IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特許7551892太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム
<>
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図1
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図2
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図3
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図4
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図5
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図6
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図7
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図8
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図9
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図10
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図11
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図12
  • 特許-太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/072 20120101AFI20240909BHJP
【FI】
H01L31/06 400
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023501619
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2021026049
(87)【国際公開番号】W WO2023281761
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 直之
(72)【発明者】
【氏名】水野 幸民
(72)【発明者】
【氏名】保西 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 六月
(72)【発明者】
【氏名】西田 靖孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 和重
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-169545(JP,A)
【文献】特開2006-332373(JP,A)
【文献】特開2000-243994(JP,A)
【文献】特開2011-258858(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109309136(CN,A)
【文献】CHUA, Danny et al.,Enhancement of the open circuit voltage of Cu2O/Ga2O3 heterojunction solar cells through the mitigation of interfacial recombination,AIP Advances,2019年05月02日,Vol.9,pp.055203-1 - 055203-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/06-31/078
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p電極と、
前記p電極上に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を含むp型光吸収層と、
前記p型光吸収層の上にn型層と、
前記n型層の上にn電極とを有し、
前記p型光吸収層は、前記p型光吸収層と前記n型層との境界の位置から、前記p電極側に向かって10nmまでの深さまでの位置までの領域を第1領域とし、
前記p型光吸収層の前記p型光吸収層と前記n型層との境界の位置から、前記p電極側に向かって100nmまでの深さの位置までの領域から前記第1領域を除く領域を第2領域とする場合、
前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の95%以上105%以下である太陽電池。
【請求項2】
前記n型層は、酸化物又は硫化物のいずれか1つを少なくとも含む請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記n型層は、Ga、Al、B、In、Ti、Zn、Hf、Zr、Cd、Sn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む前記酸化物又は前記硫化物を含む請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記n型層は、単層又は多層の前記酸化物を含み、又は、単層又は多層の前記硫化物を含む請求項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の85%以上95%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第1領域の前記p型光吸収層と前記n型層との境界の前記位置から前記p電極側に向かって5nmまでの深さの位置から10nmまでの深さの位置までの領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の87%以上93%以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の78%以上85%以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の85%以上95%以下であり、前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の110%以上120%以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の90%以上99%以下であり、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の101%以上110%以下である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項10】
亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上にn型層を形成する工程と、
前記n型層上にn電極を形成する工程と、
前記n型層を形成する工程の後であり前記n電極を形成する工程の前に、又は、前記n型層を形成する工程の途中で、前記n型層が形成された部材を加熱する工程と、
を含み、
前記n型層が単層のn型層である場合、前記n型層が形成された部材を加熱する工程において、前記単層のn型層を形成した後で前記n電極を形成する工程の前に加熱を行い、
前記n型層が多層である場合、前記n型層が形成された部材を加熱する工程において、前記多層のn型層を形成した後で前記n電極を形成する工程の前に加熱を行う、又は、前記n型層を形成する工程の途中で、前記多層のn型層を構成する一層を形成する工程の後で前記多層のn型層を構成する前記一層の次の層を形成する工程の前に加熱を行う太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記加熱する工程は、非酸化雰囲気で行なう請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記加熱する工程の前記亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、150℃以上250℃以下である請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記加熱する工程の前記亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、160℃以上230℃以下である請求項10ないし12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記加熱する工程の前記亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、170℃以上220℃以下である請求項10ないし13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記加熱する工程における処理時間は、5分以上60分以下である請求項10ないし14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記加熱する工程における雰囲気は、酸素濃度は、5.0×10-8[g/L]以上8.0×10-4[g/L]以下である請求項10ないし15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記加熱する工程における雰囲気のオゾン濃度は、酸素濃度の1/10以下である請求項10ないし16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記加熱する工程における雰囲気の水蒸気濃度は、5.0×10-8[g/L]以上8.0×10-4[g/L]以下である請求項10ないし17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記加熱する工程における雰囲気の全圧は、100Pa以上200,000Pa以下である請求項10ないし18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の太陽電池と、
請求項1ないし9いずれか1項に記載の太陽電池のp型光吸収層よりもバンドギャップの小さい光吸収層を有する太陽電池とを有する多接合型太陽電池。
【請求項21】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の太陽電池を用いた太陽電池モジュール。
