(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】半導体モジュールおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240910BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240910BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240910BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01L25/04 C
H01L23/48 G
(21)【出願番号】P 2019207470
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2019048215
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 教文
(72)【発明者】
【氏名】郷原 広道
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-228336(JP,A)
【文献】特開2009-224548(JP,A)
【文献】特開2017-084881(JP,A)
【文献】特開平11-150286(JP,A)
【文献】特開2000-183099(JP,A)
【文献】特開2016-163024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 25/07
H01L 25/18
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面電極および前記上面電極と反対側の下面電極を有する半導体チップと、
前記半導体チップの前記上面電極と接合するための接合部を有し、前記半導体チップの前記上面電極と電気的に接続される金属配線板と、
前記金属配線板上に設けられ、前記金属配線板よりも低い弾性率を有する、シート状の低弾性シートと
を備え、
前記低弾性シートは、前記接合部の端部において、前記金属配線板との接合面から外側にはみ出して
、前記半導体チップと離間して設けられ
、
前記低弾性シートのうち前記金属配線板との接合面から外側にはみ出した部分の面積は、前記低弾性シートのうち前記金属配線板上に設けられた部分の面積よりも小さい、半導体モジュール。
【請求項2】
上面電極および前記上面電極と反対側の下面電極を有する半導体チップと、
前記半導体チップの前記上面電極と接合するための接合部を有し、前記半導体チップの前記上面電極と電気的に接続される金属配線板と、
前記金属配線板上にのみ設けられ、前記金属配線板よりも低い弾性率を有する、シート状の低弾性シートと
を備える、半導体モジュール。
【請求項3】
前記低弾性シートの端部は、前記金属配線板の端部と一致している
請求項
2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記金属配線板は、前記接合部と接続され、前記半導体チップから離れる方向に延伸する立上り部を有する請求項1から
3のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記低弾性シートは、前記接合部上および前記立上り部上の両方に設けられる
請求項
4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記低弾性シートは、前記接合部上に設けられ、前記立上り部上には設けられない
請求項
4に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記低弾性シートは、前記接合部の端部において、前記金属配線板との接合面を有し、
前記接合部は、前記半導体チップの前記上面電極とはんだ接合されている
請求項1から
6のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記半導体チップの前記上面電極と前記金属配線板とを接合するためのはんだ部と、
前記半導体チップおよび前記金属配線板を封止する封止樹脂と
をさらに備え、
前記封止樹脂は、前記はんだ部と接触している
請求項1から
7のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記封止樹脂は、前記金属配線板の前記接合部の側面と接触している
請求項
8に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記低弾性シートの弾性率は、前記封止樹脂の弾性率よりも低い
請求項
8または
9に記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記低弾性シートの弾性率は、前記封止樹脂の弾性率の10000分の1以上、10分の1以下である
請求項
10に記載の半導体モジュール。
【請求項12】
前記半導体チップの前記上面電極と前記金属配線板とを接合するためのはんだ部を備え、
前記低弾性シートは、前記はんだ部と離間して設けられる
請求項1から
7のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項13】
前記低弾性シートは、1MPa以上、1000Mpa以下の弾性率を有する
請求項1から
12のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項14】
前記低弾性シートは、0.05mm以上、1.5mm以下の厚みを有する
請求項1から
13のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項15】
