(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用液口栓および鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/645 20210101AFI20240910BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01M50/645
H01M10/48 101
(21)【出願番号】P 2019198389
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-08-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 誠
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】実公昭58-034698(JP,Y1)
【文献】特開平11-135103(JP,A)
【文献】特開2019-023999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/60-691
H01M 10/06-22
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池用液口栓であって、
筒状部と、
前記筒状部における筒軸方向の一方の開口側に位置するフロート本体と、前記フロート本体の前記筒軸方向の移動に連動し、前記筒状部における前記筒軸方向の他方の開口側で変位する連動部と、を有するフロートと、
前記筒状部の前記一方の開口から突出し、かつ、前記一方の開口と前記フロート本体との間に介在する板状の突出体と、を備え、
前記突出体の一部には、前記突出体を貫通する第1の貫通路が形成されて
おり、
前記筒状部における前記一方側には、前記筒状部を貫通する第2の貫通路が形成されている、
鉛蓄電池用液口栓。
【請求項2】
請求項1に記載の鉛蓄電池用液口栓であって、
前記第1の貫通路は、前記突出体の周縁に開口するスリットである、
鉛蓄電池用液口栓。
【請求項3】
請求項2に記載の鉛蓄電池用液口栓であって、
前記第1の貫通路の少なくとも一部は、前記筒軸方向において前記筒状部内に位置している、
鉛蓄電池用液口栓。
【請求項4】
請求項1に記載の鉛蓄電池用液口栓であって、
前記第2の貫通路の少なくとも一部は、前記筒軸方向において、前記鉛蓄電池用液口栓が装着される鉛蓄電池の筐体の内壁面より前記筒軸方向の前記他方側に位置する、
鉛蓄電池用液口栓。
【請求項5】
装着孔が形成された筐体と、
前記筐体の前記装着孔に装着された請求項1から
請求項4までのいずれか一項に記載の鉛蓄電池用液口栓と、
前記筐体内に収容された正極および負極と、を備える鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、鉛蓄電池用液口栓に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、例えば、自動車等の電動車両に搭載され、電動車両の動力源や電動車両に搭載された電装品への電力供給源として利用される。このような鉛蓄電池の中には、電解液を補充するためのフロート式の液口栓が設けられているものがある。
【0003】
このフロート式の液口栓は、筒状部とフロートとを備える。筒状部は、電解液を補充するための注入孔が形成されており、鉛蓄電池の筐体に形成された装着孔に装着される。フロートは、筐体内に位置するフロート本体と、該フロート体の移動に連動し、筒状部の上端開口側から突出可能な連動部と、を有する。筐体内の電解液の液面高さが変化すると、フロート本体が上下動し、それに連動して、筒状部の上端開口側における連動部の突出長さが変化する。このため、この連動部の突出長さから、筐体内における電解液の液面高さを把握することができる。このフロート式の液口栓は、補水液がフロート本体に直接かかることを防止するために、筒状部の下側開口とフロート本体と間に介在する突出体を備える(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フロートと突出体とを備える従来の鉛蓄電池用液口栓では、ガッシング(過充電によって電解液の水が電気分解し、気泡(ガス:酸素や水素)が発生する状態)による電解液の溢液が生じやすい。
【0006】
本明細書では、ガッシングによる電解液の溢液を抑制可能なフロート式の鉛蓄電池用液口栓を提供することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される鉛蓄電池用液口栓は、鉛蓄電池用液口栓であって、筒状部と、前記筒状部における筒軸方向の一方の開口側に位置するフロート本体と、前記フロート本体の前記筒軸方向の移動に連動し、前記筒状部における前記筒軸方向の他方の開口側で変位する連動部と、を有するフロートと、前記筒状部の前記一方の開口から突出し、かつ、前記一方の開口と前記フロート本体との間に介在する板状の突出体と、を備え、前記突出体の一部には、前記突出体を貫通する第1の貫通路が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態における鉛蓄電池100の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-IIの位置における鉛蓄電池100のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図3】液口栓200の外観構成を示す斜視図(閉姿勢)
【
図4】液口栓200の外観構成を示す斜視図(開姿勢)
【
図5】