【請求項22】
請求項21に記載の太陽電池モジュールを用いて太陽光発電を行う太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新しい太陽電池の1つに、亜酸化銅(CuO)を光吸収層に用いた太陽電池がある。CuOはワイドギャップ半導体である。CuOは地球上に豊富に存在する銅と酸素からなる安全かつ安価な材料であるため、高効率かつ低コストな太陽電池が実現できると期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/146119号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、変換効率に優れた太陽電池、太陽電池の製造方法、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システムする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の太陽電池は、p電極と、p電極上に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を含むp型光吸収層と、p型光吸収層の上にn型層と、n型層の上にn電極とを有し、p型光吸収層は、p型光吸収層とn型層との境界の位置から、p電極側に向かって10nmまでの深さまでの位置までの領域を第1領域とし、p型光吸収層のp型光吸収層とn型層との境界の位置から、p電極側に向かって100nmまでの深さの位置までの領域から第1領域を除く領域を第2領域とする場合、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の95%以上105%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態の太陽電池の断面図。
図2図2は、実施形態の太陽電池の分析スポットを説明する図。
図3図3は、参考例のHAADF-STEM像と輝度プロファイル。
図4図4は、参考例のHAADF-STEM像と輝度プロファイル。
図5図5は、実施形態の積層薄膜及び太陽電池の製造方法のフローチャート。
図6図6は、実施形態の多接合型太陽電池の断面図。
図7図7は、実施形態の太陽電池モジュールの斜視図。
図8図8は、実施形態の太陽電池モジュールの断面図。
図9図9は、実施形態の太陽光発電システムの構成図。
図10図10は、実施形態の車両の概念図。
図11図11は、実施形態の飛翔体の概念図。
図12図12は、実施例に関する表。
図13図13は、実施例に関する表。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、特に記載が無い限り、25℃、1気圧(大気)における値を示している。また、平均は、算術平均値を表している。
(第1実施形態)
第1実施形態は、太陽電池と太陽電池の製造方法に関する。第1実施形態の太陽電池100の断面図を示す。図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池100は、基板1、第1電極であるp電極2と、p型光吸収層3と、n型層4と、第2電極であるn電極5を有する。n型層4のn電極5との間等には、図示しない中間層が含まれていてもよい。太陽光はn電極5側、p電極2側いずれから入射しても良いが、n電極5側から入射するのがより好ましい。実施形態の太陽電池100は、透過型の太陽電池であるため、多接合型太陽電池のトップセル(光入射側)に用いることが好ましい。図1では基板1をp電極2のp型光吸収層3側とは反対側に設けている。実施形態の太陽電池100は、n電極5側からp電極2側に向かって光が入射する。
【0008】
基板1は、透明な基板である。基板1には、光を透過するアクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリプロピレン(PP)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)など)、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンやポリエーテルイミドなどの有機系の基板やソーダライムガラス、白板ガラス、化学強化ガラスや石英などの無機系の基板を用いることができる。基板1は、上記に挙げた基板を積層してもよい。基板1を省いた太陽電池100も実施形態に含まれる。
【0009】
p電極2は、基板1上に設けられており、基板1とp型光吸収層3との間に配置されている。p電極2は、p型光吸収層3側に設けられた光透過性を有する導電層である。p電極2の厚さは、典型的には、100nm以上2,000nm以下である。図1では、p電極2は、p型光吸収層3と直接接している。透過型の太陽電池100とする場合、p電極2は、1層以上の酸化物透明導電膜(半導体導電膜)を含むことが好ましい。非透過型の太陽電池100とする場合は、厚さが100nm以上のAuやAgなどの光を透過しない金属膜をp電極2として用いることが出来る。酸化物透明導電膜としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide;ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al-doped Zinc Oxide;AZO)、ボロンドープ酸化亜鉛(Boron-doped Zinc Oxide;BZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Gallium-doped Zinc Oxide;GZO)、ドープされた酸化スズ、チタンドープ酸化インジウム(Titanium-doped Indium Oxide;ITiO)、酸化インジウム酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide;IZO)や酸化インジウムガリウム亜鉛(Indium Gallium Zinc Oxide;IGZO)、水素ドープ酸化インジウム(Hydrogen-doped Indium Oxide;IOH)など特に限定されない。酸化物透明導電膜は、複数の膜を持つ積層膜であってもよい。
【0010】
酸化スズなどの膜へのドーパントとしては、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上であれば特に限定されない。p電極2には、ドープされた酸化スズが含まれることが好ましい。ドープされた酸化スズがp電極2に含まれる場合、ドープされた酸化スズがp型光吸収層3と直接的に接していることが好ましい。ドープされた酸化スズ膜がp電極2に含まれる場合、p電極2のp型光吸収層3側を向く面にドープされた酸化スズ膜が設けられていることが好ましく、ドープされた酸化スズ膜がp型光吸収層3と直接的に接していることが好ましい。p電極2は、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上の元素がドープされた酸化スズ膜が含まれることが好ましい。ドープされた酸化スズ膜において、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上の元素は、酸化スズ膜に含まれるスズに対して10原子%以下含まれることが好ましい。
【0011】
p電極2として、酸化物透明導電膜と金属膜を積層した積層膜を用いることができる。金属膜は、厚さが10nm以下であることが好ましく、金属膜に含まれる金属(合金を含む)は、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。また、p電極2は、酸化物透明導電膜と基板1の間、又は、酸化物透明導電膜とp型光吸収層3の間にドット状、ライン状もしくはメッシュ状の電極(金属、合金、グラフェン、導電性窒化物及び導電性酸化物からなる群より選ばれる1種以上)を含むことが好ましい。ドット状、ライン状もしくはメッシュ状の金属は、透明導電膜に対して開口率が50%以上であることが好ましい。ドット状、ライン状もしくはメッシュ状の金属は、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。p電極2に金属膜を用いる場合、透過性の観点から5nm以下程度の膜厚とすることが好ましい。ライン状やメッシュ状の金属膜を用いる場合、透過性は開口部で確保されるため、金属膜の膜厚に関してはこの限りではない。
【0012】
基板1上にp電極2を形成する方法は、例えば、基板1上に酸化物透明導電膜は例えばスパッタで成膜する。金属膜、メッシュ状の金属、ライン状の金属がp電極2に含まれる場合は、これらの金属を成膜し、必要に応じてパターニングする。
【0013】
p型光吸収層3は、p型の半導体層である。p型光吸収層3は、p電極2と直接的に接していても良いし、p電極2とのコンタクトを確保できる限り、他の層が存在していても良い。p型光吸収層3は、p電極2とn型層4との間に配置される。p型光吸収層3はn型層4と直接的に接している。p型光吸収層3としては、Cuを主成分とする金属の酸化物の半導体層である。Cuを主成分とする金属の酸化物は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物である。つまり、p型光吸収層3は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層である。p型光吸収層3は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物の多結晶であることが好ましい。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物は、CuM1で表される酸化物である。M1は、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。a、b及びcは、1.80≦a≦2.01、0.00≦b≦0.20及び0.98≦c≦1.02を満たすことが好ましい。p型光吸収層3の90wt%以上は亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物であることが好ましい。p型光吸収層3の95wt%以上は亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物であることがより好ましい。p型光吸収層3の98wt%以上は亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物であることがさらにより好ましい。p型光吸収層3は、異相であるCu及び/又はCuOをほとんど含まないことが好ましい。p型光吸収層3に含まれる異相が少なく結晶性が良いとp型光吸収層3の透過率が高くなるため好ましい。p型光吸収層3にM2の元素が含まれると、p型光吸収層3のバンドギャップを調整することができる。p型光吸収層3のバンドギャップは、2.0eV以上2.2eV以下であることが好ましい。かかる範囲のバンドギャップであると、Siを光吸収層に用いた太陽電池をボトムセルに用い、実施形態の太陽電池をトップセルに用いた多接合型太陽電池において、トップセル及びボトムセルの両方で太陽光を効率よく利用できる。p型光吸収層3は、Sn及び/又はSbを含むことが好ましい。p型光吸収層3のSnやSbは、p型光吸収層3に添加されたものでもよいし、p電極2に由来するものでもよい。以下、亜酸化銅と記載する箇所において、亜酸化銅の複合酸化物についてもその説明に含まれる。
