(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】熱電変換構造体
(51)【国際特許分類】
H10N 10/13 20230101AFI20240910BHJP
【FI】
H10N10/13
(21)【出願番号】P 2020019966
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】新井 皓也
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-110082(JP,A)
【文献】特開2014-127617(JP,A)
【文献】特開2010-157645(JP,A)
【文献】特開2006-049872(JP,A)
【文献】特開2006-024608(JP,A)
【文献】特開2006-073632(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084718(WO,A1)
【文献】特開2017-098282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0040794(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0014046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と、この熱源に取り付けられた熱電変換モジュールと、を備えた熱電変換構造体であって、
前記熱電変換モジュールは、複数の熱電変換素子と、これら熱電変換素子の一端側に配設された第1電極部及び他端側に配設された第2電極部と、を有し、前記第1電極部及び前記第2電極部を介して複数の前記熱電変換素子が電気的に接続した構造とされ、少なくとも前記熱源側を向く前記第1電極部側は固定されずに開放された構造とされており、
前記第1電極部と前記熱源との間には、絶縁層と、この絶縁層の一方の面側に形成された金属からなる回路層と、前記絶縁層の他方の面側に形成された金属からなる伝熱層と、を備えた絶縁伝熱基板が配設されており、
前記回路層は、前記第1電極部に対応する回路パターンを有し、前記第1電極部と前記回路層とが接触するとともに、前記伝熱層が前記熱源に接触するように、前記絶縁伝熱基板が配設され
、前記熱源、前記絶縁伝熱基板、前記熱電変換モジュールは、積層方向に加圧した状態で固定されており、
前記回路層及び前記伝熱層は、アルミニウム又はアルミニウム合金、銀又は銀合金、金又は金合金のいずれかで構成されていることを特徴とする熱電変換構造体。
【請求項2】
前記回路層の対向面積が、前記第1電極部の対向面積以上とされていることを特徴とする
請求項1に記載の熱電変換構造体。
【請求項3】
前記熱電変換モジュールが、前記第1電極部および前記第2電極部側がそれぞれ固定されていないスケルトン構造とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電変換構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換する熱電変換構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子は、ゼーベック効果あるいはペルティエ効果によって、熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換可能な電子素子である。
ゼーベック効果は、熱電変換素子の両端に温度差を生じさせると起電力が発生する現象であり、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。ゼーベック効果により発生する起電力は、熱電変換素子の特性によって決まる。近年では、この効果を利用した熱電発電の開発が盛んである。
ペルティエ効果は、熱電変換素子の両端に電極等を形成して電極間で電位差を生じさせると、熱電変換素子の両端に温度差が生じる現象であり、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する。このような効果をもつ素子は特にペルティエ素子と呼ばれ、精密機器や小型冷蔵庫などの冷却や温度制御に利用されている。
【0003】
上述の熱電変換素子を用いた熱電変換モジュールとしては、例えば、n型熱電変換素子とp型熱電変換素子とを交互に直列接続した構造のものが提案されている。
このような熱電変換モジュールにおいては、複数の熱電変換素子の一端側及び他端側に配設された電極部によって熱電変換素子同士が直列接続された構造とされている。
