IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-熱交換器 図1
  • 特許-熱交換器 図2
  • 特許-熱交換器 図3
  • 特許-熱交換器 図4
  • 特許-熱交換器 図5
  • 特許-熱交換器 図6
  • 特許-熱交換器 図7
  • 特許-熱交換器 図8
  • 特許-熱交換器 図9
  • 特許-熱交換器 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240910BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240910BHJP
   F28F 9/16 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28D1/053 A
F28F9/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020023493
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127869
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇野 孝博
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102007059673(DE,A1)
【文献】米国特許第04150556(US,A)
【文献】特開2019-219079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/02,9/00-9/26
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器(10)であって、
内部を熱媒体が通る管状の部材であって、積層方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ(130,230)と、
それぞれの前記チューブが接続されたタンク(110,210,120,220)と、を備え、
前記タンクは、前記チューブを挿通するための挿通穴(402)が複数形成されている部分であって、その内面の一部が平坦面(401)となるように形成されている平坦部(400)を有し、
前記タンクのうち前記挿通穴の周囲には、前記チューブの長手方向に沿って外側に突出するようバーリング部(410)が形成されており、
前記チューブの長手方向及び前記積層方向のいずれに対しても垂直な方向を、前記チューブの幅方向とし、
前記バーリング部と前記チューブとが互いに接合されている接合領域の、前記チューブの長手方向に沿った外側の端部から、前記平坦面までの距離を接合距離としたときに、
前記幅方向に沿った前記チューブの端部となる位置において、前記接合距離が最も小さくなるように構成され
前記バーリング部のうち、前記チューブの幅方向に沿った端部を含む所定範囲には切り欠き(415)が形成され、
前記チューブは、互いに対向する一対の平板状に形成された平板部と、それぞれの前記平板部の前記幅方向に沿った端部同士を繋ぐように円弧状に湾曲している円弧部(132,232)と、を有し、前記平板部の法線方向が前記積層方向に沿うように配置されたものであり、
前記所定範囲は、前記円弧部と対向する部分のうちの少なくとも一部であり、
前記チューブの長手方向に沿って見た場合において、
前記所定範囲が、
前記円弧部の曲率の中心を基準とした際に、前記幅方向に沿った前記チューブの端部となる点を挟む両側45度以内の範囲、として設定されている熱交換器。
【請求項2】
前記バーリング部の先端には、前記チューブ側に行くほど前記タンク側に近づくような面取り(414)が施されている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記バーリング部は、前記タンクとは別の部品として形成された後に、前記タンクに対して接合されたものである、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばラジエータや蒸発器等のような熱交換器は、熱媒体の通る金属製のチューブを複数本備えている。熱交換器では、チューブの内側を通る熱媒体と、チューブの外側を通る空気との間で熱交換が行われる。
【0003】
複数のチューブは、タンクの挿通穴に挿通された状態で、タンクに対してろう接されている。タンクのうち上記の挿通穴の近傍には、チューブの長手方向に沿って突出するようにバーリング部が形成されることが多い。バーリング部は、タンクの内側に向けて突出するように形成されるのが一般的であるが、下記特許文献1に記載されているように、タンクの外側に向けて突出するように形成される場合もある。このような構成によれば、タンク内部における熱媒体の流路抵抗を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第10215502号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成の熱交換器においては、熱媒体の温度に起因した熱膨張もしくは収縮に伴って、特にチューブとバーリング部との接合部分に歪みが生じる。チューブの断面が扁平形状となっている場合には、チューブの長辺側の接合部分に比べて、チューブの短片側の接合部分において特に大きな歪みが生じる傾向がある。これは、チューブの短辺側の部分においてはその剛性が比較的高いため、熱膨張等による変形時に、当該部分に応力が集中してしまうためと考えられる。
【0006】
上記特許文献1には、バーリング部の形状を工夫することで、接合部分の歪みを低減することについての記載がある。しかしながら、当該工夫によっては、歪みを十分に低減することは難しいと考えられる。チューブとタンクとの接合部分における歪みを低減することについて、上記特許文献1に記載されている構成は更なる改良の余地があった。
【0007】
