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特許7551768プロセスステーションにおける基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】プロセスステーションにおける基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 19/00 20060101AFI20240909BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20240909BHJP
   C25D 21/08 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C25D19/00 B
C25D17/00 L
C25D19/00 A
C25D21/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022557916
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2021051872
(87)【国際公開番号】W WO2021190804
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】20165608.9
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518264310
【氏名又は名称】セムシスコ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SEMSYSCO GmbH
【住所又は居所原語表記】Karolingerstrasse 7C 5020 Salzburg Republic of Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リャティフィ,アルジュベール
(72)【発明者】
【氏名】エツリンゲル,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】マルクト,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】グライスナー,アンドレアス
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0179458(US,A1)
【文献】特開2016-186127(JP,A)
【文献】特開2001-217204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 19/00
C25D 17/00
C25D 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスステーション(10)における基板(20)の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法であって、
‐処理対象の基板(20)をロータユニット(11)に装着するステップと、
‐前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)を前記プロセスステーション(10)のプリウェットチャンバ(12)内へ移動させるステップと、
‐前記プリウェットチャンバ(12)の内側の前記基板(20)にプリウェット流体を施用するステップと、
‐前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)を少なくとも部分的に前記プリウェットチャンバ(12)の外へ移動させるステップと、
‐前記基板(20)の表面の前記プリウェット流体を遠心的に減少させるために、前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)をスピン面においてスピンさせるステップと、
‐前記基板(20)が前記プリウェットチャンバ(12)とは反対を向くように、前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)を前記スピン面に対して垂直に回転させるステップと、
‐前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)を、前記プロセスステーション(10)の電気めっきチャンバ(13)内へ移動させるステップと、
‐前記電気めっきチャンバ(13)の内側の前記基板(20)の電気めっきプロセスのために前記基板(20)に電解質液および電流を施用するステップと、
‐前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)を少なくとも部分的に前記電気めっきチャンバ(13)の外へ移動させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記プリウェットチャンバ(12)と前記電気めっきチャンバ(13)とは、同じプロセスステーション(10)内に配置されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記プリウェットチャンバ(12)内のガス系を変更するステップをさらに含み、前記ガス系の変更は、前記プリウェット流体を施用するステップの前に圧力を大気圧に対して低下させること、及び前記プリウェット流体を施用するステップの後に圧力を大気圧へ上昇させることの少なくともいずれかであることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の方法であって、電気めっきは、大気圧において行われることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法であって、前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)を前記電気めっきチャンバ(13)の外へ移動させた後に、
‐前記基板(20)が前記プリウェットチャンバ(12)の方を向くように前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)を回転させるステップと、
‐前記基板(20)を装着した前記ロータユニット(11)を前記プリウェットチャンバ(12)内へ移動させるステップと、
‐前記基板(20)から前記電解質液を除去するために、前記プリウェットチャンバ(12)内で前記基板(20)にリンス液を施用するステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の方法であって、