前記低弾性シートは、発泡体、樹脂およびシリコーンゴムのいずれかを含む
請求項1から
14のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項16】
半導体モジュールの製造方法であって、
半導体チップを提供する段階と、
前記半導体チップの上方に金属配線板の接合部をはんだ部により接合する段階と、
前記金属配線板よりも弾性率の低いシート状の低弾性シートを前記金属配線板に貼り付ける段階と
を備え、
前記低弾性シートは、前記接合部の端部において、前記金属配線板との接合面から外側にはみ出して
、前記半導体チップと離間して設けられ
、
前記低弾性シートのうち前記金属配線板との接合面から外側にはみ出した部分の面積は、前記低弾性シートのうち前記金属配線板上に設けられた部分の面積よりも小さい、製造方法。
【請求項17】
半導体モジュールの製造方法であって、
半導体チップを提供する段階と、
前記半導体チップの上方に金属配線板をはんだ部により接合する段階と、
前記金属配線板よりも弾性率の低いシート状の低弾性シートを前記金属配線板に貼り付ける段階と
を備え、
前記低弾性シートは、前記金属配線板上にのみ設けられる、製造方法。
【請求項18】
前記低弾性シートの端部は、前記金属配線板の端部と一致している
請求項
17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記低弾性シートは、前記はんだ部と離間して設けられる
請求項
16から
18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記低弾性シートを前記金属配線板に貼り付ける段階の後に、前記半導体チップの上方に前記金属配線板を前記はんだ部により接合する
請求項
16から
19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記半導体チップの上方に前記金属配線板を前記はんだ部により接合する段階の後に、前記低弾性シートを前記金属配線板に貼り付ける
請求項
16から
20のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップの上面電極に、金属配線板を接続した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。金属配線板は、上面電極にはんだ接合される板状の接合部と、接合部の端部から上方に延伸して設けられた立上り部とを有する。
特許文献1 特開2003-115512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体チップおよび金属配線板は、樹脂により封止される。金属配線板の温度が変動すると、金属配線板の立上り部は上下方向に伸縮しようとする。立上り部の上側は封止樹脂により押さえられるので、立上り部は半導体チップの上面電極を押圧する。このため、立上り部近傍の上面電極の領域は、他の上面電極の領域よりもひずみが大きくなる。また、金属配線板の熱膨張により封止用の樹脂にクラックが生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様においては、上面電極および上面電極と反対側の下面電極を有する半導体チップと、半導体チップの上面電極と電気的に接続される金属配線板と、金属配線板上に設けられ、金属配線板よりも低い弾性率を有する、シート状の低弾性シートとを備える半導体モジュールを提供する。
【0005】
金属配線板は、半導体チップの上面電極と接合するための接合部と、接合部と接続され、半導体チップから離れる方向に延伸する立上り部とを有してよい。
【0006】
低弾性シートは、接合部上および立上り部上の両方に設けられてよい。
【0007】
低弾性シートは、接合部上に設けられ、立上り部上には設けられなくてよい。
【0008】
低弾性シートは、接合部の端部において、金属配線板との接合面から外側にはみ出して設けられてよい。
【0009】
低弾性シートは、接合部の端部において、金属配線板との接合面を有し、接合部は、半導体チップの上面電極とはんだ接合されていてよい。
【0010】
半導体モジュールは、半導体チップの上面電極と金属配線板とを接合するためのはんだ部と、半導体チップおよび金属配線板を封止する封止樹脂とをさらに備えてよい。封止樹脂は、はんだ部と接触していてよい。
【0011】
封止樹脂は、金属配線板の接合部の側面と接触していてよい。
【0012】
低弾性シートの弾性率は、封止樹脂の弾性率よりも低くてよい。
【0013】
低弾性シートの弾性率は、封止樹脂の弾性率の10000分の1以上、10分の1以下であってよい。
【0014】
低弾性シートは、1MPa以上、1000MPa以下の弾性率を有してよい。
【0015】
低弾性シートは、0.05mm以上、1.5mm以下の厚みを有してよい。
【0016】
低弾性シートは、発泡体、樹脂およびシリコーンゴムのいずれかを含んでよい。
【0017】
本発明の一つの態様においては、半導体モジュールの製造方法であって、半導体チップを提供する段階と、半導体チップの上方に金属配線板をはんだ接合する段階と、金属配線板よりも弾性率の低いシート状の低弾性シートを金属配線板に貼り付ける段階とを備える製造方法を提供する。
【0018】
低弾性シートを金属配線板に貼り付ける段階の後に、半導体チップの上方に金属配線板をはんだ接合してよい。
【0019】
半導体チップの上方に金属配線板をはんだ接合する段階の後に、低弾性シートを金属配線板に貼り付けてよい。
【0020】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】実施例1に係る半導体モジュール300の上面図である。
