(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】フィルム、フィルムの製造方法、カバーフィルム及び多重層電子装備
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240909BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240909BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240909BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240909BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B32B27/34
B32B7/022
B32B27/00 M
G09F9/00 313
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2022537679
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2020019212
(87)【国際公開番号】W WO2021153914
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0011176
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0136899
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、グァンホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、クォンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】吉武 篤史
(72)【発明者】
【氏名】メルツリク セバスチャン
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/145324(WO,A1)
【文献】特開2019-099626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B32B
G09F 9/00-9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層を含み、
前記弾性層は、
脂肪族ポリアミド、またはポリエーテルブロックアミド(polyether block amide、PEBA)
を含み、
前記弾性層は、下記式1で表される貯蔵モジュラス指数K
SMが20~350Mpaであり、
前記弾性層の一面の表面粗さRa1値と他面の表面粗さRa2値のうち大きい値は、0.001~0.1μmであり、
前記弾性層は、ヘイズが3%以下である、フィルム。
[式1]
前記式1において、SM
nは、温度n℃で測定した貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【請求項2】
前記弾性層は、常温での貯蔵モジュラスが3GPa以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記弾性層は、20℃での貯蔵モジュラスを基準とする80℃での貯蔵モジュラスの比率が0.08以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記弾性層は、-40℃での貯蔵モジュラスと20℃での貯蔵モジュラスとの差が-1500~+1500MPaである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記弾性層は、0℃での貯蔵モジュラスが20~2500Mpaである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記弾性層は、80℃での貯蔵モジュラスが5Mpa以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
前記弾性層は、厚さが2000μm未満である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
前記弾性層は、下記式2で表されるリカバリー力指数Rvが50超である、請求項1に記載のフィルム。
[式2]
前記式2において、Xoは、初期の弾性層の長さ(mm)であり、X
2%は、弾性層を2%引っ張った後の長さ(mm)であり、Xfは、50mm/minの速度で2%引っ張った後、再び50mm/minの速度で元の長さに復元することを1サイクルとして、100回のサイクル後の弾性層の長さ(mm)である。
【請求項9】
弾性層を含み、
前記弾性層は、
脂肪族ポリアミド、またはポリエーテルブロックアミド(polyether block amide、PEBA)
を含み、
前記弾性層の一面の表面粗さRa1値と他面の表面粗さRa2値のうち大きい値は、0.001~0.1μmであり、
前記弾性層は、下記式2で表されるリカバリー力指数Rvが50超である、フィルム。
[式2]
前記式2において、Xoは、初期の弾性層の長さ(mm)であり、X
2%は、弾性層を2%引っ張った後の長さ(mm)であり、Xfは、50mm/minの速度で2%引っ張った後、再び50mm/minの速度で元の長さに復元することを1サイクルとして、100回のサイクル後の弾性層の長さ(mm)である。
【請求項10】
前記フィルム又は前記弾性層は、280~360nmの波長の紫外線に3.0Wの出力で72時間露出された後の黄色度から、露出される前の黄色度を減じた値が2以下である、請求項9に記載のフィルム。
【請求項11】
前記弾性層は、繰り返し単位としてアミド残基を含む高分子を含む、請求項9に記載のフィルム。
【請求項12】
前記弾性層は、2500kJ/m
2以上の衝撃強度、または1.4J以上の吸収エネルギーを有する、請求項9に記載のフィルム。
【請求項13】
前記弾性層は、耐熱層上に配置される、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記耐熱層は、ポリイミド層またはガラス層を含み、
前記耐熱層のヘイズは3%以下である、請求項13に記載のフィルム。
【請求項15】
前記耐熱層の片面または両面に配置される粘着層をさらに含み、
前記粘着層は、-40℃での貯蔵モジュラスと80℃での貯蔵モジュラスとの差が-100~+100kPaである、請求項13に記載のフィルム。
【請求項16】
2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げ頻度の条件で20万回の動的折り畳み試験を行った後にも浮き上がりが発生しない、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
繰り返し単位としてアミドまたはその残基を含む高分子樹脂から弾性シートとして形成するステップと、
キャリアフィルム上に前記弾性シートが配置された第1組立体をローラ間に通過させて、前記キャリアフィルム上に位置する弾性層を含む第2組立体を設けるステップとを含んで、
請求項1又は9に記載のフィルムを製造する、フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記キャリアフィルムは、前記弾性シートと接する面の表面粗さが0.01μm以下である、請求項17に記載のフィルムの製造方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルムを含む、カバーフィルム。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルムをカバーフィルムとして含む、多重層電子装備。
【請求項21】
発光機能層及び前記カバーフィルムを含み、
前記発光機能層は、外部の信号に従って光を放出するかまたは放出しない表示領域を有し、
前記カバーフィルムは、前記発光機能層の一面上に配置され、前記表示領域の少なくとも一部を覆う、請求項20に記載の多重層電子装備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、広い温度範囲で実質的に低い貯蔵モジュラスの変化、優れた弾性回復力などの優れた機械的特性、低いヘイズなどの優れた光学的特性などを有するフィルム、フィルムの製造方法、カバーフィルム、多重層電子装備などに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ機器の形態が多様化され、要求される機能が変化しており、次第にさらに広い画面にさらに薄く、機能化された形態への進化が進行中である。ディスプレイの形態も、既存の平板状から湾曲(Curved)状に進化した後、フォルダブル(foldable)、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)などに変化している。すなわち、最近のディスプレイの形態は、折り畳みや曲げのように形態的な変化が可能であるという点で、単に大面積化の方向に進化していた既存と異なる形態に変化している。
【0003】
ディスプレイ画面保護用フィルムとして、機械的物性、耐薬品性、水分遮断性などの特性に優れたPETフィルムが広く使用されている。光学的特性が向上して偏光板の保護フィルムとして適用可能なポリエステル保護フィルム(大韓民国登録特許第10-1730854号)、タッチパネルに適用可能な保護フィルム(大韓民国登録特許第10-1746170号)などがその例示である。しかし、PETフィルムは、モジュラスが高いため、曲面や曲げ部で求められる特性を満たせないことがあり、これは、多層構造のディスプレイ機器においてフィルムが浮き上がる現象を発生させる原因の一つとなり得る。
【0004】
また、PETフィルムは、既存に携帯用電子機器に装着された表示装置の表示モジュールを保護するために使用していた固いガラスと比較して、衝撃緩和特性(外部の衝撃から表示モジュールなどの内部装置を保護する機能)が弱いため、十分な保護機能を行うには限界がある。
【0005】
前述した背景技術は、発明者が本発明の具現例を導出するために保有していた、またはその過程で習得した技術情報であって、必ずしも本出願前に一般公衆に公開された公知技術であるとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一具現例の目的は、広い温度範囲で実質的に低い貯蔵モジュラスの変化、優れた弾性回復力などの優れた機械的特性、低いヘイズなどの優れた光学的特性などを有するフィルム、前記フィルムの製造方法を提供することである。
【0007】
他の一具現例の目的は、前記フィルムを含むことで、広い温度範囲で実質的に低い貯蔵モジュラス、及び優れた弾性回復力などの優れた機械的物性を有することによって、層分離が実質的に発生しないので、多層電子装置のカバーウィンドウなどに適用するのに有利なカバーフィルムを提供することである。
【0008】
他の一具現例の目的は、前記フィルムのフォルダブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどのカバーウィンドウとしての用途を提供することである。
【0009】
他の一具現例の目的は、光学的特性に優れ、繰り返されるベンディング又はローリングにも層間の分離が発生せず、外部衝撃に強い特徴を有する前記カバーフィルムを含む多重層電子装置を提供することである。
【0010】
他の一具現例の目的は、多重層電子装置内で適用される上述したフィルムのカバーフィルムとしての用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための具現例であるフィルムは弾性層を含む。
【0012】
前記弾性層は、下記式1で表される貯蔵モジュラス指数KSMが20~350Mpaであってもよい。
【0013】
【0014】
前記式1において、SMnは、温度n℃で測定した貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0015】
前記弾性層は、下記式2で表されるリカバリー力指数Rvが50超であってもよい。
【0016】
【0017】
前記式2において、Xoは、初期の弾性層の長さ(mm)であり、X2%は、弾性層を2%引っ張った後の長さ(mm)であり、Xfは、50mm/minの速度で2%引っ張った後、再び50mm/minの速度で元の長さに復元することを1サイクルとして、100回のサイクル後の弾性層の長さ(mm)である。
【0018】
前記弾性層は、ヘイズが3%以下であってもよい。
【0019】
前記弾性層は、常温での貯蔵モジュラスが3GPa以下であってもよい。
【0020】
前記弾性層は、20℃での貯蔵モジュラスを基準とする80℃での貯蔵モジュラスの比率が0.08以上であってもよい。
【0021】
前記弾性層は、-40℃での貯蔵モジュラスと20℃での貯蔵モジュラスとの差が-1500~+1500MPaであってもよい。
【0022】
前記弾性層は、0℃での貯蔵モジュラスが20~2500Mpaであってもよい。
【0023】
前記弾性層は、80℃での貯蔵モジュラスが5Mpa以上であってもよい。
【0024】
前記弾性層は、厚さが2000μm未満であってもよい。
【0025】
粗さ基準値は、一面の表面粗さRaの値であるRa1及び他面の表面粗さRaの値であるRa2のうちの大きい値である。
【0026】
前記弾性層は、0.5μm以下の粗さ基準値を有することができる。
【0027】
前記フィルム又は前記弾性層は、280~360nmの波長の紫外線に3.0Wの出力で72時間露出された後の黄色度から、露出される前の黄色度を減じた値が2以下であってもよい。
【0028】
前記弾性層は、繰り返し単位としてアミド残基を含む高分子を含むことができる。
【0029】
前記弾性層は、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド(polyether block amide、PEBA)、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)、ポリエーテルエステル共重合体(copolyetherester、COPE)、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0030】
前記弾性層は、2500kJ/m2以上の衝撃強度を有することができる。
【0031】
前記弾性層は、1.4J以上の吸収エネルギーを有することができる。
【0032】
前記弾性層は、耐熱層上に配置されてもよい。
【0033】