図4のV-Vの位置における鉛蓄電池100のXY断面構成を示す説明図である。
【
図6】液口栓200のYZ平面構成を示す説明である。
【
図7】一体パッキン250の外観構成を示す斜視図である。
【
図8】実施形態と比較例とにおける作用を模式的に示す説明図である。
【
図9】液口栓200の内圧の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される鉛蓄電池用液口栓は、鉛蓄電池用液口栓であって、筒状部と、前記筒状部における筒軸方向の一方の開口側に位置するフロート本体と、前記フロート本体の前記筒軸方向の移動に連動し、前記筒状部における前記筒軸方向の他方の開口側で変位する連動部と、を有するフロートと、前記筒状部の前記一方の開口から突出し、かつ、前記一方の開口と前記フロート本体との間に介在する板状の突出体と、を備え、前記突出体の一部には、前記突出体を貫通する第1の貫通路が形成されている。本鉛蓄電池用液口栓では、突出体の一部に、該突出体を貫通する第1の貫通路が形成されているため、突出体の裏側にも、筒状部の開口へのガス経路が確保されている。これにより、補水液がフロート本体に直接かかることを抑制しつつ、ガッシングによる電解液の溢液を抑制することができる。
【0011】
(2)上記鉛蓄電池用液口栓において、前記第1の貫通路は、前記突出体の周縁に開口するスリットである構成としてもよい。本鉛蓄電池用液口栓によれば、突出体の周縁に開口するスリットが形成されているため、筒状部の開口(正確に、筒状部の開口周縁の一部と突出体の周縁とによって形成される開口)に液膜が形成されることが抑制され、その結果、ガッシングによる電解液の溢液を、より効果的に抑制することができる。
【0012】
(3)上記鉛蓄電池用液口栓において、前記第1の貫通路の少なくとも一部は、前記筒軸方向において前記筒状部内に位置している構成としてもよい。本鉛蓄電池用液口栓によれば、第1の貫通路が筒軸方向において筒状部内に位置していない構成に比べて、突出体の裏側に発生したガスが筒状部の開口側に抜けやすくなり、その分だけ、突出体の表側でのガスの発生が抑制され、その結果、ガッシングによる電解液の溢液を、より効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)上記鉛蓄電池用液口栓において、前記筒状部における前記一方側には、前記筒状部を貫通する第2の貫通路が形成されている構成としてもよい。本鉛蓄電池用液口栓によれば、筒状部に第2の貫通路が形成されていない構成に比べて、筒状部の周囲から筒状部の開口へのガス経路が確保され、その分だけ、突出体の表側でのガスの発生が抑制され、その結果、ガッシングによる電解液の溢液を、より効果的に抑制することができる。
【0014】
(5)上記鉛蓄電池用液口栓において、前記第2の貫通路の少なくとも一部は、前記筒軸方向において、前記鉛蓄電池用液口栓が装着される鉛蓄電池の筐体の内壁面より前記筒軸方向の前記他方側に位置する構成としてもよい。本鉛蓄電池用液口栓によれば、第2の貫通路が鉛蓄電池の筐体の内壁面より筒軸方向の他方側に位置していない構成に比べて、筒状部の周囲に発生したガスが筒状部の開口側に抜けやすくなり、その分だけ、突出体の表側でのガスの発生が抑制され、その結果、ガッシングによる電解液の溢液を、より効果的に抑制することができる。
【0015】
(6)上記鉛蓄電池において、装着孔が形成された筐体と、前記筐体の前記装着孔に装着された上記(1)から(5)までのいずれか一つの鉛蓄電池用液口栓と、前記筐体内に収容された正極および負極と、を備える構成としてもよい。
【0016】
A.実施形態:
A-1.全体構成:
(鉛蓄電池100の構成)
図1は、本実施形態における鉛蓄電池100の外観構成を示す斜視図である。
図1では、便宜上、鉛蓄電池100が備える後述の筐体101の一部分が破断され、内部構造が示されている。
図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとするが、鉛蓄電池100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図2以降も同様である。以下、正極側の構成要素の符号の末尾に「P」を付し、負極側の構成要素の符号の末尾に「N」を付すこととする。上下方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における筒軸方向の一例である。
【0017】
図1に示すように、鉛蓄電池100は、筐体101と極板群104とを備える。筐体101は、電槽102と蓋106とを含む。電槽102は、上面が開放した略直方体の容器であり、例えば合成樹脂により形成されている。筐体101の内部空間Sには、電解液U(
図1では図示しない)と極板群104とが収容されている。電解液Uは、例えば希硫酸である。
【0018】
(極板群104の構成)
極板群104は、複数の平板状の正極板110Pと、複数の平板状の負極板110Nと、正極板110Pと負極板110Nとの間に配置される複数のセパレータ120とを備える。具体的には、複数の正極板110Pと複数の負極板110Nとが、1枚ずつ、セパレータ120を介して交互に配置されている。これにより、セパレータ120を介して互いに対向する1つの正極板110Pと1つの負極板110Nとを有するセルが、複数、所定方向(X軸方向)に並んだ構成になっている。以下、セルの並び方向(X軸方向)を、「セル並び方向」という。各極板110P,110Nは、格子体に活物質が充填された導電性部材である。複数の正極板110Pは、正極側の集電部材112Pによって連結されており、複数の負極板110Nは、負極側の集電部材(図示しない)によって連結されている。
