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特許7551993未知のソースからのバックグラウンド放射線の推定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】未知のソースからのバックグラウンド放射線の推定
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240910BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240910BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20240910BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240910BHJP
   G06T 5/70 20240101ALI20240910BHJP
【FI】
G01N23/04
A61B6/03 550K
A61B6/03 560D
G01N23/046
G06T1/00 290A
G06T5/70
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021128056
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2022029447
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】63/060,988
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517023736
【氏名又は名称】ヴァレックス イメージング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン、ミンシャン
(72)【発明者】
【氏名】スター-ラック、ジョシュ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ホルト、ケヴィン エム.
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-185080(JP,A)
【文献】特開2010-110374(JP,A)
【文献】特開平05-273676(JP,A)
【文献】特表2008-528168(JP,A)
【文献】特表2009-544349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0325485(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0125438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - A61B 6/58
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 5/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線を受け取ること、
前記対象物を通して放射線を受け取った前記放射線検出器から得られた前記測定放射線をシミュレートすること、
前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線に基づいてオフセットを生成すること、
前記オフセットに基づいて散乱放射線を推定すること、及び
前記推定された散乱放射線に基づいて、一次放射線を推定すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線に基づいてゲインを生成すること、をさらに含み、
前記散乱放射線を推定することは、前記ゲイン及び前記オフセットに基づいて前記散乱放射線を推定すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲイン、前記オフセット、及び前記シミュレートされた測定放射線のシミュレートされた散乱放射線成分に基づいて前記推定された散乱放射線を生成すること、及び
前記推定された散乱放射線と前記測定放射線に基づいて、前記推定された一次放射線を生成すること、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
多項式を、前記シミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルに対する前記測定放射線のピクセル値の第1のベクトルに適合させること、及び
前記多項式に基づいて前記ゲインを生成すること、をさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲインは前記多項式の線形項である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記多項式は少なくとも二次多項式である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1の多項式を、前記シミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルに対する前記測定放射線のピクセル値の第1のベクトルに適合させること、
前記第1のベクトルのサイズ及び前記第2のベクトルのサイズを、閾値よりも大きい前記第1の多項式の誤差を有するピクセル値を除去するために縮小すること、
前記縮小された第2のベクトルに対する前記縮小された第1のベクトルに、第2の多項式を適合させること、及び
前記第2の多項式に基づいて前記ゲインを生成すること、
をさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線が同じ分解能を有するように、前記測定放射線及び/または前記シミュレートされた測定放射線のサイズを変更すること、
前記測定放射線の対象領域を決定すること、
第1の閾値未満の値を有する前記対象領域内の前記測定放射線のピクセル値の第1のベクトルを生成すること、
前記第1のベクトルに対応する前記シミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルを生成すること、
第1の多項式を、前記第2のベクトルに対する前記第1のベクトルに適合させること、
前記第1の多項式の相対誤差が第2の閾値よりも大きい場合に、前記第1のベクトル及び前記第2のベクトルからピクセル値を除去すること、
第2の多項式を、前記第2のベクトルに対する前記第1のベクトルの残りのピクセル値に適合させることであって、
前記ゲインは、前記第2の多項式の線形項を含む、適合させること、
前記測定放射線の複数のサブ領域のそれぞれからの最小値を含む第3のベクトルを生成すること、
第4のベクトルを生成するために前記第3のベクトルを平滑化すること、
第5のベクトルを生成するために前記第4のベクトルを1より大きい値によってスケーリングすること、及び
前記測定放射線の各サブ領域の各ピクセルについて、
前記各ピクセルの値が前記各サブ領域に関連付けられた前記第5のベクトルの前記値を下回る場合、オフセット行列の前記対応するピクセルの値は、前記測定放射線の前記ピクセル値と前記ゲインによってスケーリングされた前記シミュレートされた測定放射線の前記対応するピクセルのピクセル値の差であり、
他のピクセルについて、前記各サブ領域の前記オフセット行列の他のピクセルに基づいて、前記オフセット行列の前記対応するピクセルの値を生成する場合に、
前記オフセットとして前記オフセット行列を生成すること、
をさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項9】
各ピクセル値タプルが閾値を超えるユークリッドの大きさを有する場合に、前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線のピクセルを選択すること、
前記選択されたピクセルに基づいて中間ゲインを生成すること、及び、
前記オフセット及び第2の中間ゲインに基づいて前記ゲインを生成すること、
をさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項10】
前記測定放射線の最大値及び前記シミュレートされた測定放射線の最大値に基づいて、第1の中間ゲインを生成すること、
前記シミュレートされた測定放射線を、前記第1の中間ゲインで前記測定放射線に正規化すること、
前記正規化されたシミュレートされた測定放射線及び測定放射線のユークリッドの大きさを各ピクセルに対して計算すること、
前記正規化されたシミュレートされた測定放射線及び第1の閾値を超えるユークリッドの大きさを有する測定放射線のピクセルに対応する前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線の第1のピクセルを選択すること、
前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線の前記選択された第1のピクセルに基づいて第2の中間ゲインを生成すること、
前記正規化されたシミュレートされた測定放射線及び第2の閾値を下回る大きさを有する測定放射線のピクセルに対応する、前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線の第2のピクセルを選択すること、
前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線の前記選択された第2のピクセルに基づいて前記オフセットを生成すること、及び
前記オフセットと前記第2の中間ゲインに基づいて前記ゲインを生成すること、
をさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項11】
前記測定放射線の複数のサブ領域のそれぞれの中間ゲインを含む中間ゲイン行列を生成すること、及び
前記複数のサブ領域のそれぞれの前記オフセットを、関連する中間ゲインに基づいて生成すること、
をさらに含む、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定放射線の複数のサブ領域のそれぞれについて、
前記複数のサブ領域の最小値に基づいて閾値を生成し、
前記複数のサブ領域の各ピクセルに対して、前記閾値よりも低い値でピクセルオフセットを生成し、及び
前記値が前記閾値よりも低い前記複数のサブ領域の前記各ピクセルの前記ピクセルオフセットを、前記閾値よりも大きい値の前記複数のサブ領域のピクセルのデフォルトオフセットに結合することであって、
前記オフセットは、前記閾値よりも低い前記値と前記デフォルトオフセットを有する前記複数のサブ領域の前記各ピクセルの前記ピクセルオフセットを含むオフセット画像である、結合する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
各ピクセル値タプルが閾値を下回るユークリッドの大きさを有する場合に、前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線のピクセルを選択すること、及び
前記選択されたピクセルに基づいて前記オフセットを生成すること、
をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
通信インターフェースと、
メモリと、
プロセッサであって、
対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線を受け取ること、
前記対象物を通して放射線を受け取った前記放射線検出器から得られた前記測定放射線をシミュレートすること、
前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線に基づいてオフセットを生成すること、
前記オフセットに基づいて散乱放射線を推定すること、及び
前記推定された散乱放射線に基づいて、一次放射線を推定すること、
を行うように構成されるプロセッサと、
を含む、システム。
【請求項15】
前記プロセッサは、
第1の多項式を、前記シミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルに対する前記測定放射線のピクセル値の第1のベクトルに適合させること、
前記第1のベクトルのサイズ及び前記第2のベクトルのサイズを、閾値よりも大きい前記第1の多項式の誤差を有するピクセル値を除去するために縮小すること、
前記縮小された第2のベクトルに対する前記縮小された第1のベクトルに、第2の多項式を適合させること、
前記第2の多項式に基づいてゲインを生成すること、及び、
前記ゲイン及び前記オフセットに基づいて前記散乱放射線を推定すること、
を行うようにさらに構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、
各ピクセル値タプルが閾値を超えるユークリッドの大きさを有する場合に、前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線のピクセルを選択すること、
前記選択されたピクセルに基づいて中間ゲインを生成すること、
前記オフセット及び第2の中間ゲインに基づいてゲインを生成すること、及び、
前記ゲイン及び前記オフセットに基づいて前記散乱放射線を推定すること、
を行うようにさらに構成される、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサは、
サブ領域の最小値に基づいて閾値を生成すること、
前記サブ領域の各ピクセルに対して、前記閾値よりも低い値でピクセルオフセットを生成すること、及び
前記値が前記閾値よりも低い前記サブ領域の前記各ピクセルの前記ピクセルオフセットを、前記閾値よりも大きい値の前記サブ領域のピクセルのデフォルトオフセットに結合すること、を行うようにさらに構成され、
前記オフセットは、前記閾値よりも低い前記値と前記デフォルトオフセットを有する前記サブ領域の前記各ピクセルの前記ピクセルオフセットを含むオフセット画像である、請求項14から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサは、
各ピクセル値タプルが閾値を下回るユークリッドの大きさを有する場合に、前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線のピクセルを選択すること、及び
前記選択されたピクセルに基づいて前記オフセットを生成すること、
を行うようにさらに構成される、請求項14から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線を受け取る手段、
前記対象物を通して放射線を受け取った前記放射線検出器から得られた前記測定放射線をシミュレートする手段、
前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線に基づいてオフセットを生成する手段、
前記オフセットに基づいて散乱放射線を推定する手段、及び
前記推定された散乱放射線に基づいて、一次放射線を推定する手段、
を含む、システム。
【請求項20】
前記測定放射線及び前記シミュレートされた測定放射線に基づいてゲインを生成するための手段であって、散乱放射線を推定するための前記手段は、前記ゲインに基づいて散乱放射線を推定するための手段を含む、生成するための手段、
前記ゲイン、前記オフセット、及び前記シミュレートされた測定放射線のシミュレートされた散乱放射線成分に基づいて、測定された散乱放射線を生成するための手段、及び
前記測定された散乱放射線及び前記測定放射線に基づいて、測定された非散乱放射線を生成するための手段、
