(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】水防システム及び水防方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20240909BHJP
E02B 3/10 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E02B3/10
(21)【出願番号】P 2024533923
(86)(22)【出願日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2024012273
【審査請求日】2024-06-05
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/013017
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺村 篤
(72)【発明者】
【氏名】川原 英昭
(72)【発明者】
【氏名】坂中 宏行
(72)【発明者】
【氏名】大和 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 豊
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-512798(JP,A)
【文献】特開昭61-049013(JP,A)
【文献】特開平07-197751(JP,A)
【文献】特表2017-533358(JP,A)
【文献】特開2001-227255(JP,A)
【文献】特開2000-345537(JP,A)
【文献】特開平01-021111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E02B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象である敷地又は建物に沿って連続して設置される防水シート固定部と、
前記防水シート固定部に下端が固定され、前記敷地又は建物を連続して覆う防水シートと、
前記防水シート固定部の近傍に設置され、前記防水シートを支持する複数の支柱とを備え、
前記防水シートは、下端が前記防水シート固定部に固定可能であると共に、上端が引き上げられて、前記複数の支柱の上部に固定可能であり、
前記防水シートが引き上げられて前記複数の支柱の上部に固定された状態で、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される水防システムであって、
少なくとも、前記敷地又は建物に通じ車両や人が通行する道路又は通路において、
連続して掘られ、前記防水シート固定部を含むシート収納用溝部と、
前記シート収納用溝部を覆う開閉可能な蓋部と、
前記支柱に設けられ、防水シートの上端が固定されて上下に移動可能な昇降部と、
前記蓋部とは別体
であって、前記昇降部が配される位置よりも上側の前記支柱に設けられ、前記昇降部を上下に移動させるように駆動する駆動部とを有し、
通常時は、前記シート収納用溝部に前記防水シートが収納されると共に、前記昇降部が収納位置にあって前記シート収納用溝部を覆う前記蓋部の上を車両や人が通行可能であり、
浸水時には、前記駆動部によって前記昇降部が前記収納位置から上昇し、前記蓋部が開いて前記シート収納用溝部から前記防水シートが引き上げられ、前記昇降部が使用位置に移動して前記防水シートの上部が前記複数の支柱に固定されるように構成されている
ことを特徴とする水防システム。
【請求項2】
前記支柱が、前記防水シート固定部よりも前記敷地又は建物側で、前記道路又は通路の通行領域外側に立設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水防システム。
【請求項3】
前記敷地は、河川、湖又は海岸に沿う堤防であり、前記防水シート固定部は、前記堤防に沿って設けられ、
前記道路は、橋に通じる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項4】
前記防水シート固定部は、前記敷地又は建物の周囲に設けられ、
前記通路は、前記敷地又は建物の出入り口に通じ、
浸水時には、前記防水シートは、引き上げられて前記敷地又は建物の角部にある前記支柱の部分で折れ曲がった状態で前記支柱の上部に固定され、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項5】
前記道路又は通路のない部分において、前記支柱は、前記昇降部を有さない固定支柱であり、
浸水時には、前記防水シートが引き上げられて上部が前記固定支柱に固定されるように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項6】
前記蓋部が、前記昇降部に固定されており、前記昇降部と共に上下に移動するように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項7】
前記蓋部が、前記防水シートの上端に連結されることで、前記防水シートの補強部材を兼ね、
前記蓋部が前記昇降部によって持ち上げられることで、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項8】
前記蓋部が、前記昇降部によって引き出される前記防水シートにより持ち上げられるように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項9】
前記防水シートに梁部材が一体的に設けられ、前記梁部材が前記防水シートの補強部材を構成し、
前記梁部材を複数の支柱に跨がるように支持させることで、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項10】
前記防水シートの上部には、パイプ部材又は袋とじ部が設けられ、
前記パイプ部材又は袋とじ部にワイヤが通され、
前記ワイヤを介して前記防水シートが前記支柱に吊り下げられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項11】
前記防水シートの下端が、前記シート収納用溝部の前記敷地又は建物と反対側に固定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項12】
保護対象である敷地又は建物を防水シートにより連続して覆って防水壁を形成する方法であって、
(i)少なくとも、前記敷地又は建物に通じて車両や人が通行する道路又は通路を含む部分において、
前記防水シートの下端を固定する防水シート固定部を含むシート収納用溝部と、
前記防水シート固定部と離間した位置に、駆動部によって上下に昇降可能な昇降部を有する複数の支柱とを設け、
前記防水シート固定部に前記防水シートの下端を固定し、前記防水シートの上端を前記昇降部に連結した状態で前記防水シートを前記シート収納用溝部に折り畳んで又は丸めて、連続して収納し、
前記防水シートを収納した前記シート収納用溝部を開閉可能な蓋部で覆い、
(ii)道路又は通路を含まない部分においても、
前記防水シートの下端を固定する防水シート固定部を連続して設け、
前記防水シート固定部に下端を固定するようにして連続して前記防水シートを配置し、
前記防水シート固定部と離間した位置で複数の支柱を配置し、
使用時に、前記蓋部とは別体
であって、前記昇降部が配される位置よりも上側の前記支柱に設けられた駆動部によって
前記昇降部を上昇させ、かつ前記蓋部を開き、前記防水シートを引き上げて前記支柱の上部に支持することにより、前記防水シートにより前記敷地又は建物を連続して覆う防水壁を形成する
