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  • 特許-慢性創傷治癒組成物およびその適用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】慢性創傷治癒組成物およびその適用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7028 20060101AFI20240909BHJP
   A61K 31/29 20060101ALI20240909BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A61K31/7028
A61K31/29
A61K31/045
A61P17/02
A61P3/10
A61P43/00 121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022534305
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2020118933
(87)【国際公開番号】W WO2021109704
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】201911241631.1
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522223235
【氏名又は名称】羅 胥恩
【氏名又は名称原語表記】LO, Hsu En
【住所又は居所原語表記】10F., No. 11, Ln. 30, Sec. 4, Chenggong Rd., Neihu Dist., Taipei City 114, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】羅 胥恩
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-137776(JP,A)
【文献】特開2000-095681(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108186835(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102204998(CN,A)
【文献】台湾特許出願公開第201601739(TW,A)
【文献】中国特許出願公開第102283854(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の3つの成分:(1)アクテオシドである抗炎症剤;(2)亜没食子酸ビスマスである収斂剤;および(3)ボルネオールである冷却剤を、任意選択で1つまたは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、慢性創傷治癒のための医薬組成物であって、3つの成分のモル当量比、(1)抗炎症剤:(2)収斂剤:(3)冷却剤が、1:0.1~10:0.1~10であ慢性創傷は、糖尿病性創傷である、該医薬組成物。
【請求項2】
3つの成分のモル当量比、(1)抗炎症剤:(2)収斂剤:(3)冷却剤が、1:0.5~5:0.5~5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
重量で、(1)0.05%~10%のアクテオシド、(2)0.05%~10%の亜没食子酸ビスマス、(3)0.02%~5%のボルネオールおよび薬学的に許容される担体を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
重量で、(1)0.1%~5%のアクテオシド、(2)0.06%~6%の亜没食子酸ビスマス、(3)0.03%~3%のボルネオールおよび薬学的に許容される担体を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
重量で、(1)0.3%~5%のアクテオシド、(2)0.5%~5%の亜没食子酸ビスマス、(3)0.5%~1%のボルネオールおよび薬学的に許容される担体を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
慢性創傷を治療するための薬剤の製造における請求項1~のいずれかに記載の医薬組成物の使用であって、ここで、慢性創傷は、糖尿病性創傷である、該使用
【請求項7】
外用医薬品形態、化粧品形態または医療材料形態の製造のための適切な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性創傷治癒効果を有する組成物およびその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
人間集団の高齢化に伴い、慢性疾患が医療の焦点となっており、慢性創傷の治療は非常に重要な部分である。慢性創傷とは、所定の期間適切な治療を行った後、構造および外観において正常な創傷治癒を達成できない創傷を意味し、これまでのところ有効な治療薬はまだない。慢性創傷の種類として、長期の安静による床ずれまたは褥瘡、糖尿病患者の創傷潰瘍、末梢血管閉塞によって引き起こされる四肢壊疽、動静脈閉塞によって引き起こされる潰瘍、癌患者の非治癒性創傷、および急性創傷感染等によって引き起こされた慢性治癒不良が挙げられる。