【
図2A】実施例2に係る半導体モジュール300の上面図である。
【
図3A】実施例3に係る半導体モジュール300の上面図である。
【
図4】比較例に係る半導体モジュール500の断面図の一例である。
【
図5A】実施例1に係る半導体モジュール300に応力が発生した後の断面図の一例である。
【
図5B】比較例に係る半導体モジュール500に応力が発生した後の断面図の一例である。
【
図6A】樹脂応力と低弾性シート70のヤング率との関係を示すグラフである。
【
図6B】塑性ひずみ振幅と低弾性シート70のヤング率との関係を示すグラフである。
【
図7A】樹脂応力と低弾性シート70の膜厚との関係を示すグラフである。
【
図7B】塑性ひずみ振幅と低弾性シート70の膜厚との関係を示すグラフである。
【
図8】半導体モジュール300を製造するためのフローチャートの一例を示す。
【
図9A】半導体モジュール300の製造方法の一例を示す。
【
図9B】半導体モジュール300の製造方法の一例を示す。
【
図10A】実施例に係る低弾性シート70の端部を説明するための部分拡大図である。
【
図10B】実施例に係る低弾性シート70の端部を説明するための部分拡大図である。
【
図11A】比較例に係る低弾性部570の端部を説明するための部分拡大図である。
【
図11B】比較例に係る低弾性部570の端部を説明するための部分拡大図である。
【
図12】実施例に係る車両200の概要を示す図である。
【
図13】実施例に係る電力変換装置220の主回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1Aは、実施例1に係る半導体モジュール300の上面図である。
図1Bは、
図1AのA-A断面図である。本例の半導体モジュール300は、半導体組立体100と、冷却部110と、ケース120と、封止樹脂130とを備える。
【0024】
本明細書においては、半導体組立体100の厚み方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。素子、基板、層、膜またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向に限定されない。本例では、上下方向をZ軸方向、Z軸方向と垂直な面内において直交する2つの方向をX軸方向およびY軸方向と称する。XYZ軸は右手系を構成する。
【0025】
半導体組立体100は、半導体チップ10と、積層基板20と、金属配線板60と、低弾性シート70とを有する組立品である。半導体組立体100は、はんだ部112を用いて、冷却部110上にはんだ接合されている。なお、半導体組立体100は、金属製のベース板上に載置されてもよい。
【0026】
冷却部110は、半導体チップ10等が発する熱を、外部に放出する。冷却部110は、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料で形成される。冷却部110は、天板および天板に対向する底板を有してよい。冷却部110は、天板と底板の間に、放熱面積を増大させるべく複数のフィンが形成されていてもよい。本例の半導体組立体100は、はんだ部112により、熱的および機械的に冷却部110に固定されている。例えば、はんだ部112は、Sn-Sb系またはSn-Sb-Ag系のはんだである。
【0027】
ケース120は、冷却部110の上面において、半導体組立体100を囲んで設けられる。本例のケース120の形状は矩形であるが、これに限定されない。例えば、ケース120の材料は、樹脂等の絶縁材料である。樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチルアクリレート(PBA)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ウレタンおよびシリコーン等から選択されてよい。
【0028】
封止樹脂130は、ケース120の内部を封止する。封止樹脂130は、半導体組立体100の全体を覆っている。つまり、封止樹脂130は、半導体チップ10、積層基板20、金属配線板60、はんだ部33、34、43および低弾性シート70を封止している。例えば、封止樹脂130の材料は、エポキシ樹脂である。
【0029】
半導体チップ10は、シリコン基板等の半導体基板で形成された半導体チップである。一例において、半導体チップ10は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)およびパワーMOSFETなどのスイッチング素子を含む。半導体チップ10は、フリーホイールダイオード(FWD)を含むRC-IGBT(Reverse-Conducting IGBT)を含んでよい。半導体チップ10は縦型のスイッチング素子を含んでよい。半導体チップ10には、上面電極および下面電極が形成されてよい。上面電極および下面電極はそれぞれ電源の負電位および正電位に電気的に接続されてよい。
【0030】
積層基板20は、冷却部110の上面に設けられる。積層基板20は、金属板21、絶縁板22、回路部23および回路部24を備える。例えば、積層基板20は、DCB(Direct Copper Bonding)基板またはAMB(Active Metal Brazing)基板であってよい。
【0031】
絶縁板22は、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)等のセラミックス等の絶縁材料で形成される。金属板21は、絶縁板22の下面に設けられる。回路部23および回路部24は、絶縁板22の上面に設けられる。金属板21、回路部23および回路部24は、銅または銅合金などの金属材料を含む板で形成されてよい。金属板21、回路部23および回路部24は、はんだやロウ等によって絶縁板22の表面に固定されていてもよい。
