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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】3軸力覚センサーを用いた入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0338 20130101AFI20240909BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240909BHJP
   G01L 1/26 20060101ALN20240909BHJP
   G01L 5/16 20200101ALN20240909BHJP
【FI】
G06F3/0338
G06F3/041 520
G01L1/26 Z
G01L5/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023069021
(22)【出願日】2023-04-20
【審査請求日】2024-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
(72)【発明者】
【氏名】三浦 農
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0086689(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0011708(US,A1)
【文献】特開2018-200494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0338
G06F 3/041
G01L 1/26
G01L 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の表面に配置されて操作面を有し、前記操作面に指や掌で加えられた力に応じて変化する抵抗値、静電容量値又は出力電荷に基づいて、前記力のうち前記操作面の面方向に働くせん断力の向き及び大きさと前記操作面に対して垂直な方向に働く押圧力の大きさとを検出する3軸力覚センサーと、
前記3軸力覚センサーと電気的に接続されて前記筐体の内部に収納され、前記3軸力覚センサーで検出された前記せん断力と前記押圧力とに基づいてイベントを発動させる制御部と、を備え、
前記制御部が、
前記操作面の面内に割り当てられた複数の入力方向の各々について、前記せん断力の分力を計算し、
さらに前記割り当て方向における前記分力及び前記押圧力について時間変化量を計算し、
前記割り当て方向における前記分力の1以上で前記時間変化量がそれぞれの閾値を超えたとき、そのときの前記押圧力の前記時間変化量の正負を基準にして前記閾値を超えた前記割り当て方向の中から選択された方向について、入力が行なわれたとして前記イベントを発動させる、
3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項2】
前記閾値が正の値である、請求項1記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項3】
前記閾値が負の値である、請求項1記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項4】
前記基準が、前記押圧力の前記時間変化量が正の場合のみである、請求項1~3のいずれかに記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項5】
前記基準が、前記押圧力の前記時間変化量が負の場合のみである、請求項1~3のいずれかに記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項6】
前記基準が、前記押圧力の前記時間変化量が正の場合と負の場合とを併用する、請求項1~3のいずれかに記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項7】
前記割り当て方向における前記分力のうち複数で前記時間変化量が時間的に重複してそれぞれの前記閾値を超えたとき、最初に前記閾値を超えた前記割り当て方向についてのみ、入力が行なわれたとして前記イベントを発動させる、請求項1記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項8】
前記割り当て方向における前記分力の全てで前記時間変化量がそれぞれの前記閾値を超えず、前記押圧力のみで前記時間変化量がその閾値を超えたとき、押し込み方向について、入力が行なわれたとして前記イベントを発動させる、請求項1記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項9】
各々の前記時間変化量が、微分値又はハイパスフィルタをかけた値である、請求項1記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【請求項10】
前記3軸力覚センサーが、フレキシブルなフィルム型のセンサーである、請求項1記載の3軸力覚センサーを用いた入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正確な荷重検出を行なうことのできる、温度ドリフト又は湿度ドリフトよる動作不良を抑制することができる、3軸力覚センサーを用いた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジョイスティック、十字キー、マウスやタッチパネルでは実現できない新しいアイデアをユーザーインタフェース(UI)の開発現場に提供するものとして、フィルム型3軸力覚センサーが知られている(非特許文献1,2参照)。
