(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
B60H1/00 102V
(21)【出願番号】P 2020027490
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-12-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和定
(72)【発明者】
【氏名】山口 和哉
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137178(JP,A)
【文献】実開平04-007212(JP,U)
【文献】特開平07-049142(JP,A)
【文献】特開平08-132860(JP,A)
【文献】特開平10-215979(JP,A)
【文献】特開平10-151037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0370400(US,A1)
【文献】特開2010-000846(JP,A)
【文献】特開2018-013468(JP,A)
【文献】特開2010-052494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートの背もたれ部または着座部の乗員側に設けられる送風口と、
前記シートに搭載され前記送風口から
空気を吸い込むシート空調本体と、
前記車両に搭載され前記シート空調本体を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記車両に乗り込んできた乗員が所定の発汗量以上に発汗していると判定した場合に前記シート空調本体を制御して前記送風口
から吸い込む風量を減少させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
当該車両用空調装置はさらに、前記シートの前記背もたれ部または前記着座部の少なくとも一方に設けられ前記乗員の発汗量を検出する発汗センサを備え、
前記制御部は、前記発汗センサが取得した情報に応じて前記シート空調本体を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
当該車両用空調装置はさらに、前記車両の所定箇所に設置され外気温度、車室内温度および日射量のうち少なくとも1つを取得する1または複数の環境センサを備え、
前記制御部は、前記環境センサが取得した情報から前記乗員の発汗量を推定して前記シート空調本体を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
当該車両用空調装置はさらに、車室内の空気の温度を調節可能な車室内空調ユニットを備え、
前記制御部は、前記乗員が所定の発汗量以上に発汗していると判定した場合に前記車室内空調ユニットの設定温度を上げることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記設定温度を前記乗員の発汗量に比例した値に制御することを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記送風口の風量を前記乗員の発汗量に反比例した量に制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、車両のシートに空調設備の送風口を設けた構造(シート空調)が開示されている。例えば、特許文献1には、シート空調に関する技術として、シートに着座者の発汗を検出するセンサと、エアコン用ファンを設けた構造が開示されている。特許文献1の技術では、夏季において冷房器が稼働すると共に、発汗センサが乗員の発汗を検出すると、シートのエアコン用ファンが自動的にオンになることで乗員の快適性を確保する仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシート空調は、風を乗員に至近距離から当てることができるため、インストルメントパネル等に送風口を設けている通常の車室内空調機よりも冷風感を乗員に効率よく与えることができる。特に、シート空調を車室内空調機と併用することで、車室内空調機の設定温度を低くせずとも乗員に冷風感を与えることができるため、省燃費に貢献することが可能になる。
【0005】
しかしながら、乗員の肌の温度が高く汗をかいている状況において、シート空調の風量が多すぎると、汗の急激な蒸発によって体感温度を快適な温度よりも下げてしまい、汗の付着した箇所に過度の冷風感を与えるおそれがある。またその場合、乗員がシート空調を停止させて車室内空調機の設定温度を下げてしまうなど、省燃費効果も失われることが予測される。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、車室内の快適性および省燃費効果の向上を図った車両用空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用空調装置の代表的な構成は、車両のシートの背もたれ部または着座部の乗員側に設けられる送風口と、シートに搭載され送風口から空気を吹き出すまたは送風口から空気を吸い込むシート空調本体と、車両に搭載されシート空調本体を制御する制御部とを備え、制御部は、車両に乗り込んできた乗員が所定の発汗量以上に発汗していると判定した場合にシート空調本体を制御して送風口の風量を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車室内の快適性および省燃費効果の向上を図った車両用空調装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例にかかる車両用空調装置の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の車両用空調装置が備える車室内空調ユニットの概要を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の車両用空調装置が行う処理を示したフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3の発汗レベル判定の処理を示すサブルーチンである。
【
図5】
図5は、
図3のステップにおける制御部の制御の例を示した図である。(a)は、乗員の発汗レベルとシート空調の送風量の関係を示したグラフである。(b)は、乗員の発汗レベルと車室内空調ユニットの設定温度との関係を示したグラフである。(c)は、車室内空調ユニットの設定温度と車両の燃費との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調装置は、車両のシートの背もたれ部または着座部の乗員側に設けられる送風口と、シートに搭載され送風口から空気を吹き出すまたは送風口から空気を吸い込むシート空調本体と、車両に搭載されシート空調本体を制御する制御部とを備え、制御部は、車両に乗り込んできた乗員が所定の発汗量以上に発汗していると判定した場合にシート空調本体を制御して送風口の風量を減少させることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、乗員の身体の汗が付着した箇所に過度の冷風感を与えることを防ぎ、かつ汗の蒸発時間を延ばして冷風感をより長く持続させることができるため、車室内の快適性の向上に貢献することが可能となる。また、この構成であれば、通常の車室内空調機の設定温度を下げずとも乗員に冷風感を与えることができるため、省燃費効果を得ることも可能になる。
