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特許7551789シリーズハイブリッド式ストラドルドビークル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】シリーズハイブリッド式ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
   B62J 43/16 20200101AFI20240909BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20240909BHJP
   B62K 11/00 20060101ALI20240909BHJP
   B62J 50/30 20200101ALI20240909BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240909BHJP
【FI】
B62J43/16
B62M7/02 A
B62K11/00 A
B62J50/30
B60K6/46 ZHV
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022577976
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003363
(87)【国際公開番号】W WO2022162903
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】川口 勉
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-001439(JP,A)
【文献】特開2007-022243(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213591(WO,A1)
【文献】特開2018-203038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 43/16
B62J 50/30
B62M 7/02
B62M 23/02
B62K 11/00
B60K 6/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、
車体フレームと、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向において互いに異なる位置に設けられる前輪及び後輪と、
1つ又は複数のシリンダを有し、支持機構を介して前記車体フレームに支持される発電用エンジンと、
前記発電用エンジンに支持され、前記発電用エンジンに駆動されることにより発電する発電機と、
前記発電機から電力が供給されるバッテリと
を備え、
前記支持機構は、前記車体フレームに対する前記発電用エンジンの振動を許容するように構成され、前記振動の方向は、少なくとも前記前後方向の成分を含み、
前記バッテリ及び発電用エンジンの両方は、少なくとも部分的に、前後輪間領域に位置するように設けられ、前記前後輪間領域は、前記前後方向における前記前輪の後端と前記後輪の前端との間で、且つ前記前輪の上端及び前記後輪の上端のうち、より高い位置の上端よりも下の領域であり、
前記バッテリは、下記(A)から(C)の全てを満たすように、前記車体フレームに、揺動可能に又は固定的に、支持され、前記(A)から(C)は、
(A)前記バッテリは、前記前後方向で前記発電用エンジンよりも前に配置されることと、
(B)前記バッテリの少なくとも一部は、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を前後方向に見て前記発電用エンジンと重なりを有することと、
(C)前記バッテリは、前記発電用エンジンと間隙を空けて前記前後方向に対向するように配置され、前記間隙は、前記振動の方向において、前記支持機構により許容される前記振動の最大振幅と前記振動の方向における前記バッテリの最大振幅との合計よりも大きいこととであり、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、前記間隙内に配置された断熱部材をさらに備える
【請求項2】
請求項1に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、前記間隙内に配置された弾性部材を備える。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記支持機構は、
前記車体フレームに取付けられ、前記発電用エンジンを支持するリンク部材と、
前記車体フレームに設けられ、前記リンク部材の揺動の範囲を制限するストッパと、
を有する。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、第一領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積が、第二領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積よりも少なくなり、且つ前記発電機が部分的又は全体的に前記第一領域に含まれるように、偏心的に配置され、前記第一領域及び前記第二領域は、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を含む空間を、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の左右方向における前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の中心を通り上下方向及び前後方向に広がる中心面で2つに区分することにより定義される2つの領域を指し、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、更に、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を走行させる駆動力を発生させる駆動モータと、
前記バッテリと前記発電機と前記駆動モータとの間の電気的接続を担う電力線と
を有し、
前記電力線は、前記第一領域に含まれる部分が、前記第二領域に含まれる部分よりも多くなるように、配置される。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、第一領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積が、第二領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積よりも少なくなり、且つ前記発電機が部分的又は全体的に前記第一領域に含まれるように、偏心的に配置され、前記第一領域及び前記第二領域は、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を含む空間を、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の左右方向における前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の中心を通り上下方向及び前後方向に広がる中心面で2つに区分することにより定義される2つの領域を指し、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、更に、