【0014】
p型光吸収層3に含まれるCuやM1などの元素及びn型層4に含まれるGaなどのM2の元素の一部がp型光吸収層3とn型層4の境界付近において拡散していてもよい。
【0015】
上記p型光吸収層3の組成比は、p型光吸収層3の全体の組成比である。また、上記のp型光吸収層3の化合物組成比は、p型光吸収層3において全体的に満たすことが好ましい。なお、Sn及びSbのp型光吸収層3中の濃度が高いと、欠陥が増加して、キャリア再結合が増えてしまう。そこで、p型光吸収層3中のSb及びSnの合計体積濃度は、1.5x1019atoms/cm以下が好ましい。
【0016】
p型光吸収層3の組成は、p型光吸収層3の厚さをdとする場合、p電極2側のp型光吸収層3の表面から0.2d、0.5d、0.8dの深さにおける組成の平均値である。p型光吸収層3の化合物の元素組成比が傾斜しているといった条件がある場合を除き各深さにおいて、p型光吸収層3は、上記及び下記の好適な組成を満たすことが好ましい。なお、分析はn型層の表面からの各距離において図2の分析スポットを説明する図に示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポット(A1~A9)を例えば二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)で分析することで求められる。図2は太陽電池100を光の入射側から見た模式図である。p型光吸収層3の組成を分析する場合、D1はp型光吸収層3の幅方向の長さであり、D2はp型光吸収層3の奥行き方向の長さである。
【0017】
p型光吸収層3の厚さは、電子顕微鏡による断面観察や、段差計によって求められ、1,000nm以上10,000nm以下が好ましい。
【0018】
n型層4は、n型の半導体層である。n型層4は、p型光吸収層3とn電極5との間に配置される。n型層4は、p型光吸収層3のp電極2と接した面とは反対側の面と直接接している。n型層4は酸化物又は硫化物を含む半導体層である。n型層4は酸化物又は硫化物のいずれか1つを少なくとも含むことが好ましい。n型層4は、Gaを主成分とする酸化物を含むことが好ましい。n型層4は、Ga、Al、B、In、Ti、Zn、Hf、Zr、Cd、Sn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む酸化物又は硫化物を含むことが好ましい。
【0019】
n型層4は、単層又は多層である。n型層4は、単層又多層の酸化物を含む、又は、単層又は多層の硫化物を含むことが好ましい。n型層4は、単層で組成を傾斜させてもよいし、n型層4の各層で組成を傾斜させてもよい。n型層4が多層である場合、p型光吸収層3側から順に、第1n型層、第2n型層とする。例えば、n型層4が3層である場合、n型層4は、p型光吸収層3側から、第1n型層、第2n型層、第3n型層の順に積層している。そして、第1n型層のp型光吸収層3側を向く面がp型光吸収層3と直接的に接している。n型層4が多層である場合、全ての層が酸化物層であるか、全ての層が硫化物層であることが好ましい。
【0020】
n型層4が酸化物を含む場合、n型層4の酸化物は、Ga、Al、B、In、Ti、Zn、Hf、Zr、Sn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む酸化物であることが好ましい。n型層4の酸化物は、n型層4を形成する際に、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物のCuと結合している酸素を引き抜き易い。n型層4の硫化物は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物から拡散したCu及びM1の元素を含んでいてもよい。n型層4が酸化物を含む多層のn型半導体層である場合、少なくとも1層は1層中の酸化物の金属元素に占めるGaの比率が50atom%以上であることが好ましい。n型層4が酸化物を含む多層のn型半導体層である場合、少なくとも第1n型層中の酸化物の金属元素に占めるGaの比率が50atom%以上であることが好ましい。
【0021】
n型層4が硫化物を含む場合、n型層4の硫化物は、Ga、In、Zn及びCdからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む硫化物であることが好ましい。n型層4の硫化物は、ZnとInを含む硫化物、CdとZnを含む硫化物とInとGaを含む硫化物であることがより好ましい。n型層4の硫化物は、n型層4を形成する際に、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物のCuと結合している酸素を引き抜き易い。n型層4の硫化物は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物から拡散したCu、M1の及びOを含んでいてもよい。
【0022】
なお、n型層4の化合物の組成は、特に条件を付けなければn型層4全体の平均組成である。n型層4の組成は、n型層4の厚さをdとする場合、p型光吸収層3側のn型層4の表面(p型光吸収層3とn型層4の境界)から0.2d、0.5d、0.8dの深さにおける組成の平均値である。なお、n型層4が非常に薄い場合(例えば5nm以下)は、p型光吸収層3側とn型層4の表面から0.5dの深さにおける組成をn型層4の全体の組成とみなすことができる。なお、分析はn型層4の表面からの各距離におい図2の分析スポットを説明する図に示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポット(A1~A9)を例えば二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)で分析することで求められる。図2は太陽電池100を光の入射側から見た模式図である。n型層4の組成を分析する場合、D1はn型層4の幅方向の長さであり、D2はn型層4の奥行き方向の長さである。
【0023】
p型光吸収層3とn型層4の境界には、亜酸化銅の異相であるCu相が少ないことが好ましい。p型光吸収層3とn型層4の境界に存在しうる亜酸化銅及び亜酸化銅の複合酸化物の異相としては、Cu相、CuO相が挙げられる。n型層4の成膜前の状態において、Cu相がp型光吸収層3の表面に存在していなくても、n型層4を形成した後では、n型層4の酸化物や硫化物を形成する際に酸化物及び硫化物に含まれるM2の元素にCuOの酸素が引き抜かれるなどしてCuOが還元され、p型光吸収層3とn型層4の境界近傍にCuが析出し易い。p型光吸収層3とn型層4との境界近傍にCu相が存在すると、p型光吸収層3中の再結合速度が上がり、Vocが低下し、変換効率の低下の原因になると考えられる。n型層4の形成後にp型光吸収層3とn型層4との境界近傍に存在するCu量は非常に微量であるため、Cu相の位置と量を直接測定することが困難である。これまではp型光吸収層3とn型層4の境界近傍のCu相の定量的な評価を行なうことが困難であった。
【0024】
発明者らは、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(High-Angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscopy; HAADF-STEM)像の輝度プロファイルからp型光吸収層3とn型層4の境界付近のp型光吸収層3において輝度が高いことに着目し、輝度の高い領域にはCu相が含まれることを発見した。図3に参考例の太陽電池のHAADF-STEM像と輝度プロファイルを示す。図3のHAADF-STEM像と輝度プロファイルからp型光吸収層3のn型層4側の表面近傍に輝度の高い領域が存在していることがわかる。これを分析するとCu相であることが分かった。n型層4を形成する前の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層において、層の表面にCu相が確認されていない部材を用いても、n型層4の形成後にCu相が確認されている。発明者らは、このCu相を減らす又は消失させる方法を見いだした。Cu相が残っている太陽電池(参考例)と実施形態の太陽電池100のVoc及び変換効率を比べると実施形態の太陽電池100の方がVocと変換効率が向上している傾向が確認された。
【0025】
発明者らは上述の結果から、p型光吸収層3のp型光吸収層3とn型層4の境界付近のCu相についてVoc及び変換効率と相関性のある下記の評価方法を見いだした。Cu相の量を直接測定することは困難であるため、HAADF-STEM像の輝度プロファイルからCu相の量を評価している。
【0026】
図4に実施形態の太陽電池100のHAADF-STEM像と輝度プロファイルを示す。図4の輝度プロファイルにおいては、p型光吸収層3のn型層4側の領域に明らかな高輝度のピークは確認されていない。p型光吸収層3において、p型光吸収層3とn型層4との境界の位置から、p電極2側に向かって10nmまでの深さの位置までの領域を第1領域とする。また、p型光吸収層3のp型光吸収層3とn型層4との境界の位置から、p電極2側に向かって100nmまでの深さの位置までの領域から第1領域を除く領域を第2領域とする。なお、第1領域及び第2領域を除いたp型光吸収層3の領域(バルク)を第3領域とし、第3領域も下記の第2領域と同様の輝度プロファイル条件を満たすことが好ましい。
【0027】