【0004】
そして、熱電変換素子の一端側と他端側との間で温度差を生じさせることで、ゼーベック効果によって、電気エネルギーを発生させることができる。あるいは、熱電変換素子に電流を流すことで、ペルティエ効果によって、熱電変換素子の一端側と他端側との間に温度差を生じさせることが可能となる。
【0005】
ここで、上述の熱電変換モジュールを熱源に配設して電気エネルギーを得る場合には、熱源との熱接触状態が重要となる。
そこで、例えば特許文献1には、熱源と熱電変換モジュールとの間に、グラファイトからなる伝熱シートを配設することが開示されている。
特許文献2には、熱源と熱電変換モジュールとの間に、金属からなる伝熱部材を配設することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-074873号公報
【文献】特開2014-127617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の熱電変換モジュールは、幅広い温度の熱源に配設することで、熱源からの排熱を電気エネルギーに変化することができる。
ここで、例えば250℃以上の高温領域で使用した場合、グラファイトからなる伝熱シートにおいては、酸素含有雰囲気では酸化によって劣化してしまうため、安定して使用することができなかった。
融点の高い金属であれば使用可能であるが、金属からなる部材を配設した場合には、部品点数が増加し、位置ずれや脱落等によって安定して使用できないおそれがあった。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、比較的簡単な構造で、熱源との熱接触が良好であり、効率良く熱エネルギーと電気エネルギーの変換を行うことが可能な熱電変換構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の熱電変換構造体は、熱源と、この熱源に取り付けられた熱電変換モジュールと、を備えた熱電変換構造体であって、前記熱電変換モジュールは、複数の熱電変換素子と、これら熱電変換素子の一端側に配設された第1電極部及び他端側に配設された第2電極部と、を有し、前記第1電極部及び前記第2電極部を介して複数の前記熱電変換素子が電気的に接続した構造とされ、少なくとも前記熱源側を向く前記第1電極部側は固定されずに開放された構造とされており、前記第1電極部と前記熱源との間には、絶縁層と、この絶縁層の一方の面側に形成された金属からなる回路層と、前記絶縁層の他方の面側に形成された金属からなる伝熱層と、を備えた絶縁伝熱基板が配設されており、前記回路層は、前記第1電極部に対応する回路パターンを有し、前記第1電極部と前記回路層とが接触するとともに、前記伝熱層が前記熱源に接触するように、前記絶縁伝熱基板が配設され、前記熱源、前記絶縁伝熱基板、前記熱電変換モジュールは、積層方向に加圧した状態で固定されており、前記回路層及び前記伝熱層は、アルミニウム又はアルミニウム合金、銀又は銀合金、金又は金合金のいずれかで構成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の熱電変換構造体によれば、前記第1電極部と前記熱源との間に、金属からなる回路層及び伝熱層を備えた絶縁伝熱基板が配設されており、前記第1電極部と前記回路層とが接触するとともに前記伝熱層が前記熱源に接触するように前記絶縁伝熱基板が配設されているので、熱源と熱電変換モジュールとを密着するように加圧した際に、金属からなる回路層及び伝熱層が変形することになり、第1電極部と回路層、及び、伝熱層と熱源との熱接触が良好となる。これにより、第1電極部と回路層及び伝熱層と熱源の界面における熱抵抗を十分に低減することができ、熱エネルギーと電気エネルギーを効率的に変換することが可能となる。
また、少なくとも前記熱源側を向く前記第1電極部側は固定されずに開放された構造とされ、この第1電極部に金属からなる回路層が接触されているので、複数の熱電変換素子が個別に熱膨張した場合であっても、回路層と第1電極部との熱接触を良好に維持することが可能となる。
さらに、熱源と熱電変換モジュールの間には、回路層と絶縁層と伝熱層が一体化した絶縁伝熱基板が配設されているので、部品点数が少なく、構造が簡単となる。
【0011】
ここで、本発明の熱電変換構造体においては、前記回路層及び前記伝熱層は、アルミニウム又はアルミニウム合金、銀又は銀合金、金又は金合金のいずれかで構成されている。