フィルム型3軸力覚センサーは、3軸(XYZ軸)方向の力を接触点で測定することで、押す力(圧力)や滑る力(摩擦・せん断力)を検知することができ、ねじる、回す、ずらすなど、従来のコントローラーでは制御できなかった動作を指1点で入力することが可能である。on/off判定にとどまらない力量(ボリューム)測定が可能なので、スピードや移動量などのコントロールにも対応できる。ジョイスティックや十字キーに比べて、ほんのわずかの指の動きで方向と移動量を同時に入力することができる。また、薄くて軽いフィルム型のセンサーなので、曲面にも実装できる。なお、3軸方向の力をすべて測定しなくてもよく、例えば、XY軸方向の力だけを測定するセンサーもあり得る。
【0003】
上記したようなフィルム型3軸力覚センサーとしては、空気層又は弾性層を間に挟んで上部電極と下部電極とを対向する形で配置し、力を加えたときに電極間の距離が変動することによって発生する静電容量値の変化を利用して、加えられたせん断力や押圧力を算出する静電容量方式のものが挙げられる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“摩擦・せん断力センサー|NISSHA”,[online],NISSHA株式会社,connect.nissha.com,[令和5年 4月 4 日検索],インターネット<URL:https://connect.nissha.com/filmdevice/shear-force-sensor/>
【文献】“UI向けフィルム型3軸力覚センサー|NISSHA”,[online],NISSHA株式会社,connect.nissha.com,[令和5年 4月 4 日検索],インターネット<URL:https://connect.nissha.com/filmdevice/shear-force-sensor/ui/>
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/059766号
【文献】特開2017-156126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような3軸力覚センサーを用いた入力装置においては、操作者は、3軸力覚センサーの操作面に指で力を加え、力のうち操作面の面方向に働くせん断力の向き及び大きさに応じて電子機器を操作する。例えば、3軸力覚センサーで検出されたせん断力の大きさが閾値を超えたタイミングで音楽再生機の音量を上げるなどのイベントを発動させる。
しかし、3軸力覚センサーを用いたせん断力の検出値が温度や湿度の変化などによるドリフトを起こすことで、誤検出や入力できないなどの動作不良を生じることがある。例として、図10を使って説明する。図10の上段は、操作者が操作面にせん断力を加えたときのせん断力の時間推移を示している。図10の中段及び下段は、3軸力覚センサーで検出された検出値の時間推移を示している。3軸力覚センサーを用いた入力装置が正常に動作しているときは、図10の中段に示すように、設定された閾値を超えるせん断力が検出されるとイベント(上述の例では音量が上がる)が発動する。ところが、温度や湿度の変化でせん断力の検出値がドリフトを起こしてしまうと、図10の下段に示すように、より小さな力で閾値に達してイベントを発動させてしまうばかりでなく、押圧していなくても閾値に達してイベントを発動させてしまうという問題を生じる。
【0007】
したがって、本発明は、上記の課題を解決し、温度ドリフト又は湿度ドリフトよる動作不良を抑制することができる、3軸力覚センサーを用いた入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0009】
本発明の一見地に係る入力装置は、筐体と、3軸力覚センサーと、制御部とを備えている。
3軸力覚センサーは、筐体の表面に配置され、操作面を有している。また、3軸力覚センサーは、操作面に指や掌で加えられた力に応じて変化する抵抗値、静電容量値又は出力電荷に基づいて、力のうち操作面の面方向に働くせん断力の向き及び大きさと操作面に対して垂直な方向に働く押圧力の大きさとを検出するものである。
制御部は、3軸力覚センサーと電気的に接続されて筐体の内部に収納される。また、制御部は、3軸力覚センサーで検出されたせん断力と押圧力とに基づいてイベントを発動させる。より具体的には、制御部は、操作面の面内に割り当てられた複数の入力方向の各々について、せん断力の分力を計算する。さらに、制御部は、割り当て方向における分力及び押圧力について時間変化量を計算する。また、制御部は、割り当て方向における分力の1以上で時間変化量がそれぞれの閾値を超えたとき、そのときの押圧力の時間変化量の正負を基準にして閾値を超えた割り当て方向の中から選択された方向について、入力が行なわれたとしてイベントを発動させる。
【0010】
上記の入力装置において、閾値が正の値であってもよい。また、上記の入力装置において、閾値が負の値であってもよい。
【0011】
上記の入力装置において、閾値を超えた割り当て方向の中からの選択基準を、押圧力の時間変化量が正の場合のみとすることができる。また、上記の入力装置において、閾値を超えた割り当て方向の中からの選択基準を、押圧力の時間変化量が負のとき場合のみとしてもよい。また、上記の入力装置において、閾値を超えた割り当て方向の中からの選択基準を、押圧力の時間変化量が正、負のいずれの場合もとしてもよい。
【0012】
上記の入力装置において、割り当て方向における分力のうち複数で時間変化量がそれぞれの閾値を超えたとき、最初に閾値を超えた割り当て方向についてのみ、入力が行なわれたとしてイベントを発動させてもよい。
【0013】
上記の入力装置において、割り当て方向における分力の全てで時間変化量がそれぞれの閾値を超えず、押圧力のみで時間変化量がその閾値を超えたとき、押し込み方向について、入力が行なわれたとしてイベントを発動させてもよい。
【0014】
上記の入力装置において、各々の前記時間変化量が、微分値であってもよい。また、 上記の入力装置において、各々の前記時間変化量が、ハイパスフィルタをかけた値であってもよい。
【0015】
