IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シアトル ジェネティクス,インコーポレーテッドの特許一覧

特許7551750抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート
<>
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図1
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図2
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図3
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図4
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図5
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図6
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図7
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図8
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図9
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図10
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図11
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図12
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図13
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図14
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図15
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図16
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図17
  • 特許-抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240909BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240909BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240909BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240909BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240909BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240909BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240909BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240909BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240909BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240909BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240909BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K47/68
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/13
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2022533071
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2020063390
(87)【国際公開番号】W WO2021113697
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】62/943,959
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/012,584
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,モーリーン
(72)【発明者】
【氏名】ウェステンドルフ,ロリ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,エリック ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】コストナー,ヘザー ジーン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/143739(WO,A2)
【文献】国際公開第2019/040608(WO,A1)
【文献】特表2016-539083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、単離された抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域が、
(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び
(iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含み;
軽鎖可変領域が、
(i)配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(ii)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び
(iii)配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含み、CDRがKabatによって決定される、抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、単離された抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域が、
(i)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び
(iii)配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含み、
軽鎖可変領域が、
(i)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(ii)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び
(iii)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含み、CDRがIMGTによって決定される、抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
抗体がヒト化されている、請求項1又は請求項2に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
重鎖可変領域が、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
重鎖可変領域が、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
重鎖可変領域が、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
重鎖可変領域が配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号17のアミノ酸配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
H2がFによって占められ、H28がSによって占められ、H48がIによって占められ、H67がAによって占められ、H69がLによって占められ、H71がVによって占められ、H73がKによって占められ、H78がAによって占められ、H93がTによって占められ、L69がRによって占められ、及びL71がYによって占められ、番号付けがKabat番号付けシステムによる、請求項4から7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
重鎖が配列番号21を含むアミノ酸配列を有し、軽鎖が配列番号29を含むアミノ酸配列を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
抗体又は抗原結合断片が抗原結合断片であり、抗原結合断片がFab、Fab'、F(ab')2、Fab'-SH、Fv、ダイアボディ、線状抗体、及び一本鎖抗体断片からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
抗体の重鎖可変領域が重鎖定常領域に融合され、軽鎖可変領域が軽鎖定常領域に融合されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
重鎖定常領域がIgG1アイソタイプのものである、請求項11に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項13】
細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤にコンジュゲートされた、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を含む、抗体薬物コンジュゲート。
【請求項14】
抗体又は抗原結合断片が、リンカーを介して細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤にコンジュゲートされている、請求項13に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項15】
細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤がモノメチルアウリスタチンである、請求項13又は14に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項16】
モノメチルアウリスタチンがモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、請求項15に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項17】
抗体又はその抗原結合断片が、酵素切断可能なリンカー単位を介してMMAEにコンジュゲートされている、請求項16に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項18】
酵素切断可能なリンカー単位がVal-Citリンカーを含む、請求項17に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項19】
抗体又はその抗原結合断片が、式:-Aa-Ww-Yy-を有するリンカー単位を介してMMAEにコンジュゲートされており、式中、-A-はストレッチャー単位であり、aは0又は1であり、-W-はアミノ酸単位であり、wは0から12の範囲の整数であり、-Y-はスペーサー単位であり、yは0、1、又は2である、請求項18に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項20】
ストレッチャー単位が以下の式Iの構造を有し、アミノ酸単位がVal-Citであり;スペーサー単位が、以下の式IIの構造を有するp-アミノベンジルアルコール(PAB)基である、請求項19に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【化1】
【請求項21】
リンカーがモノメチルアウリスタチンEに結合して、以下の構造:
【化2】
(式中、Abは、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片であり、pは1から16までの数を示す)
を有する抗体薬物コンジュゲートを形成する、請求項14から20のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項22】
抗体薬物コンジュゲートの集団におけるpの平均値が4である、請求項21に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項23】
請求項1から12のいずれか一項により定義される重鎖可変領域及軽鎖可変領域をコードする核酸。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸を含むベクター。
【請求項25】
発現ベクターである、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
請求項23に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項27】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片を産生する方法であって、抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片の産生に適した条件下で請求項26又は27に記載の宿主細胞を培養することを含む方法。
【請求項29】
宿主細胞によって産生された抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片を単離することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートを産生する方法であって、抗αvβ6抗体の産生に適した条件下で請求項26又は27に記載の宿主細胞を培養すること、宿主細胞から産生された抗αvβ6抗体を単離すること、及び抗αvβ6抗体を細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤にコンジュゲートすることを含む方法。
【請求項31】
抗αvβ6抗体がリンカーを介して細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤にコンジュゲートされている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
リンカーがVal-Citリンカーである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤がモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
対象におけるがんを処置するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、又は請求項13から22のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲートを含む、組成物。
【請求項35】
がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部がん、食道がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん(SCC)、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、及び膵臓がんからなる群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
肺がんが非小細胞肺がんである、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
がんが頭頸部がんである、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
がんが食道がんである、請求項34に記載の組成物。
【請求項39】
組成物が、抗体若しくは抗原結合断片又は抗体薬物コンジュゲート及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である、請求項34から38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
対象がヒトである、請求項34から39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、又は請求項13から22のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート、並びに生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤及び補助剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤を含む、医薬組成物。
【請求項42】
放射線又は化学療法剤と組み合わせて投与される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
vcMMAEにコンジュゲートされた単離された抗αvβ6抗体を含む、抗体薬物コンジュゲートであって、抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有し、抗体薬物コンジュゲートが以下の構造:
【化3】
(式中、Abは抗体であり、pは1から16までの数字を示す)
を有する、抗体薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年12月5日に出願された米国特許仮出願第62/943,959号及び2020年4月20日に出願された米国特許仮出願第63/012,584号の利益を主張し、その個々が、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0002】
配列表への参照
本出願は、2020年11月16日に作成され、52KBを含む、AVB6-00212_ST25と名付けられたファイル中の電子配列表を含み、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、新規の抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲート、並びにがんを治療するためのかかる抗αvβ6抗体及び抗体薬物コンジュゲートを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アルファ-vベータ-6としても知られるαvβ6は、フィブロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質に結合する細胞付着受容体である。αvβ6は、アルファvサブユニット及びベータ6サブユニットで構成されており、非小細胞肺がん(NSCLC)を含む複数のがんで上方制御されている。
【0005】
NSCLCは最も一般的なタイプの肺がんである。昨年、20万人以上が肺がんと診断され、これはがんによる死亡の主原因である。したがって、NSCLCの改善された治療法が必要とされている。
【0006】
特許出願、特許公開、及び科学文献を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、あたかも個々の参考文献が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
抗αvβ6抗体及びαvβ6指向性抗体薬物コンジュゲート(ADC)が、本明細書において提供される。がんを含むαvβ6発現障害を治療するために抗αvβ6指向性抗体及びADCを使用する方法もまた、本明細書において提供される。好ましい抗αvβ6抗体は、Kabat番号付けによって決定されるように、配列番号31、32、及び33の重鎖CDR配列及び配列番号37、42、及び39の軽鎖CDR配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】さまざまな抗αvβ6抗体を用いたLAP遮蔽ELISAアッセイの結果を示す図である。
図2】マウス抗体クローン2A2(m2A2と称する)を用いたヒト及びカニクイザル(cyno)αvβ6を発現する293F細胞の飽和結合研究の結果を示す図である。
図3】親マウスmAb(m2A2と称する)重鎖可変領域のアミノ酸配列と、選択されたヒト生殖細胞系列アクセプター(hIGHV1-46/HJ4と称する)及びヒト化2A2重鎖変異体とのアラインメントを示す図である。アスタリスクはKabatによって決定されたCDRを表し、十字はIMGTによって決定されたCDRを表す。
図4】親マウスmAb(m2A2と称する)軽鎖可変領域と、選択されたヒト生殖細胞系列アクセプター(hIGKV1D-33/KJ2と称する)及びヒト化2A2軽鎖変異体のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。アスタリスクはKabatによって決定されたCDRを表し、十字はIMGTによって決定されたCDRを表す。
図5】LA及びLB軽鎖を有するヒト化抗体並びに親マウス及びキメラ抗体(それぞれm2A2及びc2A2と称する)を用いたヒトαvβ6を発現する293F細胞における競合結合研究の結果を示す図である。
図6】HA及びHC重鎖を有するヒト化抗体並びに親マウス及びキメラ抗体(それぞれm2A2及びc2A2と称する)を用いたヒトαvβ6を発現する293F細胞における競合結合研究の結果を示す図である。
図7】ヒト化抗体のサブセット及び親マウス抗体(m2A2と称する)を用いたヒトαvβ6を発現する293F細胞における競合結合研究の反復結果を示す図である。
図8】ヒト及びカニクイザル(cyno)αvβ6をh2A2 HCLGヒト化抗体及び親マウス抗体(m2A2と称する)と共に発現する293F細胞の飽和結合研究の結果を示す図である。
図9】ヒト及びカニクイザル(cyno)αvβ6をHCLGヒト化抗体及びADCと共に発現する293F細胞における競合結合研究の結果を示す図である。
図10】h2A2 HCLGヒト化抗体を用いたヒトαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8へのELISAによるαvβ6特異的結合研究の結果を示す図である。
図11】h2A2 HCLG抗αvβ6 vcMMAE ADCがαvβ6発現がん細胞株に対してインビトロ細胞傷害を示すことを示す図である。
図12】ヌードマウスにおけるDetroit 562頭頸部がん細胞株の異種移植研究の結果を示す図である。投与量及びスケジュールは図に示されている。
図13】ヌードマウスにおけるHPAFII膵臓がん細胞株の異種移植研究の結果を示す図である。投与量及びスケジュールは図に示されている。
図14】ヌードマウスにおけるBxPC-3膵臓がん細胞株の異種移植研究の結果を示す図である。投与量及びスケジュールは図に示されている。
図15】ヌードマウスにおけるSW780膀胱がん細胞株の異種移植研究の結果を示す図である。投与量及びスケジュールは図に示されている。
図16】ヌードマウスの6つのNSCLC細胞株におけるPDX研究の結果を示す図である。ADCは3mg/kg q7dx3で投与された。
図17】ヌードマウスの6つの卵巣癌細胞株におけるPDX研究の結果を示す図である。ADCは5mg/kg q7dx3で投与された。
図18】2つの細胞株異種移植モデルにおけるh2A2 HCLGとh15H3との間の比較の結果を示す図である。ADCは3mg/kgで1回投与された。
【発明を実施するための形態】
【0009】
I. 定義
本開示をより容易に理解できるようにするために、最初に特定の用語が定義される。本出願において使用される場合、本明細書に別段の明示的な規定がない限り、下記の用語の各々は、下記の意味を有するものとする。さらなる定義は、本出願全体を通して記載される。
【0010】
