(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】対抗デバイス
(51)【国際特許分類】
F41H 11/02 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
F41H11/02
(21)【出願番号】P 2023535454
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 GB2021053144
(87)【国際公開番号】W WO2022123218
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-07-04
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390038014
【氏名又は名称】ビ-エイイ- システムズ パブリック リミテッド カンパニ-
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】スコルチェフスキ、レオン
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04406227(US,A)
【文献】特開昭55-165500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0284780(US,A1)
【文献】実開平04-033898(JP,U)
【文献】特開昭57-095599(JP,A)
【文献】特開2018-066553(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104111006(CN,A)
【文献】国際公開第2010/097620(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41H 3/00- 3/02
F41H 11/02-11/04
F41H 13/00
F42B 12/46-12/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ兵器対抗デバイスであって、
内部に充填材が配置された密封カプセルを備え、前記充填材は、
液体及び反射性粒子状金属、
前記反射性粒子状金属は前記液体に可溶である、または、
反射性金属もしくは反射性金属合金の前駆体
、前記前駆体は、トリエチルアルミニウム、自然発火性有機金属分子、または金属水素化物のうちの1つを含み、それぞれは光に曝露されたときに、反射性金属または反射性金属合金を形成する、を備え、
前記カプセルは、前記充填
材がエアロゾルに分散するように、空気中で破裂するように構成されている、レーザ兵器対抗デバイス。
【請求項2】
前記粒子状金属は、亜鉛、ニッケル、銅または銀粒子のうちの1つを含む、請求項
1に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項3】
前記粒子状金属は、金属粉を含む、請求項1
または2に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項4】
前記粒子状金属は、金属被覆非導電性粒子を含む、請求項1
または2に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項5】
前記カプセルは、光に対して不透明である、請求項
1に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項6】
予め定められた高度、飛行時間、または移動距離のうちの1つで前記カプセルを破裂させるように配置された装薬を備える、請求項1から
5のいずれか一項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項7】
使用時に前記対抗デバイスの降下を遅くするように配置された展開可能な遅延デバイスを備える、請求項1から
6のいずれか一項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項8】
前記カプセルの内面が少なくとも部分的に反射性材料でコーティングされている、請求項1から
7のいずれか1項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項9】
前記カプセルの壁は、約10から30マイクロメートルの厚さを有する、請求項1から
8のいずれか一項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項10】
前記カプセルの壁は、誘電絶縁体で形成されている、請求項1から
9のいずれか1項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項11】