上記の入力装置において、3軸力覚センサーが、フレキシブルなフィルム型のセンサーであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の3軸力覚センサーを用いた入力装置によれば、制御部が、操作面の各割り当て方向におけるせん断力の分力の時間変化量の推移と閾値、押圧力の時間変化量の推移の正負に基づいてイベントを発動させるので、温度ドリフト又は湿度ドリフトよる動作不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置の一例であるコントローラーの模式図である。
図2】本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置の主要部分の構成図である。
図3】本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置の入力例である。
図4】本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置における、操作者が割り当て方向Dir1、割り当て方向Dir2に順次入力したときの各値の推移(閾値が正の値)を示す波形図である。
図5】本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置における、操作者が割り当て方向Dir1、割り当て方向Dir2に順次入力したときの各値の推移(閾値が負の値)を示す波形図である。
図6】本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置における、操作者が割り当て方向Dir1、割り当て方向Dir2、Z軸方向に順次入力したときの各値の推移(閾値が正の値)を示す波形図である。
図7】静電容量方式のフィルム型3軸力覚センサーの一構成例を示す模式図である。
図8】本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置の別の入力例である。
図9】本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置の別の例の模式図である。
図10】従来技術の入力装置におけるドリフトによる誤動作を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図面に基づき説明する。
(1)入力装置の全体構造
まず、本発明の一実施形態に係る入力装置1の全体構造について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置の一例であるコントローラーの模式図である。図2は、本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置の主要部分の構成図である。
【0019】
入力装置1は、筐体10と、3軸力覚センサー2と、制御部3、通信部4及び電池5を備えている。(図1及び図2参照)。
図1に示すように、3軸力覚センサー2は、筐体10の表面に配置され、操作面2Sを有している。3軸力覚センサー2は、操作面2Sに指11で加えられた力のうち、操作面2Sの面方向(図1の例ではXY軸方向)に働くせん断力の向き及び大きさと操作面2Sに対して垂直な方向(図1の例ではZ軸方向)に働く押圧力の大きさとを検出するものである。
制御部3は、筐体10の内部に収容され、図2に示すように3軸力覚センサー2と電気的に接続されている。制御部3は、3軸力覚センサー2を制御すると共に、3軸力覚センサー2で検出されたせん断力と押圧力とに基づいてイベントを発動させる。
通信部4は、筐体10の内部に収容され、図2に示すように制御部3に電気的に接続されて、図示しない外部電子デバイスと通信するように構成されている。
電池5は、筐体10の内部に収容され、図2に示すように制御部3に電力を供給している。
以下、上記した各構成の機能を、さらに詳細に説明する。
【0020】
(1)筐体
筐体10の材料としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。
【0021】
(2)3軸力覚センサー
3軸力覚センサー2の方式としては、一般に静電容量式、圧電式やひずみゲージ式などが知られている。また、3軸力覚センサー2としてより好ましいのは、フレキシブルなフィルム型のセンサーである。前述したように、フィルム型のセンサーは薄くて軽いので、筐体10の3軸力覚センサー2が配置される面が曲面であっても実装できる。
【0022】
以下、本実施形態の3軸力覚センサー2は、静電容量方式のフィルム型を例として説明する。図7は、静電容量方式のフィルム型3軸力覚センサーの原理を示す模式図である。
図7に示す3軸力覚センサー2は、下部電極部材27の下部電極26が下部支持体25の上面に形成された島状パターンからなり、上部電極部材24の上部電極23が上部支持体22の両面に別々に形成された表側上部電極231と裏側上部電極232の二層からなり(図7(a)参照)、かつ表側上部電極231と裏側上部電極232とが平面視において交差する複数本の線状パターンからなり(図7(b)参照)、下部電極26の島状パターンを、表側上部電極231の線状パターン及び裏側上部電極232の線状パターンと平面視においてそれぞれ一部で重なるように配置することができる。この場合、図7(a)に示すように、上部電極部材24の表側上部電極231を保護するために、上部電極部材24の弾性層21とは反対側の面に保護層28を設けるのが好ましい。
表側上部電極231と裏側上部電極232との交差する角度は、図11(b)に示す例では、表側上部電極231の線状パターンがX軸方向に伸びてY軸方向に並び、裏側上部電極232の線状パターンがY軸方向に伸びたX軸方向に並ぶように90°(すなわち直交)となっているが、これに限定されない。交差する角度が直交する場合、下部電極26のパターンは長方形状の碁盤目になり、交差する角度が直交しない場合、下部電極26のパターンは平行四辺形状の碁盤目になる。
【0023】
