(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】ハードディスクドライブにおけるアクチュエータコイルのねじり振動を低減するためのピボットとエンクロージャとの締結
(51)【国際特許分類】
G11B 21/02 20060101AFI20240909BHJP
G11B 33/12 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G11B21/02 630A
G11B33/12 313C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023176932
(22)【出願日】2023-10-12
【審査請求日】2023-10-18
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】高林 滉
(72)【発明者】
【氏名】江口 一
(72)【発明者】
【氏名】住谷 武次
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0365105(US,A1)
【文献】特開2011-204318(JP,A)
【文献】特開2010-190403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/02
G11B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ記憶デバイスであって、
スピンドル上に回転可能に装着された複数のディスク媒体と、
前記複数のディスク媒体のうちの少なくとも1つのディスク媒体に書き込むように、及びそれから読み取るように構成されている読み取り-書き込みヘッドを備える、ヘッドスライダと、
ボイスコイルモータアクチュエータ(VCMA)による作動を介して前記ディスク媒体の部分にアクセスするために、ピボットの周りで前記ヘッドスライダを移動させるように構成されている、回転アクチュエータアセンブリであって、前記ピボットが、ピボットシャフト長を有する少なくとも部分的に中空のピボットシャフトを備える、回転アクチュエータアセンブリと、
雌ねじ山部分を備え、かつ少なくとも部分的に前記ピボットシャフト内に配設されたピボットボスシャフトを備える、エンクロージャベースと、
前記ベースに結合されて、エンクロージャを形成する、カバーと、
前記カバーを通して前記ピボットボスシャフトの前記ねじ山部分に結合されるねじであって、前記ねじは、前記ピボットボスシャフトの前記ねじ山部分の中央ねじ山が、前記ピボットシャフトの長の66%以上で、ねじのねじ山と結合される、ねじ締結深さを有する、ねじと、を備える、データ記憶デバイス。
【請求項2】
前記ねじ締結深さが、前記ピボットシャフト長の100%未満である、請求項1に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項3】
前記ピボットボスシャフトが、中空部分への近位開口部と、反対側の遠位端と、を備え、
前記ピボットボスシャフトの前記ねじ山部分が、前記ピボットボスシャフトの遠位半分内にのみ位置決めされている、請求項1に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項4】
前記ピボットが、前記ピボットシャフトの周りに位置決めされた少なくとも1つの軸受リングを更に備える、請求項1に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項5】
前記エンクロージャベースと、前記ピボットボスシャフトとが、一体的に形成された構成要素である、請求項1に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項6】
前記ピボットボスシャフトが、前記ピボットシャフトの熱膨張係数よりも高い前記熱膨張係数を有する、請求項1に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項7】
ハードディスクドライブ(HDD)エンクロージャベースであって、
中空ピボットボスシャフトであって、
ねじ山付き締結具を受容するように構成された近位上部開口部と、
遠位端であって、前記近位上部開口部に対向し、かつ前記近位上部と前記遠位端との間の距離として定義されるピボットボスシャフト長を形成する、遠位端と、
前記ピボットボスシャフト長の64%以上に位置決めされる中央を有する雌ねじ山部分と、を備える、中空ピボットボスシャフトを備える、ハードディスクドライブ(HDD)エンクロージャベース。
【請求項8】
前記ピボットボスシャフトが、前記ねじ山部分から前記遠位端に向かって延在するカウンタボアを更に備える、請求項7に記載のHDDエンクロージャベース。