前記カプセルは、約50mmの長さを有する、請求項1から
10のいずれか1項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
【請求項12】
対抗ランチャーであって、前記対抗ランチャーは、請求項1から
11のいずれか一項に記載の複数のレーザ兵器対抗デバイスと、放出手段とを備える、対抗ランチャー。
【請求項13】
少なくとも1つのカートリッジが内部に配置されたチャンバを備え、前記カートリッジまたは各カートリッジは複数のレーザ兵器対抗デバイスを備える、請求項
12に記載の対抗ランチャー。
【請求項14】
各カートリッジは前記チャンバから独立して放出可能である、請求項
13に記載の対抗ランチャー。
【請求項15】
請求項
12から
14のうちのいずれか一項に記載の対抗ランチャーを備える、車両。
【請求項16】
前記車両は航空機を含む、請求項
15に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ兵器対抗デバイスおよびそのためのランチャーに関する。本開示はまた、ランチャーを備える車両(vehicle)に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ指向性エネルギー兵器は、航空機、陸上車両および海上車両を含む車両、ならびに地上設備で使用するために、開発中である。これらの武器は、レンズおよびミラーを使用して、ターゲット車両の外板を通して燃焼する高出力レーザビームをコリメートする。いったんターゲット車両の外板が穿孔されると、レーザビームは、ターゲット車両内の人々を傷つけ、燃料タンクを破裂させ、または兵器を爆発させることができる。場合によっては、レーザビームのエネルギーは、衝突時にターゲット車両を爆発させるのに十分な強度である。
【0003】
チャフは、レーダーエミッタによって送信される約0.75cmから4cmの波長を有するEM波を偏向させるために使用される材料である。それは、アルミニウム箔、ストリップまたはワイヤなどの小さな導電性繊維を含む。材料は、ターゲット車両上のキャニスタに含まれる。キャニスタは、チャフをキャニスタから空気流の中に押し出して、入ってくるEM波の経路内に雲を形成する火工装薬を使用する。チャフは、ターゲット車両が雲によってレーダ受信機から不明瞭にされるように、EM波を反射するように作用する。
【0004】
従来のチャフは、約100nmから800nmの波長を有するレーザ兵器によって生成されるようなレーザビームを効果的な程度に妨げることはない。さらに、レーザ兵器は、ターゲット車両を追跡および/または攻撃するために反射信号に依存しない。従って、チャフは、改変なしでは、レーザ兵器に対する有効な対抗手段ではない。
【0005】
したがって、レーザ兵器に対する安価で製造が容易な対抗手段が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様にしたがうと、レーザ兵器対抗デバイスが提供され、
内部に充填材が配置された密封カプセルを備え、充填材は、
反射性粒子状金属、または
反射性金属もしくは反射性金属合金の前駆体を備え、
カプセルは、充填剤がエアロゾルに分散するように、空気中で破裂するように構成されている。
【0007】
有利なことに、対抗デバイスは、レーザビームを偏向、反射、または他の方法で妨害する反射性粒子状金属の雲を生成する。さらに、結果として生じる反射粒子状金属の雲は、エミッタのレンズと接触する場合、レーザエミッタに損傷を引き起こす可能性がある。
【0008】
粒子状金属、金属または金属合金は、高い熱伝導性であってもよい。
【0009】
充填材は液体を含んでもよく、粒子状金属は前記液体に可溶であってもよい。あるいは、充填剤はガスを含んでもよく、密封カプセルは加圧されてもよい。例えば、カプセルは1気圧より大きい圧力に加圧される。
【0010】
粒子状金属は、亜鉛、ニッケル、銅または銀粒子のうちの1つを含んでもよい。粒子状金属は、金属粉を含んでもよい。あるいは、粒子状金属は、金属微粒子またはフィラメントを含んでもよい。粒子状金属は、金属被覆非導電性粒子を含むことができる。
【0011】
前駆体は、光に暴露されたときに反射性金属または反射性金属合金を形成する群から選択されてもよい。カプセルは、光に対して不透明であってもよい。前駆体は、トリエチルアルミニウム、自然発火性有機金属分子、または金属水素化物のうちの1つを含んでもよい。前駆体はハロゲン化銀を含むことができる。
【0012】
レーザ兵器対抗デバイスは、予め定められた高度、飛行時間、または移動距離のうちの1つにおいてカプセルを破裂させるように構成された装薬を備えてもよい。
【0013】
レーザ兵器対抗デバイスは、使用時に対抗デバイスの降下を遅くするように構成された展開可能な遅延デバイスを備えることができる。