【0032】
回路部23は、はんだ部33を用いて、半導体チップ10とはんだ接合されている。これにより、回路部23は、半導体チップ10と電気的に接続されている。
【0033】
回路部24は、金属配線板60とはんだ接合される。回路部24は、半導体チップ10とはんだ接合されていない。但し、回路部24は、回路部23とはんだ接合された半導体チップ10とは別の半導体チップ10にはんだ接合されてもよい。回路部23および回路部24は、絶縁板22の上面に形成された金属配線、パッド等を含んでよく、信号処理回路等を含んでもよい。
【0034】
はんだ部33は、半導体チップ10を回路部23に固定する。はんだ部33は、半導体チップ10および回路部23を、電気的および機械的に接続する。例えば、はんだ部33は、回路部23に含まれるパッドと、半導体チップ10の下面電極とを接続する。例えば、はんだ部33の材料は、Sn-Cu系またはSn-Sb系のはんだである。はんだ部33は、半導体チップ10を回路部23に接触する2つの面と、2つの面を接続する側面を有し、側面は封止樹脂130に接触している。
【0035】
金属配線板60は、半導体チップ10と電気的に接続された半導体チップ10用の電気配線である。本例の金属配線板60は、半導体チップ10と回路部24とを電気的に接続する。金属配線板60の一方の端部は半導体チップ10の上面電極に接続され、金属配線板60のもう一方の端部は回路部24の上面に接続される。
【0036】
例えば、金属配線板60の材料は、銅、銅合金、アルミニウム、または、アルミニウム合金等である。一例において、金属配線板60の厚みは、0.5mm以上、1.0mm以下である。本例の金属配線板60は、接合部62と、立上り部63と、接続部64と、立上り部65と、接合部66とを有する。
【0037】
接合部62は、はんだ部43を用いて、半導体チップ10の上面電極とはんだ接合される。これにより、接合部62は、半導体チップ10上に固定され、半導体チップ10と電気的に接続される。例えば、はんだ部43は、Sn-Cu系またはSn-Sb系のはんだである。
【0038】
立上り部63は、接合部62と接続される。立上り部63は、接合部62から半導体チップ10の上面と離れる方向に延伸する。言い換えると、立上り部63は、接合部62から任意の角度で折れ曲がった部分である。本例の立上り部63は、半導体チップ10の上面に対して垂直な方向(即ち、Z軸方向)に延伸している。
【0039】
接合部66は、はんだ部34により回路部24の上面とはんだ接合される。これにより、接合部66は、回路部24上に固定され、回路部24と電気的に接続される。例えば、はんだ部34は、Sn-Cu系またはSn-Sb系のはんだである。接合部66は、接続部64により立上り部63と接続されている。
【0040】
立上り部65は、接合部66と接続される。立上り部65は、接合部66から回路部24の上面と離れる方向に延伸する。言い換えると、立上り部65は、接合部66から任意の角度で折れ曲がった部分である。本例の立上り部65は、回路部24の上面と垂直な方向(即ち、Z軸方向)に延伸している。接合部62と接合部66はZ軸方向に離れて設けられてよい。Z軸方向において、立上り部63の長さは立上り部65の長さより、例えば半導体チップ10およびはんだ部43の厚みだけ、小さくてよい。
【0041】
低弾性シート70は、金属配線板60上に設けられる。低弾性シート70は、金属配線板60の弾性率よりも低い弾性率を有する、シート状の部材である。本例において、「シート状」とは、低弾性シート70の端部においても略均一な厚みを有することを指す。一方、液体塗布によって低弾性層を形成した場合、層の中心と端部とで膜厚が均一にならない。
【0042】
低弾性シート70は、接合部72と、立上り部73と、接続部74と、立上り部75と接合部76とを備える。接合部72は、接合部62の上面に設けられる。立上り部73は、立上り部63と対向して設けられる。接続部74は、接続部64上に設けられる。立上り部75は、立上り部65と対向して設けられる。接合部76は、接合部66上に設けられる。本例では、低弾性シート70となる一枚のシートが金属配線板60上に貼り付けられている。低弾性シート70は、金属配線板60へ接着剤により貼り付けられてよい。接合部72および接合部76は、略均一な膜厚を有する。例えば、接合部72および接合部76の膜厚のばらつきは、±10%以内である。なお、接合部72、立上り部73、接続部74、立上り部75および接合部76は、互いに離間して金属配線板60に貼り付けられてもよい。
【0043】
低弾性シート70の弾性率は、封止樹脂130の弾性率よりも低い。一例において、低弾性シート70の弾性率は、封止樹脂130の弾性率の10分の1以下であってよく、100分の1以下であってよい。本例の低弾性シート70の弾性率は、封止樹脂130の弾性率の10000分の1以上、10分の1以下である。但し、低弾性シート70の弾性率は、封止樹脂130の弾性率の1000分の1以上であってもよい。低弾性シート70は、金属配線板60と封止樹脂130との間に設けられる。これにより、低弾性シート70は、熱応力によって生じる電極クラックおよび樹脂クラック等のクラックを抑制できる。
【0044】
低弾性シート70は、金属配線板60の上面の全面に設けられている。但し、低弾性シート70は、金属配線板60の一部にのみ設けられてもよい。本例の低弾性シート70は、接合部上および立上り部上の両方に設けられる。本例における「立上り部上」とは、立上り部と接して低弾性シート70が設けられる場合を指し、必ずしも重力方向の上面に設けられる場合に限定されない。なお、低弾性シート70は、半導体チップ10およびはんだ部と離間して設けられる。即ち、はんだ部と封止樹脂130とが接触することにより、はんだ部が強固に固定され、はんだクラックの発生を抑制できる。
