(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】圧電超音波モータの駆動回路、光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H02N 2/06 20060101AFI20240909BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240909BHJP
【FI】
H02N2/06
G02B7/04 E
(21)【出願番号】P 2023086069
(22)【出願日】2023-05-25
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202210683601.1
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】316006783
【氏名又は名称】新思考電機有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-305884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0289381(US,A1)
【文献】国際公開第2015/125359(WO,A1)
【文献】特開2008-060879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/06
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極と共通電極とを有する圧電素子を有する圧電超音波モータの駆動回路であって、
電源と接地との間に並列接続された第1駆動部及び第2駆動部を有し、
前記第1駆動部及び前記第2駆動部は、前記電源と前記接地との間に直列接続された2つのスイッチング素子と、直列接続されたインダクタ及びキャパシタと、をそれぞれ有し、
前記インダクタ及び前記キャパシタは、前段に前記インダクタが配置され後段に前記キャパシタが配置され、前記2つのスイッチング素子の間の接続点と前記接地との間に、後段に配置された方の前記スイッチング素子と並列に接続され、
前記圧電素子の一方の電極は、前記第1駆動部の前記インダクタと前記キャパシタとの間の接続点に接続され、前記圧電素子の他方の電極は、前記第2駆動部の前記インダクタと前記キャパシタとの間の接続点に接続され、前記共通電極は、接地に接続され、
前記一方の電極と前記共通電極との間の前記圧電素子を第1キャパシタとし、前記他方の電極と前記共通電極との間の前記圧電素子を第2キャパシタとし、
前記第1駆動部が前記一方の電極に印加する第1交流電圧と前記第2駆動部が前記他方の電極に印加する第2交流電圧との間には位相差があ
り、
前記第1駆動部
の前記インダクタ及び
前記キャパシタと、前記圧電素子の前記第1キャパシタとが、前記圧電超音波モータ
の駆動周期を共振周期とする第1共振回路を構成し、前記第2駆動部
の前記インダクタ及び
前記キャパシタと、前記圧電素子の前記第2キャパシタとが、前記圧電超音波モータの駆動周期を共振周期とする
第2共振回路を構成し、
前記第1共振回路及び前記第2共振回路が、共振することにより
、前記第1交流電圧及び前記第2交流電圧を各々発生することを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記位相差は90度であることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記圧電超音波モータはさらに柱状体と駆動軸とを有し、
前記柱状体は、対向する2つの底面部と前記2つの底面部間の領域を囲む複数の側面部とを有し、さらに前記2つの底面部間を貫く貫通孔を有し、
前記駆動軸は、前記柱状体の前記貫通孔に挿通され、
前記圧電素子は、裏側に形成された前記共通電極が前記柱状体の側面部に接触し、表側に形成された前記2つの電極が、前記貫通孔が貫く方向に沿って並んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記共通電極が接触している前記柱状体が接地に接続されていることを特徴とする請求項
3に記載の駆動回路。
【請求項5】
請求項1に記載の駆動回路によって駆動される圧電超音波モータと、
