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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】電力変換装置、電力変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240909BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023536308
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2021027382
(87)【国際公開番号】W WO2023002623
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンタ ガネシュワラ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】松下 晃
(72)【発明者】
【氏名】大和田 成久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎也
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102913(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150859(WO,A1)
【文献】特開2020-088888(JP,A)
【文献】特開2020-054059(JP,A)
【文献】特開2002-204580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する第1磁性体コアと、前記第1磁性体コアの前記貫通孔に挿通される正極バスバーおよび負極バスバーと、前記正極バスバーまたは前記負極バスバーに接続されるキャパシタと、を有するフィルタユニットと、
載置面に前記フィルタユニットが載置される金属ベースと、を備え、
前記正極バスバーおよび前記負極バスバーのそれぞれは、長手方向が前記載置面に沿って延伸し、
前記正極バスバーおよび前記負極バスバーのそれぞれは、前記載置面に垂直かつ前記長手方向に沿う垂直面を有し、
前記正極バスバーおよび前記負極バスバーのそれぞれは、前記載置面に平行かつ前記垂直面に垂直な平行面を有し、前記垂直面は前記平行面よりも幅広であり、
前記キャパシタの一方の端子は、前記正極バスバーの前記垂直面または前記負極バスバーの前記垂直面に対して直接に接続される、電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
貫通孔を有する第2磁性体コアを更に備え、
前記正極バスバーおよび前記負極バスバーは、前記第1磁性体コアの前記貫通孔を挿通するとともに、前記第2磁性体コアの前記貫通孔を挿通し、
前記キャパシタは、前記第1磁性体コアと前記第2磁性体コアとの間において、前記正極バスバーまたは前記負極バスバーに接続される電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記正極バスバーおよび前記負極バスバーは、仮想対称面に対して面対称な形状を有する電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電力変換装置であって、
前記キャパシタは、一方の端子が前記正極バスバーに接続されるとともに他方の端子が前記負極バスバーに接続される第1のキャパシタと、一方の端子が前記正極バスバーまたは前記負極バスバーのいずれかに接続されるとともに他方の端子が前記金属ベースに接続される第2のキャパシタを含む電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記第2のキャパシタの他方の端子は、グラウンドバスバーを介して前記金属ベースに接続される電力変換装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電力変換装置であって、
前記正極バスバーおよび前記負極バスバーは、互いの間の距離が第1の距離となる第1領域と、前記第1の距離よりも小さい第2の距離となる第2領域と、を有し、
前記第1のキャパシタは、前記正極バスバー及び前記負極バスバーの前記第1領域に接続され、
前記第2のキャパシタは、前記正極バスバーまたは前記負極バスバーの前記第2領域に接続される電力変換装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電力変換装置であって、
前記金属ベースは、前記載置面を底面とし、少なくとも前記正極バスバー及び前記負極バスバーを収容する、収容空間を形成し、
