(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】インシュレータ、電動機及び応用機器
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20240909BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K3/34 B
(21)【出願番号】P 2022572990
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046360
(87)【国際公開番号】W WO2022145246
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2020219449
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】322003732
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 智行
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 行雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/058643(WO,A1)
【文献】特開2011-254656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の外周部と、
前記外周部から前記外周部の中心へ向かう第1方向に延び且つワイヤが巻き付けられる巻付部と、を備え、
前記外周部は、円環部、前記円環部の内周端に接続された内壁部、及び、前記円環部において前記ワイヤを前記巻付部に導く案内部を有し、前記案内部は前記内壁部にて開口した開口を有し、
前記巻付部は、
前記ワイヤが前記外周部
の前記案内部から導入される導入部と、
前記導入部から導入された前記ワイヤが周回する周回部と、
前記第1方向において前記導入部と前記周回部との間に設けられ、前記ワイヤのうち前記導入部において導入された部分と前記周回部に巻き付けられた1巻き目の部分とを隔てる隔離壁と、を備え
、
前記第1方向に沿った前記巻付部の外端は、前記外周部の内周端に接続され、
前記導入部は、前記案内部の前記開口から延びて、前記巻付部の外端と、前記外周部の周方向に沿った前記巻付部の一端との間の前記巻付部の角部分に配置されている
、
インシュレータ。
【請求項2】
前記導入部及び前記隔離壁は、前記第1方向、及び、前記第1方向に直交すると共に前記外周部の接線方向である第2方向に対して傾斜している、請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
前記隔離壁は、前記周回部から前記外周部の中心線に沿う方向である第3方向に立ち上がる立ち上がり部分、及び、前記立ち上がり部分の上端から延びて前記第3方向に対して前記第1方向とは反対側に傾斜する傾斜部分を有している、請求項1又は2に記載のインシュレータ。
【請求項4】
前記周回部は、天面、及び、前記天面において少なくとも前記隔離壁に沿った方向の端に設けられた溝を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載のインシュレータ。
【請求項5】
前記案内部は、溝形状であって
、前記開口が前記隔離壁に対向している、請求項1~4のいずれか一項に記載のインシュレータ。
【請求項6】
前記外周部は、内壁部に沿う延出壁を有し、
前記隔離壁は、前記延出壁よりも第1方向側に位置している、請求項5に記載のインシュレータ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のインシュレータと、
前記ワイヤと、を備えている、電動機。
【請求項8】
