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特許7551838移動通信ネットワークの制御プレーン装置及びユーザプレーン装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】移動通信ネットワークの制御プレーン装置及びユーザプレーン装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/11 20180101AFI20240909BHJP
   H04W 76/12 20180101ALI20240909BHJP
   H04W 88/14 20090101ALI20240909BHJP
   H04W 92/24 20090101ALI20240909BHJP
【FI】
H04W76/11
H04W76/12
H04W88/14
H04W92/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023088031
(22)【出願日】2023-05-29
【審査請求日】2023-08-02
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯木 厳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏典
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-503772(JP,A)
【文献】特表2014-512762(JP,A)
【文献】3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Core Network and Terminals, Interface between the Control Plane and the User Plane Nodes; Stage 3 (Release 18),3GPP TS 29.244 V18.1.0 (2023-03),2023年03月28日,46-50,253-256頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信ネットワークにおいてユーザパケットを転送するユーザプレーン装置を制御する制御プレーン装置であって、
記ユーザプレーン装置に第1メッセージを送信する送信手段と、
前記第1メッセージの応答として、前記ユーザプレーン装置から第2メッセージを受信する受信手段と、
を備え、
前記ユーザプレーン装置は、ユーザプレーンの装置であり、前記制御プレーン装置は、制御プレーンの装置であり、
前記第1メッセージ及び前記第2メッセージは、前記制御プレーン装置と前記ユーザプレーン装置がアソシエーションを確立するためのメッセージであり、
前記送信手段は、前記第1メッセージに、前記ユーザプレーン装置が第1ユーザパケットを前記制御プレーン装置に送信するための第1情報を含める、制御プレーン装置。
【請求項2】
前記第1情報は、前記ユーザプレーン装置が前記第1ユーザパケットを第1パケットでカプセル化して前記制御プレーン装置に送信する際に前記第1パケットのヘッダに設定すべき第1識別子を示す、請求項1に記載の制御プレーン装置。
【請求項3】
前記第1識別子は、トンネルエンドポイント識別子(TEID)である、請求項2に記載の制御プレーン装置。
【請求項4】
前記送信手段は、前記第1識別子に関連付けられた第2識別子を前記第1メッセージに含め、
前記第2識別子は、前記制御プレーン装置が前記ユーザプレーン装置に設定する、前記第1ユーザパケットを前記第1パケットでカプセル化して前記制御プレーン装置に送信する処理の識別子として使用される、請求項2に記載の制御プレーン装置。
【請求項5】
前記第2識別子は、転送アクションルール識別子(FAR ID)である、請求項4に記載の制御プレーン装置。
【請求項6】
前記送信手段は、前記第1メッセージに、前記第1メッセージが前記第1情報を含むことを示すフラグ情報を含める、請求項1に記載の制御プレーン装置。
【請求項7】
前記第2メッセージは、前記ユーザプレーン装置が第2ユーザパケットを前記制御プレーン装置から受信するための第2情報を含む、請求項1に記載の制御プレーン装置。
【請求項8】
前記制御プレーン装置は、セッション管理機能(SMF)、又は、サービング・ゲートウェイ若しくはパケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイの制御プレーンの機能を実装する装置である、請求項1に記載の制御プレーン装置。
【請求項9】
1つ以上のプロセッサを有する装置の前記1つ以上のプロセッサで実行されると、前記装置を請求項1からのいずれか1項に記載の制御プレーン装置として機能させるプログラム。