をさらに含む、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書で別段の指示がない限り、このセクションで説明するアプローチは、この開示における特許請求の範囲に対する従来技術ではなく、このセクションに含めることで従来技術であると認められるものではない。
【0002】
一部のX線画像化では、広域のコーン形のビームを使用する場合がある。X線検出器は、主要放射線と散乱放射線の両方を検出することができる。散乱放射線は、画像または再構成にアーチファクトが入り込む可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】いくつかの実施形態による画像化システムのブロック図である。
図2A】AからBは、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のフローチャートである。
図2B】AからBは、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のフローチャートである。
図3】いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術におけるゲインの推定のフローチャートである。
図4】いくつかの他の実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術の複数のパスのゲインの推定のフローチャートである。
図5】いくつかの他の実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術において対象領域を使用した複数のパスのゲインの推定のフローチャートである。
図6】いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のオフセットの推定のフローチャートである。
図7】他のいくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のサブ領域にわたるオフセットの推定のフローチャートである。
図8A】測定放射線画像Iを示す。
図8B】シミュレートされた一次放射線画像Jを示す。
図8C】シミュレートされた散乱放射線画像Jを示す。
図9A】測定放射線画像Iのシミュレートされた放射線画像Jtotへの二次多項式適合のファーストパスの散布図を示す。
図9B】外れ値が除外された、シミュレートされた放射線画像Jtotへの測定放射線画像Iの二次多項式適合のセカンドパスの散布図を示す。
図10】列ベクトルのグラフを示す。
図11A】オフセット画像を示す。
図11B】平滑化されたオフセット画像を示す。
図12A】バックグラウンドまたは外部散乱補正のない、再構成された画像を示す。
図12B】バックグラウンドまたは外部散乱補正を伴う再構成された画像を示す。
図13】いくつかの他の実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のゲインの推定のフローチャートである。
図14】いくつかの他の実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のオフセットの推定のフローチャートである。
図15】いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のゲイン及びオフセットの推定のフローチャートである。
図16A】測定放射線画像Iを示す。
図16B】シミュレートされた一次放射線画像Jを示す。
図16C】シミュレートされた散乱放射線画像Jを示す。
図17】シミュレートされた測定放射線画像Jtotに対する正規化された測定放射線画像Iの散布図またはグラフを示す。
図18A】測定放射線画像を示す。
図18B】オフセットの計算で使用されるピクセルを示す。
図18C】ゲインの計算で使用されるピクセルを示す。
図19】いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のゲイン及びオフセットの推定のフローチャートである。
図20】例示的なバックグラウンド放射線推定及び補正デバイスのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明の任意の実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その出願において、以下の説明に記載されるか、または以下の図面に示される、構成の詳細及び構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態とすることが可能であり、様々な方式で実施または実行することが可能である。フローチャート及びプロセスにおいて提供される番号は、ステップ及び操作の説明を分かりやすくするために提供されるものであり、必ずしも特定の順序またはシ-ケンスを示すものではない。特に定義されていない限り、「または」という用語は、代替案の選択(例えば、論理和演算子もしくは排他的OR)、または代替案の組み合わせ(例えば、論理積演算子、及び/または(and/or)、論理ORもしくはブ-ルOR)を指すことができる。
【0005】
開示された実施形態は、概して技術、メカニズム、方法、デバイス、及びシステムに関し、一般に技術と呼ばれ、バックグラウンド散乱放射線または未知のソースからのオフセットを対象物の散乱と共に推定し、画像化検出器の視野(FOV)にある対象物によって生成された散乱放射線、画像化検出器のFOVの外側のバックグラウンド散乱放射線の両方などを補正する。開示された実施形態はまた、対象物の散乱に関する空間的に変化する及び/または不変のスケーリング係数(ゲイン)、ならびにバックグラウンド散乱放射線に関する空間的に変化する及び/または不変のオフセットを推定するための技術を提供する。
【0006】
図1は、いくつかの実施形態による画像化システムのブロック図である。コーンビームコンピュータ断層撮影法(CBCT)は、対象物の3次元(3-Dまたは3D)の体積測定的情報を提供するための画像化技術である。画像化システム100は、典型的には、X線源などの放射線源102と、フラットパネル検出器、画像化検出器、または検出器とも呼ばれる放射線検出器106とからなる。例としてX線源を使用して、放射線源102は、投影画像を生成する対象物108を通過した後、放射線検出器106に信号を生成する散開するコーン形のX線放射線103を放出するように構成される。(例えば、ガントリーを介して)システム100を対象物108の周りで完全にまたは部分的に回転させることによって、または同等に、固定静止画像化システム100の内部で対象物108を回転させ、次いで適切な再構成アルゴリズムを適用することによって、対象物108の内部構造の3D再構成を得ることができる。回転が例として使用されるが、他の実施形態では、らせん、円+線、サドル、トモシンセシス、ラミノグラフィ-、「逆幾何学CT」などのような種々の取得軌道または技術が使用され得る。CBCTの高い等方性空間分解能と高スル-プットにより、CBCTは、寸法の計測、非破壊的検査、欠陥の識別、一般的な品質管理、組立ラインでの部品の検査といった産業用の用途での強力なツールである。CBCTは、医用画像化やセキュリティ検査などの他の用途にとっても強力なツールである。
【0007】
広域コーン形ビーム103は、それが物質を通過するときに大量の散乱放射線を生成し得、望ましくない、時には深刻な画質の劣化を引き起こし、カッピング、陰影、縞、不均一性、及び材料密度の不正確さなどのアーチファクトが生じる。
【0008】
システム100は、プロセッサ112に結合され得る。プロセッサ112は、汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、特定用途向け集積回路、マイクロコントロ-ラ、プログラマブル論理回路、ディスクリート回路、このようなデバイスの組み合わせなどであってもよい。システム100には1つだけのプロセッサ112が示されているが、複数のプロセッサ112が存在し得る。さらに、メモリ、論理チップセット、ハブ、メモリコントロ-ラ、通信インターフェースなどの他のインターフェースデバイスが、プロセッサ112の一部であり得る。
【0009】
プロセッサ112は、画像検出器106から受信された1つまたは複数の画像に対して様々な画像処理技術を実行するように構成され得る。いくつかの画像処理技術は、特に対象物自体から発生する散乱に対処することで、散乱の問題を軽減することができる。例えば、カーネルベースの散乱推定方法は、高速で効率的な場合があるが、多少精度が乏しい場合がある。別の例では、CBCT散乱補正アルゴリズムは、GPUで実行される高速有限要素決定論的光子輸送ソルバーを使用する。高速有限要素決定論的光子輸送ソルバーは、対象物の3Dボクセル化表現を介して輸送される非散乱(一次)及び散乱X線光子をすばやく計算できる。これは、処理されたファーストパスCBCT再構成から生成されることが頻繁にある。次に、カーネル法または実際の散乱を近似する輸送ベースの方法のいずれかから推定または計算された散乱を、測定された元の投影から差し引いて、より正確な画像を再構築することができる。
【0010】
X線ビームの経路にあるものは事実上すべて、散乱を生成する可能性があるため、対象物108のものだけよりも多くの散乱源が存在する可能性がある。例えば、いくつかの産業用途の場合のように、X線ビームが広く開いている場合、放射線検出器106の視野103a(FOV)にはないが照射フィ-ルド103にはあるいずれかの追加の対象物114はまた、検出器に到達する散乱放射線110aを生成することができる。走査システムの特定の設定及び追加の対象物114の位置に応じて、この散乱(または「バックグラウンド」)成分は重要である可能性がある。しかし、残念ながら、このタイプの散乱源は放射線検出器106によって認識されないため、このバックグラウンド散乱の強度は、上記2つの方法と文献の他の多くの方法を含む従来のソフトウェアベースの散乱推定/補正アルゴリズムのいずれでも対処及び補正することが事実上不可能であり得る。
【0011】
通常、ビームはコリメートされないため、バックグラウンド放射線の補正は産業用CBCTの一般的な問題である。本明細書に記載のいくつかの実施形態は、放射線検出器FOV103aの外側の未知のソースからの散乱を推定する問題をヒュ-リスティックに解決することができる。
【0012】
X線画像化では、検出器に到達する信号には、式1で表されるように、一次と散乱の2つの成分がある。
【数1】
式1
【0013】
は、検出器に到達する(測定)信号であり、Iは一次であり、Iは散乱である。一次Iは、散乱されていない光子を表し、その空間分布は、対象物108の内部構造に関する情報を伝え、「真の」信号と見なされる。Iは、測定されたものである。散乱補正技術またはアルゴリズムが、既知Iから未知Iを得るために行われる。
【0014】
いくつかの実施形態では、散乱I及び一次I放射線は、放射線輸送を説明する、基礎となる物理法則を使用して、所与の対象物のファーストパスの再構成から計算される。この計算またはプロセスは、シミュレーションと呼ばれる。シミュレーションは、X線源のスペクトルから始まり、コーン形の照射をモデル化し、組成と密度が対象物に似ている物質の3Dマトリックスによって、モデル化された照射を減衰させ、一次強度と散乱強度を別々に計算する。シミュレートされた信号は式2で表される。
【数2】
式2
【0015】
はシミュレートされた一次放射線、Jはシミュレートされた散乱放射線、Jtotはシミュレートされた測定放射線の結合である。
【0016】
様々な成分は、X線スペクトル、ソース分布、スキャナの幾何学的形状、対象物のプロパティ、例えば物質の組成及び密度、及び検出器の応答を含み、正しくモデル化されているとき、シミュレートされた測定放射線Jtotは、測定放射線Iと近接して整合しているべきものである。シミュレートされた測定放射線Jtot及び測定放射線Iとの違いは、ゲインまたはスケーリング定数とノイズを含むべきである。ゲインは、シミュレーションで表される光子の数が測定値を表す必要がないという事実から生じる(例えば、違いは、様々なモデル化されていない効果、例えばアナログ-デジタルコンバーター(ADC)スケーリング、電子ゲイン、検出器コンデンサの選択物、チューブ電流設定(mAの設定など)、チューブのろ過、または不正確なソースからの距離の測定などによる可能性がある)。ゲインはλとして表され、最初に光子ノイズや電子ノイズ(後述)などのノイズ源を無視し、次いで、シミュレートされた測定放射線Jtot及び測定放射線Iとの関係は、式3によって表すことができる。
【数3】
式3
【0017】
式1及び3を組み合わせた、一次放射線Iは、式(4)で表すことができる。
【数4】
式4
【0018】
一次が、典型的には、粗いファーストパスの再構成に基づいてモデル化することが困難である高周波信号であるため、CBCT散乱補正方法は、λJを、Iと直接みなさない。散乱が低周波信号であり、その計算が一般に、ファーストパスの再構成における誤差に対してロバストであるため、測定された信号から散乱推定を減算することは、直接一次自体をシミュレートするよりも正確な一次信号Iに至る。
【0019】
スケーリング係数λは、2つの既知の量I及びJtotから、式5で表されるように、2つの直接的な比率として推測することができる。
【数5】
式5
【0020】
tot及びIは、画像である(または数学用語の行列)。いくつかの実施形態では、λはすべてのピクセルに適用されるスカラーであり、生成されるのλ値は、すべてのピクセルにとって適切な妥協点となり得る。例えば、値λは、式5を計算する前に(例えば、I及びJtotのピクセルの値を平均化し、次いでI及びJtotの平均値の比率からスケーリング係数λを生成する(λ=Im,AVG/Jtot,AVG))、または式5を計算した後に(例えば、I及びJtotにおける各ピクセルの値の比率を計算し、次に、比率の平均からスケーリング係数λを生成する(λ=(I/Jtot,)の平均))行うことができる、平均化により得られる。別の言い方をすれば、1つのアプロ-チは、各ピクセルに対して式5を計算し、次いでそれらの比率の平均をとって結果を集計し、λを取得するというものである。別のアプロ-チは、ピクセルJtotの平均及びピクセルIの平均をとることにより、ピクセル値を最初に集計し、次いで式5を適用してλを取得するものである。別のものとして、λは単純な平均ではなく加重平均と見なすことができ、ノイズの多いまたは信頼性の低いデータポイントに与える重みを少なくする。さらに別の例として、λは平均ではなく中央値で計算できる。
【0021】
シミュレートされた測定放射線Jtotは、ゲインλによって記述されているものは別にして、測定放射線Iと異なっていてもよいことに留意されたい。言い換えれば、シミュレートされた測定放射線Jtotは、測定放射線Iとして放射線検出器106によって測定されたものとは似ていない可能性がある。物理的な現実から逸脱するシミュレーションのいずれかの仮定を含め、この不一致には多くの理由が存在し得る。例えば、X線源のエネルギースペクトル、対象物108のモデルの材料と密度の推定値の精度、及びX線の入射に対する検出器の応答を完全にモデル化することが非常に難しい場合がある。シミュレーションモデルの誤差は誤差の原因となる可能性があるが、これらの誤差は通常、画像化されている対象物以外の源から追加された外部散乱成分に比べて小さいものである。
【0022】
追加された外部散乱成分をシミュレーションモデルで考慮しないと、測定とシミュレーションの間のスケーリングの関係が成り立たなくなるため、問題が発生し得る。対象物がモデルの一部である場合、バックグラウンド補正なしで開示された方法が機能する。未知の対象物114がFOV103aの外側に存在し、これらの未知の対象物114が考慮されていない場合、バックグラウンド補正なしの画像処理は、散乱を著しく過小評価する可能性がある。
【0023】
