(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】差込式挿入体
(51)【国際特許分類】
F16L 37/091 20060101AFI20240909BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20240909BHJP
F16L 21/02 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
F16L37/091
F16L21/08 B
F16L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2023090697
(22)【出願日】2023-06-01
【審査請求日】2023-06-01
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522166851
【氏名又は名称】アーファウエス インジェニエーア ヨット ツェー レーマー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ジルバーバウアー
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/010452(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0145249(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104487751(CN,A)
【文献】特表2008-534888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0033090(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101156018(CN,A)
【文献】特開2006-010010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0285394(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1715725(CN,A)
【文献】特開平06-300175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/091
F16L 21/08
F16L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(3)への挿入のために設計された差込式挿入体であって、
前記差込式挿入体(1)は、前記本体(3)における管状要素(2)の解放可能な結合のために設計されており、
前記差込式挿入体(1)は、差込式スリーブ(5)、固定要素(6)、及び解放部材(7)を有し、
前記固定要素(6)は、管状要素(2)の解放可能な固定のために設計され、前記固定要素(6)は、挿入開口(E)を介して差込式スリーブ(5)内に挿入され、前記解放部材(7)は、前記差込式スリーブ(5)に対する前記解放部材(7)の軸方向移動によって管状要素(2)の固定が解放されるように前記固定要素(6)と協働し、
前記差込式スリーブ(5)は、少なくとも1つの壁要素(5A、5B)を形成するスリーブ部分(5.1)を備え、
前記壁要素(5A、5B)は、金属製平坦材料部分を殻形状又は円周方向に閉じた要素にスタンピング及び曲げ加工することにより形成され、
前記差込式スリーブ(5)は、前記挿入開口(E)とは反対側の第2の自由端(5b)に、シール要素(4)のための接触面を形成するためのフランジ(5.1.2)を有し、これによって前記管状要素(2)と前記本体(3)との間の移行部がシールされ、
-前記差込式スリーブ(5)に一体的に形成された固定部材は、前記差込式スリーブを前記本体に固定するために設けられており、前記固定部材は、前記差込式挿入体(1)を前記本体(3)に固定するために設けられており、前記固定部材は、
○前記差込式スリーブ(5)上に円周方向に分散配置されるように配置され且つ前記フランジ(5.1.2)の領域に設けられている複数の爪(5.1.3)によって形成され、
○若しくは少なくとも1つのリブ(5.1.7)によって形成され、前記差込式スリーブ(5)は、前記固定要素(6)が端部で保持されるビード(5.1.1)を有し、前記差込式スリーブ(1)の外壁部分は、前記ビード(5.1.1)の領域で前記少なくとも1つのリブ(5.1.7)を形成するか又は前記リブ(5.1.7)を含み、又は、
-前記差込式スリーブ(5)は、前記本体(3)の縁領域(3.1)を形成することで、前記本体(3)に固定されるように設計され、前記差込式スリーブ(5)は、前記管状要素(2)のための前記挿入開口(E)が設けられた第1の自由端(5a)に、別個のカラー要素(8)により形成されたカラー部分(5.2)を有し、前記カラー要素(8)は、前記差込式挿入体(1)を前記本体(3)に固定するために、形成された前記本体(3)の縁領域(3.1)によって包囲されるように設計された傾斜面(8.5)又は肩部(8.6)を、外周側に有する、
差込式挿入体。
【請求項2】
前記フランジ(5.1.2)は、前記差込式挿入体(1)の長手方向軸(LA)に対して半径方向外向きに突出し、円周方向で互いに間隔を置いて配置される複数のフランジセグメントを備え、前記爪(5.1.3)は、前記フランジセグメントの間に形成される中間空間に円周方向に分散配置されるように設けられる、すなわち、いずれの場合も、1又は2以上の爪(5.1.3)は、2つの連続する前記フランジセグメントの間に形成される中間空間にある、請求項1に記載の差込式挿入体。
【請求項3】
前記スリーブ部分(5.1)は、円周方向に閉じた要素を形成するために全体的にスタンピングされ、成形され、及び曲げられた単一の平坦材料片から作られている、請求項1又は2に記載の差込式挿入体。
【請求項4】
前記スリーブ部分(5.1)は、壁要素として、スタンピングされ、成形され、殻形状に曲げられた少なくとも2つの平坦材料片を備え、前記少なくとも2つの平坦材料片は一緒に接合されて円周方向に閉じたスリーブ部分(5.1)を形成する、請求項1又は2に記載の差込式挿入体。
