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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】皮膚科的塗布用局所剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240909BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240909BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240909BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240909BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240909BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240909BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20240909BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240909BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C07D487/04 144
C07D487/04 147
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61K31/4985
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/10
A61P17/16
A61P17/14
A61P43/00 111
A61P37/08
A61P29/00
A61P17/06
A61P43/00 105
A61K8/49
A61Q19/00
A61Q19/02
A61Q19/08
A61Q7/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023545890
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 US2021053176
(87)【国際公開番号】W WO2022076262
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】63/087,670
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523127800
【氏名又は名称】ジェネシス モレキュラー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ルアン フチアン
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542999(JP,A)
【文献】特表2014-528445(JP,A)
【文献】特表2015-534942(JP,A)
【文献】特表2009-515890(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090317(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
(式中、
1及びR2は、水素またはCH3から独立して選択され;
3は、水素または重水素であり;
Qは、フェニル基;1つ以上の置換基を有する置換フェニル基であって、ここで、前記1つ以上の置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミダゾニル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、ハロゲン、ペルフルオロC1-4アルキル、C1-4アルキル、C1-3アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリル、及びヒドロキシル基のうちの1つ以上から独立して選択される、置換フェニル基;ベンジル基;1つ以上の置換基により置換されたベンジル基であって、ここで、前記1つ以上の置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミダゾニル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、ハロゲン、ペルフルオロC1-4アルキル、C1-3アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリル、及びヒドロキシル基のうちの1つ以上から独立して選択される、置換されたベンジル基;または環員数8~11の二環式アリール基であって、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有し得る、二環式アリール基であり;
Lは、-C(O)-、または-SO2-であり;
Xは、-C(O)-、または-CH2C(O)-であり;
nは、1または2であり;
Yは、水素または-C(O)Rであり、式中、Rは、C1-C30アルキル、または 2 -C30アルケニルある)。
【請求項2】
前記化合物が、式(Ia)の化合物:
【化2】
式中、
1、R2、R3、X及びYは、請求項1に記載のとおりであり、
Qは、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、フタラジン、キナゾリン、シンノリン、またはナフチリジンから選択される)
である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
【請求項3】
前記化合物が、式(Ib)の化合物:
【化3】
式中、
3は、請求項2に記載されており;
1は、N、または-CH-であり;
Yは、水素、または-C(O)Rであり、式中、Rは、以下から選択される:
【化4】
である、請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
【請求項4】
前記化合物が、(Ic)の化合物:
【化5】
式中、
3は、請求項2に記載のとおりであり;
1は、N、または-CH-であり、式中、
Yは、水素、または-C(O)Rであり、式中、Rは、以下から選択される:
【化6】
である、請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
【請求項5】
前記化合物が、
【化7-1】
【化7-2】
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩を含む組成物。
【請求項7】
前記組成物が、薬学的に許容されるまたは薬用化粧品として許容される賦形剤をそれぞれ含む医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩を含む、皮膚状態を化粧的に処置するためそれを必要とする哺乳類の対象に所投与することにより使用するための組成物
【請求項9】
前記皮膚状態が、CREB結合タンパク質(CBP)/β-カテニンシグナル伝達によって媒介され、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩の投与量が前記CBP/β-カテニンシグナル伝達を阻害するのに十分である、請求項8に記載の使用のための組成物
【請求項10】
前記皮膚状態が、しわ、色素沈着過剰、発赤、酒さ、乾燥、ひび割れ、活力の喪失、弾力性の喪失、菲薄化、瘢痕化、座瘡、日焼けもしくは紫外線によるダメージ、脱毛、髪の色の喪失、眉毛もしくはまつ毛の成長の低下、キューティクルの成長の低下、及び/または爪の成長の低下から選択される1つ以上の加齢皮膚状態を含む、請求項8または9に記載の使用のための組成物
【請求項11】
前記化合物について、Yは水素ではない、請求項8~10のいずれか1項に記載の使用のための組成物
【請求項12】
Yは、-C(O)Rであり、式中、Rは:
【化8】
(式中、mは、1~10である)から選択される、請求項11に記載の使用のための組成物
【請求項13】
皮膚状態の化粧処置のための薬用化粧品を製造するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩の使用。
【請求項14】
前記皮膚状態が、しわ、色素沈着過剰、発赤、酒さ、乾燥、ひび割れ、活力の喪失、弾力性の喪失、菲薄化、瘢痕化、座瘡、日焼けまたは紫外線によるダメージ、脱毛、髪の色の喪失、眉毛またはまつ毛の成長の低下、キューティクルの成長の低下、爪の成長の低下のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記化合物について、Yは水素ではない、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
皮膚の疾患または障害を治療するための医薬品を製造するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩の使用。
【請求項17】
前記皮膚の疾患または障害が、少なくとも部分的にCREB結合タンパク質(CBP)/β-カテニンシグナル伝達によって媒介され、前記治療は、前記CBP/β-カテニンシグナル伝達を少なくとも部分的に阻害するのに十分である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記皮膚の疾患または障害が、アトピー性皮膚炎、乾癬、座瘡、線維症、創傷、瘢痕化、レーザー手術後の瘢痕化、火傷、日焼けもしくは紫外線によるダメージ、光線角化症、糖尿病性潰瘍、及び/または脱毛症のうちの1つ以上を含む、請求項16または17に記載の使用。
【請求項19】
