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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】給湯設備の構成方法および制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20220101AFI20240909BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 4/04 20060101ALI20240909BHJP
   F24H 15/14 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/238 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/281 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/457 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/414 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20240909BHJP
   F24H 15/37 20220101ALI20240909BHJP
【FI】
F24H1/18 G
F24H1/00 621C
F24H4/04
F24H15/14
F24H15/219
F24H15/238
F24H15/281
F24H15/269
F24H15/395
F24H15/457
F24H15/414
F24H15/375
F24H15/37
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023547562
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 IB2022051057
(87)【国際公開番号】W WO2022168029
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】2101678.7
(32)【優先日】2021-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109593.0
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109594.8
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109596.3
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109597.1
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109598.9
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109599.7
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2109600.3
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2111085.3
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523293529
【氏名又は名称】オクトパス エナジー ヒーティング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCTOPUS ENERGY HEATING LIMITED
【住所又は居所原語表記】UK House, 164-182 Oxford Street, London, W1D 1NN, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】コノワルチェク,ピーター
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-263912(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03173703(EP,A1)
【文献】独国実用新案第202012104942(DE,U1)
【文献】特開2005-037078(JP,A)
【文献】国際公開第2011/058383(WO,A2)
【文献】独国特許出願公開第03838476(DE,A1)
【文献】特開2006-010282(JP,A)
【文献】国際公開第2018/073866(WO,A1)
【文献】特開2010-281546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24H 1/00
F24H 4/04
F24H 15/14
F24H 15/219
F24H 15/238
F24H 15/281
F24H 15/269
F24H 15/395
F24H 15/457
F24H 15/414
F24H 15/375
F24H 15/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御可能な給湯口と、熱エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵媒体を含むエネルギー貯蔵器を含む水加熱装置とを有する給湯システムを殺菌する方法であって、
操作者に将来の殺菌イベントを通知する工程と、
将来の殺菌イベントが実行される可能性があることを確認する前記操作者からの応答が受信されたかどうかを判断する工程と、
前記操作者からの応答が受信されたと判断したことに応答して、
給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇させる工程と、
前記操作者に前記給湯口のうちの第1の給湯口を開けさせる信号を提供する工程と、
殺菌期間後に前記操作者に前記第1の給湯口を閉じさせる信号を提供する工程と、
前記操作者に他の給湯口を開けさせる信号を提供する工程と、
殺菌期間後に前記操作者に前記他の給湯口を閉じさせる信号を提供する工程と、
前記操作者に前記複数の制御可能な給湯口を開けさせ、殺菌期間後に閉じさせる前記信号の提供を繰り返す工程と、
前記給湯温度を前記殺菌温度から前記60℃未満のイベント前温度まで低下させる工程と、
前記操作者に前記殺菌イベントの完了を通知する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記信号は、無線送受信機のアプリにより前記操作者に提供される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇させる工程は、前記エネルギー貯蔵器内の前記エネルギー貯蔵媒体の温度を上昇させる工程を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー貯蔵器内の前記エネルギー貯蔵媒体の前記温度を上昇させる工程は、前記エネルギー貯蔵器に関連する電気加熱器から熱を供給することを含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵器内の前記エネルギー貯蔵媒体の前記温度を上昇させる工程は、ヒートポンプまたは太陽熱給湯器から熱を供給する工程を含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇させる工程は、前記エネルギー貯蔵器と前記複数の制御可能な給湯口との間にある供給ライン内の水に熱を加える工程を含む請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記操作者への前記信号の提供は、前記操作者が、前記エネルギー貯蔵器からの流路距離が最も短い前記給湯口から順に前記制御可能な給湯口を開くように誘導するように制御される請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記エネルギー貯蔵器によって加熱された水は、1つ以上の分岐した供給ラインによって前記複数の制御可能な給湯口に供給され、前記操作者への前記信号の提供は、前記操作者が、前記エネルギー貯蔵器からの流路距離が最も短い分岐上の前記給湯口から始まる供給ラインの分岐に沿い、前記制御可能な給湯口を順に開くように誘導するように制御される請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
異なる前記給湯口の前記殺菌期間は、実質的に同じである請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
給湯口の前記殺菌期間は、前記エネルギー貯蔵器から前記給湯口までの前記流路距離に少なくとも部分的に基づいて選択される請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
殺菌イベントをスケジュールする工程をさらに含む請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記将来の殺菌イベントは、所定の時間内、任意で1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内または5分以内で行われるようにスケジュールされた殺菌イベントである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記殺菌イベントは、前記操作者が前記イベントの実行に同意を示した場合にのみ実行される請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記操作者の前記同意は、無線送受信機上のアプリによって提供される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の制御可能な給湯口と、熱エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵媒体を含むエネルギー貯蔵器を含む水加熱装置とを有する給湯システムを殺菌する方法であって、
操作者に将来の殺菌イベントを通知する工程と、
将来の殺菌イベントが実行される可能性があることを確認する前記操作者からの応答が受信されたかどうかを判断する工程と、
前記操作者からの応答が受信されたと判断したことに応答して、
給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇させる工程と、
前記操作者に前記給湯口のうちの第1の給湯口を開けさせる信号を提供する工程と、
殺菌期間後に前記操作者に前記第1の給湯口を閉じさせる信号を提供する工程と、
前記操作者に他の給湯口を開けさせる信号を提供する工程と、
殺菌期間後に前記操作者に前記他の給湯口を閉じさせる信号を提供する工程と、
前記操作者に前記複数の制御可能な給湯口を開けさせ、殺菌期間後に閉じさせる前記信号の提供を繰り返す工程と、
前記給湯温度を前記殺菌温度から前記60℃未満のイベント前温度まで低下させる工程と、
前記操作者に前記殺菌イベントの完了を通知する工程と、を含む方法であって、
どの給湯口が加熱水の需要を提供したのかを推測する工程と、前記給湯口および前記給湯口までの推測された輸送経路とに基づいて加熱特性を設定する工程と、をさらに含む方法。
【請求項16】
前記60℃未満のイベント前温度は、前記給湯システムの制御部によって制御される給湯温度である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
複数の制御可能な給湯口を有する給湯設備であって、
出口があり制御可能な流出温度を有する給湯源であって、熱エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵媒体の塊および前記給湯設備とヒートポンプまたは太陽熱給湯器の間に結合される熱交換器を含むエネルギー貯蔵器を有する前記給湯源と、請求項1乃至16の何れか1項に記載の前記方法を実行するように構成されたシステム制御部と、を備える給湯設備。
【請求項18】
前記エネルギー貯蔵器は、前記システム制御部に結合された電気加熱器をさらに備える請求項17に記載の給湯設備。
【請求項19】
前記エネルギー貯蔵器から前記複数の制御可能な給湯口までの前記給湯流路に追加の加熱器が設けられ、前記追加の加熱器は前記システム制御部に結合される請求項17または請求項18に記載の給湯設備。
【請求項20】
前記システム制御部は、殺菌イベント時を除き、前記給湯源の前記出口から水が供給される際の温度を60℃未満に制限する請求項17乃至19の何れか1項に記載の給湯設備。
【請求項21】
前記システム制御部は、操作者のWTRUに信号を送るための無線周波数トランシーバに結合されている請求項17乃至20の何れか1項に記載の給湯設備。
【請求項22】
前記複数の制御可能な給湯口は、温水循環ループに連結される請求項17乃至21の何れか1項に記載の給湯設備。
【請求項23】
熱エネルギー貯蔵器、再生可能な熱源および補助熱源を含む設備から給湯システムによって加熱水を使用者に供給する方法であって、
加熱水の需要に応じて加熱水を使用者に提供するため、水を60℃未満の第1の目標温度に加熱する工程を含み、前記方法はさらに、
実質的に水を使用しない期間が経過したことの検出に応じて、
給湯システムを殺菌する方法を実施する工程、および、
加熱水の需要に応じて、最初に、加熱水のパルスが前記給湯口まで移動するのに十分であると推定される時間、殺菌温度まで前記設備を出る水を加熱し、その後、温度を前記第1の目標温度まで低下させる工程、
の少なくとも1つを実行することを含む方法であって、
前記給湯システムを殺菌する方法を実施する工程は、
複数の制御可能な給湯口と、熱エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵媒体を含むエネルギー貯蔵器を含む水加熱装置とを有する給湯システムを殺菌する方法であって、
