(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオール及びポリウレタン発泡体のアルデヒド放出量を低減するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240909BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240909BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20240909BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240909BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08L75/04
C08K5/07
C08G18/32 025
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2022549891
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 CN2020078948
(87)【国際公開番号】W WO2021179240
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】パオ、ウェンピン
(72)【発明者】
【氏名】フォン、シャオカン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ハイイン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ピン
(72)【発明者】
【氏名】タン、チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ、チエン
(72)【発明者】
【氏名】チー、チエ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110305436(CN,A)
【文献】国際公開第2018/148959(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0088497(US,A1)
【文献】特開2019-026753(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163863(WO,A1)
【文献】特表2020-506272(JP,A)
【文献】国際公開第2020/024233(WO,A1)
【文献】特表2020-508371(JP,A)
【文献】特表2022-501452(JP,A)
【文献】特表2018-517828(JP,A)
【文献】特開2005-154588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン発泡体を生成するためのプロセスであって、芳香族ポリイソシアネートと、少なくとも2の平均官能価及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有する少なくとも1つのイソシアネート反応性材料と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの界面活性剤と、少なくとも1つの触媒と、を含有する反応混合物を形成することと、前記反応混合物を硬化して、前記ポリウレタン発泡体を形成することと、を含み、前記硬化する工程は、(i)
N-(2-ヒドロエチル)アセトアセトアミドまたは(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートと、(ii)少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの水溶性
ポリエチレンイミンと、の存在下で実施される、プロセス。
【請求項2】
ポリウレタン発泡体からのアルデヒド放出量を低減するためのプロセスであって、a)
(i)
N-(2-ヒドロエチル)アセトアセトアミドまたは(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートと、
(ii)少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの水溶性
ポリエチレンイミンとを、
少なくとも2の平均官能価及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有する少なくとも1つのイソシアネート反応性材料と組み合わせて、混合物を形成することと、次に、b)工程a)からの前記混合物を、少なくとも1つの有機ポリイソシアネートと組み合わせ、得られた前記反応混合物を、少なくとも1つの発泡剤、少なくとも1つの界面活性剤、及び少なくとも1つの触媒の存在下で硬化させて、ポリウレタン発泡体を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のプロセスで作製された、ポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低レベルのアルデヒドを示すポリエーテルポリオール及びポリウレタン、並びにそのようなポリウレタンを生成するための方法に関する。
【0002】
ポリウレタン発泡体は、多くのオフィス、家庭、及び車両用途で使用されている。例えば、家電製品並びに、寝具及び家具のクッション材として使用されている。自動車及びトラックでは、ポリウレタンは、シートクッション材として、ヘッドレスト、ダッシュボード及びインストルメントパネル、アームレスト、ヘッドライナーで、音響的な軽減対策として、騒音、振動、及びハーシュネスの軽減対策、並びにその他の用途で使用されている。
【0003】
これらのポリウレタンは、多くの場合、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、及びプロピオンアルデヒドなどの様々なレベルのアルデヒドを放出する。これらの発泡体の気泡状構造のため、発泡体に含有されるアルデヒドは、容易に大気中に漏れ出る。これは、特に人又は動物が密閉された空間内でその材料に曝露されている場合に、臭気の懸念及び曝露の懸念を提示する可能性がある。車両製造元は、車、トラック、バス、列車、及び航空機の客室で使用されている材料からの放出量に対して、より厳しい制限を課している。
【0004】
様々なタイプの材料からのアルデヒド放出量を低減するために捕捉剤が使用されることがある。ポリウレタン分野では、例えば、抗酸化剤及びヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)をポリオールに添加してアルデヒドを低減することを国際公開第2006/111492号が記載している。国際公開第2009/114329号は、それぞれポリオール及びポリイソシアネート、並びにそれらの材料から製造されたポリウレタン中のアルデヒドを低減するために、ポリオールをある特定の種類のアミノアルコールで処理し、またポリイソシアネートをある特定のニトロアルカンで処理することを記載している。特開2005-154599号は、ポリウレタン配合物にアルカリ金属水素化ホウ素を添加することを、その目的として記載している。米国特許第5,506,329号は、ポリイソシアネート含有調合物からのホルムアルデヒドを捕捉するためのある特定のアルジミンオキサゾリジン化合物の使用を記載し、織物及び合板用途でのホルムアルデヒド捕捉剤としてのニトロアルカン及びアミノアルコールを記載する。欧州特許第1428847(A)号は、ホルムアルデヒドを捕捉するために様々なポリアミン化合物を使用することを記載している。
【0005】
部分的にはポリウレタン発泡体中に存在するアルデヒドが必ずしも発泡体を作製するのに使用される原材料から運び込まれるわけではないため、これらのアプローチは限られた利点を提供する。特に、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドは、硬化工程中、又は発泡体が紫外線、高温、若しくは他の条件にさらされた後に、形成され得る。
【0006】
国際公開第2018/148898号は、ポリウレタン発泡体からのアルデヒド放出量を低減するために、ある特定の抗酸化剤と共にアミノアルコールを使用することを記載する。この組み合わせは、ある程度の改善を提供するが、アルデヒド放出量のより大幅な低減が望まれる。
【0007】
ある特定のアセトアセトアミド化合物は、米国特許第10,196,493号及び米国特許出願公開第2019-0119460号にポリウレタン発泡体用のアルデヒド捕捉剤として記載されている。ある特定の環状β-ジケトンは、国際出願PCT/CN19/103566号にアルデヒド捕捉剤として記載されている。
【0008】
アルデヒド放出量を効果的かつ経済的に低減するための方法が求められている。好ましくは、本方法は、ポリウレタンの特性又は性能に大きな変化をもたらさない。
【0009】
本発明は、ポリウレタン発泡体を生成するためのプロセスであり、芳香族ポリイソシアネートと、少なくとも2の平均官能価及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有する少なくとも1つのイソシアネート反応性材料と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの界面活性剤と、少なくとも1つの触媒と、を含有する反応混合物を形成することと、反応混合物を硬化して、ポリウレタン発泡体を形成することと、を含み、硬化することは、(i)少なくとも1つのβ-ジケトン化合物であって、β-ジケトン化合物は、構造I:
