IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7551875宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法
<>
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図1
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図2
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図3
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図4
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図5
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図6
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図7
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図8
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図9
  • 特許-宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/66 20060101AFI20240909BHJP
   B64G 3/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
B64G1/66 B
B64G3/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023147286
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2019134136の分割
【原出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2023160941
(43)【公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 任亮
(72)【発明者】
【氏名】椋本 佳宏
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0136706(KR,A)
【文献】特開2003-285799(JP,A)
【文献】特開平10-329800(JP,A)
【文献】特開2002-182765(JP,A)
【文献】特開2017-141003(JP,A)
【文献】米国特許第09651946(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/66
B64G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙空間を移動する宇宙機に搭載される宇宙機搭載装置において、
前記宇宙機の行うミッションであって対象物への接近を含むミッションである天体着陸とランデブードッキングとの何れかの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されているシーケンス管理情報を取得する第1の取得部と、
前記複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する複数の遷移条件を示す条件管理情報を取得する第2の取得部と、
前記シーケンス管理情報と前記条件管理情報との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令を受けた場合、前記書き換え指令に従って、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかを、前記宇宙機が前記宇宙空間に滞在中に、かつ、前記ミッションの実行前に書き換える書き換え部と、
を備える宇宙機搭載装置であって、
前記シーケンス管理情報は、
一つのミッションにおける前記複数のステップのうち前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている各ステップに、前記宇宙機の用いる航法、前記宇宙機の用いる誘導、前記宇宙機の用いる制御及び前記宇宙機の用いる異常検知が定義されており、
前記条件管理情報は、
前記ステップに、前記遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す監視変数と前記監視変数に対応する距離としての閾値とが定義されており、
前記書き換え部は、
前記シーケンス管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている前記各ステップの、前記航法、前記誘導、前記制御及び異常検知の方式の少なくともいずれかの内容を書き換え、
前記条件管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記監視変数と前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記閾値との少なくともいずれかを書き換え、
前記書き換え指令は、
前記宇宙機により前記宇宙空間で実行された前記一つのミッションの運用結果に基づき発せられ、
前記書き換え部は、
前記書き換え指令を、前記一つのミッションの再度の実行前に受ける宇宙機搭載装置。
【請求項2】
前記書き換え部は、
前記書き換え指令を、地球に配置された基地局装置から受信する請求項1に記載の宇宙機搭載装置。
【請求項3】
宇宙空間を移動する宇宙機に搭載される宇宙機搭載装置と通信する、地球に配置された基地局装置において、
前記宇宙機の行うミッションであって対象物への接近を含むミッションである天体着陸とランデブードッキングとの何れかの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されている情報であり、前記宇宙機搭載装置の有する情報であるシーケンス管理情報と、前記複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する複数の遷移条件を示す情報であり、前記宇宙機搭載装置の有する情報である条件管理情報について、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令を作成する指令作成部と、
前記書き換え指令を前記宇宙空間に存在する前記宇宙機に通信装置を介して送信することにより、前記宇宙機搭載装置に、前記書き換え指令に従って、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかを書き換えさせる書き換え指令部と、
を備える基地局装置であって、
前記シーケンス管理情報は、
