(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】超音波脱脂コート
(51)【国際特許分類】
B08B 3/12 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B08B3/12 A
(21)【出願番号】P 2023073073
(22)【出願日】2023-04-27
(62)【分割の表示】P 2021522052の分割
【原出願日】2019-11-05
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/058711
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・リシェ
(72)【発明者】
【氏名】フロラン・スポネム
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511754(JP,A)
【文献】米国特許第04537511(US,A)
【文献】特開2001-170583(JP,A)
【文献】特開平05-137190(JP,A)
【文献】特表2002-541495(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0063145(KR,A)
【文献】米国特許第04193842(US,A)
【文献】特開2008-029991(JP,A)
【文献】中国実用新案第202006189(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動するストリップ(S)の連続洗浄のための機器(1)
の超音波放射手段(5)を交換するための方法であって、
前記機器は、
水溶液(3)を含むタンク(2)と、
前記ストリップを前記タンク(2)に誘導するための少なくとも1つのローラ(4)と、
プッシュプルトランスデューサである少なくとも1つの超音波放射手段(5)と、
前記タンク(2)内部に前記水溶液(3)を供給するための手段(6)と、
タンク(2)を空にするための手段(7)と、
前記タンク(2)内の水溶液レベルを推定するための手段(8)と、
各超音波放射手段(5)について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を計算するための手段(9)と、
少なくとも1つの超音波放射手段(5)の出力を制御するための手段(10)と、
少なくとも1つの超音波放射手段(5)が
交換中に挿入され得る、少なくとも前記タンク(2)の側方にある少なくとも1つの
洗浄中に閉鎖される開口部(11)と、
前記少なくとも1つの超音波放射手段(5)の出力を制御するための手段(10)と、少なくとも1つの超音波放射手段(5)とを接続するワイヤ(W)と、を備え
、
方法は、
前記タンク(2)内の水溶液レベルを推定するための前記手段(8)、前記計算するための手段(9)、および、前記タンクを空にするための前記手段(7)を使用して、少なくとも、決定されている値に等しい距離まで、交換される超音波放射手段(5)の開口部(11)のレベルよりも低く、水溶液レベルを下げる工程と、
開口部(11)を通じて、前記交換される超音波放射手段(5)を除去する工程と、
開口部(11)を通じて別の超音波放射手段(5)を設置する工程と、を備える方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの超音波放射手段(5)は、水溶液(3)に浸漬される、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの超音波放射手段(5)は、少なくとも1つの圧電変換器(160)によって振動する共振器ロッド(15)である、請求項1または2のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項4】
前記共振器ロッド(15)の長さがストリップ幅に平行である、請求項3に記載の
方法。
【請求項5】
前記共振器ロッド(15)およびストリップ(S)は、40mmと250mmとの間に含まれる距離だけ離間される、請求項3または4のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項6】
前記少なくと
も開口部(11)は、タンク(2)から分離可能であり、超音波放射手段(5)に取り付けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項7】
前記ストリップ(S)が2つの対向する表面を有し、前記機器が、前記表面の各々に面する少なくとも1つの超音波放射手段を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項8】