【請求項5】
前記カラー要素(8)は、平坦材料から作られているリング状要素であり、上側(8.1)から所定の角度で突出し外周側で閉じられている壁部(8.2)を有する、請求項1又は2に記載の差込式挿入体。
【請求項6】
前記カラー要素(8)は、内周側に、前記解放部材(7)の軸方向移動経路を制限するための複数の停止部分(8.3)を有する、請求項1又は2に記載の差込式挿入体。
【請求項7】
前記固定要素(6)は、差込式スリーブ(5)に固定され、内周側に、前記管状要素(2)を固定するための複数の可逆的に曲げられる爪(6.1)を有する円板状の爪リングである、請求項1又は2に記載の差込式挿入体。
【請求項8】
前記固定要素(6)は、前記爪リングの環状部分と前記爪(6.1)との間の移行領域において湾曲部を有し、前記湾曲部の凸側は前記挿入開口(E)の方向を向いている、請求項7に記載の差込式挿入体。
【請求項9】
前記スリーブ部分(5.1)は、前記固定要素(6)が保持される中央領域と、前記挿入開口(E)とは反対側の前記差込式スリーブ(5)の第2の自由端(5b)との間で漏斗状にテーパー付けされるように設計されている、請求項1又は2に記載の差込式挿入体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差込式挿入体に関する。
【背景技術】
【0002】
管状要素、例えばホースを、本体、例えばホースカップリングのハウジング、バルブ、センサ、ポンプなどに解放可能に結合するための差込式挿入体は、例えば本出願人の独国特許出願公開第102018121440号明細書から公知である。
【0003】
軸方向から見て、公知の差込式挿入体は、圧入スリーブ及び支持リングからなる2部品の差込式スリーブと、爪リングとして差込式スリーブに配置された固定要素と、解放部材が差込式スリーブに押し込まれると、固定要素の爪が変形し、結果として管状要素を本体から引き出すことができるように固定要素と協働する解放部材と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102018121440号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知の差込式挿入体の大きな欠点は、差込式挿入体の個々の部品の製造及び結合が非常に複雑であることである。これまで、差込式スリーブ又はその個々の部品は、機械加工によって製造した後に組み立てる必要があった。
【0006】
これに基づいて、本発明の目的は、製造及び組み立ての労力が低減され、製造コストを下げることができる差込式挿入体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項1の特徴を具備する差込式挿入体によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
第1の態様によれば、差込式挿入体が開示される。差込式挿入体は、本体内に挿入され、管状要素を本体と解放可能に結合するように使用される。差込式挿入体は、差込式スリーブと、固定要素と、解放部材とを含む。固定要素は、挿入開口を介して挿入された管状要素を差込式スリーブに解放可能に固定するように設計されている。解放部材は、差込式スリーブに対する解放部材の軸方向の移動によって管状要素の固定が解放されるように、固定要素と協働する。差込式スリーブは、少なくとも1つの壁要素から形成されるスリーブ部分を備える。壁要素は、金属製平坦材料部分をスタンピング及び曲げ加工して、殻形状又は円周方向に閉じた要素にすることによって形成される。第1の選択肢によれば、差込式スリーブを本体に固定するために、差込式スリーブと一体の固定部材が提供される。固定部材は、差込式挿入体を本体に固定するために提供される。固定部材は、差込式スリーブの上に円周方向に分散配置される複数の爪又は戻り止めによって、又は少なくとも1つのリブによって形成される。第2の選択肢によれば、差込式スリーブは、本体の縁領域を形成することで、本体に固定されるように設計される。
【0009】
差込式挿入体の技術的利点は、その差込式スリーブを、スタンピング及び曲げ成形技術によって製造することで、労力を低減して、結果として低コストとすることがきる点である。加えて、差込式挿入体を本体に固定することにより、差込式挿入体の本体へのしっかりした固定が実現される。
【0010】
例示的な1つの実施形態によれば、差込式スリーブは、挿入開口とは反対側の第2の自由端にシール要素のための接触面を形成するフランジを有し、これによって管状要素と本体との間の移行部がシールされる。フランジ上のシール要素の平面当接により、シーリングエレメントは差込式挿入体によって所定の位置に保持される。
【0011】
例示的な1つの実施形態によれば、差込式挿入体を本体に固定されるための爪は、フランジの領域に設けられている。爪をフランジの領域に設けることにより、差込式挿入体の高さを低くすることができる。加えて、爪を使用することにより、圧入により本体に保持される差込式挿入体と比較して、より少ない力で差込式挿入体を押し込むことができる。
【0012】
爪は、挿入開口の方向に斜め上方に突出することができ、差込式挿入体が本体から解放されるのを効果的に防止するために、例えば、本体、詳細には本体のビードにフック留めするように設計することができる。しかしながら、プラスチック材料で形成された本体における爪のフック留めは、ビードなしで又は本体の壁に溝がなくても可能であることが言及される。この場合、爪は、本体の溝のない又はビードのない壁に直接押し込まれる。
【0013】
例示的な1つの実施形態によれば、フランジは、差込式挿入体の長手方向軸に対して半径方向外向きに突出し、円周方向で互いに間隔を置いて配置される複数のフランジセグメントを備える。爪は、フランジセグメントの間に形成される中間空間に円周方向に分散配置されるように設けられる、すなわち、いずれの場合も、1又は2以上の爪は、2つの連続するフランジセグメントの間に形成される中間空間にある。従って、差込式挿入体の第2の自由端の領域に設けられる平坦材料の第1の領域は、フランジを形成するために使用することができ、同様に差込式挿入体の第2の自由端の領域に設けられる平坦材料の第2の領域は、爪を形成するために使用することができる。また、フランジセグメントは、差込式スリーブの自由端を本体内でセンタリングするために使用することができる。