前記耐熱層は、ポリイミド層またはガラス層を含むことができる。
【0034】
前記耐熱層のヘイズは3%以下であってもよい。
【0035】
前記フィルムは、前記耐熱層の片面または両面に配置される粘着層をさらに含むことができる。
【0036】
前記粘着層は、-40℃での貯蔵モジュラスと80℃での貯蔵モジュラスとの差が-100~+100kPaであってもよい。
【0037】
前記フィルムは、2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げ頻度の条件で20万回の動的折り畳み試験を行った後にも浮き上がりが発生しないものであってもよい。
【0038】
前記フィルムは、2500kJ/m2以上の衝撃強度を有することができる。
【0039】
前記フィルムは、1.4J以上の吸収エネルギーを有することができる。
【0040】
具現例に係るフィルムの製造方法は、繰り返し単位としてアミドまたはその残基を含む高分子樹脂から弾性シートとして形成するステップと;キャリアフィルム上に前記弾性シートが配置された第1組立体をローラ間に通過させて、前記キャリアフィルム上に位置する弾性層を含む第2組立体を設けるステップと;を含んで、上述したフィルムを製造する。
【0041】
前記キャリアフィルムは、前記弾性シートと接する面の表面粗さが0.01μm以下であってもよい。
【0042】
具現例に係るカバーフィルムは、上述したフィルムを含む。
【0043】
具現例に係る多重層電子装備は、上述したカバーフィルムを含む。
【0044】
前記多重層電子装備は、発光機能層及び前記カバーフィルムを含むことができる。
【0045】
前記発光機能層は、外部の信号に従って光を放出するかまたは放出しない表示領域を有することができる。
【0046】
前記カバーフィルムは、前記発光機能層の一面上に配置され、前記表示領域の少なくとも一部を覆うことができる。
【発明の効果】
【0047】
具現例のフィルム、フィルムの製造方法などは、広い温度範囲で実質的に低い貯蔵モジュラスの変化、優れた弾性回復力などの優れた機械的特性、低いヘイズなどの優れた光学的特性などを有するフィルム、フィルムの効率的な製造方法などを提供することができる。
【0048】
具現例のカバーフィルム、多重層電子装備などは、前記フィルムを含むことで、広い温度範囲でも優れたベンディング及びローリング特性を有し、低いヘイズなど光学的特性に優れ、弾性回復力に優れ、外部衝撃による損傷の抑制効果なども優れたカバーフィルム、多重層電子装備などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】(a)、(b)、(c)は、それぞれ具現例に係るフィルムを断面で説明する概念図である。
【
図2】(a)、(b)、(c)は、それぞれ具現例に係るフィルムを断面で説明する概念図である。
【
図3】フィルムの製造方法を説明する概念図である。
【
図4】具現例に係る多重層電子装備の構成を断面で説明する概念図である。
【
図5】(a)、(b)、(c)は、それぞれ具現例に係る多重層電子装備の構成を断面で説明する概念図である。
【
図6】具現例に係る多重層電子装備の構成を断面で説明する概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同一の図面符号を付した。
【0051】
本明細書において、ある構成が他の構成を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、それ以外の他の構成を除くものではなく、他の構成をさらに含むこともできることを意味する。
【0052】
本明細書において、ある構成が他の構成と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「それらの間に他の構成を介在して連結」されている場合も含む。
【0053】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上に直接当接してBが位置するか、またはそれらの間に他の構成が位置しながらA上にBが位置することを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0054】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0055】
本明細書全体において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味する。
【0056】
本明細書全体において、「第1」、「第2」又は「A」、「B」のような用語は、特に説明がない限り、同一の用語を互いに区別するために使用される。
【0057】
本明細書において、単数の表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数又は複数を含む意味で解釈される。
【0058】
本明細書において、貯蔵モジュラスは、ASTM D4065に準拠して、TAインスツルメント社のDMA Q800モデルを適用して貯蔵弾性率(Storage Modulus、E')を測定したものを基準として説明する。前記装置はDMA(Dynamic Mechanical Analysis)テンションモード(tension mode)で1Hz、2℃/minを適用し、温度区間(-40~80℃)において貯蔵弾性率(E')をMpa単位で測定した結果を基準として説明する。
【0059】
本明細書において、化合物の名称と共に併記された文字及び/又は数字は、化合物の名称に対する略語を意味する。
【0060】
本明細書において、図面に表示された構成の相対的な大きさ、厚さなどは、容易な説明を目的として誇張して表示され得る。
【0061】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0062】
具現例の発明者らは、高分子樹脂を適用して同じ厚さでフィルム状の弾性層を製造しても、その製造過程によって弾性層のヘイズ値などに大きな差が生じ得るという点を実験的に確認した。また、同じ高分子樹脂を適用する場合にも、製造過程によって弾性層のヘイズ値などの光学特性に差が発生するという点を実験的に確認した。発明者らは、フォルダブル又はローリングディスプレイのカバーウィンドウのような多重層電子装備の表示領域に適用可能な、光学的特性、モジュラス特性などがいずれも優れたフィルムなどを製造し、これについて具体的に説明する。
【0063】
図1の(a)、(b)、(c)は、それぞれ具現例に係るフィルムを断面で説明する概念図であり、
図2の(a)、(b)、(c)は、それぞれ具現例に係るフィルムを断面で説明する概念図であり、
図3は、フィルムの製造方法を説明する概念図である。
図1乃至
図3を参照して、フィルムに含まれる弾性層、フィルム、そして、フィルムの製造方法を説明する。
【0064】
前記目的を達成するために、一具現例に係るフィルム190は弾性層100を含む。
【0065】
弾性層100
弾性層100は、優れた光学的特性を有する。
【0066】
弾性層100は、ヘイズが3%以下であってもよく、または2%以下であってもよい。前記弾性層100は、ヘイズが1.5%以下であってもよく、または1.2%以下であってもよい。前記弾性層100は、ヘイズが0.01%以上であってもよく、または0.1%以上であってもよい。弾性層が、前記のようなヘイズを有する場合、ディスプレイ装置の表示領域に適用するのに良い。
【0067】
弾性層100は、可視光線透過度が85%以上であってもよく、88%以上であってもよく、または90%以上であってもよい。前記弾性層は、可視光線透過度が99.99%以下であってもよい。このような特徴を有する前記弾性層100またはこれを含むフィルム190は、電子機器の保護層(又はカバーウィンドウ)に適用するのに有利である。
【0068】
弾性層100は、上述した光学的特徴を有すると共に、以下で説明する貯蔵モジュラスに関連する特徴を共に有することができる。
【0069】
弾性層100は、下記式1で表される貯蔵モジュラス指数が20~350MPaである。
【0070】
【0071】
前記式1において、KSMは、前記弾性層の貯蔵モジュラス指数であり、SMnは、温度n℃で測定した前記弾性層の貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0072】
例えば、SM-40は、温度-40℃で測定した弾性層の貯蔵モジュラス(Mpa)であり、SM20は、温度20℃で測定した弾性層の貯蔵モジュラス(Mpa)であり、SM80は、温度80℃で測定した弾性層の貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0073】
弾性層が上述した値の貯蔵モジュラス指数を有する場合、相対的に広い温度範囲で比較的安定した貯蔵モジュラスの変化の度合いを有するので、広い温度範囲で安定した弾性特性を有することができる。
【0074】
弾性層100は、室温又は常温で貯蔵モジュラスが3GPa以下であってもよい。前記弾性層は、室温又は常温で貯蔵モジュラスが2GPa以下であってもよい。本明細書において、室温は約20℃を、常温は約25℃を基準とする。
【0075】
前記弾性層100は、室温又は常温での貯蔵モジュラス値が、PETフィルムなどと比較して相対的に低いという特徴を有する。このような特徴により、前記弾性層またはこれを含むフィルムは、より安定したベンディング特性を有することができ、外部から加えられる衝撃が裏面に配置される物品に伝達される程度をさらに緩和することができる。
【0076】
前記弾性層100は、高温貯蔵モジュラスの比率R80/20が0.08以上であってもよい。前記高温貯蔵モジュラスの比率R80/20は、20℃での貯蔵モジュラスを基準とする80℃での貯蔵モジュラスの比率であって、下記式1-aで表される。
【0077】
【0078】
前記式1-aにおいて、
R80/20は、高温貯蔵モジュラスの比率であり、SMnは、温度n℃で測定した前記弾性層の貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0079】
前記弾性層100は、R80/20が0.08以上であってもよく、0.10以上であってもよく、または0.15以上であってもよい。前記弾性層は、R80/20が0.20以上であってもよく、または0.25以上であってもよい。前記弾性層は、R80/20が1以下であってもよく、または0.85以下であってもよい。前記弾性層は、R80/20が0.7以下であってもよく、または0.55以下であってもよい。
【0080】
このような範囲のR80/20を有する弾性層は、広い温度範囲で反復的なベンディングが行われるベンダブルカバーウィンドウなどに適用するのに有利である。この特徴は、前記弾性層が前記弾性層以外の他の層と弾性層を共に積層したときにさらに有利である。具体的には、前記特徴を有する弾性層を適用する場合、各層間の温度による貯蔵モジュラスの差によって発生する物性の低下を制御することが比較的容易である。また、前記弾性層は、常温又は室温だけでなく高温でも制御可能な範囲内の優れた弾性特性を有する。
【0081】
弾性層100は、R80/20が0.15~0.55であってもよい。前記弾性層は、R80/20が0.25~0.55であってもよい。このような場合、粘着層などを用いて前記弾性層と他の構成が接合された後にも安定した弾性層の物性を有すると同時に、常温だけでなく高温でも剥離現象、浮き上がり現象などの発生を実質的に制御することができる。
【0082】
弾性層100は、低温貯蔵モジュラスの比率R-40/20が1.15以上であってもよい。前記低温貯蔵モジュラスの比率R-40/20は、20℃での貯蔵モジュラスを基準とする-40℃での貯蔵モジュラスの比率であって、下記式1-bで表される。
【0083】
【0084】
前記式1-bにおいて、
R-40/20は、低温貯蔵モジュラスの比率であり、
SMnは、温度n℃で測定した前記弾性層の貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0085】
弾性層100は、R-40/20が1.20以上であってもよく、または1.33以上であってもよい。前記弾性層は、R-40/20が20以下であってもよく、または10以下であってもよい。前記弾性層は、R-40/20が4.9以下であってもよく、または4.5以下であってもよい。
【0086】
このような範囲のR-40/20を有する弾性層は、広い温度範囲で反復的なベンディングが行われるベンダブルカバーウィンドウなどに適用するのに有利である。この特徴は、前記弾性層が前記弾性層以外の他の層と弾性層を共に積層したときにさらに有利である。具体的には、前記特徴を有する弾性層を適用する場合、各層間の温度による貯蔵モジュラスの差によって発生する物性の低下を制御することが比較的容易である。また、前記弾性層は、常温又は室温だけでなく低温でも制御可能な範囲内の優れた弾性特性を有する。
【0087】
弾性層100は、R-40/20が1.22~4.50であってもよい。前記弾性層は、R-40/20が1.22~3.8であってもよい。前記弾性層は、R-40/20が1.22~3.0であってもよい。このような場合、粘着層などを用いて前記弾性層と他の構成が接合された後にも安定した弾性層の物性を有すると同時に、常温だけでなく低温でも剥離現象、浮き上がり現象などの発生を実質的に抑制することができる。
【0088】
低温貯蔵モジュラスの差は、-40℃での貯蔵モジュラスと20℃での貯蔵モジュラスとの差であって、下記式1-cで表される。
【0089】
【0090】
前記式1-cにおいて、
D-40-20は、低温貯蔵モジュラスの差であり、
SMnは、温度n℃で測定した前記弾性層の貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0091】
弾性層100は、D-40-20が-1500MPa~1500MPaであってもよい。前記弾性層は、D-40-20が-1000MPa~1000MPaであってもよい。前記弾性層のD-40-20が1500MPaを超える場合には、室温と低温での貯蔵モジュラスの差が比較的大きいため、実質的に低温で弾性特性が不十分となり得、曲げなどの変形により割れ、裂けなどの非可逆的な変形が発生することがある。好ましくは、前記弾性層のD-40-20が1000MPa以下であってもよい。
【0092】
弾性層100は、-40℃貯蔵モジュラスが2300Mpa以下であってもよく、または2000Mpa以下であってもよい。前記弾性層は、-40℃貯蔵モジュラスが200Mpa以上であってもよく、400Mpa以上であってもよく、または500Mpa以上であってもよい。
【0093】