請求項7に記載の電動機を備えている、応用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インシュレータ、電動機及び応用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインシュレータとして、特許文献1のインシュレータが知られている。このインシュレータは、コイルが巻装されるコイル巻回部、及び、コイル巻回部の一端に設けられ且つコイル導入溝が形成された第1鍔部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開番号WO2019/058643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のインシュレータでは、コイルは、コイル導入溝を通り、コイル巻回部に巻回されている。しかしながら、コイルは、その材質及び線径等に応じて変形の度合いが異なる。このため、コイルがコイル導入溝からコイル巻回部に導入される際に大きく湾曲し、コイルを所定の位置に巻くことができないおそれがある。この場合、コイル導入溝からコイル巻回部に導入されたコイルの巻き始めの部分上に、コイル巻回部に巻き付けられた1巻き目の部分が重なり、コイルの巻き乱れが生じることがある。これにより、コイル巻回部におけるコイルの占積率が低下し、コイルを用いた電動機の効率が低下してしまう。
【0005】
そこで本開示は、ワイヤの占積率の向上を図ったインシュレータ、電動機及び応用機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係るインシュレータは、環状の外周部と、前記外周部から前記外周部の中心へ向かう第1方向に延び且つワイヤが巻き付けられる巻付部と、を備え、前記巻付部は、前記ワイヤが前記外周部から導入される導入部と、前記導入部から導入された前記ワイヤが周回する周回部と、前記第1方向において前記導入部と前記周回部との間に設けられ、前記ワイヤのうち前記導入部において導入された部分と前記周回部に巻き付けられた1巻き目の部分とを隔てる隔離壁と、を備えている。
【0007】
これによれば、ワイヤのうち導入部において導入された部分と周回部に巻き付けられた1巻き目の部分とが隔離壁により隔てられる。このため、ワイヤの導入された部分により乱されることなく周回部にワイヤが整列して巻き付けられるため、ワイヤの占積率の向上を図ることができる。
【0008】
本開示の第2の態様に係るインシュレータは、第1の態様において、前記導入部及び前記隔離壁は、前記第1方向、及び、前記第1方向に直交すると共に前記外周部の接線方向である第2方向に対して傾斜している。これにより、隔離壁に沿ってワイヤを巻き付けることにより、ワイヤのクロス巻を容易に行うことができる。
【0009】
本開示の第3の態様に係るインシュレータは、第1又は第2の態様において、前記隔離壁は、前記周回部から前記外周部の中心線に沿う方向である第3方向に立ち上がる立ち上がり部分、及び、前記立ち上がり部分の上端から延びて前記第3方向に対して前記第1方向とは反対側に傾斜する傾斜部分を有している。これにより、周回部におけるワイヤの巻き付け空間を大きく採れ、ワイヤの占積率の向上を図ることができる。
【0010】
本開示の第4の態様に係るインシュレータは、第1~第3のいずれかの1つの態様において、前記周回部は、天面、及び、前記天面において少なくとも前記隔離壁に沿った方向の端に設けられた溝を有している。これにより、溝により1巻き目のワイヤが隔離壁に沿って周回部に巻き付けられるため、2巻き目以降のワイヤを周回部に整列して巻き付け、ワイヤの占積率の向上を図ることができる。
【0011】
本開示の第5の態様に係るインシュレータは、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記外周部は、円環部、前記円環部の内周端に接続された内壁部、及び、前記円環部において前記ワイヤを前記導入部に導く案内部を有し、前記案内部は、溝形状であって、前記内壁部に開口した開口を有し、前記開口が前記隔離壁に対向している。これにより、ワイヤが案内部から導入部を介して導入される際に周回部に大きく湾曲することが隔離壁によって抑制される。このため、ワイヤを周回部に整列して巻き付けることができ、ワイヤの占積率の向上を図ることができる。
【0012】
本開示の第6の態様に係るインシュレータは、第5の態様において、前記外周部は、内壁部に沿う延出壁を有し、前記隔離壁は、前記延出壁よりも第1方向側に位置している。
【0013】
本開示の第7の態様に係る電動機は、第1~第6のいずれか1つの態様のインシュレータと、前記ワイヤと、を備えている。これにより、ワイヤの占有率が高いインシュレータを用いるため、電動機の駆動効率の向上を図ることができる。
【0014】
本開示の第8の態様に係る応用機器は、第7に記載の前記電動機を備えている。これにより、ワイヤの占有率が高いインシュレータを用いるため、応用機器の駆動効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の各態様によれば、インシュレータにおいてワイヤの占積率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1に係るインシュレータを備えた電動機の斜視図である。