【0014】
例示的な1つの実施形態によれば、差込式スリーブは、固定要素が端部で保持されるビードを有する。これにより、例えば別個の環状要素である固定要素を、差込式スリーブ内において相互連結で保持することができる。
【0015】
例示的な1つの実施形態によれば、差込式スリーブは、固定要素が端部で固定されるビードを有する。換言すれば、スリーブ部分のビードは、好ましくは円周方向に膨らみを形成し、そこに固定要素の端部が挿入され、結果としてビード内に相互連結様式で保持される。この場合、固定要素は、スリーブ部分を形成する壁面要素が全体的に曲げられるときに、又は複数の壁面要素からなるスリーブ部分が組み立てられるときに、差込式スリーブ内に挿入することができる。あるいは、固定要素は、軸方向でスリーブ部分に押し込み、スナップ機構によって差込式スリーブに保持することも可能である。従って、固定要素は、円周方向に閉じたスリーブ部分の形成後に差込式スリーブに挿入することができる。
【0016】
例示的な1つの実施形態によれば、差込式スリーブの外壁部分は、固定要素が保持されるビードの領域において少なくとも1つのリブを形成する、又は外壁部分はリブを含む。少なくとも1つのリブによって、差込式挿入体は、圧入によって本体内に固定することができる。
【0017】
例示的な1つの実施形態によれば、それによって差込式スリーブが本体に係止される戻り止めは、挿入開口の領域に設けられた差込式スリーブの第1の自由端と固定要素との間で差込式スリーブの壁部分に設けられる。戻り止めは、スタンピングされていない特定の領域でありかつ半径方向及び斜め外向きに突出する、差込式スリーブの材料部分によって形成される。このタイプの固定により、差込式挿入体は、固定要素の上方の領域、すなわち挿入開口の領域において本体に固定することができる。
【0018】
例示的な1つの実施形態によれば、スリーブ部分は、円周方向に閉じた要素を形成するために全体的にスタンピングされ、成形され、及び曲げられる単一の平坦材料片によって形成される。従って、スリーブ部分は、多段階のスタンピング、曲げ、及び成形工程によって、単一の平坦材料片によって製造することができる。スタンピング、曲げ、及び成形工程は、詳細には、最初は互いに相隔たる平板材料の2つの長手方向側面が、互いに向き合い、互いに隣接するように位置するようになることを実現する。平坦材料の長手方向側面は、形成される接合部において、例えば相互連結及び/又は一体的に接合された結合、詳細には溶接によって、互いに対して固定され得る。
【0019】
例示的な1つの実施形態によれば、スリーブ部分は、壁要素としての殻又はボウルを形成するためにスタンピング、成形及び曲げ加工された少なくとも2つの平坦材料片を備え、これらは一緒に接合されて円周方向に閉じたスリーブ部分が形成される。換言すれば、複数の殻形状の壁要素は、スタンピング、曲げ及び成形工程で同時に又は連続的に製造される。殻形状の壁要素は、外側に凸の形状を有する。円周方向に分割されたスリーブ部分は、1つの壁要素の長手方向側面が次の壁要素の長手方向側面に隣接するように壁要素を組み立てることによって形成される。互いに隣接する長手方向側面は、例えば、スポット溶接することができる。好ましくは、スリーブ部分は、2つの半ボウル形状の壁要素から形成される。スリーブ部分の円周方向の分割により、スリーブ部分は、複雑な成形工程にもかかわらず、スタンピング及び曲げ工程によって製造することができる。
【0020】
例示的な1つの実施形態によれば、差込式スリーブは、管状要素のための挿入開口が設けられる第1の自由端において、壁要素の金属製平坦材料の縁曲げによって形成される、又は別個のカラー要素によるカラー部分を有する。従って、カラー部分は、壁要素に一体的に形成すること又は別個のカラー要素をスリーブ部分に適用することができる。カラー部分及び/又はカラー要素は、スリーブ部分と本体との間の環状の隙間に重なるように設計されており、この隙間は、スリーブ部分を円周方向に取り囲む。
【0021】
例示的な1つの実施形態によれば、カラー要素は、平坦材料で作られたリング状の設計要素であり、上面から所定の角度で突出し、外周側で閉鎖されている壁部を有する。その結果、カラー要素は、例えば深絞り工程又は別の成形工程によって平坦材料から形成することもできる。
【0022】
例示的な1つの実施形態によれば、カラー要素は、内周側に、解放部材の軸方向の移動経路を制限するための複数の停止部分を有する。解放部材は、外周側に、軸方向移動経路を制限するための停止部分と協働する突起又は肩部を有することができる。従って、カラー要素は、差込式スリーブからの解放部材の望ましくない解放を阻止するために使用することができる。
【0023】
例示的な1つの実施形態によれば、カラー要素は、自由端において差込式スリーブのスリーブ部分上に配置され、加圧ロック(force-locking)及び/又は強固に接合された方式でそれに結合される。カラー要素は、自由端でスリーブ部分の壁に少なくとも部分的に重なるように設計することもできる。これにより、カラー要素は、スリーブ部分に固定することができる。同時に、カラー要素によって、差込式スリーブの安定性を向上させることができる。
【0024】
例示的な1つの実施形態によれば、カラー要素は、外周側に傾斜面又は肩部を有し、この肩部は、差込式挿入体を本体に固定するために、本体の成形された縁領域によって包囲されるように設計されている。カラー要素の断面的な重なりにより、本体における差込式挿入体のしっかりした固定を実現することができる。
【0025】
例示的な1つの実施形態によれば、固定要素は、差込式スリーブに固定され、内周側に、管状要素を固定するために複数の可逆的に曲げられる爪を有する円板状の爪リングである。爪リングに管状要素が挿入されていない状態では、爪は半径方向又は実質的に半径方向内向きに向いており、管状要素が爪リングに挿入されると挿入方向に変形して、爪が自由端で管状要素の壁に係合し、それによって管状要素が挿入方向と反対に押し出されることが阻止される。