【0019】
(蓋106の構成)
蓋106は、下面が開放した略矩形の部材であり、電槽102の上端開口部に対応したサイズであり、例えば合成樹脂により形成されている。蓋106が電槽102の上端開口部に嵌められて、蓋106と電槽102とが例えば熱溶着されることによって、筐体101の内部空間Sが密閉状態になっている。
【0020】
蓋106には、正極側の端子部150Pと、負極側の端子部150Nとが設けられている。正極側の端子部150Pと負極側の端子部150Nとは、セル並び方向(X軸方向)の両端付近にそれぞれ配置されている。正極側の端子部150Pの下端部は、正極側の集電部材112Pを介して複数の正極板110Pに電気的に接続されている。負極側の端子部150Nは、上記負極側の集電部材を介して複数の負極板110Nに電気的に接続されている。
【0021】
蓋106には、蓋106を上下方向に貫通する装着孔106A(後述の
図2参照)が形成されている。具体的には、装着孔106Aは、蓋106のうち、正極側の端子部150Pと負極側の端子部150Nとの間に形成されている。装着孔106Aには液口栓200が装着されている。
【0022】
(液口栓200の構成)
液口栓200は、筒状部210と、キャップ230と、フロート240と、を備える。
図2は、
図1のII-IIの位置における鉛蓄電池100のXZ断面構成を示す説明図である。
図2には、鉛蓄電池100における液口栓200の周辺部分の構成が示されている。
図3および
図4は、液口栓200の外観構成を示す斜視図である。
図3には、後述のキャップ230が閉姿勢になっているときの液口栓200が示されており、
図4には、キャップ230が開姿勢になっているときの液口栓200が示されている。
図3および
図4では、フロート240が省略されている。
【0023】
図2に示すように、筒状部210は、全体として上下方向に貫通する注入孔211が形成された筒状の部材であり、蓋106(筐体101)の装着孔106Aに装着される。具体的には、
図2から
図4に示すように、筒状部210は、外側筒壁部分212と内側筒壁部分214とを備える。
【0024】
外側筒壁部分212は、筒状部210のうち、筐体101の外部に配置される部分であり、内側筒壁部分214は、筒状部210のうち、筐体101の内部に配置される部分である。外側筒壁部分212の外径は、蓋106の装着孔106Aの径より大きく、内側筒壁部分214の外径は、装着孔106Aの径より小さい。外側筒壁部分212と内側筒壁部分214との段差部には、環状のシール部材260(例えばOリング)が嵌合されている(
図2参照)。内側筒壁部分214の外周面に複数の係止突起224が形成されている(
図3および
図4参照)。各係止突起224は、蓋106の下面107に係止されている。これにより、液口栓200が筐体101に装着されるとともに、筒状部210の外周と蓋106における装着孔106Aを形成する内周壁との間がシール部材260によって密閉される。
【0025】
筒状部210は、フロート240を上下動可能に支持する支持部220を有する。支持部220は、筒状部210の内周側に配置されている。具体的には、支持部220は、上下方向視で筒状部210の注入孔211の中心軸Z1から外れた位置に配置されている(
図2および後述の
図5参照)。支持部220は、上下方向に貫通する挿通孔222が形成された管状体であり、筒状部210の内周壁に一体的に形成されている。本実施形態では、支持部220は、上下方向において、筒状部210(外側筒壁部分212および内側筒壁部分214)の略全長にわたって延びている。
【0026】
キャップ230は、筒状部210の上端開口を開閉可能に設けられている。具体的には、キャップ230は、全体として、円盤状である。キャップ230は、所定の回転軸Y1(
図2参照)を中心に、筒状部210の上端開口側を閉塞する閉姿勢(
図3参照)と、筒状部210の上端開口側を開放する開姿勢(
図4参照)とに変位可能に筒状部210に支持されている。キャップ230は、全体が、透明材料(例えば透明なプラスチック)により形成されている。このため、閉姿勢のキャップ230を介して、筒状部210の内部を視認可能である。なお、キャップ230における回転軸Y1とは反対側には、取っ手部230Aが突出するように形成されている。使用者は、この取っ手部230Aを把持することにより、キャップ230の開閉操作を容易に行うことができる。
【0027】
キャップ230は、環状の周壁部232と、周壁部232の上端を閉塞する上壁部234と、を有する。周壁部232の内径は、筒状部210の外側筒壁部分212の外径より大きい。このため、
図2および
図3に示すように、キャップ230の閉姿勢時において、周壁部232は、外側筒壁部分212の上端部(および後述の一体パッキン250)の外周を囲むように配置される。
図4に示すように、周壁部232の内周側には、複数の第1の係合凸部236が形成されている。外側筒壁部分212の外周側には、複数の第1の係合凸部236のそれぞれと係合可能な第2の係合凸部216が形成されている。キャップ230の閉姿勢時では、複数の第1の係合凸部236のそれぞれが第2の係合凸部216に係合することにより、キャップ230の閉姿勢が強固に維持される。
【0028】
図2に示すように、閉姿勢のキャップ230の上壁部234は、部分的に上側に突出したキャップ凸部230Bを有する。キャップ凸部230Bの内部は、下方に開口した空洞Hとなっている。上下方向視で、キャップ凸部230B(空洞H)は、フロート240の次述の棒状部244と重なっている。このため、キャップ凸部230Bの空洞H内に、棒状部244の上端部が進入可能となっている。