前記機器は、5ワット/リットル~25ワット/リットルの出力容量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載
の方法であって、前記ストリップは金属ストリップである、方法。
【請求項10】
前記水溶液は、10グラム/リットル~40グラム/リットルのアルカリ生成物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液が30℃~80℃の温度に維持される、請求項9または10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波放射手段を用いてタンク内のストリップを連続的に洗浄するための機器に関する。本発明は、前記洗浄タンクの全体的な管理を容易にする。
【背景技術】
【0002】
冶金分野では、表面品質の高いストリップを製造することが非常に重要である。圧延工程において、鉄、金属粒子、塵芥およびグリースが金属ストリップに付着する。そのような付着物は、コーティングの下に閉じ込められ、したがって表面が滑らかにならないため、コーティング後のストリップ表面品質の低下を引き起こす。このような欠点を回避するために、コーティング工程の前にストリップが洗浄される。一般的に、それは圧延動作の後で、かつ焼きなましまたはコーティングの前に発生する。そのために、ほとんどの洗浄ラインは、洗浄動作の中で電解プロセスを使用する。しかしながら、H2が蓄積し、結果として火災などの安全上の問題が発生することに起因して、このような手法は、安全上の高いリスクを呈する。その結果、超音波を使用した洗浄ラインが電解プロセスに代わるものとして開発された。当然、特に超音波放射手段の管理に関して、新たな問題が生じている。通常、振動電気エネルギーを機械的エネルギーに変換するトランスデューサが使用され、超音波が生じる。これらの新たな問題にもかかわらず、そのようなラインは、より安全で、生じる副産物が少なく、出力消費量が少なく、したがってより環境に優しいため、興味深いものである。
【0003】
超音波洗浄は、水溶液を介した超音波(またはより一般的には音波)の伝播によって機能し、この伝播は水溶液の圧力の局所的な変動を引き起こす。負圧が十分に低い(水溶液の蒸気圧よりも低い)とき、水溶液の凝集力が崩壊し、気泡(キャビテーション気泡とも呼ばれる)が形成される。次に、これらの気泡は(音波の伝播に起因して)圧力変動下に置かれ、崩壊するまで連続的に膨張および収縮する。超音波は熱効果を誘発するが、キャビテーションに起因する機械的効果も誘発する。実際、キャビテーション気泡が崩壊すると、2つの現象、すなわち、
気泡内に存在するガスの激しい圧縮による衝撃波、
マイクロジェットが発生し、固体表面の近傍で気泡の爆縮が非対称になり、結果として生じる衝撃波が、固体表面に向けられる水溶液マイクロジェットを生成する。固体表面へのマイクロジェットの影響はエネルギーが豊富であり、この機械的効果は、冷間圧延後のストリップ表面の洗浄のための亜鉛メッキに使用されることができる。
【0004】
韓国公開特許第2005-0063155号公報は、鋼板を洗浄する装置を開示している。前記鋼板は、通過するシートの両側に配置されたボックス内に超音波放射手段が配置されている、アルカリ性溶液で満たされたタンクに通される。
【0005】
しかしながら、上記の方法およびその機器を使用することにより、2つの大きな欠点が生じる。第一に、超音波がハウジング壁を通過するときに、ハウジング内に配置された超音波放射手段によって放射される超音波の強度が低下される。第二に、超音波放射手段を含むボックスの交換には、いくつかの部品の取り外し、足場の使用が必要であり、安全上の懸念も生じるため、メンテナンスに時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第2005-0063155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述の問題を解決する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の機器を提供することによって達成される。この方法はまた、請求項2~8の任意の特性を具備することもできる。この目的はまた、請求項9~12に記載の方法を提供することによって達成される。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
本発明を説明するために、特に添付の図を参照して、非限定的な例の様々な実施形態および試行が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】超音波放射手段を有するタンクの一実施形態の側面図である。