【0026】
例示的な1つの実施形態によれば、固定要素は、爪リングの環状部分と爪との間の移行領域において湾曲部を有し、湾曲部の凸側は、挿入開口の方向を向いている。湾曲部は、円周方向に設けることができる。湾曲部により、解放部材の挿入時に固定要素のスナップ(snap)を実現することができ、解放部材の触覚及び操作に有利となる。
【0027】
例示的な1つの実施形態によれば、スリーブ部分は、固定要素が保持される中央領域と、挿入口とは反対側の差込式スリーブの第2の自由端との間で、漏斗状にテーパーが付けられている。その結果、スリーブ部分は、第2の自由端に向かってテーパー付けされ、そこでシール要素のための接触面を形成することができる。加えて、スリーブ部分の漏斗状のテーパー部は、管状要素の横方向案内を実現するために使用することができるので、管状要素は、中心に配置される方式でシール要素に挿入することができる。
【0028】
例示的な1つの実施形態によれば、差込式スリーブは、ステンレス鋼ストリップ材料から製造される。その結果、差込式挿入体は、食品用途に使用することができ、材料の使用量が減少するので、高いコスト削減を達成することができる。他の材料、例えば、真鍮、青銅、アルミニウムを使用することもできる。
【0029】
例示的な1つの実施形態によれば、解除部材は、差込式スリーブの凹部に係合し、固定要素から離れる着脱要素の摺動移動を制限するフックを外側に有する。あるいは、解放部材は、解放部材の固定要素から離れる方向の摺動移動を制限するために、内周側に設けられた差込式スリーブの突起が係合する凹部を有することができる。
【0030】
好ましくは、差込式挿入体は、最大20barの連続圧力及び最大100barの圧力ピークに対応するように設計されている。
【0031】
例えば、差込式挿入体は、2mmから40mmの間の範囲、詳細には4mmから32mmの間の範囲の管状要素の外径に対応するように設計することができる。
【0032】
本開示の意味での「スタンピング及び曲げ工程」は、金属スタンピング材が曲げ加工、エンボス加工及び/又は深絞り加工によって具体的に形成される成形工程を意味すると理解される。
【0033】
本開示で使用される場合、用語「金属」は、純金属又は複数の異なる金属を含む合金を意味すると理解される。
【0034】
「約」、「実質的に」又は「およそ」という表現は、本発明の意味において、それぞれ正確な値から±10%、好ましくは±5%の偏差、及び/又は機能にとって重要でない変化の形の偏差を意味する。
【0035】
本発明のさらなる進展、利点及び可能な用途は、例示的な実施形態の以下の説明及び図面によってもたらされる。これに関連して、説明及び/又は図示された全ての特徴は、原則として、請求項の概要又はそれらの後方参照に関係なく、個別に又は何らかの組み合わせで本発明の主題である。さらに、特許請求の範囲の内容は、本明細書の一部とされる。
【0036】
本発明は、例示的な実施形態を用いて複数の図面を参照しながら以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】差込式挿入体の第1の例示的な実施形態の縦断面図を例示的に示す。
【
図2】
図1に示された差込式挿入体の第1の例示的な実施形態の縦断面分解図を例示的に示す。
【
図3】差込式挿入体の第2の例示的な実施形態の縦断面図を例示的に示す。
【
図4】差込式挿入体の第3の例示的な実施形態の縦断面図を例示的に示す。
【
図5】差込式挿入体の第4の例示的な実施形態の縦断面図を例示的に示す。
【
図6】差込式挿入体の第5の例示的な実施形態の縦断面図を例示的に示す。
【
図7】スタンピング、曲げ、及び成形技術によって製造された材料片を全体的に円周方向に曲げることによって、差込式挿入体の差込式スリーブを形成することを例示的かつ概略的に示す。
【
図8】本体に固定された差込式挿入体の第6の例示的な実施形態の縦断面図であり、差込式挿入体は、本体のビード付き縁領域によって本体に固定される。
【
図9】本体のビード付き縁領域によって本体に固定される差込式挿入体の第7の例示的な実施形態の縦断面図を例示的に示す。
【
図10】本体のビード付き縁領域によって本体に固定される差込式挿入体の第8の例示的な実施形態の縦断面図を例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1及び2は、差込式挿入体1の第1の例示的な実施形態を示す。差込式挿入体1は、管状要素2を本体3内に解放可能に固定するために使用される。管状要素2は、例えば、円形断面を有するホース又は管体とすることができる。本体3は、例えば、ホース継手、バルブ、分配器、センサ、ポンプなどのハウジングとすることができる。
【0039】
差込式挿入体1は、管状要素2と本体3との間の結合ピースを形成し、本体3内の開口に挿入されるように設計されている。差込式挿入体1の内部には収容空間があり、そこに管状要素2の自由端を挿入して固定することができるので、差込式挿入体1を本体3に固定し、管状要素2を差込式挿入体1に固定することによって、管状要素2は、本体3に解放可能に保持される。管状要素2と本体3との間の移行部をシールするために、シール要素4が設けられる。
図1及び2に示すように、シール要素4は、例えば、エラストマー成形部品として設計すること又はOリングとすることもできる。
【0040】
差込式挿入体1は、差込式スリーブ5、固定要素6、及び解放部材7を備える。差込式スリーブ5は、中空体設計であり、少なくとも部分的に、差込式挿入体1の円周方向壁を形成する。差込式スリーブ5は、第1の自由端5aに挿入開口Eを有し、これを介して管状要素2を差込式挿入体1内に挿入することができる。挿入開口Eに隣接して、貫通経路DKが差込式スリーブ5の内部に形成され、その中に管状要素2を挿入することができる。
【0041】