【0029】
図2に示すように、フロート240は、フロート本体242と棒状部244とを有する。フロート本体242は、内部が密閉された空洞になっている中空体であり、筒状部210の下端開口側に位置する。フロート本体242の上下方向視での外形は、支持部220の挿通孔222に挿入不能な形状である。具体的には、フロート本体242における上下方向に垂直な少なくとも一の方向の幅が、支持部220の挿通孔222の内径より大きい。棒状部244は、上下方向に延びている棒状体であり、支持部220の挿通孔222内に上下動可能に挿入されている。具体的には、棒状部244の外径は、支持部220の注入孔211の内径より小さく、棒状部244の全長は、挿通孔222の全長より長い。棒状部244の下端にフロート本体242が設けられている。棒状部244の上端部には、支持部220の上端開口部に係止する突起部246が形成されている。この突起部246によって、フロート240(棒状部244)が挿通孔222から下方に抜けることが防止されている。なお、棒状部244には、目印244Aが設けられている。棒状部244の上端部は、特許請求の範囲における連動部の一例である。
【0030】
以上の構成により、棒状部244の上端部は、フロート本体242の上下動に連動し、筒状部210の上端開口側から突出可能になっている。キャップ230が閉姿勢である状態では、棒状部244の上端部は、キャップ230のキャップ凸部230B内に突出可能とされている。これにより、棒状部244の上端部は、筐体101内における電解液Uの液面高さを標示する機能(「液面標示機能」という)を果たす。以下、具体的に説明する。まず、
図2に示すように、フロート240のフロート本体242が筐体101内の電解液U内に浸水しているとき、フロート本体242に働く浮力によってフロート240が上方向に押し上げられる。このため、フロート240が、筐体101内における電解液Uの液面高さに応じて上下動する。例えば、筐体101内に十分な量の電解液Uが入っており、電解液Uの液面高さが適正な位置である場合、キャップ230が開姿勢である状態で、目印244Aが筒状部210の上端開口部付近に位置する程度に、フロート240の棒状部244の上端部が、筒状部210の上端開口部から突出する。この状態で、キャップ230を閉姿勢にすると、キャップ230のキャップ凸部230Bの内周面に棒状部244の上端部が当接し、フロート240が、電解液Uによる浮力に抗して下方に押し下げられる(
図2参照)。このとき、棒状部244の上端部は、キャップ凸部230Bの空洞H内に位置しており、キャップ凸部230Bの側方から視認可能である。
【0031】
例えば鉛蓄電池100が長時間使用され、電解液Uの減少により、筐体101内における電解液Uの液面高さが下降すると、それに伴い、フロート240も下降する。棒状部244の上端部をキャップ凸部230Bの側方から視認できない程度までフロート240が下降したことは、補水液(電解液Uや水)の補充が必要であることを意味する。このような場合には、キャップ230を閉姿勢から開姿勢にし、筒状部210の注入孔211から、補水液を補充する。なお、補水液の補充の際、目印244Aが筒状部210の上端開口部より所定距離以上高い位置になることは、筒状部210内に過剰に補水液が補充されたことを意味する。
【0032】
A-2.ガッシングによる電解液Uの溢液対策:
(具体的構成)
液口栓200は、ガッシング(過充電によって電解液の水が電気分解し、気泡(ガス:酸素や水素)が発生する状態)による電解液Uの溢液抑制のための構成を備える。
図5は、
図4のV-Vの位置における鉛蓄電池100のXY断面構成を示す説明図である。
図5では、液口栓200のうち、キャップ230とフロート240とが省略されている。
図6は、液口栓200のYZ平面構成を示す説明である。
図6では、液口栓200のうち、主として、筒状部210における内側筒壁部分214が図示されており、フロート240は省略されている。
【0033】
図2から
図6に示すように、筒状部210は、板状の突出体270を備える。突出体270は、略半円状の板状体であり、筒状部210の下端開口から突出し、かつ、該下端開口とフロート本体242との間に介在している。突出体270の基端は、支持部220の下端側に接合されており、突出体270は、先端に近づくほどフロート240との距離が長くなるように傾斜している。本実施形態では、
図2および
図5に示すように、突出体270は、上下方向視で、先端が中心軸Z1を超える位置まで延びている。
【0034】
ここで、突出体270には、スリット272が形成されている。スリット272は、突出体270を貫通し、かつ、突出体270の周縁に開口している。すなわち、スリット272は、突出体270の周縁まで延びている。具体的には、
図5および
図6に示すように、スリット272は、突出体270の最先端(
図2では、電解液Uの液面に最も近い最下端)まで延びている。また、スリット272は、突出体270の突出方向に略平行に直線状に延びている。また、スリット272は、突出体270において左右方向(Y軸方向 筒軸方向に垂直な方向)の略中央に形成されている。また、スリット272の上端P1(閉塞端)は、上下方向において筒状部210内に位置している。換言すれば、スリット272の上端P1は、筒状部210の下端開口より上側に位置している。なお、スリット272の横幅は、1.5mm以上であることが好ましく、また、2mm未満であることが好ましい。スリット272は、特許請求の範囲における第1の貫通路の一例である。
【0035】