【請求項9】
前記ピボットボスシャフトが、前記エンクロージャベースと一体部品として形成されている、請求項7に記載のHDDエンクロージャベース。
【請求項10】
ハードディスクドライブを組み立てる方法であって、
ピボットボスシャフトの周りに、ピボットシャフト長を有する中空ピボットシャフトと、前記ピボットシャフトの周りに位置決めされた1つ以上の軸受リングと、を備える、回転アクチュエータアセンブリを位置決めすることと、
前記ピボットボスシャフトのねじ山部分の中央ねじ山が、前記ピボットシャフト長の66%~100%で、ねじのねじ山と結合される、ねじ締結深さを有するように、カバーを通して、前記ピボットボスシャフトの前記ねじ山部分に、ねじを締結することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記ピボットボスシャフトが、近位開口部と、対向する遠位端と、を備え、前記ピボットボスシャフトの前記ねじ山部分が、前記ピボットボスシャフトの遠位半分内にのみ位置決めされる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年12月9日に出願された同一所有者による係属中の米国特許仮出願第63/431,553号に対する優先権の利益を主張し、その全容は、本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、概して、ハードディスクドライブなどのデータ記憶デバイスに関し得、具体的には、アクチュエータの構造力学を改善するための手法に関し得る。
【背景技術】
【0003】
ハードディスクドライブ(hard disk drive、HDD)は、保護エンクロージャ内に収容され、磁気表面を有する1つ以上の円形ディスク上にデジタル符号化データを記憶する、不揮発性記憶デバイスである。HDDが動作中のとき、各磁気記録ディスクは、スピンドルシステムによって急速に回転される。データは、アクチュエータによってディスクの特定の場所の上に位置決めされた読み取り-書き込みトランスデューサ(又は読み取り-書き込み「ヘッド」)を使用して磁気記録ディスクから読み取られ、磁気記録ディスクに書き込まれる。読み取り-書き込みヘッドは、磁場を使用して、磁気記録ディスクの表面にデータを書き込み、この表面からデータを読み取る。書き込みヘッドは、書き込みヘッドのコイルを通って流れる電流を使用して磁場を生成することによって機能する。異なるパターンの正及び負の電流を伴って、書き込みヘッドに電気パルスが送られる。書き込みヘッドのコイル内の電流は、ヘッドと磁気ディスクとの間の間隙にわたる局所的な磁場を生成し、次いで、この磁場は、記録媒体上の小領域を磁化する。次いで、読み取りヘッドは、磁気ディスク上のこれらの領域の磁化を感知して読み取り信号を形成し、次いで、この読み取り信号は、処理及び解釈される。HDDの大部分の構成要素は、磁気記録ディスク、スピンドルモータ、磁気読み取り-書き込みヘッドが先端に取り付けられたアクチュエータ、及びボイスコイルモータアクチュエータ(voice coil motor actuator、「VCM」又は「VCMA」)を含むベース及びカバーに囲まれている。アクチュエータは、回転軸としてピボットシャフト(又は単に「ピボット」)を有するVCMによって駆動される。
【0004】
本セクションに説明され得るいずれの手法も、追求され得る手法であるが、必ずしも以前に考案又は追求されている手法ではない。したがって、別段の指示がない限り、本セクションに説明された手法のいずれも、それらが本セクションに含まれることによって単に先行技術として適格であると仮定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
実施形態は、添付図面の図において、限定としてではなく、例として例解されており、同様の参照番号は類似の要素を指す。
【0006】
【
図1】実施形態によるハードディスクドライブ(HDD)を例解する平面図である。
【
図2】HDDアクチュエータの周波数応答を一般的に描示するグラフである。
【
図3】実施形態によるHDDアクチュエータピボットアセンブリを例解する側断面図である。
【
図4】実施形態による改善された HDDアクチュエータピボットアセンブリを例解する側断面図である。
【
図5】実施形態によるハードディスクドライブを組み立てる方法を例解するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
