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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】蓄電池管理装置及び蓄電池管理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022576280
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2021001914
(87)【国際公開番号】W WO2022157866
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 行生
(72)【発明者】
【氏名】井出 誠
(72)【発明者】
【氏名】木内 麻紗子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 麻美
(72)【発明者】
【氏名】三ッ本 憲史
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 高弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 武則
(72)【発明者】
【氏名】炭田 義尚
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184077(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225500(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/241330(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池を含む蓄電池装置の電池特性と運用条件とを取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記電池特性及び前記運用条件に含まれるデータ項目のうち、データ値にばらつきが存在するデータ項目のデータ値群から、複数のデータ値を選定する選定部と、
前記取得部で取得された前記電池特性及び前記運用条件に基づいて、当該運用条件で前記蓄電池装置が運用された場合での運用後の電池特性を、前記選定部で選定されたデータ値毎に推定する推定部と、
を備え、
前記推定部は、前記蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することが可能なデジタルモデルを用いて前記電池特性を推定する、蓄電池管理装置。
【請求項2】
前記推定部で推定された前記電池特性を比較可能な状態で表示装置に表示させる表示制御部を更に備える、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記推定部で推定された前記電池特性を新たな電池特性として取得するとともに、新たな運用条件を取得し、
前記推定部は、新たに取得された前記電池特性及び前記運用条件に基づいて、当該運用条件で前記蓄電池装置が運用された場合での運用後の電池特性を、前記選定部で選定されたデータ値毎に推定する、請求項1又は2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記電池特性を推定する第1推定部と第2推定部とを多段に有し、
前記第2推定部は、前記第1推定部で推定された前記電池特性を用いて、当該電池特性の時点より将来の電池特性を推定する、請求項3に記載の蓄電池管理装置。
【請求項5】
前記選定部は、前記データ値群の分布に基づいて、複数のデータ値を選定する、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項6】
前記選定部は、前記データ値の最大値、最小値及び平均値の中から、少なくとも2点のデータ値を選定する、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項7】
前記電池特性は、前記蓄電池装置全体又は前記蓄電池の電池特性を示すデータ項目として、電池容量及び内部抵抗の何れか一方又は両方を含む、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項8】
前記運用条件は、前記蓄電池装置全体又は前記蓄電池の運用条件を示すデータ項目として、温度、印加電圧、印加電流及び充電率の何れか又は全てを含む、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記データ値毎に推定された前記電池特性の分布を前記表示装置に表示させる、請求項に記載の蓄電池管理装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記推定部で推定された前記電池特性の各々を識別可能な状態で前記表示装置に表示させる、請求項に記載の蓄電池管理装置。
【請求項11】
前記推定部で推定された前記電池特性と所定の目標値との差分に応じて、前記推定部に入力する前記電池特性又は前記運用条件を変更する変更部を更に備える、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項12】
前記推定部は、前記電池特性を推定するとともに、当該電池特性に係る前記蓄電池装置全体又は前記蓄電池の電池状態を推定し、
前記変更部は、前記電池状態と所定の目標値との差分に応じて、前記推定部に入力する前記電池特性又は前記運用条件を変更する、請求項11に記載の蓄電池管理装置。
【請求項13】
前記電池状態は、前記蓄電池装置全体又は前記蓄電池の、温度、印加電圧、印加電流及び充電率の何れか又は全てを含む、請求項12に記載の蓄電池管理装置。
【請求項14】
複数の蓄電池を含む蓄電池装置の電池特性と運用条件とを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記電池特性及び前記運用条件に含まれるデータ項目のうち、データ値にばらつきが存在するデータ項目のデータ値群から、複数のデータ値を選定する選定ステップと、