検出器の近くの対象物が照射されても、検出器上に直接画像(一次)を生成せず、画像に散乱を与える場合、この信号は、本明細書では「バックグラウンド散乱」または「外部散乱」と呼ばれる。式3は、式6で表すことができるバックグラウンドの成分を含めるように、書き換え、増強、及び/または拡張できる。
【数6】
式6
式中、追加の変数bはバックグラウンドの散乱を表し、未知数である。
【0024】
本明細書に記載の実施形態は、I及びJtotからの情報を使用して、λ及びbを推定することができる。λとbのそれぞれは、空間的に変化する(行列)または空間的に一定である(スカラー)場合があることに留意されたい。実施形態は、ゲインλがスカラーでオフセットbが行列である第1のアルゴリズム、ゲインλがスカラーでオフセットbがスカラーである第2のアルゴリズム、及びゲインλとオフセットbの両方の空間変動をサポ-トするためのフレームワ-クを使用する第3のアルゴリズムを含む、いくつかのアルゴリズムを含み得る。他の実施形態は、異なるアルゴリズムを含み得る。いくつかの実施形態では、Jtot、J及びJに関連するゲインλは、同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、オフセットbは、交換可能に「外部散乱」、「バックグラウンド」、「追加の散乱」、または「オフセット」と呼ばれる。また、λは「スケーリング係数」または「ゲイン」と呼ばれる。
【0026】
図2Aから図2Bは、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のフローチャートである。図1のシステム100は、例として使用される。図1のプロセッサ112は、本明細書に記載の様々な技術を実行するように構成することができる。しかし、他の実施形態では、プロセッサ112は、他の動作が他のプロセッサによって実行されている間に、動作のいくつかを実行するように構成され得る。図1図2A、及び図2Bを参照すると、いくつかの実施形態では、200において、対象物108を介して放射線103を受け取った放射線検出器106から得られた測定放射線Iが受け取られる。プロセッサ112は、放射線検出器106から受信されたデータに基づいて、受け取った放射線の強度を表すデータの二次元アレイを生成することができる。いくつかの実施形態では、放射線検出器106は、データを生成するように構成され得る。他の実施形態では、プロセッサ112は、異なるソースからの測定放射線Iを受け取るように構成されてもよい。
【0027】
202において、対象物108を通して放射線を受け取った放射線検出器106から得られた測定放射線Iは、Jtotとしてシミュレートされる。いくつかの実施形態では、プロセッサ112がシミュレーションを実行し、一方で他の実施形態では、他のシステムがシミュレーションを実行し、結果をプロセッサ112に提供することができる。シミュレーションは、様々な光子輸送シミュレーション技術を使用して実行できる。3D VSHARPはそのような技術の例である。しかし、他の実施形態では、他の技術を使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、204において、ゲインλは、測定放射線I及びシミュレートされた測定放射線Jtotに基づいて生成される。しかし、他の実施形態では、ゲインの生成は省いてもよく、1などの定数であると仮定されるか、さもなければ、測定放射線I及びシミュレートされた測定放射線Jtotの一方または両方に基づかない。いくつかの実施形態では、ゲインλは、初期の較正手順の一部として生成され得る。対象物108のないスキャンを実行することができる。ゲインは、オフセットbが生成されるときのものよりむしろそのスキャンから測定及びシミュレートされたデータを用いることによって生成することができるλとすることができる 。いくつかの実施形態では、ゲインλは、対象物108の所望のスキャンからのデータが取得される前に生成されてもよい。他の実施形態では、ゲインλは、ソース-イメージャ-の距離、ソースフラックスなどに基づく適切な係数によってゲインλをスケーリングすることによって、生成されてもよい。いくつかの実施形態では、ゲインλは、システム100の構成要素をシミュレートしてゲインλを分析的に生成することによって、生成されてもよい。
【0029】
206において、オフセットbは、測定放射線I及びシミュレートされた測定放射線Jtotに基づいて生成される。ゲインλとオフセットbは、プロセッサ112によって生成することができる。以下で説明するように、ゲインλとオフセットbを生成するために様々な手法を使用できる。λゲインとオフセットbのそれぞれは、行列またはスカラーの場合がある。204と206の動作で、ゲインλとオフセットbは、シミュレートされた測定放射線Jtotの一部を使用して、例えばシミュレートされた一次放射線Jまたはシミュレートされた散乱放射線Jにより、シミュレートされた測定放射線Jtotに基づいて生成され得る。
【0030】
208または208'において、散乱放射線Iは、オフセットbまたはゲインλ及びオフセットbに基づいて、各々推定される。210で、一次放射線Iは推定された散乱放射線Iに基づいて推定される。推定された一次放射線は、一次放射線の補正と呼ばれることもある。または測定放射線Iの補正と呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、ゲインλとオフセットbの両方が生成されると、散乱放射線Iの推定は、シミュレートされた散乱放射線Jに、式7によって表されるオフセットbによって表される外部散乱を加えたものとして、計算することができる。
【数7】
式7
【0031】
完全を期すために、測定一次放射線または一次放射線Iは、測定放射線Iと測定散乱放射線Iとの間の単なる差であるが、いくつかの実施形態では、ノイズを低減するために、一次放射線Iは、式8により表されるように推定されることに留意されたい。
【数8】
式8
【0032】
実際には、Iを乗算する項は、このときノイズを低減するためにフィルタリング及び/またはクリップすることができる。他の実施形態では、測定一次放射線Iは、測定放射線Iから散乱放射線Iの推定値を差し引くことによって単に計算される。
【0033】
いくつかの実施形態では、計算されたオフセットbは、Jと同じサイズではない場合があり、必要に応じて、Jのサイズに変更することができる。いくつかの実施形態では、Iは、Iのサイズに一致するように再度サイズ変更する必要がある場合がある。
【0034】
図3は、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のゲインの推定のフローチャートである。いくつかの実施形態では、ゲインλは、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線に対する様々な動作に基づいて推定され得る。動作204-1及び204-2は、図2Bの動作204に含まれ得る動作の例である。
【0035】
204-1において、多項式は、シミュレートされた測定放射線Jtotのピクセル値の第2のベクトルに対する測定放射線Iのピクセル値の第1のベクトルに適合させている。204-1では、ゲインλは多項式に基づいている。例えば、ゲインλは、多項式の線形成分であるスカラー値である場合がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、多項式は、一次または線形多項式であり得る。ただし、他の実施形態では、多項式はより高次の多項式であり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも二次多項式である多項式が、残留ビーム硬化の効果、検出器応答の不正確さなどのシミュレーションモデルの誤差をより良く収容することができる。その結果、線形項は、シミュレーション-測定のマッピングで、対応する非線形性の影響を受けにくくなる可能性がある。
【0037】
適合により、0次の項も生成される。これは、投影全体のグロスオフセット(またはスカラーオフセットb)と見なされる。以下で説明するように、散乱放射線を推定するために使用されるオフセットbを生成するために追加の動作を実行することができる。
【0038】
図4は、いくつかの他の実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術の複数のパスのゲインの推定のフローチャートである。動作204-1、204-3、204-4及び204-5は、図2Bの動作204に含まれ得る動作の例である。
【0039】
204-1において、第1の多項式は、シミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルに対する測定放射線のピクセル値の第1のベクトルに適合されている。この動作は、上記の図3の204-1と同じであり得る。
【0040】
204-3では、第1のベクトルのサイズ及び第2のベクトルのサイズは、閾値よりも大きい第1の多項式の誤差を有するピクセルを除去するために縮小される。いくつかの実施形態では、閾値は、無限大または十分に大きな数であり得る。その結果、ピクセルは除去されない。他の実施形態では、閾値は、範囲外のピクセルが除去されるように設定され得る。その結果、第1のベクトルと第2のベクトルのピクセル数は少なくなる。特定の例では、誤差の閾値は約40%から60%である場合がある。いくつかの実施形態では、閾値は50%である。
【0041】
204-4では、第2の多項式は、縮小された第2のベクトルに対する縮小された第1のベクトルと適合される。適合の動作は、204-1のものと同じまたは類似している場合がある。204-1及び204-3での動作により、外れ値であるピクセルが削除された場合、つまり、第1の多項式に比べて誤差が大きかった場合、第2の多項式の方が適合度が高い場合がある。いくつかの実施形態では、204-4の動作は、第2の多項式として異なる次数の多項式を使用することができる。
【0042】
204-5では、ゲインλは第2の多項式に基づいて生成される。ゲインλの生成は、204-2の生成と同じか類似している場合があるが、第2の多項式を使用する。
【0043】
いくつかの実施形態では、204-1及び204-3と同様の動作を繰り返して、第1のベクトル及び第2のベクトルのピクセルをさらに低減することができる。誤差の同じまたは異なる閾値を使用して、ピクセルを削除することができる。ただし、数回の反復の後、最終的な多項式は204-4と同様に適合され、ゲインλは204-5のように生成され得る。
【0044】
図5は、いくつかの他の実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術において対象領域を使用した複数のパスのゲインの推定のフローチャートである。動作204-6から204-12は、図2Bの動作204に含まれ得る動作の例である。
【0045】
204-6では、測定放射線I及び/またはシミュレートされた測定放射線Jtotが同じ分解能を有するように、測定放射線I及び/またはシミュレートされた測定放射線Jtotのサイズを変更する。測定放射線Iをサイズ変更することができるか、シミュレートされた測定放射線Jtotをサイズ変更することができ、または両方のサイズが変更されてもよい。サイズ変更後、測定放射線Iのピクセル及びシミュレートされた測定放射線Jtotは、1対1の関連を有していてもよい。
【0046】
204-7では、測定放射線Iの対象領域(ROI)が決定される。いくつかの実施形態では、ROIは完全な画像であり得るが、他の実施形態では、ROIは画像のサブ領域であり得る。特定の例では、ROIは、信号が一般的に最も低く、したがって散乱の影響が最も大きいエリアであってもよい。最も低い信号を有する画像のエリアは、放射線検出器106に投影された対象物108の中央領域に対応するエリアを含み得る。別の例として、一定の間隔で、またはコンピュータビジョンによって識別された特定の対象の機能で、体積部の周囲に複数のROIが配置されている場合がある。いくつかの特定の例では、ROIは、CADモデルで手動で識別されたROIに対して体積を登録し、数個の大きく広い平坦な領域を自動的に探索し、いくつかの望ましい経路の長さ(例えば、より長い経路、または中程度の経路、画像の4分の1を超える経路など)を備える平坦なエリアを自動的に探索し、経路の長さが異なる分布のエリアを自動的に探索し、画像内のいくつかのエッジまたはコーナ-を見つけ、エッジまたはコーナ-を囲むROIを分析し、シリンダ-ブロックまたは回路基板の重心を見出しその周囲のROIを描画し、混合材料領域上または高密度の対象物間にROIを配置するなどによって決定できる。
【0047】
204-8では、第1の閾値よりも小さい値を有する対象領域内の測定放射線のピクセル値の第1のベクトルが生成される。ROIのすべてのピクセルが選択されるように、第1の閾値を選択することができる。他の実施形態では、第1の閾値は、特定の信号レベルよりも小さい値を有するピクセルのみが選択されるように選択され得る。これらのピクセル値は第1のベクトルに集められる。
【0048】
204-9では、第1のベクトルに対応するシミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルが生成される。204-6のように、測定放射線I及び/またはシミュレートされた測定放射線Jtotをサイズ変更したが、ピクセル値の第2のベクトルは、一対一を基礎としたピクセル値の第1のベクトルに対応して選択することができる。
【0049】
204-10では、第1の多項式は、第2のベクトル対する第1のベクトルに適合される。204-11では、第1の多項式の相対誤差が第2の閾値よりも大きい場合、第1のベクトルと第2のベクトルのピクセル値が除去される。204-12では、第2の多項式が第2のベクトルに対する第1のベクトルの残りのピクセル値に適合される。204-13では、ゲインは第2の多項式の線形項で構成される。204-10から204-13の動作は、図4に関して上記で説明した動作204-1、204-3、204-4、及び204-5と同様であり得る。
【0050】
図6は、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のオフセットの推定のフローチャートである。動作206-1から206-3は、図2Aまたは図2Bの動作206に含まれ得る動作の例である。いくつかの実施形態では、各行について、強度が最も低いエリアが決定され(また外部散乱の影響が顕著である)、次に、シミュレートされた信号を測定値と比較して、不一致を取得する。不一致の量はオフセットbである。閾値は、強度が十分に低いかどうかを判定するために使用される。閾値は、行の最小値に定数を掛けたものである。
【0051】
いくつかの実施形態では、動作206-1から206-3は、測定放射線Iの複数のサブ領域のそれぞれに対して実行される。206-1では、サブ領域の最小値に基づいて閾値が生成される。例えば、サブ領域内の最小値は、1.1、1.5などの1より大きい係数でスケーリングできる。以下でさらに詳細に説明するように、この閾値を使用して、ピクセルを、オフセットbが個別に計算されるものと、他の個別に計算されたオフセットbに基づいて計算するオフセットbを有するものに対して分割することができる。
【0052】
特に、206-2では、閾値よりも低い値で、サブ領域の各ピクセルに対してピクセルオフセットが生成される。いくつかの実施形態では、オフセットbは、式9によって計算され得る。
【数9】
式9
【0053】
206-3では、値が閾値よりも低いサブ領域のピクセルのピクセルオフセットが、閾値よりも大きい値のサブ領域のピクセルのデフォルトオフセットに結合される。例えば、206-2のオフセットbは、他のピクセルのために使用されているオフセットbを生成するために平均化されてもよい。他の実施形態では、中央値、加重平均などの他の技術を使用して、オフセットbを結合することができる。
【0054】