【請求項10】
移動通信ネットワークにおいてユーザパケットを転送するユーザプレーン装置であって、
制御プレーン装置が前記ユーザプレーン装置に送信する第1メッセージを受信する受信手段と、
前記第1メッセージの応答として、前記制御プレーン装置に第2メッセージを送信する送信手段と、
を備え、
前記ユーザプレーン装置は、ユーザプレーンの装置であり、前記制御プレーン装置は、制御プレーンの装置であり、
前記第1メッセージ及び前記第2メッセージは、前記制御プレーン装置と前記ユーザプレーン装置がアソシエーションを確立するためのメッセージであり、
前記第1メッセージに前記ユーザプレーン装置が第1ユーザパケットを前記制御プレーン装置に送信するための第1情報が含まれている場合、前記送信手段は、前記第2メッセージに、前記制御プレーン装置が第2ユーザパケットを前記ユーザプレーン装置に送信するための第2情報を含める、ユーザプレーン装置。
【請求項11】
前記第1情報は、前記ユーザプレーン装置が前記第1ユーザパケットを第1パケットでカプセル化して前記制御プレーン装置に送信する際に前記第1パケットのヘッダに設定すべき第1識別子を示し、
前記第2情報は、前記制御プレーン装置が前記第2ユーザパケットを第2パケットでカプセル化して前記ユーザプレーン装置に送信する際に前記第2パケットのヘッダに設定すべき第2識別子を示す、請求項10に記載のユーザプレーン装置。
【請求項12】
前記第1識別子及び第2識別子は、トンネルエンドポイント識別子(TEID)である、請求項11に記載のユーザプレーン装置。
【請求項13】
前記送信手段は、前記第2メッセージに、前記第2メッセージが前記第2情報を含むことを示すフラグ情報を含める、請求項10に記載のユーザプレーン装置。
【請求項14】
前記ユーザプレーン装置は、ユーザプレーン機能(UPF)、又は、サービング・ゲートウェイ若しくはパケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイのユーザプレーンの機能を実装する装置である、請求項10に記載のユーザプレーン装置。
【請求項15】
1つ以上のプロセッサを有する装置の前記1つ以上のプロセッサで実行されると、前記装置を請求項10から14のいずれか1項に記載のユーザプレーン装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動通信ネットワークのユーザプレーン(UP)の装置の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(登録商標)によって、第4世代の移動通信ネットワーク(以下、4Gネットワーク)及び第5世代の移動通信ネットワーク(以下、5Gネットワーク)が規格化されている。5Gネットワークは、スタンドアローン(SA)方式と、ノンスタンドアローン(NSA)方式に分類される。NSA方式の5Gネットワークは、そのコアネットワークとして、4Gネットワークのコアネットワークを使用する。4Gネットワークのコアネットワークは、発展型パケットコア(EPC)としても参照される。一方、SA方式の5Gネットワークは、5GCとしても参照されるコアネットワークを使用する。
【0003】
5GCでは、ユーザプレーン機能(UPF)が、ユーザプレーン(UP)のパケット(以下、ユーザパケット)を転送する。UPFは、インターネット等の外部のデータネットワーク(DN)にも接続される。SA方式の5Gネットワークにおいては、ユーザ装置(UE)に対してプロトコルデータユニット(PDU)セッションが確立される。PDUセッションは、UEをDNに接続するために、当該UEが接続している基地局(BS)を介して、当該UEと当該DNに接続するUPFとの間で設定される。UEとDNとの間で送受信されるIPパケット等のユーザパケットは、PDUセッションにおけるBSとDNに接続するUPFとの間においてはGTP(汎用パケット無線システム・トンネリング・プロトコル)パケットによるカプセル化が行われる。
【0004】
具体的には、BSとDNに接続するUPFとが直接接続されている場合、BSは、UEから受信するIPパケットをGTPパケットにカプセル化してUPFに送信する。当該GTPパケットのヘッダには、トンネルエンドポイント識別子(TEID)が設定される。同様に、UPFは、DNからUE宛のIPパケットを受信すると、当該IPパケットをGTPパケットにカプセル化してBSに送信する。当該GTPパケットのヘッダには、TEIDが設定される。なお、TEIDは、UEからDNへの上り方向と、DNからUEへの下り方向それぞれについて個別に設定され、上り方向と下り方向で同じ値である必要はない。上り方向で使用するTEIDと、下り方向で使用するTEIDは、UEのためのPDUセッションを確立する際に決定される。
