(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20240909BHJP
H02S 50/00 20140101ALN20240909BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H02S50/00
(21)【出願番号】P 2024068728
(22)【出願日】2024-04-20
【審査請求日】2024-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524153868
【氏名又は名称】高田 隼人
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】高田 隼人
【審査官】間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-038449(JP,A)
【文献】特開2004-343981(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03073593(EP,A1)
【文献】続発する太陽光・盗難被害、「犯行を諦めさせる」5つのポイント,メガソーラービジネス, [online],2023年08月29日,[2024年6月24日検索], インターネット<URL: https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/feature/00006/00045/?ST=msb_print>
【文献】防犯対策 強化中!!!!! Part.2,株式会社親広産業, [online],2024年02月19日,[2024年6月24日検索], インターネット<URL: https://shink-re.jp/solar-case/4261/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02S 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線(10)を入れるためのケーブルカバー(20)と、
電線(10)を固定するための固定具(30)と、
セメント水和物(40)と、
前
記セメント水和物(40)を塞き止める発泡材(50)とを利用する、
電線(10)の盗難を防止する方法であって、
前記ケーブルカバー(20)に前記セメント水和物(40)を流し込むため及び固定具(30)を装着するための開口部(21)を形成し、
前記ケーブルカバー(20)内に挿通される前記電線(10)を前記固定具(30)により固定した状態で前記ケーブルカバー(20)内に前記セメント水和物(40)を流し込み、セメント硬化体(41)へと硬化させ、
前記電線(10)を引き抜けないようにすることを特徴とする電線盗難防止方法(1)。
【請求項2】
前記開口部(21)にできた隙間(22)に接着充填剤(60)で充填することを特徴とする請求項1に記載の電線盗難防止方法(1)。
【請求項3】
前記開口部(21)を覆うためのカバー体(70)により被覆することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電線盗難防止方法(1)。
【請求項4】
電線(10)を入れるためのケーブルカバー(20)と、
電線(10)を固定するための固定具(30)と、
セメント水和物(40)と、
前
記セメント水和物(40)を塞き止める発泡材(50)とを利用する、
電線(10)の盗難を防止する装置であって、
前記ケーブルカバー(20)に前記セメント水和物(40)を流し込むため及び固定具(30)を装着するための開口部(21)を形成し、
前記ケーブルカバー(20)内に挿通される前記電線(10)を前記固定具(30)により固定した状態で前記ケーブルカバー(20)内に前記セメント水和物(40)を流し込み、セメント硬化体(41)へと硬化させ、
前記電線(10)を引き抜けないようにしたことを特徴とする電線盗難防止装置(2)。
【請求項5】
前記開口部(21)にできた隙間(22)に接着充填剤(60)で充填したことを特徴とする請求項4に記載の電線盗難防止装置(2)。
【請求項6】
前記開口部(21)を覆うためのカバー体(70)により被覆したことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の電線盗難防止装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラー発電設備を設置する際または設置した後に、配線した電線を引き抜けないようにする技術に関し、詳しくは電線が挿通されたケーブルカバー内において、固定具による固定とセメント水和物を流入させて硬化させることで、横行している電線盗難を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2011年3月の東日本大震災後、日本政府による自給エネルギーの確保と低炭素社会の実現という政策で、化石燃料や原子力に依存し過ぎないエネルギーミックスを推進するようになり、余剰電力買取制度(固定価格買取制度)と国・自治体の各種助成策が実施され、太陽光発電の新規事業参入が相次ぎ、太陽光発電に於いては、住宅の屋根にソーラーパネルを設置するなど、企業だけでなく個人に於いても太陽光発電を導入する人が増加しており、国内ではメガソーラー発電所も増加している現状にある。