一つのミッションにおける前記複数のステップのうち前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている各ステップに、前記宇宙機の用いる航法、前記宇宙機の用いる誘導、前記宇宙機の用いる制御及び前記宇宙機の用いる異常検知が定義されており、
前記条件管理情報は、
前記ステップに、前記遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す監視変数と前記監視変数に対応する距離としての閾値とが定義されており、
前記書き換え指令部は、
前記シーケンス管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている前記各ステップの前記航法、前記誘導、前記制御及び異常検知の方式の少なくともいずれかの内容を、前記宇宙機搭載装置に書き換えさせ、
前記条件管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記監視変数と前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記閾値との少なくともいずれかを、前記宇宙機搭載装置に書き換えさせ、
前記指令作成部は、
前記書き換え指令を、前記宇宙機により前記宇宙空間で実行された前記一つのミッションの運用結果に基づき作成し、
前記書き換え指令部は、
前記指令作成部の作成した前記書き換え指令を、前記一つのミッションの再度の実行前に送信する基地局装置。
【請求項4】
宇宙空間を移動する宇宙機に搭載される宇宙機搭載装置であるコンピュータに、
前記宇宙機の行うミッションであって対象物への接近を含むミッションである天体着陸とランデブードッキングとの何れかの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されているシーケンス管理情報を取得する第1の取得処理と、
前記複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する複数の遷移条件を示す条件管理情報を取得する第2の取得処理と、
前記シーケンス管理情報と前記条件管理情報との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令を受けた場合、前記書き換え指令に従って、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかを、前記宇宙機が前記宇宙空間に滞在中に、かつ、前記ミッションの実行前に書き換える書き換え処理と、
を実行させる書き換えプログラムであって、
前記シーケンス管理情報は、
一つのミッションにおける前記複数のステップのうち前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている各ステップに、前記宇宙機の用いる航法、前記宇宙機の用いる誘導、前記宇宙機の用いる制御及び前記宇宙機の用いる異常検知が定義されており、
前記条件管理情報は、
前記ステップに、前記遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す監視変数と前記監視変数に対応する距離としての閾値とが定義されており、
前記書き換え処理では、
前記シーケンス管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている前記各ステップの前記航法、前記誘導、前記制御及び異常検知の方式の少なくともいずれかの内容を書き換え、
前記条件管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記監視変数と前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記閾値との少なくともいずれかを書き換え、
前記書き換え指令は、
前記宇宙機により前記宇宙空間で実行された前記一つのミッションの運用結果に基づき発せられ、
前記書き換え処理では、
前記書き換え指令を、前記一つのミッションの再度の実行前に受ける書き換えプログラム。
【請求項5】
宇宙空間を移動する宇宙機に搭載される宇宙機搭載装置と通信する、地球に配置された基地局装置であるコンピュータに、
前記宇宙機の行うミッションであって対象物への接近を含むミッションである天体着陸とランデブードッキングとの何れかの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されている情報であり、前記宇宙機搭載装置の有する情報であるシーケンス管理情報と、前記複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する複数の遷移条件を示す情報であり、前記宇宙機搭載装置の有する情報である条件管理情報について、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令を作成する指令作成処理と、
前記書き換え指令を前記宇宙空間に存在する前記宇宙機に通信装置を介して送信することにより、前記宇宙機搭載装置に、前記書き換え指令に従って、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかを書き換えさせる書き換え指令処理と、
を実行させる書き換え指令プログラムであって、
前記シーケンス管理情報は、
一つのミッションにおける前記複数のステップのうち前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている各ステップに、前記宇宙機の用いる航法、前記宇宙機の用いる誘導、前記宇宙機の用いる制御及び前記宇宙機の用いる異常検知が定義されており、
前記条件管理情報は、
前記ステップ、前記遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す監視変数と前記監視変数に対応する距離としての閾値とが定義されており、
前記書き換え指令処理では、
前記シーケンス管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている前記各ステップの前記航法、前記誘導、前記制御及び異常検知の方式の少なくともいずれかの内容を、前記宇宙機搭載装置に書き換えさせ、
前記条件管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記監視変数と前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記閾値との少なくともいずれかを、前記宇宙機搭載装置に書き換えさせ、
前記指令作成処理では、
前記書き換え指令を、前記宇宙機により前記宇宙空間で実行された前記一つのミッションの運用結果に基づき作成し、
前記書き換え指令処理では、
前記指令作成処理の作成した前記書き換え指令を、前記一つのミッションの再度の実行前に送信する書き換え指令プログラム。
【請求項6】
宇宙空間を移動する宇宙機に搭載される宇宙機搭載装置であるコンピュータが、