光学部材を支持するキャリアと、を有し、
前記圧電超音波モータが前記キャリアを移動させることを特徴とする光学部材駆動装置。
【請求項6】
前記圧電超音波モータはさらに柱状体と駆動軸とを有し、
前記柱状体は、対向する2つの底面部と前記2つの底面部間の領域を囲む複数の側面部とを有し、さらに前記2つの底面部間を貫く貫通孔を有し、
前記駆動軸は、前記柱状体の前記貫通孔に挿通されるとともに前記キャリアと結合し、
前記圧電素子は、裏側に形成された前記共通電極が前記柱状体の側面部に接触し、表側に形成された前記2つの電極が、前記貫通孔が貫く方向に沿って並んで配置されていることを特徴とする請求項
5に記載の光学部材駆動装置。
【請求項7】
前記スイッチング素子はMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)であることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項8】
請求項1に記載の駆動回路と、請求項
5に記載の光学部材駆動装置と、を備えたカメラ装置。
【請求項9】
請求項
8に記載のカメラ装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電超音波モータの駆動回路、この駆動回路によって駆動される圧電超音波モータを利用した光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のIT産業の急速な発展に伴い、スマートフォン等に実装するための超小型カメラモジュールに関する需要が高まっている。カメラモジュールでは、レンズ体等の光学部材の駆動機構として、ボイスコイルモータや圧電超音波モータが使用され得る。
【0003】
特許文献1は、圧電超音波モータを利用したリニアモータシステムを開示している。特許文献1において、圧電超音波モータは、駆動軸が挿通された柱状体と、この柱状体の側面に配置された4個(2組)の圧電素子とを有している。この圧電超音波モータを駆動する駆動回路は、2個のフルブリッジ回路により構成されている。これらのフルブリッジ回路のうちの一方は、一方の組の2個の圧電素子を駆動し、他方は他方の組の2個の圧電素子を駆動する。また、その印加電圧は位相が90度ずれている。
【0004】
特許文献1において、2組の圧電素子は、独立して設けられている。しかしながら、2組の圧電素子が一体に設けられている場合、位相差がある電圧を印加すると、一周期の中で電圧源と接地が短絡する時間が発生するため、そのままでは特許文献1の駆動回路は採用できない。また、ブリッジ回路を採用しない場合、高電圧の電源が必要となる。また、特許文献1において、駆動回路は2個のフルブリッジ回路を用いているので、高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、2組の圧電素子が一体に設けられている場合でも安価で比較的低電圧な電源で駆動できる圧電超音波モータの駆動回路、この駆動回路によって駆動される圧電超音波モータを利用した光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の好適な態様である圧電超音波モータの駆動回路は、2つの電極と共通電極とを有する圧電素子を有する圧電超音波モータの駆動回路であって、電源と接地との間に並列接続された第1駆動部及び第2駆動部を有し、前記第1駆動部及び前記第2駆動部は、前記電源と前記接地との間に直列接続された2つのスイッチング素子と、直列接続されたインダクタ及びキャパシタと、をそれぞれ有し、前記インダクタ及び前記キャパシタは、前段に前記インダクタが配置され後段に前記キャパシタが配置され、前記2つのスイッチング素子の間の接続点と前記接地との間に、後段に配置された方の前記スイッチング素子と並列に接続され、前記圧電素子の一方の電極は、前記第1駆動部の前記インダクタと前記キャパシタとの間の接続点に接続され、前記圧電素子の他方の電極は、前記第2駆動部の前記インダクタと前記キャパシタとの間の接続点に接続され、前記共通電極は、接地に接続され、前記第1駆動部が前記一方の電極に印加する第1交流電圧と前記第2駆動部が前記他方の電極に印加する第2交流電圧との間には位相差があることを特徴とする。
【0008】