用語「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、他方を伴うか又は伴わない、2つの特定された特徴又は構成要素の各々の具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書中の語句、例えば「A及び/又はB」において使用される用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むことを意図する。同様に、語句、例えば「A、B、及び/又はC」において使用される用語「及び/又は」は、以下の態様:A、B、及びC; A、B、又はC; A又はC; A又はB; B又はC; A及びC; A及びB; B及びC; A単独; B単独; 及びC単独の各々を包含することを意図する。
【0011】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態は、「含んでいる」、「からなる」、及び「本質的にからなる」の態様及び実施形態を含むことが理解される。
【0012】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press; 及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、本開示に使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0013】
単位、接頭辞、記号は、国際単位系(SI)で承認された形式で示される。数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。本明細書において提供される見出しは、本開示の種々の態様の限定ではなく、本明細書を全体として参照することにより有することができる。したがって、直ぐ下で定義される用語は、本明細書を全体として参照することによって、より完全に定義される。
【0014】
用語「αvβ6」、「avb6」、「アルファ-v ベータ-6」、又は「β6」は、本明細書において互換的に使用され、別段の指定がない限り、αvβ6遺伝子をトランスフェクトされた細胞により一般的に発現されるか又は細胞上で発現されるヒトαvβ6の任意のバリアント、アイソフォーム及び種相同体を含む。
【0015】
用語「免疫グロブリン」とは、2対のポリペプチド鎖である1対の軽い(L)低分子量鎖及び1対の重い(H)鎖からなる構造的に関連した糖タンパク質のクラスを指し、これらは全てジスルフィド結合によって相互接続される。免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けられている。例えば、Fundamental Immunology 7章 (Paul, W., ed., 第2版, Raven Press, N.Y. (1989年))を参照されたい。簡単には、各重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVH又はVHと略記する)及び重鎖定常領域(CH又はCH)で構成される。重鎖定常領域は、典型的には、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインで構成される。重鎖は、一般的に、いわゆる「ヒンジ領域」のジスルフィド結合を介して相互接続される。各軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVL又はVLと略す)及び軽鎖定常領域(CL又はCL)で構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインのCLで構成される。CLは、κ(カッパ)又はλ(ラムダ)アイソタイプでのものであり得る。用語「定常ドメイン」及び「定常領域」は、本明細書において互換的に使用される。免疫グロブリンは、限定されないが、IgA、分泌型IgA、IgG、及びIgMを含む、一般的に公知であるアイソタイプのいずれからも誘導することができる。IgGサブクラスはまた、当業者に周知であり、限定されないが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス又はサブクラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0016】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗原に対する抗体の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域(それぞれVH及びVL)は、さらに超可変性の領域(又は超可変領域、配列及び/又は構造的に定義されたループの形態であり得る)に細分化され、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域とともに散在し得る。用語「相補性決定領域」及び「CDR」は、「超可変領域」又は「HVR」と同義であるが、当該技術分野においては、抗原特異性及び/又は結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことが公知である。一般的に、各重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、及び各軽鎖可変領域には3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」及び「FR」は、当該技術分野において、重鎖及び軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すことが公知である。一般的に、各全長重鎖可変領域には4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4)、及び各全長軽鎖可変領域には4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4)がある。各VH及びVL内において、3つのCDR及び4つのFRは、典型的には、以下:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番でアミノ末端からカルボキシ末端に配列される(Chothia and Lesk J. Mot. Biol., 195, 901-917 (1987)も参照されたい)。
【0017】
本発明との関連で用語「抗体」(Ab)とは、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、又はそのいずれかの誘導体であって、有意な期間の半減期、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間(h)、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間(h)、約24時間以上、約48時間以上、約3日、4日、5日、6日、7日以上など、又は任意の他の関連する機能的に定義される期間(例えば、抗原への抗体の結合に関連する生理学的応答を誘導し、促進し、増強し、及び/若しくは調節するのに十分な時間、並びに/又は抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)で、典型的な生理学的条件下、抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、又はそのいずれかの誘導体を指す。免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び補体系の成分、例えば補体活性化の古典経路の最初の成分であるC1qを含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。抗体はまた、二重特異性抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体又は類似の分子であり得る。
【0018】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用される場合、単一の一次アミノ酸配列で組換え的に生成され、マウスB細胞融合物から生成される抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する単一結合特異性を示す抗体を指す。ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニック又はトランスクロモソーム非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって生成することができる。
【0019】
「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、αvβ6に特異的に結合する単離された抗体は、αvβ6以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、αvβ6に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原、例えば異なる種由来のαvβ6分子などに対して交差反応性を有することができる。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まないことができる。一実施形態では、単離された抗体は、別の作用剤(例えば、小分子薬物)に結合した抗体コンジュゲートを含む。一部の実施形態では、単離された抗αvβ6抗体は、小分子薬物(例えば、MMAE又はMMAF)との抗αvβ6抗体のコンジュゲートを含む。
【0020】
「ヒト抗体」(HuMAb)は、FRとCDRの両方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域はまた、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発又はインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含むことができる。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖細胞系由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含むことを意図しない。用語「ヒト抗体」及び「完全ヒト抗体」は同義的に使用される。
【0021】
用語「ヒト化抗体」とは、本明細書で使用される場合、ヒト抗体定常ドメイン、及びヒト可変ドメインに対する高レベルの配列相同性を含むように修飾された非ヒト可変ドメインを含む、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、抗原結合部位をともに形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を、相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)上に移植することによって達成することができる(国際公開第92/22653号及び欧州特許出願公開第0629240号を参照されたい)。親抗体の結合親和性及び特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)からヒトフレームワーク領域(復帰突然変異)へのフレームワーク残基の置換が必要とされ得る。構造的相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要であるフレームワーク領域中のアミノ酸残基を同定するのに役立つ場合がある。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、場合により、非ヒトアミノ酸配列に対する1つ以上のアミノ酸復帰突然変異、及び完全ヒト定常領域を含む、主にヒトフレームワーク領域を含み得る。場合により、必ずしも復帰突然変異ではない、さらなるアミノ酸修飾を適用して、好ましい特性、例えば親和性及び生化学的特性を有するヒト化抗体を得ることができる。
【0022】
用語「キメラ抗体」とは、本明細書で使用される場合、可変領域が非ヒト種に由来し(例えば、げっ歯類に由来し)、定常領域が異なる種、例えばヒトに由来する抗体を指す。キメラ抗体は、抗体工学によって作製することができる。「抗体工学」とは、抗体の異なる種類の修飾に対して一般的に使用される用語であり、当業者にとって周知の方法である。特に、キメラ抗体は、Sambrookら, 1989年, Molecular Cloning: A laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 15章に記載される標準的なDNA技術を用いることによって作製することができる。このようにして、キメラ抗体は、遺伝的に又は酵素的に操作された組換え抗体であり得る。キメラ抗体を作製することは当業者の知識の範囲内であり、したがって、本発明に係るキメラ抗体の作製は、本明細書に記載される以外の方法によって行うことができる。抗体免疫原性を低下させるために、治療的応用のためのキメラモノクローナル抗体が開発されている。それらは、典型的には、目的の抗原に特異的である非ヒト(例えば、マウス)可変領域、及びヒト定常抗体重鎖及び軽鎖ドメインを含み得る。用語「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、キメラ抗体との関連で使用される場合、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の両方のCDR及びフレームワーク領域を含む領域を指す。
【0023】
「抗抗原抗体」とは、抗原に結合する抗体を指す。例えば、抗αvβ6抗体は、抗原αvβ6に結合する抗体である。
【0024】
抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」とは、抗体全体によって結合された抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体断片(例えば、抗原結合断片)の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2; ダイアボディ; 線状抗体; 一本鎖抗体分子(例えば、scFv); 及び抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び残りの「Fc」断片を生成し、その名前は容易に結晶化する能力を反映している。ペプシン処置は、2つの抗原結合部位を有し、さらに抗原を架橋することができるF(ab')2断片を生じる。
【0025】
参照ポリペプチド配列に関する「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアライメントさせ、必要であれば、最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後、配列同一性の一部としていずれの保存的置換を考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的でのアライメントは、例えば、公衆に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、SnapGene Align又はClustalW BioEditソフトウェアを用いて、当該技術分野の技術の範囲内である種々の方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメーターを決定することができる。例えば、所与のアミノ酸配列Bに、それと、又はそれに対する所与のアミノ酸配列Aの配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bに、それと、又はそれに対するある種の配列同一性%を有するか又は含む所与のアミノ酸配列Aとして表現することができる)は、以下:
100×分数X/Y
のように計算し、式中、Xは、A及びBのそのプログラムのアライメントにおける配列と完全同一であるとスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの配列同一性%は、Aに対するBの配列同一性%と等しくないことが理解される。
【0026】
本明細書で使用される場合、所定の抗原への抗体の結合との関連で用語「結合すること」、「結合する」又は「特異的に結合する」は、典型的には、例えば、抗体をリガンドとして、抗原を分析物として使用するOctet HTX機器のBioLayer Interferometry(BLI)技術によって決定された場合、約10-6M以下、例えば10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、又はさらに約10-11M以下のKDに対応する親和性を有する結合であり、ここで抗体は、所定の抗原又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合のKDより少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。結合のKDがより低い量は、抗体のKDに依存し、そのため、抗体のKDが非常に低い場合、抗原への結合のKDが非特異的抗原への結合のKDよりも低い量は、少なくとも10,000倍であり得る(すなわち、抗体は高度に特異的である)。
【0027】
用語「KD」(M)は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。本明細書で使用される場合、親和性及びKDは逆相関であり、すなわち、より高い親和性はより低いKDを指すことを意図し、より低い親和性はより高いKDを指すことを意図する。
【0028】
用語「ADC」とは、抗体薬物コンジュゲートを指し、本発明の文脈において、本出願において記載されるように、薬物部分(例えば、MMAE又はMMAF)に連結した抗αvβ6抗体を指す。
【0029】
略語「vc」及び「val-cit」とは、バリン-シトルリンのジペプチドを意味する。
【0030】
略語「VKG」とは、トリペプチドリンカーであるバリン-リシン-グリシンを意味する。
【0031】
略語「PAB」とは、自己犠牲的(self-immolative)スペーサーを意味する:
【化1】
【0032】
略語「MC」とは、ストレッチャーとなるマレイミドカプロイルを意味する:
【化2】
【0033】
略語「MP」とは、ストレッチャーとなるマレイミドプロピオニルを意味する:
【化3】
【0034】
本明細書で使用される場合、「PEGユニット」は、エチレンオキシサブユニット(PEGs又はPEGサブユニット)の繰り返しから構成される有機部分であり、多分散、単分散又は個別(discrete)(すなわち、個別した数のエチレンオキシサブユニットを有する)であり得る。多分散PEGsはサイズ及び分子量の不均質な混合物である一方、単分散PEGsは典型的には不均質な混合物から精製され、したがって単一の鎖長及び分子量を提供する。好ましいPEGユニットは、重合プロセスを経由せず、段階的に合成される化合物である個別のPEGsから構成される。個別のPEGsは、規定の及び特定の鎖長を有する単一分子を提供する。
【0035】
本明細書で提供されるPEGユニットは、それぞれが1つ以上のエチレンオキシサブユニットから構成される1又は複数のポリエチレングリコール鎖が、互いに共有結合したものを含む。ポリエチレングリコール鎖は、例えば、直鎖状、分枝状、又は星形の構成で互いに連結され得る。典型的には、カンプトテシンコンジュゲートに組み込む前のポリエチレングリコール鎖の少なくとも1つは、メチレンカルバメートユニットのカルバメート窒素に共有結合するための求電子性基で置換されたアルキル部分で一端が誘導体化されている(すなわち、Rの一例を表す)。典型的には、リンカー単位の残部への共有結合に関与しない各ポリエチレングリコール鎖中の末端エチレンオキシサブユニットは、典型的には-CH3、CH2CH3又はCH2CH2CO2Hなどの場合により置換されていてもよいアルキルのPEGキャッピングユニットで修飾されている。好ましいPEGユニットは、2~24個の-CH2CH2O-サブユニットが直列に共有結合し、一端がPEGキャッピングユニットで終端している単一のポリエチレングリコール鎖を有する。
【0036】
「がん」とは、体内の異常細胞の制御されない増殖を特徴とする種々の疾患の広範な群を意味する。「がん」又は「がん組織」は、腫瘍を含むことができる。制御されない細胞分裂及び増殖は、悪性腫瘍の形成をもたらし、これが隣接組織に浸潤し、かつリンパ系又は血流を通じて身体の遠隔部位にも転移する場合がある。転移後には、遠隔腫瘍は、転移前腫瘍「に由来する」と言える。
【0037】
「抗体依存性細胞傷害性」又はADCCという用語は、抗体でコーティングされた標的細胞と溶解活性を保有する免疫細胞(エフェクター細胞とも称される)との相互作用に依存する細胞死を誘導するための機序である。かかるエフェクター細胞としては、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージ、及び好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、標的細胞に結合したIgのFcエフェクタードメイン(複数可)に、それらの抗原結合部位を介して結合する。抗体でコーティングされた標的細胞の死滅は、エフェクター細胞活性の結果として生じる。
【0038】
「抗体依存性細胞食作用」又はADCPという用語は、抗体でコーティングされた細胞が、IgのFcエフェクタードメイン(複数可)に結合する食作用免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球、及び樹状細胞)によって全て又は部分的に内在化されるプロセスを指す。
【0039】
「補体依存性細胞傷害性」又はCDCという用語は、標的に結合した抗体のFcエフェクタードメイン(複数可)が一連の酵素反応を活性化して標的細胞膜における孔の形成をもたらす、細胞死を誘導するための機序を指す。典型的には、抗原-抗体複合体、例えば、抗体でコーティングされた標的細胞上にあるものが、補体成分C1qに結合してそれを活性化し、今度はこのC1qが標的細胞死につながる補体カスケードを活性化する。補体の活性化により、白血球上の補体受容体(例えば、CR3)の結合によってADCCを促進する、標的細胞表面上の補体成分の堆積も生じ得る。
【0040】
「細胞増殖抑制作用」は、細胞増殖の阻害を指す。「細胞増殖抑制剤」は、細胞に対して細胞増殖抑制作用を有することで、細胞の特定のサブセットの増殖及び/又は拡大を阻害する薬剤を指す。細胞増殖抑制剤は、抗体にコンジュゲート化されるか、又は抗体と組み合わせて投与され得る。
【0041】
対象の「処置(治療)」又は「治療(療法)」とは、疾患に関連する症状、合併症、状態、若しくは生化学的兆候の、発症、進行、発達、重症度、又は再発を、逆転させる、軽減する、改善する、阻害する、遅延させる、又は予防する目的での、対象に対して行なわれるいずれかのタイプの介入若しくはプロセス、又は対象に対する活性薬剤の投与を意味する。一部の実施形態において、疾患はがんである。
【0042】
「対象」としては、いずれかのヒト又は非ヒト動物が挙げられる。用語「非ヒト動物」としては、限定するものではないが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、及びげっ歯類(例えばマウス、ラット、及びモルモット)などの脊椎動物が挙げられる。一部の実施形態では、対象はヒトである。用語「対象」及び「患者」及び「個体」は、本明細書中で相互に交換可能に用いられる。
【0043】
薬物若しくは治療剤の「有効量」又は「治療有効量」又は「治療有効投与量」とは、単独で、又は別の治療剤と組み合わせて用いられる場合に、対象を疾患の発症から保護するか、あるいは疾患症状の重症度の低下、疾患の無症状期間の頻度及び持続期間の増加、又は疾患の罹患に起因する機能不全若しくは障害の予防により明らかになる疾患の退縮を促進する、薬物のいずれかの量である。治療剤が疾患退縮を促進する能力は、熟練した実務者には公知の様々な方法を用いて、例えば、臨床試験中のヒト対象で、ヒトでの有効性を予測するものである動物モデル系で、又はin vitroアッセイで薬剤の活性をアッセイすることによって、評価することができる。
【0044】
腫瘍の処置に関する例として、治療有効量の抗がん剤は、未処置対象(例えば、1以上の対象)と比較して、処置対象(例えば、1以上の処置対象)において少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%まで、細胞増殖又は腫瘍増殖を阻害する。一部の実施形態において、抗がん剤の治療有効量は、未処置対象(例えば、1以上の未処置対象)に対して処置対象(例えば、1以上の処置対象)において100%で細胞増殖又は腫瘍増殖を阻害する。
【0045】