【0003】
漢方薬の有効成分であるアクテオシドは、リパーゼ阻害作用があり、抗菌、抗炎症、抗ウイルス、抗酸化、および神経保護作用があることが知られている。
【0004】
アクテオシドは、強力な抗菌成分として報告されており、黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌効果があることが知られている(Guillermoら、1999、Journal of Ethnopharmacology 66(1):75-8)。アクトシドはまた、優れた抗炎症効果がある(Speranzaら、2009、Journal of biological regulators and homeostatic agents 23(3):189-95)。さらに、2016年1月6日に発行された中国特許第103816169B号は、アクテオシドが血管性認知症の準備および予防に使用することができ、低グルコースおよび低酸素症によって引き起こされる細胞虚血および低酸素症に対して保護および治療効果があることを開示した。また、2016年1月16日に公開された台湾特許出願第201601739号は、モクセイの花抽出物の調製方法を提供している。主な有効成分は、抗酸化作用、スキンケア作用、抗菌作用、抗炎症作用のあるアクテオシドである。しかしながら、それが慢性創傷治癒に使用できるという報告はない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概略
本発明は、主に、以下の3つの成分:(1)アクテオシド、イソアクテオシドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗炎症剤;(2)没食子酸、亜没食子酸、それらの塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される収斂剤;および(3)ボルネオール、メントールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される冷却剤;の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され、任意選択で1つまたは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせられる、細胞増殖および遊走を促進し、コラーゲン発現を促進し、慢性創傷治癒を改善する効果を有する新規な組成物を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、慢性創傷を治療するための薬剤の製造における前記組成物の使用を提供する。
【0007】
本発明の1つの実施形態によれば、慢性創傷は、糖尿病性創傷を意味する。
【0008】
本発明の1つの実施形態によれば、3つの成分の当量比、(1)抗炎症剤:(2)収斂剤:(3)冷却剤は、1:0.1~10:0.1~10である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、3つの成分の当量比、(1)抗炎症剤:(2)収斂剤:(3)冷却剤は、1:0.5~5:0.5~5である。
【0010】
本発明の特定の実施形態によれば、3つの成分の当量比、(1)抗炎症剤:(2)収斂剤:(3)冷却剤は、約1:1:1である。
【0011】
本発明の1つの実施形態によれば、抗炎症剤は、下記の式(I):
【化1】
式(I)
で示される構造を有するアクテオシドまたはその異性体である。
【0012】
本発明の1つの実施形態によれば、収斂剤は、下記の式(II):
【化2】
式(II)
で示される構造を有する没食子酸である。
【0013】
本発明の1つの実施形態によれば、収斂剤は、没食子酸の塩、好ましくはビスマス塩である。
【0014】
本発明の最良の実施形態によれば、収斂剤は、下記の式(IIa):
【化3】
式(IIa)
で示される構造を有する亜没食子酸ビスマスである。
【0015】
本発明の1つの実施形態によれば、冷却剤は、下記式(IIIa):
【化4】
式(IIIa)
で示される構造を有するボルネオールである。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば、冷却剤は、下記式(IIIb):
【化5】
式(IIIb)
で示される構造を有するメントールである。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、主に、以下の3つの成分:(1)アクテオシド、(2)亜没食子酸ビスマス、および(3)ボルネオールから構成され、任意選択で1つまたは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせられる、慢性創傷治癒に対する効果を有する医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明によれば、医薬組成物中の3つの成分の当量比、(1)アクテオシド:(2)亜没食子酸ビスマス:(3)ボルネオールは、1:0.1~10:0.1~10、好ましくは1:0.5~5:0.5~5である。
【0019】
本発明の1つの実施形態によれば、医薬組成物中の3つの成分の当量比、(1)アクテオシド:(2)亜没食子酸ビスマス:(3)ボルネオールは、約1:1:1である。
【0020】