概して、HDD内のコイルのねじり振動を低減するためのピボットとエンクロージャとの締結の改善に対する手法が説明されている。以下の明細書では、説明を目的として、本明細書に説明された本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本明細書に説明された本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることは明らかであろう。他の例では、本明細書に説明された本発明の実施形態を不必要に不明瞭にすることを回避するために、周知の構造及びデバイスがブロック図の形態で表され得る。
【0008】
序論
用語
本明細書における「実施形態」、「一実施形態」などへの言及は、説明されている特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味することが意図される。しかしながら、そのような語句の実例は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0009】
「実質的に」という用語は、大部分又はほぼ構造化された、構成された、寸法決めされたなどの特徴を説明していることが理解されるであろうが、その製造公差などは、実際には、構造、構成、寸法などが、常には又は必ずしも正確に述べられない状況を結果として生じ得る。例えば、「実質的に垂直な」として構造を説明するとすれば、側壁は全ての実用上の目的で垂直であるが、正確に90度ではない場合があるように、その用語にはその明白な意味が割り当てられる。
【0010】
「最適な」、「最適化する」、「最小の」、「最小化する」、「最大の」、「最大化する」などの用語は、それと関連付けられた特定の値を有しない場合があるが、そのような用語が本明細書で使用される場合、当業者であれば、そのような用語が、本開示の全体と一致する有益な方向に、値、パラメータ、メトリックなどに影響を及ぼすことを含むと理解することが意図される。例えば、何かの値を「最小」として説明することは、値が実際に理論上の最小値(例えば、ゼロ)に等しいことを必要としないが、対応する目標が理論上の最小値に向かって有益な方向に値を移動させることになるという点で、実際的な意味で理解されるべきである。
【0011】
コンテキスト
ハードディスクドライブ(HDD)は、データセンタにおいて広く使用されており、容量の増加及び性能の改善に対する継続的な要求がある。磁気ヘッドの位置決め精度を改善するためには、サーボ制御の帯域幅を改善することが考えられ得、温度変化に基づくアクチュエータの周波数応答変化の低減は、そのために有益であると考えられる。
【0012】
図2は、HDDアクチュエータの例示的な周波数応答を描示するグラフである。
図2は、アクチュエータコイル内の電流からヘッド変位への周波数応答の例を表す。ピボットシャフトを中心に回転するアクチュエータを特徴付ける剛体モードに加えて、弓形に変形するアクチュエータを特徴付ける主共振モード202及びコイルねじれモード204が、アクチュエータの周波数応答において見られる。コイルねじれモードは、周波数応答関数において最も低い周波数の振動モードであり、外部温度及び製造変動のために利得が大きく変化する。したがって、サーボコントローラの設計は、制御の安定性を確保するためのマージンを維持しなければならず、これは制御帯域幅を改善するための制約となる。このため、アクチュエータシステムの剛性変動のコンテキストにおいてなど、コイルねじれモードにおける面内力の励起係数は、改善を行うことができる領域である。
【0013】
コイルのねじり振動の低減のためのピボット-エンクロージャ締結の改善
HDDの使用研究は、摂氏40~60度(℃)の範囲の周囲温度を見出し、コイルねじれモードは、温度が上昇するにつれてより多く励起されることを見出した。したがって、高温でのコイルねじれモード利得の低減は関心のある領域である。
【0014】
図3は、実施形態による、HDDアクチュエータピボットアセンブリを例解する側断面図である。ピボットアセンブリ300は、HDD回転アクチュエータアセンブリが回転又は枢動する機構である(例えば、
図1のピボット軸受アセンブリ152が介在するピボットシャフト148を参照)。ベースピボットボスシャフト302は、ピボットシャフト304よりも高い熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、「CTE」)を有するので、ピボットねじ306の軸力は、高温では、ねじ306がピボットシャフト304に対して機械的に結合/締結/螺合されているピボットボスシャフト302の膨張のために減少する。ねじ306の軸力のこの減少は、主共振の周波数を低下させる(例えば、
図2の主共振モード202を参照)。アクチュエータアセンブリは、コイル(例えば、
図1のボイスコイル140を参照)を中心として垂直方向に対称であるように設計され、したがって、コイル上の面内力は、通常状態においてコイルねじれモードの振動を引き起こさない。しかしながら、ベース308(例えば、