【0003】
しかしながら、それに伴い、太陽光発電の電力を送るための電線の盗難被害が相次ぎ発生している。これは、電線に使用している銅やアルミが産廃業者などに高価で売れることに目を付けた悪徳な業者による被害である。
【0004】
被害の内容は、例えば、2017年5月16日、兵庫県内の複数の太陽光発電所から送電ケーブルを盗んだ電気工事業者が逮捕された。被害は50件、約9,100万円。山間部など人目のつかない、警備の手薄な発電所が狙われており、状況によっては防犯体制などに多大な対策費用が必要となる。
【0005】
そこで、太陽光発電協会は、太陽光発電設備のケーブル盗難対応についての注意喚起をウェブサイトに掲載する事態となった。運営面での配慮・対策例としては、ケーブル盗難異常検知と緊急駆け付け対応、近隣の方々や発電所間の防犯協力、地域共生の推進による防犯体制の構築、警備会社などを活用した防犯対応強化、動産保険や休業損害保険などの加入による損害対策などの対応を要請するといった事態となっている。
【0006】
このような問題に鑑み、これらを解決しようと従来より様々な技術提案がなされている。例えば、発明の名称を「パワーコンディショナおよびそれに接続したケーブルの盗難検知方法」とするもの(特許文献1参照)で、具体的には、「パワーコンディショナにおいて、確実かつ迅速に太陽光発電システムの送電ケーブルの盗難を検知する。」を課題とし、解決手段として「直流入力側にケーブルを介して太陽光パネルが接続され、交流出力側に電力系統が接続され、直流入力側から入力した直流電力を交流電力に変換するインバータを有するパワーコンディショナであって、ケーブルを含む直流側の回路に直流電圧を印加する電圧印加手段と、前記直流側の回路に流れる電流を計測する電流検出器と、前記電流検出器で計測した直流電流値に基づいて前記ケーブルの断線を検出する断線検出処理部とを備える。断線検出信号により、パワーコンディショナに接続したケーブルの盗難を検知することができる。」というものである。しかしながら特許文献1に係る発明では、静電容量を直流電流値に基づいてケーブルの断線を検出する断線検出処理部を備え、断線検出信号によりパワーコンディショナーに接続したケーブルの盗難を検知するものであり、断線による検出信号が入力される時点ではケーブルが切断され被害が大きくなっている状態となる。更に本発明のように物理的に電線を引き抜くことができない構成を採用するものではない。
【0007】
また、発明の名称を「パワーコンディショナおよびそれに接続したケーブルの盗難検知方法」とする技術で(特許文献2)、具体的には、「パワーコンディショナにおいて、確実かつ迅速に太陽光発電システムの送電ケーブルの盗難を検知する。」ことを課題とし、解決手段として「直流入力側にケーブルを介して太陽光パネルが接続され、交流出力側に電力系統が接続され、直流入力側から入力した直流電力を交流電力に変換するインバータを有するパワーコンディショナであって、直流入力端子と接地端子との間の静電容量を計測する静電容量計測回路と、前記静電容量計測回路で計測した静電容量値に基づいて前記ケーブルの断線を検出する断線検出処理部とを備える。断線検出信号により、パワーコンディショナに接続したケーブルの盗難を検知することができる。」という技術が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら特許文献2に記載の発明は、静電容量を計測回路で計測した静電容量値に基づいてケーブルの断線を検出することでパワーコンディショナーに接続したケーブルの盗難を検知するものであり、前記特許文献1と同様に断線による検出信号が入力される時点ではケーブルが切断され被害が大きくなっている状態となる。更に本発明のように物理的に電線を引き抜くことができない構成を採用するものではない。
【0008】