また、前記第1駆動部及び前記圧電超音波モータと、前記第2駆動部及び前記圧電超音波モータとは、前記圧電超音波モータの駆動周期を共振周期とする共振回路を構成し、共振することにより前記第1交流電圧及び前記第2交流電圧を各々発生してもよい。
【0009】
また、前記位相差は90度であってもよい。
【0010】
また、前記圧電超音波モータはさらに柱状体と駆動軸とを有し、前記柱状体は、対向する2つの底面部と前記2つの底面部間の領域を囲む複数の側面部とを有し、さらに前記2つの底面部間を貫く貫通孔を有し、前記駆動軸は、前記柱状体の貫通孔に挿通され、前記圧電素子は、裏側に形成された前記共通電極が前記柱状体の側面部に接触し、表側に形成された前記2つの電極が、前記貫通孔が貫く方向に沿って並んで配置されていてもよい。
【0011】
また、前記共通電極が接触している前記柱状体が接地に接続されていてもよい。
【0012】
本発明の別の好適な態様である光学部材駆動装置は、上記駆動回路によって駆動される圧電超音波モータと、光学部材を支持するキャリアと、を有し、前記圧電超音波モータが前記キャリアを移動させることを特徴とする。
【0013】
また、前記圧電超音波モータはさらに柱状体と駆動軸とを有し、前記柱状体は、対向する2つの底面部と前記2つの底面部間の領域を囲む複数の側面部とを有し、さらに前記2つの底面部間を貫く貫通孔を有し、前記駆動軸は、前記柱状体の貫通孔に挿通されるとともに前記キャリアと結合し、前記圧電素子は、裏側に形成された前記共通電極が前記柱状体の側面部に接触し、表側に形成された前記2つの電極が、前記貫通孔が貫く方向に沿って並んで配置されていてもよい。
【0014】
また、前記スイッチング素子はMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)であってもよい。
【0015】
本発明の別の好適な態様であるカメラ装置は、上記駆動回路と、上記光学部材駆動装置と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の別の好適な態様である電子機器は、上記カメラ装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明による圧電超音波モータの駆動回路は、2つの電極と共通電極とを有する圧電素子を有する圧電超音波モータの駆動回路であって、電源と接地との間に並列接続された第1駆動部及び第2駆動部を有し、前記第1駆動部及び前記第2駆動部は、前記電源と前記接地との間に直列接続された2つのスイッチング素子と、直列接続されたインダクタ及びキャパシタと、をそれぞれ有し、前記インダクタ及び前記キャパシタは、前段に前記インダクタが配置され後段に前記キャパシタが配置され、前記2つのスイッチング素子の間の接続点と前記接地との間に、後段に配置された方の前記スイッチング素子と並列に接続され、前記圧電素子の一方の電極は、前記第1駆動部の前記インダクタと前記キャパシタとの間の接続点に接続され、前記圧電素子の他方の電極は、前記第2駆動部の前記インダクタと前記キャパシタとの間の接続点に接続され、前記共通電極は、接地に接続され、前記第1駆動部が前記一方の電極に印加する第1交流電圧と前記第2駆動部が前記他方の電極に印加する第2交流電圧との間には位相差があることを特徴とする。よって、2組の圧電素子が一体に設けられていても一周期の中で電源と接地が短絡する時間が発生せず、且つ1個のブリッジ回路で共振させることができるので、本発明による圧電超音波モータの駆動回路は、2組の圧電素子が一体に設けられている場合でも安価で比較的低電圧な電源で駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態である圧電超音波モータ100の駆動回路200を利用した光学部材駆動装置5を含むカメラ装置8が搭載されたスマートフォン9の正面図である。
【
図3】ケース10を取り除いた光学部材駆動装置5の斜視図である。
【
図4】光学部材駆動装置5のキャリア20及びベース30の側面部図である。
【
図5】光学部材駆動装置5の圧電超音波モータ100の斜視図である。
【
図6】
図5の圧電超音波モータ100からフェルト75とFPC72を除いた斜視図である。
【
図7】圧電超音波モータ100の駆動回路200の回路図である。
【