p型光吸収層3とn型層4の境界は明瞭でない場合がある。p型光吸収層3とn型層4の境界が明瞭ではない場合は、p型光吸収層3とn型層4の境界はHAADF-STEM像の輝度プロファイルから求めることができる。p型光吸収層3とn型層4の境界近傍において、輝度が最も下がっている位置から、p電極2側に1nmずれた位置をp型光吸収層3とn型層4の境界とすることができる。p型光吸収層3とn型層4の境界は、平面ではなくて凹凸している場合がある。p型光吸収層3とn型層4の界面は、p型光吸収層3とn型層4の断面を観察して特定することができる。
【0028】
第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の95%以上105%以下であることが好ましい。第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の95%未満であると、CuO相が、多く存在することになり、適正なpn界面を形成できず、Vocの低下要因となる。第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の105%より大きいと、第1領域にCu相が含まれていて、p型光吸収層3中の再結合速度が早く、Vocが下がってしまう。第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の97%以上103%以下であることがより好ましい。n型層4を形成する前の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層においても、p型光吸収層3と同じHAADF-STEM像の輝度プロファイルの好ましい条件を満たすことが好ましい。図4に示す輝度プロファイルでは。第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の102%であり上記条件を満たしている。図3に示す輝度プロファイルでは。第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の115%であり上記条件を満たしていない。また、同様に、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度は、第3領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の95%以上105%以下であることが好ましく、97%以上103%以下であることがより好ましい。
【0029】
HAADF-STEM像の輝度プロファイルは、以下の方法で求められる。試料を収束イオンビーム(FIB)加工した後、原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200F Dual-X(JEOL製)を用いて、加速電圧120kVで、HAADF-STEM観察を実施する。輝度プロファイルを検出し、p型光吸収層3とn型層4の境界から、p電極2側に向かって、20nmから40nmの範囲で、コントラスト補正を行い、その範囲の強度を基準に、最大輝度を算出した。コントラスト補正は、実施形態の加熱する処理を行なった太陽電池と実施形態の加熱をする処理を行なっていない太陽電池の低輝度(n電極側のn型層4の輝度)と高輝度(p型光吸収層3の第2領域の平均輝度)が同程度になるように行なうことが好ましい。
【0030】
第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の85%以上95%以下であることが好ましく、87%以上93%以下であることがより好ましい。図4に示す輝度プロファイルでは、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の91%であり、上記条件を満たしている。図3に示す輝度プロファイルでは、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の98%であり、上記条件を満たしていない。図3の参考例の輝度プロファイルでは、第2領域の平均輝度は低く無いが、第1領域のピークが高く平均輝度が高いことに起因して上記条件を満たさない。また、同様に、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第3領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の85%以上95%以下であることが好ましく、87%以上93%以下であることがより好ましい
【0031】
第1領域のp型光吸収層3とn型層4との境界の位置からp電極2側に向かって5nmまでの深さの位置から10nmまでの深さの位置までの領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の85%以上95%以下であることが好ましく、87%以上93%以下であることがより好ましい。図4に示す輝度プロファイルでは、第1領域のp型光吸収層3とn型層4との境界の位置からp電極2側に向かって5nmまでの深さの位置から10nmまでの深さの位置までの領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の89%であり、上記条件を満たしている。図3に示す輝度プロファイルでは、第1領域のp型光吸収層3とn型層4との境界の位置からp電極2側に向かって5nmまでの深さの位置から10nmまでの深さの位置までの領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の93%であり、上記条件を満たしている。図3の参考例の輝度プロファイルでは、第2領域の平均輝度に対して、第1領域のp型光吸収層3とn型層4との境界の位置からp電極2側に向かって5nmまでの深さの位置から10nmまでの深さの位置までの領域の最小輝度の差が小さく、上記条件を満たしている。また、同様に、第1領域のp型光吸収層3とn型層4との境界の位置からp電極2側に向かって5nmまでの深さの位置から10nmまでの深さの位置までの領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、第3領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の85%以上95%以下であることが好ましく、87%以上93%以下であることがより好ましい。
【0032】
第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の78%以上85%以下であることが好ましく、80%以上83%以下であることがより好ましい。図4の輝度プロファイルでは、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の81%であり、上記条件を満たしている。図3の輝度プロファイルでは、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の80%であり、上記条件を満たしている。図3の参考例の輝度プロファイルでは、第2領域に明らかなピークは無いが、第1領域のピークの底が低いため上記条件を満たさない。また、同様に、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、第3領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の78%以上85%以下であることが好ましく、80%以上83%以下であることがより好ましい。
【0033】
第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の85%以上95%以下であることが好ましく、87%以上93%以下であることがより好ましく、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の110%以上120%以下であることが好ましく、112%以上118%以下であることがより好ましい。図4に示す輝度プロファイルでは、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の90%であり、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の113%であり、上記条件を満たしている。図3に示す輝度プロファイルでは、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の79%であり、上記条件を満たしていない。図3の参考例の輝度プロファイルでは、第1領域におけるピークの底が低くトップが高いため、上記条件を満たさない。
【0034】
第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の90%以上99%以下であることが好ましく、92%以上97%以下であることがより好ましい、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の101%以上110%以下であることが好ましく、103%以上108%以下であることがより好ましい。図4に示す輝度プロファイルでは、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の95%であり、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の108%であり、上記条件を満たしている。図3に示す輝度プロファイルでは、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の97%であり、第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の103%であり、上記条件を満たしている。図3の参考例においてもバルク(第2領域)のp型光吸収層3の結晶性は良く、異相が少ないため、参考例の図3の輝度プロファイルも上記条件を満たしている。また、同様に、第3領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、第3領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の90%以上99%以下であることが好ましく、92%以上97%以下であることがより好ましい、第3領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の101%以上110%以下であることが好ましく、103%以上108%以下であることがより好ましい。
【0035】