‐前記基板(20)を乾燥させるために、前記プリウェットチャンバ(12)内で前記基板(20)に乾燥流を施用するステップ
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
基板(20)の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーション(10)であって、
‐ロータユニット(11)と、
‐プリウェットチャンバ(12)と、
‐電気めっきチャンバ(13)と
を備え、
前記ロータユニット(11)は、処理対象の基板(20)を保持し、前記基板(20)を少なくとも部分的に前記プリウェットチャンバ(12)の内外に移動させ、少なくとも部分的に前記電気めっきチャンバ(13)の内外に移動させるように構成され、
‐前記プリウェットチャンバ(12)は、プリウェット流体によって前記基板(20)をプリウェットするように構成され、
‐前記電気めっきチャンバ(13)は、前記基板(20)の電気めっきプロセスのために前記基板(20)に電解質液および電流を施用するように構成され、
‐前記ロータユニット(11)は、前記基板(20)をスピン面においてスピンさせ、前記基板(20)が前記プリウェットチャンバ(12)の方をまたは前記電気めっきチャンバ(13)の方を向くように、前記基板(20)とともに前記スピン面に対して垂直に回転するようにさらに構成される、
プロセスステーション(10)。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスステーション(10)であって、前記プリウェットチャンバ(12)および前記電気めっきチャンバ(13)の少なくとも一方は、前記ロータユニット(11)を間に挟んで互いに対向して配置されることを特徴とするプロセスステーション(10)。
【請求項9】
請求項7または8に記載のプロセスステーション(10)であって、前記ロータユニット(11)は、前記基板(20)を前記ロータユニット(11)に固定する固定手段を備え、前記固定手段は、一つ以上の基板(20)表面の表面処理を可能にするように構成されることを特徴とするプロセスステーション(10)。
【請求項10】
請求項7~9の何れか一項に記載のプロセスステーション(10)であって、前記ロータユニット(11)は、前記プリウェットチャンバ(12)および前記電気めっきチャンバ(13)の少なくとも一方を液密および気密の少なくとも一方に閉じる密閉手段を備えることを特徴とするプロセスステーション(10)。
【請求項11】
請求項7~10の何れか一項に記載のプロセスステーション(10)であって、前記ロータユニット(11)は、前記プリウェットチャンバ(12)にガスを供給するガス供給系を備えることを特徴とするプロセスステーション(10)。
【請求項12】
請求項7~11の何れか一項に記載のプロセスステーション(10)であって、前記ロータユニット(11)は、前記プリウェットチャンバ(12)内の圧力を低下させる減圧系を備えることを特徴とするプロセスステーション(10)。
【請求項13】
請求項7~12の何れか一項に記載のプロセスステーション(10)であって、前記ロータユニット(11)は、1500rpm(rounds per minute)以上、好ましくは2000rpmで前記基板(20)をスピンさせるように構成されることを特徴とするプロセスステーション(10)。
【請求項14】
請求項7~13の何れか一項に記載のプロセスステーション(10)であって、前記ロータユニット(11)は、前記電気めっきチャンバ(13)における電気めっきプロセスのために前記基板(20)に電流を提供する電気エネルギー供給系を備え、前記電流は50アンペア以上、好ましくは100アンペア以上になることを特徴とするプロセスステーション(10)。
【請求項15】
請求項7~14の何れか一項に記載のプロセスステーション(10)であって、前記ロータユニット(11)は、前記基板(20)にリンス液を供給するリンス液供給系を備えることを特徴とするプロセスステーション(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスステーションにおける基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法、ならびに基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス産業では、基板上の小さな凹部に導電性金属(例えば、Cu)を満たさなければならないいくつかのプロセスがあり、これらは、通常、いわゆる電気めっき、電気化学堆積、電気化学めっきまたはガルバニック堆積によって行われる。特定の場合、特に非常に小さく深い凹部に導電性材料を満たさなければならないときには、このようなプロセスは高アスペクト比めっきとも呼ばれることもある。
【0003】
電気化学堆積のプロセス中には、実際のめっきプロセスの前に、基板がその中で保管、ハンドリングまたはプロセシングされる周囲空気が、凹部を満たすため、困難が生じることが多い。小さな凹部を有する基板が液体電解質に浸漬されると、小さな凹部の内部の空気がガスのバリアを形成しうる。このガスのバリアはその後、電解質液が凹部を濡らして凹部の中に浸透するのを妨げるため、途切れのない導電性材料層で凹部を満たすための堆積プロセスを、妨げるかまたは少なくとも著しく損なう。凹部の被覆または充填の不連続、あるいは途切れでさえも、例えば材料層内の空隙、接触不良、または電気回路の途切れにもつながる。加えて、このような凹部のめっきまたは充填が不十分なデバイスの信頼性、機能性および寿命は一般に低下する。
【0004】
従来、周囲空気は、圧力制御されたチャンバ内を減圧または真空にすることにより、電気めっきプロセスの前に、時には電気めっきプロセスの最中にも、上述のような小さな凹部から除去される。この場合、後続の凹部のめっきまたは充填は、減圧下または真空下で行われなければならず、これは非常に面倒で高価であり、大量かつ高スループットの製造プロセス下においては、堆積プロセスに適切な結果をもたらすために、多くの問題および技術的課題を課すものである。
【0005】
減圧された気圧を大気圧に戻すことなく、減圧下でめっきの直後にプリウェットステップを行う場合、大量製造への適用性が限定される。この限定は、ツール構築の複雑さ、機器の作製および維持に伴うコスト、ならびにプロセスが減圧下で行われなければならないときに生じる電気化学プロセシングの課題に基づいている。さらに、めっきチャンバは、あるレベルの真空に耐えうる必要がある(圧力調節可能なチャンバおよびシステム)。