このような構成33軸力覚センサー2は、力を加えたときに電極間の距離が変動することによって発生する静電容量値の変化を利用して、加えられた力FXY(文字上部にベクトルを意味する矢印付),Fの値を算出する。
つまり、上部電極23が3軸力覚センサー2の表面に対して指11によって斜め下方向に力が加わると、弾性層21が変形し、その力の強度に応じて上部電極部材24の表側上部電極231及び裏側上部電極232が水平方向(XY軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)に移動し、島状パターンの下部電極26と表側上部電極231との間、島状パターンの下部電極26と裏側上部電極232との間の距離及び重なり面積が変化し、その結果として電極間の静電容量値がそれぞれ変化する。したがって、それぞれの静電容量値の変化を測定すれば、加えられた力FXY(文字上部にベクトルを意味する矢印付),Fの強度も測定できる。
【0024】
上部支持体22及び下部支持体25を構成する材料としては、アクリル、ウレタン、フッ素、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、オレフィン等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂シートのほか、シアノアクリレート等の紫外線硬化型樹脂シート等が挙げられるが、とくに限定されない。このような上部支持体22及び下部支持体25からなる3軸フィルム型力覚センサー2は、筐体10の形状に沿って配置できるので、例えば曲面などにも実装が可能である。
【0025】
表側上部電極231及び裏側上部電極232及び下部電極26は、導電性を有する材料により構成できる。導電性を有する材料としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等の金属膜のほか、これらの金属粒子や金属ナノファイバー、カーボンナノチューブなどの導電材料を樹脂バインダーに分散させた導電ペースト膜等が挙げられるが、特に限定されない。形成方法は、金属膜の場合は、メッキ法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等で導電膜を全面形成した後にエッチングによりパターニングする方法が挙げられ、導電ペースト膜の場合は、スクリーン、グラビア、オフセット等の印刷法で直接パターン形成する方法が挙げられる。
【0026】
弾性層21としては、例えば、シリコーン、フッ素、ウレタン、エポキシ、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブタジエンゴムなどの弾力性を有する合成樹脂シートや伸縮性のある不織布シートなどが挙げられる。とくにシリコーンゲル、シリコーンエラストマーなどのシリコーン樹脂系の弾性体シートは、低温から高温までの幅広い温度域で耐久性に優れ、かつ弾力性にも優れていうので、より好ましい。なお、弾性層21は押し出し成形などの一般的なシート成形法によりシート化されたものに限定されず、印刷やコーターなどによって形成されたコーティング層であってもよい。
【0027】
また、保護層28の材料は、第1実施形態の上部支持体22及び下部支持体25を構成する材料と同様のものを用いることができる。また、保護層28として意匠シートやレザー、ゴム、布などを貼り合わせることで、デザイン性を付与することもできる。
【0028】
(3)制御部
制御部3は、図示しないが、例えば、基板と、基板に搭載されたCPU、RAM、ROM、その他電子部品とを有する。また、制御部3は、CPU(CentralProcessingUnit)及びメモリからなるハードウェアとソフトウェアに基づいて、他の装置を制御するための装置である。
【0029】
制御部3は、前述したように、3軸力覚センサー2を制御すると共に、3軸力覚センサー2で検出されたせん断力と押圧力とに基づいてイベントを発動させる。より具体的な本発明の特徴とするところは、以下の通りである。
【0030】
先ず、制御部3は、3軸力覚センサー2の操作面2Sの面内に割り当てられた複数の入力方向の各々について、せん断力の分力を計算する。
せん断力の分力について、以降、一例として、3軸力覚センサー2の操作面2Sが平面で、平面視で上下左右の4方向に入力方向を割り当てた場合の例を用いて説明する(図3参照)。ここで、割り当て方向のうち上方向をDir1とし、時計回りにそれぞれDir2、Dir3、Dir4とする。つまり、本実施形態では、割り当て方向Dir1,Dir3がY軸方向と一致し、割り当て方向Dir2,Dir4がX軸方向と一致している。
図3(a)に示す例では、3軸力覚センサー2の操作面2S(保護層28を設ける場合にはその上面)には、これらの入力方向Dir1~4を示すテクスチャー12(図中の「>」で表されるくの字矢印)が付与されていて、操作者がテクスチャー12を指11で触ったり視認したりして、入力方向が分かりやすくなっている。
この操作面2SをXY平面として考え、4方向の単位ベクトルe~e(文字上部に右矢印付)と指11が入力するせん断力FXY(文字上部にベクトルを意味する矢印付)の内積から、せん断力FXY(文字上部にベクトルを意味する矢印付)の各割り当て方向の分力F~Fを計算できる(図3(b)参照)。
【0031】
さらに、制御部3は、押圧力F及びせん断力FXYの割り当て方向Dir1~Dir4における分力F~Fについて、時間変化量DF,時間変化量DF~DFを計算する。
図4は、本発明に係る3軸力覚センサーを用いた入力装置における、操作者が割り当て方向Dir1、割り当て方向Dir2に順次入力したときの各値の推移(閾値が正の値)を示す波形図である。すなわち、操作者が、操作面2Sに対して平面視で上に入力したあとに、引き続き、右に入力するという動作をしたときの押圧力F及びせん断力の各割り当て方向の分力F~Fの推移と、その時間変化量DF,時間変化量DF~DFの推移を示している。