また、発明の名称を「電力変換装置およびその盗難防止方法」とする技術で(特許文献3)、具体的には、「太陽光発電システムの応用範囲が広まるにつれ、屋外に比較的小形軽量のインバータを多数設置する必要性が生じているが、インバータには盗難防止措置が全く施されていない。」ことを課題とし、解決手段として「盗難防止機能の状態変更信号を受信すると(S1)、盗難防止機能の状態を切り替える(S2)。そして、警戒状態の場合(S3)、接続検知部の出力信号が電源または負荷が非接続であることを示すと(S4)、警報信号を出力する(S5)を提供する。」という技術が開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3に記載の発明は、接続検知部の出力信号が電源又は負荷が非接続であることを感知すると警告信号を出力するものであり、特許文献1及び2と同様に、警告信号が入力される時点ではケーブルが切断され被害が大きくなっている状態となる。更に本発明のように物理的に電線を引き抜くことができない構成を採用するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-169264
【文献】特開2017-169263
【文献】特開2002-142462
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、近年ソーラーパネル発電施設で横行する電線の盗難を回避することを目的とし、大きなコストを掛けずに効果的な対策を構じれる技術の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電線を入れるためのケーブルカバーと、電線を固定するための固定具と、セメント水和物と、前記セメント水和物を塞き止める発泡材とを利用する電線の盗難を防止する方法であって、前記ケーブルカバーに前記セメント水和物を流し込むため及び固定具を装着するための開口部を形成し、前記ケーブルカバー内に挿通される前記電線を前記固定具により固定した状態で前記ケーブルカバー内に前記セメント水和物を流し込み、セメント硬化体へと硬化させ、前記電線を引き抜けないようにする構成を採用した。
【0012】
また、本発明は、前記開口部にできた隙間に接着充填剤を充填する構成を採用することもできる。
【0013】
また、本発明は、前記開口部を覆うためのカバー体により被覆する構成を採用することもできる。
【0014】
また、本発明は、電線を入れるためのケーブルカバーと、電線を固定するための固定具と、セメント水和物と、前記水セメント水和物を塞き止める発泡材とを利用する、電線の盗難を防止する装置であって、前記ケーブルカバーに前記セメント水和物を流し込むため及び固定具を装着するための開口部を形成し、前記ケーブルカバー内に挿通される前記電線を前記固定具により固定した状態で前記ケーブルカバー内に前記セメント水和物を流し込み、セメント硬化体へと硬化させ、前記電線を引き抜けないようにした構成の電線盗難防止装置とすることもできる。
【0015】
また本発明は、前記開口部にできた隙間に接着充填剤で充填した構成の電線盗難防止装置とすることもできる。
【0016】
また本発明は、前記開口部を覆うためのカバー体により被覆した構成の電線盗難防止装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
従来の人感センサーやカメラの映像による防犯設備では、事後的に犯人を割り出すことが難しかったが、本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置によれば、電線を引き抜くことが難しいと犯人が察知し盗難を未然に防止できるという優れた効果を発揮するものである。
【0018】
また、本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置によれば、電線をカバーから引き抜くことができなくなるという優れた効果を発揮する。
【0019】
また、本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置によれば、大きなコストを掛けずに電線の盗難を防止できるという優れた効果を発揮するものである。
【0020】
また、本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置によれば、大掛かりな作業工程を必要とせず、電線の盗難を防止できるという優れた効果を発揮するものである。
【0021】
また、本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置において、開口部を被覆する構成を採用した場合には浸水による漏電等の弊害を防止できという優れた効果を発揮するものである。
【0022】
また、本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置によれば、電線の盗難の被害による修復期間の発電ができないという二次被害を防止できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る電線盗難防止方法における基本構成を説明するフローチャートである。
【
図2】本発明に係る電線盗難防止装置における基本構成を説明する基本構成説明図である。