【0006】
別の実施態様では、凹部が電気化学堆積によって満たされるめっきチャンバ内に基板が移送される前に、別個のプリウェットチャンバ内で基板に対して不活性または脱気されたプリウェット液による様々な圧力条件下での凹部の事前のリンスが行われうる。しかしこれは、プリウェットチャンバからめっきチャンバへのウェット基板ハンドリングの大きな課題を含む、非常に時間がかかる複雑な手順である。この手順もまた、プリウェットプロセスのために専用のチャンバを追加しなければならないためコストもかかり、加えてツールの全体的な設置占有面積も増加し、非常に高価な製造空間およびクリーンルーム空間をふさいでしまう。
【0007】
対応するプリウェット装置の方法および設計が特許文献1に開示される。ウェハ基板上に銅の層を電気めっきする方法は、(a)表面の少なくとも一部分上に露出した金属層を有するウェハ基板をプリウェットプロセスチャンバに提供するステップと、(b)準大気圧下でウェハ基板を水と銅イオンとを含むプリウェット流体と接触させて、ウェハ基板上にプリウェット流体の層を形成するステップと、(c)プリウェットされたウェハ基板を銅イオンを含むめっき溶液と接触させて、ウェハ基板上に銅の層を電気めっきするステップとを含み、プリウェット流体中の銅イオンの濃度はめっき溶液中の銅イオンの濃度よりも高い。
【0008】
別個のプリウェットチャンバが用いられる場合には、(追加のチャンバが必要なため)ツールに要する製造空間およびクリーンルーム空間の少なくとも一方が大幅に大きくなる、つまり、システムの構築サイズが大きくなることが欠点となりうる。もう一つの欠点は、完全乾燥または一部だけの乾燥によって凹部の内側を満たす液体を失わずに、また、ツール空間中に液体をこぼしてツールの耐用期間および汚染の問題を引き起こす可能性なく、濡れた基板を一方のチャンバから他方のチャンバに移送する必要があることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2015/179458A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、特に従来の方法よりも容易な、プロセスステーションにおける基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための改善された方法を提供する必要がありうる。
【0011】
この問題は、本発明の独立請求項の主題によって解決され、従属請求項にさらなる実施形態が組み込まれる。以下に記載される本発明の態様は、プロセスステーションにおける基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法、ならびに基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーションにも当てはまることに留意しなければならない。
【0012】
本発明によれば、プロセスステーションにおける基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法が提示される。化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法は、必ずしもこの順序ではないが、:
‐処理対象の基板をロータユニットに装着するステップと、
‐基板を装着したロータユニットをプロセスステーションのプリウェットチャンバ内へ移動させるステップと、
‐プリウェットチャンバ内の基板にプリウェット流体を施用するステップと、
‐基板を装着したロータユニットを少なくとも部分的にプリウェットチャンバの外へ移動させるステップと、
‐基板の表面のプリウェット流体を遠心的に減少させるために、基板を装着したロータユニットをスピン面においてスピンさせるステップと、
‐基板がプリウェットチャンバとは反対を向くように、基板を装着したロータユニットをスピン面に対して垂直に回転させるステップと、
‐基板を装着したロータユニットをプロセスステーションの電気めっきチャンバ内へ移動させるステップと、
‐電気めっきチャンバ内の基板の電気めっきプロセスのために基板に電解質液および電流を施用するステップと、
‐基板を装着したロータユニットを少なくとも部分的に電気めっきチャンバの外へ移動させるステップと
を含む。
【0013】
プロセスステーションにおける基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための本方法は、プロセスステーションにおける基板の表面処理を大幅に管理しやすくする。この方法は、プロセスステーションにおけるプリウェットステップを含むが、これはプリウェットされた基板のプリウェットチャンバから電気めっきチャンバへの手の込んだウェットハンドリングを必要とせずに、プロセスステーションにおける後続の電気めっきステップの前に行われうる。その結果、本方法は、濡れた基板をハンドリングする必要がないため、プロセスの複雑さおよびコストを大幅に低減することを可能にする。ツール空間中に液体をこぼして耐用期間および汚染の問題を引き起こす可能性はない。さらに、本方法は、全体的な機器サイズおよび製造クリーンルームの設置占有面要件を減少させることを可能にする。
【0014】
基板は、導体板、半導体基板、フィルム基板、本質的に板状の金属または金属化ワークピースなどを含みうる。基板は、基板ホルダに保持されうる。
【0015】
ロータユニットは、基板を回転させるように構成されたデバイスとして理解することができる。ロータユニットは、駆動ユニットと基板のための保持ユニットとを備えうる。駆動ユニットは、変速機を装着したエンジンでありうる。駆動ユニットは、アームによって保持ユニットに接続されうる。保持ユニットは、基板を保持するフレームでありうる。ロータユニットは、プリウェットおよび電気めっきプロセスの組み合わせのための基板保持および支持デバイスとして使用されうる。ロータユニットは、プリウェット圧力(例えば、真空)およびプリウェット雰囲気(例えば、空気とは異なるガス)の少なくとも一方および電流(例えば、電気めっきプロセスのために最大100アンペア以上)の少なくとも一方の基板への供給をサポートしうる。ロータユニットは、基板の側方移動(例えば、上下)およびスピン移動(例えば、基板表面においてまたは基板表面に沿って、基板の概ね中心の周りに水平に)の少なくとも一方および基板のスピン移動に垂直な軸の周りでの回転移動(例えば、基板を上方から下方まで傾ける)の少なくとも一方を可能にしうる。これにより、基板のプロセス構成を、例えばロータユニットの上で表側を上にした状態からロータユニットの下で表側を下にした状態まで回転させることができる。