弾性層100は、0℃貯蔵モジュラスが2500Mpa以下であってもよく、または2000MPa以下であってもよい。前記弾性層は、0℃貯蔵モジュラスが20Mpa以上であってもよく、または150MPa以上であってもよい。前記弾性層は、0℃貯蔵モジュラスが180~1200MPaであってもよい。
【0094】
弾性層100は、40℃貯蔵モジュラスが10Mpa以上であってもよく、または90Mpa以上であってもよい。前記弾性層は、40℃貯蔵モジュラスが3000MPa以下であってもよく、または2000MPa以下であってもよい。前記弾性層は、40℃貯蔵モジュラスが100~1200MPaであってもよい。
【0095】
弾性層100は、80℃貯蔵モジュラスが4Mpa以上であってもよく、または20MPa以上であってもよい。前記弾性層は、80℃貯蔵モジュラスが2000MPa以下であってもよく、または1000MPa以下であってもよい。前記弾性層は、80℃貯蔵モジュラスが40~950MPaであってもよく、または60~350MPaであってもよい。
【0096】
弾性層100は、80℃での貯蔵モジュラスと-40℃での貯蔵モジュラスとの差が-1000MPa~1000MPaであってもよい。前記差は、便宜上、大きい値から小さい値を引いたものであって、絶対値として示すことができ、このとき、前記差は1000MPaであってもよい。前記特徴を有する弾性層は、高温から低温の広い温度範囲で比較的小さい貯蔵モジュラスの差を有するので、非常に広い温度範囲で安定した貯蔵モジュラスの特性を示すことができる。
【0097】
上述した温度別の貯蔵モジュラスの特性を有する弾性層100は、室温又は常温だけでなく、低温から高温に至る非常に広い温度範囲で適切な貯蔵モジュラスの値及び/又は変化の程度を有する。
【0098】
前記弾性層100単独でまたは他の層と共に物品(多重層電子装置など)に適用されてベンディング、ローリングなどの変形が繰り返して行われても、優れた原形回復特性を有すると同時に、外部の衝撃などから物品を適切に保護することができる。
【0099】
弾性層100は、下記式2で表されるリカバリー力指数Rvが50超であってもよい。
【0100】
【0101】
前記式2において、
Xoは、初期の弾性層の長さ(mm)であり、
X2%は、弾性層を2%引っ張った後の長さ(mm)であり、
Xfは、50mm/minの速度で2%引っ張った後、再び50mm/minの速度で元の長さに復元することを1サイクルとして、100回のサイクル後の弾性層の長さ(mm)である。
【0102】
リカバリー力指数のテストは、弾性層を固定するためのジグのような固定部を弾性層の両末端に適用する。前記初期の弾性層の長さと前記サイクル後の弾性層の長さは、実際に引っ張りが繰り返された長さを意味するので、上述したXo、X2%及びXfは、それぞれ、固定部の間の弾性層の長さである。
【0103】
弾性層100のRvは55以上であってもよく、60以上であってもよく、または68以上であってもよい。前記弾性層のRvは100未満であってもよく、または99以下であってもよい。前記弾性層のRvは95以下であってもよく、または90以下であってもよい。
【0104】
弾性層のRvが上述した範囲である場合、前記弾性層は、繰り返された引張後にも、優れた回復特性を有することができ、特に、曲げ(bending)のように比較的短い長さで繰り返される引張-復元にも、初期の弾性層が有する物性及び長さを実質的に良好に維持できる弾性回復耐久性を有する。
【0105】
弾性層のRv値は、100μmの厚さのフィルム状の弾性層を、別途のキャリアフィルムや支持層を適用せずに単独で評価装置の固定部(例示:ジグ)に固定した後に評価した結果を基準とするが、これに限定されるものではなく、これと同等であると認められる評価による測定値もRv値として認められ得る。
【0106】
弾性層100は、2500kJ/m2以上の衝撃強度を有してもよく、3500kJ/m2以上の衝撃強度を有してもよく、または4500kJ/m2以上の衝撃強度を有してもよい。弾性層100は、5000kJ/m2以上の衝撃強度を有することができ、10000kJ/m2以下の衝撃強度を有することができる。このような特徴を有する弾性層は、外部の衝撃を良好に吸収し、容易に破損又は損傷されないので、カバーフィルムへの活用度に優れる。
【0107】
弾性層100は、1.4J以上の吸収エネルギーを有してもよく、または1.5J以上の吸収エネルギーを有してもよい。弾性層100は、1.6J以上の吸収エネルギーを有することができ、2.0J以下の吸収エネルギーを有することができる。このような特徴を有する弾性層は、外部の衝撃を良好に吸収してフィルム自体が容易に損傷しないと共に、保護する内部への衝撃伝達の程度を緩和してカバーフィルムへの活用度に優れる。
【0108】
前記衝撃強度及び前記吸収エネルギーは、それぞれ、JIS K 7160に準拠して弾性層の引張衝撃強度(tensile-impact strength)を評価した結果を基準とし、具体的な測定条件は、以下の実験実施例で提示されたものを基準とする。
【0109】
弾性層100は、厚さが一定に制御されたフィルム状であってもよい。
【0110】
弾性層100は、厚さが一定に制御された押出フィルム状であってもよい。
【0111】
弾性層100は、後述する他の層と共に積層されて積層フィルムに含まれ得る。
【0112】
前記で"厚さが一定に制御された"という意味は、予め定められた厚さの-5%~+5%の範囲を有するように調節された厚さを有するということを意味する。
【0113】
弾性層100は、2000μm未満の厚さを有することができる。前記弾性層の厚さは1500μm以下であってもよく、または1000μm以下であってもよい。前記弾性層の厚さは1μm以上であってもよい。前記弾性層の厚さは50μm~300μmであってもよい。
【0114】
前記のような厚さを有するフィルム状の弾性層100は、上述した貯蔵モジュラスの特性を有すると同時に、優れた光学的特性も有するので、ディスプレイ装置のカバーフィルムなどに適用するのに良い。
【0115】
弾性層100の表面は、所定レベル以下の低い表面粗さを有する。
【0116】
弾性層の表面粗さは、表面粗さそれ自体でも技術的な意味を有することができるが、光学的特性などの他の特性と関連付けられて弾性層の物性に影響を及ぼすこともある。発明者らは、弾性層の表面粗さは、フィルムの光学的特性、特にヘイズ特性を一定レベル以下に維持することに影響を及ぼし得るという点を確認した。
【0117】
粗さ基準値は、一面の表面粗さRaの値であるRa1及び他面の表面粗さRaの値であるRa2のうちの大きい値である。
【0118】
弾性層100の粗さ基準値は0.5μm以下であってもよい。
【0119】
弾性層100の粗さ基準値は0.5μm未満であってもよく、0.2μm以下であってもよく、または0.1μm以下であってもよい。前記弾性層の粗さ基準値は0μm超であってもよく、0.0001μm以上であってもよく、または0.001μm以上であってもよい。
【0120】
弾性層の粗さ基準値が一定レベル以下に制御される場合、弾性層の光学的特性、特にヘイズ特性がさらに向上することができる。
【0121】
弾性層100の粗さ基準値は0.001~0.1μmであってもよい。前記弾性層の粗さ基準値は0.0015~0.05μmであってもよい。このような粗さ基準値を有する弾性層は、ヘイズなどの光学的特性がより優れ、光学フィルムへの活用度に優れる。
【0122】
例示的に、弾性層の一面は、後述するキャリアフィルム92と接する面であり、弾性層の他面は、別途のシート保護フィルム94又は製造過程でロール型装置(例示:スクイージングロール)と接する面であってもよい。
【0123】
前記Ra1と前記Ra2は、弾性層の製造過程で前記弾性シートの一面または他面とそれぞれ接するキャリアフィルムとロール型装備(又はシート保護フィルム)の表面粗さを調節して制御され得る。
【0124】
例示的に、前記キャリアフィルムの表面粗さRaが0.8~1.2μmの範囲であれば、前記弾性層の一面の表面粗さRaの値であるRa1が0.8~1.2μmであり得る。
【0125】
例示的に、前記ロール型装備の表面粗さRaが0.01~0.5μmの範囲であれば、前記弾性層の他面の表面粗さRaの値であるRa2が0.01~0.5μmの範囲であり得る。
【0126】
例示的に、前記シート保護フィルムの表面粗さRaが0.01~0.5μmの範囲であれば、前記弾性層の他面の表面粗さRaの値であるRa2が0.01~0.5μmの範囲であり得る。
【0127】
前記キャリアフィルム92はPET(Polyethylene Terephthalate)フィルムが適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0128】
前記シート保護フィルム94はPE(Polyethylene)フィルムが適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0129】
弾性層100は20~75、具体的に30~70のショアD硬度を有することができる。これは、カバーフィルムに適用するのに適切な強度を示し、弾性特性と共に、フィルムに優れた耐衝撃性を付与するのに寄与する。
【0130】
弾性層100は、ISO 307:2019に従って25℃でメタクレゾールで測定した固有粘度が0.8~2.5であってもよい。
【0131】
弾性層100は、黄色度(Y.I、Yellow Index)が1以下であってもよい。前記黄色度は、ハンターラブ社(Hunterlab)が製造したColor meter ultrascan proを適用して、YI E313(D65/10)モードで測定した値であってもよい。
【0132】
弾性層100は、280~360nmの波長の紫外線に3.0Wの出力で72時間露出された後の黄色度から、露出される前の黄色度を減じた値が2以下であってもよい。前記弾性層は、280~360nmの波長の紫外線に3.0Wの出力で72時間露出された後の黄色度から、露出される前の黄色度を減じた値が1以下であってもよい。前記弾性層は、280~360nmの波長の紫外線に3.0Wの出力で72時間露出された後の黄色度から、露出される前の黄色度を減じた値が0.1以上であってもよい。このような特徴を有する弾性層は、紫外線に露出されてもコーティング層の黄変が僅かであるか、またはほとんど起こらない優れた紫外線耐久性を有することができる。
【0133】
弾性層100は、白濁感(cloudy現象)が実質的に観察されないものであってもよい。実質的に前記弾性層は、白濁感が観察される面積が全面積の1%未満であり得る。このとき、全面積は、製品に適用されるフィルムの全面積を基準とする。前記白濁感は、ヘイズの測定を通じて客観化され得、ヘイズの測定値が1%超である場合に、白濁感が感じられるものとして取り扱うことができる。前記白濁感の程度は、弾性層の製造に適用される樹脂のゲル化の程度、分子量の分布などを制御して調節され得る。
【0134】
弾性層100は、動的曲げ評価の結果、優れた耐久性を有することができる。
【0135】
前記動的曲げ評価は、IEC 62715-6-1規格に従って行われ、弾性層を-40℃で2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げの程度で20万回の動的曲げ試験後に前記弾性層にクラックが発生したか否かを確認する。
【0136】
弾性層100は、IEC 62715-6-1規格に従って-40℃で2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げの程度で20万回の動的曲げ試験後、クラックが実質的に発生しない、優れた耐久性を有することができる。
【0137】
これは、低温での弾性が常温や高温での弾性よりも相対的にさらに低くなるという特性を考慮すると、前記弾性層が、広い温度範囲で反復的な曲げ試験後にも優れた弾性を有するということを意味する。
【0138】
弾性層100は、繰り返し単位としてアミド残基を含む高分子を含むことができる。
【0139】
弾性層100は、繰り返し単位としてアミド残基を有する高分子を含むプラスチックフィルムであってもよい。
【0140】
弾性層100は、繰り返し単位としてアミド残基を有する高分子を含むエラストマーフィルムであってもよい。
【0141】
アミド残基は、前記弾性層に含まれる高分子全体を基準として50重量%以上であってもよく、または60重量%以上であってもよい。前記アミド残基は、前記弾性層に含まれる高分子全体を基準として80重量%以下であってもよく、または70重量%以下であってもよい。このような特徴を有する高分子を前記弾性層に適用する場合、機械的物性がより優れた弾性層を提供することができる。
【0142】
アミド残基は、前記弾性層に含まれる高分子全体を基準として92~97モル%であってもよい。このような高分子を前記弾性層に適用する場合、実質的に広い温度範囲で強度特性及び弾性特性がいずれも優れた弾性層を提供することができる。
【0143】
弾性層100は高分子を含み、前記高分子は、鎖中に剛性領域と軟性領域を含むことができる。
【0144】
前記剛性領域は、rigid segmentまたはsemi-crystalline regionと表現されてもよい。前記軟性領域は、soft segmentまたはamorphous regionと表現されてもよい。
【0145】
前記高分子は、剛性領域と軟性領域を同時に含むことで、前記弾性層が相対的に強い機械的強度を有すると同時に、フレキシブルな特性及び/又はエラストマー特性を有するようにすることができる。
【0146】
弾性層は、実質的に同じ種類として分類されるモノマーを含む高分子の鎖領域(同類領域)を有することができる。前記高分子の鎖領域(同類領域)の部分的な結合の程度や鎖の整列の程度を調節すれば、弾性層が意図する強度特性及び弾性特性を共に有するようにすることができる。弾性層は、実質的に異なる種類として分類されるモノマーが前記高分子の鎖領域(同類領域)にさらに結合され得る。前記弾性層は、部分的に強度が強い剛性領域と、部分的に軟質特性を有して高分子にフレキシブルな特性を付与できる軟性領域とを共に有することができる。
【0147】
弾性層は弾性ポリアミド(elastic polyamide、long chain polyamide)を含むことができる。
【0148】
弾性ポリアミドは、軟性領域である無定形領域(amorphous region)と、剛性領域である結晶領域(crystalline region)とを含むことができ、前記無定形領域をマトリックスとし、前記結晶領域が前記マトリックスに分布している状態であってもよい。
【0149】