前記取得ステップで取得された前記電池特性及び前記運用条件に基づいて、当該運用条件で前記蓄電池装置が運用された場合での運用後の電池特性を、前記選定ステップで選定されたデータ値毎に推定する推定ステップと、
を含み、
前記推定ステップでは、前記蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することが可能なデジタルモデルを用いて前記電池特性を推定する、蓄電池管理方法。
【請求項15】
前記推定ステップで推定された前記電池特性を比較可能な状態で表示装置に表示させる表示制御ステップを更に含む、請求項14に記載の蓄電池管理方法。
【請求項16】
前記表示制御ステップでは、前記データ値毎に推定された前記電池特性の分布を前記表示装置に表示させる、請求項15に記載の蓄電池管理方法。
【請求項17】
前記表示制御ステップでは、前記推定ステップで推定された前記電池特性の各々を識別可能な状態で前記表示装置に表示させる、請求項15に記載の蓄電池管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池管理装置及び蓄電池管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の蓄電池モジュールを備える蓄電池システムが、様々な用途に利用されている。かかる蓄電池システムでは、蓄電池モジュールを構成する蓄電池の特性上、時間経過とともに電池容量等の電池特性が低下(劣化)する。また、蓄電池は、使用環境の温度や運用条件によっても劣化の度合が変化する。
【0003】
そのため、従来、温度やSOC(State Of Charge)等の条件に基づき、蓄電池の劣化予測を行い技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6555347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際の蓄電池システムでは、様々な要因により各種の条件にばらつきが生じることが分かっている。例えば、蓄電池システムが備える蓄電池モジュールや蓄電池では、配置位置によって温度に差が生じるため、劣化傾向にもばらつきが生じる可能性がある。
【0006】
しかしながら、従来の技術では、条件のばらつきについて考慮されていないため、劣化傾向のばらつきを容易に確認することはできず、蓄電池システムを管理する上で改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、蓄電池システムを構成する蓄電池の劣化傾向のばらつきを提示することが可能な蓄電池管理装置及び蓄電池管理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る蓄電池管理装置は、複数の蓄電池を含む蓄電池装置の電池特性と運用条件とを取得する取得部と、前記取得部で取得された前記電池特性及び前記運用条件に含まれるデータ項目のうち、データ値にばらつきが存在するデータ項目のデータ値群から、複数のデータ値を選定する選定部と、前記取得部で取得された前記電池特性及び前記運用条件に基づいて、当該運用条件で前記蓄電池装置が運用された場合での運用後の電池特性を、前記選定部で選定されたデータ値毎に推定する推定部と、を備える。また、推定部は、前記蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することが可能なデジタルモデルを用いて前記電池特性を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る蓄電池システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る蓄電池ユニットの構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係るセルモジュール、CMU及びBMUの詳細構成説明図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る蓄電池制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る蓄電池制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る第1電池特性推定部の動作を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態の表示制御部が表示する画面の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態の表示制御部が表示する画面の他の例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態の表示制御部が表示する画面の他の例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態の蓄電池制御装置が実行する処理の一例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る蓄電池制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図12図12は、第2の実施形態の表示制御部が表示する画面の一例を示す図である。
図13図13は、第2の実施形態の蓄電池制御装置が実行する処理の一例を示す図である。
図14図14は、第3の実施形態に係る蓄電池制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図15図15は、第3の実施形態の蓄電池制御装置が実行する処理の一例を示す図である。
図16図16は、第3の実施形態の変形例1に係る蓄電池制御装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る蓄電池システムの構成の一例を示す図である。蓄電池システム1は、商用電源2と、負荷3と、蓄電池ユニット4と、蓄電池制御装置5と、上位制御装置6とを有する。
【0012】