前記化合物について、Yは水素である、請求項16~18のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月5日に出願された米国仮特許出願第63/087,670号に対する優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、哺乳動物(ヒト及び非ヒトの両方)での細胞及び組織中におけるWnt/β-カテニン経路の調節に関し、より具体的には、新規のCREB結合タンパク質(CBP)/β-カテニン阻害剤及びそのプロドラッグ、その化粧品的及び治療的使用(例えば、皮膚科学的用途における)、及び開示された例示的化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚は、ヒトの身体の最大の器官であり、皮膚は、髪及び爪と共に、身体と外部環境との境界として作用し、病原体及び過度の水分損失から身体を保護する。皮膚は、断熱、温度調節、感覚、及びビタミンDなどの分子の合成にも重要である。皮膚及び髪は、自己イメージ及び自尊心においてさらに重要である。したがって、創傷、潰瘍及び火傷を治癒するため、ならびに座瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬、脱毛症を治療するため、ならびに化粧品、アンチエイジング効果を提供するためなどのスキンケア及び皮膚科治療は、外側の表皮、その下にある真皮、及び他の組織の健康及び外観を改善するために必要であるかまたは望まれている。
【0004】
創傷、潰瘍、及び火傷は、外傷によるもの(例えば、切り傷、外傷またはレーザーを介した皮膚アブレーションなどの治療のいずれかよるアブレーション、水疱)または外科的に誘導されたもの(例えば、外科的切開、造瘻術)のいずれかであり、罹患領域及びそれ以上の皮膚損傷を防ぐために局在化治療を必要とする。しかし、創傷、潰瘍、火傷、及び皮膚疾患または障害に対する最新の薬物療法のほとんどは、単に症状(例えば、炎症)の緩和に焦点を当てており、問題の根本的な原因を標的にして対処することができていない(例えば、Okur,M.E.,et al.,Asian J Pharm Sci.2020;10:661-684を参照)ため、治癒プロセスを加速させることはない。同様の課題は、化粧品の皮膚の改善及び発毛にも存在する。例えば、皮膚は、ヒトの健康及び活力を最も視認されるように映し出したものであり、しわは、加齢の初期兆候であり、生活の質に負の影響を有し得る。ボトックスは、最も一般的なしわ治療のうちの1つであるが、皮膚を治癒するものではなく、しわを減らすためにボトックスを使用する場合は、毒性が高いため厳密に管理する必要がある(Benedetto,A.V.,Clinics in dermatology.1998;16:129-139)。したがって、スキンケア及び皮膚科治療のための、より安全で効果的な新規の剤が必要とされている。
【0005】
ヒトの身体で最大の器官であるため、皮膚は、かなりのターンオーバーを受け、複数の異なる幹細胞及び前駆細胞を保有するが、日常的に瘢痕治癒する。WNTシグナル伝達カスケードは、皮膚の発達及び維持に関与する(例えば、Weltri,A.,et al.,STEM CELLS.2018;36:22-35を参照)。分泌されたWntタンパク質は、複数の細胞内シグナル伝達経路を刺激し、細胞増殖、分化、移動、及び極性などの多様なプロセスを調節する成長因子として機能し得る。Wnt刺激経路の中で、Wnt/βカテニンシグナル伝達は、組織形態形成中の発生過程及び運命の選択を支配する重要な調節経路として知られている。Wntシグナル伝達は、皮膚の発達及び維持を指示する主要な役割のうちの1つである。Wntシグナル伝達は、主に皮膚の発達中のHF(毛包)誘導に関与しているが、近年では、表皮の層化を調節することも示されている。初代ヒトケラチノサイトでは、Wnt5aは、オートクリン刺激として作用し、Wnt/β-カテニン経路と結合することにより、細胞外カルシウム誘導ケラチノサイト分化を促進する。生涯を通じて、皮膚表皮は、定期的に再生する。自己新生及び分化が可能な皮膚表皮幹細胞(SC)は、組織の恒常性を維持し、損傷後にHFを再生して表皮を修復するための無限の細胞源を提供する。Wnt/CBP/β-カテニン経路などのWntシグナル伝達は、これらプロセスのすべてにおいて重要であり、Wnt依存性シグナル伝達は、SC集団の維持、活性化、及び運命決定において重要な役割を担っている。したがって、効果的な薬理学的Wnt/CBP/β-カテニンアンタゴニストの開発、及び結果としてWntシグナル伝達の調節を適切に較正する送達戦略が、皮膚関連の疾患及び障害を治療するための新しく効果的な剤、及び効果的な薬用化粧品的剤を提供するために必要である。
【0006】
Wnt/CBP/β-カテニン経路の選択的アンタゴニスト(例えば、ICG-001)は、動物毒性研究及び臨床研究に基づく有効性レベルにおいて非常に安全であることが知られており、CBP/β-カテニン媒介転写は、幹細胞/前駆細胞の維持及び増殖にとって重要である(Emami,K.H.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2004;101:12682-12687)。しかし、皮膚の角質層の主要なバリア機能を通過するためには、薬物送達を増強するための戦略(例えば、クリーム、ローション、軟膏、スプレー、ジェル、パウダーなど)を使用して、局所送達を増強する必要がある。本発明の態様では、増強された親油性を有する、開示された例示的な選択的CBP/β-カテニン阻害剤のエステル化部分(プロドラッグ)を使用して、角質層上で生存可能な表皮及びその表皮を超える吸収または浸透が推し進められる。そのようなエステル化薬物部分は、皮膚微小環境及びその中に含まれるエステラーゼにさらされたときに、容易に切断されて、対応する非エステル化薬物を放出し得る。
【0007】
さらに、近年の前臨床研究では、Wnt/CBP/β-カテニン経路の選択的アンタゴニストであるICG-001が、ハプテン誘導性アトピー性皮膚炎様皮膚炎の出現を防ぐことが示された(Matsuda-Hirose,H.,et al.,Ann Dermatol.2019;31(4):631-619)。また、必須脂肪酸と呼ばれる長鎖脂肪酸のオメガ-3(n-3)及びオメガ-6(n-6)を除いて、多くの脂肪酸をヒトが合成できることも知られている。エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)に代表されるオメガ-3脂肪酸は、乾癬など多くの炎症性皮膚疾患の症状の重症度を軽減可能である(Balbas,G.M.,et al.,Clin.Cosmet.Investig.Dermatol.2010;28:615-26)。
【0008】
当技術分野には満たされていない必要性が存在するため、開示されたCBP/β-カテニン阻害剤、及びそのエステル含有類似体(例えば、脂肪酸エステル、例えば、オメガ-3及びオメガ-6脂肪酸含有薬物類似体など)は、皮膚関連の疾患または障害、及び化粧品的目的を含む加齢に関連する状態を治療するための新規かつ有効な剤を、好ましくは局所送達を介して提供する。本発明の態様は、そのような化合物及びその塩を、これらの化合物を含む医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物と共に提供する。治療的及び薬用化粧品的の両方の化合物及び組成物を合成し、使用するための方法も提供される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様は、以下の条項で説明することができる:
1.式(I)の化合物:
【化1】
及びその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
(式中、
1及びR2は、水素またはCH3から独立して選択され;
3は、水素または重水素であり;
Qは、フェニル基;1つ以上の置換基を有する置換フェニル基であって、ここで、前記1つ以上の置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミダゾニル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、ハロゲン、ペルフルオロC1-4アルキル、任意により置換されたC1-4アルキル、任意により置換されたC1-3アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリル、及びヒドロキシル基のうちの1つ以上から独立して選択される、置換フェニル基;ベンジル基;1つ以上の置換基により置換されたベンジル基であって、ここで、前記1つ以上の置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミダゾニル、任意により置換されたC1-4アルキルアミノ、任意により置換されたC1-4ジアルキルアミノ、ハロゲン、ペルフルオロC1-4アルキル、任意により置換されたC1-3アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリル、及びヒドロキシル基のうちの1つ以上から独立して選択される、置換されたベンジル基;または任意により置換された環員数8~11の二環式アリール基であって、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有し得る、二環式アリール基であり;
Lは、-C(O)-、または-SO2-であり;
Xは、-C(O)-、または-CH2C(O)-であり;
nは、1または2であり;
Yは、水素、または-C(O)Rであり、Rは、任意により置換されたC1~C30アルキル、任意により置換されたC1~C30アルケニル、または任意により置換されたC1~C30アルキレンである)。
【0010】
2.前記化合物が、式(Ia)の化合物:
【化2】
またはその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
(式中、
1、R2、R3、X及びYは、請求項1に記載のとおりであり;
Qは、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、フタラジン、キナゾリン、シンノリン、またはナフチリジンから選択される)である、条項1に記載の化合物。
【0011】
3.前記化合物が、式(Ib)の化合物:
【化3】
またはその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
(式中、
3は、請求項2に記載されており;
1は、N、または-CH-であり;
Yは、水素、または-C(O)Rであり、式中、Rは、以下から選択される:
【化4】
である、条項2に記載の化合物。
【0012】
4.前記化合物が、式(Ic)の化合物:
【化5】
またはその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩
(式中、
3は、請求項2に記載のとおりであり;
1は、N、または-CH-であり、式中、
Yは、水素、または-C(O)Rであり、式中、Rは、以下から選択される:
【化6】
である、条項2に記載の化合物。
【0013】