ことを特徴とする水防方法。
【請求項13】
前記昇降部に前記蓋部を連結しておき、
前記昇降部を上昇させたときに前記蓋部も上昇する
ことを特徴とする請求項12に記載の水防方法。
【請求項14】
前記蓋部を前記防水シートの上端に連結して前記防水シートの補強部材とし、
前記蓋部が前記昇降部によって持ち上げられることで、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される
ことを特徴とする請求項13に記載の水防方法。
【請求項15】
前記昇降部によって引き上げられる前記防水シートによって前記蓋部が持ち上げられる
ことを特徴とする請求項12に記載の水防方法。
【請求項16】
前記防水シートに梁部材を一体的に設け、前記梁部材で前記防水シートの補強部材を構成し、
前記梁部材を複数の支柱の上部に跨がるように支持させることで、前記防水シートによって連続的に防水壁を形成する
ことを特徴とする請求項12に記載の水防方法。
【請求項17】
前記防水シートの上部に、パイプ部材又は袋とじ部を設け、
前記パイプ部材又は袋とじ部にワイヤを通し、
前記ワイヤを介して前記防水シートを前記支柱に吊り下げる
ことを特徴とする請求項12に記載の水防方法。
【請求項18】
前記蓋部には、前記支柱を避けるように支柱用開口が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水防システム。
【請求項19】
前記蓋部は、前記支柱用開口の内部の前記支柱を避けるように、前記昇降部と共に上下に移動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項18に記載の水防システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水防システム及び水防方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のように、建物や敷地を覆う浸水防止装置として、支柱と防水シートを備えた防水壁を形成する浸水防御装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2のように、地面にほぼ鉛直に埋設される複数の円筒の地下埋設部材と、同軸状に出没自在に挿入された支柱部材とを備え、隣接する支柱部材の間に堰板を挿入し、支柱部材の上端に取り付けた押圧手段で堰板を地面に押し付けて遮水する遮水装置を、家屋の土地全体に多数敷き詰めて遮水装置とするものが知られている。
【0004】
さらに、特許文献3のように、トレンチ(溝部)にフレキシブル壁(防水シート)が収納され、同じトレンチ内に支柱が横倒しで収納され、浸水危険時に支柱を起立させてレシーバで支持する浸水防止装置が知られている。
【0005】
また、特許文献4のように、河川の護岸に支柱と防水シートを備えた防水壁を形成する防水装置として、例えばガードレールの支柱やフェンスを用いた防水装置が知られている。
【0006】
さらに、氾濫時に建物の入口や地下道に繋がる階段の入口などのゲートからの水の浸入を防止するものとして、特許文献5及び6のように、止水板や防水シートの昇降機構を備えた浸水防止装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-88791号公報
【文献】特許第2886123号公報
【文献】特許第6676707号公報
【文献】特開2017-141601号公報
【文献】特開2014-227721号公報
【文献】特開2012-82590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のものは、通常時には、支柱も防水シートもないため、敷地や建物への出入りには問題がないが、浸水時には支柱や防水シートを保管場所から運んでくる必要があり、支柱の設置、防水シートの形成、側壁との密閉などに非常に時間がかかる。このため、急激な豪雨による河川の洪水や、下水の内水氾濫による床下又は床上浸水を防止するのに、小規模のものにしか実質的は対応できず、河川沿いや工場周囲など広範囲に設置しようとすると、時間がかかりすぎ、防水装置の設置作業そのものが危険を伴うという問題点がある。
【0009】
特許文献2のものは、多くの堰板を収納するのに大きなスペースが必要である。さらには、多くの堰板を設置し、押圧手段で締め付ける作業を、囲いたい敷地や建物の広範囲にわたって行う必要があるので、特に河川沿いや工場周囲などでは、浸水防止装置の設置に多大な時間を要し、増水の緊急時に危険な作業を長時間行う必要がある。
【0010】
特許文献3のものは、支柱を横倒しで防水シート共に同じ溝内に収納してレシーバで支持する構造のため、増水時の水圧の大部分が支柱に加わる。また、大きな荷重が加わる支柱の支持部が浅く、構造的に大きな荷重に耐えられないことから、支柱とは別部材であるレシーバで水と反対側から支持しなければならず、設置に時間がかかるという問題がある。
【0011】
特許文献4のものでは、河川の橋の部分には車両や人が通行するためにガードレールやフェンスがないため、防水壁の設置ができず、特に都市部の小規模河川や用水路など、多くの橋がかかっている河川での氾濫防止には使えないという問題点がある。
【0012】
特許文献5及び6のものでは、狭いゲートからの水の浸入に対しては機能する一方、近年のゲリラ豪雨による広範囲にわたる河川の増水による氾濫を防止するときには適用できない。特に特許文献5のものでは、防水シートと支柱との密閉が防水シートの曲がりによる支柱との接触のみの水密構造となっており、高い水圧に対して水の浸入を防止できない。
【0013】
また、特許文献6のものでは、支柱と防水シートは予め堅固な水密構造となっている一方、防水シートの引き上げ時に閉まるファスナー部がシート本体部に対して強度が弱く、高い水圧に耐えきれないという問題や、防水シート上昇時にファスナーが引っ掛かって閉められないという問題点がある。
【0014】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両や人が通行する道路や通路部分において、通常時は通行可能で、急な増水時でもその部分を含めて素早く防水壁を設けて保護対象の敷地又は建物の浸水を防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、この発明では、道路又は通路に至る部分において、通常時には防水シートを収納してその上を通行可能とし、浸水時には支柱に設けた昇降部によって防水シートを自動で引き上げるようにした。
【0016】
具体的には、第1の発明では、
保護対象である敷地又は建物に沿って連続して設置される防水シート固定部と、
前記防水シート固定部に下端が固定され、前記敷地又は建物を連続して覆う防水シートと、
前記防水シート固定部の近傍に設置され、前記防水シートを支持する複数の支柱とを備え、
前記防水シートは、下端が前記防水シート固定部に固定可能であると共に、上端が引き上げられて、前記複数の支柱の上部に固定可能であり、
前記防水シートが引き上げられて前記複数の支柱の上部に固定された状態で、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される水防システムであって、
少なくとも、前記敷地又は建物に通じ車両や人が通行する道路又は通路において、
連続して掘られ、前記防水シート固定部を含むシート収納用溝部と、
前記シート収納用溝部を覆う開閉可能な蓋部とが設けられ、
前記支柱は、前記防水シートの上端が固定されて駆動部によって上下に移動可能な昇降部を有し、