【0016】
プリウェット流体は、基板をプリウェットする機能を提供する液体として理解することができる。プリウェット流体は、水、高純度水などでありうる。
【0017】
プリウェットチャンバは、基板のプリウェットが行われうる空間またはハウジングとして理解することができる。プリウェットの後、基板は部分的または完全にプリウェットチャンバの外へ移動されうる。プリウェットチャンバの外への移動方向は、第一移動方向でありうる。この時、基板はプリウェットチャンバの下に配置されうる。
【0018】
スピン面は、基板がスピンされる面として理解することができる。スピン面は、プリウェットチャンバと電気めっきチャンバとの間の仮想接続線に垂直でありうる。スピン面は、基板表面に平行であり得、またはスピン面は、基板表面の延長に相当しうる。
【0019】
「プリウェット流体を遠心的に減少させる」とは、プリウェット流体が基板の表面から除去されるが、基板の凹部内になお残るという意味において理解することができる。
【0020】
したがって、スピンのステップでは、基板を保持するロータユニットが基板またはスピン面の中心の周りを回転しうる。換言すれば、基板の表面からプリウェット流体を除去するために、ロータユニットが基板表面またはスピン面に対して水平にスピンしうる。
【0021】
ロータユニットおよび基板がスピン面に対して垂直に回転される際には、基板が傾けられているという意味において理解することができる。回転前には基板はプリウェットチャンバを向いており、これは上方に向けられていると理解することができる。回転後には基板は電気めっきチャンバを向いており、これは下方に向けられていると理解することができる。
【0022】
「スピン面に垂直」とは、「スピン面に直角」または「スピン面に鉛直」と理解することができる。さらに、「仮想接続線に垂直」とは、「仮想接続線に直角」または「仮想接続線に鉛直」と理解されうる。
【0023】
したがって、基板をプロセスステーションのプリウェットチャンバから電気めっきチャンバに移動させるために、基板を保持するロータユニットは、ロータユニットがスピン面に対してなお直角に配置されうるが回転前とは反対側に向けられうるように、180°鉛直に枢動しうる。
【0024】
電解質液は、電解質の機能を提供する液体として理解することができる。
【0025】
電気めっきプロセスは、電気めっき、電気化学堆積、電気化学めっき、ガルバニック堆積などでありうる。
【0026】
電気めっきチャンバは、電気めっきプロセスが行われうる空間またはハウジングとして理解することができる。電気めっきの後、基板は、部分的または完全に電気めっきチャンバの外へ移動されうる。電気めっきチャンバの外への移動方向は、第一移動方向とは異なり、特に反対である第二移動方向でありうる。この時、基板は電気めっきチャンバの上方に配置されうる。
【0027】
基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための本方法は、同じプロセスステーション内で行われるものと理解することができる。これは、プリウェットチャンバと電気めっきチャンバとが同じプロセスステーション内に配置されることを意味する。換言すれば、基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法全体が同じプロセスステーション内で行われる。基板は、プリウェットおよび電気めっきの最中およびその合間にプロセスステーションを出ない。プロセスステーションは、プリウェットチャンバと、ロータユニットと、電気めっきチャンバとを備える。基板はロータユニットに固定されることができ、その後ロータユニットによって、プリウェットチャンバ内へ、プリウェットチャンバの外へ、電気めっきチャンバの方へ、電気めっきチャンバ内へ、および電気めっきチャンバの外へと移動されうる。これは、基板をロータユニットから解放せずに、特にロータユニットに対する基板の固定具を変えずに行われうる。その結果、基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのシステムの構築サイズまたは設置占有面積がかなり小さくなり得、化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法がかなり迅速に行われうる。特に、本方法の後続のステップが互いの直後に、ほとんど移送をせずに行われうるため、待ち時間および移送時間の少なくとも一方がかなり制限されうる。
【0028】
一実施形態では、化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法は、
‐プリウェットステップの前にプリウェットチャンバ内のガス系を変更するステップ
を含む。
【0029】
ガス系の変更は、プリウェットステップの前に圧力を大気圧に対して低下させることでありうる。圧力の低下に続いて、プリウェットステップの後に圧力を大気圧へ上昇させうる。代替的にまたは追加的に、ガス系の変更は、プリウェットステップの前および後の少なくとも一方に、周囲空気に対してガスを交換することでありうる。一般に、真空、周囲圧力に対して減圧、周囲圧力、および、周囲圧力に対して昇圧の少なくともいずれかが、プリウェットチャンバ内の基板に施用されうる。周囲空気または他のガスが、プリウェットチャンバ内で基板に施用されうる。特に、後続の電気めっきの前に、例えばCOのような可溶性ガスが基板に施用されうる。プリウェット後および電気めっき中にガス系の変更(例えば、真空)を維持する必要はない。そのような要件がないため、めっきチャンバおよびめっきプロセスはより容易であり、プロセスの複雑さがさらに低減されるとともに、全体的な機器サイズおよび製造クリーンルームの設置占有面積要件がさらに低減される。
【0030】
処理対象の基板をロータユニットに装着するステップは、後に続くプロセスステップ全体(プリウェットから電気めっきまで、任意でリンスおよび乾燥の少なくとも一方まで)にわたり基板を支持できるようにしたロータユニット上に基板が搭載される、という意味において理解することができる。例えば、基板は、基板がロータユニット上に搭載された後に閉じられる電気コンタクトリングのクランプ作用を通じてロータユニットに装着される。電気クランプリングは、基板の前側および基板全部の少なくとも一方が電気的に接続され分極されうること、(すなわち電気めっきプロセス中に陰極に変換されること)を可能にする。代替的にまたは追加的に、基板は、真空吸引力または磁力などを通じてロータユニットに装着される。
【0031】