【0010】
【化1】
[式中、R
1及びR
2は独立して、水素、-NH
2、-NH-R
3-N(R
4)
2、-OR
4、及び-R
4から選択され、各R
3及びR
4は独立して、無置換炭化水素又はO、N、S、P、若しくはハロゲンのうちの1つ以上で置換された炭化水素であり、ただし、R
1及びR
2は一緒に、二価基を形成してもよく、かつR
1及びR
2のうちの少なくとも1つは、水素ではないことを更に条件とする]によって表される化合物である、少なくとも1つのβ-ジケトン化合物と、(ii)少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの水溶性アミノ官能性ポリマーと、の存在下で実施される。
【0011】
本発明はまた、ポリウレタン発泡体からのアルデヒド放出量を低減するためのプロセスであり、a)
(i)構造I:
【0012】
【化2】
[式中、R
1及びR
2は独立して、水素、-NH
2、-NH-R
3-N(R
4)
2、-OR
4、及び-R
4から選択され、各R
3及びR
4は独立して、非置換炭化水素又はO、N、S、P、若しくはハロゲンのうちの1つ以上で置換された炭化水素であり、ただし、R
1及びR
2は一緒に、二価基を形成してもよく、かつR
1及びR
2のうちの少なくとも1つは、水素ではないことを更に条件とする]によって表される化合物である少なくとも1つのβ-ジケトン化合物と、
(ii)少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの水溶性アミノ官能性ポリマーとを、
少なくとも2の平均官能価及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有する少なくとも1つのイソシアネート反応性材料と組み合わせて、混合物を形成することと、次に、b)工程a)からの混合物を、少なくとも1つの有機ポリイソシアネートと組み合わせ、得られた反応混合物を、少なくとも1つの発泡剤、少なくとも1つの界面活性剤、及び少なくとも1つの触媒の存在下で硬化させて、ポリウレタン発泡体を形成することと、を含む。
【0013】
本発明はまた、前述のプロセスのいずれかで製造されたポリウレタン発泡体である。
【0014】
本発明はまた、ポリエーテルポリオールからのアルデヒド放出量を低減するためのプロセスであり、0.01~5重量部の少なくとも1つのβ-ジケトン化合物と、少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する0.01~5重量部の少なくとも1つの水溶性アミノ官能性ポリマーとを、100重量部のポリエーテルポリオールと組み合わせることを含み、β-ジケトン化合物は、構造I:
【0015】
【化3】
[式中、R
1及びR
2は独立して、水素、-NH
2、-NH-R
3-N(R
4)
2、-OR
4、及び-R
4から選択され、各R
3及びR
4は独立して、非置換炭化水素又はO、N、S、P、若しくはハロゲンのうちの1つ以上で置換された炭化水素であり、ただし、R
1及びR
2は一緒に、二価基を形成してもよく、かつR
1及びR
2のうちの少なくとも1つは、水素ではないことを更に条件とする]によって表される。
【0016】
本発明はまた、ヒドロキシル基1当量当たり少なくとも200グラムのヒドロキシル当量重量を有するポリエーテルポリオールであり、ポリエーテルポリオールは、0.01~5重量部の少なくとも1つのβ-ジケトン化合物と、少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する0.01~5重量部の少なくとも1つの水溶性アミノ官能性ポリマーとを、100重量部のポリエーテルポリオールと共に含有し、β-ジケトン化合物は、構造I:
【0017】
【化4】
[式中、R
1及びR
2は独立して、水素、-NH
2、-NH-R
3-N(R
4)
2、-OR
4、及び-R
4から選択され、各R
3及びR
4は独立して、非置換炭化水素又はO、N、S、P、若しくはハロゲンのうちの1つ以上で置換された炭化水素であり、ただし、R
1及びR
2は一緒に、二価基を形成してもよく、かつR
1及びR
2のうちの少なくとも1つは、水素ではないことを更に条件とする]によって表される。
【0018】
β-ジケトン化合物及び水溶性アミノ官能性ポリマーの両方が存在すると、ポリウレタン発泡体及びポリエーテルポリオールによって放出されるアルデヒドのレベルを低減することが見出された。組み合わせの性能は、β-ジケトン化合物及びアミノ官能性ポリマーのそれ自体による性能から予想されるよりもはるかに優れている。いくつかの実施形態において、β-ジケトン化合物は、イソシアネート基に対して反応性であるという更なる利点を有する。そのため、それは、硬化工程中に反応してポリウレタンポリマー構造に組み込まれるようになる。これは、有機化合物の放出量を更に低減する。構造Iのβ-ジケトン化合物の少なくとも一部は、加水分解に耐性があり、揮発性の加水分解副生成物の生成及び潜在的な放出を低減する。
【0019】
構造Iにおいて、各R3及びR4は独立して、芳香族、脂肪族、脂環式、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。R3及びR4は独立して、O、N、S、P、又はハロゲン原子で置換され得る。酸素含有置換基は、例えば、カルボニル基、ヒドロキシル基、エステル基、炭酸塩基、又はエーテル基であり得る。各R4は、好ましくは、最大50個の炭素原子、より好ましくは、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する。存在する場合、R3は、好ましくは、最大10個、最大6個、最大4個、又は最大2個の炭素原子を有する。特定の実施形態において、各R4は独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのアルキル(前述のいずれかの任意の異性体を含む);シクロヘキシル;アルキル置換シクロヘキシル;フェニル及びアルキル置換フェニルであり得、各場合において好ましくは、最大10個、特に最大6個の炭素原子を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、R1及びR2は一緒に、二価基を形成し、この場合、β-ジケトン化合物は、-C(O)-CH2-C(O)-部分が、R1及びR2によって形成された二価基と共に環構造の一部を形成する、環状化合物である。
【0021】
β-ジケトン化合物は、好ましくは、最大290g/mol、より好ましくは最大250g/molの分子量を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、β-ジケトン化合物は、アセト酢酸エステル又はアセト酢酸アミドであり、構造II:
【0023】
【化5】
[式中、R
5は、置換若しくは非置換のC
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換のアリール基、好ましくはC
1又はC
2アルキル基であり、Xは、エステルの場合は-O-であり、アミドの場合は-NH-である]を有する1つ以上のアセト酢酸エステル基又はアセト酢酸アミド基を有することを特徴とする。R
5は、最も好ましくはメチルである。アセト酢酸エステル又はアセト酢酸アミドは、2つ以上のそのようなアセト酢酸エステル基又はアセト酢酸アミド基を有し得る。好適なアセト酢酸エステル及びアセト酢酸アミドの中には、構造II:
【0024】
【化6】
[式中、Aは、連結基であり、nは、少なくとも1であり、R
5及びXは、構造IIに関して記載される通りである]によって表されるものがある。Aは、例えば、C
1~C
30の直鎖又は分岐鎖の、非置換又は置換アルキル、アリール、アリールアルキル、アルカリール基であり得、置換基は、任意選択で、O、N、S、P、若しくはハロゲンであり得るか、又はそれらを含み得るか、又はより多いそれらであってもよい。酸素含有置換基は、例えば、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カーボネート、又はエーテル基であり得る。nは、例えば、1~100、1~20、1~10、又は1~4であり得る。Xが酸素である場合、nは、好ましくは少なくとも2である。
【0025】
有用なアセト酢酸化合物には、出願公開第2005-06754(A)号、同第2005-179423(A)号、及び米国特許出願公開第2016/0304686号に記載されているものが含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態において、構造IIIのXは、酸素であり、nは、少なくとも2であり、Aは、1つ以上の-OH基の除去後のポリアルコールの残基である。そのような場合のアセト酢酸化合物は、A(OH)xの形態を有するアルコールのアセト酢酸エステル又はポリエステルであり、式中、xは、n以上である。アセト酢酸エステルの例には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメトキシメタン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、グルコース、フルクトース、スクロース、1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロキシ-n-ヘキサンなどのポリオールのモノ及びポリアセト酢酸エステルが挙げられる。