前記剛性領域は、前記軟性領域と比較して、水素結合されたC=O分子をさらに多く含むことができる。前記軟性領域は、前記剛性領域と比較して、水素結合されていない自由C=O結合をさらに多く含むことができる。前記剛性領域及び軟性領域に含まれる水素結合されたC=O分子の含量は、FT-IR spectraを測定して確認することができる。
【0150】
弾性ポリアミドは半結晶性ポリアミド(semicrystalline polyamide)を含むことができる。弾性ポリアミドは無定形ポリアミド(amorphous polyamide)を含むことができる。弾性ポリアミドは、半結晶性ポリアミドと無定形ポリアミドとの混合物を含むことができる。弾性ポリアミドは、弾性ポリアミド全体を基準として半結晶質ポリアミドを50重量%超含むことが好ましい。
【0151】
弾性ポリアミドは、ホモポリアミド(homo polyamide)、ポリアミド共重合体、またはこれらの混合物であってもよい。弾性ポリアミドは、アミノ酸、ラクタム、または二酸(diacid)とジアミンとの混合物から選択された1種の単量体を重合してホモポリアミドとして製造されてもよい。弾性ポリアミドは、アミノ酸、ラクタム、または二酸(diacid)とジアミンとの混合物から選択された2種以上の単量体を重合してポリアミド共重合体として製造されてもよい。
【0152】
弾性ポリアミドは、一末端にアミド基を含む分子と、一末端にカルボキシル基を含む他の分子とを結合して製造することができる。
【0153】
弾性ポリアミドを製造するのに適用される単量体の例示は、以下の通りであるが、これに限定されない。
【0154】
脂肪族二酸は、例えば、アジピン酸(adipic acid、6)、アゼライン酸(azelaic acid、9)、セバシン酸(sebacic acid、10)、ドデカンジオン酸(dodecanedioic acid、12)などであってもよいが、これに限定されない。
【0155】
芳香族二酸は、例えば、テレフタル酸(terephthalic acid、T)、イソフタル酸(isophthalic acid、I)などであってもよいが、これに限定されない。
【0156】
脂肪族ジアミンは、例えば、ブチレンジアミン(butylenediamine、4)、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylene-diamine、6またはHMDA)、トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性質体(isomers of trimethylhexamethylenediamine、TMHMDA)、オクタメチレンジアミン(octamethylenediamine、8)、デカメチレンジアミン(decamethylenediamine、10)、ドデカメチレンジアミン(dodecamethylenediamine、12)などであってもよいが、これに限定されない。
【0157】
芳香族ジアミンは、例えば、メタキシレンジアミン(meta-xylenediamine、MXD)などであってもよいが、これに限定されない。
【0158】
脂環族ジアミンは、例えば、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(bis(3,5-dialkyl-4-aminocyclohexyl)methane)、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン(bis(3,5-dialkyl-4-aminocyclohexyl)ethane)、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(bis(3,5-dialkyl-4-aminocyclohexyl)propane)、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン(bis(3,5-dialkyl-4-aminocyclohexyl)butane)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(bis(3-methyl-4-aminocyclohexyl)methane、BMACM、MACMまたはB)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(isopropylidenedi(cyclohexylamine)、PACP)、イソホロンジアミン(isophoronediamine、IPD)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(2,6-bis(aminomethyl)norbornane、BAMN)、ピペラジン(piperazine)またはこれらの混合物であってもよいが、これに限定されない。
【0159】
その他のジアミンは、例えば、イソホロンジアミン(isophoronediamine、IPDA)、2,6-ビス-(アミノメチル)ノルボルナン(2,6-bis-(aminomethyl)norbornane、BAMN)などであってもよいが、これに限定されない。
【0160】
ラクタムは、例えば、カプロラクタム(caprolactam、L6)、ラウリルラクタム(lauryllactam、L12)などであってもよいが、これに限定されない。
【0161】
アミノ酸は、例えば、11-アミノウンデカン酸(11-aminoundecanoic acid、11)、11-(N-ヘプチル-アミノ)ウンデカン酸(11-(N-heptyl-amino)undecanoic acid、NHAU)などであってもよいが、これに限定されない。
【0162】
弾性ポリアミドは脂肪族ポリアミドを含むことができる。前記弾性ポリアミドは脂肪族ポリアミドからなることができる。
【0163】
弾性ポリアミドは半芳香族(semiaromatic)ポリアミドを含むことができる。前記弾性ポリアミドは半芳香族ポリアミドからなることができる。
【0164】
脂肪族ポリアミドは、例えば、ポリカプロラクタム(polycaprolactam、PA 6)、ポリウンデカナミド(polyundecanamide、PA 11)、ポリラウリルラクタム(poly-lauryllactam、PA 12)、ポリブチレンアジパミド(polybutylene adipamide、PA 46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(polyhexamethylene adipamide、PA 66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(polyhexamethylene azelamide、PA 69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(polyhexamethylene sebacamide、PA 610)、ポリヘキサメチレンドデカンジアミド(polyhexamethylene dodecanediamide、PA 612)、ポリデカメチレンドデカンジアミド(polydecamethylene dodecanediamide、PA 1012)、ポリデカメチレンセバカミド(polydecamethylene sebacamide、PA 1010)、ポリドデカメチレンドデカンジアミド(polydodecamethylene dodecanediamide、PA 1212)、ポリアミド共重合体であるPA 11/NHUA、PA BACM6、PA BACM10、PA BACM12、PA 6/66、PA 6/12、またはこれらの混合物であってもよいが、これに限定されない。実施例によれば、ポリアミド共重合体は、PA 6/66、PA 6/610、PA 6/12、またはこれらの混合物であってもよい。
【0165】
半芳香族ポリアミドは、例えば、PA 6/6T、PA 66/6T、PA 6T/6I、PA 66/6T/6I、PA 11/6T、PA 12/6T、PA MXD6、PA MXD10、またはこれらの混合物であってもよいが、これに限定されない。
【0166】
無定形ポリアミドは、例えば、ポリアミドとして、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(polyhexamethylene isophthalamide、PA 6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(polytrimethylhexamethylene terephthalamide、PA TMHMDAT)、PA BACM12;アミド共重合体として、PA 6/BMACPI、PA 6/BAMNT、PA 11/BMACMI、PA 11/BMACMT/BMACMI、PA 11/BACM.I/IPDA.I、PA 12/BMACM.I、PA 12/BACMT/BACMI、PA 12/BMACMT/BACMI、PA 12/BACMI/IPDAI、PA 6T/6I/BACMI、PA 6T/6I/BACMT/BACMI;またはこれらの混合物であってもよいが、これに限定されない。
【0167】
好ましくは、前記ポリアミドは半結晶ポリアミドである。本明細書において、半結晶ポリアミドは、実質的に線状の脂肪族ポリアミドを意味することができる。好ましくは、前記半結晶性ポリアミドは、PA 6、PA 11、PA 12、PA 10.10、PA 10.12、PA 6.10、PA 6.12及びこれらの組み合わせから選択されたいずれか1つであってもよい。
【0168】
【0169】
弾性層100は、ポリエーテルブロックアミド(polyether block amide、PEBA)を含むことができる。前記ポリエーテルブロックアミドは、剛性領域であるポリアミド領域と軟性領域であるポリエーテル領域の2種類の相(phase)を含む。前記ポリアミド領域は、融点が約80℃以上、具体的に約130~180℃であって、実質的に結晶質相で硬質領域を構成することができ、前記ポリエーテル領域は、ガラス転移温度が約-40℃以下、具体的に-80~-40℃と低い温度領域に存在し、実質的に無定形の軟質領域を構成することができる。
【0170】
ポリエーテルブロックアミドは、分子内にカルボキシル基を2以上含むポリアミドと、分子内に水酸基を2以上含むエーテルとが結合されたものであってもよい。
【0171】
弾性層100はポリエーテルブロックアミドを含むことができ、前記ポリエーテルブロックアミドは、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロックを含む1以上の共重合体を含むことができる。ポリエーテルブロックアミドは、1以上のポリエーテルブロック及び1以上のポリアミドブロックを含む。
【0172】
ポリエーテルブロックとポリアミドブロックを含む共重合体(ポリエーテルブロックアミド)は、反応性末端を含むポリエーテルブロックと反応性末端を含むポリアミドブロックとが縮合重合されたものであってもよい。
【0173】
ポリエーテルブロックアミドは、ジアミン末端を含むポリアミドブロックと、ジカルボキシル末端を含むポリオキシアルキレンブロックとを含む縮合重合体であってもよい。
【0174】
ポリエーテルブロックアミドは、ジカルボキシル末端を含むポリアミドブロックと、ジアミン末端を含むポリオキシアルキレンブロックとを含む縮合重合体であってもよい。前記ポリオキシアルキレンブロックは、ポリエーテルジオールとして知られている脂肪族のα,ω-ジヒドロキシル化ポリオキシアルキレン(aliphatic α,ω-dihydroxylated polyoxyalkylene)ブロックをシアノエチル化反応及び水素化反応させて収得されたものであってもよい。
【0175】
ポリエーテルブロックアミドは、ジカルボキシル末端を含むポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールブロックとを含む縮合重合体であってもよい。このような場合、ポリエーテルブロックアミドはポリエーテルエステルアミドである。
【0176】
例示的に、ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックは、鎖制限ジカルボン酸の存在下でポリアミド前駆体の縮合重合体を含むことができる。例示的に、ジアミン鎖末端を含むポリアミドブロックは、鎖制限ジアミンの存在下でポリアミド前駆体の縮合重合体を含むことができる。
【0177】
例示的に、ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックは、鎖制限ジカルボン酸の存在下でα,ω-アミノカルボン酸、ラクタムまたはジカルボン酸とジアミンとの縮合重合体を含むことができる。前記ポリアミドブロックとしては、ポリアミド12またはポリアミド6が好ましい。
【0178】
ポリエーテルブロックポリアミドは、ランダムに分布した単位(unit)構造を有するブロックを含むことができる。
【0179】
有利には、以下の3つの類型のポリアミドブロックが適用されてもよい。
【0180】
第1類型として、ポリアミドブロックは、カルボン酸と、脂肪族又はアリール脂肪族ジアミンとの縮合重合体を含むことができる。前記カルボン酸は4~20個の炭素原子を有することができ、好ましくは6~18個の炭素原子を有することができる。前記脂肪族又はアリール脂肪族ジアミンは2~20個の炭素原子を有することができ、好ましくは6~14個の炭素原子を有することができる。
【0181】
前記ジカルボン酸は、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-cyclohexanedicarboxylic acid)、1,2-シクロヘキシルジカルボン酸(1,2-cyclohexyldicarboxylic acid)、1,4-ブタン二酸(1,4-butanedioic acid)、アジピン酸(adipic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、スベリン酸(suberic acid)、セバシン酸(sebacic acid)、1,12-ドデカンジカルボン酸(1,12-dodecanedicarboxylic acid)、1,14-テトラデカンジカルボン酸(1,14-tetradecanedicarboxylic acid)、1,18-オクタデカンジカルボン酸(1,18-octadecanedicarboxylic acid)、テレフタル酸(terephthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、ナフタレンジカルボン酸(naphthalenedicarboxylic acid)、二量体脂肪酸(dimerized fatty acid)などであってもよい。