差込式スリーブ5の内部には、固定要素6が収容されている。固定要素6は、管状要素2を差込式挿入体1内で軸方向に係止するように設計されている。図示された例示的な実施形態では、固定要素6は、リング状要素である。外周側では、固定要素6は、相互連結方式で差込式スリーブ5内に固定されている。図示された実施形態では、外周側に設けられた固定要素6の縁領域は、内周側に設けられた差込式スリーブ5のビード5.1.1に落ち込み、その結果、固定要素6は軸方向で差込式スリーブ5内に保持される。
【0042】
固定要素6は、内縁に複数の爪6.1を有する。換言すれば、固定要素6は、爪リングとして設計されている。爪6.1は、固定要素6の貫通開口の周りに配置されている。貫通開口の直径は、管状要素2が挿入方向に挿入される場合に爪6.1が変形し、最終挿入位置に達した後に管状要素2の壁に係合するように、管状要素2の外径よりも小さい。このように、固定要素6は、管状要素2が差込式挿入体1から望ましくない方式で外れないことを保証する。
【0043】
解放部材7は、管状要素2を差込式挿入体1から再び引き出すことができるように、管状要素2における固定要素6の爪6.1の係合を解放するように設計されている。解放部材7は、好ましくはスリーブ状であり、その内部に貫通経路を有し、管状要素2はこの経路を通して押し込むことができる。
【0044】
解放部材7は、挿入開口Eを介して差込式スリーブ5に挿入される。差込式スリーブ5内に位置する解放部材7の自由端は、解放部材7の軸方向挿入時に解放部材7の自由端が挿入方向下方に爪6.1を押圧し、それによって爪6.1の管状要素2の壁への係合を解除するように、固定要素6の爪6.1と協働するよう設計されている。
【0045】
差込式スリーブ5は、スリーブ部分5.1及びカラー部分5.2を有する。スリーブ部分5.1は、差込式スリーブ5の壁を形成し、貫通経路DKを円周方向に取り囲む。スリーブ部分5.1は、第1の自由端5aに直接隣接する第1の領域5.1aにおいて、円管状の設計を有する。
【0046】
第1の部分に続いて第2の領域5.1bがあり、第2の領域5.1b上には、平坦材料をエンボス加工することによって内周側にビード5.1.1が形成される。固定要素6の外縁は、このビード5.1.1に収容され、結果としてスリーブ部分5.1に相互連結方式で固定される。
【0047】
第2の自由端5bの方向で、第2の領域5.1bに続いて第3の領域5.1cがあり、この領域ではスリーブ部分5.1が第2の自由端5bに向かってテーパー付けされている。換言すれば、スリーブ部分5.1の壁は、第3の領域5.1cにおいて漏斗形にテーパー付けされるように設計されている。結果として、挿入された管状要素2は中心に置かれ、従って、第2の自由端5bに形成された貫通開口Dに正しい位置で与えられる。
【0048】
スリーブ部分5.1の第4の領域5.1dは、差込式スリーブ5の第2の自由端5bに設けられており、この領域には、フランジ5.1.2が形成される。フランジ5.1.2は、例えば、半径方向外向きに突出して平面である1又は2以上の平坦材料部分によって形成される。フランジ5.1.2は、ここでは、差込式挿入体1の長手方向軸LAに対して垂直に延在する平面内に位置するようになる。
【0049】
フランジ5.1.2は、円形リングの形状を有すること、又は円形リングセグメントとして設計された複数のフランジを有することができる。フランジ5.1.2は、管状要素2と本体3との間の移行部をシールするシール要素4のための接触面を形成する。これにより、シール要素4は、差込式挿入体1によって所定位置に保持することができる。加えて、フランジ5.1.2は、本体3に形成されかつ差込式挿入体1が挿入される凹部に適合するサイズ及び半径方向の円周方向形状を有している、すなわち、差込式挿入体1は、フランジ5.1.2によって本体3内で中心に位置するようになっている。
【0050】
図1及び2による例示的な実施形態は、本体3内に差込式挿入体を固定する第1の可能性を示す。この固定のために、第2の自由端5bの領域に爪5.1.3が形成される。爪5.1.3は、スリーブ部分5.1に一体的に設計されたタブによって形成され、長手方向軸LAに対して斜め上方に突出しており、爪は、差込式挿入体1を本体3の凹部に挿入した後、この凹部に差込式挿入体1を係止し、結果として本体3からの差込式挿入体1の望ましくない解放(例えば、管状要素2内に収容された加圧流体による)を阻止するように設計されている。この結合では、爪5.1.3は、本体3の凹部に設けられた溝と係合することができる。あるいは、爪5.1.3は、本体3の凹部の滑らかな壁(すなわち、溝がない凹部)における差込式挿入体1の係止をもたらすように設計することができる。
【0051】
図示された例示的な実施形態では、複数の爪5.1.3は、差込式挿入体1の第2の自由端5bに円周方向に分散配置され、互いに相隔たるように配置される。差込式挿入体の直径に応じて、例えば、4、6又はそれ以上の爪5.1.3を設けることができる。フランジ5.1.2のフランジセグメントは、好ましくは、一対の爪5.1.3の間に設けられる。このフランジセグメントは、好ましくは、円環状セグメントの形状を有することができる、すなわち限定された角度範囲のみにわたって延在する。フランジセグメントによって、例えば、本体3における差込式挿入体1のセンタリングが達成される。好ましくは、
図1から分かるように、爪5.1.3の脚部は、シール要素4の接触領域を形成し、爪5.1.3の脚部は、爪5.1.3の間に位置するフランジセグメントと一緒なってシール要素4のための接触面を形成するようになっている。
【0052】
爪5.1.3は、好ましくは、差込式挿入体1の長手方向軸LAに対して挿入開口Eの方向に広がる鋭角を囲み、この角度は、好ましくは20°と45°との間、詳細には25°と35°との間、より好ましくは30°又は実質的に30°の値を有する。
【0053】
スリーブ部分5.1は、スタンピング、曲げ、成形技術により、1又は2以上の金属製平坦材料片から製造される。少なくとも1つの平坦材料片は、最初にスタンピングされる。その後、少なくとも1つの平坦材料片の材料の成形が行われ、例えば、ビード5.1.1がエンボス加工によって形成され、及び/又はフランジ5.1.2及び爪5.1.3が曲げ加工によって製造される。
【0054】
スリーブ部分5.1を形成する単一の材料片の場合、先にスタンピングされた単一の材料片は、次に、全体的に曲げられて管状体を形成し、単一の材料片の長手方向側面は、互いに向き合い、好ましくは接合部が形成されるように互いに当接するようになっている。