【
図3】本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置において各工程ごとの実施状態を示す実施状態説明図である。
【
図4】本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置における使用状態を説明する使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、電線を入れるためのケーブルカバーと、電線を固定するための固定具と、セメント水和物と、前記セメント水和物を塞き止める発泡材とを利用する、電線の盗難を防止する方法または装置であって、前記ケーブルカバーに前記セメント水和物を流し込むため及び固定具を装着するための開口部を形成し、前記ケーブルカバー内に挿通される前記電線を前記固定具により固定した状態で前記ケーブルカバー内に前記セメント水和物を流し込み、セメント硬化体へと硬化させ、前記電線を引き抜けないようにすることを最大の特徴とするものである。以下、図面に基づいて説明する。但し、係る図面に記載された形状や構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の創作として発揮する効果の得られる範囲内で変更可能である。
【0025】
図1は、本発明に係る電線盗難防止方法における基本構成を説明するフローチャートである。
【0026】
本発明に係る電線盗難防止方法1は、切断工程Aと、クランプ工程Bと、発泡材充填工程Cと、水和物充填工程Dと、開口部閉鎖工程Eとから成り、必要に応じて被覆工程Fを有する構成とする。以下、各工程について詳細な説明をする。
【0027】
切断工程Aは、電線10が挿通されたケーブルカバー20の一部を開口するため、切断具等を用いてケーブルカバー20を切断する行程である。
【0028】
クランプ工程Bは、一本又は複数本の電線10を束ねるように固定具30を用いて固定する行程である。
【0029】
発泡材充填工程Cは、クランプ工程Bで、固定したクランプ部分の両側から挟むように所定の間隔をおいて、発泡材を配置する工程であって、発泡剤を充填して発泡させ、係る発泡により形成される発泡材50により、次の水和物充填工程Dにおいて充填されるセメント水和物40を塞き止める栓の役割を果たすための工程である。
【0030】
水和物充填工程Dは、セメントに水と砂を混ぜたモルタルや、更に砂利を混ぜたコンクリートなどを、開口したケーブルカバー20の開口部21から充填する工程であって、セメントに水を含ませることにより、時間の経過とともにセメント粒子間の隙間を充填し硬化させてセメント硬化体41としたものである。
【0031】
開口部閉鎖工程Eは、水和物充填工程Dにより充填されたケーブルカバー20に開けられた開口部21を閉鎖するための工程であって、めくり上げられた開口部21をもとの状態に戻し、切断時の切り口部分を接着充填剤等の充填剤で埋設する工程である。
【0032】
被覆工程Fは、必須の工程ではないが、開口部閉鎖工程Eで開口部21を埋設した後に、係る開口部21を覆うように被覆し、漏れや浸水等を回避すべくカバー体70を用いて被覆する工程を備えることが望ましい。
【0033】
図2は、本発明に係る電線盗難防止装置における基本構成を説明する基本構成説明図である。以下、各構成部材について詳細な説明をする。
【0034】
電線盗難防止方法1は、電線10を入れるためのケーブルカバー20と、電線10を固定するための固定具30と、セメント水和物40と、前記セメント水和物40を塞き止める発泡材50とを利用する電線10の盗難防止方法であって、前記ケーブルカバー20に前記セメント水和物40を流し込むため及び固定具30を装着するための開口部21を形成し、前記ケーブルカバー20内に挿通される前記電線10を前記固定具30により固定した状態で前記ケーブルカバー20内に前記セメント水和物40を流し込み、セメント硬化体41へと硬化させ、前記電線10を引き抜けないようにする方法である。
【0035】
電線盗難防止装置2は、電線10を入れるためのケーブルカバー20と、電線10を固定するための固定具30と、セメント水和物40と、前記セメント水和物40を塞き止める発泡材50とを利用する、電線10の盗難を防止する装置であって、前記ケーブルカバー20に前記セメント水和物40を流し込むため及び固定具30を装着するための開口部21を形成し、前記ケーブルカバー20内に挿通される前記電線10を前記固定具30により固定した状態で前記ケーブルカバー20内に前記セメント水和物40を流し込み、セメント硬化体41へと硬化させ、前記電線10を引き抜けないようにした装置である。
【0036】