商用電源2は、蓄電池ユニット4に電力を供給する。負荷3は、電力を消費する機器である。負荷3は、通常時は商用電源2からの電力供給を受けて動作し、商用電源2からの電力供給がなくなった場合には、蓄電池ユニット4からの電力供給を受けて動作する。
【0013】
蓄電池ユニット4は、商用電源2の電力を充電したり、負荷3に対して電力供給を行ったりする。蓄電池制御装置5は、蓄電池管理装置の一例である。蓄電池制御装置5は、蓄電池ユニット4の制御を行う。具体的には、蓄電池制御装置5は、蓄電池ユニット4が備える蓄電池装置11の充放電動作を制御する。
【0014】
上位制御装置6は、蓄電池制御装置5のリモート制御を行う。具体的には、上位制御装置6は、図示しないネットワークを介して商用電源2や負荷3から電力状態等を示す情報を取得し、取得した情報に基づき蓄電池制御装置5に充放電指令値を出力する。
【0015】
蓄電池制御装置5は、上位制御装置6から入力される充放電指令値に基づき、例えば蓄電池装置11が有する電池ユニットやセルモジュール(図2参照)の単位で充電量や放電量の割り当て行い、蓄電池装置11の充放電動作を制御する。
【0016】
以上の説明は、蓄電池ユニット4をバックアップ用電源として動作させる場合のものであるが、電力負荷平準化のためのピークシフトに際し、商用電源2からの電力供給に加えて、蓄電池ユニット4の電力を重畳して供給する場合であっても同様に適用が可能である。また、再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱等によるエネルギー)による発電を行う場合に、電力品質(電圧、周波数等)の安定化を図る場合にも適用することができる。
【0017】
図2は、蓄電池ユニット4の構成の一例を示す図である。蓄電池ユニット4は、大別すると、電力を蓄える蓄電池装置11と、蓄電池装置11から供給された直流電力を所望の電力品質を有する交流電力に変換して負荷に供給するPCS(Power Conditioning System)12と、を備えている。
【0018】
蓄電池装置11は、大別すると、複数の電池盤21-1~21-N(Nは自然数)と、電池盤21-1~21-Nが接続された電池端子盤22と、を備えている。電池盤21-1~21-Nは、互いに並列に接続された複数の電池ユニット23-1~23-M(Mは自然数)と、ゲートウェイ装置24と、後述のBMU(Battery Management Unit:電池管理装置)及びCMU(Cell Monitoring Unit:セル監視装置)に動作用の直流電源を供給する直流電源装置25と、を備えている。
【0019】
電池ユニット23-1~23-Mは、それぞれ、高電位側電源供給ライン(高電位側電源供給線)LH及び低電位側電源供給ライン(低電位側電源供給線)LLを介して、出力電源ライン(出力電源線;母線)LHO、LLOに接続され、主回路であるPCS12に電力を供給している。
【0020】
電池ユニット23-1~23-Mは、同一構成であるので、電池ユニット23-1を例として説明する。電池ユニット23-1は、大別すると、複数(図2では、24個)のセルモジュール31-1~31-24と、セルモジュール31-1~31-24にそれぞれ設けられた複数(図2では、24個)のCMU32-1~32-24と、セルモジュール31-12とセルモジュール31-13との間に設けられたサービスディスコネクト33と、電流センサ34と、コンタクタ35と、を備え、複数のセルモジュール31-1~31-24、サービスディスコネクト33、電流センサ34及びコンタクタ35は、直列に接続されている。
【0021】
セルモジュール31-1~31-24は、電池セルを複数、直並列に接続されて組電池を構成している。そして、複数の直列接続されたセルモジュール31-1~31-24で組電池群を構成している。
【0022】
また、電池ユニット23-1は、BMU36を備え、各CMU32-1~32-24の通信ライン、電流センサ34の出力ラインは、BMU36に接続されている。BMU36は、ゲートウェイ装置24の制御下で、電池ユニット23-1全体を制御し、各CMU32-1~32-24との通信結果(後述する電圧データ及び温度データ)及び電流センサ34の検出結果に基づいてコンタクタ35の開閉制御を行う。
【0023】
次に、電池端子盤の構成について説明する。電池端子盤22は、電池盤21-1~21-Nに対応させて設けられた複数の盤遮断器41-1~41-Nと、蓄電池装置11全体を制御するマイクロコンピュータとして構成されたマスタ(Master)装置42と、を備えている。
【0024】
マスタ装置42には、PCS12との間に、PCS12のUPS(Uninterruptible Power System)12Aを介して供給される制御電源線51と、イーサネット(登録商標)として構成され、制御データのやりとりを行う制御通信線52と、が接続されている。
【0025】
ここで、セルモジュール31-1~31-24、CMU32-1~32-24およびBMU36の詳細構成について説明する。
【0026】
図3は、セルモジュール、CMU及びBMUの詳細構成説明図である。セルモジュール31-1~31-24は、それぞれ、直列接続された複数(図3では、10個)の電池セル61-1~61-10を備えている。
【0027】
CMU32-1~32-24は、対応するセルモジュール31-1~31-24を構成している電池セル61-1~61-10の電圧及び所定箇所の温度を測定するための電圧温度計測IC(Analog Front End IC:AFE-IC)62と、それぞれが対応するCMU32-1~32-24全体の制御を行うMPU63と、BMU36との間でCAN通信を行うためのCAN(Controller Area Network)規格に則った通信コントローラ64と、セル毎の電圧に相当する電圧データ及び温度データを格納するメモリ65と、を備えている。
【0028】
また、BMU36は、BMU36全体を制御するMPU71と、CMU32-1~32-24との間でCAN通信を行うためのCAN規格に則った通信コントローラ72と、CMU32-1~32-24から送信された電圧データ及び温度データを格納するメモリ73と、を備えている。
【0029】
