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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】低挿入力の電気コンタクトスリーブ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20240909BHJP
   H01R 24/38 20110101ALI20240909BHJP
【FI】
H01R13/11 301Z
H01R24/38
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023038261
(22)【出願日】2023-03-13
(65)【公開番号】P2023138424
(43)【公開日】2023-10-02
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】10 2022 106 159.0
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ ドゥ クロエ
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0288433(US,A1)
【文献】特公昭45-001702(JP,B1)
【文献】特表2017-534154(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111370901(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 24/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コンタクトスリーブ(1)であって、
前記電気コンタクトスリーブ(1)のコネクタ側の端部(8)に配置され、かつレセプタクル(18)の周りに延びるリング(16)を有し、
前記リング(16)は少なくとも2つのリングセグメント(20)から構成され、前記リングセグメント(20)は、非接触弛緩初期状態(22)において、前記リング(16)を少なくとも1つの位置(26)で一緒に閉じ、偏向接触状態(24)において、周方向(U)の少なくとも2つの位置(26)で互いに離間しており、
前記リングセグメント(20)の少なくとも1つに、前記レセプタクル(18)内へ半径方向(R)に突出する少なくとも1つのコンタクト湾曲部(40)が設けられている、
電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項2】
前記少なくとも2つのリングセグメント(20)は、複数のばねアーム(44)の端面に形成され、前記複数のばねアーム(44)は、共通のベース(6)から離れるように延び、前記周方向(U)に互いに離間している、
請求項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項3】
少なくとも2つの前記ばねアーム(44)が、共通のリングセグメント(20)によって接続されている、
請求項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項4】
ース(6)から前記電気コンタクトスリーブ(1)のコネクタ側の端部(8)へ長手方向(L)に延びる少なくとも1つのコンタクトばね(4)を有し、
前記少なくとも1つのコンタクトばね(4)は、凹部(10)と、前記凹部(10)に周方向(U)に隣接し、かつ一体化して自由端(14)を形成する複数のばね脚部(12)とを含む、
請求項1に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコンタクトばね(4)は、前記少なくとも2つのリングセグメント(20)から離間している、
請求項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項6】
前記少なくとも2つのリングセグメント(20)は、複数のばねアーム(44)の端面に形成され、前記複数のばねアーム(44)は、共通のベース(6)から離れるように延び、前記周方向(U)に互いに離間おり、
前記少なくとも1つのコンタクトばね(4)と前記複数のばねアーム(44)とは、前記共通のベース(6)から離れるように延び、前記周方向(U)に互いに離間している、