前記宇宙機の行うミッションであって対象物への接近を含むミッションである天体着陸とランデブードッキングとの何れかの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されているシーケンス管理情報を取得し、
前記複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する複数の遷移条件を示す条件管理情報を取得し、
前記シーケンス管理情報と前記条件管理情報との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令を受けた場合、前記書き換え指令に従って、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかを、前記宇宙機が前記宇宙空間に滞在中に、かつ、前記ミッションの実行前に書き換える、書き換え方法であって、
前記シーケンス管理情報は、
一つのミッションにおける前記複数のステップのうち前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている各ステップに、前記宇宙機の用いる航法、前記宇宙機の用いる誘導、前記宇宙機の用いる制御及び前記宇宙機の用いる異常検知が定義されており、
前記条件管理情報は、
前記ステップに、前記遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す監視変数と前記監視変数に対応する距離としての閾値とが定義されており、
前記コンピュータが、
前記シーケンス管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている前記各ステップの前記航法、前記誘導、前記制御及び異常検知の方式の少なくともいずれかの内容を書き換え、
前記条件管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記監視変数と前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記閾値との少なくともいずれかを書き換え、
前記書き換え指令は、
前記宇宙機により前記宇宙空間で実行された前記一つのミッションの運用結果に基づき発せられ、
前記コンピュータが、
前記書き換え指令を、前記一つのミッションの再度の実行前に受ける書き換え方法。
【請求項7】
宇宙空間を移動する宇宙機に搭載される宇宙機搭載装置と通信する、地球に配置された基地局装置であるコンピュータが、
前記宇宙機の行うミッションであって対象物への接近を含むミッションである天体着陸とランデブードッキングとの何れかの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されている情報であり、前記宇宙機搭載装置の有する情報であるシーケンス管理情報と、前記複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する複数の遷移条件を示す情報であり、前記宇宙機搭載装置の有する情報である条件管理情報について、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令を作成し、
前記書き換え指令を前記宇宙空間に存在する前記宇宙機に通信装置を介して送信することにより、前記宇宙機搭載装置に、前記書き換え指令に従って、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかを書き換えさせる、書き換え指令方法であって、
前記シーケンス管理情報は、
一つのミッションにおける前記複数のステップのうち前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている各ステップに、前記宇宙機の用いる航法、前記宇宙機の用いる誘導、前記宇宙機の用いる制御及び前記宇宙機の用いる異常検知が定義されており、
前記条件管理情報は、
前記ステップに、前記遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す監視変数と前記監視変数に対応する閾値とが定義されており、
前記コンピュータが、
前記シーケンス管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている前記各ステップの前記航法、前記誘導、前記制御及び異常検知の方式の少なくともいずれかの内容を、前記宇宙機搭載装置に書き換えさせ、
前記条件管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記監視変数と前記宇宙機と前記対象物との距離を示す前記閾値との少なくともいずれかを、前記宇宙機搭載装置に書き換えさせ、
前記コンピュータが、
前記書き換え指令を、前記宇宙機により前記宇宙空間で実行された前記一つのミッションの運用結果に基づき作成し、
前記コンピュータが、
作成された前記書き換え指令を、前記一つのミッションの再度の実行前に送信する書き換え指令方法。
【請求項8】
宇宙空間を移動する宇宙機に搭載される宇宙機搭載装置において、
前記宇宙機の行うミッションであって対象物への接近を含むミッションである天体着陸とランデブードッキングとの何れかの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されているシーケンス管理情報を取得する第1の取得部と、
前記複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する複数の遷移条件を示す条件管理情報を取得する第2の取得部と、
前記シーケンス管理情報と前記条件管理情報との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令に従って、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかを、前記宇宙機が前記宇宙空間に滞在中に、かつ、前記ミッションの実行前に書き換える書き換え部と、
を備える宇宙機搭載装置であって、
前記シーケンス管理情報は、
一つのミッションにおける前記複数のステップのうち前記接近における前記宇宙機と前記対象物との距離が規定されている各ステップに、前記宇宙機の用いる航法、前記宇宙機の用いる誘導及び前記宇宙機の用いる制御が定義されており、
前記条件管理情報は、
前記ステップに、前記遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、前記対象物との距離を示す監視変数と前記監視変数に対応する前記距離の閾値とが定義されている宇宙機搭載装置。
【請求項9】
前記シーケンス管理情報は、
前記一つのミッションにおける前記複数のステップのうち前記接近における前記宇宙機と前記対象物との第1距離が規定されている第1距離ステップと前記第1距離ステップの後のステップであって前記接近における前記宇宙機と前記対象物との第2距離が規定されている後のステップである第2距離ステップとの間に、前記ミッションの目標地点の変更要否を判定する判定ステップを有し、