n電極5は、好ましくは、可視光に対して、光透過性を有するn型層4側の電極である。n電極5とp型光吸収層3によってn型層4を挟んでいる。n型層4とn電極5の間には、図示しない中間層を設けることができる。この中間層にはメッシュやライン形状の電極を含むことができる。n電極5には、酸化物透明導電膜(半導体導電膜)を用いることが好ましい。n電極5で用いられる酸化物透明導電膜としては、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ボロンドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、チタンドープ酸化インジウム、酸化インジウムガリウム亜鉛及び水素ドープ酸化インジウムからなる群より選ばれる1種以上の透明導電膜であることが好ましい。n電極5には、グラフェンも用いることができる。グラフェンは、銀ナノワイヤと積層させることが好ましい。太陽電池100を光透過型にしない場合で、p電極2が可視光に対して光透過性を有する場合は、n電極5にp電極2と同様に厚さが100nm以上の金属膜を用いることができる。
【0036】
n電極5の厚さは、電子顕微鏡による断面観察や、段差計によって求められ、特に限定はないが、典型的には、1nm以上2μm以下である。
【0037】
次に、太陽電池100の製造方法について説明する。実施形態の太陽電池100の製造方法のフローチャートを図5に示す。実施形態の太陽電池100の製造方法は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上にn型層4を形成する工程と、n型層4上にn電極5を形成する工程と、n型層を形成する工程の後でありn電極を形成する工程の前に、又は、n型層を形成する工程の途中で、n型層が形成された部材を加熱する工程と、を含む。
【0038】
亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層は、p型光吸収層3の前駆体である。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層は、n型層4の一部又は全部を形成してから加熱することでp型光吸収層3になる。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上にn型層4を形成する工程においては、基板1上のp電極2上に設けられた亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層、p電極2上に設けられた亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層、又は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層が単体の部材が亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層である。
【0039】
基板1上のp電極2上に設けられた亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層は、基板1上にp電極2を形成し、さらにp電極2上に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層を形成することで得られる。基板1を用いない場合においては、p電極2上に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層を形成してもよいし、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上にp電極を形成してもよい。
【0040】
p電極2上に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層を形成する方法として、p電極2上に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層を成膜する。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層は、スパッタリングで成膜することが好ましい。異相が少ない亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層を成膜することが好ましい。スパッタリングは、基板1上にp電極2が形成された部材を300℃以上600℃以下に加熱して、酸素分圧が0.01[Pa]以上4.8[Pa]以下の範囲内で0.02μm/min以上20μm/min以下の範囲内で行なうことが好ましい。基板1上にp電極2が形成された部材の温度は、ステージの温度と等しいとみなす。透過性が高く大粒径な多結晶膜を成膜する観点から、堆積速度をdとしたとき、酸素分圧は、0.55xd[Pa]以上1.00xd[Pa]以下を満たすことがより好ましい。また、p電極2の加熱温度は、350℃以上500℃以下がより好ましい。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の成膜中にM1の元素を添加することができる。
【0041】
また、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層を形成する方法として、スパッタリングの他にも、Cu板を酸素雰囲気で加熱して、CuをCuOに酸化させて亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層を得ることができる。亜酸化銅層にイオン注入をするなどして、M1の元素を亜酸化銅層にドープすることができる。
【0042】
亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上にn型層4を形成する工程は、上述の基板1上のp電極2上に設けられた亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層、p電極2上に設けられた亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層、又は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層が単体の部材にn型層4を形成することを含む。n型層4は、原子層堆積法などで亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上に堆積させて形成してもよいし、n型層4を亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層に転写して加熱するなどして形成される。転写後に加熱することで、n型層4と亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層が接合する。n型層4を堆積させる際又は転写後に加熱する際、つまり、n型層4の酸化物又は硫化物の結晶が亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物と加熱によって結合するとき及び結合した後に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層のn型層4が形成されている面側の第1領域にCu相が析出すると考えられる。
【0043】
n型層4を堆積させる際の亜酸化銅又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、例えば、100℃以上150℃以下である。硫化性または酸化性の雰囲気でn型層4を亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上に堆積させることが好ましい。
【0044】
n型層4を形成する工程の後でありn電極を形成する工程の前に、又は、n型層を形成する工程の途中で、n型層が形成された部材を加熱する工程は、析出したCu相を酸化する工程である。単層のn型層4の形成後でn電極5の形成前、又は、多層のn型層4のうち1層以上を形成後でn電極5の形成前に加熱処理を行なう。加熱処理は、Cu相を酸化させるが酸化性の雰囲気で加熱処理を行なうと、亜酸化銅がさらに酸化されてしまい、CuOになってしまう。CuO相が存在すると、p型光吸収層3の透過性及び発電に対する特性が大きく低下してしまう。そこで、加熱する工程は、非酸化雰囲気で行なうことが好ましい。加熱をする工程を行なう際に、p電極2は形成されていても構わないが、n電極5は形成されていない。
【0045】
加熱する工程は、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上にn型層4が形成された部材を密閉容器、例えば、不活性ガスをフローさせたグローブボックス内や、真空チャンバー内のステージに置いて行なわれる。なお、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層を形成して、n型層4を形成する前に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の表面を酸化させるなどの処理を行なってもよい。この酸化処理を行なっても、n型層4を形成する際にCuが析出するために加熱する工程を行なうことが有効である。
【0046】
なお、n型層4を形成した雰囲気から加熱する工程の雰囲気に変化させるため、下記の条件の雰囲気になるまでには一定時間を要する。この時、酸素分圧が高い状態で温度が高くなっていると、過度にCu相が酸化されてしまう。そこで、まず、室温以上100℃未満に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度を下げてから、好適な酸素濃度になるように容器内の雰囲気を調整することが好ましい。また、好適な酸素濃度に調整された容器内にn型層4が形成された部材を移動してもよい。
【0047】
加熱する工程の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、150℃以上250℃以下であることが好ましい。温度が低すぎると、Cu相が多く残ってしまうため加熱する工程の効果が実質的にない。また、温度が高すぎると、Cu相がCuO相になるだけで無く、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物の亜酸化銅が酸化銅になってしまう。さらに、n型層4に含まれる金属元素が亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層に拡散し、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層に含まれる金属元素がn型層4に拡散し、p型光吸収層3とn型層4の特性が低下してしまう恐れがある。これらの理由から、加熱する工程の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、160℃以上230℃以下であることがより好ましく、170℃以上220℃以下がさらにより好ましい。