【0005】
なお、EPCにおいては、PDUセッションではなく、UEとPGW-Uとの間で、BS及びSGW-Uを介するベアラが設定される。PGWは、パケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイの略語であり、SGW-Uは、サービング・ゲートウェイの略語であり、文字"U"はUPの機能であることを示している。PGW-Uは、DNにも接続される。なお、ベアラにおいても、BSとPGW-Uとの区間においてはGTPパケットによるカプセル化が行われる。
【0006】
このUPF、SGW-U及びPGW-Uにおけるユーザパケットの処理を制御するため、3GPP(登録商標)は、制御プレーン(CP)の機能として、セッション管理機能(SMF)、SGW-C及びPGW-Cを定義している。なお、SGW-C及びPGW-Cの文字"C"は、CPの機能であることを示している。SMFはUPFを制御し、SGW-CはSGW-Uを制御し、PGW-CはPGW-Uを制御する。以下の説明では、UPF、SGW-U、PGW-U等のUPにおいてユーザパケットを転送する機能を実装した装置をユーザプレーン装置(UP装置)と表記する。また、SMF、SGW-C、PGW-C等、UP装置におけるユーザパケットの転送処理等を制御するCPの装置を制御プレーン装置(CP装置)と表記する。非特許文献1は、CP装置とUP装置との間の制御信号の送受信で使用されるパケット転送制御プロトコル(PFCP)を開示している。
【0007】
PFCPにおいて、CP装置は、制御を行うUP装置と事前にアソシエーションを確立する。また、CP装置は、UEがベアラやPDUセッションを確立する際、アソシエーションを確立しているUP装置の内の1つを選択し、選択したUP装置との間で、ベアラやPDUセッションに対応するPFCPセッションを確立する。CP装置は、このPFCPセッションにより、このPFCPセッションに対応するベアラやPDUセッションに属するユーザパケットの転送処理を制御する。例えば、CP装置は、PFCPセッションを利用して、パケット検出ルール(PDR)と、当該PDRに関連付けた転送アクションルール(FAR)と、をUP装置に設定することができる。UP装置は、PDRにマッチするユーザパケットを検出すると、例えば、当該PDRに関連付けられたFARに従い、当該ユーザパケットの転送処理を行う。
【0008】
さらに、非特許文献1は、CP装置とUP装置との間でユーザパケットを送受信することも開示している。一例として、CP装置は、アソシエーションを確立しているUP装置を介して、当該UP装置との間でPDUセッション又はベアラを確立しているUEとユーザパケットを送受信することができる。CP装置は、例えば、UEに対してIPアドレスの割り当てを行うために、ユーザパケットを当該UEと送受信することができる。
【0009】
非特許文献1によると、CP装置とUP装置との間で送受信されるユーザパケットについてもGTPパケットによるカプセル化が行われる。このため、CP装置とUP装置との間では、PDUセッションに対応するN4-uトンネルや、ベアラに対応するSx-uトンネルが確立される。なお、"N4"は、SMFとUPFとの間のインタフェース名であり、"Sx"は、SGW-C/PGW-CとSGW-U/PGW-Uとの間のインタフェース名であり、"u"は、ユーザパケット用のトンネルであることを示している。以下の説明では、N4-uトンネル及びSx-uトンネルの総称として"ユーザトンネル"との用語を使用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】3GPP TS 29.244 V16.5.0 (2020-09)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ユーザトンネルを確立するために、CP装置は、UP装置がCP装置への送信に使用するTEIDを指定し、UP装置は、CP装置がUP装置への送信に使用するTEIDを指定する必要がある。つまり、ユーザトンネルの確立のため、CP装置とUP装置は、ユーザトンネルにおける受信側のTEIDを交換する必要がある。上記の通り、非特許文献1によると、ユーザトンネルは、PDUセッション又はベアラ毎に確立される。つまり、CP装置とUP装置は、PDUセッションやベアラを確立する度に、ユーザトンネルにおける受信側のTEIDを交換する必要がある。
【0012】