図7には、スタンピング及び成形された材料片の管状差込式スリーブへの全体的な曲げ加工が概略的に示されている。接合部では、少なくとも部分的な溶接を行うことができる。
【0055】
スリーブ部分5.1が複数の材料片によって形成される場合、
図2に示すように、先にスタンピングされ形成された材料片は、次に、いずれの場合も曲げられて、殻形状の壁要素5A、5Bが形成される。2つの壁要素の場合、これらの要素は半殻形状に設計される。これらの要素は、同一とすること又は異なることができるが、殻形状の壁要素5A、5Bが組み立てられた後、円周方向に閉じた要素が形成されるように、互いに一致するように設計される。壁要素5A、5Bの後続の組み立てにより、スリーブ部分5.1が形成される。3以上の壁要素5A、5Bの場合、これらの要素はそれぞれ殻形状セクタを形成し、スリーブ部分5.1は、これらの3又は4以上のボウル形状のセクタを組み立てることによって形成される。壁要素5A、5Bが組み立てられた後、接合部において少なくとも部分的な溶接を実施することができる。好ましくは、壁要素5A、5Bは、フランジ5.1.2の領域において接合部で溶接される。代替的に又は追加的に、壁要素5A、5Bは、例えば互いにかみ合う蟻継ぎによって、相互連結様式で一緒に保持することも可能である。
【0056】
上述のように、カラー部分5.2は、差込式スリーブ5の第1の自由端5aの領域に設けられている。カラー部分5.2は、詳細には、差込式スリーブ5の自由端の半径方向の拡大をもたらすことができる。カラー部分5.2の外径は、詳細には、円形リングの形状を有し、スリーブ部分5.1の外側の周りに広がる本体3の開口領域が、カラー部分5.2によって完全に覆われるように選択することが可能である。
【0057】
図示された例示的な実施形態では、カラー部分5.2及びスリーブ部分5.1は、別々に製造された部品であり、その後に組み立てられる。従って、支持スリーブ5のカラー部分5.2は、平坦材料片から別個のカラー要素8として製造することができ、平坦材料片はスタンピング、曲げ及び深絞りによって、円形リングの形状を有する要素に形成される。スリーブ部分5.1及びカラー要素8が製造された後、カラー要素8は、スリーブ部分5.1上に、詳細にはフランジ5.1.2とは反対側の上部自由端に接合される。カラー要素8は、スリーブ部分5.1に、加圧ロック方式又は強固に接合された方式で結合することができる。詳細には、カラー要素8とスリーブ部分5.1との間の結合は、互いに係合する又は噛み合う材料部分によって行うことができる。代替的に又は追加的に、カラー要素8とスリーブ部分5.1との間の結合は、部分的な溶接によって行うことができる。好ましくは、スリーブ部分5.1及びカラー要素8は、共通のスタンピング及び曲げ機械、例えばスタンピング及び曲げ機械の2つの工程ラインで同時に製造され、各工程ラインは、機械の反対側に設けられる。スリーブ部分5.1及びカラー要素8の形成に必要な平坦材料片の搬送は、この場合、互いに独立した2つの搬送ベルト、すなわち、スリーブ部分5.1のための少なくとも1つの平坦材料片用の第1の搬送ベルト及びカラー要素8のための平坦材料片用の第2の搬送ベルトによって行うことがでる。
【0058】
あるいは、スリーブ部分5.1及びカラー要素8を一つの工程ラインで製造し、スリーブ部分及びカラー要素の形成に必要な平担材料片を1つの搬送ベルト上に配置し、搬送ベルトの移動によって搬送することが考えられる。
【0059】
図示された例示的な実施形態では、スリーブ部分5.1は、フランジ5.1.2とは反対側の自由端に、高さ輪郭部又は段部を有する。カラー要素8は、その内側円周側において、スリーブ部分5.1の高さ輪郭部又は段部に適合する輪郭部を有し、カラー要素8は、スリーブ部分5.1上に相互連結方式で配置できるようになっている。スリーブ部分5.1の輪郭部は、詳細には、長手方向軸LAと平行に上方に突出する複数のタブ5.1.4によって形成することができる。
【0060】
好ましくは、カラー要素8は、円形リングの形状を有し、第1の部分において断面がU字形の輪郭を有し、第2の部分において断面がL字形の輪郭を有する。第1の部分及び第2の部分は、円周方向に分散配置されかつ円周方向に交互に配置されており、断面がU字形の輪郭を有する第1の部分の後に断面がL字形の輪郭が続き、その後再び断面がU字形の輪郭が続くようになっている。
【0061】
壁部分8.2は、外周側でカラー要素8の上側8.1から突出している。第1の部分及び第2の部分の交互の並びにより、一対の停止部分8.3によって交互に境界付けされた凹部8.4が、カラー要素8の半径方向内側表面に形成され、この凹部にスリーブ部分5.1のタブ5.1.4が係合する。停止部分8.3は、スリーブ部分5.1の壁に重なるように形作られる。停止部分8.3は、スリーブ部分5.1の壁に対して半径方向内側に突出する。停止部分8.3の自由端は、
図1から分かるように、解放部材7のための停止部を提供する。外側では、解放部材7は、停止部分8.3の自由端に対向して当接するようになる突起7.1、詳細にはフック状の突起を有し、解放部材7は、差込式スリーブ5から押し出されるのが阻止されるようになっている。
【0062】
あるいは、差込式スリーブ5のカラー部分5.2は、スリーブ部分5.1と一体的に製造することができる、すなわち、スリーブ部分5.1に形成された平坦材料の上部は、カラー部分5.2を形成するように機械加工される。この場合、スリーブ部分には、解放部材7の移動経路を制限するために内向きに突出した戻り止めを設けることができる。
【0063】
詳細には
図2から分かるように、解放部材7は、少なくとも2つの長手方向スロット7.2を有することができる。長手方向スロット7.2は、例えば、差込式挿入体1のスリーブ部分5.1に挿入可能な挿入部分7aに設けられる。長手方向のスロット7.2は、挿入部分7aの自由端からカラー7bの方向に延びる。少なくとも2つの長手方向スロット7.2によって、挿入部分7aは、カラー部分5.2、詳細にはカラー要素8を通して挿入可能であり、次に、突起7.1による半径方向の拡張の後に停止部分8.3の後ろ側に係合可能であるために、半径方向に可逆的に先細りになることができるように、分割されている。