なお、以下の説明において、セルモジュール31-1~31-24のそれぞれと、対応するCMU32-1~32-24と、を合わせた各々の構成を「電池モジュール」と呼ぶ。また、電池セル61-1~61-10の各々の構成を「電池セル」と呼ぶ。さらに、電池ユニット23-1~23-Mの各々の構成を「電池ユニット」と呼ぶ。また、電池ユニット、電池モジュール及び電池セルは、何れも蓄電池の一例である。以下では、蓄電池装置11、電池ユニット、電池モジュール及び電池セルの何れかの構成単位を単に「蓄電池」とも表記する。
【0030】
図4は、蓄電池制御装置5のハードウェア構成の一例を示す図である。図4に示すように、蓄電池制御装置5は、処理部91と、記憶部92と、入力部93と、表示部94とを備える。なお、蓄電池制御装置5は、他の装置(蓄電池ユニット4、上位制御装置6等)と通信するための通信インタフェースも備えるが、説明を簡潔にするために、その図示と説明を省略する。
【0031】
処理部91は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、蓄電池制御装置5の処理全体を制御する。
【0032】
記憶部92は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。記憶部92は、蓄電池制御装置5の動作に係る各種のプログラムや設定情報を記憶する。
【0033】
また、記憶部92は、蓄電池の電池特性や運用条件を入力することで、任意の時点での蓄電池の電池容量やSOH(State Of Health)等の電池特性を予測値として出力するよう機能付けられたデジタルモデル92aを記憶する。
【0034】
デジタルモデル92aは、例えば、蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することが可能なデータであり、例えばシミュレータプログラム等によって実現される。デジタルモデル92aは、入力された電池特性や運用条件に基づき、蓄電池の動作を模擬的に再現することで、その電池特性や運用条件で蓄電池を運用した場合での運用後の電池特性、つまり電池特性の時系列な変化を予測値として出力する。
【0035】
ここで、デジタルモデル92aに入力する電池特性は、例えば、蓄電池の電池容量や内部抵抗等のデータ項目を有する。また、デジタルモデル92aに入力する運用条件は、例えば、蓄電池の印加電圧、入出力電流、SOC(State Of Cell)、蓄電池の温度又は当該蓄電池の周辺の温度(以下、総称して環境温度ともいう)等のデータ項目を有する。なお、上述した電池特性及び運用条件のデータ項目は、蓄電池毎に規定されたものであってもよいし、蓄電池装置11全体について規定されたものであってもよい。
【0036】
また、デジタルモデル92aが出力する電池特性は、指定された運用条件で蓄電池を運用した場合での、運用後の電池特性を示すものとなる。
【0037】
一例として、工場出荷時の電池特性(以下、初期特性ともいう)をデジタルモデル92aに入力することで、デジタルモデル92aは、工場出荷時から所望の時点までの蓄電池装置11の電池特性を予測値として出力する。より詳細には、デジタルモデル92aは、時間経過とともに劣化する蓄電池装置11の電池容量や内部抵抗の変化傾向を、電池特性として導出する。つまり、デジタルモデル92aは、蓄電池装置11のSOH(State Of Health)等、劣化の状態を確認可能な情報を出力する。
【0038】
また、本実施形態では、電池特性及び運用条件は、電池ユニット、電池モジュール及び電池セルの何れかの蓄電池の単位で入力が行われるものとする。例えば、電池セルの単位で電池特性を入力する場合には、電池セルの電池容量や内部抵抗が、デジタルモデル92aに入力される。また、例えば、電池セルの単位で運用条件を入力する場合には、電池セルの印加電圧、電池セルの入出力電流、SOC、及び環境温度等が、デジタルモデル92aに入力される。この場合、デジタルモデル92aは、入力された電池特性及び運用条件に基づき、所定期間や所定時点での電池特性を予測値として出力する。
【0039】
なお、記憶部92が記憶するデジタルモデル92aは一つに限らず複数であってもよい。例えば、記憶部92は、電池ユニット、電池モジュール及び電池セルの構成単位毎に用意された複数のデジタルモデル92aを記憶してもよい。
【0040】
入力部93は、オペレータからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理部91に出力する。入力部93は、例えばキーボードやマウス等により実現される。
【0041】
表示部94は、処理部91の制御の下、各種の情報や画面を表示する。表示部94は、例えば液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイにより実現される。
【0042】
図5は、蓄電池制御装置5の機能構成の一例を示す図である。図5に示すように、蓄電池制御装置5は、第1電池特性推定部911と、表示制御部912とを備える。
【0043】
蓄電池制御装置5が備える機能部の一部又は全ては、処理部91が、記憶部92に記憶されたプログラムを実行することで実現されるソフトウェア構成であってもよい。また、蓄電池制御装置5が備える機能部の一部又は全ては、処理部91等が備える専用回路によって実現されるハードウェア構成であってもよい。
【0044】
第1電池特性推定部911は、取得部、選定部、及び推定部の一例である。第1電池特性推定部911は、デジタルモデル92aを用いて蓄電池の電池状態を推定する。具体的には、第1電池特性推定部911は、蓄電池の電池特性と運用条件とを取得し、デジタルモデル92aに入力する。
【0045】
ここで、電池特性及び運用条件の取得先は特に問わず、種々の形態が可能である。例えば、第1電池特性推定部911は、記憶部92等に予め保存された電池特性及び運用条件を取得してもよい。また、第1電池特性推定部911は、蓄電池ユニット4や上位制御装置6から電池特性及び運用条件を取得してもよい。また、第1電池特性推定部911は、入力部93を介して入力された電池特性及び運用条件を取得してもよい。なお、本実施形態では、第1電池特性推定部911は、電池特性として初期特性を取得するものとする。また、以下では、第1電池特性推定部911が取得した運用条件を第1運用条件とも表記する。
