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特許7551801化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/10 20060101AFI20240909BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20240909BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C23C18/31 E
C25D7/00 J
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023021450
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2018139054の分割
【原出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2023062067
(43)【公開日】2023-05-02
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】1712067.6
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518264310
【氏名又は名称】セムシスコ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SEMSYSCO GmbH
【住所又は居所原語表記】Karolingerstrasse 7C 5020 Salzburg Republic of Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グライスナー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】クノール,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルンスベルガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エツリンゲル,ヘルベルト
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-192893(JP,A)
【文献】特開2002-115096(JP,A)
【文献】特開2005-330567(JP,A)
【文献】特表2006-519932(JP,A)
【文献】特開2014-139341(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0191784(US,A1)
【文献】中国実用新案第205171008(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/73
22/77
C25D 17/00 - 17/28
21/00 - 21/22
C25F 7/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体中における基板(30)の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム(10)であって、
槽(11)と、
流体通路(12)と、
膨張タンク(13)と、
制御ユニット(14)と
を備え、
前記槽(11)は、前記プロセス流体中における前記基板(30)の前記化学および電解の少なくとも一方の表面処理用に構成され、
前記流体通路(12)は、前記槽(11)と前記膨張タンク(13)とを連結し、
前記膨張タンク(13)は、前記プロセス流体の膨張体積を保持するように構成されて、
前記制御ユニット(14)および前記流体通路(12)は、前記槽(11)中の前記プロセス流体のレベルを、厳密に一定より多かれ少なかれ15%の範囲内に維持するように構成され、
前記制御ユニット(14)は、前記槽(11)中に配置されることになる分布部(21)の乾燥を防止するように構成され、
前記分布部(21)は、前記プロセス流体および電流の少なくとも一方の流れを前記基板(30)に導くように構成された、
システム(10)。
【請求項2】
前記プロセス流体を前記槽(11)と前記膨張タンク(13)との間で連続的に循環させるように構成されたポンピング手段(15)をさらに備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記制御ユニット(14)は、基板ホルダ(20)が前記槽(11)から取り出されたときに、前記プロセス流体の前記レベルを、厳密に一定より多かれ少なかれ15%の範囲内に維持するように構成された、請求項1~2のうちのいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記ポンピング手段(15)は、基板ホルダ(20)の取り出しとバランスをとるためにポンピング体積を増加させるように構成された、請求項2に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記流体通路(12)は、基板ホルダ(20)が前記槽(11)中へ投入されたときに、前記プロセス流体の前記レベルを、厳密に一定より多かれ少なかれ15%の範囲内に維持するように構成された、請求項に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記流体通路(12)は前記槽(11)のオーバーフロー出口(16)を前記膨張タンク(13)と連結する、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記基板ホルダ(20)は前記基板(30)を保持する、請求項3に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記制御ユニット(14)は、前記槽(11)中に配置されることになる前記分布部(21)の最上部より上に前記プロセス流体の前記レベルを維持するように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記制御ユニット(14)は、前記プロセス流体の前記レベルを、前記槽(11)中に配置されることになる前記分布部(21)の最上部のレベルに維持するように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記プロセス流体の温度を検出して、前記プロセス流体の前記温度の変化を制御するように構成された温度制御システム(17)をさらに備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項11】