1より大きい閾値を使用すると、個々のオフセットbを生成するために使用されるピクセルの分割を制御できる。例えば、閾値は、単一のピクセル、つまり最小値のピクセルではなく、サブ領域内の値がより低い複数のピクセルを使用してノイズの影響を低減できるように選択できる。
【0055】
上記のように、オフセットbは、各ピクセルに対して生成され得る。結果として、オフセットbは、閾値よりも低い値とデフォルトオフセットを有するサブ領域のピクセルのオフセットbを含むオフセット画像である。いくつかの実施形態では、オフセット画像は、サブ領域ベースで、またはオフセット画像全体で平滑化することができる。平滑化により、一部のピクセルの処理が異なるために発生する可能性のあるいずれかの不連続性が和らげられることができる。平滑化は、メディアンフィルタ、ボックスフィルタ、バイラテラルフィルタ、スプライン、ガウスフィルタ、ロ-パスフィルタ、またはその他のタイプのフィルタを適用することによって実行できる。メディアンフィルタなどの一部のフィルタには、パラメータを1つだけ使用するという利点があり、一貫した結果と改善された画質をもたらす。いくつかの実施形態では、フィルタのサイズは、画像のサイズに基づくことができる。例えば、画像が約2000mmのサイズを有するのに対して、フィルタは50ミリメートル(mm)のサイズを有し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、オフセット画像は、限界を有するようにクランプされ得る。例えば、オフセット画像は、オフセット画像がその下限を通過しないように、下限でクランプされ得る。特定の例では、下限はゼロまたは負の数であり得る。その結果、大きな負の数をクランプし得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、ゲインλが計算された状態で、シミュレートされた測定放射線Jtotと測定放射線Iとの間の基本的なマッピングが存在し、オフセットbが決定され得る。いくつかの実施形態では、オフセットbは、外部散乱を含み得る。オフセットbは、平滑な様式でピクセルごとに異なると予想される。例えば、産業での画像化では、対象物108を回転させるために通常使用される回転台は、頻繁に外部散乱を生成し、したがって、外部散乱は、通常、列ごと(行が回転軸に直交する)よりも行ごとの変動が大きい。したがって、外部散乱は行ベースで推定できる。つまり、行がサブ領域を定めることができる。しかし、他の実施形態では、サブ領域は、外部散乱を生成する対象物114に対する放射線検出器106の向きによって定められ得る。サブ領域は、列、ピクセルの対角領域、ピクセルの湾曲領域などを含み得る。
【0058】
図7は、他のいくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のサブ領域にわたるオフセットの推定のフローチャートである。動作206-4から206-7は、図2Aまたは図2Bの動作206に含まれ得る動作の例である。
【0059】
206-4では、測定放射線Iの複数のサブ領域のそれぞれからの最小値を含む第3のベクトルが生成される。例えば、測定放射線Iの各行について、最小値が見つかる。各行の最小値を含む第3のベクトルが作成される。第3のベクトルの長さは、測定放射線Iの行数である。
【0060】
206-5では、第3のベクトルが平滑化されて第4のベクトルが生成される。平滑化は、例えば、メディアンフィルタ、ボックスフィルタ、バイラテラルフィルタ、スプライン、ガウスフィルタ、ローパスフィルタ、またはその他のタイプのフィルタを適用することによって、様々な技術を用いて実行できる。フィルタは、通常、わずかな数のピクセルの長さで動作し得る。したがって、第4のベクトルは、行ごとに平滑化された最小値を含み得る。いくつかの実施形態では、メディアンフィルタは、隣接する行から行への信号オーバーフロ-またはオーバーシュ-トを誘発せずにノイズを低減し、これは、対象物が軸方向(すなわち、行から行へ)に減衰する急な変化を有するとき、有用であり得る。
【0061】
206-6では、第4のベクトルが1より大きい値でスケーリングされ、第5のベクトルが生成される。動作206-1に関して前述したように、最小値は1より大きい係数でスケーリングできる。第4のベクトルをスケーリングすると、206-1と同様であるがすべての行に対して閾値が生成される。スケーリングは、オフセットの精度とノイズの低減の間のトレードオフを使用して、様々な用途に最適化できる。値が小さいとオフセットbがより正確になる傾向があり、一方で値が大きいと計算のピクセル数が増え、ノイズの低減に寄与し得る。
【0062】
206-7においては、ピクセル値がサブ領域に関連付けられた第5のベクトルの値を下回るのであれば、測定放射線Iの各サブ領域の各ピクセルに対し、オフセット行列の対応するピクセルは、測定放射線のピクセル値と、ゲインλによってスケーリングされたシミュレートされた測定放射線の対応するピクセル値の差である場合に、オフセット行列はオフセットbとして生成される。さらに、他のピクセルの場合、オフセット行列の対応するピクセル値は、サブ領域のオフセット行列の他のピクセル値に基づいて生成される。この動作206-7は、各行について上で説明した動作206-2及び206-3と同様であり得る。
【0063】
図8Aは、測定放射線画像Iを示す。図8Bは、シミュレートされた一次放射線画像Jを示す。図8Cは、シミュレートされた散乱放射線画像Jを示す。シミュレートされた一次放射線Jとシミュレートされた散乱放射線Jの組み合わせがシミュレートされた測定放射線Jtotを形成することができる。
【0064】
図9Aは、完全な画像ROIで測定放射線Iの対応するシミュレートされた放射線画像Jtotへの二次多項式適合のファーストパスの散布図を示す。y軸は、測定放射線Iを表し、x軸は、図8Aから図8Cのシミュレートされた測定放射線Jtotを、各ピクセルを赤の点、適合させた曲線を青にして表している。この適合曲線は、動作204-1または他の同様の動作の結果であり得る。
【0065】
図9Bは、誤差が50パーセントを超える(>50%)外れ値が除外されている、対応するシミュレートされた放射線画像Jtotへの測定放射線画像Iの二次多項式適合のセカンドパスの散布図を示す。y軸は、測定放射線Iを表し、x軸は、外れ値の除外後、図8Aから図8Cのシミュレートされた測定放射線Jtotを、各ピクセルを赤の点、適合させた曲線を青にして表している。線形項は0.608であり、これはこの示された投影のゲインλである。この適合曲線は、動作204-4または他の同様の動作の結果であり得る。
【0066】
図10は、列ベクトルのグラフを示す。青い点線は、動作206-4のように各行の最小値を有するベクトルである。次に、ベクトルを上記のフィルタの1つで平滑化して、ベクトルを使用してオフセット画像を生成する前に、動作206-5として赤い実線で表されるノイズ低減ベクトルを示す。
【0067】
図11Aは、平滑化前の動作206-7からのオフセット画像を示し、図11Bは、平滑化後のオフセット画像を示す。各行に閾値Tを使用しているため、画像の一部のみが直接的な計算のオフセットを有する。画像の残りの部分は、図11Aに示されるように、各行からの利用可能なオフセットの平均で満たされている。ボックスフィルタ(50mmフィルタなど)でフィルタ処理すると、オフセットが平滑化し、計算された外部散乱になる。
【0068】
図12Aは、バックグラウンドまたは外部散乱補正のない再構成された画像を示す。図12Bは、説明された技術を使用した、バックグラウンドまたは外部散乱補正を伴う再構成された画像を示す。示されているように、画像の均一性が改善されている。
【0069】
上記のように、いくつかの実施形態は、スカラーゲインλ及び空間的に可変のオフセットbを含む。他の実施形態では、ゲインλはスカラーのままであり得、オフセットbはスカラーに変更される。スカラーオフセットbは、静的オフセットまたは静的バックグラウンドと呼ばれる場合がある。オフセットbとゲインλの両方の計算方法が異なる場合がある。例えば、空気領域などの高強度領域をゲインの計算に使用することができ、最も減衰したエリア(または低強度領域)をオフセットの計算に使用することができる。
【0070】
図13は、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のゲインの推定のフローチャートである。動作204-13から204-15は、図2Aの動作204に含まれ得る動作の例である。
【0071】
204-13において、各ピクセル値タプルが閾値を超えるユークリッドの大きさを有する場合に、測定放射線I及びシミュレートされた測定放射線Jtotのピクセルが選択される。例えば、測定放射線Iとシミュレートされた測定放射線Jtotの各ピクセル値タプルについて、ユークリッドの大きさrは式10のように計算することができる。
【数10】
式10
【0072】
は、粗いゲイン推定値である。いくつかの実施形態では、gは、測定放射線I及びシミュレートされた測定放射線Jtotに基づいて生成され得る。しかし、他の実施形態では、gは1であり得る。測定放射線Iのより高い強度の値は、シミュレートされた測定放射線Jtotの対応するピクセルにおいてより高い強度の値を有する可能性が高い。これらのより高い強度の値は、ゲインλのより良い推定値を与える可能性がある。
【0073】
閾値は、より高い強度の値を選択するために使用される。例えば、閾値はrの最大値の95%(mと呼ばれる)である場合がある。95%は単なる例であり、所望の量のより高い強度のピクセルを選択するために1に近い任意の数にすることができる。
【0074】
204-14において、中間ゲインg2は、選択されたピクセルに基づいて生成される。例えば、中間ゲインgは、式11を使用して生成できる。
【数11】
式11
【0075】
204-15において、ゲインλは、オフセット及び第2の中間ゲインgに基づいて生成される。以下でさらに詳細に説明するように、オフセットbを生成し、次にゲインλをさらに微調整するために使用することができる。
【0076】
図14は、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のオフセットの推定のフローチャートである。206-10において、各ピクセル値タプルが閾値を下回るユークリッドの大きさを有する場合に、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線のピクセルが選択される。動作204-13と同様に、206-10において、ピクセルは、閾値を使用して選択され得る。ただし、選択と閾値は、ユークリッドの大きさが小さいピクセルを選択するために実装される。閾値は、最小のユークリッドの大きさ(m)に基づく場合がある。例えば、閾値はmの1.1倍であってもよい。1.1という値は例であり、所望の量のより低い強度のピクセルを選択するために1より大きい任意の値にすることができる。
【0077】
206-11では、オフセットbは選択されたピクセルに基づいて生成される。式12は、選択基準とオフセットbの生成の例である。
【数12】
式12
【0078】
ここで、選択されたピクセルについて、スケーリングされたシミュレートされた測定放射線Jtotが、測定放射線Iから差し引かれる。シミュレートされた測定放射線Jtotのスケーリングは、中間ゲインgである。オフセットbは、選択したすべてのピクセルにわたるこれらの値の平均である。
【0079】
図15は、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のゲイン及びオフセットの推定のフローチャートである。204-20では、測定放射線の最大値及びシミュレートされた測定放射線の最大値に基づいて、第1の中間ゲインが生成される。例えば、測定データI(m)の最大値とシミュレートされた測定放射線Jtot(m)の最大値が見出せる。第1の中間ゲインgは、m/mと推定される。粗ゲイン推定値gは、正確ではない場合もあるが、有効な最終的なゲインλとオフセットbを生成するための出発点として使用してもよい。
【0080】
204-21において、シミュレートされた測定放射線を、第1の中間ゲインで測定放射線Iに正規化する。いくつかの実施形態では、シミュレートされた測定放射線Jtotは、上記の式10のように、第1の中間ゲインgでスケーリングされる。しかし、第1の中間ゲインgの算出が反転されてもよい。シミュレートされた測定放射線Jtotは、その第1の中間ゲインgの逆数によってスケーリングされ得、測定放射線Iは、第1の中間ゲインgなどによってスケーリングされ得る。それにもかかわらず、シミュレートされた測定放射線Jtotが測定放射線Iに正規化される。
【0081】
204-22では、正規化されたシミュレートされた測定放射線と測定放射線のユークリッドの大きさが各ピクセルに対して計算される。ユークリッドの大きさは、上記の動作204-13と同様に、または正規化技術を前提として適切に計算できる。
【0082】
204-23では、正規化されたシミュレートされた測定放射線Jtot及び第1の閾値を超えるユークリッドの大きさを有する測定放射線Iのピクセルに対応する測定放射線及びシミュレートされた測定放射線の第1のピクセルが選択される。204-24において、第2の中間ゲインgは、測定放射線Iとシミュレートされた測定放射線Jtotの選択された第1のピクセルに基づいて生成される。これらの動作は、上記の204-13及び204-14の動作と同様であり得る。
【0083】
206-20では、正規化されたシミュレートされた測定放射線Jtot及び第2の閾値を下回る大きさを有する測定放射線Iのピクセルに対応する、測定放射線I及びシミュレートされた測定放射線Jtotの第2のピクセルが選択される。この動作は、動作206-10と同様であり得る。
【0084】
206-21において、オフセットは、測定放射線Iとシミュレートされた測定放射線Jtotの選択された第2のピクセルに基づいて生成される。この動作は、動作206-11と同様であり得る。
【0085】
204-25において、ゲインは、オフセット及び第2の中間ゲインgに基づいて生成される。いくつかの実施形態では、第2の中間ゲインgは、式13を用いて算出される最終的なゲインg(またはλ)に到達するように、オフセットbの存在を反映するよう調整される。
【数13】
式13
【0086】
上記、式11で使用されたものと同じ閾値、この例では0.95は、式13でのシミュレートされた測定放射線Jtotのピクセルを選択するための選択基準として、ここで使用され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、静的バックグラウンドオフセットは、式14として計算され得る。
【数14】
式14
【0088】
いくつかの実施形態では、図3から図5に関する上記のゲインの計算において、多項式適合の0番目の項が、画像のグロスオフセットを表す。そのグロスオフセット値が、ROI内のすべてではないにしてもほとんどのピクセルから導出されるため、その値は静的、スカラー、または不変のオフセットとしては使用されない。いくつかの例では、すべての強度のすべてのピクセルを使用するよりも、縦座標に近いときに静的オフセットの計算に最も暗いピクセルだけを使用する方が(つまり、縦座標における切片)、正確である。
【0089】
図16Aは、測定放射線画像Iを示す。図16Bは、シミュレートされた一次放射線画像Jを示す。図16Cは、シミュレートされた散乱放射線画像Jを示す。これらのことから、第1の中間ゲインgは0.518として計算される。第1の中間ゲインgは、シミュレートされた放射点に対する測定放射線のプロットを作るために、シミュレートされた合計をスケーリングするために使用される。各データポイントに対して原点までの距離が計算される。最も遠いポイントから5%以内にあるそれらのデータポイントが選択され(またゲインの計算に使用され)、最近接のポイントから10%以内にあるそれらのデータポイントが選択される(またオフセットの計算に使用される)。5%や10%という閾値は単なる例であり、他の実施形態では、異なるパーセンテ-ジ、異なる値などであり得る。
