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  • 特許-リード物質の除去方法 図1
  • 特許-リード物質の除去方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】リード物質の除去方法
(51)【国際特許分類】
   C23G 1/14 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
C23G1/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023036457
(22)【出願日】2023-03-09
(65)【公開番号】P2024062918
(43)【公開日】2024-05-10
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0138158
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523087216
【氏名又は名称】ウェスコ エレクトロード カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】キム サンウク
(72)【発明者】
【氏名】キム サンス
(72)【発明者】
【氏名】パク ミジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム チュア
(72)【発明者】
【氏名】イ チヒョン
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104120460(CN,A)
【文献】特開2018-188909(JP,A)
【文献】特表2018-517065(JP,A)
【文献】特開平09-137300(JP,A)
【文献】特開昭58-039788(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111074285(CN,A)
【文献】国際公開第2020/110198(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第1076979(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G 1/00-5/06
C25D 1/00-1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔製造用陰極に対応して設けられた銅箔製造用陽極の表面に付着したリード物質を除去するための方法であって、
EDTA及びクエン酸の水溶液を含む洗浄液を準備する洗浄液準備過程と、
前記リード物質が表面に付着した前記銅箔製造用陽極を前記洗浄液に入れて洗浄することにより、EDTA-Pbキレーティングを生じさせる第1洗浄過程と、
前記リード物質が除去された前記銅箔製造用陽極を、高圧洗浄機を用いて洗浄する第2洗浄過程と、
を含み、
前記洗浄液は、前記第1洗浄過程において、7~9の範囲内のpH値、及び20℃~50℃の範囲内の温度を維持するように調節されていることを特徴とするリード物質の除去方法。
【請求項2】
前記第1洗浄過程が完了した前記洗浄液を電気分解することにより、前記銅箔製造用陰極から前記リード物質を回収する回収過程を更に含む、
請求項1に記載のリード物質の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解反応を用いて銅箔を製造するための陽極からリード物質(Lead materials)を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電解反応を用いて銅箔を製造する先行技術文献として、韓国公開特許第10-2019-0038325号を挙げることができる。この先行技術では、図1に示すように、銅箔の製造のために、電解槽10の電解液12に浸漬させた銅箔製造用陽極である不溶性陽極20と、ドラム状の回転ドラム型陰極30からなる装置が用いられる。
【0003】
ドラム型陰極30と向き合うように設けられる不溶性陽極20は、ドラム型陰極30の円筒形外観に対応する凹形状を有している。このような不溶性陽極20とドラム型陰極30とが通電すると、ドラム型陰極30の表面に金属成分を成長させることができる。よって、通電状態でドラム型陰極30を不溶性陽極20に対して回転させれば、ドラム型陰極30には電解反応によって銅箔が形成される。このように形成される銅箔をドラム型陰極30から剥離することで、銅箔を連続的に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0038325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように銅箔を生成する過程において、銅箔製造用陽極である不溶性陽極20には、リード物質であるPbO、PbO2、PbSO4が付着して成長する。このように、電解銅箔の製造に伴ってリード物質が付着して成長すれば、不溶性陽極20の機能が低下することは勿論のこと、銅箔の品質にも良くない影響を及ぼすことになる。
【0006】
したがって、不溶性陽極20を電解槽10から分離して不溶性陽極20の表面に付着したリード物質を除去することが必要である。このようなリード物質を除去するために物理的力を用いることができるが、このように物理的力を用いれば、不溶性陽極20の表面が物理的に損傷する虞がある。他の方法として、化学的にリード物質を除去することができる。例えば、酸(Acid)を用いてリード物質を除去することを考慮することができる。
【0007】
しかしながら、リード物質の除去に酸を用いれば、作業環境が劣悪になることは勿論のこと、環境に優しくないという欠点がある。また、使用された酸が含まれる廃水の処理も環境的に且つ経済的に好ましくないことも事実である。したがって、経済性、効率性、及び環境適合性を充分に有しながら、不溶性陽極20からリード物質を除去することができる方法が望まれる現況にある。
【0008】
本発明は、銅箔製造用陽極に付着したリード物質を容易且つ効率的に除去することができるリード物質の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリード物質の除去方法は、銅箔製造用陰極に対応して設けられた銅箔製造用陽極の表面に付着したリード物質を除去するための方法であって、EDTA及びクエン酸の水溶液を含む洗浄液を準備する洗浄液準備過程と、前記リード物質が表面に付着した前記銅箔製造用陽極を前記洗浄液に入れて洗浄することにより、EDTA-Pbキレーティングを生じさせる第1洗浄過程と、前記リード物質が除去された前記銅箔製造用陽極を、高圧洗浄機を用いて洗浄する第2洗浄過程と、を含み、前記洗浄液は、前記第1洗浄過程において、7~9の範囲内のpH値、及び20℃~50℃の範囲内の温度を維持するように調節されている
【0010】
