を含む。
【0019】
本開示の全体を通じて、「目標」という用語は、レーザー光などの光が照射されると、ラマン散乱光を含むがこれに限定されない光放射を放出し得る材料を指す。実際には、すべての材料は、例えば、材料が分子及び/又は振動エネルギーレベルを有する結晶構造を備えるとき、光が照射されるとラマン散乱によって光を放出し得る。いくつかの分子は、ラマン散乱による発光に加えて、蛍光によって光を放出し得る。例えば、有機分子は、光が照射されると蛍光及びラマン散乱によって光を放出し得る。例えば、共役芳香環を含む有機分子は、蛍光及びラマン散乱によって光を放出し得る。蛍光はラマンスペクトルの測定を妨げ、したがって、得られたラマンスペクトルの質(信号対雑音比など)を低下させ得ることが理解されるであろう。このような蛍光は、時間ゲートラマン分光法の使用により低減又は除去され得る。本開示に関する時間ゲートラマン分光法の形態は、時間分解検出器(センサ要素など)を採用し、それは、その上に至る分散放射の測定のために短期間「オン状態」のままであるように構成されており、一方、大部分の蛍光又は他の非ラマン発光が観察される期間「オフ状態」のままであるように構成されている。特に、蛍光による発光は、ラマン放射の放出と比較すると、典型的には長寿命のプロセスである。したがって、センサ要素に対応付けられた「オン状態」は、理想的には、ラマン放射が観察されるレーザーパルスの時間の幅、例えば100ピコ秒(ps)に等しい。時間ゲートラマン分光法を採用したこのような装置は、蛍光の効果の一部(特に蛍光の尾の部分)を除去する。
【0020】
ラマン散乱は、典型的には、ストークスラマン散乱及び反ストークスラマン散乱の2種類の放射を含む。ストークスラマン散乱は、レーザー光などの照射光の光子がエネルギーを失って目標の振動状態及び/又は回転状態が変化する場合がある、すなわち、入射光子のエネルギーと対応する散乱光子のエネルギーとの差が正である、非弾性散乱プロセスである。照射光の光子は、エネルギーを失って、目標の振動状態が変化し回転状態が変化する場合がある。反ストークスラマン散乱は、散乱光子が目標の振動状態の変化からエネルギーを得る場合がある、すなわち、入射光子のエネルギーと対応する散乱光子のエネルギーとの差が負である、非弾性散乱プロセスである。散乱光の光子は、目標の振動状態の変化及び回転状態の変化からエネルギーを得る場合がある。目標の時間ゲートラマンスペクトルは、例えば、目標の分子組成についての情報を提供するために使用され得る。その情報は、例えば、目標の定性化学分析、目標の定量化学分析、及び/又は目標の結晶構造の分析のために使用され得る。更に、工業的プロセスが、その情報に基づいて制御され得る。その情報は、法廷での証拠として使用され得るなど、法廷で用いる目的のために使用され得る。
【0021】
時間分解光スペクトルを測定するための装置は、目標に向かう光のパルス(励起パルスとしても知られている)を生成するための光源を備える。前記光源の例としては、レーザーが挙げられる。実際、時間分解光スペクトルを測定するための装置は、光のパルスを生成するために、レーザー源などの強力な単色光源を利用し得る。光源は、好ましくは、光の電磁スペクトルの可視域、紫外域、又は近赤外域の光のパルスを放出するために採用される。任意で、光源は、レーザーダイオードや固体レーザーなどであり得る。更に任意で、光源は、目標に向かう光の短パルスの放出を可能にするQスイッチレーザーであり得る。更に、目標の散乱は、その後(光の(励起)パルスが目標に当たった後)、光放射を放出する。放出される光放射の一部は、ラマン放射の形態であり得る。光のパルスは、目標からの光子の非弾性散乱をもたらすように、目標を照射するように構成され得る。特に、光のパルスの一部は、目標からのラマン散乱として励起された状態になり得る。更に、光のパルスは、目標からの光放射として放出される蛍光放射となり得る。目標は、例えば、無機材料を含み得る。目標は、例えば、有機材料及び/又は生体材料を含み得る。目標は、例えば、ラマン散乱及び蛍光によって光を放出し得る芳香族化合物を含み得る。目標は、例えば、気体、固体、及び/又は液体を含み得る。目標は、例えば、異種混合物を含み得る。目標は、例えば、液体中で浮遊する粒子又は気体中で浮遊する粒子を含む不均一混合物を含み得る。粒子は、例えば、固体粒子、液体粒子、及び/又は生体細胞であり得る。目標は、例えば、単結晶、多結晶材料、又はアモルファス材料を含み得る。目標は、例えば、ホルダー上で支持され得る。目標は、例えば、サンプルセルに含まれ得る。放出された光放射は、ラマン散乱光及び/又は弾性散乱光を含み得る。弾性散乱光は、均質な物質からのレイリー散乱光を含み得る。弾性散乱光は、目標の粒子からのミー散乱光を含み得る。弾性散乱光は、浮遊媒体からのレイリー散乱光及び/又は1つ以上の粒子からのミー散乱光を含み得る。弾性散乱光及び反射光は、目標、サンプルセル、及び光路内のすべての介在部での異なる屈折率を有する媒体間の様々な境界からのフレネル反射光を含み得る。目標は、光のパルスが照射されると、(放出される光放射として)弾性散乱光を提供し得、その材料は、光のパルスが照射されると、(放出される光放射として)ラマン散乱光を提供し得る。弾性散乱光の波長は、光のパルスの波長に等しくてもよい。
【0022】
任意で、前記時間分解光スペクトルを測定するための前記装置は、前記生成された光のパルスを前記光源から集め、前記生成された光のパルスを前記目標に向けて集中させるための少なくとも1つの光学部材を更に備える。少なくとも1つの光学部材は、例えば、光のパルスを光源から集め、光のパルスを目標に向けて集中させる光学レンズであり得る。更に任意で、少なくとも1つの光学部材は、光のパルスの一部を単一の逆バイアスフォトダイオードなどの同期センサ要素に導き、光のパルスの他の部分を目標に向けて導くためのビームスプリッタであり得る。同期センサ要素は、時間分解光分光法のためのセンサ要素の動作のタイミングを制御するための同期信号を生成し得る。同期信号はまた、例えば、タイミング信号と呼ばれ得る。同期信号は、タイミングパルスを含み得る。同期信号は、タイミングパルスと呼ばれ得る。
【0023】
更に、時間分解光スペクトルを測定するための装置は、時間分解光放射スペクトルを測定するためのセンサ機構を備える。センサ機構は、測定された光放射を処理して、時間分解光スペクトルを得て、その結果、時間分解光スペクトルを測定する。
【0024】