【0064】
図3は、差込式挿入体1の第2の例示的な実施形態を示す。以下には差込式挿入体1の第2の例示的な実施形態の相違点のみが説明される。他のあらゆる点において、第1の例示的な実施形態に関する上記の説明は、この第2の例示的な実施形態にも適用される。
【0065】
第2の例示的な実施形態と第1の例示的な実施形態との本質的な相違点は、カラー要素8が固体材料から作られたリングによって形成される点であり、このリングは、例えばスタンピングによって作られる。従って、カラー要素8は、
図3から分かるように、断面が正方形又は矩形の輪郭を有する。
【0066】
カラー要素8は、スリーブ部分5.1の上に外側から押し込まれ、好ましくは、図示された例示的な実施形態では輪郭付けされていない、すなわち上方に突出するタブを有しないスリーブ部分5.1の上縁は、カラー要素8の上側8.1と同一平面になるようになっている。
【0067】
カラー要素8は、スリーブ部分5.1に、加圧ロック及び/又は強固に接合された方式で結合することができる。例えば、カラー要素8は、スリーブ部分5.1に押し付けること、及び/又は溶接によってそれに結合することができる。
【0068】
解放部材7の移動経路を上方に制限するために、スリーブ部分5.1には内向きに突出する戻り止め5.1.5が設けられており、この戻り止めは解放部材7のフック状突起7.1と協働する。このようにして、スリーブ部分5.1からの解放部材7の望ましくない解放を阻止することができる。
【0069】
図4は、差込式挿入体1の第3の例示的な実施形態を示す。以下には差込式挿入体1の第3の例示的な実施形態と、第1又は第2の例示的な実施形態との間の相違点のみが説明される。他のあらゆる点において、第1又は第2の例示的な実施形態に関する上記の説明は、この第3の例示的な実施形態にも適用される。
【0070】
第3の例示的実施形態と第1及び第2の例示的実施形態との本質的な相違点は、カラー部分5.2がスリーブ部分5.1上に配置された別のカラー要素によって形成されておらず、スリーブ部分5.1上に一体的に形成されている点である。詳細には、カラー部分5.2は、成形、詳細には曲げ加工によって製造されたスリーブ部分5.1の外向きに突出した材料部分によって形成することができる。カラー部分5.2は、差込式挿入体1の長手方向軸に対して垂直に延びる上側と、この上側から半径方向外向き及び下向きに突出する壁部とを有することができる。カラー部分5.2の他の形状も可能である。
【0071】
解放部材7の移動経路は、スリーブ部分5.1に設けられた凹部5.1.6によって上方に制限される。解放部材7は、凹部5.1.6に係合するフック状の突起7.1を有する。これにより、スリーブ部分5.1からの解放部材7の望ましくない解放を阻止することができる。
【0072】
図1から4による上述の例示的な実施形態では、固定要素6は、スリーブ部分5.1のビード5.1.1に相互連結様式で保持される。固定要素6は、予め形成された材料部分の円周方向の曲げの間に(
図7参照)、又は壁要素5A、5Bの接合の間に導入され、曲げ又は接合後にスリーブ部分5.1に相互連結で固定される。
【0073】
図5は、固定要素6を差込式スリーブ5内に相互連結で固定する代替方法を示す。この目的のために、差込式スリーブ5は、差込式スリーブ5の内部に突出する、円周方向に分散配置された複数の固定用戻り止め5.1.9を有する。固定用戻り止め5.1.9は、舌状設計であり、差込式スリーブ5の内部に斜めに突出し、好ましくは、固定用戻り止め5.1.9の自由端が差込式スリーブ5の第2の自由端5bの方向に向くように突出している。
【0074】
また、差込式スリーブ5は、固定用戻り止め5.1.9の自由端の下で管状要素2の挿入方向において、固定要素6、詳細には固定要素6の縁領域に対する接触面を形成する、肩部5.1.10を有する。肩部5.1.10は、長手方向軸LAに対して垂直に延在すること、又は自由形状の幾何形状、例えば曲線を有する幾何形状を有することができる。
【0075】
差込式スリーブ5は、固定要素6が、第1の自由端5aから、明確には管状スリーブ部分5.1が製造された後に(すなわち、詳細には壁要素5A、5Bが曲げられた後又は接合されたりした後に)差込式スリーブ5に挿入できるように設計されている。固定要素6が押し込まれると、固定用戻り止め5.1.9は、可逆的に外向きに曲げられる。固定用戻り止め5.1.9の自由端を通過した後、固定用戻り止め5.1.9は、固定要素6の端部の裏側に係合するように、元の位置に変形して戻る。固定用戻り止め5.1.9の自由端は、固定要素6が固定用戻り止め5.1.9と肩部5.1.10との間に遊びなく又は実質的に遊びなく固定されるように、肩部5.1.10から所定の距離をおいて配置される。
【0076】
図5による例示的な実施形態では、
図1から4の例示的な実施形態と比較すると、本体3における差込式挿入体1の代替タイプの固定も提供される。
【0077】
ここでは、固定は、差込式スリーブ5上に円周方向に分散配置する様式で設けられた戻り止め5.1.8によって行われる。戻り止め5.1.8は、差込式スリーブ5の外側から外部に突出している。戻り止め5.1.8は、舌状設計であり、好ましくは、戻り止め5.1.8の自由端が差込式スリーブ5の第1の自由端5aの方向を向くように、所定の角度で外向きに突出している。上述の例示的な実施形態とは対照的に、戻り止め5.1.8は、差込式スリーブ5の上部領域に、詳細には挿入開口Eと固定要素6との間の領域に設けられる。戻り止め5.1.8は、本体3に押し込まれたときに、最初に可逆的に内向きに押されるように設計されている。好ましくは、本体3には溝又はアンダーカットが設けられ、そこに戻り止め5.1.8を係合させることができ、本体3における差込式スリーブ5、結果的に差込式挿入体1の係合を実現するようになっている。あるいは、戻り止め5.1.8は、本体3の凹部の溝又はアンダーカットのない滑らかな壁に係合するように設計することもできる。
【0078】