【0027】
特定のアセト酢酸エステル化合物には、例えば、トリメチロールプロパンモノ-、ジ、又はトリアセト酢酸エステル、トリメチロールエタンモノ-、ジ-、又はトリアセト酢酸エステル、トリメトキシメタンモノ-、ジ-、又はトリアセト酢酸エステル;エチレングリコールモノ-又はジアセト酢酸エステル;1,2-プロピレングリコールモノ-又はジアセト酢酸エステル、1,3-プロピレングリコールモノ-又はジアセト酢酸エステル、ペンタエリトリトールモノ-、ジ-、トリ-、又はテトラアセト酢酸エステル、グリセリンモノ-、ジ、又はトリアセト酢酸エステル、ジエチレングリコールモノ-又はジアセト酢酸エステル、ジプロピレングリコールモノ-又はジアセト酢酸エステル、トリエチレングリコールモノ-又はジアセト酢酸エステル、エリトリトールモノ-、ジ-、トリ-、又はテトラアセト酢酸エステル、n-ヘキサンモノ-、ジ、トリ、テトラ、ペンタ-、又はヘキサアセト酢酸エステル、ソルビトールモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、又はヘキサアセト酢酸エステル、及び1,4-ブタンジオールモノ-又はジアセト酢酸エステルが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、構造IIIのXは、-NH-であり、nは、1以上であり、Aは、1つ以上の-NH2基の除去後のアミン又はポリアミンの残基である。そのような場合のアセト酢酸化合物は、A(NH2)xの形態を有するアミンのアセト酢酸アミド又はポリアミドであり、式中、xは、n以上である。そのようなアミド化合物の例は、
【0029】
【0030】
特定の実施形態において、β-ジケトン化合物は、構造IV:
【0031】
【化8】
[式中、R
8は、水素又は炭化水素基であり、R
6は、水素、炭化水素、ヒドロキシアルキル、又はアミノアルキルであり、R
7は、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルであり、nは、少なくとも1である]によって表される3-オキソプロパンアミド化合物である。いくつかの実施形態において、R
6は、水素、又は最大6個、好ましくは2~4個の炭素原子を有するアミノアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である。R
6は、最も好ましくは、水素である。R
7は、好ましくは、最大6個、特に2~4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルである。R
7は、最も好ましくは、2-ヒドロキシエチル(-CH
2-CH
2-OH)又は2-ヒドロキシプロピル(-CH
2-CH(CH
3)-OH)である。nは、好ましくは、1~6であり、より好ましくは1~4である。特定の実施形態において、nは、1、2、3、又は4であり得る。nは、最も好ましくは、1である。
【0032】
いくつかの実施形態において、R8は、フェニル又は最大6個の炭素原子を有するアルキルであり、R6は、水素であり、R7は、2-ヒドロキシエチル又は2-ヒドロキシプロピルであり、nは、1である。特に好ましい3-オキソプロパンアミドは、N-(2-ヒドロキシエチル)-3-オキソブタンアミドであり、これは、R8が、メチルであり、R6が、水素であり、R7が、2-ヒドロキシエチルであり、nが、1である構造IVに相当する。
【0033】
更に他の実施形態において、β-ジケトン化合物は、少なくとも1つの
【0034】
【化9】
部分を、環の一部として有することを特徴とする環状化合物である。この環は、例えば、4、5、又は6個の環原子を含有し得る。環原子(環の一部を形成する1,3-ジケトン構造の原子以外)は、例えば、炭素、窒素、及び/又は酸素原子であり得る。
【0035】
好適な環状β-ジケトン化合物の中には、構造
【0036】
【化10】
[式中、X、Y、Zは独立して、カルボニル、-C(R
9R
10)-、-NR
11-、-O-、又は化学結合である]によって表されるものがある。各R
9及びR
10は独立して、H、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換若しくは非置換フェニル基、ハロゲン、-CO
2CH
3、又は-CNであり、ただし、R
9及びR
10のうちの任意の2つ以上は、分子内又は分子間で結合してもよく、各R
11は独立して、H、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖又は分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、又は置換若しくは非置換フェニル基である。R
9、R
10、及びR
11上の置換基は、任意選択的に、N、O、S、P、及び/又はハロゲン原子を含み得る。
【0037】
他の好適な環状β-ジケトンは、構造VI:
【0038】
【化11】
[式中、Zは、カルボニル、-C(R
13R
14)-
、-NR
15-
、-O-又は化学結合であり、各R
12、R
13、及びR
14は独立して、H、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル若しくはアルケニル基、置換若しくは非置換フェニル基、ハロゲン、-CO
2CH
3、又は-CNであり、ただし、R
12、R
13、及びR
14のうちの任意の2つ以上は、分子内又は分子間で結合してもよく、各R
15は独立して、H、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル若しくはアルケニル基、又は置換若しくは非置換フェニル基であることを条件とする]によって表される。
【0039】
R12、R13、R14、及びR15は、ヘテロ原子で置換される場合、好ましくは窒素原子及び/又は酸素原子のみで置換される。酸素置換基は、例えば、エーテル酸素、カルボキシル酸素、又はヒドロキシル酸素であり得る。窒素置換基は、第一級又は第二級のアミノ窒素、イミド窒素、又はアミド窒素であり得る。
【0040】
特定の環状β-ジケトンには、例えば、シクロヘキサン-1,3,5-トリオン、1,3-シクロヘキサンジオン、ピラゾリジン-3,5-ジオン、1,2-ジメチルピラゾリジン-3,5-ジオン、1-メチルピラゾリジン-3,5-ジオン、1,1-ジメチル-シクロペンタン-2,4-ジオン、1-エチル-シクロヘキサン-2,4-ジオン、1,1-ジエチル-シクロヘキサン-3,5-ジオン、6-メチル-ピラン-2,4-ジオン、6-エチル-ピラン-2,4-ジオン、6-イソプロピル-ピラン-2,4-ジオン、6-(n)-ブチル-ピラン-2,4-ジオン、6-イソブチル-ピラン-2,4-ジオン、6-ペンチル-ピラン-2,4-ジオン、6-イソペンチル-ピラン-2,4-ジオン、6,7-ジヒドロシクロペンタ[b]ピラン-2,4(3H,5H)-ジオン、5,6,7,8-テトラヒドロ-クロマン-2,4-ジオン、クロマン-2,4-ジオン、6-トランス-プロペニル-ジヒドロ-ピラン-2,4-ジオン、1-オキサスピロ-[5,5]-ウンデカン-2,4-ジオン、2,2-ジプロピル-[1,3]-ジオキサン-4,6-ジオン、2-フェニル-[1,3]-ジオキサン-4、6-ジオン、6,10-ジオキサ-スピロ-[4,5]-デカン-7,9-ジオン、1,5-ジオキサ-スピロ-[5,5]-ウンデカン-2,4-ジオン、1-メチル-2,4,6-トリオキソ-ヘキサヒドロ-ピリミジン、1-エチル-2,4,6-トリオキソ-ヘキサヒドロ-ピリミジン、1-フェニル-2,4,6-トリオキソ-ヘキサヒドロ-ピリミジン、s-インダセン-1,3,5,7(2H,6H)-テトラオン、フラン-2,4(3H,5H)-ジオン、3,3’-(ヘキサン-1,1-ジイル)ビス(1-メチルピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、フラン-2,4(3H,5H)-ジオン、ピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、及び1,3-ジメチルピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが挙げられる。
【0041】
水溶性アミノ官能性ポリマーは、少なくとも300g/molの数平均分子量を有する。分子量は、少なくとも500g/molであり得、例えば、1,000,000g/mol、最大500,000g/mol、最大250,000g/mol、最大100,000g/mol、最大25,000g/mol、最大10,000g/mol、最大5,000g/mol、又は最大2,000g/molであり得る。水溶性アミノ官能性ポリマーは、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する。水溶性アミノ官能性ポリマーは、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、又は少なくとも50個の第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を含有してもよく、20,000個もの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を含有してもよい。アミノ基1個当たりの分子量は、例えば、少なくとも40又は少なくとも50であってもよく、例えば、最大500、最大300、又は最大250であってもよい。