5.条項1~4のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩の化合物であって、前記化合物が:
【化7-1】
【化7-2】
である、化合物。
【0014】
6.条項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物を含む組成物。
【0015】
7.前記組成物が、薬学的に許容されるまたは薬用化粧品として許容される賦形剤をそれぞれ含む医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物である、条項6に記載の組成物。
【0016】
8.皮膚状態を化粧品により処置するための方法であって、それを必要とする哺乳類の対象に条項1~5のいずれか1項に記載の化合物の薬用化粧品として有効な量を局所投与することを含む、前記方法。
【0017】
9.前記皮膚状態が、CREB結合タンパク質(CBP)/β-カテニンシグナル伝達によって媒介され、その量が前記CBP/β-カテニンシグナル伝達を阻害するのに十分である、条項8に記載の方法。
【0018】
10.前記皮膚状態が、しわ、色素沈着過剰、発赤、酒さ、乾燥、ひび割れ、活力の喪失、弾力性の喪失、菲薄化、瘢痕化、座瘡、日焼けもしくは紫外線によるダメージ、脱毛、髪の色の喪失、眉毛もしくはまつ毛の成長の低下、キューティクルの成長の低下、及び/または爪の成長の低下から選択される1つ以上の加齢皮膚状態を含む、条項8または9に記載の化粧品的方法。
【0019】
11.前記化合物の場合、Yは水素ではない、条項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【0020】
12.Yは、-C(O)Rである
(式中、Rは:
【化8】
(式中、mは1~10である)から選択される)、
条項11に記載の方法。
【0021】
13.皮膚状態の化粧品による処置のための薬用化粧品を製造するための、条項1~5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【0022】
14.前記皮膚状態が、しわ、色素沈着過剰、発赤、酒さ、乾燥、ひび割れ、活力の喪失、弾力性の喪失、菲薄化、瘢痕化、座瘡、日焼けまたは紫外線によるダメージ、脱毛、髪の色の喪失、眉毛またはまつ毛の成長の低下、キューティクルの成長の低下、爪の成長の低下のうちの1つ以上を含む、条項13に記載の使用。
【0023】
15.前記化合物の場合、Yは水素ではない、条項13または14に記載の使用。
【0024】
16.皮膚の疾患または障害を治療するための医薬品を製造するための、条項1~5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【0025】
17.前記皮膚の疾患または障害が、少なくとも部分的にCREB結合タンパク質(CBP)/β-カテニンシグナル伝達によって媒介され、前記治療は、前記CBP/β-カテニンシグナル伝達を少なくとも部分的に阻害するのに十分である、条項16に記載の使用。
【0026】
18.前記皮膚の疾患または障害が、アトピー性皮膚炎、乾癬、座瘡、線維症、創傷、瘢痕化、レーザー手術後の瘢痕化、火傷、日焼けもしくは紫外線によるダメージ、光線角化症、糖尿病性潰瘍、及び/または脱毛症のうちの1つ以上を含む、条項16または17に記載の使用。
【0027】
19.前記化合物の場合、Yは水素である、条項16~19のいずれか1項に記載の使用。
【0028】
本特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の複写は、要請かつ必要な料金の支払いにより特許庁より提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】2.5、5、10及び20μM濃度での本発明の2つの例示的化合物(化合物2及び化合物3)のCBP/βカテニン阻害活性を比較して、本発明の非限定的な態様による、SuperTOPFLASH(商標)細胞ベースのルシフェラーゼアッセイ(安定にトランスフェクトされた細胞株、Hek293、STF1.1におけるWnt駆動ルシフェラーゼ活性)の結果を示す。化合物3は、IC50値2.5μMで強力であることが示された。
図2A】本発明の非限定的な態様による、分析用HPLC分析による本発明の例示的な脂肪酸エステルプロドラッグ(化合物6;コードNP-002)の安定性を示す。
図2B】本発明の非限定的な態様による、分析用HPLC分析による本発明の例示的な脂肪酸エステルプロドラッグ(化合物6;コードNP-002)の安定性を示す。
図2C】本発明の非限定的な態様による、分析用HPLC分析による本発明の例示的な脂肪酸エステルプロドラッグ(化合物6;コードNP-002)の安定性を示す。化合物6は、固体形態及び有機溶媒中の両方で室温において安定であることが示された。
図3A】本発明の非限定的な態様による、本発明の例示的な脂肪酸エステルプロドラッグ(化合物6;コードNP-002)のヒト皮膚に対する有意な皮膚科学的効果を示す(治療期間:8週)。
図3B】本発明の非限定的な態様による、本発明の例示的な脂肪酸エステルプロドラッグ(化合物6;コードNP-002)のヒト皮膚に対する有意な皮膚科学的効果を示す(治療期間:8週)。皮膚の改善(例えば、しわの程度及び外観の減少)は、化合物6を含む局所皮膚用製剤を使用した8週間の治療後に見られた。
【発明を実施するための形態】
【0030】
式(I)の化合物:
【化9】
及び溶媒和物(例えば、水和物)、代謝物、同位体標識誘導体、及びそれらの薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される任意の塩
(式中、
1及びR2は、水素または-CH3から独立して選択され;
3は、水素または重水素であり;
Qは、フェニル基;1つ以上の置換基を有する置換フェニル基であって、ここで、1つ以上の置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミダゾニル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、ハロゲン、ペルフルオロC1-4アルキル、C1-4アルキル、C1-3アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリル、及びヒドロキシル基のうちの1つ以上から独立して選択される、置換フェニル基;ベンジル基;1つ以上の置換基により置換されたベンジル基であって、ここで、1つ以上の置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミダゾニル、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、ハロゲン、ペルフルオロC1-4アルキル、C1-3アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリル、及びヒドロキシル基のうちの1つ以上から独立して選択される、置換されたベンジル基;または環員数8~11の二環式アリール基であって、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有し得る、二環式アリール基であり;
Lは、-C(O)-、または-SO2-であり;
Xは、-C(O)-、または-CH2C(O)-であり;
nが、1または2であり;
Yは、水素または-C(O)Rであり、式中、Rは、C1-C30アルキル、C1-C30アルケニル、またはC1-C30アルキレンである)が提供される。
【0031】
化合物は、式(Ia)の化合物:
【化10】
及び溶媒和物(例えば、水和物)、代謝物、同位体標識誘導体、及びそれらの薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩などの任意の塩
(式中、
1、R2、R3、X及びYは、上記式(1)に記載のとおりである(式中、
Qは、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、フタラジン、キナゾリン、シンノリン、またはナフチリジンから選択される)であり得る。
【0032】
好ましくは、提供される化合物は、式(Ib)及び式(Ic)の化合物:
【化11】
及び溶媒和物(例えば、水和物)、代謝物、同位体標識誘導体、及びそれらの薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される塩などの任意の塩である
(式中、
1は、N、または-CHであり、
3は、水素または重水素であり;
Yは、水素または-C(O)Rであり、式中、Rは、C1-C30アルキル、C1-C30アルケニル、またはC1-C30アルキレンである)。
式(I)、(Ia)、(Ib)、及び(Ic)の化合物において、Yは、水素ではなく、Rは、好ましくは以下から選択される:
【化12】
【0033】
特に好ましい化合物は:
【化13-1】
【化13-2】
及び組成物、ならびに本明細書に開示される化合物を含み、任意により薬学的に許容されるまたは薬用化粧品として許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物である。
【0034】
本発明の態様によれば、式(I)、式(Ia)、式(Ib)及び式(Ic)の化合物は、CBP/β-カテニン媒介シグナル伝達を阻害するWnt/β-カテニン経路の強力な媒介因子である。
【0035】
したがって、医薬品及び/または薬用化粧品化合物、ならびにこれらの化合物を含む組成物、及び任意の異常なCBP/β-カテニンシグナル伝達媒介性皮膚関連疾患、状態、または障害(例えば、皮膚炎、乾癬、脱毛症など)、またはしわ、色素沈着過剰、発赤、酒さ、乾燥、ひび割れ、活力の喪失、弾力性の喪失、菲薄化、瘢痕化、座瘡、日焼けによるダメージ、脱毛、髪の色の喪失、キューティクルの成長の低下、爪の成長の低下、まつ毛または眉毛の成長の低下から選択される加齢に関連する皮膚の状態、の治療のためのこれらの化合物及び組成物の使用が提供される。
【0036】
本発明の式(I)、式(Ia)、式(Ib)及び式(Ic)の化合物は、キラル中心を含み得、したがって、異なるエナンチオマー形態及びジアステレオマー形態で存在し得る。本発明は、上で定義した構造を有する化合物のすべての光学異性体及びすべての立体異性体、そのような化合物のラセミ混合物及び個々のエナンチオマー及びジアステレオマーの両方、及びそれらの混合物、ならびにそれぞれそれらを含むか使用する以下に定義するすべての医薬組成物及び薬用化粧品組成物ならびに治療方法に関する。いくつかの実施形態では、好ましい化合物は、(S)-エナンチオマーである。その他の実施形態では、好ましい化合物は、(R)-エナンチオマーである。あるいは、開示された方法では、化合物は、ラセミ混合物である。