【0182】
前記ジアミンは、例えば、1,5-テトラメチレンジアミン(1,5-tetramethylenediamine)、1,6-ヘキサメチレンジアミン(1,6-hexamethylenediamine)、1,10-デカメチレンジアミン(1,10-decamethylenediamine)、1,12-ドデカメチレンジアミン(1,12-dodecamethylenediamine)、トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン(trimethyl-1,6-hexamethylenediamine)、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミン(2-methyl-1,5-pentamethylenediamine)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンの異性質体(the isomers of bis(3-methyl-4-aminocyclohexyl)methan、BMACM)、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(2,2-bis(3-methyl-4-aminocyclohexyl)propane、BMACP)、ビス(パラ-アミノシクロヘキシル)メタン(bis(para-aminocyclohexyl)methane、PACM)、イソホロンジアミン(isophoronediamine、IPD)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(2,6-bis(aminomethyl)norbornane、BAMN)、ピペラジン(piperazine、Pip)、メタ-キシリレンジアミン(meta-xylylenediamine、MXD)及びパラ-キシリレンジアミン(para-xylylenediamine、PXD)などであってもよい。
【0183】
有利には、ポリアミドブロックの第1類型は、PA 412、PA 414、PA 418、PA 610、PA 612、PA 614、PA 618、PA 912、PA 1010、PA 1012、PA 1014、PA 1018、MXD6、PXD6、MXD10またはPXD10を含むことができる。
【0184】
ポリアミドブロックの第2類型は、4個~12個の炭素原子を有するジカルボン酸またはジアミンの存在下で、1以上のα,ω-アミノカルボン酸及び/又は6~12個の炭素原子を有する1以上のラクタム、の縮合重合体を含むことができる。
【0185】
前記ラクタムの例示としては、カプロラクタム、オエナントラクタム(oenantholactam)、ラウリルラクタムなどがある。
【0186】
前記α,ω-アミノカルボン酸の例示としては、アミノカプロン酸(aminocaproic acid)、7-アミノヘプタン酸(7-aminoheptanoic acid)、11-アミノウンデカン酸(11-aminoundecanoic acid)、12-アミノドデカン酸(12-aminododecanoic acids)などがある。
【0187】
有利には、ポリアミドブロックの第2類型は、ポリアミド11、ポリアミド12またはポリアミド6を含むことができる。
【0188】
ポリアミドブロックの第3類型は、1以上のα,ω-アミノカルボン酸(又は1以上のラクタム)、1以上のジアミン及び1以上のジカルボン酸の縮合重合体を含むことができる。
【0189】
このような場合、ポリアミド(PA)ブロックは、以下のようなジアミン、二酸及び共単量体(又は複数の共単量体)を縮合重合して製造され得る。
【0190】
前記ジアミンとして、例えば、線状脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、X個の炭素原子を有するジアミンなどを適用することができる。前記二酸として、例えば、ジカルボン酸、Y個の炭素原子を有する酸などを適用することができる。共単量体(comonomer)又は複数の共単量体{Z}は、Z個の炭素原子を有するラクタム、α,ω-アミノカルボン酸、及び、X1個の炭素原子を有する1以上のジアミンとY1個の炭素原子を有する1以上のジカルボン酸が実質的に同じモルで含まれた混合物から選択されたものであってもよい。但し、前記(X1,Y1)は、(X,Y)と異なる。
【0191】
前記共単量体又は複数の共単量体{Z}は、結合されたポリアミド前駆体単量体全体を基準として50重量%以下、好ましくは20重量%以下、有利には10重量%以下含まれてもよい。
【0192】
前記第3類型による縮合反応は、ジカルボン酸から選択された鎖制限剤の存在下で行われてもよい。
【0193】
有利には、鎖制限剤として、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸が使用され得、前記ジカルボン酸は、前記1以上のジアミンに対して化学量論的に過量導入され得る。
【0194】
第3類型の代替形態として、前記ポリアミドブロックは、選択的に鎖制限剤の存在下で、6~12個の炭素原子を有する2種以上のα,ω-アミノカルボン酸、または2種以上のラクタム、または炭素原子の個数が互いに異なるラクタムとアミノカルボン酸との縮合重合体を含むことができる。
【0195】
前記脂肪族α,ω-アミノカルボン酸は、例えば、アミノカプロン酸(aminocaproic acid)、7-アミノヘプタン酸(7-aminoheptanoic acid)、11-アミノウンデカン酸(11-aminoundecanoic acid)、12-アミノドデカン酸(12-aminododecanoic acid)などであってもよい。
【0196】
前記ラクタムは、例えば、カプロラクタム、オエナントラクタム、ラウリルラクタムなどであってもよい。
【0197】
前記脂肪族ジアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylenediamine)、ドデカメチレンジアミン(dodecamethylene-diamine)、トリメチルヘキサメチレンジアミン(trimethylhexamethylenediamine)などであってもよい。
【0198】
前記脂環族二酸は、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸であってもよい。
【0199】
前記脂肪族二酸は、例えば、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、二量体脂肪酸(好ましくは二量体率98%以上;好ましくは水素化処理されたもの;Uniqema社の商標名Pripol、またはHenkel社の商標名Empolとして販売されるもの)、ポリオキシアルキレン-α,ω-二酸などであってもよい。
【0200】
前記芳香族二酸は、例えば、テレフタル酸(T)、イソフタル酸(I)などであってもよい。
【0201】
前記脂環族ジアミンは、例えば、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)と2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性質体、ビス(パラ-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)などであってもよい。
【0202】
その他のジアミンは、例えば、イソホロンジアミン(IPD)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、ピペラジンなどであってもよい。
【0203】
アリール脂肪族ジアミンの例としては、メタ-キシリレンジアミン(MXD)及びパラ-キシリレンジアミン(PXD)などがあるが、これに限定されない。
【0204】
ポリアミドブロックの第3類型の例として、PA 66/6、PA 66/610/11/12などがある。
【0205】
前記PA 66/6において、前記66は、アジピン酸と縮合されたヘキサメチレンジアミン単位を示し、前記6は、カプロラクタムの縮合により導入された単位を示す。
【0206】
前記PA 66/610/11/12において、前記66は、アジピン酸と縮合されたヘキサメチレンジアミン単位を示し、前記610は、セバシン酸と縮合されたヘキサメチレンジアミン単位を示し、前記11は、アミノウンデカン酸の縮合により導入された単位を示し、前記12は、ラウリルラクタムの縮合により導入された単位を示す。
【0207】
ポリアミドブロックの数平均モル質量(Mn)は400~20000g/mol、好ましくは500~10000g/molであってもよい。
【0208】
【0209】
前記1以上のポリエーテルブロックは、好ましくは、例えば、PEG、PPG、PO3G、PTMGのようなポリアルキレンエーテルポリオール、鎖末端にNH2を含み、ポリオキシアルキレン配列を含むポリエーテル、これらがランダム配列及び/又はブロック配列された共重合体(エーテル共重合体)、及びこれらの混合物から選択された1以上のポリエーテルを含む。
【0210】
ポリエーテルブロックは、共重合体の総重量に対して10~80重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは20~40重量%含まれてもよい。
【0211】
ポリエーテルブロックの数平均分子量は200~1000g/mol(臨界点を除く)、好ましくは400~800g/mol(臨界点を含む)、より好ましくは500~700g/molであってもよい。
【0212】
ポリエーテルブロックは、ポリエチレングリコールから導入され得る。ポリエーテルブロックは、ポリプロピレングリコールから導入され得る。ポリエーテルブロックは、ポリテトラメチレングリコールから生成され得る。ポリエーテルブロックは、カルボキシル末端を含むポリアミドブロックと共重合されてポリエーテルブロックアミドを形成することができる。ポリエーテルブロックは、ポリエーテルジアミンに転換されるためにアミン化させた後、カルボキシル末端を含むポリアミドブロックと縮合してポリエーテルブロックアミイドを形成することができる。ポリエーテルブロックは、統計的に分散された単位を含むポリエーテルブロックアミドを形成するために、ポリアミド前駆体及び鎖制限剤と混合され得る。
【0213】
ポリエーテルは、例示的にポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)などがある。ポリテトラメチレングリコールは、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)とも知られている。ポリエーテルブロックが、ジオールまたはジアミンの形態からポリエーテルブロックアミドの鎖に導入され得、前記ポリエーテルブロックは、それぞれ、PEGブロック、PPGブロックまたはPTMGブロックと称される。
【0214】
ポリエーテルブロックが、エチレングリコール(-OC2H4-)、プロピレングリコール(-O-CH2-CH(CH3)-)、またはテトラメチレングリコール(-O-(CH2)4-)から誘導された単位ではなく、他の単位を含んでも、当該ポリエーテルブロックは具現例の範囲に含まれる。
【0215】
ポリアミドブロックの数平均モル質量は、有利には300~15,000、好ましくは600~5000であってもよい。ポリエーテルブロックの数平均モル質量は100~6000、好ましくは200~3000であってもよい。
【0216】
有利には、ポリエーテルブロックアミドに含まれたポリアミドブロックの含量は、ポリエーテルブロックアミド全体を基準として50重量%以上であってもよい。これは、高分子鎖中に統計的に分布する可能性を意味することができる。前記ポリアミドの含量は50~80重量%が好ましい。ポリエーテルブロックアミドに含まれたポリエーテルの含量は、ポリエーテルブロックアミド全体を基準として20~50重量%が好ましい。
【0217】
好ましくは、共重合体のポリアミドブロックとポリエーテルブロックの数平均モル質量の比率は1:0.25~1であってもよく、共重合体のポリアミドブロック及びポリエーテルブロックの数平均モル質量は、それぞれ、1000/1000、1300/650、2000/1000、2600/650、または4000/1000であってもよい。
【0218】
ポリエーテルブロックアミドは、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを製造する第1段階と、製造されたポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを縮合重合して弾性ポリエーテルブロックアミドを製造する第2段階とを含む製造方法により製造されてもよい。ポリエーテルブロックアミドは、単一の段階で単量体を縮合重合して製造されてもよい。
【0219】
ポリエーテルブロックアミドは、例示的に20~75、有利には30~70のショアD硬度を示すことができる。ポリエーテルブロックアミドは、25℃でメタクレゾールで測定した固有粘度が0.8~2.5であってもよい。固有粘度は、ISO 307:2019に準拠して測定する。具体的には、溶液中の固有粘度の測定は、Ubbelohde粘度計を用いて、25℃で全体溶液に対して0.5重量%のメタクレゾール溶液中で測定する。
【0220】
【0221】
弾性層100は、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)、すなわち、ポリエーテルウレタンとも呼ばれるポリウレタンブロック(PU)とポリエーテルブロック(PE)の共重合体を含むことができる。
【0222】
TPUは、軟質のPEブロックであるポリエーテルジオール又はポリエステルジオール(例えば、ポリ(ブチルアジペート)(poly(butyladipate))、ポリカプロラクトンジオール(polycaprolactonediol))と、硬質のPUブロックとを含む縮合重合体であってもよい。PUブロックとPEブロックは、ポリエーテルのイソシアネート基とポリエーテルジオールの水酸基との反応で生成された結合によって連結され得る。
【0223】
本明細書において、ポリウレタンは、芳香族ジイソシアネート(例えば、MDI、TDI)及び/又は脂肪族ジイソシアネート(例えば、HDI又はヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylenediisocyanate))から選択できる1以上のジイソシアネートと、1以上の短い鎖長を有するジオール(例えば、ブタンジオール、エチレングリコール)との反応により生成された生成物を意味する。