【0042】
有用な水溶性アミノ官能性ポリマーには、ビニルアミンのホモポリマー及びコポリマー、架橋ポリアミドアミン、エチレンイミングラフト化架橋ポリアミドアミン、ポリエチレンイミン、アルコキシ化ポリエチレンイミン、架橋ポリエチレンイミン、アミド化ポリエチレンイミン、アルキル化ポリエチレンイミン、アミン-エピクロロヒドリンポリ縮合物、多官能性エポキシド及び他官能性アミンから作製された水溶性ポリ付加物、アルコキシ化ポリアミン、ポリアリルアミン、並びにリシン、オルニチン、若しくはアルギニンの縮合物、又はこれらのうちの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。好適な水溶性アミノ官能性ポリマーは、例えば、欧州特許第1428847(A)号に記載されている。
【0043】
好ましい水溶性アミノ官能性ポリマーは、ポリエチレンイミンである。ポリエチレンイミンは、触媒の存在下で水溶液中のエチレンイミンを重合することによって作製することができる。
【0044】
本発明に従って発泡体を生成するために、少なくとも1つのポリイソシアネートを、少なくとも2の官能価及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有する少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物と反応させる。以下に論じるように、他の成分が存在し得る。反応は、構造Iのβ-ジケトン化合物及び水溶性アミノ官能性ポリマーの存在下で実施される。
【0045】
β-ジケトン化合物の好適な量は、0.01~5pph(すなわち、1分子当たり少なくとも2つのイソシアネート反応性基及びイソシアネート反応性基当たり少なくとも200の当量重量を有するイソシアネート反応性化合物(複数可)の100重量部当たり0.01~5重量部)である。好ましい最小量は、少なくとも0.1又は少なくとも0.2pphであり、好ましい最大量は、最大2.5、最大1.5、最大1、最大0.75、又は最大0.5pphである。
【0046】
水溶性アミノ官能性ポリマーの好適な量は、0.01~2pph(すなわち、1分子当たり少なくとも2つのイソシアネート反応性基及びイソシアネート反応性基当たり少なくとも200の当量重量を有するイソシアネート反応性化合物(複数可)の100重量部当たり0.01~2重量部)である。好ましい最小量は、少なくとも0.025又は少なくとも0.04pphであり、好ましい最大量は、最大1、最大0.5、最大0.25、又は最大0.1 0pphである。
【0047】
β-ジケトン化合物及び水溶性アミノ官能性ポリマーは、発泡体を生成するために使用される配合物の種々の成分のうちのいずれか1つ以上との混合物として提供することができる。代替的に、それらのそれぞれを、他の成分のうちのいずれとも事前に組み合わせることなく、別個の構成成分又は流れとして反応に添加し得る。
【0048】
しかしながら、好ましくは、ポリウレタン発泡体を形成する前に、β-ジケトン化合物及び水溶性アミノ官能性ポリマーを、1分子当たり少なくとも2つのイソシアネート反応性基及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有するイソシアネート反応性化合物(複数可)とブレンドする。イソシアネート反応性化合物(複数可)は、好ましくは、少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含む。得られたブレンドを、発泡体を作製する前の少なくとも30分の時間にわたり、ほぼ室温又はより高い温度(ただし、β-ジケトン化合物の沸点未満、かつポリオールが分解する温度未満)に維持してもよい。そのようなブレンドを、そのような条件下で、最大1か月、最大1週間、又は最大1日などの任意のより長い時間維持してもよい。
【0049】
発泡体配合物は、少なくとも2の官能価及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有する少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物を含む。「官能価」とは、1分子当たりのイソシアネート反応性基の平均数を指す。官能価は、8以上であり得るが、好ましくは2~4である。イソシアネート基は、ヒドロキシル基、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基などであってもよいが、ヒドロキシル基が好ましい。当量重量は、最大6000以上であってもよいが、好ましくは500~3500、より好ましくは1000~2500である。このイソシアネート反応性化合物は、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシル末端ブタジエンポリマー又はコポリマー、ヒドロキシル含有アクリレートポリマーなどであってもよい。好ましいタイプのイソシアネート反応性化合物は、ポリエーテルポリオール、特にプロピレンオキシドのポリマー又はプロピレンオキシドとエチレンオキシドとのコポリマーである。プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのコポリマーは、末端ポリ(オキシエチレン)ブロックを有するブロックコポリマーであり得、少なくとも50%のヒドロキシル基が第一級である。プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの別の好適なコポリマーは、ランダム又は疑似ランダムコポリマーであり得、末端ポリ(オキシエチレン)ブロックもまた含有し得、ヒドロキシル基の少なくとも50%が第一級である。
【0050】
イソシアネート反応性化合物として有用なポリエステルポリオールには、ポリオール、好ましくはジオールと、ポリカルボン酸又はそれらの無水物、好ましくはジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との反応生成物が挙げられる。ポリカルボン酸又は無水物は、脂肪族、脂環式、芳香族、及び/又は複素環式であってもよく、ハロゲン原子などで置換されてもよい。ポリカルボン酸は、不飽和であってもよい。これらのポリカルボン酸の例には、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸が挙げられる。ポリエステルポリオールの作製に使用されるポリオールは、好ましくは約150以下の当量重量を有し、エチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、1,4-及び1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシド、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコールなどが挙げられる。Dow Chemical Companyによって「Tone」という商品名で市販されているものなどのポリカプロラクトンポリオールも有用である。
【0051】
所望であれば、少なくとも2の官能価及びイソシアネート反応性基当たり少なくとも200の当量重量を有する2つ以上の前述のイソシアネート反応性化合物の混合物を使用することができる。
【0052】
イソシアネート反応性化合物(複数可)は、分散ポリマー粒子を含有し得る。これらのいわゆるポリマーポリオールは、例えば、スチレン、アクリロニトリル、若しくはスチレン-アクリロニトリルなどのビニルポリマーの粒子、ポリ尿素ポリマーの粒子、又はポリウレタン尿素ポリマーのポリマーを含み、いずれの場合にも、連続ポリオール相中に分散される。
【0053】
加えて、前述のイソシアネート反応性化合物は、1つ以上の架橋剤及び/又は鎖延長剤との混合物で使用することができる。本明細書の目的における「架橋剤」は、1分子当たり少なくとも3つのイソシアネート反応性基及びイソシアネート反応性基の1モル当たり200グラム未満のイソシアネート反応性基当たり当量重量を有する化合物である。本発明の目的における「鎖延長剤」は、1分子当たり正確に2つのイソシアネート反応性基を有し、かつイソシアネート反応性基の1モル当たり200グラム未満のイソシアネート反応性基当たり当量重量を有する。いずれの場合にも、イソシアネート反応性基は、好ましくは、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、又は第二級アミノ基である。架橋剤及び鎖延長剤は、好ましくは最大150、より好ましくは最大125の当量重量を有する。
【0054】
架橋剤の例には、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、最大199の当量重量を有する前述のいずれかのアルコキシレートなどが挙げられる。鎖延長剤の例には、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど)、グリコールエーテル(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど)、エチレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミンなど、並びに最大199の当量重量を有する前述のいずれかのアルコキシレートなどが挙げられる。
【0055】
