(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】アシスト装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20240910BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A61H3/00 B
(21)【出願番号】P 2019168621
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉見 孔孝
(72)【発明者】
【氏名】大坪 和義
(72)【発明者】
【氏名】新井 智樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩充
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-251001(JP,A)
【文献】特開2018-061663(JP,A)
【文献】特開2019-023368(JP,A)
【文献】特開2013-052192(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172209(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140363(WO,A1)
【文献】特開2016-123617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
A61H 1/00- 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の肩部及び胸部の少なくとも一方に装着される第一装着具と、
前記利用者の左右の脚部それぞれ又は腰部に装着される第二装着具と、
前記第一装着具と前記第二装着具とにわたって前記利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、
前記第一装着具に設けられ前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しを可能とするアクチュエータと、
前記アクチュエータの動作制御を実行する制御部と、
前記第一装着具に設けられ前記利用者の姿勢に応じた信号を出力する3軸加速度センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記3軸加速度センサからの信号に基づいて前記利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを推定する姿勢推定部と、
推定された前記姿勢パラメータに基づいて、前記アクチュエータを動作させるための物理量を求める決定部と、有し、
前記制御部は、前記物理量を用いて、前記利用者にアシスト力を付与するために前記アクチュエータの動作制御を実行し、
前記姿勢推定部は、
前記利用者が姿勢変化以外の動作を行っていないと推定される場合に、前記姿勢パラメータを用い、
前記3軸加速度センサは、
相互で直交するX軸、Y軸、Z軸それぞれの方向の加速度AX、AY、AZを検出し、
前記X軸の方向は、直立姿勢にある前記利用者の左右方向と一致し、
前記Y軸の方向は、前記利用者の前後方向と一致し、
前記Z軸の方向は、前記利用者の上下方向と一致し、
前記制御部は、
以下の数1の演算結果αが、第1閾値ε1(<1)よりも大きく、第2閾値ε2(>1)よりも小さい場合に、前記利用者が姿勢変化以外の動作を行っていないと推定する、
アシスト装置。
【数1】
【請求項2】
利用者の肩部及び胸部の少なくとも一方に装着される第一装着具と、
前記利用者の腰部に装着される第二装着具と、
前記第一装着具と前記第二装着具とにわたって前記利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、
前記第一装着具または前記第二装着
具に設けられ前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しを可能とするアクチュエータと、
前記アクチュエータの動作制御を実行する制御部と、
前記第一装着具または前記第二装着
具に設けられ前記利用者の姿勢に応じた信号を出力する3軸加速度センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記3軸加速度センサからの信号に基づいて前記利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを推定する姿勢推定部と、
推定された前記姿勢パラメータに基づいて、前記アクチュエータを動作させるための物理量を求める決定部と、有し、
前記制御部は、前記物理量を用いて、前記利用者にアシスト力を付与するために前記アクチュエータの動作制御を実行し、
前記姿勢推定部は、
前記利用者が姿勢変化以外の動作を行っていないと推定される場合に、前記姿勢パラメータを用い、
前記3軸加速度センサは、
相互で直交するX軸、Y軸、Z軸それぞれの方向の加速度AX、AY、AZを検出し、
前記X軸の方向は、直立姿勢にある前記利用者の左右方向と一致し、
前記Y軸の方向は、前記利用者の前後方向と一致し、
前記Z軸の方向は、前記利用者の上下方向と一致し、
前記制御部は、
以下の数1の演算結果αが、第1閾値ε1(<1)よりも大きく、第2閾値ε2(>1)よりも小さい場合に、前記利用者が姿勢変化以外の動作を行っていないと推定する、
アシスト装置。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の発明は、アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者(人)の身体に装着され、その利用者の作業を補助するアシスト装置が様々提案されている。アシスト装置によれば、利用者は、例えば重量物を持ち上げる場合であっても、小さな力(小さな負担)で作業を行うことが可能となる。このようなアシスト装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているアシスト装置は、利用者に装着する金属製等のフレームを有する。そのフレームに搭載されているアクチュエータの出力が、リンク機構を通じて、利用者の上半身と下半身とに伝達される。これにより、例えば重量物を持ち上げる動作が補助される。
【0005】
利用者が補助を要する動作としては、重量物を持ち上げる等の負荷が大きい動作の他に、例えば、病人又は高齢者等の人に対して日常生活行動の援助(介助)を行う動作がある。利用者が負荷の大きい作業を行う場合、特許文献1に開示されているような高出力のアシスト装置が効果的である。
【0006】
しかし、利用者が、病人又は高齢者等の人に対する援助を行う場合、高出力のアシスト装置は過剰性能となる場合がある。また、高出力のアシスト装置では、リンク機構及び金属製等のフレームのような剛体部材が多く用いられていて、高出力を得るために、重厚な構成となっている。そのため、アシスト装置の重量が重くなり、剛体部材によって利用者の動きが制限される。
【0007】
そこで、本発明の発明者は、軽量であり装着感の良いアシスト装置を既に提案している(例えば、特願2019-043462)。そのアシスト装置は、利用者の肩部に装着される第一装着具と、利用者の左右の脚部に装着される第二装着具と、第一装着具と第二装着具とにわたって利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、アクチュエータとを備える。アクチュエータは、第一装着具に設けられていて、前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しを可能とする。
【0008】
アクチュエータがベルト体の一部を巻き取ることで、ベルト体に張力が作用する。この張力がアシスト力となって利用者に作用する。これにより、利用者が例えば前記のとおり人に対する援助を行う際に、負担が軽減される。
【0009】