【0037】
本発明の化合物は、少なくとも2つの不斉中心を有し得るので、それらは、様々な立体異性形態または立体配置で存在することができる。したがって、化合物は、分離された(+)-及び(-)-光学活性体、ならびにそれらの混合物中で存在できる。本発明の化合物及び方法は、本開示の範囲内のすべてのそのような形態を包含する。個々の異性体は、最終生成物またはその中間体の調製において、光学分割、光学選択的反応、またはクロマトグラフィー分離などの既知の方法によって得ることができる。
【0038】
本発明の態様はまた、自然界に通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で1つ以上の原子を置き換えているという事実を除けば、本発明において列挙する化合物と同一である、本開示の同位体標識化合物を含む。本発明の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えば、それぞれ、2H、3H、13C、11C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clが挙げられる。本明細書に記載の式(I)、式(Ia)、式(Ib)、及び式(Ic)による化合物、または薬学的に許容される塩、互変異性体、異性体、プロドラッグ、または前述の化合物もしくは前述のプロドラッグの溶媒和物は、前述の同位体及び/または他の原子の他の同位体を含んでおり、これらは、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の同位体標識化合物、例えば、3H及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬物及び/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。さらに、重水素原子(2H)は、水素原子の非放射性同位体であることが知られている。そのような化合物は、代謝に対する抵抗性を増加させる可能性があり、したがって、哺乳動物に投与した場合、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグ、または溶媒和物の半減期を増長させるための開示された方法において有用であり得る(例えば、Foster,A.B.,Trends Pharmacol.Sci.1984;5(12):524-527を参照されたい)。本発明の同位体標識された化合物は、一般的には、非同位体標識試薬を容易に入手可能な同位体標識試薬に置き換えることによって、以下の調製例に開示された手順を実行することによって調製され得る。
【0039】
対象内のCBP/β-カテニン媒介シグナル伝達を特異的に阻害するために、異常なCBP/β-カテニンシグナル伝達によって媒介される皮膚の状態、疾患または障害を有する温血哺乳動物対象に局所的に投与された場合、開示された化合物のうちの1つ以上を十分な量で含む、医薬組成物ならびに薬学的に許容される及び/または薬用化粧品の皮膚科学的に許容される局所製剤が提供される。局所投与される化合物の量は、好ましくは、薬用化粧品的及び/または治療的に有効な量を含み、そのような場合、薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として皮膚科学的に許容される組成物及び製剤は、本明細書に開示された構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として皮膚科学的に許容される塩、ならびにその薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として皮膚科学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を薬用化粧品的及び/または治療的に有効な量で含み得る。これらの製剤はすべて、本発明の範囲内に包含される。好ましい実施形態では、薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として皮膚科学的に許容される製剤中の、局所投与される化合物の量は、0.5%(w/w)~0.05%(w/w)の範囲である。
【0040】
定義
「CBPタンパク質」という用語は、CREB結合タンパク質としても知られるタンパク質を指し、CREBは、「cAMP応答エレメント結合」の略語である。このタンパク質は、当技術分野において周知である(例えば、Takemaru,K.I.,et al.,J.Cell Biol.2000;149:249-54;米国特許第6,063,583号を参照)。
【0041】
「Wnt経路」という語句は、Wntタンパク質(分泌された糖タンパク質)が7回膜貫通フリズル化(frizzled)受容体に結合することによって開始され得るシグナル伝達カスケードを指す。この経路は、当技術分野で知られ、特徴が明らかにされており、多数の記事及び総説の対象となっている(例えば、Huelsken,J.,et al.,J.Cell Sci.2002;115:3977-8;Wodarz,A.,et al.,Annu.Rev.Cell Dev.Biol.1998;14:59-88;Morin,P.J.,Bioessays 1999;21:1021-30;Moon,R.T.,et al.,Science 2002;296:1644-46;Oving,I.M.,et al.,Eur.J.Clin.Invest.2002;32:448-57;Sakanaka,C.,et al.,Recent Prog.Horm.Res.2000;55:225-36)。古典的なWntシグナル伝達は(正規のWntシグナル伝達またはWnt/β-カテニンシグナル伝達と呼ばれる)、その特徴として、コアタンパク質であるAxin、APC、GSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ3)、及びCK1-アルファ(カゼインキナーゼ1-アルファ)からなる分解複合体に関連する、細胞質ベータカテニンの可溶性プールを有する。Wntリガンドが存在しない場合、β-カテニンは、この複合体内でリン酸化され、それによってユビキチン化の標的となり、その後プロテアソーム機構による破壊が行われる(Kohn,A.D.,et al.,Cell Calcium 2005;38:439-446)。Wnt経路の活性化は、β-カテニンの標的化された破壊にとって必要であるAPC/Axin/GSK3複合体を破壊する一連のイベントの引き金となり、それによって細胞質におけるβ-カテニンの安定化及び蓄積が促進される。この細胞質内で集まることは、まだ完全には定義されていないメカニズムを介するβ-カテニンの核への移行と一致する。核内において、β-カテニンは、Wntシグナル伝達カスケードの古典的な定義では、転写因子のTCF/LEFファミリーのメンバーと複合体を形成する。転写活性複合体を生成するために、β-カテニンは、転写コアクチベーター、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)-結合タンパク質(CBP)、またはその密接に関連するホモログであるp300(E1A-結合タンパク質、300-KD)ならびに基底転写機構の他の構成成分も動員し、下流の標的遺伝子の宿主の発現を導く(Logan,V.Y.,et al.,Ann Rev Cell Dev Biol 2004;20:781-810;Angers,S.,et al.,Ann Rev Cell Dev Biol 2009;10:468-477)。
「アルキル」は、炭素原子の鎖を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和脂肪族基を意味する。
【0042】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状または分枝鎖状の炭素鎖を意味する。
【0043】
「アルキレン」は、他に示されない限り、直鎖状または分枝鎖状の、飽和または不飽和、脂肪族、多価炭素鎖を意味する。
【0044】
「保護された誘導体」は、1つ以上の反応部位が保護基でブロックされている化合物の誘導体を意味する。好適な保護基の包括的なリストは、T.W.Greene,Protecting Groups in Organic Synthesis,3rd edition,John Wiley&Sons,Inc.1999で見ることができる。
【0045】
「異性体」とは、同一の分子式を有するが、それらの原子の結合の性質もしくは順序、またはそれらの原子の空間配置が異なる任意の化合物を意味する。空間内におけるその原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。互いに鏡像ではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれ、重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は、「エナンチオマー」または「光学異性体」と称されることもある。4つの同一でない置換基に結合した炭素原子は、「キラル中心」と呼ばれる。1つのキラル中心を有する化合物は、反対のキラリティーの2つのエナンチオマー型を有する。2つのエナンチオマー形態の混合物は、「ラセミ混合物」と称される。2つ以上のキラル中心を有する化合物は、2n-1個のエナンチオマー対を有し、ここで、nは、キラル中心の数である。2つ以上のキラル中心を有する化合物は、個々のジアステレオマーとして、または「ジアステレオマー混合物」と称されるジアステレオマーの混合物として存在し得る。1つのキラル中心が存在する場合、立体異性体は、そのキラル中心の絶対配置を特徴とし得る。絶対配置とは、キラル中心に付着した置換基の空間配置を指す。エナンチオマーは、それらのキラル中心の絶対配置を特徴とし、Cahn,Ingold and PrelogのR及びS配列則によって記述される。立体化学命名法の慣習、立体化学の決定方法、及び立体異性体の分離は、当技術分野において周知である(例えば、「Advanced Organic Chemistry」4th edition,March,Jerry,John Wiley&Sons,New York,1992を参照されたい)。
【0046】
「動物」には、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シカ、類人猿、サルなど)及び非哺乳類(例えば、鳥など)が含まれる。