筒状部210のうち、筐体101内に位置する部分(内側筒壁部分214)には、サイドスリット228が形成されている。サイドスリット228は、内側筒壁部分214を貫通し、かつ、内側筒壁部分214の下端に開口している。また、サイドスリット228は、上下方向に直線状に延びている。サイドスリット228は、突出体270の表面(フロート240とは反対側の表面)側に位置している。本実施形態では、サイドスリット228は、
図2から
図4および
図6に示すように、内側筒壁部分214のうち、突出体270の表面に対向する位置に形成されている。また、サイドスリット228は、
図2から
図4に示すように、内側筒壁部分214のうち、突出体270の両側の位置にそれぞれ形成されている。また、各サイドスリット228の上端P2は、上下方向において、蓋106の下面107より上側の位置まで延びている。サイドスリット228は、特許請求の範囲における第2の貫通路の一例である。
【0036】
(作用効果)
仮に、上記実施形態において、筒状部210が突出体270を備えない構成では、電解液Uの補充の際、筒状部210の注入孔211から補充された補水液が、フロート本体242に直接かかる。そうすると、フロート240(棒状部244の上端部)が、筐体101内における電解液Uの液面高さに応じて、正常に上下動しなくなるため、液面標示機能を発揮できない。これに対して、本実施形態に係る液口栓200では、突出体270が筒状部210の下端開口とフロート本体242との間に介在している。このため、補充された補水液が、フロート本体242に直接かかることが防止され、その結果、フロート240は、液面標示機能を正常に発揮することができる。
【0037】
ここで、仮に、上記実施形態において、突出体270にスリット272が形成されていない構成(以下、「比較例の液口栓200a」という)では、ガッシングによる電解液Uの溢液が生じやすい。
図8は、本実施形態と比較例とにおける作用を模式的に示す説明図である。
図8(A)には、比較例の液口栓200aにおける作用が模式的に示されており、
図8(B)には、本実施形態の液口栓200における作用が模式的に示されている。
図8では、各液口栓200,200aの一部のみ示されており、フロート240や筐体101は省略されている。
図8中の「ガスG」は、ガッシングによって電解液U中に発生したガス(気泡)を意味する。
【0038】
ここで、ガッシングによる電解液Uの溢液は、ガッシングが発生すると、泡立つ電解液Uが液口栓200,200aの筒状部210の下端開口側に付着して液膜が形成され、その液膜がガスGによって筒状部210を介して筐体101の外部に押し出されることによって生じると考えられる。
図8(A)に示すように、比較例の液口栓200aは、筐体101内における電解液Uに向けて突出する突出体270aを備えている。このため、突出体270aの先端と電解液Uの液面との距離が近い分だけ、筒状部210の下端開口(正確に、筒状部210の下端開口周縁の一部と突出体270aの周縁とによって形成される開口)に液膜が形成されやすくなる。また、比較例では、突出体270aにスリットや孔が形成されていない。このため、突出体270aの裏側(フロート本体242側)では、筒状部210の下端開口へのガスGの経路が突出体270aによって制限されるため、発生したガスGは筐体101の外部に排出されにくい。一方、突出体270aの表側(フロート本体242とは反対側)では、筒状部210の下端開口へのガスGの経路(
図8(A)の白抜き矢印)が制限されていないため、突出体270aの裏側に比べてガスGが活発、かつ、集中的に発生する。これらのことにより、比較例では、ガッシングによる電解液Uの溢液が生じやすいと考えられる。
【0039】
これに対して、
図8(B)に示すように、本実施形態の液口栓200も、突出体270を備えるため、突出体270の先端と電解液Uの液面との距離が近い分だけ、筒状部210の下端開口に液膜が形成されやすくなる。しかし、本実施形態では、突出体270の一部に、該突出体270を貫通するスリット272が形成されているため、突出体270の裏側にも、筒状部210の下端開口へのガスGの経路が確保されている(
図8(B)の白抜き矢印)。これにより、補水液がフロート本体242に直接かかることを抑制しつつ、ガッシングによる電解液Uの溢液を抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、スリット272は、突出体270の周縁に開口している(
図2から
図6参照)。このスリット272の開口の存在により、筒状部210の下端開口側に液膜が形成されることが抑制され、その結果、ガッシングによる電解液Uの溢液を、より効果的に抑制することができる。
【0041】
本実施形態では、スリット272の上端P1(閉塞端)は、上下方向において筒状部210内に位置している(
図2参照)。本実施形態によれば、スリット272が筒状部210内に位置していない構成に比べて、突出体270の裏側に発生したガスGが筒状部210の下端開口側に抜けやすくなり、その分だけ、突出体270の表側でのガスGの発生が抑制される。その結果、ガッシングによる電解液Uの溢液を、より効果的に抑制することができる。
【0042】
本実施形態では、筒状部210の内側筒壁部分214には、サイドスリット228が形成されている(
図2から
図4および
図6参照)。本実施形態によれば、筒状部210にサイドスリット228が形成されていない構成に比べて、筒状部210の周囲から筒状部210の下端開口へのガスGの経路が確保され、その分だけ、突出体270の表側でのガスGの発生が抑制される。その結果、ガッシングによる電解液Uの溢液を、より効果的に抑制することができる。また、サイドスリット228は、筒状部210(内側筒壁部分214)の下端に開口している。このため、筒状部210の下端開口に液膜が形成されることを、より効果的に抑制することができる。