架橋剤及び/又は鎖延長剤は通常、(仮にあったとしても)少量で存在する。好ましい量は、0~5pphの架橋剤及び/又は鎖延長剤である。より好ましい量は、0.05~3pphであり、更により好ましい量は、0.1~2.5pphの1つ以上の架橋剤である。
【0056】
好適なポリイソシアネートの例は、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethanediisocyanate、MDI)の種々の異性体、いわゆる高分子MDI生成物(モノマーMDI中のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物である)、カルボジイミド変性MDI生成物(135~170の範囲のイソシアネート当量重量を有するいわゆる「液体MDI」生成物など)、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、水素化MDI(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチチオキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタンジイソシアネート、水素化ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、及び4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートなどが挙げられる。ウレタン、尿素、ウレトンイミン、ビウレット、アロファネート、及び/又はカルボジイミド基を含むように修飾された前述のいずれかを使用することができる。
【0057】
好ましいイソシアネートは、TDI、MDI、及び/又は高分子MDI、並びにウレタン、尿素、ウレトンイミン、ビウレット、アロファネート、及び/又はカルボジイミド基を含有する、MDI及び/又は高分子MDIの誘導体を含む。特に好ましいイソシアネートは、TDI及びMDIの混合物である。
【0058】
発泡体配合物に提供されるポリイソシアネートの量は、「イソシアネート指数」として表され、これは、発泡体配合物中のイソシアネート基の、イソシアネート反応性基に対する比の100倍である。イソシアネート指数は、典型的には約60~150である。好ましいイソシアネート指数は、60~125であり、より好ましいイソシアネート指数は、65~115である。いくつかの実施形態において、イソシアネート指数は、70~115又は75~115である。水は、2つのイソシアネート反応性基を有すると見なされる。
【0059】
発泡剤は、化学(発熱)タイプ、物理(吸熱)タイプ、又は各タイプの少なくとも1つの混合物であり得る。化学タイプは典型的には、発泡反応の条件下で反応又は分解して二酸化炭素又は窒素ガスを生成する。水及び様々なカルバメート化合物は、好適な化学発泡剤の例である。物理タイプは、二酸化炭素、様々な低沸点炭化水素、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロクロロカーボン、エーテルなどを含む。水は、単独で、又は1つ以上の物理発泡剤との組み合わせで、最も好ましい発泡剤である。
【0060】
発泡剤は、所望の発泡体密度を提供するのに十分な量で存在する。水が発泡剤である場合、好適な量は、一般に1.0~7pph、好ましくは2~6pphである。
【0061】
好適な界面活性剤は、材料が硬化するまで発泡反応混合物の気泡を安定させるのに役立つ材料である。ポリウレタン発泡体の作製に一般的に使用されているような多種多様なシリコーン界面活性剤を、本発明のポリマーポリオール又は分散液を用いた発泡体の作製に使用することができる。そのようなシリコーン界面活性剤の例は、Tegostab(商標)(Evonik Corporation)、Niax(商標)(Momentive)、及びDabco(商標)(Evonik Corporation)の商品名で市販されている。
【0062】
界面活性剤は、典型的には最大5pph、より典型的には0.1~2pph、好ましくは0.25~1.5pphの量で存在する。
【0063】
好適な触媒には、米国特許第4,390,645号に記載されているものが挙げられる。代表的な触媒には、
(a)トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、1,4-ジアゾビシクロ-2,2,2-オクタン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、モルホリン、4,4’-(オキシジ-2,1-エタンジイル)ビス、トリ(ジメチルアミノプロピル)アミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、及びトリエチレンジアミンなどの第三級アミン、並びにジメチルアミンプロピルアミンなどの1つ以上のイソシアネート反応性基を含有するいわゆる「低放出性」第三級アミン触媒、
(b)トリアルキルホスフィン及びジアルキルベンジルホスフィンなどの第三級ホスフィン、
(c)アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどと、Be、Mg、Zn、Cd、Pd、Ti、Zr、Sn、As、Bi、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、及びNiなどの金属とから得ることができるものなどの、種々の金属のキレート、
(D)塩化第二鉄、塩化第二スズ、塩化第一スズ、三塩化アンチモン、硝酸ビスマス、及び塩化ビスマスなどの強酸の酸性金属塩、
(e)アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、及びフェノキシドなどの強塩基、
(f)Ti(OR)4、Sn(OR)4、及びAl(OR)3などの種々の金属のアルコラート及びフェノラート[式中、Rは、アルキル又はアリールである]、並びに、当該アルコラートの、カルボン酸、β-ジケトン、及び2-(N,N-ジアルキルアミノ)アルコールとの反応生成物、
(g)酢酸ナトリウム、オクタン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、オクタン酸鉛、ナフテン酸マンガン及びナフテン酸コバルトなどの金属ドライヤーを含む、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Pb、Mn、Co、Ni、及びCuなどの多様な金属と有機酸との塩、並びに、
(h)四価のスズ、三価及び五価のAs、Sb、及びBiの有機金属誘導体、並びに鉄及びコバルトの金属カルボニルが挙げられる。
【0064】
触媒は典型的には、最大3pph、一般に最大2pphなどの少量で存在する。触媒の好ましい量は、0.05~2pphである。
【0065】
発泡体は、得られた発泡体中のアルデヒド及び/又は他の放出量を低減する追加の化合物の存在下で製造することができる。これらの中には、少なくとも1つの第一級アミノ基又は第二級アミノ基及び少なくとも1つのヒドロキシル基を有し、それぞれが脂肪族炭素原子に結合していることを特徴とするアミノアルコール化合物、並びに窒素原子が脂肪族炭素原子に結合している-NH-OH基を含むアルキルヒドロキシルアミン化合物がある。
【0066】
アミノアルコール化合物は既知であり、例えば、米国特許出願公開第2009/0227758号及び同第2010/0124524号に記載されているものが含まれ、これらのそれぞれは、それらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0067】
いくつかの実施形態において、アミノアルコール又はアルキルヒドロキシルアミン化合物は、構造VII:
【0068】
【化12】
[式中、
R
17、R
18、及びR
19はそれぞれ独立して、H、フェニル若しくはNR
20R
21で任意に置換されたアルキルであり、R
20及びR
21は独立して、H、C
1~C
6アルキル、フェニル、又はフェニル若しくはNR
20R
21で任意選択的に独立して置換されたヒドロキシアルキルであり、
R
16は、H、ヒドロキシル、フェニル、フェニル又はNR
20R
20で任意選択的に独立して置換されたアルキル、又は、フェニル若しくはNR
20R
21で任意選択的に独立して置換されたヒドロキシアルキルであり、ただし、R
17、R
18、及びR
19のいずれもヒドロキシアルキルではない場合、R
16は、ヒドロキシル、又はフェニル若しくは別のNR
20R
21で任意選択的に独立して置換されたヒドロキシアルキルであることを条件とする]によって表される化合物又はそのような化合物の塩である。
【0069】
アミノアルコール又はアルキルヒドロキシルアミンは、好ましくは、500グラム/モル以下の分子量を有する。
【0070】
好適なアミノアルコールの具体例は、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-1-メチル-1,3-プロパンジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、2-アミノ-2(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール.ジイソプロパノールアミン、モノ-sec-ブタノールアミン、ジ-sec-ブタノールアミン、又はそれらの塩である。これらのアミノアルコールは、ANGUS Chemical Company(Buffalo Grove,Ill.,USA)、Dow Chemical Company(Midland,Mich.,USA)を含む様々な商業的供給源から市販されているか、又は本技術分野での周知の技術によって容易に製造することができる。アミノアルコールは、塩の形態で使用することができる。好適な塩には、塩酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。