前記プロセス流体の化学的特性を検出して、前記プロセス流体の前記化学的特性の変化を制御するように構成された組成制御システム(18)をさらに備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項12】
前記制御ユニット(14)は、前記槽(11)中に配置されることになる前記分布部(21)およびアノード(22)の少なくとも一方の中への空気の導入を防止するように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項13】
プロセス流体中における基板(30)の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス(100)であって、
請求項1に記載のシステム(10)と、
基板ホルダ(20)と
を備え、
前記基板ホルダ(20)は、前記基板(30)を保持するように構成された、
デバイス(100)。
【請求項14】
プロセス流体中における基板(30)の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法であって、
前記プロセス流体の膨張体積を前記基板(30)の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための槽(11)から膨張タンク(13)へ導くステップaと、
前記槽(11)中の前記プロセス流体のレベルが、厳密に一定より多かれ少なかれ15%の範囲内に維持されるように、前記プロセス流体の前記膨張体積を前記膨張タンク(13)から前記槽(11)へ再投入するステップbと
前記槽(11)中に配置されることになる分布部(21)の乾燥を防止し、
前記分布部(21)は、前記プロセス流体および電流の少なくとも一方の流れを前記基板(30)に導くように構成される、方法。
【請求項15】
前記ステップaにおいて基板ホルダ(20)を前記槽(11)中へ投入するステップと、
前記ステップbにおいて前記基板ホルダ(20)を前記槽(11)から取り出すステップと
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセス流体は、前記槽(11)と前記膨張タンク(13)との間で連続的に循環される、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス、ならびにプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業においては、材料をウェーハの表面上に堆積させるか、またはそこから除去するために様々なプロセスを用いることができる。
【0003】
例えば、予めパターン形成されたウェーハ表面上に銅などの導体を堆積させてデバイスの相互接続構造を作製するために、電気化学堆積(ECD:electrochemical deposition)または電気化学機械堆積(ECMD:electrochemical mechanical deposition)プロセスを用いることができる。
【0004】
材料除去ステップには化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)がよく用いられる。ウェーハの表面から過剰な材料を除去するために、別の技術、電解研磨または電解エッチングを用いることもできる。
【0005】
ウェーハ表面上の材料の電気化学(または電気化学機械)堆積あるいはウェーハ表面からの材料の電気化学(または電気化学機械)除去は、まとめて「電気化学処理」と呼ばれる。電気化学、化学および電解の少なくとも一方のプロセス技術は、電解研磨(または電解エッチング)、電気化学機械研磨(または電気化学機械エッチング)、電気化学堆積および電気化学機械堆積を含みうる。すべての技術がプロセス流体を利用する。
【0006】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理技術は、以下のステップを伴う。処理されることになる基板は、基板ホルダに取り付けられ、電解プロセス流体中に浸漬されてカソードとしての機能を果たす。電極は、プロセス流体中に浸漬されてアノードとしての機能を果たす。プロセス流体に直流が印加されて、正に帯電した金属イオンをアノードにおいて解離する。次にイオンがカソードへ移動して、カソードに取り付けられた基板をめっきする。
【0007】
かかるプロセスにおける1つの困難は、ウェーハをプロセス溶液中へ降下させたときにウェーハの下に気泡がトラップされかねないことである。プロセスが、例えば、銅のための堆積プロセスであれば、かかる泡は、銅がウェーハ表面の泡を含んだ領域上へ堆積するのを妨げて、めっき材においては欠陥を示すめっきされないまたは不十分にめっきされた区域を生じさせる。かかる欠陥は、相互接続構造の信頼性を低下させる。同様に、電解研磨プロセスにおいては、トラップされた泡が泡を含んだ領域からの材料の除去を遅らせ、不均一性および欠陥を生じさせて、信頼性問題を引き起こす。
【0008】
これに関して特許文献1は、電気化学プロセスのために表面をプロセス溶液と接触させたときに、ウェーハ表面の選択した領域上に気泡が形成されるのを防止するためのプレウェッティング方法およびシステムを開示する。プロセスの間、ウェーハ表面を初めにプロセス溶液の表面に近付ける。次に、所定の時間にわたってウェーハ表面の選択した領域の方へプロセス溶液の流れを導く。次のステップでは、泡形成を防止するために、所定の時間にわたってウェーハ表面の選択した領域をプロセス溶液の流れに接触させて、電気化学