前記収容空間には、電気絶縁性の樹脂部材が充填される電力変換装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電力変換装置であって、
前記キャパシタの一方の端子は、おおよそ全ての長さで前記垂直面に接触する、電力変換装置。
【請求項9】
貫通孔を有する磁性体コア、細長く長手方向に長いバスバー、およびキャパシタを含む電力変換装置の製造方法であって、
前記貫通孔に対して前記バスバーを前記長手方向に挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に、前記バスバーの前記長手方向の側面である幅広面にキャパシタの接続端子を直接接続する接続工程と、を含む、電力変換装置の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の電力変換装置の製造方法であって、
前記接続工程の後に、バスタブ状の収容空間を有するハウジングの前記収容空間に、前記磁性体コア、前記バスバー、および前記キャパシタを配置し、電気絶縁性の樹脂部材を充填する充填工程をさらに含む、電力変換装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の電力変換装置の製造方法であって、
前記接続端子は、おおよそ全ての長さで前記幅広面に接触する、電力変換装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、および電力変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車には、直流と交流を変換する電力変換装置が搭載されている。車両には様々な機器が搭載されるため、電力変換装置にはエネルギー効率だけでなく小型化も求められる。特許文献1には、陽極バスバと、陰極バスバと、前記陽極バスバとグラウンドに接続されるグラウンド接続体との間に接続される第1の容量素子と、前記陰極バスバと前記グラウンド接続体との間に接続される第2の容量素子と、前記陽極バスバと前記陰極バスバとの間に接続される第3の容量素子と、を備え、前記第1の容量素子の陽極端子と前記第3の容量素子の陰極端子とが隣接して配置され、前記第2の容量素子の陰極端子と前記第3の容量素子の陽極端子とが隣接して配置される高電圧フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2020-054059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、電力変換装置の小型化に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による電力変換装置は、貫通孔を有する第1磁性体コアと、前記第1磁性体コアの前記貫通孔に挿通される正極バスバーおよび負極バスバーと、前記正極バスバーまたは前記負極バスバーに接続されるキャパシタと、を有するフィルタユニットと、載置面に前記フィルタユニットが載置される金属ベースと、を備え、前記正極バスバーおよび前記負極バスバーのそれぞれは、長手方向が前記載置面に沿って延伸し、前記正極バスバーおよび前記負極バスバーのそれぞれは、前記載置面に垂直かつ前記長手方向に沿う垂直面を有し、前記キャパシタの一方の端子は、前記正極バスバーの前記垂直面または前記負極バスバーの前記垂直面に対して直接に接続される。
本発明の第2の態様による電力変換装置の製造方法は、貫通孔を有する磁性体コア、細長く長手方向に長いバスバー、およびキャパシタを含む電力変換装置の製造方法であって、前記貫通孔に対して前記バスバーを前記長手方向に挿入する挿入工程と、前記挿入工程の後に、前記バスバーの前記長手方向の側面にキャパシタの接続端子を直接接続する接続工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電力変換装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】インバータの分解斜視図
図2】フィルタユニットの分解斜視図
図3】フィルタユニットの斜視図
図4】フィルタユニットの背面図
図5】ハウジングの外観図
図6】インバータの回路図
図7】バスバーとキャパシタの接続を説明する概要図
【発明を実施するための形態】
【0008】
―第1の実施の形態―
以下、図1図7を参照して、電力変換装置であるインバータの第1の実施の形態を説明する。
【0009】