本開示の他の実施形態では、腫瘍の退縮は、少なくとも約20日間、少なくとも約30日間、少なくとも約40日間、少なくとも約50日間、又は少なくとも約60日間の期間、観察及び継続することができる。
【0046】
薬物(例えば、抗αvβ6抗体薬物コンジュゲート)の治療有効量には、「予防有効量」が含まれ、これは、がんが発達するリスクを有する対象(例えば、前悪性状態を有する対象)又はがんの再発に罹患するリスクを有する対象に、単独又は抗がん剤と組み合わせて投与した場合に、がんの発達又は再発を阻害する、薬物のいずれかの量である。一部の実施形態では、予防有効量は、がんの発達又は再発を完全に妨げる。がんの発達又は再発を「阻害すること」とは、がんの発達若しくは再発の可能性を減少させるか、又はがんの発達若しくは再発を完全に妨げることのいずれかを意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「亜治療量(subtherapeutic dose)」とは、増殖性疾患(例えば、がん)の処置のために治療化合物を単独で投与した場合の通常又は典型的な用量よりも低い治療化合物(例えば、抗αvβ6抗体薬物コンジュゲート)の用量を意味する。
【0048】
「免疫関連応答パターン」とは、がん特異的免疫応答を誘導することにより、又は天然の免疫プロセスを改変することにより、抗腫瘍効果を生じる免疫療法剤を用いて処置されたがん患者で多くの場合に観察される、臨床的応答パターンを意味する。この応答パターンは、慣用的な化学療法剤の評価では、疾患進行に分類され、かつ薬物の失敗と同義であろう、腫瘍量の当初の増加又は新規病変の出現に続く、有益な治療効果により特徴付けられる。したがって、免疫療法剤の適正な評価には、標的疾患に対するこれらの薬剤の効果の長期的モニタリングが必要であり得る。
【0049】
例として、「抗がん剤」は、対象でのがんの退縮を促進する。一部の実施形態では、治療有効量の薬物は、がんが消失する時点までのがんの退縮を促進する。「がんの退縮を促進すること」とは、単独で又は抗がん剤と組み合わせて、有効量の薬物を投与することにより、腫瘍の増殖若しくはサイズの減少、腫瘍の壊死、少なくとも1種の疾患症状の重症度の低下、疾患の無症状期間の頻度及び持続期間の増加、又は疾患の罹患に起因する機能不全若しくは障害の予防が生じることを意味する。加えて、処置に関して、用語「有効な」及び「有効性」とは、薬理学的有効性及び生理学的安全性の両方を含む。薬理学的有効性とは、薬物が、患者でのがんの退縮を促進する能力を意味する。生理学的安全性とは、薬物の投与により生じる、細胞レベル、臓器レベル及び/若しくは生体レベルでの毒性又は他の有害な生理学的作用(有害作用)のレベルを意味する。
【0050】
「持続応答」とは、治療の停止後の、腫瘍増殖の減少に対する持続する作用を意味する。例えば、腫瘍サイズが、投与期の開始時のサイズと比較して同じか又はより小さく留まり得る。一部の実施形態では、持続応答は、治療継続期間と少なくとも同じ、又は治療継続期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、若しくは3.0倍の長さの継続期間を有する。
【0051】
本明細書中で用いる場合、「完全奏功(complete response)」又は「CR」とは、すべての標的病変の消失を意味し;「部分奏功(partial response)」又は「PR」とは、ベースライン長径和(SLD)を基準とした、標的病変のSLDの少なくとも30%の減少を意味し;「安定疾患(stable disease)」又は「SD」とは、PRに関して適格と判定するための標的病変の十分な縮小も、又は治療開始からの最小SLDを基準とした、PDに関して適格と判定するための十分な増加もないことを意味する。
【0052】
本明細書中で用いる場合、「無増悪生存期間(progression free survival)」又は「PFS」とは、処置されている疾患(例えば、がん)が悪化しない、治療中及び治療後の期間の長さを意味する。無増悪生存期間には、患者が完全奏功又は部分奏功を経験した期間、並びに患者が安定疾患を経験した期間が含まれ得る。
【0053】
本明細書中で用いる場合、「全奏効率(overall response rate)」又は「ORR」とは、完全奏功(CR)率と部分奏功(PR)率との和を意味する。
【0054】
本明細書中で用いる場合、「全生存率」又は「OS」とは、特定の期間後に生存している可能性が高い、群中の個体の割合(%)を意味する。
【0055】
語句「薬学的に許容される」とは、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/若しくはそれを用いて処置される哺乳動物と、化学的かつ/又は毒物学的に適合しなければならないことを示す。
【0056】
語句「薬学的に許容される塩」とは、本明細書中で用いる場合、本発明の化合物の薬学的に許容される有機塩又は無機塩を意味する。例示的な塩としては、限定するものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち、4,4'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオンなどの別の分子を含有するものも包むことができる。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化するいずれかの有機又は無機部分であり得る。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造中に、1を超える荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部分である場合は、複数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、1以上の荷電原子及び/又は1以上の対イオンを有し得る。
【0057】
「投与すること」又は「投与」とは、当業者に公知の種々の方法及び送達システムのうちのいずれかを用いた、対象に対する治療剤の物理的導入を意味する。抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートのための例示的な投与経路としては、静脈内、筋内、皮下、腹腔内、脊髄又は他の非経口投与経路、例えば、注入又は点滴(好ましくは静注)によるものが挙げられる。語句「非経口投与」とは、本明細書中で用いる場合、腸内及び局所投与以外の、通常は注入による投与様式を意味し、限定するものではないが、静脈内、筋内、動脈内、くも膜下腔、リンパ管内、病巣内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、硬膜外及び胸骨内注入及び点滴、並びにin vivo電気穿孔が挙げられる。治療剤は、非経口的でない経路を介して、又は経口的に投与することができる。他の非経口的でない経路としては、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻内、経膣、直腸、舌下又は局所投与経路が挙げられる。投与はまた、例えば、1回、複数回、及び/又は1回以上の長期間にわたって行なうことができる。
【0058】
本明細書で互換的に使用される「ベースライン」又は「ベースライン値」という用語は、治療(例えば、本明細書に記載の抗αvβ6抗体薬物コンジュゲート)の投与前、又は治療の投与開始時における症候(症状)の測定値又は特徴を指すことができる。ベースライン値は、本明細書で企図されているαvβ6関連疾患(例えば、がん)の症候の軽減又は改善を決定するために、基準値(reference value)と比較することができる。本明細書で互換的に使用される用語「基準(reference)」又は「基準値」は、治療(例えば、記載されているような抗αvβ6抗体薬物コンジュゲート)の投与後の症状の測定又は特徴付けを指すことができる。基準値は、投与レジメン若しくは処置サイクルの間、又は投与レジメン若しくは処置サイクルの完了時に、1回以上測定することができる。「基準値」は、絶対値、相対値、上限値及び/又は下限値を有する値、値の範囲、平均の値(average value)、中央値、平均値(mean value)、又はベースライン値と比較した値であり得る。
【0059】
同様に、「ベースライン値」は、絶対値、相対値、上限値及び/又は下限値を有する値、値の範囲、平均の値(average value)、中央値、平均値(mean value)、又は基準値と比較した値であることができる。基準値及び/又はベースライン値は、1の個体から、2の異なる個体から、又は個体のグループ(例えば、2、3、4、5又はそれ以上の個体のグループ)から得ることができる。
【0060】
本明細書で使用される「単剤療法」という用語は、処置サイクル中に対象に投与される抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートが唯一の抗がん剤であることを意味する。しかしながら、他の治療剤を対象に投与することができる。例えば、炎症、痛み、体重減少、全身倦怠感など、根本的ながん自体ではなく、がんに関連する症状を処置するために、がんを有する対象に投与される抗炎症剤又はその他の薬剤を、単剤療法の期間中に投与することができる。
【0061】
「有害事象」(AE)とは、本明細書中で用いる場合、医学的処置の使用に関連する、いずれかの好ましくなくかつ一般的に意図されないか又は望ましくない徴候(異常な検査所見を含む)、症状、又は疾患である。医学的処置は、1種以上の随伴するAEを有する場合があり、それぞれのAEが、同じか又は異なる重症度レベルを有し得る。「有害事象を変化させる」ことが可能な方法への言及は、異なる処置レジメンの使用に関連する1種以上のAEの発生率及び/又は重症度を低減させる処置レジメンを意味する。
【0062】
本明細書で使用する「重篤な有害事象」又は「SAE」とは、以下の基準の1つを満たす有害事象を指す:
-致命的又は生命を脅かす(重篤な有害事象の定義で使用される「生命を脅かす」とは、事象の発生時に患者が死亡する危険性があった事象を指し、より重篤であれば仮想的に死亡する可能性があった事象を指すものではない)。
-持続的又は重大な障害/能力喪失をもたらすもの。
-先天性異常/出生時障害となるもの。
-医学的に重要な事象である、すなわち、患者を危険にさらす事象、又は上記の結果の1つを防ぐために医学的又は外科的介入を必要とする可能性のある事象と定義される。AEが「医学的に重要」であるかどうかの判断には、医学的・科学的判断が必要である。
-入院又は既存の入院の延長を必要とするもので、以下を除く:1)基礎疾患の日常的な治療又はモニタリングで、病状の悪化を伴わないもの、2)研究対象の適応症とは無関係で、インフォームドコンセントに署名してから悪化していない既往症に対する選択的又は事前に計画された治療、3)患者の一般的な病状が悪化していない場合の社会的理由及びレスパイトケア。
【0063】
選択肢の使用(例えば、「又は」)は、選択肢のうちの一方、両方、又はそれらのいずれかの組み合わせのいずれかを意味するものと理解されるべきである。本明細書中で用いる場合、不定冠詞「a」又は「an」は、「1以上」の、任意の記載されたか又は列挙された構成要素を意味するものと理解されるべきである。
【0064】
用語「約」又は「から本質的に構成される」とは、当業者により決定される場合に、特定の値又は組成に対し許容される誤差範囲内にある値又は組成を意味し、これは、値若しくは組成がどのように測定又は決定されるか、すなわち、測定系の限界に依存するであろう。例えば、「約」又は「から本質的に構成される」とは、当技術分野での実務に従って、1又は1を超える標準偏差の範囲内を意味することができる。あるいは、「約」又は「から本質的に構成される」とは、最大20%の範囲を意味することができる。さらに、特に生物学的な系又はプロセスに関しては、この用語は、最大で1桁分又は最大で値の5倍までを意味することができる。特定の値又は組成が本出願及び特許請求の範囲の中で与えられる場合、別途記載しない限り、「約」又は「から本質的に構成される」の意味は、その特定の値又は組成に対して許容できる誤差範囲内であると推定されるべきである。
【0065】
本明細書中での「約」値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータそれ自体を対象とする実施形態を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」を参照する記載は「X」を包含しそれを記載する。
【0066】
本明細書中に記載される場合、いずれの濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、又は整数範囲も、別途示されない限り、記載された範囲内のいずれかの整数、及び、適切な場合には、それらの分数(整数の10分の1及び100分の1など)の値を含むと理解されるはずである。
【0067】
本開示の種々の態様を、さらに詳細に、以下のサブセクションに記載する。
【0068】
II. 一般
本発明は、αvβ6に特異的に結合する抗体を提供する。本発明は、αvβ6を標的とした抗体薬物コンジュゲート、例えばvcMMAE抗体薬物コンジュゲートなどが、αvβ6+発現細胞を殺傷するのに特に有効であるという発見に、一部基づいている。αvβ6は、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮がん及び腺がん)、頭頸部がん(頭頸部扁平上皮癌を含む)、食道がん、乳がん(乳房浸潤癌を含む)、卵巣がん、膀胱がん(尿路上皮癌を含む)、皮膚がん(扁平上皮癌、すなわちSCC)、腎がん(淡明細胞型腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がんを含む)、子宮頸がん、胃がん、前立腺がん(前立腺腺がんを含む)、子宮内膜がん(子宮癌肉腫、子宮体部内膜癌を含む)、直腸腺がん、甲状腺癌、結腸腺がん、胃腺がん、膵臓がん(膵臓腺がんを含む)など、さまざまながんで発現することが示されている。
【0069】
III. 標的分子
特に断りのない限り、αvβ6はヒトαvβ6を指す。例示的なβ6ヒト配列は、GenBankアクセッション番号AAA36122が割り当てられている。例示的なαvヒト配列は、NCBI NP_002201.1が割り当てられている。
【0070】
IV. 本発明の抗体
本発明は、マウス2A2抗体、並びにキメラ、ヒト化及びヒト2A2抗体を提供する。
【0071】
本発明の抗体(例えば、マウス2A2抗体のキメラ型、ヒト化型、及びヒト型)のヒトαvβ6に対する親和性は、好ましくは、マウス2A2抗体のヒトαvβ6に対する親和性と同等、マウス2A2抗体のヒトαvβ6に対する親和性より大きい、又はマウス抗体2A2のヒトαvβ6に対する親和性より10倍以内、5倍以内、又は2倍以内で弱い。抗体の標的抗原に対する親和性を測定する方法の1つは、抗体の見かけの解離定数を決定することである。本発明は、マウス2A2の解離定数と本質的に同じ(すなわち、実験誤差の範囲内)見かけの解離定数を有する抗体(例えば、マウス2A2抗体のキメラ型、ヒト化型及びヒト型)、並びにヒトαvβ6に対するマウス抗体2A2の解離定数より低い又は高い解離定数を有する抗体も包含する。キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト2A2抗体は、マウス2A2抗体と同様に、天然形態及び/又はCHO細胞から組換え発現されたヒトαvβ6に特異的に結合する。典型的には、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト2A2抗αvβ6抗体は、ヒトαvβ6への結合に関してマウス2A2と競合する。
【0072】
本発明の好ましい抗体は、培養で増殖するがん細胞、動物モデル又は臨床試験で示されるがん(例えば、細胞の増殖、転移及び/又は生物に対する致死性)を阻害するものである。動物モデルは、αvβ6を発現するヒト腫瘍細胞株を適切な免疫不全げっ歯類系統、例えば、胸腺ヌードマウス又はSCIDマウスに移植することによって形成することができる。これらの腫瘍細胞株は、皮下注射により固形腫瘍として、又は静脈内注射により播種性腫瘍として、免疫不全のげっ歯類宿主において確立することができる。宿主内で確立された後、これらの腫瘍モデルは、実施例に記載されているように、抗αvβ6抗体又はそのコンジュゲート形態の治療効果を評価するために適用することができる。
【0073】
一般的に、本開示の抗αvβ6抗体及び/又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートは、αvβ6、例えばヒトαvβ6に結合し、かつ悪性細胞(例えばがん細胞)に対する細胞増殖抑制作用及び細胞傷害作用を及ぼす。本開示の抗αvβ6抗体は、好ましくはモノクローナルであり、多重特異的、ヒト、ヒト化若しくはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、Fab発現ライブラリーにより生成される断片、及び上記のうちのいずれかのαvβ6結合性断片であり得る。一部の実施形態において、本開示の抗αvβ6抗体は、αvβ6に特異的に結合する。本開示の免疫グロブリン分子は、いずれかのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又は免疫グロブリン分子のサブクラスのものであり得る。
【0074】
本開示の特定の実施形態では、抗αvβ6抗体は、本明細書に記載の抗原結合断片(例えばヒト抗原結合断片)であり、限定するものではないが、Fab、Fab'及びF(ab')2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結型Fv(sdFv)並びにVL又はVHドメインのいずれかを含む断片が挙げられる。単鎖抗体をはじめとする抗原結合断片は、単独で、又は以下の全体若しくは一部分と組み合わせて、可変領域を含む場合がある:ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3及びCLドメイン。可変領域と、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3及びCLドメインとのいずれかの組み合わせを含む抗原結合断片もまた、本開示に含められる。一部の実施形態において、抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片は、ヒト、ネズミ(例えば、マウス及びラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、又はニワトリである。
【0075】
本開示の抗αvβ6抗体は、単一特異的、二重特異的、三重特異的であるか、又はそれ以上の多重特異性を有するものであり得る。多重特異的抗体は、αvβ6の異なるエピトープに対して特異的であり得、又はαvβ6並びに異種タンパク質の両方に対して特異的であり得る。
【0076】
本開示の抗αvβ6抗体は、それらが含む特定のCDRの観点から説明又は特定することができる。所与のCDR又はFRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」付番スキーム);Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948(「Chothia」付番スキーム);MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996), “Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography,” J. Mol. Biol. 262, 732-745(「Contact」付番スキーム);Lefranc MP et al., “IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol, 2003 Jan;27(1):55-77(「IMGT」付番スキーム);Honegger A and Pluckthun A, “Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol, 2001 Jun 8;309(3):657-70(「Aho」付番スキーム);並びにMartin et al., “Modeling antibody hypervariable loops: a combined algorithm,” PNAS, 1989, 86(23):9268-9272(「AbM」付番スキーム)に記載されているものを含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを用いて容易に決定することができる。所与のCDRの境界は、識別のために使用されるスキームに応じて異なる場合がある。いくつかの実施形態では、所定の抗体又はその領域(例えば、その可変領域)の「CDR」若しくは「相補性決定領域」、又は個々の指定されたCDR(例えば、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)は、前述のスキームのいずれかによって定義された(又は特定の)CDRを包含すると理解されるべきである。例えば、特定のCDR(例えば、CDR-H3)が、所定のVH領域又はVL領域のアミノ酸配列中の対応するCDRのアミノ酸配列を含むと記載されている場合、そのようなCDRは、前述のスキームのいずれかによって定義されるように、可変領域内に対応するCDR(例えば、CDR-H3)の配列を有すると理解される。特定のCDR又は複数のCDRの識別のためのスキームは、Kabat、Chothia、AbM又はIMGT法によって定義されるCDRなど、指定されてもよい。
【0077】
一実施形態において、本明細書に記載の抗αvβ6抗体及び抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートのCDR配列は、Kabat付番スキームに従う。別の実施形態において、本明細書に記載の抗αvβ6抗体及び抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートのCDR配列は、IMGT付番スキームに従う。
【0078】
一態様では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗αvβ6抗体が本明細書中に提供され、このとき、重鎖可変領域は、(i) 配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii) 配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii) 配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;かつ/又は軽鎖可変領域は、(i) 配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii) 配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(iii) 配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み、抗αvβ6抗体のCDRはKabat付番スキームにより定義される。他の実施形態では、CDR-L1は、配列番号40のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、CDR-L2は、配列番号38又は41のアミノ酸配列を含む。
【0079】
一態様では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗αvβ6抗体が本明細書中に提供され、このとき、重鎖可変領域は、(i) 配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii) 配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii) 配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含み;かつ/又は軽鎖可変領域は、(i) 配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii) 配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(iii) 配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含み、抗αvβ6抗体のCDRはIMGT付番スキームにより定義される。
【0080】