操作者に将来の殺菌イベントを通知する工程と、
将来の殺菌イベントが実行される可能性があることを確認する前記操作者からの応答が受信されたかどうかを判断する工程と、
前記操作者からの応答が受信されたと判断したことに応答して、
給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇させる工程と、
前記操作者に前記給湯口のうちの第1の給湯口を開けさせる信号を提供する工程と、
殺菌期間後に前記操作者に前記第1の給湯口を閉じさせる信号を提供する工程と、
前記操作者に他の給湯口を開けさせる信号を提供する工程と、
殺菌期間後に前記操作者に前記他の給湯口を閉じさせる信号を提供する工程と、
前記操作者に前記複数の制御可能な給湯口を開けさせ、殺菌期間後に閉じさせる前記信号の提供を繰り返す工程と、
前記給湯温度を前記殺菌温度から前記60℃未満のイベント前温度まで低下させる工程と、
前記操作者に前記殺菌イベントの完了を通知する工程と、を含む、方法。
【請求項24】
どの給湯口が加熱水の要求を提供したかを推測する工程と、前記給湯口および前記給湯口までの推測された輸送経路とに基づいて加熱特性を設定する工程とを含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の目標温度は、40~50℃の範囲にある請求項23または24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広く一般に、消費者が家庭用給湯および空間暖房のエネルギー消費の削減に役立つ方法、システムおよび装置に関し、より詳細には、給湯システムを殺菌する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
指令2012/27/EUによると、建物は最終エネルギー消費の40%、CO排出量の36%を占めている。2016年のEU委員会報告書「現在および将来(2020年~2030年)の冷暖房燃料配備(化石燃料/再生可能エネルギー)のマッピングと分析」は、EUの家庭では、暖房と給湯だけで最終エネルギー総使用量(192,5Mtoe)の79%を占めていると結論付けている。EU委員会はまた、「EU統計局の2019年の数字によると、暖房と冷房の約75%は依然として化石燃料から生成されており、再生可能エネルギーから生成されているのはわずか22%である」と報告している。EUの気候とエネルギーの目標を達成するためには、冷暖房の分野について、エネルギー消費を大幅に削減し、化石燃料の使用を削減しなければならない。ヒートポンプ(空気、地面または水からのエネルギーの取り入れを伴う)は、この問題に対処する上で重要な役割を果たす可能性があるとされている。
【0003】
多くの国において、二酸化炭素排出量を削減するための政策や圧力がある。例えば2020年に英国では、英国政府が「未来の住宅基準」に関する白書を発表し、2025年までに新築住宅からの二酸化炭素排出量を既存比で75~80%削減することを提案した。さらに、2019年の初頭には、2025年から新築住宅へのガスボイラーの設置を禁止することが発表された。発表時点において英国では、建物の暖房に使用される全エネルギーの78%がガス由来で、12%が電気由来であると報告されている。
【0004】
英国には、ガス焚きの集中暖房設備を備えた寝室が2~3部屋以下の小規模な物件が多数あり、これらの物件のほとんどは、ボイラーが瞬間湯沸かし器としても集中暖房設備用ボイラーとしても機能する、いわゆるコンビネーションボイラーを使用している。コンビネーションボイラーが人気である理由は、小型で、多かれ少なかれ直ちに「無制限」な温水の供給源となり(出力は20~35kW)、貯湯が不要だからである。このようなボイラーは、評判の良いメーカーから比較的安価に購入することができる。小型で貯湯タンクも不要であるため、狭いアパートや一軒家でも、一般的にこのようなボイラーを設置することが可能であり(多くの場合、台所の壁面に取り付けられる)、1人の作業員による1日の作業で新しいボイラーを設置することが可能である。そのため、新しいコンビガスボイラーを安価に設置することが可能である。新しいガスボイラーの設置禁止が間近に迫っており、ガスコンビボイラーに替わる代替熱源を提供する必要がある。また、以前から設置されているコンビボイラーも、いずれは何らかの代替品と交換する必要がある。
【0005】
ヒートポンプは、化石燃料への依存を減らし、CO排出量を削減するための可能性のある解決策として提案されているが、現在のところ、技術的、商業的および実用的な理由から、小規模な家庭用(および小規模な商業用)施設のガス焚きボイラーを置き換える問題には適していない。また、それらは一般的に非常に大型で、物件の外に大きなユニットを設置する必要がある。そのため、それらを一般的なコンビボイラーを備えた物件に簡単に後付けすることはできない。一般的なガスボイラーと同等の出力を提供できるユニットは、現在のところ高価であり、かなりの電気需要を必要とする可能性がある。そのユニット自体は、同等のガス炊きの同等物の何倍ものコストがかかるだけでなく、そのサイズと複雑さから、設置は技術的に複雑で、したがってコストも高くつく。さらなる技術的な問題として、ヒートポンプは需要に応じて熱を発生し始めるまでにかなりの時間を要する傾向があり、セルフチェックにおそらく30秒、その後の加熱にも時間がかかるため、給湯が必要になってからそれが供給されるまでに1分以上の遅れが生じる。こうした理由により、ヒートポンプやソーラーを使った再生可能エネルギーによるソリューションは、貯湯タンク(設置スペースを要し、熱損失があり、レジオネラ菌のリスクがある)を設置するスペースがある大型物件に適用されるのが一般的である。
【0006】
従って、特に小規模の家庭で用いるガスコンビボイラーに替わる適切な技術を見つけるという問題に対する解決策を提供する必要がある。
【0007】
より一般的には、ヒートポンプの適用範囲を広げるためのさらなる開発が求められている。本開示の態様は、このような長年の要望に対する解決策を提供するものである。
【0008】
使用する湯量と湯の過熱によるエネルギー浪費の両方の点に関する、家庭におけるエネルギー消費の重要な要素は、家庭用の湯の使用に起因している。湯の浪費は、もちろん、より一般的な問題である水の浪費の重要な一因でもあり、人類が持続可能な未来を手に入れようとするならば、この問題にも取り組む必要がある。本開示の側面は、これらの問題にも対処している。
【0009】
また、他の懸念は、ヒートポンプの効率的な運転温度は通常50℃以下であることからも生じ、これにより給湯システムにレジオネラ菌が感染する危険性がある。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様において、複数の制御可能な給湯口と、60℃未満の相転移温度を有する相変化材料を有するエネルギー貯蔵器を含む水加熱装置とを有する給湯システムを殺菌する方法が提供され、前記方法は、操作者に将来の殺菌イベントを通知する工程と、給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇させる工程と、前記操作者に前記給湯口のうちの第1の給湯口を開けさせる信号を前記操作者に提供する工程と、殺菌期間後に前記操作者に前記第1の給湯口を閉じさせる信号を提供する工程と、前記操作者に他の給湯口を開けさせる信号を提供する工程と、殺菌期間後に前記操作者に前記他の給湯口を閉じさせる信号を提供する工程と、前記操作者に前記複数の制御可能な給湯口を開けさせ、殺菌期間後に閉じさせる前記信号の提供を繰り返す工程と、前記給湯温度を前記殺菌温度から前記60℃未満のイベント前温度まで低下させる工程と、前記操作者に前記殺菌イベントの完了を通知する工程と、を含む。
【0011】
任意で、前記信号は、スマートフォンやタブレット端末のような無線送受信機のアプリにより前記操作者に提供される。
【0012】
任意で、給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇させることは、前記エネルギー貯蔵器内の前記相変化材料の温度を上昇させることを含む。任意で、前記エネルギー貯蔵器内の前記相変化材料の前記温度を上昇させることは、前記エネルギー貯蔵器に関連する電気加熱要素から熱を供給することを含む。任意で、前記エネルギー貯蔵器内の前記相変化材料の前記温度を上昇させることは、ヒートポンプ(任意で、空気熱源ヒートポンプ)または太陽熱給湯器から熱を供給することを含む。
【0013】
給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇させることは、例えば補助給湯器によって、前記エネルギー貯蔵器と前記複数の制御可能な給湯口との間にある供給ライン内の水に熱を加える工程を含んでもよい。
【0014】
任意で、前記操作者への前記信号の提供は、前記操作者が、前記エネルギー貯蔵器からの流路距離が最も短い前記給湯口から順に前記制御可能な給湯口を開くように誘導するように制御される。このようにして、殺菌イベント時に使用される湯の量を最小限に抑えながら、給湯システム全体の効果的な殺菌を達成することができる。
【0015】
前記エネルギー貯蔵器によって加熱された水は、1つ以上の分岐した供給ラインによって前記複数の制御可能な給湯口に供給されてもよく、前記操作者への前記信号の提供は、前記操作者が、前記エネルギー貯蔵器からの流路距離が最も短い前記分岐上の前記給湯口から始まる供給ラインの分岐に沿い、前記制御可能な給湯口を順に開くように誘導するように制御されてもよい。
【0016】
異なる前記給湯口の前記殺菌期間は、実質的に同じであってもよい。
【0017】
あるいは、給湯口の前記殺菌期間は、前記エネルギー貯蔵器から前記給湯口までの前記流路距離に少なくとも部分的に基づいて選択してもよい。
【0018】
前記第1の態様の前記方法は、殺菌イベントをスケジュールする工程をさらに含んでもよい。このようにすることで、給湯システムの使用者が火傷をする危険性を低減しつつ、殺菌イベントに対応することを容易にすることができる。任意で、前記将来の殺菌イベントは、所定の時間内、任意で1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内または5分以内で行われるようにスケジュールされた殺菌イベントである。
【0019】
好ましくは、前記殺菌イベントは、前記操作者が前記イベントの実行に同意を示した場合にのみ実行される。前記操作者の前記同意は、簡便には、無線送受信機上のアプリによって提供されてもよい。
【0020】
前記第1の態様の前記方法は、どの給湯口が加熱水の需要を提供したのかを推測する工程と、前記給湯口および前記給湯口までの推測された輸送経路とに基づいて加熱特性を設定する工程と、をさらに含んでもよい。
【0021】
好ましくは、前記60℃未満のイベント前温度は、前記給湯システムの制御部によって制御される給湯温度である。
【0022】
第2の側面によると、複数の制御可能な給湯口を有する給湯設備が提供され、前記給湯設備は、
出口があり制御可能な流出温度を有する給湯源であって相変化材料の塊および前記給湯設備とヒートポンプまたは太陽熱給湯器の間に結合される熱交換器を含む前記給湯源と、前記第1の態様の任意の変形例による前記方法を実行するように構成されたシステム制御部と、を含むエネルギー貯蔵器と、を備える。
【0023】
任意で、前記エネルギー貯蔵器は、前記システム制御部に結合された電気加熱器を含んでいてもよい。
【0024】
任意で、前記エネルギー貯蔵器から前記複数の制御可能な給湯口までの前記給湯流路に追加の加熱器が設けられ、前記追加の加熱器は前記システム制御部に結合される。
【0025】
前記システム制御部は、殺菌イベント時を除き、前記給湯源の前記出口から水が供給される際の温度を60℃未満に制限するように構成してもよい。
【0026】
好ましくは、前記システム制御部は、操作者のWTRUに信号を送るための無線周波数トランシーバに結合されている。
【0027】
任意で、前記複数の制御可能な給湯口は、温水循環ループに連結される。このようにすることで、湯が熱くなることを待っている間に無駄になる水の量を減らすことができる。
【0028】
第3の態様によれば、熱エネルギー貯蔵器、再生可能な熱源および補助熱源を含む設備から加熱水を使用者に供給する方法が提供され、前記方法は、
加熱水の需要に応じて加熱水を使用者に提供するため、水を第1の目標温度、好ましくは40~50℃の範囲に加熱する工程を含み、前記方法はさらに、
実質的に水を使用しない期間が経過したことの検出に応じて、
熱交換器内の水を、好ましくは少なくとも60℃の殺菌温度に加熱する工程、および/または、
加熱水の需要に応じて、最初に、加熱水のパルスが前記給湯口まで移動するのに十分であると推定される時間、好ましくは少なくとも60℃の殺菌温度まで前記設備を出る水を加熱し、その後、温度を前記第1の目標温度まで低下させる工程、
の少なくとも1つを実行することを含む。
【0029】
第3の態様による前記方法は、どの給湯口が加熱水の要求を提供したかを推測する工程と、前記給湯口および前記給湯口までの推測された輸送経路とに基づいて加熱特性を設定する工程とを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下、本開示の様々な態様の実施形態を、例示のみを目的として、添付の図面を参照しながら説明する。
図1図1は、本開示の一側面による給湯設備を概略的に示す図である。
図2図2は、本開示の一側面による別の給湯設備を概略的に示す図である。
図3図3は、ヒートポンプエネルギー源に結合された相変化材料および熱交換器を含むエネルギーバンクを示す概略図であり、エネルギーバンクは、相変化材料に潜熱として蓄積されたエネルギー量を示す測定データを提供するための1つ以上のセンサを含む。
図4図4は、本開示の一態様による建物内給水設備を示す概略図である。
図5図5は、複数の制御可能な給湯口を有する給湯設備の構成方法を概略的に示す図である。