図8】駆動回路200の動作例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態の駆動回路200によって駆動される圧電超音波モータ100(以下、単にモータ100と称することがある)を利用した光学部材駆動装置5を含むカメラ装置8は、スマートフォン9の筐体内に収容される。
【0020】
カメラ装置8は、レンズ体6と、画像センサ7と、レンズ体6を駆動する光学部材駆動装置5とを有する。画像センサ7は、レンズ体6を経由して入射する光を画像信号に変換して出力する。光学部材駆動装置5は、レンズ体6を、その光軸と平行な方向に沿って駆動する。
【0021】
以下、レンズ体6の光軸に平行なZ軸と、相互に直交し、かつ、Z軸と直交するX軸及びY軸とからなるXYZ直交座標系を想定し、光学部材駆動装置5の構成を説明する。また、以下では、レンズ体6から見て被写体の側を+Z側と称し、その反対側(画像センサ7側)を-Z側と呼ぶ場合がある。
【0022】
図2に示すように、光学部材駆動装置5は、直方体状のケース10内に、レンズ体6を支持するための孔20aを有するキャリア20を収容している。光学部材駆動装置5の中央を被写体からの光が通過する。
【0023】
図3に示すように、キャリア20はベース30上に配置される。ベース30は、金属の板状部材でXY方向に広がる底面部31と、この底面部31の+Y側の端部において+Z側に直角に折れ曲がった側面部32とを有する。キャリア20は、底面部31の+Z側に配置される。キャリア20は、レンズ体6を収容するための孔20aの周囲に形成された環状部20bと、+Y側に側面部32と対向するように設けられた略直方体形状の連結部20cとを一体化した形状を有する。
【0024】
ベース30の底面部31における側面部32の近くには、主案内軸61及び副案内軸62がX軸方向に並んでその基端部が固定され+Z側に向けて立設されている。主案内軸61及び副案内軸62は、キャリア20の連結部20cに形成された孔21及び切り欠き部22に各々収容され、キャリア20をZ軸方向に移動するように案内する。また、キャリア20の+Y側の端面には切り欠き部23が形成されており、この切り欠き部23にはモータ100が収容されている。後述するように、モータ100の駆動軸71は、その基端部71bが底面部31に固定され+Z側に向けて立設されている。光学部材駆動装置5は、モータ100を駆動源として、キャリア20をZ軸方向に駆動する。
【0025】
ベース30の側面部32の-Y側にはヨーク51及びホールIC52が配置されている。キャリア20における側面部32との対向面には磁石53が配置されている。ホールIC52は、磁石53の磁界を検出することにより、キャリア20のZ軸方向の位置を検出する。ヨーク51及び磁石53は、相互に吸引し合い、キャリア20が側面部32側に引き寄せられる。これにより、キャリア20の孔21の内壁及び切り欠き部22の内壁が主案内軸61及び副案内軸62に適度な圧力で押し当てられ、キャリア20の姿勢及びZ軸方向の駆動が安定したものになる。
【0026】
図4に示すように、キャリア20に収容されたモータ100は、Z軸方向に延びた駆動軸71を有している。駆動軸71は、-Z側にある基端部71bが駆動軸本体部71aよりも小径になっており、この小径部分である基端部71bが、底面部31に形成された孔に挿入され、カシメや溶接のような方法で固定されている。主案内軸61及び副案内軸62も同様構造であり、同様方法で固定されている。また、モータ100では、FPC(Flexible Printed Circuits)72の引き出し部72aが駆動軸71と平行な方向に引き出され、180度湾曲して側面部32の-Y側の面に配置されている。
【0027】
図5及び
図6に示すように、モータ100は、金属の柱状体74を有する。本実施形態において、柱状体74は、対向する2つの底面部74e及び74fと、この2つの底面部74eと底面部74fとの間の領域を囲む側面部74a、74b、74c及び74dを有する四角柱である。また、柱状体74は、2つの底面部74eと底面部74fとの間を貫く貫通孔74gを有する。駆動軸71は、柱状体74の貫通孔74gに挿通される。
【0028】
FPC72は、複数(
図5の例では4つ)のシート状の圧電素子73a、73b、73c及び73dを搭載している。FPC72は、複数の圧電素子73a、73b、73c及び73dを柱状体74の側面部74a、74b、74c及び74dに接触させて柱状体74に圧電素子73a、73b、73c及び73dの外側から巻かれている。