本開示は、CP装置とUP装置との間の制御信号で送受信する情報量を削減する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様によると、移動通信ネットワークにおいてユーザパケットを転送するユーザプレーン装置を制御する制御プレーン装置は、前記ユーザプレーン装置に第1メッセージを送信する送信手段と、前記第1メッセージの応答として、前記ユーザプレーン装置から第2メッセージを受信する受信手段と、を備え、前記ユーザプレーン装置は、ユーザプレーンの装置であり、前記制御プレーン装置は、制御プレーンの装置であり、前記第1メッセージ及び前記第2メッセージは、前記制御プレーン装置と前記ユーザプレーン装置がアソシエーションを確立するためのメッセージであり、前記送信手段は、前記第1メッセージに、前記ユーザプレーン装置が第1ユーザパケットを前記制御プレーン装置に送信するための第1情報を含める。
【発明の効果】
【0014】
本開示によると、CP装置とUP装置との間の制御信号で送受信する情報量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】CP装置とUP装置がアソシエーションを確立した状態を示す図。
図2】アソシエーション確立処理のシーケンス図。
図3】修正されたノードID情報要素を示す図。
図4】CP装置とUP装置との間で送受信されるユーザパケットに対する処理を説明するための図。
図5】CP装置の機能ブロック図。
図6】UP装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
図1は、CP装置1とUP装置2がアソシエーションを確立した際の状態を示している。UP装置2は、DN5と接続している。CP装置1は、UP装置2とアソシエーションを確立することで、当該UP装置2を制御することが可能になる。本実施形態において、CP装置1とUP装置2は、アソシエーションを確立する際、ユーザトンネルで使用するTEIDを交換する。以下の説明において、"アソシエーションを確立する際にユーザトンネルで使用するTEIDを交換する機能"を、単に、"本実施形態による機能"と表記する。CP装置1及びUP装置2は、共に、"本実施形態による機能"を有する。図1では、アソシエーションの確立の際、CP装置1がTEIDとして#C1をUP装置2に通知し、UP装置2がTEIDとして#A1を通知したものとしている。したがって、UP装置2は、ユーザパケットをCP装置1に送信する際、GTPパケットのヘッダにTEIDとして#C1を設定し、CP装置1は、ユーザパケットをUP装置2に送信する際、GTPパケットのヘッダにTEIDとして#A1を設定する。
【0018】
図2は、CP装置1とUP装置2とのアソシエーションを確立する処理のシーケンス図である。S1において、CP装置1は、アソシエーション設定要求メッセージを、アソシエーションを確立するUP装置2に送信する。アソシエーション設定要求メッセージは、FAR識別子(FAR ID)の値と、CP装置1がユーザトンネルにおいて受信に使用するTEIDの値と、を含んでいる。TEIDの値は、図1に示す様に#C1である。FAR IDについては後述する。
【0019】
例えば、S1でCP装置1が送信するアソシエーション設定要求メッセージは、非特許文献1のAssociation Setup Requestであり得る。Association Setup Requestは、必須の情報要素(IE)として、ノードID IEを含んでいる。例えば、FAR IDの値と、TEIDの値は、このノードID IEでUP装置2に通知される。
【0020】
図3は、非特許文献1の図8.2.38-1に記載のノードID IEの修正例を示している。なお、網掛部分が非特許文献1の図8.2.38-1に記載のノードID IEからの変更箇所を示している。第5オクテットの第5ビットから第8ビットは、現在、予備ビットである。本実施形態では、第5オクテットの第5ビットから第8ビットをフラグとして使用する。フラグが所定のビット値に設定されていることは、本実施形態による機能がサポートされていることを示している。
【0021】
UP装置2は、アソシエーション設定要求メッセージの応答として、S2で、アソシエーション設定応答メッセージをCP装置1に送信する。アソシエーション設定応答メッセージは、UP装置2がユーザトンネルにおいて受信に使用するTEIDの値を含んでいる。TEIDの値は、図1に示す様に#A1である。例えば、S2でUP装置2が送信するアソシエーション設定応答メッセージは、非特許文献1のAssociation Setup Respоnseであり得る。Association Setup Respоnseも必須IEとして、ノードID IEを含んでいる。本実施形態によるUP装置2は、CP装置1と同様に、第5オクテットの第5ビットから第8ビットをフラグとして使用する。
【0022】