【
図1B】超音波放射手段を有するタンクの一実施形態の正面図である。
【
図2A】超音波放射手段を有するタンクの第2の実施形態の側面図である。
【
図2B】超音波放射手段を有するタンクの第2の実施形態の正面図である。
【
図3A】超音波放射手段の2つの実施形態の内の1つを示す図である。
【
図3B】超音波放射手段の2つの実施形態の内の1つを示す図である。
【
図4A】支持手段の2つの実施形態の内の1つを示す図である。
【
図4B】支持手段の2つの実施形態の内の1つを示す図である。
【
図5】超音波放射手段の好ましい構成および関連する波を示す図である。
【
図6】超音波放射手段のタイプが洗浄効率に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、移動するストリップSの連続洗浄のための機器1であって、
水溶液3を含むタンク2と、
前記ストリップを前記タンク2に誘導するための少なくとも1つのローラ4と、
少なくとも1つの超音波放射手段5と、
前記タンク2内に水溶液3を供給するための手段6と、
タンク2を空にするための手段7と、
前記タンク2内の水溶液レベルを推定するための手段8と、
各超音波放射手段5について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を計算するための手段9と、
少なくとも1つの超音波放射手段5の出力を制御するための手段10と、
少なくとも1つの超音波放射手段5が導入されることができる、少なくとも前記タンク2の側方にある少なくとも1つの閉鎖可能な不浸透性開口部11と、
前記少なくとも1つの超音波放射手段5の出力を制御するための10と、少なくとも1つの超音波放射手段5とを接続するワイヤWと、を備える機器に関する。
【0013】
図1Aは連続洗浄設備の側面図であり、
図1Bは正面図である。
図1Aおよび
図1Bに示されるように、移動するストリップSの連続洗浄設備1は、タンク2、前記タンク内の水溶液3を備える。洗浄設備はまた、前記水溶液3に浸漬された少なくとも1つのローラ4と、少なくとも1つの超音波放射手段5と、水溶液を供給するための手段6と、タンクを空にするための手段7とを備える。さらに、洗浄設備はまた、水溶液レベルを推定するための手段8と、各超音波放射手段について、水溶液レベルおよび手段までの超音波放射手段の距離を計算するための手段9と、少なくとも1つの超音波放射手段5の出力を制御するための手段10と、少なくとも1つの超音波放射手段が導入されることができる、少なくとも前記タンクの側方にある少なくとも1つの閉鎖可能な不浸透性開口部11とを備え、前記出力を制御するための手段と、少なくとも1つの超音波放射手段とは、少なくとも1つの閉鎖可能開口部を通じてワイヤWによって接続される。
【0014】
図1Aに示されるように、供給手段6は、優先的にはタンクの上側部分内またはタンクの頂部に配置され、タンクのより良好な充填を可能にし、そのため、洗浄時間およびストリップが水溶液に通される距離が増大される。空にする手段7は、タンクを可能な限り空にするために、タンクの下側部分内に、優先的にはその底部に配置され、そのような手段は、放出、リサイクルまたは再生プロセスに接続されたパイプおよびバルブとすることができる。
【0015】
少なくとも1つのローラ4は、優先的にはタンクの底部にあるが、空にする手段7の上にあり、そのような構成は、ストリップSによって水溶液3を通って移動される距離および洗浄時間を増大させ、したがって洗浄を改善する。
【0016】
水溶液3は、パイプおよびバルブなどの供給手段6によってタンクに導入され、優先的には、溶液で満たされた別のタンク(図示せず)に接続される。
【0017】
図1Aに示されるように、洗浄設備1は、好ましくは、前記タンク2の上に配置された少なくとも2つの外部ローラ12を備え、少なくとも1つはタンクの各側に、例えば、1つは超音波洗浄設備の上流側13に、もう1つは下流側14にある。ローラ12および4は、優先的には同じ向きを有し、例えば、それらの回転軸は平行である。ローラの位置決めは、好ましくは、ストリップSがねじれることなく水溶液3を通過することを可能にするべきである。
【0018】
水溶液レベルを推定するための手段8は、差圧捕捉器または静水圧法で使用される任意の手段とすることができる。水溶液レベルを推定するための手段8はまた、いくつかの水溶液レベルインジケータから構成されることができ、水溶液レベルインジケータは、水溶液の存否を示す槽高さに沿って配置され、2つのインジケータ間の水溶液レベルを推定することを可能にする。このようなレベルインジケータは、振動するレベルスイッチとすることができる。