前記判定ステップには、
前記目標地点の変更の要否を判定し、
前記目標地点の変更が要の場合に、前記目標地点を変更するとともに前記第1距離ステップに規定されている前記距離を維持した状態で、変更後の目標地点に向けて水平位置修正を行い、
前記目標地点の変更が否の場合に、前記判定ステップの次のステップへ遷移する、
ことが定義される請求項8に記載の宇宙機搭載装置。
【請求項10】
前記判定ステップには、障害物検知によって目標地点の変更を要と判定することが定義されている請求項9に記載の宇宙機搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、宇宙機搭載装置、基地局装置、書き換えプログラム、書き換え指令プログラム、書き換え方法及び書き換え指令方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星または探査機のような宇宙機が、ランデブードッキングあるいは天体着陸のような何らかのミッションを実行する際には、宇宙機の制御系は、航法、誘導、制御及び異常検知を実施する。航法では、センサを用いて宇宙機の位置及び姿勢が推定される。誘導では、目標となる宇宙機の位置及び姿勢が算出される。制御では、誘導目標に向かうように、アクチュエータが制御される。異常検知では、異常発生が監視され、異常が発生した場合に対応措置が実施される。
【0003】
航法、誘導、制御及び異常検知のそれぞれについて複数の方式があり、宇宙機によるミッションの目的を達成するため、宇宙機の打ち上げ前に、ミッションの目的に適した方式が選択される。その場合、宇宙機の制御系にシーケンス機能を実装し、シーケンス機能に、選択された方式が組み込まれる(例えば特許文献1)。例えば、探査機が天体着陸するため徐々に降下していく場合、あるいは、宇宙機がランデブードッキングのためターゲットに接近する場合に、天体またはターゲットとの距離に応じて方式が選択される。
【0004】
シーケンス機能については、従来では宇宙機の打ち上げ前の設計段階でシーケンス機能の内容を確定させるので、宇宙機の打ち上げ後に、ミッション実行のためのシーケンス機能の実行内容を柔軟に変更できない。すなわち、シーケンス機能の実行内容として定義された航法の方式、誘導の方式、制御の方式または異常検知の方式を柔軟に変更できない。そのため、打ち上げ後の運用結果からシーケンス機能の実行内容の変更の必要性が生じた場合でも、シーケンス機能の実行内容の変更が出来ず、ミッション達成を阻む要因となる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2012-520786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、宇宙機の打ち上げ後に、宇宙機の行うべきミッションのシーケンス機能の実行内容が変更可能な仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の宇宙機搭載装置は、
宇宙空間を移動する宇宙機に搭載される宇宙機搭載装置において、
前記宇宙機の行うミッションの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されているシーケンス管理情報を取得する第1の取得部と、
前記複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する複数の遷移条件を示す条件管理情報を取得する第2の取得部と、
前記シーケンス管理情報と前記条件管理情報との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令を受けた場合、前記書き換え指令に従って、前記シーケンス管理情報の複数のステップのうちのいずれかのステップと、前記条件管理情報の複数の遷移条件のうちのいずれかの遷移条件との少なくともいずれかを、前記宇宙機が前記宇宙空間に滞在中に、かつ、前記ミッションの実行前に書き換える書き換え部と、
を備える宇宙機搭載装置であって、
前記シーケンス管理情報は、
一つのミッションにおける前記複数のステップの各ステップに、前記宇宙機の用いる航法、前記宇宙機の用いる誘導、前記宇宙機の用いる制御及び前記宇宙機の用いる異常検知が定義されており、
前記条件管理情報は、
前記ステップごとに、前記遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、監視対象である監視変数と前記監視変数に対応する閾値とが定義されており、
前記書き換え部は、
前記シーケンス管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記航法、前記誘導、前記制御及び異常検知の方式の少なくともいずれかの内容を書き換え、
前記条件管理情報については、前記書き換え指令に基づいて、前記監視変数と前記閾値との少なくともいずれかを書き換え、
前記書き換え指令は、
前記宇宙機により前記宇宙空間で実行された前記一つのミッションの運用結果に基づき発せられ、
前記書き換え部は、
前記書き換え指令を、前記一つのミッションの再度の実行前に受ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明の宇宙機搭載装置によれば、宇宙機の打ち上げ後に、宇宙機の行うべきミッションのシーケンス機能の実行内容が変更可能な仕組みを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1の図で、宇宙機100の外観の概略を示す図。
図2】実施の形態1の図で、宇宙機搭載装置101と基地局装置201の通信を示す図。
図3】実施の形態1の図で、宇宙機搭載装置101のハードウェア構成を示す図。
図4】実施の形態1の図で、基地局装置201のハードウェア構成を示す図。
図5】実施の形態1の図で、シーケンス管理情報10を示す図。
図6】実施の形態1の図で、条件管理情報20を示す図。
図7】実施の形態1の図で、シーケンスの各ステップと、シーケンス管理情報10及び条件管理情報20との関係を示す図。
図8】実施の形態1の図で、条件管理情報20に基づく、シーケンスステップの遷移を示す図。
図9】実施の形態1の図で、シーケンス管理情報10及び条件管理情報20の書き換えを示す図。
図10】実施の形態1の図で、宇宙機搭載装置101のハードウェア構成を補足する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。
【0011】
実施の形態1.
図1から図10を参照して、実施の形態1の宇宙機搭載装置101及び基地局装置201を説明する。
図1は、降下する方向宇宙機100の外観の概略を示す。宇宙機100は降下方向103へ降下している。