本明細書中に記載される抗αvβ6抗体は、いずれかの好適なフレームワーク可変ドメイン配列を含むことができ、ただし、該抗体は、αvβ6(例えば、ヒトαvβ6)に結合する能力を保持する。本明細書に記載の抗αvβ6抗体の一部の実施形態では、重鎖及び軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号6及び17のアミノ酸配列を含む。本明細書に記載の抗αvβ6抗体の一部の実施形態では、重鎖及び軽鎖は、それぞれ配列番号21及び29のアミノ酸配列を含む。
【0081】
一部の実施形態では、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗αvβ6抗体及び/又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートが、本明細書中に提供される。特定の実施形態では、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインは、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含み、かつ、αvβ6(例えば、ヒトαvβ6)に結合する能力を保持する。特定の実施形態では、合計で1~10アミノ酸が、配列番号6の中で置換、挿入及び/又は欠失している。他の実施形態において、配列番号6において、合計3~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。特定の実施形態では、置換、挿入又は欠失(例えば、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸)が、CDRの内側の領域で生じる。特定の実施形態では、置換、挿入又は欠失(例えば、1、2、3、4、又は5アミノ酸)は、CDRの外側の領域中で(すなわち、FR中で)生じる。一部の実施形態では、抗αvβ6抗体は、配列番号6の重鎖可変ドメイン配列(その配列が翻訳後修飾されたものを含む)を含む。
【0082】
一部の実施形態では、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗αvβ6抗体及び/又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートが、本明細書中に提供される。特定の実施形態では、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインは、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含み、かつ、αvβ6(例えば、ヒトαvβ6)に結合する能力を保持する。特定の実施形態では、合計で1~10アミノ酸が、配列番号17の中で置換、挿入及び/又は欠失している。他の実施形態において、配列番号17において、合計1~2個のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。特定の実施形態では、置換、挿入又は欠失(例えば、1、2、3、4、又は5アミノ酸)は、CDRの外側の領域中で(すなわち、FR中で)生じる。一部の実施形態では、抗αvβ6抗体は、配列番号17の軽鎖可変ドメイン配列(その配列が翻訳後修飾されたものを含む)を含む。
【0083】
免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5種類のクラスがあり、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと称される重鎖を有する。γ及びαクラスは、サブクラスへとさらに分割され、例えば、ヒトは以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと称される複数の多型バリアントで存在することができ(Jefferis and Lefranc 2009. mAbs, Vol 1, Issue 4, 1-7に総説されている)、それらのいずれも本明細書中の一部の実施形態での使用に好適である。ヒト集団での一般的なアロタイプバリアントは、a、f、n、zの文字又はそれらの組み合わせにより示されるものである。本明細書中の実施形態のうちのいずれかでは、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含むことができる。さらなる実施形態では、ヒトIgG Fcは、ヒトIgG1を含む。
【0084】
本発明の抗体にはまた、修飾されている、すなわち、共有結合が、抗体がαvβ6に結合することを、又はHD細胞に対する細胞増殖抑制作用若しくは細胞傷害作用を及ぼすことを妨げないような、抗体へのいずれかのタイプの分子の共有結合により修飾されている、誘導体も含まれる。例えば、限定するものではないが、抗体誘導体としては、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質に対する連結などにより修飾されている抗体が挙げられる。多数の化学的修飾のうちのいずれも、限定するものではないが、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などをはじめとする、公知の技術により行なうことができる。加えて、誘導体は、1種以上の非古典的アミノ酸を含有することができる。
【0085】
ヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒト「ドナー」抗体からのCDRがヒト「アクセプター」抗体配列にグラフトされる遺伝子組換えされた抗体である(例えば、Queen, US 5,530,101及び5,585,089; Winter, US 5,225,539; Carter, US 6,407,213; Adair, US 5,859,205; 及びFoote, US 6,881,557を参照されたい)。アクセプター抗体配列は、例えば、成熟ヒト抗体配列、かかる配列の複合体、ヒト抗体配列のコンセンサス配列、又は生殖系列領域配列であり得る。重鎖のために好ましいアクセプター配列は、生殖系列VH エクソン IGHV1-46であり、Jエクソン(JH)のためにはエクソンIGHJ4である。軽鎖について、好ましいアクセプター配列はエクソンIGKV1D-33であり、JエクソンのためにはIGKJ2である。重鎖のための別の好ましいアクセプター配列には、Jエクソン(JH)、IGHJ1、IGHJ2、IGHJ3、IGHJ5又はIGHJ6が含まれる。軽鎖の別の好ましいアクセプター配列には、JエクソンIGKJ1、IGKJ3、IGKJ4又はIGKJ5が含まれる。よって、ヒト化抗体は、完全に又は実質的にドナー抗体並びに可変領域フレームワーク配列及び定常領域に由来し、存在する場合、完全に又は実質的にヒト抗体配列に由来するCDRの一部又はすべてを有する抗体である。同様に、ヒト化重鎖は、完全に又は実質的にドナー抗体重鎖並びに重鎖可変領域フレームワーク配列及び重鎖定常領域に由来し、存在する場合、実質的にヒト重鎖可変領域フレームワーク及び定常領域配列に由来する、少なくとも1つ、2つ、通常3つ全てのCDRを有する。同様に、ヒト化軽鎖は、完全に又は実質的にドナー抗体軽鎖並びに軽鎖可変領域フレームワーク配列及び軽鎖定常領域に由来し、存在する場合、実質的にヒト軽鎖可変領域フレームワーク及び定常領域配列に由来する、少なくとも1つ、2つ、通常3つ全てのCDRを有する。ナノボディ及びdAb以外では、ヒト化抗体はヒト化重鎖及びヒト化軽鎖を含む。ヒト化抗体におけるCDRは、対応する残基(Kabatにより定義される通り)の少なくとも60%、85%、90%、95%、又は100%がそれぞれのCDR間で同一であるとき、非ヒト抗体において対応するCDRに実質的に由来する。抗体鎖の可変領域フレームワーク配列又は抗体鎖の定常領域は、Kabatにより定義される対応する残基の少なくとも85%、90%、95%、又は100%が同一であるとき、それぞれ、実質的にヒト可変領域フレームワーク配列又はヒト定常領域に由来する。
【0086】
ヒト化抗体は、マウス抗体由来の6つ全てのCDR(好ましくはKabatにより定義されるように)を組み込むことが多いが、それらは、マウス抗体からの全てより少ないCDR(例えば、少なくとも3つ、4つ、又は5つ)とでも作製され得る(例えば、Pascalis et al., J. Immunol. 169:3076, 2002; Vajdos et al., Journal of Molecular Biology, 320: 415-428, 2002; Iwahashi et al., Mol. Immunol. 36:1079-1091, 1999; Tamura et al, Journal of Immunology, 164:1432-1441, 2000)。
【0087】
ヒト可変領域フレームワーク残基由来のある特定のアミノ酸は、CDR立体構造及び/又は抗原への結合に対するそれらの可能な影響に基づく置換に関して選択され得る。かかる可能な影響の研究は、モデル化、特定の位置でのアミノ酸の特性の検査、又は特定のアミノ酸の置換若しくは突然変異誘発の影響の経験的観察によるものである。
【0088】
例えば、アミノ酸がマウス可変領域フレームワーク残基と選択されたヒト可変領域フレームワーク残基との間で異なるとき、ヒトフレームワークアミノ酸は、マウス抗体由来の同等のフレームワークアミノ酸によって置換され得るが、これは、アミノ酸が、以下であると合理的に予測される場合である:
(1)直接的に抗原に非共有結合する、
(2)CDR領域に隣接する、
(3)さもなければCDR領域と相互作用する(例えば、CDR領域の約6Å以内である)、又は(4)重鎖と軽鎖との間の相互作用を媒介する。
【0089】
2A2抗体はマウス抗体として同定されたが、本願はヒト2A2抗体も包含する。用語「ヒト2A2抗体」とは、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列に由来し、マウス2A2抗体のものと実質的に同一のCDRを有し、同様の性質、すなわちαvβ6に対する結合特異性を示す抗体を意味する。いくつかの態様において、ヒト2A2抗体は、本明細書に記載の重鎖可変領域と実質的に同一である重鎖可変領域、及び/又は本明細書に記載の軽鎖可変領域と実質的に同一である軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の2A2抗体は、ヒト抗体ではなく、例えば、本発明の2A2抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体である。
【0090】
本発明の一態様は、マウス抗体2A2のヒト化形態を提供する。マウス抗体2A2のかかるヒト化変異体(バリアント)の1つはHCLGと称される。HCLGは、配列番号6のアミノ酸配列を含む成熟重鎖可変領域と、配列番号17のアミノ酸配列を含む成熟軽鎖可変領域を含む。本発明のヒト化抗体には、ヒト化重鎖成熟可変領域が配列番号6に対して少なくとも90%、95%又は99%の同一性を示し、ヒト化軽鎖成熟可変領域が配列番号17に対して少なくとも90%、95%又は99%の配列同一性を示すHCLGヒト化抗体の変異体(バリアント)が含まれる。好ましくは、そのような抗体では、HCLGのバックミューテーション(復帰変異)の一部又は全部が保持されている。すなわち、重鎖の位置H2、H28、H48、H67、H69、H71、H73、H78、及びH93のうち、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8又は好ましくは9つすべてが、それぞれF、S、I、A、L、V、K、A、及びTによって占められる。同様に位置L69は好ましくはRによって占有され、位置L71は好ましくはYによって占有される。CDR領域は、任意の慣用的な定義(例えば、Chothia)によって定義することができるが、好ましくはKabat又はIMGTによって定義された通りである。一実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号6の3つのCDRと、配列番号6の可変領域フレームワークに対して少なくとも95%の同一性を有する可変領域フレームワークとを含む重鎖を含む。別の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号17の3つのCDRと、配列番号17の可変領域フレームワークに対して少なくとも95%の同一性を有する可変領域フレームワークとを含む軽鎖を含む。さらなる実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号6の3つのCDRと、配列番号6の可変領域フレームワークに対して少なくとも95%の同一性を有する可変領域フレームワークとを含む重鎖と、配列番号17の3つのCDRと、配列番号17の可変領域フレームワークに対して少なくとも95%の同一性を有する可変領域フレームワークとを含む軽鎖とを含む。一実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号6の3つのCDRと、配列番号6の可変領域フレームワークに対して少なくとも99%の同一性を有する可変領域フレームワークとを含む重鎖を含む。別の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号17の3つのCDRと、配列番号17の可変領域フレームワークに対して少なくとも99%の同一性を有する可変領域フレームワークとを含む軽鎖を含む。
【0091】
可能性のある1つの変形は、マウス抗体のCDRにおけるある特定の残基を、ヒトCDR配列由来、典型的には、例示されるヒト化抗体の設計に使用されるヒトアクセプター配列のCDR由来の対応する残基で置換することである。一部の抗体においては、CDRの一部のみ、つまり、SDRと呼ばれる、結合に必要なCDR残基のサブセットが、ヒト化抗体における結合を保持するために必要とされる。抗原と接触しておらず、SDR中にないCDR残基は、これまでの研究に基づき、Chothia超可変ループの外側にあるKabat CDRの領域から(Chothia, J. Mol. Biol. 196:901, 1987)、分子モデリングにより、及び/又は実験的に、又はGonzales et al., Mol. Immunol. 41: 863 (2004)に記載されているように、特定することができる(例えば、CDR H2におけるH60~H65残基はしばしば必要とされない)。1つ以上のドナーCDR残基が存在しない又はドナーCDR全体が削除されている位置にあるかかるヒト化抗体では、その位置を占有しているアミノ酸は、アクセプター抗体配列中の対応する位置(Kabat付番による)を占有しているアミノ酸であり得る。CDRにおけるドナーアミノ酸に対するアクセプターのかかる置換をいくつ含めるかは、競合する検討事項のバランスを反映する。かかる置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させること、ひいては可能性のある免疫原性を減少させることに有利である可能性がある。しかしながら、置換により親和性の変化も生じ得、著しい親和性の低下は回避することが好ましい。CDR内の置換の位置及び置換すべきアミノ酸も経験的に選択することができる。
【0092】
好ましくはないが、他のアミノ酸置換を、例えば、CDRと接触していないフレームワーク残基、又は更には一部の可能性のあるCDRに接触しているCDR内の残基アミノ酸中で行うことができる。バリアントヒト化配列中で行われた置き換えは、置き換えられたHCLGアミノ酸に関して保存的であることが多い。好ましくは、HCLGに対する置き換え(保存的であるか否かにかかわらない)は、ヒト化mAbの結合親和性又は効力、つまり、ヒトαvβ6に結合し、がん細胞の増殖を阻害する能力に大きな影響を及ぼさない。
【0093】
定常領域の選択
ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、ヒト定常領域の少なくとも一部に連結され得る。定常領域の選択は、一部、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性、抗体依存性細胞食作用、及び/又は補体依存性細胞傷害性が所望されるかどうかに依存する。例えば、ヒトアイソタイプIgG1及びIgG3は強い補体依存性細胞傷害性を有し、ヒトアイソタイプIgG2は弱い補体依存性細胞傷害性を有し、ヒトIgG4は補体依存性細胞傷害性を欠く。ヒトIgG1及びIgG3は、ヒトIgG2及びIgG4よりも強い細胞媒介エフェクター機能も誘導する。軽鎖定常領域は、ラムダ又はカッパであり得る。抗体は、2つの軽鎖及び2つの重鎖を含む四量体として、別個の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvとして、又は重鎖及び軽鎖可変ドメインがスペーサーを通して連結される単鎖抗体として発現され得る。
【0094】
ヒト定常領域は、異なる個体間でアロタイプ多様性及びイソアロタイプ多様性を示す、つまり、定常領域は1つ以上の多型位置で異なる個体において異なり得る。イソアロタイプは、イソアロタイプを認識する血清が1つ以上の他のアイソタイプの非多型領域に結合するという点でアロタイプとは異なる。
【0095】
重鎖のC末端リジンなどの軽鎖及び/又は重鎖のアミノ又はカルボキシ末端の1個又はいくつかのアミノ酸は、分子のある比率又は全てにおいて欠損するか、又は誘導体化され得る。置換は、補体媒介細胞傷害性若しくはADCCなどのエフェクター機能を低減又は増加させるために(例えば、Winterら、米国特許第5,624,821号;Tsoら、米国特許第5,834,597号;及びLazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103: 4005, 2006を参照されたい)、あるいはヒトにおける半減期を延長するために(例えば、Hinton et al., J. Biol. Chem. 279: 6213, 2004を参照されたい)定常領域において行われ得る。
【0096】
例示的な置換としては、アミノ酸位置234、235、237、239、267、298、299、326、330、又は332で導入される天然のアミノ酸のシステイン残基へのアミノ酸置換、好ましくは、ヒトIgG1アイソタイプにおけるS239C突然変異が挙げられる(US 20100158909)。追加のシステイン残基の存在により、鎖間ジスルフィド結合形成が可能となる。かかる鎖間ジスルフィド結合形成により立体障害が生じることで、Fc領域-FcγR結合相互作用の親和性が低下し得る。IgG定常領域のFc領域で導入されるか又はそれに近接するシステイン残基(複数可)も、治療薬とのコンジュゲート化(即ち、薬物のマレイミド誘導体などのチオール特異的試薬を使用した細胞傷害剤の結合)のための部位として機能し得る。治療薬の存在により立体障害が生じることで、Fc領域-FcγR結合相互作用の親和性が更に低下し得る。位置234、235、236、及び/又は237のうちのいずれかにおける他の置換により、Fcγ受容体、特にFcγRI受容体に対する親和性が低下する(例えば、US 6,624,821、US 5,624,821を参照されたい)。
【0097】
抗体のインビボ半減期も、そのエフェクター機能に影響し得る。抗体の半減期を増大又は減少させて、その治療活性を改変することができる。FcRnは、β2-ミクログロブリンと非共有的に会合するMHCクラスI抗原と構造的に類似している受容体である。FcRnは、IgGの異化及び組織を横断するそれらのトランスサイトーシスを調節する(Ghetie and Ward, 2000, Annu. Rev. Immunol. 18:739- 766; Ghetie and Ward, 2002, Immunol. Res. 25:97-113)。IgG-FcRn相互作用は、pH6.0(細胞内ベシクルのpH)で起きるがpH7.4(血液のpH)では起きない。この相互作用により、IgGを循環に戻して再利用することが可能となる(Ghetie and Ward, 2000, Ann. Rev. Immunol. 18:739-766; Ghetie and Ward, 2002, Immunol. Res. 25:97-113)。FcRn結合に関与するヒトIgG1上の領域はマッピングされている(Shields et al, 2001, J. Biol. Chem. 276:6591-604)。ヒトIgG1の位置Pro238、Thr256、Thr307、Gln311、Asp312、Glu380、Glu382、又はAsn434におけるアラニン置換により、FcRn結合が強化される(Shields et al, 2001, J. Biol. Chem. 276:6591-604)。これらの置換を含むIgG1分子はより長い血清半減期を有する。結果として、これらの修飾されたIgG1分子は、それらのエフェクター機能を実行することができるため、未修飾のIgG1と比較してより長期間にわたってそれらの治療効果を発揮し得る。FcRnへの結合を増大させるための他の例示的な置換には、位置250のGln及び/又は位置428のLeuが挙げられる。EU付番を定常領域中の全ての位置に使用する。
【0098】
保存されたAsn297に共有結合したオリゴ糖は、IgGのFc領域がFcγRに結合する能力に関与する(Lund et al, 1996, J. Immunol. 157:4963-69; Wright and Morrison, 199', Trends Biotechnol. 15:26-31)。IgG上のこの糖型を操作することで、IgG媒介性ADCCを顕著に改善することができる。この糖型に二分する(bisecting)N-アセチルグルコサミン修飾を加えること(Umana et al, 1999, Nat. Biotechnol. 17:176-180; Davies et al, 2001, Biotech. Bioeng. 74:288-94)、又はこの糖型からフコースを除去すること(Shields et al, 2002, J. Biol. Chem. 277:26733-40; Shinkawa et al, 2003, J. Biol. Chem. 278:6591-604; Niwa et al., 2004, Cancer Res. 64:2127-33)が、IgG FcとFcγRとの間の結合を改善することでIg媒介性ADCC活性を強化する、IgG Fc操作の2つの例である。
【0099】
ヒトIgG1 Fc領域の溶媒曝露アミノ酸の体系的置換により、FcγR結合親和性が改変されたIgG変異型(バリアント)が生成された(Shields et al, 2001, J. Biol. Chem. 276:6591-604)。親IgG1を比較すると、Thr256/Ser298、Ser298/Glu333、Ser298/Lys334、又はSer298/Glu333/Lys334におけるAlaへの置換に関与するこれらの変異型のサブセットは、FcγRへの結合親和性とADCC活性との両方の増大を示す(Shields et al, 2001, J. Biol. Chem. 276:6591-604; Okazaki et al, 2004, J. Mol. Biol. 336:1239-49)。
【0100】
抗体の補体結合活性(C1q結合とCDC活性との両方)は、Lys326及びGlu333における置換によって改善させることができる(Idusogie et al., 2001 , J. Immunol. 166:2571-2575)。ヒトIgG2骨格における同じ置換は、C1qに不良に結合し補体活性化活性が大幅に不足している抗体アイソタイプを、C1qへの結合とCDCの媒介との両方を行うことができるものへと変換し得る(Idusogie et al, 2001, J. Immunol. 166:2571-75)。いくつかの他の方法も、抗体の補体結合活性を改善するために適用されている。例えば、IgMの18アミノ酸カルボキシル末端尾片をIgGのカルボキシル末端へグラフトすることで、それらのCDC活性が強化される。これは、通常はCDC活性が検出可能でないIgG4であっても観察される(Smith et al, 1995, J. Immunol. 154:2226-36)。また、IgG1重鎖のカルボキシ末端の近くに位置するSer444をCysで置換することで、CDC活性が単量体IgG1の200倍の増加したIgG1の尾-尾二量体化が誘導された(Shopes et al, 1992, J. Immunol. 148:2918-22)。加えて、C1qへの特異性を有する二重特異性ダイアボディの構築によってもCDC活性が付与される(Kontermann et al., 1997, Nat. Biotech. 15:629-31)。
【0101】