図6図6は、本開示の一態様によるエネルギーバンクを組み込んだインターフェースユニットの構成要素の可能性のある配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ヒートポンプのエネルギー効率(一般に成績係数、COPと呼ばれる)は、ヒートポンプの出力により供給される温度と連動しており、出力温度が高くなるほど効率は低下する。このため、ヒートポンプを家庭用温水暖房に使用する場合、給湯温度は通常50℃よりかなり低い温度、例えば40℃近辺に設定される。残念ながら、給湯システムを50℃以下で運転すると、給湯設備を使用する人々に深刻な健康上のリスクを与えるレジオネラ菌に設備が感染する危険性がある。
【0032】
家庭用給湯のために使用されるヒートポンプ設備の多くは、ヒートポンプによって加熱された湯を貯蔵するために貯湯タンクを使用している。レジオネラ菌によるリスクを低減するため、貯湯タンクの底部にヒータを設け、このヒータで貯湯タンク内の湯を24時間毎に1時間、60℃に加熱することが知られている。
【0033】
残念ながら、上述したように、小規模な物件においてヒートポンプがガスコンビネーションボイラーと置き換えるのに十分である場合でも、貯湯タンクを要しない必要がある。運転効率の観点から、このような設備はヒートポンプが50℃未満で作動することが好ましく、そのためレジオネラ菌に対する殺菌が必要となる。本開示の側面は、これらの一見相反する要求に対処する方法と設備を提供する。
【0034】
図1は、本開示の第1の態様による給湯設備を概略的に示し、給湯設備の殺菌を容易にするように構成されている。給湯システム100は、加熱器102と、配管システム108によって加熱器102から供給される制御可能な給湯口106の集合体を含む分配ネットワーク104とから構成される。図示のシステムにおいて、分配ネットワーク104は、英国の家庭用給湯システムで一般的に使用されるタイプの幹管および分岐管の配置で示されている。配管システムは、第1の分岐108’と第2の分岐108”を含む。温水循環ループを使用する給湯システムの例については、図2を参照して後述する。
【0035】
加熱器102は、熱源114に結合された入口側熱交換器112を含む熱エネルギー貯蔵器110を備える。熱エネルギー貯蔵器110はまた、出口側熱交換器116を含み、この出口側熱交換器は、給水設備120から水を受ける入口118と、分配ネットワーク104に湯を供給する出口122との間に接続されている。熱エネルギー貯蔵器110はまた、エネルギーを潜熱として貯蔵するために、図示しない相変化材料を含み、好ましくは加熱要素124も含む。
【0036】
熱源114は、好ましくは、空気熱源ヒートポンプや地中熱源ヒートポンプなどのヒートポンプである。任意であるが、熱源114は太陽熱を利用した熱源であってもよい。熱源114からの熱は相変化材料を加熱し、従って出口側熱交換器116とその中の水も加熱する。典型的には、熱源114から供給される加熱液体は60℃よりかなり低い温度であり、多くの場合、供給される温度は40℃から50℃の範囲である。熱エネルギー貯蔵器110内の相変化材料は相転移温度を有する。これは、熱源114から供給される加熱液体が相転移温度以上の温度に到達することで、相変化材料が供給されたエネルギーの少なくとも一部を潜熱の形で蓄えることができるというものである。熱源114から供給される加熱液体が相転移温度以上の温度に到達する場合、余剰エネルギーを顕熱として貯蔵することができる。ヒートポンプの効率は、加熱液体の温度が低いほど高くなるため、通常、加熱液体が一般に40~50℃の温度で供給され、相変化材料はこの範囲内の相転移温度を有するようにシステムが設計される。これは、出口側熱交換器116を通過する水も、相変化材料が追加的な加熱要素124によってさらに加熱されない限り、この範囲の温度に加熱されることを意味する。典型的には、この追加的な加熱要素124は電気的に駆動され、最適なエネルギー効率のために、また化石燃料への依存を減らすために、この追加的な加熱要素124からの加熱にできるだけ依存しないようにする。
【0037】
さらなる加熱がない場合、分配ネットワーク104内の水の温度は50℃より低く、おそらくかなり低くなり、その結果、レジオネラ菌感染の危険性があることが理解されよう。この問題に対処するため、給湯システムの殺菌方法を考案し、この方法では、給湯温度が、イベント前の60℃未満の温度から殺菌温度まで上昇する。例えば操作者の携帯端末126に信号を提供することにより、操作者に1つ目の給湯口106を開けさせるための信号が操作者に提供される。続いて、殺菌期間後に操作者に第1の給湯口を閉じさせるために、別の信号が操作者に提供される。さらに別の給湯口を開けさせるために別の信号が操作者に提供され、殺菌後に別の給湯口を閉じさせるために再び信号が操作者に提供される。このプロセスは、複数の制御可能な給湯口106の各々を開くように操作者に信号を送り、殺菌期間後に閉じるように操作者に信号を送ることによって、繰り返される。その後、給湯温度は殺菌温度からイベント前の温度に下げられる。操作者には、殺菌イベントの完了が通知される。
【0038】
加熱器102は、無線インターフェース130によって無線デバイス126と通信することができるプロセッサ129を有する制御部128を含む。無線インターフェース130は、無線デバイス126と通信するためにBluetoothまたはWi-Fiを使用することができるが、UMTS、4Gまたは5Gなどのモバイルネットワーク接続を使用して通信することもできる。制御部128は、無線インターフェース130、有線インターフェース、またはその両方を介してインターネットに接続されてもよい。制御部128は、熱源114と通信し、ステータス更新およびその他の情報を受信し、熱源の制御部(例えば、ヒートポンプの制御部)にコマンドおよびステータス要求などを提供するように配置される。制御部128はまた、エネルギー貯蔵器の状態に関する情報を提供する、エネルギー貯蔵器110内の1つ以上のセンサ132に連結されていて、これにより制御部128は、潜熱および顕熱として、エネルギー貯蔵器に貯蔵されたエネルギー量を決定することができる。また、制御部128には、エネルギー貯蔵器110の出口122から出てくる水の温度を感知するための温度センサ134が接続されている。また、出口122と分配ネットワーク104との間の流路には、補助ヒータ136と、冷水供給源140にも接続されている混合弁138とがある。混合弁138の出口は分配ネットワーク104に供給し、温度センサ142を含む。補助ヒータ136、混合弁138および温度センサ142は、すべて有線インターフェースを介して、または144で表される無線インターフェースを介して、制御部128に接続される。任意で、流量センサ146も、出口122から混合弁138への流路に含まれ、制御部128に接続される。
【0039】
給湯システム100の加熱器制御部128は、例えば週に1回、または毎月一定回数の定期的なスケジュールに従って殺菌サイクルを実行するようにプログラムされてもよい。任意で、制御部は、加熱器の使用履歴を考慮し、使用履歴に基づいて殺菌サイクルのスケジュールされた実行を調整するようにプログラムされてもよい。本システムの指定された使用者には、携帯電話または他の携帯端末126にアプリが提供される。適切な殺菌スケジュールは、アプリ、または指定された使用者がデスクトップまたはラップトップコンピュータを使用するオンライン対話などの他の媒体によって、制御部128と指定された使用者との間で確立される。殺菌プロセスには、誤って水にさらされると火傷を負う可能性がある温度の水の生成および排出が含まれるため、他の使用者が湯を必要とする可能性が低い時間帯、または給湯口へのアクセスを管理できる時間帯に殺菌イベントをスケジュールすることが重要である。例えば、子供や高齢者、衰弱者がいる家庭では、不注意で火傷するような温度の水に触れるおそれがない、そのような人が就寝している時間帯や、そうでない時間帯に殺菌を行うことが望ましい。
【0040】
殺菌イベントがスケジュールされた場合、指定された使用者は、イベントが行われる予定の少し前、例えば、スケジュールされた開始の30分前または15分前に、スケジュールされた殺菌イベントを通知される。指定された使用者は、アプリによって生成される通知によって、または制御部128によって生成される通知によって通知され得る。好ましくは、指定された使用者は、スケジュールされた開始の前に、スケジュールされた殺菌イベントが安全に実行可能であることを確認するために、通知に応答することが要求される。そのような確認がない場合、システムは、スケジュールされたイベントを中止または再スケジュールするように構成されてもよい。システムは、通知に対して所定の間隔内に応答が受信されない場合に、指定された使用者の携帯端末126への発信を開始するように構成されてもよい。このような発信を処理するために自動化システムが提供されてもよく、好ましくは、殺菌イベントを実行することが安全であると判断される前に、発信に応答する人物からの、パスワードまたはコードの形態による安全確認が要求されてもよい。好ましくは、スケジュールされた開始時刻の少し前に、さらなる通知が提供され、殺菌プロセスが開始する前に、再び、指定された使用者からの応答が要求される。
【0041】
通知および応答プロセスが十分に完了した後にのみ、制御部128は、給湯温度を60℃未満のイベント前温度から殺菌温度まで上昇し始める。制御部128は、熱源114にその給湯温度をイベント前温度から殺菌温度まで上昇させることによって、給湯温度を上昇させてもよい。あるいは、制御部128は、エネルギー貯蔵器内の加熱要素124を作動させて、エネルギー貯蔵器内の温度を殺菌温度まで上昇させてもよい。あるいは、制御部128は、エネルギー貯蔵器110の出口122と混合弁138との間に配置された補助ヒータ136を作動させて、出口122から供給される水を殺菌温度まで加熱してもよい。いずれにしても、制御部128は、温度センサ142によって決定された温度が殺菌温度以上になるように混合弁138を制御する。エネルギー貯蔵器の内容物を殺菌温度に加熱することで、熱交換器116内の水も確実に殺菌温度に加熱されるのに対し、補助ヒータ136のみが使用される場合、熱交換器116内の水は殺菌温度に加熱されないことが理解されよう。
【0042】
制御部128が、(直接測定によって、または例えば補助ヒータに供給されるエネルギー量に基づいて)分配ネットワーク104に供給される湯が十分に高温であると判断すると、制御部128は、指定された使用者に第1の給湯口を開くことを指示するため、携帯端末126に信号を供給する。図1に示されるような分岐した給湯口では、最初に開かれる給湯口は、加熱器102から遠いよりもむしろ近い給湯口であることが好ましい。このようにして、事実上、分配ネットワークの最初の長さが殺菌され、殺菌された長さは、後続の各給湯イベントと共に増加する。例えば、図1に示す配置では、指定された使用者は、好ましくは、最初に給湯口106Aを開くように求められ、次に、順に106B、106C、106Dを開くように求められる。その後、第2の分岐部108”は、最初に給湯口106Kを開け、次に106Lを開け、次に106Mを開け、最後に106Nを開けることによって殺菌される。それぞれの場合において、制御部128は、好ましくは、146のような流量センサを用いて、水が給湯システムから確かに排出されていることを確認する。所定の殺菌期間の後、制御部128は、指定された操作者に、最初に開いた給湯口106Aを閉じ、その後、第2の給湯口106Bを開くように再び信号を提供する。制御部は、第1の給湯口を閉じる信号と、第2の給湯口を開く信号とを、単一のメッセージで送信してもよく、2つの別個のメッセージとしてもよい。この場合も、制御部128は、流量センサ146などの流量センサからの信号を監視して、湯が実際に排出されていることを確認する。所定の殺菌期間(第1の所定の殺菌期間と同じであってもよいし、同じでなくてもよい)が経過すると、制御部128は、再び、指定された使用者に、給湯口を閉じて次に移るように信号を送る。この場合も、給湯口を閉じるメッセージと、次の給湯口を開けるメッセージとは、一緒に送信されてもよいし、別々に送信されてもよい。信号の供給と流量監視は、好ましくは、給湯システムのすべての給湯口が必要な時間だけ開けられるまで続けられる。
【0043】
殺菌イベントの完了後、制御部128は、システム内の水に対する熱源114、加熱要素124、または補助ヒータ136の何れかからの余分な加熱を停止する。制御部はまた、その後、センサ142によって測定される、分配ネットワーク104に供給される水の温度が、再び、非スケーリング温度、例えば、イベント前の温度になるように、混合弁138を制御する。また、殺菌イベントの完了後、制御部128は、指定された使用者に殺菌イベントの完了を通知する。
【0044】
図2は、図1にほぼ対応しているが、この場合、分配ネットワークは、図1に図示されたより伝統的な幹管と分岐管の配置ではなく、温水循環ループの形態である。温水循環ループはポンプ200を含み、このポンプ200は各給湯口206に設けられた制御器210によって作動可能である。ポンプ200は、いずれかの制御ボタン210からの要求を受けてループを循環するように水を汲み上げる。このようなシステムでは、湯が開栓された蛇口に到達するまでの何秒間もの間、水を浪費しながら給湯蛇口を作動させる必要がなく、湯の到達に先立つ「冷水」が、再加熱を行う加熱器102に送り戻される。このようにして、無駄な水の量が削減されるだけでなく、「冷水」が主冷水供給源からの冷水の供給温度よりもかなり高い温度になる可能性があるため、エネルギー使用量も削減される可能性がある。通常、ポンプ200は、ループの末端にある温度センサ220が所定のシステム供給温度で湯が到達したこと検知するまで作動する。ほとんどの設備では、ポンプは約20秒から45秒以下しか作動しない。給湯システム用の冷水供給源120は、ポンプ200からの出力も受け取る弁230によって、加熱器102の入力側でループに供給される。逆止弁240は、ポンプにより加圧された水が加熱システムから冷水供給源に戻ることを防止するために、冷水供給源に含まれている。加熱器の制御部は、逆止弁240と弁230の中間にある冷水供給源の流量センサに接続してもよく、また、図1に示す設置例と同様に、補助ヒータ136がエネルギー貯蔵器の出口122のすぐ下流に設けられていてもよい。補助ヒータ136と温度センサ242の中間にある別の混合弁238は、システム制御部128が加熱器102によって供給される水の温度を調整できるようにするために、冷水供給源250に連結されている。