【0045】
低弾性シート70の膜厚は、半導体モジュール300の構造等に応じて適宜設計されてよい。一例において、低弾性シート70の膜厚は、0.05mm以上、1.5mm以下である。低弾性シート70の膜厚は、0.1mm以上であっても、0.3mm以上であってもよい。低弾性シート70の膜厚は、1.0mm以下であってもよい。例えば、低弾性シート70の材料は、発泡体、樹脂およびシリコーンゴムのいずれかを含む。より具体的には、低弾性シート70の材料は、ポリイミド発泡体またはエポキシ樹脂であってよい。なお、低弾性シート70の熱伝導性および電気伝導性は特に限定されない。
【0046】
低弾性シート70は、接合部62の端部において、金属配線板60との接合面を有する。接合部62の端部の位置は特に限定されない。接合部62の端部は、立上り部63とは逆側の接合部62の端部であってよい。接合部62が半導体チップ10とはんだ接合されており、接合部62および立上り部63で熱膨張が生じる。そして、立上り部63とは逆側の接合部62の端部では、接合部62および立上り部63の熱膨張による応力が集中しやすくなる。応力の集中しやすい領域に低弾性シート70を設けることによって、樹脂クラックの発生を抑制できる。
【0047】
図2Aは、実施例2に係る半導体モジュール300の上面図である。
図2Bは、
図2AのB-B断面図である。本例の半導体モジュール300は、接合部62上に低弾性シート70を備える。本例では、実施例1と相違する点について特に説明する。
【0048】
低弾性シート70は、接合部62上に設けられる。一方、本例の低弾性シート70は、立上り部63、接続部64、立上り部65および接合部66上には設けられない。低弾性シート70は、半導体チップ10が設けられた領域の近傍に設けられることにより、半導体チップ10の発熱に起因した熱応力によって生じる樹脂クラックの発生を抑制できる。
【0049】
本例の半導体モジュール300は、接合部62上のみに低弾性シート70を設けているので、低弾性シート70を金属配線板60の形状に沿って貼り付ける必要がない。よって、金属配線板60の構造が複雑な場合であっても、低弾性シート70の貼り付けが容易である。
【0050】
図3Aは、実施例3に係る半導体モジュール300の上面図である。
図3Bは、
図3AのC-C断面図である。本例の半導体モジュール300は、実施例2と異なる形状の金属配線板60を備える。本例では、実施例2と相違する点について特に説明する。
【0051】
金属配線板60は、接合部62と、接続部64と、立上り部65と、接合部66とを備える。即ち、本例の金属配線板60は、立上り部63を有しない点で実施例2の金属配線板60と異なる。このように、金属配線板60の形状は、半導体モジュール300の構造等に応じて適宜変更されてよい。
【0052】
低弾性シート70は、接合部62上に設けられる。低弾性シート70は、接続部64、立上り部65および接合部66上には設けられていない。但し、低弾性シート70は、接続部64、立上り部65および接合部66の上面に設けられてもよい。このように、低弾性シート70は、金属配線板60の形状が変更された場合であっても、半導体チップ10とはんだ接合された接合部62上に設けられることが好ましい。これにより、金属配線板60の熱膨張による影響が低減される。
【0053】
図4は、比較例に係る半導体モジュール500の断面図の一例である。半導体モジュール500は、低弾性シート70を備えない点で実施例に係る半導体モジュール300と相違する。半導体モジュール500は、ケース520と、封止樹脂530と、半導体組立体540と、冷却部550とを備える。半導体組立体540は、積層基板525上に載置された半導体チップ510および金属配線板560を備える。
【0054】
金属配線板560は、はんだ部543を介して半導体チップ510の上方に設けられる。但し、金属配線板560上には、低弾性シート70が設けられていない。よって、金属配線板560は、封止樹脂530で直接覆われている。金属配線板560は、半導体チップ510の上方に立上り部563を有する。
【0055】
ここで、ΔTjパワーサイクル等のパワーサイクル試験によって、半導体モジュール300の信頼性が試験される。例えば、ΔTjパワーサイクル試験では、電極クラックと樹脂クラックとの2つの故障モードが評価される。
【0056】
電極クラックは、半導体チップ10の上面電極のクラックを起点として、半導体チップ10にクラックが生じる故障モードである。破壊寿命は、熱応力シミュレーションの塑性ひずみ振幅から推定できる。半導体チップ10は、塑性ひずみ振幅の小さい方が長寿命となる。塑性ひずみ振幅とは、上面電極に発生する塑性ひずみの加熱時と冷却時との差である。金属配線板560の立上り部の直下では、ひずみが大きくなる。金属配線板560の立上り部が熱膨張により伸びようとするが、封止樹脂530により押さえつけられていることから、熱膨張による応力が半導体チップ10に向かうことが原因である。
【0057】
樹脂クラックは、封止樹脂530にクラックが生じる故障モードである。樹脂クラックによる破壊箇所は、熱応力シミュレーションの発生応力の分布から推定できる。応力が高い箇所は、金属配線板560の先端部(即ち、半導体チップ510と接合する部分の先端部)であり、クラックの発生起点と考えられる。半導体チップ510の発熱により金属配線板560が水平方向に熱膨張するが、周囲を封止樹脂530で固められているので、金属配線板560の伸びが先端部の側面567に集中することが原因である。
【0058】