【0029】
圧電素子73a、73b、73c及び73dそれぞれの表面の+Z側に電極73eが形成され、-Z側に電極73fが電極73eから離隔して形成されている。電極73e、73fはそれぞれFPC72に電気的に接続される。圧電素子73a、73b、73c及び73dそれぞれの電極73eは、FPC72に電気的に接続されることにより、相互に電気的に接続され、モータ100の第1端子T1として機能する。同様に、圧電素子73a、73b、73c及び73dそれぞれの電極73fは、FPC72に電気的に接続されることにより、相互に電気的に接続され、モータ100の第2端子T2として機能する。圧電素子73a、73b、73c及び73dそれぞれの表面とは反対側の裏面にも電極が形成され、柱状体74に電気的に接続される。この裏面の電極は共通電極である。
【0030】
柱状体74は、圧電素子73a、73b、73c及び73dの裏面に設けられた電極と電気接続し、モータ100の共通端子T0として機能する。柱状体74の底面部74eはFPC72に設けられた共通端子部72bと電気接続し、接地GNDに接続される。駆動回路200は、FPC72を介して、第1端子T1と共通端子T0との間に第1の交流電圧を印加し、かつ、第2端子T2と共通端子T0との間に第2の交流電圧を印加することにより、複数の圧電素子73a、73b、73c及び73dに駆動電力を供給する。
【0031】
そのために、FPC72は、引き出し部72aから側面部74c、74b、74a、74dの順で柱状体74に巻かれている。FPC72は、4つの側面部74a、74b、74c及び74dのうち、側面部74cと側面部74dとの間の角部を除いた各間の角部と対向する各位置に、R部72Rを有する。R部72RのZ軸方向の幅はその隣接する部分の幅と同程度である。また、柱状体74に巻かれたFPC72の外面が、緩衝材であるフェルト75により覆われている。フェルト75により覆われたモータ100が、キャリア20の切り欠き部23内における-X側、-Y側、及び+X側の内壁に固定されている。
【0032】
図7に示すように、モータ100の共通端子T0は、FPC72を介して接地GNDに接続されている。また、駆動回路200は、電源Vccと接地GNDとの間に並列接続された第1駆動部210及び第2駆動部220を有する。
【0033】
第1駆動部210は、電源Vccと接地GNDとの間に直列接続されたスイッチング素子であるFET(Field Effect Transistor)211及び212を有する。FET211とFET212との間の接続点Out1と接地GNDとの間には、FET212とは並列にインダクタL1及びキャパシタC3が直列接続されている。インダクタL1とキャパシタC3との間の接続点はモータ100の第1端子T1に接続されている。第1端子T1と接地GNDとの間にはキャパシタC1が接続されている。このキャパシタC1は、モータ100の電極73eと共通端子T0との間の圧電素子73a、73b、73c及び73dである。キャパシタC1とキャパシタC3とは並列に接続されている。スイッチング素子には、パワートランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等がある。本実施形態において、スイッチング素子として、MOSFETを用い、これを単にFETと称する。
【0034】
同様に、第2駆動部220は、電源Vccと接地GNDとの間に直列接続されたFET221及び222を有する。FET221とFET222との間の接続点Out2と接地GNDとの間には、FET222とは並列にインダクタL2及びキャパシタC4が直列接続されている。インダクタL2とキャパシタC4との間の接続点はモータ100の第2端子T2に接続されている。第2端子T2と接地GNDとの間にはキャパシタC2が接続されている。このキャパシタC2は、モータ100の電極73fと共通端子T0との間の圧電素子73a、73b、73c及び73dである。キャパシタC2とキャパシタC4とは並列に接続されている。
【0035】