プロセスのためにウェーハ表面をプロセス溶液中に浸漬させる。
【0009】
しかしながら、かかるプレウェッティング・アプローチは、最適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2004/182712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、依然として基板上のより良好かつより均一な材料堆積を可能にする、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のために改善されたシステムを提供する必要がありうる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態は、従属請求項に限定される。留意すべきは、以下に記載される本発明の態様が、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス、ならびにプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法にも適用されることである。
【0013】
本発明によれば、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステムが提示される。
【0014】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理は、いずれかの材料堆積、亜鉛めっきコーティング、化学もしくは電気化学エッチング、陽極酸化、金属分離または同様のものであってよい。
【0015】
基板は、導体平板、半導体基板、フィルム基板、基本的に平板形状の金属もしくは金属化ワークピースまたは同様のものを含んでよい。処理されることになる表面は、少なくとも部分的にマスクされていてもいなくてもよい。
【0016】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステムは、槽(basin)、流体通路、膨張タンクおよび制御ユニットを含む。
【0017】
槽は、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理用に構成される。言い換えれば、槽は、基板をその中で処理する、例えば、コーティングするリザーバである。槽は、基板をその中に垂直に挿入できる垂直めっきチャンバであってよい。
【0018】
流体通路は、槽と膨張タンクとを連結する。流体通路は、槽と膨張タンクとの間の接続部またはパイプであってよい。
【0019】
膨張タンクは、プロセス流体の膨張体積を保持するように構成される。膨張タンクは、槽の隣に配置された別のリザーバであってよい。膨張タンクは、槽より小さい容積を有してよい。
【0020】
制御ユニットは、プロセッサであってよい。制御ユニットは、槽および膨張タンクの少なくとも一方におけるプロセス流体のレベルを検出できる。制御ユニットは、プロセス流
体が槽および膨張タンクの少なくとも一方に入るかまたはそこから出るように操作できる。
【0021】
制御ユニットおよび流体通路は、槽中のプロセス流体のレベルを基本的に一定に維持するように構成される。用語「基本的に一定」は、外的影響によらず槽中の液状プロセス流体(liquid process fluid)の高さが同じレベルのままであることと理解されてよい。用語「基本的に一定」は、厳密に一定より多かれ少なかれ15%の範囲内、好ましくは厳密に一定より多かれ少なかれ10%の範囲内、より好ましくは厳密に一定より多かれ少なかれ5%の範囲内として理解されてよい。制御ユニットおよび流体通路は、槽中のプロセス流体のレベルを一定に維持するように構成されてもよい。用語「基本的に一定」は、厳密に一定より多かれ少なかれ5%未満として理解されてよい。制御ユニットおよび流体通路は、槽中のプロセス流体のレベルを厳密に一定の意味で一定に維持するように構成されてもよい。
【0022】
本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステムは、例えば、槽中に配置されることになる分布部のような、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスの部品の乾燥を防止することを可能にする。乾燥は、プロセス流体の粒子の有害な結晶化につながりかねない。分布部は、プロセス流体および電流の少なくとも一方の流れを基板へ導くように構成された部品であってよい。
【0023】
本発明による化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステムは、例えば、分布部およびアノードの少なくとも一方を含む筐体、アノードおよび分布部の少なくとも何れかのような、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスの部品中への空気の導入を防止することをさらに可能にできる。空気の導入は、プロセス流体の粒子の有害な酸化および基板のいわゆる泡シールド(bubble shielding)の少なくとも一方をもたらしかねない。
【0024】
結果として、本発明による化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステムは、基板表面上における均一な液体の流れ、基板と対電極との間の電界の目標とする分布、それによって基板上におけるより容易かつより均一な材料堆積を可能にする。
【0025】
一例では、基板ホルダは、基板を保持する。ここでは防止される、槽中のプロセス流体のレベルを変化させるかもしれない外的影響は、1つもしくは2つの基板(基板ホルダの各側面に1つの基板)を保持した基板ホルダまたは基板ホルダ単独の投入および取り出しの少なくとも一方でありうる。一例では、制御ユニットは、基板ホルダが槽から取り出されたときに、プロセス流体のレベルを基本的に一定に維持するように構成される。一例では、流体通路は、基板ホルダが槽中へ投入されたときに、プロセス流体のレベルを基本的に一定に維持するように構成される。基板ホルダは、例えば、20リットルの体積を変位させて、一方で膨張タンクは、例えば、30リットルの容積を有しうる。