図1のハウジング168も参照)及びピボットシャフト304の周りのカバー310の剛性が異なる場合、ねじ306の軸力の減少は、ピボットシャフト304の支持状態が非対称になることをもたらし、したがって、コイルねじれモード(例えば、
図2のコイルねじれモード204を参照)は、主共振モード202とより密接に結合される(例えば、周波数がより近くなる)。
【0015】
図4は、実施形態による、改善されたHDDアクチュエータピボットアセンブリを例解する側断面図である。
図4は、以下でより詳細に説明される相対的な長さ及び深さ並びにパーセンテージに関して正確な縮尺で描画されていない場合があることに留意されたい。説明したように、ピボットアセンブリ400などのピボットアセンブリは、HDD回転アクチュエータアセンブリが回転又は枢動する機構(一般に「ピボット」と称される)である(例えば、
図1のピボット軸受アセンブリ152が介在するピボットシャフト148を参照)。実施形態によれば、ピボットアセンブリ400の「ピボット」は、「L」とラベル付けされた対応するピボットシャフト長を有する中空の(少なくとも長さにおいて部分的に)シャフト404を備える。実施形態によれば、ピボットアセンブリ400は、ピボットシャフト404の周りに配設又は位置決めされた対応する1つ以上の軸受リング405(例えば、玉軸受リング)を更に備える。ピボットアセンブリ400は、描示されるように、ピボットシャフト404内に少なくとも部分的に配設されたピボットボスシャフト402を更に備える。実施形態によれば、ピボットボスシャフト402は、エンクロージャベース408(例えば、
図1のハウジング168又は「ベース」も参照)と一体的に形成される。
【0016】
ピボットボスシャフト402は、雌ねじ山部分402a及び非ねじ山部分402bを備える。実施形態によれば、ピボットボスシャフト402は、対応するねじ山付き締結具(例えば、ねじ406を参照)を受容するように構成された、中空部分への近位開口部(例えば、描示されるようなピボットボスシャフト402の上部を参照)と、ピボットボスシャフト長を形成する、対向する遠位端(例えば、描示されるようなピボットボスシャフト402の底部を参照)と、を更に備える。実施形態によれば、ねじ山部分402aは、ピボットボスシャフト402の遠位半分内にのみ位置決めされ、これは、以下でより詳細に説明される所望の締結深さをより確実にする。関連する実施形態によれば、雌ねじ山部分402aは、実質的に中央ねじ山がピボットボスシャフト402の長さの64%(64パーセント)又はその近傍に、若しくはより多く位置決めされるように位置決めされる。実施形態によれば、ピボットボスシャフト402は、ねじ山部分から遠位端に向かって延在するカウンタボア402cを更に備え、したがって、所望の締結深さに加えて、追加のピボットボスシャフト402の長さを提供して、HSA(head-stack assembly、ヘッドスタックアセンブリ)設置後の傾きを防止する。
【0017】
ピボットアセンブリ400は、ねじ406によってベース408に固定/締結され、このねじは、さもなければベース408に結合されるカバー410を通してピボットボスシャフト402のねじ山部分402aに結合される。ねじ406は、ピボットシャフト404の上部と、ピボットボスシャフト402のねじ山部分402aの実質的に中央ねじ山がねじ406のねじ山と結合される位置との間の距離によって定義される、「締結深さ」を表す「fastening depth、FD」とラベル付けされた関連するねじ締結深さを有するように構成される。ねじ山部分402aの中央が示され、402acとラベル付けされている。とりわけ、実施形態によれば、ここで、ねじ406のねじ締結深さFDは、ピボットシャフト404のピボットシャフト長Lの66%(66パーセント)以上に構成される。こうして、FDは、ピボットアセンブリ300(
図3)よりも深く、それによって、少なくとも部分的に、ねじ406がねじ306(
図3)よりも長く、対応する締結位置が、概してピボットアセンブリ400内で、特にピボットボスシャフト402及びピボットシャフト404内でより低いので、比較的高い温度(非限定的な例では、30℃~60℃の範囲)でのピボットボスシャフト402の熱膨張を低減する。同様に、ねじ406に対応する軸方向締結力は、高温でねじ306よりも大きく、すなわち、ピボットアセンブリ400とカバー410との間のねじ締結力は維持され、ピボットアセンブリ300の場合ほど減少しない。
【0018】