本開示は、チューブとタンクとの接合部分における歪みを十分に低減することのできる熱交換器、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る熱交換器は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器(10)である。この熱交換器は、内部を熱媒体が通る管状の部材であって、積層方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ(130,230)と、それぞれのチューブが接続されたタンク(110,210,120,220)と、を備える。タンクは、チューブを挿通するための挿通穴(402)が複数形成されている部分であって、その内面の一部が平坦面(401)となるように形成されている平坦部(400)を有する。タンクのうち挿通穴の周囲には、チューブの長手方向に沿って外側に突出するようバーリング部(410)が形成されている。チューブの長手方向及び積層方向のいずれに対しても垂直な方向を、チューブの幅方向とし、バーリング部とチューブとが互いに接合されている接合領域の、チューブの長手方向に沿った外側の端部から、平坦面までの距離を接合距離としたときに、この熱交換器は、幅方向に沿ったチューブの端部となる位置において、接合距離が最も小さくなるように構成されている。
【0009】
本発明者らが行った実験等によれば、幅方向に沿ったチューブの端部となる位置、における接合距離が大きい場合には、チューブの変形の仕方によっては上記端部の歪みが大きくなり過ぎて、端部が破損しやすくなるという知見が得られている。
【0010】
そこで、上記構成の熱交換器は、幅方向に沿ったチューブの端部となる位置において、接合距離が最も小さくなるように構成されている。これにより、端部を含む接合部分全体において生じる歪みを十分に抑制し、チューブの破損を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、チューブとタンクとの接合部分における歪みを十分に低減することのできる熱交換器、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る熱交換器の全体構成を示す図である。
図2図2は、図1の熱交換器の一部を拡大して示す図である。
図3図3は、図1の熱交換器が備えるフィン、及びその上下に配置されたチューブを示す図である。
図4図4は、チューブとタンクの接合部分における構成を示す断面図である。
図5図5は、チューブとタンクの接合部分における構成を示す斜視図である。
図6図6は、図4のVI-VI断面を示す図である。
図7図7は、バーリング部の形状及び接合距離の分布について説明するための図である。
図8図8は、チューブとタンクの接合部分における構成を示す断面図である。
図9図9は、バーリング部の形状と歪みとの関係を示す図である。
図10図10は、変形例に係る熱交換器における、チューブとタンクの接合部分における構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0014】
本実施形態に係る熱交換器10の構成について説明する。熱交換器10は、不図示の車両に搭載される熱交換器である。図1に示されるように、熱交換器10は、ラジエータ100と蒸発器200とを組み合わせて一体化した複合型の熱交換器として構成されている。
【0015】
ラジエータ100は、不図示の発熱体を通り高温となった冷却水を、空気との熱交換によって冷却するための熱交換器である。ここでいう「発熱体」とは、上記車両に搭載され冷却を必要とする機器のことであって、例えば内燃機関、インタークーラ、モーター、インバーター、バッテリ等のことである。蒸発器200は、車両に搭載される不図示の空調装置の一部であって、空気との熱交換によって液相の冷媒を蒸発させるための熱交換器である。このように、熱交換器10は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器として構成されている。ラジエータ100においては冷却水が上記の「熱媒体」に該当し、蒸発器200においては冷媒が上記の「熱媒体」に該当する。
【0016】
先ず、ラジエータ100の構成について説明する。ラジエータ100は、一対のタンク110、120と、チューブ130と、フィン140と、を備えている。尚、図1においてはフィン140の図示が省略されている。
【0017】
タンク110、120はいずれも、熱媒体である冷却水を一時的に貯えるための金属製の容器である。これらは略円柱形状の細長い容器として形成されており、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で配置されている。タンク110、120は、水平方向に沿って互いに離間した位置に配置されており、両者の間には後述のチューブ130及びフィン140が配置されている。
【0018】
尚、タンク110は、蒸発器200が有するタンク210と一体化されている。同様に、タンク120は、蒸発器200が有するタンク220と一体化されている。図1においては、タンク110及びタンク210の内部の構成を示すため、タンク110及びタンク210を分解し、その一部を熱交換器10から取り外した状態が示されている。
【0019】
タンク110には、受入部111、112が形成されている。これらはいずれも、上記の発熱体を通った後の冷却水を受け入れるための部分として設けられている。受入部111は、タンク110のうち上方側となる位置に設けられている。受入部112は、タンク110のうち下方側となる位置に設けられている。
【0020】
図1に示されるように、タンク110の内部空間は、セパレータS3によって上下2つに分けられている。受入部111から供給された冷却水は、タンク110の内部空間のうちセパレータS3よりも上方側の部分に流入する。受入部112から供給された冷却水は、タンク110の内部空間のうちセパレータS3よりも下方側の部分に流入する。
【0021】
タンク120には、排出部121、122が形成されている。これらはいずれも、熱交換に供された後の冷却水を外部へと排出するための部分として設けられている。排出部121は、タンク120のうち上方側となる位置に設けられている。排出部122は、タンク120のうち下方側となる位置に設けられている。
【0022】