本発明によれば、医薬組成物は、重量で(1)0.05%~10%のアクテオシド、(2)0.05%~10%の亜没食子酸ビスマス、および(3)0.02%~5%のボルネオール、ならびに薬学的に許容される担体を含む。
本発明の1つの実施形態によれば、医薬組成物は、主に、重量で(1)0.05%~10%のアクテオシドおよび(2)0.05%~10%の亜没食子酸ビスマスで構成され、ならびに薬学的に許容される担体を含む。
本発明の1つの実施形態によれば、医薬組成物は、主に、重量で(1)0.05%~10%のアクテオシドおよび(3)0.02%~5%のボルネオールで構成され、ならびに薬学的に許容される担体を含む。
本発明の1つの実施形態によれば、医薬組成物は、主に、重量で(2)0.05%~10%の亜没食子酸ビスマスおよび(3)0.02%~5%のボルネオールで構成され、ならびに薬学的に許容される担体を含む。
【0021】
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、好ましい実施形態の以下の説明および図面からより明らかになるであろう。その中に変更または修正がありうるが、それらは、本発明に開示された新規の概念の真の趣旨および範囲から逸脱しない。
【0022】
前述の説明および実施形態は、添付の図面によってよりよく説明することができる。本発明の説明を強化するために、実施形態の適切な図面が本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の組成物によって、高グルコース(20mM)環境で48時間培養されたHaCaT細胞の細胞増殖を促進した結果を示す(Con:コントロールグループ;A 16.0μM;BO 18.8μM;BSG 14.2μM;BO 18.8μM+A 16.0μM;BSG 14.2μM+A 16.0μM;BO 18.8μM+BSG 14.2μM;All(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM);*は有意差を示す、p<0.05)。
図2図2は、低グルコース(5mM)および高グルコース(25mM)環境で48時間培養されたHaCaT細胞の細胞増殖に対する、本発明の組成物の比較を示し、*は有意差を示す、p <0.05(5:5mM グルコース;25:25mM グルコース;5+All:本発明の組成物(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM)を添加した、5mM グルコース;25+All:本発明の組成物(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM)を添加した、25mM グルコース)。
図3A図3Aは、本発明の組成物(All)およびコントロールグループとともに、高グルコース(25mM)環境で48時間培養されたHaCaT細胞の細胞遊走の画像を示す(Con:コントロールグループ;BO 18.8μM;BSG 14.2μM;BO 18.8μM+A 16.0μM ;BSG 14.2μM+A 16.0μM;BO 18.8μM+BSG 14.2μM;All(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM)。
図3B図3Bは、HaCaT細胞を高グルコース(25mM)環境で48時間細胞を培養した場合の本発明の組成物(All)とコントロールグループとの間の比較ならびにコントロールグループの細胞増殖率が、他の実験グループと比較して1.0であることを示す(Con:コントロールグループ;A 16.0μM;BO 18.8μM;BSG 14.2μM;BO 18.8μM+A 16.0μM;BSG 14.2μM+A 16.0μM;BO 18.8μM+BSG 14.2μM;All(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM))。
図4図4は、IL-1βで処理されたHDF細胞における、本発明の組成物とのコントロールグループとの間の比較を示して、コラーゲンIII、MMP-1、コラーゲンIおよびTFG-βタンパク質の濃度の変化を決定する。
図5図5は、症例1(糖尿病および脳卒中患者、男性、77歳)の創傷治癒過程を示し、創傷サイズは、0日目(A)に4cm×3cm×0.5cmであり、創傷は、18日目(B)に明らかに閉鎖し始め、創傷は、33日目(C)に1.5cm×0.5cm×0.2cmであり、79日目(D)に創傷は完全に治癒した。
図6図6は、症例2(糖尿病および脳卒中患者、男性、77歳)の創傷治癒過程を示し、創傷サイズは、0日目(A)に15cm×11cm×2cmであり、創傷サイズは、75日目(B)に5.5cm×11cm×1cmであり、創傷は、103日目(C)に3cm×2cm×0.5cmであり、140日目(D)に創傷は完全に治癒した。
図7図7は、症例3(糖尿病および肺癌患者、女性、82歳)を示し、創傷サイズは、0日目(A)に2.5cm×1cm×0.5cmであり、創傷サイズは、17日目(B)に1.5cm×1cm×0.2cmであり、創傷は、90日目(D)に創傷は完全に治癒した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施形態の詳細な記載