通常時は、前記シート収納用溝部に前記防水シートが収納されると共に、前記昇降部が収納位置にあって前記シート収納用溝部を覆う前記蓋部の上を車両や人が通行可能であり、
浸水時には、前記昇降部が前記収納位置から上昇し、前記蓋部が開いて前記シート収納用溝部から前記防水シートが引き上げられ、前記昇降部が使用位置に移動して前記防水シートの上部が前記複数の支柱に固定されるように構成されている。
【0017】
上記の構成によると、通常時には、敷地又は建物出入り口に通じる通路を車両や人が通行する際に、シート収納用溝部に収納された防水シートが蓋部で覆われているので、通行の邪魔にならない。そして、浸水時には、まず道路又は通路の部分ではない領域において防水シートを引き上げてその上部を支柱に固定することで、浸水直前まで道路又は通路を利用して敷地又は建物を出入りでき、最後に道路又は通路部分において駆動部よって昇降部を上昇させ、防水シートを引き上げると共に蓋部を開き、昇降部を使用位置にして支柱の上部に防水シートを固定することで、防水シートを保管場所から運んでくることなく、迅速に敷地又は建物を連続して覆う防水壁が完成させるようにすることができる。ここで、「敷地」は、住居、工場など建物の敷地だけでなく、河川、湖、海岸の堤防、盛土がないような岸の壁部を含む意味である。
【0018】
第2の発明では、第1の発明において、
前記支柱が、前記防水シート固定部よりも前記敷地又は建物側で、前記道路又は通路の通行領域外側に立設されている。
【0019】
上記の構成によると、支柱が通行領域外側に立設されるので、通行の邪魔にならない。また、支柱を防水シート固定部よりも保護対象側に設けるので、防水シートは、支柱上端から防水シート固定部に向かって傾斜した状態で張られる。また、防水シートに加わる水圧は、一部が引張荷重として防水シート固定部に加わるので、支柱に加わる負荷が減る。
【0020】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
前記敷地は、河川、湖又は海岸に沿う堤防であり、前記防水シート固定部は、前記堤防に沿って設けられ、
前記道路は、橋に通じる。
【0021】
上記の構成によると、通常時は、シート収納用溝部に収納された防水シートが蓋部に覆われているので、橋に通じる道路を車両や人が通行できる。浸水時には、昇降部を駆動して防水シートを引き上げると共に蓋部を開き、昇降部を使用位置にして防水シートを支柱の上部に固定するだけで、橋に通じる道路部分を含めて連続した防水壁が完成し、堤防に沿った防水が可能となる。ここで、「堤防」とは、一般に、河川、湖の氾濫や海水の侵入を防ぐため、河岸、湖岸、海岸に沿って設けた土石やコンクリート製の構築物を言うが、市街地を流れる小型河川のように、盛土がないような岸の壁部も含む意味である。
【0022】
第4の発明では、第1又は第2の発明において、
前記防水シート固定部は、前記敷地又は建物の周囲に設けられ、
前記通路は、前記敷地又は建物の出入り口に通じ、
浸水時には、前記防水シートは、引き上げられて前記敷地又は建物の角部にある前記支柱の部分で折れ曲がった状態で前記支柱の上部に固定され、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される。
【0023】
上記の構成によると、通常時には、敷地又は建物出入り口に通じる通路を車両や人が通行する際に、シート収納用溝部に収納された防水シートが蓋部で覆われているので、通行の邪魔にならない。そして、浸水時には、まず通路の部分ではない領域において防水シートを引き上げてその上部を支柱に固定することで、浸水直前まで通路を利用して敷地又は建物を出入りでき、最後に昇降部を駆動して防水シートを引き上げると共に蓋部を開き、昇降部を使用位置にして防水シートを支柱の上部に固定することで、敷地又は建物の周囲を平面視で敷地又は建物の周囲の角部にある支柱の部分で折れ曲がった角部を有するようにして、連続した防水壁が完成する。このため、防水シートを保管場所から運んでくることなく、シート収納用溝部から引き上げるだけで極めて迅速かつ容易に保護対象の敷地又は建物の保護が必要な部分を適切に覆って浸水を防止することができる。
【0024】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
前記道路又は通路のない部分において、前記支柱は、前記昇降部を有さない固定支柱であり、
浸水時には、前記防水シートが引き上げられて上部が前記固定支柱に固定されるように構成されている。
【0025】
上記の構成によると、通行の邪魔にならない部分は、昇降部を有さない固定支柱としておけば支柱全てに昇降部を設ける必要がなくなり、簡易かつ安価な構成となり、浸水時には、防水シートを引き上げて固定支柱に固定すればよいだけなので、支柱を持ち込む必要もなく、防水シートの設置が容易である。また、固定支柱の部分は、敷地や建物を覆うフェンスとしても使用できる。
【0026】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、
前記蓋部が、前記昇降部に固定されており、前記昇降部と共に上下に移動するように構成されている。
【0027】
上記の構成によると、使用時には駆動部を駆動すれば昇降部と共に蓋部が上昇して開くので、人力によって蓋部を開いたり、取り除いたりする必要がない。収納時にも防水シートを折り畳めば昇降部により蓋部は下降して再び閉じるので、収納作業が容易である。
【0028】
第7の発明では、第1から第6のいずれか1つの発明において、
前記蓋部が、前記防水シートの上端に連結されることで、前記防水シートの補強部材を兼ね、
前記蓋部が前記昇降部によって持ち上げられることで、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される。
【0029】
上記の構成によると、駆動部を駆動して昇降部を上昇させると、蓋部と共に防水シートが同時に持ち上げられ、また、蓋部が補強部材を兼ねているので、補強部材がない場合に比べ、防水シートの上端が撓みにくくて強度が増し、防水壁の高さも高くすることができる。
【0030】
第8の発明では、第1から第6のいずれか1つの発明において、
前記蓋部が、前記昇降部によって引き出される前記防水シートにより持ち上げられるように構成されている。
【0031】
上記の構成によると、昇降部を上昇させると防水シートの上昇に伴って蓋部も自動で持ち上げられるので、人力で蓋部を開く必要がなく、防水壁の設置が極めて容易となる。
【0032】
第9の発明では、第1から第6のいずれか1つの発明において、
前記防水シートに梁部材が一体的に設けられ、前記梁部材が前記防水シートの補強部材を構成し、
前記梁部材を複数の支柱に跨がるように支持させることで、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される。
【0033】
上記の構成によると、防水シートに一体に設けた梁部材を介して防水シートが支持されるので、梁部材がない場合に比べ、防水シートの上端が撓みにくくて強度が増し、防水壁の高さも高くすることができる。また、梁部材が複数の支柱に支持されるので、防水シートに加わる荷重を分散できる。
【0034】
第10の発明では、第1から第6のいずれか1つの発明において、
前記防水シートの上部には、パイプ部材又は袋とじ部が設けられ、
前記パイプ部材又は袋とじ部にワイヤが通され、
前記ワイヤを介して前記防水シートが前記支柱に吊り下げられている。
【0035】
上記の構成によると、ワイヤを引っ張ることで、そのワイヤが通されたパイプ部材又は袋とじ部が引き上げられてその一辺の防水シートが引き上げられる。このため、重量が重い防水シートであっても、防水壁の設置が容易かつ確実に行われる。また、剛性のあるパイプ部材又は袋とじ部にワイヤが通されているので、ワイヤをウインチ等で巻き上げたときに防水シートの上端で撓み等が生じにくい。