前記のようなベルト体を備えるアシスト装置では、利用者に作用させるアシスト力を常に一定とするのではなく、例えば、利用者の姿勢等に応じた強さのアシスト力を作用させるのが好ましい。
そこで、本開示の目的は、軽量であり装着感が良く、更に、利用者の姿勢等に応じて、適切な強さのアシスト力を生じさせることが可能となるアシスト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のアシスト装置は、利用者の肩部及び胸部の少なくとも一方に装着される第一装着具と、前記利用者の左右の脚部それぞれ又は腰部に装着される第二装着具と、前記第一装着具と前記第二装着具とにわたって前記利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、前記第一装着具又は前記第二装着具に設けられ前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しを可能とするアクチュエータと、前記アクチュエータの動作制御を実行する制御部と、前記第一装着具又は前記第二装着具に設けられ利用者の姿勢に応じた信号を出力するセンサと、を備え、前記制御部は、前記センサの出力を用いて、前記利用者にアシスト力を付与するために前記アクチュエータの動作制御を実行する。
【0011】
前記構成を備えるアシスト装置によれば、アクチュエータがベルト体を巻き取ることで、ベルト体に張力が作用し、その張力により利用者の作業を補助するアシスト力が生まれ、利用者の身体の負担が軽減される。ベルト体は、軽量であり、また、姿勢を変えても身体に沿うことができ、利用者の動作に追従する。よって、装着感の良いアシスト装置が得られる。
【0012】
アシスト装置は、利用者の姿勢に応じたアシスト力を発生させることが望ましい。そこで、前記構成を備えるアシスト装置によれば、利用者の姿勢に応じた信号がセンサから出力される。センサの出力を用いて、利用者にアシスト力を付与するためにアクチュエータの動作の制御が行われることで、利用者の姿勢に応じたアシスト力を発生させることが可能となる。
【0013】
また、好ましくは、前記制御部は、利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを推定する姿勢推定部と、推定された前記姿勢パラメータに基づいて前記アクチュエータを動作させるための物理量を求める決定部と、を有し、前記姿勢推定部は、前記センサの出力に基づいて、下記に定義する第一の推定処理と下記に定義する第二の推定処理とのいずれか一方の処理結果を用いて、前記姿勢パラメータを推定する。
第一の推定処理:利用者の姿勢変更による前記ベルト体の巻き取り又は送り出しの際の前記アクチュエータの動作量に基づいて行う推定処理
第二の推定処理:前記センサの出力に基づいて行う推定処理
【0014】
この場合、利用者の姿勢を示す姿勢パラメータに基づいてアクチュエータを動作させるための物理量が求められる。これにより、利用者の姿勢に応じたアシスト力をアクチュエータによって発生させることが可能となる。
利用者の状態又は動作によっては、センサの出力に基づいて姿勢パラメータを推定すると、誤りが生じる場合がある。そこで、前記構成によれば、センサによって姿勢パラメータが推定されるのが相応しい場合、前記第二の推定処理が行われ、相応しくない場合、前記アクチュエータの動作量に基づく前記第一の推定処理が行われる。
【0015】
前記のとおり、姿勢パラメータを推定するために、第一の推定処理と第二の推定処理との内の一方の処理結果が用いられる。このため、推定される姿勢パラメータが前回と今回とで大きく異なってしまうことがある。この結果、アクチュエータを動作させるための物理量が大きく変わることがあり、その場合、利用者に違和感を与える可能性がある。そこで、前記姿勢推定部は、前記姿勢パラメータの推定を繰り返し実行し、前記姿勢パラメータの変化量が閾値を超える場合、過去に推定された前記姿勢パラメータと、当該変化量とに基づいて、新たな姿勢パラメータを求めるのが好ましい。
【0016】
この場合、姿勢推定部によって推定されたパラメータが、前回と今回とで大きく異なっていても、過去に推定された姿勢パラメータと、姿勢パラメータの変化量とに基づいて、新たな姿勢パラメータが求められる。このため、アクチュエータを動作させるための物理量が大きく変わるのを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本開示のアシスト装置によれば、軽量であり装着感が良く、更に、利用者の姿勢等に応じて、適切な強さのアシスト力を生じさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】利用者の身体に取り付けられたアシスト装置の背面図である。
【
図3】利用者の身体に取り付けられたアシスト装置の側面図である。
【
図4】アシスト装置が装着された利用者が前傾姿勢となった状態を示す説明図である。
【
図5】コントロールボックス及びベルト体の説明図である。
【
図6】アシスト装置が備える制御構成を示すブロック図である。
【
図7】アシスト装置を装着した利用者が姿勢を変化させる場合の説明図である。
【
図10】ベルト体(第一ベルト)が巻かれている駆動プーリの説明図である。
【
図11】制御部が行う処理を説明するブロック図である。
【
図13】他の形態のアシスト装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔アシスト装置10の全体構成〕
図1は、アシスト装置の一例を示す背面図である。
図2は、利用者の身体に取り付けられたアシスト装置の背面図である。
図3は、利用者の身体に取り付けられたアシスト装置の側面図である。
図4は、アシスト装置が装着された利用者が前傾姿勢(前屈姿勢)となった状態を示す説明図である。
図1に示すアシスト装置10は、利用者(人)の身体の一部である左右の肩部BSに装着される一つの第一装着具11と、その利用者の身体の他部である左右の脚部BLに装着される二つの第二装着具12とを備える。第一装着具11は、利用者の肩部BS及び胸部BBの少なくとも一方に装着されればよく、また、図示する形態以外であってもよい。本開示では、第二装着具12は、脚部BLの内の膝部BNに装着される。第二装着具12も、図示する形態以外であってもよい。
【0020】
本開示のアシスト装置10において、左右は、アシスト装置10を装着した直立姿勢にある利用者にとっての左右であり、前後は、その利用者にとっての前後であり、上下はその利用者にとっての上下である。上が利用者の頭側であり、下が利用者の足側である。
【0021】
アシスト装置10は、第一装着具11、及び左右の第二装着具12の他に、ベルト体13、アクチュエータ14、制御部15、バッテリ37、及び、センサ38を備える。
【0022】
第一装着具11は、利用者の肩部BSに装着される。一方の第二装着具12は、利用者の左の膝部BNに装着される。他方の第二装着具12は、利用者の右の膝部BNに装着される。左側の第二装着具12と右側の第二装着具12とは左右対称であるが、構成は同じである。第一装着具11と二つの第二装着具12とは、利用者の関節である腰部BWを挟んで離れる二箇所、つまり肩部BS及び脚部BLに装着される。
【0023】
第一装着具11は、柔軟性を有する布地等によって構成されている。第一装着具11は、利用者の背中に装着される背本体部21と、背本体部21と繋がる肩ベルト22及び腋ベルト23とを有する。肩ベルト22及び腋ベルト23により、背本体部21が利用者に背負われた状態となる。腋ベルト23は背本体部21と肩ベルト22とを繋いでいて、その長さが調整可能である。腋ベルト23の長さ調整により、背本体部21が利用者の背中に密着した状態となる。第一装着具11は肩部BSに対して前後、左右、及び上下方向に移動不能となって装着される。第一装着具11には、例えば、肩部BSに掛ける部分として、硬質の部材が含まれていてもよい。
【0024】