更に、時間分解光スペクトルを測定するための装置は、光源及びセンサ機構に動作可能に接続されたコントローラを備える。本開示の全体を通じて、「コントローラ」という用語は、光源及びセンサ機構などの他のデバイス又はシステムの動作を管理、命令、指示、又は規制するハードウェアデバイス又はソフトウェアを指す。コントローラは、クロックや補助トリガデバイスなどの補助デバイスを備え得る。例えば、コントローラは、マイクロコントローラやプログラマブルロジックコントローラなどを介して実装され得る。光源に動作可能に接続されたコントローラは、コントローラによって提供されるトリガ信号に従って、光源による光のパルスの生成を可能にする。例えば、トリガ信号は、クロックによって、又は補助トリガデバイスによって生成され得る。コントローラ、クロック、又は補助トリガデバイスは、必要に応じて光のパルスの生成をトリガするように、トリガ信号を光源に送信するように構成され得る。光源は、トリガ信号に従って一連の光のパルスを生成するように構成され得る。光のパルスの繰り返し率は、例えば、1Hzから107Hzまでの範囲であり得る。任意で、光のパルスの繰り返し率は、1、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、2000000、3000000、4000000、5000000、6000000、7000000、8000000、又は9000000Hzから10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、2000000、3000000、4000000、5000000、6000000、7000000、8000000、9000000、又は10000000Hzまでであり得る。好ましくは、光のパルスの繰り返し率は、例えば、10kHzから1000kHzまでの範囲であり得る。任意で、光のパルスの繰り返し率は、10、100、200、300、400、500、600、700、800、900kHzから100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000kHzまでであり得る。光源は、単一の光のパルスを生成するように構成され得る。光源の動作寿命は、光のパルスの最大強度に依存し得、光のパルスの時間の幅にも依存し得る。更に、短く強力な光のパルスの生成は、光源の重要な構成要素又は焦点レンズなどの光源に対応付けられた任意の補助機器の損傷のリスクを伴い得る。光源は、光源の特定の最低動作寿命を提供するように、光のパルスの最大強度が所定の範囲内にある状況で、光のパルスの時間の幅が所定の限度よりも大きくなるように光のパルスを提供するように構成され得る。
【0025】
光のパルスの時間の幅は、例えば、10から2000ps(ピコ秒)までの範囲であり得る。実際、光パルスが例えば2000psよりも長いとき、典型的には、光遅延要素は必要とされない。光のパルスの時間の幅は、光源及びそれに対応付けられた補助機器の損傷のリスクを低減するために、例えば50ps以上であり得る。
【0026】
任意で、前記センサ機構は、前記目標からの前記放出された光放射をコリメートするための少なくとも1つのコリメート要素を更に備える。目標からの放出された光放射は、散乱形態であるため、目標から放出される光放射は、最初は球形の波面を有する。前記目標から放出される前記光放射をコリメートするための前記少なくとも1つのコリメート要素は、前記目標と前記少なくとも1つの遅延要素との間の光路上に配置され得る。このような例では、光放射のコリメートされたビームは、遅延要素(複数可)に向けて提供される。代替的に、前記目標からの前記放出された光放射をコリメートするための前記少なくとも1つのコリメート要素は、前記少なくとも1つの遅延要素と前記センサ要素との間の光路上に配置され得る。
【0027】
任意で、前記少なくとも1つのコリメート要素は、例えば、レンズ機構、ミラー機構、ピンホールもしくはスリットを介して組み込まれた開口部、又は光導波路のうちの少なくとも1つを備える。コリメート要素は、球状の波面を有する目標によって放出される光放射を、平面状の波面を有する放出された光放射にコリメートする凸レンズなどのレンズであり得る。
【0028】
センサ機構は、放出された光放射の第1の部分に時間遅延を提供するための少なくとも1つの光遅延要素を更に備える。更に、放出された光放射は、少なくとも1つの光遅延要素をバイパスする第2の部分を更に含む。上述のように、コリメート要素を通過した放出された光放射は、平面状の波面を有する。光遅延要素は、このような放出された光放射の第1の部分の光路に提供されている。一実施形態によると、前記放出された光放射の少なくとも前記第1の部分は、少なくとも1つの光遅延要素を複数回通過するように構成されている。第1の例では、放出された光放射の第1の部分は、光遅延要素をバイパスする第2の部分と比較して第1の部分を遅らせる光遅延要素を通過する。第2の例では、放出された光放射の第1の部分は、第2の部分よりも長い光路を移動するようにされている。第3の例では、遅らせるための光遅延及びより長い光路の組合せが使用され得る。したがって、全体的に、第1の部分が光遅延要素を出た後移動するのに要する時間は、光遅延要素をバイパスする第2の部分が要する時間よりも長い。第1の部分は、複数の部分に更に分割され得、複数の部分の各部分には、これら各部分に異なる時間遅延を提供するために、異なる数又はサイズの光遅延要素が提供されることが理解されるであろう。更に、各部分での光遅延要素は、各部分に異なる時間遅延を提供するために、異なる形状及びサイズであり得る。更に、各部分での光遅延要素は、異なる材料で作られ得、各光遅延要素を通過する光放射の速度が異なり、それによって、複数の部分の各部分に異なる時間遅延を提供する。更に、「バイパス」という用語は、少なくとも1つの光遅延要素をバイパスするという文脈で、少なくとも1つの光遅延要素を通過しない、放出された光放射の一部を指す。少なくとも1つの光遅延要素をバイパスする上記第2の部分は、その少なくとも1つの光遅延要素とは別の光遅延要素を通過するように構成され得る。すなわち、第1の部分及び第2の部分について異なる遅延が定められ得る。本開示でのこれらの部分の数は、2つ以上であり得る。更に、一例として、光遅延要素は、動作時に、放出された光放射の第2の部分よりも短い光路を有する放出された光放射の第1の部分に時間遅延を提供する。更に、放出された光放射の第2の部分の光路には、光遅延要素がなく、それによって、第2の部分は、いかなる時間遅延もなく移動することができる。したがって、遅延した第1の部分及び第2の部分は、所定の相対時間遅延で移動する分散放射の形態で、光スペクトル分散器を出る。その結果、複数の波長の分散放射は、制御された方法(異なる時間又は同じ時間など)でセンサ要素によって受光され、それによって、センサ要素は、その「オン状態」の間の数十ピコ秒などの短期間内に複数の波長のそれぞれに対応付けられた光強度を正確に測定することができる。このような光遅延要素は、時間分解光分光法に対応付けられた時間の分解能を向上させる。更に、分散放射に対応付けられた光パルス面傾斜による時間の広がりは、時間ゲートラマン分光法の蛍光除去を低下させることが理解されるであろう。したがって、光遅延要素、センサ要素、及び角度スペクトル分散を利用する光スペクトル分散器は、時間ゲートラマン分光法に対応付けられたスペクトル分解能に悪影響を与えずに、時間の分解能を向上させる。
【0029】
時間ゲートラマンスペクトルを測定するために過剰な時間の広がり及び信号対雑音比の低減の問題を克服するために、少なくとも1つの光遅延要素が使用され、それは、放出された光放射の第1の部分に時間遅延を提供し、第2の部分は、少なくとも1つの光遅延要素をバイパスし、それによって、複数の波長を、短期間内に制御された方法でセンサ要素によって受け取ることができる。放出された光放射の第1の部分は、光遅延要素をバイパスする第2の部分と比較して第1の部分を遅らせる光遅延要素を通過し、したがって、第1の部分が光遅延要素を出た後移動するのに要する時間は、光遅延要素をバイパスする第2の部分が要する時間よりも長い。第1の部分の遅延は、分光器での角度分散によって生成されるパルス面傾斜によってもたらされる、第1の部分と第2の部分との間の平均的な遅延をキャンセルするように調整され得る。複数の波長は、制御された方法でセンサ要素によって受け取られ、それによって、センサ要素は、短期間内に複数の波長の光強度を正確に測定することができる。蛍光は、ラマン散乱と比較して長寿命であり、したがって、短期間の光強度の測定は、非常に大部分の蛍光の発光を除去し、したがって、信号対雑音比を向上させる。