前記バッテリの前方に配置されるラジエータと、
走行風が前記第一領域において前記バッテリの横を通るように構成された走行風通路と、
前記走行風通路に露出するように設けられた前記バッテリの空冷フィンと、
前記ラジエータの排風を前記第二領域において前記バッテリの横に流すように構成された排風通路と
を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動電力供給ユニットから供給された電力により駆動モータを駆動して走行するシリーズハイブリッド式鞍乗型車両がある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、バッテリと、エンジン駆動電力供給ユニットと、駆動モータとを備え、バッテリ及びエンジン駆動電力供給ユニットから電力を供給された駆動モータにより走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2013/168171号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型車両は、小型軽量であることが求められる。シリーズハイブリッド式鞍乗型車両についても、小型軽量が求められる。従って、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、バッテリ、エンジン駆動電力供給ユニット及び駆動モータを搭載するため、これらの要素をコンパクトに配置することが求められる。これに対し、エンジン駆動電力供給ユニットは、発電用エンジンを備えているため、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両において各要素を密接に配置すると、発電用エンジンの振動及び熱が他の要素に伝達してしまう可能性がある。本発明の目的は、発電用エンジンの振動及び熱による影響を低減しつつ、コンパクトに構成した、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両に搭載の要素をコンパクトに配置することについて検討した。特許文献1のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、バッテリとエンジン駆動電力供給ユニットとが、近接して配置されている。ここで、エンジン駆動電力供給ユニットの発電用エンジンは、振動及び熱が発生する。特許文献1のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、発電用エンジンの振動及び熱が、バッテリに伝わる可能性がある。また、発電用エンジンの振動については、車体フレームを介してバッテリに伝わる可能性もある。バッテリに振動及び熱が伝わると、例えば充電及び放電等のバッテリの性能に影響が及ぶ可能性がある。
【0006】
そこで、本発明者は、エンジン駆動電力供給ユニットの発電用エンジンから発生する振動及び熱を考慮しつつ、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の車体をコンパクト化することについて検討した。この検討の中で、本発明者は、振動を許容するように発電用エンジンを車体フレームに支持し、エンジンとバッテリとの間に振動を許容する隙間を設けることにより、発電用エンジンの振動及び熱が、バッテリに伝達するのを抑制するという知見を得た。具体的には、発電用エンジンを、車体フレームに対する発電用エンジンの振動を許容するように構成される支持機構を介して車体フレームに支持し、バッテリを、下記(A)から(C)の全てを満たすように、車体フレームに、揺動可能に又は固定的に、支持する。ここで、前記(A)から(C)は、
(A)バッテリは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向で発電用エンジンよりも前に配置されること、
(B)バッテリの少なくとも一部は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を前後方向に見て発電用エンジンと重なりを有するように配置されること、
(C)バッテリは、発電用エンジンと間隙を空けてシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向に対向するように配置され、間隙は、振動の方向において、支持機構により許容される振動の最大振幅と前記振動の方向における前記バッテリの最大振幅との合計よりも大きいこと
である。
【0007】
車体フレームに対する発電用エンジンの振動を許容するように構成される支持機構を介して、発電用エンジンを車体フレームに支持することにより、発電用エンジンの振動が車体フレームに伝達することを抑制することができる。また、バッテリを(A)及び(B)のように配置することにより、バッテリと発電用エンジンをシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向に並べ、左右方向及び上下方向の大きさを抑制することができる。また、(C)のように配置することにより、発電用エンジンの許容された振動がバッテリに伝達するのを抑制し、発電用エンジンの熱がバッテリに伝達するのを抑制することができる。即ち、(C)における発電用エンジンとバッテリとの間隙は、発電用エンジンの振動がバッテリに伝達するのを抑制するための間隙と、発電用エンジンの熱がバッテリに伝達するのを抑制するための間隙を兼ねることができる。このように発電用エンジンとバッテリとを車体フレームに支持することにより、発電用エンジンの振動及び熱による影響を低減しつつ、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両をコンパクトに構成することができる。
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、次の構成を備える。
(1)シリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、
車体フレームと、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向において互いに異なる位置に設けられる前輪及び後輪と、
1つ又は複数のシリンダを有し、支持機構を介して前記車体フレームに支持される発電用エンジンと、
前記発電用エンジンに支持され、前記発電用エンジンに駆動されることにより発電する発電機と、