関連する実施形態によれば、ねじ締結深さFDは、ピボットシャフト長Lの66%~100%(100パーセントのすぐ下)の範囲内に構成され、こうして、ベース鋳物/構成要素の外側表面の中へ、及び/又は外側表面を越えてより深く延在し得るねじを用いてなど、エンクロージャの内側から空気又はガス(例えば、ヘリウム)の漏出を排除又は少なくとも抑制する。説明された66%のFD、並びに導出及び/又は実装され得る任意の他のFDは、ピボットボスシャフト402、ピボットシャフト404、及びねじ406が構成される特定の材料に基づくことに留意されたい。非限定的な例として、66%FDは、アルミニウム合金(例えば、約21e-6/KのCTEを有するADC12アルミニウム)から構成されるピボットボスシャフト402、ステンレス鋼(例えば、約10.4e-6/KのCTEを有するDHS-1B鋼)から構成されるピボットシャフト404、及び炭素鋼(例えば、SWCH16A炭素鋼)から構成されるねじ406に基づく。しかしながら、ピボットボスシャフト402、ピボットシャフト404、及びねじ406に使用される材料は、例えば、構造上の必要性、設計目標、材料の入手可能性、などに基づいて、実装形態ごとに異なり得る。同様に、ねじ締結深さFDもまた、例えば、それぞれの部品に使用される材料及びそれらの対応するCTEに基づいて、実装形態ごとに異なり得る。ピボットボスシャフト402及びピボットシャフト404の材料が、ADC12アルミニウム及びDHS-1B鋼材料について上で例示したものよりも大きなCTEの差を有するシナリオでは、それに応じてねじ締結深さが66%を超えることが予想されることに留意されたい。
【0019】
続いて、ピボットねじ406の軸力は、より高い温度では、ベースボスシャフト402と対応するピボットシャフト404とのCTEの差の結果として、より少なく又は最小限に減少するので、周波数応答関数におけるコイルねじれモード利得は低減され、より高い温度での主共振周波数(例えば、
図2の主共振モード202を参照)の変化(低下)は、ピボットアセンブリ300と比較して抑制及び低減される。したがって、コイルねじれモード(例えば、
図2のコイルねじれモード204を参照)は、より密接に結合せず(例えば、周波数においてより近くに)、したがって、ピボットアセンブリ300の場合のように、より高温で主共振モード202によってそれほど悪影響を受けない。
【0020】
ハードディスクドライブを組み立てる方法
図5は、実施形態による、ハードディスクドライブを組み立てる方法を例解するフロー図である。
【0021】
ブロック502において、ピボットボスシャフトの周りに、ピボットシャフト長を有する中空ピボットシャフトを備える回転アクチュエータアセンブリを位置決めする。例えば、ベース408のピボットボスシャフト402(
図4)の周りに、ピボットシャフト長L(
図4)を有するピボットシャフト404(
図4)を含む、
図1のHSAを位置決めする。
【0022】
ブロック504において、ピボットボスシャフトのねじ山部分の中央ねじ山が、ピボットシャフト長の66%~100%で、ねじのねじ山と結合されるねじ締結深さを有するように、ねじを、カバーを通してピボットボスシャフトのねじ山部分に締結する。例えば、ねじ406(
図4)は、カバー410(
図4)を通して、ピボットボスシャフト402の近位開口部内に挿入され、その結果、ねじ406のねじ山は、ピボットシャフト404の長さLの少なくとも66%からほぼ100%までの締結深さFD(
図4)で、ピボットボスシャフト402の遠位半分に位置決めされたねじ山部分402aの中央402acに到達する。
【0023】
例解的な動作コンテキストの物理的説明
実施形態は、ハードディスクドライブ(HDD)などのデジタルデータ記憶デバイス(digital data storage device、DSD)のコンテキストで使用され得る。したがって、実施形態によれば、従来のHDD100を例解する平面図は、従来のHDDが典型的にどのように動作するかを説明することを助長するために
図1に示されている。
【0024】
図1は、磁気読み取り-書き込みヘッド110aを含むスライダ110bを含むHDD100の構成要素の機能的配置を例解する。集合的に、スライダ110b及びヘッド110aは、ヘッドスライダと称され得る。HDD100は、ヘッドスライダを含む少なくとも1つのヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly、HGA)110と、典型的にはフレクシャを介してヘッドスライダに取り付けられたリードサスペンション110cと、リードサスペンション110cに取り付けられたロードビーム110dと、を含む。HDD100はまた、スピンドル124上に回転可能に取り付けられた少なくとも1つの記録媒体120、しかし通常は複数の記録媒体120と、媒体120を回転させるためにスピンドル124に取り付けられた駆動モータ(図示せず)と、を含む。トランスデューサとも称され得る読み取り-書き込みヘッド110aは、HDD100の媒体120に記憶された情報をそれぞれ書き込み及び読み取るための書き込み要素及び読み取り要素を含む。媒体120又は複数のディスク媒体は、ディスククランプ128でスピンドル124に添設され得る。