【0045】
図1の幹線と分岐管による分配システムとは異なり、温水循環ループでは、殺菌イベント中に給湯口を開く順序はそれほど重要ではない。とはいえ、殺菌イベント中は、ループに沿い順番に給湯口を開くことが望ましい。したがって、例えば、指定された使用者は、最初に給湯口206Aを開け、殺菌期間水を流し、給湯口206Aを閉じ、次に206Bを開け、最終的に給湯口206Hを開け、殺菌期間水を流し、次に給湯口206Hを閉じるまで、携帯端末126でメッセージを受信してもよい。図1を参照して説明した配置と同様に、制御部128は、熱源114、加熱要素124、補助ヒータ136、またはこれらのいくつかの組み合わせのいずれかを使用して殺菌温度まで加熱してもよい。殺菌工程は、ポンプ200を作動させても作動させなくてもよいが、無駄な水の量を減らすためには、ポンプ200を作動させることが好ましい。
【0046】
ヒートポンプの適用性に関する多くの制約の一つは、給湯需要を満たす能力が比較的限られていることであり、少なくともコンビボイラーのような瞬間式ガス・電気湯沸かし器と比較した場合、それらの空間暖房用の熱源としての長所と比較すると、その能力は限られている。先に述べたように、英国の一般的な大きさの住宅では、空間暖房需要は6kWと低いことが普通である一方、ガスコンビボイラーは、1、2寝室の控えめなアパートであっても、瞬間湯沸かし用として20kWから30kWを供給できることが普通である。6kWのスペース暖房需要は、欧州では空気熱源ヒートポンプでも容易に達成可能であるが、20kWから30kWを供給できるユニットは、許容できないほど大きく高価になる。ヒートポンプは、家庭用給湯への適用に関してさらなる制限を受け、ヒートポンプが作動信号を受信してから、湯が実際にヒートポンプから供給されるまでの間に長いタイムラグがある。一般的に、このタイムラグは1分以上、時には2分以上にもなる。一見大したことはなさそうに思えるが、家庭で最もよく使われる湯の用途の一つである手洗いの場合、湯が出るまでの平均時間が30秒から1分であることを考えると、ヒートポンプには克服しなければならない大きなハードルがあることがわかる。通常、この問題には貯湯タンクに湯を貯めておき、オンデマンドで利用できるようにすることで対処する。しかし、この解決策は、現在ガスコンビネーションボイラーを使用している英国の1つ、2つ、そして3つの寝室がある住宅のような小規模住宅には魅力的ではなく、外部貯湯タンクなしで設置されているのがほとんどである。
【0047】
要求、特に家庭における熱の要求に対するヒートポンプの適用性を向上させる可能性のある技術のひとつに、湯の貯蔵ではなく、熱エネルギーの貯蔵がある。
【0048】
このような熱エネルギー貯蔵の代替形態は、相変化材料(PCM)の使用である。その名が示すように、相変化材料は熱により相変化が生じ、PCMを相転移温度まで加熱すると、エネルギーが(顕熱ではなく)潜熱として貯蔵される。多くの異なるPCMが知られており、特定の用途のための選択は、とりわけ、必要な動作温度、コストの制約、安全衛生上の制約(PCMの毒性、反応性、可燃性、安定性などを考慮し、PCMの封じ込めに必要な材料などにこれらが課す制約)によって決定される。PCMを適切に選択すれば、ヒートポンプからのエネルギーが(家庭用)給湯システムの水を瞬時に加熱できるように熱エネルギー貯蔵器を設計することができ、それによってかさばる湯タンクを必要とせずに、ヒートポンプの使用に固有のスロースタートの問題を解決するのに役立つ。
【0049】
ここで、PCMの使用に基づく、特にヒートポンプが給湯の水を加熱するために使用される設備に適したエネルギー貯蔵器を紹介し、説明する。このようなエネルギー貯蔵器は、筐体を有する熱交換器と、筐体内の、ヒートポンプなどのエネルギー源に接続するための入口側流路と、給湯設備などのエネルギーシンクに接続するための出口側流路と、エネルギーを貯蔵するための相変化材料とを含んでもよい。
【0050】
入口側流路は、熱源(この場合はヒートポンプ)によって加熱された液体を受け取り、その液体が熱交換器内の材料よりも高温であれば、エネルギーは液体から熱交換器内の材料に伝達される。同様に、熱交換器内の材料からのエネルギーは、液体が熱交換器内の材料よりも低温であれば、出口側流路内の液体に伝達される。もちろん、出口側流路に流れがない場合、熱交換器から移動するエネルギー量は制限されるため、入力エネルギーのほとんどは熱交換器内に留まる。我々のケースでは、熱交換器には相変化材料、例えばパラフィンワックスや塩水和物(適切な材料の例は後述)が含まれ、入力エネルギーの大部分がPCMに伝達される。相変化材料とヒートポンプの動作温度を適切に選択すれば、ヒートポンプからのエネルギーを使用して、PCMに代表されるエネルギー「バンク」を「充電」することが可能になる。任意で、ヒートポンプからのエネルギー供給は、熱交換器に1つ以上の電気加熱要素を含めることによって補完することができ、加熱要素は、システムのプロセッサによって制御され、例えば、電力供給に低コストの料金が適用される場合、または例えば、風力発電、水力発電、太陽光発電などの地域または家庭での電力生産が、給湯に対する予想されるまたは望まれる将来の必要性がある場合に、「安価な」エネルギーを提供することができる場合に使用される。
【0051】
相変化材料を使用するシステムを設計する際に考慮しなければならない相変化材料の特徴の1つは、相間の遷移に伴う体積変化であり、例えば、固体と液体の間の相変化では膨張し、液体と固体の間の相変化では収縮する。通常、体積変化は10%程度である。この体積変化は、相変化材料を収容するために使用される筐体の慎重な設計によって対応しなければならない欠点と考えることができるが、体積変化を積極的に利用することもできる。PCM筐体内の圧力の測定を提供する1つ以上のセンサを含めることにより、プロセッサが相変化材料の状態を決定することができるデータをプロセッサに提供することができる。例えば、プロセッサは相変化材料のエネルギー貯蔵値を決定することができる。
【0052】
相変化材料のエネルギー貯蔵量を決定する手段としての筐体内圧力の測定に加えて、またはその代替として、相変化に伴ってPCMに生じる光学特性または音波特性の変化を利用することも可能である。これらの代替アプローチの例については後述するが、まずはPCMのエネルギー貯蔵状態に関する情報を収集する手段としての圧力検知の使用について検討する。
【0053】
図3は、熱交換器を含むエネルギーバンク10を概略的に示しており、エネルギーバンクは筐体110を備えている。筐体110内には、エネルギー源(ここではヒートポンプ16として示す)に接続するための熱交換器の入口側流路112と、エネルギーシンク(ここでは冷水供給源20に接続され、1つ以上の給湯口22を含む給湯システムとして示す)に接続するための熱交換器の出口側流路116がある。筐体12内には、エネルギーを貯蔵するための相変化材料がある。エネルギーバンク10はまた、PCMの状態を示す測定値を提供するために、1つ以上の状態センサ24を含む。例えば、状態センサ24の1つ以上は、筐体内の圧力を測定するための圧力センサであってもよい。好ましくは、筐体はまた、相変化材料(PCM)内の温度を測定するための1つ以上の温度センサ26を含む。好ましいように、複数の温度センサがPCM内に設けられる場合、これらは、好ましくは、熱交換器の入口側流路および出口側流路の構造から間隔をあけて配置され、PCMの状態の良好な「画像」を得るためにPCM内に適切な間隔をあけて配置される。
【0054】
エネルギーバンク10は、プロセッサ129を含む関連システム制御部128を有する。制御部は、エネルギーバンク10に一体化されてもよいが、より典型的には別個に取り付けられる。制御部28はまた、一体型または別体のユニットとして、または制御部28を含む本体に着脱可能に取り付けられるユニットとして、ユーザインターフェースモジュール31を備えることもできる。ユーザインターフェースモジュール31は、通常、例えばタッチセンシティブディスプレイの形態の表示パネルおよびキーパッドを含む。ユーザインターフェースモジュール31は、制御部28から分離または分離可能な場合、制御部28のプロセッサ30とユーザインターフェースモジュールが互いに通信できるように、無線通信機能を含むことが好ましい。ユーザインターフェースモジュール31は、システムステータス情報、メッセージ、アドバイス、および警告を使用者に表示し、使用者入力および使用者コマンド(開始および停止指示、温度設定、システムオーバーライドなど)を受信するために使用される。
【0055】
状態センサは、温度センサ26が存在する場合、同様にプロセッサ129に接続されている。プロセッサ30はまた、有線接続を介して、または関連するトランシーバ34および36を使用して無線で、あるいは有線接続および無線接続の両方を通じて、ヒートポンプ16内のプロセッサ/制御部32に接続される。このようにして、システム制御部28は、ヒートポンプ16の制御部32に、開始命令や停止命令などの命令を送信することができる。同様に、プロセッサ30は、ヒートポンプ16の制御部32から、ステータス更新、温度情報などの情報を受信することもできる。
【0056】
給湯設備は、給湯システム内の流量を測定する1つ以上の流量センサ38も含む。図示のように、このような流量センサは、システムへの冷水供給源20、および熱交換器の出口側流路18の出口間に設けることができる。任意で、1つ以上の圧力センサも給湯システムに含めることができ、この場合も、圧力センサー(複数可)は、熱交換器/エネルギーバンクの上流、および/または熱交換器/エネルギーバンクの下流に、例えば、1つ以上の流量センサ38の1つ以上と並んで設けることができる。各流量センサ、各温度センサ、および各圧力センサは、例えば1つ以上の無線送受信機またはトランシーバ40を使用して、有線接続または無線接続のいずれかまたは両方でシステム制御部28のプロセッサ30に接続される。様々なセンサ24、26、38の性質によっては、システム制御部28のプロセッサ30によって問い合わせ可能である場合もある。
【0057】
任意で、図示のように、エネルギーバンク10は、筐体12内に、システム制御部28のプロセッサ30によって制御されエネルギーバンクを再加熱するためにヒートポンプ16の代替として使用されることがある電気加熱要素114を含むことができる。
【0058】
図3は単なる概略図であり、給湯設備へのヒートポンプの接続を示しているに過ぎない。世界の多くの地域では、湯だけでなく空間暖房の必要性もあることが理解されよう。通常、ヒートポンプ16は空間暖房にも使用される。ヒートポンプが空間暖房を提供し、温水暖房のためにエネルギーバンクと協働する例示的な配置については、本明細書で後述する。説明を簡単にするために、例えば図1から図3に示されるような、本発明の一側面によるエネルギーバンクの運転方法に関する以下の説明は、関連するヒートポンプが空間暖房を提供するか否かにかかわらず、エネルギーバンクの設置に等しく適用される。
【0059】
図4は、建物内給湯設備400を概略的に示し、これは、図1に図示され、図1を参照して説明されたものに概ね対応している。建物内給湯設備400は、複数の制御可能な給湯口(後でより詳細に説明される様々な蛇口およびシャワー)と、制御可能な流出温度を有する少なくとも1つの出口407を有する給湯源405と、給湯源405と複数の制御可能な出口との間の水流路において、流出温度を検出する少なくとも1つの第1の温度センサ409と、少なくとも1つの流量測定器410と、少なくとも1つの流量調整器415とを備える。プロセッサ440は、少なくとも1つの流量測定器410および少なくとも1つの流量調整器415に動作可能に接続されている。図示された給水設備は、マスターバスルーム421、第1のエンスウィートシャワールーム422、第2のエンスウィートシャワールーム423、クロークルーム424、およびキッチン425を有する住居を表している。マスターバスルームと第1のエンスイートシャワールームは住居の同じ階にあり、クロークルーム、第2のエンスイートシャワールームおよびキッチンは住居の別の階にあってもよい。このような状況では、図示のように、2つの別個の流路430と431を設けて、様々な給湯口に水を供給するのが便利であろう。2つの流路430および431は、1つの温度センサ409を備えた給湯源からの1つの出口407から供給されるように示されているが、2つの流路430および431は、それぞれ異なる出口407から供給されてもよく、2つの出口407の温度は別々に調節可能であり、各出口407は、それ自身の関連する温度センサ409を有することが理解されるであろう。出口407の水の温度は、温度が固定または可変である供給源からの冷水と温水を混合することによって調整してもよく、電気加熱要素やガス炊きヒータなどの熱源に投入されるエネルギーを制御することによって調整してもよい。後に、一般にヒートポンプと組み合わせたPCMエネルギー貯蔵装置を含む給湯システムについて説明するが、このようなシステムでは一般に、冷水供給源からの冷水を異なる割合で混合することによって給湯温度を調整することができる。時には、このようなシステムは、システムのプロセッサによって制御されるPCMエネルギー貯蔵装置の下流に瞬間的な熱源(電気加熱要素など)を含むことがあり、このような設備では、給湯温度の制御は、瞬間湯沸かし器に供給されるエネルギー量の制御を含むことがあり、また冷水供給源からの冷水を異なる割合で混合することによって制御されてもよい。
【0060】