前記発電機から電力が供給されるバッテリと
を備え、
前記支持機構は、前記車体フレームに対する前記発電用エンジンの振動を許容するように構成され、前記振動の方向は、少なくとも前記前後方向の成分を含み、
前記バッテリ及び発電用エンジンの両方は、少なくとも部分的に、前後輪間領域に位置するように設けられ、前記前後輪間領域は、前記前後方向における前記前輪の後端と前記後輪の前端との間で、且つ前記前輪の上端及び前記後輪の上端のうち、より高い位置の上端よりも下の領域であり、
前記バッテリは、下記(A)から(C)の全てを満たすように、前記車体フレームに、揺動可能に又は固定的に、支持され、前記(A)から(C)は、
(A)前記バッテリは、前記前後方向で前記発電用エンジンよりも前に配置されることと、
(B)前記バッテリの少なくとも一部は、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を前後方向に見て前記発電用エンジンと重なりを有することと、
(C)前記バッテリは、前記発電用エンジンと間隙を空けて前記前後方向に対向するように配置され、前記間隙は、前記振動の方向において、前記支持機構により許容される前記振動の最大振幅と前記振動の方向における前記バッテリの最大振幅との合計よりも大きいこと
である。
【0009】
(1)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、車体フレームと、前輪及び後輪と、発電用エンジンと、発電機と、バッテリとを備える。
発電用エンジンは、1つ又は複数のシリンダを有する。発電用エンジンは、支持機構を介して車体フレームに支持される。支持機構は、車体フレームに対する発電用エンジンの振動を許容するように構成される。振動の方向は、少なくとも前後方向の成分を含む。
前輪及び後輪は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向において互いに異なる位置に設けられる。
発電機は、発電用エンジンに支持される。発電機は、発電用エンジンに駆動されることにより発電する。
バッテリ及び発電用エンジンの両方は、少なくとも部分的に、前後輪間領域に位置するように設けられる。前後輪間領域は、前後方向における前輪の後端と後輪の前端との間で、且つ前輪の上端及び後輪の上端のうち、より高い位置の上端よりも下の領域である。
バッテリは、発電機から電力が供給される。バッテリは、下記(A)から(C)の全てを満たすように、車体フレームに、揺動可能に又は固定的に、支持される。前記(A)から(C)は、
(A)バッテリは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向で発電用エンジンよりも前に配置されることと、
(B)バッテリの少なくとも一部は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を前後方向に見て発電用エンジンと重なりを有することと、
(C)バッテリは、発電用エンジンと間隙を空けて前後方向に対向するように配置され、間隙は、振動の方向において、支持機構により許容される振動の最大振幅と前記振動方向における前記バッテリの最大振幅との合計よりも大きいことと
である。
バッテリは、車体フレームにリジッド固定されてもよく、又は、バッテリに対する車体フレームの振動を許容するように(バッテリへの振動の伝達を抑制するように)弾性部材又はリンク機構を介して支持されてもよい。
【0010】
(1)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、車体フレームに対する発電用エンジンの振動を許容するように構成される支持機構を介して、発電用エンジンを車体フレームに支持する。これにより、発電用エンジンの振動が車体フレームに伝達することを抑制することができる。また、バッテリを(A)及び(B)のように配置することにより、バッテリと発電用エンジンをシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向に並べ、左右方向及び上下方向の大きさを抑制することができる。また、(C)のように配置することにより、発電用エンジンの許容された振動がバッテリに伝達するのを抑制し、発電用エンジンの熱がバッテリに伝達するのを抑制することができる。即ち、(C)における発電用エンジンとバッテリとの間隙は、発電用エンジンの振動がバッテリに伝達するのを抑制するための間隙と、発電用エンジンの熱がバッテリに伝達するのを抑制するための間隙を兼ねることができる。このように発電用エンジンとバッテリとを車体フレームに支持することにより、発電用エンジンの振動及び熱の発生を許容しつつ、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両をコンパクトに構成することができる。振動及び熱による影響を低減しつつ、コンパクト化を実現できる。なお、隙間は、例えば、前後輪間領域に部分的に又は全体的に含まれてもよい。これにより、よりコンパクトな配置を実現可能となる。
【0011】
本発明の一つの観点によれば、エンジン駆動電力供給ユニットは、以下の構成を採用できる。
(2) (1)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、前記間隙内に配置された断熱部材を備える。
【0012】
(2)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、間隙内に配置された断熱部材を備える。これにより、(2)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、バッテリに放射熱が伝達するのを抑制することができる。
【0013】
本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(3) (1)又は(2)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、前記間隙内に配置された弾性部材を備える。
【0014】
(3)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、間隙内に配置された弾性部材を備える。これにより、(3)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、発電用エンジン自体の振動を抑制できる。
【0015】
本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(4) (1)から(3)の何れか1つのシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記支持機構は、
前記車体フレームに取付けられ、前記発電用エンジンを支持するリンク部材と、
前記車体フレームに設けられ、前記リンク部材の揺動の範囲を制限するストッパと、