ここで、力の時間変化量とは、微小時間あたりに加わる力の変化量である。つまり、力の微分値として表すことができる。
課題となっている温度ドリフトや湿度ドリフトはゆっくりとした検出値の変化(ズレ)なので、各々の時間変化量DF,時間変化量DF~DFでみるとズレは含まれない。したがって、3軸力覚センサー2で検出された値に仮に温度ドリフトや湿度ドリフトが生じていても、時間変化量DF,時間変化量DF~DFによれば指11による入力のみを検出できる。
【0032】
ところで、各割り当て方向の入力を検出する方法として、検出のタイミングにより2つの方法が挙げられる。すなわち、各方向に操作者が力の印加を始めた瞬間を検出する方法と、印加後に除荷する瞬間を検出する方法である。以後、前者と「印加検出」、後者を「除荷検出」と呼ぶことにする。
本実施形態においては、各割り当て方向の入力を検出する方法が印加検出の場合について図4を使って時系列で説明する。
図4中の波形の時間軸に対して水平な破線Th~Thは、各割り当て方向における分力F~Fの時間変化量DF~DFに対する閾値であり、正の値に設定されている。また、押圧力Fは、押し下げたときに正の値として検出される。
印加検出では、制御部3は、各割り当て方向における分力F~Fの1以上で時間変化量DF~DFがそれぞれの閾値Th~Thを超え、かつ、そのときの押圧力Fの時間変化量DFが正の値のときのみ、この閾値を超えた割り当て方向について入力が行なわれたとして、イベントを発動させる。なお、閾値Th~Thが正の値である場合、閾値Th~Thを超えるとは閾値Th~Thを上回る大きな値をとることを意味する。また、押圧力Fの時間変化量DFの正負を基準にして、閾値Th~Thを超えた割り当て方向の中から取捨選択を行なう(本実施形態では時間変化量DFが正の値であることが条件)のは、閾値を超えたというだけで操作者が意図しないイベント発動をさせないためである。
【0033】
図4に示す入力例では、先ず、操作者は、上方向(割り当て方向Dir1)に力を強めていき、せん断力の分力Fが増加していく(図中左側にある山の上り始め)。
そして、時刻t11でDir1における時間変化量DFがThを超える。さらに、ある程度の力を印加したら、操作者はそれ以上力を強めないため、時刻t12より後は時間変化量DFがTh以下の値となる。一方、上方向に力を強めていくとき、自然に操作面2Sを押し込む力も強まり、押圧力Fも増加していく。そして、先の時刻t11~t12の間で、時間変化量DFは正の値(押圧力が増える最中)である。したがって、本実施形態では、制御部3は、この時刻t11~t12の間で割り当て方向Dir1への印加途中の入力が検出されたと判断し、イベントを発動する。
その後、操作者が除荷する時刻t21~t22の間では、Dir1ではなくDir3における時間変化量DFがThを超えてしまう。しかし、この時刻t21~t22の間、時間変化量DFは負の値(押圧力が減る最中)である。したがって、制御部3は、この時刻t21~t22の間、Dir3へは印加途中の入力が検出されていないと判断し、イベントを発動しない。
【0034】
発動するイベントの内容は、例えば音楽プレーヤーの操作の場合であれば、音量の上げ下げや曲送り/巻戻しなどである。また、操作者への入力受付のフィードバックも含む。フィードバックとは、例えば、コントローラー全体や操作面2S上を振動させることで操作者に触感を与えたり、音を鳴らしたり、モニターなどのGUIに表示させたりすることである。
また、イベントが発動するタイミングは、時刻t11又は時刻t12に一度発動させるだけでもよいし、時刻t11~t12の間に何回か発動させるのでもよい。また、発動内容は、時刻t11~t12の時間変化量DFの積分値やピーク値の絶対値に応じて内容を変えてもよい。例えば、その値が大きい場合は音量を一度に大きく上げ下げし、小さい場合は小さく上げ下げする などである。
【0035】
図4に戻って、引き続き、操作者が右方向(割り当て方向Dir2)に入力する場合も、上方向(割り当て方向Dir1)に入力する場合と同様に検出する。
すなわち、操作者が右方向(割り当て方向Dir2)に力を強めていき、せん断力の分力Fが増加していく(図中右側にある山の上り始め)。
そして、時刻t31で時間変化量DFがThを超える。さらに、ある程度の力を印加したら、操作者はそれ以上力を強めないため、時刻t32より後は時間変化量DFがTh以下の値となる。一方、右方向に力を強めていくとき、自然に操作面2Sを押し込む力も強まり、押圧力Fも増加していく。そして、先の時刻t31~t32の間で、時間変化量DFは正の値(押圧力が増える最中)である。したがって、制御部3は、この時刻t31~t32の間で割り当て方向Dir2への入力が検出されたと判断し、イベントを発動する。
その後、操作者が除荷する時刻t41~t42の間では、Dir2ではなくDir4における時間変化量DFがThを超えてしまう。しかし、この時刻t41~t42の間、時間変化量DFは負の値(押圧力が減る最中)である。したがって、制御部3は、この時刻t41~t42の間、Dir4へは印加途中の入力が検出されていないと判断し、イベントを発動しない。
このとき発動するイベントの内容は、割り当て方向Dir1に入力する場合とは、別の内容となる。
【0036】
(4)通信部
通信部4は、WI-FI(登録商標)、BLUETOOTH(登録商標)、NFC、などの無線通信を介して外部電子デバイスと通信する。通信部4は、一方向又は双方向で通信することができる。なお、本実施形態の入力装置1であるコントローラーは、同時又は個々のいずれかで、複数の外部電子デバイスを制御することもできる。
通信する外部電子デバイスとしては、例えば、xRで使用するヘッドマウントディスプレイやスマートグラスのほか、スマートテレビ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、自動車のオーディオシステム、家庭用、仕事用、若しくは環境用自動制御装置、又は任意の他のそのようなデバイス若しくはシステムとすることができるが、これらに限定されない。
【0037】