マスターバスルーム421は、シャワー給湯口435、バスタブ用蛇口または水栓436、およびシンク用蛇口437を含むものとして示されている。エンスイートシャワールーム422と423も、シャワー給湯口435と、シンク用の蛇口437を含む。逆に、クロークルームには、トイレ(図示せず)と蛇口438付きの洗面台があるだけである。最後に、キッチンには蛇口439付きのシンクがある。
【0061】
関連するメモリ441を備えたプロセッサ、またはシステム制御部440が、少なくとも1つの流量測定器410および少なくとも1つの流量調整器415に結合されている。2つの回路430および431の各々は、それぞれの流量測定器410および流量調整器415を備えることが理解されよう。プロセッサはまた、任意に、流路430および431の各々に対して1つずつ配置されている、1つ以上の温度センサ443に接続される。このプロセッサは、先に説明したようなエネルギーバンクに関連してもよい。
【0062】
プロセッサはまた、Wi-Fi、Bluetoothなどを介した双方向通信のために、少なくとも1つのRF送信機および少なくとも1つのRF受信機を含むRFトランシーバ442に接続されてもよく、好ましくは、サーバまたは中央局445への接続のためにインターネット444にも接続されてもよく、任意選択でセルラー無線ネットワーク(LTE、UMTS、4G、5Gなど)にも接続されてもよい。RFトランシーバ442および/またはインターネットへの接続によって、プロセッサ440は、例えばスマートフォンまたはタブレットであってもよい携帯端末450と通信することができ、これは、建物内給水設備の設定(および任意でマッピング)において設置エンジニアが使用するためである。携帯端末450は、システム制御部440内の対応するソフトウェア、および潜在的にはサーバ445内の対応するソフトウェアと協働する、特定のアプリなどのソフトウェアを含み、本発明の実施形態による設定(および任意でマッピング)方法を容易にし、特に、エンジニアによって行われるアクションをシステム制御部440/サーバ445のクロックに同期させる。メモリ441は、例えば、新しい設備を試運転するプロセス中に、プロセッサが建物内給水設備のプロセッサを構成する(および任意でマッピングする)方法を実行することを可能にするコードを含む。
【0063】
試運転プロセスにおいて、給湯設備400を構成するために、エンジニアは、特定の給湯口、例えば、特定の蛇口またはシャワー出口の真下に温度センサを設置し、特定の瞬間に出口を全開にするよう求められることがある。システムプロセッサは、流量、流出温度と供給温度の差、時間遅れ、そして好ましくは外気温(外部温度センサから供給されるデータ)を測定するように構成される。これにより、アルゴリズム(例えばMLA)は、給湯システムを通る熱損失、給湯口(蛇口またはシャワー給湯口)と湯の供給源との間の距離を計算し、最終的に、関連する制御可能な給湯口(例えば蛇口)で正しい水温を達成するために、407の流出温度を正確に調整することができる。例えば、家庭内に子供がいる場合、例えばキッチンシンク以外の全ての出口への最高湯温は40℃または41℃に制限されてもよく、一方、家庭内に幼児がいる場合、最高温度は37℃に制限されてもよい。子供がいない場合でも、キッチンシンク以外のすべての給湯口の最高温度は43℃に設定され、シャワー給湯口については41℃に設定されてもよい。
【0064】
システムはまた、洗面所やシンク、場合によってはシャワーなど、いくつかのクラスの給湯口への湯の流量を制限するように設定することができ、給湯口のクラスごとに異なる最大流量が設定され、および/または、特定の給湯口に対して特定の最大流量が設定されることもある(例えば、子供が使用する浴室やクロークには低い流量が設定される)。最高温度と流量の決定は、システム供給者が提供する規則に基づいて行われる。後に、ヒートポンプとPCMベースのエネルギー貯蔵を利用した給湯システムについて説明するが、このようなシステムでは、一般的に、そこそこの大きさの1~3つの寝室を有する住宅の暖房需要に合わせたサイズのヒートポンプでは、大量の貯湯タンクを用意しなければ、家庭の瞬間的な給湯需要を満たすだけの加熱能力がないため、温度と流量の制御を行うことで大きなメリットが得られる。湯の流量と温度を管理することで、貯湯の必要性をなくし、他の手段で対応すべきエネルギー不足の大きさを最小限に抑えることができる。設備にPCMエネルギー貯蔵装置とヒートポンプが含まれる場合、システムサプライヤーは通常、給湯口のタイプと世帯構成に基づいて、温度と流量に適した値をプロセッサにあらかじめプログラムしておく。
【0065】
給湯口のタイプおよび世帯構成に基づく温度および任意で流量のデータベースは、インターネットを介してシステム制御部が使用可能であってもよく、随時更新されてもよい。システム制御部のユーザインターフェースは、居住者やサービスエンジニアが、世帯構成の変化(例えば、乳幼児、子供、高齢者、衰弱者を連れたゲストの到着など)に応じて様々な設定を調整するための手段を提供することができる。
【0066】
図5は、図4を参照して説明したような、複数の制御可能な給湯口、例えば複数の蛇口、および1つ以上のシャワー給湯口を有する温水供給設備を構成するこのような方法を概略的に示している。設備のエネルギー使用効率を向上させるために、本システムのプロセッサは、各給湯口の下に順番に配置される携帯型温度センサ800(ただし、全ての給湯口に対して同じセンサを使用するのではなく、複数のセンサを使用してもよいことは明らかである)と組み合わせて使用される。
【0067】
設置者は、例えばスマートフォンのアプリや、その他の無線送受信ユニット(WTRU)を持っていて、プロセッサから、設置者に該当する蛇口を開けるように、できればできるだけ早く最大開度まで開けるように指示する命令を受信してもよい。
【0068】
したがって、図5の時間に対する流量のプロットに示されるように、(一度に1つの出口のみが開かれるため)給湯口を通る流量および給湯システムを通る流量がゼロからT1で最大になるまでに、設置者の反応時間による初期ラグ(時間T0からT1)がある(最大は、給湯システムの各給湯口に固有で異なる可能性がある)。あるいは、設置者はWTRU、またはより一般的にはWTRU上のアプリを使用して、合意/特定された蛇口が今開けられていることをプロセッサに通知してもよい。
【0069】
いずれの場合も、プロセッサは、制御可能な流出温度を有する給湯口を有する湯源405の出口407の温度センサ409からの情報も受信する。携帯型温度センサ800はまた、好ましくは、内部クロック(好ましくは、プロセッサのシステム時間に同期される)と、遠隔プロセッサ440に時間および温度情報を通信するためのRF(例えば、Wi-Fi、Bluetooth、またはIMS)機能を含む。図2の時間に対する温度のプロットは、携帯型センサ800によって感知された温度が、最初は低いままであり、その後上昇し、時間T1のしばらく後の時間T2に安定した最大値に達する様子を示している。また、携帯型センサ800によって感知された最大検出温度(時間T1からT3まで)は、制御可能な流出温度を有する湯源の出口407における温度よりも、ΔTだけ低いことが分かる。
【0070】
温度センサ800は、それが収集するデータ(時間対温度)がイベント後にのみシステムプロセッサ440に提供されるように、すなわち、有線ダウンロードプロセスによって、またはNFCを使用して提供されるように構成されてもよいが、これは一般に、すでに説明したように直接RF通信を提供するよりも満足度が低いことが理解されよう。
【0071】
給湯システムを構成する方法、および給湯設備から供給される水の温度を制御する方法に関する前述の説明は、適用を容易にするために意図的に単純なものとしたが、これらの方法は、PCMエネルギー貯蔵装置およびヒートポンプのような「グリーンな」熱源を含む設備にも同様に適用されることを理解されたい。
【0072】
図3に戻り、筐体内の圧力を測定するために1つ以上の状態センサ24を設ける替わりに、またはそれに加えて、PCMの透明度、吸収、屈折、屈折率などの光学特性を測定するために他の種類のセンサを設けることができる。さらに、これらの特性の様々なものは、位相の変化とともに変化する波長依存性を示すことがある。
【0073】
したがって、エネルギーバンクは、相変化材料に光を発射するための1つ以上の光源をさらに含んでもよく、1つ以上の状態センサ24は、光が相変化材料を通過した後に光源(複数可)から発射された光を検出するための光検出器を含んでもよい。相変化材料における相間の変化は、相変化材料の光学特性における可逆的な変化を生じさせ、したがって、PCMの光学特性を観察することは、PCMの状態に関する情報を得るために使用することができる。好ましくは、PCMの光学特性はPCMの複数の領域で、好ましくは材料内の異なる方向で観察される。例えば、光源およびセンサは、光源からの光が1つ以上の位置でPCMを長さ方向に通過するように配置されてもよく、他の光源およびセンサは、光源からの光が1つ以上の位置でPCMを幅方向に通過し、1つ以上の方向(幅方向および厚さ方向)で通過するように配置されてもよい。
【0074】
光源は、異なる色の光を生成するように制御可能であり、光検出器は、異なる色の少なくともいくつかを検出するように構成される。あらゆる用途に選択された特定のPCMに基づいて適切な色の光を選択することにより、PCMの位相が変化した程度をより正確に決定することができる。
【0075】
好ましくは、光源は、別々に作動可能な複数の装置から構成される。
【0076】
光学的検知器を、光学的検知器から受信した情報に基づいて相変化材料に蓄積されたエネルギー量を推定するように構成されたプロセッサに結合することにより、PCM内に潜熱として蓄積されたエネルギー量を決定する手段が提供され、この情報をヒートポンプの制御に使用することができる。特に、このような情報により、PCMエネルギーバンクの蓄熱におけるヒートポンプのより効率的で適切な使用が可能になることがある。
【0077】
さらなるオプションとして、相変化材料に潜熱として蓄積されたエネルギー量を示す測定データを提供するための1つ以上の状態センサ24は、相変化材料に音を発射するように構成された音源と、音が相変化材料を通過した後に音源から発射された音を検出する音検出器とを含むことができる。相変化材料の相間の変化は、相変化材料の吸音特性に可逆的な変化を生じさせるため、PCMの音響特性を観察することにより、PCMの状態に関する情報を得ることができる。音源は超音波を発生するように構成してもよい。
【0078】
図4および図5を参照して説明した試運転プロセス中に、エンジニアは、プロセッサ/システム制御部440によって、すべての給湯口(例えば、蛇口、シャワー、浴槽、台所用)を定義すること、言い換えれば、システムをマッピングすることを求められることもある。このプロセスでは、システム制御部は、エンジニアに、各給湯口(蛇口、シャワー給湯口など)を順番に完全に開き、それぞれを閉じてから次の給湯口を開くように要求し、関連する流量測定器410によって、結果として生じる水の流れを監視する。このプロセスの間、関連する流量測定器410は水流を測定し、プロセッサはこれらのデータを受け取り、その結果をデータベースに追加する。この情報に基づいて、システムは、その後、いずれかの給湯口が開かれたときに、関連する流量調整器415を制御することによって、各単一の蛇口に最も効率的な流量を供給することができる。
【0079】
次に、本開示の第1の側面による建物内給水設備のマッピング方法を、図4を参照して説明する。
【0080】
この方法は、複数の制御可能な給湯口のうちの第1の給湯口を開き、少なくとも第1の流量特性が決定されるまで、少なくとも1つの流量測定器410からの信号をプロセッサ440で処理し、その後、複数の制御可能な給湯口のうちの第1の給湯口を閉じることを含む。複数の制御可能な給湯口のうちの第1の給湯口の開放は、好ましくは、プロセッサまたはシステム制御部440が、関連するエンジニアが携帯する携帯端末450にメッセージを送信することによって指示される。例えば、命令はWi-Fiによって送信され、マスターバスルーム421の湯用の蛇口436を開けるようにエンジニアに伝えることができる。携帯端末450を携帯したエンジニアは、マスターバスルームに行き、湯用の蛇口436を全開にする。携帯端末は、エンジニアにいつ正確に蛇口を開けるかを伝えるために、好ましくは可聴でカウントダウンを伴うプロンプトを提供してもよい。あるいは、携帯端末上のアプリは、蛇口436が開かれる瞬間に、ボタンの押下または解放などのエンジニアからの入力を受け付けるように構成されてもよい。いずれの場合も、アプリは、プロンプトまたはその瞬間のローカル時刻を取得し、次に、このローカル時刻を、関連する制御可能な給湯口の識別情報とともに、システム制御部440またはサーバ445に送信することができる。このようにして、携帯端末450に到達するプロンプトの遅延、または制御部440またはサーバ445に到達する命令のタイミングの遅延に対応することができる(携帯端末450およびシステム制御部440は、好ましくは、マッピングプロセスの前または後のいずれかで、何らかのハンドシェイク工程を経るので、2つのデバイスのクロック間のオフセットは排除されるか、またはそれらに対応することができる)。
【0081】
その後、エンジニアは、アプリ上のリストまたはメニューから給湯口の識別情報を選択するか、または明確な識別情報を入力して、各給湯口を順番に開きながら、構内を回ることができる。あるいは、システム制御部には、すべての蛇口などのリスト(一般に「制御可能な給湯口」)がすでに提供されており、携帯端末450に別のメッセージを送信することによって、エンジニアに関連する給湯口に行くように促すこともできる。このアプリは、好ましくは、エンジニアがシステム制御部440/サーバ445に、所定の位置にいて、次の制御可能な給湯口を開ける指示を受け取る準備ができているというメッセージを送信するためのオプションを含む。そして、すべての給湯口とその流量特性、すなわち流量が検出されるまでの遅れ、流量の上昇率、最大流量、およびその他の識別可能な特性が捕捉され、データベースに保存されるまで、他の給湯口のそれぞれについてこのプロセスが繰り返される。データベースに格納された特性を使用することにより、プロセッサ440は、その後、検出された流量特性とそれぞれの流量特性との類似性に基づいて、複数の制御可能な給油口のうちの特定の1つの給油口の開放を認識することができる。