図2は、宇宙機搭載装置101と基地局装置201との通信を示す。宇宙機搭載装置101は、宇宙空間を移動する宇宙機100に搭載される。宇宙機100は、基地局装置201と通信するアンテナ102を備えている。図1の宇宙機100は、天体302に着陸するため降下中の探査機を表している。基地局装置201は、宇宙空間を移動する宇宙機100に搭載される宇宙機搭載装置101と通信する。基地局装置201は、地球301に設けられた基地局200に配置されている。基地局装置201は、宇宙空間を移動する宇宙機100に搭載されている宇宙機搭載装置101と、アンテナ202を介して通信する。
【0012】
基地局装置201は、後述するように、宇宙空間に存在する宇宙機100が、シーケンス機能で定められているミッションの実行内容を実行する前に、定められている実行内容の変更を指示する指令である書き換え指令201aを送信する。宇宙機搭載装置101は、書き換え指令201aに従って、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との少なくともいずれかの内容を書き換える。「書き換え指令201aに従って、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との少なくともいずれかの内容を書き換える」とは、以下の意味である。すなわち、書き換え指令201aは、シーケンス管理情報10と条件管理情
報20との少なくともいずれかの内容を書き換える指令内容を有している。書き換え指令201aがシーケンス管理情報10の書き換えを指示していれば宇宙機搭載装置101は、シーケンス管理情報10の内容を書き換え、書き換え指令201aが条件管理情報20の書き換えを指示していれば宇宙機搭載装置101は、条件管理情報20の内容を書き換える。
宇宙機搭載装置101のシーケンス実行部114が、書き換えられたシーケンス管理情報10あるいは条件管理情報20に従ってシーケンスを実行することで、宇宙機搭載装置101の打ち上げ後に、宇宙機搭載装置101の行うべきミッションのシーケンス機能の実行内容が変更できる。以下に詳しく説明する。
【0013】
***構成の説明***
図3は、宇宙機搭載装置101のハードウェア構成を示す。図3を参照して宇宙機搭載装置101のハードウェア構成を説明する。宇宙機搭載装置101は、コンピュータである。宇宙機搭載装置101は、プロセッサ110を備える。宇宙機搭載装置101は、プロセッサ110の他に、主記憶装置120、補助記憶装置130、入出力インタフェース140及び通信インタフェース150といった、他のハードウェアを備える。プロセッサ110は、信号線160を介して、他のハードウェアと接続され、他のハードウェアを制御する。
【0014】
宇宙機搭載装置101は、機能要素として、第1の取得部111、第2の取得部112、書き換え部113及びシーケンス実行部114を備えている。第1の取得部111、第2の取得部112、書き換え部113及びシーケンス実行部114は、書き換えプログラム501により実現される。書き換えプログラム501は、補助記憶装置130に格納されている。プロセッサ110は、書き換えプログラム501を実行する装置である。書き換えプログラム501は、第1の取得部111、第2の取得部112、書き換え部113及びシーケンス実行部114の機能を実現するプログラムである。プロセッサ110は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ110の具体例は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0015】
主記憶装置120は記憶装置である。主記憶装置120の具体例は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。主記憶装置120は、プロセッサ110の演算結果を保持する。補助記憶装置130は、データを不揮発的に保管する記憶装置である。補助記憶装置130の具体例は、HDD(Hard Disk Drive)である。また、補助記憶装置130は、SD(登録商標)(Secure Digital)メモリカード、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD(Digital Versatile Disk)といった可搬記録媒体であってもよい。
【0016】
入出力インタフェース140は、各装置からデータが入力され、各装置へデータが出力されるポートである。入出力インタフェース140には、複数のセンサからなるセンサ群171、複数のアクチュエータからなるアクチュエータ群172が接続されている。通信インタフェース150は、プロセッサ110が他の装置と通信するための通信ポートである。通信インタフェース150には、通信装置173が接続されている。プロセッサ110は、通信インタフェース150及び通信装置173を介して、基地局装置201と通信する。
【0017】
プロセッサ110は、補助記憶装置130から書き換えプログラム501を主記憶装置120にロードし、主記憶装置120から書き換えプログラム501を読み込み実行する。主記憶装置120には、書き換えプログラム501だけでなく、OS(Operating System)も記憶されている。プロセッサ110は、OSを実行しながら、書き換えプログラム501を実行する。宇宙機搭載装置101は、プロセッサ110を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、書き換えプログラム501の実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ110と同じように、書き換えプログラム501を実行する装置である。書き換えプログラム501により利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値及び変数値は、主記憶装置120、補助記憶装置130、または、プロセッサ110内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
【0018】
書き換えプログラム501は、第1の取得部111、第2の取得部112、書き換え部113及びシーケンス実行部114の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0019】
また、書き換え方法は、コンピュータである宇宙機搭載装置101が書き換えプログラム501を実行することにより行われる方法である。書き換えプログラム501は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されてもよいし、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0020】
図4は、基地局装置201のハードウェア構成を示す。図4を参照して基地局装置201のハードウェア構成を説明する。基地局装置201も宇宙機搭載装置101と同様なコンピュータであるので、宇宙機搭載装置101と相違する点を説明する。
【0021】