【
図3】
図1のステータコア及びインシュレータの斜視図である。
【
図4】
図1のインシュレータを上から視た図である。
【
図5】
図4のインシュレータの一部を示す斜視図である。
【
図6】
図4のインシュレータの一部を上から視た図である。
【
図8】
図7のインシュレータの一部の断面図である。
【
図9】
図9(a)は、変形例1に係るインシュレータの一部を上から視た図である。
図9(b)は、
図9(a)のインシュレータの巻付部にワイヤを巻き付けた図である。
【
図10】
図10(a)は、変形例2に係るインシュレータの一部を上から視た図である。
図10(b)は、
図10(a)のインシュレータの巻付部にワイヤを巻き付けた図である。
【
図11】実施の形態2に係る電動機及びこれを備える応用機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら各実施の形態を説明する。
【0018】
(実施の形態1)
<電動機の構成>
実施の形態1に係るインシュレータ10は、例えば、
図1に示すように、電動機20に備えられる。この電動機20は、ロータ21、及び、このロータ21の周囲を取り囲むステータ40を備えている。ロータ21は、円筒形状のロータコア22、及び、その外周面上に配置された複数の磁石を有している。ロータコア22は、積層された複数の電磁鋼板から成り、磁石は、ロータコア22の軸に直交する面が円弧形状の永久磁石から成る。
【0019】
<ステータの構成>
ステータ40は、円筒形状であって、その中央孔にロータ21が嵌められて、ロータ21と同軸に配置されている。ステータ40は、その内周面がロータ21の外周面に対し間隔を空けて対向している。なお、ステータ40の中心軸の方向である軸方向を、上下方向と称する。但し、ステータ40の配置方向は、これに限定されない。
【0020】
ステータ40は、ステータコア41と、ステータコア41に取り付けられたインシュレータ10と、ステータコア41及びインシュレータ10に共に巻き付けられたワイヤ42とを有している。ステータコア41及びワイヤ42は導電性材料から成り、インシュレータ10は、電気的絶縁性を有する樹脂から成る。インシュレータ10は、ステータコア41とワイヤ42との間においてこれらを電気的に絶縁している。
【0021】
図2及び
図3に示すように、ステータコア41は、直方体形状であって、貫通孔43、バックヨーク部44、突出部45及び鍔部46を有している。バックヨーク部44、突出部45及び鍔部46は、一体的に形成されており、積層された複数の電磁鋼板から成る。
【0022】
貫通孔43は、ステータコア41の中央においてステータコア41の上面と下面との間を貫通している。貫通孔43により形成される空間は、その軸が上下方向に延びる円柱形状である。バックヨーク部44は、ステータコア41において貫通孔43よりも、貫通孔43の軸を中心とした径方向において軸側(内側)と反対側(外側)の部分であり、貫通孔43の周囲を取り囲む内周面を有している。
【0023】
突出部45は、複数(例えば、9つ)、設けられており、貫通孔43の軸を中心とした周方向において、互いに間隔を空けて等間隔で配置されている。突出部45は、例えば、平板形状であって、バックヨーク部44の内周面から径方向の内側に突出している。突出部45は、その外端がバックヨーク部44の内周面に接続され、その内端が鍔部46に接続されている。
【0024】
鍔部46は、上方から視てその内周面が円弧形状であって、その周方向における中央に突出部45が接続されている。このため、鍔部46は、突出部45から、周方向における両側に突出している。鍔部46は、周方向において互いに隣り合う鍔部46の間には間隙が空けられながら、円筒形状に配置されている。
【0025】
インシュレータ10は、中心軸が上下方向に延びる円筒形状である。なお、インシュレータ10は、中心軸の周りの周方向に分割された複数の部分から構成されており、この部分が周方向に接続されることにより円筒形状を形成されてもよい。また、インシュレータ10は、ステータコア41の上部を覆っている上側インシュレータ10aと、ステータコア41の下部を覆っている下側インシュレータ10bを有している。
【0026】