【0043】
本実施形態では、サイドスリット228の上端P2は、上下方向において、蓋106の下面107より上側の位置まで延びている。本実施形態によれば、サイドスリット228が蓋106の下面107より下側に位置する構成に比べて、筒状部210の周囲に発生したガスGが筒状部210の下端開口側に抜けやすくなり、その分だけ、突出体270の表側でのガスGの発生が抑制される。その結果、ガッシングによる電解液Uの溢液を、より効果的に抑制することができる。
【0044】
A-3.密閉およびガス排出対策:
(具体的構成)
液口栓200は、筒状部210とキャップ230との密閉性を確保しつつ、ガッシング等により発生したガスGを外部に排出可能な構成を備える。具体的には、液口栓200は、さらに、一体パッキン250とフィルタ280とを備える。
図7は、一体パッキン250の外観構成を示す斜視図である。
図7に示すように、一体パッキン250は、キャップ用パッキン252とフィルタ用パッキン254とが一体形成されている。すなわち、一体パッキン250は、キャップ用パッキン252とフィルタ用パッキン254とが同じ材料で一体的に形成(成形)されたものである。一体パッキン250は、例えばゴム等のシール材料により形成されている。
【0045】
図4および
図5に示すように、キャップ用パッキン252の上下方向視での形状は、筒状部210の上端開口に対応した環状の形状である。キャップ用パッキン252は、筒状部210の上端開口と、閉姿勢時のキャップ230との間に配置される。なお、キャップ用パッキン252の下面には、溝252Aが形成されており、この溝252A内に筒状部210の上端部が挿入されている(
図5参照)。これにより、キャップ用パッキン252と筒状部210との間の密閉性が向上する。キャップ用パッキン252のうち、閉姿勢時のキャップ230と対向する上面には、2本の接触リブ257が全長にわたって形成されている(
図4および
図7参照)。2本の接触リブ257は、閉姿勢時のキャップ230の下面に接触する。これにより、キャップ用パッキン252とキャップ230との間の密閉性が向上する。
【0046】
フィルタ280は、例えば、筒状部210の注入孔211から排出された水素ガスに引火し、筐体101内の水素ガスに引火して爆発することを防止する防爆フィルタである。
図3および
図4に示すように、フィルタ280の形状は、例えば矩形状であり、外周面の全長にわたってフィルタリブ282が形成されている。
【0047】
図3、
図4および
図7に示すように、フィルタ用パッキン254の形状は、矩形環状であり、フィルタ用パッキン254に形成された開口部255にフィルタ280が配置される。なお、フィルタ用パッキン254のうち、開口部255を形成する内周面には、全周にわたってフィルタ用溝256が形成されており、このフィルタ用溝256内に、フィルタ280に形成されたフィルタリブ282が挿入されている。これにより、一体パッキン250とフィルタ用パッキン254との密閉性が向上する。フィルタ用パッキン254の上端が、キャップ用パッキン252の下面に一体的に結合されている。フィルタ用パッキン254の外周面には、全長にわたって2本の接触リブ258が形成されている(
図7では一方の接触リブ258のみ図示)。また、この2本の接触リブ258の間に、該接触リブ258より突出長さが長い係合リブ259が全長にわたって形成されている。
【0048】
筒状部210の外側筒壁部分212には、フィルタ280が配置される貫通孔226が形成されている。具体的には、貫通孔226は、矩形状であり、筒状部210の上端に開口している。また、貫通孔226は、上記回転軸Y1に平行な方向(Y軸方向)視で、該回転軸Y1と第2の係合凸部216(キャップ230と筒状部210との係合位置)との間に位置している(
図5参照)。貫通孔226内に、フィルタ用パッキン254が配置される。なお、外側筒壁部分212のうち、貫通孔226を構成する内周面には、全長にわたって係合溝(図示しない)が形成されており、この係合溝内に、フィルタ用パッキン254に形成された係合リブ259が挿入される。また、フィルタ用パッキン254に形成された2本の接触リブ258が、係合リブ259を挟みつつ、貫通孔226を構成する内周面に接触する。これにより、フィルタ用パッキン254と筒状部210との間の密閉性が向上する。
【0049】
図3および
図4に示すように、筒状部210の外側筒壁部分212には、弁機構290が配置されている。具体的には、外側筒壁部分212に形成された貫通孔に弁機構290が配置されている。弁機構290は、筒状部210の内部と外部とを連通させる開放状態と閉塞する閉塞状態とに変位可能な弁を有し、キャップ230が閉じた状態で筒状部210の内圧が基準値以上になることを条件に筒状部210の内部と外部とを連通させる。なお、例えば、フィルタ280の通気面積が314mm
2以上である場合、基準値は206Paであることが好ましく、フィルタ280の通気面積が314mm
2未満である場合、基準値は441Paであることが好ましい。なお、液口栓200がフィルタ280を備えず、貫通孔226が塞がれた構成では、基準値は441Paであることが好ましい。なお、本実施形態では、筒状部210の内圧が基準値以上になっても、キャップ230は閉姿勢を維持する。
【0050】
なお、弁機構290が閉塞状態から開放状態になるときの筒状部210の内圧(以下、「開放圧力」という)は、次のように測定することができる。
図9は、液口栓200の内圧(開放圧力)の測定方法を示す説明図である。