補体活性は、重鎖のアミノ酸残基318、320、及び322のうちの少なくとも1つをAlaなどの異なる側鎖を有する残基に突然変異させることによって低下させることができる。3つの残基のうちのいずれかの代わりに、Gly、Ile、Leu、若しくはValなどの他のアルキル置換非イオン性残基、又はPhe、Tyr、Trp、及びProなどの芳香族非極性残基も、C1q結合を低減又は無効にする。Ser、Thr、Cys、及びMetを残基318ではなく残基320及び322で使用して、C1q結合活性を低減又は無効にし得る。
【0102】
318(Glu)残基を極性残基によって置き換えることで、C1q結合活性を無効にせずに改変し得る。残基297(Asn)をAlaで置き換えることにより、溶解活性が除去されるが、C1qに対する親和性はわずかに低下する(約3倍弱化する)だけである。この改変により、グリコシル化部位が破壊され、補体活性化に必要とされる炭水化物の存在が破壊される。この部位における任意の他の置換でも、グリコシル化部位は破壊される。D270A、K322A、P329A、及びP311Sの突然変異及びそれらの任意の組み合わせによっても、C1q結合は低減する(WO 06/036291を参照されたい)。L234A/L235A変異(又はLALA変異)はまた、C1q結合、並びにFcyR結合を低減する。
【0103】
ヒト定常領域への言及は、天然アロタイプにおける多型位置を占有している残基の任意の天然アロタイプ又は任意のパーミューテーション(順列)を有する定常領域を含む。また、上記のものなどの突然変異が天然ヒト定常領域に対して最大1、2、5、又は10個存在して、Fcガンマ受容体結合を低下させるか、又はFcRnへの結合を増大させてもよい。
【0104】
V. 組換え抗体の発現
ヒト化抗体は、典型的に、組換え発現により産生され得る。組換えポリヌクレオチド構築物は典型的には、自然に会合した、又は異種プロモーター領域を含む、抗体鎖のコード配列に機能的に連結された発現制御配列を含む。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトすることが可能なベクターにおける真核プロモーター系である。ベクターが適切な宿主内に組み込まれたら、宿主は高レベルのヌクレオチド配列の発現、並びに交差反応抗体の回収及び精製に適した条件下で維持される。
【0105】
哺乳動物細胞は、免疫グロブリン又はその断片をコードするヌクレオチドセグメントを発現するための好ましい宿主である。Winnacker, From Genes to Clones, (VCH Publishers, NY, 1987)を参照されたい。インタクト異種タンパク質をスクリーニングすることが可能ないくつかの好適な宿主細胞系が当該技術分野において開発されており、CHO細胞系(例えば、DG44)、様々なCOS細胞系、HeLa細胞、HEK293細胞、L細胞、及び非抗体産生骨髄腫(Sp2/0及びNS0を含む)を含む。好ましくは、細胞は非ヒトである。これらの細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、エンハンサー(Queen et al., Immunol. Rev. 89:49 (1986))などの発現制御配列、及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位などの必要なプロセシング情報部位、並びに転写終結配列を含み得る。好ましい発現制御配列は、内因性遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシパピロ-マウイルスなどに由来するプロモーターである。Co et al., J. Immunol. 148:1149 (1992)を参照されたい。
【0106】
発現された後、抗体は、HPLC精製、カラムクロマトグラフィ-、ゲル電気泳動などを含む、当該技術分野の標準的な手順に従い精製され得る(一般的に、Scopes, Protein Purification (Springer- Verlag, NY, 1982)を参照されたい)。
【0107】
VI. 核酸
本発明は、上記ヒト化重鎖及び軽鎖のうちのいずれかをコードする核酸を更に提供する。典型的には、核酸は、成熟重鎖及び軽鎖に融合したシグナルペプチドもコードする。核酸上のコード配列は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終結シグナルなど、コード配列の発現を確実にするために、調節配列と機能的な連結にあってもよい。重鎖及び軽鎖をコードする核酸は単離された形態で生じるか、又は1つ以上のベクターにクローニングされ得る。核酸は、例えば、固体状態の合成又は重複オリゴヌクレオチドのPCRにより合成され得る。重鎖及び軽鎖をコードする核酸は、例えば発現ベクター内で1つの隣接核酸として結合され得るか、又は例えば、各々がそれ自体の発現ベクター内にクローニングされる、別個であり得る。
【0108】
いくつかの態様において、本明細書では、本明細書に記載の抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸も提供される。さらに本明細書では、本明細書に記載の抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を含むベクターが提供される。さらに本明細書では、本明細書に記載の抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を発現する宿主細胞が提供される。さらに本明細書では、本明細書に記載の抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を含むベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0109】
本明細書に記載の抗αvβ6抗体は、周知の発現ベクター系及び宿主細胞を用いた周知の組換え技術によって調製することができる。一実施形態では、抗体は、De la Cruz Edmunds et al., 2006, Molecular Biotechnology 34; 179-190、EP216846、米国特許第5,981,216号、WO 87/04462号、EP323997号、米国特許第5,591,639号、米国特許第5,658,759号、EP338841号、米国特許第5,879,936号、及び米国特許第5,891,693号に開示されているようなGS発現ベクター系を用いてCHO細胞で調製される。
【0110】
本明細書に記載のモノクローナル抗αvβ6抗体は、例えば、Kohler et al., Nature, 256, 495 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法によって産生されてもよく、あるいは組換えDNA法によって産生されてもよい。また、モノクローナル抗体は、例えば、Clackson et al., Nature, 352, 624-628 (1991)及びMarks et al., JMol, Biol., 222(3):581-597 (1991)に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離してもよい。モノクローナル抗体は、任意の適切な供給源から得ることができる。したがって、例えば、モノクローナル抗体は、目的の抗原、例えば、表面に抗原を発現する細胞、又は目的の抗原をコードする核酸の形で抗原を免疫したマウスから得られたマウス脾臓B細胞から調製されたハイブリドーマから得られてもよい。また、免疫したヒト又はラット、イヌ、霊長類などの非ヒト哺乳動物の抗体発現細胞から得られたハイブリドーマからモノクローナル抗体を得ることもできる。
【0111】
VII. 抗体薬物コンジュゲート
抗αvβ6抗体は、細胞傷害性部分又は細胞増殖抑制部分(その薬学的に適合する塩を含む)とコンジュゲートされて、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を形成し得る。抗体とのコンジュゲートに特に好適な部分は、細胞傷害剤(例えば、化学療法薬)、プロドラッグ変換酵素、放射性同位体若しくは化合物、又は毒素(治療薬と総称されるこれらの部分)である。例えば、抗αvβ6抗体は、化学療法薬などの細胞傷害剤、又は毒素(例えば、細胞増殖抑制若しくは殺細胞薬、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、又はジフテリア毒素)とコンジュゲートされ得る。
【0112】
抗αvβ6抗体は、プロドラッグ変換酵素にコンジュゲートされ得る。プロドラッグ変換酵素は、既知の方法を使用して、抗体に組換えによって融合されるか、又は抗体に化学的にコンジュゲートされ得る。例示的なプロドラッグ変換酵素は、カルボキシペプチダーゼG2、ベータ-グルクロニダーゼ、ペニシリン-V-アミダーゼ、ペニシリン-G-アミダーゼ、β-ラクタマーゼ、β-グルコシダーゼ、ニトロレダクターゼ、及びカルボキシペプチダーゼAである。
【0113】
治療薬をタンパク質、特に抗体とコンジュゲートするための技法は周知である。(例えば、Arnon et al, "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy," Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy (Reisfeld et al.編, Alan R. Liss, Inc., 1985); Hellstrom et al, "Antibodies For Drug Delivery," Controlled Drug Delivery (Robinson et al.編, Marcel Dekker, Inc., 2nd ed. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review," Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications (Pinchera et al.編, 1985); "Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy," Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy (Baldwin et al.編, Academic Press, 1985); Thorpe et al, 1982, Immunol. Rev. 62:119-58を参照されたい。またPCT公開WO 89/12624を参照されたい)。
【0114】
治療薬は、抗体から切断されない限り(例えば、加水分解、抗体分解、又は切断剤によって)、その活性を低減する様式でコンジュゲートされ得る。かかる治療薬は、コンジュゲートが、αvβ6発現がん細胞によって内在化されるときに抗体から切断されるように(例えば、エンドソーム環境において、又は例えば、pH感受性若しくはプロテアーゼ感受性により、リソソーム環境において、又はカベオラ(caveolear)環境において)、αvβ6発現がん細胞の細胞内環境における切断に感受性であるが、細胞外環境に実質的に感受性ではない切断可能なリンカーによって抗体に結合される。
【0115】
典型的には、ADCは、治療薬と抗αvβ6抗体との間のリンカー領域を含む。上記のように、典型的には、リンカーは、リンカーの切断が細胞内環境(例えば、リソソーム又はエンドソーム又はカベオラ(caveolea)内)において抗体から治療薬を放出するように、細胞内条件下で切断可能であり得る。リンカーは、例えば、リソソーム又はエンドソームプロテアーゼを含む、細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカーであり得る。典型的には、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長又は少なくとも3アミノ酸長である。切断剤は、カテプシンB及びD、並びにプラスミンを含み得る(例えば、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123を参照されたい)。最も典型的なのは、αvβ6発現細胞に存在する酵素により切断可能であるペプチジルリンカーである。例えば、がん性組織において高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼカテプシンBにより切断可能であるペプチジルリンカー(例えば、Phe-Leu又はGly-Phe-Leu-Glyペプチドを含むリンカー)を使用することができる。このようなリンカーは他に、たとえば、米国特許第6,214,345号に記載されている。特定の実施形態において、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーには、Val-Citリンカー又はPhe-Lysジペプチドが含まれる(たとえば、米国特許第6,214,345号を参照されたいが、これはVal-Citリンカーを有するドキソルビシンの合成を記載する)。治療薬の細胞内タンパク質分解遊離を用いることの利点は、その薬剤がコンジュゲートされているときには通常、弱められており、そのコンジュゲートの血清安定性が通常は高いという点である。
【0116】
切断可能なリンカーは、pH感受性、すなわち特定のpH値における加水分解に対して感受性であってもよい。典型的には、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。たとえば、リソソーム内で加水分解可能な、酸に不安定なリンカー(たとえば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニット酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を使用することができる(たとえば、米国特許第5,122,368号; 第5,824,805号; 第5,622,929号; Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123; Neville et al., 1989, Biol. Chem. 264:14653-14661を参照されたい)。このようなリンカーは、血中のような中性pH条件下では比較的安定であるが、リソソームのおおよそのpHであるpH 5.5ないし5.0より低いpHでは不安定である。特定の実施形態において、加水分解可能なリンカーは、チオエーテルリンカーである(たとえばアシルヒドラゾン結合を介して治療薬に結合されるチオエーテルなど(たとえば米国特許第5,622,929号を参照されたい))。
【0117】
他のリンカーは還元条件下で切断可能である(たとえばジスルフィドリンカー)。ジスルフィドリンカーには、SATA (N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP (N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB (N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート) 及びSMPT (N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-alpha-メチル-alpha-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDB及びSMPTを用いて作製できるリンカーが含まれる(たとえば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931; Wawrzynczak et al., Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer (C. W. Vogel ed., Oxford U. Press, 1987を参照されたい。また米国特許第4,880,935号も参照されたい)。
【0118】
リンカーは、マロン酸リンカー(Johnson et al., 1995, Anticancer Res. 15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1299-1304)、又は3’-N-アミドアナログ(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1305-12)であってもよい。リンカーはまた、マロン酸リンカー(Johnson et al, 1995, Anticancer Res. 15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al, 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1299-1304)、又は3’-N-アミドアナログ(Lau et al, 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1305-12)であってもよい。
【0119】
リンカーは、治療薬(例えば薬剤)に直接結合されるマレイミド-アルキレン又はマレイミド-アリールリンカーなどの切断不可能なリンカーでもあり得る。活性な薬物リンカーは、抗体の分解により遊離する。
【0120】
リンカーは、細胞内在化を促進し得る。リンカーは、治療薬とコンジュゲートされたときに(即ち、本明細書に記載のADC又はADC誘導体のリンカー-治療薬部分の環境において)、細胞内在化を促進することができる。あるいは、リンカーは、治療薬及び抗αvβ6抗体の両方とコンジュゲートされたときに(即ち、本明細書に記載のADCの環境において)、細胞内在化を促進することができる。
【0121】
抗αvβ6抗体は、抗体のヘテロ原子を介してリンカーとコンジュゲートされ得る。これらのヘテロ原子は、その天然の状態で抗体上に存在し得るか、又は抗体に導入され得る。いくつかの態様では、抗αvβ6抗体は、リジン残基の窒素原子を介してリンカーとコンジュゲートされる。他の態様では、抗αvβ6抗体は、システイン残基の硫黄原子を介してリンカーとコンジュゲートされる。システイン残基は、天然のものであってもよいし、抗体に操作されたものであってもよい。リジン及びシステイン残基を介して抗体とリンカー及び薬物リンカーをコンジュゲートする方法は、当該技術分野において既知である。
【0122】
例示的な抗体薬物コンジュゲートは、アウリスタチン系抗体薬物コンジュゲートを含む(つまり、薬物成分がアウリスタチン薬物である)。アウリスタチンは、チューブリンに結合し、微小管の動態並びに核及び細胞分裂に干渉することが示されており、抗癌活性を有する。典型的に、アウリスタチン系抗体薬物コンジュゲートは、アウリスタチン薬物と抗αvβ6抗体との間のリンカーを含む。リンカーは、例えば、切断可能なリンカー(例えば、ペプチジルリンカー、炭水化物リンカー)又は切断不可能なリンカー(例えば、抗体の分解により放出されるリンカー)であり得る。アウリスタチンは(限定されるものではないが)、アウリスタチンT、MMAF及びMMAEを含む。例示的なアウリスタチンの合成及び構造は、米国公開第7,659,241号、第7,498,298号、第2009-0111756号、第2009-0018086号、及び第7,968,687号に記載されており、それらの各々は、その全体が参照により、及び全ての目的に関して、本明細書に組み込まれる。
【0123】
例示的なアウリスタチン系抗体薬物コンジュゲートには、以下に示すvcMMAE(又は1006)、vcMMAF及びmcMMAF抗体薬物コンジュゲート[ここでpは薬物負荷、Abは本明細書に記載の抗αvβ6抗体、val-cit又は「vc」はバリン-シトルリンジペプチドを表す]:
【化4】
【化5】
又はその薬学的に許容される塩が含まれる。薬物負荷は、抗体あたりの薬物リンカー分子の数であるpで表される。αvβ6標的化抗体薬物コンジュゲートを参照すると、添字pは、薬物負荷を表し、状況に応じて、個々の抗体分子に結合された薬物リンカー分子の分子数を表し得、このような場合は整数値であるか、あるいは平均薬物負荷を表し、このような場合は整数値又は非整数値であるが典型的には非整数値である。平均薬物負荷は、集団における抗体当たりの薬物リンカー分子の平均数を表す。常にではないがしばしば、抗体、例えばモノクローナル抗体を参照する場合、抗体分子の集団を参照している。抗体薬物コンジュゲート分子の集団を含む組成物において、平均薬物負荷は、標的細胞に送達され得る薬物の量を決定するため、重要な品質特性である。組成物中の非コンジュゲート抗体分子の割合(%)は平均薬物負荷値に含まれる。
【0124】
本発明の好ましい態様では、抗体薬物コンジュゲート化合物の集団を含む組成物を指すとき、平均薬物負荷は、1~約16、好ましくは約2~約14、より好ましくは約2~約10である。一実施形態において、DARは約2~約5である。さらなる実施形態において、DARは4である。別の実施形態において、DARは約6~約10である。さらなる実施形態において、DARは8である。調製物中の抗体あたりの平均薬物数は、質量分析、HIC、ELISAアッセイ、HPLCなどの従来の手段によって特徴付けることができる。いくつかの態様において、抗αvβ6抗体は、抗体のシステイン残基を介して薬物リンカーに結合される。いくつかの態様において、システイン残基は、抗体に工学的に組み込まれたものである。他の態様では、システイン残基は鎖間ジスルフィドシステイン残基である。
【0125】
一部の実施形態において、側鎖としてポリエチレングリコールポリマーを切断可能なβ-グルクロニドMMAE薬物リンカーに組み込むことにより、非PEG化対照と比較したとき、異種移植片モデルにおいて、減少した血漿クリアランス及び増加した抗腫瘍活性を有する抗体薬物コンジュゲートが得られる。したがって、本発明の抗体を結合するための特に有益な薬物リンカーは、以下の式V:
【化6】
の通りであるか、又はその薬学的に許容される塩である。
【0126】
かかる薬物リンカーのための好ましい立体化学は、以下の式Va:
【化7】
に示されるか、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、式V及びVaに関して、Zは、抗体上の官能基と反応して、それと共有結合を形成することが可能な反応性部位を有する有機部分を表し、nは、8~36の範囲、最も好ましくは8~14の範囲であり(最も好ましくは12)、R21は、ポリエチレングリコール部分のキャッピング単位、好ましくは-CH3又は-CH2CH2CO2Hである。
【0127】
好ましいZ部分は、マレイミド含有部分である。特に好ましいZ部分は、以下の薬物-リンカー:
【化8】
【化9】
に示されるか、又はその薬学的に許容される塩である。
【0128】
かかる薬物リンカーのための好ましい立体化学は、以下:
【化10】
に示されるか、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、式VI、VIa、VII、及びVIIaに関して、nは、8~36の範囲、最も好ましくは8~14の範囲であり(最も好ましくは12)、RPRは、水素又は保護基、例えば、酸不安定性保護基、例えば、BOCであり、R21は、ポリエチレングリコール部分のキャッピング単位、好ましくは-CH3又は-CH2CH2CO2Hである。
【0129】
上述のように、RPRは、水素又は保護基であり得る。本明細書で使用される場合、保護基は、一時的又は永久的のいずれかで、多官能化合物の反応性部位を選択的にブロッキングする基を指す。保護基は、分子の他の箇所で所望の化学変換をもたらすのに必要な反応条件下で、及び所望される場合、新しく形成された分子の精製中に、望ましくない副反応又は保護基の早期喪失を阻止又は回避することが可能であり、その新しく形成された分子の構造又は立体化学の一体性に悪影響を及ぼさない条件下で除去され得る場合、好適な保護基である。好適なアミン保護基は、Isidro-Llobel et al. "Amino acid-protecting groups" Chem. Rev. (2009) 109: 2455-2504により提供されるものを含む、酸不安定性窒素保護基を含む。典型的には、酸不安定性窒素保護基は、一級又は二級アミノ基をその対応するカルバメ-トに変換し、t-ブチル、アリル、及びベンジルカルバメ-トを含む。
【0130】
上述のように、R21は、ポリエチレングリコール部分のキャッピング単位である。当業者に理解されるように、ポリエチレングリコ-ル単位は、多種多様の有機部分、典型的には比較的非反応性であるもので末端キャップされ得る。アルキル及び置換アルキル基が好ましい。
【0131】