(5)電池
電池5としては、リチウム電池などの再充電式電池を用いることができる。再充電式電池の場合、ユーザーはUSBを通じて、あるいは入力装置1を充電パッドの上に置くだけで、充電することができる。また、電池9として非充電式電池を用い、筐体10の内部より取り出し交換するようにしてもよい。
【0038】
上述のように、本実施形態に係る3軸力覚センサー2を用いた入力装置1は、操作面2Sの各割り当て方向Dir1~Dir4におけるせん断力の分力F~Fの時間変化量DF~DFの推移と正の値である閾値Th~Th、押圧力Fの時間変化量DFの推移の正負に基づいてイベントを発動させるので、温度ドリフト又は湿度ドリフトよる動作不良を抑制することができる。
【0039】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、第1実施形態と同じ図4に基づき説明する。
本実施形態の入力装置では、各割り当て方向の入力を検出する方法が除荷検出である点で第1実施形態と異なる。
すなわち、第1実施形態と同様にTh~Thが正の値に設定されているが、除荷検出では、閾値を超えた時刻の間で時間変化量DFが負の値(押圧力が減る最中)であることをイベント発動の条件とする。
【0040】
図4に示す入力例では、先ず、操作者は、上方向(割り当て方向Dir1)に力を強めていき、せん断力の分力Fが増加していく(図中左側にある山の上り始め)。
時刻t11~t12の間で、Dir1における時間変化量DFがThを超えるが、この時間の時間変化量DFは正の値(押圧力が増える最中)である。したがって、本実施形態においては、制御部3は、この時刻t11~t12の間で割り当て方向Dir1へは除荷途中の入力が検出されていないと判断し、イベントを発動しない。
その後の時刻t21~t22の間では、Dir1とは反対方向のDir3における時間変化量DFがThを超え、かつこの時間の時間変化量DFは負の値(押圧力が減る最中)である。したがって、本実施形態においては、制御部3は、この時刻t21~t22の間で割り当て方向Dir3への除荷途中の入力が検出されたと判断し、イベントを発動する。
【0041】
引き続き、図4に示す入力例では、操作者が右方向(割り当て方向Dir2)に力を強めていき、せん断力の分力Fが増加していく(図中右側にある山の上り始め)。
時刻t31~t32の間で、Dir2における時間変化量DFがThを超えるが、この時間の時間変化量DFは正の値(押圧力が増える最中)である。したがって、本実施形態においては、制御部3は、この時刻t31~t32の間で割り当て方向Dir2へは除荷途中の入力が検出されていないと判断し、イベントを発動しない。
その後の時刻t41~t42の間では、Dir2とは反対方向のDir4における時間変化量DFがThを超え、この時間の時間変化量DFは負の値(押圧力が減る最中)である。したがって、本実施形態においては、制御部3は、この時刻t41~t42の間で割り当て方向Dir4への除荷途中の入力が検出されたと判断し、イベントを発動する。
【0042】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態と同様に操作者が、操作面2Sに対して平面視で上方向(割り当て方向Dir1)に入力したあとに、引き続き、右方向(割り当て方向Dir2)に入力するという動作をしたにも関わらず、イベント発動は逆に割り当て方向Dir3,Dir4への入力として検出して行われている。しかし、操作者の操作面への動作が、最終的に操作者が意図するイベント発動の内容と1対1で対応していれば、このことに問題はない。
【0043】
なお、印加検出の場合には、操作者がゆっくりと力を印加すると、せん断力の各分力の時間変化量を表わす山は小さくなって、設定した閾値を超えにくくなる。すなわち、入力を検知できないこともある。そこで操作者は3軸力覚センサー2の操作面2Sに指11を操作面2Sの所定の場所への接近、操作面2Sとの接触、力の印加までを素早く行なう必要があるが、指11が非接触の状態からの一連の作業を素早く行なうことは操作者にとって負担が大きい。
これに対して、除荷検出の場合には、力を印加した後に操作面2Sから単に指11を素早く離す動作だけなので、操作者の負担は少ないというメリットがある。
【0044】
その他の点については、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0045】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を、図面に基づき説明する。
本実施形態の入力装置では、閾値Th~Thが負の値である点、各割り当て方向の入力を検出する方法が除荷検出である点の2点で第1実施形態と異なる(図5参照)。
図5中の波形の時間軸に対して水平な破線Th~Thは、各割り当て方向における分力F~Fの時間変化量DF~DFに対する閾値であり、負の値に設定されている。また、押圧力Fは、押し下げたときに正の値として検出される。
除荷検出では、制御部3は、各割り当て方向における分力F~Fの1以上で時間変化量DF~DFがそれぞれの閾値Th~Thを超え、かつ、そのときの押圧力Fの時間変化量DFが負の値のときのみ、この閾値を超えた割り当て方向について入力が行なわれたとして、イベントを発動させる。なお、閾値Th~Thが負の値である場合、閾値Th~Thを超えるとは閾値Th~Thを下回る小さな値をとることを意味する。
【0046】
図5に示す入力例では、先ず、操作者は、上方向(割り当て方向Dir1)に力を強めた後に弱めていく(図中左側の山の下がり始めまで)が、時刻t21より前には時間変化量DFがThを超えない。時刻t21になってはじめて時間変化量DFがThを超える。さらに、ある程度の力を除荷したら、操作者はそれ以上力を弱めないため、時刻t22より後は時間変化量DFがTh以上の値となる。一方、上方向に力を強めていくとき、自然に操作面2Sを押し込む力も強まり、押圧力Fも増加していく。そして、先の時刻t21~t22の間で、時間変化量DFは負の値(押圧力が減る最中)である。したがって、本実施形態においては、制御部3は、この時刻t21~t22の間で割り当て方向Dir1への除荷途中の入力が検出されたと判断し、イベントを発動する。