【0090】
図17は、シミュレートされた測定放射線画像Jtotに対する正規化された測定放射線画像Iの散布図またはグラフを示す。y軸は、測定放射線Iを表し、x軸は、シミュレートされた測定放射線Jtotを、各ピクセルを赤の点、適合させた曲線を青にして表している。右上隅にある緑色の点のクラスターは、204-23(ゲインに対する)で使用されたデータを表し、左下隅にある緑色の点のクラスターは、206-20(オフセットに対する)で使用されたデータを表す。
【0091】
図18Aは、参照のための測定放射線画像Iを示す。図18Bは、206-20のオフセットの計算で使用されるピクセル(白で示されている)を示し、図18Cは、204-23のゲインの計算で使用されたピクセル(白で示されている)を示す。図18Bから図18Cは、図17の散布図の緑色のポイントに対応するピクセルを示す画像を示す。
【0092】
近距離と遠距離のデータポイントが特定されると、上記のようにポイントを使用してゲインλとオフセットbを計算できる。この例では、ゲインλは0.488で、オフセットbは139である。
【0093】
いくつかの実施形態では、ゲインλ及びオフセットbの両方が空間的に可変であり得る。空間的依存性ゲインλを有することは、複数の別の用途において有用であり得る。特に、X線スペクトル、ターゲットの組成、本来のろ過、ヒール効果、対象物の材料組成と密度、シンチレータの応答、検出器の直線性など、不正確な可能性のある多くの原因がモデルまたはシミュレーションに存在する可能性がある。これらの要因のうちの多くは、データの非線形性として現れる可能性がある。テイラー級数近似を使用すると、これらの非線形効果の多くは、空間的に可変のゲインλによって、少なくとも部分的に補償できる。ただし、空間的に変化するゲインλを推定すると、いくつかの技術的なハードルが生じる可能性がある。これについては、以下で説明する。
【0094】
ゲインとバックグラウンドの両方を同時に推定するという1つの課題は、式6の第3の方程式(つまり、I=λJtot+b)を多くのピクセルで同時に解くことを目的とすることにより、概説できる。これは、式15として言い換えることができる。
【数15】
式15
【0095】
正の整数であるiは、ピクセルのインデックスである。Nのピクセルがある場合、iは1からNになる。次に、式15はNの方程式の系を表す。式中、Nは通常大きい。bとλがiから独立している場合(つまり、bとλの両方がスカラーである場合)、Nの方程式と2つの未知数があるため、方程式の系は通常、明確に定義された解を有することが期待でき、問いは上記のようなアルゴリズムを使用するのに適している。λは行列であるが、bがスカラーの場合、直接解くことはできない、N+1の未知数を備えるNの方程式となるが、上記のアルゴリズムは、最初に多項式の適合を使用してスカラーλを解き(Nの方程式、及び未知数はNよりはるかに小さい多項式の係数の数に等しい)、次にλを修正してbの選択されたセット(最大Nの未知数のNの方程式)を解くことにより、この問題を回避する。ただし、λとbの両方が行列の場合、追加の仮定がなければ、2Nの未知数を備えるNの方程式が存在し、そのため、式14は不良設定問題である。例えば、これらの退化した解はすべて、式16から18で技術的に有効であるが、特に意味のあるものはない。
【数16】
式16
【数17】
式17
【数18】
式18
【0096】
したがって、問題を明確にするために、いくつかの追加の仮定または制約を使用することができる。いくつかの実施形態は、上記のものと同様のアプロ-チを含む。ただし、すべてのピクセルについてλを見つける代わりに、ピクセルの局所的サブ領域についてλを代わりに見つけ、ピクセルのサブ領域のセットに対してプロセスを繰り返す。
【0097】
図19は、いくつかの実施形態による、散乱補正を伴う画像処理技術のゲイン及びオフセットの推定のフローチャートである。204-30では、測定放射線の複数のサブ領域のそれぞれの中間ゲインを含む中間ゲイン行列が生成される。中間ゲインは、上記のように動作204-11の通り計算することができる。204-30では、サブ領域のそれぞれのオフセットは、関連する中間ゲインに基づいて生成される。例えば、オフセットbは、上記のように動作206-11の通り生成され得る。この結果、ゲインλまたはオフセットbがサブ領域におけるスカラーであるときでも、ゲインλ及びオフセットbが空間的に少なくともサブ領域にわたって変化することができる。
【0098】
いくつかの実施形態は、ゲインλ及びオフセットbの両方における平滑性の基準を組み込んでいる。平滑性を使用することは、非理想性の大半がゆっくりと変化すると予想されるはずであるという観察によって動機付けられる。式19のコスト関数を考察する。
【数19】
式19
【0099】
A=Jtot、m=I、ベクトルノルムはすべてのi∇にわたって取得され、勾配(つまり、空間的微分)の演算子であり、αとβはスカラーのパラメータである。したがって、式19の右辺の第1の項(つまり
【数20】
は、すべてのピクセルにわたって合計された式14の二乗誤差の合計を表しているが、第2の項(つまり
【数21】
は、λの粗さ(つまり、平滑性の反対)にペナルティを課し、第3の項(つまり
【数22】
はbの粗さにペナルティを課す。λは、すべてのiに対して∇λ=0の場合にのみ空間的に一定であり、その結果、式19の右辺の第2の項がゼロの場合にのみ真になる。さらに、Eを最小化する場合、αが大きいほど、第2の項がゼロに近づく可能性が高くなる。したがって、αはゲインλの平滑性の制御として機能し、式中αの値を大きくしてEを最小化するとλが平滑になり、αの値を小さくしてEを最小化するとλが粗くなる。同様に、βはオフセットbの平滑性の制御として機能する。
【0100】
式19の一次最適性基準は、式20から式21にある。
【数23】
式20
【数24】
式21
【0101】
式20から式21を行列形式に書き直すと、式19を最小化することは、式22のλとbを解くことと同じになる。
【数25】
式22
【0102】
式22には2Nの方程式と2Nの未知数があり、よく知られている線形システムソルバーで解くことができる。または、式19は最小二乗または二次最適化ソルバーで直接解くことができる。
【0103】
式18には、非二乗誤差項や、ゲイン及びオフセットの値を表す他の方法など、コスト関数の多くの合理的なバリエ-ションがある。例えば、ゲイン及びオフセットの値は、低次のスプライン(または他の変換)で表すことができ、式中λ=Fc及びb=Gdであり、F及びGはスプライン(または変換)ベースであり、c及びdはスプライン(または変換)係数である。式18は、式22または式23として低次スプラインで表すことができ、どちらも式19を解くために使用される同様の手法で解くことができる。
【数26】
式23
【数27】
式24
【0104】
cとdを解いた後、λ=Fc及びb=Gdを適用して、所望のゲインλ及びオフセットbの値を取得する。
【0105】
いくつかの実施形態では、オフセットの外挿は、線形補間または外挿、エッジピクセルの拡張、スプライン、ピクセル修復、スパース画像回復などを含むがこれらに限定されない、他のより洗練された方法で実行することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、計算されたオフセットbは負の値を有することができる。負のオフセットb値は、計算による妥当な誤差、完全に考慮されていないビーム硬化効果、測定データの他の不整合、または不正確または過補正を伴う他の前処理ステップなど、様々な理由が原因であり得る。負のオフセットが物理的に現実的ではない場合でも、負のオフセットbは、データ内の他の非理想性を修正するための優れた数学的近似を提供できることが多いため、負の散乱をそのまま受け入れることが好ましいまたは望ましい場合がある。しかし、他の例では、負の散乱を固定された最小値にクランプするために下限を適用することが好ましい、または望ましい場合がある。これは、例えば、二次最適化を使用して式19を解き、b≧0という線形制約を組み込むことによって実行できる。
【0107】
スカラーオフセット、または静的バックグラウンドは、外部散乱が検出器全体で顕著に均一である場合、または検出器のオフセットの較正に故意または意図せずのどちらかで一定のオフセットが残っている場合に、役立ち得る。説明されている方法と技術は、空気の領域または投影で減衰が非常に軽い領域で機能する。これは、多くのスキャンで一般的である。関連する計算ステップはロバストであり、いくつかの例では、リアルタイムで迅速に実行できる。
【0108】
いくつかの実施形態は、空間的に変化するバックグラウンドまたは静的なバックグラウンドのいずれかと共に使用することができ、オフセット補正を有さなかったデータを補正するために使用することもできる。例では、外部散乱が存在する場合、オフセットb項は、オフセットの値と外部散乱の合計を表す。外部散乱が存在しない場合、オフセットbはオフセットの値のみを表す。
【0109】
対象物の3Dボクセル化表現は、通常、補正なし、またはカーネルベースの散乱推定などの精度の低い散乱補正のいずれかを使用したファーストパスCBCT再構成から取得される。ただし、対象物の3Dボクセル化表現は、CADモデル、または同じ対象物の設計の別の物品の登録された再構成から代替的に取得できる。これら後者の可能性は、インライン検査の良い候補であるように見える。
【0110】
CBCT再構成を繰り返すことができる。それにおいては、説明した技術を使用して一連の投影画像を修正し、それを使用して新しい再構成を作成し、次いでそれを使用して、CBCT再構成画像のさらに別のパスの材料及び密度画像を計算する。この補正と再構成は任意の回数繰り返すことができるが、いくつかの例では、2回のパス後に十分な画質が得られる。
【0111】
説明されているテクノロジ-は、FDKと併せて使用して、データを再構築できる(FDKは、Feldkamp、Davis、及びKressのコーンビームアルゴリズムである。L.A.Feldkamp et al, "Practical cone-beam algorithm", J. Opt. Soc. Am. A 1, 612-619, 1984 [https://www.osapublishing.org/DirectPDFAccess/DB95BFA8-FCC7-6A9F-0192BAAB142A6FEF_996/josaa-1-6-612.pdf?da=1&id=996&seq=0&mobile=no]で見られる3D CBCT再構築に広く使用されているフィルタバックプロジェクション[またはバックプロジェクション]アルゴリズムである)。それは参照によりその全体が組み込まれる。ただし、説明されているテクノロジ-は、再構築のためにいずれの特定のアルゴリズムにも依存していない。説明されているテクノロジ-は、フィルタバックプロジェクション、バックプロジェクトフィルタ、ヒルベルト法、パイライン、カツェビッチ法、機械学習法、または様々な反復スキ-ムを含む様々なアルゴリズムで使用できる。
【0112】
図20は、例示的なバックグラウンド放射線推定及び補正デバイスのブロック図を示す。バックグラウンド推定放射線推定及び補正デバイス300は、バックグラウンド放射線推定器310を含み得る。バックグラウンド放射線推定器310は、上記のようにゲインλ及びオフセットbを生成するように構成され得る。バックグラウンド放射線推定器310は、上記のように測定放射線Iを受け取るように構成された受信機312を含み得る。バックグラウンド放射線推定器310は、モデルシミュレータ314及び任意選択で対象物モデラー316を含み得る。モデルシミュレータ314は、上記のようにシミュレーションを生成するように構成され得る。
【0113】
バックグラウンド放射線推定器310は、オフセット推定器340及びゲイン推定器320を含み得る。ゲイン推定器320及びオフセット推定器340は、上記のようにゲインλ及びオフセットbを生成するように構成され得る。例えば、ゲイン推定器320は、図2B、3から5、13、15、及び19などの動作204、動作204-1から204-25及び204-30に関して、上記の動作を実行するように構成され得る。オフセット推定器340は、図2A、2B、6、7、14、15、及び19などの動作206、206-1から206-7、206-10、206-11、206-20、206-21、及び206-30に関して上記の動作を実行するように構成され得る。ゲイン推定器320及びオフセット推定器340は、上記の反復プロセスを実施するために互いに通信するように構成され得る。
【0114】
ゲイン推定器320は、上記の動作を実行するために、リサイザ322、ROI生成器324、閾値セレクタ326、ベクトル生成器328、多項式フィッタ330、計算機322などを含み得る。オフセット推定器340は、上記の動作を実行するために、リサイザ322、ピクセルセレクタ344、ベクトル生成器328、スムーザ348、計算機322、外挿器352、画像生成器354などを含み得る。例えば、リサイザ322は、動作204-6などを実行するように構成され得る。ROA生成器324は、動作204-7などを実行するように構成され得る。閾値セレクタ326は、動作204-3、204-8、204-11、204-13、204-23、206-1、206-2、206-10、206-20などのための閾値を選択するように構成され得る。ベクトル生成器328は、動作204-1、204-3、204-8、204-9、204-11、206-4、206-5、206-6などに関連するベクトルを生成するように構成され得る。多項式フィッタ330は、動作204-1、204-4、204-10、204-12などを実行するように構成され得る。計算機322は、上記の様々な動作及び方程式で計算を実行するように構成することができる。
【0115】
バックグラウンド推定放射線推定及び補正デバイス300は、散乱放射線推定器360及び一次放射線推定器362を含み得る。散乱放射線推定器360は、上述したように、散乱放射線Iを生成する動作を行うように構成されてもよい。一次放射線推定器362は、上記のように一次放射線Iを生成するように構成され得る。
【0116】
バックグラウンド推定放射線推定及び補正デバイス300は、プロセッサ112などのプロセッサ、関連するメモリ、通信インターフェースなどを含み、上記のデータを受信し、上記の処理を実行し、推定または補正された一次放射線Iなどのデータを送信することができる。
【0117】
上で提示された概要は例示であり、決して限定を意図するものではない。上記で説明された実施例に加えて、本発明のさらなる態様、特徴及び利点は、図面、以下の詳細な説明、及び添付された特許請求の範囲を参照することによって明らかになるであろう。
【0118】
いくつかの実施形態は、断層撮影走査で未知のソースからのバックグラウンド放射線を推定するための方法を含み、方法は、放射線検出器から得られた測定放射線(I)を受け取ることであって、測定放射線(I)は、放射線検出器の視野(FOV)の対象物を通る一次放射線(I)、及び、FOVの対象物からの対象物散乱放射線とFOV外の物質からのバックグラウンド散乱放射線を含む散乱放射線(I)を含む、受け取ること、モデル化された対象物に至る、測定放射線(I)から対象物をモデル化すること、モデル化された対象物からのシミュレートされた一次放射線(J)、モデル化された対象物からのシミュレートされた散乱放射線(J)に至る、モデル化された対象物を通る放射線輸送をシミュレートすることであって、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)は、シミュレートされた一次放射線(J)及びシミュレートされた散乱放射線(J)(Jtot=J+J)を含む、シミュレートすること、及び、測定放射線(I)及び結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)からのバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)を推定すること、を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、バックグラウンド散乱放射線の推定値は空間的に変動する。