上側インシュレータ10aは、環状の外周部11、径方向において外周部11から外周部11の中心11aへ向かう第1方向(例えば、内側)に突出する複数(例えば、9つ)の巻付部50、及び、巻付部50の内端に接続された複数(例えば、9つ)の内周部12を有している。巻付部50は、外周部11の中心11aの周りの周方向において、互いに間隔を空けて等間隔で配置されている。互いに隣り合う巻付部50の間の空間は、ワイヤ42が挿入されるスロット47である。互いに隣り合うスロット47の間の巻付部50にワイヤ42が巻付けられる。
【0027】
外周部11は、例えば、円環形状であって、円環部13、内壁部14、延出壁15及び案内部16を有している。円環部13は、円環形状であって、上下方向に直交している。円環部13は、その中心側である内側の内周端と、内側とは反対側の外周端とを有している。
図2に示すように上側インシュレータ10aがステータコア41の上部に取り付けられた状態において、円環部13は、貫通孔43の周囲を取り囲むように、ステータコア41の上面上に重ねられる。なお、案内部16の詳細については後述する。
【0028】
内壁部14は、周方向において互いに隣接する巻付部50の間隔に設けられ、円環部13の内周端から下方に延びている。内壁部14は、上側から視て、円弧形状である。
図2に示すように上側インシュレータ10aがステータコア41の上部に取り付けられた状態において、内壁部14は、周方向において互いに隣接する突出部45の間隙においてステータコア41の内周面を覆う。
【0029】
延出壁15は、複数(例えば、9つ)、円環部13の内周端に設けられている。延出壁15は、その少なくとも一部が巻付部50と、内側から径方向に視て重なるように配置されている。例えば、延出壁15は、その周方向の一方側(例えば、右側)が、巻付部50の周方向の他方側(例えば、左側)と、内側から視て重なっている。延出壁15は、円環部13の内周端から上方に延びており、内側から視て台形状であって、径方向の厚みが円環部13よりも薄い平板形状である。
【0030】
延出壁15は、その下端が円環部13に接続され、その上端には径方向の外側へ屈曲する屈曲部15aが設けられている。この屈曲部15a及び延出壁15により囲まれた空間に、ワイヤ42が挿入される挿入部15bが形成される。挿入部15bは、延出壁15の外側であって屈曲部15aの下側である。ワイヤ42は、屈曲部15a及び延出壁15により係止されて案内部16を介して巻付部50へ挿入される。
【0031】
巻付部50は、その外端が内壁部14に接続され、その内端が内周部12に接続されている。巻付部50は、周回部51、導入部52及び隔離壁60を有している。周回部51は、径方向において隔離壁60を挟んで導入部52とは反対側に設けられ、隔離壁60から内側に突出し、導入部52から導入されたワイヤ42が巻き付けられた周回する部分である。なお、導入部52及び隔離壁60の詳細については後述する。
【0032】
周回部51は、径方向に直交する断面が上側に窪む上下反対向きU字形状であって、上壁53、上壁53よりも左側の左側壁54、及び、上壁53よりも右側の右側壁55を有している。上壁53は、例えば、矩形の平板形状であって、周方向の長さが径方向の長さよりも短い。上壁53の上面である天面56は、
図8に示すように、外側ほど下方に向かって、上下方向に直交する面に対して傾斜している。
【0033】
天面56は、
図5及び
図6に示すように、周方向において、中央部分56a、中央部分56aよりも左側の左側部分56b、及び、中央部分56aよりも右側の右側部分56cを有している。中央部分56aが平坦であって、左側部分56bは左側ほど下方に傾斜し、右側部分56cは右側ほど下方に傾斜している。この中央部分56aは、天面56における周方向の中央位置を含む部分であり、左側部分56bは天面56の左端を含む部分であり、右側部分56cは天面56の右端を含む部分である。
【0034】
左側壁54は、その上端が上壁53の左端に接続され、右側壁55は、その上端が上壁53の右端に接続され、左側壁54及び右側壁55は上壁53から下方に延びている。
図2に示すように上側インシュレータ10aがステータコア41の上部に取り付けられた状態において、上壁53は突出部45の上面を覆い、左側壁54は突出部45の左面を覆い、右側壁55は突出部45の右面を覆う。
【0035】
内周部12は、例えば、内側から視て上側に突出する半円形状であって、上壁53に対して交差(例えば、直交)しており、上壁53から上方に立ち上がっている。内周部12は、上方から視てその内周面が円弧形状であって、周方向において、上壁53よりも長く、その中央が上壁53に接続されており、上壁53の右端から右側へ突出し、上壁53の左端から左側へ突出している。内周部12の右端及び左端は、径方向の外側へ突出している。