請求項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコンタクトばね(4)は、前記電気コンタクトスリーブ(1)の開口部(50)に沿って延びる、
請求項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項8】
前記リングセグメント(20)は、少なくとも2つのスロット(52)によって互いに分離され、前記少なくとも2つのスロット(52)は、互いに対して正反対に配置されている、
請求項からのいずれか一項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項9】
前記電気コンタクトスリーブ(1)は、少なくとも0.3mmの材料厚さを有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項10】
前記長手方向(L)は、前記少なくとも1つのコンタクトばね(4)の対称軸(42)に平行に延びる、
請求項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項11】
前記凹部(10)は、前記ベース(6)から前記少なくとも1つのコンタクトばね(4)の前記自由端(14)に向かう方向に延びる、
請求項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項12】
前記凹部(10)は、前記ベース(6)から離れる方向に先細になっている、
請求項11に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項13】
前記複数のばね脚部(12)は、前記凹部(10)に沿って均一な幅(43)を有する、
請求項に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項14】
電気コンタクトスリーブ(1)であって、
前記電気コンタクトスリーブ(1)のコネクタ側の端部(8)に配置され、かつレセプタクル(18)の周りに延びるリング(16)を有し、
前記リング(16)は少なくとも2つのリングセグメント(20)から構成され、前記リングセグメント(20)は、非接触弛緩初期状態(22)において、前記リング(16)を少なくとも1つの位置(26)で一緒に閉じ、偏向接触状態(24)において、周方向(U)の少なくとも2つの位置(26)で互いに離間しており

前記電気コンタクトスリーブ(1)は、
ベース(6)から前記電気コンタクトスリーブ(1)のコネクタ側の端部(8)へ長手方向(L)に延びる少なくとも1つのコンタクトばね(4)を有し、
前記少なくとも1つのコンタクトばね(4)は、凹部(10)と、前記凹部(10)に周方向(U)に隣接し、かつ一体化して自由端(14)を形成する複数のばね脚部(12)とを含む、

電気コンタクトスリーブ(1)。
【請求項15】
前記リングセグメント(20)の少なくとも1つに、前記レセプタクル(18)内へ半径方向(R)に突出する少なくとも1つのコンタクト湾曲部(40)が設けられている、
請求項14に記載の電気コンタクトスリーブ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コンタクトスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コンタクトスリーブは、コンタクトスリーブに挿入可能な相手側コンタクトに電気的に接触するために、低周波数範囲から高周波数範囲までの様々な用途に使用されている。堅牢性により必要とされ得る材料の選択に応じて、高い接触垂直力(contact normal forces)が生じることがある。高い接触垂直力は、コンタクトスリーブと相手側コンタクトとの間の接触垂直力によって生じる摩擦が大きいことにより、高挿入力につながる。低挿入力を同時に保証する堅牢な電気コンタクトスリーブが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、そのような電気コンタクトスリーブを提供することに基づく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明により、電気コンタクトスリーブであって、ベースからコンタクトスリーブのコネクタ側の端部へ長手方向に延びる少なくとも1つのコンタクトばねを有し、少なくとも1つのコンタクトばねは、凹部と、凹部に周方向に隣接し、かつ一体化して自由端を形成する複数のばね脚部とを含む、電気コンタクトスリーブによって達成される。