タンク120の内部には、セパレータS3と同じ高さとなる位置に、セパレータS3と同様のセパレータが配置されている。タンク120の内部空間は、当該セパレータによって上下2つに分けられている。タンク120のうち当該セパレータよりも上方側の内部空間に流入した冷却水は、排出部121から外部へと排出される。タンク120のうち当該セパレータよりも下方側の内部空間に流入した冷却水は、排出部122から外部へと排出される。
【0023】
チューブ130は、内部を冷却水が通る管状の部材であって、ラジエータ100に複数本備えられている。それぞれのチューブ130は細長い直線状の管となっており、水平方向に沿って伸びるように配置されている。チューブ130は、その一端がタンク110に接続されており、その他端がタンク120に接続されている。これにより、タンク110の内部空間は、それぞれのチューブ130を介して、タンク120の内部空間と連通されている。
【0024】
それぞれのチューブ130は、上下方向、つまりタンク110等の長手方向に沿って並ぶように配置されている。尚、上下方向に沿って互いに隣り合うチューブ130の間にはフィン140が配置されているのであるが、先に述べたように、図1においてはフィン140の図示が省略されている。複数のチューブ130が並んでいる方向、すなわち本実施形態では上下方向のことを、以下では「積層方向」とも称する。
【0025】
外部からタンク110に供給された冷却水は、それぞれのチューブ130の内側を通ってタンク120へと流入する。冷却水は、チューブ130の内側を通る際において、チューブ130の外側を通過する空気によって冷却されその温度を低下させる。尚、当該空気が通過する方向は、タンク110の長手方向及びチューブ130の長手方向のいずれに対しても垂直な方向であって、ラジエータ100から蒸発器200へと向かう方向となっている。熱交換器10の近傍には、上記の方向に空気を送り出すための不図示のファンが設けられている。
【0026】
フィン140は、金属板を波状に折り曲げることによって形成されたコルゲートフィンである。上記のように、フィン140は、上下方向において互いに隣り合うチューブ130の間となる位置に配置されている。つまり、ラジエータ100では、フィン140とチューブ130とが、積層方向に沿って交互に並ぶように積層されている。図2は、ラジエータ100を空気の流れる方向に沿って見た上で、フィン140及びその近傍の構成を拡大して示す図である。図2に示されるように、波状に形成されたフィン140のそれぞれの頂部は、積層方向において隣り合うチューブ130の表面に当接しており、且つろう接されている。
【0027】
チューブ130の内側を冷却水が通っているときにおいては、冷却水の熱がチューブ130を介して空気に伝達されるほか、チューブ130及びフィン140を介しても空気に伝達される。つまり、空気との接触面積がフィン140によって大きくなっており、これにより空気と冷却水との熱交換が効率的に行われる。
【0028】
再び図1を参照しながら、蒸発器200の構成について説明する。蒸発器200は、一対のタンク210、220と、チューブ230と、フィン140と、を備えている。
【0029】
タンク210、220はいずれも、熱媒体である冷媒を一時的に貯えるための容器である。これらは略円柱形状の細長い容器として形成されており、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で配置されている。タンク210、220は、水平方向に沿って互いに離間した位置に配置されており、両者の間にはチューブ230及びフィン140が配置されている。
【0030】
先に述べたように、タンク210は、ラジエータ100が有するタンク110と一体化されている。同様に、タンク220は、ラジエータ100が有するタンク120と一体化されている。
【0031】
タンク210には、受入部211と排出部212とが形成されている。受入部211は、空調装置を循環する冷媒を受け入れるための部分である。受入部211には、空調装置が備える不図示の膨張弁を通過した後の、低温の液相冷媒が供給される。受入部211は、タンク210のうち上方側の端部近傍となる位置に設けられている。排出部212は、熱交換に供された後の冷媒を外部へと排出するための部分である。蒸発器200における熱交換によって蒸発した気相の冷媒は、排出部212から外部へと排出された後、空調装置が備える不図示の圧縮機へと供給される。排出部212は、タンク210のうち下方側の端部近傍となる位置に設けられている。
【0032】
図1に示されるように、タンク210の内部空間は、セパレータS1、S2によって上下3つに分けられている。受入部211は、上方側のセパレータS1よりも更に上方側となる位置に設けられている。排出部212は、下方側のセパレータS2よりも更に下方側となる位置に設けられている。
【0033】
タンク220の内部空間は、不図示のセパレータによって上下2つに分けられている。当該セパレータが設けられている位置は、セパレータS1よりも低く、且つセパレータS2よりも高い位置となっている。
【0034】
チューブ230は、内部を冷媒が通る管状の部材であって、蒸発器200に複数本備えられている。それぞれのチューブ230は細長い直線状の管となっており、水平方向に沿って伸びるように配置されている。チューブ230は、その一端がタンク210に接続されており、その他端がタンク220に接続されている。これにより、タンク210の内部空間は、それぞれのチューブ230を介して、タンク220の内部空間と連通されている。
【0035】
それぞれのチューブ230は、上下方向、つまり積層方向に沿って並ぶように配置されている。本実施形態では、それぞれのチューブ230が、空気の流れる方向に沿ってチューブ130と隣り合う位置に配置されている。つまり、チューブ230は、チューブ130と同じ数だけ設けられており、それぞれのチューブ130と同じ高さとなる位置に配置されている。
【0036】
外部から受入部211へと供給された冷媒は、タンク210の内部空間のうちセパレータS1よりも上方側の部分に流入する。当該冷媒は、セパレータS1よりも上方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク220の内部空間のうち不図示のセパレータよりも上方側の部分に流入する。その後、冷媒は、当該セパレータよりも上方側であり且つセパレータS1よりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク210の内部空間のうちセパレータS1とセパレータS2との間の部分に流入する。