【0224】
弾性層は、ポリエーテルエステル共重合体(copolyetherester、COPE)を含むことができる。
【0225】
COPEは、1以上のポリエーテルブロック(PE)及び1以上のポリエステルブロック(ホモポリマー又はエステル共重合体)を含む熱可塑性弾性重合体を含むことができる。
【0226】
COPEは、ポリエーテルジオールから誘導されたフレキシブルなPEブロック、1以上のジカルボン酸及び1以上の短鎖延長剤ジオール単位との反応から生成された硬質ポリエステルブロックを含むことができる。PESブロックとPEブロックは、ジカルボン酸の酸基とポリエーテルジオールの水酸基との反応で導入されたエステル結合によって連結され得る。短鎖延長剤ジオールは、ネオペンチルグリコール及び化学式HO(CH2)nOHの脂肪族グリコールからなる群から選択され得、前記nは、2~10の整数である。
【0227】
ポリエーテルと二酸の鎖は、フレキシブルなブロックを形成する反面、二酸の鎖とグリコール又はブタンジオールの鎖は、ポリエーテルエステル共重合体の硬質ブロックを形成する。有利には、二酸は、8~14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸であってもよい。芳香族ジカルボン酸は、前記芳香族ジカルボン酸全体の50モル%以内で8~14個の炭素原子を有する1以上の他の芳香族ジカルボン酸で代替、及び/又は芳香族ジカルボン酸全体の20モル%以内で2~14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸で代替可能である。
【0228】
芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジ安息香酸(dibenzoic acid)、ナフタレンジカルボン酸(naphthalene dicarboxylic acid)、4,4'-ジフェニレンジカルボン酸(4,4'-diphenylenedicarboxylic acid)、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン酸(bis (p-carboxyphenyl)methane acid)、エチレンビスp-安息香酸(ethylene bis p-benzoic acid)、1,4-テトラメチレンビス(p-オキシ安息香酸)(1,4-tetramethylene bis(p-oxybenzoic acid))、エチレンビス(p-オキシ安息香酸)(ethylene bis(p-oxybenzoic))、1,3-トリメチレンビス(p-オキシ安息香酸)(1,3-trimethylene bis(p-oxybenzoic)acid)などであってもよい。
【0229】
グリコールの例としては、エチレングリコール、1,3-トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,8-オクタメチレングリコール、1,10-デカメチレングリコールなどがある。
【0230】
COPEは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリトリメチレングリコール(PO3G)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)のようなポリエーテルジオールから誘導されたポリエーテル単位、及びジカルボン酸(例えば、テレフタル酸)とグリコール(例えば、エタンジオール、1,4-ブタンジオール)との反応により導入されたポリエステル単位を含むことができる。前記ポリエーテルエステル共重合体については、欧州特許EP402883及びEP405227に開示されており、前記特許の内容は本明細書の内容として含まれる。
【0231】
前記弾性層は、前記ポリアミド、前記PEBA、前記TPU、前記COPE、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0232】
高分子樹脂を用いて弾性層を製造する方法は後述する。
【0233】
フィルム190、フィルム190の用途
他の一具現例に係るフィルム190は弾性層100を含む。
【0234】
弾性層100についての具体的な説明は、上述の説明がそのまま適用され、記載の重複を避けるために、詳細な記載は省略する。
【0235】
フィルム190は、弾性層の一面100a上に位置するキャリアフィルム92をさらに含むことができる。
【0236】
キャリアフィルム92は、50μmの厚さのフィルムが適用されてもよく、耐化学性、寸法安定性などの様々な面を考慮するとき、PETフィルムが適用されてもよい。
【0237】
キャリアフィルム92は、例示的に50~250μmのPETフィルムが適用されてもよい。
【0238】
キャリアフィルム92は、後述する離型フィルム150の役割を兼ねることができる。
【0239】
キャリアフィルム92の一面は、弾性層100と直接接することができる。
【0240】
弾性層100の製造過程において、キャリアフィルム92の一面が有する表面粗さは、これと接する弾性層の一面に転写され得る。
【0241】
キャリアフィルム92の一面の表面粗さRaは0.5μm以下であってもよく、または0.2μm以下であってもよい。キャリアフィルム92の一面の表面粗さRaは0μm超であってもよく、0.0001μm以上であってもよく、または0.001μm以上であってもよい。
【0242】
キャリアフィルム92の一面の表面粗さRaは0.001~0.1μmであってもよい。このような粗さを有するキャリアフィルムは、弾性層の表面粗さを制御して、より低いヘイズ値を有する弾性層を提供することができる。
【0243】
フィルム190は、前記弾性層100と前記キャリアフィルム92からなるフィルム積層体(フィルム、190)を含むことができる。前記キャリアフィルムは、離型フィルムの役割を果たすことができる。
【0244】
フィルム190は、弾性層の他面100b上に位置するシート保護フィルム94をさらに含むことができる。
【0245】
前記シート保護フィルム94は、例示的にPEフィルムまたはPETフィルムが適用されてもよい。前記シート保護フィルムの厚さは、特に制限されない。
【0246】
前記シート保護フィルムの一面は、弾性層の他面100bと直接接することができる。弾性層の製造過程においてシート保護フィルムが適用される場合、前記シート保護フィルムの一面の表面粗さは、前記弾性層の他面の表面粗さを制御することができる。
【0247】
シート保護フィルム94の一面の表面粗さRaは0.5μm以下であってもよく、または0.2μm以下であってもよい。シート保護フィルム94の一面の表面粗さRaは0μm超であってもよく、0.0001μm以上であってもよく、または0.001μm以上であってもよい。
【0248】
シート保護フィルムの一面の表面粗さRaは0.001~0.1μmであってもよい。このような粗さを有するシート保護フィルムは、弾性層の表面粗さを制御して、より低いヘイズ値を有する弾性層を提供することができる。
【0249】
フィルム190は、弾性層100と、前記弾性層上に位置するシート保護フィルム94とからなる積層体を含むことができる。
【0250】
フィルム190は、キャリアフィルム92と、前記キャリアフィルム上に位置する弾性層100と、前記弾性層上に位置するシート保護フィルム94とからなる積層体を含むことができる。
【0251】
フィルム190は、必要に応じて、弾性層の一面又は他面上に粘着層130をさらに含むことができる。
【0252】
粘着層130は、光透過度及び/又は透明度に優れた光学用粘着層が適用され得る。例示的に、OCA(Optically Clear Adhesive)、PSA(Pressure Sensitive Adhesive)またはこれらの組み合わせを含む積層体が適用されてもよい。
【0253】
粘着層130は、80℃での貯蔵モジュラスと-40℃での貯蔵モジュラスとの差が-100~100kPaであってもよく、または-80~80kPaであってもよい。粘着層130は、-40℃での貯蔵モジュラスから80℃での貯蔵モジュラスを引いた値が0.01~100kPaであってもよく、0.1~80kPaであってもよく、または1~50kPaであってもよい。このような貯蔵モジュラスの特徴を有する粘着層130を前記フィルム190に適用する場合、フィルムの弾性回復力及び弾性耐久性をより向上させることができ、フレキシブル又はローラブルディスプレイのウィンドウカバーに適用時に特に有用である。
【0254】
弾性層100は、離型フィルム150上に配置され得る。弾性層と離型フィルムとの間には粘着層が配置され得る。このとき、フィルム190は、離型フィルム150、粘着層130、及び弾性層100が順次積層された積層体であり得る。
【0255】
離型フィルム150は、例示的にPETフィルムが適用されてもよいが、これに限定されるものではない。また、上述したキャリアフィルム92又はシート保護フィルム94が離型フィルム150として適用されてもよい。
【0256】
弾性層100は、耐熱層120上に配置され得る。
【0257】
フィルム190は、耐熱層120上に配置された弾性層100を含むことができる。
【0258】
フィルム190は、耐熱層120と弾性層100との間に位置する粘着層130を含むことができる。前記粘着層130は、上述した粘着層が適用されてもよい。
【0259】
フィルム190は、弾性層100と耐熱層120との間に別途の粘着層を含まなくてもよい。このとき、弾性層100は、前記耐熱層120と溶融接着方式により付着されてもよい。
【0260】
耐熱層120は、ポリイミドフィルム、ガラス層、またはこれらの積層体であってもよい。
【0261】
ガラス層は、耐熱性及び絶縁性を有すると同時に曲率半径が小さいものが適用されてもよい。例示的に、前記ガラス層の曲率半径は2mm以下であってもよい。
【0262】
ポリイミドフィルムは、ポリアミド-イミド重合体から製造された層であり得る。このように製造された層は、イミド(imide)繰り返し単位を含むので、広い意味でポリイミドフィルムに該当し得る。
【0263】
前記ポリアミド-イミド重合体は、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物及びジカルボニル化合物を重合して形成された重合体を含む。具体的に、前記ポリアミド-イミド重合体は、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物、及びジカルボニル化合物を有機溶媒上で重合して得ることができる。
【0264】
前記芳香族ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル(BTFDPE)、2,2-ビス(4-(4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(HFFAPP)、または3,5-ジアミノベンゾトリフルオライド(DATF)を含むことができる。
【0265】
具体的に前記芳香族ジアミン化合物は、下記化学式1-1で表される化合物であってもよい。
【0266】
【0267】
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)、4,4'-オキシジフタル酸ジアンヒドリド(ODPA)、または2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)を含むことができる。
【0268】
具体的に前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2-1で表される化合物であってもよい。
【0269】
【0270】
前記芳香族ジアミン化合物と前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、1:0.95~1.05のモル比で反応して重合体を形成することができる。
【0271】
前記ジカルボニル化合物は、下記化学式3-1又は化学式3-2で表される化合物であってもよい。
【0272】
【0273】
前記芳香族ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物は、1:0.95~1.05のモル比で反応して重合体を形成することができる。
【0274】
ポリイミドフィルムは、下記化学式4-1~4-3で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0275】
【0276】
前記化学式4-1において、前記nは、1~400の整数である。
【0277】
【0278】
前記化学式4-2において、前記xは、1~400の整数である。
【0279】
【0280】
前記化学式4-3において、前記yは、1~400の整数である。
【0281】
ポリイミドフィルムは、イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位を1:1~4のモル比で含むことができる。
【0282】
ポリイミドフィルムは、優れた機械的物性、耐化学性、耐熱性などの特徴と共に、優れた透明性を有することができる。
【0283】
ポリイミドフィルムは、厚さ50μmを基準として、モジュラスが5.0GPa以上であってもよい。
【0284】
ポリイミドフィルムは、表面硬度がHB以上であってもよい。
【0285】
ポリイミドフィルムは、厚さ50μmを基準として、黄色度が5以下であってもよい。
【0286】
ポリイミドフィルムは、厚さ50μmを基準として、ヘイズが2%以下であってもよい。
【0287】
ポリイミドフィルムは、透明ポリイミドフィルムであってもよい。
【0288】
ポリイミドフィルムは、厚さ50μmを基準として、550nmで測定した光透過度が85%以上であってもよい。
【0289】
ポリイミドフィルムは、厚さ50μmを基準として、引張強度が15kgf/mm2以上であってもよい。
【0290】
ポリイミドフィルムは、厚さ50μmを基準として、伸度が15%以上であってもよい。
【0291】
フィルム190は、耐熱層120を挟んで弾性層100と対向して配置される粘着層130'をさらに含むことができる。前記粘着層130'についての説明は、前記の粘着層130についての説明と重複するので、詳細な記載は省略する。
【0292】
フィルム190は、粘着層130'を挟んで耐熱層120と対向して配置される離型フィルム150をさらに含むことができる。前記フィルムが離型フィルムをさらに含む場合、他の層との接着過程をより容易にすることができる。離型フィルムについての説明は、上述の説明と重複するのでその記載を省略する。