【0014】
カプセルの内面は、反射性材料で少なくとも部分的にコーティングされてもよい。
【0015】
カプセルの壁は、約10から30マイクロメートルの厚さを有してもよい。
カプセルの壁は、カプセルの外皮または収容構造、すなわち本体である。
【0016】
カプセルの壁は、誘電絶縁体から形成されてもよい。
【0017】
カプセルは、約50mmの長さを有してもよい。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、対抗ランチャーが提供され、対抗ランチャーは、第1の態様による複数のレーザ兵器対抗デバイスと、放出手段とを備える。
【0019】
対抗ランチャーは、少なくとも1つのカートリッジが内部に配置されたチャンバを備えることができ、前記カートリッジまたは各カートリッジは、複数のレーザ兵器対抗デバイスを備える。各カートリッジは、チャンバから独立して放出可能であってもよい。
【0020】
本発明の第3の態様によると、第2の態様による対抗ランチャーを備える車両が提供される。車両は航空機を含んでもよい。
【0021】
本開示の他の態様に組み込まれることができる本開示の1つの態様に関連して特徴が説明されることを認識すべきだろう。例えば、本開示の装置は、方法を参照して本開示で説明される特徴のいずれかを組み込むことができ、逆もまた同様である。さらに追加の実施形態および態様、以下の説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。前述および以下の説明から理解されることができるように、本明細書に記載されるありとあらゆる特徴、およびそのような特徴の2つ以上のありとあらゆる組み合わせ、および範囲を定義する1つ以上の値のありとあらゆる組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しない限り、本開示内に含まれる。加えて、任意の特徴もしくは特徴の組み合わせまたは範囲を定義する任意の値は、本開示の任意の実施形態から具体的に除外されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付の図面を参照して、単なる例として、本開示の実施形態を説明する。
【
図1】
図1は、入射レーザビームを妨害する際に使用するための対抗ディスペンサを示す。
【
図3】
図3は、対抗ランチャーを備える例示的な航空機を示す。
【0023】
便宜上および経済性のために、同じ参照番号が、同一または類似の要素にラベル付けするために異なる図において使用される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一般に、本明細書の実施形態は、レーザ兵器脅威に応答した展開のための対抗手段に関する。展開されるとき、対抗手段は、入射レーザビームを消散させる(すなわち、スポット強度を低減する)か、または少なくとも妨害する(すなわち、経路を偏向させるか、または変更する)効果を提供する。換言すれば、この対抗手段は、レーザビームがその意図されたターゲットに当たることを防止する。また、対抗手段は、レーザビームエミッタにダメージをもたらすことができる。これらの効果は、微細金属粒子の高密度雲をレーザビームの経路内に分散させることによって達成される。
【0025】
対抗ディスペンサ100は、
図1を参照して説明される。対抗ディスペンサ100は、従来技術に見られるようなチャフディスペンサであってもよい。ディスペンサ100は、複数の対抗デバイス240を受け入れるためのチャンバ110を備える。
図2aおよび2bに関して、対抗デバイス240をより詳細に説明する。ディスペンサ100は、ディスペンサ100を車両(例えば、航空機)に取り付けるための取り付け手段120を備える。
【0026】
取り付け手段120は、チャンバ110を車両に解放可能に結合することができ、または代替的にチャンバ110を車両自体の構造に一体化することができる。チャンバ110は、
図1では長方形として示されているが、チャンバ110の他の形状構成、例えば円筒形が可能であることが理解されよう。チャンバ110は、かなりの数の対抗デバイス240(例えば、何十万もの個々の対抗デバイス240)を保持するように構成されてもよい。
図1は、例示のみを目的としているため、対抗デバイス240が規則的なパターンで格納されることに限定することを意図しておらず、さらに、
図1は、縮尺または数量を示すことを意図していない。
【0027】
チャンバ110から対抗デバイス240を分配するために、解放手段140が設けられている。解放手段140は、操作可能なチャンバ開口部(すなわち、ドアまたはハッチ)であってもよい。解放手段140は、任意の好適な機械的または電気的に制御された解放機構を備えてもよい。解放手段140は、パイロットからの入力時などに手動で起動されてもよく、または車両に衝突するレーダ信号もしくはレーザビームの検出時、車両が予め定められた速度または高度に達した時、または車両の位置が特定の領域(例えば、既知のレーザ兵器の上方または周囲のエリア)内にあると決定された時などに自動的に起動されてもよい。