半導体組立体100では、低弾性シート70を設けることにより、半導体チップ10に向かう応力や、封止樹脂130への応力集中を緩和できる。例えば、半導体チップ10に向かう応力について、低弾性シート70の膜厚を厚くすることにより、半導体チップ10に向かう応力をさらに緩和できる。低弾性シート70の弾性率を低くし、膜厚を厚くすることにより、半導体チップ10に応力を緩和するためのクッション効果が高くなる。これにより電極クラックが抑制されやすくなる。
【0059】
また、封止樹脂130への応力集中について、低弾性シート70のクッション効果により鉛直方向への変形が可能となり、金属配線板60の水平方向の熱膨張による応力集中が低減される。これにより樹脂クラックが抑制されやすくなる。このように、半導体組立体100は、低弾性シート70を設けることにより、ΔTjパワーサイクル時の電極クラックおよび樹脂クラックを抑制できる。
【0060】
図5Aは、実施例1に係る半導体モジュール300に応力が発生した後の断面図の一例である。低弾性シート70は、半導体モジュール300に生じた応力により、形状が大きく変形している。例えば、低弾性シート70の上面79が大きく潰れており、横方向に移動している。そして、封止樹脂130の上面も大きく変形している。このように、半導体モジュール300は、低弾性シート70の変形により、金属配線板60の近傍での応力の集中を緩和できる。
図5Aは、説明のために強調した図であり、具体的な変形については本例に限られない。
【0061】
図5Bは、比較例に係る半導体モジュール500に応力が発生した後の断面図の一例である。本例の半導体モジュール500は、金属配線板560の上面に低弾性シート70を有しない。そのため、封止樹脂530が変形せずに、封止樹脂530と金属配線板560との界面で大きな応力が発生する。特に、発熱する半導体チップ510の周囲では大きな応力が発生する。
【0062】
図6Aは、樹脂応力と低弾性シート70のヤング率との関係を示すグラフである。縦軸は封止樹脂130に生じる樹脂応力(Mpa)を任意単位(a.u.)にスケールした値を示し、横軸はヤング率(Mpa)を示す。実線は、実施例に係る半導体モジュール300のシミュレーション結果を示す。破線は、比較例に係る半導体モジュール500のシミュレーション結果を示す。本例では、比較例を100(a.u.)として示している。
【0063】
実施例では、低弾性シート70のヤング率が10MPa、100MPa、1000MPaの3種類のシミュレーション結果が示されている。実施例の樹脂応力は、いずれの場合も比較例の樹脂応力よりも小さくなった。即ち、半導体モジュール300は、低弾性シート70を適用することにより、封止樹脂130に発生する応力を低減できる。また、封止樹脂130に生じる応力は、低弾性シート70のヤング率が小さいほど、小さくなっている。
【0064】
図6Bは、上面電極に発生する塑性ひずみ振幅と低弾性シート70のヤング率との関係を示すグラフである。縦軸は電極の塑性ひずみ振幅(%)を任意単位(a.u.)にスケールした値を示し、横軸はヤング率(M
Pa)を示す。本例の上面電極とは、半導体チップ10の上面に設けられたAl-Si等の電極である。実線は、実施例に係る半導体モジュール300のシミュレーション結果を示す。破線は、比較例に係る半導体モジュール500のシミュレーション結果を示す。本例では、比較例を100(a.u.)として示している。
【0065】
実施例では、低弾性シート70のヤング率が10MPa、100MPa、1000MPaの3種類のシミュレーション結果が示されている。実施例に係る電極の塑性ひずみ振幅は、いずれの場合も比較例に係る電極の塑性ひずみ振幅よりも小さくなった。即ち、半導体モジュール300は、低弾性シート70を適用することにより、電極の塑性ひずみ振幅を低減できる。また、電極の塑性ひずみ振幅は、低弾性シート70のヤング率が小さいほど、小さくなっている。
【0066】
図7Aは、樹脂応力と低弾性シート70の膜厚との関係を示すグラフである。縦軸は封止樹脂130に生じる樹脂応力(M
Pa)を任意単位(a.u.)にスケールした値を示し、横軸は低弾性シート70の膜厚(mm)を示す。実線は、実施例に係る半導体モジュール300のシミュレーション結果を示す。破線は、比較例に係る半導体モジュール500のシミュレーション結果を示す。本例では、比較例を100(a.u.)として示している。
【0067】
実施例では、低弾性シート70の膜厚が0.05mm、0.1mm、0.3mm、0.5mm、1.0mm、および1.5mmの6種類のシミュレーション結果が示されている。実施例の樹脂応力は、いずれの場合も比較例の樹脂応力よりも小さくなった。即ち、半導体モジュール300は、低弾性シート70を適用することにより、封止樹脂130に発生する応力を低減できる。
【0068】
図7Bは、塑性ひずみ振幅と低弾性シート70の膜厚との関係を示すグラフである。縦軸は電極の塑性ひずみ振幅(%)を任意単位(a.u.)にスケールした値を示し、横軸は低弾性シート70の膜厚(mm)を示す。実線は、実施例に係る半導体モジュール300のシミュレーション結果を示す。破線は、比較例に係る半導体モジュール500のシミュレーション結果を示す。本例では、比較例を100(a.u.)として示している。
【0069】
実施例では、低弾性シート70の膜厚が0.05mm、0.1mm、0.3mm、0.5mm、1.0mm、および1.5mmの6種類のシミュレーション結果が示されている。実施例に係る電極の塑性ひずみ振幅は、いずれの場合も比較例に係る電極の塑性ひずみ振幅よりも小さくなった。即ち、半導体モジュール300は、低弾性シート70を適用することにより、電極の塑性ひずみ振幅を低減できる。また、電極の塑性ひずみ振幅は、低弾性シート70の膜厚が厚くなるほど小さくなっている。