本明細書に例示されるものなど、MMAE PEG化ADCに関して、特に好ましい平均薬物負荷は、約8である。例示的な実施形態では、薬物リンカーは、還元鎖間ジスルフィドのシステミン残基とコンジュゲートされる。いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲート化合物の集団における個々の抗体分子の実際の薬物負荷は、1~10(又は6~10、又は6~8)であり、主要薬物負荷は8である。例えば、鎖間ジスルフィドに加えて、導入されたシステイン残基(EUインデックスに従う位置239に導入されたシステイン残基など)と薬物リンカーがコンジュゲートされる場合、より高い薬物負荷を得ることができる。
【0132】
例示的なADCは、以下:
【化11】
【化12】
【化13】
を含むか、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、nは、8~36の範囲、最も好ましくは8~14の範囲(最も好ましくは12)であり、RPRは、水素又は保護基、例えば、酸不安定性保護基、例えば、BOCであり、R21は、ポリエチレングリコール部分のキャッピング単位、好ましくは-CH3又は-CH2CH2CO2Hであり、Abは、抗αvβ6抗体を表し、pは、個々の抗体分子を指す場合、1~16、好ましくは1~14、6~12、6~10、又は8~10の範囲の整数を表し、抗体分子の集団を指す場合、約4又は約6~約14、好ましくは約8の平均薬物負荷を表す。
【0133】
上述のように、薬物リンカーのPEG(ポリエチレングリコ-ル)部分は、8~36の範囲であり得るが、12エチレンオキシド単位のPEGが特に好ましいことが分かった。より長いPEG鎖は、より緩徐なクリアランスをもたらし得る一方で、より短いPEG鎖は縮小した活性をもたらし得ることが分かった。したがって、上記の実施形態の全てにおいて、添字nは、好ましくは8~14、8~12、10~12、又は10~14であり、最も好ましくは12である。
【0134】
多分散PEGs、単分散PEGs、及び個別のPEGsは、本発明のPEG化抗体薬物コンジュゲートを作製するために使用され得る。多分散PEGsは、不均質なサイズ及び分子量の混合物である一方で、単分散PEGsは、典型的には、不均質な混合物から精製され、したがって、単一の鎖長及び分子量を提供する。好ましいPEGユニットは、段階的に合成され、重合プロセスを介さない化合物である、個別のPEGsである。個別のPEGsは、規定の及び特定の鎖長を有する単一分子を提供する。添字「p」と同様に、抗体薬物コンジュゲートの集団を指す場合、添字「n」の値は平均数であってもよく、整数又は非整数であってもよい。
【0135】
好ましい実施形態では、抗体の薬物リンカーへの共有結合は、薬物リンカーのマレイミド官能基と相互作用して、チオ置換スクシンイミドを形成する抗体のスルフヒドリル官能基を通して達成される。スルフヒドリル官能基は、リガンドの天然状態、例えば、天然に生じる残基(鎖間ジスルフィド残基)におけるリガンド単位上に存在し得るか、又は化学修飾を介して、若しくは生物学的改変により、若しくはその2つの組み合わせでリガンドに導入され得る。抗体置換スクシンイミドが加水分解形態(複数可)で存在し得ることが理解される。例えば、好ましい実施形態では、ADCは、抗体に結合されたとき、
【化14】
の構造により表されるスクシンイミド部分で構成されるか、又は抗体に結合されたとき、
【化15】
の構造により表わされるその対応する酸アミド部分で構成され、ここで波線は、薬物-リンカーの残部への連結を示す。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明の抗αvβ6抗体は、MDpr-PEG(12)-glucリンカーを介してモノメチルアウリスタチンEにコンジュゲートされて、以下の構造を有する抗体薬物コンジュゲート:
【化16】
又はその薬学的に許容される塩を形成し、式中、nは、8~36の範囲、最も好ましくは8~14の範囲(最も好ましくは12)であり、RPRは、水素又は保護基、例えば、酸不安定性保護基、例えば、BOCであり、R21は、ポリエチレングリコール部分のキャッピング単位、好ましくは-CH3又は-CH2CH2CO2Hであり、Abは、抗αvβ6抗体を表し、pは、個々の抗体分子を指す場合、1~16、好ましくは1~14、6~12、6~10、又は8~10の範囲の整数を表し、又は抗体分子の集団を指す場合、約4又は約6~約14、好ましくは約8の平均薬物負荷を表す。
【0137】
例示的な抗体薬物コンジュゲートには、カンプトテシン系抗体薬物コンジュゲート(すなわち、薬物成分がカンプトテシン薬物である)も含まれる。カンプトテシンは、抗がん活性を有することが示されているトポイソメラーゼ阻害剤である。典型的には、カンプトテシン系抗体薬物コンジュゲートは、カンプトテシン薬物と抗αvβ6抗体との間にリンカーを含む。リンカーは、例えば、切断可能なリンカー(例えば、ペプチジルリンカー、炭水化物リンカー)又は非切断可能なリンカー(例えば、抗体の分解によって放出されるリンカー)であることができる。例示的なカンプトテシン薬物リンカーの合成及び構造は、PCT/US19/025968(2019年4月5日出願)に記載されており、その全体がすべての目的について参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0138】
例示的な抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートには、以下のようなカンプトテシン抗体薬物コンジュゲートが含まれ、pは薬物負荷を、Abは抗αvβ6抗体を表す:
【0139】
いくつかの実施形態において、カンプトテシンADCは、式(IC)を有する:
【化17】
又はその薬学的に許容される塩であり、
式中、
Abは、抗αvβ6抗体であり、
yは、1、2、3若しくは4であるか、又は1若しくは4であり、そして
zは、2~12の整数であるか、又は2、4、8若しくは12であり、そして
pは、1~16である。
【0140】
これらの実施形態のいくつかの態様において、pは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。いくつかの態様では、pは2、4又は8である。
【0141】
いくつかの実施形態において、カンプトテシンADCは、以下の式を有する:
【化18】
又はその薬学的に許容される塩であり、
式中、pは、2、4又は8であり、好ましくはpは8である。
【0142】
いくつかの実施形態において、カンプトテシンADCは、以下の式を有する:
【化19】
又はその薬学的に許容される塩であり、
式中、pは、2、4又は8であり、好ましくはpは8である。
【0143】
いくつかの実施形態において、カンプトテシン薬物リンカーは、以下の式を有する:
【化20】
又はその薬学的に許容される塩であり、
式中、
yは、1、2、3若しくは4であるか、又は1若しくは4であり、そして
zは、2~12の整数であるか、又は2、4、8若しくは12である。
【0144】
いくつかの実施形態において、カンプトテシン薬物リンカーは、以下の式を有する:
【化21】
【0145】
いくつかの実施形態において、カンプトテシン薬物リンカーは、以下の式を有する:
【化22】
【0146】
いくつかの実施形態において、カンプトテシン薬物リンカーは、以下の式を有する:
【化23】
【0147】
他の例示的な抗体薬物コンジュゲートは、メイタンシノイド抗体薬物コンジュゲート(つまり、薬物成分がメイタンシノイド薬物である)、及びベンゾジアゼピン抗体薬物コンジュゲート(つまり、薬物成分がベンゾジアゼピン(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン二量体(PDB二量体)、インドリノベンゾジアゼピン二量体、及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン二量体)である)を含む。
【0148】
一部の実施形態において、本発明における使用のためのPBD二量体は、式Iによって表される。PBD二量体の好ましい立体化学は、式Iaに示される通りである:
【化24】
又は薬学的な塩、溶媒和物、若しくは塩の溶媒和物であり、式中、添字nは、1又は3である。
【0149】
式(I)及び(Ia)の溶媒和物は、典型的には、一方又は両方のPBD単量体のイミン官能基にわたって(across)水又はアルコール溶媒を添加することにより形成され、カルビノールアミン(複数可)及び/又はカルビノールアミンエーテルを形成する。例えば、N10-C11位には、以下の式I'及びIa'で表されるように、イミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))、又はカルビノールアミンエーテル(NH-CH(OMe))が存在し得る:
【化25】
〔式中、以下のいずれかである:
(a)R10はHであり、R11はOH又はORAであり、ここでRAは飽和C1-4アルキル(好ましくはメチル)である;又は
(b)R10及びR11は、それらが結合している窒素原子と炭素原子の間で窒素-炭素二重結合を形成している;又は
(c)R10の一方はHであり、R11はOH又はORAであり、ここでRAは飽和C1-4アルキル(好ましくはメチル)であり;そしてR10の他方及びR11は、それらが結合している窒素原子と炭素原子との間で窒素-炭素二重結合を形成している〕。
【0150】
式I若しくはIaのPBD二量体(又はその薬学的な塩、溶媒和物、若しくは塩の溶媒和物)は、典型的には、リンカー単位LUを介して抗体に連結される。リンカー単位は、式I若しくはIaのPBD二量体(又はその薬学的な塩、溶媒和物、若しくは塩の溶媒和物)を標的部位(例えば、がん細胞内部)で放出するように作用する。本発明において使用するためのPBD薬物-リンカー化合物は、式IIにより以下に表され(好ましい立体化学はIIaに示される)、式中、LUは、リンカー単位である。リンカー単位は、例えば、切断可能なペプチドリンカー単位(例えば、バリン-アラニンペプチドを含むリンカー)又は切断可能なジスルフィドリンカー単位:
【化26】
又は薬学的な塩、溶媒和物、若しくは塩の溶媒和物であり、式中、添字nは、1又は3である。
【0151】
本発明における使用に好ましいPBD薬物-リンカー化合物は、下の式IIIにより表わされ:
【化27】
又は薬学的な塩、溶媒和物、若しくは塩の溶媒和物であり得、式中、添字nは、1又は3であり、添字mは、2~5の整数である。
【0152】
PBD薬物-リンカーは、抗αvβ6抗体とコンジュゲートされて、αvβ6標的化抗体薬物コンジュゲートを生成する。例えば、この抗体は、式II又は式IIIの薬物リンカーとコンジュゲートされ得る。例示的なαvβ6標的化抗体薬物コンジュゲートは、以下に、式IV、IVa、及びIVbで示され:
【化28】
又は薬学的な塩、溶媒和物、若しくは塩の溶媒和物であり、式中、添字nは、1又は3であり、添字mは、2~5の整数であり、添字pは、1~4である。
【0153】
抗αvβ6抗体にコンジュゲートする細胞傷害剤の有用なクラスとしては、たとえば、抗チューブリン薬、DNA副溝結合薬、DNA複製阻害薬、化学療法増感薬などが挙げられる。他のクラスの細胞傷害剤の例としては、アントラサイクリン、アウリスタチン、カンプトテシン、デュオカルマイシン、エトポシド、マイタンシノイド、及びビンカアルカロイドがある。細胞傷害剤の例の中には、アウリスタチン(たとえば、アウリスタチンT、アウリスタチンE、AFP、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、親油性モノメチルアウリスタチンF、モノメチルアウリスタチンE(MMAE))、DNA副溝結合薬(たとえば、エンジイン及びレキシトロプシン)、デュオカルマイシン、タキサン(たとえば、パクリタキセル及びドセタキセル)、ビンカアルカロイド、ニコチンアミドホルホリボシルトランスフェラーゼ阻害剤(NAMPTi)、チューブリシンM、ドキソルビシン、モルホリノドキソルビシン、及びシアノモルホリノドキソルビシンなどもある。
【0154】
細胞傷害剤は、化学療法薬、たとえば、ドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、マイトマイシンC、又はエトポシドなどとすることができる。薬物はまた、CC-1065アナログ、カリケアマイシン、マイタンシン、ドラスタチン10のアナログ、リゾキシン、又はパリトキシンとすることもできる。
【0155】
細胞傷害剤はアウリスタチンであってもよい。アウリスタチンは、アウリスタチンE誘導体、たとえばアウリスタチンEとケト酸との間で形成されるエステル、とすることができる。たとえば、アウリスタチンEは、パラアセチル安息香酸又はベンゾイル吉草酸と反応させて、それぞれAEB及びAEVBを生成することができる。他の典型的なアウリスタチンとしては、アウリスタチンT、AFP、MMAF、及びMMAEがある。さまざまなアウリスタチンの合成及び構造は、たとえば、US 2005-0238649及びUS2006-0074008に記載されている。
【0156】
細胞傷害剤はDNA副溝結合薬とすることができる。(たとえば米国特許第6,130,237号を参照されたい)。たとえば、副溝結合薬は、CBI化合物又はエンジイン(たとえばカリケアマイシン)とすることができる。
【0157】
細胞傷害剤若しくは細胞増殖抑制剤は、抗チューブリン薬とすることができる。抗チューブリン薬の例には、タキサン(たとえばタキソール(登録商標)(パクリタキセル)、タキソテール(登録商標)(ドセタキセル))、T67 (Tularik)、ビンカアルカロイド(たとえばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、及びアウリスタチン(たとえばアウリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)がある。アウリスタチンの例を以下の式III~XIIIに示す。他の適当な抗チューブリン薬には、たとえば、バッカチン誘導体、タキサンアナログ(たとえばエポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン及びコルセミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、及びエリュテロビンなどがある。
【0158】
細胞傷害剤は、別の群の抗チューブリン薬であるマイタンシノイドとすることができる(例えば、DM1、DM2、DM3、DM4)。たとえば、マイタンシノイドは、マイタンシン、又はDM-1若しくはDM-4などの薬物リンカーを含有するマイタンシンとすることができる(ImmunoGen, Inc.; Chari et al., 1992, Cancer Res.も参照されたい)。
【0159】
VIII. 治療的適用(治療用途)
本発明の抗体は、単独で又はその抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートとして、がんを処置するために使用することができる。このようながんの一部は、タンパク質(例えば、例示される抗体のうちの1つを用いる免疫アッセイによって)又はmRNAレベルのいずれかで測定されたαvβ6の検出可能なレベルを示す。このようながんの一部は、同じタイプの、好ましくは同じ患者由来の非がん性組織と比べて、αvβ6レベルの上昇を示す。処置に適しているがん細胞上のαvβ6の例示的なレベルは、細胞あたり5000~500,000個のαvβ6分子であるが、より高い又はより低いレベルを処置し得る。場合により、がんにおけるαvβ6レベルは、処置を行う前に測定される。
【0160】
αvβ6の発現に関連し、処置に適したがんの例には、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮がん及び腺がん)、頭頸部がん(頭頸部扁平上皮癌を含む)、食道がん、乳がん(乳房浸潤癌を含む)、卵巣がん、膀胱がん(尿路上皮癌を含む)、皮膚がん(扁平上皮癌、すなわちSCC)、腎がん(淡明細胞型腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がんを含む)、子宮頸がん、胃がん、前立腺がん(前立腺腺がんを含む)、子宮内膜がん(子宮癌肉腫、子宮体部内膜癌を含む)、直腸腺がん、甲状腺癌、結腸腺がん、胃腺がん、及び膵臓がん(膵臓腺がんを含む)が挙げられる。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、NSCLCを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、頭頸部がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、皮膚がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、食道がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、乳がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、卵巣がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、膀胱がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、子宮頸がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、胃がん(gastric cancer)を処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、腎がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、子宮内膜がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、胃がん(stomach cancer)を処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、膵臓がんを処置する方法に使用される。この処置は、これらの種の原発性腫瘍又は転移性腫瘍を有する患者に適用することができる。この処置はまた、従来の処置に不応性である患者、又はこのような処置に応答した後に再発した患者に適用することができる。
【0161】
本発明の抗体、例えばヒト化抗体は、単独で又はそのコンジュゲートとして、発症を遅延させ、重症度を低下させ、さらなる悪化を阻害し、及び/又はがんの少なくとも1つの徴候若しくは症状を改善する投薬量、投与経路及び投与頻度を意味する有効な投与計画で投与される。患者が既にがんを患っている場合、この投与計画は、治療的に有効な投与計画と称され得る。患者が一般集団と比べてがんのリスクが上昇しているが、まだ症状を経験していない場合、この投与計画は予防的に有効な投与計画と称され得る。場合によっては、治療効果又は予防効果が、既存対照又は同じ患者における過去の経験と比べて、個々の患者において観察され得る。他の例では、処置された患者の集団において、未処置の患者の対照集団と比べて、前臨床試験又は臨床試験において、治療的又は予防的有効性を実証することができる。
【0162】
モノクローナル抗体の例示的な投薬量は、患者の体重に基づいて0.1 mg/kg~50 mg/kg、より典型的には、1 mg/kg~30 mg/kg、1 mg/kg~20 mg/kg、1 mg/kg~15 mg/kg、1 mg/kg~12 mg/kg、若しくは1 mg/kg~10 mg/kg、1又は2 mg/kg~30 mg/kg、2 mg/kg~20 mg/kg、2 mg/kg~15 mg/kg、2 mg/kg~12 mg/kg、若しくは2 mg/kg~10 mg/kg、又は3 mg/kg~30 mg/kg、3 mg/kg~20 mg/kg、3 mg/kg~15 mg/kg、3 mg/kg~12 mg/kg、若しくは3 mg/kg~10 mg/kgである。モノクローナル抗体又は抗体薬物コンジュゲートに関する例示的な投薬量は、患者の体重に基づいて1 mg/kg~7.5 mg/kg、又は2 mg/kg~7.5 mg/kg又は3 mg/kg~7.5 mg/kg、又は0.1~20、又は0.5~5 mg/kg体重(たとえば0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10 mg/kg)又は固定用量として10~1500若しくは200~1500 mgである。方法によっては、患者は、少なくとも1.5 mg/kg、少なくとも2 mg/kg又は少なくとも3 mg/kgの投薬量で投与され、3週毎に1回又はそれ以上で投与される。投与量は、その処置が予防的であるか治療的であるかにかかわらず、また、その疾患が急性か慢性かにかかわらず、数ある要因の中で、投与頻度、患者の状態、並びに、前治療があればそれに対する反応に左右される。
【0163】
投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、くも膜下腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、又は筋肉内とすることができる。投与は、たとえば腫瘍内などに、直接局在化させることもできる。静脈内若しくは皮下投与によって体循環に入る投与が好ましい。静脈内投与はたとえば、30~90分のように時間をかける点滴によって、又は単回ボーラス注入によって、行うことができる。
【0164】
投与頻度は、特に、循環中での抗体又はコンジュゲートの半減期、患者の状態、及び投与経路によって決まる。頻度は、毎日、毎週、毎月、3か月ごと、又は患者の状態の変化若しくは治療中のがんの進行に応じて不規則な間隔とすることができる。静脈内投与の頻度の例は、より頻回の、又はより少ない投与もありうるが、たとえば、一連の処置期間にわたって週2回から年4回までである。静脈内投与の他の頻度の例は、より頻回の、又はより少ない投与もありうるが、たとえば、一連の処置期間にわたって週1回から4週間に3回までである。皮下投与については、投与頻度はたとえば、毎日から毎月であるが、より頻回の、又はより少ない投与もありうる。
【0165】
投薬回数は、がんの特性(たとえば、急性症状を呈するか慢性症状か)及び処置に対する疾患の反応によって決まる。急性疾患、又は慢性疾患の急性増悪には、1~10回で十分なことが多い。急性疾患、又は慢性疾患の急性増悪に対して、単回ボーラス投与、場合によっては分割された形の投与で十分なこともある。急性疾患若しくは急性増悪の再発に対して処置を繰り返すことができる。慢性疾患に対しては、少なくとも1、5若しくは10年間、又は患者の一生の間、抗体を一定間隔で、たとえば毎週、隔週、毎月、3か月ごと、6か月ごとに、投与することができる。
【0166】
非経口投与用の医薬組成物は、無菌で、実質的に等張性であって、GMP条件下で製造されることが好ましい。医薬組成物は単位投与剤形(すなわち1回投与分の剤形)として提供することができる。医薬組成物は、1つ若しくは複数の生理学的に許容される担体、賦形剤、添加剤若しくは補助剤を用いて製剤することができる。製剤は選択される投与経路次第で決まる。注射用には、抗体は、水溶液中で、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水若しくは酢酸バッファー(注射部位の不快感を低減するため)などの生理的に適合するバッファー中で製剤することができる。溶液は、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの配合剤を含有することができる。あるいはまた、抗体は、適切な溶媒、たとえば滅菌発熱性物質除去蒸留水、による使用前構成用に、凍結乾燥された形をとることもある。液体製剤中の抗体濃度は、たとえば、10 mg/mlなど、1~100 mg/mlとすることができる。
【0167】
本発明の抗体による処置は、化学療法、放射線照射、幹細胞治療、外科手術、治療中の疾患に対して有効な他の治療と、併用することができる。本明細書に記載のようなαvβ6に対する抗体及び抗体薬物コンジュゲートとともに投与することができる、有用な他の薬剤クラスには、たとえば、がん細胞上に発現される他の受容体に対する抗体、抗チューブリン薬(たとえばアウリスタチン)、DNA副溝結合薬、DNA複製阻害薬、アルキル化薬(たとえば、シスプラチン、モノ(プラチナ)、ビス(プラチナ)及び三核プラチナ錯体、並びにカルボプラチンなどの、プラチナ錯体)、アントラサイクリン類、抗生物質、葉酸代謝拮抗薬、代謝拮抗薬、化学療法増感薬、デュオカルマイシン類、エトポシド類、フッ化ピリミジン類、イオノフォア類、レキシトロプシン類(lexitropsins)、ニトロソウレア類、プラチノール類(platinols)、予備形成化合物(pre-forming compounds)、プリン代謝拮抗薬、ピューロマイシン類、放射線増感薬、ステロイド類、タキサン類、トポイソメラーゼ阻害薬、ビンカアルカロイド類などがある。
【0168】