図1は、インバータ100の分解斜視図である。図1図4には、図面同士の相関を明確にするために、共通するX、Y、Z軸を示している。インバータ100はたとえば、車両に搭載された高圧バッテリから得られる直流電力を、電気自動車のメインモータや複数のモータを駆動するための交流電力に変換する。インバータ100は、昇圧、スイッチ保護、回生ブレーキなどの機能をさらに備えてもよい。
【0010】
本発明の第1の態様による電力変換装置は、貫通孔を有する第1磁性体コアと、前記第1磁性体コアの前記貫通孔に挿通される正極バスバーおよび負極バスバーと、前記正極バスバーまたは前記負極バスバーに接続されるキャパシタと、を有するフィルタユニットと、載置面に前記フィルタユニットが載置される金属ベースと、を備え、前記正極バスバーおよび前記負極バスバーのそれぞれは、長手方向が前記載置面に沿って延伸し、前記正極バスバーおよび前記負極バスバーのそれぞれは、前記載置面に垂直かつ前記長手方向に沿う垂直面を有し、前記正極バスバーおよび前記負極バスバーのそれぞれは、前記載置面に平行かつ前記垂直面に垂直な平行面を有し、前記垂直面は前記平行面よりも幅広であり、前記キャパシタの一方の端子は、前記正極バスバーの前記垂直面または前記負極バスバーの前記垂直面に対して直接に接続される。
本発明の第2の態様による電力変換装置の製造方法は、貫通孔を有する磁性体コア、細長く長手方向に長いバスバー、およびキャパシタを含む電力変換装置の製造方法であって、前記貫通孔に対して前記バスバーを前記長手方向に挿入する挿入工程と、前記挿入工程の後に、前記バスバーの前記長手方向の側面である幅広面にキャパシタの接続端子を直接接続する接続工程と、を含む。
【0011】
フィルタユニット3は、電磁干渉(EMI)や操作機器の物理的損傷などの望ましくない影響を引き起こし得る電磁エネルギーの、意図しない生成、伝搬、および受信を制限する。なおハウジング1の一部であって、フィルタユニット3をZ方向マイナス側に射影した面を「載置面」1Bと呼ぶ。フィルタユニット3は載置面1Bに固定される。DCリンクキャパシタ4は、DCリンク電圧の調整と、スイッチングのリプル電流の吸収とを目的として用いられる。DCリンクキャパシタ4は、「平滑コンデンサ」とも呼ばれる。パワーモジュール5は、パルス幅変調によってモータのトルクと速度を制御するための複数のチップを搭載したパワー半導体デバイスである。制御基板6は、パワーモジュール5を制御する。交流コネクタ7は、インバータ100から不図示のモータに交流電力を供給するインタフェースである。
【0012】
図2は、フィルタユニット3の分解斜視図である。図2に示すフィルタユニット3は、図1に示したフィルタユニット3をZ軸が逆を向くようにひっくり返し、かつXY平面内で回転させた姿勢である。フィルタユニット3は、Pバスバー11と、Nバスバー12と、第1磁性体コア21と、第2磁性体コア22と、Xキャパシタ30と、Yキャパシタ40とを含む。Xキャパシタ30は、第1Xキャパシタ31と、第2Xキャパシタ32と、第3Xキャパシタ33と、を含む。Yキャパシタ40は、第1Yキャパシタ41と、第2Yキャパシタ42と、第3Yキャパシタ43と、第4Yキャパシタ44と、第5Yキャパシタ45と、第6Yキャパシタ46と、を含む。Xキャパシタ30およびYキャパシタ40を構成するキャパシタの数や各キャパシタの配置は、EMC要求や性能に応じて変更することができる。
【0013】
以下では、Pバスバー11およびNバスバー12をまとめて「バスバー」10と呼ぶことがあり、第1磁性体コア21および第2磁性体コア22をまとめて「コア」20と呼ぶことがある。Pバスバー11およびNバスバー12は、長手方向がY軸に沿って延伸しており、直流コネクタ2とDCリンクキャパシタ4とを電気的に接続する。バスバー10は、細長い平板状の部材を加工した形状を有する。バスバー10は、直流コネクタ2に接続される個所を除けば、幅広面がYZ平面に平行であり、X軸方向の厚み寸法は延伸方向のY軸方向寸法だけでなくZ軸方向寸法よりも短い。
【0014】
Xキャパシタ30は、Pバスバー11とNバスバー12との間に接続され、ディファレンシャルモードノイズをフィルタする。Yキャパシタ40は、いずれかのバスバーとグラウンドとの間に接続され、コモンモードノイズを除去する。Yキャパシタ40は、Pバスバー11およびNバスバー12の長さを短くするために、2つの端子がX軸方向に並ぶように配置されている。コア20は、コモンモードチョークとして機能し、ノイズを抑制する。コア20は貫通孔を有し、バスバー10が挿通される。
【0015】