【0082】
また、プロセッサは、給湯口のタイプ(風呂の蛇口、台所の蛇口、洗面台の蛇口、クロークの蛇口)およびその場所(例えば、メインの浴室、バスルーム、子供部屋、大人の部屋、クローク、台所)に基づいて、好ましい流量および任意で流量の持続時間に関するいくつかの規則を備え、これらの規則を、検出された流量特性から認識される給湯口の識別情報と共に使用して、目標流量を決定する。そして、目標流量は、システム制御部440によって、関連する流量制御器415を制御することによって設定され、好ましくは、対応する流量測定器410によって監視される。このようにして、関連する給湯口の識別に基づいて少なくとも1つの流量調整器を制御することにより、プロセッサ440は、識別された制御可能な給湯口への水の供給を制御することができる。
【0083】
それぞれの流量特性は、それぞれの安定した流量を含んでもよい。そして、本方法は、プロセッサ440を、それぞれの安定流量に基づいて、複数の制御可能な給湯口の各々への流量について少なくとも10%カットを課すように少なくとも1つの流量調整器415を制御するように構成することをさらに含んでもよい。任意で、本方法は、それぞれの安定流量に基づいて、それぞれの安定流量が毎分7リットルより大きい複数の制御可能な給湯口のいずれかに、少なくとも10%の流量カットを課すように少なくとも1つの流量調整器415を制御するようにプロセッサ440を構成することをさらに含んでもよい。これは、特に、バスルーム、スイートルーム、特にクロークルームの洗面台で使用される蛇口に適用されるものであり、蛇口は、手洗い用の水(かなり控えめな流量で効果的に達成することができる)を供給するために使用されることが多い。
【0084】
給湯設備のマッピングについての上述した技術は、データベースに入力するため、またはニューラルネットワークまたは機械学習アルゴリズム(MLA)などのロジックを訓練するために使用されてもよく、このロジックは、前述のようにエネルギーバンクに関連付けられたプロセッサによって使用されてもよく、これにより、プロセッサは、検出された流量挙動から特定の給湯口または給湯口タイプを特定し、給湯設備からの給湯需要をより容易に推定することができる。これにより、ヒートポンプの制御効率やエネルギーバンクの使用効率が向上する。
【0085】
説明したマッピングプロセスから学んだ知識は、もちろん、図1を参照して説明した殺菌プロセスに利用することができ、特に、各給湯口の殺菌時間(例えば、流出持続時間)を最適化するために利用することができる。
【0086】
エネルギーバンクと、給湯設備におけるエネルギーバンクの設置、運転について説明してきたが、次にエネルギーバンクとヒートポンプを、給湯設備と暖房設備の両方にどのように組み込むかについて検討する。
【0087】
図6は、本開示の一態様によるインターフェースユニット10の構成要素の配置の可能性を概略的に示している。インターフェースユニットは、ヒートポンプ(この図には示されていない)と建物内給湯システムとの間のインターフェースとなる。インターフェースユニットは、筐体(別途番号を付さない)を備える熱交換器12を含み、この筐体内には、ヒートポンプに接続するための、非常に簡略化した形で14として示す入口側流路と、建物内給湯システム(この図には示さない)に接続するための、やはり非常に簡略化した形で16として示す出口側流路とがある。熱交換器12には、エネルギーを貯蔵するための蓄熱媒体も含まれているが、これは図には示されていない。これから図6を参照して説明する実施例では、蓄熱媒体は相変化材料である。インターフェースユニットは、先に説明したエネルギーバンクに相当することが理解されよう。特許請求の範囲を含む本明細書を通じて、エネルギーバンク、蓄熱媒体、エネルギー貯蔵媒体および相変化材料への言及は、文脈上明らかにそうでないことが要求されない限り、交換可能であると考えられるべきである。
【0088】
通常、熱交換器の相変化材料は、2~5Mジュールのエネルギー貯蔵容量(融解潜熱によって貯蔵されるエネルギー量)を持つが、それ以上のエネルギー貯蔵も可能であり、有用である。もちろん、より少ないエネルギー貯蔵量も可能であるが、一般的には、(物理的寸法、重量、コスト、安全性に基づく実用的な制約条件に従って)インターフェースユニット10の相変化材料におけるエネルギー貯蔵の可能性を最大化することが望まれる。適切な相変化材料とその特性、および寸法などについては、本明細書で後述する。
【0089】
入口側流路14は、ノード20から、ヒートポンプからの供給に接続するためのカップリング24を有するパイプ22の順に経て供給されるパイプまたは導管18に接続される。ノード20はまた、ヒートポンプからの流体をパイプ26に送り、このパイプ26は、例えば、床暖房やラジエーター、あるいはその両方への配管などの、家屋やアパートの暖房ネットワークに接続するためのカップリング28で終端する。従って、インターフェースユニット10が完全に設置され作動すると、ヒートポンプ(家屋またはアパートの外部にある)によって加熱された流体は、カップリング24を通り、パイプ22に沿ってノード20に至り、そこから三方弁32の設定に応じて、流体の流れはパイプ18に沿って熱交換器の入口側流路14に至り、またはパイプ26に沿って、カップリング28を通って家屋またはアパートの暖房インフラに至る。
【0090】
ヒートポンプからの加熱流体は、熱交換器の入口側流路14を通り、パイプ30に沿って熱交換器12から流出する。使用中、ある状況下では、ヒートポンプからの加熱流体によって運ばれる熱は、そのエネルギーの一部を熱交換器内の相変化材料に、一部を出口側流路16内の水に与える。他の状況では、後で説明するように、熱交換器の入口側流路14を流れる流体が相変化材料から実際に熱を取得する。
【0091】
パイプ30は、入口側流路14を出た流体を電動三方弁32に送り、弁の状態に応じてパイプ34に沿ってポンプ36に送り出す。ポンプ36は、カップリング38を介して外部ヒートポンプに流れを押し出す役割を果たす。
【0092】
電動三方弁32はまた、カップリング42を介して、家屋またはアパートの暖房インフラ(例えば、ラジエーター)から戻る流体を受けるパイプ40からも流体を受ける。
【0093】
電動三方弁32とポンプ36の間には、温度変換器44、流量変換器46、圧力変換器48の3つの変換器が設けられている。さらに、温度変換器49が、ヒートポンプの出力から流体を取り入れるパイプ22に設けられている。これらの変換器は、インターフェースユニット10内の他のすべての変換器と同様に、通常はインターフェースユニットの一部として提供されるが、別個のモジュールに提供することもできる、図示されていないプロセッサに動作可能に接続されているか、またはそのプロセッサによってアドレス指定可能である。
【0094】
図6には図示されていないが、ヒートポンプの出口から流体を受け取る連結器24の間の流路に、追加の電気加熱要素を設けることもできる。この追加の電気加熱要素は、再び誘導加熱要素または抵抗加熱要素であってもよく、ヒートポンプの潜在的な故障を補償する手段として提供されるだけでなく、(例えば、現在のエネルギーコスト、および暖房および/または給湯の予測に基づいて)蓄熱ユニットにエネルギーを追加するために使用することも可能である。追加の電気加熱要素も、もちろんシステムのプロセッサによって制御可能である。
【0095】
また、パイプ34には膨張容器50が接続されており、この膨張容器50には、加熱流路内の流体を補充するための充填ループが接続される弁52が接続されている。また、インターフェースユニットの加熱流路の一部として、ノード20と入口側流路14の中間にある圧力開放弁54と、カップリング42と三方弁32の中間にあるストレーナ56(粒子状汚染物質を捕捉する)が示されている。
【0096】
熱交換器12はまた、図示のように、より多く(例えば最大4つ以上)備えることが好ましいが、少なくとも1つの温度変換器58を含む複数の変換器と、圧力変換器60を備える。図示の例では、熱交換器には相変化材料内に均一に分布した4つの温度変換器が含まれており、温度変化を測定することができる(したがって、相変化材料の容積全体の状態に関する知識を得ることができる)。このような設備は、追加的な伝熱設備の最適化も含む、熱交換器の設計を最適化する手段として、設計/実装段階において特に有益である。しかし、このような設備は、複数のセンサを有することで、プロセッサおよびプロセッサ(インターフェースユニットのみ、および/またはインターフェースユニットを含むシステムのプロセッサのいずれか)によって採用される機械学習アルゴリズムに有用な情報を提供することができるため、配備されたシステムにおいても引き続き利益をもたらす可能性がある。
【0097】
次に、インターフェースユニット10の冷水供給源と給湯流路の配置について説明する。カップリング62は、水道本管からの冷水供給源に接続するために設けられている。通常、水道本管からの水がインターフェースユニット10に到達する前に、水は反サイフォン逆止弁を通過し、圧力が低下している可能性がある。冷水はカップリング62からパイプに沿って熱交換器12の出口側流路16に流れる。インターフェースユニット内の多数のセンサを監視するプロセッサを提供することを考えると、同じプロセッサに、任意でもう1つのするべきタスクを与えることができる。それは、主給水源からの冷水の供給圧力を監視することである。この目的のために、カップリング62の上流、特に設備内の減圧装置の上流の冷水供給ラインに、さらなる圧力センサを導入することができる。プロセッサは、供給される水圧を継続的または定期的に監視し、水道本管が法定最低圧力を下回る圧力で水を供給する場合、所有者/使用者が水道会社に補償を求めるよう促すこともできる。
【0098】
熱交換器を通過することによって加熱された水が、出口側流路16からパイプ66を通って電気加熱ユニット68に送られる。前述したプロセッサの制御下にある電気加熱ユニット68は、プロセッサからの指示に従って熱出力を調節することができる抵抗加熱または誘導加熱装置を備えてもよい。
【0099】
プロセッサは、相変化材料およびヒートポンプの状態に関する情報に基づいて、電気ヒータを制御するように構成される。
【0100】
典型的には、電気加熱ユニット68は、10kW以下の定格電力を有するが、状況によっては、より強力な、例えば12kWのヒータを設けてもよい。
【0101】
今度は湯が電気ヒータ68からパイプ70を通ってカップリング74に至り、このカップリング74に家屋やアパートの蛇口やシャワーなどの制御可能な給湯口を含む給湯流路が接続される。
【0102】
温度変換器76は、電気ヒータ68の後、例えば電気ヒータ68の出口に設けられ、給湯システムの給湯口の水温に関する情報を提供する。圧力逃し弁77も給湯設備に設けられ、これは電気ヒータ68と給湯口温度変換器76の間に位置するように示されているが、図6に示された多くの部品がそうであるように、その正確な位置は重要ではない。
【0103】
また、給湯ラインのどこかには、圧力変換器79と流量変換器81があり、そのいずれかをプロセッサが使用して、給湯の要求を検知する、すなわち、蛇口やシャワーなどの制御可能な給湯口が開いたことを検知することができる。流量変換器は、可動部のないもの、例えば音波式流量検出器や磁気式流量検出器などが好ましい。プロセッサは、これらの変換器の一方または両方からの情報を、記憶されたロジックと共に使用して、ヒートポンプに始動信号を送るかどうかを決定することができる。
【0104】
プロセッサは、空間暖房の需要(例えば、プロセッサ内または外部制御部に保存されたプログラムに基づいて、および/または1つ以上のサーモスタット(例えば、部屋のスタット、外部のスタット、床暖房のスタット)からの信号に基づいて)または湯の需要に基づいて、ヒートポンプの起動を要求できることが理解されよう。ヒートポンプの制御は、単純なオン/オフコマンドの形態であってもよく、同様にまたは代替的に、(例えばModBusを使用した)変調の形態であってもよい。
【0105】
インターフェースユニットの加熱流路と同様に、冷水供給パイプ64に沿って、温度変換器78、流量変換器80および圧力変換器82の3つの変換器が設けられている。別の温度変換器84も、熱交換器12の出口側流路16の出口と電気ヒータ68の中間のパイプ66に設けられている。これらの変換器は、やはりすべて、前述したプロセッサに動作可能に接続されているか、またはアドレス可能である。
【0106】
また、冷水供給ライン64上には、磁気式または電気式の水調整器86、電動式で調節可能な弁88(これは、すべての電動式弁と同様に、先に述べたプロセッサによって制御されてもよい)、逆止弁90、および膨張容器92が示されている。調節可能な弁88は、湯の所望の温度(例えば温度変換器76によって測定される)を維持するために、冷水の流れを調節するように制御することができる。
【0107】
弁94と96はまた、それぞれ冷水と温水を貯蔵するための外部貯蔵タンクに接続するために設けられている。最後に、二重逆止弁98は、冷水供給管64を加熱流路に多くの水または水と腐食防止剤の混合物を充填するために、前述の弁52に接続する充填ループと共に使用することができる別の弁100に接続する。
【0108】
図6には、交差する様々なパイプが示されているが、これらの交差がノード20のようにノードとして示されていない限り、前述の図の説明から明らかなように、交差するように示された2つのパイプは互いに連通しないことに注意すべきである。
【0109】
図6には示されていないが、熱交換器12は、蓄熱媒体に熱を入れるように構成された1つ以上の追加の電気加熱要素を含んでもよい。これは直感に反するように見えるかもしれないが、これから説明するように、そうすることが経済的に理にかなっている時に、蓄熱媒体をプリチャージするために電気エネルギーを使用することを可能にする。