【0036】
第11の発明では、第1から第10のいずれか1つの発明において、
前記防水シートの下端が、前記シート収納用溝部の前記敷地又は建物と反対側に固定されている。
【0037】
上記の構成によると、防水シートを引き上げ易く、引き上げた後も支柱上部に向かって斜めに延びるので、防水シートが安定し、収納もし易い。また、防水シートを敷地又は建物から見て支柱の外側に固定しているので、防水シートにて囲われた領域内に降った雨水をシート収納用溝部に逃がすことができる。このため、シート収納用溝部内の水を排水できるようにすることで、防水シートで囲まれた保護領域側に水が溜まりにくくなる。
【0038】
第12の水防方法では、
保護対象である敷地又は建物を防水シートにより連続して覆って防水壁を形成する方法であって、
(i)少なくとも、前記敷地又は建物に通じて車両や人が通行する道路又は通路を含む部分において、
前記防水シートの下端を固定する防水シート固定部を含むシート収納用溝部と、
前記防水シート固定部と離間した位置に、駆動部によって上下に昇降可能な昇降部を有する複数の支柱とを設け、
前記防水シート固定部に前記防水シートの下端を固定し、前記防水シートの上端を前記昇降部に連結した状態で前記防水シートを前記シート収納用溝部に折り畳んで又は丸めて、連続して収納し、
前記防水シートを収納した前記シート収納用溝部を開閉可能な蓋部で覆い、
(ii)道路又は通路を含まない部分においても、
前記防水シートの下端を固定する防水シート固定部を連続して設け、
前記防水シート固定部に下端を固定するようにして連続して前記防水シートを配置し、
前記防水シート固定部と離間した位置で複数の支柱を配置し、
使用時に、前記蓋部を開き、前記防水シートを引き上げて前記支柱の上部に支持することにより、前記防水シートにより前記敷地又は建物を連続して覆う防水壁を形成する構成とする。
【0039】
上記の構成によると、車両や人が通行する道路又は通路を含む部分において、通常時には、車両や人が通行する際に、シート収納用溝部に収納された防水シートが蓋部で覆われているので、通行の邪魔にならない。浸水時には、まず通路又は道路の部分ではない領域において防水シートを引き上げてその上部を支柱に固定することで、浸水直前まで道路又は通路を利用して敷地又は建物を出入りでき、最後に道路又は通路部分において、昇降部を上昇させて蓋部を外し、支柱の上部に防水シートを固定することで、防水シートを保管場所から運んでくることなく、敷地又は建物を連続して覆う防水壁を完成させることができる。さらに、防水壁全体で、支柱をシート固定部から離間させているので、防水シートを引き上げ易く、引き上げた後も支柱上部に向かって斜めに延びるので、防水シートが安定し、収納もし易い。
【0040】
第13の発明は、第12の発明において、
前記昇降部に前記蓋部を連結しておき、
前記昇降部を上昇させたときに前記蓋部も上昇する。
【0041】
上記の構成によると、使用時に昇降部を上昇させると蓋部も同時に上昇して開くので、人力で蓋部を開く必要がなく、防水壁の設置が極めて容易である。
【0042】
第14の発明は、第12又は第13の発明において、
前記蓋部を前記防水シートの上端に連結して前記防水シートの補強部材とし、
前記蓋部が前記昇降部によって持ち上げられることで、前記防水シートによって連続的に防水壁が形成される構成とする。
【0043】
上記の構成によると、駆動部を駆動して昇降部を上昇させると、防水シートも上昇して同時に持ち上げられ、また、蓋部が補強部材を兼ねているので、補強部材がない場合に比べ、防水シートの上端が撓みにくくて強度が増し、防水壁の高さも高くすることができる。
【0044】
第15の発明は、第12の発明において、
前記昇降部によって引き上げられる前記防水シートによって前記蓋部が持ち上げられる構成とする。
【0045】
上記の構成によると、昇降部を上昇させると防水シートも自動で持ち上げられるので、防水壁の設置が極めて容易となる。
【0046】
第16の発明では、第12から第15のいずれか1つの発明において、
前記防水シートに梁部材を一体的に設け、前記梁部材で前記防水シートの補強部材を構成し、
前記梁部材を複数の支柱の上部に跨がるように支持させることで、前記防水シートによって連続的に防水壁を形成する構成とする。
【0047】
上記の構成によると、防水シートに一体に設けた梁部材を介して防水シートが支持されるので、梁部材がない場合に比べ、防水シートの上端が撓みにくくて強度が増し、防水壁の高さも高くすることができる。また、梁部材が複数の支柱に支持されるので、防水シートに加わる荷重を分散できる。
【0048】
第17の発明では、第12から第16のいずれか1つの発明において、
前記防水シートの上部に、パイプ部材又は袋とじ部を設け、
前記パイプ部材又は袋とじ部にワイヤを通し、
前記ワイヤを介して前記防水シートを前記支柱に吊り下げる構成とする。
【0049】
上記の構成によると、ワイヤを引っ張ることで、そのワイヤが通されたパイプ部材又は袋とじ部が引き上げられてその一辺の防水シートが引き上げられる。このため、重量が重い防水シートであっても、防水壁の設置が容易かつ確実に行われる。また、剛性のあるパイプ部材又は袋とじ部にワイヤが通されているので、ワイヤをウインチ等で巻き上げたときに防水シートの上端で撓み等が生じにくい。
【発明の効果】
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、通常時には、防水シートが邪魔にならずに敷地又は建物を出入りでき、浸水時には、防水シートを別の場所から運んでくることなく、防水シートによって保護対象である敷地又は建物の保護が必要な部分を迅速に覆って容易に浸水を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1A】本発明の実施形態1に係る水防システムの収納状態を示す斜視図である。
【
図1D】
図1BのIC-IC線に対応する断面で切断した拡大斜視図である。
【
図1F】本発明の実施形態1に係る水防システムの使用状態を示す斜視図である。
【
図1H】本発明の実施形態1に係る水防システムの使用状態の支柱、蓋部及びその周辺を示す拡大断面図である。
【
図2A】本発明の実施形態1の変形例に係る水防システムの収納状態を示す斜視図である。
【
図2D】本発明の実施形態1の変形例に係る水防システムの使用状態を示す斜視図である。
【
図3A】本発明の実施形態2に係る水防システムの収納状態を示す斜視図である。
【
図3D】
図3BのIIIC-IIIC線に対応する断面で切断した拡大斜視図である。
【
図4A】本発明の実施形態2に係る水防システムの使用状態を示す斜視図である。
【
図5A】本発明の実施形態2の変形例に係る水防システムの収納状態を示す斜視図である。
【
図6A】本発明の実施形態3に係る全周に昇降部を有する支柱を設けた水防システムの収納状態を示す斜視図である。
【
図6B】本発明の実施形態3に係る全周に昇降部を有する支柱を設けた水防システムの使用状態を示す斜視図である。
【
図7A】本発明の実施形態3の変形例に係る全周に蓋部が連結された昇降部を有する支柱を設けた水防システムの収納状態を示す斜視図である。
【
図7B】本発明の実施形態3の変形例に係る全周に蓋部が連結された昇降部を有する支柱を設けた水防システムの使用状態を示す斜視図である。
【
図8A】本発明の実施形態4に係る使用状態の、直線部分の支柱及び防水シートを拡大して示す斜視図である。
【