バスバー10の延伸方向の寸法を短くすることで、電力損失を低減できる利点、およびインダクタンスを減らしてリプル電圧やサージ電圧を低減する利点がある。バスバー10は、任意のTIM(Thermal Interface Material)を介して載置面1Bおよびハウジング1に熱を逃がす。非分割のコアは分割コアに比べてEMC性能が非常に高いため、コア20には分割されていない非分割コアが用いられる。また、Pバスバー11、Nバスバー12、Xキャパシタ30、およびYキャパシタ40を対称に配置するなど、バランスよく整理されたレイアウトによって、浮遊インダクタンスや浮遊キャパシタンスを低減し、電気的特性を向上させることができる。なお、Pバスバー11およびNバスバー12を含むフィルタユニット3の構成部品は、パッケージの要求に応じてL字型に配置することも可能である。
【0016】
図3は、フィルタユニット3の斜視図である。図3の視点は図2と同一である。図3に示すフィルタユニット3は、グラウンドバスバー60を取り付ける前の状態を示す。グラウンドバスバー60は、第1グラウンドバスバー61と、第2グラウンドバスバー62と、第3グラウンドバスバー63と、第4グラウンドバスバー64と、第5グラウンドバスバー65と、第6グラウンドバスバー66と、を含む。
【0017】
第1グラウンドバスバー61~第6グラウンドバスバー66のそれぞれは、第1Yキャパシタ41~第6Yキャパシタ46のそれぞれと接続される。Yキャパシタ40は、一方の端子がグラウンドバスバー60に接続され、他方の端子がPバスバー11またはNバスバー12に接続される。グラウンドバスバー60は、図3には図示していない載置面1Bを介してグラウンド電位に接続される。
【0018】
図4は、フィルタユニット3の背面図である。図4では図示左方向がY軸のプラス側、図示下方向がX軸のプラス側である。なおZ軸のプラス側は、奥行き方向である。なお作図の都合により図4にはグラウンドバスバー60を図示していない。図3および図4を参照してフィルタユニット3の構成を詳しく説明する。
【0019】
フィルタユニット3に含まれる合計9つのキャパシタは、配置されるX軸座標により3つに分類できる。第1のグループはX座標値が「x1」である、第1Yキャパシタ41、第3Yキャパシタ43、および第5Yキャパシタ45である。第2のグループは、X座標値が「x2」である、3つのXキャパシタ30である。第3のグループは、X座標値が「x3」である、第2Yキャパシタ42、第4Yキャパシタ44、および第6Yキャパシタ46である。
【0020】
それぞれのXキャパシタ30は、Pバスバー11およびNバスバー12と接続される。フィルタユニット3を構成する全てのキャパシタは、それぞれが有する2つの端子がX軸方向に並ぶ。バスバー10の図4の左端を除く領域10Rでは、Pバスバー11およびNバスバー12がX=x2であるYZ平面を対称面として面対称な形状を有する。Pバスバー11およびNバスバー12の間隔は、Yキャパシタ40に接する位置では狭く、Xキャパシタ30に接する位置では広くなるように加工されている。
【0021】
以下では、比較的広い、Xキャパシタ30に接する位置におけるPバスバー11およびNバスバー12の間隔を「第1距離」とも呼ぶ。また、比較的狭い、Yキャパシタ40に接する位置におけるPバスバー11およびNバスバー12の間隔を「第2距離」とも呼ぶ。さらに以下では、Pバスバー11およびNバスバー12において両者の距離が第1距離である領域を「第1領域」とも呼び、両者の距離が第2距離である領域を「第2領域」とも呼ぶ。
【0022】
図3および図4に示すように、Xキャパシタ30およびYキャパシタ40は、バスバー10と直接に接触する。より詳細には、Xキャパシタ30およびYキャパシタ40はZ方向に延びる接続端子を有し、バスバー10のYZ平面に平行な壁面に直接接触する。詳しくは別な図面を参照して後に詳述する。なお図3および図4では、Pバスバー11に対して各キャパシタの端子はX軸のマイナス側から接しているが、一部のキャパシタの端子がX軸のプラス側から接してもよいし、全てのキャパシタの端子がX軸のプラス側から接してもよい。同様に、図3および図4では、Nバスバー12に対して各キャパシタの端子はX軸のプラス側から接しているが、一部のキャパシタの端子がX軸のマイナス側から接してもよいし、全てのキャパシタの端子がX軸のマイナス側から接してもよい。
【0023】
図5は、ハウジング1の外観図であり、図1よりも高い位置から見下ろしている。ハウジング1の載置面1Bには接続用ボス71~76が設けられる。図3に示したフィルタユニット3をひっくり返した姿勢で、図5に示すハウジング1の接続用ボス71~76と、グラウンドバスバー60とが接続される。図5の中央に示す仕切り部材SPは、フィルタユニット3が格納される領域と他の領域とを隔てる仕切りである。仕切り部材SPはZ方向マイナス側においてハウジング1の底部と接続されており、フィルタユニット3を配置するバスタブ形状の空間を形成する。
【0024】