抗αvβ6抗体又は抗体薬物コンジュゲートによる処置(場合により、上述したような他の薬剤若しくはレジメンのいずれかと組み合わせて、単独で若しくは抗体薬物コンジュゲートとして)は、抗αvβ6抗体(単独若しくはコンジュゲートとして)なしである以外は同じ処置(たとえば化学療法)と比べて、腫瘍(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮がん及び腺がん)、頭頸部がん(頭頸部扁平上皮癌を含む)、食道がん、乳がん(乳房浸潤癌を含む)、卵巣がん、膀胱がん(尿路上皮癌を含む)、皮膚がん(扁平上皮癌、すなわちSCC)、腎がん(淡明細胞型腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がんを含む)、子宮頸がん、胃がん、前立腺がん(前立腺腺がんを含む)、子宮内膜がん(子宮癌肉腫、子宮体部内膜癌を含む)、直腸腺がん、甲状腺癌、結腸腺がん、胃腺がん、及び膵臓がん(膵臓腺がんを含む))を有する患者の中央値無増悪生存期間又は全生存期間を、特に再発性又は難治性の場合、少なくとも30%若しくは40%、好ましくは50%、60%~70%、又は100%以上も長くすることができる。それに加えて、又はその代わりに、抗αvβ6抗体(単独若しくはコンジュゲートとして)を含む処置(たとえば標準的化学療法)は、抗αvβ6抗体(単独若しくはコンジュゲートとして)なしである以外は同じ処置(たとえば化学療法)と比べて、腫瘍を有する患者の完全奏効率、部分奏効率、若しくは客観的奏効率(完全+部分)を、少なくとも30%若しくは40%、好ましくは50%、60%~70%だけ高め、又は100%も高めることができる。
【0169】
典型的には、臨床試験(たとえば第II相、第II/III相若しくは第III相試験)において、前記の、標準治療のみ(又は+プラセボ)を受けた対照患者群に対する、標準治療+抗αvβ6抗体(単独若しくはコンジュゲートとして)による治療を受けた患者の中央値無増悪生存期間及び/又は奏効率の増加は、統計上有意であり、たとえばp = 0.05若しくは0.01、又は0.001レベルでさえある。完全奏効率及び部分奏効率は、たとえば国立がん研究所及び/又は食品医薬品局により記載又は承認された、がんの臨床試験で通常使用される客観的基準によって求められる。
【0170】
IX. 製品又はキット
別の態様において、本明細書に記載される抗αvβ6抗体又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートを含む製品又はキットが提供される。製品又はキットは、本発明の方法で本明細書に記載される抗αvβ6抗体又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートを使用するための説明書をさらに含むことができる。つまり、特定の実施形態では、製品又はキットは、本明細書に記載される抗αvβ6抗体又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートの有効量を対象に投与することを含む、対象においてがん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮がん及び腺がん)、頭頸部がん(頭頸部扁平上皮癌を含む)、食道がん、乳がん(乳房浸潤癌を含む)、卵巣がん、膀胱がん(尿路上皮癌を含む)、皮膚がん(扁平上皮癌、すなわちSCC)、腎がん(淡明細胞型腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がんを含む)、子宮頸がん、胃がん、前立腺がん(前立腺腺がんを含む)、子宮内膜がん(子宮癌肉腫、子宮体部内膜癌を含む)、直腸腺がん、甲状腺癌、結腸腺がん、胃腺がん、及び膵臓がん(膵臓腺がんを含む))を処置する方法において本明細書に記載される抗αvβ6抗体又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートを使用するための説明書を含む。一部の実施形態において、がんはNSCLCである。一部の実施形態において、がんは頭頸部がんである。一部の実施形態において、がんは食道がんである。一部の実施形態において、がんは乳がんである。一部の実施形態において、がんは卵巣がんである。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、腎がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、子宮内膜がんを処置する方法に使用される。一部の実施形態において、本発明の抗体又は抗体薬物コンジュゲートは、胃がん(stomach cancer)を処置する方法に使用される。一部の実施形態において、がんは膀胱がんである。一部の実施形態において、がんは皮膚がんである。一部の実施形態において、がんは子宮頸がんである。一部の実施形態において、がんは胃がん(gastric cancer)である。一部の実施形態では、がんは膵臓がんである。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0171】
製品又はキットはさらに、容器を含むことができる。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(シングル又はデュアルチャンバーシリンジなど)及び試験管が挙げられる。一部の実施形態において、容器はバイアルである。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。容器は、製剤を保持する。
【0172】
製品又はキットはさらに、ラベル又は添付文書を含むことができ、これは、容器上に、又は容器に添えられており、製剤の再構成及び/若しくは使用に関する指示を示すことができる。ラベル又は添付文書はさらに、製剤が、皮下投与、静脈内投与、又は対象におけるがん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮がん及び腺がん)、頭頸部がん(頭頸部扁平上皮癌を含む)、食道がん、乳がん(乳房浸潤癌を含む)、卵巣がん、膀胱がん(尿路上皮癌を含む)、皮膚がん(扁平上皮癌、すなわちSCC)、腎がん(淡明細胞型腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がんを含む)、子宮頸がん、胃がん、前立腺がん(前立腺腺がんを含む)、子宮内膜がん(子宮癌肉腫、子宮体部内膜癌を含む)、直腸腺がん、甲状腺癌、結腸腺がん、胃腺がん、及び膵臓がん(膵臓腺がんを含む))の処置のための他の投与様式に有用であるか又はそれを目的とすることを示すことができる。製剤を保持する容器は、単回使用バイアル又は複数回使用バイアルであり得、それは、再構成された製剤の反復投与を可能にする。製品又はキットはさらに、好適な希釈剤を含む第2の容器を含むことができる。製品又はキットはさらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を伴う添付文書をはじめとする、商業上、治療上、及びユーザーの視点から望ましい他の材料を含むことができる。
【0173】
本明細書の製品又はキットは、場合により、第2の医薬を含む容器をさらに含み、抗αvβ6抗体又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートは第1の医薬であり、この製品又はキットは、有効量の第2の医薬で対象を処置するための指示をラベル又は添付文書にさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の医薬は、1つ又は複数の有害事象の重症度を排除又は低減するためのものである。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗αvβ6抗体又は抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートは、凍結乾燥粉末として容器内に存在する。いくつかの実施形態では、凍結乾燥粉末は、活性剤の量を示すバイアル、アンプル又はサシェットなどの密閉容器に入っている。医薬が注射で投与される場合、投与前に成分を混合できるように、例えば、注射用の滅菌水又は生理食塩水のアンプルを、任意にキットの一部として提供することができる。このようなキットは、必要に応じて、例えば、1つ以上の薬学的に許容される担体を備えた容器、追加の容器など、様々な従来の医薬品コンポーネントの1つ以上をさらに含むことができ、当業者には容易に理解される。投与すべき成分の量、投与のガイドライン、及び/又は成分の混合のガイドラインを示す、添付文書又はラベルとしての印刷された説明書もキットに含めることができる。
【0175】
X. 他の用途
本明細書に記載の抗αvβ6抗体、例えばヒト化抗αvβ6抗体は、臨床診断若しくは治療又は研究との関連において、αvβ6の検出に使用され得る。がんにおけるαvβ6の発現は、そのがんが本発明の抗体による処置に適していることを示す。本抗体は、αvβ6を保有する細胞及び様々な刺激に対するそれらの応答の検出に関する研究のための研究用試薬としても販売され得る。かかる使用においては、モノクローナル抗体は、蛍光分子、スピン標識分子、酵素、又はラジオアイソタイプ(radioisotype)によって標識され得、αvβ6のアッセイを行うために必要な試薬全てを含むキットの形態で提供され得る。本明細書に記載の抗体は、αvβ6タンパク質の発現を検出し、がんがαvβ6 ADCによる処置に適しているかどうかを判断するために使用することができる。
【0176】
以上又は以下に列挙される全ての特許申請、ウェブサイト、他の刊行物、受入番号などは、個々の事項の各々が、参照により同様に組み込まれることが具体的かつ個別に示される場合と同じ程度に、全ての目的においてそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。異なるバージョンの配列が、異なる時期の受入番号と関連する場合、本出願の有効出願日での受入番号と関連するバージョンが意味される。有効出願日は、出願日、又は該当する場合にはその受入番号に言及する優先出願の出願日のいずれか早い方を意味する。同様に、異なるバージョンの刊行物、ウェブサイトなどが異なる時期に刊行される場合、別途記載のない限り、本出願の有効出願日の時点で直近に刊行されたバージョンが意味される。本発明の任意の特徴、工程、要素、実施形態、又は態様は、具体的に別途記載のない限り、任意のそのその他と組み合わせて使用され得る。本発明は、明確性及び理解の目的のため、図示及び例によりある程度詳細に記載されてきたが、ある特定の変更及び修正が付属の特許請求の範囲の範囲内で実践され得ることは明らかであろう。
【0177】
実施例
材料
以下の実施例に記載する細胞株を、American Type Culture Collection(ATCC)、国立がん研究所(NCI)、又はDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Braunschweig、Germany (DMSZ)によって指定された条件に従った培養で維持した。SW780細胞株、Detroit 562細胞株、HPAFII細胞株、及びBxPC3細胞株をATCCから入手した。FreeStyle(商標)293-F(InVitrogen Corp)ヒト上皮腎臓細胞及び対応するトランスフェクタントを、製造業者の説明に従って維持した。細胞培養試薬を、Invitrogen Corp.(Carlsbad、CA)、Molecular Devices(Sunnydale、CA)及びその他の供給業者から取得した。二次抗体試薬を、Jackson ImmunoResearch Laboratories(West Grove、PA)から購入した。組換えαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8を、R&D Systems(Minneapolis、MN)から購入した。FreeStyle(商標)293-F細胞は内因性インテグリンαvを発現し、ヒト、カニクイザル、又はマウスインテグリンβ6をコードする完全長cDNAで安定的にトランスフェクトされ、それぞれHEK293F:huβ6、HEK293F:cynoβ6、HEK293F:muβ6細胞株を生成した。空のベクター(HEK293F:ベクター)でトランスフェクトされたHEK293F細胞を陰性対照として使用した。内因性マウスインテグリンαvを発現するマウス3T3及びFDC-P1細胞に、ヒト及びマウスインテグリンβ6の完全長cDNAクローンをトランスフェクトして、それぞれ3T3:huβ6及びFDC-P1:muβ6を生成した。
【0178】
方法論:
2A2抗体の生成
ICR(CD-1)マウスは、約5×106 3T3:huβ6トランスフェクタントの腹腔内注射で3回免疫された。融合の3日前に、マウスは、静脈内(6ug)及び腹腔内(30ug)への精製組換えヒトαvβ6の最終注射を受けた。脾臓及びリンパ節から採取したリンパ球を、ポリエチレングリコールを使用してP3X63Ag8.653骨髄腫細胞と融合した。融合細胞をハイブリドーマ成長培地(4mMグルタミン、10%胎児クローンI、10%クローニング因子及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むIMDM)中で一晩置いて回収した。回収後、細胞をスピンダウンしてから、半固形培地にプレーティングした。半固形培地は、ハイブリドーマ成長培地に加えてハイブリドーマ選択用のHAT及びIgG産生用のCloneDetectを補充したCloneMatrix培地で構成されていた。ハイブリドーマを37℃で10日間インキュベートした。10日目に、ClonePixFL(Molecular Devices)を使用してIgG産生ハイブリドーマクローンを採集し、IgG枯渇ハイブリドーマ成長培地に加えてHTを含む96ウェルプレートに移した。ハイブリドーマ培養上清を293F:huβ6トランスフェクタントでスクリーニングし、検出のためのAlexifluor-647標識二次抗体を使用して陽性クローンを同定した。プレートをFMAT 8200(Applied Biosystems)で読み取った。293F:huβ6及び293F:cynoβ6に結合したが293F:ベクターには結合しなかったハイブリドーマを、薬物リンカーへの直接コンジュゲーションのために増加させた。直接コンジュゲーションした抗体パネルを、結合及び細胞傷害アッセイで試験した。
【0179】
LAP遮蔽ELISA
96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)を、1xPBS中の0.3ug/mL組換えヒト潜伏関連ペプチド(rhuLAP)(自社製;ロット09-19-09DS)で、4℃で一晩コーティングした。コーティング溶液を除去した後、プレートをトリス緩衝生理食塩水(TBS)中の3%BSAで、1時間室温でブロッキングし、次いで、使用前にPBS+0.05%Tween-20(PBST)で5回洗浄した。別のコニカルボトム96ウェルプレートで、0.25ug/mLの組換えヒト(rhu)αvβ6-ビオチン(自社製rhuαvβ6-ビオチン、ロット番号171030A)を、1mM CaCl2、1mM MgCl2及び1mg/mL BSAを含むTBS緩衝液中、室温で1時間、精製抗体の濃度を上げながら室温で1時間プレインキュベートした。次に、抗体/αvβ6-ビオチン混合物をLAPコーティングしたプレートに移し、室温で1時間インキュベートした。プレートを上記のように洗浄し、TBS+1mg/mL BSAで1:1000に希釈した50uL/ウェルのペルオキシダーゼとコンジュゲートしたストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch #016-030-084)と共に室温で1時間インキュベートした。結合タンパク質及びシグナルは、5.5分間インキュベートしたTMB(Invitrogen #00-2023)を使用して検出し、1N H2SO4(Fisher #SA212-1)でクエンチした。プレートを直ちに、プレートリーダー(Molecular Devices Vmax Kinetic Microplate Reader)を用いて450nmの波長で読み取った。データをMicrosoft Excelにエクスポートし、GraphPad Prism v5.03を使用して分析した。
【0180】
競合結合アッセイ - ヒト化2A2抗体変異体
競合結合アッセイを、293F:huβ6細胞株を使用して行なった。0.1×106抗原発現細胞を、氷上の96ウェルV底プレートの各ウェルに分注した。細胞をFACS緩衝液(トリス緩衝生理食塩水、2%ウシ胎児血清、0.5mM MnCl2、0.02%NaN3)中で、2nM AlexaFluor-647標識m2A2及び濃度を上昇させた(0.03~500nM)非標識ヒト化2A2変異抗体と共に1時間インキュベートした。細胞をペレット化し、TBS/FBSで3回洗浄した。細胞をペレット化し、125uLのTBS/FBSに再懸濁した。Becton Dickinson Biosciences LSR II(San Jose、CA)を使用し、結合の蛍光シグナルを検出した。飽和蛍光シグナルの割合を使用して、結合した標識ヒト化2A2抗体の割合を決定し、続いてGraphPadソフトウェア(LaJolla、CA)を使用して、データを可変勾配のシグモイダル用量反応曲線にフィッティングすることによりEC50を推定した。
【0181】
競合結合アッセイ - ヒト及びカニクイザル(cyno)αvβ6
競合結合アッセイを、293F:huβ6及びHEK293F:cynoβ6細胞株を使用して行なった。0.1×106個の抗原発現細胞を、氷上の96ウェルV底プレートの各ウェルに分注した。細胞を緩衝液(トリス緩衝生理食塩水、2%ウシ胎児血清、0.5mM MnCl2、0.02%NaN3)中、2nMのAlexaFluor-647標識ヒト化2A2 HCLG及び濃度を上昇させた(4pM~1uM)非標識ヒト化2A2 HCLG抗体及びh2A2-Mdpr-PEG(12)-gluc-MMAE(8)と共に1時間インキュベートした。細胞をペレット化し、TBS/FBSで3回洗浄した。細胞をペレット化し、125uLのTBS/FBSに再懸濁した。Becton Dickinson Biosciences LSR II(San Jose、CA)を使用し、結合の蛍光シグナルを検出した。飽和蛍光シグナルの割合を使用して、細胞に結合した標識ヒト化2A2抗体の割合を決定し、続いてGraphPadソフトウェア(LaJolla、CA)を使用して、データを可変勾配のシグモイダル用量反応曲線にフィッティングすることによりEC50を推定した。
【0182】
αvβ6飽和結合アッセイ - ヒト及びカニクイザル(cyno)αvβ6
飽和結合研究を、以下の抗原発現細胞株:293F:huβ6及び293F:cynoβ6を使用して行なった。0.1×106個の抗原発現細胞を96ウェルV底プレートにウェルごとに分注した。m2A2及びh2A2 HCLGをAlexaFluor-647で直接標識し、緩衝液(トリス緩衝生理食塩水、2%ウシ胎児血清、0.5mM MnCl2、0.02%NaN3)中、6pM~340nMの範囲の濃度で細胞に添加した。細胞を1時間インキュベートした後、ペレット化し、TBSで3回洗浄した。細胞をペレット化し、120uLのTBSに再懸濁した。Becton Dickinson Biosciences LSR II(San Jose、CA)を使用し、結合の蛍光シグナルを検出した。EC50を、GraphPadソフトウェア(LaJolla、CA)を使用して計算した。
【0183】
ELISA
96ウェルMaxisorbプレート(Nunc)を、50mM炭酸緩衝液(Sigma、MO)で希釈した1ug/mlの組換えヒトαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、及びαvβ8(R&D Systems、MN)を用い、4℃で一晩コーティングした。プレートをPBS+0.05%Tween 20(PBS-T)で洗浄した。洗浄緩衝液を除去し、プレートをTBSブロッキング緩衝液(TBS、0.05%Tween 20、1%BSA)中で室温で2時間ブロッキングした。プレートを洗浄した後、1pM~67nM(10ug/ml)の範囲の濃度でTBS結合緩衝液(TBS、0.05%Tween 20、1%BSA、1mM MnCl2)で希釈したヒト化2A2抗体と共に2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、抗ヒトFc-HRP(Jackson ImmunoResearch、PA)の1:5000希釈液で1時間インキュベートし、洗浄後、TMB基質と共に5分間インキュベートした。1M HClで反応を停止した。Fusion HTプレートリーダー(Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用して450nmでの吸光度を読み取った。
【0184】
定量的フローサイトメトリー分析
細胞表面のαvβ6コピー数の定量化を、一次抗体としてマウスαvβ6mAbを使用し、製造元(DAKO A/S、Glostrup、Denmark)の説明に従ってDAKO QiFiKitフローサイトメトリー間接アッセイを使用して決定し、Becton Dickinson FACScanフローサイトメーターを用いて評価した。
【0185】
インビトロ細胞傷害アッセイ
腫瘍細胞を抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートと共に、37℃で96時間インキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)発光アッセイ(Promega Corporation、Madison、WI)を使用して細胞生存率を決定し、結果をEnVisionマルチ標識プレートリーダー(Perkin Elmer、Waltham、MA)で測定した。結果は、滴定曲線の過程で50%(half maximum)増殖阻害をもたらす濃度として定義されるIC50として報告される。
【0186】
抗体薬物コンジュゲートの産生
抗αvβ6抗体の抗体薬物コンジュゲートを、米国特許出願公開第20050238649号及び国際公開第2015/057699号に記載されるように調製した。薬物リンカーvcMMAE(1006としても知られる)及びmcMMAFは両方とも、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050238649号に記載されている。薬物リンカーMDpr-Lys(PEGx)-グルクロニド-MMAEリンカーは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/057699号に記載されている。
【0187】
インビボ活性研究
細胞株由来異種移植片における治療実験のために、BxPC3、Detroit 562、HPAF-II、及びSW780の研究のために、5x106個の細胞(ATCC)を5~8匹の雌ヌード(nu/nu)マウス(Envigo)に皮下注射した。マウスを無作為的に研究群に分け、腫瘍がおよそ100mm3に達したら腹腔内注射により試験品を投与した。腫瘍体積が500~1000mm3に達したときに動物を安楽殺した。式(体積=1/2×長さ×幅×幅)を用いて腫瘍体積を計算した。永続的な退縮を示したマウスは、移植後40~65日目頃に殺処分した。全ての異種移植研究において、試験品のいずれかで処置されたマウスでは、体重減少又は治療関連の毒性は観察されなかった。全ての動物の手順は、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Careによって認定された施設で、Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコルの下で実行された。
【0188】
細胞株由来異種移植片に加えて、非小細胞肺がん(NSCLC)の患者由来異種移植片(PDX)モデルに対するh2A2 vcMMAE ADCの抗腫瘍活性を、Champions Oncology(Hackensack NJ)によって維持されたモデルを使用して研究した。これらのPDXモデルには、腺及び扁平上皮組織学検査の両方のNSCLCサンプルが含まれている。これらのモデルは、免疫無防備状態のマウスに移植することによって確立され、150~300mm3の腫瘍体積まで成長させた後、マウスを処置群及び対照群に無作為化し、h2A2 vcMMAE又は非結合対照h00 vcMMAE ADCを投与した。マウスに毎週3mg/kgのADCを合計3回投与した。腫瘍体積を、最初の投与後28日間、又は腫瘍が1500mm3の体積に達するまで、週に2回測定した。
【0189】