【0025】
HDD100は、HGA110に取り付けられたアーム132と、キャリッジ134と、キャリッジ134に取り付けられたボイスコイル140を含む電機子136及びボイスコイル磁石(図示せず)を含むステータ144を含むボイスコイルモータ(voice coil motor、VCM)と、を更に含む。VCMの電機子136は、キャリッジ134に取り付けられており、アーム132及びHGA110を移動させ、媒体120の部分にアクセスするように構成されており、全てまとめて、介在するピボット軸受アセンブリ152でピボットシャフト148上に装着されている。複数のディスクを有するHDDの場合、キャリッジ134は、キャリッジに櫛の外観を与える連動したアームアレイを搬送するようにキャリッジが配置されているため、「Eブロック」又は櫛と称され得る。
【0026】
ヘッドスライダが結合されたフレクシャと、フレクシャが結合されたアクチュエータアーム(例えば、アーム132)及び/又はロードビームと、アクチュエータアームが結合されたアクチュエータ(例えば、VCM)と、を含む、ヘッドジンバルアセンブリ(例えば、HGA110)を備えるアセンブリは、ヘッドスタックアセンブリ(HSA)と総称され得る。ただし、HSAは、説明されたものよりも多いか又は少ない構成要素を含み得る。例えば、HSAは、電気相互接続部品を更に含むアセンブリを指し得る。一般に、HSAは、読み取り動作及び書き込み動作のために、ヘッドスライダを媒体120の部分にアクセスするために移動させるように構成されたアセンブリである。HSAは、読み取り-書き込みヘッドスライダを含むヘッドスタックアセンブリ(HSA)をディスクから離れてそれるように移動させ、読み取り-書き込みヘッドスライダをロード/アンロード(load/unload、LUL)ランプの支持構造上に安全に位置決めするために、LULランプ190と機械的に相互作用するように構成されている。
【0027】
図1を更に参照すると、ヘッド110aへの書き込み信号及びヘッド110aからの読み取り信号を含む電気信号(例えば、VCMのボイスコイル140への電流)は、可撓性ケーブルアセンブリ(flexible cable assembly、FCA)156(又は「フレックスケーブル」、又は「フレキシブルプリント回路」(flexible printed circuit、FPC))によって送信される。フレックスケーブル156とヘッド110aとの間の相互接続は、読み取り信号用のオンボード前置増幅器、並びに他の読み取りチャネル及び書き込みチャネル電子部品を有し得る、アーム電子機器(arm-electronics、AE)モジュール160を含み得る。AEモジュール160は、図示されているように、キャリッジ134に取り付けられ得る。フレックスケーブル156は、いくつかの構成では、HDDハウジング168によって提供された電気フィードスルーを通して電気通信を提供する電気コネクタブロック164に結合され得る。HDDハウジング168(若しくは「エンクロージャベース」、又は「ベースプレート」若しくは単に「ベース」)は、HDDカバーとともに、HDD100の情報記憶構成要素のための半封止された(又は、いくつかの構成では気密封止された)保護エンクロージャを提供する。
【0028】
デジタル信号プロセッサ(digital-signal processor、DSP)を含むディスクコントローラ及びサーボ電子機器を含む他の電子部品は、駆動モータ、VCMのボイスコイル140及びHGA110のヘッド110aに、電気信号を提供する。駆動モータに提供される電気信号は、駆動モータがスピンドル124にトルクを提供しながら回転することを可能にし、次いでトルクはスピンドル124に添設されている媒体120に伝達される。結果として、媒体120は、方向172に回転する。回転媒体120は、スライダ110bが、情報が記録された薄い磁気記録層と接触することなく媒体120の表面の上方に浮上するように、スライダ110bの空気軸受表面(air-bearing surface、ABS)が乗る空気軸受として作用する空気のクッションを生み出す。同様に、非限定的な例としてのヘリウムなどの空気より軽いガスが利用されるHDDにおいて、回転する媒体120は、スライダ110bがその上に乗るガス又は流体軸受として作用する、ガスのクッションを生み出す。
【0029】