【0047】
「哺乳動物」には、ヒト及び非ヒト哺乳動物が含まれ、好ましくは温血哺乳動物である。
【0048】
「疾患」には、具体的には、動物またはその一部のあらゆる不健康な状態が含まれ、その動物に適用された医学的または獣医学的治療法によって引き起こされる、または付随する可能性のある不健康な状態、すなわち、そのような治療法の「副作用」が含まれる。
【0049】
「薬学的に許容される」とは、一般に安全で無毒であり、生物学的にも他の方法でも望ましくない医薬組成物を調製するのに有用であることを意味し、獣医学的使用及びヒトの薬学的使用に許容されるものを含む。
【0050】
「薬用化粧品として許容される」とは、一般に安全で無毒であり、生物学的にも他の方法でも望ましくないものではない薬用化粧品組成物を調製するのに有用であることを意味し、獣医学的使用及びヒトの薬用化粧品的使用に許容されるものを含む。
【0051】
「薬学的に許容される塩」または「塩」は、上で定義したように薬学的に許容され、所望の薬理学的活性を有する本発明の化合物の塩を意味する。こうした塩としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、または有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと共に形成される酸付加塩が挙げられる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応できる場合に形成され得る塩基付加塩も含まれる。許容される無機塩基には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム及び水酸化カルシウムが含まれる。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが含まれる。
【0052】
「治療に有効な量」または「治療有効量」は、疾患を治療するために動物に投与されたときに、その疾患についてそのような治療を行うのに十分な量を意味する。
【0053】
「薬用化粧品として有効な量」とは、(例えば、経皮、局所)投与した場合に、化粧品的状態(例えば、しわ、色素沈着過剰、発赤、酒さ、乾燥、ひび割れ、活力の喪失、弾力性の喪失、菲薄化、瘢痕化、座瘡、日焼けによるダメージ、脱毛、髪の色の喪失、キューティクルの成長の低下、爪の成長の低下)の化粧品による処置に影響を与えるのに十分な量である。
【0054】
「予防に有効な量」とは、疾患、状態または障害を予防するために動物に投与された場合に、その疾患、状態または障害の予防(prophylaxis)を行うのに十分な量を意味する。
【0055】
「治療」または「治療する」は、本発明の化合物の任意の投与を意味し、以下を含む:(i)疾患、状態、または障害の素因がある可能性があるが、疾患、状態、または障害の病理または症候をまだ経験していない、または示していない動物に、疾患、状態、または障害が発生するのを防ぐ;(ii)疾患、状態または障害の病状または症候を経験している、または示している動物において、疾患、状態または障害を阻害する(すなわち、病状及び/または症候のさらなる進展を阻止する);または(iii)疾患、状態または障害の病状または症候を経験している、または示している動物において疾患、状態または障害を回復させる(すなわち、病状及び/または症候を逆転させる)。
【0056】
「局所送達」は、皮膚送達(例えば、皮膚への送達)を指す。
【0057】
本発明の例示的化合物の使用及び組成物及び製剤:
本明細書に開示される例示的な本発明の化合物は、CBP/β-カテニンシグナル伝達を阻害する予想外の効力を有する新規アンタゴニストを提供する。動物毒性研究及びヒト臨床研究に基づき、当技術分野で認められているように、既知の特定のCBP/β-カテニンアンタゴニスト(例えば、ICG-001)は、有効用量レベルにおいて極めて安全である。多くの皮膚及び毛髪の状態は、長期投与を必要とし得るため、安全マージンが大きいことは、医師及び患者の両方にとって有利である。したがって、本発明の態様によれば、開示された例示的な本発明の化合物は、特異的CBP/β-カテニンアンタゴニストであるため、あらゆる異常なCBP/β-カテニンシグナル伝達が介在する皮膚関連状態または疾患または障害、例えば、加齢に関連する皮膚の状態などの治療に価値がある。
【0058】
本発明は、式(I)、式(Ia)、式(Ib)、及び/または式(Ic)の1つ以上の化合物を使用するプロドラッグも提供する。本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、例えば血液または組織中での酵素的切断による吸収中または吸収後に、in vivoで急速に変換され、本明細書で定義される構造を有する活性薬物を生じる化合物を指す。詳細な議論は、Higuchi et al.,Pro-drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series,and in Roche(ed.),「Bioreversible Carriers in Drug Design」American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,(1987)に記載されており、その両方とも参照により本明細書に組み込まれる。本発明では、例えば、アルキルまたは脂肪酸エステル含有プロドラッグアプローチの使用は、親薬物の親油性を増加させることによって局所送達を増強することであり、そのような変化は、角質層を通って生存可能な表皮、及びそれを超えて吸収または浸透を促進するように、また重要なことに、皮膚の微小環境及びエステラーゼにさらされたときに、容易に切断されて親薬物を放出するように設計されている。
【0059】
したがって、皮膚関連の疾患または障害または状態の治療における使用、及び化粧品への適用(例えば、高齢の対象における)のための実質的な有用性を有する特異的CBP/β-カテニンアンタゴニストである本発明の化合物が提供される。治療的に関連する例示的な皮膚関連の疾患、状態または障害として、これらに限定されないが、創傷、座瘡、日焼けによるダメージ、現在治療法がない特定の皮膚疾患または状態(例えば、表皮または粘膜組織の潜伏ウイルス感染)、潰瘍(糖尿病など)、火傷、アトピー性皮膚炎、乾癬など、皮膚構造中に発生するものが挙げられる。薬用化粧品に関連する例示的な状態としては、これらに限定されないが、加齢の影響、例えば、しわ、色素沈着過剰、乾燥、発赤、ひび割れ、酒さ、ハリ、弾力性、厚さ、外観などが挙げられる。化粧品的使用としては、皮膚、爪、及び髪の構造の両方の改善及び予防的適用が挙げられ得る。さらに、本発明の化合物は、皮膚幹細胞の分化を促進するために、ならびに皮膚治癒の加速、皮膚維持の促進、及び皮膚加齢の遅延など、広範囲の有益な効果を示すために使用することができる。したがって、本発明の態様は、皮膚関連の疾患、状態、または障害を治療するための治療的及び/または化粧品的方法を提供し、本方法は、所望の結果を達成するために必要な量及び時間で、治療的に有効な及び/または薬用化粧品として有効な量の本発明の化合物をその必要のある対象に(例えば、局所的にまたはその他で)投与することを含む。補助療法及び組み合わせ療法の実施形態も包含され、提供される。
【0060】
本発明の追加の態様は、本明細書に開示される本発明の化合物及び/または薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容されるその塩のうちの少なくとも1つを含む医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物を提供し、任意により薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。本発明の医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物は、意図する投与経路(例えば、局所または全身投与の形態)に適合するように製剤化される。好ましくは、本発明の化合物の投与は、局所投与を含む。本明細書で使用される場合、薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される担体または希釈剤は、生物に重大な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体または希釈剤を指す。医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物は、不活性希釈剤、例えば、追加の溶剤、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及び脂肪酸エステルソルビタン、ならびにこれらの混合物をさらに含み得る。
【0061】
本発明の医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物は、少なくとも1つの本発明の化合物に加えて、以下のうちの1つ以上を含み得る:水、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリン、ジメチコン、セテアリルアルコール、アラキジルアルコール、アラキジルグルコシド、セテアリルグルコシド、スクレロチウムガム、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、ベヘニルアルコール、キサンタンガム、水酸化ナトリウム、クエン酸、ヘキシレングリコール、エチルヘキシルグリセリン、カプリリルグリコール、フェノキシエタノールなど。
【0062】
医薬組成物の製剤化及び投与の技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co,Easton,PA.,1990;及びModern Pharmaceutics,Marcel Dekker,Inc.3rd Ed.(G.S.Banker&C.T.Rhodes,Eds.)に見出すことができる。医薬組成物は、好適な薬学的に許容される担体を含むように製剤化され、任意により、薬学的に使用できる調製物への活性化合物の加工を容易にする賦形剤及び助剤を含むことができる。投与様式は、一般に、担体の性質を決定する。本発明の医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物は、任意の従来の方法、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入、溶融紡糸、噴霧乾燥、または凍結乾燥プロセスによって、製造することができる。