図8B】本発明の実施形態4に係る使用状態の、角部の支柱及び防水シートを拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0053】
(実施形態1)
-水防システムの構成-
実施形態1の水防システム1は、
図1A及び
図1Fに示すように、例えば、河川に沿って設けた、敷地としての堤防Eに設けられている。通常、堤防Eには、車両や人が通行する道路Rが交わる部分において橋Bがかけられている。それ以外の堤防E及び橋Bには、人等が河川側に入らないようにある程度の高さのフェンスFが設けられている。ここで、「堤防」とは、一般に、河川、湖の氾濫や海水の侵入を防ぐため、河岸、湖岸、海岸に沿って設けた土石やコンクリート製の構築物を言うが、市街地を流れる小型河川のように、盛土がないような岸の壁部も含む意味である。
【0054】
そして、保護対象である、河川に沿って設けた堤防Eの、河川と反対側を浸水から保護するために、堤防Eに沿ってシート収納用溝部2が連続して設置されている。シート収納用溝部2は、少なくとも橋Bに至る道路Rを含む部分に設けられていればよく、河川全長においてシート収納用溝部2が設けられていなければない、という意味ではない。シート収納用溝部2は、基本的には河川に沿って設けられるので、河川が曲がっている領域においては、河川と同様に曲がるように設けてもよいし、河川よりも緩やかに曲がるように設けてもよい。
【0055】
シート収納用溝部2は、
図1C、
図1H等に示すように、本実施形態では底面が平らな矩形状のものである。図示しないが、シート収納用溝部2内に溜まった水が滞りなく排出されるように、底面が傾いていたり、排水用孔が形成されていたりしてもよい。
【0056】
本実施形態のシート収納用溝部2は、堤防Eを新たに設ける場合だけでなく、既存の堤防Eに追加で設けることも可能である。見映え、安全性等の観点から、シート収納用溝部2の上部は、開閉可能な蓋部10で覆われている。
【0057】
シート収納用溝部2は、防水シート固定部を含み、その内壁に、堤防Eを連続して覆う防水シート3の下端3aが固定されるようになっている。特に本実施形態では、防水シート3の下端3aが、シート収納用溝部2の保護対象である堤防Eの、河川と反対側にて取付金具3bにより固定されている。
【0058】
なお、車両や人が通行しない領域は、シート収納用溝部2を設けずに、堤防Eの上面を防水シート固定部とし、取付金具3bにより防水シート3の下端3aを固定し、その近傍に、平坦に防水シート3を折り畳んで載置したり、ボックス内に防水シート3を収納したりするようにしてもよい。
【0059】
防水シート3は、シート状部材よりなり、その材質、厚さ等は特に制限されず、防水性と可撓性を有していればよいが、長期間屋外で供用されることを考慮し、耐水、耐熱、耐オゾン等の耐候性の高いゴムシート、塩ビシート、ターポリン等の材料で構成されており、防水性と衝撃に対する強度を高めるには、単一のシート材料よりも、所謂ゴム引き布の方が望ましい。
【0060】
そして、シート収納用溝部2の近傍(具体的には、堤防Eにおける河川と反対側)には、防水シート3を支持する複数の支柱4が設けられている。本実施形態では、災害時に迅速に防水壁20を形成できるように、大部分の支柱4は、昇降部4cを有する直動装置付支柱となっている。しかし、図示しないが、一部の支柱4は、昇降部を有さない常時起立させた固定支柱で構成してもよいし、ボラートのように出し入れ可能な可動支柱で構成してもよい。
【0061】
本実施形態では、
図1B~
図1Eに示すように、直動装置付きの支柱4は、ボール軸4aと、このボール軸4aに同心に設けられてボール軸4aを覆う支柱本体4bを備えている。そして、ボール軸4aには、防水シート3を昇降させる昇降部4cが連結されており、この昇降部4cが、駆動部としての電動モータ4eを駆動することで、支柱本体4bに形成したスリット4d内を上下に移動可能に構成されている。駆動部は、油圧モータ、油圧シリンダ、空圧シリンダ等他の流体、電気等で駆動されるアクチュエータで構成してもよい。
【0062】
防水シート3は、その下端3aがシート収納用溝部2に固定可能であると共に、昇降部4cに引き上げられて、その上部が複数の支柱4の上部に固定可能である。防水シート3の折り方は特に限定されないが、例えば、ジグザグに折って上下に積み重ねるとよい。場合によっては丸めて収納してもよい。上述したように、防水シート3の下端3aは、取付金具3bによりシート収納用溝部2の河川側内壁に固定されているが、その固定方法は特に限定されない。
【0063】
防水シート3が折り畳まれて収納されたシート収納用溝部2が、板状の蓋部10で覆われている。蓋部10は、シート収納用溝部2の周縁の蓋部用凹部2a(
図1Dに示す)に嵌め込むだけでもよいし、図示しないヒンジ部を設けて開閉可能に構成してもよい。図示する蓋部10は、孔のない板状であるが、場合によってはグレーチングのような孔が設けられたもので構成してもよい。孔のない板状の場合には、表面に滑り止めのための凹凸面等が形成されているとよい。蓋部10は、円柱状の支柱4を避けるように支柱用開口10aを有する。
【0064】
本実施形態では、
図1Gに示すように、防水シート3の袋とじ部3cに棒状の梁部材6が設けられている。例えば、防水シート3の上端に形成した袋とじ部3cに棒鋼、金属パイプ等よりなる梁部材6が挿通されている。
図1D、
図1G等に示すように、この梁部材6は、昇降部3cに連結されている。梁部材6は、収納位置において防水シート3と共にシート収納用溝部2内に収容される。そして、昇降部3cの昇降動作に伴って梁部材6も上下移動し、結果として防水シート3の上端が上下移動するように構成されている。
【0065】
そして、水防システム1は、昇降部3cが収納位置から使用位置まで上昇することで、
図1G、
図1H等に示すように、防水シート3が引き上げられ、その梁部材6が複数の支柱4の上部に跨がるように支持されることで、
図1Fに示すように、防水シート3によって連続的に河川に沿って防水壁20が形成されるようになっている。
【0066】
-防水壁を形成する方法-
まず、堤防Eに沿って道路R及び橋Bがある部分を含め、シート収納用溝部2を設け、それを開閉可能な蓋部10で覆う。シート収納用溝部2の取付金具3bと離間した位置、具体的には河川と反対側に昇降部4cを有する支柱4を立設する。詳しくは図示しないが、支柱4の電動モータ4eのための、電力供給や駆動制御のための電線等を接続し、シート収納用溝部2内を這わせておく。
【0067】
こうすることで、
図1A~
図1Eに示すように、防水シート3の収納時は、シート収納用溝部2に防水シート3が収納されると共に、支柱4の下端が収納され、シート収納用溝部2を覆う蓋部10の上を車両や人が通行可能となる。本実施形態では、橋Bがない部分においても、シート収納用溝部2が蓋部10で覆われているので、人、自転車等が河川に沿って通行しても邪魔にならない。
【0068】
浸水時には、まず、道路R部分以外において、昇降部4cを
図1B、
図1C等に示す収納位置から上昇させ、蓋部10を開きながらシート収納用溝部2から防水シート3を引き上げ、昇降部4cが
図1G、
図1H等に示す使用位置に至ることで、防水シート3の上端が複数の支柱4に固定される。最後に、橋Bの部分において昇降部4cを収納位置から上昇させ、蓋部10を開いてシート収納用溝部2から防水シート3を引き上げ、昇降部4cが使用位置に至ることで、防水シート3の上端が複数の支柱4に固定される。このようにすれば、浸水直前まで橋Bに通じる道路Rを通行可能である。
【0069】
これにより、梁部材6が複数の支柱4に跨がるように支持され、
図1Fに示すように、防水シート3によって連続的に防水壁20が形成される。