なお、操作者が印加する時刻t11~t12の間でも、時間変化量DFがThを超えてしまう。しかし、この時刻t11~t12の間、時間変化量DFは正の値(押圧力が増える最中)である。したがって、本実施形態においては、制御部3は、この時刻t11~t12の間では割り当て方向Dir3への除荷途中の入力が検出されていないと判断し、イベントを発動しない。
【0047】
上方向(割り当て方向Dir1)への入力に引き続き、操作者が右方向(割り当て方向Dir2)に入力する場合も、上方向(割り当て方向Dir1)に入力する場合と同様に検出する。
すなわち、図5に示すように、操作者が右方向(割り当て方向Dir2)に力を強めた後に弱めていく(図中右側の山の下がり始めまで)が、時刻t41より前には時間変化量DFがThを超えない。時刻t41になってはじめて時間変化量DFがThを超える。さらに、ある程度の力を除荷したら、操作者はそれ以上力を強めないため、時刻t42より後は時間変化量DFがTh以上の値となる。一方、右方向に力を強めていくとき、自然に操作面2Sを押し込む力も強まり、押圧力Fも増加していく。そして、先の時刻t41~t42の間で、時間変化量DFは負の値(押圧力が減る最中)である。したがって、本実施形態においては、制御部3は、この時刻t41~t42の間で割り当て方向Dir2への除荷途中の入力が検出されたと判断し、イベントを発動する。
なお、操作者が印加する時刻t31~t32の間でも、時間変化量DFがThを超えてしまう。しかし、この時刻t31~t32の間、時間変化量DFは正の値(押圧力が増える最中)である。したがって、本実施形態においては、制御部3は、この時刻t31~t32の間では割り当て方向Dir4への除荷途中の入力が検出されていないと判断し、イベントを発動しない。
【0048】
その他の点については、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0049】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態を、第3実施形態と同じ図5に基づき説明する。
本実施形態の入力装置では、各割り当て方向の入力を検出する方法が印加検出である点でのみ第3実施形態と異なる。
すなわち、第3実施形態と同様にTh~Thが負の値に設定されているが、この閾値を超えた時刻の間で時間変化量DFが正の値(押圧力が増える最中)であることをイベント発動の条件とする。
【0050】
したがって、本実施形態では、制御部3は、時刻t11~t12の間で割り当て方向Dir3への印加途中の入力が検出されたと判断し、イベントを発動する。また、制御部3は、その後の時刻t21~t22の間では割り当て方向Dir1への印加途中の入力が検出されていないと判断し、イベントを発動しない。
また、本実施形態では、制御部3は、時刻t31~t32の間では割り当て方向Dir4への印加途中の入力が検出されていると判断し、イベントを発動する。また、制御部3は、その後の時刻t41~t42の間では割り当て方向Dir2への印加途中の入力が検出されていないと判断し、イベントを発動しない。
【0051】
本実施形態でも、第2実施形態と同様に、操作者の入力動作と逆に割り当て方向Dir3,Dir4への入力として検出して行われている。しかし、前述したように、操作者の操作面への動作が、最終的に操作者が意図するイベント発動の内容と1対1で対応していれば、このことに問題はない。
【0052】
その他の点については、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0053】
[変化例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び下記変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0054】
(a)上記各実施形態では、時間変化量DF~DFが閾値を超えたとき、その時刻の間で時間変化量DFが正の値又は負の値であることをイベント発動の条件として説明しているが、本発明の入力装置1はこれに限定されない。例えば、押圧力の時間変化量DFが正、負いずれの場合にもイベントを発動してもよい。すなわち、印加検出と除荷検出との併用である。
印加検出と除荷検出とを併用する場合、例えば、印加と除荷の両タイミングで操作者に振動を与えて、実際にボタン等のモノに触れているような感触をフィードバックすること(いわゆるhapticsと呼ばれる技術)をイベントとして発動させることで、コントローラーの操作感が良くなる。また、印加と除荷の両タイミングで検出することで、一方のタイミングで検出ができなくても他方のタイミングで検出できるので、確実に入力できるというメリットもある。
【0055】
(b)上記各実施形態では、図4及び図5に示すように、時系列中の4つのタイミング(時刻t11~t12、時刻t21~t22、時刻t31~t32、時刻t41~t42)において、割り当て方向Dir1~Dir4における分力F~Fのうち一つのみで時間変化量DF~DFがそれぞれの閾値Th~Thを超えているが、本発明の入力装置1はこれに限定されない。例えば、分力F~Fの間で、閾値Th~Thを超えるタイミングが重なっていてもよい(図示せず)。
このように分力F~Fのうち複数で時間変化量DF~DFが時間的に重複してそれぞれの閾値Th~Thを超えたときには、最初に閾値を超えた割り当て方向についてのみ、入力が行なわれたとしてイベントを発動させるとよい。
また、分力F~Fのうち複数で時間変化量DF~DFが時間的に重複してそれぞれの閾値Th~Thを超えたとき、閾値を超えた全ての割り当て方向について、入力が行なわれたとしてイベントを発動させてもよい。
【0056】