を有する。
【0016】
(4)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、リンク部材と、ストッパとを備える。リンク部材は、車体フレームに取付けられ、発電用エンジンを支持する。ストッパは、リンク部材の揺動の範囲を制限する。これにより、(4)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、エンジンが大きく振動することを抑制することができる。
【0017】
本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(5) (1)から(4)の何れか1つのシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、第一領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積が、第二領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積よりも少なくなり、且つ前記発電機が部分的又は全体的に前記第一領域に含まれるように、偏心的に配置され、前記第一領域及び前記第二領域は、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を含む空間を、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の左右方向における前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の中心を通り上下方向及び前後方向に広がる中心面で2つに区分することにより定義される2つの領域を指し、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、更に、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を走行させる駆動力を発生させる駆動モータと、
前記バッテリと前記発電機と前記駆動モータとの間の電気的接続を担う電力線と
を有し、
前記電力線は、前記第一領域に含まれる部分が、前記第二領域に含まれる部分よりも多くなるように、配置される。
【0018】
(5)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、発電用エンジンの第一領域に含まれる1つ又は複数のシリンダの体積が、第二領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積よりも少なくなる。また、(5)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、発電機が、部分的又は全体的に第一領域に含まれるように、偏心的に配置される。これにより、(5)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、第1の領域よりも第2の領域の方が、大きなスペースを確保できる。この時、(5)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、バッテリと発電機と駆動モータとの間の電気的接続を担う電力線は、第一領域に含まれる部分が、第二領域に含まれる部分よりも多くなるように、配置される。これにより、(5)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、スペースの有効活用ができる。
なお、電力線は、バッテリと発電機を直接に接続してもよい。また、電力線は、インバータを介してバッテリと発電機を接続してもよい。
【0019】
本発明の一つの観点によれば、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(6) (1)から(5)の何れか1つのシリーズハイブリッド式鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、第一領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積が、第二領域に含まれる前記1つ又は複数のシリンダの体積よりも少なくなり、且つ前記発電機が部分的又は全体的に前記第一領域に含まれるように、偏心的に配置され、前記第一領域及び前記第二領域は、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を含む空間を、前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の左右方向における前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の中心を通り上下方向及び前後方向に広がる中心面で2つに区分することにより定義される2つの領域を指し、
前記シリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、更に、
前記バッテリの前方に配置されるラジエータと、
走行風が前記第一領域において前記バッテリの横を通るように構成された走行風通路と、
前記走行風通路に露出するように設けられた前記バッテリの空冷フィンと、
前記ラジエータの排風を前記第二領域において前記バッテリの横に流すように構成された排風通路と
を有する。
【0020】
(6)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両は、ラジエータと、走行風通路と、空冷フィンと、排風通路とを有する。
ラジエータは、バッテリの前方に配置される。
走行風通路は、走行風が第一領域においてバッテリの横を通るように構成される。
空冷フィンは、走行風通路に露出するようにバッテリに設けられる。
排風通路は、ラジエータの排風を第二領域においてバッテリの横に流すように構成される。
(6)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、ラジエータの排風が第二領域を通り、走行風が第一領域を通る。バッテリの空冷フィンは、第一の領域に配置される。従って、(6)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両では、バッテリは、走行風により冷却され、ラジエータにより温められた排風が、バッテリの空冷フィンに当たることは防止又は抑制されるため、バッテリの温度上昇を抑制できる。
【0021】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。本明細書にて使用される用語「及び/又は」は一つの、又は複数の関連した列挙された構成物のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」及び/又はそれらの等価物は広く使用され、直接的及び間接的な取り付け、接続及び結合の両方を包含する。更に、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されず、直接的又は間接的な電気的接続又は結合を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせを全て繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0022】