【0028】
チャンバ110は、機械的方法または火工的方法などを介して、チャンバ110から対抗デバイス240を放出するための放出手段150をさらに備えることができる。例えば、方法は、アクチュエータ、バーストチャージ、ガス推進剤、または任意の他の好適な分散手段を介して、対抗デバイス240を分散させることを含んでもよい。
【0029】
代替実施形態では、チャンバ110は、複数の中空カートリッジで充填され、各中空カートリッジは、チャンバ110の開口部に面する開口部を有する。これらのカートリッジのそれぞれは、後述するように、複数の対抗手段240を備えている。各カートリッジには、それぞれのカートリッジから対抗デバイス240を押し出すための放出手段が設けられている。あるいは、上述したように、1つの放出手段150が、全てのカートリッジから同時に対抗デバイス240を駆動してもよい。さらなる実施形態では、カートリッジはチャンバ110から駆動されてもよい。ここで、カートリッジは、放出後の予め定められた時間に、または車両から予め定められた距離に、対抗デバイス240を爆発させて放出するための装薬を備えている。
【0030】
図2aおよび
図2bは、それぞれ、対抗デバイス240の断面図および平面図を示す。対抗デバイス240は、マイクロカプセル210を備える。マイクロカプセル240は、両端が密封された中空繊維材料である。いくつかの実施形態では、マイクロカプセル210は、ガラス、セラミック、またはプラスチックのような誘電絶縁体などの軽量の非導電性または絶縁材料から作られる。非導電性(例えば、電気的非導電性)材料を使用することは、対抗デバイス240間に静電荷が蓄積するリスクを防止する傾向があり、したがって凝集を低減し、対抗デバイス240が放出されるときの短絡のリスクを軽減する傾向がある。マイクロカプセル210の外面はまた、凝集を低減し、したがってチャンバ110(またはカートリッジ)からの放出時の分散を改善するのを助けるために、帯電防止コーティングで少なくとも部分的にコーティングされてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセル210の内面は、導電性物質で少なくとも部分的にコーティングされる。例えば、内面の全て、または内面の約50%超(例えば、約60、70、80、90、95、96、97、98、または99%超)が、導電性物質でコーティングされてもよい。
【0032】
内面コーティングは、先の国際公開WO2010/097620号に記載されている無電解金属堆積法などの任意の好適な方法によって塗布されてもよい。好ましくは、内面コーティング、すなわち導電性物質は電気めっきされる。導電性物質は、マイクロ波エネルギーを反射することができる任意の適切な材料を含むことができる。例えば、導電性材料は、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、亜鉛、金、もしくは鉄、スズ、クロム、インジウム、ガリウムなどの金属、またはそれらの金属合金であってもよい。あるいは、導電性物質は、グラファイトまたはグラフェンなどの導電性非金属であってもよい。内面を導電性材料でコーティングすることによって、内面は、入射するレーダ波を反射し、したがって、レーザ兵器がターゲット能力を提供するためにレーダを用いるかもしれないので、レーダシステムの破壊を助ける。しかしながら、そうでなければ非導電性であるマイクロカプセル210の内面のみをコーティングすることによって、高い材料重量および凝集に関する問題が回避される傾向がある。さらに、外面が依然として非導電性であるので、短絡を引き起こす問題が回避される傾向がある。他の実施形態では、例えば、対抗デバイス240がレーダターゲットシステムを無効にすることも意図されていない場合、内面コーティングは提供されなくてもよい。
【0033】
マイクロカプセル210の長さ250は、最大レーダ干渉を提供するように調整されることができる。このようにして、対抗デバイス240は、レーザビームを妨害するという主目的のためだけでなく、攻撃プラットフォームによるターゲットロックを防止するためにレーダ波を妨害するためにも適することができる。例えば、マイクロカプセル210は、対象の無線周波数(RF)波長に対応する長さ250に切断されてもよい。マイクロカプセル210は、レーダ信号の波長の半分に対応する長さ250に切断されてもよく、それによって、マイクロカプセル210の導電性材料は、レーダ信号が当たったときに共振し、信号を再放射する。マイクロカプセル210はまた、対象波長の倍数に対応する長さ250に切断されてもよい。