【0037】
更にその後、冷媒は、セパレータS2よりも上方側であり且つタンク220内のセパレータよりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク220の内部空間のうちセパレータよりも下方側の部分に流入する。当該冷媒は、セパレータS2よりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク220の内部空間のうちセパレータS2よりも下方側の部分に流入した後、排出部212から外部へと排出される。
【0038】
冷媒は、上記のように各チューブ230の内側を通る際において、チューブ230の外側を通過する空気によって加熱されて蒸発し、液相から気相へと変化する。当該空気は、ラジエータ100を通過して温度が上昇した後の空気である。空気は、チューブ230の外側を通過する際において熱を奪われるため、その温度を低下させる。
【0039】
積層方向に沿って互いに隣り合うチューブ230の間には、図1においては不図示のフィン140が配置されている。このフィン140は、先に述べたラジエータ100が備えるフィン140である。図3に示されるように、それぞれのフィン140は、ラジエータ100が備えるチューブ130の間から、蒸発器200が備えるチューブ230の間まで伸びるように配置されている。つまり、ラジエータ100と蒸発器200との間では、それぞれのフィン140が共有されている。
【0040】
このため、蒸発器200では、図2を参照しながら説明したラジエータ100と同様に、フィン140とチューブ230とが、積層方向に沿って交互に並ぶように積層されている。波状に形成されたフィン140のそれぞれの頂部は、積層方向において隣り合うチューブ230の表面に当接しており、且つろう接されている。
【0041】
チューブ230の内側を冷媒が通っているときにおいては、空気の熱がチューブ230を介して冷媒に伝達されるほか、チューブ230及びフィン140を介しても冷媒に伝達される。つまり、空気との接触面積がフィン140によって大きくなっており、これにより空気と冷媒との熱交換が効率的に行われる。
【0042】
本実施形態では更に、チューブ130の内側を通る冷却水の熱が、フィン140を介した熱伝導によっても、チューブ230の内側を通る冷媒へと伝えられる。蒸発器200では、空気からの熱に加えて冷却水からの熱も回収されるので、空調装置の動作効率が更に高くなっている。
【0043】
図1に示されるように、最も上方側に配置されたチューブ130、230の更に上方側となる位置には、板状の部材である補強プレート11が配置されている。また、最も下方側に配置されたチューブ130、230の更に下方側となる位置には、板状の部材である補強プレート12が配置されている。補強プレート11、12は、チューブ130等を補強してその変形を防止するために設けられた金属板である。
【0044】
図1においては、ラジエータ100から蒸発器200へと向かう方向、すなわち、これらを通るように空気が流れる方向がx方向となっており、同方向に沿ってx軸が設定されている。また、x方向に対して垂直な方向であって、タンク120からタンク110に向かう方向、すなわちチューブ130等の長手方向がy方向となっており、同方向に沿ってy軸が設定されている。更に、x方向及びy方向のいずれに対しても垂直な方向であって、下方側から上方側に向かう方向、すなわちタンク110等の長手方向がz方向となっており、同方向に沿ってz軸が設定されている。以降においては、上記のように定義されたx方向、y方向、及びz方向を用いて説明を行う。
【0045】
図3には、一つのフィン140と、その上下両側に配置されたチューブ130、230の断面とが示されている。同図に示されるように、チューブ130、230は、いずれもx方向に沿って伸びるような扁平形状の断面を有している。チューブ130の内部には冷却水の通る流路FP1が形成されている。流路FP1にはインナーフィンIF1が配置されている。同様に、チューブ230の内部には冷媒の通る流路FP2が形成されている。流路FP2にはインナーフィンIF2が配置されている。同じ高さとなる位置に配置されたチューブ130とチューブ230との間には隙間が形成されている。
【0046】
図2及び図3に示されるように、フィン140には複数のルーバー141が形成されている。ルーバー141は、フィン140の一部を切り起こすことによって形成されたものである。具体的には、フィン140のうち平板状の部分に対し、z方向に沿って伸びる直線状の切り込みを、x方向に沿って並ぶように複数形成した上で、互いに隣り合う切り込みの間の部分を捩じることによってルーバー141が形成されている。ルーバー141の近傍に形成された隙間を空気が通過することで、空気との間における熱交換が更に効率的に行われる。尚、このようなルーバー141の形状としては、従来のフィンに形成されるルーバーと同様の形状を採用することができる。
【0047】
チューブ130の具体的な形状について、引き続き図3を参照しながら説明する。図3に示されるように、チューブ130は、一枚の金属板を曲げ加工した上で、その端部同士をろう接することにより形成された管状の部材である。既に述べたように、チューブ130は、x方向に沿って伸びるような扁平形状の断面を有している。当該断面において、チューブ130は、平板部131と、湾曲部132、133と、を有している。
【0048】
平板部131は平板状に形成された部分であって、その法線をz軸に沿わせた状態で配置されている。換言すれば、それぞれのチューブ130は、平板部131の法線方向が積層方向に沿うように配置されている。平板部131は2つ設けられており、これらが上下方向に対向するように配置されている。このような平板部131は、チューブ130のうち、互いに対向する一対の平板状に形成された部分、ということができる。
【0049】