図6は、インバータ100の回路図である。ハウジング1は電気的なグラウンドとして機能する。図6には左から順番に、直流コネクタ2、フィルタユニット3、DCリンクキャパシタ4、パワーモジュール5、および交流コネクタ7が示されている。図6には、パワーモジュール5を制御する制御基板6は記載していない。フィルタユニット3において、直流コネクタ2から横方向に延びる直線がPバスバー11およびNバスバー12に相当する。
【0025】
Pバスバー11およびNバスバー12を接続する3つのキャパシタが、第1Xキャパシタ31、第2Xキャパシタ32、および第3Xキャパシタ33である。図3に示したグラウンドバスバー60および図5に示した接続用ボス71~76がフィルタユニット3の下部領域に示されている。Pバスバー11およびNバスバー12のいずれかと、グランドとを接続する6つのキャパシタがYキャパシタ40である。
【0026】
図7は、バスバー10とキャパシタの接続を説明する概要図である。図7では、バスバー10を代表してNバスバー12を示し、Xキャパシタ30およびYキャパシタ40を代表して第2Yキャパシタ42を示している。載置面1BはXY平面に平行な面である。Nバスバー12の長手方向は、載置面1Bに沿ってY軸に平行に延伸する。Nバスバー12は、載置面1Bに垂直かつ長手方向であるY軸方向に沿う垂直面12Sを有する。垂直面12Sは、バスバー10の外壁面のうち、載置面1Bに平行な面ではなく、かつ、バスバー10の長手方向の両端に存在する面ではない面ともいえる。なお図7では簡略した記載なのでNバスバー12はX軸方向に蛇行していないが、X軸方向に蛇行する領域も垂直面12Sに含まれる。
【0027】
第2Yキャパシタ42はZ方向に延びる接続端子を2つ備え、少なくとも一方の接続端子は側面がNバスバー12の垂直面12Sに直接接触する。図7に示すように第2Yキャパシタ42とNバスバー12がZ方向で接触、または非常に接近することで、接続端子はおおよその全ての長さでNバスバー12の垂直面12Sと接触する。なお図7において符号12Sは1つしか記載していないが、図示手前側の面だけでなく、図示奥側の面も垂直面12Sと呼ぶ。換言すると第2Yキャパシタ42は、Nバスバー12に対してX座標のプラス側から接してもよいし、マイナス側から接してもよい。なお、図7には図示していないPバスバー11も同様に垂直面11Sを有する。または図7に示すようにバスバー10とキャパシタの位置をZ方向に逆にしてもよい。
【0028】
(製造方法)
インバータ100に含まれるフィルタユニット3の製造方法を説明する。あらかじめ、バスバー10を図2に示す形状に加工しておく。次に、コア20を一方のバスバー10に通し、必要な位置で横にオフセットする。もう一方のバスバー10は、オフセットされたコア20に挿通される。その後、Xキャパシタ30およびYキャパシタ40をバスバー10の垂直面に超音波接合する。なお、レーザ溶接やTIG溶接などの他の溶接方法を用いてもよい。前述のように、Xキャパシタ30およびYキャパシタ40は、バスバー10の内側の垂直面に接続してもよいし外側の垂直面に接続してもよい。
【0029】
グラウンドバスバー60は、Yキャパシタ40のグラウンド端子に溶接される。載置面1Bには予め接続用ボス71~76が固定され、この接続用ボス71~76にネジを用いてグラウンドバスバー60が接続される。これにより、バスバー10は、ハウジング1と各キャパシタとの間に挟まれる。なお、Yキャパシタ40のグラウンド端子は、グラウンドバスバー60及びネジを用いることなく、ハウジング1に直接溶接してもよい。
【0030】
ハウジング1には、フィルタユニット3を配置するバスタブ形状の空間があり、フィルタユニット3が配された後でその空間にポッティング材が注入される。このポッティング材は、固定、冷却、および絶縁の役割を果たす。ポッティング材を用いる代わりに、フィルタユニット3を樹脂内にモールド封止し、冷却用のTIM、たとえば熱伝導シート、ポッティング、グリスなどを介してハウジング1にネジで固定してもよい。モールド封止の代わりに、アウトサート成形や、絶縁シート等を使用してもよい。
【0031】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電力変換装置であるインバータ100は、貫通孔を有する第1磁性体コア21と、第1磁性体コア21の貫通孔に挿通される正極バスバー11および負極バスバー12と、正極バスバー11または負極バスバー12に接続されるキャパシタと、を有するフィルタユニット3と、載置面1Bにフィルタユニット3が載置される金属ベースとも呼べるハウジング1と、を備える。正極バスバー11および負極バスバー12のそれぞれは、長手方向が載置面1Bに沿ってY軸方向に延伸する。正極バスバー11および負極バスバー12のそれぞれは、載置面1Bに垂直かつ長手方向に沿う垂直面11Sおよび垂直面12Sを有する。Xキャパシタ30およびYキャパシタ40の一方の端子は、垂直面11Sまたは垂直面12Sに対して直接に接続される。そのため、Xキャパシタ30およびYキャパシタ40がバスバー10に直接接続され、フィルタユニット3が小型化できる。