【0048】
加熱する工程の処理時間は、5分以上60分以下であることが好ましい。加熱処理が短過ぎるとCu相の亜酸化銅化が十分に進行しない。また、加熱処理が長過ぎるとCu相がCuO相になるだけでなく、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物の亜酸化銅が酸化銅になってしまう。さらに、長時間の処理は経済的ではない。そこで、加熱する工程の処理時間は、15分以上50分以下がより好ましく、15分以上45分以下がさらにより好ましい。加熱する工程の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度が150℃以上180℃以下である場合は、処理時間が20分以上60分以下が好ましく、30分以上60分以下がより好ましい。加熱する工程の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度が170℃以上220℃以下である場合は、処理時間が10分以上50分以下が好ましく、10分以上40分以下がより好ましい。加熱する工程の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度が210℃以上250℃以下である場合は、処理時間が5分以上40分以下が好ましく、5分以上30分以下がより好ましい。加熱する工程の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度が150℃以上220℃以下である場合は、処理時間が10分以上60分以下が好ましく、20分以上50分以下がより好ましい。加熱する工程の亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度が210℃以上250℃以下である場合は、処理時間が5分以上50分以下が好ましく、5分以上40分以下がより好ましい。
【0049】
加熱する工程の雰囲気は、酸素濃度(質量[g]/体積[L])が8.0×10-4[g/L]以下であることが好ましい。加熱する工程において、酸素分圧が非常に低い環境では、加熱する工程の雰囲気に含まれる酸素が、Cu相を酸化させる可能性は低いと考えている。酸素濃度が高いとCu相がCuO相になるだけでなく、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物の亜酸化銅が酸化銅になってしまう。そこで、加熱をする際の雰囲気の酸素濃度は5.0×10-8[g/L]以上8.0×10-4[g/L]以下の雰囲気であることがより好ましく、酸素濃度が5.0×10-8[g/L]以上2.0×10-4[g/L]以下の雰囲気であることがさらにより好ましく、酸素濃度が5.0×10-8[g/L]以上1.0×10-4[g/L]以下の雰囲気であることがさらにより好ましい。オゾン濃度についても同観点から、加熱する際の雰囲気のオゾン濃度(質量[g]/体積[L])は、0.0[g/L]以上5.0×10-4[g/L]以下が好ましく、0.0[g/L]以上2.0×10-4[g/L]以下がさらに好ましく、0.0[g/L]以上1.4×10-4[g/L]以下がさらにより好ましい。オゾン濃度は、酸素濃度よりも低いことが好ましく、酸素濃度の1/10以下であることがより好ましい。また、水蒸気度(質量[g]/体積[L])についても同観点から、加熱する際の雰囲気の水蒸気分圧は、8.0×10-4[g/L]以下が好ましく、5.0×10-8[g/L]以上8.0×10-4[g/L]以下がさらに好ましく、5.0×10-8[g/L]以上2.0×10-4[g/L]以下がさらにより好ましい。
【0050】
加熱する工程の非酸化雰囲気の全圧は、特に限定されないが、100Pa以上200,000Pa以下であることが好ましい。非酸化雰囲気には、Arなどの不活性ガスが含まれている。加熱する工程の雰囲気の非酸化雰囲気には、微量の還元性ガスが含まれていてもよい。還元性ガスは、Cu相の酸化に実質的に影響を与えない程度であることが好ましい。還元性ガスの分圧は、酸素分圧及びオゾン分圧よりも低いことが好ましい。
【0051】
n電極5を形成する前に加熱する工程を行なうことが好ましい。n電極5を形成してから加熱をすると、n型層4に含まれる金属元素がn電極5に拡散し、n電極5に含まれる金属元素がn型層4に拡散するため、n型層4及びn電極5の特性を低下させてしまう。そこで、加熱する工程は、n電極5の形成前に行なうことが好ましい。
【0052】
ここで、加熱する工程について、例を挙げて説明する。まず、n型層4が単層である場合について説明する。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上に単層のn型層4を形成した後に加熱する工程を行なう。
【0053】
n型層4が多層である場合について説明する。n型層4が多層であると、p型光吸収層3とn型層4の伝導帯下端の接続の連続性及びn型層4とn電極5との伝導帯下端の接続性が向上しやすい。p型光吸収層3とn電極5の間の伝導帯下端の接続性が向上すると、短絡電流密度が向上し、変換効率の向上に寄与する。そこで、p型光吸収層3の伝導帯下端とn型層4の伝導帯下端の差([p型光吸収層3の伝導帯下端]-[n型層4の伝導帯下端])は、0.0eV以上0.5eV以下であることが好ましく、0.0eV以上0.4eV以下であることがより好ましい。
【0054】
n型層4が2層で、第1n型層と第2n型層を含む場合を例に説明する。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上に第1n型層を形成する。第1n型層を形成した後で第2n型層を形成する前を第1時機とする。また、第1n型層を形成した後に第2n型層を形成する。第2n型層を形成した後でn電極5を形成する前を第2時機とする。加熱する工程は、第1時機及び/又は第2時機に行なうことができる。第1時機に加熱をする工程を行なうと、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層と第1n型層の境界近傍に析出したCu相を酸化させて亜酸化銅に変化させることができる、第2時機に加熱をする工程を行なうと、酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層と第1n型層の境界近傍に析出したCu相を酸化させて亜酸化銅に変化させることと、第1n型層に含まれる金属元素を第2n型層を拡散させ、第2n型層に含まれる金属元素を第1n型層に拡散させることができる。拡散を防ぎたい場合は、第1時機にのみ加熱をする工程を行なうことが好ましい。複数の時機に加熱をする工程を行なうことで、第2n型層の形成時にCu相が形成された場合でもこのCu相を酸化させることができる。加熱をする工程を第1時機及び第2時機に行なう場合、2つの加熱をする工程の条件は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
n型層4が多層である場合について別の例を説明する。n型層4が2層で、第1n型層と第2n型層を含む場合を例に説明する。第1n型層は、Gaで第2n型層は、ZTOである。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上に第1n型層を形成する。第1n型層を形成した後で第2n型層を形成する前を第1時機とする。また、第1n型層を形成した後に第2n型層を形成する。第2n型層を形成した後でn電極5を形成する前を第2時機とする。加熱する工程は、第1時機及び/又は第2時機に行なうことができる。第1時機に加熱をする工程を行なうと、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層と第1n型層の境界近傍に析出したCu相を酸化させて亜酸化銅に変化させることができる、第2時機に加熱をする工程を行なうと、酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層と第1n型層の境界近傍に析出したCu相を酸化させて亜酸化銅に変化させることと、第1n型層に含まれる金属元素を第2n型層を拡散させ、第2n型層に含まれる金属元素を第1n型層に拡散させることができる。Gaが第2n型層へ拡散することで第2n型層の第1n型層側にはGaが存在し、Zn及びSnが第1n型層へ拡散することで、第1n型層の第2n型層側にはZn及びSnが存在する。すると、第1n型層と第2n型層の組成が傾斜的に変化するため伝導帯下端の接続の連続性が向上する。伝導帯下端の接続の連続性が向上すると、太陽電池100の短絡電流密度が増え、変換効率の向上に寄与する。上述の加熱条件で、p型光吸収層3からn電極5間の伝導帯下端の接続性が向上するように元素を拡散させることができる。加熱をする工程を第1時機及び第2時機に行なう場合、2つの加熱をする工程の条件は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
n型層4が3層以上の多層構造である場合も同様に、n型層4の各層を形成した後(途中及び/又は終了後)でn電極5を形成する前に加熱をする工程を行なうことができる。
【0057】
n型層4上にn電極を形成する工程として、n型層4上にスパッタなどによってn電極5を成膜する。中間層をn型層4とn電極5の間に設ける場合は、n電極5の形成前に中間層を形成する。上記の工程によって、基板1、p電極2、表面が酸化処理された亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とするp型光吸収層3、n型層4及びn電極5を有する太陽電池100が製造される。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態は多接合型太陽電池に関する。図6に第2実施形態の多接合型太陽電池の断面概念図を示す。図6の多接合型太陽電池200は、光入射側に第1実施形態の太陽電池(第1太陽電池)100と、第2太陽電池201を有する。第1太陽電池100は、第1実施形態の太陽電池である。第2太陽電池201の光吸収層のバンドギャップは、第2実施形態の多接合型太陽電池200のp型光吸収層3よりも小さいバンドギャップを有する。なお、実施形態の多接合型太陽電池は、3以上の太陽電池を接合させた太陽電池も含まれる。
【0059】