第二装着具12は、柔軟性を有する布地等によって構成されている。第二装着具12は、利用者の膝部BNの後面側に装着される膝本体部24と、膝本体部24から延びて設けられている膝ベルト25とを有する。膝ベルト25は、膝部BNの上下位置それぞれにおいて膝部BNを周回し、その先端側が膝本体部24に固定される。膝ベルト25は、ベルトとバックル、又は、面ファスナー等の係止部材により、膝部BNに対する巻き付き長さの調整が可能である。この調整により、膝本体部24が膝部BNの後面側に密着した状態となる。第二装着具12は膝部BNに対して前後、左右、及び上下方向に移動不能となって装着される。
【0025】
ベルト体13は、第一装着具11と第二装着具12とを結ぶようにして、利用者の背面側に沿って設けられている。ベルト体13は、上半身側に設けられている第一ベルト16と、下半身に設けられている第二ベルト17と、第一ベルト16と第二ベルト17とを連結している連結部材18とを有する。第一ベルト16及び第二ベルト17それぞれは、長尺であり、可撓性を有する。連結部材18は、金属製であり、「平カン」と称される矩形の環状体により構成されている。
【0026】
第一ベルト16及び第二ベルト17それぞれは、布製又は革製の帯状の部材であり、身体の形状に沿って湾曲可能である。なお、第一ベルト16及び第二ベルト17それぞれは、紐状のベルト(ワイヤーのような部材)であってもよい。本開示の第一ベルト16及び第二ベルト17それぞれは、非伸縮性の部材である、つまり、その長手方向に伸縮し難い特性又は伸縮しない特性を有する。
【0027】
本開示のアシスト装置10は、コントロールボックス30を備える。コントロールボックス30は、第一装着具11の背本体部21に設けられている。
図5は、コントロールボックス30及びベルト体13の説明図である。コントロールボックス30は、板状であるベース31と、ベース31を覆うカバー32とを有する。コントロールボックス30の内部構造を説明するために、
図5ではカバー32が仮想線(二点鎖線)で示されている。ベース31が、第一装着具11の背本体部21であってもよい。
【0028】
ベース31とカバー32との間に形成される空間に、アクチュエータ14、制御部15、バッテリ37、及びセンサ38等が設けられている。カバー32には、開口(切り欠き)32aが形成されていて、この開口32aを第一ベルト16が通過している。
【0029】
アクチュエータ14は、コントロールボックス30内に設けられている。つまり、アクチュエータ14は第一装着具11に設けられている。アクチュエータ14はベルト体13の一部の巻き取り及び送り出しを可能とする。そのために、アクチュエータ14は、モータ33、減速機部34、及び駆動プーリ35を有する。モータ33は、ブラシレスDCモータである。モータ33は、制御部15から出力される駆動信号に基づいて、所定のトルク、所定の回転数で回転することができる。モータ33は、制御部15から出力される駆動信号に基づいて、正逆回転可能である。
【0030】
モータ33の回転角度、回転速度、又は回転数等の回転に関するパラメータは、モータ33に取り付けられている回転検出器36によって検出される。本開示の回転検出器36は、ロータリエンコーダであるが、ホールセンサ又はレゾルバであってもよい。回転検出器36の検出結果は、制御部15に入力される。制御部15は、前記検出結果に基づいてモータ33の動作を制御することで、アシスト装置10は適切なアシスト力を生じさせることができる。
【0031】
減速機部34は、複数の歯車により構成されていて、モータ33の回転数を減速して、減速機部34の出力軸34aを回転させる。出力軸34aに駆動プーリ35が連結されていて、これらは一体回転する。駆動プーリ35には、第一ベルト16の一端部16a側が取り付けられている。モータ33の正回転により、駆動プーリ35が一方向に回転すると、第一ベルト16が駆動プーリ35に巻き取られる。モータ33の逆回転により、駆動プーリ35が他方向に回転すると、駆動プーリ35から第一ベルト16が送り出される。
【0032】
このように、アクチュエータ14は、ベルト体13を巻き取り可能である駆動プーリ35、及び、駆動プーリ35にベルト体13の巻き取り動作をさせるためのモータ33を有する。第一ベルト16が、アクチュエータ14により巻き取り及び送り出しされる。
【0033】
制御部15は、マイクロコンピュータを含む制御ユニットにより構成されている。制御部15は、後にも説明するが、アクチュエータ14(モータ33)の動作を制御する。前記センサ38として、加速度センサが設けられている。センサ38の信号は制御部15に入力される。制御部15はセンサ38からの信号に基づいて利用者の姿勢を推定することが可能となる。バッテリ37は、制御部15、モータ33、回転検出器36、及びセンサ38に電力を供給する。センサ38は、コントロールボックス30の外部に設けられていてもよい。
【0034】
〔ベルト体13について〕
ベルト体13は、前記のとおり、第一ベルト16と第二ベルト17と連結部材18とを有する。第一ベルト16の一端部16a側が、駆動プーリ35に巻かれて固定されている。第一ベルト16の他端部16b側が、連結部材18に固定されている。駆動プーリ35に第一ベルト16が巻き取られると、連結部材18は引き上げられる。連結部材18が強制的に引き下げられると、駆動プーリ35から第一ベルト16が巻き出される(引き出される)。駆動プーリ35における第一ベルト16の巻き取り量又は巻き出し量(引き出し量)と、モータ33の出力軸の回転量との間には相関がある。ベルト体13の巻き取り又は巻き出しに伴うモータ33の回転に関するパラメータが、回転検出器36によって検出される。
【0035】
前記のとおり、連結部材18は、矩形の環状体により構成されている。その環状体の一辺側(上辺側)の軸部27aが第一取り付け部27であり、第一取り付け部27に第一ベルト16の端部16bが取り付けられている。本開示では、第一ベルト16が第一取り付け部27に対して取り外し不能となっているが、バックル等によって取り外し可能となっていてもよい。
【0036】
連結部材18を構成する前記矩形の環状体の他辺側(下辺側)が、第二ベルト17を取り付けるための第二取り付け部28である。このように、連結部材18は、第一ベルト16を取り付けるための第一取り付け部27と、第二ベルト17を取り付けるための第二取り付け部28とを有する。
【0037】
第二取り付け部28は、第二ベルト17を、その途中(途中部17c)で折り返した状態で支持している。本開示の第二取り付け部28は、第一取り付け部27と一体である軸部28aと、軸部28aに回転自在となって支持されている回転プーリ29とを有する。回転プーリ29に、第二ベルト17が、その途中で折り返された状態で掛けられている。この構成により、第二取り付け部28に、第二ベルト17は固定されておらず、第二ベルト17を、折り返した状態であるが、その長手方向の両方向(
図5の矢印X方向)に移動自在として支持する構成が得られる。
【0038】
図2において、第二ベルト17は、第二装着具12に取り付けられている。具体的に説明すると、第二ベルト17は一本の帯状部材により構成されている。第二ベルト17の一端部17a側が、左の第二装着具12に取り付けられている。第二ベルト17の他端部17d側が、右の第二装着具12に取り付けられている。前記のとおり、第二ベルト17の途中部17cが、連結部材18に掛けられている。
【0039】
前記のような第二ベルト17の構成によれば、その第二ベルト17は、連結部材18から左の第二装着具12までの左第二ベルト部19と、連結部材18から右の第二装着具12までの右第二ベルト部20とを有する。前記のとおり(
図5参照)、第二ベルト17は、第二取り付け部28(回転プーリ29)に掛けられていて、固定されていないことから、左第二ベルト部19の長さと右第二ベルト部20の長さとは、自由に変更可能となる。ただし、左第二ベルト部19の長さと右第二ベルト部20の長さとの合計は一定である。この構成により、利用者の例えば歩行が第二ベルト17によって制限されず、利用者は楽に歩行できる。
【0040】