基地局装置201は、プロセッサ210を備える。基地局装置201は、プロセッサ210の他に、主記憶装置220、補助記憶装置230、入出力インタフェース240及び通信インタフェース250といった、他のハードウェアを備える。プロセッサ210は、信号線260を介して、他のハードウェアと接続され、他のハードウェアを制御する。
【0022】
基地局装置201は、機能要素として、指令作成部211及び書き換え指令部212を備えている。指令作成部211及び書き換え指令部212は、書き換え指令プログラム502により実現される。書き換え指令プログラム502は、補助記憶装置230に格納されている。通信インタフェース250には、通信装置273が接続されている。プロセッサ210は、通信インタフェース250、通信装置273及びアンテナ202を介して、宇宙機100と通信する。書き換え指令プログラム502は、指令作成部211及び書き換え指令部212の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程をコンピュータに実行させるプログラムである。また、書き換え指令方法は、コンピュータである基地局装置201が書き換え指令プログラム502を実行することにより行われる方法である。書き換え指令プログラム502は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されてもよいし、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0023】
図5は、シーケンス管理情報10を示す。
図6は、条件管理情報20を示す。図5及び図6を参照して、シーケンス管理情報10及び条件管理情報20を説明する。まず、シーケンス管理情報10から説明する。
シーケンス管理情報10は、宇宙機100の行うミッションの手順が、連続して遷移する複数のステップで定義されている情報である。図5に示すシーケンス管理情報10では、天体着陸のための着陸シーケンスにおけるシーケンスステップ11におけるステップ1からステップ7で定義されている。シーケンス管理情報10では、複数のステップの各ステップに、宇宙機100の用いる航法、前記宇宙機100の用いる誘導、宇宙機100の
用いる制御及び宇宙機100の用いる異常検知/処置が定義されている。
【0024】
ステップの内容12は以下のようである。ステップ1の内容は、高度2000[m]まで接近降下である。ステップ2の内容は、中間目標点の高度300[m]に向け降下して、水平位置修正である。ステップ3の内容は、高度100[m]まで降下して、水平位置保持である。ステップ4の内容は、高度100[m]で障害物検知、かつ、目標地点変更である。ステップ5の内容は、高度10[m]まで降下である。ステップ6の内容は、スラスタ制御を停止し、自由落下である。ステップ7は、着陸シーケンス停止である。
【0025】
航法13は以下のようである。航法13には使用センサとして、航法に使用される使用センサが定義されている。航法13の使用センサにおいて、IMUは慣性計測装置、STTはスタートラッカー、ALTは高度計、CAM-Wは広角カメラを示す。航法13の使用パラメータセットとは、パラメータAからFのうち、設定されているパラメータを示す。誘導14及び制御15の使用パラメータセットも同じ意味である。具体的には以下のようである。ステップ1の使用センサは、IMU,STT及びALTである。ステップ2からステップ5の使用センサは、IMU,STT,ALT及びCAM-Wである。ステップ6の使用センサは、IMU及びSTTである。使用パラメータセットは、ステップ1からステップ6について、A,B,C,D,E,Fである。
【0026】
誘導14は以下のようである。誘導14には、着陸シーケンスに使用される誘導方式が定義されている。それぞれの誘導方式には使用されるパラメータセットが定義されている。各ステップの誘導方式は以下のようである。ステップ2の誘導方式は、高度降下、水平位置修正である。ステップ3の誘導方式は、高度降下、水平位置保持である。ステップ4の誘導方式は、高度降下、水平位置修正である。ステップ5の誘導方式は、高度降下、水平位置保持である。使用パラメータセットは、ステップ2からステップ5について、J,K,L,Mである。
【0027】
制御15は以下のようである。制御15には、着陸シーケンスの各ステップにおける制御対象のアクチュエータが、使用アクチュエータとして定義されている。また使用アクチュエータにはパラメータセットが定義されている。各ステップの制御対象の使用アクチュエータは以下のようである。RWはリアクションホイール、THRはスラスタ、THR*4はスラスタ4台を示す。ステップ1の使用アクチュエータは、RWである。ステップ2からステップ5の使用アクチュエータは、RW及びTHRである。ステップ6の使用アクチュエータは、RW及びTHR*4である。使用パラメータセットは、ステップ1からステップ6について、P,Q,R,S,T,Uである。
【0028】
異常検知/処置16は以下のようである。異常検知/処置16には有効にする異常検知と、異常が検知された場合の処理が定義されている。異常検知/処置16は、異常検知の対象と、対象に異常が検知された場合の処置を示す。各ステップの異常検知/処置は以下のようである。ステップ1は、接近降下コリド異常検知/アボートである。ステップ2、3は、垂直降下コリド異常検知/アボートである。ステップ4、5は、垂直降下コリド異常検知、障害物検知/アボートである。ステップ6は、着陸時の転倒防止制御である。
【0029】
図6を参照して条件管理情報20を説明する。条件管理情報20は、シーケンス管理情報10で定義されている複数のステップのうち遷移の隣接するステップ同士における前のステップから後のステップに遷移する遷移条件を示す。図6の条件管理情報20では、シーケンス管理情報10のステップ1からステップ7について、ステップ1からステップ2、ステップ2からステップ3、ステップ3からステップ4、ステップ4からステップ5、ステップ5からステップ6、及びステップ6からステップ7へ遷移する条件が、遷移条件チャネル1から遷移条件チャネル6として定義されている。
【0030】
シーケンス管理情報10では、ステップk(K=1,2,3...6)ごとに、ステップkからステップk+1への遷移条件が成立するかどうかの判定に使用する、監視対象である監視変数24と監視変数24に対応する閾値26とが定義されている。具体的には、遷移条件チャネル21には、遷移条件として、遷移条件チャネル1から遷移条件チャネルが定義されている。遷移条件チャネル21は、シーケンス遷移22、判定演算子23、監視変数24、比較演算子25、閾値26、及び判定回数27の項目が対応付けられている。条件管理情報20には遷移条件チャネル1から遷移条件チャネル6があるが、遷移条件チャネルk(k=1,2、..6)に定義されているシーケンス遷移22から判定回数27は、シーケンス管理情報10におけるステップkが、ステップk+1に遷移するための遷移条件である。
【0031】