本明細書では、新しいシリーズハイブリッド式鞍乗型車両について説明する。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細無しに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0023】
鞍乗型車両(straddled vehicle)とは、運転者がサドルに跨って着座する形式のビークルをいう。鞍乗型車両としては、例えば、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。自動三輪車は、2つの前輪と1つの後輪とを備えていてもよく、1つの前輪と2つの後輪とを備えていてもよい。鞍乗型車両の駆動輪は、後輪であってもよく、前輪であってもよい。また、鞍乗型車両の駆動輪は、後輪及び前輪の双方であってもよい。また、鞍乗型車両は、リーン姿勢で旋回可能に構成されていることが好ましい。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、カーブの中心に傾いた姿勢で旋回するように構成される。これにより、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、旋回時にビークルに加わる遠心力に対抗する。
【0024】
車体フレームは、鞍乗型車両の骨格をなし、バッテリ、エンジン駆動電力供給ユニット及び駆動モータ等の鞍乗型車両の搭載部品等を支持する。車体フレームは、ヘッドパイプと、ヘッドパイプに固定された桁部とを有する。車体フレームは、例えば、シングルグレードル型、ダブルグレードル型、ダイヤモンド型、及びモノコック型等が挙げられるが、これらに限定されない。車体フレームは、フレーム本体と剛性を有する部品とが一体となって、前輪及び後輪からの荷重を受ける。
【0025】
発電用エンジンは、例えば、高負荷領域と低負荷領域とを有するエンジンである。発電用エンジンは、例えば、4ストロークエンジンである。4ストロークエンジンは、4ストロークの間に、高負荷領域と低負荷領域とを有する。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、例えば、単気筒エンジンである。また、高負荷領域と低負荷領域とを有する。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、例えば、2気筒エンジン、不等間隔燃焼型3気筒エンジン、又は、不等間隔燃焼型4気筒エンジンである。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、1サイクル720度の間に180度以上の連続不燃焼区間を含む。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、例えば、気筒数が3以上の等間隔燃焼型エンジンは含まない。4ストロークエンジンは、例えば、3つより少ない気筒を有するエンジンである。本開示の一実施形態において、4ストロークエンジンは、例えば、単気筒エンジン又は2気筒エンジンである。2気筒エンジンは、2つの気筒を有する不等間隔燃焼エンジンであってもよい。2つの気筒を有する不等間隔燃焼エンジンとして、例えばV型エンジンが挙げられる。シリンダは、起立姿勢又は倒伏姿勢のいずれで設けられてもよい。好ましい実施形態において、シリンダは、倒伏姿勢で設けられる。「シリンダが起立姿勢を有する」とは、シリンダが、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の直立状態においてシリンダが上方を向くように設定されていることをいう。エンジンが複数のシリンダを有する場合、少なくとも1つのシリンダが起立姿勢を有していればよい。ここで、上方を向くとは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の上下方向においてシリンダがエンジンの回転軸から上方に延び、且つ、シリンダ孔の中心軸が鉛直線に対して成す傾斜角が特定角度以内であることをいう。特定角度は、例えば、45度であってもよく、30度であってもよい。なお、傾斜角は、中心軸と鉛直線との双方が含まれる平面を基準として定められる。また、「シリンダが倒伏姿勢」を有するとは、シリンダが、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の直立状態においてシリンダが前方を向くように設定されていることをいう。エンジンが複数のシリンダを有する場合、少なくとも1つのシリンダが倒伏姿勢を有していればよい。ここで、前方を向くとは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の前後方向においてシリンダがエンジンの回転軸から前方に延び、且つ、シリンダ孔の中心軸が鉛直線に対して成す傾斜角が45度以上135度以下であることをいう。なお、傾斜角は、中心軸と鉛直線との双方が含まれる平面を基準として定められる。
【0026】
発電機は、例えば永久磁石式の始動発電機である。発電機は、例えば永久磁石を使用しないモータであってもよい。永久磁石式の発電機は、例えば、ブラシレスモータである。ブラシレスモータは、整流子を有さないモータである。発電機は、エンジンによって駆動され発電するモータジェネレータである。発電機は、エンジンを始動する始動モータとして機能してもよい。発電機は、これに限られない。永久磁石式の発電機は、例えば、ブラシ付き直流モータでもよい。ブラシレスモータは、例えば、アウターロータ型でもよく、また、インナーロータ型でもよい。また、ブラシレスモータは、ラジアルギャップ型でなく、アキシャルギャップ型でもよい。また、発電機は、例えばロータに永久磁石を有さないタイプでもよい。
【0027】
支持機構は、車体フレームに発電用エンジンに支持するための接続部品又はこれらの接続部品の組み合わせである。支持機構は、発電用エンジンの振動を許容しつつ車体フレームに発電用エンジンを支持する。発電用エンジンの振動を許容しつつ発電用エンジンを車体フレームに支持する接続部品は、例えば発電用エンジンとフレームとを接続する弾性部材である。発電用エンジンの振動を許容しつつ発電用エンジンを車体フレームに支持する接続部品の組み合わせは、例えばリンク機構と弾性部材との組み合わせである。弾性部材は、例えばゴムブッシュである。弾性部材は、例えば内外筒ブッシュ、スグリブッシュ又はダンパーゴムであってもよい。弾性部材は、弾性を有する部材である。弾性部材は、例えば、緩衝部材、制振部材、防振部材等を含む。リンク機構は、例えばリンク板と回転支持部との組み合わせである。回転支持部は、例えばベアリングにより構成されたベアリング支持部である。回転支持部は、ベアリングに替えて、例えばリンク機構が回転可能に構成された弾性体による支持であってもよい。