本発明の説明で使用される用語は、一般に、当技術分野において、本発明のサマリーにおいて、および各用語が使用される特定の文脈において、それらの本来の意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される「a」という用語は、特に明記されない限り、少なくとも1つ(1つまたは複数)の量を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「慢性創傷」という用語は、所定の期間の適切な治療後、構造および外観において正常な創傷治癒が達成できない創傷を意味する。慢性創傷の種類として、長期の安静による床ずれまたは褥瘡、糖尿病性創傷潰瘍、末梢血管閉塞によって引き起こされる四肢壊疽、動静脈閉塞によって引き起こされる潰瘍、癌患者の非治癒性創傷、および急性創傷感染等によって引き起こされた慢性治癒不良が挙げられる。本発明によれば、本発明の組成物は、慢性創傷、特に糖尿病性創傷の皮膚科的創傷に対して治癒効果を有することが示される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、「治療する」または「促進する」という意味を含み、症状を改善することを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒトおよび動物、特に哺乳動物を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬物療養において一般的に使用される技術による医薬組成物の製造で一般的に使用される希釈剤、賦形剤などを意味する。本発明によれば、それは、医薬、化粧品または医療材料の形態に調製することができる。本発明によれば、それは、局所的な様式の形態、たとえば、スプレーの形態で適用することができる。スプレー形態には、スプレーおよび液体;あるいは半固体または固体形態、好ましくは水の動的粘度よりも大きい動的粘度を有する固体形態が含まれる。適切な製剤には、懸濁液、乳濁液、クリーム、軟膏、リニメントなどが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、それは軟膏の形態である。形態に関係なく、本発明の医薬組成物はまた、さまざまな用途に対するそれらの受容性を高めるために、皮膚軟化剤、香料または顔料を含みうる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、症状の管理において創傷を治療するのに有効な量を意味する。患者および傷口の必要性に応じて、一般的に使用されている技術または薬物療法の臨床知識に応じて適切な用量を使用することができ、年齢、体重、症状、治療効果、および治療時間などの治療状況に応じて調整することができる。
【0031】
本発明は、主に、以下の3つの成分:(1)アクテオシド、イソアクテオシドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗炎症剤;(2)没食子酸、亜没食子酸、それらの塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される収斂剤;および(3)ボルネオール、メントールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される冷却剤;の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され、任意選択で1つまたは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせられる、慢性創傷治癒効果を有する組成物を提供する。本発明はまた、慢性創傷、特に糖尿病性創傷を治療するための薬剤の製造における前記組成物の使用を提供する。
【0032】
本発明の実施形態によれば、本発明の組成物は、高グルコース環境培養における細胞増殖および遊走に対して有意な増強効果を有するが、単一の成分または2つの任意の組み合わせは効果を有さない。特に、本発明の組成物は、低グルコース環境下での培養には比較的効果がなく、これは、糖尿病性創傷の治癒に対する本発明の組成物の特別な効果を示し、慢性創傷治癒に対するその効果をさらに支持することができる。
【0033】
本発明によれば、適切な含有量の組成物は、一般的な従来の技術に従って調製することができ、その場合、実施例は、各成分の当量範囲を含みうる:
(1)抗炎症剤:1;
(2)収斂剤:0.1~10;好ましくは0.5~5;
(3)冷却剤:0.1~10;好ましくは0.5~5。
【0034】
本発明の特定の実施形態によれば、3つの成分の当量比、(1)抗炎症剤:(2)収斂剤:(3)冷却剤は、約1:1:1である。
【0035】
本発明の主題は、主に、以下の3つの成分:(1)アクテオシド、(2)亜没食子酸ビスマス、および(3)ボルネオールの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され、任意選択で1つまたは複数の、まだ市販されていないNuDFC7の商標を有する製品などの薬学的に許容される担体と組み合わせられる、慢性創傷治癒を治療する効果を有する医薬組成物を提供することである。
【0036】
本発明によれば、医薬組成物中の3つの成分の当量比、(1)抗炎症剤:(2))亜没食子酸ビスマス:(3)ボルネオールは、1:0.1~10:0.1~10;好ましくは1:0.5~5:0.5~5、特定の実施形態では、約1:1:1である。
【0037】