基板を装着したロータユニットをプロセスステーションのプリウェットチャンバ内に移動させるステップは、基板を保持するロータユニットが例えばプロセスステーションの上部において、プリウェットチャンバ内へ移動される、という意味において理解することができる。プリウェットチャンバとロータユニット間の密閉が確立されうる。これにより、ロータユニットとプリウェットチャンバの内部との間に残る開放容積が非常に小さくなり、ごく小さな容積が排気されるかまたは代替ガス媒質で充満されればよいこととなる。その結果、排気または充満が、非常に迅速におよび非常に低い消費量のフラッシングガスでの少なくとも一方で行われうる。プリウェットチャンバとロータユニット間の密閉が達成されると、上記のようなプリウェットステップ、または減圧とプリウェットとを組み合わせたステップが続く。
【0032】
プリウェットチャンバ内で基板にプリウェット流体を施用するステップは、特に基板の凹部を満たす周囲空気のガスのバリアを除去することを可能にする。「凹部」とは、ミリメートル、マイクロメートルまたはナノメートルの範囲の直径の開放空洞として理解することができる。基板が液体電解質に浸漬されると、凹部の内側の周囲空気がガスのバリアを形成し得、それが、電解質液が凹部を濡らして中に浸透するのを妨げ、そのことにより、基板およびその凹部を途切れのない堆積材料層で覆い満たす堆積プロセスが妨げられるかまたは損なわれる。
【0033】
基板にプリウェット流体を施用するステップは、プリウェット液の施用前に、基板の凹部から周囲空気をプロセス結果に悪影響を与えなくなるレベルまで除去するために、任意で、減圧された圧力(例えば、0.7バール)が基板に施用されうる、という意味において理解することができる。これは、続くプリウェット流体が凹部の底および側壁に浸透して濡らしうるように、凹部の内側のガスのバリアが減少させられることを意味する。ガスのバリアが(例えば、持続時間の事前の実験的測定に基づいて)十分に減少すると直ちに、プリウェット流体が基板表面上に供給されて全ての凹部に浸透し、凹部の内側の周囲空気包含物に置き換わりうる。プリウェットのステップは、減圧を予め行わずにプリウェット液の施用のみを含むこともできる。
【0034】
全ての凹部が(例えば、持続時間の事前の実験的測定に基づいて)十分にプリウェットされた後、減圧または真空が解除されて、大気周囲圧力(約1バール)が得られうる。これは、ロータユニットとプリウェットチャンバの内部との間の開放容積の中へのガスストリームによって得られうる。ガスストリームは、空気、窒素、プリウェット液に可溶なガス(例えば、COまたはSO)などでありうる。
【0035】
基板を装着したロータユニットを少なくとも部分的にプリウェットチャンバの外へ移動させるステップは、基板を装着したロータユニットがスピン位置(例えば、プリウェット位置の25mm下方)に移動される、という意味において理解することができる。
【0036】
基板の表面のプリウェット流体を遠心的に減少させるために、基板を装着したロータユニットをスピン面においてスピンさせるステップは、ロータユニットの例えば数百rpmでのスピンによる余分なプリウェット流体を振り落とすこと(スピンオフ)として理解することができる。
【0037】
基板がプリウェットチャンバとは反対を向くように、基板を装着したロータユニットをスピン面に対して垂直に回転させるステップは、基板を装着したロータユニットが基板の回転スピン移動に垂直な軸の周りを回転移動する、という意味において理解することができる。基板を装着したロータユニットは、これにより例えば電気めっきチャンバに向かって下向きの位置になる。
【0038】
基板を装着したロータユニットをプロセスステーションの電気めっきチャンバ内へ移動させるステップは、基板を保持するロータユニットがプロセスステーションの電気めっきチャンバへ移動され、電気めっきチャンバとロータユニットとの間の位置合わせを確立し、電気めっきチャンバに入る、という意味において理解することができる。
【0039】
電気めっきチャンバ内における基板の電気めっきプロセスのために基板に電解質液および電流を施用するステップは、電気めっきプロセスが開始される、という意味において理解することができる。電気化学プロセスのために、プロセスステーションの電気めっきチャンバは、例えばCuまたは基板の上および凹部内に電気化学的に堆積されうる任意の他の材料の電気化学堆積を行うために必要な(基板とは反対の電気分極の状態の)陽極を含む。電気めっきチャンバは、電気化学プロセスが開始されるときに基板が浸される電解質液も含む。電気化学プロセスは、低速の定常めっきから超高速めっきまで、様々なやり方で行われうる。ロータユニットは、最大100アンペア以上の電流を供給しうる。一実施形態では、電気めっきは周囲空気中で行われる。一実施形態では、電気めっきは大気圧で行われる。
【0040】
基板を装着したロータユニットを少なくとも部分的に電気めっきチャンバの外へ移動させるステップは、電気化学堆積プロセスが終了したと判断されたときにロータユニットが電気めっきチャンバから除かれる、という意味において理解することができる。
【0041】
一実施形態では、化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法は、基板を装着したロータユニットを電気めっきチャンバの外へ移動させた後に、:
‐基板がプリウェットチャンバの方を向くように基板を装着したロータユニットを回転させるステップと、
‐基板を装着したロータユニットをプリウェットチャンバ内に移動させるステップと、
‐基板から電解質液を除去するために、プリウェットチャンバ内で基板にリンス液を施用するステップと
をさらに含む。
【0042】
これは、ロータユニットが電気めっきチャンバから除去され、その初期位置に戻るように回転される、という意味において理解することができる。この時、基板は例えばロータユニットの上にあり得、再びプリウェットチャンバ内に移動されてもよい。「チャンバ内」とは、少なくとも部分的にまたは完全にチャンバ内に、として理解することができる。換言すれば、「チャンバ内」は、チャンバの隣または近くに、として、または、完全にチャンバの内部の中に、として理解することができる。「プリウェットチャンバの近く」とは、スピンオフ位置にあるものとして理解することができる。プリウェットチャンバ内で、表面から任意の電解質残留物を除去するために、基板表面上にリンス液が供給されうる。要約すると、リンスはプリウェットチャンバの内側で行われうるが、プリウェットチャンバの近くでも行われうる。
【0043】