モータ100の駆動時、第1駆動部210には周期的な波形の駆動電圧が与えられる。例えば、この駆動電圧の1周期における前半の半周期はFET211がON、FET212がOFFとされ、後半の半周期はFET211がOFF、FET212がONとされる。また、第2駆動部220にも、第1駆動部210に与えられるものと同じ周期を有し、かつ、位相が90度遅れた周期的な波形の駆動電圧が与えられる。例えば、この駆動電圧の1周期における前半の半周期はFET221がON、FET222がOFFとされ、後半の半周期はFET221がOFF、FET222がONとされる。第1駆動部210に与えられる駆動電圧及び第2駆動部220に与えられる駆動電圧の周期がモータ100の駆動周期となる。
【0036】
図7において、第1駆動部210におけるインダクタL1、キャパシタC3及びキャパシタC1は、モータ100の駆動周期を共振周期とする共振回路を構成している。この共振回路が共振することにより、第1端子T1と共通端子T0との間に第1交流電圧VT1が発生する。同様に、第2駆動部220におけるインダクタL2、キャパシタC4及びキャパシタC2は、モータ100の駆動周期を共振周期とする共振回路を構成している。この共振回路が共振することにより、第2端子T2と共通端子T0との間に第2交流電圧VT2が発生する。
【0037】
図8は本実施形態の動作例を示す波形図である。
図8には、FET211とFET212との間の接続点Out1の電圧VOut1の波形と、FET221とFET222との間の接続点Out1の電圧VOut2の波形と、第1端子T1の第1交流電圧VT1の波形と、第2端子T2の第2交流電圧VT2の波形と、が示されている。
【0038】
この動作例では、FET211とFET212との間の接続点Out1から振幅13V程度且つ所定周期の矩形波形の電圧VOut1が出力される。また、FET221とFET222との間の接続点Out2から振幅12V程度且つ電圧VOut1に対して位相が90度遅れた同じ周期の矩形波形の電圧VOut2が出力される。これにより共振回路が共振し、振幅106V程度且つ電圧VOut1と同じ周期の正弦波形の第1交流電圧VT1が第1端子T1と接地GNDとの間に発生する。同様に、共振回路が共振し、振幅92V程度且つ電圧VOut2と同じ周期の正弦波形の第2交流電圧VT2が第2端子T2と接地GNDとの間に発生する。本実施形態では、このように共振を利用することで、
図8に示すように、電圧VOut1及び電圧VOut2よりも振幅の大きな第1交流電圧VT1及び第2交流電圧VT2を第1端子T1及び第2端子T2に発生させることができる。
【0039】
即ち、圧電素子73a、73b、73c及び73dの各電極73eと、柱状体74との間には第1交流電圧VT1が印加される。また、圧電素子73a、73b、73c及び73dの各電極73fと柱状体74との間には第2交流電圧VT2が印加される。このように、圧電素子73a、73b、73c及び73dの各電極73eには、同じ周波数、同じ位相、同じ高さの第1交流電圧VT1が印加され、各電極73fには、電極73eに印加される電圧に対して同じ周波数、位相差90度、同じ高さの第2交流電圧VT2が印加される。
【0040】
これにより、各電極73e及び74fに対応する位置の圧電素子73a、73b、73c及び73dがその板面方向に伸縮する。柱状体74はそのような伸縮はしないので各電極73e及び73fに対応した圧電素子73a、73b、73c及び73dと柱状体74の貫通孔74gに至るまでの部分は、全体としておわん型とその反転型を繰り返す変形をする。即ち、各電極73e及び73fに対応する位置の貫通孔74gの内壁面はそれぞれ全体としておわん型とその反転型を繰り返す変形をする。
【0041】
このように、圧電素子73a、73b、73c及び73dと柱状体74は振動体を構成する。電極73eに印加される第1交流電圧VT1と電極73fに印加される第2交流電圧VT2は90度の位相差を有しているので、電極73eに対応する位置の貫通孔74gの内壁面の変形と電極73fに対応する位置の貫通孔74gの内壁面の変形も90度の位相差を有している。これによって、貫通孔74gの内壁面は貫通孔74gの軸方向に沿って楕円運動し、柱状体74は駆動軸71に沿って+Z軸方向または-Z軸方向に移動する。この柱状体74の移動方向は、第1交流電圧VT1と第2交流電圧VT2の位相差を変えることにより制御可能である。
【0042】
本実施形態では、上述のように柱状体74に対してキャリア20が固定されている。従って、本実施形態によれば、FPC72から圧電素子73a、73b、73c及び73dに駆動電力を供給することにより、キャリア20をZ軸方向に移動させることができる。