アルミニウム又はアルミニウム合金、銀又は銀合金、金又は金合金は、比較的軟らかいため、熱源と熱電変換モジュールとを密着するように加圧した際に、回路層及び伝熱層が容易に変形し、第1電極部と回路層及び伝熱層と熱源との熱接触がさらに良好となる。
また、酸素含有雰囲気において高温条件で使用した場合であっても、回路層及び伝熱層が劣化することを抑制することができ、安定して使用することが可能となる。
【0012】
また、本発明の熱電変換構造体においては、前記熱電変換モジュールが、前記第1電極部および前記第2電極部側がそれぞれ固定されていないスケルトン構造とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比比較的簡単な構造で、熱源との熱接触が良好であり、効率良く熱エネルギーと電気エネルギーの変換を行うことが可能な熱電変換構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態である熱電変換構造体の概略説明図である。
【
図2】本発明の他の実施形態である熱電変換構造体を構成する熱電変換モジュールの概略説明図である。
【
図3】実施例における試験装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
本実施形態に係る熱電変換構造体1は、
図1に示すように、熱源3と、この熱源3に取り付けられる熱電変換モジュール10と、熱源3と熱電変換モジュール10の間に配設される絶縁伝熱基板30と、を備えている。
【0017】
ここで、熱電変換モジュール10は、
図1に示すように、複数の柱状をなす熱電変換素子11を備えており、この熱電変換素子11の長さ方向の一端側(
図1において下側)に配設された第1電極部21、及び、熱電変換素子11の長さ方向の他端側(
図1において上側)に配設された第2電極部22によって、複数の柱状をなす熱電変換素子11が電気的に直列接続されている。ここで、第1電極部21及び第2電極部22は、例えば
図1に示すように、パターン状に配設されることになる。
なお、本実施形態では、第1電極部21及び第2電極部22がそれぞれ固定されておらず、開放された状態とされている。すなわち、本実施形態における熱電変換モジュール10は、いわゆるスケルトン構造とされている。
【0018】
熱電変換素子11は、n型熱電変換素子11aとp型熱電変換素子11bとを有しており、これらn型熱電変換素子11aとp型熱電変換素子11bが交互に配列されている。
なお、この熱電変換素子11の一端面及び他端面には、メタライズ層(図示なし)がそれぞれ形成されている。メタライズ層としては、例えば、ニッケル、銀、コバルト、タングステン、モリブデン等や、あるいはそれらの金属繊維でできた不織布等を用いることができる。なお、メタライズ層の最表面(第1電極部21及び第2電極部22との接合面)は、Au又はAgで構成されていることが好ましい。
【0019】
第1電極部21及び第2電極部22は、導電性に優れた材料で構成されており、本実施形態では、銅の圧延板を用いている。なお、上述のメタライズ層と第1電極部21及び第2電極部22は、AgろうやAgペースト等を用いて接合されている。
なお、第1電極部21及び第2電極部22の厚さは、0.05mm以上5mm以下の範囲内とされていることが好ましい。
【0020】
n型熱電変換素子11a及びp型熱電変換素子11bは、例えば、テルル化合物、スクッテルダイト、充填スクッテルダイト、ホイスラー、ハーフホイスラー、クラストレート、シリサイド、酸化物、シリコンゲルマニウム等の焼結体で構成されている。
n型熱電変換素子11aの材料として、例えば、Bi2Te3、PbTe、La3Te4、CoSb3、FeVAl、ZrNiSn、Ba8Al16Si30、Mg2Si、FeSi2、SrTiO3、CaMnO3、ZnO、SiGeなどが用いられる。
また、p型熱電変換素子11bの材料として、例えば、Bi2Te3、Sb2Te3、PbTe、TAGS(=Ag‐Sb‐Ge‐Te)、Zn4Sb3、CoSb3、CeFe4Sb12、Yb14MnSb11、FeVAl、MnSi1.73、FeSi2、NaxCoO2、Ca3Co4O7、Bi2Sr2Co2O7、SiGeなどが用いられる。
なお、ドーパントによりn型とp型の両方をとれる化合物と、n型かp型のどちらか一方のみの性質をもつ化合物がある。
【0021】
この熱電変換モジュール10と熱源3との間に配設される絶縁伝熱基板30は、
図1に示すように、絶縁層31と、この絶縁層31の一方の面側に形成された金属からなる回路層32と、絶縁層31の他方の面側に形成された金属からなる伝熱層33と、を備えている。