【0293】
フィルム190は、弾性層上に配置されるハードコーティング層140をさらに含むことができる。
【0294】
ハードコーティング層140は、ディスプレイに適用されるハードコーティング層が適用されてもよく、後述するベンディングテストなどで浮き上がりなどが発生しないものであれば、制限なしに適用可能である。
【0295】
フィルム190は偏光層360をさらに含むことができる。
【0296】
偏光層360は、弾性層の一面100aの下に配置され得る。このとき、フィルム190は、偏光層360と弾性層100が積層された積層体を含むことができる。また、フィルム190は、偏光層360、耐熱層120及び弾性層100が順次積層された積層体を含むことができる。このとき、偏光層と弾性層との間、偏光層と耐熱層との間、及び/又は耐熱層と弾性層との間には粘着層130,130'が配置され得る。また、前記粘着層が配置されない場合、隣り合う層は、溶融接着(hot-melt)方式により粘着し得る。
【0297】
フィルム190は、センサ層340をさらに含むことができる。このとき、フィルム190は、センサ層340及び弾性層100が積層された積層体を含むことができる。また、フィルム190は、センサ層340、偏光層360及び弾性層100が順次積層された積層体を含むことができる。フィルム190は、センサ層340、耐熱層120及び弾性層100が順次積層された積層体を含むことができる。フィルム190は、センサ層340、偏光層360、耐熱層120及び弾性層100が順次積層された積層体を含むことができる。このとき、センサ層と弾性層との間、センサ層と偏光層との間、センサ層と耐熱層との間、偏光層と耐熱層との間及び/又は耐熱層と弾性層との間には、それぞれ粘着層130,130'が配置され得る。また、前記粘着層が配置されない場合、隣り合う層は、溶融接着方式により粘着し得る。
【0298】
フィルム190は、IEC 62715-6-1規格に従って、弾性層を-40℃で2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げの程度で20万回の動的曲げ試験を行った後に、弾性層100と他の層とが粘着した界面で浮き上がり現象が発生しないことができる。これは、低温での弾性が常温や高温での弾性よりも相対的にさらに低くなるという特性を考慮すると、前記弾性層が、広い温度範囲で反復的な曲げ試験後にも優れた回復力を有するということを意味する。
【0299】
フィルム190は、2500kJ/m2以上の衝撃強度を有することができる。フィルム190は、3500kJ/m2以上の衝撃強度を有してもよく、または4500kJ/m2以上の衝撃強度を有してもよい。フィルム190は、5000kJ/m2以上の衝撃強度を有することができ、10000kJ/m2以下の衝撃強度を有することができる。このような特徴を有するフィルムは、外部の衝撃を良好に吸収し、容易に破損又は損傷しないので、カバーフィルムへの活用度に優れる。
【0300】
フィルム190は、1.4J以上の吸収エネルギーを有することができる。フィルム190は、1.5J以上の吸収エネルギーを有することができる。フィルム190は、1.6J以上の吸収エネルギーを有することができ、2.0J以下の吸収エネルギーを有することができる。このような特徴を有するフィルムは、外部の衝撃を良好に吸収してフィルム自体が容易に損傷しないと共に、保護する内部への衝撃伝達の程度を緩和してカバーフィルムへの活用度に優れる。
【0301】
フィルム190は、UVB280~360nmで3.0Wで72時間紫外線を照射する前と後の黄色度の差が2以下であってもよく、または1未満であってもよい。また、フィルムの前記黄色度の差は0.8以下であってもよく、または0.6以下であってもよい。フィルムの前記黄色度の差は、0.01~0.6であってもよく、または0.01~0.45であってもよい。このような特徴を有するフィルム190は、強い紫外線に長く露出されても黄変せずに優れた光学的特性を維持することができる。
【0302】
フィルム190は、ヘイズが2%以下であってもよく、または1%以下であってもよい。フィルムは、ヘイズが0.8以下であってもよく、または0.7以下であってもよい。フィルムは、ヘイズが0.01以上であってもよい。フィルム190がこのようなヘイズ特性を有する場合、優れた光学的特性及び透明性を有することができる。
【0303】
フィルム190の用途は、多重層電子装備のカバーウィンドウであってもよい。
【0304】
フィルム190の用途は、ディスプレイ装置のカバー層として適用されてもよい。
【0305】
カバー層は、装置の少なくとも一部において外形を形成し、内部の装備を保護する役割を行う層をいい、必ずしも装備の最外郭に配置されるものに限定されない。特に、カバー層がディスプレイの表示領域に配置される場合、カバーウィンドウと称する。
【0306】
フィルム190の用途は、装置の一部が折り畳まれるベンダブル又はフォルダブル多重層電子装備のカバー層であってもよい。
【0307】
フィルム190の用途は、装置の一部又は全部が可逆的に巻き取り及び巻き出し可能なローラブル装備のカバー層であってもよい。
【0308】
フィルム190は、ディスプレイの保護フィルムに含まれてもよい。
【0309】
フィルム190が前記ディスプレイの保護フィルムとして適用される場合、広い温度範囲で適切なレベルの貯蔵モジュラス値を有するので、広い温度範囲で安定したベンディング又はフレキシブル特性と共に、前記弾性層によって、保護される物品に伝達される衝撃の程度をさらに緩和することができる。
【0310】
フィルム190は、繰り返されるベンディング又はフレキシブル環境でも、優れた耐久性及びリカバリー力を有することができる。
【0311】
フィルム190は、広い温度範囲で比較的安定した貯蔵モジュラスの変化の度合いを有する弾性層100を適用して、前記弾性層と直接接する層との浮き上がり現象などの発生を抑制することができる。浮き上がり現象は、繰り返されるベンディング、フォールディングなどの過程で弾性層と直接接する層とのモジュラスの差などにより発生し得るが、前記弾性層は、ディスプレイに適用され得るように優れた光学的特性を有すると同時に、貯蔵モジュラスの特性を制御して、このような浮き上がり現象などの発生を相当のレベルに抑制することができる。
【0312】
フィルム190は、光源上に偏光層よりも外側に配置されて発光層320(ディスプレイ素子)を保護する役割を行うことができる。
【0313】
フィルム190は、多重層電子装備900において発光機能を行う発光層320及び/又はタッチセンサなどのセンシング機能を行うセンサ層340を含む発光機能層300の一側に配置され、発光機能層300を保護する用途に適用され得る。
【0314】
図4は、具現例に係る多重層電子装備の構成を断面で説明する概念図であり、
図5の(a)、(b)、(c)は、それぞれ具現例に係る多重層電子装備の構成を断面で説明する概念図であり、
図6は、具現例に係る多重層電子装備の構成を断面で説明する概念図である。
図4乃至
図6を参照して、多重層電子装備などについて具体的に説明する。
【0315】
多重層電子装備900
他の具現例において、多重層電子装備900は、弾性層100またはフィルム190を含む。
【0316】
多重層電子装備900は、ディスプレイ装置であってもよく、例示的に、大面積ディスプレイ装置、フォルダブル(foldable)ディスプレイ装置、ベンダブル(bendable)ディスプレイ装置、またはフレキシブル(flexible)ディスプレイ装置であってもよい。多重層電子装備900は、ベンダブル移動通信装置(例示、携帯電話)またはベンダブルノートパソコンであってもよい。
【0317】
弾性層100及びフィルム190についての具体的な内容は、上述した内容と重複するので、その記載を省略する。
【0318】
多重層電子装備900は、発光機能層300上に位置するフィルム190を含むことができる。
【0319】
発光機能層300は発光層320を含む。
【0320】
発光層320は、ディスプレイ装置において信号に従って光を放出する素子を含む。発光層320は、例示的に、外部の電気的な信号を発色層に伝達する信号伝達層322と、前記信号伝達層上に配置され、与えられた信号に従って発色する発色層324と、前記発色層を保護する封止層326とを含むことができる。信号伝達層322は、薄膜トランジスタ(TFT)を含むことができ、例示的に、LTPS、a-SiTFT、またはOxide TFTが適用されてもよいが、これに限定されない。封止層326は、TFE(Thin Film Encapsulation)が適用されてもよいが、これに限定されない。
【0321】
発光層320は、支持層380上に配置され得る。支持層380は、絶縁特性及び耐熱特性を有する層が適用され得、例示的にポリイミドフィルム、ガラス層などが適用されてもよい。
【0322】
発光機能層300は、センサ層340をさらに含むことができる。センサ層340としてはタッチセンサなどが適用されてもよい。
【0323】
発光機能層300は、偏光層360をさらに含むことができる。偏光層360は、発光層320上に配置されてもよく、またはセンサ層340上に配置されてもよい。
【0324】
多重層電子装備900において、弾性層100又はフィルム190は前記発光機能層300上に接着され得る。
【0325】
多重層電子装備900において、弾性層100又はフィルム190は、カバーフィルムの用途に適用されて発光層320(ディスプレイ素子)を保護する役割を行うことができる。また、弾性層100又はフィルム190は、光学的特性に優れると同時に、広い温度範囲で優れた弾性回復力を有し、耐久性なども優れるので、繰り返されるベンディング、フォールディングなどの過程でも浮き上がり現象などの発生を相当のレベルに抑制することができ、従って、ウィンドウカバー又は保護フィルムとしての用途に活用度が優れる。
【0326】
併せて、弾性層100は、耐熱層として適用されるポリイミドフィルム単独では不十分であった保護機能(外部の衝撃からカバーフィルムの内部を保護する機能)を補完し、既存のガラスなどを適用していたカバーウィンドウの保護機能を維持しながら、既存のガラスなどのカバーウィンドウに不十分であると評価されるローリング、ベンディング耐久性を有するので、多重層電子装備のカバー層、保護フィルムなどとしてその活用度が優れる。
【0327】
弾性層100又はフィルム190の製造方法
具現例に係る弾性層100の製造方法は、高分子樹脂を弾性シートとして形成するステップと;キャリアフィルム92上に前記弾性シート80が配置された組立体をローラ間に通過させて弾性層100を設けるステップと;を含む。
【0328】
前記高分子樹脂は、繰り返し単位としてアミドまたはその残基を含むことができる。前記高分子樹脂の繰り返し単位、重合などについての具体的な説明は、上述の弾性層での説明と重複するので、その記載を省略する。
【0329】
具現例に係るフィルム190の製造方法は、高分子樹脂を弾性シートとして形成するステップと;キャリアフィルム92上に前記弾性シート80が配置された組立体をローラ間に通過させて弾性層100を設けるステップと;を含む。
【0330】
フィルム190の製造方法は、フィルム190が弾性層100以外に、粘着層130,130'、耐熱層120、及び/又は偏光層360の追加層をさらに含む場合、弾性層100と前記追加層を積層するステップをさらに含むことができる。
【0331】
【0332】
前記高分子樹脂は、弾性シートの形状に成形され得る。前記弾性シートの形状に成形する方法は、フィルムの製造に適用される方法であれば適用可能であり、溶融押出方式などが適用されてもよい。前記溶融押出方式により前記弾性層またはそれを含むフィルム(又は積層体)を製造する場合、より効率的に優れた品質の弾性層を製造することができる。
【0333】
前記高分子樹脂を溶融押出して弾性シートの形状に成形する場合、溶融押出の温度は200~300℃が適用されてもよい。このような温度範囲で溶融押出を行う場合に、樹脂自体の特性を損傷させないと共に、高分子樹脂に流動性を付与してシートの形状に円滑に成形することができる。
【0334】
前記弾性シート80はキャリアフィルム92上に配置され得る。
【0335】
前記キャリアフィルムと前記キャリアフィルム上に配置された弾性シートとを含むシート積層体90は、ローラを通過してフィルム状の弾性層100に加工され得る。
【0336】
前記ローラは、第1ロール40と第2ロール60が前記シート積層体90を挟んで適用されてもよく、前記第1ロール40はキャスティングロール、前記第2ロール60はスクイージングロールが適用されてもよい。
【0337】
前記シート積層体の一面はキャスティングロールに、前記シート積層体の他面はスクイージングロールに接して加圧して、一定の厚さに加工され得る。
【0338】
前記加工過程において、必要に応じて、前記シート積層体はシート保護フィルム94をさらに含むことができる。具体的に、前記シート積層体は、キャリアフィルム92と、前記キャリアフィルム上に配置された弾性シート(又は弾性層)と、前記弾性シート上に配置されたシート保護フィルム94とを含むことができる。
【0339】
弾性層の製造方法は、一定の厚さを有する弾性シートを製造し、これをローラ間に通過させる方式により、予め設定された厚さを有するように制御された弾性層を設けることができる。前記弾性シートの厚さを制御する方法、ローラ間に通過させながら弾性層の厚さを制御する方法などは、フィルムの製造において適用される方式であれば適用可能であり、詳細な記載を省略する。また、弾性層の厚さについての具体的な説明は、上述した説明と重複するので、その記載を省略する。
【0340】
前記ローラ間に通過させる過程で前記弾性層の表面粗さが制御され得る。前記弾性層の一面の表面粗さは、前記弾性層の一面と直接接するキャリアフィルムの粗さによって制御され得る。前記弾性層の他面の表面粗さは、前記弾性層の他面と直接接するスクイージングロールの表面粗さまたはシート保護フィルムの表面粗さによって制御され得る。前記弾性層の一面及び他面の表面粗さ、キャリアフィルムの表面粗さ、シート保護フィルムの表面粗さ、スクイージングロールの表面粗さなどについての内容は、上述の説明と重複するので、その記載を省略する。
【0341】
前記フィルムの製造方法は、キャリアフィルムなどと共に組立体の形態で、またはキャリアフィルムなどが除去された弾性層自体で前記弾性層を製造することができる。
【0342】
前記フィルムの製造方法は、必要に応じて、前記組立体からキャリアフィルムを除去するステップをさらに含むことができる。