【0063】
本発明の化合物及び医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物は、組み合わせ療法または治療において、製剤化され、使用することができる。すなわち、本発明の化合物及び医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物は、1つ以上の他の所望の治療法または医学的処置(例えば、対象を皮膚加齢防止剤により同時または補助的に治療するなど)と同時に、またはその前に、またはその後に、製剤化するか、または投与することができる。
【0064】
最適な医薬製剤及び/または薬用化粧品製剤は、投与経路及び所望の投与量に応じて、当業者によって決定され得る。本発明は、本発明の化合物の薬学的に許容されるまたは薬用化粧品として皮膚科学的に許容される製剤(例えば、局所用)を包含する。本明細書で使用される用語「薬学的に許容されるまたは薬用化粧品として皮膚科学的に許容される局所製剤」は、局所効果を発揮するために、治療上及び/または薬用化粧品として有効な量の本発明の化合物を皮膚層に送達するために、薬学的に許容されるまたは薬用化粧品として皮膚科学的に許容される任意の製剤を指す。ある実施形態では、薬学的に許容される及び/または皮膚科学的に許容される製剤中の局所投与される本発明の化合物の量は、0.5%(w/w)~0.05%(w/w)の範囲である。ある他の実施形態では、局所製剤は、担体系を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」、「薬用化粧品として許容される担体」、及び「担体」は、一般に、治療薬に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用または毒性を有しない成分、すなわち、非毒性で不活性な固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料または、あらゆる種類の製剤助剤(例えば、クリーム及びローション、エマルジョン、ゼリー、デポー製剤)を指す。薬学的に有効な及び/または薬用化粧品として皮膚科学的に有効な担体としては、これらに限定されないが、溶媒(例えば、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、硬膏剤、リポソーム、粉末、エマルション、マイクロエマルション、及び緩衝液(例えば、緩衝生理食塩水)、または治療剤及び/または薬用化粧剤を局所投与するための当技術分野で知られている任意の他の担体が挙げられる。薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として許容される担体には、ポリマー及びポリマーマトリックス、ナノ粒子、マイクロバブルなどが含まれ得る。他のある実施形態では、本発明の局所製剤は、賦形剤を含んでもよい。当技術分野で知られている任意の薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として皮膚科学的に許容される賦形剤を使用して、本発明の薬学的に許容される及び/または薬用化粧品として皮膚科学的に許容される局所製剤を調製してもよい。賦形剤の例としては、これらに限定されないが、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、他の浸透剤、皮膚保護剤、界面活性剤、噴射剤が挙げられる。ある実施形態では、組成物製剤はまた、担体、アジュバント、乳化剤、懸濁剤、甘味料、香味料、香料、及び結合剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加の剤を含んでもよい。
【0065】
投与:
一般に、特定の対象に対する化合物または組成物の投与の最も好適な手段は、治療される疾患、障害、もしくは状態の性質及び重症度、または使用される療法及び/または化粧品による処置の性質、ならびに治療用組成物及び/または化粧品組成物、または追加の治療剤及び/または化粧剤の性質に依存する。投与経路の例としては、皮内、皮下、経皮(局所)、及び経粘膜投与が挙げられる。本発明の医薬組成物及び/または薬用化粧品組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。好ましくは、局所投与が使用される。
【0066】
したがって、最終投薬レジメンは、薬物の作用を変更する様々な要因、例えば、薬剤の特異的活性、疾患、障害または状態の同一性及び重症度、患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別、食事、及び(例えば、あらゆる感染症の)重症度を考慮して、適正診療規範(good medical practice)によって決定される。考慮できる追加の要因としては、投与の時間及び頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、及び治療に対する耐性/応答が挙げられる。本明細書に記載の製剤のいずれかを含む、治療に適した投与量のさらなる改良は、特に使用される投与量情報及びアッセイに照らして、過度の実験を行うことなく当業者によって日常的に行われる。
【0067】
さらに別の態様は、本発明の化合物または組成物、容器、及び任意により添付文書または治療を示すラベルを含むキットを提供する。一実施形態では、容器は、バイアル、ジャー、アンプル、プリロードシリンジ、または静脈内バッグであってもよい。用語「添付文書」とは、かかる治療薬及び/または化粧品の適応症、使用、投与量、投与、禁忌、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含む、治療薬及び/または化粧品の商業用パッケージに通例含まれる指示を指す。好適な容器として、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターバックなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。
【実施例
【0068】
本発明の例示的な化合物の調製の説明は、以下の代表的な実施例及びスキームで提供され、化合物の特定の非限定的な例は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しており、いかなる方法でも明細書または特許請求の範囲を限定することを意図するものでない。本発明の化合物は、以下の非限定的な実施例及びスキームに示される合成順序によって調製され得る。当業者は、他の合成経路も同様に使用され得ることを理解するであろう。特に、実際には、他の合成経路を本発明の特定の態様に適用してもよい。例えば、(R)-3-(((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニルアミノ)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブタン酸は、実施例3のステップ1~2に従って調製し、化合物2の合成に使用することができる。当業者は、March’s Advanced Organic Chemistry(Michael B.Smith&Jerry March,Wiley-Interscience,2000)、The Practice of Medicinal Chemistry(Camille G.Wermuth,Academia Press,2003)及びProtective Groups in Organic Synthesis(Theodora W.Greene&Peter G.M.Wuts;John Wiley&Sons Inc,1999)などの一般的な教本を参照する。これらはすべて、それぞれの教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
実施例1
(使用した試薬、合成方法、及び生物学的特性評価アッセイ)
別途注記のない限り、すべての試薬、出発物質及び溶剤は、商業的な供給業者から入手し、さらに精製することなく使用した。濃縮または蒸発は、Buchiロータリーエバポレータを使用した真空下での蒸発を指す。反応生成物は、指示された溶媒系を使用したシリカゲルクロマトグラフィー、または溶媒A(水中に0.1%TFAを含む)及び溶媒B(CH3CN中に0.1%TFAを含む)を溶離剤として使用したC18逆相セミ分取HPLCカラムを使用したHPLC精製によって精製した。すべての最終生成物は、210nm及び/または254nmでのUV検出による分析用HPLC分析によって決定された場合、少なくとも95%の純度を有する。報告された収量は、単離された収量である。
【0070】
分析用HPLC分析は、Agilent 1100 HPLCでPhenomenex Luna C18(2)カラム(3ミクロン、150x4.6mm id)を使用し、流速0.6mL/分で実施し、二成分溶媒系A及びBを用いて、20分、35%~70%B、その後5分、70%~95%B(勾配溶出1)、または25分、70%~95%B、その後3分、95%~100%B(勾配溶出2)(A:0.1%TFAを含むミリQ水;B:0.1%TFAを含むCH3CN)で溶出した。NMRスペクトルは、内部標準としてTMSを含むDMSO-d6またはCDCl3を使用して、Bruker AV-300 300MHz NMR装置で記録した。質量スペクトルデータは、Bruker Esquire液体クロマトグラフィー-イオントラップ質量分析計により得た。
【0071】
合成例では次の略語を使用する:aq(水性)、h(時間)、min(分)、sat’d(飽和)、THF(テトラヒドロフラン)、rt(室温)、Et3N(トリエチルアミン))、NaCl(塩化ナトリウム)、MgSO4(硫酸マグネシウム)、CDCl3(重水素化クロロホルム)、H2O(水)、HCl(塩酸)、MeOH(メタノール)、NaOH(水酸化ナトリウム)、TFA(トリフルオロ酢酸)、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、CH2Cl2(塩化メチレン)、EtOAC(酢酸エチル)、DMF(ジメチルホルムアミド)、EtOH(エタノール)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMSO-d6(ジメチルスルホキシド-d6)、NaHCO3(重炭酸ナトリウム)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、ESI-MSまたはMS(ESI)(エレクトロスプレーイオン化質量分析)、NMR(核磁気共鳴)、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)、ブライン(飽和NaCl水溶液)、HATU(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム-3-オキシドヘキサフルオロホスフェート)。及び本明細書では、他の同様の標準略語を使用する。