一実施形態において、化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法は、
‐基板を乾燥させるために、プリウェットチャンバ内で基板に乾燥流を施用するステップ
をさらに含む。
【0044】
これは、ロータユニットから、例えば基板輸送システムへ、またはロータユニットが基板の搭載/取り外し位置に移動する後続のプロセシングステップへの、基板のドライハンドリングを可能にするために、プリウェットチャンバ内で基板の乾燥プロセスが行われるという意味において理解することができる。ここでも、「プリウェットチャンバ内」とは、チャンバの近くとして、または部分的にチャンバの内部へとして、または完全にチャンバの内部へとして理解することができる。プリウェットチャンバの近くのスピンオフ位置で乾燥が行われるのが好ましい。
【0045】
本発明によれば、基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーションも提示される。プロセスステーションは、
‐ロータユニットと、
‐プリウェットチャンバと、
‐電気めっきチャンバと
を備える。
ロータユニットは、処理対象の基板を保持し、基板を少なくとも部分的にプリウェットチャンバの内外に移動させ、少なくとも部分的に電気めっきチャンバの内外に移動させるように構成される。
【0046】
プリウェットチャンバは、減圧雰囲気を施用してまたは施用せずに、プリウェット流体によって基板をプリウェットするように構成される。
【0047】
電気めっきチャンバは、基板の電気めっきプロセスのために基板に電解質液および電流を施用するように構成される。
【0048】
ロータユニットは、基板をスピン面において回転させ、基板がプリウェットチャンバの方をまたは電気めっきチャンバの方を向くように、基板とともにスピン面に対して垂直に回転するようにさらに構成される。
【0049】
プロセスステーションにおける基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための本プロセスステーションは、プロセスステーションにおける基板の表面処理を大幅に管理しやすくする。このプロセスステーションは、プリウェットされた基板のプリウェットチャンバから電気めっきチャンバへの手の込んだウェットハンドリングを必要とせずに、プロセスステーションにおいてプリウェットおよび電気めっきを行うことができるように、プリウェットチャンバと電気めっきチャンバとを備える。液体をこぼして耐用期間および汚染の問題を引き起こす可能性はない。本プロセスステーションは、システムの複雑さ、サイズおよびコストを低減する。
【0050】
ロータユニットは、基板の側方移動(例えば、上下)およびスピン移動(例えば、基板表面においてまたは基板表面に沿って、概ね基板の中心の周りに水平に)の少なくとも一方および基板のスピン移動に垂直な軸の周りをの回転移動(例えば、基板を上方から下方まで傾ける)の少なくとも一方を可能にしうる。
【0051】
一実施形態では、プリウェットチャンバおよび電気めっきチャンバの少なくとも一方は、ロータユニットを間に挟んで互いに対向して配置される。一例では、上記チャンバの一方は、第一位置、例えば床上に配置され、他方のチャンバは、鉛直方向における第一位置の上方の第二位置に配置される。これは、ロータユニットを間に挟んでチャンバが積み重ねられて基板をチャンバ間で鉛直に移動させうることを意味する。別の例では、ロータユニットを間に挟んで両チャンバが床上に互いに隣り合って配置されて基板をチャンバ間で水平に移動させる。一実施形態では、プロセスステーションは、少なくとももう一つのチャンバを備える。
【0052】
一実施形態では、ロータユニットは、基板をロータユニットに固定する固定手段を備える。固定手段は、一つ以上の基板表面の表面処理を可能にするように構成されうる。一実施形態では、固定手段は、クランプ要素、磁気要素および吸引要素の少なくともいずれかである。吸引要素は、減圧または真空により基板を固定するように構成されうる。
【0053】
一実施形態では、ロータユニットは、プリウェットチャンバを液密および気密の少なくとも一方に閉じる密閉手段を備える。一実施形態では、ロータユニットは、電気めっきチャンバを液密および気密の少なくとも一方に閉じる密閉手段を備える。
【0054】
一実施形態では、ロータユニットは、プリウェットチャンバにガスを供給するガス供給系を備える。ガスは、基板をプリウェットするためおよび乾燥するための少なくとも一方のための特定の雰囲気を提供するため使用されうる。乾燥は、電気めっきチャンバ内、プリウェットチャンバ内ならびにこれらのチャンバの間および外の少なくともいずれかで行われうる。
【0055】
一実施形態では、ロータユニットは、プリウェットチャンバ内の圧力を低下させる減圧系を備える。特に、ロータユニットは、一つは基板を保持するため、一つはプリウェットチャンバ内の圧力を低下させるための、二つの真空施用要素を備えうる。
【0056】
一実施形態では、ロータユニットは、1500rpm(rounds per minute)以上、好ましくは2000rpmで基板をスピンさせるように構成される。
【0057】
一実施形態では、ロータユニットは、電気めっきチャンバ内における電気めっきプロセスのために基板に電流を提供する電気エネルギー供給系を備える。好ましくは、電流は50アンペア以上、より好ましくは100アンペア以上になる。
【0058】
一実施形態では、ロータユニットは、基板にリンス液を供給するリンス液供給系を備える。
【0059】
独立請求項に記載の方法およびデバイスは、特に従属請求項に定義されるような、類似および同一の少なくとも一方の好ましい実施形態を有すると理解されるものとする。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせでもありうるとさらに理解されるものとする。
【0060】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
次に本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1】本発明による基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーションの一実施形態を概略的および例示的に示す。
図2】別の位置の図1による基板の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーションを概略的および例示的に示す。
図3】別の位置の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーションを概略的および例示的に示す。