本発明によれば、医薬組成物は、(1)0.05%~10%のアクテオシド、重量で(2)0.05%~10%の亜没食子酸、(3)0.02%~5%のボルネオールおよび薬学的に許容される担体を含む。
【0038】
本発明の1つの実施形態によれば、医薬組成物は、重量で(1)0.1%~5%のアクテオシド、(2)0.06%~6%の亜没食子酸、(3)0.03%~3%のボルネオールおよび薬学的に許容される担体を含む。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、(1)0.3%~5%のアクテオシド、(2)0.5%~5%の亜没食子酸、(3)0.5%~1%のボルネオールおよび薬学的に許容される担体を含む。
【0040】
本発明によれば、該組成物は、外用医薬品形態、化粧品形態または医療材料形態を有する組成物の製造のための適切な賦形剤を含みうる。
【0041】
本発明によれば、組成物は、他の抗炎症剤、抗菌剤または他の治療剤などの治療剤をさらに含みうる。
【0042】
本発明の前述の説明および以下の実施例は、本発明を例示しているが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0043】
実施例
医薬調剤:
(1)アクテオシド(記号としてAを使用):米国Sigma-Aldrich(St. Louis、MO、USA)から購入。
(2)亜没食子酸ビスマス(記号としてBSGを使用):米国Sigma-Aldrich(St. Louis、MO、USA)から購入。
(3)ボルネオール(記号としてBOを使用):米国Sigma-Aldrich(St. Louis、MO、USA)から購入。
【0044】
本発明によれば、組成物は、以下の成分で調製されうる:
【表1】
【0045】
次の細胞実験用の本発明の組成物の各成分の含有量は、以下の通りである:
(1)アクテオシド(A) 16.0μM(0.01μg/μl)、すなわち、0.1%;
(2)亜没食子酸ビスマス(BSG) 14.2μM(0.0056μg/μl)、すなわち、0.056%;および
(3)ボルネオール(BO) 18.8μM(0.0029μg/μl)、すなわち、0.029%。
【0046】
細胞培養:
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF細胞)またはヒトケラチノサイト(HaCaT細胞)を、5%二酸化炭素および95%酸素の環境で、37℃の加湿インキュベーターにて培養し、グルコース、10%ウシ胎児血清、100 IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、2mMピルビン酸ナトリウムおよび1%非必須アミノ酸(NEAA)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に入れた。培地は2日ごとに交換した。継代培養のために、細胞を回収し、0.1%トリプシン-EDTA混合物に曝露した後、1:10希釈で再培養した。研究で使用された細胞は、12から40継代の範囲であった。薬物処理の24時間前に、細胞を播種し、24時間放置した。コントロールグループを培地で維持し、薬物を補充した。この培養条件下では、細胞の増殖および分化は、影響を受けない。
【実施例1】
【0047】
細胞増殖アッセイ
HaCaT細胞を12ウェル培養皿で25mMグルコースを標準添加し、3×105にて48時間培養した。細胞増殖と生存率をCCK-8試薬キットで分析した(同仁化学研究所、熊本、日本)。5μLのCCK-8溶液を各ウェルに加え、37℃にて1時間インキュベートした後、分光光度計マイクロプレートリーダー(SpectraMax、Molecular Device、USA)を使用して450nmにおける吸光度を測定した。実験結果を、サンプルの値をコントロールグループの値と比較することによって分析した。試験した実験グループは、以下の通りである:
(1)Con:コントロールグループ;
(2)A 16.0μM;
(3)BO 18.8μM;
(4)BSG 14.2μM;
(5)BO 18.8μM+A 16.0μM;
(6)BSG 14.2μM+A 16.0μM;
(7)BO 18.8μM+BSG 14.2μM;
(8)All(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM)。
【0048】
48時間の培養後の細胞増殖の結果を図1に示す。結果は、本発明の組成物(All;A16.0μM+BO18.8μM+BSG14.2μM)が最良であり、細胞増殖を促進するという予想外に有意な効果を提供する(p <0.05)が、単一の成分は効果がないか、または任意の2つの組み合わせは3つの組み合わせよりも効果が低くなることを示す。
【実施例2】
【0049】
低グルコース環境および高グルコース環境での細胞培養分析の比較(細胞増殖アッセイでの比較)
HaCaT細胞を12ウェル培養皿で5mMおよび25mMグルコースを添加し、3×105にて48時間培養し、本発明の組成物(All:A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM)を添加して、細胞増殖を観察した。
【0050】
48時間培養後の細胞増殖の結果を図2に示す。結果は、本発明の組成物(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM)が高グルコース培養(25mM)における細胞増殖に有意な相乗効果を有するが、低グルコース培養(5mM)では細胞増殖に有意な効果がないことを示す。