第二ベルト17は、更に、左第二ベルト部19と右第二ベルト部20とを連結する繋ぎ部材39を有する。繋ぎ部材39は、第二ベルト17の折り返し部(途中部17c)と二つの第二装着具12との固定部(一端部17a,他端部17d)との間の中間位置において、左第二ベルト部19と右第二ベルト部20とを連結している。前記折り返し部は、連結部材18において第二ベルト17が折り返されている部分である。前記固定部は、二つの第二装着具12それぞれに第二ベルト17が固定されている部分である。
【0041】
例えば利用者が直立姿勢から
図4に示すように前屈姿勢となるように姿勢を変更した場合に、繋ぎ部材39によれば、左第二ベルト部19と右第二ベルト部20との左右の間隔が広がってしまうのを防止することが可能となる。つまり、左第二ベルト部19と右第二ベルト部20とが利用者の脚部BLにおける背面側に沿わないようになるのを防止することが可能となる。
【0042】
〔センサ38及び制御部15について〕
図5において、前記のとおり、センサ38は、加速度センサにより構成されている。制御部15は、各種の演算処理を実行可能である。センサ38からの信号を制御部15が演算処理することで、利用者の動作及び姿勢を検出することができる。センサ38は、利用者の姿勢に応じた信号を出力する構成を有し、利用者の姿勢を検出するための姿勢検出器として機能する。例えば、利用者の上半身の姿勢が前傾姿勢にあるのか直立姿勢にあるのかの状態を検出したり、しゃがんだ状態となったことを検出したりできる。
【0043】
また、モータ33による駆動プーリ35でのベルト体13の巻き取り量及び送り出し量と、利用者の姿勢とは相関がある。このため、回転検出器36が検出するモータ33の回転角に基づいて、制御部15は利用者の姿勢を推定することができる。
【0044】
制御部15は、センサ38及び回転検出器36の一方又は双方からの信号を処理する。その処理の結果、つまり、利用者の姿勢に応じて、アクチュエータ14(モータ33)へ駆動信号を出力する。駆動信号に基づいて、アクチュエータ14(モータ33)は動作し、ベルト体13の巻き取り及び送り出し、並びに、その一時停止等が行われる。センサ38及び回転検出器36からの信号を用いて行うアクチュエータ14(モータ33)の動作制御については、後に説明する。
【0045】
アシスト装置10が利用者に装着された状態で、制御部15の制御により、常時、モータ33は、アシスト力を発生させる場合と比べて弱い力でベルト体13を巻き取る方向に動作していて(トルクを発生させていて)、ベルト体13に弱い張力を生じさせている。これにより、ベルト体13が緩まない。
【0046】
利用者が姿勢を変化させると、例えば、直立姿勢から前傾姿勢になると、ベルト体13にはその姿勢の変化に起因して張力が生じる。そこで、この場合、前傾姿勢となるように姿勢変化を開始すると、アクチュエータ14の動力によらず、ベルト体13の張力によりモータ33を強制的に回転させて(モータ33は空転して)、ベルト体13は巻き出される。又は、前傾姿勢となるように姿勢変化を開始すると、アクチュエータ14は動作して、つまり、モータ33を回転駆動して、ベルト体13を送り出す。
【0047】
反対に、利用者が前傾姿勢から直立姿勢になると、ベルト体13はその姿勢の変化に起因して緩もうとする。そこで、この場合、直立姿勢となるように姿勢変化を開始すると、ベルト体13に作用する張力を維持するために、アクチュエータ14は動作して、つまり、モータ33を回転駆動して、ベルト体13を巻き取る。
【0048】
このように、利用者の姿勢変更により、ベルト体13の巻き取り又は送り出しがされる。この巻き取り又は送り出しでは、能動的に又は受動的にモータ33が所定の回転角について回転する。この際の回転角が、回転検出器36によって検出される。このように、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のアクチュエータ14(モータ33)の動作量が、回転検出器36によって検出される。
そして、後に説明するが、制御部15が、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のアクチュエータ14の動作量(モータ33の回転角)を取得し、その動作量に基づいて、その利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを求め、その姿勢パラメータに基づいて、利用者にアシスト力を付与するためにアクチュエータ14の動作の制御を行うことができる。
【0049】
図6は、アシスト装置10が備える制御構成を示すブロック図である。制御部15は、マイクロコンピュータを含む制御ユニットにより構成されていて、演算処理ユニット(CPU)15a及びメモリ等の記憶装置(記憶部)15bを備える。演算処理ユニット15aは、記憶装置15bに記憶されている各種プログラム及び各種パラメータ等に基づいて、種々の演算処理を実行する。本開示の制御部15は、演算処理ユニット15aによる演算処理によって実現される機能部として、姿勢推定部42a、決定部42b、及び判定部42cを備える。制御部15は、更に、モータ33の動作制御を行う駆動回路(モータドライバ)15cを含む。前記の各機能部と駆動回路15cとが協働することでモータ33は所定の動作を実行する。制御部15が有する前記機能部については、後に説明する。
【0050】
〔アシスト装置10によるアシスト力について〕
図7は、前記アシスト装置10を装着した利用者が姿勢を変化させる場合の説明図である。この姿勢の変化に対して、アシスト装置10は、利用者にアシスト力を付与することができる。
【0051】
アクチュエータ14のモータ33によって第一ベルト16が駆動プーリ35に巻き取られると、連結部材18は第二ベルト17をアクチュエータ14側、つまり、上側に引き上げる。第二ベルト17は、その両端部17a,17dが左右の第二装着具12に取り付けられている。第二装着具12は膝部BNに固定されている。このため、第一ベルト16が駆動プーリ35に巻き取られると、第一ベルト16及び第二ベルト17に張力が作用する。この張力が、利用者に対するアシスト力(補助力)として作用する。
【0052】
利用者が直立姿勢から前傾姿勢となる場合について説明する。前傾姿勢となるように姿勢変化を開始すると、アクチュエータ14はベルト体13を送り出す。又は、アクチュエータ14の動力によらず、ベルト体13は巻き出される。これにより、利用者は無理なく、前傾姿勢となることができる。鉛直線に対する利用者の上半身の前傾角度がθLになり、利用者がその前傾角度θLで停止すると、ベルト体13の送り出し(巻き出し)が停止される。なお、姿勢変化の開始及び終了は、回転検出器36又はセンサ38によって検出可能である。
【0053】
利用者が前傾姿勢から直立姿勢になる方向に姿勢変化を開始すると、アクチュエータ14はベルト体13を巻き取る。これにより、ベルト体13には張力が生じる。この張力により、第一装着具11には、後方へ向かう作用力F1が生じる。つまり、前傾姿勢の利用者の上半身を起き上がらせる方向の作用力F1が生じる。また、これと同時に、第二ベルト17は、その張力により、利用者の左臀部及び右臀部を前方に押し出す作用力F2が生じる。これにより、利用者は前傾姿勢から直立姿勢に楽に復帰することが可能となる。
【0054】
また、
図4に示すように、利用者が、上半身を前傾させ、膝部を曲げた屈曲姿勢(屈んだ姿勢)となる場合にも、アシスト装置10は、利用者にアシスト力を付与することができる。利用者が、屈曲姿勢から、直立姿勢となる場合、例えば、物や被介助者の身体の一部を持ち上げる場合、アクチュエータ14はベルト体13を巻き取る。これにより、ベルト体13には張力が生じる。
【0055】
この張力により、第一装着具11には、後方へ向かう作用力F1が生じる。つまり、前傾姿勢の利用者の上半身を起き上がらせる方向の作用力F1が生じる。また、これと同時に、第二ベルト17は、その張力により、利用者の左臀部及び右臀部を前方に押し出す作用力F2が生じる。更に、第二装着具12には、後方への作用力F3が生じる。前記のような作用力F1,F2,F3により、利用者の前屈姿勢における背筋及び大腿四頭筋等の筋力負荷を軽減して、荷物の持ち上げ動作を補助することができる。