チャンバ110は、複数の波長を有するEM信号を送信するレーダシステムに対する効果的な対抗手段を提供するために、複数の長さに調整されたマイクロカプセル210を備えることができる。あるいは、チャンバ110は、それぞれが異なる長さのマイクロカプセル210を含む個々のカートリッジを保持してもよい。例としては、約5から50mm、例えば約5mm、7.5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mmおよび/または50mmの長さ250を有するマイクロカプセル210が挙げられるが、他の長さが利用されてもよい。高周波レーダシステムの場合、マイクロカプセル210は、約100から1000ミクロン、例えば、約100、200、300、400、500、600、700、800、900および/または1000ミクロンの非常に短い長さを有することができる。
【0034】
好ましくは、対抗デバイス240が主にターゲットをレーザビームから保護することを意図している場合、より長いマイクロカプセル210が好ましい。例えば、長さが約50mm以上のマイクロカプセル210が好ましい。これは、マイクロカプセル210がレーザビームによって衝突される機会を増加させ、充填材料のためのより多くの内部容積を提供する。
【0035】
マイクロカプセル210は、約150ミクロン未満、例えば約30から100ミクロン、約40から90ミクロン、約50から80ミクロン、好ましくは約70ミクロンの公称外径230を有することができるが、他の公称外径も想定される。マイクロカプセル210は、約60ミクロン未満、例えば約1から58ミクロン、10から50ミクロン、約15から40ミクロン、好ましくは約25から30ミクロンの公称内径240を有することができるが、他の内径も想定される。公称内径240は、公称外径230の約50%より大きくてもよく、例えば、約60、70、75、80、85、90または95%より大きくてもよい。
【0036】
内面コーティングは、少なくとも約100nm(例えば、少なくとも約200nm、300nm、400nm、500nm、1000nm、2000nm、5000nm)の厚さを有してもよい。あるいは、内面コーティングは、約100nm未満、約50nm未満、約10nm未満、約1nm未満、または約0.5nm未満の厚さを有してもよい。好ましくは、内面コーティングは、約10nmから5000nmの範囲の厚さを有する。好ましくは、内面コーティングは、マイクロカプセル210の製造において意図的に適用される。したがって、内側コーティングは制御された厚さを有することが好ましい。
【0037】
言い換えれば、マイクロカプセル210の壁の総厚は、10から30μmの範囲内であり、これは、熱が壁を通して容易に伝達されて、その中に含有される充填剤220を励起するか、またはマイクロカプセル210の外板を融解することを可能にしながら、貯蔵および製造中にマイクロカプセル210の完全性を維持するために最適である。
【0038】
マイクロカプセル210は開放端として図示されているが、これは例示の目的のためだけである。マイクロカプセル210には、充填材220が充填されている。充填材220は、マイクロカプセル210の製造時にマイクロカプセル210内に密封される。例えば、マイクロカプセル210の一端は、充填材220が注入される前に蓋をかぶされまたは圧着されてもよく、他端は、充填材220が注入された後に蓋をかぶされまたは圧着されてもよい。マイクロカプセル210の端部は、気密であるように、熱密封、接着、または他の方法で密封されてもよい。代替的な実施形態では、充填材220は、密封されたマイクロカプセル210内に放出され、放出孔はその後塞がれる。
【0039】
一実施形態では、充填材220は、感光性金属前駆体、または空気と反応する金属前駆体を含む。言い換えれば、空気または光に曝露されるとき、前駆体は反射性金属または金属合金、例えば銀を形成する。したがって、充填材220は、トリエチルアルミニウム、自然発火性有機金属分子、または金属水素化物(分解して金属を残す)であってもよい。例えば、充填材220に使用される前駆体は、写真現像において一般的に使用される化学物質であるハロゲン化銀であってもよい。適切な前駆体の別の例は塩化銀である。前駆体が感光性である場合、マイクロカプセル210の外板は、不透明材料で形成またはコーティングされてもよい。
【0040】
別の実施形態では、充填材220は水性金属コロイド溶液を含む。換言すれば、充填材220は、液体中に懸濁する金属(または金属性)粒子を含む。金属粒子は、粉末、微粒子またはフィラメントを含んでもよい。金属粒子は、カーボンナノチューブ、ガラス、またはポリマーなどの金属被覆非導電性粒子を含んでもよい。例えば、充填材220は、金属被覆ガラスマイクロビーズを含むことができる。液体は、100℃を超える熱にさらされたときに著しく膨張する流体の一例である水であってもよい。