VCMのボイスコイル140に提供される電気信号は、HGA110のヘッド110aが、情報が記録されるトラック176にアクセスすることを可能にする。こうして、弧180を通るVCMスイングの電機子136は、HGA110のヘッド110aが媒体120上の様々なトラックにアクセスすることを可能にする。情報は、セクタ184などの媒体120上のセクタに配置された複数の半径方向に入れ子になったトラック内の媒体120上に記憶される。それに対応して、各トラックは、セクタ化されたトラック部分188などの複数のセクタ化されたトラック部分(又は「トラックセクタ」)から構成されている。各セクタ化されたトラック部分188は、記録された情報と、エラー訂正符号情報、及びトラック176を識別する情報であるABCDサーボバースト信号パターンなどのサーボバースト信号パターンを含むヘッダと、を含み得る。トラック176にアクセスする際、HGA110のヘッド110aの読み取り要素は、サーボバースト信号パターンを読み取り、サーボバースト信号パターンは、サーボ電子機器に位置誤差信号(position-error-signal、PES)を提供し、サーボ電子機器は、VCMのボイスコイル140に提供される電気信号を制御することによって、ヘッド110aがトラック176に追従することを可能にする。トラック176を見つけ、特定のセクタ化されたトラック部分188を識別すると、ヘッド110aは、トラック176から情報を読み取るか、又は、外部エージェント、例えば、コンピュータシステムのマイクロプロセッサからディスクコントローラによって受信された命令に応じて、トラック176に情報を書き込む。
【0030】
HDDの電子アーキテクチャは、ハードディスクコントローラ(hard disk controller、「HDC」)、インターフェースコントローラ、アーム電子モジュール、データチャネル、モータドライバ、サーボプロセッサ、バッファメモリなどの、HDDの動作のための自体のそれぞれの機能を実行するための、多数の電子部品を含む。そのような部品のうちの2つ以上は、「チップ上のシステム」(system on a chip、「SOC」)と称される単一の集積回路基板上で組み合わされ得る。そのような電子部品の、全てではないがいくつかは、典型的には、HDDハウジング168などのHDDの底部側に結合されるプリント基板上に配置される。
【0031】
図1を参照して例解及び説明されたHDD100などの、本明細書におけるハードディスクドライブへの言及は、「ハイブリッドドライブ」と称されることがある情報記憶デバイスを包含し得る。ハイブリッドドライブとは、一般に、電気的に消去可能でプログラム可能であるフラッシュ又は他のソリッドステート(例えば、集積回路)メモリなどの不揮発性メモリを使用するソリッドステートデバイス(solid-state storage device、SSD)と組み合わされた従来のHDD(例えば、HDD100を参照)の、両方の機能を有する記憶デバイスを指す。異なるタイプの記憶媒体の動作、管理、及び制御は、通常異なるため、ハイブリッドドライブのソリッドステート部分は、それ自体の対応するコントローラ機能を含み得、コントローラ機能は、HDD機能とともに単一のコントローラに統合され得る。ハイブリッドドライブは、非限定的な例として、頻繁にアクセスされるデータを記憶する、I/O集約データなどを記憶するなどのために、ソリッドステートメモリをキャッシュメモリとして使用するなどによって、ソリッドステート部分をいくつかの方式で動作させて利用するように設計及び構成され得る。更に、ハイブリッドドライブは、ホスト接続のための1つ又は複数のインターフェースのいずれかで、単一のエンクロージャの2つの記憶デバイス、すなわち従来のHDD及びSSDとして本質的に設計及び構成され得る。
【0032】
拡張物及び代替物
前述の説明において、本発明の実施形態は、実装形態ごとに変わり得る多数の具体的な詳細を参照して説明されてきた。したがって、実施形態のより広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができる。こうして、本発明であり、本出願人らが本発明であることを意図するものの唯一及び排他的な指針は、そのような特許請求の範囲が由来し、いかなる後続の補正も含む、特定の形態において、本出願が由来する特許請求の範囲のセットである。そのような特許請求の範囲に包含される用語について本明細書に明示的に記載されるあらゆる定義は、特許請求の範囲で使用されるような用語の意味を支配するものとする。それゆえ、特許請求項に明示的に記載されていない限定、要素、特性、特徴、利点又は属性は、決してそのような特許請求項の範囲を限定すべきでない。これにより、本明細書及び図面は、制限的な意味ではなく、例解的とみなされるものである。
【0033】
加えて、本明細書では、特定のプロセス工程が特定の順序で記載され得、アルファベット及び英数字符号を使用して、特定の工程を識別し得る。本明細書において特記されない限り、実施形態は、そのような工程を実施する任意の特定の順序に必ずしも限定されない。特に、符号は単に工程の簡便な識別に使用され、そのような工程を実施する特定の順序を指定又は必要とすることは意図されていない。