【0030】
任意で、前記少なくとも1つの光遅延要素は、自由空間の長さ、ガラス製のプリズム、ガラス製の立方体、ガラス製のダブプリズム、ガラス製のペンタプリズム、結晶材料製のプリズム、結晶材料製の立方体、結晶材料製のダブプリズム、結晶材料製のペンタプリズム、ミラー機構、レンズ、光ファイバーのうちの少なくとも1つである。光遅延要素は、放出された光放射の一部が移動する自由空間の長さであり得る。その長さがより長い場合、遅延はより長くなる。光遅延要素は、ガラスの透明なブロックであるガラスであり得、ガラスによって、放出された光放射は、そこを通過することができる。光遅延要素は、光学レンズであり得、光放射の波面は、レンズを通過するときに不変のままである。放出された光放射の第1の部分は、複数の光遅延要素を通過し得ることが理解されるであろう。一例では、第1の部分は、ガラス及びレンズを通過し得る。別の例では、第1の部分は、レンズ、結晶、及び光ファイバーを通過し得る。特に、第1の部分の光路内の光遅延要素の数を増やす、それに伴う時間遅延は増加する。更に任意の実施形態では、光遅延要素は、ミラー機構であり得る。ミラー機構は、1つ以上の平面ミラーを備え得る。代替的に又は更に、ミラー機構は、1つ以上の非平面ミラーを備え得る。このようなミラー機構では、光遅延は、コリメートされていない放出された光放射の第1の部分が、コリメートされていない放出された光放射の第2の部分よりも長い経路を移動するようにすることによって提供される。一般に、ミラー機構は、ペンタプリズムのダブプリズムの使用と比較して同等の効果を提供するように構成され得る。追加の実施形態では、放出された光放射の少なくとも第1の部分は、少なくとも1つの光遅延要素を複数回通過し得る。このように、単一の光遅延要素は、放出された光放射が少なくとも1つの光遅延要素を通過する回数に応じて遅延を増やすために使用され得る。代替的な実施形態では、第2の部分は、光遅延要素を通過しない。更に代替的な実施形態では、第2の部分は、少なくとも1つの光遅延要素とは異なる遅延を提供する別の光遅延要素を通過する。
【0031】
更に任意の又は代替的な実施形態では、光遅延要素は、カタディオプトリックセグメンテーションを使用して構成されている。機構は、ガラス要素と、ミラー要素と、を備える。このような機構では、放出された光放射は、ガラスのブロックを複数回(2回、4回など)通過するように構成されている。一例として、放出された光放射の第1の部分は、第1のガラス要素を通過するように構成されており、放出された光放射の第2の部分は、角度をつけて第2のガラス要素を通過するように構成されている。第1のガラス要素は、第2のガラス要素よりも厚い。第1又は第2のガラス要素を通過した後、放出された光放射の一部は、第1のミラーを使用して再びガラス要素を通過するように反射して戻る。このように、ガラス要素によってもたらされる遅延は、更なるガラス要素を追加することなく増加し得る(光は、ガラス要素を2回通過する)。放出された光放射が、ガラスブロック及び第1のミラーに対して角度がつくようにされている場合、第1の部分及び第2の部分は、互いにずれている(全体の瞳幅が大きくなる)。更に、放出された光放射の反射部分及び遅延部分は、更なる遅延のために、また、別の部分に対する第1の部分のずれを補正するためにも、更に第2のミラーでガラス要素に反射して戻り得る。第1のミラー及び第2のミラーは、ガラスブロックに関して異なる角度で配置されているため、補正が行われ得る。
【0032】
また更に任意の機構では、光遅延要素は、曲率半径r1の第1の球面ミラー及び曲率半径r2=r1/2の第2の球面ミラーを備えるミラー機構で構成され得、両方の球面ミラーは、共通の曲率中心を有している。この機構により、コリメート要素の必要性を除去することができる、すなわち、センサ機構について、コリメートされていない放出された光放射を使用することができる。その機構では、両方の球面ミラーは、共通の曲率中心を有しているため、両方の球面ミラーは、入力ビームの像を同じ出力位置に形成する。その機構についての入力ビームは、集中放出された光放射ビームであり、出力も、放出された光放射の集中光ビームであり、センサ機構の(後述するような)光スペクトル分散器に向けられる。このように、第1の球面ミラーから反射した入力ビームの第1の部分は、入力から出力まで2r1の光路長を獲得し、第2の球面ミラーから反射した入力ビームの第2の部分は、入力から出力まで2r2=r1の光路長を獲得する。実際、凹状格子が使用される場合、セグメント分光器は、全体を通じてコリメートされていないビームで実装され得る。
【0033】
センサ機構は、放出された光放射の遅延した第1の部分及び第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させるための光スペクトル分散器を更に備える。更に、分散放射の各波長は、角度分離方向に分割され、分散放射の各波長は、角度分離方向に分割され、各部分の分散放射は、所定の相対遅延を伴って光スペクトル分散器を出る。
【0034】
光スペクトル分散器は、放出された光放射の遅延した第1の部分及び第2の部分が、複数の波長を有する分散放射に分割するように、そこを通過する放出された光放射を屈折及び分散させる。したがって、分散放射の各波長は、空間分離方向に分割される。光遅延要素は、第1の部分の放出された放射に時間遅延を提供し、遅延した第1の部分及び第2の部分は、光スペクトル分散器を通過したとき、所定の相対遅延を伴って分散放射の形態で光スペクトル分散器を出る。一例として、少なくとも1つの遅延要素は、厚さ5cm、屈折率1.5(放出された光の第1の部分の移動の方向)のガラス製の立方体である。放出された放射の第1の部分は、ガラス製の立方体を通って移動するようにされており、第2の部分は、少なくとも1つの遅延要素をバイパスし、同じ距離を、空気を介して移動するようにされている。第1の部分は、速度c/1.5で5cm移動し、第2の部分は、速度cで移動する(cは光の速度)、すなわち、第1の部分は、第2の部分に対して5cm/(c/1.5)-5cm/c=8.3×10^-11s(83ps)の時間で遅延する。
【0035】
任意で、前記時間分解スペクトルを測定するための前記装置は、前記生成された光のパルスを前記光源から前記目標に向けるための第1の光ファイバーと、前記放出された光放射を前記目標から前記光スペクトル分散器に向けるための第2の光ファイバーと、を更に備える。第1の光ファイバーは、光の損失を最小限にするために、生成された光のパルスと目標との間の光路に提供されている。任意で、第2の光ファイバーは、少なくとも1つのコリメート要素に入るための光路を、放出された光放射に提供するために設けられ得る。
【0036】
任意で、前記光スペクトル分散器は、回折格子、プリズム、又はファブリ・ペローエタロンのうちの少なくとも1つを備える。分散放射の角度分散が、回折格子及びプリズムの両方ならびにエタロンについて同じである場合、分散放射に対応付けられたパルス面傾斜は、回折格子及びプリズムの両方ならびにエタロンで同じである。しかしながら、パルス面傾斜の性質は、回折格子及びプリズムで異なる。光スペクトル分散器として採用されるプリズムの場合、分散放射の各波長の位相面は、それに垂直のままであるが、一方、分散放射の各波長に対応付けられた波束は、プリズム内のその光路長に応じて、異なる量の群遅延を獲得する。光スペクトル分散器として採用される回折格子の場合、分散放射の各波長の位相面は、その断面に対して傾斜した状態になる。