【0343】
前記フィルムの製造方法は、必要に応じて、前記弾性層の一面または他面上に接着層をさらに配置するステップをさらに含むことができる。
【0344】
前記フィルムの製造方法は、必要に応じて、前記弾性層の一面または他面上に耐熱層を配置するステップをさらに含むことができる。前記耐熱層は、ポリイミド層またはガラス層であってもよい。
【0345】
前記耐熱層は、前記弾性層と直接、または別途に配置された接着層を媒介として粘着されてもよい。
【0346】
前記フィルムの製造方法は、前記弾性層の一面または他面上に配置されたハードコーティング層をさらに含むことができる。前記ハードコーティング層の形成過程は、ディスプレイの保護フィルムにハードコーティング層を形成する方法であれば、制限なしに適用することができる。
【0347】
前記フィルムの製造方法は、前記弾性層の一面または他面上に配置された偏光板をさらに含むことができる。前記弾性層と前記偏光板との間には粘着層が配置されてもよく、耐熱層が配置されてもよく、または粘着層と耐熱層が共に配置されてもよい。
【0348】
フィルム、弾性層、その用途などについての具体的な説明は、上述の説明と重複するので、その記載を省略する。
【0349】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0350】
実施例:弾性層の製造及び物性の評価
高分子樹脂の準備
弾性層を含むフィルムの実施例または比較例に適用される樹脂は、以下のように準備した。
【0351】
【0352】
-PA(Polyamide)樹脂
PA610(PA樹脂1)、PA612(PA樹脂2)、PA1010(PA樹脂3)、PA1012(PA樹脂4)、PA12(PA樹脂5)、AESNO TL(PA樹脂6)、PA11(PA樹脂7)などをアルケマ フランス社から入手し、以下の実験に適用した。
【0353】
-TPUフィルム、PETフィルム
TPUは、Argotec社の46510フィルム(脂肪族TPU)を購入して適用した。PETフィルムは、SKC社製のPETフィルムNRFを適用した。
【0354】
弾性層の製造
前記押出機に入れて溶融混練した後、単層シートとして弾性シートを押出した。このとき、溶融混練の温度は、PEBA樹脂7の場合に約220℃を適用し、各樹脂に応じて約200~300℃の範囲で溶融混練の温度を調節して行った。製造された単層の弾性シートは、連続した工程により一枚のキャリアフィルム(50μm~250μmの厚さのPETフィルム。PETフィルムのRaが0.001~0.01μmであるものを適用する)上に配置して組立体を形成し、この組立体が10~120℃の温度に加熱されたキャスティングロールとスクイージングロールとの間を通過しながら、弾性層を含む積層体を製造した。以降、キャリアフィルムを除去した約100μmの厚さの弾性層を、以下で実施例のフィルムとし、物性を評価した。
【0355】
キャリアフィルムを適用せずに前記と同じ方法及び厚さで製造したフィルムを、比較例のフィルムとし、以下で物性を評価した。
【0356】
弾性層の物性の評価
1)貯蔵弾性率の評価
ASTM D4065に準拠して、TAインスツルメント社のDMA Q800モデルを適用して貯蔵弾性率(Storage Modulus、E')を評価した。前記装置はDMA(Dynamic Mechanical Analysis)テンションモードで1Hz、2℃/minを適用し、温度区間(-40~80℃)において貯蔵弾性率(E')をMpa単位で測定した結果を表1に示した。Amplitudeは5μmが適用され、Pre forceは0.01Nが適用された。
【0357】
前記と共に、PETフィルム及びTPUフィルムを適用し、前記と同一に貯蔵弾性率を評価した結果を提示した。PETフィルムは、SKC社製の厚さ50μmのNRFフィルムであり、TPUは、Argotec社製の46510(厚さ100μmの単層フィルム)である。
【0358】
全てのサンプルフィルムは、23℃、50%RHの雰囲気で15日間コンディショニングを経た後、前記の評価に適用された。
【0359】
2)表面特性、光学的特性の評価
表面粗さは、ミツトヨ社(MITUTOYO)のSJ-310モデルを用いて、ASTM D4417に準拠して評価した。
【0360】
ヘイズは、日本電色社(Nippon denshoku)のヘイズメーターNDH-7000N製品を用いて、ISO 14782の規格に従って測定した。
【0361】
Y.I(Yellow Index)は、ハンターラブ社(Hunterlab)が製造したColor meter ultrascan proを適用して、YI E313(D65/10)モードで測定した。測定値が1以下である場合にPass、1超である場合にFailと評価した。
【0362】
Delta-Y.Iは、UVB Lamp(三共電気(SANKYO DENKI)社製のG15T8E、280~360nmの波長)を用いて3.0Wの出力で72時間紫外線に露出される前と後のフィルムのY.Iを測定し、露出後のY.Iから露出前のY.Iを引いた値を表示した。
【0363】
3)リカバリー力の評価
80mm×25mmのフィルムをフィルムの両端のそれぞれ15mmにジグ(jig)を用いて固定し、応力が加えられるフィルムの長さは50mm×25mmにセットした。前記フィルムを50mm/minの速度で2%引っ張った後、再び50mm/minの速度で元の長さに復元することを1サイクルとして、100回のサイクル後の引張試験を進行した。100回のサイクル後のフィルムのジグ間の長さ(Xf)を測定し、初期のフィルムのジグ間の長さ(Xo、50mm)と比較して、下記式2によってリカバリー指数を評価した。
【0364】
【0365】
前記式2において、
Xoは、初期の弾性層の長さ(mm)であり、
X2%は、弾性層を2%引っ張った後の長さ(mm)であり、
Xfは、50mm/minの速度で2%引っ張った後、再び50mm/minの速度で元の長さに復元することを1サイクルとして、100回のサイクル後の弾性層の長さ(mm)である。
【0366】
4)動的曲げ評価
動的曲げ評価(Dynamic folding test)をIEC 62715-6-1の規格に合わせて行った。フィルムを-40℃で2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げの程度で20万回の動的曲げ試験後にクラックの発生の有無を確認した。クラックが発生した場合はFail、目視で観察してクラックが発生していない場合をPassと評価した。
【0367】
【0368】
*貯蔵モジュラス指数K
SMは、下記式1で表される。
[式1]
【0369】
**高温貯蔵モジュラスの比率R
80/20は、下記式1-aで表される。
[式1-a]
【0370】
**低温貯蔵モジュラスの比率R
-40/20は、下記式1-bで表される。
[式1-b]
【0371】
***低温貯蔵モジュラスの差は、下記式1-cで表される。
[式1-c]
【0372】
前記式において、SMnは、温度n℃で測定した貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0373】
【0374】
*リカバリー指数は、下記式2で表される。
[式2]
【0375】
前記式2において、Xoは、初期の弾性層の長さ(mm)であり、X2%は、弾性層を2%引っ張った後の長さ(mm)であり、Xfは、50mm/minの速度で2%引っ張った後、再び50mm/minの速度で元の長さに復元することを1サイクルとして、100回のサイクル後の弾性層の長さ(mm)である。前記弾性層の長さは、固定部(ジグ)間の長さを意味する。
【0376】
前記表1及び表2を参照すると、製造された弾性層は、比較例の弾性層と比較して全て低いヘイズ値を示し、これは、表面粗さの値ともある程度関連があるものと考えられる。
【0377】
Delta-Y.Iは、PAやPEBAを適用した実施例が、その他の樹脂と比較して遥かに優れた結果を示した。特に、実施例の結果は、PETフィルムであるその他の樹脂1と比較しても優れた結果であるが、TPUを適用したその他の樹脂2と比較しても遥かに優れた結果である。また、その他の樹脂として適用したTPUが、芳香族TPUよりも紫外線耐久性がさらに優れると知られている脂肪族TPUであるという点を考慮すると、実施例のフィルムが遥かに優れた紫外線耐久性を有すると評価された。
【0378】
-40℃で行った動的曲げ評価は、その他の樹脂1及びその他の樹脂2がいずれもfailと評価されたため、低温を含む広い温度範囲でベンディング又はフォールディングの用途に適用するには、その他の樹脂のフィルムは不十分な特性を有するという点を確認した。
【0379】
リカバリー指数の場合も、適用した樹脂に応じて物性にばらつきはあったが、全体的にPEBAフィルム又はPAフィルムである実施例の場合が優れた結果を示し、PEBAフィルムがPAフィルムよりもさらに優れた結果を示した。
【0380】
リカバリー指数は、TPUフィルムを適用したその他の樹脂2のフィルムよりも、実施例のフィルムが多少劣るか、または同等レベル以上の物性を示した。反面、紫外線耐久性(黄変特性)、低温での動的曲げ評価の結果は、TPUフィルムと比較して、実施例のフィルムが遥かに優れた結果を示した。
【0381】
このような特性を考慮すると、前記具現例の弾性層またはそれを含むフィルムは、低温~高温の広い温度範囲で繰り返されるベンディング又はフォールディングが行われるフォルダブルディスプレイなどに活用度が優れるものと考えられる。
【0382】
実施例:フィルムの製造及び物性の評価
フィルムの準備
カバーフィルム試験片の製造:50μmの厚さの透明ポリイミドフィルム(SKC社製)上に、100μmの厚さの3M社の市販のOCA(-40℃で測定した貯蔵モジュラスと+80℃で測定した貯蔵モジュラスとの差が-100~+100kPa以内であるもの)を粘着層として使用し、前記粘着層上に、前記で製造した100μmの厚さの弾性層(PEBA樹脂7で製造したフィルム)を積層して、実施例1のカバーフィルム試験片を製造した(
図2の(b)の構造)。
【0383】
実施例1のカバーフィルムと同じ方式で製造するが、弾性層の種類を下記表4のように適用したカバーフィルム試験片を製造し、それぞれ実施例2及び比較例1とした。
【0384】
フィルムの物性の測定
1)引張衝撃強度の評価
JIS K 7160に準拠して弾性層の引張衝撃強度(tensile-impact strength)を評価した。測定温度は23℃、050%R.H.、測定条件は4.0Jのペンジュラム(pendulum)、共振角度を150°として適用した衝撃強度(Impact strength)及び吸収エネルギー(Absorbed energy)を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0385】
2)積層体であるフィルムの曲げ/ベンディング評価、ペンドロップ評価
動的曲げ試験(Dynamic folding test):保護フィルム試験片を用いてIEC 62715-6-1に準拠して、曲率半径2mm及び2秒/回の曲げの程度を適用し、総20万回のテストを行った後、浮き上がりが発生する場合に×、浮き上がりが発生しない場合に○で表示した。その結果は、下記表4に示した。
【0386】
静的曲げ試験(Static bending test):保護フィルム試験片を用いてIEC 62715-6-1に準拠して、曲率半径2mmとしてテストを行った後、24時間後に浮き上がりが発生する場合に×、浮き上がりが発生しない場合に○で表示した。その結果は、下記表4に示した。
【0387】
ペンドロップ評価:9cmの高さからペン(pen)を積層体であるフィルムサンプルに落下させたとき、良好である場合にpass、フィルムが割れた場合にfailと評価した。
【0388】
透過率/ヘイズ(Haze):NDH7000(日本電色社製)を用いて透過率及びヘイズを測定した。ヘイズが1%以下である場合にPass、1%超である場合にFailと評価した。透過率は、可視光線での透過率が90%以上である場合をPass、90%未満である場合をFailと評価した。
【0389】
【0390】
【0391】
表3を参照すると、PEBA樹脂7を適用した実施例のフィルムの衝撃強度が、その他の樹脂2(TPU)を適用したフィルムの衝撃強度やその他の樹脂1(PET)を適用したフィルムの衝撃強度よりも遥かに高く示され、衝撃に非常に強い特性を有するという点が確認できた。吸収エネルギーの場合も、PEBA樹脂7を適用した実施例のフィルムの場合が、その他の樹脂2(TPU)を適用したフィルムやその他の樹脂1(PET)を適用したフィルムの場合よりも遥かに優れていた。
【0392】
これは、上述した貯蔵モジュラスに関連する特性はPETよりもTPUが優れるが、引張衝撃強度の特性の面でTPUがPETよりも劣る特性を有するということを示す。また、PEBAを適用したフィルムが、貯蔵モジュラスの特性及び引張衝撃強度の特性がいずれも優れるということも示す結果である。
【0393】
表4を参照すると、前記で製造したPEBA樹脂7を適用した実施例1の積層体は、低温及び高温での動的曲げ評価、低温及び高温での静的曲げ評価、ペンドロップ評価、透過率、ヘイズの全ての面でPassと評価され、測定した物性の全てにおいて優れると評価された。反面、実施例1と同一の粘着層、PIフィルムを適用するが、PEBA樹脂7の代わりにTPUを適用した実施例2は、他の特性は全て優れるが、低温動的曲げ評価においてFailと評価され、低温での繰り返される曲げの発生時に浮き上がりが発生し得ると評価された。反面、PETを適用した比較例1は、動的及び静的曲げ評価において全てFailと評価され、ベンダブル又はローラブルカバーフィルムとして適用しにくい物性を有すると評価された。比較例1は、ポリイミドフィルム単独でテストした結果であり、ペンドロップ評価においてFailと評価され、ポリイミドフィルム単独ではカバーフィルムとして衝撃保護の効果を得ることが難しいと評価された。
【0394】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0395】
100 弾性層
100a 弾性層の一面
100b 弾性層の他面
120 耐熱層
130,130' 粘着層
140 ハードコーティング層
150 離型フィルム
80 弾性シート
92 キャリアフィルム
94 シート保護フィルム
40 第1ロール、キャスティングロール
60 第2ロール、スクイージングロール
90 シート積層体
190 フィルム、フィルム積層体
300 発光機能層
320 発光層
322 信号伝達層
324 発色層
326 封止層
340 センサ層
360 偏光層
380 支持層
900 多重層電子装備