【0120】
いくつかの実施形態では、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)を推定することは、測定放射線(I)を測定放射線画像にサイズ変更し、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)を、測定放射線画像と同様のサイズのピクセルを有する結合されたシミュレートされた放射線画像にサイズ変更すること、測定放射線画像の各行において最小強度の値を有するピクセルを選択することであって、最小強度の値を有する各ピクセルは最小ピクセルである、選択すること、各行の最小ピクセルからの測定列ベクトル(V)を生成すること、測定列ベクトル(V)を平滑化して、平滑化された測定列ベクトル(V)を生成すること、平滑化された測定列ベクトル(V)に1より大きい乗数(A)を掛けて、行の閾値を有する閾値列ベクトル(T(行)=V(行)*A)を生成すること、行(p(i,行))の各ピクセルのオフセット(offset(i,行))を、ピクセルが属する行の対応する行閾値を下回る強度の値で計算することであって、各ピクセルオフセットは、測定ピクセル値から、対応する結合されたシミュレートされた放射線ピクセル値にスケーリング係数(ゲインまたはλ)を掛けたものを引いたものに等しい(offset(i,行)=I(i,行)-λ*Jtot(i,行))、計算すること、ピクセルオフセットの計算からの対応する行の閾値を超える強度の値を使用して、行の各ピクセルへのオフセットを外挿すること、ピクセルオフセットの計算及びピクセルオフセットの外挿から測定放射線画像と同様のサイズのオフセット画像を生成すること、及び、平滑化されたオフセット画像を生成するためにオフセット画像を平滑化することであって、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)の推定値は、平滑化されたオフセット画像である、生成すること、をさらに含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、測定列ベクトル(V)を平滑化して平滑化された測定列ベクトル(V)を生成することは、ボックスフィルタ、バイラテラルフィルタ、メディアンフィルタ、または他のローパスフィルタを使用し、オフセット画像を平滑化して平滑化されたオフセット画像を生成することは、ボックスフィルタ、バイラテラルフィルタ、ガウスフィルタ、ロ-パスフィルタ、メディアンフィルタ、スプライン、またはその他のロ-パスフィルタを使用する。
【0122】
いくつかの実施形態では、行の各ピクセルに対しオフセットを外挿することは、さらに、各行のピクセルオフセットの計算を平均して、各行の平均行オフセットを生成すること、及びピクセルオフセットの外挿を、各行の平均行オフセットに設定すること、を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、方法は、各ピクセル(p(i))のオフセット(offset(i))に下限を設定することをさらに含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、方法は、測定放射線(I)及び(除算される)結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)(またはλ=I/Jtot)からスケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成することをさらに含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、スケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成することは、測定放射線(I)を測定放射線画像にサイズ変更すること及び結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)を測定放射線画像と同様のサイズのピクセルを有する結合されたシミュレートされた放射線画像にサイズ変更すること、測定放射線画像と結合されたシミュレートされた放射線画像で同様の対象領域(ROI)を選択すること、及び同様のROIを有する同様のサイズのピクセルのスケーリング係数(ゲインまたはλ)を計算すること、をさらに含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、スケーリング係数(ゲインまたはλ)はスカラーである。
【0127】
いくつかの実施形態では、同様のサイズのピクセルについて、スケーリング係数(ゲインまたはλ)を計算することは、包含閾値(T)を選択すること、包含閾値(T)を下回る測定値を有する測定放射線画像の各ピクセルから第1の測定ベクトル(Y)を生成することであって、包含閾値(T)を下回る測定値を有する第1の測定ベクトル(Y)の各ピクセルは、包含測定ピクセルである、生成すること、包含測定ピクセルに対応する結合されたシミュレートされた放射線画像の各ピクセルから(コンパニオンの)第1のシミュレートされたベクトル(X)を生成すること、第1の測定ベクトル(Y)を第1のシミュレートされたベクトル(X)に多項式適合すること、第1の測定ベクトルにおける包含測定ピクセルの相対的な適合誤差を計算すること、誤差閾値(T)を選択すること、誤差閾値(T)を下回る適合誤差を有する第1の測定ベクトル(Y2)にある各ピクセルから第2の測定ベクトル(Y)を生成することであって、誤差閾値(T)を下回る適合誤差を有する第2の測定ベクトル(Y)の各ピクセルが、低誤差測定ピクセルである、生成すること、低誤差測定ピクセルに対応する第1のシミュレートされたベクトル(X)の各ピクセルから第2のシミュレートされたベクトル(X)を生成すること、第2の測定ベクトル(Y)を第2のシミュレートされたベクトル(X)に多項式適合すること、及び、第2の測定ベクトル(Y)及び第2のシミュレートされたベクトル(X)の多項式適合からの線形項の係数からスケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成すること、をさらに含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、同様のサイズのピクセルのスケーリング係数(ゲインまたはλ)を計算することは、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)に対して、各ピクセル(p(i))について、測定放射線(I)のゲイン比率(λ(i))を計算して、ゲイン比率(λ(i))を平均して、スケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成すること、または結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)に対する測定放射線(I)のゲイン比率(λ(i))を各ピクセル(p(i))について計算し、中央値ゲイン比率からスケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成すること、または、各ピクセル(p(i))に対して、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)を平均して平均の結合されたシミュレートされた放射線を生成し、各ピクセル(p(i))に対して測定放射線(I)を平均して平均測定放射線を生成し、平均の結合されたシミュレートされた放射線に対する平均測定放射線の比率から、スケーリング係数(ゲインまたはλ)を計算すること、をさらに含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、スケーリング係数(ゲインまたはλ)及びバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)はそれぞれ、空間的に不変のスカラーまたは空間的に変化する行列からなる群から選択される。
【0130】
いくつかの実施形態では、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)は空間的に不変であり、スケーリング係数(ゲインまたはλ)は空間的に不変である。
【0131】
いくつかの実施形態では、スケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成することは、測定放射線(I)、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)、または測定放射線(I)と結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)の数学的結合の少なくとも1つの高強度領域を使用し、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)を推定することは、測定放射線(I)、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)、または測定放射線(I)と結合された放射線(Jtot)の数学的結合の少なくとも1つの低強度領域を使用する。
【0132】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高強度領域がゲインの計算に使用され、少なくとも1つの低強度領域がオフセットの計算に使用され、高強度領域は、ピクセル値がすべてのピクセルからのピクセル値の高い百分位数にあるピクセル位置からなり、任意選択で、高い百分位数は80%から100%の間の範囲であり、低強度領域は、ピクセル値がすべてのピクセルからのピクセル値の低い百分位数にあるピクセル位置からなり、任意選択で、低い百分位数は0%から20%の間の範囲であり、ピクセル値は、シミュレートされた放射線、測定放射線、またはシミュレートされた放射線と測定放射線の数学的結合であり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)は空間的に可変であり、スケーリング係数(ゲインまたはλ)は空間的に異なる。
【0134】
いくつかの実施形態では、対象物の密度、線形減衰係数、対象物の化学組成、及び対象物の原子番号からなる群から選択されるモデル化された対象物のパラメータ。
【0135】
いくつかの実施形態では、モデル化された対象物を通る放射線輸送及び対象物からの散乱放射線をシミュレートすることは、カーネルベースの散乱推定器、(線形)ボルツマン方程式ソルバー(LBES)、他の有限要素決定論的光子輸送ソルバー、またはモンテカルロシミュレーターを使用すること、を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、散乱放射線(I)の推定値は、スケーリング係数(ゲインまたはλ)に、シミュレートされた散乱放射線(J)を掛け、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)の推定値を加えたもの(つまり、I=λJ+b)である。
【0137】
いくつかの実施形態は、未知のソースからのバックグラウンド放射線で断層撮影走査を補正するための方法を含み、方法は、上述したように、スケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成し、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)を推定すること、スケーリング係数(ゲインまたはλ)にシミュレートされた散乱放射線(J)を掛けバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)推定値を加えたもの(つまり、I=λJ+b)から散乱放射線(I)を推定すること、測定放射線(I)から散乱放射線(I)の推定値を差し引くことにより、一次放射線(I)を推定すること、を含む。
【0138】
いくつかの実施形態は、未知のソースからのバックグラウンド放射線で断層撮影走査を補正するための方法を含み、方法は、放射線検出器からの測定放射線(I)を受け取ることであって、測定放射線(I)は、放射線検出器の視野(FOV)の対象物を通る一次放射線(I)、及び、FOVの対象物からの対象物散乱放射線とFOV外の物質からのバックグラウンド散乱放射線を含む散乱放射線(I)を含む(I=I+I)、受け取ること、測定放射線(I)からモデル対象物を生成する放射線シミュレータからの結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)を受け取ることであって、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)は、モデル化された対象物からのシミュレートされた一次放射線(J)及びモデル化された対象物からのシミュレートされたシミュレートされた散乱放射線(J)を含む(Jtot=J+J)、受け取ること、スケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成すること、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)を推定すること、スケーリング係数(ゲインまたはλ)にシミュレートされた散乱放射線(J)を掛けてバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)の推定値を加える(つまりI=λJ+b)ことから散乱放射線(I)を推定すること、測定放射線(I)から散乱放射線(I)の推定値を差し引くことにより、一次放射線(I)を推定すること、を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、方法は、一次放射線(I)の推定値をレンダリングすることをさらに含み、または、一次放射線(I)を推定することは、測定放射線(I)から散乱放射線(I)の推定値を単純に減算すること(つまりI=I-I)を実行する、または、一次放射線(I)を推定することは、平滑化された減算を実行する(I=I(1-平滑化(I/I))。
【0140】
いくつかの実施形態は、断層撮影走査で未知のソースからのバックグラウンド放射線を推定するための方法を含み、方法は、放射線検出器を使用して放射線を測定することであって、測定放射線(I)は、放射線検出器の視野(FOV)の対象物を通る一次放射線(I)、及び、FOVの対象物からの対象物散乱放射線とFOV外の物質からのバックグラウンド散乱放射線を含む散乱放射線(I)を含む、測定すること、モデル化された対象物に至る、測定放射線(I)から対象物をモデル化すること、モデル化された対象物からのシミュレートされた一次放射線(J)、モデル化された対象物からのシミュレートされた散乱放射線(J)に至る、モデル化された対象物を通る放射線輸送をシミュレートすることであって、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)は、シミュレートされた一次放射線(J)及びシミュレートされた散乱放射線(J)を含む(Jtot=J+J)、シミュレートすること、及び、測定放射線(I)及び結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)からのバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)を推定すること、を含む。