【0037】
更に任意で、多色光ビームについて、それに対応付けられた複数の波長などの単色成分は、その間で横方向のシフト及び正又は負のチャープを獲得し得る。一例では、光遅延要素として採用されるプリズムは、ダブプリズムやペンタプリズムなどであり得る。特に、ダブプリズムは、横方向の色のシフト及び上下反転を提供するが、角度分散及びパルス面傾斜は、ゼロである。ペンタプリズムはまた、角度分散又はパルス面傾斜を提供しないが、ビームを片側に90度回転させ、一方、異なる波長成分は、横方向のシフトを獲得する。
【0038】
以下、平面状の回折格子を使用して構築された分光計の場合について、パルス面傾斜とスペクトル分解能との間のトレードオフを詳細に説明する。凹状回折格子、プリズム、及びエタロンを含む分光器設計の場合は、本開示の目的で、平面状の格子の場合と同様である。
【0039】
光スペクトル分散器として採用される回折格子として使用される格子の種類を選択することは、重要な態様である。回折格子の回折次数は、整数「m」によって表され、典型的には、|m|=1である。
【0040】
回折格子での線の総数は、「N」によって表される。回折格子は、遅延した第1の部分及び第2の部分を有する、コリメートされた放出された光放射によって完全に満たされていると見なされる。
【0041】
回折格子の格子間の線間隔は、「d」(ミリメートル)によって表される。したがって、線密度(すなわち、1ミリメートルあたりの線(1/mm))=1/dである。
【0042】
回折格子の全体の幅(w)は、以下によって表される。
w=Nd
【0043】
回折格子の分解力(R)は、以下によって表される。
R=λ/Δλ=|m|N
ここで、λは、波長である。
【0044】
幅(w)を有する回折格子の最大可能分解力(Rmax)は、以下である。
Rmax=2w/λ
【0045】
回折格子によるパルス面傾斜は、空間の観点又は時間の観点のいずれかで特徴付けられ得る。空間的に、パルス面傾斜は、回折格子での線の総数に回折次数を乗じ、波長を乗じたものに等しい、すなわちRλに等しい。デルタパルスの全体の時間の広がりと同じである時間のパルス面傾斜は、空間の傾斜を光の速度で割ったものに等しい=Rλ/c。ここで、cは、光の速度である。
【0046】
分散放射に対応付けられた角度分散(dθ)/(dλ)は、以下によって表される。
(dθ)/(dλ)=(1/cosθ)(m/d)
ここで、θは、回折角である。
【0047】
入射角は、定数θ0である。特に、回折格子の線間隔(d)が減少するにつれて、角度分散は増加する。更に、回折次数「m」の回折格子の回折効率は、波長の関数である。自由なスペクトル範囲は、波長範囲及び回折次数に依存する。特に、|m|=1の場合、電磁スペクトルの可視域の波長についての自由なスペクトル範囲は、全範囲をカバーする。したがって、1次について、次数ソートフィルタを必要としない。遅延した第1の部分及び第2の部分を有する、放出された光放射の真にコリメートされた光ビームから回折格子上で生じる回折パターンは、角度のsinc2関数である。分解力が大きくなるほど、パターンの中心の最大値が狭くなることが理解されるであろう。角度分解力は、角度分散及び分解力を使用して推定され得る。
特に、Δθ≒(dθ)/(dλ)Δλ
Δλ=λ/R=λ/|m|N
したがって、|Δθ|≒λ/(Ncosθ)である。
【0048】
更に、回折格子の完全なスペクトル分解力が利用される場合、スリット(スリットを介して組み込まれた開口部など)を狭くする必要がある。具体的には、スリットの幅は、全回折格子がスリットのフラウンホーファー回折パターンの中心の最大値内に収まることが可能であるようにしなければならない。典型的には、光スループットを増加させるために、スリットは、これよりもはるかに広い。したがって、スリットを満たした単色ビーム(光のパルスなど)は、コリメート要素によって、δθによって表される、小さいが有限の角度拡がりを有する広いビームに変換される。w1は、入力スリット幅で、Fcは、コリメータ焦点距離とする。
以下の場合、tan(δθ/2)=w1/(2Fc)
w1<<Fc
δθ≒w1/Fc
ここで、w1は、スリットの幅であり、Fcはコリメート要素の焦点距離である。
【0049】
スペクトル面上のスリットの像は、回折パターン(すなわち、sinc2関数)がスリットの像よりも更に狭いとすると、光スペクトル分解能を決定する主要な要因の1つであることが理解されるであろう。単色ビームのスリットの像はほぼ、回折パターンの箱形関数との畳み込みであり、後者は、完全な画質を仮定した場合のスリット像を表す。実際の分光計では、画質は完全ではなく、更に、検出器上の最終的な入力スリット像は、システムの点拡がり関数によってぼやける。
【0050】
分散放射の十分大きい角度分散を達成するために、格子定数を小さくしなければならないことが理解されるであろう。更に、十分なスループットを達成するために、回折格子の幅を大きくしなければならない。したがって、回折格子の分解力は、典型的には、スリットの像の幅によって定義される最終的な光分解能よりも優れている。
したがって、R=|m|N=|m|(w/d)は大きくなる。
【0051】
一方、スリット幅が無限に狭いと仮定すると、所与の波長λ0で所与の分解能Δλ0を達成するために必要とされる最小分解力(R)が計算され得る。示されているように、分解力R=|m|N=λ/Δλである。
したがって、Req=λ0/(Δλ0)である。
ここで、Δλ0は、スリット限界分解能である。
【0052】
sinc2パターンが、スリットの像よりも少なくとも3倍狭い場合、後者が分解能に影響を及ぼす。上述の分解能を達成するための最小等価格子分解力は、以下である。
R'eq=(3λ0)/(Δλ0)
【0053】
最小分解力と実際の分解力との間の比は、過剰な分解力、すなわち以下のように定義される。
ER=R/R'eq=(|m|NΔλ0)/(3λ0)
【0054】
更に、全回折格子での光路差は、Δs=Rλと定義され、それに対応して、最小等価経路差は、Δs'eq=R'eqλと定義される。過剰な経路差は、Δs=ERΔs'eqと定義され、過剰な時間の広がりは、Δt=ERΔt'eqと定義され得る。特に、過剰な時間の広がり係数ER>1の場合、時間のパルスの広がりは、目標とする波長分解能に絶対的に必要なものよりも大きい。
なぜなら、Δk=Δλ/λ2だからである。
ここで、Δkは、波数分解能である。
【0055】
したがって、フーリエ変換の数学に基づく不確定性関係により、Δs=1/Δk及びΔsΔk=1である。フーリエ変換の分光計、及び角度回折又は分散に基づく分光計によってもたらされる時間の広がりは、上記の式に基づいて比較され得る。完全にコリメートされたビーム(光のパルスなど)を有するフーリエ変換の分光計では、波数分解能(Δk)は、パルス広がりΔt=Δs/c=1/cΔkにつながり、それは、過剰な時間の広がりがないことを意味する。
【0056】