【0070】
一方、浸水の可能性が減って再び防水シート3を収納するときには、昇降部4cを使用位置から収納位置に戻しながら防水シート3を複数の支柱4から降ろし、折り畳んでシート収納用溝部2に収納し、蓋部10を閉じる。蓋部10には支柱用開口10aが形成されているので、蓋部10が支柱4と接触することはない。
【0071】
本実施形態では、
図1Gに示すように、防水シート3に一体に設けた梁部材6を介して防水シート3が支持されるので、梁部材6がない場合に比べ、防水シート3の上端が撓みにくくて強度が増し、防水壁20の高さも高くすることができる。また、梁部材6が複数の支柱4に支持されるので、防水シート3に加わる荷重を分散できる。
【0072】
本実施形態では、支柱4をシート固定部(取付金具3b部分)から離間させているので、防水シート3を引き上げ易く、
図1Hに示すように、引き上げた後も支柱4上部に向かって斜めに延び、防水シート3が安定し、収納もし易い。さらに、水圧は取付金具3b部分に引張荷重としても支持されることから、支柱4に加わる荷重も軽減される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、通常時には、防水シート3が邪魔にならずに橋Bの上を通行でき、浸水時には、防水シート3によって迅速かつ容易に河川からの浸水を防ぐことができる。
【0074】
-変形例-
図2A~
図2Eは本発明の実施形態1の変形例に係る水防システム1’を示し、特に蓋部10’の構成が異なる点で上記実施形態1と異なる。なお、以下の各変形例及び各実施形態では、
図1A~
図1Hと同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0075】
本変形例では、蓋部10’が昇降部4cと一体的に昇降移動するように構成されている。蓋部10’は、昇降部4cと共に昇降移動するので、
図2B等に示すように、支柱用開口10a’は、円形となっている。上記実施形態1と同様に防水シート3の上端には、梁部材6が挿通されていてもよい。
【0076】
本変形例においても、
図2A~
図2Cに示す収納状態では、防水シート3は、シート収納用溝部2内に収納され、その上を蓋部10’で覆われているので、車両や人の通行の妨げにならない。
【0077】
そして、昇降部4cを上昇させると、蓋部10’も上昇し、防水シート3の上端も引き上げられる。
【0078】
昇降部4cが
図2Eに示すように、使用位置まで上昇すると、
図2Dに示すように、防水シート3によって防水壁20’が形成される。このとき、蓋部10’は、支柱4の上側にあるので、防水シート3によりかかっておらず、支柱4に荷重を加えることはない。
【0079】
防水シート3を収納する際にも昇降部4cを降ろすと、防水シート3も折り畳まれる。なお、防水シート3が自動で折り畳まれるように折り畳み方を工夫してもよい。
【0080】
このように、本変形例においても迅速かつ容易に防水壁20’を形成して河川からの浸水を防止することができる。
【0081】
(実施形態2)
図3A~
図4Gは本発明の実施形態2の水防システム101を示し、浸水からの保護対象が異なる点で上記実施形態1と異なる。
【0082】
-水防システムの構成-
本発明の実施形態2の水防システム101は、平面視で多角形状(本実施形態では矩形状)に連続して掘られた防水シート固定部を含むシート収納用溝部102を備えている。
【0083】
本実施形態では、保護対象として一軒の住宅の建物Pを対象としているが、複数の住宅や工場を含む区画全体を囲む、避難場所として公園等を囲む、浸水・冠水による農作物の病害発生等を回避するために農地を囲むなど適用範囲は広い。なお、ブロック塀など他の防水可能な構造物が設けられている場合には、その構造物が設けられていない部分のみを囲めばよい。
【0084】
例えば
図4Aに示すように、シート収納用溝部102は、建物Pを囲むように矩形に設けられているが、建物Pの敷地Aの形状に合わせて他の多角形状に設けてもよい。
図3C及び
図3Eに示すように、このシート収納用溝部102には、引き上げると連続した平面視多角形状の防水壁120(
図4Aに示す)を構成する防水シート103が折り畳むように収納されている。詳しくは図示しないが、この防水シート103を折り畳む際には、特に角部において、適切に防水シート103が引き出されるように折り畳まれる。折り畳みは、角部の角度、防水シート103の厚さなどにより適切に行われる。
【0085】
シート収納用溝部102は、
図3E等に示すように、本実施形態では底面が平らな断面矩形状のものである。図示しないが、シート収納用溝部102内に溜まった水が滞りなく排出されるように、底面が傾いていたり、排水用孔が形成されていたりしてもよい。なお、氾濫時、この排水孔から下水等が逆流するのを防ぐために、排水孔に開閉可能な蓋や、排水方向にのみ開く逆止弁等を備えていてもよい。
【0086】
本実施形態では、四角形の角部だけでなく、四角形を形成する各辺にも、引き上げられた防水シート103を支持する複数の支柱104,104’が設けられている。本実施形態では、複数の支柱104,104’は、シート収納用溝部102よりも内側(内水氾濫等から守られる建物P側の敷地A側)に設けられ、上部に防水シート103が吊り下げられるように構成されている。支柱104,104’の本数はこれよりも多くても少なくてもよい。
【0087】
本実施形態では、特に建物Pの出入り口Dに通じる通路G上及びその周辺の各支柱104は、上記実施形態1と同様に、ボール軸104aと、このボール軸104aに同心に設けられてボール軸104aを覆う支柱本体104bを備えている。そして、ボール軸104aには、防水シート103を昇降させる昇降部104cが連結されており、この昇降部104cが駆動部としての電動モータ104eを駆動することで、支柱本体104bに形成したスリット104d(
図3Bに示す)内を上下に移動可能に構成されている。
【0088】
図4Bに示すように、上記実施形態1と同様に、防水シート103の上端には、袋とじ部103cが設けられ、その袋とじ部103c内に、例えば丸棒材、丸パイプなどよりなる梁部材106が挿通され、防水シート103が、梁部材106に吊り下げされるようになっている。梁部材106が昇降部104cに堅固に固定されており、昇降部104cが昇降することで、防水シート103の上端も昇降するようになっている。
【0089】
そして、
図3Eに拡大して示すように、防水シート103の下端103aは、シート収納用溝部102の保護対象である敷地A又は建物Pと反対側内壁に取付金具103bによって固定されている。防水シート103は、シート収納用溝部102内を一周する形で収納されている。
【0090】
本実施形態では、
図3Aに示すように、建物Pの出入り口周辺の支柱104以外の支柱は、昇降部104cを有さず、地面に収納しない固定支柱104’となっている。図示しないが、固定支柱104’は、複数の固定梁で互いに連結されて建物Pを囲むフェンスの役割を果たしていてもよい。浸水時には、防水シート103が引き上げられて上部が固定支柱104’に固定されるように構成されている。
【0091】
図4D及び
図4Eに示すように、固定支柱104’においても、防水シート103の上端には、袋とじ部103cが設けられ、その袋とじ部103c内に、梁部材106が挿通され、防水シート103が、梁部材106に吊り下げされるようになっている。防水シート103は人力で引き上げるなどすればよい。
【0092】
図4Dに示すように、直線部の固定支柱104’の上端に係合凹部107が形成され、また