【0028】
バッテリと発電用エンジンとの間隙は、空気とは限らない。隙間にゴムのような弾性材料が充填されてもよい。更に、バッテリと発電用エンジンとの間隙は、ゴムと空気の隙間とを有してもよい。
【0029】
バッテリと発電用エンジンとが前後方向に「対向する」とは、例えばエンジンとバッテリとの間隙に空気が存在する構成を含む。但し、「対向する」構成は特に限定されず、例えば、エンジンとバッテリとの間隙に、バッテリ及びエンジンのための断熱部材及び弾性部材といったエンジン及びバッテリの機能に直接関係する部材が存在する構成でもよい。但し、「対向する」構成は、例えばモータ又は車体フレームといった、エンジン又はバッテリの機能に直接関係しない部品が存在する構成を含まない。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、発電用エンジンの振動及び熱の発生を許容しつつ、コンパクトに構成した、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の構成を示す左側面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両のバッテリと発電用エンジンの構成を拡大して示す左側面図である。
図3】本発明の第3実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両のバッテリと発電用エンジンの構成を拡大して示す左側面図である。
図4】(a)は、本発明の第4実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の発電用エンジンの構成を拡大して示す左側面図である。(b)から(d)は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両の発電用エンジンの支持機構の構成を拡大して示す左側面図である。
図5】本発明の第5実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の構成を示す上面図である。
図6】本発明の第6実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1の構成を示す左側面図である。
本明細書及び図面で、Fは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における前方向を示す。Bは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における後方向を示す。FBは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における前後方向を示す。Uは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における上方向を示す。Dは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における下方向を示す。UDは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における上下方向を示す。Lは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における左方向を示す。Rは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における右方向を示す。LRは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における左右方向を示す。LRは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における車幅方向でもある。即ち、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における車幅方向LRは、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1における右方向R、及び左方向Lの双方を含んでいる。
【0034】
図1のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1は、車体フレーム10と、前輪15及び後輪16と、発電用エンジン20と、発電機30と、バッテリ40とを備える。
発電用エンジン20は、1つ又は複数のシリンダ21を有する。発電用エンジン20は、支持機構25を介して車体フレーム10に支持される。支持機構25は、車体フレーム10に対する発電用エンジン20の振動を許容するように構成される。振動の方向は、少なくとも前後方向FBの成分を含む。
前輪15及び後輪16は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1の前後方向FBにおいて互いに異なる位置に設けられる。
発電機30は、発電用エンジン20に支持される。発電機30は、発電用エンジン20に駆動されることにより発電する。
バッテリ40及び発電用エンジン20の両方は、少なくとも部分的に、前後輪間領域Xに位置するように設けられる。前後輪間領域Xは、前後方向FBにおける前輪15の後端15bと後輪16の前端16aとの間で、且つ前輪15の上端15c及び後輪16の上端16cのうち、より高い位置の上端よりも下の領域である。
バッテリ40は、発電機30から電力が供給される。バッテリ40は、下記(A)から(C)の全てを満たすように、車体フレーム10に、揺動可能に又は固定的に、支持される。前記(A)から(C)は、
(A)バッテリ40は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1の前後方向FBで発電用エンジン20よりも前に配置されることと、
(B)バッテリ40の少なくとも一部は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1を前後方向FBに見て発電用エンジン20と重なりを有することと、
(C)バッテリ40は、発電用エンジン20と間隙Sを空けて前後方向FBに対向するように配置され、間隙Sは、振動の方向において、支持機構25により許容される振動の最大振幅S1と振動方向におけるバッテリの最大振幅S2との合計よりも大きいことと
である。
バッテリ40は、車体フレーム10にリジッド固定されてもよく、又は、バッテリ40に対する車体フレーム10の振動を許容するように、即ちバッテリ40への振動の伝達を抑制するように、弾性部材又はリンク機構を介して支持されてもよい。
【0035】