【0019】
少なくとも1つの超音波放射手段5は、好ましくは供給手段6の下で、好ましくはローラ4の上で、前記タンク2の内部に配置される。
【0020】
従来技術では、タンクから超音波放射手段を容易かつ迅速に取り外すことは不可能であると考えられる。本発明による機器は、いくつかの理由で、超音波放射手段のより迅速かつ容易な取り外しを可能にする。第一に、足場が不要であり、交換時間が短縮し、作業者にとってより安全になる。第二に、タンクは完全に空ではないが、槽レベルは交換される超音波放射手段の下に設定されるため、動作後の充填時間がより短くなる。
【0021】
図2Aおよび
図2Bは、ストリップSが主に垂直方向に通される、
図1Aおよび
図1Bと比較されると、ストリップSが主に水溶液を通して水平に移動される、連続洗浄設備の第2の好ましい実施形態の側面図および上面図を示している。
【0022】
好ましくは、前記少なくとも1つの超音波放射手段5は、水溶液3に浸漬される。これは洗浄の効率を高めることを可能にする。
【0023】
好ましくは、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、前記少なくとも1つの超音波放射手段は、少なくとも1つの圧電変換器160によって振動する共振器ロッド15である。そのような超音波放射手段は、プッシュプルトランスデューサ5’とすることができる。そのような超音波放射手段は、超音波の全方向性放射を可能にする。その結果、超音波放射手段を含むボックスと比較されると、洗浄効率が向上する。
図3Aに示されるように、それらの超音波放射手段、すなわちプッシュプルトランスデューサは、一般に、少なくとも1つの圧電変換器160を一般に含む2つの超音波駆動ヘッド16によって囲まれる中央共振器ロッド15を有する。前記駆動ヘッドは、一般に、いくつかの圧電変換器を含む。さらにより好ましくは、それらは25kHzの周波数において動作し、2kWを生成する。しかしながら、超音波放射手段5’’はまた、
図3Bに示されるように、1つの駆動ヘッド16’、および、先のとがった端部17を有する共振器ロッドのみから構成されることができる。
【0024】
浸漬可能なボックスを備えたものと比較されると、プッシュプルトランスデューサなどのトランスデューサを備えた洗浄タンクの効率が改善されていることを実証するために、いくつかのテストが行われた。これらのテストでは、ストリップサンプルの清浄度が洗浄工程の前後に測定されている。これらの実験では、ストリップが、65°Cにある10gL-1のNaOHを有する洗浄槽と、2kWの出力を有する2つのプッシュプル圧電変換器のセットまたは2kWの出力を有する浸漬可能なボックスとを含むボックスに24秒間浸漬される。ストリップ部分は、水溶液を介した変位に起因して実験時間の4分の1の間だけ、超音波放射手段に向き合うため、上記実験条件における24秒の浸漬時間は、約6秒の直接暴露時間に対応すると想定される。
【0025】
以下の表に示すように、洗浄効率は、「洗浄工程前の推定清浄度」を「洗浄工程後の推定清浄度」で除算した値である。清浄度を推定するために、3M 595 Scoth(TM)接着剤が、鉄の微粉および油を接着剤に付着させるために、ストリップ表面に押し付けられる。次に、scotchの反射率が反射率計によって測定される。この反射率は、1平方メートルあたりの鉄の微粉の密度に関連している。接着剤に付着された鉄の微粉が多いほど、その反射率は低くなる。したがって、接着剤の反射率が高いほど、ストリップは清浄になる。以下の表は、実験の主なパラメータを含む。
図6において、様々なストリップ速度について、プッシュプルチューブと浸漬可能なボックスの両方のタイプの超音波放射手段の洗浄効率がプロットされている。
【0026】
【0027】
好ましくは、
図4Aに示されるように、駆動ヘッド16は、タンク2の対向する両側に配置された支持部品18によって支持され、前記支持部品は、共振器ロッド15、駆動ヘッド16、閉鎖可能不浸透性開口部11および支持部品18が位置整合されるように位置決めされる。前記支持部品18は、
図4Aに示されるように、「U」字形状として形成することができ、駆動ヘッド16は、「U」字形状部品の水平部分に設置され、良好な垂直方向の位置付けを保証し、「U」字形部品の2つの垂直部分が駆動ヘッド16を取り囲み、駆動ヘッド16の良好な水平方向の位置付けを保証する。
図4Bに示されるように、支持部品18’はまた、駆動ヘッド16が位置決めされる平坦な水平部分181を取り囲む管状部分180から作製されることができる。このような構成は、超音波放射手段5’の適切な位置決めを容易にする。超音波放射手段を精密に位置決めするために、