【0141】
いくつかの実施形態は、断層撮影走査で未知のソースからのバックグラウンド放射線を推定するための方法を含み、方法は、放射線検出器から得られた測定放射線(I)を受け取ることであって、測定放射線(I)は、放射線検出器の視野(FOV)の対象物を通る一次放射線(I)、及び、FOVの対象物からの対象物散乱放射線とFOV外の物質からのバックグラウンド散乱放射線を含む散乱放射線(I)を含む、受け取ること、対象物の測定放射線(I)に基づいてモデル化された対象物の結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)を受け取ることであって、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)は、シミュレートされた一次放射線(J)及びシミュレートされた散乱放射線(J)(Jtot=J+Js)を含む、受け取ること、及び、測定放射線(I)及び結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)からのバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたは)を推定すること、を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、上記の方法を実施することを実行されるように適合される、複数の命令を含む少なくとも1つの非一時的機械可読記憶媒体を含む。
【0143】
いくつかの実施形態は、バックグラウンド放射線推定器310を含み、放射線検出器から測定放射線(I)を得るための受信機312であって、測定放射線(I)が、放射線検出器の視野(FOV)の対象物を通る一次放射線(I)、及び、FOVの対象物からの対象物散乱放射線とFOV外の物質からのバックグラウンド散乱放射線を含む散乱放射線(I)を含む、受信機312と、モデル化された対象物からのシミュレートされた一次放射線(J)、モデル化された対象物からのシミュレートされた散乱放射線(J)に至る、対象汚物の測定放射線(I)に基づいてモデル化された対象物を通る放射線輸送をシミュレートするためのモデルシミュレータ314であって、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)は、シミュレートされた一次放射線(J)及びシミュレートされた散乱放射線(J)を含む(Jtot=J+J)、モデルシミュレータ314、及び、測定放射線(I)及び結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)からのバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)を推定するためのオフセット推定器340を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、オフセット推定器340は、測定放射線(I)を測定放射線画像にサイズ変更し、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)を、測定放射線画像と同様のサイズのピクセルを有する結合されたシミュレートされた放射線画像にサイズ変更するよう構成されたリサイザ322、測定放射線画像の各行において最小強度の値を有するピクセルを選択するよう構成されたピクセルセレクタ344であって、最小強度の値を有する各ピクセルは最小ピクセルである、ピクセルセレクタ344、各行の最小ピクセルからの測定列ベクトル(V)を生成するよう構成されたベクトル生成器328、平滑化された測定列ベクトル(V)を生成するために測定列ベクトル(V1)を平滑化するように構成され、平滑化されたオフセット画像を生成するためにオフセット画像を平滑化するように構成されたスムーザ348であって、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)の推定値は、平滑化されたオフセット画像である、スムーザ348、平滑化された測定列ベクトル(V)に1より大きい乗数(A)を掛けて、行の閾値を備える閾値列ベクトル(T(行)=V(行)*A)を生成するよう構成され、行(p(i,行))の各ピクセルのオフセット(offset(i,行))を、ピクセルが属する行の対応する行閾値を下回る強度の値で計算するように構成された計算機/プロセッサ332であって、各ピクセルオフセットは、対応する結合されたシミュレートされた放射線ピクセル値にスケーリング係数(ゲインまたはλ)を掛けたものを測定ピクセル値から引いたもの(offset(i,行)=I(i,行)-λ*Jtot(i,行))に等しい、計算機/プロセッサ332、ピクセルオフセットの計算からの対応する行の閾値を超える強度の値を使用して、行の各ピクセルへのオフセットを外挿するよう構成された外挿器352、及び、ピクセルオフセットの計算及びピクセルオフセットの外挿から測定放射線画像と同様のサイズのオフセット画像を生成するよう構成された画像生成器354をさらに含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、バックグラウンド放射線推定器310は、測定放射線(I)及び結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)からスケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成するように構成されたゲイン推定器320をさらに含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、ゲイン推定器320は、測定放射線(I)を測定放射線画像にサイズ変更し、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)を、測定放射線画像と同様のサイズのピクセルの結合されたシミュレートされた放射線画像にサイズ変更するように構成されたリサイザ322、測定放射線画像及び結合されたシミュレートされた放射線画像において同様の対象領域(ROI)を選択するように構成された対象領域(ROI)生成器324、包含閾値(T)を選択するように構成され、誤差閾値(T)を選択するように構成された閾値セレクタ326、包含閾値(T)を下回る測定値を有する測定放射線画像の各ピクセルから第1の測定ベクトル(Y)を生成するように構成されたベクトル生成器328であって、包含閾値(T)を下回る測定値を有する第1の測定ベクトル(Y)の各ピクセルは、包含測定ピクセルであり、包含測定ピクセルに対応する結合されたシミュレートされた放射線画像の各ピクセルから(コンパニオン)第1のシミュレートされたベクトル(X)を生成するように構成される、ベクトル生成器328、第1の測定ベクトル(Y)を第1のシミュレートされたベクトル(X)に多項式適合させ、第2の測定ベクトル(Y)を第2のシミュレートされたベクトル(X)に多項式適合させるように構成された多項式フィッタ330、第1の測定ベクトルにおける包含測定ピクセルの相対的な適合誤差を計算するように構成された計算機/プロセッサ332をさらに含み、ベクトル生成器328は、誤差閾値(T)を下回る適合誤差を有する第1の測定ベクトル(Y)の各ピクセルから、第2の測定ベクトル(Y)を生成するようにさらに構成され、誤差閾値(T)を下回る適合誤差を有する第2の測定ベクトル(Y)の各ピクセルは、低誤差測定ピクセルであり、低誤差測定ピクセルに対応する第1のシミュレートされたベクトル(X)の各ピクセルからの第2のシミュレートされたベクトル(X)を生成するようにさらに構成され、計算機/プロセッサ332は、第2の測定ベクトル(Y)及び第2のシミュレートされたベクトル(X)の多項式適合からの線形項の係数からスケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成するようにさらに構成される。
【0147】
いくつかの実施形態では、バックグラウンド放射線推定器310は、スケーリング係数(ゲインまたはλ)にシミュレートされた散乱放射線(J)を掛けてバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)の推定値を加えた(つまり、I=λJs+b)ものから散乱放射線(I)を推定するように構成された散乱放射線推定器360、及び測定放射線(I)から散乱放射線(I)の推定値を差し引くことによって一次放射線(I)を推定するように構成された一次放射線推定器362をさらに含む。
【0148】
いくつかの実施形態は、断層撮影走査で未知のソースからのバックグラウンド放射線を推定するバックグラウンド放射線推定器を含み、放射線検出器から測定放射線(I)を得るための測定放射線受信手段であって、測定放射線(I)が、放射線検出器の視野(FOV)の対象物を通る一次放射線(I)、及び、FOVの対象物からの対象物散乱放射線とFOV外の物質からのバックグラウンド散乱放射線を含む散乱放射線(I)を含む、測定放射線受信手段、モデル化された対象物からのシミュレートされた一次放射線(J)、モデル化された対象物からのシミュレートされた散乱放射線(Js)に至る、対象物の測定放射線(I)に基づくモデル化された対象物からの放射線輸送をシミュレートするためのモデルシミュレーション手段であって、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)は、シミュレートされた一次放射線(J)と、シミュレートされた散乱放射線(J)を含む(Jtot=J+Js)、モデルシミュレーション手段、及び、測定放射線(I)及び結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)からのバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)を推定するためのオフセット推定手段を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、バックグラウンド放射線推定器は、測定放射線(I)からモデル化された対象物を生成するための対象物モデリング手段、または、測定放射線(I)と結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)からスケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成するためのゲイン推定手段をさらに含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、バックグラウンド放射線推定器は、測定放射線(I)を測定放射線画像にサイズ変更し、結合されたシミュレートされた放射線(Jtot)を、測定放射線画像と同様のサイズのピクセルを有する結合されたシミュレートされた放射線画像にサイズ変更するためのサイズ変更手段、または、測定放射線画像の各行において最小強度の値を有するピクセルを選択するためのピクセル選択手段であって、最小強度の値を有する各ピクセルが最小ピクセルである、ピクセル選択手段、または、各行の最小ピクセルから測定列ベクトル(V)を生成するためのベクトル生成手段、または、平滑化された測定列ベクトル(V)を生成するために測定列ベクトル(V)を平滑化し、平滑化されたオフセット画像を生成するためにオフセット画像を平滑化する平滑化手段であって、バックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)の推定値が平滑化されたオフセット画像である、平滑化手段、または、平滑化された測定列ベクトル(V)に1より大きい乗数(A)を乗算して、行閾値を備える閾値列ベクトル(T(行)=V(行)*A)を生成し、行(p(i,行))の各ピクセルのオフセット(offset(i,行))を、そのピクセルが属する行の対応する行閾値を下回る強度の値で計算するための計算/処理手段であって、各ピクセルオフセットは、測定ピクセル値から、対応する結合されたシミュレートされた放射線ピクセル値にスケーリング係数(ゲインまたはλ)を掛けたものを減算したもの(offset(i,行)=I(i,行)-λ*Jtot(i,行))に等しい、計算/処理手段、または、ピクセルオフセットの計算からの対応する行閾値を超える強度の値で行の各ピクセルにオフセットを外挿するための外挿手段、または、ピクセルオフセットの計算及びピクセルオフセットの外挿から測定放射線画像と同様のサイズのオフセット画像を生成するための画像化生成手段、または、包含閾値(T)を選択し、誤差閾値(T)を選択するための閾値選択手段、または包含閾値(T)を下回る測定値を有する測定放射線画像の各ピクセルから第1の測定ベクトル(Y)を生成するためのベクトル生成手段であって、包含閾値(T)を下回る測定値を有する第1の測定ベクトル(Y)の各ピクセルは包含測定ピクセルであり、包含測定ピクセルに対応する結合されたシミュレートされた放射線画像の各ピクセルから(コンパニオンの)第1のシミュレートされたベクトル(X)を生成する、ベクトル生成手段、または、第1の測定ベクトル(Y)を第1のシミュレートされたベクトル(X)に多項式適合し、第2の測定ベクトル(Y)を第2のシミュレートされたベクトル(X)に多項式適合するための多項式適合手段、または、第1の測定ベクトルの包含測定ピクセルの相対的な適合誤差を計算するための計算/処理手段、または誤差閾値(T)を下回る適合誤差を有する第1の測定ベクトル(Y)の各ピクセルから、第2の測定ベクトル(Y)を生成するためのベクトル生成手段であって、誤差閾値(T)を下回る適合誤差を有する第2の測定ベクトル(Y)の各ピクセルが低誤差測定ベクトル(Y)であり、低誤差測定ピクセルに対応する第1のシミュレートされたベクトル(X)の各ピクセルから第2のシミュレートされたベクトル(X)を生成する、ベクトル発生手段、または、第2の測定ベクトル(Y2)と第2のシミュレートされたベクトル(X)の多項式適合から線形項の係数からのスケーリング係数(ゲインまたはλ)を生成するためのゲイン推定手段をさらに含む。
【0151】
いくつかの実施形態は、未知のソースからのバックグラウンド放射線で断層撮影走査を補正するためのバックグラウンド放射線補正デバイスを含み、上述したような、バックグラウンド放射線推定器、スケーリング係数(ゲインまたはλ)にシミュレートされた散乱放射線(J)を掛けバックグラウンド散乱放射線(オフセットまたはb)の推定値を加えた(つまり、I=λJ+b)から散乱放射線(I)を推定するための散乱放射線推定手段、及び測定放射線(I)から散乱放射線(Is)の推定値を差し引くことにより、一次放射線(Ip)を推定するための一次放射線推定手段を含む。いくつかの実施形態は、対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線を受け取ること200、対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線をシミュレートすること202、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線に基づいてオフセットを生成すること206、オフセットに基づいて散乱放射線を推定すること208、208'、及び、推定された散乱放射線に基づいて一次放射線を推定すること210を含む、方法を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、方法は、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線に基づいてゲインを生成すること204をさらに含み、散乱放射線を推定することは、ゲイン及びオフセットに基づいて散乱放射線を推定すること208'をさらに含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、方法は、ゲイン、オフセット、及びシミュレートされた測定放射線のシミュレートされた散乱放射線成分に基づいて推定された散乱放射線を生成すること、及び、推定された散乱放射線及び測定放射線に基づいて、推定された一次放射線を生成することをさらに含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、方法は、シミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルに対する測定放射線のピクセル値の第1のベクトルに多項式を適合させること204-1、及び多項式に基づいてゲインを生成すること204-2をさらに含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、ゲインは多項式の線形項である。