【実施例3】
【0051】
細胞遊走アッセイ
HaCaT細胞を24ウェル培養皿で25mMグルコースを添加し、1×105にて48時間培養し、以下の薬剤を添加して、細胞遊走状態を観察した:
Con:コントロールグループ;
BO 18.8μM+A 16.0μM;
BSG 14.2μM+A 16.0μM;
BO 18.8μM+BSG 14.2μM;
All:A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM。
【0052】
48時間の培養後の各グループの細胞遊走結果の画像を図3Aに示す。コントロールグループの結果は、図3Bの他のグループと比較するために1とみなされ、結果は、本発明の組成物(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM)は、高グルコース培養(25mM)において細胞遊走を促進する効果を有するが、BO 18.8μM、BSG 14.2μM、または3つの成分うちの任意の2つの組み合わせは、促進効果を有さないことを示す。本発明の組成物は、糖尿病性創傷治癒に対して予想外の治療効果を有し、これは、慢性創傷治癒に対するその効果をさらに支持すると推測することができる。
【実施例4】
【0053】
炎症反応の実験的分析
IL-1β誘発性炎症反応の阻害の分析
培養HDF細胞(1×105/ウェル)に細胞炎症性因子IL-1β(10ng/mL)を補充して、これらの薬剤によるIL-1β誘発性炎症の抑制を評価した。細胞を24ウェル培養皿で48時間培養し、同時に以下の薬剤を添加して、炎症によってアップレギュレートされるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP-1またはMMP-9など);および炎症によってダウンレギュレートされるTGF-β因子とその下流のシグナル伝達経路によって制御されるコラーゲン(コラーゲンIまたはコラーゲン9)の発現など、炎症状態の細胞がタンパク質の発現にどのように影響するかを観察した:
Con:コントロールグループ(IL-1β処理なし);
Con:コントロールグループ(IL-1β処理);
BO:18.8μM;
BSG:14.2μM;
A:16.0μM;
BO+A:BO 18.8μM+A 16.0μM;
BSG+A:BSG 14.2μM+A 16.0μM;
BO+BSG:BO 18.8μM+BSG 14.2μM;
All:BO 18.8μM+BSG 14.2μM+16.0μM。
【0054】
結果を図4に示す。結果は、IL-1βを添加することによって誘発される炎症反応下でのタンパク質分泌量に対する各成分およびその組み合わせの効果を示す。3つの成分の組み合わせは、TGF-β因子とその下流のコラーゲン(コラーゲンIとコラーゲンIII)に対して明らかな促進効果を示し、炎症によって誘発されるMMP-1に対して明らかな抑制効果を示し、3成分の組み合わせが、2成分のどちらかの成分またはその組み合わせよりも創傷治癒にはるかに効果的であることを示す。
【実施例5】
【0055】
ヒトの臨床結果
本発明の組成物(A 16.0μM+BO 18.8μM+BSG 14.2μM)を、創傷治癒を観察するために異なる患者に毎日適用した。3人の患者の創傷治癒の結果を、図5、6、および7に示し、以下の通り照合する。
【0056】
(1)症例1
糖尿病および脳卒中患者、男性、77歳。治療後、左踵の創傷の治癒過程の写真を図5に示す。0日目(A)、元の創傷サイズは4cm×3cm×0.5cmであった。治療後、18日目(B)に明らかに傷口が閉鎖し始め、33日目(C)に1.5cm×0.5cm×0.2cmに縮小し、79日目(D)に完全に治癒した。これは、本発明の組成物が糖尿病性創傷に対して明らかな治療効果を有することを示す。
【0057】
(2)症例2
糖尿病患者、男性、77歳。治療後、右踵の傷の治癒過程中の写真を図6に示す。元の創傷サイズは、0日目(A)で15cm×11cm×2cmであったが、治療後75日目(B)で5.5cm×11cm×1cmに縮小し、103日目(C)に創傷が治癒し、そのサイズ3cm×2cm×0.5 cmであり、140日目(D)に創傷は完全に治癒した。これは、本発明の組成物が糖尿病性創傷に対して明らかな治療効果を有し、治療が進行中であることを示す。
【0058】
(3)症例3
糖尿病および肺癌患者、女性、82歳、長時間寝たきりで褥瘡あり。治療後、創傷治癒過程中の写真を図7に示す。0日目(A)、元の創傷サイズは、2.5cm×1cm×0.5 cmであったが、治療後17日目(B)、創傷は明らかに閉鎖し始め、創傷は1.5cm×1cm×0.2 cmに縮小し、創傷は90日目(C)に完全に治癒した。これは、本発明の組成物が褥瘡に対して有意な治療効果を有することを示す。
【0059】
本発明は、好ましい実施形態とともに上記に開示されるが、本発明を限定することを意図するものではない。当技術分野の当業者であれば誰でも、本発明の特許請求の範囲によって定義される保護範囲に属する本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく変更および修正を行うことができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7