本実施形態のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1では、車体フレーム10に対する発電用エンジンの振動を許容するように構成される支持機構25を介して、発電用エンジン20を車体フレーム10に支持する。これにより、発電用エンジン20の振動が車体フレーム10に伝達することを抑制することができる。また、バッテリ40を(A)及び(B)のように配置することにより、バッテリ40と発電用エンジン20をシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1の前後方向FBに並べ、左右方向及び上下方向UDの大きさを抑制することができる。また、バッテリ40を(C)のように配置することにより、発電用エンジン20の許容された振動がバッテリ40に伝達するのを抑制し、発電用エンジン20の熱がバッテリ40に伝達するのを抑制することができる。即ち、(C)における発電用エンジン20とバッテリ40との間隙Sは、発電用エンジン20の振動がバッテリ40に伝達するのを抑制するための間隙と、発電用エンジン20の熱がバッテリ40に伝達するのを抑制するための間隙を兼ねることができる。このように発電用エンジン20とバッテリ40とを車体フレーム10に支持することにより、発電用エンジン20の振動及び熱の発生を許容しつつ、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両1をコンパクトに構成することができる。
【0036】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両2の構成を拡大して示す左側面図である。本実施形態では、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両2が、下記のように構成される。本実施形態において第1実施形態と同一の構成には、図1に示すシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1と同じ符号を付する。
【0037】
図2のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1は、間隙S内に配置された断熱部材41を備える。これにより、本実施形態のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両2は、バッテリ40に発電用エンジン20の放射熱が伝達するのを抑制することができる。
【0038】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。図3は、本発明の第3実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両3の構成を拡大して示す左側面図である。本実施形態では、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両3が、下記のように構成される。本実施形態において第1実施形態と同一の構成には、図1に示すシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1と同じ符号を付する。
【0039】
図3のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両3は、間隙S内に配置された弾性部材42を備える。これにより、本実施形態のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両3は、発電用エンジン20自体の振動を抑制できる。
【0040】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について説明する。図4(a)は、本発明の第4実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両4の発電用エンジン20の構成を拡大して示す左側面図である。図4(b)から(d)は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両4の発電用エンジン20の支持機構25の構成を拡大して示す左側面図である。本実施形態では、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両4の支持機構25が、下記のように構成される。本実施形態において第1実施形態と同一の構成には、図1に示すシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1と同じ符号を付する。
【0041】
図4(a)のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両の支持機構25は、車体フレーム10に取付けられ、発電用エンジン20を支持するリンク部材251及び252と、車体フレーム10に設けられ、リンク部材251の揺動の範囲を制限するストッパ253とを有する。本実施形態において、リンク部材251及び252は、例えば、車体フレーム10の右方向に2か所、左方向に2か所に設けられる。ストッパ253は、例えば、車体フレーム10の右方向に1か所、左方向に1か所に設けられる。なお、図4(a)では、車体フレーム10の左方向のリンク部材251及び252、並びにストッパ253のみを図示し、車体フレーム10の右方向のリンク部材251及び252、並びにストッパ253は図示しない。
【0042】
支持機構25のリンク部材251は、図4(b)及びに示すように、ベアリング支持部251-1と、弾性体支持部251-2と、エンジン支持部251-3とを有する。リンク部材251は、ベアリング支持部251-1と、弾性体支持部251-2とを介して車体フレーム10に取付けられ、エンジン支持部251-3を介して、発電用エンジン20に取付けられる。ベアリング支持部251-1は、リンク部材251を回転可能に支持し、弾性体支持部251―2は、リンク部材251の回転を所定の範囲内に抑制する。支持機構25のリンク部材252は、図4(c)及びに示すように、ベアリング支持部252-1と、弾性体支持部252-2と、エンジン支持部252-3とを有する。リンク部材252は、ベアリング支持部252-1と、弾性体支持部252-2とを介して車体フレーム10に取付けられ、エンジン支持部252-3を介して、発電用エンジン20に取付けられる。ベアリング支持部252-1は、リンク部材251を回転可能に支持し、弾性体支持部252-2は、リンク部材252の回転を所定の範囲内に抑制する。
【0043】
支持機構25のストッパ253は、図4(d)に示す通り、ベアリング支持部253-1と、エンジン支持部253-2とを有する。ストッパ253は、ベアリング支持部253-1と、エンジン支持部253-2とを介して車体フレーム10に取付けられ、エンジン支持部253-2を介して、発電用エンジン20に取付けられる。ベアリング支持部253-1は、ストッパ253を回転可能に支持する。なお、図4(b)から(d)では、車体フレーム10及び発電用エンジン20を破線で示している。