本発明のリード物質の除去方法は、前記第1洗浄過程が完了した前記洗浄液を電気分解することにより、前記銅箔製造用陰極から前記リード物質を回収する回収過程を更に含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、銅箔製造用陽極に付着したリード物質を容易且つ効率的に除去することができるリード物質の除去方法が実現する。これは、本発明により、実質的に銅箔製造用陽極を正常な反応が起こり得る状態に再生させることができるということを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来例による電解銅箔製造装置を例示する模式図である。
図2】本実施形態によるリード物質の除去方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態によるリード物質の除去方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は、本実施形態によるリード物質の除去方法を示すフロー図である。
【0014】
本実施形態によるリード物質の除去方法は、洗浄液を準備する過程(ステップS10)から開始する。本実施形態で使用する洗浄液は、銅箔製造用陰極に対応して設けられた銅箔製造用陽極の表面に付着したリード物質を除去するためのものであり、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA:Ethylenediaminetetraacetic acid)及びクエン酸(citric acid)水溶液を用いる。
【0015】
本実施形態で使用するEDTAは、水溶性を充分に確保するために、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム(EDTA-4Na)であることが好ましい。そして、EDTA-4Naをクエン酸と一緒に水に溶かして洗浄液を作る。このように含まれるクエン酸を洗浄液のpH調整のために使う。即ち、本実施形態で使用する洗浄液は、EDTA-4Na及びクエン酸を水に溶かして準備する。ここで、クエン酸の量を調節することで、洗浄液の水素イオン濃度(pH)値を7~9の範囲内の値とする。
【0016】
このように、洗浄液のpH値を最大限に弱塩基性に調節することは、EDTAと金属陽イオンとが効率的に反応することができるようにするためである。ここで、pH値が9よりも高ければ、EDTA錯物が不安定であり、OH-がEDTAと競争して金属水酸化物として沈澱するかまたは反応性のない錯物を形成するので良くない。pH値が7よりも低ければ、水溶性が低いEDTAが浸出するので良くない。洗浄液のpH値を7~9の範囲内の値とすることにより、EDTA錯物が浸出することなく安定する。
【0017】
以上説明したように、本実施形態で使用する洗浄液は、EDTA-4Na及びクエン酸が含まれた水溶液であり、pH値が7~9の範囲内にあるものであるとまとめることができる。
【0018】
このような洗浄液の準備(ステップS10)が完了すると、次いで、銅箔製造用陽極を洗浄する第1洗浄過程である電極洗浄過程(ステップS12)を遂行する。このような洗浄過程(ステップS12)は、銅箔製造用陽極を上述した洗浄液に浸して洗浄することを意味する。
【0019】
銅箔製造用陽極を上述した洗浄液中に浸漬させておくと、EDTA-4NaからEDTA-Pbに変化するキレーティングが起こる。即ち、銅箔製造用陽極の表面に付着していたリード物質中の鉛成分が洗浄液中でEDTAと臨時に結合するEDTA-Pbキレーティングが生じる。このような過程は、実質的に銅箔製造用陽極のリード物質を陽極から除去する過程であると言える。
【0020】
ここで、化学反応式は、C10122Na48・4H2O+PbO2→EDTA-Pbと表すことができ、結果物は塩基性状態であり、H2EDTAの形態にキレーティングされて洗浄液中に溶解して存在する。そして、このような洗浄過程で、洗浄液は上述した範囲内のpH値を維持し、温度は20℃~50℃の範囲内の値を維持することが好ましい。この温度範囲は、洗浄過程で上述した反応の効率性及び温水化に対する諸般の便宜性を考慮したものである。
【0021】
以上のような陽極洗浄過程(S12)が完了すると、実質的に銅箔製造用陽極からリード物質が除去された状態となる。即ち、銅箔製造用陽極のリード物質が分離され、洗浄液中にEDTA-Pbの形態として存在する状態となる。ここで、銅箔製造用陽極は実質的にリード物質が除去された状態であるので、洗浄段階を経て再使用することができる状態であると言える。
【0022】
洗浄液のEDTA溶液中にはリード物質が存在しているので、高価なEDTA溶液を再使用に供するためには、EDTA溶液中のリード物質を除去する必要がある。このように、洗浄液中のリード物質を除去するために、回収過程である電解反応過程(ステップS14)を遂行する。即ち、EDTA-Pbとしてキレート状態の洗浄液を電解槽で電解反応させれば、このような電解反応の結果、リード物質を陰極にメッキとして回収することができる。ここで、電解槽の形態及び構成については特に限定する必要はなく、多段の陽極及び陰極から構成されるようにしてもよい。
【0023】
電解反応によってリード物質が陰極に付着することは、実質的に洗浄液であるEDTA溶液からリード物質を除去することである。このように、リード物質が除去されると、高価なEDTA溶液を再び洗浄液として使うことができるようになるので、経済的に相当な利点がある。したがって、電解反応過程(ステップS14)は実質的にEDTAが含まれた洗浄液を再生する過程であると言える。
【0024】
そして、第2洗浄過程である水洗過程(ステップS16)において、陽極洗浄過程(ステップS12)でリード物質が除去された電解銅箔製造用陽極を、例えば高圧洗浄機を用いてウォータージェットにより水洗する。この水洗過程(ステップS16)により、電解銅箔製造用陽極は完全に再生する。このような後処理は高圧洗浄機で水洗するものに限定されず、多様な方法で洗浄することが可能である。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のリード物質の除去方法によれば、銅箔製造用陽極に付着したリード物質を容易且つ効率的に除去することができる。
また更に、リード物質が除去された水溶液からリード成分を回収することにより、高価なEDTA水溶液を再使用することができる経済的な側面での利点を期待することができる。ここで、洗浄液に含まれたリード成分の回収は、電気分解過程によって陰極から回収することが効率的で好ましい。
【0026】
上記の実施形態で説明したような本発明の基本的な技術的思想の範疇内で、当該分野の通常の技術者にとっては多様な変形が可能である。そして、本発明の保護範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて解釈されなければならないことは特許法の規定上当然であると言える。
【符号の説明】
【0027】
10 電解槽
12 電解液
20 不溶性陽極
30 回転ドラム型陰極
図1
図2