宇宙機搭載装置101の特徴は、シーケンス管理情報10で定義されているミッションの実行前に、基地局装置201から書き換え指令201aを宇宙空間に位置するときに受信した場合に、シーケンス管理情報10と条件管理情報20の少なくともいずれかの内容を、書き換え指令201aに基づき書き換えることにある。書き換えの前提として、宇宙機搭載装置101が、図5のシーケンス管理情報10及び図6の条件管理情報20を用いて、天体への着陸シーケンスのミッションを実行する動作を説明する。
【0032】
図7は、シーケンスステップ11のステップ1からステップ7のシーケンス104に対する、シーケンス管理情報10及び条件管理情報20の関係を示す。図7に示すように、シーケンス管理情報10は、ステップ1からステップ7の航法13から異常検知/処置16に関係し、シーケンス管理情報10はステップkからステップk+1への遷移に関係する。ここで、K=1,2,3...6である。
【0033】
***動作の説明***
図8は、図7の条件管理情報20をフローチャートで表現している。図8を参照してシーケンス管理情報10におけるステップkの遷移を説明する。
【0034】
<判定処理d12>
シーケンス実行部114は、高度2000[m]まで接近降下のステップ1を実行しているとする。
判定処理d12において、シーケンス実行部114は、遷移条件チャネル1の遷移条件が成立しているかどうかを判定する。すなわちシーケンス実行部114は、高度h≦2000[m]OR時間t≧3600[s]が成立するかを判定する。判定のための情報は、以下の判定処理も同様であるが、センサ群171から得られる。ここで時間tは、ステップ1の実行開始からの経過時間である。高度h≦2000[m]OR時間t≧3600[s]が成立しない場合は、シーケンスはステップ1へ戻る。判定回数は、以下の判定処理も同様であるが、4回である。高度h≦2000[m]OR時間t≧3600[s]が成立した場合、シーケンスはステップ2へ遷移する。
【0035】
<判定処理d23>
シーケンス実行部114は、中間目標点の高度300[m]に向け降下して、水平位置修正のステップ2を実行している。判定処理d23において、シーケンス実行部114は、遷移条件チャネル2の遷移条件が成立しているかどうかを判定する。すなわちシーケンス実行部114は、高度h≦300[m]が成立するかを判定する。高度h≦300[m]が成立しない場合は、シーケンスはステップ2へ戻る。高度h≦300[m]が成立した場合、シーケンスはステップ3へ遷移する。
【0036】
<判定処理d34>
シーケンス実行部114は、高度100[m]まで降下して、水平位置保持のステップ3を実行している。判定処理d34において、シーケンス実行部114は、遷移条件チャネル3の遷移条件が成立しているかどうかを判定する。すなわちシーケンス実行部114は、高度h≦100[m]AND-1[deg]≦姿勢角θ≦1[deg]が成立するかを判定する。高度h≦100[m]AND-1[deg]≦姿勢θ≦1[deg]が成立しない場合は、シーケンスはステップ3へ戻る。高度h≦100[m]AND-1[deg]≦姿勢角θ≦1[deg]が成立した場合、シーケンスはステップ4へ遷移する。
【0037】
<判定処理d45>
シーケンス実行部114は、高度100[m]で障害物検知、かつ、目標点変更のステップ4を実行している。判定処理d45において、シーケンス実行部114は、遷移条件チャネル4の遷移条件が成立しているかどうかを判定する。すなわちシーケンス実行部114は、目標地点変更フラグf1=1が成立するかを判定する。目標地点変更フラグf1=1が成立しない場合は、シーケンスはステップ4へ戻る。
目標地点変更フラグf1=1が成立した場合、シーケンスはステップ5へ遷移する。
【0038】
<判定処理d56>
シーケンス実行部114は、高度10[m]まで降下のステップ5を実行している。判定処理d56において、シーケンス実行部114は、遷移条件チャネル5の遷移条件が成立しているかどうかを判定する。すなわちシーケンス実行部114は、高度h≦10[m]が成立するかを判定する。高度h≦10[m]が成立しない場合は、シーケンスはステップ5へ戻る。高度h≦10[m]が成立した場合、シーケンスはステップ6へ遷移する。
【0039】
<判定処理d67>
シーケンス実行部114は、スラスタ制御を停止、かつ、自由落下のステップ6を実行している。判定処理d67において、シーケンス実行部114は、遷移条件チャネル6の遷移条件が成立しているかどうかを判定する。すなわちシーケンス実行部114は、着陸判定フラグf2=1が成立するかを判定する。着陸判定フラグf2=1が成立しない場合は、シーケンスはステップ6へ戻る。着陸フラグf2=1が成立した場合、シーケンスはステップ7へ遷移し、ステップ7では図5のステップの内容12に示すように、着陸シーケンスが停止する。
【0040】
図9は、シーケンス管理情報10または条件管理情報20の少なくともどちらかの書き換えを示すシーケンス図である。図9を参照して、シーケンス管理情報10または条件管理情報20が書き換えられる動作を説明する。シーケンス管理情報10または条件管理情報20が書き換えられる際には、宇宙機搭載装置101は宇宙空間に存在し、かつ、シーケンス管理情報10及び条件管理情報20で定義されるミッションの実行前である。
【0041】
<ステップS10>
ステップS10において、シーケンス実行部114は、宇宙機100の運用結果情報114aを、通信インタフェース150、通信装置173及びアンテナ102を介して、基地局装置201へ送信する。運用結果情報114aとは、宇宙機100の運用状況を示す情報であり、かつ、指令作成部211が書き換え指令201aの作成に使用する情報である。
【0042】
<ステップS11>
ステップS11において、指令作成部211は、運用結果情報114aをアンテナ202、通信装置273及び通信インタフェース250を介して受信する。指令作成部211は、運用結果情報114aを参照して、シーケンス管理情報10と、条件管理情報20と
の、少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令201aを作成する。図9の例では、指令作成部211は、シーケンス管理情報10と、条件管理情報20との両方の書き換えを指令する書き換え指令201aを作成するとする。
【0043】
<ステップS12>
書き換え指令部212は、書き換え指令201aを宇宙空間に存在する宇宙機100に通信装置273を介して送信することにより、宇宙機搭載装置101に、書き換え指令201aに従って、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との少なくともいずれかを書き換えさせる。この例では、書き換え指令部212は、書き換え指令201aに従って、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との両方を宇宙機搭載装置101に書き換えさせる。
【0044】
<ステップS13>