【0032】
たとえば、バスバー10の側部にそれぞれのキャパシタと接続する端子を設ける構成も考えられる。しかしこの場合には端子がコア20の貫通孔を通過できないためにバスバー10を複数に分割する必要がある。したがって、バスバー10の接続部分を設ける必要があるためバスバー10が大型化する問題がある。これに対して本実施の形態におけるインバータ100はそのような問題がないため、小型化できる。また、バスバー10の全長が短いため電力損失の低減、インダクタンス減少、リプル電圧やサージ電圧の低減、などの効果も得られる。
【0033】
(2)インバータ100のフィルタユニット3は、貫通孔を有する第2磁性体コア22を備える。正極バスバー11および負極バスバー12は、第1磁性体コア21の貫通孔を挿通するとともに、第2磁性体コア22の貫通孔を挿通する。第2Xキャパシタ32、第3Yキャパシタ43、および第4Yキャパシタ44は、第1磁性体コア21と第2磁性体コア22との間において、正極バスバー11または負極バスバー12に接続される。そのため、複数のコア20を含むインバータ100であっても小型化ができる。
【0034】
(3)正極バスバー11および負極バスバー12は、仮想対称面であるx=x2であるYZ平面に対して面対称な形状を有する。そのため、浮遊インダクタンスや浮遊キャパシタンスを低減し、電気的特性を向上させることができる。
【0035】
(4)キャパシタは、一方の端子が正極バスバー11に接続されるとともに他方の端子が負極バスバー12に接続されるXキャパシタ30と、一方の端子が正極バスバー11または負極バスバー12のいずれかに接続されるとともに他方の端子がハウジング1に接続されるYキャパシタ40を含む。そのため、Xキャパシタ30およびYキャパシタ40を含むインバータ100を小型化できる。
【0036】
(5)Yキャパシタ40の他方の端子は、グラウンドバスバー60を介して金属ベースに接続される。
【0037】
(6)正極バスバー11および負極バスバー12は、互いの間の距離が第1の距離となる第1領域と、第1の距離よりも小さい第2の距離となる第2領域と、を有する。Xキャパシタ30は、正極バスバー11及び負極バスバー12の第1領域に接続され、Yキャパシタ40は、正極バスバー11または負極バスバー12の第2の領域に接続される。
【0038】
(7)ハウジング1には、載置面1Bを底面とし、少なくとも正極バスバー11及び負極バスバー12を収容する、バスタブ状の収容空間が形成される。この収容空間には、電気絶縁性の樹脂部材が充填される。そのため、樹脂部材によりフィルタユニット3の固定、伝熱性の向上、および絶縁が実現できる。
【0039】
(8)インバータ100の製造方法は、コア20の貫通孔に対してバスバー10を長手方向に挿入する挿入工程と、挿入工程の後に、バスバー10の長手方向の側面に存在する垂直面にキャパシタの接続端子を直接接続する接続工程と、を含む。そのため、バスバー10の結合処理が不要であり、インバータ100を小型化できる。
【0040】
(9)インバータ100の製造方法は、接続工程の後に、バスタブ状の収容空間を有するハウジング1の収容空間に、コア20、バスバー10、およびキャパシタを配置し、電気絶縁性の樹脂部材を充填する充填工程を含む。
【0041】
(変形例1)
インバータ100のフィルタユニット3は、2つのコア20を備えた。しかしコア20を2つ備えることは必須の構成ではなく、少なくとも1つを備えればよい。また、インバータ100はXキャパシタ30を備えなくてもよいし、Yキャパシタ40を備えなくてもよい。この変形例1によれば、様々な構成に本発明を適用できる。
【0042】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…ハウジング
1B…載置面
100…インバータ
2…直流コネクタ
3…フィルタユニット
4…DCリンクキャパシタ
5…パワーモジュール
6…制御基板
7…交流コネクタ
10…バスバー
11…Pバスバー、正極バスバー
11S…垂直面
12…Nバスバー、負極バスバー
12S…垂直面
20…コア
21…第1磁性体コア
22…第2磁性体コア
30…Xキャパシタ
40…Yキャパシタ
60…グラウンドバスバー
71~76…接続用ボス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7