任意で、目標から受光された、コリメートされた放出された光放射は、光透過セグメンテーション、光反射セグメンテーション、又は光分割セグメンテーションのうちの少なくとも1つを使用する回折格子を採用した光スペクトル分散器を介してセンサ要素に向けられるように構成されている。実際、一実施形態によると、前記光スペクトル分散器は、回折格子を備え、前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分は、光透過セグメンテーション、光反射セグメンテーション、光分割セグメンテーションのうちの少なくとも1つを使用する前記回折格子を採用した前記光スペクトル分散器を介して前記センサ要素に向けられるように構成されている。低光用途のコンパクトな時間ゲートラマン分光器の基本的な要件は、大きい開口部及び大きい角度分散である。このような要件は、大きい過剰な分解力(ER)、したがって過剰なパルス面傾斜につながり得る。しかしながら、大きい開口部を維持するために、回折格子によって提供される過剰な分解力が利用され得る。回折格子の元の大きい格子は、より小さいが十分な数の格子線を有するセグメントに分割され得る。更に、このような各セグメントには、好適な相対光路差を有する元の単色ビームのスライスが供給され得る。
【0057】
回折格子を採用した光スペクトル分散器の内側に入るコリメートされた放出された光放射(コリメートされた放出された放射の第1の部分など)についての光路長は、回折格子の外側に入るコリメートされた放出された放射(コリメートされた放出された放射の第2の部分など)の光路長よりも短いことが理解されるであろう。光透過セグメンテーションでは、光路長差のバランスをとるために、光遅延要素(ガラスのブロックなど)が、第1の部分の光路内に追加される。特に、時間の広がりは、パルス面傾斜に関連している。したがって、光遅延要素がない場合のパルス面傾斜は、Rλである。一例では、光遅延要素を有するコリメートされた放出された放射の第1の部分は、第2の部分の2倍広い。このような例では、第2の部分に対応する回折格子セグメントは、格子線の3分の1を有する。更に、第1の部分は、第1の部分の各部分が回折線の3分の1を有するように、2つの部分に分割される。したがって、各部分(すなわち、第1の部分及び第2の部分の2つの部分)に対応付けられたパルス面傾斜は、Rλ/3である。光遅延要素の光学的な厚さは、第1の部分及び第2の部分の各サブ部分の傾斜パルス面が、分散後に同時に移動して光スペクトル分散器を出るように選択される。このような機構により、時間の広がりを3分の1に低減することができる。更に、得られた分解力R/3がスリット幅によって与えられる分解能よりも更に大きいと仮定すると、スペクトル分解能は、セグメンテーションによって低下しないままである。更に任意で、ダブプリズムが、光遅延要素として使用され得る。ダブプリズムで生じ得る色の効果の除去という更なる利点を与える、ミラーを備えるダブプリズムの等価物が使用され得る。また更に任意で、ペンタプリズムが、光遅延要素として使用され得る。光透過セグメンテーションを使用する利点は、優れた時間の分解能が必要とされず、分光計のコスト及び複雑性を低減しなければならない場合に、コリメートされたビームの第1の部分の光路から光遅延要素を容易に除去し得ることである。
【0058】
光反射セグメンテーションは、コリメートされた放出された放射を、回折格子を介してセンサ要素に向けるために使用され得る。光反射セグメンテーションを備えるこのような機構は、群速度分散又は波長依存性の横方向のシフトなどの色の効果が観察されないという利点を有する。
【0059】
光分割セグメンテーションは、複数の検出器(センサ要素など)及び複数の光スペクトル分散器の使用を含む光反射セグメンテーションの一種である。光分割セグメンテーションは、(放出された光放射の)光ビームを光スペクトル分散器の各々の所望の方向に反射して、(放出された光放射の)光ビームを受光し、受光された(多色の)放出された光放射(本質的に、放出された光放射のビーム)を、異なる角度に伝播する複数の波長を有する分散放射に分散させるビーム反射器(ミラーなど)の構成に基づく、様々なセグメンテーション設計を備える。一例では、回折格子によって使用される光分割セグメンテーションは、コリメートされた放出された光放射が、トウヒ(spruce)の2つの枝と称される2つの方向に分割されるように、1次の「トウヒ」設計を備える。このような例では、時間の広がりは半分になるが、一方、波長分解能は損なわれない。別の例では、回折格子によって使用される光分割セグメンテーションは、コリメートされた光放射が、4つのビームに分割されるように、2次の「トウヒ」設計を備える。このような例では、時間の広がりは4分の1に低減するが、一方、波長分解能は損なわれない。更に別の例では、回折格子によって使用される光分割セグメンテーションは、1次の「トウヒ」設計の再帰的一般化である「オーク」設計を備える。実際、光スペクトル分散器は、放出された光放射の遅延した第1の部分及び第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させるように構成されており、分散放射の各波長は、角度分離方向に分割される。
【0060】
センサ機構は、分散放射の各波長をその異なる空間領域で受け取るように構成されたセンサ要素を更に備える。更に、センサ要素は、分散放射の各波長に対応付けられた光強度を測定するように構成されている。光スペクトル分散器は、放出されコリメートされた光放射の遅延した第1の部分及び第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分割し得、各波長は、スペクトル成分に対応する。光分散器要素は、スペクトル成分をセンサ要素の異なる空間領域に向け得る。センサ要素は、異なる波長で各スペクトル成分に対応付けられたスペクトル強度(光強度など)を測定するように構成されている。光スペクトル分散器から同時に出る分散放射の潜在的な利点は、センサ要素に対応付けられた信号対雑音比が向上することである。一例として、各波長に対応付けられた光強度は、測定の時間中にセンサ要素の各々によって受けられる光子の数を指し得る。本開示での一般的な光強度は、時間分解光スペクトルを形成するために使用され得る絶対的又は相対的な数値を指す。更に、「異なる空間領域での分散放射の各波長」という用語は、角度方向に関する角度に向かう放出された光放射内の波長範囲を指す。一例として、第1の角度方向の第1の角度範囲内の波長範囲は、第1の波長と第2の波長との間であり得る。第1の波長と第2の波長との差は、光分散器の構成及びセンサ機構の形状に応じて、例えば0.001nm、0.1nm、1nm、10nm、又は100nmであり得る。更に、第2の角度方向の第2の角度範囲内の波長範囲は、第3の波長と第4の波長との間であり得る。第3の波長と第4の波長との差は、光分散器の構成及びセンサ機構の形状に応じて、例えば0.001nm、0.1nm、1nm、10nm、又は100nmであり得る。更に一例として、第1の角度方向の第1の角度内の波長は、800nmから801nmまで(801nmを含まない)で、第2の角度方向の第2の角度内の波長は、801nmから802nmまでであり得る。言い換えると、連続する2つの「各波長」範囲の差は、例えば最大0.001、0.01、0.1、1、5、10、20、30、40、又は50nmであり得る。したがって、その例によると、センサ要素の第1のセンサは、波長の第1の範囲(800nmから801nmまでで、801nmを含まない)の波長に関する光子を受けるように構成されている。更に、センサ要素の第2のセンサは、波長の第2の範囲(801nmから802nmまで)の波長に関する光子を受けるように構成されている。したがって、その例によると、第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素は、空間的に互いに隣り合って配置されている。第1の範囲及び第2の範囲の波長に関する測定された光子は、分散放射の各波長に対応付けられた光強度(すなわち、第1の範囲及び第2の範囲に関する強度)の尺度として使用される。実際、センサ要素は、分散放射の各波長をその異なる空間領域で受け取るように構成されており、センサ要素の第1の空間領域は、第1の範囲の波長を受け取るように構成されており、センサ要素の第2の空間領域は、第2の空間領域で第2の範囲の波長を受け取るように構成されている。一実施形態では、センサ要素は、2つ以上のセンサを備える。