【0043】
以上が、本実施形態の詳細である。本実施形態による駆動回路200は、2つの電極73e及び73fと共通電極とを有する圧電素子73a、73b、73c及び73dを有する圧電超音波モータ100を駆動する。駆動回路200は、電源Vccと接地GNDとの間に並列接続された第1駆動部210及び第2駆動部220を有する。第1駆動部210は、電源Vccと接地GNDとの間に直列接続された2つのスイッチング素子であるFET211及び212と、直列接続されたインダクタL1及びキャパシタC3と、をそれぞれ有する。第2駆動部220は、電源Vccと接地GNDとの間に直列接続された2つのスイッチング素子であるFET221及び222と、直列接続されたインダクタL2及びキャパシタC4と、をそれぞれ有する。
【0044】
インダクタL1及びキャパシタC3は、前段にインダクタL1が配置され後段にキャパシタC3が配置され、2つのFET211とFET212との間の接続点Out1と接地GNDとの間に、後段に配置された方のFET212と並列に接続される。インダクタL2及びキャパシタC4は、前段にインダクタL2が配置され後段にキャパシタC4が配置され、2つのFET221とFET222との間の接続点Out2と接地GNDとの間に、後段に配置された方のFET222と並列に接続される。
【0045】
圧電素子73a、73b、73c及び73dの一方の電極73eは、第1駆動部210のインダクタL1とキャパシタC3との間の接続点に接続される。圧電素子73a、73b、73c及び73dの他方の電極73fは、第2駆動部220のインダクタL2とキャパシタC4との間の接続点に接続される。共通電極は、接地GNDに接続される。そして、第1駆動部210が一方の電極73eに印加する第1交流電圧VT1と第2駆動部220が他方の電極73fに印加する第2交流電圧VT2との間には位相差がある。
【0046】
これによって、電極73eに対応する圧電素子と電極73fに対応する圧電素子の2組の圧電素子が一体に設けられていても一周期の中で電源Vccと接地GNDが短絡する時間が発生しない。また、1個のブリッジ回路で共振させることができる。そのため、本実施形態による圧電超音波モータ100の駆動回路200は、2組の圧電素子が一体に設けられている場合でも安価で比較的低電圧な電源で駆動できる。
【0047】
なお、本実施形態において、電圧VOut1及び電圧VOut2の波形を矩形波形としたが、正弦波形としてもよいし、他の波形でもよい。また、この矩形の幅は半周期である必要もない。
【0048】
また、圧電素子73a、73b、73c及び73dは、それぞれ1つの圧電素子に2つの電極73e及び73fを設けていたが、2つの圧電素子の一方に電極73eを設け、他方に電極73fを設けてもよい。その場合においても、裏面の電極は共通電極として、柱状体74に電気接続し、柱状体74を接地に接続する。また、2つの圧電素子の一方に電極73eを設け、他方に電極73fを設けた場合、電極73eと電極73fが交互に柱状体74の周方向に並ぶように配置してもよい。その場合、駆動軸71が柱状体74に対して相対的に回転するように駆動することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
5 光学部材駆動装置
6 レンズ体
7 画像センサ
8 カメラ装置
9 スマートフォン
10 ケース
20 キャリア
20a,21 孔
20b 環状部
20c 連結部
22,23 切り欠き部
30 ベース
31 底面部
32 側面部
51 ヨーク
52 ホールIC
53 磁石
61 主案内軸
62 副案内軸
71 駆動軸
71a 駆動軸本体部
71b 基端部
72 FPC
72a 引き出し部
72b 共通端子部
72R R部
73a,73b,73c,73d 圧電素子
73e,73f 電極
74 柱状体
74a,74b,74c,74d 側面部
74e,74f 底面部
74g 貫通孔
75 フェルト
100 圧電超音波モータ(モータ)
T0 共通端子
T1 第1端子
T2 第2端子
200 駆動回路
210 第1駆動部
220 第2駆動部
211,212,221,222 FET
L1,L2 インダクタ
C1,C2,C3,C4 キャパシタ