【0041】
充填材220に使用される金属は、銅、ニッケル、銀または亜鉛を含み、これらは、高い熱伝導性および反射性を有するが、水と反応しない。充填材220内の液体が加熱されると(例えば、衝突するレーザビームによって直接、またはレーザビームによって加熱された可能性がある周囲空気の温度によって)、液体は膨張してマイクロカプセル210を破裂させる。特に、対抗デバイス240が高エネルギーレーザビームの経路内に放出されると、対抗デバイスは、レーザビームによって衝突され、充填材220内の液体を急速に沸騰させ、それをガスに変換させ、したがって膨張させる。マイクロカプセル210の比較的薄い壁は、成長する内部圧力を封じ込めることができないので、壊れて、充填材220中の金属粒子を分散させ、レーザビームが通過する雰囲気中に蒸気を放出する。最初に懸濁していた金属粒子は「爆発」して金属粒子の雲を形成する。
【0042】
充填材220に対する液体成分は、金属粒子を分散させるのにより効果的であるので、気体よりも好ましい。しかしながら、充填剤220は、熱にさらされたときにマイクロカプセル210を破裂させるためのガスを含んでもよいことが理解されるであろう。ガスは、充填材220も構成する金属粒子と反応しないように選択される。ガスは、アルゴンなどの希ガスであってもよい。ここで、マイクロカプセル210は、膨張ガスがそれを破裂させる可能性が高くなるように加圧される。マイクロカプセル210は、その内圧がマイクロカプセル210の外側の空気の圧力(すなわち、局所的な気圧)を超えるように加圧される。
【0043】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセル210は、いったん対抗ディスペンサ100を出た後にマイクロカプセル210を破裂させるための装薬を備える。装薬には、マイクロカプセル210が放出点から予め定められた距離で破裂させられるように、時限起爆装置が設けられてもよい。あるいは、装薬は感圧性であってもよく、したがって予め定められた高度で破裂するように構成されてもよい。装薬の代わりに、穿孔または加熱手段が設けられてもよい。例えば、マイクロカプセルの外側表面は、空気にさらされたときに加熱する発熱物質でコーティングされてもよく、それによって、充填材220を加熱し、および/またはマイクロカプセル210の壁を損傷する。あるいは、マイクロカプセル210の外板材料は、経時的に、または高速で移動するときに自然に崩壊するように選ばれてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、対抗デバイス240は、マイクロカプセル210の空気抵抗を増加させるためのパラシュートまたは他の表面等の遅延デバイスを装備する。したがって、対抗デバイス240が展開されるかまたは他の方法で発射されるとき、それは比較的ゆっくりと下降するか、または空域の特定の領域に留まる傾向がある。この効果は、マイクロカプセル210が前述した好ましい寸法のものである場合、遅延デバイスなしで自然に提供されてもよい。
【0045】
図3は、上述のような複数の対抗ディスペンサ100を備える例示的な航空機300を示す。対抗ディスペンサ100は、航空機300の翼端に位置付けられるが、航空機300の胴体または尾部などの代替的な位置が想定される。対抗ディスペンサ100はまた、航空機300の翼または胴体の下のペイロードパイロンに取り付けられてもよい。航空機300は、対抗デバイス240を含む1つ以上の対抗ディスペンサ100を備えることができる。
【0046】
対抗ディスペンサ100を有する固定翼航空機300が図示されているが、代替的な実施形態は、1つ以上の対抗ディスペンサ100を有する他のタイプの車両を提供する。例えば、車両は、水上艦、車輪付き地上車両、無限軌道付き地上車両、宇宙旅行船、回転翼航空機、またはエアロスタットを含むことができる。
【0047】
対抗ディスペンサ100は、大砲、迫撃砲またはミサイルランチャーの形態をとることができる。換言すれば、チャンバ110は、ガンバレルであってもよく、前述のカートリッジは、対抗デバイス240が詰められたシェルであってもよい。これは、対抗デバイス240が、入射レーザビームから保護されているターゲットからより大きい範囲に発射されることを可能にする傾向がある。
【0048】
次に、ターゲットに向けられたレーザビームを妨害する方法(すなわち、入射レーザビームからターゲットを保護する方法)について、
図4aおよび
図4bを参照して説明する。