ここで、チューブ130、230の長手方向及び積層方向のいずれに対しても垂直な方向、すなわちx軸に沿った方向のことを、以下ではチューブ130の「幅方向」と定義する。湾曲部132、133はいずれも、上下に並ぶ平板部131の、幅方向に沿った端部同士を繋ぐように湾曲している部分である。具体的には、湾曲部132は、それぞれの平板部131のうちx方向側の端部同士を繋ぐように湾曲している。湾曲部133は、それぞれの平板部131のうち-x方向側の端部同士を繋ぐように湾曲している。
【0050】
尚、湾曲部132は、図3に示されるように円弧状に湾曲している。このため、湾曲部132のことを、以下では「円弧部」とも称することがある。湾曲部133は、チューブ130の材料となる金属板を折り曲げてろう接した部分なので、湾曲部132のように円弧状とはなっていない。このため、湾曲部133は「円弧部」には該当しない。このような態様に替えて、湾曲部132、湾曲部133のそれぞれが円弧部となっているような態様であってもよい。
【0051】
図3においては、平板部131と湾曲部132との境界が点線DL1によって示されている。また、平板部131と湾曲部133との境界が点線DL2によって示されている。
【0052】
チューブ230の形状は、以上に説明したチューブ130の形状と同じである。チューブ230のうち、平板部131、湾曲部132、及び湾曲部133に対応する部分のことを、以下ではそれぞれ「平板部131」、「湾曲部132」、及び「湾曲部133」と称する。図3に示されるように、チューブ230は、湾曲部132が-x方向側の端部となり、湾曲部133がx方向側の端部となるように配置されている。
【0053】
図3においては、平板部231と湾曲部232との境界が点線DL3によって示されている。また、平板部231と湾曲部233との境界が点線DL4によって示されている。
【0054】
図4、5、6を参照しながら、タンク110とチューブ130との接続部分における構成、及び、タンク210とチューブ230との接続部分における構成について説明する。図4は、タンク110及びタンク210を、その長手方向に対し垂直な面で切断した場合における断面を模式的に示すものである。
【0055】
尚、図4に示される点線DL11は、チューブ130が有する平板部131と湾曲部132との境界を示す線であり、図3の点線DL1に対応するものである。点線DL12は、チューブ130が有する平板部131と湾曲部133との境界を示す線であり、図3の点線DL2に対応するものである。点線DL13は、チューブ230が有する平板部231と湾曲部232との境界を示す線であり、図3の点線DL3に対応するものである。点線DL14は、チューブ230が有する平板部231と湾曲部233との境界を示す線であり、図3の点線DL4に対応するものである。
【0056】
同図に示されるように、タンク110は、その-y方向側の部分に平坦部400を有している。平坦部400は、その内面の略全体が、チューブ130の長手方向に対して垂直な平坦面401となっている。タンク110の平坦部400は、チューブ130が接続されている部分である。
【0057】
平坦部400には、これをy方向に沿って貫く挿通穴402が複数形成されている。挿通穴402は、チューブ130を挿通するための穴である。y方向に沿って見た場合の挿通穴402の外形は、チューブ130の外形に概ね等しい。挿通穴402は、チューブ130の本数と同じ数だけ形成されており、タンク110の長手方向に沿って並ぶように形成されている。
【0058】
図6に示されるように、タンク110のうちそれぞれの挿通穴402の周囲には、バーリング部410が形成されている。バーリング部410は、チューブ130の長手方向に沿って外側に向けて、すなわち-y方向側に向けて突出するように形成されている。バーリング部410は、チューブ130の外周を取り囲むことによりチューブ130を保持している。また、バーリング部410の内周面と、チューブ130の外周面とは互いに当接しており、この当接している部分において互いにろう接されている。
【0059】
図6に示されるように、平坦部400の内面は、バーリング部410の近傍において傾斜している。このため、平坦部400の内面は、その全体が平坦面401となっているわけではなく、その一部のみが平坦面401となっている。
【0060】
このように、タンク110は平坦部400を有している。平坦部400は、チューブ130を挿通するための挿通穴402が複数形成されている部分であって、その内面の一部が平坦面401となるように形成されている部分である。
【0061】
尚、タンク210とチューブ230との接続部分における構成は、タンク110とチューブ130との接続部分における構成と、y-z平面について対称となっている。すなわち、両者の間に構成上の相違はない。このため、以下においては、タンク210の有する平坦部やバーリング部等も、タンク110の場合と同様の符号を付した上で「平坦部400」や「バーリング部410」等と表記する。また、以下では、タンク110における平坦部400等の構成について主に説明し、タンク210における構成については適宜説明を省略する。
【0062】
図6に示されるように、バーリング部410の先端、すなわち-y方向側の端部には、面取り414が施されている。面取り414は、チューブ130側に行くほどタンク110側に近づくようなテーパー状に形成されている。このような面取り414が形成されていることにより、熱交換器10の製造時においては、タンク110の外側、すなわちバーリング部410の先端側から、y方向側へとチューブ130を挿通する作業を容易に行うことが可能となっている。
【0063】
ここで、バーリング部410とチューブ130(もしくはチューブ230)とが互いに当接して接合されている領域のことを、以下では「接合領域BD」と定義する。また、接合領域BDの、チューブ130(もしくはチューブ230)の長手方向に沿った外側の端部から、平坦面401までの距離のことを、以下では「接合距離」と定義する。このように定義される接合距離は、図6において「L1」で示される距離である。
【0064】
図4に示されるように、バーリング部410の-y方向に向けた突出量は、全体で一様とはなっておらず、x軸に沿った位置によって突出量が異なっている。このため、上記のように定義される接合距離も、x軸に沿った位置によって異なるものとなる。
【0065】