図4Gに示すように、角部の固定支柱104’の上端には、角部の角度に合わせた凹部形状の係合凹部107’が設けられている。一方、防水シート103の上端の梁部材106が、これらの係合凹部107,107’に係合されることで、防水シート103が、梁部材106に吊り下げされるようになっている。
【0093】
使用時(浸水時)には、
図4B、
図4C及び
図4Fに示すように、防水シート103は、上方に向かって支柱104,104’の上部側に傾斜するように引き上げられるようになっている。
【0094】
図4Aに示すように、防水シート3は、引き上げられて敷地A又は建物Pの角部にある支柱4の部分で折れ曲がった状態で支柱104,104’の上部に固定され、防水シート103によって連続的に防水壁120が形成されるように構成されている。
【0095】
-水防方法-
次に、本実施形態に係る水防方法について説明する。
【0096】
図3Aに示すように、平常時(通常時)などの水防システム101を使用しないときには、出入り口D側の通路G及びその周辺では、防水シート103がシート収納用溝部102に収納され、蓋部110で覆われている。また、建物Pの出入り口D周辺には、支柱104が設けられていない。このため、見映えがよく、建物Pの出入りの妨げにならない。一方、その他の固定支柱104’は、常時起立した状態で設けられており、フェンスの役割を果たしている。
【0097】
そして、使用時(浸水時)には、まず、固定支柱104’部分の蓋部110を取り外す。例えば、蓋部110は、固定支柱104’の近くに置いておく。
【0098】
次いで、
図4D及び
図4Eに示すように、固定支柱104’の係合凹部7に防水シート103の梁部材106を上方から嵌め込んで係合させる。角部についても、
図4Gに示すように、角部専用の固定支柱104’の係合凹部107’に梁部材106の先端を係合させる。これにより、
図4Fに示すように、防水シート103が固定支柱104’の上部側に傾斜するように引き上げられる。
【0099】
この作業をまず固定支柱104’の範囲で行っておく。そうすれば、建物Pを完全に覆うまでの間、建物Pの出入りが行える。
【0100】
次いで、建物Pの出入り口Dに通じる通路周辺の支柱104の電動モータ104eを駆動する。例えば、図示しない制御盤にスマートフォンなどの携帯通信機器から信号を送って電動モータ104eを駆動するようにすれば、安全に昇降部104cの操作を、安全な位置で行える。
【0101】
昇降部104cが上昇し始めると、
図4Bに拡大して示すように、引き上げられた防水シート103によって蓋部110が押し上げられる。昇降部104cを使用位置まで上昇させると、防水シート103が支柱104の上部に固定される。
【0102】
これにより、支柱104,104’及び防水シート103を他の保管場所から持ち運ぶことなく迅速に、
図4Aに示すように、敷地A又は建物Pの周囲を平面視で角部の固定支柱104’の部分で折れ曲がった角部を有するようにして、連続した断面四角形の傾斜した側壁を有する防水壁120が完成する。なお、防水壁120の外周面となる部分には、絵柄などを描いて外観が悪化しないようにしてもよい。
【0103】
このように、本実施形態では、シート収納用溝部102に収納されていた防水シート103を引き上げて支柱104,104’に支持させるだけで、敷地A又は建物Pの周囲を連続して覆う平面視多角形の防水壁120が完成する。
【0104】
また、複数の支柱104,104’の上部に跨がる梁部材106を介して防水シート103が支持されるので、強度が増し、防水壁120の高さも高くすることができる。
【0105】
さらに、通路G上及び周辺の支柱104については、少なくとも車両が通行できる幅を開けておくのが望ましい。そうすれば、見映えがよい上に、敷地Aや建物Pに対する車両の出入りの妨げにならない。
【0106】
本実施形態では、防水シート103の下端103aをシート収納用溝部102の保護対象である敷地A又は建物Pと反対側に固定したので、防水シート103を引き上げ易く、引き上げた後も支柱104及び固定支柱104’の上部に向かって斜めに延びるので、防水シート103が安定し、収納もし易い。また、防水シート103にて囲われた領域内に降った雨水は、シート収納用溝部102に逃がすことができる。
【0107】
したがって、本実施形態に係る水防システム101においても、通常時には、防水シート103が邪魔にならずに敷地A又は建物Pを出入りでき、浸水時には、支柱104,104’や防水シート103を別の場所から運んでくることなく、防水シート103によって保護対象である敷地A又は建物Pの保護が必要な部分を迅速かつ安全に覆って浸水を防止することができる。
【0108】
また本実施形態では、火災保険の保険料の支払い対象とならない、「床上浸水又は地盤面より45cmを超える浸水」とならないような軽度な浸水も、防水シート103の防水壁120単体で効果的に防ぐことができる。
【0109】
上記実施形態2では、平面視四角形状の防水壁120を設けたが、平面視で、円形、楕円形、長円形などの湾曲した形状が含まれていてもよい。また、一部に擁壁があるような場合には、全周ではなく、それ以外の必要な領域にのみ防水壁120を設ければよい。このような場合には、その形状に合わせてシート収納用溝部102及び支柱104,104’を配置すればよい。さらに、平面視で一部がへこむような場合、その隅角部は、保護対象の敷地や建物と反対側(防水シート103の外側)に支柱104,104’が配置されてもよい。その場合も、防水シート103の下端103aは、シート収納用溝部102の、保護対象である敷地A又は建物Pと反対側に固定するとよい。
【0110】
-変形例-
図5A~
図5Cは本発明の実施形態2の変形例に係る水防システム101’を示し、特に蓋部110’の構成が異なる点で上記実施形態2と異なる。なお、以下の各変形例及び各実施形態では、
図3A~
図4Gと同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0111】
本変形例では、蓋部110’が昇降部104cと一体的に昇降移動するように構成されている。蓋部110’は、昇降部104cと共に昇降移動するので、支柱用開口110a’は、円形となっている。上記実施形態2と同様に防水シート103の上端には、梁部材6が挿通されていてもよい。
【0112】
本変形例においても、図示しない収納状態では、防水シート103は、シート収納用溝部102内に収納され、その上を蓋部110’で覆われているので、車両や人の通行の妨げにならない。
【0113】
そして、昇降部104cを上昇させると、蓋部110’も上昇し、防水シート103の上端も引き上げられる。
【0114】
昇降部104cが
図5B及び
図5Cに示すように、使用位置まで上昇すると、
図5Aに示すように、防水シート103によって防水壁120’が形成される。このとき、蓋部110’は、支柱104の上側にあるので、防水シート103によりかかっておらず、支柱104に荷重を加えることはない。
【0115】
防水シート103を収納する際にも昇降部104cを降ろすと、防水シート103も折り畳まれる。なお、防水シート103が自動で折り畳まれるように折り畳み方を工夫するとよい。
【0116】
このように、本変形例においても迅速かつ容易に防水壁120’を形成して河川からの浸水を防止することができる。
【0117】
(実施形態3)
図6A及び
図6Bは本発明の実施形態3の水防システム201を示し、固定支柱104’を有さない点で上記実施形態2と異なる。
【0118】
-水防システムの構成-
本発明の実施形態3の水防システム201も、
図6Bに示すように、上記実施形態2と同様に、平面視で矩形状に連続して掘られた防水シート固定部を有するシート収納用溝部102を備えている。
【0119】