宇宙機搭載装置101の書き換え部113は、書き換え指令201aを、地球301に配置された基地局装置201から受信する。具体的には、書き換え部113が、書き換え指令201aを、アンテナ102、通信装置173及び通信インタフェース150を介して受信する。
【0045】
<ステップS14>
第1の取得部111は、シーケンス管理情報10を補助記憶装置130から取得する。
【0046】
<ステップS15>
第2の取得部112は、条件管理情報20を取得する。
【0047】
<ステップS16>
書き換え部113は、シーケンス管理情報10及び条件管理情報20を書き換える。書き換え部113は、シーケンス管理情報10については、書き換え指令201aに基づいて、航法13、誘導14、制御15及び異常検知/処置のそれぞれの方式の少なくともいずれかの内容を書き換える。書き換え部113は、条件管理情報20については、書き換え指令201aに基づいて、判定演算子23、監視変数24、比較演算子25、閾値26及び判定回数27のうち、少なくともいずれかを書き換える。すなわち、書き換え部113は、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との少なくともいずれかの書き換えを指令する書き換え指令201aを受けた場合、書き換え指令201aに従って、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との少なくともいずれかを、宇宙機100が宇宙空間に滞在中に、かつ、ミッションの実行前に書き換える。図9の例では、書き換え指令201aは、シーケンス管理情報10と、条件管理情報20との両方の書き換えを指令するので、書き換え部113は、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との両方を、書き換え指令201aに従って書き換える。
【0048】
<ステップS17>
シーケンス実行部114は、書き換え後のシーケンス管理情報10,書き換え後の条件管理情報20を用いて、着陸シーケンスを実行する。
【0049】
***実施の形態1の効果の説明***
実施の形態1の宇宙機搭載装置101及び基地局装置201によれば、探査機のような宇宙機の航法、誘導、制御及び異常検知のシーケンス機能の実行内容を、宇宙機100が宇宙空間に存在中に、かつ、宇宙機100のミッション実行前に、変更できる。よって宇宙機100の運用の柔軟性及びミッション達成の可能性を向上できる。
【0050】
<ハードウェア構成の補足>
図2の宇宙機搭載装置101では宇宙機搭載装置101の機能がソフトウェアで実現されるが、宇宙機搭載装置101の機能がハードウェアで実現されてもよい。
図10は、宇宙機搭載装置101の機能がハードウェアで実現される構成を示す。なお、以下の説明は、基地局装置201にも当てはまる。
【0051】
図10の電子回路90は、宇宙機搭載装置101の、第1の取得部111、第2の取得部112、書き換え部113及びシーケンス実行部114の機能を実現する専用の電子回路である。電子回路90は、信号線91に接続している。電子回路90は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、または、FPGAである。GAは、Gate Arrayの略語である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略語である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略語である。宇宙機搭載装置101の構成要素の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。また、宇宙機搭載装置101の構成要素の一部の機能が電子回路で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0052】
プロセッサ110と電子回路90の各々は、プロセッシングサーキットリとも呼ばれる。宇宙機搭載装置101において、第1の取得部111、第2の取得部112、書き換え部113、シーケンス実行部114、主記憶装置120、補助記憶装置130、入出力インタフェース140、通信インタフェース150の機能がプロセッシングサーキットリにより実現されてもよい。
【0053】
なお、宇宙機搭載装置101の書き換え部113は、基地局装置201から送信される書き換え指令201aに基づいて、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との少なくともいずれかを書き換えた。これに限らず、宇宙機搭載装置101では、シーケンス実行部114が、運用結果情報114aを用いて書き換え指令201aに相当する情報を生成し、生成されたこの情報を用いて、書き換え部113が、自律的に、シーケンス管理情報10と条件管理情報20との少なくともいずれかを書き換えてもよい。
【0054】
以上の実施の形態1では、図1で天体着陸ミッション、図5で着陸シーケンスに関するシーケンス管理情報10、図6で着陸シーケンスに関する条件管理情報20を示している。しかし、これら天体着陸ミッション及び着陸シーケンスは、実施の形態1に係る発明を適用した一例である。実施の形態1に係る発明は、天体着陸ミッションに限らず、ランデブードッキングの他、宇宙機による様々なミッションに適用できる。
【0055】
以上、実施の形態1について説明したが、実施の形態1のうち、1つを部分的に実施しても構わない。あるいは、実施の形態1のうち、2つ以上を部分的に組み合わせて実施しても構わない。なお、本発明は、実施の形態1に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 シーケンス管理情報、11 シーケンスステップ、12 ステップの内容、13 航法、14 誘導、15 制御、16 異常検知/処置、20 条件管理情報、21 遷移条件チャネル、22 シーケンス遷移、23 判定演算子、24 監視変数、25 比較演算子、26 閾値、27 判定回数、90 電子回路、91 信号線、100 宇宙機、101 宇宙機搭載装置、102 アンテナ、103 降下方向、104 シーケンス、110 プロセッサ、111 第1の取得部、112 第2の取得部、113 書き換え部、114 シーケンス実行部、114a 運用結果情報、120 主記憶装置、130 補助記憶装置、140 入出力インタフェース、150 通信インタフェース、160 信号線、171 センサ群、172 アクチュエータ群、173 通信装置、200 基地局、201 基地局装置、201a 書き換え指令、202 アンテナ、210 プロセッサ、211 指令作成部、212 書き換え指令部、220 主記憶装置、230 補助記憶装置、240 入出力インタフェース、250 通信インタフェース、260 信号線、273 通信装置、301 地球、302 天体、501 書き換えプログラム、502 書き換え指令プログラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10