電線10は、電気を導くための線のことであって、電気を伝送するための線状の部材でのことある。主たる素材として用いられるのは銅、銅合金、アルミニウムなどの良導体であり、電線は大別すると、電力を輸送する電力用電線、電気信号を伝送する通信ケーブル、モータや発電機などの内部にありコイル状に巻かれていてエネルギー変換に使われる巻線がある。本発明に於いては、ソーラーパネル発電施設で発電した電気を導くための主として銅線やアルミ線を意味するものである。
【0037】
ケーブルカバー20は、電線10を被覆するためのカバーであって、材質と形状と材質については、蛇腹状に形成されてフレキシブル性を有する硬質ポリ塩化ビニルでできた配管素材のことである。又は難燃性ポリプロピレンや耐熱型のナイロンなども好適である。但し、これらの材質に限定されるものではなく、腐食にも強い特徴があり、丈夫で軽量性にも優れるなど、電線10を被覆するための保護カバーとして機能するものでればよい。
【0038】
開口部21は、ケーブルカバー20に挿通された電線10を固定具30で固定するため、及びセメント水和物40を充填するために開口させた開口部21である。具体的にはケーブルカバー20をサンダーなどの切断具で略コの字状等に切断してめくり上げるなどして開口させたものである。
【0039】
隙間22は、ケーブルカバー20に開口部21を備えるため、切断具などで切込を入れる際にできる隙間22のことである。
【0040】
固定具30は、電線10が引き抜かれないように固定するための金具であって、電線10に突起を作り出して硬化したセメントにより動かなくするためのものである。図示した固定具30はUボルトを例に示したものであるが、強固に結束できるものであって、結束後に電線10の外側に向かって突起が形成できるものであれば、これに限定されることなく、一般的な配線用結束部材でもよい。
【0041】
セメント水和物40は、セメントに水を含ませることにより、係るセメント水和物40が時間の経過とともに化学反応によりセメント粒子間の隙間を充填し硬化するものであって、セメントに水と砂を混ぜたモルタルや、更に砂利を混ぜたコンクリートなどである。
【0042】
セメント硬化体41は、セメントに水と砂を混ぜたモルタルや、更に砂利を混ぜたコンクリートが、時間の経過とともに硬化した硬化体のことである。一般に表面が硬化するのに24時間程度といわれており、しっかりと硬化させるためには3日から1週間ほどかかるものである。
【0043】
発泡材50は、ケーブルカバー20内でセメント水和物40を塞き止めるための栓であり、所定の距離を有して固定具30を挟むように備えられるものである。素材は特に限定されることなく、例えばウレタンフォームや発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンなどに代表される発泡樹脂であればよい。
【0044】
接着充填剤60は、ケーブルカバー20に設けた開口部21から固定具30、及びセメント材を充填した後に、開口部21を塞ぐための切り口にできた隙間を埋めるように用いられるものである。
【0045】
カバー体70は、ケーブルカバー20に設けた開口部21を覆うように被覆し、水の浸入等を防ぐために用いられるものである。
【0046】
図3は、本発明に係る電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置1において各工程ごとの実施状態を示す実施状態説明図であり、
図3(a)は、切断工程Aにおける実施状態を示し、
図3(b)は、クランプ工程Bにおける実施状態を示し、
図3(c)は、発泡材充填工程Cにおける実施状態を示し、
図3(d)は、水和物充填工程Dにおける実施状態を示し、
図3(e)は、開口部閉鎖工程Eにおける実施状態を示している。なお、
図3(f)は、被覆工程Fにおける開口部21を被覆する状態を説明する被覆状態説明図であり、この工程は、必須の要件ではないが、係る工程を備えた方が望ましいというものである。
【0047】
図4は、本発明に係る電線盗難防止方法1及び電線盗難防止装置2における使用状態を説明する使用状態説明図であり、太陽の光をソーラーパネルM(モジュール)で発電した電気が接続箱/集電箱Sを通してパワーコンディショナPまでの直流電線の配線中、及びに、パワーコンディショナPから配電盤Hや電力量計J、或いは系統までの交流電線についても本発明に係る電線盗難防止方法1及び電線盗難防止装置2を利用した発電設備等に窃盗者により銅線やアルミ線といった高価な電線10を用いて引き抜かれないようにする実施状態を示している。
図4に示す通り各太陽電池モジュール間の接続には専用コネクターが取り付けられた単心ケーブルであって、例えば、架橋ポリエチレン絶縁耐熱ビニルシースケーブル(HCV)や架橋ポリエチレン絶縁耐熱性ポリエチレンシースケーブル(EM CE/F)、或いは太陽電池発電所設備用直流1500Vケーブルなどで接続される。また、太陽電池モジュールMから接続箱間にも同様のケーブルが使用される。また、接続箱からパワーコンデショナPの間には一般電気設備同様のCVケーブル等若しくはSOLAR-CQが使用される。但し直流配線のため、二心ケーブル若しくは単心二個撚りケーブルが使用される。また、ケーブル保護のため、埋設や地上ラック方式等で布設されることが多いものである。なお、パワーコンデショナP以降は交流となるため、CVケーブルが用いられる。