【0070】
図8は、半導体モジュール300を製造するためのフローチャートの一例を示す。ステップS100において、半導体チップ10を含む半導体組立体100を組み立てる。具体的な半導体組立体100の組立方法については後述する。ステップS102において、半導体組立体100を冷却部110に接合する。また、半導体組立体100を冷却部110に接合した後に、半導体組立体100の組み立てを完成させてもよい。ステップS104において、冷却部110にケース120を接着し、半導体組立体100を封止樹脂130で封止する。これにより、半導体モジュール300が製造される。
【0071】
図9Aは、半導体モジュール300の製造方法の一例を示す。本例では、低弾性シート70を金属配線板60に貼り付ける段階の後に、半導体チップ10の上方に金属配線板60をはんだ接合している。
【0072】
ステップS200において、低弾性シート70を金属配線板60に接着剤により貼り合わせる。金属配線板60を打ち抜いた後に、低弾性シート70を貼り合わせてもよいし、金属配線板60を打ち抜く前の金属板に低弾性シート70を貼り合わせた後に、金属配線板60を打ち抜いてもよい。
【0073】
ステップS202において、低弾性シート70付きの金属配線板60をはんだ部43で半導体チップ10にはんだ接合し、半導体組立体100を組立てる。低弾性シート70は、はんだリフローの耐熱性を有する材料で形成される。はんだリフローの温度は、封止樹脂130を硬化するための温度よりも高い。この場合、低弾性シート70は、はんだリフローに対する耐熱性を有すれば、封止樹脂130を硬化するための耐熱性も有する。
【0074】
ステップS204において、冷却部110上に半導体組立体100を載置する。ステップS206において、ケース120を取り付け、封止樹脂130で半導体組立体100を封止する。ステップS204およびステップS206の工程は、特に限定されるものではない。
【0075】
図9Bは、半導体モジュール300の製造方法の一例を示す。本例では、半導体チップ10の上方に金属配線板60をはんだ接合した後に、低弾性シート70が貼り付けられている。
【0076】
ステップS300において、金属配線板60をはんだ部43で半導体チップ10にはんだ接合し、半導体組立体100を組立てる。ステップS302において、冷却部110上に半導体組立体100を載置する。
【0077】
ステップS304において、低弾性シート70を金属配線板60に貼り合わせる。低弾性シート70は、実施例1のように金属配線板60の全面に貼り合わせられてもよいし、金属配線板60の一部に貼り合わせられてもよい。低弾性シート70は、金属配線板60に接着剤により貼られてよい。低弾性シート70の材料は、封止樹脂130を硬化するための温度に対する耐熱性を有すればよく、はんだリフローに対する耐熱性を有しなくてよい。そして、
図9AのステップS206の場合と同様に、ケース120を取り付け、封止樹脂130で半導体組立体100を封止する。
【0078】
図10Aは、実施例に係る低弾性シート70の端部を説明するための部分拡大図である。本例の低弾性シート70は、金属配線板60の端部にまで設けられている。低弾性シート70の端部は、金属配線板60の端部と略一致している。即ち、低弾性シート70の側面77および金属配線板60の側面67が略同一平面を形成している。側面77は、実施例に係る接合部72の一部である。側面67は、実施例に係る接合部62の一部である。
【0079】
封止樹脂130は、側面67および側面77と接触している。即ち、低弾性シート70は、接合部62の側面67と接触していない。そのため、封止樹脂130は、側面67と接触している。低弾性シート70は、シート状なので、金属配線板60の端部まで設けられた場合であっても、側面67と接触しないように配置できる。
【0080】
また、封止樹脂130は、はんだ部43の側面47と接触している。即ち、低弾性シート70は、はんだ部43の側面47と接触していない。封止樹脂130は、半導体チップ10、金属配線板60および低弾性シート70とも接触している。本例の封止樹脂130は、半導体チップ10、はんだ部43および金属配線板60を封止して固定することにより、はんだ部43のクラックを抑制できる。
【0081】
図10Bは、実施例に係る低弾性シート70の端部を説明するための部分拡大図である。本例の低弾性シート70は、金属配線板60の端部からはみ出して設けられている。
【0082】
低弾性シート70は、金属配線板60との接合面78から外側にはみ出して設けられている。本例の外側とは、接合面78よりも-X軸方向側である。低弾性シート70が金属配線板60との接合面78から外側にはみ出すことにより、封止樹脂130の応力集中をさらに緩和しやすくなる。低弾性シート70は、接合部62の端部において、金属配線板60との接合面78から外側にはみ出して設けられてよい。低弾性シート70は、金属配線板60の端部からXY面に平行な方向へはみ出してよい。接合部62の端部の位置は特に限定されない。接合部62の端部は、立上り部63とは逆側の接合部62の端部であってよい。なお、低弾性シート70は、はんだ部43と離間して設けられる。即ち、封止樹脂130ではんだ部43を固定することにより、はんだ部43の固定力が高まり、はんだクラックの発生を抑制できる。したがって、本例の半導体モジュール300は、はんだクラックを抑制しつつ、電極クラックおよび樹脂クラックを防止し、さらなる長寿命化を実現できる。
【0083】
例えば、低弾性シート70は、1MPa以上、1000MPa以下の弾性率を有する。1000MPa以下の弾性率を有することにより、半導体チップ10の電極の塑性ひずみ振幅(%)を低減して、電極クラックを抑制できる。また、低弾性シート70は、100MPa以下の弾性率を有してよい。低弾性シート70は、100MPa以下の弾性率を有することにより、封止樹脂530の発生応力を低減して、樹脂クラックを抑制できる。