【0046】
第1電池特性推定部911は、取得した初期特性と第1運用条件とをデジタルモデル92aに入力する。これに伴い、デジタルモデル92aは、第1運用条件で蓄電池を運用した場合での、初期特性の時系列な変化を予測値として出力する。第1電池特性推定部911は、デジタルモデル92aが出力した予測値を、第1電池特性として取得し、推定結果として出力する。なお、第1電池特性推定部911は、デジタルモデル92aが出力した第1電池特性を変更後の電池特性として、デジタルモデル92aに再帰的に入力してもよい。
【0047】
ところで、上述した初期特性や第1運用条件は、蓄電池毎に相違することが一般的である。例えば、同じ種類の電池セルであっても、電池セルの配置位置や製造品質の違いにより、初期特性や運用条件(環境温度等)のデータ値にばらつきが生じる。このようなばらつきは劣化傾向に影響するため、蓄電池の単位で電池特性の劣化の状態を確認できることが、蓄電池装置11を管理する上で望ましい。
【0048】
そこで、第1電池特性推定部911は、電池セル等の蓄電池の単位毎に得られた初期特性及び第1運用条件に含まれる項目のうち、データ値にばらつきが存在するデータ項目のデータ値群から複数のデータ値を選定し、選定したデータ値を用いて第1電池特性を推定する。
【0049】
具体的には、第1電池特性推定部911は、電池特性や運用条件の各項目のデータ値群を統計的に解析することで、ばらつきの分布を算出する。例えば、第1電池特性推定部911は、電池セルの各々について得られた環境温度のデータ値群を統計的に解析することで、環境温度のばらつきを表す分布を算出する。ここで、分布の種類は特に問わず、正規分布や一様分布、三角分布等を用いることができる。
【0050】
図6は、第1電池特性推定部911の動作を説明するための図である。図6は、電池セルの環境温度について算出された分布(正規分布)の一例を示している。ここで、横軸は温度分布(環境温度の分布)を意味し、縦軸は確立密度を意味する。
【0051】
第1電池特性推定部911は、分布を算出すると、当該分布に基づいて、デジタルモデル92aに入力するデータ値を選定する。例えば、第1電池特性推定部911は、確率密度が最大、最小、平均のデータ値(温度)を特定し、これら3つのデータ値から少なくとも2つを選定する。この時、第1電池特性推定部911は、標準偏差σの範囲等から、確率密度が最大、最小、平均のデータ値を選定してもよい。
【0052】
第1電池特性推定部911は、データ値にばらつきが発生する所定のデータ項目について、上記のデータ値の選定処理を行うものとするが、電池特性及び運用条件の全てのデータ項目について、データ値の選定処理を行う形態としてもよい。例えば、第1電池特性推定部911は、印加電圧、入出力電流及びSOCの何れかについて、ばらつきを考慮したデータ値の選定を行ってもよい。
【0053】
なお、第1電池特性推定部911が行うデータ値の選定方法は上述した例に限らず、他の方法を用いてもよい。また、第1電池特性推定部911は、全てのデータ値(温度)を選定してもよい。また、第1電池特性推定部911は、5℃や10℃等の間隔毎にデータ値を選定してもよい。
【0054】
そして、第1電池特性推定部911は、初期特性及び第1運用条件に基づいて、当該第1運用条件で蓄電池が運用された場合での第1電池特性を、選定したデータ値毎に推定する。具体的には、第1電池特性推定部911は、初期特性及び第1運用条件をデジタルモデル92aに入力する際に、選定したデータ値の各々を個別に入力することで、第1電池特性をデータ値毎に推定する。
【0055】
なお、複数のデータ項目の各々からデータ値の選定を行った場合には、第1電池特性推定部911は、データ項目が異なるデータ値の全ての組み合わせについて、第1電池特性の推定を行うものとする。
【0056】
図5に戻り、表示制御部912は、表示制御部の一例である。表示制御部912は、第1電池特性推定部911で推定された第1電池特性を表示部94に表示させる。具体的には、表示制御部912は、データ値毎に推定された第1電池特性を比較可能な状態で表示させる。
【0057】
図7は、表示制御部912が表示する画面の一例を示す図である。ここで、横軸は時間を意味しており、縦軸は第1電池特性(電池容量)の大きさを意味している。また、実線で示す線L11と、破線で示す線L12とは、互いに異なる2つのデータ値を基に推定された第1電池特性を示している。なお、表示制御部912は、線L11と線L12とを色分けや線種を相違させることで、識別可能な状態で表示させる。
【0058】
図7に示すように、表示制御部912は、線L11と線L12とを同一画面(グラフ)上に配置することで、データ値毎に推定された第1電池特性を比較可能な状態で表示させる。これにより、蓄電池制御装置5のオペレータは、表示部94に表示された画面を見ることで、蓄電池の劣化傾向のばらつき状態や、蓄電池が取り得る電池容量の範囲を容易に確認することができる。
【0059】
なお、第1電池特性の表示形態は、図7の例に限らないものとする。例えば、表示制御部912は、図8に示すように、データ値(温度)毎に、第1電池特性と、データ値の確率密度との関係を比較可能に表した画面を表示させてもよい。
【0060】
図8は、表示制御部912が表示する画面の他の例を示す図である。ここで、横軸は温度を意味している。また、左の縦軸は、棒グラフで表された第1電池特性(電池容量)の大きさを示すものである。また、右の縦軸は、線グラフで表された確立密度の大きさを示すものである。なお、図8では、特定の時点について推定された、温度帯(5℃等)毎の第1電池特性を示している。
【0061】
このように、表示制御部912は、データ値(温度)と第1電池特性とを関連付けて表すともに、データ値毎の確率密度(分布)を表した画面を表示させる。これにより、蓄電池制御装置5のオペレータは、表示部94に表示された画面を見ることで、各温度帯と第1電池特性と確率密度との関係を容易に確認することができる。