【0005】
代わりにまたは加えて、目的は、電気コンタクトスリーブであって、コンタクトスリーブのコネクタ側の端部に配置され、かつ相手側コンタクト用のレセプタクルの周りに延びるリングを有し、リングは少なくとも2つのリングセグメントから構成され、これらのリングセグメントは、非接触弛緩初期状態において、リングを少なくとも1つの位置で一緒に閉じ、偏向接触状態において、周方向の少なくとも2つの位置で互いに離間している、電気コンタクトスリーブによって達成される。
【0006】
リングセグメントが製造公差により離間しているリングは、閉リングとも考えられる。したがって、リングセグメントは、非接触弛緩初期状態において、例えば最大0.05mm互いに離間することができ、偏向接触状態において、周方向の少なくとも2つの位置で0.05mmを超えて互いに離間することができる。
【0007】
本発明は、本発明による電気コンタクトスリーブが、挿入プロセス中の挿入力を従来のコンタクト要素と比較して低下させることができ、公差が補償されるという理由で有利である。
【0008】
少なくとも1つのコンタクトばねの凹部は、コンタクトばねの弾性を増加させる。複数のばね脚部は個々のレバーアームを形成し、その結果、少なくとも1つのコンタクトばねは、より容易に偏向することができる。少なくとも1つのコンタクトばねの張力は、凹部によって低下する。しかしながら、複数のばね脚部が自由端で一体化するため、十分に高い接触垂直力を保証することができる。この少なくとも1つのコンタクトばねは、個々の別個のばね脚部よりも特に堅牢である。これは、例えば誤った挿入の場合に、少なくとも1つのコンタクトばねが塑性変形することを防ぐ。
【0009】
コネクタ側の端部に配置されたリングは、レセプタクルを囲み、相手側コンタクトがレセプタクルに斜めに挿入されることを防ぐ。これにより、リングは、相手側コンタクトがレセプタクルに誤って挿入されることを防ぐ。さらに、リングは、その予張力により、リングセグメントがリングを少なくとも1つの位置で閉じるように構成され、その結果、高い接触垂直力を保証することができる。相手側コンタクトがレセプタクルに挿入されると、リングセグメントは互いに離れるように偏向することができ、堅牢なコンタクトスリーブであっても、挿入力が低下する。
【0010】
以下で、希望に応じて互いに独立して互いに組み合わせることができ、各々がそれ自体有利であるさらなる発展について明記する。
【0011】
電気コンタクトスリーブは、同軸コネクタ用のコンタクトスリーブであってよい。特に、電気コンタクト要素は、約3MHz~約20GHzの範囲の同軸高周波コネクタ用に構成されていてよい。
【0012】
電気コンタクトスリーブは、特に2つ以上のコンタクトばねを備えることができ、これらのコンタクトばねは、周方向に互いに離間し、共通のベースから離れるように長手方向に沿って延びる。これらのコンタクトばねの各々に、それぞれの凹部を設けることができる。以下で「コンタクトばね」という用語が複数形で使用される場合、これは、単一のコンタクトばねを含む構成と、複数のコンタクトばねを含む構成との両方を含む。
【0013】
有利な構成によれば、コンタクトスリーブは、ケーブル側の端部からコネクタ側の端部へ長手方向に沿って延びることができる。ケーブル側の端部において、コンタクトスリーブを、電気ケーブル、特に同軸ケーブルに、例えば圧着接続によって取り付けることができる。
【0014】
少なくとも1つ以上のコンタクトばねを、コネクタ側の端部に配置することができる。特に、少なくとも1つのコンタクトばねの自由端を、コネクタ側の端部に向けて配置することができる。コンタクトばねをスリーブの残りの部分、特に共通のベースに接続するコンタクトばねの足部は、ケーブル側の端部の方を向いていてよい。
【0015】
2つ以上のコンタクトばねを、レセプタクルの周りで周方向に均一に、特に等角に(equigonally、等しい間隔で)配置することができる。「等角」とは、コンタクトばねが互いに等角度で離間していることを意味する。例えば、コンタクトスリーブは、互いに対して正反対に配置された2つのコンタクトばねを備えることができる。コンタクトスリーブは、互いに120°の角度で配置された3つのコンタクトばねを備えることが好ましい。コンタクトばねの中心軸を、特に等角に配置することができる。