【0036】
図2に示すように、上側インシュレータ10aがステータコア41の上部に取り付けられた状態において、内周部12はステータコア41の鍔部46の上に配置される。ここで、内周部12の内周面と鍔部46の内周面とは、互いに同一面上に配置され、ステータ40における内周面を構成する。
【0037】
下側インシュレータ10bは、
図3に示すように、外周部11、巻付部50及び内周部12を備え、この外周部11は円環部13及び内壁部14を有し、この巻付部50は上壁53、左側壁54及び右側壁55を有している。下側インシュレータ10bにおける内周部12、円環部13、内壁部14、下壁58、左側壁54及び右側壁55は、上側インシュレータ10aにおける内周部12、円環部13、内壁部14、上壁53、左側壁54及び右側壁55とそれぞれ同様である。
【0038】
<案内部、導入部及び隔離壁>
図4~
図8に示すように、案内部16は、円環部13において挿入部15bから周方向の右側に延びており、右側ほど内側に向かって直線状に延びて巻付部50に向かっている。案内部16は、その延伸方向において少なくとも一部に溝形状を有していてもよい。例えば、案内部16は、延出壁15の右端からさらに右側に向かった部分において溝形状になっており、右側ほど深くなっている。
【0039】
案内部16は、その右端が内壁部14に対して開口しており、右開口16aを有している。これにより、挿入部15bを通ったワイヤ42は、案内部16により案内されて右開口16aを介して巻付部50へ延びる。
【0040】
導入部52は、その左端が案内部16の右開口16aに接続されており、その右端が、内壁部14に接続された巻付部50の外端の右端である右角部分50aに配置されている。導入部52は、案内部16と共に、挿入部15bから右角部分50aに向かって直線状に延びている。この右角部分50aは、内壁部14と巻付部50の右端との間のスロット47における左隅部分47aと周方向において隣接している。これにより、ワイヤ42は、挿入部15bから案内部16及び導入部52を通って、右側ほど内側へ直線状に延びながら、右側ほど下方へ導かれて、右角部分50aから左隅部分47aに延びる。
【0041】
ここで、導入部52は、溝形状であって、右側ほど深くなっている。これにより、導入部52の底は、右側ほど下方へ傾斜している。この導入部52の右端は、巻付部50の右側面57の上端に接続されている。右側面57は、内壁部14から内側に立ち上がり、内側ほど左側に湾曲して周方向に窪んだ曲面により形成されている。
【0042】
この導入部52の底と右側面57との間の角度は、90度よりも大きく、右角部分50aにおいて尖った稜がない。このため、ワイヤ42は、導入部52の底に沿って下方の右側面57上へ導かれ、この間の右角部分50aにおいてスムーズに移動することができる。また、ワイヤ42が導入部52から右側面57に延びる際に湾曲することが低減され、ワイヤ42を整列して巻付部50に巻き付けられる。
【0043】
隔離壁60は、延出壁15よりも内側において内壁部14から内側に突出して、巻付部50に設けられている。隔離壁60は、内壁面61、径方向において内壁面61の反対側の外壁面62、内壁面61の左端に接続された左壁面63、及び、周方向において左壁面63の反対側の右壁面64を有している。左壁面63は、内壁部14から内側に立ち上がり、内側ほど右側に湾曲し右側に窪んだ曲面により形成されている。
【0044】
隔離壁60は、その少なくとも一部が、内側から径方向に視て延出壁15と重なるように配置されている。例えば、隔離壁60は、その周方向の一方側(例えば、左側)が、延出壁15の周方向の他方側(例えば、右側)と、内側から視て重なっている。
【0045】
このため、隔離壁60の左部分が延出壁15の右部分に接続され、隔離壁60の右部分は延出壁15よりも右側に延びている。この右部分において上面に右壁面64が設けられ、その外面に外壁面62が設けられている。右壁面64は、延出壁15の右端から、右側ほど下方に傾斜している。右壁面64は、上側から視てその左端が周方向において導入部52と隣接し、その右端が径方向において導入部52よりも内側に配置されている。
【0046】