【0072】
本発明の例示的化合物の生物学的特徴は、少なくとも以下のアッセイで明らかにした:
【0073】
安定にトランスフェクトされた細胞株におけるWnt/駆動TCF/LEFレポーター(Luc)活性のアッセイ。安定にトランスフェクトされた細胞株アッセイにおけるWnt/駆動TCF/LEFレポーター(Luc)活性は、BPS Bioscience(San Diego,CA 92121,USA)で実施した。簡潔に言えば、TCF/LEFレポーター(Luc)-HEK293細胞を成長培地で培養物から回収し、80μLのアッセイ培地中、白色透明底96ウェルマイクロプレートに、密度約35,000細胞/ウェルで播種する。20μLアッセイ培地中の50mM LiCl溶液を各ウェルに加え(最終濃度10mM)、細胞をCO2インキュベーター内で、37℃で16時間インキュベートする。10μLアッセイ培地中のマウスWnt3aの3倍連続希釈液を、刺激させた各ウェルに添加する。プレートを37℃のCO2インキュベーターで6時間インキュベートする。100μL/ウェルのONE-Step(商標)ルシフェラーゼアッセイバッファーを加え、ルミノメーターを使用して発光を測定する前に、プレートを30分間振とうさせる。
【0074】
SuperTOPFLASH細胞ベースのルシフェラーゼアッセイ。Hek-293、STF1.1細胞は、DMEM、10%FBS、200μg/mLのG418を添加したPen-Strepで維持させる。アッセイの前日に、細胞は、10,000細胞/ウェルで白く不透明な96ウェルプレート内の50μLのG418を含まない完全培地に分割する(Wntシグナル伝達阻害剤のスクリーニングでは、スクリーニングプロセス中にG418を除外することができる)。細胞を一晩安定させて付着させた後、2.5倍の最終濃度の化合物またはDMSO対照を含む40μLの完全培地(G418を含まない)を細胞に加え、37℃、5%CO2で1時間インキュベートし、その後完全培地(G418なし)で調製した100mMのLiCl溶液10μLを添加する。24時間後、100μLのBrightGlo(商標)(Promega、カタログ番号:G7573)を各ウェルに加え、プレートを5分間振とうし、その後、Perkin-Elmer EnVision(商標)プレートリーダーで読み取る。例えば、アッセイの前日に:細胞を50μLの完全成長培地中10,000細胞/ウェルの白色の不透明な96ウェルプレートに分割する;プレートを37℃、5%CO2で一晩インキュベートし、細胞を付着させる;翌日、試験する阻害剤を完全成長培地で目的の最終濃度の2.5倍に調製し(すべての条件を2回行う)、2.5倍濃度の化合物を含む40μLの培地を各ウェルに加える(刺激対照用に2ウェル、DMSO対照用に2ウェルを含む;すべての阻害剤及び対照を添加後、プレートを37℃、5%CO2で1時間インキュベートする(プレートをインキュベートしている間に、完全成長培地中で新鮮100mM LiClを調製する);1時間後、プレートをインキュベーターから取り出し、100mM LiClを含む10μLの培地を各ウェルに添加する(但し、刺激されていない対照の2つのウェルには50マイクロリットルの完全培地のみを添加する);プレートを37℃、5%CO2で24時間インキュベートする;24時間後、100マイクロリットルのBrightGlo(商標)(Promega、カタログ番号:G7573)を各ウェルに添加し、プレートを5分間振とうさせて、確実に完全溶解させた後、プレートをPerkin-Elmer EnVision(商標)96ウェルプレートリーダーで読み取る。
【0075】
実施例2
((S)-2-アミノ-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-N-(2,2-ジエトキシエチル)-N-(ナフタレン-1-イルメチル)プロパンアミド(1)の合成)
化合物1は、米国特許第7,671,054号に開示されている手順に従って、スキーム1に示すとおり、1-ナフトアルデヒドから出発して調製した。無色油状の表題化合物1。MS(ESI):m/z 493.3(M+H)+;分析用HPLC:15.3分。
【0076】
スキーム1:
【化14】
【0077】
実施例3
((2R,6S,9aS)-N-ベンジル-6-(4-ヒドロキシベンジル)-2-(ヒドロキシメチル)-8-(ナフタレン-1-イルメチル)-4,7-ジオキソオクタヒドロ-1H-ピラジノ[1,2-a]ピリミジン-1-カルボキサミド(2)の合成)
化合物2は、以下のスキーム2のステップ1~6に示す手順に従って調製した。
【0078】
スキーム2:
【化15】
【0079】
ステップ1~2:(R)-3-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブタン酸
【0080】
化合物は、報告された手順(Andres J.M.,et. al.,Eur.J.Org.Chem.2003;17:3387-3397;Luppi,G.,et al.,Synlett.2003;6:797-800)に従って、出発物質として(R)-3-アミノ-4-ヒドロキシブタン酸を使用して調製した。
【0081】
ステップ3:ベンジル(6R,10S)-10-(4-tert-ブトキシベンジル)-14-エトキシ-2,2,3,3-テトラメチル-12-(ナフタレン-1-イルメチル)-8,11-ジオキソ-4,15-ジオキサ-9,12-ジアザ-3-シラヘプタデカン-6-イルカルバメート
(S)-2-アミノ-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-N-(2,2-ジエトキシエチル)-N-(ナフタレン-1-イルメチル)プロパンアミド(268mg,0.544mmol)及び(R)-3-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブタン酸(200mg、0.544mmol)を含むCH2Cl2(4.1mL)及びDMF(0.41mL)の溶液に、0℃でHATU(207mg、0.544mmol)及びDIEA(0.174mL、1.09mmol)を添加した。反応混合物をアルゴン下、0℃で0.5時間、室温で一晩撹拌し、減圧濃縮し、次いで酢酸エチル(25mL)及び水(25mL)に取った。有機層を、ブライン(15mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、蒸発させた。粗物質を、25%及び35%のEtOAc/ヘキサンを使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の生成物(0.246g、54%)を無色の油として得た。MS(ESI):m/z 842.4(M+H)+
【0082】
ステップ4:(R)-3-アミノ-N-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブタンアミド
ベンジル(6R,10S)-10-(4-tert-ブトキシベンジル)-14-エトキシ-2,2,3,3-テトラメチル-12-(ナフタレン-1-イルメチル)-8,11-ジオキソ-4,15-ジオキサ-9,12-ジアザ-3-シラヘプタデカン-6-イルカルバメート(246mg、0.29mmol)を含むCH3OH溶液(6mL)に、Pd/C(26mg)を添加した。反応混合物をH2雰囲気下、室温で一晩撹拌した。セライトを通したろ過及び蒸発により、所望の生成物(0.20g、95%)が淡黄色の油として得られ、これをさらに精製することなく次ステップで使用した。分析用HPLC:23.7分。
【0083】
ステップ5:(R)-3-(3-ベンジルウレイド)-N-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブタンアミド
(R)-3-アミノ-N-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブタンアミド(196mg、0.23mmol)を含むCH2Cl2(2.7mL)溶液にイソシアン酸ベンジル(54μL、0.39mmol)を加えた。
【0084】
反応混合物を室温で一晩撹拌し、減圧濃縮した。得られた残留物を50%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、表題化合物(0.16g、83%)を白色残留物として得た。MS(ESI):m/z 842.0(M+H)+
【0085】
ステップ6:(2R,6S,9aS)-N-ベンジル-6-(4-ヒドロキシベンジル)-2-(ヒドロキシメチル)-8-(ナフタレン-1-イルメチル)-4,7-ジオキソオクタヒドロ-1H-ピラジノ[1,2-a]ピリミジン-1-カルボキサミド
(R)-3-(3-ベンジルウレイド)-N-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブタンアミド(0.156g)の粗生成物を含むギ酸(8mL)溶液を室温で20時間撹拌し、蒸発乾固した。得られた残留物を、濃NH4OHを含むCH3OHで、室温で2時間かけて処理し、蒸発乾固して、粗生成物(128mg)を得た。粗物質(33mg)を分取HPLCで精製して、所望の生成物(13mg)を白色固体として得た。MS(ESI):m/z 579.2(M+H)+;分析用HPLC:13.4分(純度98%)。
【0086】
実施例4
((2S,6S,9aS)-N-ベンジル-6-(4-ヒドロキシベンジル)-2-(ヒドロキシメチル)-8-(ナフタレン-1-イルメチル)-4,7-ジオキソオクタヒドロ-1H-ピラジノ[1,2-a]ピリミジン-1-カルボキサミド(3)の合成)
【化16】
【0087】
化合物3は、(S)-3-アミノ-4-ヒドロキシブタン酸を出発物質として使用して、実施例3に記載の手順に従って調製した。MS(ESI):m/z 579.2(M+H)+;分析用HPLC:12.0分(純度99%)。
【0088】
実施例5
(2S,5S,8aS)-N-ベンジル-5-(4-ヒドロキシベンジル)-2-(ヒドロキシメチル)-7-(ナフタレン-1-イルメチル)-3,6-ジオキソヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-1(5H)-カルボキサミド(4)の合成