【0156】
いくつかの実施形態では、多項式は少なくとも二次多項式である。
【0157】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の多項式を、シミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルに対する測定放射線のピクセル値の第1のベクトルに適合させること204-1、第1のベクトルのサイズ及び第2のベクトルのサイズを低減して、閾値より大きい第1の多項式の誤差を有するピクセル値を除去すること204-3、低減された第2のベクトルに対する低減された第1のベクトルに第2の多項式を適合させること204-4、及び第2の多項式に基づいてゲインを生成すること204-5をさらに含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、方法は、測定放射線及び/またはシミュレートされた測定放射線が、同じ分解能を有するように、測定放射線及び/またはシミュレートされた測定放射線のサイズを変更すること204-6、測定放射線の対象領域を決定すること204-7、第1の閾値未満の値を有する対象領域における測定放射線のピクセル値の第1のベクトルを生成すること204-8、第1のベクトルに対応するシミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルを生成すること204-9、第1の多項式を第2のベクトルに対する第1のベクトルに適合させること204-10、第1の多項式の相対誤差が第2の閾値よりも大きい場合に、第1のベクトル及び第2のベクトルからピクセル値を除去すること204-11、第2の多項式を第2のベクトルに対する第1のベクトルの残りのピクセル値に適合させること204-12であって、ゲインは、第2の多項式の線形項を含む、適合させること、測定放射線の複数のサブ領域のそれぞれから最小値を含む第3のベクトルを生成すること206-4、第4のベクトルを生成するために第3のベクトルを平滑化すること206-5、第5のベクトルを生成するために第4のベクトルを1より大きい値によってスケーリングすること206-6、及び測定放射線の各サブ領域の各ピクセルについて、ピクセルの値がサブ領域に関連付けられた第5のベクトルの値を下回る場合、オフセット行列の対応するピクセルの値が測定放射線のピクセル値と、ゲインによってスケーリングされたシミュレートされた測定放射線の対応するピクセルのピクセル値との差であり、他のピクセルについて、サブ領域のオフセット行列の他のピクセルに基づいて、オフセット行列の対応するピクセルの値を生成する場合に、オフセットとしてオフセット行列を生成すること206-7をさらに含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、方法は、各ピクセル値タプルは、閾値を超えるユークリッドの大きさを有する場合に、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線のピクセルを選択すること204-13、選択されたピクセルに基づいて中間ゲインを生成すること204-14、及び、オフセット及び第2の中間ゲインに基づいてゲインを生成すること204-15をさらに含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、方法は、測定放射線の最大値及びシミュレートされた測定放射線の最大値に基づいて第1の中間ゲインを生成すること204ー20、シミュレートされた測定放射線を、第1の中間ゲインで測定放射線に正規化すること204-21、各ピクセルについて、正規化されたシミュレートされた測定放射線及び測定放射線のユークリッドの大きさを計算すること204-22、正規化されたシミュレートされた測定放射線及び第1の閾値を超えるユークリッドの大きさを有する測定放射線のピクセルに対応する測定放射線及びシミュレートされた測定放射線の第1のピクセルを選択すること204-23、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線の選択された第1のピクセルに基づいて第2の中間ゲインを生成すること204-24、正規化されたシミュレートされた測定放射線及び第2の閾値を下回る大きさを有する測定放射線のピクセルに対応する測定放射線及びシミュレートされた測定放射線の第2のピクセルを選択すること206-20、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線の選択された第2のピクセルに基づいてオフセットを生成すること206-21、及び、オフセット及び第2の中間ゲインに基づいてゲインを生成すること204-25をさらに含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、方法は、測定放射線の複数のサブ領域のそれぞれについて中間ゲインを含む中間ゲイン行列を生成すること204-30、及び関連する中間ゲインに基づいて、サブ領域のそれぞれのオフセットを生成すること206-30をさらに含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、測定放射線の複数のサブ領域のそれぞれについて、サブ領域の最小値に基づいて閾値を生成すること206-1、閾値よりも低い値でサブ領域の各ピクセルに対してピクセルオフセットを生成すること206-2、及び閾値よりも低い値を有するサブ領域のピクセルのピクセルオフセットを、閾値よりも大きい値を有するサブ領域のピクセルのデフォルトオフセットに結合すること206-3であって、オフセットは、閾値及びデフォルトオフセットよりも低い値を有するサブ領域のピクセルのピクセルオフセットを含むオフセット画像である、結合することである。
【0163】
いくつかの実施形態では、方法は、各ピクセル値タプルは、閾値を下回るユークリッドの大きさを有する場合に、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線のピクセルを選択すること206-10、及び選択されたピクセルに基づいてオフセットを生成すること206-11をさらに含む。
【0164】
いくつかの実施形態は、通信インターフェースと、メモリと、対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線を受け取ること、対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線をシミュレートすること、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線に基づいてオフセットを生成すること、オフセットに基づいて散乱放射線を推定すること、及び、推定された散乱放射線に基づいて一次放射線を推定すること、を行うように構成されるプロセッサと、を含む、システムを含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、第1の多項式を、シミュレートされた測定放射線のピクセル値の第2のベクトルに対する測定放射線のピクセル値の第1のベクトルに適合させること、第1のベクトルのサイズ及び第2のベクトルのサイズを低減して、閾値より大きい第1の多項式の誤差を有するピクセル値を除去すること、低減された第2のベクトルに対する低減された第1のベクトルに第2の多項式を適合させること、第2の多項式に基づいてゲインを生成すること、及びゲインとオフセットに基づいて散乱放射線を推定すること、を行うようにさらに構成される。
【0166】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、各ピクセル値タプルは、閾値を超えるユークリッドの大きさを有する場合に、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線のピクセルを選択すること、選択されたピクセルに基づいて中間ゲインを生成すること、オフセット及び第2の中間ゲインに基づいてゲインを生成すること、及びゲインとオフセットに基づいて散乱放射線を推定すること、行うようにさらに構成される。
【0167】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、サブ領域の最小値に基づいて閾値を生成すること、閾値よりも低い値でサブ領域の各ピクセルに対してピクセルオフセットを生成すること、及び閾値よりも低い値を有するサブ領域のピクセルのピクセルオフセットを、閾値よりも大きい値を有するサブ領域のピクセルのデフォルトオフセットに結合すること、を行うようにさらに構成され、オフセットは、閾値及びデフォルトオフセットよりも低い値を有するサブ領域のピクセルのピクセルオフセットを含むオフセット画像である。
【0168】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、各ピクセル値タプルは、閾値を下回るユークリッドの大きさを有する場合に、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線のピクセルを選択すること、及び選択されたピクセルに基づいてオフセットを生成すること、行うようにさらに構成される。
【0169】
いくつかの実施形態は、対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線を受け取るための手段、対象物を通して放射線を受け取った放射線検出器から得られた測定放射線をシミュレートするための手段、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線に基づいてオフセットを生成するための手段、オフセットに基づいて散乱放射線を推定するための手段、及び、推定された散乱放射線に基づいて一次放射線を推定するための手段を含む、システムを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、システムは、測定放射線及びシミュレートされた測定放射線に基づいてゲインを生成するための手段であって、散乱放射線を推定するための手段が、ゲインに基づいて散乱放射線を推定するための手段を含む、生成するための手段、ゲイン、オフセット、及びシミュレートされた測定放射線のシミュレートされた散乱放射線成分に基づいて、測定散乱放射線を生成するための手段、及び、測定散乱放射線及び測定放射線に基づいて、測定された非散乱放射線を生成するための手段をさらに含む。
【0171】
いくつかの実施形態は、コンピュータによって実行されるとき、コンピュータに本明細書に記載の動作を実行させる命令を含む、非一時的コンピュータ可読媒体を含む。回路には、ハードウェア、ファームウェア、プログラムコード、実行可能コード、コンピュータ命令、及び/またはソフトウェアを含めることができる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、信号を含まないコンピュータ可読記憶媒体であり得る。
【0172】
本明細書に記載されている機能的ユニットの多くは、それらの実装の独立性をより具体的に強調するために、モジュールとしてラベル付けされることを理解されたい。例えば、モジュールは、カスタムの超大型集積(VLSI)回路またはゲートアレイを含むハードウェア回路として実装でき、論理チップ、トランジスタ、または他の部品を含むがこれらに限定されない。モジュールはまた、フィードプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイスまたは類似のデバイスを含むがこれらに限定されない、プログラマブルハードウェアデバイスに実装され得る。
【0173】
本明細書全体を通した「実施例(example)」または「実施形態(embodiment)」への言及は、実施例に関連して説明された特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通した様々な箇所における「実施例」または「実施形態」の語の出現が、必ずしも全て同じ実施形態を言及しているわけではない。
【0174】
さらに、説明された特徴、構造または特性は、1つ以上の実施形態において適切な方法で組み合わされてもよい。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が提供される(例えば、レイアウト及びデザインの実施例)。しかし、当業者は、特定の詳細のうちの1つ以上を用いずに、または他の方法、構成要素、レイアウトなどを用いて本発明が実施可能であることを認識するであろう。他の例では、本発明の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、構成要素または操作は、図示されていないか、または詳細に説明されていない。
【0175】
この書面での開示に続く特許請求の範囲は、ここで本書面での開示に明確に組み込まれ、各請求項は別個の実施形態としてそれ自体で成立する。本開示は、独立請求項とその従属請求項についてのすべての置換を含む。さらに、以下の独立請求項及び従属請求項から派生することが可能である追加の実施形態も、本書面での説明に明示的に組み込まれる。これらの追加の実施形態は、所与の従属請求項の依存関係を語句「請求項[x]で始まり、この請求項の直前の請求項で終わる請求項のいずれか」に置き換えることによって決定され、ここで、括弧付きの用語「[x]」は、直近に記載した独立請求項の番号に置き換えられる。例えば、独立請求項1で始まる第1の請求項の組について、請求項4は請求項1及び3のいずれかに従属し、これらの別々の従属関係によって2つの異なる実施形態を得ることができ、請求項5は請求項1、3または4のいずれか1項に従属し、これらの別々の従属関係によって3つの異なる実施形態を得ることができ、請求項6は請求項1、3、4または5のいずれか1項に従属し、これらの別々の従属関係によって4つの異なる実施形態を得ることができ、以下同様である。
【0176】
特徴または要素に関する用語「第1」の請求項における記載は、第2の、または追加のそのような特徴または要素の存在を必ずしも示唆するものではない。存在する場合、ミ-ンズ・プラス・ファンクション形式で具体的に記載された要素は、米国特許法第112条(f)項に従って、本明細書で説明された対応する構造、材料または動作及びそれらの均等物を網羅するように解釈されることが意図される。排他的な所有または特権が請求される本発明の実施形態は、以下のように定められる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
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図16A
図16B
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図18B
図18C
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図20