【0026】
ここでは防止される、槽中のプロセス流体のレベルを変化させるかもしれない外的影響は、プロセス流体の蒸発、フラッシング、こぼれ、故障または同様のものであってもよい。
【0027】
一例では、システムは、プロセス流体を槽と膨張タンクとの間で連続的に循環させるように構成されたポンピング手段をさらに含む。ポンピング手段は、ポンプであってよい。ポンピング手段は、プロセス流体を槽から膨張タンクへおよび逆に永続的にポンピングしてよい。
【0028】
一例では、ポンピング手段は、基板ホルダの取り出しとバランスをとるためにポンピング体積を増加させるように構成される。言い換えれば、膨張体積を槽から膨張タンクへポンピングしなければならないときには、時間当たりのポンピング体積を増加させることによって、例えば、モータ速度を増加させることによってこれを行うことができる。対照的に、ポンピング手段は、槽中のプロセス流体のレベルを基本的に一定に保つために膨張体積を移動させなければならない場合にのみ、プロセス流体を槽と膨張タンクとの間で移動させるように構成されてもよい。
【0029】
一例では、流体通路は、槽のオーバーフロー出口を膨張タンクと連結する。
【0030】
一例では、制御ユニットは、プロセス流体のレベルを槽中に配置されることになる分布部の最上部より上に維持するように構成される。分布部は、プロセス流体および電流の少なくとも一方の流れを基板へ導くように構成された部品であってよい。別の例では、制御ユニットは、プロセス流体のレベルを基本的に槽中に配置されることになる分布部の最上部のレベルに維持するように構成される。両方の実現性が乾燥、空気の導入または同様のものによる分布部のいずれかの損傷を防止することを可能にする。一例では、制御ユニットは、槽中に配置されることになる分布部の乾燥を防止するように構成される。一例では、制御ユニットは、槽中に配置されることになる分布部中への空気の導入を防止するように構成される。
【0031】
一例では、システムは、プロセス流体の温度を検出して、例えば、加熱および冷却の少なくとも一方によって、プロセス流体の温度の変化を制御するように構成された温度制御システムをさらに含む。
【0032】
一例では、システムは、プロセス流体の化学的特性を検出して、プロセス流体の化学的特性の変化を制御するように構成された組成制御システムをさらに含む。プロセス流体の化学的特性は、組成、pH値、添加物の量または同様のものであってよい。化学的特性の変化は、何らかの成分を添加することによってなされてよい。
【0033】
本発明によれば、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスも提示される。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスは、上記のようなプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステムならびに基板ホルダを含む。基板ホルダは、基板を保持するように構成される。基板ホルダは、1つまたは2つの基板(基板ホルダの各側面に1つの基板)を保持するように構成されてよい。
【0034】
本発明によれば、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法も提示される。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法は、必ずしもこの順序とは限らないが、以下のステップ、すなわち、
a)プロセス流体の膨張体積を基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための槽から膨張タンクへ導くステップ、および
b)槽中のプロセス流体のレベルが基本的に一定に維持されるように、プロセス流体の膨張体積を膨張タンクから槽へ再投入するステップ
を含む。
【0035】
一例では、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法は、以下のステップをさらに含む、すなわち、
-ステップa)と関連付けて基板ホルダを槽中へ投入し、
-ステップb)と関連付けて基板ホルダを槽から取り出す。
【0036】
基板ホルダは、1つまたは2つの基板(基板ホルダの各側面に1つの基板)を保持してよい。
【0037】
一例では、プロセス流体は、槽と膨張タンクとの間で連続的に循環される。
【0038】
一例では、方法は、プロセス流体の温度を検出して、例えば、加熱および冷却の少なくとも一方によって、プロセス流体の温度の変化を制御するように構成された、温度制御方法をさらに含む。
【0039】
一例では、方法は、プロセス流体の化学的特性を検出して、プロセス流体の化学的特性の変化を制御するように構成された組成制御方法をさらに含む。プロセス流体の化学的特性は、組成、pH値、添加物の量または同様のものであってよい。化学的特性の変化は、何らかの成分を添加することによってなされてよい。
【0040】
結果として、本発明は、表面全体の制御可能な材料輸送を目的として、ほぼ平面の基板上に局所的に規定された液体の流れを実現するための方法、ならびに本発明による方法を構造的に実現するためのデバイスに関する。同時に、本発明は、導電性基板表面上に目標とする電界分布を与える。
【0041】
デバイスおよび方法は、特に、構造化された半導体基板、導体平板およびフィルム基板の処理に適するが、平面状金属および金属化基板の表面全体の処理にも適する。デバイスおよび方法は、本発明に従って太陽エネルギー発電のための大表面光電パネルまたは大規模モニタパネルの製造に用いられてもよい。
【0042】
独立請求項によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム、デバイスおよび方法は、特に、従属請求項において規定されるのと同様および同一の少なくとも一方の好ましい実施形態を有することが理解されよう。さらに、本発明の好ましい実施形態を従属請求項とそれぞれの独立請求項とのいずれかの組み合わせとすることができることも理解されよう。