【0062】
また、表示制御部912が表示する画面は二次元のグラフに限らず、三次元のグラフであってもよい。例えば、表示制御部912は、図9に示すように、データ値毎に算出された第1電池特性を、三次元的に表した画面を表示させてもよい。
【0063】
図9は、表示制御部912が表示する画面の他の例を示す図である。図9では、互いに直交する3軸のそれぞれに、時間、温度、第1電池特性を割り当てた3次元のグラフを示している。ここで、線L21~L24は、温度の条件が異なる4つの第1電池特性の推定結果であり、それぞれが異なるパターンで容量劣化が進むことを示している。
【0064】
このように、表示制御部912は、データ値毎に推定された第1電池特性の推移パターンを、比較可能な状態で三次元的に表した画面を表示させる。これにより、蓄電池制御装置5のオペレータは、表示部94に表示された画面を見ることで、データ値毎に算出された第1電池特性の推移パターンを容易に比較することができる。
【0065】
以下、図10を参照して、蓄電池制御装置5の動作について説明する。図10は、蓄電池制御装置5が実行する処理の一例を示す図である。
【0066】
まず、第1電池特性推定部911は、蓄電池の初期特性及び第1運用条件を取得する(ステップS11)。
【0067】
続いて、第1電池特性推定部911は、ステップS11で取得した初期特性及び第1運用条件に含まれるデータ項目のうち、データ値にばらつきが存在するデータ項目のデータ値に基づいて、分布を算出する(ステップS12)。次いで、第1電池特性推定部911は、ステップS12で算出した分布に基づき、少なくとも2以上のデータ値を選定する(ステップS13)。
【0068】
続いて、第1電池特性推定部911は、ステップS11で取得した初期特性及び第1運用条件と、ステップS13で選定したデータ値とを用いて、当該データ値毎に第1電池特性を推定する(ステップS14)。
【0069】
続いて、表示制御部912は、ステップS14の推定結果に基づき、データ値毎に推定された第1電池特性を比較可能な状態で表示部94に表示させ(ステップS15)、本処理を終了する。
【0070】
以上のように、蓄電池制御装置5は、蓄電池の初期特性及び第1運用条件に含まれるデータ項目のうち、データ値にばらつきが存在するデータ項目のデータ値群から、複数のデータ値を選定する。そして、蓄電池制御装置5は、初期特性及び第1運用条件に基づいて、選定したデータ値毎に第1電池特性を推定し、推定した第1電池特性の各々を比較可能な状態で表示させる。
【0071】
これにより、蓄電池制御装置5は、ばらつきが生じた複数のデータ値に基づく第1電池特性を比較可能な状態で提示することができるため、蓄電池制御装置5のオペレータに、蓄電池の劣化傾向のばらつき状態を確認させることができる。
【0072】
また、蓄電池制御装置5は、蓄電池の動作及び劣化特性を模擬的に再現することが可能なデジタルモデル92aを用いて電池特性の推定を行うため、各種の稼働条件に従内に対応することができ、電池特性の推定を効率的に行うことができる。
【0073】
なお、上述の実施形態では、第1電池特性推定部911の推定結果(第1電池特性)を、表示部94に表示(出力)する形態を説明したが、出力先はこれに限らないものとする。例えば、蓄電池制御装置5は、第1電池特性推定部911の推定結果を上位制御装置6等に送信(出力)する形態としてもよい。
【0074】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態の蓄電池制御装置5と同様の構成については、同一の符号を付与し説明を適宜省略する。
【0075】
図11は、第2の実施形態に係る蓄電池制御装置5aの機能構成の一例を示す図である。なお、蓄電池制御装置5aのハードウェア構成は、上述した図4と同様であるとする。
【0076】
図11に示すように、蓄電池制御装置5aは、第1電池特性推定部911と、第2電池特性推定部921と、表示制御部922とを機能部として備える。ここで、第1電池特性推定部911と、第2電池特性推定部921とは多段となるように接続されている。なお、第1電池特性推定部911は、第1推定部の一例である。また、第2電池特性推定部921は、第2推定部の一例である。
【0077】
第2電池特性推定部921は、第1電池特性推定部911と同様に、デジタルモデル92aを用いて蓄電池装置11の電池状態を推定する。具体的には、第2電池特性推定部921は、第1電池特性推定部911で導出された第1電池特性と、第2運用特性とを取得して、デジタルモデル92aに入力する。
【0078】
ここで、第1電池特性は、第1の実施形態で説明したように、ばらつきが生じた複数のデータ値毎に導出されるものとなる。また、第2運用条件は、第1運用条件が適用される時点以降の将来の運用条件を示すものとなる。つまり、第2電池特性推定部921は、第1電池特性推定部911で推定された第1電池特性より将来の電池特性を第2電池特性として、第1電池特性毎(つまりデータ値毎)に推定する。
【0079】
例えば、第1電池特性推定部911は、初期特性と第1運用条件とに基づき、蓄電池装置11を運用してから現在(現時点)までの初期特性の時系列的な変化を示した第1電池特性を導出する。一方、第2電池特性推定部921は、第1電池特性と今後の運用条件を示した第2運用条件とに基づき、現在から将来の任意の時点までの電池特性を示した第2電池特性を導出する。
【0080】
なお、第2運用条件は、記憶部92等に予め保存されていてもよいし、入力部93を介して入力されてもよい。また、第1電池特性推定部911と第2電池特性推定部921とが使用するデジタルモデル92aは同一であってもよいし、異なるものであってもよい。また、第1電池特性推定部911と第2電池特性推定部921とが同一のデジタルモデル92aを使用する場合であっても、第1電池特性推定部911と第2電池特性推定部921とで、電池特性の推定動作に係るパラメータを相違させてもよい。
【0081】