外壁面62は、案内部16の右開口16aに対向し、導入部52の内側において導入部52に沿って右側ほど内側に延びている。これにより、ワイヤ42は、案内部16の右開口16aから導入部52に導入され、外壁面62に沿って内側へ導かれる。この際、導入部52に導入されたワイヤ42は、導入部52よりも内側にある隔離壁60により内側に大きく湾曲することが低減される。このため、ワイヤ42のうち、導入された部分42aが、隔離壁60よりも内側にある周回部51に巻き付けられるワイヤ42に干渉することが抑制される。よって、ワイヤ42を周回部51に整列して巻き付ける事ができ、インシュレータ10におけるワイヤ42の占積率を増加し、インシュレータ10を用いた電動機20の効率の向上を図ることができる。
【0047】
内壁面61は、巻付部50の周方向の全長に亘って設けられている。内壁面61は、周方向において左端が左壁面63に接続され、右端が右壁面64に接続され、上下方向において上端が延出壁15に接続され下端が周回部51の天面56に接続されている。これにより、内側から視て周回部51に時計回りに巻き付けられたワイヤ42のうち1巻き目の部分42bは、天面56において内壁面61に沿って周方向の右側へ延びる。そして、n周目(nは2以上の整数)のワイヤ42は、天面56において(n-1)周目のワイヤ42の内側でこのワイヤ42に沿って周方向に延びる。
【0048】
このように、ワイヤ42のうち、隔離壁60の外側の導入部52により導入された部分42aと、隔離壁60の内側の周回部51に巻き付けられた1巻き目の部分42bとが隔離壁60により隔てられる。このため、ワイヤ42が整列して周回部51に巻き付けられ、インシュレータ10におけるワイヤ42の占積率を増加し、インシュレータ10を用いた電動機20の効率の向上を図ることができる。
【0049】
図7及び
図8に示すように、内壁面61は、周回部51の天面56から第3方向(例えば、上方)に立ち上がる立ち上がり部分65を有している。第3方向は、周回部51から外周部11の中心線11bに沿う方向である。立ち上がり部分65は、例えば、平坦であって、上下方向、及び、径方向に直交する方向に延びている。この立ち上がり部分65は、上下方向の長さLがワイヤ42の直径と同じ又はこの直径よりも短い。これにより、1巻き目のワイヤ42を天面56上において内壁面61に沿って巻き付けることができる。このため、天面56上に並ぶ1段目のワイヤ42を外側から内側に向かって順に整列して巻き付けることができる。さらに、m段目上(mは1以上の整数)に並ぶ(m+1)段目のワイヤ42を、m段目において径方向に互いに隣接するワイヤ42同士の間の上に巻き付けことができる。よって、インシュレータ10におけるワイヤ42の占積率を増加し、インシュレータ10を用いた電動機20の効率の向上を図ることができる。
【0050】
さらに、内壁面61のうち、立ち上がり部分65よりも上側の傾斜部分66は、例えば、平坦であって、立ち上がり部分65の上端から上方へ延びている。傾斜部分66は、上方ほど外側になるように上下方向に対して傾斜し、その天面56との成す角が90度よりも大きい。さらに、内壁面61に対向する内周部12の面は上下方向に沿って延びている。このため、内壁部14と傾斜部分66との間の周回部51におけるワイヤ42の巻き付け空間は、上方ほど大きく採ることができる。これにより、インシュレータ10におけるワイヤ42の占積率を増加し、インシュレータ10を用いた電動機20の効率の向上を図ることができる。また、巻き付け空間における上部開口を大きく採ることができ、上部開口から巻き付け空間にワイヤ42を挿入して周回部51にワイヤ42を巻き付け易くなる。
【0051】
<変形例1>
変形例1に係るインシュレータ10では、実施の形態1において、
図4~
図6に示すように、周回部51は、天面56、及び、天面56において隔離壁60に沿って延び天面56の端に向かって深くなる溝を備えている。この溝は、天面56の左側部分56bに設けられた左側溝59a、及び、天面56の右側部分56cに設けられた右側溝59bを有している。
【0052】
左側溝59a及び右側溝59bは、天面56において隔離壁60の内壁面61に沿って延びている。これにより、天面56上に巻き付けられた1巻き目のワイヤ42は、左側溝59a及び右側溝59bに嵌り、隔離壁60の内壁面61に沿って周回部51に巻き付けられる。これにより、天面56上に巻き付けられた1段目のワイヤ42を1巻き目に沿って整列することができる。このため、インシュレータ10におけるワイヤ42の占積率を増加し、インシュレータ10を用いた電動機20の効率の向上を図ることができる。
【0053】