例えば、アソシエーションを確立するUP装置が本実施形態による機能を有さない場合、当該UP装置は、Association Setup RequestのノードID IEに含まれるFAR ID及びTEIDを無視し、Association Setup RespоnseのノードID IEにフラグを設定しない。したがって、この場合、CP装置1は、アソシエーションを確立したUP装置が、本実施形態による機能を有さないと判定することができる。また、UP装置2は、Association Setup RequestのノードID IEにフラグが設定されていない場合、アソシエーションを確立しようとしているCP装置が本実施形態による機能を有さないと判定することができる。この場合、UP装置2は、Association Setup RespоnseのノードID IEにTEIDの値を含める必要はない。CP装置とUP装置のいずれかが、本実施形態による機能を有さない場合、CP装置とUP装置は、非特許文献1に記載されている様に、PDUセッション又はベアラの確立の度にユーザトンネルの受信側のTEIDを交換する処理を行う。
【0023】
図4は、図1の状態からUE41とUP装置2との間でBS3を介するPDUセッション#1が確立され、その後、UE42とUP装置2との間でBS3を介するPDUセッション#2が確立された状態を示している。図1によると、UP装置2は、DN5からUE41宛のユーザパケットを受信すると、当該ユーザパケットをGTPパケットでカプセル化し、TEIDとして#B1を設定してBS3に送信する。また、UP装置2は、DN5からUE42宛のユーザパケットを受信すると、当該ユーザパケットをGTPパケットでカプセル化し、TEIDとして#B2を設定してBS3に送信する。なお、UP装置2は、上記の転送処理を、CP装置1から通知されたPDRと、当該PDRに関連付けられたFARと、に基づき行う。
【0024】
CP装置1がUE41にユーザパケットを送信する際、CP装置1は、当該ユーザパケットをGTPパケット(インナーGTPパケット)でカプセル化する。CP装置1は、このインナーGTPパケットのヘッダに、TEIDとして、PDUセッション#1においてBS3が受信に使用する#B1を設定する。さらに、CP装置1は、インナーGTPパケットをGTPパケット(アウターGTPパケット)でカプセル化し、このアウターGTPパケットのヘッダに、TEIDとして、ユーザトンネルにおいてUP装置2が受信に使用する#A1を設定する。このアウターGTPパケットを受信したUP装置2は、アウターGTPパケットに含まれるインナーGTPパケットをBS3に送信する。なお、この処理も、CP装置1によってUP装置2に設定されたPDRと、当該PDRに関連付けられたFARに基づき行われる。
【0025】
また、BS3は、UE41が送信したユーザパケットをGTPパケットにカプセル化し、このGTPパケットのヘッダのTEIDにPDUセッション#1においてUP装置2が受信に使用する#A2を設定してUP装置2に送信する。UE41が送信するユーザパケットは、DN5に接続されている装置宛の第1ユーザパケットと、CP装置1宛の第2ユーザパケットと、に分類される。したがって、UP装置2には、第1ユーザパケットを格納する第1GTPパケットを検出するための第1PDRと、第2ユーザパケットを格納する第2GTPパケットを検出するための第2PDRがCP装置1によって設定される。
【0026】
また、UP装置2には、第1GTPパケットを検出した際の処理を示す第1FARがCP装置1によって設定される。第1FARは、第1GTPパケットから第1ユーザパケットを取り出してDN5に送信することを示す。
【0027】
同様に、UP装置2には、第2GTPパケットを検出した際の処理を示す第2FARがCP装置1によって設定される。第2FARは、第2GTPパケットをさらに第3GTPパケットでカプセル化し、第3GTPパケットのヘッダに、TEIDとして、ユーザトンネルでCP装置1が受信に使用する#C1を設定してCP装置1に送信することを示す。PDUセッション#2についても同様である。つまり、UE42がCP装置1に送信する第2ユーザパケットは、BS3においてTEIDが#A3の第2GTPパケットにカプセル化される。UP装置2は、この第2GTPパケットをTEIDが#C1の第3GTPパケットにカプセル化してCP装置1に送信する。
【0028】
この様に、UEからCP装置1に送信される第2ユーザパケットは、どのUEが送信元であっても、UP装置2は、BS3から受信する第2GTPパケットをTEIDが#C1の第3GTPパケットでカプセル化してCP装置1に送信する。つまり、TEIDの値#C1は、第2FARで示される、UP装置2がCP装置1にユーザパケットを送信する転送処理において必要な情報である。図2のシーケンスにおいてCP装置1がアソシエーション設定要求メッセージでUP装置2に送信するFAR IDの値#F1は、この第2FARの識別子として使用され、アソシエーション設定要求メッセージに含まれるTEIDの値#C1に関連付けられる。FAR IDの値が#F1で特定される第2FARは、転送処理において、TEIDの値として#C1を使用することを示す。