図4】さらに別の位置の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーションを概略的および例示的に示す。
図5】さらに別の位置の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーションを概略的および例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、基板20の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のためのプロセスステーション10を概略的および例示的に示す。プロセスステーション10は、プリウェットチャンバ12と、電気めっきチャンバ13と、ロータユニット11とを備える。プリウェットチャンバ12と電気めっきチャンバ13とは、ロータユニット11を間に挟んで互いに対向して配置される。
【0063】
プリウェットチャンバ12は、基板20のプリウェットならびに任意でリンスおよび乾燥の少なくとも一方が行われるハウジングである。電気めっきチャンバ13は、電気めっきプロセスが行われるハウジングである。プリウェットチャンバ12と電気めっきチャンバ13とは、同じプロセスステーション10内に配置される。基板20は、プリウェットおよび電気めっきの最中およびその合間にプロセスステーション10を出ない。
【0064】
他の図を参照して以下でさらに詳細に説明されるように、ロータユニット11は、基板20をプリウェットチャンバ12内へ、プリウェットチャンバ12の外へ、電気めっきチャンバ13の方へ、電気めっきチャンバ13内へ、および電気めっきチャンバ13の外へ、再びプリウェットチャンバ12へ、およびプリウェットチャンバ12の外へと移動させる。これは、基板20をロータユニット11から解放せずに、特に基板20のロータユニット11への固定状態を変えずに行われる。
【0065】
したがってロータユニット11は、基板20のための保持ユニット112と駆動ユニット111とを備える。駆動ユニット111は、変速機を備えたエンジンである。保持ユニット112は、基板20を保持するフレーム要素である。
【0066】
ロータユニット11は、基板20を保持し、基板20にプリウェット圧力(例えば、真空)およびプリウェット雰囲気(例えば、空気とは異なるガス)の少なくとも一方および電流(例えば、電気めっきの場合は最大100アンペア以上)の少なくとも一方の供給を行う。したがってロータユニット11は、圧力供給系113、ガス供給系114および電気エネルギー供給系115を備える。ロータユニット11は、基板20にリンス液を供給するリンス液供給系をさらに備える。
【0067】
ロータユニット11は、基板20の側方移動(上下)およびスピン移動(基板20の表面において水平に、かつ概ね基板20の中心の周りに)の少なくとも一方、および基板20のスピン移動に垂直な軸の周りでの回転移動(基板20を上方から下方まで傾ける)の少なくとも一方を可能にする。これにより、以下に示すように基板20が上下に移動され、遠心され、ロータユニット11の上で表側を上にした状態からロータユニット11の下で表側を下にした状態まで回転されることが可能である。
プロセスステーション10における基板20の化学表面処理および電解表面処理の少なくとも一方のための方法は、必ずしもこの順序ではなく必ずしも全部ではないが:
S1.処理対象の基板20をロータユニット11に装着するステップ(図1参照)と、
S2.基板20を装着したロータユニット11をプロセスステーション10のプリウェットチャンバ12内へ移動させるステップ(図2参照)と、
S3.任意にプリウェットチャンバ12内のガス系を変更するステップ(図2参照)と、
S4.プリウェットチャンバ12内の基板20にプリウェット流体を施用するステップ(図2参照)と、
S5.任意にプリウェットチャンバ12内のガス系を変更するステップ(図2参照)と、
S6.基板20を装着したロータユニット11を少なくとも部分的にプリウェットチャンバ12の外へ移動させるステップ(図3参照)と、
S7.基板20の表面のプリウェット流体を遠心的に減少させるために、基板20を装着したロータユニット11をスピン面においてスピンさせるステップ(図3参照)と、
S8.基板20がプリウェットチャンバ12とは反対を向くように、基板20を装着したロータユニット11をスピン面に対して垂直に回転させるステップ(図4参照)と、
S9.基板20を装着したロータユニット11をプロセスステーション10の電気めっきチャンバ13内へ移動させるステップ(図4参照)と、
S10.電気めっきチャンバ13内の基板20の電気めっきプロセスのために基板20に電解質液および電流を施用するステップ(図4参照)と、
S11.基板20を装着したロータユニット11を電気めっきチャンバ13の外へ移動させるステップ(図5参照)と、
S12.基板20がプリウェットチャンバ12の方を向くように、基板20を装着したロータユニット11を任意に回転させるステップ(図5参照)と、
S13.基板20を装着したロータユニット11をプリウェットチャンバ12の中またはその近くに任意に移動させるステップ(図5参照)と、
S14.プリウェットチャンバ12の内側またはその近くの基板20にリンス液を任意に施用するステップ(図5参照)と、
S15.プリウェットチャンバ12内の基板20に乾燥流を任意に施用するステップ(図5参照)と
を含む。
【0068】
図1に示すように、基板20をロータユニット11に装着するステップS1は、後に続くプロセスステップ全体(プリウェットから電気めっきまで、任意でリンスおよび乾燥の少なくとも一方まで)にわたり基板20を支持、保持、および移動させるロータユニット11上に、基板20が搭載されることを意味する。
【0069】
図2に示すように、基板20を装着したロータユニット11をプロセスステーション10のプリウェットチャンバ12内へ移動させるステップS2は、基板20を装着したロータユニット11がプロセスステーション10の上部へ上方移動し、プリウェットチャンバ12内へ移動されることを意味する。プリウェットチャンバ12とロータユニット11との間に密閉が確立される。
【0070】
プリウェットチャンバ12内のガス系を変更するステップS3は、例えば基板20の凹部から周囲空気を除去するために、プリウェットステップの前に圧力を大気圧に対して低下させること(例えば、0.7バールまたは真空)である。ガス系の変更は、同様にまたは加えて周囲空気と異なるガスの交換でありうる。
【0071】