図9に示すように、測定用筐体500は、エアが挿入される導入孔510と、エアを外出に排出する排出孔520と、液口栓200が密閉状態で装着される装着孔530と、を備える。排出孔520には、圧力計600が装着されている。キャップ230が閉姿勢の状態で、エアを、導入孔510から測定用筐体500の内部空間502に導入する。エアの導入に伴い、液口栓200の内圧が上昇し、キャップ230が開姿勢になったときに圧力計600で測定された圧力を、開放圧力とする。
【0051】
(作用効果)
仮に、筒状部210の内周側にフィルタ280を配置しようとすると、フィルタ280の存在により、キャップ230側からのフロート240(棒状部244の上端部)の変位の視認性が低下し、フロート240による液面高さの確認ができなくなる。これを解決するために、筒状部210の内周側に、フロート240を視認可能なスペースを確保しつつ、そのスペースを避けるようにフィルタ280を配置する構成が考えられる。しかし、この構成では、発生したガスGの一部は、フィルタを介さずに筒状部210から筐体101の外部に排出されることになるため、フィルタ280による効果を得ることができない。
【0052】
これに対して、本実施形態では、キャップ用パッキン252によって筒状部210の開口とキャップ230との間の密閉性が確保される。また、フィルタ280は、筒状部210の側壁またはキャップ230に形成された貫通孔226孔に配置されている。このため、液口栓200を鉛蓄電池100の筐体101に装着すると、鉛蓄電池100の筐体101内でガッシング等により発生したガスGを、フィルタ280を介して外部に排出することができる。
【0053】
本実施形態では、フロート240が突出するキャップ230のキャップ凸部230B以外の位置にフィルタ280が配置されている。本実施形態によれば、フロート240の視認性を確保しつつ、フィルタ280による効果を得ることができる。具体的には、筒状部210の外側筒壁部分212に、フィルタ280が配置される貫通孔226が形成されている。本実施形態によれば、ガッシング等によって筒状部210内に進入した電解液Uが直接、フィルタ280にかかることに起因してフィルタ機能が低下することを抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、フィルタ用パッキン254が、筒状部210に形成された貫通孔226とフィルタ280との間に配置されているため、貫通孔226とフィルタ280との密閉性を向上させることができる。また、筒状部210に形成された貫通孔226は、筒状部210の上端に開口している。このため、閉姿勢のキャップ230の押圧力が、キャップ用パッキン252を介して、フィルタ用パッキン254に与えられることによって、貫通孔226とフィルタ280との間の密閉性を向上させることができる。
【0055】
本実施形態では、キャップ用パッキン252とフィルタ用パッキン254とが一体形成されている。本実施形態によれば、液口栓200の部品点数を低減できる。また、キャップ用パッキン252とフィルタ用パッキン254とが別体である構成に比べて、例えばキャップ230の開閉に伴う、キャップ用パッキン252とフィルタ用パッキン254との位置ズレ等に起因する密閉性の低下を抑制することができる。
【0056】
本実施形態では、キャップ230が軸支された位置と係合された位置との間に貫通孔226(フィルタ用パッキン254およびフィルタ280)が配置されている。本実施形態によれば、キャップ230からの強固な押圧力がフィルタ用パッキン254に与えられるため、貫通孔226とフィルタ280との間の密閉性を、より効果的に向上させることができる。
【0057】
本実施形態によれば、キャップ230が閉じた状態で筒状部210の内圧が基準値以上になった場合に筒状部210の内部と外部とが連通するため、筒状部210の内圧が過剰に上昇することを抑制することができる。
【0058】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0059】
上記実施形態における鉛蓄電池100および液口栓200の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、筐体101は、内部空間Sが複数のセル室に仕切られており、各セル室に電解液Uと極板群104とが収容された構成であってもよい。また、上記実施形態では、正極および負極として、平板状の正極板110Pおよび負極板110Nを例示したが、平板以外の形状であってもよい。例えば、正極は、複数本の編組式チューブが配列された形態であってもよい。
【0060】
キャップ230は、筒状部210に支持されておらず、筒状部210から完全に離脱するものであってもよい。また、上記実施形態では、閉姿勢のキャップ230は、第1の係合凸部236等の係合手段によって筒状部210に保持されたが、例えば、キャップ230は、螺合手段等によって筒状部210に保持されてもよい。また、上記実施形態において、第1の係合凸部236は、筒状部210側に設けられた凸部に係合する凹部であってもよい。また、上記実施形態において、キャップ230の一部(例えばキャップ凸部230B)だけが透明材料により形成されていてもよい。キャップ230は、キャップ凸部230Bを有しなくてもよい。液口栓200は、キャップ230やキャップ用パッキン252を有しない構成であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、フロート240(棒状部244、支持部220)は、筒状部210の内周側に配置されていたが、筒状部210の外周側に配置されていてもよい。また、上記実施形態では、連動部として、棒状部244の上端部を例示したが、棒状以外の形状のものでもよく、要するに、フロート本体の移動に連動し、筒状部の開口側で変位する構成であればよい。