【0061】
任意で、前記センサ要素は、前記分散放射が前記センサ要素によって受光されるとき、所定の期間、前記「オン状態」になるように構成又は動作可能である。任意で、所定の期間は、目標が入射レーザーパルスによって励起されるときに、ラマン放射が目標によって放出される時間の量として定義される。このような時間の量は、一般に、目標によって放出される蛍光などの他の光生成放射と比較して少ない。他の放射は、ラマン放射の測定を妨げるため、ラマン放射の測定中回避される必要がある。一例では、所定の期間は100psであり、それは、目標を励起するレーザーパルスの時間の幅に等しい場合がある。センサ要素は、目標によって放出されたラマン放射に対応付けられた分散放射を受光するために、100psの所定の期間、「オン状態」になり得る。センサ要素は、蛍光などの他の不要な放射が観察される期間、「オフ状態」になり得る。更に、例示的な実施形態では、コントローラは、センサ機構のセンサ要素を生成された光のパルスと同期させる。一例として、コントローラは、ラマンスペクトルに対応付けられた光子の予期される到着時間に測定を開始し、後続の蛍光の発光の到着前に測定を停止するように、センサ要素に信号を提供する。例えば、目標とレーザーとの間の距離が1メートル、目標からセンサ要素までの距離が1メートルの場合、レーザーからセンサ要素まで光のパルスが移動する総時間は、t=2m/c=6.671ナノ秒(ns)である。ここで、cは、光の速度である。典型的には、蛍光現象は、ラマンよりも長い寿命であるため、例えば開始時間から100ピコ秒後にセンサ要素をオフにすることで、蛍光放射による外乱は効果的に減少する。この例では、センサ要素は、各パルスの生成の開始から6.671ns~6.771nsの期間(測定ウィンドウ)に「オン状態」である。典型的には、蛍光放射は、数千ピコ秒、例えば10000psの間観察される。したがって、センサ要素は、10000psなどの蛍光が観察される期間、「オフ状態」になるように構成されている。このように、オフ状態の期間に対応付けられた光子は測定されない。任意の又は更なる実施形態では、光パルスを生成した後の測定ウィンドウの開始時間は、測定の時間ベースのヒストグラムを生成するように調整され得る。上記の2メートルの例を使用すると、開始時間は、光パルスが生成された瞬間から6.671ns、6.68ns、6.69nsなどであり得る。更に、「オン状態」の所定の期間は、測定条件ならびにセンサ要素の速度及び感度に応じて設定され得る。任意で、所定の期間の長さは、1~100psの範囲であり得る。一例では、所定の期間は、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、又は190psから10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200psまでであり得る。「オン状態」についての所定の期間はまた、例えば1~数ナノ秒であり得る。この期間において、検出器内の光子の衝突時間は、検出要素と共に時間-デジタル変換器を使用して、例えば30~100ピコ秒の分解能内で決定され得る。この場合、「オン状態」についての所定の期間は、1、2、3、4、5、6、7、又は8ナノ秒から3、4、5、6、7、8、9、又は10ナノ秒までであり得る。
【0062】
任意で、前記センサ要素は、異なる空間領域の各々での複数のピクセルを更に備える。前記空間領域の各々での前記複数のピクセルは、前記分散放射の別々の波長を受け取り、前記分散放射の各波長に対応付けられた光強度の量を測定するように構成されている。センサ要素の複数のピクセルの各ピクセルは、異なる波長で各スペクトル成分のスペクトル強度を測定するように構成され得る。例えば、第1のスペクトル成分は、ピクセルP1に向けられ得、第2のスペクトル成分は、ピクセルP2に向けられ得、第3のスペクトル成分は、ピクセルP3に向けられ得る、等々である。センサ要素の各ピクセルは、異なる波長帯域でスペクトル成分の光強度を測定するように構成され得る。センサ要素は、スペクトル成分の測定された光強度を示す複数の測定値を提供し得る。各測定値は、異なる波長で散乱光のスペクトル強度を示すものであり得る。センサ要素は、任意で、測定値を記憶するためのメモリを備え得る。メモリは、例えば、バッファメモリと呼ばれ得る。特に、センサ要素は、例えば、単一光子アバランシェダイオード(Single Photon Avalanche Diodes:SPAD)のアレイを備え得る。散乱ラマン放射のスペクトル強度分布は、SPADを備えるセンサ要素を使用することによって測定され得る。SPAD検出器を使用することで、例えば、測定値の雑音レベルを低減することができる場合がある。任意で、装置は、分散放射の不要なスペクトル成分を除去するための1つ以上のフィルタを備え得る。
【0063】
更に、時間ゲートラマンスペクトルを測定するための装置は、センサ要素によって測定される分散放射の各波長に対応付けられた光強度の量を収集して、時間ゲートラマンスペクトルを形成するように動作可能なコントローラを備える。センサ要素の動作のタイミングは、タイミング信号に基づいて制御され得る。センサ要素の動作は、タイミング信号に基づいて有効及び無効にされ得る。特に、SPAD検出器は、カウンタのセットを備え得る。上記カウンタのセットの動作は、タイミング信号に基づいて有効及び無効にされ得る。タイミング信号は、例えば、励起レーザービームでビームスプリッタ及び補助光電検出器を使用することによって形成され得る。センサ要素は、検出器信号を提供し得る。検出器信号は、複数の測定された光信号値を含み得る。各光信号値は、異なるスペクトル領域でのラマン散乱光などの光放射のスペクトル強度を示し得る。このような光信号値は、時間ゲートラマンスペクトル、又は一般に、目標に対応付けられた時間分解光スペクトルを形成するために使用される。
【0064】
更に、時間分解光スペクトルを測定するための装置は、センサ要素から得られる測定値を処理するためのデータ処理ユニットを備え得る。装置は、測定値から決定される出力値を記憶するためのメモリを備え得る。出力値は、目標の測定された時間分解光スペクトルを規定し得る。データ処理ユニットは、センサ要素から得られる測定値から、測定された時間分解光スペクトル、又は一般に、時間分解発光スペクトルを決定するように構成され得る。
【0065】
装置は、装置の動作を制御するため、及び/又はセンサ要素から得られる測定値を処理するための制御ユニットを備え得る。装置は、コンピュータプログラムを記憶するためのメモリを備え得る。1つ以上のデータプロセッサによって実行されると、コンピュータプログラムは、例えば、装置に、光信号値を測定させ、及び/又は光信号値を処理させ得る。
【0066】