プリウェットチャンバ12内の基板20にプリウェット流体を施用するステップS4は、プリウェット流体が基板20、特に基板20の凹部の底および側壁に浸透して濡らすことを意味する。
【0072】
プリウェットチャンバ12内のガス系を変更するステップS5は、ステップS3の後の圧力を上昇させて大気圧に戻すことである。ステップS3の減圧された圧力または真空が解放されて、大気周囲圧力(約1バール)が得られる。これは、ロータユニット11から、またはチャンバ上に設置されたガス供給系を介して、ロータユニット11とプリウェットチャンバ12の内部との間の開放容積内へガスストリームを流すことによって得られる。ガスストリームは、空気、窒素、プリウェット液に可溶なガス(例えば、COまたはSO)などでありうる。ガス系の変更は、同様にまたは加えて周囲空気に戻すガスの交換でありうる。プリウェットの後に周囲空気および圧力と異なる変更を維持する必要はない。
【0073】
図3に示すように、基板20を装着したロータユニット11をプリウェットチャンバ12の外へ移動させるステップS6は、基板20を装着したロータユニット11がプリウェット位置の下方およびプリウェットチャンバ12の下方(例えば、25mm下方)のスピン位置に移動されるという意味において理解することができる。
【0074】
基板20の表面のプリウェット流体を遠心的に減少させるために、基板20を装着したロータユニット11をスピン面SにおいてスピンさせるステップS7は、ロータユニット11および基板20の例えば数百rpm(rounds per minute)でのスピンにより余分なプリウェット流体を排出するものとして理解することができる。「プリウェット流体を遠心的に減少させる」とは、プリウェット流体が基板20の表面から除去されるが、基板20の凹部内になお残ることを意味する。スピン面Sは、基板20がスピンされる面として理解することができる。スピン面は、プリウェットチャンバ12と電気めっきチャンバ13との間の仮想接続線に垂直である。スピン面Sは、基板20の表面または基板20の表面の延長に平行でありうる。ロータユニット11は、基板20の中心の周りを例えば1500rpmまたは2000rpmで、基板20をスピンさせうる。
【0075】
図4に示すように、基板20を装着したロータユニット11をスピン面に対して垂直に回転させるステップS8は、基板20が傾けられ、今度はプリウェットチャンバ12とは反対に向くことを意味する。基板20を装着したロータユニット11は、図3に示されるような基板20の回転スピン移動に垂直な軸の周りを回転移動される。基板20を装着したロータユニット11は、今度は電気めっきチャンバ13に向かって下向きの位置になる。換言すれば、ロータユニット11は、ロータユニット11および基板20を電気めっきチャンバ13に向けることができるように、鉛直方向に180°枢動する。
【0076】
基板20を装着したロータユニット11をプロセスステーション10の電気めっきチャンバ13内に移動させるステップS9は、基板20を保持するロータユニット11がプロセスステーションの電気めっきチャンバ13へ移動され、電気めっきチャンバ13とロータユニット11との間のアライメントを確立し、その後電気めっきチャンバ13に入る、という意味において理解することができる。
【0077】
電気めっきチャンバ13内の基板20の電気めっきプロセスのために基板20に電解質液および電流を施用するステップS10は、電気めっきプロセスが行われることを意味する。ロータユニット11は、最大100アンペア以上の電流を供給しうる。電気めっきは、周囲空気および大気圧の少なくとも一方で行われうる。
【0078】
図5に示すように、基板20を装着したロータユニット11を電気めっきチャンバ13の外へ移動させるステップS11は、ロータユニット11が電気めっきチャンバ13から除去されるという意味において理解することができる。この時、基板20は電気めっきチャンバ13の上方にくる。
【0079】
基板20を装着したロータユニット11を回転させるステップS12は、基板20が今度は再びプリウェットチャンバ12の方を向くことを意味する。基板20は、ロータユニット11の上にくる。
【0080】
ステップS13は、基板20を装着したロータユニット11をプリウェットチャンバ12の中またはその近くに戻るように移動させる。
【0081】
ステップS14は、基板20から電解質残留物を除去するために、プリウェットチャンバ12内の基板20にリンス液を施用する。
【0082】
ステップS15は、基板20を乾燥させるために、プリウェットチャンバ12の内側またはそのきわめて近くの基板20に乾燥流を施用する。ロータユニット11から例えば基板20輸送システムへの基板20のドライハンドリングを可能にするために、基板20はプリウェットチャンバ12内でドライプロセスを受ける。
【0083】
本発明の実施形態は、様々な主題に関連して記載されることに留意しなければならない。特に、いくつかの実施形態は方法型請求項に関連して記載され、他の実施形態は装置型請求項に関連して記載される。しかし、当業者は、上記および以下の記載から、別段の通知がない限り、一種類の主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関する特徴間の任意の組み合わせも、本出願により開示されるとみなされることを推論するであろう。しかし、全部の特徴が組み合わされて、特徴の単純な合計を上回る相乗効果を提供しうる。
【0084】
図面および前述の説明において本発明を詳細に例示および記載しているが、そのような例示および記載は例証的または説明的であり、限定的ではないものと考えられねばならない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形例は、当業者により、請求された本発明を実施する際に、図面、本開示、および従属請求項の検討から理解され達成されうる。
【0085】
特許請求の範囲において、「含む」という語は他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「一つの(a)」または「一つの(an)」は複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲に引用されたいくつかの項目の機能を果たしうる。単にある方策が相互に異なる従属請求項において引用されていることは、これらの方策の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、当該範囲を限定するものと解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5