【0022】
ここで、絶縁層31は、絶縁性に優れたセラミックスで構成されていることが好ましい。例えば、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化珪素等を適用することができる。
また、絶縁層31の厚さは、例えば0.1mm以上2mm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0023】
回路層32は、熱伝導性に優れた金属で構成されており、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金、銀又は銀合金、金又は金合金のいずれかで構成されていることが好ましい。
本実施形態では、回路層32は、熱伝導性に優れ、かつ、軽量で、比較的軟らかいアルミニウム(例えば、純度99.99mass%以上の4Nアルミニウム)で構成されたものとした。
また、回路層32の厚さは、例えば0.05mm以上2mm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0024】
伝熱層33は、回路層32と同様に、熱伝導性に優れた金属で構成されており、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金、銀又は銀合金、金又は金合金のいずれかで構成されていることが好ましい。
本実施形態では、伝熱層33は、熱伝導性に優れ、かつ、軽量で、比較的軟らかいアルミニウム(例えば、純度99.99mass%以上の4Nアルミニウム)で構成されたものとした。
また、伝熱層33の厚さは、例えば0.05mm以上2mm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0025】
そして、絶縁伝熱基板30においては、回路層32と絶縁層31と伝熱層33とが接合されて一体化している。
これら回路層32及び伝熱層33の形成方法には、特に制限はなく、絶縁層31の一方の面及び他方の面に金属板(アルミニウム板)をろう付け等の既存の接合方法を適宜選択して接合してもよい。
また、回路層32の回路パターンの形成方法には、特に制限はなく、エッチング法であってもよいし、金属片を回路パターン状に接合してもよい。
【0026】
なお、本実施形態においては、
図1に示すように、熱電変換素子11の他端側にも、上述した絶縁伝熱基板30が配設されている。
【0027】
そして、本実施形態である熱電変換構造体1においては、第1電極部21と回路層32とが接触するとともに、伝熱層33が熱源3に接触するように、熱源3と熱電変換モジュール10との間に、絶縁伝熱基板30が配設されている
上述の熱源3、絶縁伝熱基板30、熱電変換モジュール10は、積層方向に加圧した状態で固定されている。
また、熱電変換モジュール10の第2電極部22側には、ヒートシンク40が配設されている。このヒートシンク40は、絶縁伝熱基板30伝熱層33に積層される天板部41と、天板部41から立設されたフィン部42と、を備えている。ヒートシンク40は熱伝動性の高い材料、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、銅や銅合金等から構成されている。
【0028】
この熱電変換構造体1においては、第1電極部21側が熱源3に配置されて高温部となり、第2電極部22側がヒートシンク40による放熱によって低温部となり、熱エネルギーと電気エネルギーとの変換が実施される。
【0029】
以上のような構成とされた本実施形態である熱電変換構造体1においては、第1電極部21と熱源3との間に、金属からなる回路層32及び伝熱層33を備えた絶縁伝熱基板30が配設されており、第1電極部21と回路層32とが接触するとともに伝熱層33が熱源3に接触するように絶縁伝熱基板30が配設されているので、熱源3と熱電変換モジュール10とを密着するように加圧した際に、金属からなる回路層32及び伝熱層33が変形し、第1電極部21と回路層32、及び、伝熱層33と熱源3との熱接触が良好となる。これにより、第1電極部21と回路層32及び伝熱層33と熱源3の界面における熱抵抗を十分に低減することができ、熱エネルギーと電気エネルギーを効率的に変換することが可能となる。
【0030】
また、少なくとも熱源3側を向く第1電極部21側は固定されずに開放された構造とされ、この第1電極部21に金属からなる回路層32が接触されているので、複数の熱電変換素子11が個別に熱膨張した場合であっても、回路層32と第1電極部21との熱接触を良好に維持することが可能となる。