図4において符号411が付された部分では、バーリング部410の先端がx方向に沿った直線状となっている。その結果、接合領域BDのうち符号411に対応する領域においては、x軸に沿った位置によることなく接合距離が一定となっている。このような領域のことを、以下では「第1領域411」とも称する。
【0066】
図4から明らかなように、第1領域411は、接合領域BDのうちx方向の端部までは伸びておらず、-x方向側の端部までも伸びていない。このような第1領域411は、接合領域BDのうち幅方向に沿った端部よりも内側の領域であって、幅方向の位置に寄らず接合距離が一定となっている領域、ということもできる。
【0067】
第1領域411よりも-x方向側の領域、すなわち図4において符号412が付されている領域においては、-x方向側に行くほどバーリング部410突出量が小さくなっている。このため、当該領域においては、第1領域411から遠ざかるほど接合距離が小さくなっている。
【0068】
同様に、第1領域411よりもx方向側の領域、すなわち図4において符号413が付されている領域においては、x方向側に行くほどバーリング部410突出量が小さくなっている。このため、当該領域においても、第1領域411から遠ざかるほど接合距離が小さくなっている。
【0069】
符号412、413が付されているそれぞれの領域は、第1領域411よりも幅方向に沿った外側の領域であって、第1領域411から遠ざかるほど接合距離が小さくなる領域である。以下では、それぞれの領域のことを、「第2領域412」、「第2領域413」とも称する。このように、接合領域BDは、幅方向の内側にある第1領域411と、その両外側にある第2領域412、423とに分けることができる。
【0070】
図5に示されるように、本実施形態では、バーリング部410のうちx方向側の端部となる位置に、切り欠き415が形成されている。切り欠き415においては、バーリング部410が、y方向に沿って直線状に切り欠かれている。このため、当該部分におけるバーリング部410の突出量は概ね0となっている。バーリング部410の-x方向側の端部にも、図5に示されるものと同様の切り欠き415が形成されている。尚、バーリング部410の突出量が0となる部分においては、先に定義した接合領域BDが存在しないので、当該部分における接合距離は0となる。
【0071】
ところで、熱交換器10において熱交換が行われている際においては、熱媒体の温度に応じてチューブ130、230が膨張又は収縮することに伴って、タンク110等において歪みが生じる。例えば、チューブ130の内部を高温の冷却水が通り、且つ、チューブ230の内側を低温の冷媒が通っているときには、チューブ130とチューブ230との熱膨張差に伴って、互いに一体となっているタンク110、210が捻じれるように変形する。当該変形に伴って、チューブ130とタンク1100との接合部分や、チューブ230とタンク210との接合部分において歪みが生じる。また、冷却水の温度が、複数のチューブ130のそれぞれにおいて異なっている場合にも、チューブ130毎の熱膨張差に伴う歪みが生じる。同様の歪みは、チューブ130のみならずチューブ230の接合部分においても生じ得る。
【0072】
チューブ130の接合部分で生じる歪みは、平板部131の接合部分に比べて、湾曲部132、133の接合部分において大きくなる傾向がある。これは、これは、湾曲部132、133においてはチューブ130の剛性が大きくなっていることに伴って、熱膨張等が生じた際の応力が湾曲部132、133に集中しやすいためと考えられる。このため、歪みに伴うチューブ130の破損は、湾曲部132、133の近傍となる部分において特に生じやすい傾向がある。チューブ230についても同様である。
【0073】
そこで、本実施形態に係る熱交換器10では、バーリング部410等の形状を工夫することによって上記の歪みを低減し、チューブ130、230の破損を防止し得るように構成されている。
【0074】
図7の上段に示されるのは、タンク110の平坦部400に形成された挿通穴402及びその近傍の構成を、y方向に沿って見て模式的に描いた図である。同図においては、挿通穴402に挿通されているチューブ130の図示が省略されている。図7の下段に示されるのは、接合領域BDにおける、x方向に沿った接合距離の分布を示すグラフである。当該グラフの横軸は、上段の図におけるx座標に対応している。
【0075】
図7の上段に示される点EPは、チューブ130のx方向側端部を示す点である。図7では、この点EPのx座標が「x1」と示されている。
【0076】
先に述べたように、バーリング部410のうちx方向側の端部となる位置には切り欠き415が形成されている。図7では、当該切り欠きのx座標、すなわちバーリング部410のx方向側端部のx座標が「x2」と示されている。
【0077】
図7に示される点線DL21は、チューブ130が有する平板部131と湾曲部132との間の境界を示す線である。図7では、このような境界のx座標が「x3」と示されている。尚、点線DL21上に示される点CPは、円弧部である湾曲部132の、曲率の中心を示す点である。
【0078】
図7に示される点線DL24は、接合領域BDのうち第1領域411と第2領域413との境界を示す線である。図7では、このような境界のx座標が「x4」と示されている。
【0079】
図7に示されるように、本実施形態においては、第1領域411においてはx座標に寄らず接合距離が一定となっている一方、x4よりもx方向側の部分である第2領域413においては、x方向側に行くほど接合距離は小さくなって行き、x方向側の端部である点EPにおいては接合距離が最も小さくなっている。すなわち、本実施形態に係る熱交換器10は、幅方向に沿ったチューブ130の端部となる位置において、接合距離が最も小さくなるように構成されている。図示は省略するが、チューブ130の-x方向側端部についても同様であり、タンク210やタンク220とチューブ230との接合部分における接合距離も上記と同様となるように構成されている。
【0080】
本発明者らが行った実験等によれば、幅方向に沿ったチューブ130等の端部やその近傍となる位置、における接合距離が大きい場合には、チューブ130等の変形の仕方によっては当該部分の歪みが大きくなり過ぎて、チューブ130等が破損しやすくなるという知見が得られている。
【0081】