【0016】
コンタクトスリーブの長手方向がそれぞれのコンタクトばねの対称軸に略平行に延びる場合に、少なくとも1つのコンタクトばねの均一な偏向が得られる。それぞれのコンタクトばねの対称軸は、凹部を通って延びることが好ましい。
【0017】
凹部は、細長い占有面積を有することが好ましい。凹部は、特に、ベースから離れて対応するコンタクトばねの自由端に向かって延びることができる。これにより、個々のコンタクトばねが偏向するときに、これらのコンタクトばねの張力を良好に分散させることができる。
【0018】
有利な構成によれば、コンタクトばねは、ベースから離れる方向に先細になっていてよい。凹部がベースから離れる方向に先細になっていることが、特に有利である。凹部は、例えば涙滴状または滴状であってよい。凹部の占有面積は、涙滴状または滴状であってよい。
【0019】
凹部がそれぞれのコンタクトばねを通ると、より大きい可撓性が得られる。
【0020】
凹部を、特にベースおよび複数のばね脚部によって囲むことができる。複数のばね脚部は、凹部に沿って周方向に均一な幅を有することができる。
【0021】
接触、特にシールド接触を向上させるために、少なくとも1つのリングセグメントに、レセプタクル内へ半径方向に突出する少なくとも1つのコンタクト湾曲部を設けることができる。複数のコンタクト湾曲部は、周方向に互いに離間することができる。例えば、コンタクト湾曲部を、材料の蓄積またはエンボス加工によって形成することができる。
【0022】
少なくとも2つのリングセグメントを、特にばねアームの端面に形成することができ、これらのばねアームは、共通のベースから離れるように延び、周方向に互いに離間している。これらのばねアームは、可撓性を高め、少なくとも2つのリングセグメントを、互いに離れるように半径方向外方により容易に偏向させることができる。
【0023】
有利な構成において、ばねアームのうちの少なくとも2つを、共通のリングセグメントによって互いに接続することができる。有利な構成によれば、ばねアームのうちの少なくとも1つを含むリングセグメントは、周方向に配置された両側で突出することができる。
【0024】
接触垂直力をリングセグメントにわたって均一に分散させるために、リングセグメントは、周方向において等しい長さとすることができる。
【0025】
リングセグメントのコンタクト湾曲部を、共通の高さで軸方向に配置することができ、その結果、同時かつ均一な接触を実現することができる。
【0026】
電気コンタクトスリーブがコンタクトばねとリングセグメントとの両方を備えると、接点の数を増加させることができる。リングセグメントを電気コンタクト要素の端面に形成することができ、リングセグメントは、軸方向上面視で、少なくとも1つのコンタクトばねを部分的に覆うことができる。したがって、リングセグメントは、コンタクトばねの保護部としても機能する。例えば、相手側コンタクトがコンタクトスリーブに誤った位置で挿入された場合に、コンタクトばねは曲がることがある。
【0027】
コンタクトばねは、リングセグメントから軸方向に離間することができると好ましい。特に、自由端を、軸方向においてベースとリングセグメントとの間に配置することができる。さらに、コンタクトばねは、ばねアームから周方向に離間することができる。少なくとも1つのコンタクトばねは、3つの狭い側面でばねアームから離間することができる。したがって、少なくとも1つのコンタクトばねを自立式に構成することができ、少なくとも1つのコンタクトばねは、隣接するばねアームによって機械的負荷から保護される。
【0028】
特に有利な構成において、コンタクトばねは、コンタクトアームよりも短くてよい。したがって、コンタクトばねは、リングセグメントを形成しないことが好ましい。
【0029】
コンタクトばねが間に配置されるばねアームのリングセグメントは、弛緩初期状態において、コンタクトばねの高さで周方向に互いにぶつかることができる。
【0030】
ばねアームおよび少なくとも1つのリングセグメントは、共通のベースと共に、コンタクトスリーブを通る開口部を画定することが好ましい。少なくとも1つのコンタクトばねは、開口部に沿って延びて、コンタクトばねがレセプタクル内へ半径方向内方に突出することができるようになっている。コンタクトばねは、半径方向内方に予め張力をかけられていることが好ましい。特に、自由端に形成されたコンタクトばねの接触面は、開口部を通ってレセプタクル内へ半径方向に突出することができる。