【0029】
なお、CP装置1がUEとの間でユーザパケットを送受信する際の処理について説明したが、CP装置1は、DN5の装置とユーザパケットを送受信こともできる。DN5の装置との間で送受信されるユーザパケットについても、CP装置1とUP装置2の間は、ユーザトンネルを介して送受信される。なお、使用されるTEIDは、UEとのユーザパケットの送受信で使用するTEIDと同じである。つまり、CP装置1が送受信するユーザパケットは、CP装置1とUP装置2の間では、アソシエーションの確立時に交換したTEIDにより送受信される。さらに、図4では、5GCの用語であるPDUセッションを使用しているが、本実施形態では、EPCに対しても適用される。
【0030】
さらに、本実施形態において、CP装置1とUE41やUE42との間で送受信されるユーザパケットは、CP装置1とUP装置2との間においては、GTPパケットにより2重にカプセル化されるものとしていた。しかしながら、CP装置1とUP装置2との間においてユーザパケットを2重にカプセル化する構成に本発明は限定されない。例えば、CP装置1は、UE41に送信するユーザパケットをGTPパケットにカプセル化し、当該GTPパケットのヘッダにTEIDとして#A1を設定して送信する構成とすることができる。この場合、UP装置2は、受信したGTPパケットからユーザパケットを取り出し、取り出したユーザパケットをGTPパケットで再カプセル化し、このGTPパケットのヘッダにTEIDとして#B1を設定してBS3に送信する。なお、この場合、ユーザパケットの宛先がUE41であるGTPパケットを検出するPDRがUP装置2に設定され、当該PDRに関連付けたFARで前述した転送処理を行うことが示される。UE41からのユーザパケットをCP装置1に送信する場合も同様である。つまり、UP装置2は、UE41から受信したGTPパケットからユーザパケットを取り出し、取り出したユーザパケットをGTPパケットで再カプセル化し、このGTPパケットのヘッダに、TEIDとして#C1を設定してCPU装置1に送信する。
【0031】
なお、4Gネットワーク及び5Gネットワークの文脈で実施形態の説明を行ったが、本実施形態は、UPとCPが分離した、所謂、CUPSアーキテクチャを使用する任意の通信ネットワークに適用することができる。つまり、ユーザパケットを転送するUP装置と、当該UP装置におけるユーザパケットの転送処理を制御するCP装置とが分離しており、CP装置がUP装置を介して他の通信装置との間でユーザパケットを送受信でき、CP装置とUP装置との間ではユーザパケットがカプセル化される通信ネットワークに対して本実施形態を適用することができる。
【0032】
図5は、本実施形態によるCP装置1の機能ブロック図である。CP装置1は、例えば、ネットワーク仮想化技術(NFV)を使用することで、汎用の1つ以上のコンピュータにおいて実現され得る。つまり、CP装置1は、それぞれが1つ以上のプロセッサを有する1つ以上の装置において、各プロセッサに適切なコンピュータプログラムを実行させることで実現され得る。なお、CP装置1は、例えば、3GPP(登録商標)におけるSMFや、PGW-C又はSGW-Cの機能を実装する装置であり得る。
【0033】
制御部13は、CP装置1の全体を制御する。ユーザパケット処理部14は、例えば、ユーザパケットの送受信処理、つまり、送信するユーザパケットのGTPパケットへのカプセル化や、受信するGTPパケットのディカプセル化を行う。
【0034】
送信部11は、例えば、PFCPといった、所定の通信プロトコルに従う制御信号をUP装置2に送信する。例えば、送信部11は、UP装置2の制御を可能とするためにUP装置2にアソシエーション設定要求メッセージ(第1メッセージ)を送信する。なお、送信部11は、アソシエーション設定要求メッセージに、UP装置2がCP装置1にユーザパケットを送信するための第1情報を含める。第1情報は、UP装置2がユーザパケットを第1パケットでカプセル化してCP装置1に送信する際に第1パケットのヘッダに設定すべき第1識別子を示す。第1パケットは、例えば、GTPパケットであり、第1識別子はTEIDであり得る。
【0035】
さらに、送信部11は、第1識別子に関連付けられた第3識別子をアソシエーション設定要求メッセージに含める。第3識別子は、CP装置1が後にUP装置2に設定する、ユーザパケットを第1パケットでカプセル化してCP装置1に送信する転送処理の識別子として使用され得る。例えば、第3識別子は、FAR IDであり得る。さらに、送信部11は、アソシエーション設定要求メッセージが第1情報を含むか否かを示すフラグ情報をアソシエーション設定要求メッセージに含めることができる。