【0056】
利用者が、直立姿勢から、屈曲姿勢となる場合においても、アシスト装置10は機能する。例えば、利用者が、物や被介助者の身体の一部を持ち下げる場合である。この場合、アクチュエータ14は、ベルト体13の送り出しにブレーキ力を作用させながら、そのベルト体13を送り出す。つまり、モータ33は、ベルト体13を送り出す方向に回転するが、そのモータ33に、巻き取りの方向のトルクを発生させる。これにより、ベルト体13には張力が生じる。この場合においても、前記のような作用力F1,F2,F3により、アシスト装置10は、利用者の前屈姿勢における背筋及び大腿四頭筋等の筋力負荷を軽減して、持ち下げ動作を補助することができる。
以上のように、本開示のアシスト装置10によれば、前屈姿勢における腰部の筋負担を軽減し、腰痛を防ぐことが可能となる。
【0057】
また、本開示のアシスト装置10によれば、利用者が、左右の脚部BLの一方を前、他方を後ろとした状態(左右非対称の状態)で屈曲姿勢となっていても、第二ベルト17のうちの左第二ベルト部19と右第二ベルト部20とのうちの一方(前に脚部が出ている側)が、他方よりも自動的に長くなることができる。この状態でアクチュエータ14により第一ベルト16が巻き取られると、第二ベルト17にも張力が作用し、その張力が左第二ベルト部19と右第二ベルト部20との双方に作用し、張力が逃げない。よって、前記のように、利用者が左右非対称の姿勢となっていても、本開示のアシスト装置10によれば、適切なアシスト力を利用者に作用させることが可能となる。
【0058】
利用者が前傾姿勢の状態を維持する場合にも、本開示のアシスト装置10によれば、その姿勢を容易に維持させることが可能となる。つまり、
図7の右側の図に示すように、利用者が第一の前傾姿勢となった状態で、アクチュエータ14の動作は停止し、ベルト体13の送り出しを不能とする。利用者は更に前傾姿勢(第二の前傾姿勢)となろうとしても、第一装着具11と第二装着具12とを繋ぐベルト体13の張力によって、第二の前傾姿勢をとることができない。つまり、アシスト装置10は、利用者の第一の前傾姿勢を維持させようとする。利用者にとっては、第一の前傾姿勢を維持することが容易となる。この結果、例えば、長時間、利用者が作業のために第一の前傾姿勢を継続する場合に、身体の負担が小さくなる。
【0059】
〔制御部15に記憶されている情報について〕
制御部15の記憶装置15bに記憶されている情報について説明する。記憶装置15bには、対応情報i1、及び、換算情報i2が記憶されている。
【0060】
対応情報i1は、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のアクチュエータ14の動作量と、利用者の姿勢を示す姿勢パラメータとの関係を示す情報である。本開示では、前記「姿勢パラメータ」は、
図7に示すように、鉛直線に対する利用者の上半身の傾斜角度θLである。この傾斜角度θLは姿勢角θLと称される。以下において、姿勢パラメータを利用者の姿勢角θLとして説明する。なお、姿勢パラメータは他のパラメータであってもよく、姿勢角θLの他に、姿勢角θLが変化する方向の角速度であってもよい。その角速度は、姿勢角θLを時間微分することで求められる。また、姿勢パラメータとして、姿勢角θLと前記角速度との双方が用いられてもよい。利用者が直立姿勢にある場合、θL=0となる。
【0061】
対応情報i1について具体的に説明する。前記のとおり、利用者の姿勢変更により、ベルト体13の巻き取り又は送り出しがされ、その際のアクチュエータ14の動作量としてモータ33の回転角が、回転検出器36によって検出される。利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のモータ33の回転角θMと、姿勢角θLとの間には、相関がある。そこで、
図8に示すように、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のモータ33の回転角θMと、姿勢角θLとの関係を示す対応情報i1が、記憶装置15bに記憶されている。
【0062】
なお、対応情報i1は、
図8に示すようにグラフによる形式ではなく、回転角θMと姿勢角θLとの関数であってもよく、又は、回転角θMと姿勢角θLとが対応付けられたテーブル(データベース)であってもよい。
【0063】
図8に示す実線は、利用者が標準身長である場合の対応情報i1であり、
図8に示す破線は、身長が標準身長よりも低い場合の対応情報i1であり、
図8に示す一点鎖線は、身長が標準身長よりも高い場合の対応情報i1である。このように、本開示では、対応情報i1は、更に利用者の身長毎に設定される情報である。身長毎の対応情報i1は、グラフによる形式又はテーブルによる形式以外として、標準身長の場合の対応情報を示す関数に、係数等を用いて換算して得た関数であってもよい。
【0064】
対応情報i1は、予め生成された情報である。つまり、対応情報i1は、様々な身長の利用者にアシスト装置10を装着し、姿勢角θLを様々変化させ、姿勢角θL毎に回転角θMを取得することで生成される。
なお、図示しないが、駆動プーリ35の回転角を検出する回転検出器が設けられていて、駆動プーリ35の回転角が検出されてもよい。この場合、記憶装置15bには、駆動プーリ35の回転角と、姿勢パラメータ(姿勢角θL)との関係を示す対応情報が、記憶される。
【0065】
前記換算情報i2は、
図9に示すように、姿勢パラメータ(姿勢角θL)と、利用者に付与すべきアシスト力(τa,ref)との関係を示す情報である。この換算情報i2は、予め生成された情報である。つまり、換算情報i2は、姿勢角θL毎に適切であると想定されるアシスト力を予め設定し、姿勢角θLと、その姿勢角θLに対応するアシスト力とを対応付けて生成される。換算情報i2についても、対応情報i1と同様に、グラフによる形式、テーブルによる形式、又は、関数であってもよい。
図9では、説明を容易とするために、換算情報i2はテーブルによる形式である。
図9中のアシスト力を示す「A,B,C,D」はそれぞれ、所定の値である。なお、換算情報i2は、他の手段によって取得されてもよく、又は、他のアルゴリズムによる演算プログラムであってもよい。
【0066】
なお、姿勢パラメータとして、姿勢角θL及び姿勢角θLが変化する方向の角速度が用いられ、換算情報i2は、その姿勢パラメータ(姿勢角θL及び前記角速度)と、アシスト力(τa,ref)との関係を示す情報であってもよい。この場合、例えば、前記角速度が所定の範囲にある場合、姿勢角θLが(屈曲方向に)大きくなるほど、アシスト力(τa,ref)が大きくなるように、換算情報i2は設定されている。また、姿勢角θLが所定の範囲にある場合、前記角速度が(屈曲方向に)大きくなるほど、アシスト力が小さくなるように、換算情報i2は設定されている。
【0067】
〔制御部15が有する各機能部について〕
姿勢推定部42a及び決定部42bが有する機能について説明する。
アシスト装置10を装着した利用者が、姿勢を変更し、それに伴ってアクチュエータ14のモータ33が所定の角度について回転し、アクチュエータ14の動作量として、回転検出器36がモータ33の回転角θM-1を検出したとする。
【0068】
利用者の姿勢変更に伴ってモータ33の回転角θM-1が得られると、姿勢推定部42aは、その回転角θM-1及び対応情報i1(
図8参照)に基づいて、姿勢パラメータとして姿勢角θL-1を推定する。
【0069】
決定部42bは、姿勢推定部42aによって求められた姿勢角θL-1に基づいて、アクチュエータ14を動作させるための物理量として、アクチュエータの出力、つまり、モータ33の出力トルクを求める。モータ33の出力トルクは、例えば次のようにして求められる。姿勢角θLに対応するアシスト力τa,refが、換算情報i2から求められると、そのアシスト力τa,refに相当するモータ33の出力トルクが求められる。モータ33の出力トルクは、アシスト力τa,refから換算して求められる。又は、モータ33の出力トルクは、換算情報i2に、アシスト力τa,refと対応付けて設定されていて(