【0031】
リングセグメントは、少なくとも2つのスロットによって周方向に互いに分離され、少なくとも2つのスロットは、互いに対して正反対に配置されていることが好ましい。例えば、約180°で延びるちょうど2つのリングセグメントを設けることができる。リングセグメントは、スロットによって両端部で互いに分離されていてよい。弛緩初期状態において、リングセグメントは、少なくとも1つの、好ましくはすべてのスロットを閉じることができる。したがって、リングは、リングセグメントまたはばねアームのそれぞれの予張力によってのみ、この位置で閉じられる。相手側コンタクトがスリーブに挿入されると、リングセグメントは互いに離れるように偏向することができ、その結果、リングはスロットによって中断される。
【0032】
特に有利な構成によれば、電気コンタクト要素は、周方向において2つのばねアーム間に各々配置された複数のコンタクトばねを備えることができる。
【0033】
本出願の意味の範囲内で、複数のばねアーム、リングセグメント、またはコンタクトばねは、2~10個のばねアーム、リングセグメント、またはコンタクトばねを意味する。
【0034】
コンタクトばねの数は、ばねアームの数よりも少なくすることができると好ましい。例えば、コンタクトスリーブは、4つのばねアームと3つのコンタクトばねとを備えることができる。
【0035】
コンタクトスリーブが半径方向に少なくとも0.3mmの材料厚さを有するときに、特に堅牢な構成が生じる。この高レベルの材料厚さにより、コンタクトスリーブは、高い機械的負荷に耐えることができ、同時に高い接触垂直力を保証することができる。
【0036】
電気コネクタは、相手側コネクタに接触するための、記載された構成のうちの少なくとも1つによる少なくとも1つのコンタクトスリーブを備えることができる。
【0037】
コンタクトスリーブと相手側コンタクト、例えばコンタクトピンとを有する電気プラグ接続部において、コンタクトスリーブを、リングセグメントまたはコンタクトばねが完全挿入状態において半径方向外方に偏向するように、構成することができる。
【0038】
以下で、添付図面を参照しながら、実施形態を使用して本発明をより詳細に例を挙げて説明する。図中、構造および/または機能に関して互いに対応する要素は、同じ参照符号で示す。
【0039】
個々の実施形態で図示し説明する特徴の組合せは、説明のためのものに過ぎない。上記の説明に従って、実施形態の特徴の技術的効果が特定の用途に重要でない場合には、その特徴を省略することができる。逆に、上記の説明に従って、さらなる特徴の技術的効果が特定の用途に有利であるまたは必要である場合には、その特徴を実施形態に追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】電気コンタクトスリーブの例示的な構成の概略斜視図である。
図2図1の電気コンタクトスリーブの例示的な構成のさらなる概略斜視図である。
図3】電気コンタクトスリーブとコンタクトスリーブに挿入された相手側コンタクトとの例示的な構成を含むプラグ配置の概略側面図である。
図4図3のプラグ配置の一部の概略詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下で、図1図4を参照しながら、電気コンタクトスリーブ1の例示的な構成について、より詳細に説明する。
【0042】
相手側コンタクト2に接触するための電気コンタクトスリーブ1は、複数のコンタクトばね4を備え、これらのコンタクトばね4は、周方向Uに互いに離間するように配置され、共通のベース6からコンタクトスリーブ1のコネクタ側の端部8へ長手方向Lに沿って延びる。コンタクトばね4は各々、凹部10と、凹部10に周方向Uに隣接し、かつ一体化して自由端14を形成する複数のばね脚部12とを含む。
【0043】
例示的な実施形態によれば、コンタクトスリーブ1は、コネクタ側の端部8に配置され、かつレセプタクル18の周りに延びるリング16をさらに備える。リング16は2つのリングセグメント20から構成され、これらのリングセグメント20は、非接触弛緩初期状態22において、リングを少なくとも1つの位置で一緒に閉じ、偏向接触状態24(図3および図4参照)において、周方向Uの少なくとも2つの位置26で互いに離間している。
【0044】