装置は、動作パラメータを記憶するためのメモリを備え得る。動作パラメータは、例えば、センサ要素の複数のピクセルについての積分期間(複数可)、及び測定中に目標でラマン散乱光を含む光放射を生成するために使用される励起レーザーパルスの数(複数可)を規定し得る。
【0067】
装置は、ユーザに情報を提供するため、及び/又はユーザからユーザ入力を受信するためのユーザインターフェースを備え得る。ユーザインターフェースは、例えば、ディスプレイ、タッチスクリーン、及び/又はキーパッドを備え得る。例えば、ユーザインターフェースは、測定された時間分解光スペクトルをグラフィカルに表示するように構成され得る。例えば、ユーザインターフェースは、測定された時間分解光スペクトルを表すヒストグラムなどのグラフを表示するように構成され得る。
【0068】
装置は、データを送信及び/又は受信するための通信ユニットを備え得る。通信ユニットは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、及び/又はモバイル通信ネットワークと通信するように構成され得る。装置はまた、インターネットサーバの使用などによって、分散してデータ処理を実行するように構成され得る。
【0069】
装置によって測定される時間分解光スペクトルは、例えば、目標を識別するために、参照データと比較され得る。装置によって測定される時間分解光スペクトルは、目標の化学組成を決定するために、参照データと比較され得る。測定された時間分解光スペクトルの1つ以上のスペクトルピークの高さ及び/又は位置は、目標中の物質の濃度を推定するために使用され得る。測定された発光パルスのスペクトル及び時間の形状は、例えば、フォトルミネセンス減衰形状を決定するために使用され得る。
【0070】
一実施形態によると、時間分解光スペクトルは、時間ゲートラマンスペクトルである。上記実施形態では、測定されたスペクトルは、時間ゲートラマンスペクトルである。
【0071】
本開示はまた、上述のような方法に関する。上記の開示された様々な実施形態及び変形は、方法に準用される。
【0072】
時間分解光スペクトルを測定するための方法は、目標に向けて光のパルスを生成することであって、前記目標は、光放射を放出する、光のパルスを生成することと、通過する前記放出された光放射の第1の部分に時間遅延を提供することであって、前記放出された光放射は、少なくとも1つの光遅延要素をバイパスする第2の部分を更に含む、時間遅延を提供することと、前記放出された光放射の前記遅延した第1の部分及び前記第2の部分を、複数の波長を有する分散放射に分散させることであって、前記分散放射の各波長は、角度分離方向に分割され、各部分の前記分散放射は、所定の相対遅延を伴って光スペクトル分散器を出る、分散放射に分散させることと、前記分散放射の各波長をその前記センサ要素の異なる空間領域で受け取ること、及び前記分散放射の各波長に対応付けられた前記光強度を測定することと、前記分散放射の各波長に対応付けられた、光強度の量を収集して、時間ゲート光スペクトルを形成することと、を含む。一実施形態によると、時間ゲート光スペクトルは、時間ゲートラマンスペクトルである。
【0073】
任意で、前記時間分解光スペクトルを測定するための前記方法は、第1の光ファイバーを使用して、前記生成された光のパルスを前記光源から前記目標に向けることと、第2の光ファイバーを使用して、前記光放射の一部を前記目標から分光計に向けることと、を更に含む。
【0074】
任意で、前記時間分解光スペクトルを測定するための前記方法は、前記生成された光のパルスを前記光源から集めることと、少なくとも1つの光学部材を使用して、前記生成された光のパルスを前記目標に向けて集中させることと、を更に含む。
【0075】
任意で、前記センサ要素は、異なる空間領域の各々での複数のピクセルを更に備え、前記空間領域の各々での前記複数のピクセルは、前記分散放射の別々の波長を受け取り、前記分散放射の各波長に対応付けられた光強度の量を測定する。更に任意で、前記センサ要素は、前記分散放射が前記センサ要素によって受光されるとき、所定の期間、「オン状態」のままである。任意で、時間分解光スペクトルを測定する方法は、時間ゲートラマンスペクトルを測定することを指す。更に任意で、光のパルスは、レーザーで生成される。
【図面の詳細説明】
【0076】
図1を参照すると、本開示の一実施形態に係る、時間ゲートラマンスペクトルを測定するための装置100のブロック図が示されている。(時間分解光スペクトルを測定する具体例としての)時間ゲートラマンスペクトルを測定するための装置100は、光のパルス生成するための光源102を備える。装置100は、光源102からの生成された光のパルスに光路を提供するための第1の光ファイバー104を更に備える。更に、装置100は、生成された光のパルスを第1の光ファイバー104から集め、集められた光のパルス108を目標110に向けて集中させるための光学部材106を備える。更に、装置100は、目標110によって放出されるラマン散乱光114を含む、放出された光放射を収集するためのレンズなどの光学系112と、光放射をセンサ機構118に向けるための第2の光ファイバー116と、を備える。更に、装置100は、光源102及びセンサ機構118に動作可能に接続されたコントローラ120を備える。コントローラ120は、センサ機構118によって測定される分散放射122の各波長に対応付けられた光強度の量を収集して、時間ゲートラマンスペクトルを形成するように動作可能である。
【0077】
図2を参照すると、本開示の一実施形態に係る、時間ゲートラマンスペクトルを測定するための
図1の装置100に実装されたセンサ機構200の概略図が示されている。第2の光ファイバー202は、放出された光放射204に光路を提供する。放出された光放射204は、コリメート要素206によって受光されて、放出された光放射204をコリメートする。コリメートされた放出された光放射210の第1の部分208の光路には、第1の部分208に時間遅延を与えるための光遅延要素212及び光遅延要素214が提供されている。コリメートされた放出された光放射210の第2の部分216は、光遅延要素212及び214をバイパスする(すなわち、経由しない)。遅延した第1の部分218及び第2の部分216が、第1の波長を有する第1のスペクトル成分222、及び同時に第2の波長を有する第2のスペクトル成分224を含む分散放射の形態で光スペクトル分散器220を出るように、遅延した第1の部分218及び第2の部分216は、光スペクトル分散器220によって同時に受光される。分散放射は、所定の遅延によってセンサ要素226によって受光される。コントローラ228は、分散放射に対応付けられた、測定されたスペクトル値を受信する。更に、コリメートされた放出された光放射の第3の部分209には、第3の遅延部分219を形成するための光遅延要素214が提供されている。
【0078】
図3を参照すると、本開示の一実施形態に係る、回折格子304を通過したときに分散放射に分割される、光放射のコリメートされたビーム302を示す機構300の概略図が示されている。収集された光放射306は、入力スリット308を介して分光器によって受光される。放出された光放射306は、コリメート要素310に放出された光放射306を通すことによってコリメートされる。更に、コリメートされた放出された光放射302は、コリメートされた光放射302を分散放射に分割するために、回折格子304を通過する。示すように、スペクトル成分312は、センサ要素314の一方の空間領域で受光され、一方、スペクトル成分316は、センサ要素314の別の空間領域で受光されて、時間ゲートラマンスペクトルを形成する。