図4に示した各配線は、それぞれ本発明に係る電線盗難防止装置2が複数配置されていることで盗難防止を可能とした状態を示している。
【0048】
モジュールMは、複数のセル(セルとは太陽電池を構成するパーツの基本単位で、「太陽電池素子」とも呼ばれ、最小単位のため、これ以上分解できないもので、サイズは150mm~200mm四方前後のものが多く、単体での発電能力は3.5W~4Wとセル単体の発電能力は低く、わずかな電力しか生み出せないため、セルを複数組み合わせることで、必要な電力を得られるようにしたのが太陽電池である。)を組み合わせてパネル状に加工したのがモジュールMである。ソーラーパネルとも呼ばれ、一般的に太陽電池と聞いて思い浮かべるパネルと考えればよい。セルを保護するためにコーティングを施し、屋外に設置するのに必要な耐久性を確保しているもので、モジュールひとつ当たりの発電能力は170W~325W程度で、製品によって大きな差があるためケーブルの選択には注意が必要となる。図面には小規模な発電所を例示しているが、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の場合にもこれに対応したケーブルを用いることとなる。
【0049】
接続箱/集電箱Sは、太陽光発電において使われる機材のうちのひとつである。太陽光発電は、モジュールM(太陽光電池・代用電池モジュール)に光があたることで電気を発生させるものであり、この発生させた電気をとりまとめ、パワーコンディショナPに送る働きをするのが、接続箱である。集電箱は、接続箱又はパワーコンディショナPからの出力を集電する機器のことであり、複数の接続箱やパワーコンディショナPがシステムに用いられる場合は、この集電箱が必要となってくる。集電箱には直流集電箱と交流集電箱の二種類があり、それぞれの用途は異なる。
【0050】
パワーコンディショナPは、太陽光発電システムや家庭用燃料電池を利用する上で、発電された電気を家庭などの環境で使用できるように変換する機器であり、所謂インバータの一種である。ソーラーパネルなどに用いられているモジュールMから流れる電気は通常「直流」であり、これを日本の一般家庭で用いられている「交流」に変換することで、通常利用が可能な電気にすることができる。なお、外国ではインバータやラインコンディショナーと呼ばれることもある。
【0051】
配電盤Hは、電源と負荷との間に設けられ、回路の開閉や電源電圧の昇降、電気系統の切換えを行うための設備で、各種の遮断器類,保護継電器,計器等が設けられたものである。
【0052】
電力量計Jは、太陽光発電をつける前からついているメーターは「買電」を計測するための電力量計で、太陽光発電を設置すると、もう1つ「売電」の量を計測するための電力量計を設置するものであり、太陽光発電の発電量を計測するために、3個目の総発電量メーターを設置する場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の電線盗難防止方法及び電線盗難防止装置は、日本全国広く設置されているソーラーパネル発電所に横行する電線の盗難を防止することが可能であることから産業上利用可能性は高いと思慮されるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 電線盗難防止方法
2 電線盗難防止装置
10 電線
20 ケーブルカバー
21 開口部
22 隙間
30 固定具
40 セメント水和物
41 セメント硬化体
50 発泡材
60 接着充填剤
70 カバー体
切断工程A
クランプ工程B
発泡体充填工程C
水和物充填工程D
開口部閉鎖工程E
被覆工程F
M モジュール
S 接続箱/集電箱
P パワーコンディショナー
H 配電盤
J 電力量計
【要約】
【課題】
本発明は、近年ソーラーパネル発電施設で横行する電線の盗難を回避することを目的とし、大きなコストを掛けずに効果的な対策を講じれる技術の提供を課題とする。
【解決手段】
本発明は、電線を入れるためのケーブルカバーと、電線を固定するための固定具と、セメント水和物と、前記水セメント水和物を塞き止める発泡材とを利用する、電線の盗難を防止する方法又は装置であって、前記ケーブルカバーに前記セメント水和物を流し込むため及び固定具を装着するための開口部を形成し、前記ケーブルカバー内に挿通される前記電線を前記固定具により固定した状態で前記ケーブルカバー内に前記セメント水和物を流し込み、セメント硬化体へと硬化させ、前記電線を引き抜けないようにするものである。
【選択図】
図1