(c)上記各実施形態では、割り当て方向Dir1~Dir4における分力F~Fで時間変化量DF~DFがそれぞれの閾値Th~Thを超えたときにしか、イベントを発動させていないが、本発明の入力装置1はこれに限定されない。例えば、せん断力分力F~Fの全てで時間変化量DF~DFがそれぞれの閾値Th~Thを超えず、押圧力Fのみで時間変化量DFがその閾値Thを超えたとき、押し込み方向に(XY平面であればZ方向)ついて、入力が行なわれたとしてイベントを発動させてもよい。
図6は、その様子を説明した図であり、図4との違いは、Z方向の押し込み入力を加えたと点、押圧力の時間変化量DFに対する閾値Thを設けた点である。せん断力の時間変化量DF~DFがそれぞれの閾値Th~Thを超えていないときに、押圧力の時間変化量DFがその閾値Thを超えていれば、Z方向の押し込み入力も検出したとして、イベントを発動する。図6の時刻t51~t52がその検出している期間である。
【0057】
(d)上記各実施形態では、せん断力FXY(文字上部にベクトルを意味する矢印付)の分力について、3軸力覚センサー2の操作面2S(XY平面)に対して平面視で上下左右の4方向に入力方向を割り当てた場合を説明したが(図3参照)、本発明の入力装置1はこれに限定されず、任意の方向に入力方向を割り当てることができる。例えば、図8に示すように扇の骨状に広がる5方向に入力方向を割り当てもよい。
図8に示す例では、割り当て方向のうち左端の方向をDir1とし、時計回りにそれぞれDir2、Dir3、Dir4、Dir5とする。つまり、図8に示す例では、割り当て方向Dir1~2、Dir4~5の単位ベクトルe~e、e~e5(字上部に右矢印付)はX軸方向、Y軸方向のいずれの成分も含む。割り当て方向Dir3の単位ベクトルeはY軸方向に一致している。
この場合、5方向の単位ベクトルe~e5(文字上部に右矢印付)と指11が入力するせん断力FXY(文字上部にベクトルを意味する矢印付)の内積から、せん断力FXY(文字上部にベクトルを意味する矢印付)の各割り当て方向の分力F~F5を計算する(図8参照)。
図8に示すような入力方向を割り当てだと、片手の5本の指11を同時に使って入力が可能である。
また、本発明の入力装置1における入力方向を割り当て数は、3以下又は6以上でもよい。
【0058】
(e)上記各実施形態では、各々の時間変化量DF~DF、DFをせん断力の分力F~F5、押圧力Fの微分値として説明したが、本発明の入力装置1はこれに限定されない。例えば、時間変化量DF~DF、DFをせん断力の分力F~F5、押圧力Fに対してハイパスフィルタをかけた値としてもよい。
【0059】
(f)上記各実施形態では、3軸力覚センサー2の操作面2Sを平面で説明したが、本発明の入力装置1は3軸力覚センサー2の操作面2Sが曲面であってもよい。
例えば、円柱状や筒状の筐体10の外周面にフィルム型の3軸力覚センサー2を巻き付けてもよい(図9参照)。
【0060】
(g)上記各実施形態では、3軸力覚センサー2を静電容量方式のフィルム型を例として説明したが、本発明の入力装置1はこれに限定されない。例えば、3軸力覚センサー2の方式として、出力電荷の変化に基づく圧電式や抵抗値の変化に基づくひずみゲージ式など公知の方式を用いることができる。また、同じ静電容量方式であっても、図7に示した構成や検出原理と異なっていてもよい。さらには、3軸力覚センサー2がフレキシブルなフィルム型でなくてもよい。
【0061】
(h)上記各実施形態では、3軸力覚センサー2に指11によって入力すると説明したが、本発明の入力装置1はこれに限定されない。例えば、上記(f)で示した円柱状の筐体10の外周面にフィルム型の3軸力覚センサー2を巻き付けた場合、筐体10を握りながら掌で入力してもよい。
【0062】
(i)上記各実施形態では、入力装置1が外部電子デバイスを通信で操作するコントローラーである例について説明しているが、本発明の入力装置1はこのようなコントローラーに限定されない。例えば、入力装置1が、前述のxRで使用するヘッドマウントディスプレイやスマートグラスのほか、スマートテレビ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、自動車のオーディオシステム、家庭用、仕事用、若しくは環境用自動制御装置、又は任意の他のそのようなデバイスと一体であってもよい。この場合、通信部4は不要である。また、電池5を省略してもよい。さらにLCD等の表示装置やマイク、スピーカー等を備えていてもよい。
また、入力装置1は、外部電子デバイスをUSBケーブル等の有線で操作するコントローラーであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 入力装置(コントローラー)
2 3軸力覚センサー
2S 操作面
21 弾性層
22 上部支持体
231 表側上部電極
232 裏側上部電極
24 上部電極部材
25 下部支持体
26 下部電極
27 下部電極部材
28 保護層
3 制御部
4 通信部
5 電池
10 筐体
11 指
12 テクスチャー
【要約】
【課題】 温度ドリフト又は湿度ドリフトよる動作不良を抑制することができる、3軸力覚センサーを用いた入力装置を提供する
【解決手段】 本発明に係る入力装置は、筐体、3軸力覚センサー、制御部を備える。3軸力覚センサーは、筐体の表面に配置され、操作面に指や掌で加えられたせん断力及び押圧力を検出する。制御部は、操作面の面内に割り当てられた複数の入力方向の各々についてせん断力の分力F~Fを計算する。さらに制御部は、せん断力の分力F~F及び押圧力Fについて時間変化量を計算する。そして、制御部は、例えば、分力Fで時間変化量DFがその閾値Thを超えたとき、その時刻t11~t12の押圧力Fの時間変化量DFが正の値であるという基準を満たしているので、この分力Fの割り当てられた方向について、入力が行なわれたとしてイベントを発動させる。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10