【化17】
化合物4は、出発物質として(R)-2-アミノ-3-ヒドロキシプロパン酸を使用して、実施例3に記載の手順に従って調製した。MS(ESI):m/z 565.3(M+H)+;分析用HPLC:14.0分(純度98%)。
【0089】
化合物(2R,5S,8aS)-N-ベンジル-5-(4-ヒドロキシベンジル)-2-(ヒドロキシメチル)-7-(ナフタレン-1-イルメチル)-3,6-ジオキソヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-1(5H)-カルボキサミドは、出発物質として(S)-2-アミノ-3-ヒドロキシプロパン酸を使用して、実施例3に記載の手順に従って合成した。低収率で所望の生成物が得られた。
【0090】
実施例6
((2R,5S,8aS)-N-ベンジル-5-(4-ヒドロキシベンジル)-2-(2-ヒドロキシエチル)-7-(ナフタレン-1-イルメチル)-3,6-ジオキソヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-1(5H)-カルボキサミド(5)の合成)
【化18】
化合物5は、出発物質として(R)-2-アミノ-4-ヒドロキシブタン酸を使用して、実施例3に記載の手順に従って調製する。MS(ESI):m/z 579.2(M+H)+;分析用HPLC:13.6分(純度99%)。
【0091】
実施例7
式(Ib)及び式(Ic)で定義された化合物の合成であって、式中Yは、
【化19】
【0092】
例示的化合物6、(2S,6S,9aS)-1-(ベンジルカルバモイル)-6-(4-ヒドロキシベンジル)-8-(ナフタレン-1-イルメチル)-4,7-ジオキソオクタヒドロ-1H-ピラジノ[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルドデカノエートは、以下のスキーム3のステップ1~3に記載の手順に従って調製した:
【0093】
スキーム3:
【化20】
【0094】
ステップ1:(S)-3-(3-ベンジルウレイド)-N-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-ヒドロキシブタンアミド
(S)-3-(3-ベンジルウレイド)-N-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ブタンアミド(3.5g、4.16mmol)を含むTHF溶液(62mL)にTBAF(1N、8.3mL)を0℃で滴下した。反応混合物を室温で、アルゴン下で一晩撹拌し、蒸発乾固した。粗物質を、5%CH3OH/CH2Cl2を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物(3.3g,100%)を白色泡状物として得た。MS(ESI)m/z 727.8(M+H)+
【0095】
ステップ2:(S)-2-(3-ベンジルウレイド)-4-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イルアミノ)-4-オキソブチルドデカノエート
(S)-3-(3-ベンジルウレイド)-N-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-ヒドロキシブタンアミド(1.98g、2.72mmol)を含む乾燥CH2Cl2(48mL)溶液を、0℃でピリジン(0.44mL、5.4mmol)及びラウロイルクロリド(0.82mL、3.54mmol)を加えた。反応混合物をアルゴン下、0℃で1時間、室温で一晩撹拌した。0℃で水(4.0mL)を添加後、反応混合物を蒸発乾固した。粗物質を、5%CH3OH/CH2Cl2を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物(2.3g、93%)を白色固体として得た。MS(ESI):m/z910.4(M+H)+
【0096】
ステップ3:((2S,6S,9aS)-1-(ベンジルカルバモイル)-6-(4-ヒドロキシベンジル)-8-(ナフタレン-1-イルメチル)-4,7-ジオキソオクタヒドロ-1H-ピラジノ[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルドデカノエート
(S)-2-(3-ベンジルウレイド)-4-((S)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)-1-((2,2-ジエトキシエチル)(ナフタレン-1-イルメチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イルアミノ)-4-オキソブチルドデカノエート(2.3g、2.5mmol)を含むギ酸(80mL)溶液を室温で24時間撹拌し、蒸発乾固した。得られた残留物を、25%及び50%EtOAc/CH2Cl2を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の生成物(1.28g、67%)を白色泡状物として得た。MS(ESI):m/z 761.6(M+H)+;分析用HPLC:16.9分(純度98%;勾配溶出2)。
【0097】
実施例8
式(Ib)及び式(Ic)で定義された化合物の合成であって、式中Yは、
【化21】
【0098】
例示的化合物7、(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-((2S,6S,9aS)-1-(ベンジルカルバモイル)-6-(4-ヒドロキシベンジル)-8-(ナフタレン-1-イルメチル)-4,7-ジオキソオクタヒドロ-1H-ピラジノ[1,2-a]ピリミジン-2-イル)メチルドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノエートは、実施例7に記載の手順に従って、代わりにドコサヘキサエン酸クロリドを使用して、淡黄色の泡状物として調製した。MS(ESI):m/z 889.7(M+H)+;分析用HPLC:22.1分(純度96%;勾配溶出2)。
【0099】
実施例9
(HEK293細胞株アッセイにおけるWnt/駆動TCF/LEFレポーター(Luc)活性における、式(Ib)及び式(Ic)の例示的化合物(式中、Yは、水素である)の生物学的特徴付け)
Yが水素である本発明の例示的化合物を、HEK293細胞株アッセイでWnt/駆動TCF/LEFレポーター(Luc)活性について試験した。TCF/LEFレポーター活性に対する化合物のIC50値を表1に要約する。表1に示すとおり、Yが水素である式(Ib)及び式(Ic)の例示的化合物の予想外の阻害活性または効力は、二環式環の2つの位置でのキラリティーの最適な選択によってもたらされ、最適な阻害にはnが1に等しい必要がある。ビシクロ[5,6]系及びビシクロ[6,6]系の両方で、TCF/LEFレポーター活性を最も強力に阻害するには、-CH2OHのS配置が必要である。このアッセイの陽性対照化合物は、IWR-1-endoであり、これは、非CBP/β-カテニンWntアンタゴニストとして当技術分野で知られており、Axin依存性β-カテニン破壊を安定化させる(Chen,B.,et al.,Nat.Chem.Biol.2009;5(2):100-107)。
【表1】
【0100】
実施例10
(SupperTOPFLASH細胞ベースのルシフェラーゼアッセイにおける例示的化合物2及び3の生物学的特徴付け)
図1は、本発明の非限定的な態様による、SuperTOPFLASH(商標)細胞ベースのルシフェラーゼ2.5、5、10、及び20μMの濃度での、本発明の2つの例示的な化合物、化合物2及び化合物3のCBP/β-カテニン阻害活性を比較した、アッセイ(安定にトランスフェクトされた細胞株、Hek293、STF1.1におけるWnt駆動ルシフェラーゼ活性)の結果を示す。本発明の化合物3は、IC50値2.5μMを有し、これは、二環式環の2位における-CH2OHのS配置が最適な阻害活性に必要であることをさらに示す。
【0101】
実施例11
(分析用HPLC分析による本発明の例示的プロドラッグ(化合物6;コードNP-002)の安定性)
図2は、本発明の非限定的な態様による、分析用HPLC分析による本発明の例示的なプロドラッグ(化合物6;コードNP-002)の安定性を示す。容易に理解できるように、化合物6は、室温で、固体の状態でも有機溶媒(例えば、CH3CN及びCH3OH)中でも安定である。分析用HPLC分析に基づいて、室温で4日後に、化合物6の分解生成物は検出されなかった。
【0102】
実施例12
(ヒト皮膚での本発明の例示的なプロドラッグ(化合物6;コードNP-002)の化粧品評価)
化粧品の評価では、水性ベースビヒクルに製剤化された化合物6(0.15%wt./wt.)は、次の日中/夜間レジメンに従って、8週間の試験期間中に、1日2回(1回の塗布につき製剤0.25g)局所的に塗布した。
【0103】
試験中、対象は、他のスキンケアレジメンを使用しなかった。試験製剤を塗布する前に、対象は、目的のクレンザで顔を洗い、すすぎ、乾かして顔を軽く叩いた。日中及び夜間塗布するごとに、試験製剤0.25g(アプリケータから2プッシュ)を顔全体、目の周り、及び首に塗布した。写真(いかなる顔及びアイメイクもない)、及び自己評価は、8週間の期間の前及び期間後に実施した。
【0104】
図3は、本発明の非限定的な態様による、ヒトの皮膚に対する例示的化合物6の有意な化粧品的皮膚科学的効果を示す(治療期間:8週間)。容易に明らかなように、局所皮膚製剤中の化合物6を使用した8週間の治療後に、皮膚外観の改善(例えば、しわ及び発赤の外観の減少)が達成される。
【0105】
本発明、ならびにそれを作製及び使用する方法及びプロセスは、それが属する分野の任意の当業者がそれを作製及び使用できるように、完全、明白、簡潔、及び正確な用語で本明細書に説明される。
【0106】
説明のために本発明の特定の実施形態を本明細書に記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることを理解されたい。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外には限定されない。
【0107】
本明細書中で言及されるすべての上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、参考により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B