さらに、熱源3と熱電変換モジュール10の間には、回路層32と絶縁層31と伝熱層33が一体化した絶縁伝熱基板30が配設されているので、部品点数が少なく、構造が簡単となる。
【0031】
本実施形態において、回路層32及び伝熱層33は、アルミニウム又はアルミニウム合金、銀又は銀合金、金又は金合金のいずれかで構成されている場合には、熱源3と熱電変換モジュール10とを密着するように加圧した際に、回路層32及び伝熱層33が比較的容易に変形し、第1電極部21と回路層32及び伝熱層33と熱源3との熱接触がさらに良好となる。
また、酸素含有雰囲気において高温条件で使用した場合であっても、回路層32及び伝熱層33が早期に劣化することを抑制することができ、安定して使用することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態において、回路層32の対向面積(第1電極部21側を向く面の面積)が、第1電極部21の対向面積(回路層32側を向く面の面積)以上とされている場合には、回路層32と第1電極部21が確実に接触し、複数の熱電変換素子11が個別に熱膨張した場合であっても、回路層32と第1電極部21との熱接触を良好に維持することができ、熱エネルギーと電気エネルギーを効率的に変換することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
本実施形態では、第1電極部21及び第2電極部22がそれぞれ固定されておらず、いわゆるスケルトン構造の熱電変換モジュールとし、第1電極部21側及び第2電極部22側にそれぞれ絶縁伝熱回路基板30を配設したものとして説明したが、これに限定されることはない。
例えば、
図2に示す熱電変換構造体101のように、熱電変換モジュール110が、第1電極部121側が固定されておらず、第2電極部122が絶縁基板125に固定されたハーフスケルトン構造であってもよい。
【実施例】
【0035】
本発明の有効性を確認するために行った確認実験について説明する。
【0036】
複数の熱電変換素子が第1電極部と第2電極部で直列接続された構造の熱電変換モジュール10を、高温側プレート51と低温側プレート52で挟み込み、高温側プレート51と低温側プレート52によって、熱電変換モジュール10を積層方向に圧力0.5MPaで加圧した状態で、高温側プレート51の温度を150℃前後、低温側プレート52の温度を50℃前後、高温側プレートの温度を150℃前後となるように温度調整した。
なお、第1電極部が高温側プレート51側を向くように、かつ、第2電極部が低温側プレート52側を向くように、熱電変換モジュール110を配置した。また、この実験では、第1電極部側が固定されずに開放されたハーフスケルトン構造の熱電変換モジュール110を用いた。
【0037】
ここで、比較例では、第1電極部と高温側プレート51との間に、厚さ0.635mmの窒化アルミニウム板を配設した。
一方、本発明例では、第1電極部と高温側プレート51との間に、厚さ0.635mmの窒化アルミニウム基板の一方の面にアルミニウム(純度99.99mass%)からなる回路層(厚さ0.2mm)が形成され、窒化アルミニウム基板の他方の面にアルミニウム(純度99.99mass%)からなる伝熱層(厚さ0.2mm)が形成された絶縁伝熱基板を配設した。
【0038】
そして、開放電圧が2.8Vとなるように、高温側プレート51及び低温側プレート52を温度調整し、高温側プレート51及び低温側プレート52にそれぞれ埋め込まれた熱電対53,54により、高温側プレート51及び低温側プレート52の温度を実測した。また、高温側プレート51と低温側プレート52との温度差を算出した。
【0039】
【0040】
第1電極部と高温側プレートとの間に窒化アルミニウム板を配設した比較例と、第1電極部と高温側プレートとの間に絶縁伝熱基板を配設した本発明例と、を比較すると、開放電圧を2.8Vと同一の場合であっても、本発明例の方が、実測の温度差が小さくなっており、高温側プレートと第1電極部との熱接触が比較例よりも改善されていることが確認された。
【0041】
以上のことから、本発明例によれば、比較的簡単な構造で、熱源との熱接触が良好であり、効率良く熱エネルギーと電気エネルギーの変換を行うことが可能な熱電変換構造体を提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0042】
1 熱電変換構造体
3 熱源
10,110 熱電変換モジュール
11 熱電変換素子
21 第1電極部
22 第2電極部
30 絶縁伝熱基板
31 絶縁層
32 回路層
33 伝熱層