【0084】
図11Aは、比較例に係る低弾性部570の端部を説明するための部分拡大図である。本例の半導体モジュール500は、はんだ部543を介して、金属配線板560が半導体チップ510上に設けられている。また、金属配線板560上には、低弾性部570が設けられている。
【0085】
低弾性部570は、液体塗布により金属配線板560上に設けられている。そのため、低弾性部570の膜厚が均一とならず、低弾性部570の端部が薄くなっている。そのため、金属配線板560の端部における応力を十分に低減できない。よって、特に半導体チップ510の近傍における金属配線板560の端部では、金属配線板560と封止樹脂530との間の弾性率差によって、大きな応力が生じる場合がある。
【0086】
また、低弾性部570を塗布する際に、金属配線板560の端部にまで低弾性部570を塗布しようとすると、はんだ部543に低弾性部570が付着する恐れがある。低弾性部570がはんだ部543に付着すると、はんだの固定力が低下して、はんだクラックの原因となる場合がある。
【0087】
図11Bは、比較例に係る低弾性部570の端部を説明するための部分拡大図である。本例の低弾性部570は、金属配線板560の側面567およびはんだ部543の側面547を覆って設けられている。この場合、封止樹脂530等の固い樹脂で金属配線板560とはんだ部543を固定できなくなり、はんだクラックが生じる恐れがある。
【0088】
図12は、実施例に係る車両200の概要を示す図である。車両200は、少なくとも一部の推進力を、電力を用いて発生する車両である。一例として車両200は、全ての推進力をモーター等の電力駆動機器で発生させる電気自動車、または、モーター等の電力駆動機器と、ガソリン等の燃料で駆動する内燃機関とを併用するハイブリッド車である。
【0089】
車両200は、モーター等の電力駆動機器を制御する制御装置210(外部装置)を備える。制御装置210には、半導体モジュール300を含む電力変換装置220が設けられている。電力変換装置220は、電力駆動機器に供給する電力を制御してよい。半導体モジュール300は、挿入される締結部材によって制御装置210に固定されてよい。半導体モジュール300の冷却部110は、パイプを介して接続された、制御装置210の冷却系から冷媒が供給されてよい。
【0090】
図13は、実施例に係る電力変換装置220の主回路図である。電力変換装置220は、車両200のモーターを駆動する車載用ユニットの一部であってよい。電力変換装置220は、電源端子P、N、負荷端子U、VおよびWを有する三相交流インバータ回路として機能してよい。
【0091】
半導体チップ10-1、10-2および10-3は電力変換装置220における下アームを、複数の半導体チップ10-4、10-5および10-6は電力変換装置220における上アームを構成してよい。一組の半導体チップ10-1、10-4はレグを構成してよい。一組の半導体チップ10-2、10-5、および、一組の半導体チップ10-3、10-6も同様にレグを構成してよい。半導体チップ10-1においては、上面電極が電源端子N1に、下面電極が負荷端子Uに、それぞれ電気的に接続してよい。半導体チップ10-4においては、上面電極が負荷端子Uに、下面電極が電源端子P1に、それぞれ電気的に接続してよい。同様に、半導体チップ10-2、10-3においては、上面電極がそれぞれ電源端子N2、N3に、下面電極がそれぞれ負荷端子V、Wに、電気的に接続してよい。さらに、半導体チップ10-5、10-6においては、上面電極がそれぞれ負荷端子V、Wに、下面電極がそれぞれ電源端子P2、P3に、電気的に接続してよい。
【0092】
各半導体チップ10-1から10-6は、半導体チップ10の制御電極パッドに入力される信号により交互にスイッチングされてよい。本例において、各半導体チップ10はスイッチング時に発熱し得る。電源端子P1、P2およびP3は外部電源の正極に、電源端子N1、N2およびN3は負極に、負荷端子U、V、およびWは負荷にそれぞれ接続してよい。電源端子P1、P2およびP3は互いに電気的に接続されてよく、また、他の電源端子N1、N2およびN3も互いに電気的に接続されてよい。
【0093】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0094】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0095】
10・・・半導体チップ、20・・・積層基板、21・・・金属板、22・・・絶縁板、23・・・回路部、24・・・回路部、33・・・はんだ部、34・・・はんだ部、43・・・はんだ部、47・・・側面、60・・・金属配線板、62・・・接合部、63・・・立上り部、64・・・接続部、65・・・立上り部、66・・・接合部、67・・・側面、70・・・低弾性シート、72・・・接合部、73・・・立上り部、74・・・接続部、75・・・立上り部、76・・・接合部、77・・・側面、78・・・接合面、79・・・上面、100・・・半導体組立体、110・・・冷却部、112・・・はんだ部、120・・・ケース、130・・・封止樹脂、200・・・車両、210・・・制御装置、220・・・電力変換装置、300・・・半導体モジュール、500・・・半導体モジュール、510・・・半導体チップ、520・・・ケース、525・・・積層基板、530・・・封止樹脂、540・・・半導体組立体、543・・・はんだ部、547・・・側面、550・・・冷却部、560・・・金属配線板、563・・・立上り部、567・・・側面、570・・・低弾性部