【0110】
エネルギー供給会社では、需要が増加または減少する時間帯を考慮し、需要量と供給能力のバランスをより良くするために、顧客の行動を形成するのに役立つように、時間帯によって電力料金単価が変化する料金プランを設定することが長い間行われてきた。歴史的に、料金プランは発電と消費の両方の技術を反映した粗いものであった。しかし、太陽光発電(太陽電池、パネル、発電所など)や風力発電など、再生可能エネルギーによる電力が各国の発電設備に導入されるようになり、よりダイナミックなエネルギー価格設定の開発に拍車がかかっている。このアプローチは、天候に左右される発電に固有の変動性を反映したものである。このようなダイナミックな価格設定は、当初は大規模な利用者に限定されていたが、次第に家庭における消費者にも提供されるようになってきている。
【0111】
価格設定のダイナミズムの程度は国によって、また同じ国でも生産者によって異なる。極端な言い方をすれば、「ダイナミックな」価格設定とは、1日のうちで異なる時間帯に異なる料金体系を提供することにすぎず、そのような料金体系は、数週間、数ヵ月、あるいは数シーズン、変更されることなく適用される。しかし、ダイナミックな価格設定の中には、サプライヤーが1日以内の予告で価格を変更できるものもあり、例えば、明日の30分間の枠について今日の価格で提供することもできる。国によっては6分という短い時間枠もあり、また、エネルギー消費機器に「インテリジェンス」を組み込むことで、消費者に今後の料金を通知するリードタイムをさらに短縮できる可能性もある。
【0112】
短期・中期の気象予測を用いて、太陽光発電や風力発電設備で生産されるエネルギー量と、冷暖房のための電力需要の規模を予測することができるため、膨大な需要が生じる時期を予測することが可能になる。再生可能エネルギーによる発電能力が大きい発電事業者の中には、マイナス料金で電力を供給している(文字通り、余剰電力を使用するためにお金を支払っている)。さらに多くの場合、電力は通常の料金の数分の一で提供されることもある。
【0113】
電気ヒータを、本開示によるシステムの熱交換器などのエネルギー貯蔵ユニットに組み込むことにより、消費者が低コストの供給期間を利用し、エネルギー価格の高い時期に電力への依存を減らすことが可能になる。これは個々の消費者に利益をもたらすだけでなく、化石燃料の燃焼によって過剰な需要を満たさなければならない時期の需要を削減できるため、より一般的にも有益である。
【0114】
インターフェースユニットのプロセッサは、インターネットなどのデータネットワークへの有線または無線接続(またはその両方)を有し、プロセッサがエネルギー供給業者からダイナミックな価格設定の情報を受信できるようにする。プロセッサはまた、ヒートポンプに命令を送信し、ヒートポンプから情報(ステータス情報や温度情報など)を受信するために、ヒートポンプへのデータリンク接続(ModBusなど)を備えていることが好ましい。プロセッサは、家庭の行動を学習するロジックを備えており、これとダイナミックな価格設定の情報とにより、プロセッサは、暖房システムのプリチャージに安い電力を使うかどうか、またいつ行うかを決定することができる。これは、熱交換器内の電気要素を使用してエネルギー貯蔵媒体を加熱することによってもよいが、ヒートポンプを通常よりも高い温度(例えば40~48℃ではなく60℃)に駆動することによっても可能である。ヒートポンプが高温で作動すると効率は低下するが、これは安い電気をいつどのように使うのが最適であるか、プロセッサが決定の際に考慮することができる。
【0115】
システムプロセッサは、インターネットやプロバイダのイントラネットなどのデータネットワークに接続可能であるため、ローカルのシステムプロセッサは、外部のコンピューティングパワーの恩恵を受けることができる。例えば、インターフェースユニットの製造元は、クラウド(またはイントラネット)を持っている可能性が高く、そこでは、例えば、予測される稼働率、活動、料金(短期/長期)、天気予報(天気予報は、ローカルプロセッサが簡単に使用できるように前処理することができ、また、インターフェースユニットが設置されている物件の状況、場所、露出に合わせて特別に調整することができるため、一般に入手可能な天気予報よりも望ましいかもしれない)、偽陽性および/または偽陰性の識別などの計算のためにコンピューティングパワーが提供される。
【0116】
給湯システムからの過熱水による火傷のリスクから使用者を保護するために、火傷防止機能を設けることが賢明である。これは、熱交換器の出口側流路から出る際に、冷水供給源からの冷水を湯に混合する電気的に制御可能な(調節可能な)弁を設けるという形をとることができる(追加の弁は、先に述べた既存の弁94と96があるノードの間に取り付けることができる)。
【0117】
図6は、インターフェースユニットの「臓器」と考えられるものを概略的に示しているが、これらの「臓器」の容器は示していない。本開示によるインターフェースユニットの重要な用途は、ヒートポンプを、以前はガス焚きコンビネーションボイラーが設置されていた(または、そうでなければそのようなボイラーが設置されている可能性がある)住居の空間暖房および給湯要件に実用的に寄与するものとして使用できるようにするための手段であり、従来のコンビボイラーの場合と同様に、美観と安全性の両方のために容器を提供することがしばしば便利であることが理解されるであろう。さらに、好ましくは、そのような容器は、通常、壁に取り付けられ、多くの場合、キッチンキャビネットと共存するキッチンに設置されるコンビボイラーを直接交換できるようなフォームファクタ内に収まるような寸法にされる。高さ、幅および奥行きを有する概ね長方形の立方体(もちろん、美観、人間工学、または安全性のために、容器の表面のいずれかまたはすべてに曲面が使用されてもよい)の形状に基づき、適切なサイズは、おおよその範囲に見出すことができ、高さが650mm~800mm、幅が350mm~550mm、奥行きが260mm~420mm、例えば、高さが800mm、幅が500mm、奥行きが400mmであるが、より大きな、特に背の高いユニットが収容可能な状況で使用するために提供されてもよい。
【0118】
本開示によるインターフェースユニットのガスコンビボイラーに対する1つの顕著な違いは、後者の容器は一般に、高温の燃焼室が存在するため、鋼鉄などの不燃性材料で作らなければならないが、インターフェースユニットの内部温度は通常、100℃よりかなり低く、通常は70℃以下、一般的には60℃以下であることである。そのため、インターフェースユニットの容器を製造する際には、木や竹、あるいは紙などの可燃性材料を使用することが現実的となる。
【0119】
燃焼がないことにより、一般にガスコンビボイラーの設置に適しているとは決して考えられない場所にインターフェースユニットを設置する可能性も広がり、そしてもちろん、ガスコンビボイラーとは異なり、本開示によるインターフェースユニットは、排気ガス用の煙道を必要としない。そのため、例えば、キッチンのワークトップの下に設置するためのインターフェースユニットを構成することが可能になり、カウンター下のコーナーに代表される悪名高いデッドスポットを利用することもできる。このような場所に設置する場合、好ましくはキッチンキャビネットの製造業者と協力することにより、インターフェースユニットをカウンター下の食器棚に組み込むこともできる。しかし、配置のための最大の柔軟性は、何らかの形のキャビネットの後ろに効果的に設置されるインターフェースユニットを持ち、そのキャビネットがインターフェースユニットにアクセスできるように構成されることによって得られるであろう。インターフェースユニットは、好ましくは、循環ポンプ36が入口側流路の流路から切り離される前に、循環ポンプ36をスライドさせて熱交換器12から離すことができるように構成される。
【0120】
また、フィットキッチンでよく無駄になるスペース、すなわちカウンター下の食器棚の下のスペースを活用することも検討できる。高さが150mm以上、奥行きが600mm前後、幅が300mm、400mm、500mm、600mm以上のスペースがあることが多い(ただし、キャビネットを支える脚を考慮する必要がある)。特に新規に設置する場合、あるいはキッチンの改修に伴ってコンビボイラーを交換する場合、少なくともインターフェースユニットの熱交換器を収容するためにこれらのスペースを使用すること、または特定のインターフェースユニットに対して複数の熱交換器ユニットを使用することは理にかなっている。
【0121】
特に、壁掛け用に設計されたインターフェースユニットの場合、インターフェースユニットの用途が何であれ、潜在的に有益なことであるが、インターフェースユニットを複数のモジュールとして設計することが望ましい場合が多い。このような設計の場合、相変化材料の存在により、熱交換器だけで25kgを超える重量になる可能性があるため、熱交換器をモジュールの1つとするのが便利である。衛生上および安全上の理由から、また一人の作業による据付を容易にするために、インターフェースユニットは、どれも約25kgを超えないモジュールのセットとして納入されることが望ましい。
【0122】
このような重量制約は、モジュールの1つを、インターフェースユニットを構造物に取り付けるためのシャーシにすることで対応できる。例えば、インターフェースユニットを既存のガスコンビボイラーの代わりに壁に取り付ける場合、他のモジュールを支持するシャーシをまず壁に固定すると便利である。好ましくは、シャーシは、交換されるコンビボイラーを支持するために使用される既存の固定点の位置と対応するように設計される。これは、一般的なガスコンビボイラーの間隔および位置に応じて予め形成された固定穴を有する「ユニバーサル」シャーシを提供することによって潜在的に行うことができる。あるいは、特定のメーカーのボイラーに適合する穴の位置/サイズ/間隔を持つさまざまなシャーシを製造することもコスト的に効果的である。そうすれば、該当するメーカーのボイラーを交換するのに適したシャーシを指定するだけでよい。この方法には複数の利点がある。固定ボルトを通すためにプラグ用の穴をさらに開ける必要がなくなるだけでなく、墨出し、穴あけおよび清掃に必要な時間がなくなるだけでなく、設置場所の住宅の構造をさらに弱くする必要がなくなり、これは、「スターターハウス」やその他の低価格住宅で頻繁に使われる低コストの建設技術や材料を考えると、重要な考慮事項となりうる。
【0123】
好ましくは、熱交換器モジュールとシャーシモジュールは結合するように構成される。このようにすることで、分離可能な締結具の必要性を回避することが可能となり、再び設置時間を節約することができる。
【0124】
好ましくは、追加モジュールは、熱交換器12の出口側流路16を建物内給湯システムに結合するための第1の相互接続部、例えば62と74を含む。好ましくは、追加モジュールは、熱交換器12の入口側流路14をヒートポンプに結合するための第2の相互接続部、例えば38と24も含む。好ましくは、追加モジュールには、インターフェースユニットを、インターフェースユニットが使用される建物内の熱回路に接続するための第3の相互接続部、例えば42と28も含む。最初に接続部をシャーシに取り付けるのではなく、熱交換器を壁に直接接続されているシャーシに取り付けることにより、熱交換器の重量を壁に近づけ、インターフェースユニットを壁に固定する壁の固定具への片持ち梁荷重の影響を軽減することができる。
【0125】
相変化材料
相変化材料の1つの適切なクラスは、家庭用給湯やヒートポンプとの併用において想定される温度で固液相変化するパラフィンワックスである。特に興味深いのは、40~60℃の範囲で溶融するパラフィンワックスであり、この範囲内であれば、特定の用途に合わせて異なる温度で溶融するワックスを見つけることができる。典型的な潜熱容量は約180kJ/kgから230kJ/kgの間であり、比熱はおそらく液相では2.27Jg-1-1、固相では2.1Jg-1-1である。融解潜熱を利用することで、非常に多くのエネルギーを貯蔵できることがわかる。相変化液体を融点以上に加熱することで、より多くのエネルギーを貯蔵することもできる。例えば、電気代が比較的安く、間もなく湯が必要になることが予測できる場合(電気代が高くなりそうな、あるいは高くなることが分かっている場合)、通常よりも高い温度でヒートポンプを作動させ、熱エネルギー貯蔵器を「過熱」することは理にかなっている。
【0126】
ワックスとしては、n-トリコサンC23やパラフィンC20-C33など、融点が約48℃のものが適している。熱交換器全体(ヒートポンプから供給される液体と熱交換器内の相変化物質との間)に標準的な3Kの温度差を適用すると、ヒートポンプの液体温度は約51℃になる。出口側でも同様に、3Kの温度降下を許容すると、一般家庭の温水としては十分な45℃の水温になり、これは台所の蛇口には十分熱いが、シャワーや浴室の蛇口には少し高い可能性があるが、水温を下げるために、明らかに常に冷水を流路に追加可能になっている。もちろん、家庭がより低い湯温を受け入れるように訓練されている場合や、その他の理由で受け入れられる場合には、融点の低い相変化材料が検討される可能性があるが、一般的には45~50の範囲の相転移温度が良い選択となる可能性が高い。もちろん、このような温度で水を貯蔵することによるレジオネラ菌のリスクも考慮したいところであり、先に述べた殺菌技術は、このリスクを管理する手段を提供するものである。
【0127】
ヒートポンプ(地中熱源ヒートポンプや空気熱源ヒートポンプなど)の運転温度は60℃まで(ただし、プロパンを冷媒として使用すれば72℃まで可能)だが、45~50℃の範囲で運転した方が効率がはるかに高くなる傾向がある。したがって、相転移温度の48℃から51℃の温度で運転すれば、満足のいく結果が得られるだろう。
【0128】
ヒートポンプの温度性能についても考慮する必要がある。一般的に、ΔT(ヒートポンプによって加熱される流体の入力温度と出力温度の差)の最大値は5~7℃の範囲に保たれることが望ましいが、10℃まで高くすることも可能である。