これは、チューブ130等の端部におけるバーリング部410の突出量が大きくなっている場合には、当該部分におけるチューブ130等の拘束が強くなり過ぎて、熱膨張に伴う変形の仕方によっては歪みが大きくなり過ぎてしまうためと考えられる。
【0082】
例えば、冷媒と冷却水との温度差に伴って、チューブ130とチューブ230との熱膨張に差が生じ、互いに一体となっているタンク110、210が捻じれるように変形した場合には、バーリング部410の突出量が大きくなり過ぎていると、チューブ130等とバーリング部410の端部(上記の点EPに対応する端部)との間で強い応力が生じ、チューブ130の当該部分の歪みが大きくなってしまう。
【0083】
そこで本実施形態では、上記のように、幅方向に沿ったチューブ130等の端部となる位置において、接合距離が最も小さくなるような構成としている。このような構成においては、端部におけるチューブ130等の拘束が弱くなり、チューブ130等の変位がある程度許容される。熱膨張に伴って接合部分で生じる歪みが、チューブ130等の端部以外の部分にも広く分散することとなるので、端部のような特定箇所の歪みが過度に大きくなってしまうことが防止される。その結果、上記の端部を含む接合部分全体の歪みを十分に抑制することができる。
【0084】
上記の効果は、チューブ130等のうち特に歪みの大きくなりやすい幅方向端部近傍の部分を、バーリング部410のうち先端の縁が傾斜した部分、すなわち図4の符号412や413が付されている部分で保持する構成により生じるもの、ということもできる。本実施形態では、第1領域411の両側に、第1領域411から遠ざかるほど接合距離が小さくなる第2領域412、413を配置することで、幅方向の端部における歪みの抑制を実現している。
【0085】
図8は、図4のうち、タンク110のバーリング部410が有する第2領域413、及びその近傍の構成を、拡大して模式的に示す図である。つまり、バーリング部410等を積層方向に沿って見た場合の図である。同図に示される「P1」は、幅方向に沿ったチューブ130の端部と、タンク110のうちチューブ130の長手方向に沿った外側の端部と、が交差する点である。当該点のことを、以下では「第1点P1」とも称する。「幅方向に沿ったチューブ130の端部」とは、この例ではx方向側の端部のことである。また、「タンク110のうちチューブ130の長手方向に沿った外側の端部」とは、この例ではバーリング部410の先端、すなわち-y方向側端部のことである。
【0086】
図8に示される「P2」は、第1領域411のうち、チューブ130の長手方向に沿った外側の端部であり、且つ幅方向に沿った第1点P1側の端部となる点である。当該点のことを、以下では「第2点P2」とも称する。「幅方向に沿った第1点P1側の端部となる点」とは、この例では、第1領域411のうちx方向側の端部となる点のことである。
【0087】
本実施形態では、図8のように積層方向に沿って見た場合において、第1点P1と第2点P2を繋ぐ直線DL31の、チューブ130の長手方向に対してなす角度θ2が、45度以上となるように、バーリング部410のうち符号413が付されている部分の形状が調整されている。尚、図6に示される面取り414を考慮すれば、第2点P2はバーリング部410の先端よりも僅かにy方向側となる位置にあるのであるが、煩雑さを避けるため、図8においては当該先端と同じ位置に第2点P2が描かれている。
【0088】
本実施形態では、角度θ2を45度以上とすることで、バーリング部410の先端を傾斜させてチューブ130等の変形を受ける部分の範囲、すなわち幅方向に沿った第2領域413の範囲を、比較的広く確保することができている。これにより、チューブ130等の端部近傍で生じる歪みを広範囲に分散させ、その最大値を更に抑制することが可能となっている。
【0089】
尚、本発明者らが実験等により確認したところによれば、角度θ2は、45度以上であり且つ67.5度以下とすれば、歪みを効率的に低減することができるという知見が得られている。
【0090】
図7に戻って説明を続ける。先に述べたように、チューブ130との接合部分で生じる歪みは、平板部131との接合部分に比べて、湾曲部132、133との接合部分において大きくなる傾向がある。つまり、図7においては点線DL21よりもx方向側の部分で、大きなひずみが生じる傾向がある。このため、仮に、第1領域411と第2領域413との境界(点線DL24)のx座標が、チューブ130が有する平板部131と湾曲部132との境界(点線DL21)のx座標に一致していた場合には、傾斜した第2領域413で歪みを受けて分散させたとしても、分散する範囲は結局のところ湾曲部132との接合部に集中してしまうこととなる。
【0091】
そこで、本実施形態では、図7に示されるように、第1領域411と第2領域413との境界(点線DL24)が、幅方向に沿って、チューブ130が有する平板部131と湾曲部132との境界(点線DL21)、よりも平板部131側(この例では-x方向側)となる位置に配置された構成としている。
【0092】
このような構成により、湾曲部132との接合部分において生じる歪みを、平板部131との接合部分を含む広い範囲で受けて分散させることが可能となる。これにより、歪みを広範囲に分散させ、その最大値を更に抑制することが可能となっている。
【0093】
尚、上記のような位置関係は、-x方向側の接合部分についても同様となっている。つまり、第1領域411と第2領域412との境界が、幅方向に沿って、チューブ130が有する平板部131と湾曲部133との境界、よりも平板部131側(この例ではx方向側)となる位置に配置されている。更に、同様の構成はタンク210やタンク220とチューブ230との接続部分についても採用されている。
【0094】
図7では、第1領域411と第2領域413との境界(点線DL24)と、チューブ130が有する平板部131と湾曲部132との境界(点線DL21)と、の間の距離が、「L2」として示されている。図9には、このように定義される距離L2を変化させて行った場合における、各構成で生じる歪みの最大値の変化が示されている。同図に示されるように、距離L2が0の状態から、距離L2を次第に大きくしていくと、それに伴って歪は当初のST0から次第に小さくなって行く。しかしながら、距離L2を更に大きくしていくと、歪みの大きさは増加傾向となる。距離L2が3mmを超えると、歪みの大きさは当初のST0よりも大きくなってしまう。