図4aは、対抗ディスペンサ100を有する航空機300を図示する。図示されるように、地上ベースのレーザエミッタ400は、航空機300をターゲットとし、それに向かってレーザビームを発射している。航空機300に搭載されたセンサは、レーザビームおよび/またはレーダ照明の存在を検出する。代替的に、航空機300のパイロットは、レーザエミッタ400を見て、自身の航空機300を先制的に保護することを決定してもよい。センサ検出またはパイロットコマンドに応答して、対抗ディスペンサ100は、複数の対抗デバイス240を空気流中に放出する。これらは、
図2aおよび
図2bを参照して説明した対抗デバイス240である。
【0049】
代替的に、対抗ディスペンサ100は、レーザ兵器が航空機300を狙撃することに応答してではなく、レーザ兵器が存在することが知られているエリアを航空機300が飛行するときに対抗デバイス240を放出するように構成されてもよい。この脅威位置データは、飛行前または飛行中に外部資産(例えば、特殊部隊または衛星)から受信されたインテリジェンス情報に基づいてもよい。
【0050】
図4bは、放出された対抗デバイス240のうちの1つがレーザビームの経路を通ってまたはレーザビームの近傍に下降する際に、その1つに衝突するかまたは別の方法で加熱するレーザビームの効果を図示する。レーザビームは、マイクロカプセル210の外板を加熱し、マイクロカプセル210内の充填剤220の熱反応性成分(例えば、金属粒子が懸濁されている水)を急速に膨張させる。充填剤220の急速な膨張は、マイクロカプセルを破裂させる。金属粒子は空気中に分散して、金属粒子の高密度雲410(またはエアロゾル)を形成する。雲410は、約1,000から約50,000parts/m
3の粒子密度を有する。金属粒子は、熱伝導性かつ反射性であり、したがって、レーザビームが雲410を通過する際にレーザビームを妨害する。さらに、破裂したマイクロカプセル210から放出された加速金属粒子は、エリア内の他のマイクロカプセル210に衝突して、他のマイクロカプセル210の外板に裂け目を生じさせ、それによって、それらのマイクロカプセルも充填材220内に懸濁されたそれらの金属粒子を分散させることができる。
【0051】
金属粒子の雲410が下降するにつれて、金属粒子は、レーザエミッタ400のレンズまたは他の光学要素上に堆積させることができ、レーザエミッタ400、汚れ(例えば、亀裂、クレーズ、スクラッチ、または他の汚染)を通して、有効性を低下させることができる。レーザエミッタ400が空中プラットフォームに搭載されている場合、プラットフォームは、プラットフォームが航空機300に追従する際に雲410を通って飛行することができ、やはり金属粒子がエミッタ400のレンズ上に堆積して損傷を引き起こす。汚れに加えて、レーザエミッタ400のレンズ上に堆積した反射性粒子は、放出されたレーザビームをエミッタ400内に直ちに反射して戻し、自己破壊を引き起こす可能性がある。
【0052】
本明細書に記載される対抗材料は、既知の対抗材料/チャフに対して著しい重量の利点を提供する。本明細書に記載の対抗材料(例えば、アルミニウムで内部コーティングされたケイ酸塩ガラス繊維)は、そのアルミニウム箔同等物よりも1桁まで軽くなり得ると考えられる。例えば、本明細書に記載される1kgの対抗材料は、最大10kgの従来のアルミニウム箔チャフと同じ/同様の体積被覆率(したがって、レーダ検出回避における同じ/同様の有効性)を提供することができると想定される。さらに、対抗材料は、レーダ照明およびレーザ兵器の両方に対して車両またはエリアを防御するという二重の目的を提供する。対抗材料は、二次的な影響としてレーザ兵器光学系を損傷する可能性がある。
【0053】
本発明はいくつかの実施形態に関連して説明されたが、本明細書に記載された特定の形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明の範囲は、付随する特許請求の範囲のみによって限定される。さらに、ある特徴が特定の実施形態に関連して説明されるようにみえるかもしれないが、当業者であれば、説明される実施形態の様々な特徴が本発明にしたがって組み合わされてもよいことを認識するであろう。特許請求の範囲において、「備える」という用語は、他の要素またはステップの存在を除外するものではない。
【0054】
さらに、特許請求の範囲における特徴の順序は、特徴が実行されなければならない特定の順序を暗示するものではなく、特に方法の請求項における個々のステップの順序は、ステップがこの順序で実行されなければならないことを暗示するものではない。むしろ、ステップは任意の好適な順序で実行されてもよい。さらに、単数形の言及は複数を除外するものではない。よって、「a」、「an」、「第1(first)」、「第2(second)」等の言及は複数を排除しない。特許請求の範囲において、「備える」または「含む」という用語は、他の要素の存在を除外するものではない。
【0055】