好ましくは、外向きに突出する戻り止め5.1.8は、差込式スリーブ5の壁に、固定要素6から離れる解放部材7の移動経路を制限するために解放部材7の突起7.1が係合することができる凹部5.1.6を露出させる。
【0079】
図6は、差込式挿入体1のさらなる例示的な実施形態を概略的に示す。
【0080】
上述した例示的な実施形態との本質的な相違点は、差込式挿入体1が圧入結合(press connection)によって本体3内に固定される点である。ここでは、差込式スリーブ5の外周側に少なくとも1つのリブ5.1.7が設けられ、このリブは、本体3の内周面と協働するとともに、加圧ロック(force lock)によって差込式スリーブ5を本体3にしっかり固定する。
【0081】
図1から4を参照して上述したように、差込式スリーブ5は、固定要素6が端部で保持されるビード5.1.1を有することができる。差込式スリーブ5が本体3に固定されるリブ5.1.7は、ビード5.1.1の領域における差込式スリーブ5の外壁部分によって、すなわち外周側でビード5.1.1を成形することによる隆起部形成によって形成することができる。あるいは、リブ5.1.7を形成するために、ビード5.1.1の高さで外周側に追加の輪郭を設けることもできる。本体3への圧入結合を形作るための他の又はさらなる輪郭も可能である。
【0082】
本体3は、内周側に凹部又はアンダーカットを有することができ、その中に差込式スリーブ5と本体3との間の相互連結を実現するために少なくとも1つのリブ5.1.7が落ち込むことができる。あるいは、リブ5.1.7は、本体3の凹部の溝又はアンダーカットのない滑らかな壁に圧入されるように設計することも可能である。
【0083】
図8から10は、差込式挿入体1のさらなる実施形態を示し、差込式挿入体1は、金属製の本体3で使用するために設けられ、本体3の凹部の縁領域3.1をフランジ成形することによって本体3に固定される、
【0084】
以下に
図8から10による差込式挿入体1の実施形態と、
図1及び2の実施形態との間の相違点を説明する。他のあらゆる点において、
図1及び2の実施形態の上述した技術的特徴は、
図8から10による実施形態にも適用される。
【0085】
図8から10の差込式挿入体1と
図1及び2に示す差込式挿入体1との本質的な相違点は、カラー要素8が、軸方向に作用する保持力が差込式挿入体1に及ぼされるように本体3のビード付き縁領域3.1と協働する接触面を有すること、すなわちフランジ付き縁領域3.1がカラー要素8と少なくとも部分的に重なるので、差込式挿入体1が本体3から外れることができない点である。
【0086】
図8は、カラー要素8が、スタンピング及び曲げ工程によって環状要素に形成された平坦材料から形成されている差込式挿入体1の実施形態を示す。カラー要素8は、リング形状を有し、結果としてスリーブ部分5.1の自由端に配置され、スリーブ部分5.1の上縁に重なる停止部分8.3が貫通経路DKに位置し、それによって解放部材7の停止面を形成するようになっている。
【0087】
カラー要素8は、例えば、外側に、解放部材7のカラー7bの方向にテーパー付けされ、カラー要素8の周りで周方向に延在する、好ましくは円周面である傾斜面を有することができる。傾斜面は、それによって本体3に軸方向で固定するために、本体3のビード付き縁領域3.1と協働するように設計されている。
【0088】
図9は、ビード付き縁領域3.1によって本体3に固定される差込式挿入体1のさらなる例示的な実施形態を示す。
【0089】
リング状カラー要素8は、例えば、金属射出成形(MIM)により製造される。金属射出成形によるカラー要素8の製造は、スリーブ部分5.1の自由端に重なり、同時に高い安定性を示す、高い安定性のカラー要素8を低コストで製造できるという利点をもたらす。
【0090】
図示された例示的な実施形態では、カラー要素8は、外側に肩部8.6を有し、この肩部は、本体3における差込式挿入体1の固定を達成するために、本体3のビード付き縁領域3.1と重なるように設計されている。
【0091】
半径方向内側に、カラー要素8は、さらに停止部分8.3を有し、これによって、差込式挿入体1からの解放部材7の望ましくない解放が阻止される。
【0092】
図10は、差込式挿入体1のさらなる例示的な実施形態を示し、差込式挿入体1は、ビード付き縁領域3.1によって本体3に固定されている。
【0093】
リング状カラー要素8は、例えば旋盤加工された部品として金属から製造され、外側には、本体3における差込式挿入体1の固定を達成するために、本体3のビード付き縁領域3.1と重なるように設計された肩部8.6を有する。
【0094】
カラー要素8は、スリーブ部分5.1の自由端縁の当接部を形成する内側段部を有する。製造上の理由から、カラー要素8が旋盤加工部品として製造される場合、カラー要素8自体が解放部材7のための停止部分を有さないことが有利な場合がある。有利には、解放部材7のための停止部分は、スリーブ部分5.1の自由端の領域に設けられる。これらの停止部分は、例えば、スリーブ部分5.1の自由端の縁領域をビーディング加工することによって形成することができる。
【0095】
本発明は、例示的な実施形態を参照して上述される。特許請求の範囲によって定義される保護範囲を逸脱することなく、多数の修正並びに変形が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0096】
1 差込式挿入体
2 管状要素
3 本体
4 シール要素
5 差込式スリーブ
5A、5B 壁要素
5a 第1の自由端
5b 第2の自由端
5.1 スリーブ部分
5.1a 第1の領域
5.1b 第2の領域
5.1c 第3の領域
5.1d 第4の領域
5.1.1 ビード
5.1.2 フランジ
5.1.3 爪
5.1.4 タブ
5.1.5 戻り止め
5.1.6 凹部
5.1.7 リブ
5.1.8 戻り止め
5.1.9 固定用戻り止め
5.1.10 肩部
5.2 カラー部分
6 固定要素
6.1 爪
7 解放部材
7a 挿入部
7b カラー
7.1 突起
7.2 長手方向スロット
8 カラー要素
8.1 上側
8.2 壁部分
8.3 停止部分
8.4 凹部
D 貫通開口
DK 貫通経路
E 挿入開口
LA 長手方向軸