【0036】
受信部12は、制御信号をUP装置2から送信する。例えば、受信部12は、アソシエーション設定要求メッセージの応答として、UP装置2からアソシエーション設定応答メッセージ(第2メッセージ)を受信する。アソシエーション設定応答メッセージは、UP装置2がユーザパケットをCP装置1から受信するための第2情報を含み得る。第2情報は、CP装置1がユーザパケットを第2パケットでカプセル化してUP装置2に送信する際に第2パケットのヘッダに設定すべき第2識別子を示し得る。第2パケットは、例えば、GTPパケットであり、第2識別子はTEIDであり得る。さらに、アソシエーション設定応答メッセージは、アソシエーション設定応答メッセージが第2情報を含むか否かを示すフラグ情報を含み得る。
【0037】
図6は、本実施形態によるUP装置2の機能ブロック図である。UP装置2は、例えば、ネットワーク仮想化技術(NFV)を使用することで、汎用の1つ以上のコンピュータにおいて実現され得る。つまり、UP装置2は、それぞれが1つ以上のプロセッサを有する1つ以上の装置において、各プロセッサに適切なコンピュータプログラムを実行させることで実現され得る。なお、UP装置2は、例えば、3GPP(登録商標)におけるUPFや、PGW-U又はSGW-Uの機能を実装する装置であり得る。
【0038】
制御部23は、UP装置2の全体を制御する。通信インタフェース部25は、BS3やDN5と通信するための通信インタフェースである。転送処理部24は、CP装置1により設定されたPDRやFAR等に基づきユーザパケットの転送処理を行う。
【0039】
送信部21及び受信部22は、例えば、PFCPといった、所定の通信プロトコルに従う制御信号をCP装置1と送受信する。例えば、受信部22は、CP装置1がUP装置2の制御を可能とするためにUP装置2に送信するアソシエーション設定要求メッセージを受信する。送信部21は、アソシエーション設定要求メッセージの応答として、CP装置1にアソシエーション設定応答メッセージを送信する。なお、アソシエーション設定要求メッセージにUP装置1がCP装置2にユーザパケットを送信するための第1情報が含まれている場合、送信部21は、UP装置2がユーザパケットをCP装置1から受信するための第2情報をアソシエーション設定応答メッセージに含める。第1情報は、UP装置2がユーザパケットを第1パケットでカプセル化してCP装置1に送信する際に第1パケットのヘッダに設定すべき第1識別子を示し得る。また、第2情報は、CP装置1がユーザパケットを第2パケットでカプセル化してUP装置2に送信する際に第2パケットのヘッダに設定すべき第2識別子を示し得る。第1パケット及び第2パケットはGTPパケットであり、第1識別子及び第2識別子は、トンネルエンドポイント識別子(TEID)であり得る。
【0040】
さらに、送信部21は、アソシエーション設定応答メッセージが第2情報を含むか否かを示すフラグ情報を、アソシエーション設定応答メッセージに含め得る。
【0041】
上述した様に、本開示によるCP装置1及びUP装置2は、コンピュータプログラムにより実現され得る。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0042】
以上、本実施形態によると、CP装置1とUP装置2は、アソシエーションを確立するときに、CP装置1とUP装置2との間でユーザパケットを送受信するために必要な情報を交換する。この構成により、PDUセッションやベアラを設定する際に、当該情報を交換する必要がなくなり、よって、CP装置1とUP装置2との間の制御信号で送受信する情報量を削減することができる。
【0043】
以上の構成により、CP装置とUP装置との間の制御信号で送受信する情報量を削減することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0044】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
11:送信部、12:受信部
【要約】
【課題】CP装置とUP装置との間の制御信号で送受信する情報量を削減する技術を提供する。
【解決手段】移動通信ネットワークにおいてユーザパケットを転送するユーザプレーン装置を制御する制御プレーン装置は、前記ユーザプレーン装置の制御を可能とするために前記ユーザプレーン装置に第1メッセージを送信する送信手段と、前記第1メッセージの応答として、前記ユーザプレーン装置から第2メッセージを受信する受信手段と、を備え、前記送信手段は、前記第1メッセージに、前記ユーザプレーン装置が第1ユーザパケットを前記制御プレーン装置に送信するための第1情報を含める。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6