【0095】
これは、距離L2が大きくなり過ぎると、幅方向に沿った歪みの分散範囲が広くなり過ぎて傾斜した先端で歪みを受ける第2領域413が、平板部131にまで深く入り込む結果、剛性の比較的小さな平板部131における歪みが大きくなってしまうためと考えられる。
【0096】
このような特性を考慮すれば、第1領域411と第2領域413との境界(図7の点線DL24)と、平板部131と湾曲部132との境界(図7点線DL21)と、の間の前記幅方向に沿った距離L2は、3mm以内としておくことが好ましい。チューブ130のうち-x方向側の接合部分、及びチューブ230の接合部分についても同様である。
【0097】
図7に示される一対の点線DL22は、バーリング部410に形成された切り欠き415のそれぞれの端部と、点CPとを繋ぐ線である。切り欠き415は、バーリング部410のうち、チューブ130等の幅方向に沿った端部を含む所定範囲、すなわち一対の点線DL22の間となる範囲に形成されている。
【0098】
本発明者らが実験等により確認したところによれば、チューブ130等の幅方向に沿った端部近傍の歪みは、湾曲部132との接合部分であって、図7のθ11のような角度、すなわち点線DL21とのなす角度が45度となる範囲において特に大きくなる傾向がある。このため、当該範囲においては、バーリング部410をチューブ130等の側面に当接させ、チューブ130等の変形をバーリング部410で受けた方が好ましい。換言すれば、角度θ11で示される45度の範囲を避けるような範囲に、切り欠き415を形成しておくことが好ましい。
【0099】
図7の角度θ1は、点EPと点CPとを繋ぐ点線DL23に対して点線DL22がなす角度である。つまり、角度θ1は切り欠き415が形成されている所定範囲を示している。
【0100】
上記の「所定範囲」、すなわち角度θ1で示されるような切り欠き415が形成されている範囲は、バーリング部410のうち、円弧部である湾曲部132と対向する部分のうちの全部、又はその一部とすることが好ましい。すなわち、円弧部である湾曲部132と対向する部分のうちの少なくとも一部であることが好ましい。上記のように、図7の角度θ11で示される45度の範囲において歪みが特に大きくなる傾向に鑑みれば、切り欠き415は当該範囲を避けるように、角度θ1が45度以内となる範囲に形成されることが好ましい。換言すれば、図7のようにチューブ130等の長手方向に沿って見た場合において、切り欠き415が形成される「所定範囲」は、円弧部の曲率の中心である点CPを基準とした際に、幅方向に沿ったチューブ130等の端部となる点EPを挟む両側45度以内の範囲、として設定されていることが好ましい。本実施形態では、θ1は45となるように設定されている。
【0101】
このように、本実施形態では、チューブ130等のうち歪みの大きくなりやすい円弧部の近傍において、バーリング部410と切り欠き415とを適切に配置することにより、歪みを低減することとしている。上記のように、図7のθ11のような45度の範囲は、バーリング部410の第2領域413によってチューブ130等を保持した方が、歪みを抑制し得る範囲である。また、図7のθ1が45度又はそれ以内となる範囲は、第2領域413による保持に替えて切り欠き415を形成した方が、歪みを抑制し得る範囲である。
【0102】
尚、タンク120とチューブ130との接合部分、及びタンク210やタンク220とチューブ230との接合部分における構成は、以上に説明したタンク110とチューブ130との接合部分の構成と同じである。つまり、本実施形態では、チューブ130、230の接合部分の全てにおいて、これまで説明したようなバーリング部410等の工夫が適用されている。
【0103】
このような態様に替えて、特に歪みの生じやすい一部の接合部分においてのみ上記工夫を適用することとしてもよい。「特に歪みの生じやすい一部の接合部分」とは、例えば、熱媒体の流れ方向に沿った下流側の接合部分、すなわち、チューブ130とタンク120との接合部分や、チューブ230とタンク220との接合部分のことである。熱媒体の流れ方向に沿った下流側では、チューブ130等を通る際の熱交換のばらつき等に起因して、それぞれのチューブ130等を通る熱媒体の温度に差が生じる傾向がある。このため、下流側の接合部分においては、これまで説明したようなバーリング部410等の工夫を適用する必要性が特に大きい。
【0104】
以上の説明においては、熱交換器10が、ラジエータ100と蒸発器200とを組み合わせた複合型の熱交換器として構成されている場合の例について説明した。しかしながら、以上に説明したような歪みを低減するためのバーリング部410等の工夫は、複合型ではない単体の熱交換器に対しても適用することができる。
【0105】
本実施形態の変形例について、図10を参照しながら説明する。本実施形態では、タンク110等の平坦部400にバーリング部410Aが形成されている。バーリング部410Aの形状は、これまでに説明したバーリング部410の形状と概ね同じであり、第1領域411や第2領域412の形状等について、これまでに説明したものと同様の工夫が施されている。
【0106】
ただし、この変形例におけるバーリング部410Aは、タンク110等とは別の部品として予め形成された後に、タンク110等に対して接合されている。図10に示されるように、平坦部400には予め挿通穴402Aが形成されており、別部品であるバーリング部410Aがこの挿通穴402Aに挿通され接合されている。チューブ130等は、バーリング部410Aに形成されている挿通穴402Bに対して挿通されろう接されている。このように、バーリング部410Aを後付けされる別部品とした構成においても、これまでに説明したものと同様の効果を奏することができる。
【0107】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0108】
10:熱交換器
130,230:チューブ
110,210,120,220:タンク
400:平坦部
401:平坦面
402:挿通穴
410:バーリング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10