図9参照)、換算情報i2から抽出されてもよい。
【0070】
なお、本開示では、アクチュエータ14を動作させるための物理量が、モータ33の出力トルクであり、その出力トルクに対応する電流が、制御部15の制御によって、モータ33に駆動電流として与えられる。前記物理量は他であってもよく、アシスト力τa,refに相当する出力トルクをモータ33に発生させるために、モータ33に与える電流値であってもよい。
【0071】
アシスト力τa,refに相当するモータ33の出力トルクは、補正されて求められてもよい。そのために、決定部42bは、更に、次の機能を有する。
すなわち、決定部42bは、前記のとおり、姿勢パラメータとして姿勢角θL-1が求められると、換算情報i2(
図9参照)に基づいてアシスト力τa,refを決定すると共に、決定したアシスト力τa,refを補正する。その補正は、次の式(1)の演算により行われる。つまり、その補正は、決定したアシスト力τa,refを、下記に定義する「駆動プーリ35の径(半径)rcalc」を用いて行う補正である(
図10参照)。
「駆動プーリ35の径(半径)rcalc」:駆動プーリ35に巻かれている状態にあるベルト体13(第一ベルト16)を含む、その駆動プーリ35の径(半径)。
【0072】
【0073】
前記式(1)において、「τM,cmd」が、補正されたモータ33の出力トルクである。「τa,ref」は、換算情報i2に基づく値である。「n」は、減速機部34の減速比である。「η」は、減速機部34の効率である。「rcalc」は、前記「駆動プーリ35の径(半径)」であり、後に説明する式(2)により求められる。式(2)の「rinit」は、利用者の姿勢変更前でのベルト体13を含む駆動プーリ35の半径である。この半径の値は、例えば、式(2)により、前回の利用者の姿勢変更の際に求められた値である。
【0074】
【0075】
前記式(2)において、「θM」は、モータ33の回転角である。利用者の姿勢変化によって回転角θM-1が得られている。ここでは、θM=θM-1となる。「t」は、ベルト体13(第一ベルト16)の厚さである。「n」は減速機部34の減速比である。「rinit」は、前記のとおり、利用者の姿勢変更前でのベルト体13を含む駆動プーリ35の半径である。
【0076】
前記補正は、ベルト体13(第一ベルト16)が、ある程度の厚さt(
図10参照)を有するために行われる。つまり、モータ33が同じ出力でベルト体13を駆動プーリ35に巻き取らせる場合であっても、ベルト体13の厚さtの影響により、アシスト力を生むための駆動プーリ35におけるトルクが変化するためである。
前記補正によれば、利用者に付与すべきアシスト力を得るため、アクチュエータ14を動作させるための物理量として、モータ33の出力トルク(τM,cmd)を求める場合に、駆動プーリ35に巻かれるベルト体13の厚さtによる影響を解消することができる。
【0077】
以上のように、利用者が姿勢を変化させた際の、モータ33の回転角θM(θM-1)に基づいて、その利用者の姿勢角θL(θL-1)を推定し、その姿勢角θL(θL-1)に基づいてモータ33の出力トルク(τM,cmd)が求められる。その出力トルク(τM,cmd)に対応する電流が、制御部15の制御によって、モータ33に駆動電流として与えられる。なお、補正が行われる場合、補正後のモータ33の出力トルクに対応する電流が、制御部15の制御によって、モータ33に駆動電流として与えられる。
【0078】
以上のように、制御部15は、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のモータの回転角θMに基づいて、姿勢角θLを求める。制御部15は、その利用者にアシスト力を付与するために、求めた姿勢角θLに基づいて、アクチュエータ14(モータ33)の動作の制御を行うように構成されている。
【0079】
更に、センサ38の検出結果についても考慮されて、アクチュエータ14を動作させるための物理量(モータ33の出力トルク、又は、モータ33に与える電流値)が求められてもよい。つまり、制御部15は、前記のとおり、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のアクチュエータ14(モータ33)の動作量の他に、センサ38による検出結果も用いて、その利用者にアシスト力を付与するためにアクチュエータ14(モータ33)の動作の制御を行う。センサ38の検出結果が考慮される場合について、以下、説明する。
【0080】
図11は、制御部15が行う処理を説明するブロック図である。
図11のブロックB1は、説明したとおり、モータ33の回転角θMに基づいて、対応情報i1を用いて、その利用者の姿勢角θLを推定する処理である。
【0081】
センサ38は、3軸加速度センサであり、相互で直行するX軸、Y軸、Z軸それぞれの方向の加速度(G)を刻々と検出する。X軸の方向は直立姿勢にある利用者の左右方向の一方(右)と一致し、Y軸の方向はその利用者の前後方向の一方(前方)と一致し、Z軸の方向はその利用者の上下方向の一方(上方)と一致する。センサ38が加速度を検出すると、制御部15が備える前記判定部42cは、次の式(3)の演算を行う(
図11のブロックB2)。式(3)において、AXは、X軸の方向の加速度であり、AYは、Y軸の方向の加速度であり、AZは、Z軸の方向の加速度である。
【0082】
【0083】
更に、判定部42cは、式(3)の演算結果αを、閾値ε1、ε2と比較する(
図11のブロックB3)。閾値ε1は1よりも小さく(ε1<1)、閾値ε2は1よりも大きい値である(ε2>1)。αがε1よりも大きくε2よりも小さい場合(ε1<α<ε2)、センサ38の検出結果に基づいて推定した(
図11のブロックB4)姿勢パラメータ(姿勢角θL)が用いられる。
【0084】
ここで、αが1に近い値である場合、利用者は、その位置で姿勢を変化させていても歩行等、姿勢変化以外の動作を行っていないと推定される。なお、利用者が歩行動作を行っている場合、センサ38の検出結果には、その影響が反映され、αは、例えばε2よりも大きくなる。
【0085】
αがε1よりも大きくε2よりも小さい場合、主として重力による成分をセンサ38が検出している状態である。このため、判定部42cは、センサ38の検出結果に基づいて、次の式(4)により演算(
図11のブロックB4)で求められた、利用者の姿勢角θLを採用する。つまり、αがε1よりも大きくε2よりも小さい場合、センサ38によって姿勢角θLが推定されるのが相応しいと言える。そこで、次の式(4)の演算による姿勢角θLが、θLtempとして記憶装置15bに保存される。
【0086】
【0087】
これに対して、ε1<α<ε2を満たさない場合、つまり、αがε1以下である場合、又は、αがε2以上である場合、ブロックB1において求められている、モータ33の回転角θMに基づいて推定された姿勢角θLが採用される。ε1<α<ε2を満たさない場合、センサ38によって姿勢角θLが推定されるのが相応しくないと言える。そこで、回転角θMに基づいて推定された姿勢角θLが、θLtempとして記憶装置15bに保存される。
【0088】
前記のとおり、センサ38は、加速度(G)を刻々と検出している。このため、記憶装置15bには、過去に得られた姿勢角θLtemp、及び、今回、得られた姿勢角θLtempが保存されている。今回、得られた姿勢角θLtempを「姿勢角θL(N)」とし、過去(今回の一つ前、すなわち前回)に得られた姿勢角θLtempを「姿勢角θL(N-1)」とする。判定部42cは、次の式(5)のように、姿勢角θL(N)と姿勢角θL(N-1)との差ΔθLを求める。
【0089】
【0090】
判定部42cは、更に、前記差ΔθLの絶対値を閾値ε3と比較する。ΔθLの絶対値が、閾値ε3以下である場合、今回、得られた姿勢角θLtempである「姿勢角θL(N)」を、現在の利用者の姿勢角として決定する。
これに対して、ΔθLの絶対値が、閾値ε3を超える場合、判定部42cは、次の式(6)による演算を行う。その演算の結果により求められる「θL(N)」を、現在の利用者の姿勢角として決定する。