【0044】
本実施形態において、リンク部材251及び252により、発電用エンジン20は併進方向及びクランク軸を中心とした回転方向に振動可能である。ここで、発電用エンジン20は、ストッパ253により、回転方向の振動が抑制される。これにより、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両4は、発電用エンジン20が大きく振動することを抑制することができる。なお、ベアリング支持部251-1、252-1及び253-1は、ベアリングに替えて内外筒ブッシュ又はスグリブッシュ等の弾性部材によりリンク部材251~253を回転可能に構成してもよい。
【0045】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態について説明する。図5は、本発明の第5実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両5の構成を示す上面図である。本実施形態では、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両5が、下記のように構成される。本実施形態において第1実施形態と同一の構成には、図1に示すシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1と同じ符号を付する。
【0046】
図5のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両5の発電用エンジン20は、第一領域A1に含まれるシリンダ21の体積が、第二領域A2に含まれるシリンダ21の体積よりも少なくなり、且つ発電機30が部分的又は全体的に第一領域A1に含まれるように、偏心的に配置される。ここで、第一領域A1及び第二領域A2は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両5を含む空間を、左右方向LRにおけるシリーズハイブリッド式鞍乗型車両5の中心Cを通り上下方向UD及び前後方向FBに広がる中心面で2つに区分することにより定義される2つの領域を指す。また、図5のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両5は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両5を走行させる駆動力を発生させる駆動モータ17と、バッテリ40と発電機30と駆動モータ17との間の電気的接続を担う電力線18とを有する。電力線18は、第一領域A1に含まれる部分が、第二領域A2に含まれる部分よりも多くなるように、配置される。
【0047】
本実施形態のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両5では、発電用エンジン20が、上述の通り偏心的に配置されることにより、第一領域A1よりも第二領域A2の方が、大きなスペースを確保できる。この時、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両5では、バッテリ40と発電機30と駆動モータ17との間の電気的接続を担う電力線18は、第一領域A1に含まれる部分が、第二領域A2に含まれる部分よりも多くなるように、配置される。これにより、本実施形態のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両5は、スペースの有効活用ができる。
【0048】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態について説明する。図6は、本発明の第6実施形態に係るシリーズハイブリッド式鞍乗型車両6の構成を示す上面図である。本実施形態では、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両6が、下記のように構成される。本実施形態において第1実施形態と同一の構成には、図1に示すシリーズハイブリッド式鞍乗型車両1と同じ符号を付する。
【0049】
図6のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両6の発電用エンジン20は、第一領域A1に含まれるシリンダ21の体積が、第二領域A2に含まれるシリンダ21の体積よりも少なくなり、且つ発電機30が部分的又は全体的に第一領域A1に含まれるように、偏心的に配置される。ここで、第一領域A1及び第二領域A2は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両6を含む空間を、左右方向LRにおけるシリーズハイブリッド式鞍乗型車両6の中心Cを通り上下方向UD及び前後方向FBに広がる中心面で2つに区分することにより定義される2つの領域を指す。
また、図6のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両6は、ラジエータ23と、走行風通路26と、空冷フィン43と、排風通路27と有する。ラジエータ23は、バッテリ40の前方Fに配置される。走行風通路26は、走行風が第一領域A1においてバッテリ40の横を通るように構成される。空冷フィン43は、走行風通路26に露出するようにバッテリ40に設けられる。排風通路27は、ラジエータ23の排風を第二領域A2においてバッテリ40の横に流すように構成される。
【0050】
走行風通路26は、例えば車体フレーム10の側面をカウル261で覆うことにより生じた第一領域A1におけるバッテリ40及び発電用エンジン20と、カウル261との間の隙間を利用する。排風通路27は、例えば前後方向FBにおけるラジエータ23の後方向Bに、整流板271を設けることにより確保する。整流板271により、ラジエータ23からの排風を第二領域A2に導くことができる。なお、排風通路27は、ラジエータ23の後に排風を第二領域A2に導く排風口を設けることにより構成してもよい。
【0051】
本実施形態のシリーズハイブリッド式鞍乗型車両6では、ラジエータ23の排風が第二領域A2を通り、走行風が第一領域A1を通る。バッテリ40の空冷フィン43は、第一領域A1に配置される。従って、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両6では、バッテリ40は、走行風により冷却され、ラジエータ23により温められた排風は、バッテリ40の空冷フィン43に当たることはないため、バッテリ40の温度上昇を抑制できる。
【符号の説明】
【0052】
1~6 シリーズハイブリッド式鞍乗型車両
10 車体フレーム
15 前輪
16 後輪
20 発電用エンジン
21 シリンダ
25 支持機構
30 発電機
40 バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6