例示的な構成は、コンタクトばね4とリング16との組合せを有するコンタクトスリーブ1を示す。この構成は、特に有利である。しかしながら、リングセグメントから構成された別の構成(図示せず)のリング16、または凹部が設けられたコンタクトばね4のそれぞれが実装されないことも考えられる。
【0045】
以下で、コンタクトスリーブの軸方向は、長手方向と同義語として使用される。長手方向Lは、相手側コンタクト2をコンタクトスリーブ1に挿入する挿入方向に特に平行に延びていてよい。
【0046】
コンタクトスリーブ1は、コネクタ側の端部8からケーブル側の端部28へ長手方向Lに延びることができる。ケーブル側の端部28において、コンタクトスリーブ1を、電気ケーブル30、特に同軸ケーブル32に取り付けることができる。例えば、コンタクトスリーブ1を、圧着接続によってケーブル30に取り付けることができる。
【0047】
コンタクトスリーブ1は、スリーブ状に曲げられた打抜き曲げ部材34であることが好ましい。したがって、コンタクトスリーブ1は、特にコネクタ側の端部8からケーブル側の端部28へ端から端まで延びる製造関連の継ぎ目36を有することができる。コンタクトスリーブ1の安定性を向上させるために、コンタクトスリーブ1が溶接される少なくとも1つの溶接点を設けることができる。特に、継ぎ目に隣接するコンタクトスリーブ1の部分を互いに溶接することができる。この場合には、溶接点がリング16から長手方向Lに距離を置いて配置されることが特に有利である。例えば、溶接点をケーブル側の端部28に配置することができる。これにより、コネクタ側の端部8におけるコンタクトスリーブ1の可撓性を高めることができる。
【0048】
コンタクトスリーブ1は、半径方向において少なくとも0.3mmの材料厚さを有することができると好ましい。この非常に高レベルの材料厚さは、得られる接触垂直力を増大させ、コンタクトスリーブ1の機械的堅牢性に関する厳しい要件も満たす。従来のコンタクトスリーブ1では、このような高レベルの材料厚さは、特に高挿入力につながる。凹部および/またはリングセグメントから構成されたリングが設けられたコンタクトばねと組み合わせると、高レベルの材料厚さを有するコンタクトスリーブ1であっても、挿入力は低く維持される。
【0049】
コンタクトスリーブ1は、同軸コネクタに接触するのに適している。このために、コンタクトスリーブ1は、レセプタクルに配置された内部導体コンタクト37を備える。コンタクトばね4に、同軸コネクタの外部導体に接触するための接触面38が設けられる。半径方向内方に突出するコンタクト湾曲部40をリングセグメント20に設けることによって、外部導体に接触する位置の数をさらに増加させることができる。この例示的な構成では、3つのコンタクトばね4と4つのコンタクト湾曲部40とが示されている。したがって、合計で7つの接点が生じる。
【0050】
コンタクトばね4を、特に自立式に構成することができる。図4に最も良く見られるように、コンタクトばね4は、ベース6から離れるように長手方向Lに先細になっていることが特に有利である。これにより、負荷時に、コンタクトばね4における最適な張力の分散が可能になる。
【0051】
張力を均一に分散させるために、コンタクトばね4を対称軸42に対して対称に、特に軸対称に構成することができる。コンタクトばね4の対称軸42は、長手方向Lに略平行に延びることができる。
【0052】
対称軸42は、凹部10に沿って延びることができる。凹部10は、ベース6から自由端14へ延び、コンタクトばね4の先細に対して均一に先細になっていることが好ましい。したがって、複数のばね脚部12の幅43が、周方向に延び、凹部10に沿って自由端14まで一定であることを保証することができる。
【0053】
自由端14の幅を、2つの一体化されたばね脚部によって形成することができる。したがって、その幅は、個々のばね脚部12の幅43の最大2倍であってよい。
【0054】
凹部10は、ベース6内へ長手方向Lに延びることができ、ベース6の一部を貫通するようにもなっている。これによって、コンタクトばね4の可撓性が高まることにより、挿入力が低下する。
【0055】
図4に見られるように、凹部10は、半径方向上面視で、略涙滴状または滴状の占有面積を有することができる。
【0056】
図2は、コンタクトばね4を周方向Uに均一に分散させることができることを示す。例えば、例示的な構成では、対称軸42が120°間隔で配置された3つのコンタクトばね4が存在する。
【0057】