【0091】
【0092】
このように、今回の姿勢角θL(N)と過去の姿勢角θL(N-1)との差ΔθLを、判定部42cが用いることの意義は、次のとおりである。すなわち、仮に差ΔθLを考慮しない場合、例えば、式(3)による前記演算結果αに関して、ε1<α<ε2を満たす状態から、ε1<α<ε2を満たさない状態に変化した場合、姿勢角について瞬間的に大きな変化が発生したと判定されるおそれがある。この場合、アシスト装置10によって発生させるアシスト力が急変し、つまり、モータ33の回転トルクが急変し、利用者に違和感を与える可能性がある。しかし、本開示では、今回の姿勢角θL(N)と過去の姿勢角θL(N-1)との差ΔθLの絶対値が、閾値ε3を超える場合には、前記式(6)により説明したように、過去の結果である姿勢角θL(N-1)及び姿勢角の変化量ΔθLに基づいて、現在の利用者の姿勢角θL(N)が決定される。よって、アシスト力が急変するのを防ぐことができ、利用者に違和感を与えるのを防ぐことが可能となる。
【0093】
以上のようにして決定された現在の利用者の姿勢角θL(N)に基づいて、前記のとおり、モータ33の出力トルク(τM,cmd)が求められる。その出力トルク(τM,cmd)に対応する電流が、制御部15の制御によって、モータ33に駆動電流として与えられる。また、その出力トルクが前記のとおり補正されてもよい。
前記のようにして決定された現在の利用者の姿勢角θL(N)に基づいて、アシスト装置10の動作モードが選択されたり、変更されたりしてもよい。
【0094】
以上のように、本開示のアシスト装置10が有する制御部15は、回転検出器36によって求められたモータ33の回転角θMに基づいて利用者の姿勢角θLを推定する第一の推定処理を行う機能と、センサ38の出力に基づいて利用者の姿勢角θLを推定する第二の推定処理を行う機能とを有する。そして、制御部15の姿勢推定部42aは、前記第一の推定処理と前記第二の推定処理とのいずれか一方の処理結果を用いることによって姿勢パラメータとしての姿勢角θLを求める。
【0095】
ここで、制御部15は、前記第一の推定処理のみならず、前記第二の推定処理についても実行する機能を備えていることの意義を説明する。
図12は、利用者が上半身を前傾させた前傾姿勢にある場合と、利用者が上半身については鉛直線に沿っているが、膝を曲げて座っている姿勢とを示す説明図である。
図12の左側に示すように、利用者が前傾姿勢にある場合と、
図12の右側に示すように、利用者が膝を曲げて座っている場合とを比べると、大腿部に対する上半身の曲がり角度θは同じである。このため、前記第一の推定処理によれば、ベルト体13の送り出し量は同じであることから、モータ33の回転角θMは同じとなり、姿勢角θLの区別ができない。
【0096】
これに対して、前記第二の推定処理によれば、センサ38によるXYZの各軸の加速度に基づいて、鉛直線に対する利用者の上半身の傾斜角度を算出する。このため、センサ38によるXYZの各軸の加速度に基づいて得られる上半身の傾斜角度の値は、
図12の左側に示す、前傾姿勢にある場合と、
図12の右側に示す、座っている場合とで、相違する。つまり、前記第二の推定処理によれば、利用者が、上半身を前傾させた前傾姿勢にあるのか、利用者が上半身については鉛直線に沿っているが、膝を曲げて座っている姿勢にあるのかの判別が可能となる。
【0097】
利用者が、上半身を前傾させた前傾姿勢にあると判別されることで、その利用者は、荷物を持ち上げるために、前傾姿勢から直立姿勢へと姿勢を変化させている、又は、荷物を持ち下げるために、直立姿勢から前傾姿勢へと姿勢を変化させているという動作モードを、判定部42cは推定できる。この場合、荷物の持ち上げ又は持ち下げのために、アシスト装置10はアシスト力を発生させるために、アクチュエータ14を動作させる。
また、利用者が上半身については鉛直線に沿っているが、膝を曲げて座っている姿勢にあると判別されることで、その利用者は、座って作業を行っているという動作モードを、判定部42cは推定できる。この場合、例えば、アシスト装置10はアシスト力を発生させない。なお、この座って作業している姿勢で、荷物の持ち上げの場合と同様のアシスト力を発生させると、利用者は後方に引っ張られてしまい、バランスを崩す。
【0098】
〔本開示のアシスト装置10について〕
以上のように、本開示のアシスト装置10は(
図2参照)、利用者の肩部BSに装着される第一装着具11と、その利用者の左右の脚部BLそれぞれに装着される第二装着具12と、ベルト体13と、アクチュエータ14とを備える。ベルト体13は、第一装着具11と第二装着具12とにわたって利用者の背面側に沿って設けられる。アクチュエータ14は、第一装着具11に設けられていて、ベルト体13の一部の巻き取り及び送り出しを可能とするように構成されている。
【0099】
ベルト体13は、アクチュエータ14により巻き取り及び送り出しされる第一ベルト16と、第二装着具12に取り付けられている第二ベルト17と、第一ベルト16と第二ベルト17とを連結している連結部材18とを有する。
【0100】
このアシスト装置10によれば、ベルト体13が第一装着具11と第二装着具12とにわたって利用者の背面側に沿って設けられる。アクチュエータ14がベルト体13(第一ベルト16)を巻き取ることで、第一ベルト16及び第二ベルト17に張力が作用する。その張力により利用者の作業を補助するアシスト力が生まれ、利用者の身体の負担が軽減される。
【0101】
例えば、利用者(介助者)が、荷重(被介助者)を手で支えながら前傾姿勢から直立姿勢になる際(
図7参照)、アクチュエータ14がベルト体13を巻き取ることで、そのベルト体13に張力が作用する。その張力により利用者が前傾姿勢から直立姿勢になりやすく、利用者の身体の負担が軽減される。つまり、アクチュエータ14によりベルト体13に作用する張力がアシスト力として発生する。
【0102】
本開示のアシスト装置10では、アクチュエータ14は、利用者の姿勢の変更に応じてベルト体13の一部の巻き取り及び送り出しを可能とする。このアクチュエータ14の制御が制御部15によって実行される。制御部15は、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のアクチュエータ14の動作量(つまり、モータ33の回転角)に基づいて、その利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを求める。そして、制御部15は、その利用者にアシスト力を付与するために、前記姿勢パラメータに基づいてモータ33の動作の制御を行う。
【0103】
前記構成を備えるアシスト装置10によれば、利用者が姿勢を変更すると、その変更によりベルト体13が巻き取られ又は送り出され、この際、モータ33が回転する。利用者の姿勢の変更(変化)とモータ33の回転角とは相関がある。このため、その回転角に基づいて、姿勢パラメータが求められ、利用者にアシスト力を付与するために、その姿勢パラメータに基づいてモータ33の動作の制御が行われる。この結果、利用者の姿勢に応じたアシスト力を発生させることが可能となる。
【0104】
制御部15の記憶装置15bには、
図8に示すように、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のモータ33の回転角θMと、姿勢パラメータ(姿勢角θL)との関係を示す対応情報i1が記憶されている。制御部15の姿勢推定部42aは、利用者の姿勢変更に伴ってモータ33の回転角θMが得られると、その回転角θM及び対応情報i1に基づいて、姿勢パラメータ(姿勢角θL)を推定する。制御部15の決定部42bは、推定された姿勢パラメータ(姿勢角θL)に基づいて、モータ33を動作させるための物理量として、モータ33の出力トルク又はモータ33に供給する電流値を求める。
【0105】