【0043】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスの一実施形態を模式的および例示的に示す図である。
図2】2つの基板を保持する基板ホルダの一実施形態を模式的および例示的に示す図である。
図3】本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステムの一実施形態を模式的および例示的に示す図である。
図4】本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステムの一実施形態を模式的および例示的に示す図である。
図5】本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法の一例の基本的なステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の例示的な実施形態が添付図面を参照して以下に記載される。
【0046】
図1、3および4は、本発明によるプロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100の一実施形態を模式的および例示的
に示す。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100は、プロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム10および基板ホルダ20を含む。
【0047】
基板ホルダ20は、図2に示され、基板30を保持するように構成される。基板ホルダ20は、ここでは2つの基板、基板ホルダ20の各側面に1つの基板30を保持する。基板ホルダ20は、片側または両側から処理されてよい1つだけの基板を保持するように構成されてもよい。
【0048】
図1、3および4に示されるようなプロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム10は、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のために目標とする流れおよび電流密度パターンを生成する。システム10は、プロセス流体(示されない)中に沈んだ2つの分布部21を含む。各分布部21に対向するのは、基板ホルダ20に取り付けられた基板30である。基板30の表面は、プロセス流体によって濡らされる。2つの電極、ここでは2つのアノード22が存在し、その各々が分布部21の基板30とは反対側に位置して、やはりプロセス流体中に浸される。
【0049】
分布部21は、プロセス流体のための少なくとも1つの入口開口部23、および分布部21の前面において出口ノズルアレイ(示されない)で終わる少なくとも1つの液体通路を有する。ポンピングされたプロセス流体は、出口ノズルを通って比較的高速で基板30の方向に流れて、その位置で所望の化学および電解の少なくとも一方の反応を行う。
【0050】
基板30は、電気または電子部品の製造のための基本的に平板形状のワークピースであってよく、基板ホルダ20に機械的に固定される。処理媒質が分布部21から出るにつれて、処理されることになる基板30の表面はプロセス流体中に浸される。特別な場合には、基板30は、マスクされるかもしくはマスクされない導体平板、半導体基板またはフィルム基板であってよく、あるいはほぼ平面状の表面を有するいずれかの金属または金属化ワークピースであってもよい。
【0051】
分布部は、好ましくはプラスチック、特に好ましくはポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、アクリルガラスすなわちポリメチルメタクリラート、ポリテトラフルオロエチレン、またはプロセス溶液によって分解されない別の材料からなってよい。
【0052】
アノード22は、プロセス流体内で対電極として機能する基板30とアノード22との間に電流の流れが生じるように、分布部21と機械的に接触するか、または分布部21から空間的に分離して、分布部21の背面領域に取り付けられる。用いられる表面処理方法に応じて、アノード22は、白金被覆チタンなど、プロセス液体に不溶な材料か、または別の状況では、例えば、ガルバニックに分離されることになる金属など、可溶な材料からなってよい。
【0053】
図3および4は、本発明によるプロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム10の一実施形態を模式的および例示的に示す図である。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム10は、槽11、流体通路12、膨張タンク13および制御ユニット14を含む。基板30をもつ基板ホルダ20は、図3では槽11中に、図4では槽11の外部に配置される。
【0054】
槽11は、プロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理用に構成されて、基板30をその中で処理するリザーバを形成する。槽11は、基板30(示されない)がその中に垂直に投入される垂直めっきチャンバである。
【0055】
流体通路12は、槽11と膨張タンク13との間のパイプの形態で、槽11と膨張タンク13とを連結する。
【0056】
膨張タンク13は、プロセス流体の膨張体積を保持し、槽11の隣に配置される。膨張タンク13は、槽11より小さい容積を有する。
【0057】
制御ユニット14は、ここではプロセッサである。制御ユニット14は、槽11中のプロセス流体のレベルを検出して、プロセス流体が槽11および膨張タンク13の少なくとも一方に入るかまたはそこから出るように操作する。制御ユニット14は、それゆえにポンピング手段15を制御できる。
【0058】