【0071】
アルキルヒドロキシルアミンの特定の例には、N-イソプロピルヒドロキシルアミン、N-エチルヒドロキシルアミン、N-メチルヒドロキシルアミン、N-(n-ブチル)ヒドロキシルアミン、N-(sec-ブチル)ヒドロキシルアミンなどが挙げられる。
【0072】
発泡体は、少なくとも1つの酸化防止剤の存在下で生成され得る。好適な酸化防止剤の例には、米国特許第4,325,863号、同第4,338,244号、同第5,175,312号、同第5,216,052号、同第5,252,643号、独国特許出願公開第4316611号、同第4316622号、同第4316876号、欧州特許出願公開第0589839号又は同第0591102号に記載されたものなどの、フェノール化合物、アミン系酸化防止剤、チオジプロピオン酸ジラウリル又はチオジプロピオン酸ジステアリルなどのチオ相乗剤(thiosynergist)、ホスファイト及びホスホナイト、ベンゾフラノン及びインドリノン、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第6,881,774号に記載されるような、トコフェノール、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、O-、N-、及びS-ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化マロネート、トリアジン化合物、ベンジルホスホネート、アシルアミノフェノール、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、アスコルビン酸(ビタミンC)、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシベンゾフェノン、置換及び非置換安息香酸のエステル、アクリレート、ニッケル化合物、オキサミド、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ヒドロキシルアミン、ニトロン、並びにβ-チオジプロピオン酸のエステルが挙げられる。
【0073】
抗酸化剤(複数可)は、使用される場合、最大約10pphなどの有効量で存在する。好ましい量は、0.1~5pphであり、より好ましい量は、0.2~1.5pphである。
【0074】
いくつかの実施形態において、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)化合物が存在する。好適なHALS化合物には、セバシン酸ビス(1-オクチルオキシ)-2,2,5,5-テトラメチル-4-ピペリジニル)(BASFのTinuvin(商標)123)、n-ブチル-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルベンジル)マロン酸ビス-(1,2,2,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)(BASFのTinuvin(商標)144)、4-ヒドロキシ-2-2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールを含むコハク酸ジメチルポリマー(BASFのTinuvin(商標)622)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)(BASFのTinuvin(商標)765)、及びセバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)(BASFのTinuvin(商標)770)などが挙げられる。
【0075】
HALS化合物は、使用される場合、最大約10pphなどの有効量で存在する。好ましい量は、0.1~5pphであり、より好ましい量は、0.1~2.5pphである。
【0076】
例えば、充填剤、着色剤、防臭マスク、難燃剤、殺生物剤、帯電防止剤、チキソトロープ剤、及び気泡連通化剤を含む他の成分が、発泡工程中に存在してもよい。
【0077】
ポリウレタン発泡体は、種々の成分を含有する反応混合物を形成し、反応混合物を硬化させることによって、本発明に従って作製される。連続スラブストックの生成方法などのフリーライズプロセスを使用することができる。代替的に、成形方法を使用することもできる。そのようなプロセスは、公知である。通常、本発明に従ってポリウレタン発泡体を生成するために、従来の処理操作を変更する必要はない(構造Iのβ-ジケトン化合物及び水溶性アミノ官能性ポリマーを含める場合を除く)。
【0078】
種々の成分を個別に、又は種々のサブコンビネーションで混合ヘッド又は他の混合装置に導入し、そこで混合し、硬化される領域(トラフ又は他の開いた容器、又は閉じた型など)に分注し得る。特に成形発泡体の製造時に、使用され得る架橋剤及び/又は鎖延長剤、構造Iのβ-ジケトン化合物、水溶性アミノ官能性ポリマー、他の添加剤(存在する場合)、並びに任意選択で触媒(複数可)、界面活性剤(複数可)、及び発泡剤(複数可)を含むイソシアネート反応性化合物(複数可)を含む配合されたポリオール成分を形成することが多くの場合において便利である。次に、この配合されたポリオール構成成分をポリイソシアネート(及び配合されたポリオール構成成分に存在しない任意の他の成分)と接触させて発泡体を生成する。
【0079】
様々な構成成分の一部又は全てを混合する前に加熱して、反応混合物を形成してもよい。他の例では、構成成分を、ほぼ周囲温度(15~40℃など)で混合する。全ての成分を混合した後、反応混合物に熱を加えてもよいが、これは多くの場合において不要である。
【0080】
硬化反応の生成物は、軟質ポリウレタン発泡体である。発泡体密度は、20~200kg/m3であってもよい。ほとんどの座席及び寝具の用途において、好ましい密度は、24~80kg/m3である。発泡体は、ASTM 3574-Hの反発弾性試験において少なくとも50%の弾力性を有してもよい。本発明に従って生成された発泡体は、例えば、寝具及び家庭用、オフィス用、又は車両用座席などのクッション用途、並びにヘッドレスト、ダッシュボード計器盤、アームレスト、ヘッドライナー、騒音、振動、及びハーシュネス(noise, vibration and harshness、NVH)の軽減発泡体、並びに音響発泡体などの他の車両用途に有用である。
【0081】
本発明に従って作製されたポリウレタン発泡体は、構造Iの3β-ジケトン化合物化合物及び水溶性アミノ官能性ポリマーが存在しない場合と比較して、アルデヒド、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドのうちの1つ以上の放出量が低減することを特徴とする。ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドの放出量の好適な測定方法は、以下のとおりである。ポリウレタン発泡体試料を破砕して気泡を連通化する。破砕した発泡体を、10cm×10cm×14cmの立方体の試料に切り分け、すぐにアルミホイル又はポリエチレンフィルムにしっかりと包装し、この様式で約25℃で5日間保管する。
【0082】
アルデヒド濃度を、Toyota TSM0508G試験法に従って測定する。そのToyota法では、発泡体試料をホイル又はフィルムから取り出し、次に、以前に窒素ガスで3回パージされた個別の10Lテドラーガスバッグ(Delin Co.,Ltd.,China)に入れる。発泡体試料の入ったバッグに7Lの窒素を入れ、密封して65℃で2時間加熱する。発泡体を含有するビニール袋をオーブンから取り出す。バッグ内のガスを、350mgのジニトロフェニルヒドラジンカートリッジにポンプ圧送し、カルボニル化合物を捕捉する。捕捉されたカルボニル化合物を、液体クロマトグラフィーによってホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドについて分析し、結果は、ガスバッグ内のガス1立方メートル当たりのそれぞれのアルデヒドの重量で表す。Toyota検査法を実行する特定の方法の詳細を、以下の実施例で記載する。
【0083】
この方法で決定されるような放出されたホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドの量は、全て典型的には、β-ジケトン化合物及び水溶性アミノ官能性ポリマーの非存在下で生成される他の同様の発泡体と比較して、少なくとも10%低減される。本発明の利点は、これらのアルデヒド化合物のうちの一部又は全てさえも放出量に有意な低減が見られることである。放出されたホルムアルデヒドの低減は、70%又は75%を超え得、アセトアルデヒドの低減は、40%を超え得るか又は50%を超え得、アクロレインの低減は、70%を超え得るか、80%を超え得るか、又は90%すら超え得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、放出されたホルムアルデヒドの量は、Toyota法に従って測定される際、100μg/m3以下、75μg/m3以下、又は50μg/m3以下である。いくつかの実施形態において、放出されたアセトアルデヒドの量は、Toyota法に従って測定される際、100μg/m3以下である。いくつかの実施形態において、放出されたアクロレインの量は、Toyota法に従って測定される際、100μg/m3以下又は60μg/m3以下である。いくつかの実施形態において、放出されたプロピオンアルデヒドの量は、Toyota法に従って測定される際、350μg/m3以下又は250μg/m3以下である。