前記の構成によれば、利用者が姿勢を変化させて所定の姿勢となり、その姿勢の変化の際のモータ33の回転角θMが得られると、前記対応情報i1に基づいて、姿勢パラメータ(姿勢角θL)が得られる。姿勢パラメータ(姿勢角θL)は、利用者の姿勢を示す。得られた姿勢パラメータ(姿勢角θL)に基づいて、その姿勢パラメータ(利用者の姿勢)に応じたモータ33を動作させるための物理量が決定される。これにより、アシスト装置10は、利用者の姿勢に応じた適切な強さのアシスト力を生じさせることが可能となる。
【0106】
なお、利用者の身長が異なると、姿勢の変化が同じであっても、モータ33の回転角が異なる場合がある。しかし、本開示では、対応情報i1は、
図8に示すように、利用者の身長毎に設定される情報である。このため、利用者の身長が異なっても、姿勢パラメータ(姿勢角θL)が得られる。
【0107】
ベルト体13(第一ベルト16)は、ある程度の厚さtを有する。モータ33が同じ出力でベルト体13を駆動プーリ35に巻き取らせる場合であっても、ベルト体13(第一ベルト16)の厚さtの影響により、アシスト力を生むための駆動プーリ35におけるトルクが変化する場合がある。
【0108】
そこで、本開示では、制御部15が有する決定部42bは、姿勢パラメータ(姿勢角θL)が推定されると、換算情報i2に基づいてアシスト力を決定すると共に、決定したアシスト力を、前記式(1)によって補正する。補正は、巻かれている状態にあるベルト体13を含む駆動プーリ35の径rcalc(
図10参照)を用いて行われる。補正が行われることで、駆動プーリ35に巻かれるベルト体13の厚さtによる影響が解消される。
【0109】
更に、本開示のアシスト装置10では、制御部15は、利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のモータ33の回転角の他に、センサ38(姿勢検出器)による検出結果も用いて、利用者にアシスト力を付与するためにモータ33の動作の制御を行うように構成されている。
【0110】
つまり、制御部15は、利用者の姿勢を示す姿勢パラメータとして姿勢角θLを推定する姿勢推定部42aを有する。姿勢推定部42aは、加速度センサからなるセンサ38の出力に基づいて、すなわち、前記式(3)の結果と閾値(ε1、ε2)との比較結果に基づいて、下記に定義する第一の推定処理と下記に定義する第二の推定処理とのいずれか一方の処理結果を用いることによって、姿勢角θLを推定する。
第一の推定処理:利用者の姿勢変更によるベルト体13の巻き取り又は送り出しの際のモータ33の回転角に基づいて行う推定処理
第二の推定処理:加速度センサからなるセンサ38の出力に基づいて行う推定処理
【0111】
制御部15は、更に、推定された姿勢角θLに基づいてアクチュエータ14を動作させるための物理量を求める決定部42bを有する。前記物理量としては、例えば、モータ33の出力トルク、又は、モータ33に与える電流値である。
【0112】
この構成によれば、センサ38によって姿勢角θLが推定されるのが相応しい場合、つまり、前記式(3)に基づくαがε1よりも大きくε2よりも小さい場合、前記第二の推定処理が行われる。センサ38によって姿勢角θLが推定されるのが相応しくない場合、つまり、前記αがε1以下である場合、又は、αがε2以上である場合、モータ33の回転角に基づく前記第一の推定処理が行われる。利用者の姿勢を推定する精度が高くなり、アシスト装置10は、利用者の姿勢に応じた適切な強さのアシスト力を生じさせることが可能となる。
また、利用者の動作意図、つまり、作業モードの推定が可能となるため、その利用者の動作を阻害することなく、適切なアシスト力を付与することが可能となる。
【0113】
また、本開示では、前記のとおり、姿勢角θLを推定するために、第一の推定処理と第二の推定処理との内の一方の処理結果が用いられる。このため、推定される姿勢角θLが前回と今回とで大きく異なってしまうことがある。この結果、アクチュエータ14を動作させるための前記物理量が大きく変わることがあり、その場合、利用者に違和感を与える可能性がある。
【0114】
そこで、本開示のアシスト装置では、姿勢推定部42aは、姿勢角θLの推定を繰り返し実行している。そして、姿勢角θLの変化量(前記差ΔθLの絶対値)が閾値(ε3)を超える場合、過去に推定された姿勢角θL(N-1)と、姿勢角θLの変化量(前記差ΔθL)とに基づいて、新たな姿勢角θL(N)が求められる。
この場合、姿勢推定部42aによって推定された姿勢角θLが、前回と今回とで大きく異なっていても、過去に推定された姿勢角θL(N-1)と、前記差ΔθLとに基づいて、新たな姿勢角θL(N)が求められる。このため、アクチュエータ14を動作させるための物理量が大きく変わるのを防ぐことが可能となる。よって、利用者に違和感を与えない。
【0115】
なお、姿勢角θLの推定のために、次の<手段1>又は<手段2>が採用可能である。
<手段1>先に、センサ38により姿勢角θLが推定されるのが相応か不相応かを判定し、その後、前記判定の結果に応じて、第一の推定処理と第二の推定処理とのうちの一方の処理を行って、その一方の処理結果を用いる。
<手段2>先に、第一の推定処理と第二の推定処理とを実行し、その後、センサ38により姿勢角θLが推定されるのが相応か不相応かを判定し、前記判定の結果に応じて、第一の推定処理と第二の推定処理とのうちの一方の処理結果を用いる。
【0116】
〔他のアシスト装置10〕
前記開示のアシスト装置10は、第二装着具12が利用者の脚部BLに装着されている。
図13に示すように、第二装着具12は、利用者の腰部BWに装着されていてもよい。この場合、第二装着具12は、腰ベルト形であってもよく、パンツ形であってもよい。第二装着具12が腰部BWに装着される場合、アクチュエータ14は、第一装着具11に取り付けられていてもよいが、第二装着具12に取り付けられていてもよい。この場合、利用者の姿勢を検出するためのセンサ38は、第二装着具12に設けられていてもよい。
図13では、アクチュエータ14は、第一装着具11に取り付けられている。
【0117】
図13に示すアシスト装置10の場合においても、ベルト体13は第一装着具11と第二装着具12とにわたって利用者の背面側に沿って設けられる。アクチュエータ14がベルト体13を巻き取ることで、ベルト体13に張力が作用する。その張力により利用者の作業を補助するアシスト力が生まれ、利用者の身体の負担が軽減される。
【0118】
〔その他〕
利用者の腰痛の防止・予防のためには、第二装着具12は、脚部BLに装着されるのが好ましい。これは、第二装着具12が脚部BLに装着されることで、腰部BWにおける負担が軽減されるためである。
各形態のアシスト装置10において、ベルト体13は、軽量であり、また、利用者が姿勢を変えても身体に沿うことができ、利用者の動作に追従する。よって、装着感の良いアシスト装置10が得られる。
なお、前記の開示では、コントロールボックス30は、第一装着具11において、利用者の後面側(背面側)に設けられているが、利用者の前面側に設けられていてもよい。この場合、ベルト体13は利用者の肩部BSを経由して利用者の背面に沿って設けられる。
【0119】
ベルト体13の線形形態は、図示した形態以外であってもよい。例えば、図示しないが、連結部材18の第一取り付け部27においても第二取り付け部28と同様に、回転プーリが設けられ、第一ベルト16が、その途中で折り返された状態で、前記回転プーリに掛けられていてもよい。この場合、第一ベルト16の(駆動プーリ35側と反対の)端部は、第一装着具11(ベース31)に取り付けられる。
または、図示しないが、第二装着具12に回転プーリが取り付けられていて、第二ベルト17が、その途中で折り返された状態で、前記回転プーリに掛けられていてもよい。この場合、第二ベルト17の両端部は、腰部BWに装着される装着具(第三の装着具)に取り付けられる。
【0120】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0121】
10:アシスト装置 11:第一装着具 12:第二装着具
13:ベルト体 14:アクチュエータ 15:制御部
15b:記憶装置(記憶部) 33:モータ 35:駆動プーリ(プーリ)
38:センサ 42a:姿勢推定部 42b:決定部