【0079】
図4A、
図4Bを参照すると、本開示の一実施形態に係る、光遅延要素402、404、及び406がガラスブロックとして組み込まれた、光透過セグメンテーションを採用した機構400A、400Bの概略図が示されている。収集され放出された光放射408は、分光器の入力スリットを表す開口部410を介して受光される。コリメート要素414から受光された、コリメートされた光放射412は、3つの部分、すなわち、下方部分416、中間部分418、及び上方部分(図示せず)に分割される。下方部分416及び中間部分418は、コリメートされた光放射412の第1の部分に対応し、一方、上方部分は、コリメートされた光放射412の第2の部分に対応する。
図4Aに示すように、下方部分416の光路は、下方部分416に時間遅延を提供するための、ガラスブロックとして組み込まれた2つの連続する光遅延要素402及び404を備える。
図4Bに示すように、中間部分418の光路は、中間部分418に時間遅延を提供するための、ガラスブロックとして組み込まれた1つの光遅延要素406を備える。下方部分416の光路は、中間部分418の光路よりも短く、したがって、下方部分416には、中間部分418よりも多くの時間遅延が与えられることが理解されるであろう。光遅延要素402、404、及び406のこのような機構400A、400Bにより、遅延した第1の部分及び第2の部分を好適な相対遅延で回折格子420によって受光することができる。遅延した第1の部分及び第2の部分が、回折格子420を出た後、所定の相対遅延で移動するような相対遅延で、遅延した第1の部分及び第2の部分は、回折格子420によって受光される。また、同図には、第1の波長を有する第1のスペクトル成分422及び所定の相対遅延で第2の波長を有する第2のスペクトル成分424を含む分散放射の2つの例示的な部分が示されている。分散放射は、所定の遅延でセンサ要素426によって受光されて、センサ要素を制御することによって時間分解スペクトルを測定する。
【0080】
図5A~
図5Bを参照すると、本開示の一実施形態に係る、光遅延要素がミラー502、504、及び506として組み込まれた、光透過セグメンテーションを採用した機構500A、500Bの概略図が示されている。
図5Aに示すように、3つのミラー502、504、及び506は、コリメートされた放出された光放射の第1の部分508の光路に配置されている。ミラー502、504、及び506の機構500Aは、ミラー502、504、及び506がダブプリズムの完全反射の等価物を表すようなものである。このような機構500Aの採用により、第1の部分508の別の部分よりも短い光路を有するある部分は、センサ要素によって同時に受光されるように、より多くの時間遅延を達成することができる。
図5Bに示すように、3つのミラー502、504、及び506は、コリメートされた放出された光放射の第1の部分508の光路に配置されている。ミラー502、504、及び506の機構500Bは、ミラー502、504、及び506がダブプリズム及び折り畳みミラーの等価物の効果を提供するようなものである。更に、ミラー504及び506は、ペンタプリズムの反射の等価物を形成する。
【0081】
図6を参照すると、本開示の一実施形態に係る、光反射セグメンテーションを採用した機構600の概略図が示されている。示すように、エシュロン構成の一連のミラー602は、コリメートされた放出された光放射の光路に配置されている。コリメートされた放出された光放射の第1の部分604は、一連のミラー602の各々に到着し、回折格子606に向かって反射された状態になる。このようなミラー602は、コリメートされた光放射の第1の部分604に時間遅延を提供する。したがって、遅延した第1の部分及び第2の部分(図示せず)は、回折格子606を同時に出る。したがって、分散放射のスペクトル成分608及び610は、センサ要素612に同時に到達する。
【0082】
図7A~
図7Cを参照すると、本開示の一実施形態に係る、光分割セグメンテーションを採用した機構700A、700Cの概略図が示されている。
図7Aに示すように、機構700Aは、入射するコリメートされた光放射706を2つの部分に分割する平面ミラーなどの2つのミラー702及び704を備える。分割されコリメートされた光放射の第1の部分708は、第1の回折格子710によって受光され、一方、分割されコリメートされた放出された光放射の第2の部分712は、第2の回折格子714によって受光される。「トウヒ」設計を再現したこのような機構700Aは、波長分解能に影響を与え続けることなく、時間の広がりを半分にする。
図7Bに示すように、機構700Bは、ミラー716などの一連の反射面を備える。このような機構700Bは、4つの別々の回折格子718、720、722、及び724を必要とし、その結果、4つのセンサ要素(図示せず)を必要とする。
図7Cに示すように、機構700Cは、6つのミラー728、730、732、734、736、及び738を備える。2つのミラー728及び730は、コリメートされた放出された光放射(図示せず)を2つの部分に分割するように構成されている。更に、分割されコリメートされた放出された光放射の各部分は、一方の側のミラー732及び734、ならびに他方の側のミラー736及び738を使用することによって、更に2つの部分に分割される。更に、4つの回折格子(
図7Bの回折格子718、720、722、及び724など)は、コリメートされた放出された光放射を4つの部分で受光するように採用される。特に、4つのセンサ要素(図示せず)が、4つの回折格子(
図7Bの回折格子718、720、722、及び724など)を備えるこのような機構700Cについて、分散放射に対応付けられた光強度を測定するために必要とされる。
【0083】
図8A及び
図8Bは、光遅延要素としての曲率半径r1の第1の球面ミラー802及び曲率半径r2の第2の球面ミラー804の機構を使用する図である。
図8Aは、機構の側面から見たときの図であり、
図8Bは、この機構のA-A方向から見たときの図である。収集された光放射は、スリット810を介して受光される。スリット810からの、入力され放出された光放射は、発散ビームである。放出された光放射の第1の部分816(図で実線で記されている)は、入力スリット810から第1のミラー802を介して出力822まで移動するとき、2×r1の光学的長さを移動する。第2の部分818(図で破線で記されている)は、入力スリット810からミラー804を介して出力822までの2×r2の光学的長さを移動する。第1の球面ミラー802及び第2の球面ミラー804は、共通の曲率中心点820を有する。一例として、r1が30cm、r2が15cmの場合、第1の部分と第2の部分との間には、(30×2-15×2)cm/(3×10^8m/s)=1nsの光遅延がある。
【0084】
添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、前述の本開示の実施形態に対する修正が可能である。本開示を説明及び請求するために使用される、「含む」、「備える」、「組み込む」、「有する」、「である」などの表現は、非排他的な方式で解釈されることが意図され、すなわち、存在することも明示的に説明されていない部材、構成要素、又は要素が可能である。単一のものに対する参照も、複数のものに関すると解釈されるものとする。