【0062】
上記実施形態では、突出体270に形成された第1の貫通路として、スリット272を例示したが、例えば、突出体270の周縁に達していない1または複数のスリットや孔であってもよい。また、上記実施形態では、スリット272は、突出体270の先端側(下端側)に開口していたが、例えば、突出体270の側方側に開口した構成であってもよい。また、上記実施形態において、スリット272の開口形状は、直線状に限らず、例えば曲線状などでもよい。また、スリット272は、突出体270において左右方向の中央以外の位置に形成されていてもよい。また、スリット272の上端P1は、上下方向において筒状部210より下側に位置してもよい。要するに、貫通路は、突出体270の一部に形成された貫通路であればよい。なお、貫通路の開口面積(貫通路が複数ある場合は、総開口面積)は、突出体の面積の1/2以下であることが好ましく、突出体の面積の1/4以下であることがより好ましい。
【0063】
上記実施形態では、筒状部210に形成された第2の貫通路として、サイドスリット228を例示したが、例えば、筒状部210の下端に達していない1または複数のスリットや孔であってもよい。また、上記実施形態において、サイドスリット228の開口形状は、直線状に限らず、例えば曲線状などでもよい要するに、貫通路は、筒状部210に形成された貫通路であればよい。また、上記実施形態において、筒状部210にサイドスリット228が形成されていない構成であってもよい。
【0064】
上記実施形態において、キャップ用パッキン252とフィルタ用パッキン254とは、別体であってもよい。上記実施形態では、キャップ用パッキン252の形状は、円環状であったが、円環状以外の環状(例えば矩形環状)であってもよい。また、キャップ用パッキン252の形状は、環状以外の形状であってもよい。また、上記実施形態において、フィルタ用パッキン254を備えず、例えば、フィルタ280が、筒状部210に形成された貫通孔226に圧入された構成等であってもよい。また、上記実施形態において、筒状部210に形成された貫通孔226は、筒状部210の上端側に開口していない構成であってもよい。
【0065】
上記実施形態において、フィルタ280は、防爆フィルタに限らず、他の機能を有するフィルタ(例えばガスGの所定成分を吸収するフィルタ等)であってもよい。また、フィルタ280の形状は、矩形状に限らず、例えば円形状等であってもよい。上記実施形態において、フィルタ280は、例えばキャップ230に配置されていてもよい。この場合、フィルタ280は、キャップ230を閉じた状態で、フロート240の変位を視認可能な位置に配置される。
【0066】
上記実施形態では、連通部として、弁機構290を例示したが、例えば、開閉可能に設けられたドアを有し、キャップ230が閉じた状態で筒状部210の内圧が基準値以上になった場合にドアが閉姿勢から開姿勢になる開閉機構であってもよい。また、連通部は、キャップ230が閉じた状態で筒状部210の内圧が基準値以上になった場合に、キャップ230の第1の係合凸部236と、筒状部210の第2の係合凸部216との係合が解除される構成であってもよい。なお、上記実施形態において、連通部(弁機構290)を備えない構成であってもよい。
【0067】
本実施形態において、筐体101は、電槽102と蓋106とが一体形成されているとしてもよい。また、上記実施形態において、筒状部210は、円筒状に限らず、例えば、角筒状などでもよい。
【0068】
上記実施形態では、キャップ用パッキン252は、キャップ230および筒状部210と別部材であったが、キャップ230または筒状部210と一体であってもよい。具体的には、キャップ230のうち、筒状部210と接触する部分を公知のシール構造(キャップ230に接合されたシール材)にしてもよい。また、筒状部210のうち、キャップ230と接触する部分を公知のシール構造(筒状部210に接合されたシール材)にしてもよい。
【0069】
本実施形態では、フロート240を視認する透明な部分がキャップ230に形成されていたが、筒状部210に形成されていてもよい。
【0070】
上記実施形態における鉛蓄電池100および液口栓200の各構成要素の形成材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0071】
100:鉛蓄電池 101:筐体 102:電槽 104:極板群 106:蓋 106A,530:装着孔 107:下面 110N:負極板 110P:正極板 112P:集電部材 120:セパレータ 150N,150P:端子部 200,200a:液口栓 210:筒状部 211:注入孔 212:外側筒壁部分 214:内側筒壁部分 216:第2の係合凸部 220:支持部 222:挿通孔 224:係止突起 226:貫通孔 228:サイドスリット 230:キャップ 230A:取っ手部 230B:キャップ凸部 232:周壁部 234:上壁部 236:第1の係合凸部 240:フロート 242:フロート本体 244:棒状部 244A:目印 246:突起部 250:一体パッキン 252:キャップ用パッキン 252A:溝 254:フィルタ用パッキン 255:開口部 256:フィルタ用溝 257,258:接触リブ 259:係合リブ 260:シール部材 270,270a:突出体 272:スリット 280:フィルタ 282:フィルタリブ 290:弁機構 500:測定用筐体 502,S:内部空間 510:導入孔 520:排出孔 600:圧力計 G:ガス H:空洞 P1,P2:上端 U:電解液 Y1:回転軸 Z1:中心軸