本実施形態では、特に建物Pの出入り口Dに通じる通路G上だけでなく、全周において、昇降部104cを有する支柱104が設けられている。詳しい説明は省略するが、角部の支柱104に対応する蓋部210’は、他の蓋部110と異なる形状とすればよく、昇降部104cが上昇するのに伴って角部の一対の蓋部210’が開くようにすればよい。
【0120】
本実施形態では、通常時、
図6Aに示すように、全ての支柱104及び防水シート103が収納されて蓋部110,210’で覆われているので、見映えがよく、通路Gだけでなく、全周において通行が可能となっている。
【0121】
浸水時には、まず、通路G部分以外の全ての支柱104の昇降部104cを上昇させ、蓋部110,210’を開きながら、昇降部104cを収納位置から使用位置まで上昇させ、防水シート103の梁部材106を支柱104の上部まで移動させることにより、防水シート103を引き上げる。
【0122】
最後に通路G部分の支柱104の昇降部104cを上昇させることで、蓋部110を開きながら、防水シート103の梁部材106を支柱104の上部まで移動させ、防水シート103を引き上げる。
【0123】
これにより、
図6Bに示すように、上記実施形態2と同様に防水シート103によって連続的に防水壁220が形成される。
【0124】
したがって、本実施形態においても、通常時には、防水シート103や支柱104が邪魔にならずに通路Gを通って敷地A又は建物Pを出入りでき、浸水時には、支柱104や防水シート103を別の場所から運んでくることなく、防水シート103によって保護対象である敷地A又は建物Pの保護が必要な部分を迅速に覆って容易に浸水を防止することができる。
【0125】
-変形例-
図7A及び
図7Bは本発明の実施形態3の変形例に係る水防システム201’を示し、特に蓋部110’の構成が異なる点で上記実施形態3と異なる。
【0126】
本変形例では、蓋部110’が昇降部104cと一体的に昇降移動するように構成されている。蓋部110’は、昇降部104cと共に昇降移動するので、支柱用開口110a’は、円形となっている。上記実施形態2と同様に防水シート103の上端には、梁部材6が挿通されていてもよい。本変形例では特に角部の蓋部210’’がL字状であり、1つの昇降部104cで昇降移動されるようになっている。
【0127】
本変形例においても、図示しない収納状態では、防水シート103は、シート収納用溝部102内に収納され、その上を蓋部110’で覆われているので、車両や人の通行の妨げにならない。
【0128】
そして、昇降部104cを上昇させると、蓋部110’,210’’も上昇し、防水シート103の上端も引き上げられる。
【0129】
昇降部104cが使用位置まで上昇すると、
図7Bに示すように、防水シート103によって防水壁220’が形成される。このとき、蓋部110’,210’’は、支柱104の上側にあるので、防水シート103によりかかっておらず、支柱104に荷重を加えることはない。
【0130】
防水シート103を収納する際にも昇降部104cを降ろすと、防水シート103も折り畳まれる。なお、防水シート103が自動で折り畳まれるように折り畳み方を工夫してもよい。
【0131】
このように、本変形例においても迅速かつ容易に防水壁220’を形成して建物Pや敷地A内への浸水を防止することができる。
【0132】
(実施形態4)
図8A及び
図8Bは、本発明の実施形態4にかかる水防システム301を示し、防水シート303の上端の袋とじ部303cにワイヤ306が挿通されている点で、上記各実施形態と異なる。
【0133】
ワイヤ306は、複数の支柱304を跨ぐようにして連続して防水シート303の袋とじ部303c(袋とじ部に挿通したパイプ部材でもよい)を通っている。
【0134】
図示しないが、複数の支柱304のうちの少なくとも一部の支柱304の上部には、滑車が設けられていてもよい。ワイヤ306は、滑車を介して電動又は油圧駆動のウインチに接続されていてもよい。
【0135】
ワイヤ306は、直線部及び角部を含め、各支柱304の上端の係合凹部307,307’に嵌め込むようにして係合されることで、抜けにくくなっているが、ワイヤ306自体は、その軸方向に移動可能としてもよい。
【0136】
そして、浸水時には、支柱304を引き上げた後、滑車に掛けられたワイヤ306が、電動又は油圧駆動のウインチによって巻き取られることで、防水シート303が支柱304の上側に引き上げられるように構成してもよい。防水シート303の高さは、ウインチの巻き取り量によって内水氾濫による水を止水可能な高さまで調整できるようにしてもよい。
【0137】
こうすると、重量が重い防水シート303であっても、防水壁の設置が容易かつ確実に行われる。また、剛性のあるパイプ部材又は袋とじ部303cにワイヤ306が通されているので、ワイヤ306をウインチ等で巻き上げたときに防水シート303の上端で撓み等が生じにくい。
【0138】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0139】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0140】
上記実施形態では、直動装置付きの支柱4,104をシート収納用溝部2,102の内側に配置している。詳しくは図示しないが、直動装置付きの支柱4,104を保護対象の反対側における、シート収納用溝部2,102の外側に配置してもよい。
【0141】
その場合には、昇降部4c,104cの収納スペースを設けておけば、支柱4,104の設置スペースが削減され、蓋部10,110も小型化して有利である。電動モータ4e,104eに接続される電線等をシート収納用溝部2,102から支柱4,104に向かって通過するためのスペースを確保するとよい。
【0142】
上記各実施形態では、防水シート3,103,303は、折り畳んでシート収納用溝部2,102に収納するようにしているが、一部丸めて収納してもよい。また、シート収納用溝部2,102を掘らない場合には、地面に直接又は地面に置いたボックス(図示せず)内に折り畳んだ又は丸めた防水シート3,103,303を配置してもよい。
【符号の説明】
【0143】
1,1’,101,101’,201,201’,301 水防システム
2,102 シート収納用溝部
2a 蓋部用凹部
3,103,303 防水シート
3a,103a 下端
3b,103b 取付金具(防水シート固定部)
3c,103c,303c 袋とじ部
4,104,204,304 支柱
4a ボール軸
4b 支柱本体
4c,104c 昇降部
4d スリット
4e,104e 電動モータ(駆動部)
6,106,306 梁部材
7,107,107’,307,307’ 係合凹部
10,10’,110,110’,210’ 蓋部
20,20’,120,120’,220,220’ 防水壁
104’ 固定支柱
306 ワイヤ
A 敷地
B 橋部
D 出入り口
E 堤防
F フェンス
G 通路
P 建物
R 道路
【要約】
少なくとも、敷地又は建物に通じ車両や人が通行する道路又は通路において、防水シート固定部(3b)を含むシート収納用溝部(2)を連続して掘り、開閉可能な蓋部(10)でシート収納用溝部を覆い、支柱(4)に、防水シート(3)の上端が固定されて駆動部によって上下に移動可能な昇降部(4c)を設け、通常時は、シート収納用溝部に防水シートが収納されると共に、昇降部が収納位置にあってシート収納用溝部を覆う蓋部の上を車両や人が通行可能であり、浸水時には、昇降部が収納位置から上昇し、蓋部が開いてシート収納用溝部から防水シートが引き上げられ、昇降部が使用位置に移動して防水シートの上部が複数の支柱に固定される。