【0129】
パラフィンワックスはエネルギー貯蔵媒体として使用するのに好ましい材料であるが、適した材料はそれだけではない。塩水和物も本発明のような潜熱エネルギー貯蔵システムに適している。ここでいう塩水和物とは、無機塩と水の混合物であり、その相変化は水の全部または多くの喪失を伴う。相転移の際、水和物の結晶は無水(または水分の少ない)塩と水に分かれる。塩水和物の利点は、パラフィンワックスよりも熱伝導率が非常に高く(2倍から5倍)、相転移に伴う体積変化が非常に小さいことである。本用途に適した塩水和物はNa.5HOで、融点は48~49℃、潜熱は200/220kJ/kgである。
【0130】
単にエネルギー貯蔵という点では、40~50℃の範囲を大幅に超える相転移温度を持つPCMの使用も考慮できる。例えばパラフィンワックスで、ワックスには幅広い融点がある。
【0131】
約40℃の融点を有するn-ヘンイコサンC24
約44.5℃の融点を有するn-ドコサンC21
約52℃の融点を有するn-テトラコサンC23
約54℃の融点を有するn-ペンタコサンC25
約56.5℃の融点を有するn-ヘキサコサンC26
約59℃の融点を有するn-ヘプタコサンC27
約64.5℃の融点を有するn-オクタコサンC28
約65℃の融点を有するn-ノナコサンC29
約66℃の融点を有するn-トリアコサンC30
約67℃の融点を有するn-ヘントリアコサンC31
約69℃の融点を有するn-ドトリアコサンC32
約71℃の融点を有するn-トリアトリアコサンC33
約58~60℃の融点を有するパラフィンC22-C45
約66~68℃の融点を有するパラフィンC21-C50
約69~71℃の融点を有する
約71℃の融点を有するRT70HC
【0132】
あるいは、融点が約58℃で潜熱が226/265kJ/kgのCHCOONa.3HOのような塩水和物を使用してもよい。
【0133】
これまでのところ、熱エネルギー貯蔵器は、1つ以上のコイルまたはループの形をした入口側流路および出口側流路をそれぞれ有する熱交換器内に、単一の質量の相変化材料を有するものとして主に説明されてきた。しかし、例えば、出口側流路(好ましくは、(家庭用)給湯システムに給湯を供給するために使用される)が熱を抽出する熱伝導液によって取り囲まれている複数の密閉体、例えば、金属(例えば、銅または銅合金)シリンダー(または他の細長い形状)に相変化材料を封入することも、熱伝導速度の点で有益である。
【0134】
このような構成によると、熱伝導液は熱交換器内に密閉されていてもよいし、より好ましくは、熱伝導液はエネルギー貯蔵器内を流れていてもよく、エネルギー貯蔵器内の入口側伝熱コイルを使用することなく、グリーンエネルギー源(例えばヒートポンプ)から熱を伝達する熱伝導液であってもよい。このようにして、入口側流路は、単に1つの(またはより一般的には複数の)入口と1つ以上の出口によって提供されてもよく、熱伝導液が、コイルまたは他の規則的な導管によって閉じ込められることなく、熱交換器内を自由に通過し、熱伝導液が封入化PCMに熱を伝達し、またはこれから熱を伝達し、次に出口側流路に(したがって出口側流路内の水に)熱を伝達する。このように、入口側流路は、熱伝導液のための1つ以上の入口と1つ以上の出口、および封入化PCMを通過してエネルギー貯蔵器を通る自由形状の経路(複数可)によって定義される。
【0135】
好ましくは、PCMは、1つ以上の間隔を空けて配置された複数の細長い閉端パイプ(パイプの千鳥列など、各列は間隔を空けて配置された複数のパイプを有する)に封入され、熱伝導液は、好ましくは、入口から出口への経路で、または入口側コイルが使用される場合には、熱エネルギー貯蔵器内に設けられた1つ以上の羽根車によって導かれるように、パイプ上を横方向(またはパイプまたは他の封入容器の長さ方向に対してこれを横切る方向)に流れるように配置される。
【0136】
任意で、出口側流路はエネルギー貯蔵器の上部に配置され、封入されたPCMの上方に配置されてもよく、その容器は水平に配置され、入口側ループまたはコイルの上方に配置されてもよく(対流がエネルギー貯蔵器を通して上方へのエネルギー伝達をサポートするように)、または封入されたPCMに対して、また任意で上方の出口側流路に向かって、流入する熱伝導液を導く入口を備えてもよい。1つ以上の羽根車が使用される場合、好ましくは、羽根車または各羽根車は、エネルギー貯蔵器の筐体の完全性を損なわないように、外部に取り付けられたモーターに磁気的に結合される。
【0137】
任意に、PCMは、典型的には円形断面の細長い管に封入することができ、公称外径は20~67mmの範囲、例えば22mm、28mm、35mm、42mm、54mm、または67mmであり、典型的にはこれらの管は配管用に適した銅で形成される。好ましくは、パイプの外径は22mmから54mmの間、例えば28mmから42mmの間である。
【0138】
熱伝導液は、好ましくは、水または流動添加剤、腐食防止剤、凍結防止剤、殺生物剤のうちの1つ以上と混合された水のような水性液体であり、例えば、セントラルヒーティングシステムで使用するために設計されたタイプの防止剤、例えば、適度に水で希釈されたSentinel X100またはFernox F1(両方ともRTM)を含んでもよい。
【0139】
したがって、本出願の明細書および特許請求の範囲を通して、入口側流路という表現は、文脈上明らかにそうでないことが要求されない限り、上述したような配置を含み、入口側流路の入口からその出口への液体の流れの経路が、通常の導管によって画定されるのではなく、むしろ、エネルギー貯蔵器の筐体内を実質的に自由に流れる液体を含むと解釈されるべきである。
【0140】
PCMは、円形または概ね円形の断面を有する複数の細長い円筒に封入されてもよく、円筒は好ましくは1つ以上の列に間隔を空けて配置される。好ましくは、隣接する列のシリンダーは、熱伝導液からの熱伝導および熱伝導液への熱伝導を容易にするために、互いに対してずらして配置されている。任意で、入口側マニホールドによって供給される封入体に向かって、封入上に入力伝熱液を導く、複数の入力ノズルの形態であってもよい1つ以上の入力ポートによって、封入体に関する空間に熱伝導液が導入される入口配置が提供される。ノズルの出口の穴は、断面が概ね円形であってもよいし、封入されたPCMにより効果的に熱を伝達する液体のジェットまたはストリームを生成するために細長くてもよい。マニホールドは、流量を増加させ圧力損失を減少させる目的で、一端から供給してもよく、対向する両端から供給してもよい。
【0141】
熱伝導液は、グリーンエネルギー源(ヒートポンプや太陽熱給湯システムなど)のポンプ、または他のシステムのポンプの作用の結果としてエネルギー貯蔵器12に送り込まれることもあれば、熱エネルギー貯蔵器が独自のポンプを含むこともある。入口側流路の1つ以上の出口でエネルギー貯蔵器から出た後、熱伝導液はエネルギー源(例えばヒートポンプ)に直接戻るか、または1つ以上の弁を使用して、グリーンエネルギー源に戻る前に暖房設備(例えば床暖房、ラジエーターまたは他の形態の空間暖房)を最初に通過するように切り替え可能であってもよい。
【0142】
封入体は、出口側流路のコイルが封入体の上方に配置された状態で水平に配置されてもよい。これは、単に多くの可能な配置と向きのうちの1つであることが理解されよう。同じ配置で、封入体を垂直に配置することも同様に可能である。
【0143】
あるいは、PCM封入を使用するエネルギー貯蔵器は、再び、先に説明したような円筒形の細長い封入体を使用することができるが、この場合、入口側流路は、例えばコイルの形の導管の形態である。封入体は、その長軸が垂直に配置され、入口側コイル14と出口側コイル18がエネルギー貯蔵器12の両側に配置されてもよい。しかし、この配置は、入口側流路を下部に、出口側流路を上部に配置し、封入体をその長軸を水平に配置するなど、別の向きで使用することもできる。好ましくは、入口側コイル14の周囲から封入体に向かってエネルギー伝導液を推進するために、1つ以上の羽根車がエネルギー貯蔵器12内に配置される。好ましくは、羽根車または各羽根車は、磁気駆動システムを介して、外部に取り付けられた駆動ユニット(例えば、電気モーター)に連結され、これにより、エネルギー貯蔵器12の筐体は、駆動軸を受け入れるために穿孔される必要がなく、それにより、そのような軸が筐体に入る箇所における漏れの危険性が低減される。
【0144】
PCMが封入されていることにより、エネルギー貯蔵のために複数の相変化材料を使用するエネルギー貯蔵器を容易に構築することが可能になり、特に、異なる転移(例えば融解)温度を有するPCMを組み合わせることができるエネルギー貯蔵器を作成することができ、それによりエネルギー貯蔵器の動作温度を拡張することができる。
【0145】
上述したタイプの実施形態では、エネルギー貯蔵器12は、熱伝導液(水または水/抑制剤溶液など)と組み合わせて潜熱としてエネルギーを貯蔵するための1つ以上の相変化材料を含むことが理解されよう。
【0146】
相変化材料の相変化によって引き起こされる圧力の上昇に応答して体積が減少し、相変化材料の逆相変化によって引き起こされる圧力の低下に応答して再び膨張するように構成されている複数の弾性体が、好ましくは、封入体内の相変化材料と共に提供される(それらはまた、本明細書の他の箇所に記載されているように、「かさばる」PCMを使用するエネルギーバンクに使用されてもよい)。
【0147】
さらなる態様によれば、本開示は、複数の制御可能な給湯口を有する給湯設備を構成する方法を提供し、前記設備は、制御可能な流出温度を有する給湯口を有する給湯源と、前記給湯源の出口と前記複数の制御可能な給湯口との間の給湯流路に流量測定器および少なくとも1つの流量調整器と、前記流出温度を検出する第1の温度センサと、前記流量測定器、前記第1の温度センサおよび少なくとも1つの流量調整器に動作可能に接続されたプロセッサと、を含み、前記方法は、前記制御可能な給湯口のうちの第1の給湯口の流出経路に出口温度センサを配置する工程と、前記制御可能な給湯口のうちの前記第1の給湯口からの水が前記出口温度センサに衝突するように、前記制御可能な給湯口のうちの前記第1の給湯口を開放する工程と、前記制御可能な給湯口のうちの前記第1の給湯口の水の温度の時間に対する変化を前記出口温度センサを使用して監視することによりデータを生成する工程と、前記データをプロセッサに供給する工程と、前記プロセッサを使用して、前記制御可能な給湯口のうち前記第1の給湯口の開放時間に関するタイミング情報、前記データおよび前記第1の温度センサからの情報を処理し、後に前記プロセッサが前記制御可能な給湯口のうち前記第1の給湯口の動作を検出した際に使用するために、前記給湯源の前記流出温度を制御すると共に、任意で前記少なくとも1つの流量調整器を制御するための第1のパラメータを決定する工程と、を含む。
【0148】
前記方法はさらに、前記複数の制御可能な給湯口のうちの第2の給湯口の流出経路に出口温度センサを配置することによって、前記複数の制御可能な給湯口のうちの前記第2の給湯口のための対応するデータを生成する工程と、前記制御可能な給湯口のうちの前記第2の給湯口からの水が前記出口温度センサ上に落ちるように、前記制御可能な給湯口のうちの前記第2の給湯口を開く工程と、前記出口温度センサを使用して、前記制御可能な給湯口のうちの前記第2の給湯口からの水の温度の時間に対する変化を監視することにより第2のデータを生成する工程と、前記プロセッサに前記第2のデータを供給する工程と、前記プロセッサを使用して、前記制御可能な給湯口のうち前記第2の給湯口の開放時間に関するタイミング情報、前記第2のデータおよび前記第1の温度センサからの情報を処理し、前記プロセッサが前記制御可能な給湯口のうち前記第2の給湯口の操作を検出したときに使用する前記給湯源の前記流出温度を制御するための第2のパラメータを決定する工程と、を含む。
【0149】
本出願は、多くの側面がより広範な適用可能性を有するとしても、一般に共通の問題群に基づく、多数の自明な相互に関連する側面および実施形態を含む。特に、論理および制御方法は、必ずしも開示されたハードウェアにおける動作に限定されず、より広範に適用され得るが、全て、様々なハードウェアの態様およびその好ましい変形例のハードウェアにおける動作に特に適している。当業者には、特定の態様が他の特徴の特定の例に関するものであり、特定の態様において説明または請求される好ましい特徴が他の態様にも適用され得ることが理解されよう。相互運用性について全ての点で明示的な言及を行うと、本開示は手に負えないほど長くなるであろうし、当業者は、他に明示的な記載がない限り、または文脈から明らかに不適切でない限り、任意の態様の好ましい特徴が他の任意の態様に適用され得ることを理解することが期待され、ここに明示的に理解するように指示される。また、繰り返しを避けるために、多くの態様および概念は、方法の形態またはハードウェアの形態でのみ説明される場合があるが、対応する装置またはコンピュータプログラムまたはロジックも、方法の場合には開示されたものとして、装置の議論の場合にはハードウェアを操作する方法が開示されたものとして捉えられる。上記が意味するものの一例として、流体ベースの(典型的には空気源の)ヒートポンプと相変化材料と電気補助加熱要素との組み合わせ、およびプロセッサ(ユニット内または遠隔またはその両方)による制御に関するハードウェアとソフトウェアの両方についての特徴が多数ある。これは好ましい用途であるが、ほとんどの方法およびハードウェアは、他のヒートポンプ(熱電式および地中熱源)、他の再生可能エネルギー源(例えば太陽熱アレイ用ポンプ)、および代替的な補助加熱(あまり好ましくないガスボイラーなどの燃焼式ヒータの設備、またはさらに効率の低い高温低COPヒートポンプを含む)、および多温度蓄熱アレイを含む代替的な蓄熱に、より一般的に適用可能である。さらに、構成要素またはそれらの相互作用のいずれかに特定の配置を与える側面は、システムの代替要素に焦点を当てた側面とともに自由に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6