制御ユニット14および流体通路12は、槽11中のプロセス流体のレベルを基本的に一定に維持する。用語「基本的に一定」は、外的影響によらず槽11中の液状プロセス流体の高さが同じレベルのままであることと理解されてよい。
【0059】
制御ユニット14は、1つまたは2つの基板30をもたないまたはもつ基板ホルダ20が槽11から取り出されたとき(図4)、および基板ホルダ20が槽11中へ投入されたときに(図3)、プロセス流体のレベルを基本的に一定に維持する。膨張タンク13中のプロセス流体のレベルLは、それゆえに図3から図4へ減少する。
【0060】
システム10は、プロセス流体を槽11と膨張タンク13との間で、すなわち、槽11から膨張タンク13へおよび逆に連続的に循環させるためのポンピング手段15をさらに含む。ポンピング手段15は、基板ホルダ20の取り出しとバランスをとるためにポンピング体積を増加させてよい。
【0061】
流体通路12は、槽11のオーバーフロー出口16を膨張タンク13に連結する。
【0062】
制御ユニット14は、プロセス流体のレベルを槽11中に配置された分布部21の最上部より上に維持する。制御ユニット14は、プロセス流体のレベルを基本的に槽11中に配置された分布部21の最上部のレベルに維持してもよい。どちらの選択肢によっても、乾燥、空気の導入または同様のものによる分布部21のいずれかの損傷を防止することができる。それによって、制御ユニット14は、槽11中における分布部21の乾燥を防止する。さらに、制御ユニット14は、分布部21中への空気の導入を防止する。
【0063】
システム10は、プロセス流体の温度を検出して、例えば、加熱および冷却の少なくとも一方によって、プロセス流体の温度の変化を制御するための温度制御システム17をさらに含む。
【0064】
システム10は、プロセス流体の化学的特性を検出して、プロセス流体の化学的特性の変化を制御するための組成制御システム18をさらに含む。プロセス流体の化学的特性は、組成、pH値、添加物の量または同様のものであってよい。化学的特性の変化は、何らかの成分を添加することによってなされてよい。
【0065】
本発明によるプロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム10は、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100の部品の乾燥を防止することを可能にする。システム10は、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100の部品中への空気の導入を防止することをさらに可能にできる。結果として、本発明による化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム10は、基板表面上における均一な液体の流れ、基板30と対電極との間の電界の目標とする分布、それによって基板30上におけるより容易かつ
より均一な材料堆積を可能にする。
【0066】
図5は、プロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法のステップの概略図を示す。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法は、以下のステップを含む。すなわち、
-第1のステップS1において、プロセス流体の膨張体積を基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための槽11から膨張タンク13へ導く。
【0067】
-第2のステップS2において、槽11中のプロセス流体のレベルが基本的に一定に維持されるように、プロセス流体の膨張体積を膨張タンク13から槽11へ再投入する。
【0068】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法は、ステップS1と関連付けて基板ホルダ20を槽11中へ投入し、ステップS2と関連付けて基板ホルダ20を槽11から取り出すことをさらに含む。
【0069】
基板ホルダ20は、1つまたは2つの基板(図2に示される基板ホルダ20の各側面に1つの基板30)を保持してよい。
【0070】
本発明の実施形態が種々の主題を参照して記載されることに留意されたい。特に、幾つかの実施形態は方法の請求項を参照して記載されたのに対して、他の実施形態は、装置の請求項を参照して記載される。しかしながら、当業者は、以上および以下の記載から、別に通知されない限り、1つの主題に属する特徴のいずれかの組み合わせに加えて、異なる主題に関する特徴の間のいずれかの組み合わせも成し得、それらはこの出願により開示されると考えられる。しかしながら、すべての特徴を組み合わせて、特徴の単なる足し合わせを超えた相乗効果を提供することができる。
【0071】
本発明が図面および先の説明に詳細に図示され、記載されたが、かかる図示および記載は、例証または例示であり、それらに制限されない。本発明は、開示される実施形態には限定されない。請求項に係る発明の分野の当業者は、図面、開示および従属請求項の検討から、開示される実施形態に対する他の変形形態を理解し、生み出すことができる。
【0072】
請求項において、単語「含む(comprising)」は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、複数を除外しない。一つの処理装置または他のユニットが請求項に列挙された複数の構成の機能を達成してもよい。幾つかの手段が互いに異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に用いることができないことを示すわけではない。請求項におけるいずれかの参照符号が範囲を限定すると解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0073】
10 システム
11 槽
12 流体通路
13 膨張タンク
15 ポンピング手段
16 オーバーフロー出口
17 温度制御システム
18 組成制御システム
20 基板ホルダ
30 基板
100 デバイス
図1
図2
図3
図4
図5