表示制御部922は、第1電池特性推定部911で推定された第1電池特性と、第2電池特性推定部921で推定された第2電池特性とを表示部94に表示させる。具体的には、表示制御部922は、データ値毎に推定された第1電池特性及び第2電池特性を、比較可能な状態で表示させる。
【0082】
図12は、表示制御部922が表示する画面の一例を示す図である。ここで、横軸は時間を意味しており、縦軸は電池特性(電池容量)の大きさを意味している。
【0083】
また、実線で示す線L11と、破線で示す線L12とは、互いに異なる2つのデータ値を用いて推定された第1電池特性を示している。より具体的には、第1電池特性は、運用開始から現時点に対応する時間Tnまでの電池容量の推移を表したものとなっている。
【0084】
また、線L21は、線L11の第1電池特性を基に推定された第2電池特性を示すものである。ここで、線L21の第2電池特性は、時間Tn以降の電池容量の推移を表したものとなっている。表示制御部922は、同一のデータ値を基に推定された線L11と線L21とを時間Tnで繋ぐことで、一連する線グラフとして表示させている。
【0085】
また、線L22は、線L12の第1電池特性を基に推定された第2電池特性を示すものである。ここで、線L22の第2電池特性は、時間Tn以降の電池容量の推移を表したものとなっている。表示制御部922は、同一のデータ値を基に推定された線L12と線L22とを時間Tnで繋ぐことで、一連する線グラフとして表示させている。
【0086】
このように、表示制御部922は、同一のデータ値を基に推定された第1電池特性及び第2電池特性を組とし、各組を比較可能な状態で表示させる。これにより、蓄電池制御装置5aのオペレータは、表示部94に表示された画面を見ることで、蓄電池の劣化傾向のばらつき状態や、蓄電池が取り得る電池容量の範囲を容易に確認することができる。
【0087】
なお、表示制御部922が表示する画面は、図12の例に限らないものとする。例えば、表示制御部922は、上述した図8図9のような形態で第1電池特性及び第2電池特性を表す画面を表示させてもよい。
【0088】
以下、図13を参照して、蓄電池制御装置5aの動作について説明する。図13は、蓄電池制御装置5aが実行する処理の一例を示す図である。なお、ステップS21~S24は、図10で説明したステップS11~S14と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
第2電池特性推定部921は、ステップS24で第1電池特性が推定されると、その第1電池特性と、第2運用条件とを取得する(ステップS25)。
【0090】
続いて、第2電池特性推定部921は、第1電池特性と第2運用条件とを用いて、第2電池特性を推定する(ステップS26)。なお、第2電池特性推定部921は、ステップS25で取得した第1電池特性毎に、第2電池特性の推定を行う。
【0091】
続いて、表示制御部922は、ステップS24及びステップS26の推定結果に基づいて、同一のデータ値を基に推定された第1電池特性及び第2電池特性を組とし、各組を比較可能な状態で表示部94に表示させ(ステップS27)、本処理を終了する。
【0092】
以上のように、蓄電池制御装置5aは、蓄電池の初期特性及び第1運用条件に含まれるデータ項目のうち、データ値にばらつきが存在するデータ項目のデータ値群から、複数のデータ値を選定する。蓄電池制御装置5aは、初期特性及び第1運用条件に基づいて、選定したデータ値毎に第1電池特性を推定する。また、蓄電池制御装置5aは、第1電池特性及び第2運用条件に基づいて、第1電池特性よりも時系列的に将来の第2電池特性を推定する。そして、蓄電池制御装置5aは、同一のデータ値を基に推定された第1電池特性と第2電池特性と組みとし、各組を比較可能な状態で表示させる。
【0093】
これにより、蓄電池制御装置5aは、ばらつきが生じたデータ値の各々に基づく第1電池特性及び第2電池特性を比較可能な状態で提示することができるため、蓄電池制御装置5aのオペレータに、蓄電池の劣化傾向のばらつき状態を確認させることができる。
【0094】
なお、上述の実施形態では、第1電池特性推定部911と、第2電池特性推定部921とを多段に配置することで、推定部を構成する形態としたが、第1電池特性推定部911(又は第2電池特性推定部921)のみで推定部を構成することも可能である。
【0095】
具体的には、第1電池特性推定部911は、自己が推定した第1電池特性を、第2引用条件とともに再帰的に自己に入力することで、上述した図11の構成と同様の推定結果を導出することができる。
【0096】
また、上述の実施形態では、第2電池特性推定部921は、データ値の選定処理を行なわない形態としたが、これに限らず、第1電池特性推定部911と同様に、データ値の選定処理を行ってもよい。例えば、第1電池特性推定部911が出力した第1電池特性や第2運用条件の中に、データ値にばらつきが存在するデータ項目がある場合には、第2電池特性推定部921は、そのデータ項目のデータ値群から複数のデータ値を選定して、第2電池特性を推定する。
【0097】
また、上述の実施形態では、第1電池特性推定部911及び第2電池特性推定部921の推定結果(第1電池特性、第2電池特性)を、表示部94に表示(出力)する形態を説明したが、出力先はこれに限らないものとする。例えば、蓄電池制御装置5aは、第1電池特性推定部911及び第2電池特性推定部921の推定結果を上位制御装置6等に送信(出力)する形態としてもよい。
【0098】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態の蓄電池制御装置5(5a)と同様の構成については、同一の符号を付与し説明を適宜省略する。
【0099】
図14は、第3の実施形態に係る蓄電池制御装置5bの機能構成の一例を示す図である。なお、蓄電池制御装置5bのハードウェア構成は、図4と同様であるとする。
【0100】
図14に示すように、蓄電池制御装置5bは、第1電池特性推定部931と、変更部932と、表示制御部912とを機能部として備える。
【0101】