リング16は、上面視で、コンタクトばね4を長手方向Lに沿って少なくとも部分的に覆うように構成されていてよい。このようにして、誤った挿入の場合にコンタクトばね4が曲がることを防ぐことができる。コンタクト湾曲部40はエンボス加工された部分であってよく、その結果、コンタクト湾曲部40の各点における実際の材料厚さは大きく変化しない。
【0058】
例示的な構成では、リングセグメント20は、共通のベース6から長手方向Lに沿って延びるばねアーム44の端面に形成され、周方向Uに互いに離間している。ばねアーム44は、コンタクトスリーブ1の可撓性を高め、リングセグメント20が互いにさらに離れるように偏向することを可能にする。ばねアーム44とコンタクトばね4とは、共通のベース6から長手方向Lに互いに略平行に突出することができる。したがって、ばねアーム44とコンタクトばね4とは、共通の高さから長手方向Lに延びることができる。
【0059】
ばねアーム44がコンタクトばね4よりも長いことが特に有利である。これにより、リングセグメント20がコンタクトばね4の偏向を妨げることを防ぐことができるからである。
【0060】
例示的な構成は、合計で4つのばねアーム44を備えるコンタクトスリーブ1を示しており、2つのばねアーム44は共通のリングセグメント20によって互いに接続されている。リングセグメント20の1つのそれぞれのばねアーム44は、継ぎ目36に隣接することができる。一方、リングセグメント20は、周方向Uの両側でばねアーム44から突出することができる。したがって、リングセグメント20の突出部分は、継ぎ目36を越えて互いにぶつかることができる。
【0061】
ばねアーム44は、リングセグメント20がばねアーム44の残りの部分に対して半径方向外方にずれるようなオフセット46を有することが好ましい。
【0062】
コンタクト湾曲部40による同時接触が得られるように、コンタクト湾曲部を、共通の高さで長手方向Lに配置することができる。
【0063】
さらに、コンタクトばね4は、ばねアーム44から周方向Uに離間することができる。少なくとも1つのコンタクトばね4は、3つの狭い側面でばねアーム44から離間することができる。したがって、少なくとも1つのコンタクトばね4を、自立式に構成することができ、少なくとも1つのコンタクトばね4は、隣接するばねアーム44によって機械的負荷から保護される。
【0064】
ばねアーム44は、リングセグメント20と共に弧48を形成することができ、リングセグメント20は、ベース6と共に開口部50を囲む。1つのそれぞれのコンタクトばね4は、ベース6から開口部50内へ長手方向Lに沿って延びることができる。
【0065】
弛緩初期状態において、リングセグメント20は、少なくとも1つの位置で互いに支持することができる。例えば、リングセグメント20は、コンタクトばね4の対称軸42の高さで、周方向Uに互いにぶつかることができる。
【0066】
相手側コンタクト2がコンタクトスリーブ1に挿入されると、リングセグメント20は、互いに離れる方向に偏向する。これにより、リングセグメント20を互いに分離するスロット52が形成される。継ぎ目36により形成されたスロットによって、リングセグメント20を互いに分離することもでき、挿入状態におけるスロットの幅は周方向Uに増加し得る。
【0067】
図3および図4は、少なくとも1つのコンタクトスリーブ1とコンタクトスリーブ1に挿入された相手側コンタクト2とを備える、電気コネクタ56を有するプラグ接続部54を示す。接触状態24で、コンタクトばね4とリングセグメント20とは、半径方向外方に偏向する。この偏向は、コンタクトばねの凹部10または互いに分離されたリングセグメント20のそれぞれによって実現される。
【符号の説明】
【0068】
1 コンタクトスリーブ
2 相手側コンタクト
4 コンタクトばね
6 ベース
8 コネクタ側の端部
10 凹部
12 ばね脚部
14 自由端
16 リング
18 レセプタクル
20 リングセグメント
22 初期状態
24 接触状態
26 位置
28 ケーブル側の端部
30 電気ケーブル
32 同軸ケーブル
34 打抜き曲げ部材
36 継ぎ目
37 内部導体コンタクト
38 接触面
40 コンタクト湾曲部
42 対称軸
43 幅
44 ばねアーム
46 オフセット
48 弧
50 開口部
52 スロット
54 プラグ接続部
56 コネクタ
L 長手方向
U 周方向
図1
図2
図3
図4