h2A2 vcMMAE ADCの抗腫瘍活性は、Champions Oncology(Hackensack NJ)によって維持された卵巣癌モデルのPDXモデルでさらに評価された。これらのモデルは、免疫無防備状態のマウスに移植することによって確立され、150~300mm3の腫瘍体積まで成長させた後、マウスを処置群及び対照群に無作為化し、ADCを投与した。マウスに毎週5mg/kgのADCを合計3回投与した。腫瘍体積を、最初の投与後28日間、又は腫瘍が1500mm3の体積に達するまで、最大60日間、週に2回測定した。
【0190】
結果
マウスクローンm2A2は、複数のαvβ6陽性腫瘍細胞株においてADCとしての細胞傷害活性を示し、ヒト及びカニクイザル型の抗原と同等の親和性を有していたため、ハイブリドーマパネルから選択された。マウス2A2の特異性は、抗体が293F:huβ6トランスフェクタントに結合するが、αvβ5陽性親株(293F:ベクター)には結合しないことが示されたFMAT及びフローサイトメトリー結合研究で確証された。インテグリンαvβ6は、フィブロネクチン(Weinackerら、1994)、テネイシン(Prietoら、1993)、ビトロネクチン(Huangら、1998)及び潜伏関連ペプチド(LAP)(Mungerら、1999)のRGD部位の受容体であることが示されている。インテグリンαvβ6のLAPへの結合は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGFβ)の空間的に制限された活性化を誘導する可能性がある(Mungerら、1999)。潜伏関連ペプチド(LAP)遮蔽アッセイを行なったところ(図1)、抗αvβ6抗体m15H3(SG-42.15H3)(国際公開第2013/123152号を参照)及び陽性対照10D5とは対照的に、m2A2(SG-44.2A2)はLAPを遮蔽(ブロック)しないことが示された。このことは、2A2抗体がリガンド結合と関わりなく送達されることを示唆している。陰性対照は、非結合IgG対照であり、SG-44.8B9、SG-33.20B8、SG-44.32A6、及びSG-44.34D6はハイブリドーマパネルから選択された他のクローンであった。
【0191】
マウス抗体の結合
マウスモノクローナル抗体2A2の結合のEC50は、遺伝子操作された細胞株(293F:huβ6、293F:cynoβ6)を使用した飽和結合研究によってヒト及びカニクイザル(cyno)αvβ6について決定された(図2)。遺伝子操作された細胞株は、組換えβ6鎖と対になった内因性αvを発現し、内因性αv及び組換えβ6から構成されるヘテロ二量体受容体を産生する。
【0192】
ヒト化抗体の設計と選択
本実施例におけるヒト化の開始点又はドナー抗体は、マウス2A2抗体である。重鎖についてはIGHV1-46及びIGHJ4によって、軽鎖についてはIGKV1D-33及びIGKJ2によって提供されるゲノム配列を使用した。
【0193】
ヒト化では、重鎖フレームワーク(H2、H28、H48、H67、H69、H71、H73、H74、H78、H93;図3)で10個の位置が特定され、軽鎖フレームワーク(L69及びL71;図4)で2つの位置が特定され、その位置ではヒトアクセプター配列がドナー配列と異なり、抗原に直接接触したり、CDRのコンフォメーションに影響を及ぼしたり、重鎖と軽鎖の間のパッキングに影響を及ぼしたりする結果、抗体結合に影響を及ぼす場合がある。4個のヒト化重鎖変異体(vHA、vHB、vHC、vHD;図3)及び8個のヒト化軽鎖変異体(vLA、vLB、vLC、vLD、vLE、vLF、vLG、vLH;図4)は、これらの位置の異なる順列での復帰変異(バックミューテーション)を組み込んで作成された。これらの復帰変異は表1~4に指定されている。フレームワークの残りの位置は、ヒトアクセプター配列からの残基によって占められる。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
【表3】
【0197】
【表4】
【0198】
その後、これらのヒト化重鎖及び軽鎖変異体のコンビナトリアル順列を表すヒト化抗体を発現させた。得られたヒト化抗体変異体(マウス2A2抗体及びヒト-マウスキメラ抗体と共に)のヒトαvβ6に対する競合結合曲線を図5~7に示す。インビトロ活性アッセイにおけるさらなる分析のために、4つのヒト化変異体を選択した。ヒト化変異体HCLE、HCLG、HCLH、HALG、及びヒト化抗αvβ6抗体15H3-HTLC(それぞれが薬物リンカーにコンジュゲートしている。Via、n=12、RPR=H、R21=CH3)のインビトロ抗がん活性を、定量的フローサイトメトリー分析に基づいてさまざまなレベルでαvβ6を発現する4つの細胞株(膵臓がんHPAFII及びBxPC-3細胞、頭頸部がんDetroit 562細胞、膀胱がんSW780細胞)における細胞傷害アッセイを使用して測定した。結果を表5に示す。
【0199】
【表5】
【0200】
重鎖変異体hvHC及び軽鎖変異体hvLG(h2A2 HCLG)を含むヒト化変異体をさらなる研究のために選択した。
【0201】
h2A2 HCLGのヒト及びカニクイザル(cyno)αvβ6の両方への結合は、親マウス2A2を参照として含めた飽和結合(図8)によって確証され、ヒト化変異体との同等の結合を実証した。ヒト及びカニクイザル(cyno)αvβ6の両方へのh2A2 HCLGの結合は、蛍光標識されたマウス2A2に対する競合結合によっても確証された(図9)。このアッセイには、抗体の鎖間ジスルフィドを還元することによるh2A2 HCLGで調製したADCとSGD-5088薬物リンカーとの結合、及び8コピーの薬物リンカーとのコンジュゲーションもまた、含まれていた。コンジュゲーションプロセスは、ヒト又はカニクイザル(cyno)のいずれかからのαvβ6への結合にも影響を与えなかった。h2A2 HCLGの結合特異性はELISAによっても確証され、そこでは、抗体は組換えヒトαvβ6に結合したが、αvβ1、αvβ3、αvβ5、又はαvβ8には結合しなかった(図10)。
【0202】
h2A2 ADCのインビトロ抗がん活性
vcMMAEにコンジュゲートした場合のヒト化変異体HCLGのインビトロ抗がん活性を、定量的フローサイトメトリー分析に基づいてさまざまなレベルでαvβ6を発現する4つの細胞株(膵臓がんHPAFII及びBxPC-3細胞、頭頸部がんDetroit 562細胞、及び膀胱がんSW780細胞)において細胞傷害アッセイを使用して測定した。図11は、ヒト化2A2抗αvβ6 ADCがこれらのアッセイで細胞殺傷挙動を示したことを示している。
【0203】
h2A2 ADCのインビボ抗がん活性
インビトロで試験された同じ4つの細胞株を使用して、インビボでvcMMAEとコンジュゲートしたヒト化2A2 HCLG抗体の抗腫瘍活性(抗体あたり平均4つの薬物)が実証された(図12~15)。無処置及び非結合対照ADCと比較して、有意な腫瘍増殖遅延又は腫瘍退縮が観察された。h2A2 HCLG-1006(4)は、抗体あたり平均4つのvcMMAE薬物リンカー分子を有する親マウス抗体2A2のHCLGヒト化形態の抗体薬物コンジュゲートを指す。h00-1006(4)は、抗体あたり平均4つのvcMMAE薬物リンカー分子を有する非結合対照抗体の抗体薬物コンジュゲートを指す。
【0204】
NSCLCのPDXモデルでは、vcMMAEとコンジュゲートしたヒト化2A2 HCLG抗体(抗体あたり平均4つの薬物)もまた、抗腫瘍活性を示した(図16)。無処置及び非結合対照ADCと比較して、有意な腫瘍増殖遅延又は腫瘍退縮が観察された。h2A2 HCLG-1006(4)は、抗体あたり平均4つのvcMMAE薬物リンカー分子を有する親マウス抗体2A2のHCLGヒト化形態の抗体薬物コンジュゲートを指す。h00-1006(4)は、抗体あたり平均4つのvcMMAE薬物リンカー分子を有する非結合対照抗体の抗体薬物コンジュゲートを指す。
【0205】
卵巣癌のPDXモデルでは、vcMMAEとコンジュゲートしたヒト化2A2 HCLG抗体(抗体あたり平均4つの薬物)もまた、抗腫瘍活性を示した(図17)。無処置の腫瘍と比較して、有意な腫瘍増殖遅延又はわずかな腫瘍の減少が観察された。h2A2 HCLG-1006(4)は、抗体あたり平均4つのvcMMAE薬物リンカー分子を有する親マウス抗体2A2のHCLGヒト化形態の抗体薬物コンジュゲートを指す。
【0206】
h2A2 HCLGの抗腫瘍活性を、DARが8の薬物リンカーVIa(n=12、RPR=H、R21=CH3)とコンジュゲートさせた場合のh15H3と比較した。研究プロトコルは、HPAFII及びBxPC3細胞株を使用した、細胞株由来異種移植モデルについて上で記載したものと同じである。動物に、h2A2 HCLG、h15H3、又は非標的対照(h00)ADCのいずれかを3mg/kgで1回投与した(図18)。両方のモデルで、h2A2 HCLG ADCは、移植された腫瘍の永続的な退縮を示したが、h15H3 ADCは増殖遅延を示した。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、単離された抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域が、
(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び
(iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含み;
軽鎖可変領域が、
(i)配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(ii)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び
(iii)配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含み、CDRがKabatによって決定される、抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片。
[実施形態2]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、単離された抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域が、
(i)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び
(iii)配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含み、
軽鎖可変領域が、
(i)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(ii)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び
(iii)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含み、CDRがIMGTによって決定される、抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片。
[実施形態3]抗体がヒト化されている、実施形態1又は実施形態2に記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態4]重鎖可変領域が、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1から3のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態5]重鎖可変領域が、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1から4のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態6]重鎖可変領域が、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1から5のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態7]重鎖可変領域が配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号17のアミノ酸配列を含む、実施形態1から6のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態8]H2がFによって占められ、H28がSによって占められ、H48がIによって占められ、H67がAによって占められ、H69がLによって占められ、H71がVによって占められ、H73がKによって占められ、H78がAによって占められ、H93がTによって占められ、L69がRによって占められ、及びL71がYによって占められ、番号付けがKabat番号付けシステムによる、実施形態4から7のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態9]重鎖が配列番号21を含むアミノ酸配列を有し、軽鎖が配列番号29を含むアミノ酸配列を有する、実施形態1から8のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態10]抗体又は抗原結合断片が抗原結合断片であり、抗原結合断片がFab、Fab'、F(ab') 2 、Fab'-SH、Fv、ダイアボディ、線状抗体、及び一本鎖抗体断片からなる群から選択される、実施形態1から9のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態11]抗体の重鎖可変領域が重鎖定常領域に融合され、軽鎖可変領域が軽鎖定常領域に融合されている、実施形態1から10のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態12]重鎖定常領域がIgG1アイソタイプのものである、実施形態11に記載の抗体又は抗原結合断片。
[実施形態13]細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤にコンジュゲートされた、実施形態1から12のいずれかに記載の抗体又は抗原結合断片を含む、抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態14]抗体又は抗原結合断片が、リンカーを介して細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤にコンジュゲートされている、実施形態13に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態15]細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤がモノメチルアウリスタチンである、実施形態13又は14に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態16]モノメチルアウリスタチンがモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、実施形態13から15のいずれかに記載の抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態17]抗体又はその抗原結合断片が、酵素切断可能なリンカー単位を介してMMAEにコンジュゲートされている、実施形態16に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態18]酵素切断可能なリンカー単位がVal-Citリンカーを含む、実施形態17に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態19]抗体又はその抗原結合断片が、式:-A a -W w -Y y -を有するリンカー単位を介してMMAEにコンジュゲートされており、式中、-A-はストレッチャー単位であり、aは0又は1であり、-W-はアミノ酸単位であり、wは0から12の範囲の整数であり、-Y-はスペーサー単位であり、yは0、1、又は2である、実施形態18に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態20]ストレッチャー単位が以下の式Iの構造を有し、アミノ酸単位がVal-Citであり;スペーサー単位が、以下の式IIの構造を有するp-アミノベンジルアルコール(PAB)基である、実施形態19に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【化29】
[実施形態21]リンカーがモノメチルアウリスタチンEに結合して、以下の構造:
【化30】
(式中、Abは抗体h2A2であり、pは1から16までの数を示す)
を有する抗体薬物コンジュゲートを形成する、実施形態14から20のいずれかに記載の抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態22]抗体薬物コンジュゲートの集団におけるpの平均値が約4である、実施形態21に記載の抗体薬物コンジュゲート。
[実施形態23]実施形態1から12のいずれかにより定義される重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする核酸。
[実施形態24]実施形態23に記載の核酸を含むベクター。
[実施形態25]発現ベクターである、実施形態24に記載のベクター。
[実施形態26]実施形態25に記載の核酸を含む宿主細胞。
[実施形態27]チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、実施形態26に記載の宿主細胞。
[実施形態28]抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片を産生する方法であって、抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片の産生に適した条件下で実施形態26又は27に記載の宿主細胞を培養することを含む方法。
[実施形態29]宿主細胞によって産生された抗αvβ6抗体又はその抗原結合断片を単離することをさらに含む、実施形態28に記載の方法。
[実施形態30]抗αvβ6抗体薬物コンジュゲートを産生する方法であって、抗αvβ6抗体の産生に適した条件下で実施形態26又は27に記載の宿主細胞を培養すること、宿主細胞から産生された抗αvβ6抗体を単離すること、及び抗αvβ6抗体を細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤にコンジュゲートすることを含む方法。
[実施形態31]抗αvβ6抗体がリンカーを介して細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤にコンジュゲートされている、実施形態30に記載の方法。
[実施形態32]リンカーがVal-Citリンカーである、実施形態31に記載の方法。
[実施形態33]細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤がモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、実施形態30から32のいずれかに記載の方法。
[実施形態34]対象におけるがんを処置する方法であって、対象に、実施形態1から12のいずれかに記載の抗体若しくは抗原結合断片、又は実施形態13から22のいずれかに記載の抗体薬物コンジュゲートを投与することを含む、方法。
[実施形態35]がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部がん、食道がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん(SCC)、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、膵臓がんからなる群から選択される、実施形態34に記載の方法。
[実施形態36]肺がんが非小細胞肺がんである、実施形態34に記載の方法。
[実施形態37]がんが頭頸部がんである、実施形態34に記載の方法。
[実施形態38]抗体若しくは抗原結合断片又は抗体薬物コンジュゲートが、抗体若しくは抗原結合断片又は抗体薬物コンジュゲート及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物中にある、実施形態34から37のいずれかに記載の方法。
[実施形態39]対象がヒトである、実施形態34から38のいずれかに記載の方法。
[実施形態40]実施形態1から12のいずれかに記載の抗体若しくは抗原結合断片、又は実施形態13から22のいずれかに記載の抗体薬物コンジュゲート、並びに生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤及び補助剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤を含む、医薬組成物。
[実施形態41]放射線又は化学療法剤と組み合わせて投与される、実施形態40に記載の医薬組成物。
[実施形態42]vcMMAEにコンジュゲートされた単離された抗αvβ6抗体を含む、抗体薬物コンジュゲートであって、抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有し、抗体薬物コンジュゲートが以下の構造:
【化31】
(式中、Abは抗体であり、pは1から16までの数字を示す)
を有する、抗体薬物コンジュゲート。
【0207】
配列
配列番号1 - m2A2 vH
配列番号2 - mIGHV1-39 (最も近縁なマウス生殖系列V遺伝子)
配列番号3 - hIGHV1-46/HJ4
配列番号4 - h2A2 vHA
配列番号5 - h2A2 vHB
配列番号6 - h2A2 vHC
配列番号7 - h2A2 vHD
配列番号8 - m2A2 vL
配列番号9 - mIGKV12-89 (最も近縁なマウス生殖系列V遺伝子)
配列番号10 - hIGKV1D-33/KJ2
【0208】
配列番号11 - h2A2 vLA
配列番号12 - h2A2 vLB
配列番号13 - h2A2 vLC
配列番号14 - h2A2 vLD
配列番号15 - h2A2 vLE
配列番号16 - h2A2 vLF
配列番号17 - h2A2 vLG
配列番号18 - h2A2 vLH
配列番号19 - h2A2 HA 重鎖
配列番号20 - h2A2 HB 重鎖
【0209】
配列番号21 - h2A2 HC 重鎖
配列番号22 - h2A2 HD 重鎖
配列番号23 - h2A2 LA 軽鎖
配列番号24 - h2A2 LB 軽鎖
配列番号25 - h2A2 LC 軽鎖
配列番号26 - h2A2 LD 軽鎖
配列番号27 - h2A2 LE 軽鎖
配列番号28 - h2A2 LF 軽鎖
配列番号29 - h2A2 LG 軽鎖
配列番号30 - h2A2 LH 軽鎖
【0210】
配列番号31 - HA, HB, HC, HD CDR1, KABAT
DYNVN

配列番号32 - HA, HB, HC, HD CDR2, KABAT
VINPKYGTTRYNQKFKG

配列番号33 - HA, HB, HC, HD CDR3, KABAT
GLNAWDY

配列番号34 - HA, HB, HC, HD CDR1, IMGT
GYSFTDYN

配列番号35 - HA, HB, HC, HD CDR2, IMGT
INPKYGTT

配列番号36 - HA, HB, HC, HD CDR3, IMGT
TRGLNAWDY

配列番号37 - LA, LB, LC, LD, LG, LH CDR1, KABAT
GASENIYGALN

配列番号38 - LA, LB, LD, LE, LH CDR2, KABAT
GATNLAD

配列番号39 - LA, LB, LC, LD, LE, LF, LG, LH CDR3, KABAT
QNVLTTPYT

配列番号40 - LE, LF CDR1, KABAT
QASENIYGALN
【0211】
配列番号41 - LC, LF CDR2, KABAT
GATNLAT

配列番号42 - LG CDR2, KABAT
GATNLED

配列番号43 - LA, LB, LC, LD, LE, LF, LG, LH CDR1, IMGT
ENIYGA

配列番号44 - LA, LB, LC, LD, LE, LF, LG, LH CDR2, IMGT
GAT

配列番号45 - LA, LB, LC, LD, LE, LF, LG, LH CDR3, IMGT
QNVLTTPYT
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
0007551750000001.app