また、左側溝59aは左側部分56bの左側ほど深くなっており、右側溝59bは右側部分56cの右側ほど深くなっている。このため、左側溝59aの底と左側壁54との間の角度、及び、右側溝59bの底と右側壁55との間の角度が90度より大きな鈍角となる。これにより、右側溝59bから右側壁55へワイヤ42を導く際、及び、左壁面63から左側溝59aへワイヤ42を導く際に、ワイヤ42が大きく撓むのを低減することができる。よって、ワイヤ42を周回部51に整列して巻き付けることができる。
【0054】
<変形例2>
変形例2に係るインシュレータ10では、実施の形態1又は変形例1において、導入部52及び隔離壁60は、第1方向、及び、第1方向に直交すると共に外周部11の接線方向である第2方向に対して傾斜している。例えば、
図9(a)に示すように、導入部52及び隔離壁60は、周方向の右側ほど径方向の内側に向かって、径方向、及び、径方向に対して直交する方向に対して傾斜している。
【0055】
この場合、
図9(b)に示すように、導入部52においてワイヤ42が右側ほど内側に向かって傾斜しながら周回部51側に導入される。そして、周回部51において、1段目のワイヤ42は、内壁面61に沿って右側ほど内側に向かって傾斜しながら天面56上に巻き付けられる。2段目のワイヤ42は、右側ほど外側に向かって傾斜しながら1段目のワイヤ42上に巻き付けられる。このように、導入部52及び隔離壁60が傾斜することにより、導入部52において導入されたワイヤ42の部分によって周回部51におけるワイヤ42の巻き付けが阻害されることなく、周回部51においてワイヤ42のクロス巻きを容易に行うことができる。
【0056】
<変形例3>
変形例3に係るインシュレータ10は、実施の形態1又は変形例1、2において、
図10(a)に示すように、隔離壁60のうちの少なくとも一部が、径方向において導入部52よりも内側にあれば、隔離壁60は巻付部50の周方向の全長に亘って設けられていなくてもよい。
【0057】
例えば、
図10(a)の場合、隔離壁60の右端は、巻付部50の右端よりも左側にある。このため、隔離壁60の右端と巻付部50の右端との間にギャップが設けられる。これに対し、隔離壁60の右端は、導入部52の左端よりも右側であり、径方向において導入部52の左部分と周回部51との間には隔離壁60が設けられている。このため、
図10(b)に示すように、ワイヤ42のうち、導入部52により導入された部分42aと、周回部51に巻き付けられた部分42bとが隔離壁60により隔離される。これにより、周回部51においてワイヤ42を整列して巻き付けることができるため、インシュレータ10におけるワイヤ42の占積率を増加し、インシュレータ10を用いた電動機20の効率の向上を図ることができる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る電動機20は、
図1に示すように、ステータ40及びステータ40に対して回転するロータ21を備え、ロータ21はステータコア41、ワイヤ42及びこれらを電気的に絶縁するインシュレータ10を有している。電動機20としては、モータが例示される。
【0059】
応用機器30は、
図11に示すように、電動機20が内蔵されており、電動機20によって駆動する。応用機器30は、一例として冷媒圧縮機である。この冷媒圧縮機は、例えば、冷凍装置及び空調装置の装置に備えられている。冷媒圧縮機を備えた機器としては、より具体的には、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、エアーコンディショナー、ショーケース及び自動販売機が挙げられる。また、応用機器30としては、冷媒圧縮機の他に、送風機、ポンプ、及び、乗物の走行用駆動源等の様々な機器を例示できる。
【0060】
このような電動機20及び応用機器30に、実施の形態1、2及び変形例1~3のいずれかのインシュレータ10を用いる。このワイヤ42の占積率が向上したインシュレータ10によって、電動機20及び応用機器30の駆動効率の向上を図ることができる。
【0061】
なお、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良及び他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示に係るインシュレータ、電動機及び応用機器は、ワイヤの占積率の向上を図ったインシュレータ、電動機及び応用機器として有用である。
【符号の説明】
【0063】
10 :インシュレータ
11 :外周部
13 :円環部
14 :内壁部
16 :案内部
20 :電動機
30 :応用機器
42 :ワイヤ
50 :巻付部
51 :周回部
52 :導入部
56 :天面
60 :隔離壁
65 :立ち上がり部分
66 :傾斜部分