第1電池特性推定部931は、第1電池特性推定部911と同様の機能を備える。また、第1電池特性推定部931は、第1電池特性とともに、当該第1電池特性に係る電池状態(以下、第1電池状態ともいう)を推定してもよい。具体的には、第1電池特性推定部931は、デジタルモデル92aが各時点での第1電池特性(電池容量、内部抵抗)を算出する際に使用した環境温度、印加電圧、入出力電流、SOC等のデータ項目を含んだ第1電池状態を出力する。なお、上述した第1電池状態のデータ項目は、蓄電池毎に規定されたものであってもよいし、蓄電池装置11全体について規定されたものであってもよい。
【0102】
変更部932は、第1電池特性推定部931の推定結果と、予め定められた目標値とに基づき、第1電池特性推定部931に入力する電池特性又は第1運用条件を変更する。
【0103】
具体的には、変更部932は、第1電池特性推定部931で推定された第1電池特性と、目標値となる電池特性とを比較し、その差分が閾値を超えた場合に、その差分量に応じて第1電池特性推定部931に入力する電池特性(初期特性)や、第1運用条件を変更する。そして、変更部932は、目標値との差分が閾値以下となるまで電池特性又は第1運用条件を繰り返し変更する。
【0104】
なお、比較の対象は、第1電池特性のみに限らず、第1電池状態を目標値と比較する構成としてもよい。また、第1電池特性推定部931は、電池特性及び第1運用条件の何れか一方又は両方を変更できるものとするが、入力部93等を介して指定された対象を変更する構成としてもよい。また、第1電池特性推定部931が変更の対象とする項目も特に問わないものとするが、入力部93等を介して指定された項目を変更する構成としてもよい。また、第1電池特性推定部931が変更する変更量は特に問わず、例えば、予め定められた分量ずつ増加又は減少させてもよいし、入力部93等を介して変更量が指定されてもよい。
【0105】
表示制御部912は、第1電池特性推定部931で導出された第1電池特性を表示部94に表示させる。また、表示制御部912は、変更部932と協働することで、第1電池特性と目標値との差分が閾値以下となった場合の第1電池特性を、上述した実施形態と同様の表示形態で表示部94に表示させてもよい。
【0106】
以下、図15を参照して、蓄電池制御装置5bの動作について説明する。図15は、蓄電池制御装置5bが実行する処理の一例を示す図である。なお、ステップS31~S34は、図10で説明したステップS11~S14と同様であるため、説明を省略する。
【0107】
変更部932は、ステップS34で第1電池特性(又は第1電池状態)が推定されると、その第1電池特性と目標値とを比較し、その差分量が閾値以下か否かを判定する(ステップS35)。差分量が閾値を上回る場合(ステップS35;No)、変更部932は、第1電池特性推定部931に入力する初期特性又は第1運用条件に含まれるデータ値を変更し(ステップS36)、ステップS32に処理を戻す。
【0108】
一方、ステップS35で差分量が閾値以内と判定した場合には(ステップS35;Yes)、変更部932は、ステップS37に処理を移行させる。続いて、表示制御部912は、ステップS34の推定結果に基づいて、データ値毎に推定された第1電池特性を比較可能な状態で表示部94に表示させ(ステップS37)、本処理を終了する。
【0109】
以上のように、蓄電池制御装置5bは、第1電池特性又は第1電池状態が目標値と相違する場合には、その差分量に応じて電池特性又は第1運用条件を変更する。
【0110】
これにより、蓄電池制御装置5bは、第1電池特性又は第1電池状態を目標値に近づけることができるため、所望の第1電池特性又は第1電池状態を実現することが可能な、電池特性又は第1運用条件を特定することができる。
【0111】
(変形例1)
図14で説明した蓄電池制御装置5bでは、第1電池特性を推定する第1電池特性推定部931に、変更部932を設ける形態としたが、これに限らず、第2電池特性を推定する第2電池特性推定部921に、変更部932を設ける形態としてもよい。
【0112】
例えば、蓄電池制御装置5bは、図16に示す構成としてもよい。ここで、図16は、本変形例に係る蓄電池制御装置5bの構成の一例を示す図である。
【0113】
図16に示すように、蓄電池制御装置5bは、図11で説明した構成の第2電池特性推定部921を第2電池特性推定部941に代えるとともに、変更部942を追加した構成となっている。
【0114】
また、第2電池特性推定部941は、第2電池特性とともに、当該第2電池特性に係る電池状態(以下、第2電池状態ともいう)を推定してもよい。具体的には、第2電池特性推定部941は、デジタルモデル92aが各時点での第2電池特性(電池容量、内部抵抗)を算出する際に使用した電池温度、電池電圧、電池電流、SOC等のパラメータ値を第2電池状態として出力する。
【0115】
変更部942は、第2電池特性推定部941の推定結果と目標値とに基づき、第2電池特性推定部941に入力する第2運用条件を変更する。
【0116】
具体的には、変更部942は、第2電池特性推定部941で推定された第2電池特性又は第2電値状態と目標値とを比較し、その差分が閾値を超えた場合、その差分量に応じて第2電池特性推定部941に入力する第2運用条件を変更する。そして、変更部942は、目標値との差分が閾値以下となるまで第2運用条件変更を繰り返し変更する。
【0117】
なお、変更部942は、第2運用条件に限らず、第1電池特性推定部911に入力する電池特性や第1運用条件を変更する形態としてもよい。
【0118】
このように、本変形例に係る蓄電池制御装置5bは、第2電池特性又は第2電池状態が目標値と相違する場合には、その差分量に応じて第2運用条件等を変更する。
【0119】
これにより、蓄電池制御装置5bは、第2電池特性又は第2電池状態を目標値に近づけることができるため、所望の第2電池特性又は第2電池状態を実現することが可能な、第2運用条件を特定することができる。
【0120】
以上、本発明のいくつかの実施形態及び変形例を説明したが、上記実施形態及び変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。上記実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16