図4Bに示されるように、少なくとも1つのストッパ19が、支持手段上でタンク壁と、例えば駆動ヘッドなどの超音波放射手段の先端との間に配置される。
【0028】
好ましくは、
図1に見られるように、前記共振器ロッド15は、その長さがストリップ幅20に平行である。さらにより優先的には、ロッドは、ストリップ幅全体をカバーするようにストリップ幅20と平行に位置決めされる。そのような配置は、ストリップ幅に沿って洗浄効率および洗浄均一性を改善するはずである。タンクが、ストリップ幅よりも短い共振器ロッド長さを有する少なくとも2つの共振器ロッドを備える場合、共振器ロッドは、ストリップ幅全体をカバーするためにシフトされる。
【0029】
好ましくは、
図5に示されるように、タンク2は、例えば、プッシュプルトランスデューサ19など、少なくとも2つの同様の管状圧電超音波放射手段を含み、これらはストリップの同じ側にあり、プッシュプルトランスデューサによって生成される波長の(0.5)倍に対応する距離だけ互いにシフトされている。超音波放射手段の数がmに等しい場合、それらの各々は、隣接する手段に向かって波長の(1/m)倍の同様の距離だけさらにシフトされることができる。
【0030】
例えば、25kHzの周波数で動作する6つの超音波放射器が水に相当する環境において使用される場合、多数の要因(例えば、温度および圧力)に依存する波の速度は約1500m・s-1である。波長は波の速度を波の周波数で除算した値に等しく、そのため、この場合、1500/25000=0.06であり、波長は約6cmである。超音波放射手段が6cmの波長の超音波を発生する場合、それらは互いに横方向に(1/6)x6=1cmずつシフトされる必要がある。
【0031】
図5に見られるように、そのような構成は、2つのノード21がストリップの移動方向に位置合わせされることを妨げる。このようなシフトにより、ストリップの全ての点が少なくとも1つの超音波にさらされることが保証されるため、洗浄の均一性を向上させることが可能になる。
【0032】
好ましくは、前記共振器ロッド15およびストリップSは、40mmと250mmとの間に含まれる距離だけ離間される。そのような離間は、超音波放射手段を効率的に使用することを可能にする。間隔が40mm未満である場合、例えばストリップSの曲がりまたはストリップの平坦度の不規則性に起因して超音波放射手段が最終的にストリップによって破壊されるため、そのような離間距離は、設備1を改善する。しかし、間隔が200mmより大きい場合、超音波放射手段の洗浄出力の効率は大幅に減少されると考えられる。
【0033】
好ましくは、前記少なくとも閉鎖可能な開口部11は、タンク2から分離可能であり、超音波放射手段5に取り付けられている。そのような構成は、超音波放射手段の取り外しを容易にする。
【0034】
好ましくは、洗浄されるストリップSは、2つの対向する表面を有し、本発明による機器は、好ましくは、前記表面の各々に面する少なくとも1つの超音波放射手段5を備える。ストリップの片側に配置されている超音波放射手段が両面を洗浄するが、超音波放射手段を各表面に面するようにすると洗浄品質が向上する。
【0035】
その結果、
図1Aおよび
図1Bに表されるものと同様の設備では、少なくとも1つの超音波放射手段5がタンク壁とストリップSとの間に位置決めされ、少なくとも1つの超音波放射手段が、ストリップの下降する部分と、ストリップの上昇する部分との間に位置決めされる。
【0036】
その結果、
図2Aおよび
図2Bに示されているものと同様の設置では、少なくとも1つの超音波放射デバイスがストリップの上に配置され、少なくとも1つの他のデバイスがストリップの下に配置される。好ましくは、少なくとも3つの超音波デバイスが使用される場合、
図2Aに示されるように、少なくとも1つがストリップの上に位置決めされ、少なくとも1つがストリップの下に位置決めされ、ストリップの上および下に位置決めされたものが2つの列R1およびR2を形成する。
【0037】
好ましくは、前記機器は、5ワット/リットル~25ワット/リットルの出力密度を有する。さらにより優先的には、1リットルあたりの出力は10~20W・L-1である。この範囲内の出力密度を使用することは、十分な洗浄とエネルギー節約との間の最良の妥協点であると考えられ、ストリップの適切で十分な洗浄を可能にし、エネルギーの浪費を回避する。
【0038】
本発明による機器は、それと互換性のある任意のストリップを洗浄するために使用されることができる。好ましくは、前記ストリップは金属ストリップである。より好ましくは、前記金属ストリップは鋼ストリップである。
【0039】
本発明はまた、本発明による機器を使用して、移動するストリップSを連続的に洗浄するための方法に関し、前記ストリップは金属ストリップである。