前述の説明において、既知であり、明らかであり、または、予測可能である均等物である、整数またはエレメントが言及されており、そして、このような均等物はここで、個別に言及しているかのように組み込まれている。本発明の真の範囲を決定するために、特許請求の範囲への参照がなされるべきであり、これは任意のこのような均等物を含むように解釈されるべきである。また、本開示の整数または特徴は、オプション的なものであり、独立請求項の範囲を限定するものではないと読者によって認識されるべきだろう。さらに、このようなオプション的な整数または特徴は、本開示のいくつかの実施形態においては可能性ある利益である一方で、他の実施形態においては、望ましくなく、したがって存在しないかもしれないことを理解すべきである。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[C1]
レーザ兵器対抗デバイスであって、
内部に充填材が配置された密封カプセルを備え、前記充填材は、
反射性粒子状金属、または、
反射性金属もしくは反射性金属合金の前駆体を備え、
前記カプセルは、前記充填剤がエアロゾルに分散するように、空気中で破裂するように構成されている、レーザ兵器対抗デバイス。
[C2]
前記充填材は液体を含み、
前記粒子状金属は前記液体に可溶である、C1に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C3]
前記充填材はガスを含み、
前記密封カプセルは加圧されている、C1に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C4]
前記粒子状金属は、亜鉛、ニッケル、銅または銀粒子のうちの1つを含む、C1から3のいずれか一項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C5]
前記粒子状金属は、金属粉を含む、C1から4のいずれか一項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C6]
前記粒子状金属は、金属被覆非導電性粒子である、C1から4のいずれか1項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C7]
前記前駆体は、光に曝露されたときに、反射性金属または反射性金属合金を形成する群から選択される、C1に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C8]
前記カプセルは、光に対して不透明である、C7に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C9]
前記前駆体は、トリエチルアルミニウム、自然発火性有機金属分子、または金属水素化物のうちの1つを含む、C7または8に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C10]
予め定められた高度、飛行時間、または移動距離のうちの1つで前記カプセルを破裂させるように配置された装薬を備える、C1から9のいずれか一項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C11]
使用時に前記対抗デバイスの降下を遅くするように配置された展開可能な遅延デバイスを備える、C1から10のいずれか一項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C12]
前記カプセルの内面が少なくとも部分的に反射性材料でコーティングされている、C1から11のいずれか1項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C13]
前記カプセルの壁は、約10から30マイクロメートルの厚さを有する、C1から12のいずれか一項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C14]
前記カプセルの壁は、誘電絶縁体で形成されている、C1から13のいずれか1項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C15]
前記カプセルは、約50mmの長さを有する、C1から14のいずれか1項に記載のレーザ兵器対抗デバイス。
[C16]
対抗ランチャーであって、前記対抗ランチャーは、C1から15のいずれか一項に記載の複数のレーザ兵器対抗デバイスと、放出手段とを備える、対抗ランチャー。
[C17]
少なくとも1つのカートリッジが内部に配置されたチャンバを備え、前記カートリッジまたは各カートリッジは複数のレーザ兵器対抗デバイスを備える、C16に記載の対抗ランチャー。
[C18]
各カートリッジは前記チャンバから独立して放出可能である、C17に記載の対抗ランチャー。
[C19]
C16から18のうちのいずれか一項に記載の対抗ランチャーを備える、車両。
[C20]
前記車両は航空機を含む、C19に記載の車両。