【0085】
以下の実施例は、本発明を例示するために提示されるが、その範囲を限定することを意図するものではない。全ての部及びパーセンテージは、別途指示がない限り重量による。
【0086】
実施例1及び比較試料A~C
一般的な発泡方法、比較試料A:配合ポリオールは、ヒドロキシル価が29.5の名目上三官能性ポリエーテルポリオール40部、スクロース及びグリセリンの混合物から開始された1700当量重量のポリエーテルポリオール52.6部、グリセリン0.8部、ウレタン触媒混合物1.6部、有機シリコーン発泡安定化界面活性剤0.5部、並びに水4.2部を組み合わせることによって作製される。ポリウレタン発泡体は、配合ポリオールとイソシアネート末端プレポリマーとを1.67:1の重量比で組み合わせ、得られた反応混合物をカップに注ぎ、反応混合物が膨れ上がって硬化し、ポリウレタン発泡体を形成することを可能にすることによって、配合ポリオールから作製される。発泡体が十分に硬化して寸法が安定化した後、発泡体をカップから取り出し、比較試料B及びCを除いて、約38~41グラムの重量の10cm×10cm×14cmの試料をカットする。比較試料B及びCの場合、30グラムの試料をカットする。発泡体キューブをそれぞれすぐにアルミホイルで包み、7日間気密パッケージを形成する。
【0087】
比較試料B及びCは、一般的な発泡法を使用して作製される。比較試料Bでは、600MWのポリエチレンイミン(polyethylene imine、PEI)(配合ポリオール重量に基づいて0.05%、200g/mol以上の当量重量のイソシアネート反応性材料に基づいて0.054%)を、発泡体を作製する前に配合ポリオールに添加する。比較試料Bでは、N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアセトアミド N-AAEM)(配合ポリオール重量に基づいて0.1%、200g/mol以上の当量重量のイソシアネート反応性材料に基づいて0.108%)を、発泡体を作製する前に配合ポリオールに添加する。
【0088】
実施例1は、一般的な発泡方法を使用して作製される。実施例1では、600MWのPEI(配合ポリオール重量に基づいて0.05%、200g/mol以上の当量重量のイソシアネート反応性材料に基づいて0.054%)及びN-AAEM(配合ポリオール重量に基づいて0.1%、200g/mol以上の当量重量のイソシアネート反応性材料に基づいて0.108%)を、発泡体を作製する前に配合ポリオールに添加する。
【0089】
発泡体試料から放出されるアルデヒドを、Toyotaガスバッグ法を使用して分析する。立方体の発泡体試料を、各場合にホイルから取り出し、純粋な窒素で3回洗浄して空にした10Lのテドラーガスバッグに入れる。空のガスバッグは、ブランクとして使用する。発泡体試料をガスバッグに入れた後、ガスバッグに約7Lの窒素ガスを充填し、オーブンで65℃で2時間加熱する。次に、ガスバッグ内の窒素ガスをエアポンプによってポンプ圧出し、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドについて分析する。
【0090】
各バッグからのガスを、ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)カートリッジ(CNWBOND DNPH-シリカカートリッジ、350mg,Cat.No.SEEQ-144102,Anple Co.,Ltd.)に330mL/分のサンプリング速度で通過させる。発泡体からガス中に放出されたアルデヒドは、カートリッジによって吸収されて、DNPH誘導体を形成する。DNPHカートリッジを3gのアセトニトリルで溶出し、得られたアセトニトリル溶液をHPLCで分析して、試料中のカルボニルを以下のように定量する。
【0091】
15μg/mLのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒド(いずれの場合もDNPH誘導体の形態)をそれぞれ含有する標準溶液(TO11Aカルボニル-DNPH混合物、Cat.No.48149-U,Supelco Co.,Ltd)をアセトニトリルで希釈する。2mLの希釈溶液(0.794ppmのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドをそれぞれ含有する)を含有するバイアルを-4℃に冷蔵する。冷蔵溶液をHPLCシステムに注入し、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドの誘導体を分析する。応答係数は、以下の式に従って、各誘導体の溶出ピークの面積から計算する。
【0092】
【数1】
式中、応答係数i=誘導体iの応答係数、ピーク面積i=標準溶液中の誘導体iのピーク面積、及び0.794=標準溶液中の各誘導体の濃度である。
【0093】
次に、各発泡体試料によって放出されたホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドの量を決定する。いずれの場合も、DNPHカラムを溶出して得られたアセトニトリル溶液をHPLCシステムに注入し、各誘導体から溶出ピークの面積を決定する。試料溶液中のアルデヒド-DNPH誘導体の濃度を、以下のとおりに計算する。
【0094】
【数2】
式中、iの濃度=試料溶液中のアルデヒド-DNPH誘導体の濃度、ピーク面積i=試料溶液中の誘導体iのピーク面積、及び応答係数i=上記の標準溶液から決定された誘導体iの応答係数である。
【0095】
HPLC条件は、以下のとおりである。
【0096】
【0097】
実施例1及び比較試料A~Cのそれぞれのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドの濃度は、表1に示されているとおりである。
【0098】
【0099】
表1のデータが示すように、PEI自体は、試験されたアルデヒドのいずれのレベルの低減にも利点を提供しない。N-AAEMは、ホルムアルデヒド及びアクロレインの低減にのみ有効である。PEIとN-AAEMとの組み合わせは、試験される4つ全てのアルデヒドの大きな低減をもたらし、各場合において、PEI又はN-AAEMのいずれかを使用して達成されるよりもはるかに低いレベルになる。これらの結果は、PEI自体が非常に少ない利益を提供することを考慮すると、非常に驚くべきことであり、PEIをN-AAEMと組み合わせることでN-AAEM自体による性能よりもいくらか優れた性能をもたらすとは予想されていなかった。
【0100】
実施例2及び比較試料D~F
比較試料Dは、比較試料Aの繰り返しである。
【0101】
比較試料E及びFは、一般的な発泡法を使用して作製される。比較試料Eでは、0.05%の600MWのポリエチレンイミン(PEI)(配合ポリオール重量に基づいて0.05%、200g/mol以上の当量重量のイソシアネート反応性材料に基づいて0.054%)を、発泡体を作製する前に配合ポリオールに添加する。比較試料Fでは、(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート((acetoacetoxy)ethyl methacrylate、AAEM)(配合ポリオール重量に基づいて0.1%、200g/mol以上の当量重量のイソシアネート反応性材料に基づいて0.108%)を、発泡体を作製する前に配合ポリオールに添加する。
【0102】
実施例2は、一般的な発泡方法を使用して作製される。実施例2では、600MWのPEI(配合ポリオール重量に基づいて0.05%、200g/mol以上の当量重量のイソシアネート反応性材料に基づいて0.054%)及びAAEM(配合ポリオール重量に基づいて0.1%、200g/mol以上の当量重量のイソシアネート反応性材料に基づいて0.108%)を、発泡体を作製する前に配合ポリオールに添加する。
【0103】
発泡体は、前述の実施例に示されるように試験される。結果は、以下の表2に示すとおりである。
【0104】
【0105】
この実験セットでは、PEI自体は、アクロレインレベルを低減することにおいて利点を提供するが、他のアルデヒドのいずれも低減しない。AAEM自体は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、及びアクロレインの放出量を中程度に低減するが、プロピオンアルデヒド放出量は低減されない。PEIとAAEMとの組み合わせは、試験される4つ全てのアルデヒドの大きな低減をもたらし、各場合において、PEI又はN-AAEM自体のいずれかを使用して達成されるよりもはるかに低いレベルになる。この場合も、これらの結果は、PEI自体がほとんど利益を提供しないことを考慮すると、非常に驚くべきことである。
本出願は例えば以下の発明を提供する。
[1] ポリウレタン発泡体を生成するためのプロセスであって、芳香族ポリイソシアネートと、少なくとも2の平均官能価及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有する少なくとも1つのイソシアネート反応性材料と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの界面活性剤と、少なくとも1つの触媒と、を含有する反応混合物を形成することと、前記反応混合物を硬化して、前記ポリウレタン発泡体を形成することと、を含み、前記硬化する工程は、(i)少なくとも1つのβ-ジケトン化合物であって、前記β-ジケトン化合物は、構造I:
【化13-1】
[式中、R
1
及びR
2
は独立して、水素、-NH
2
、-NH-R
3
-N(R
4
)
2
、-OR
4
、及び-R
4
から選択され、各R
3
及びR
4
は独立して、無置換炭化水素又はO、N、S、P、若しくはハロゲンのうちの1つ以上で置換された炭化水素であり、ただし、R
1
及びR
2
は一緒に、二価基を形成してもよく、かつR
1
及びR
2
のうちの少なくとも1つは、水素ではないことを更に条件とする]によって表される化合物である、少なくとも1つのβ-ジケトン化合物と、(ii)少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの水溶性アミノ官能性ポリマーと、の存在下で実施される、プロセス。
[2] ポリウレタン発泡体からのアルデヒド放出量を低減するためのプロセスであって、a)
(i)構造I:
【化13-2】
[式中、R
1
及びR
2
は独立して、水素、-NH
2
、-NH-R
3
-N(R
4
)
2
、-OR
4
、及び-R
4
から選択され、各R
3
及びR
4
は独立して、非置換炭化水素又はO、N、S、P、若しくはハロゲンのうちの1つ以上で置換された炭化水素であり、ただし、R
1
及びR
2
は一緒に、二価基を形成してもよく、かつR
1
及びR
2
のうちの少なくとも1つは、水素ではないことを更に条件とする]によって表される化合物である少なくとも1つのβ-ジケトン化合物と、
(ii)少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する少なくとも1つの水溶性アミノ官能性ポリマーとを、
少なくとも2の平均官能価及びイソシアネート反応性基の1モル当たり少なくとも200グラムの当量重量を有する少なくとも1つのイソシアネート反応性材料と組み合わせて、混合物を形成することと、次に、b)工程a)からの前記混合物を、少なくとも1つの有機ポリイソシアネートと組み合わせ、得られた前記反応混合物を、少なくとも1つの発泡剤、少なくとも1つの界面活性剤、及び少なくとも1つの触媒の存在下で硬化させて、ポリウレタン発泡体を形成することと、を含む、プロセス。
[3] 前記β-ジケトン化合物は、アセト酢酸エステル又はアセト酢酸アミドであり、構造II:
【化13-3】
[式中、R
5
は、置換若しくは非置換のC
1
~C
6
アルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基であり、Xは、エステルの場合は-O-であり、アミドの場合は-NH-である]を有する1つ以上のアセト酢酸エステル基又はアセト酢酸アミド基を有することを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のプロセス。
[4] 前記β-ジケトン化合物は、N-(2-ヒドロエチル)アセトアセトアミド又は(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートである、上記[3]に記載のプロセス。
[5] 前記β-ジケトン化合物は、構造IV:
【化13-4】
[式中、R
8
は、水素又は炭化水素基であり、R
6
は、水素、炭化水素、ヒドロキシアルキル、又はアミノアルキルであり、R
7
は、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルであり、nは、少なくとも1である]によって表される3-オキソプロパンアミド化合物である、上記[1]又は[2]に記載のプロセス。
[6] 前記β-ジケトン化合物は、構造
【化13-5】
[式中、X、Y、Zは独立して、カルボニル、-(CR
9
R
10
)-
、
-NR
11
-
、
-O-、又は化学結合であり、各R
9
及びR
10
は独立して、H、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換若しくは非置換フェニル基、ハロゲン、-CO
2
CH
3
、又は-CNであり、ただし、R
9
及びR
10
のうちの任意の2つ以上は、分子内又は分子間で結合してもよく、各R
11
は独立して、H、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルキレン基、又は置換若しくは非置換フェニル基である]によって表される、上記[1]又は[2]に記載のプロセス。
[7] 前記水溶性アミノ官能性ポリマーは、ポリエチレンイミンである、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のプロセス。
[8] 上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のプロセスで作製された、ポリウレタン発泡体。
[9] ポリエーテルポリオールからのアルデヒド放出量を低減するためのプロセスであって、0.01~5重量部の少なくとも1つのβ-ジケトン化合物と、少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する0.01~5重量部の少なくとも1つの水溶性アミノ官能性ポリマーとを、100重量部の前記ポリエーテルポリオールと組み合わせることを含み、前記β-ジケトン化合物は、構造I:
【化13-6】
[式中、R
1
及びR
2
は独立して、水素、-NH
2
、-NH-R
3
-N(R
4
)
2
、-OR
4
、及び-R
4
から選択され、各R
3
及びR
4
は独立して、非置換炭化水素又はO、N、S、P、若しくはハロゲンのうちの1つ以上で置換された炭化水素であり、ただし、R
1
及びR
2
は一緒に、二価基を形成してもよく、かつR
1
及びR
2
のうちの少なくとも1つは、水素ではないことを更に条件とする]によって表される、プロセス。
[10] 前記β-ジケトン化合物は、アセト酢酸エステル又はアセト酢酸アミドであり、構造II:
【化13-7】
[式中、R
5
は、置換若しくは非置換のC
1
~C
6
アルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基であり、Xは、エステルの場合は-O-であり、アミドの場合は-NH-である]を有する1つ以上のアセト酢酸エステル基又はアセト酢酸アミド基を有することを特徴とする、上記[9]に記載のプロセス。
[11] 前記β-ジケトン化合物は、N-(2-ヒドロエチル)アセトアセトアミド又は(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートである、上記[10]に記載のプロセス。
[12] 前記β-ジケトン化合物は、構造IV:
【化13-8】
[式中、R
8
は、水素又は炭化水素基であり、R
6
は、水素、炭化水素、ヒドロキシアルキル、又はアミノアルキルであり、R
7
は、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルであり、nは、少なくとも1である]によって表される3-オキソプロパンアミド化合物である、上記[9]に記載のプロセス。
[13] 前記β-ジケトン化合物は、構造
【化13-9】
[式中、X、Y、Zは独立して、カルボニル、-(CR
9
R
10
)-
、
-NR
11
-
、
-O-、又は化学結合であり、各R
9
及びR
10
は独立して、H、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基、置換若しくは非置換フェニル基、ハロゲン、-CO
2
CH
3
、又は-CNであり、ただし、R
9
及びR
10
のうちの任意の2つ以上は、分子内又は分子間で結合してもよく、各R
11
は独立して、H、1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルキレン基、又は置換若しくは非置換フェニル基である]によって表される、上記[9]に記載のプロセス。
[14] 前記水溶性アミノ官能性ポリマーは、ポリエチレンイミンである、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載のプロセス。
[15] ヒドロキシル基1当量当たり少なくとも200グラムのヒドロキシル当量重量を有するポリエーテルポリオールであって、ポリエーテルポリオールは、0.01~5重量部の少なくとも1つのβ-ジケトン化合物と、少なくとも300の数平均分子量を有し、1分子当たり少なくとも3つの第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有する0.01~5重量部の少なくとも1つの水溶性アミノ官能性ポリマーとを、100重量部の前記ポリエーテルポリオールと共に含有し、前記β-ジケトン化合物は、構造I:
【化13-10】
[式中、R
1
及びR
2
は独立して、水素、-NH
2
、-NH-R
3
-N(R
4
)
2
、-OR
4
、及び-R
4
から選択され、各R
3
及びR
4
は独立して、非置換炭化水素又はO、N、S、P、若しくはハロゲンのうちの1つ以上で置換された炭化水素であり、ただし、R
1
及びR
2
は一緒に、二価基を形成してもよく、かつR
1
及びR
2
のうちの少なくとも1つは、水素ではないことを更に条件とする]によって表される、ポリエーテルポリオール。