【0040】
好ましくは、前記水溶液は、10グラム/リットル~40グラム/リットルのアルカリ生成物を含む。明らかに、この範囲内のアルカリ生成物濃度は、洗浄を改善し、アルカリ生成物を効率的に使用する。酸性または中性溶液などの他の溶液が使用されてもよく、溶液の選択は、基質および汚染物質によって異なる。
【0041】
好ましくは、前記水溶液は、30℃~80℃の温度に維持される。明らかに、洗浄液の温度が高いほど、工程の洗浄効率は高くなるが、超音波放射手段の寿命は短くなる。この範囲は、洗浄効率と超音波放射手段の寿命との間の最良の妥協点と考えられる。
【0042】
本発明はまた、本発明による機器の超音波放射手段5を交換するための方法であって、
前記タンク2内の水溶液レベルを推定するための前記手段8、前記計算するための手段9および、前記タンクを空にするための前記手段7を使用して、水溶液レベルを、交換される超音波放射手段5の閉鎖可能な不浸透性開口部11のレベルよりも低く、決定されている値に等しい距離まで少なくとも下げる工程と、
閉鎖可能不浸透性開口部11を通じて、前記交換される超音波放射手段5を除去する工程と、
閉鎖可能な不浸透性開口部11を通して別の超音波放射手段5を設置する工程とを含む、方法に関する。
【0043】
工程管理システムは、閉鎖可能な不浸透性開口部11について、水溶液レベルまでの距離を推定する。この推定は、閉鎖可能な不浸透性開口部の位置、すなわち、開口部が位置決めされる高さおよび、水溶液レベルを推定するための手段8による水溶液レベルの推定に基づいて、計算するための手段9によって行われる。計算するための手段9は、閉鎖可能な不浸透性開口部の位置と水溶液の推定レベルとの間の距離を計算する。
【0044】
閉鎖可能な開口部が開かれると、溶液3が槽2から流出するのを妨げるため、安全上の理由から、水溶液レベルは、取り外される超音波放射手段の閉鎖可能な不浸透性開口部より下に設定されるべきである。結果として、決定されている値は、交換される超音波放射手段の閉鎖可能な不浸透性開口部と、前記超音波放射手段を安全に交換するために必要な水溶液レベルとの間の最小距離を画定する。
【0045】
水溶液レベルを推定するための手段が、振動レベルスイッチなどの少なくともいくつかの水溶液インジケータから構成される場合、水溶液レベルインジケータは、優先的には、所定の距離をおいて各閉鎖可能な不浸透性開口部11の下に配置される。
【0046】
従来技術による機器を使用する場合、超音波放射手段を交換する手順は以下の通りである。
ラインが停止される。
槽が完全に空にされる。
浸漬ローラが取り外される。
タンクの雰囲気が分析される。
タンク壁が洗浄される。
足場が取り付けられる。
超音波放射手段が取り外される。
超音波放射手段の出力を制御するための手段と超音波放射手段とを接続するワイヤが、超音波放射手段から外される。
超音波放射手段の出力を制御するための手段と超音波放射手段とを接続するワイヤが、新しい超音波放射手段に接続される。
新しい超音波放射手段が取り付けられる。
足場が取り外される。
浸漬ローラが取り付けられる。
槽が充填される。
ラインが再起動される。
【0047】
一方、本発明による機器が使用される場合、手順ははるかに短く、より単純である。
ラインが停止される。
槽レベルが、交換される超音波放射手段の下に設定される。
超音波放射手段が、壁の閉鎖可能開口部から取り外される。
超音波放射手段の出力を制御するための手段と超音波放射手段とを接続するワイヤが、超音波放射手段から外される。
超音波放射手段の出力を制御するための手段と超音波放射手段とを接続するワイヤが、新しい超音波放射手段に接続される。
新しい超音波放射手段が壁を通じて取り付けられる。
槽が充填される。
ラインが再起動される。
【0048】
観察されることができるように、本発明では足場が使用されず、そのため、交換期間は、9時間ではなく1時間かかることとなり、8時間短縮される。
【0049】
本発明は、超音波放射手段を備える水溶液で満たされたタンクを通過することによってストリップが洗浄されるすべての工程に適用可能である。
【0050】
本発明は、現在実用的であると同時に好ましいと思われる実施形態に関して上で説明されてきた。しかしながら、本発明は、本明細書に開示された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲および本明細書全体から読み取られることができる本発明の要旨または思想から逸脱しない範囲内で適切に変更されることができ、そのような変更を加えた熱間圧延鋼板の製造方法および熱間圧延鋼板の製造装置も、本発明の技術的範囲に含まれることを理解されたい。