第1実施形態の太陽電池100のp型光吸収層3のバンドギャップが2.0eVから2.2eV程度であるため、第2太陽電池201の光吸収層のバンドギャップは、1.0eV以上1.6eV以下であることが好ましい。第2太陽電池の光吸収層としては、Inの含有比率が高いCIGS系及びCdTe系からなる群から選ばれる1種以上の化合物半導体層、結晶シリコン及びペロブスカイト型化合物からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
【0060】
(第3実施形態)
第3実施形態は、太陽電池モジュールに関する。図7に第3実施形態の太陽電池モジュール300の斜視図を示す。図7の太陽電池モジュール300は、第1太陽電池モジュール301と第2太陽電池モジュール302を積層した太陽電池モジュールである。第1太陽電池モジュール301は、光入射側であり、第1実施形態の太陽電池100を用いている。第2太陽電池モジュール302には、第2太陽電池201を用いることが好ましい。
【0061】
図8に太陽電池モジュール300の断面図を示す。図8では、第1太陽電池モジュール301の構造を詳細に示し、第2太陽電池モジュール302の構造は示していない。第2太陽電池モジュール302では、用いる太陽電池の光吸収層などに応じて適宜、太陽電池モジュールの構造を選択する。図8の太陽電池モジュール300は、複数の太陽電池100(太陽電池セル)が横方向に並んで配線304で電気的に直列に接続した破線で囲われたサブモジュール303が複数含まれ、複数のサブモジュール303が電気的に並列もしくは直列に接続している。隣り合うサブモジュール303は、バスバー305で電気的に接続している。
【0062】
隣り合う太陽電池100は、上部側のn電極5と下部側のp電極2が配線304によって接続している。サブモジュール303中の太陽電池100の両端は、バスバー305と接続し、バスバー305が複数のサブモジュール303を電気的に並列もしくは直列に接続し、第2太陽電池モジュール302との出力電圧を調整するように構成されていることが好ましい。なお、第3実施形態に示す太陽電池100の接続形態は一例であり、他の接続形態によって太陽電池モジュールを構成することができる。
【0063】
(第4実施形態)
第4実施形態は太陽光発電システムに関する。第3実施形態の太陽電池モジュールは、第4実施形態の太陽光発電システムにおいて、発電を行う発電機として用いることができる。実施形態の太陽光発電システムは、太陽電池モジュールを用いて発電を行うものであって、具体的には、発電を行う太陽電池モジュールと、発電した電気を電力変換する手段と、発電した電気をためる蓄電手段又は発電した電気を消費する負荷とを有する。図9に実施形態の太陽光発電システム400の構成図を示す。図9の太陽光発電システムは、太陽電池モジュール401(300)と、コンバーター402と、蓄電池403と、負荷404とを有する。蓄電池403と負荷404は、どちらか一方を省略しても良い。負荷404は、蓄電池403に蓄えられた電気エネルギーを利用することもできる構成にしてもよい。コンバーター402は、DC-DCコンバーター、DC-ACコンバーター、AC-ACコンバーターなど変圧や直流交流変換などの電力変換を行う回路又は素子を含む装置である。コンバーター402の構成は、発電電圧、蓄電池403や負荷404の構成に応じて好適な構成を採用すればよい。
【0064】
太陽電池モジュール300に含まれる太陽電池セルが発電し、その電気エネルギーは、コンバーター402で変換され、蓄電池403で蓄えられるか、負荷404で消費される。太陽電池モジュール401には、太陽電池モジュール401を常に太陽に向けるための太陽光追尾駆動装置を設けたり、太陽光を集光する集光体を設けたり、発電効率を向上させるための装置等を付加することが好ましい。
【0065】
太陽光発電システム400は、住居、商業施設や工場などの不動産に用いられたり、車両、航空機や電子機器などの動産に用いられたりすることが好ましい。実施形態の変換効率に優れた光電変換素子を太陽電池モジュールに用いることで、発電量の増加が期待される。
【0066】
太陽光発電システム400の利用例として車両を示す。図10に車両500の構成概念図を示す。図8の車両500は、車体501、太陽電池モジュール502、電力変換装置503、蓄電池504、モーター505とタイヤ(ホイール)506を有する。車体501の上部に設けられた太陽電池モジュール502で発電した電力は、電力変換装置503変換されて、蓄電池504にて充電されるか、モーター505等の負荷で電力が消費される。太陽電池モジュール502又は蓄電池504から供給される電力を用いてモーター505によってタイヤ(ホイール)506を回転させることにより車両500を動かすことができる。太陽電池モジュール502としては、多接合型ではなく、第1実施形態の太陽電池100等を備えた第1太陽電池モジュールだけで構成されていてもよい。透過性のある太陽電池モジュール502を採用する場合は、車体501の上部に加え、車体501の側面に発電する窓として太陽電池モジュール502を使用することも好ましい。
【0067】
太陽光発電システム400の利用例として飛翔体(ドローン)を示す。飛翔体は、太陽電池モジュール300を用いている。本実施形態にかかる飛翔体の構成を、図11の飛翔体(クアッドコプター)600の模式図を用いて簡単に説明する。飛翔体600は、太陽電池モジュール300、機体骨格601、モーター602、回転翼603と制御ユニット604を有する。太陽電池モジュール300、モーター602、回転翼603と制御ユニット604は、機体骨格601に配置している。制御ユニット604は、太陽電池モジュール300から出力した電力を変換したり、出力調整したりする。制御ユニット604には、太陽電池モジュール300が発電した電力を蓄電する蓄電池をさらに備えていてもよい。モーター602は太陽電池モジュール300から出力された電力を用いて、回転翼603を回転させる。実施形態の太陽電池モジュール300を有する本構成の飛翔体600とすることで、より多くの電力を用いて飛行することができる飛翔体が提供される。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
ガラス基板上に、裏面側のp電極として、ガラスと接する側に上面にITO(In:Sn=80:20、膜厚20nm)とATO(Sn:Sb=98:2 150μm)を堆積する。透明なp電極のATO上に酸素、アルゴンガス雰囲気中でスパッタリング法により500℃で加熱してCuO光吸収層を成膜する。次いでALD法により、n型層としてGa2.03.0を10nm堆積させる。その後、n型層を堆積させた部材を室温に戻してから、酸素濃度が2.0×10-4[g/L]の雰囲気で、n型層を堆積させた部材のCu2O光吸収層の温度が200℃になるように調整する。n型層を堆積させた部材のCu2O光吸収層の温度は、ホットプレートの温度が200℃になることで、Cu2O光吸収層の温度も200℃になったとみなす。この状態で30分間、n型層が形成された部材を処理する。その後、n型層上にn電極としてAZO透明導電膜を堆積する。そして、反射防止膜としてMgF膜を成膜することで太陽電池を得る。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透過率を評価する。図12において、n型層、加熱する工程における処理温度(Temp[℃])、処理時間(Time[分])及び酸素濃度([g/L])を示している。単層のn型層の場合、第1n型層の欄に組成などが示されている。n型層の組成の右側に○がついているところは、その組成のn型層を形成した後に加熱をする工程を行なっている。なお、加熱をする工程において、オゾン及び水蒸気は容器内に導入していないため、オゾン濃度及び水蒸気濃度は、5.0×10-8[g/L]以下である。
【0069】
(実施例2-実施例34、比較例1-比較例10)
実施例2-34、比較例1-10は、図12の表に示した条件でn型層を形成し、加熱すること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、変換効率及び透過率を評価する。図12の表において、温度などが「-」で表記されている欄は、加熱する工程を実施していない。
【0070】
(実施例35、比較例11)
Cu板を酸化雰囲気で加熱してCuO光吸収層を得る。そして、CuO光吸収層上にn型層としてGa2.03.0を10nm堆積させてから、加熱する工程を行なう。n電極を形成してから、CuO光吸収層のn型層側とは反対側の面にAu電極膜を形成する。これら以外は実施例1と同様の条件で太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、変換効率及び透過率を評価する。
【0071】
AM1.5Gの光源を模擬したソーラーシミュレータを用い、その光源下で基準となるSiセルを用いて1sunになるように光量を調節する。測定は大気圧下で測定室内の気温は25℃とする。電圧をスイープし、電流密度(電流をセル面積で割ったもの)を測定する。横軸を電圧、縦軸を電流密度とした際に、横軸と交わる点が開放電圧Vocとなり、縦軸と交わる点が短絡電流密度Jscとなる。測定曲線上において、電圧と電流密度を掛け合わせ、最大になる点をそれぞれVmpp、Jmpp(マキシマムパワーポイント)とすると、FF=(Vmpp*Jmpp)/(Voc*Jsc)であり、変換効率Eff.はEff.=Voc*Jsc*FFで求まる。測定後、劈開し、第1領域及び第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルを求める。
【0072】
図13の実施例に関する表に、実施例及び比較例のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの評価を、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、変換効率及び透光率と併せ、まとめて示す。
【0073】
HAADF-STEM像の輝度プロファイルの評価は、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の97%以上103%以下である場合をAと評価し、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の103%より大きく105%より小さい又は最大輝度の95%より大きく97%より小さいである場合をBと評価して、第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度が第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の105%以上95%以下である場合をCと評価する。
【0074】
透過率は、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が70%以上である場合をAと評価し、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が60%以上70%未満である場合をBと評価し、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が60%未満である場合をCと評価する。
【0075】
Vocは、比較例2のVocに対して1.1倍以上である場合をAと評価し、比較例2のVocに対して1.0倍以上1.1倍未満である場合をBと評価して、比較例2のVocに対して1.0倍未満である場合をCと評価する。
【0076】
変換効率は、比較例2の変換効率に対して1.1倍以上である場合をAと評価し、比較例2の変換効率に対して1.0倍以上1.1倍未満である場合をBと評価して、比較例2の変換効率に対して1.0倍未満である場合をCと評価する。
【0077】
Voc及び変換効率の評価について実施例1から17、比較例1、3から7については、比較対象を比較例2とする。、Voc及び変換効率の評価について実施例18から20については、比較対象を比較例8とする。Voc及び変換効率の評価について実施例21から27については、比較対象を比較例9とする。Voc及び変換効率の評価について実施例28から34については、比較対象を比較例10とする。Voc及び変換効率の評価について実施例35については、比較対象を比較例11とする。HAADF-STEM像の輝度プロファイルのコントラスト補正は、比較対象の比較例と低輝度(n電極側のn型層の輝度)と高輝度(p型光吸収層の第2領域の平均輝度)が同程度になるように行なってから評価する。
【0078】
図12、13の表から分るように、適切な酸素濃度の雰囲気での、適切な加熱条件では、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層と第1n型層の境界近傍に析出したCu相を酸化させて亜酸化銅に変化させることができるため、HAADF-STEM像の輝度プロファイルは改善する。亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層と第1n型層の境界近傍に析出したCu相を酸化させて亜酸化銅に変化させることができることで、界面でのキャリアの再結合が低減し、Vocが増大し、それに伴って、変換効率が改善する。Cu相があると、透過率が低下するが、亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層と第1n型層の境界近傍に析出したCu相を酸化させて亜酸化銅に変化させることができることで、透過率が改善する。過激な条件で、加熱を行うと、酸化銅が形成され、透過率が低下すると共に、Voc及び変換効率も低下する。
実施例の太陽電池をトップセルに用い、Siを光吸収層に用いた太陽電池をボトムセルに用いた多接合型太陽電池においても同様に変換効率が向上する。
明細書中一部の元素は、元素記号のみで示している。
以下、実施形態の技術案を付記する。
技術案1
p電極と、
前記p電極上に亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を含むp型光吸収層と、
前記p型光吸収層の上にn型層と、
前記n型層の上にn電極とを有し、
前記p型光吸収層は、前記p型光吸収層と前記n型層との境界の位置から、前記p電極側に向かって10nmまでの深さまでの位置までの領域を第1領域とし、
前記p型光吸収層の前記p型光吸収層と前記n型層との境界の位置から、前記p電極側に向かって100nmまでの深さの位置までの領域から前記第1領域を除く領域を第2領域とする場合、
前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の95%以上105%以下である太陽電池。
技術案2
前記n型層は、酸化物又は硫化物のいずれか1つを少なくとも含む技術案1に記載の太陽電池。
技術案3
前記n型層は、Ga、Al、B、In、Ti、Zn、Hf、Zr、Cd、Sn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む前記酸化物又は前記硫化物を含む技術案1又は2に記載の太陽電池。
技術案4
前記n型層は、単層又は多層の前記酸化物を含み、又は、単層又は多層の前記硫化物を含む技術案1ないし3のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案5
前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の85%以上95%以下である技術案1ないし4のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案6
前記第1領域の前記p型光吸収層と前記n型層との境界の前記位置から前記p電極側に向かって5nmまでの深さの位置から10nmまでの深さの位置までの領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の87%以上93%以下である技術案1ないし5のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案7
前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度の78%以上85%以下である技術案1ないし6のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案8
前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の85%以上95%以下であり、前記第1領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の110%以上120%以下である技術案1ないし7のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案9
前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの平均輝度は、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最大輝度の90%以上99%以下であり、前記第2領域のHAADF-STEM像の輝度プロファイルの最小輝度の101%以上110%以下である技術案1ないし8のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案10
亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層上にn型層を形成する工程と、
前記n型層上にn電極を形成する工程と、
前記n型層を形成する工程の後であり前記n電極を形成する工程の前に、又は、前記n型層を形成する工程の途中で、前記n型層が形成された部材を加熱する工程と、
を含む太陽電池の製造方法。
技術案11
前記加熱する工程は、非酸化雰囲気で行なう技術案10に記載の製造方法。
技術案12
前記加熱する工程の前記亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、150℃以上250℃以下である技術案10又は11に記載の製造方法。
技術案13
前記加熱する工程の前記亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、160℃以上230℃以下である技術案11ないし13のいずれか1案に記載の製造方法。
技術案14
前記加熱する工程の前記亜酸化銅及び/又は亜酸化銅の複合酸化物を主体とする層の温度は、170℃以上220℃以下である技術案11ないし14のいずれか1案に記載の製造方法。
技術案15
前記加熱する工程における処理時間は、5分以上60分以下である技術案11ないし15のいずれか1案に記載の製造方法。
技術案16
前記加熱する工程における雰囲気は、酸素濃度は、5.0×10-8[g/L]以上8.0×10-4[g/L]以下である技術案11ないし16のいずれか1案に記載の製造方法。
技術案17
前記加熱する工程における雰囲気のオゾン濃度は、酸素濃度の1/10以下である技術案11ないし17のいずれか1案に記載の製造方法。
技術案18
前記加熱する工程における雰囲気の水蒸気濃度は、5.0×10-8[g/L]以上8.0×10-4[g/L]以下である技術案11ないし18のいずれか1案に記載の製造方法。
技術案19
前記加熱する工程における雰囲気の全圧は、100Pa以上200,000Pa以下である技術案11ないし19のいずれか1案に記載の製造方法。
技術案20
技術案1ないし10のいずれか1案に記載の太陽電池と、
技術案1ないし10いずれか1案に記載の太陽電池のp型光吸収層よりもバンドギャップの小さい光吸収層を有する太陽電池とを有する多接合型太陽電池。
技術案21
技術案1ないし15のいずれか1案に記載の太陽電池を用いた太陽電池モジュール。
技術案22
技術案21に記載の太陽電池モジュールを用いて太陽光発電を行う太陽光発電システム。
【0079】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定解釈されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成することができる。例えば、変形例の様に異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0080】
100,101…太陽電池(第1太陽電池)、1…基板、2…p電極、3…p型光吸収層、4…n型層、5…n電極
200…多接合型太陽電池、201…第2太陽電池、
300…太陽電池モジュール、301第1太陽電池モジュール、302…第2太陽電池モジュール、303…サブモジュール、304…バスバー、
400…太陽光発電システム、401…太陽電池モジュール、402…コンバーター、403…蓄電池、404…負荷
500…車両、501…車体、502…太陽電池モジュール、503…電力変換装置、504…蓄電池、505…モーター、506…タイヤ(ホイール)
600…飛翔体、601…機体骨格、602…モーター、603…回転翼、604…制御ユニット


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13