【0012】
当該車両用空調装置はさらに、シートの背もたれ部または着座部の少なくとも一方に設けられ乗員の発汗量を検出する発汗センサを備え、制御部は、発汗センサが取得した情報に応じてシート空調本体を制御してもよい。この発汗センサによれば、乗員の状態に即した空調制御が可能になる。
【0013】
当該車両用空調装置はさらに、車両の所定箇所に設置され外気温度、車室内温度および日射量のうち少なくとも1つを取得する1または複数の環境センサを備え、制御部は、環境センサが取得した情報から乗員の発汗量を推定してシート空調本体を制御してもよい。
【0014】
上記環境センサによっても、乗員の状態に即した空調制御が可能になる。特に、車室内温度等を計るセンサは一般的な車両に既に実装されているため、上記構成であれば既存のセンサを利用して低コストで実施することが可能である。
【0015】
当該車両用空調装置はさらに、車室内の空気の温度を調節可能な車室内空調ユニットを備え、制御部は、乗員が所定の発汗量以上に発汗していると判定した場合に車室内空調ユニットの設定温度を上げてもよい。この構成によっても、乗員の身体の汗が付着した箇所に過度の冷風感を与えることを防ぎ、かつ汗の蒸発時間を延ばして冷風感をより長く持続させて快適性を向上させることができる。また、乗員が所定の発汗量以上に発汗しているとき、シート空調で風を送りつつ車室内空調ユニットの設定温度は上げることで、快適性を下げることなく低燃費に貢献することが可能である。
【0016】
上記の制御部は、設定温度を乗員の発汗量に比例した値に制御してもよい。この構成によって、より乗員の状態に即した空調制御を行うことが可能になる。
【0017】
上記の制御部は、送風口の風量を乗員の発汗量に反比例した量に制御してもよい。この構成によっても、乗員の身体の汗をかいた部分に局所的な冷風感を与えることを防ぎ、かつ汗の蒸発時間を延ばして冷風感の持続時間を長くすることができるため、車室内の快適性の向上に貢献することが可能となる。
【実施例】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施例にかかる車両用空調装置100の概要を示す図である。本実施例は、夏季において、当該車両用空調装置100が冷房運転する場合を想定したものである。以下、
図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0020】
当該車両用空調装置100は、いわゆるシート空調102を実現している。シート空調102は、車両のシート104の背もたれ部106および着座部108の内部に搭載されたシート空調本体110、112と、これら背もたれ部106および着座部108の乗員側に設けられた送風口114、116を備えている。
【0021】
シート空調本体110、112は、送風口114、116から空気を吹き出す、または送風口114、116から空気を吸い込むことで、乗員に至近距離から風を当てて冷風感を与える。シート空調本体110、112は、送風運転のみを行う構成としてもよいが、後述する車室内空調ユニット122(
図2参照)とは独立した温度調節機能を備えることも可能である。その他、車室内空調ユニットから不図示のダクトを通じて温度調節した空気を受け取る構成としてもよい。
【0022】
当該車両用空調装置100は、乗員の発汗量を検出する発汗センサ118、120も備えている。発汗センサ118、120は、シート104のうち、背もたれ部106および着座部108の乗員側の表皮の内側等に備えられている。発汗センサ118、120は、例えば湿度を計測することで、発汗の検出を行う。当該車両用空調装置100は、背もたれ部106および着座部108の発汗センサ118、120を利用して、乗員の発汗量に基づいてシート空調本体110、112をそれぞれ制御している。
【0023】
なお、本実施形態では、上述したシート空調本体110、112、送風口114、116および発汗センサ118、120をシート104の背もたれ部106および着座部108の両方に設けているが、これらの各要素は背もたれ部106または着座部108の一方のみに設けてもよい。
【0024】
図2は、
図1の車両用空調装置100が備える車室内空調ユニット122の概要を示す図である。車室内空調ユニット122(HVAC (Heating Ventilation and Air Conditioning))は、車室内の空気の温度を調節する機器であり、車両のインストルメントパネル124の内側に設置されている。
【0025】
車室内空調ユニット122が冷房運転を行う場合、まずA/Cコンプレッサ126で冷媒を圧縮し、コンデンサ128でその冷媒の熱を放散する。続いて、車室内空調ユニット122は、膨張弁130で冷媒を減圧して低温にし、エバポレータ132で冷媒と車室内の空気との熱交換を行い、熱交換された空気を送風用ダクト134から車室内へ送って車室内の冷却を行う。その他、車室内空調ユニット122には、不図示の暖房用のヒーターコアや、ブロワモータなど、一般的な車室内用の空調設備としての要素が備えられている。
【0026】
車両用空調装置100は、各種の環境センサを備えている。環境センサとしては、インストルメントパネル124の上部に設置された日射量センサ136、インストルメントパネル124の乗員側に設置された車室内温度センサ138、および外気に触れる箇所に設置された外気温度センサ140が備えられている。各センサはそれぞれ、日射量、車室内温度および外気温度に関する情報を取得する。
【0027】
車室内空調ユニット122には、発汗推定部142および制御部144が併設されている。特に、制御部144は、車室内空調ユニット122の制御だけでなく、
図1のシート空調本体110、112の制御も行っている。
【0028】
発汗推定部142は、上述した環境センサ(日射量センサ136等)からの情報を基にして、乗員が車両に乗り込んだ時点における乗員の発汗量を推定する。
【0029】
制御部144は、発汗推定部142が推定した乗員の発汗量を元にして、当該車室内空調ユニット122の設定温度や送風用ダクト134の風量、およびシート空調本体110、112の風量などを制御する。制御部144は、
図1の発汗センサ118、120から情報を取得することもでき、発汗センサ118、120からの情報に応じてシート空調102の風量を制御することも可能になっている。
【0030】
当該車両用空調装置100では、
図1のシート空調102、および
図2の車室内空調ユニット122を運用して、車室内の快適性および省燃費効果の向上を図ることが可能になっている。以下、
図3以降の各図を参照して、当該車両用空調装置100が行う処理について説明する。
【0031】
図3は、
図1の車両用空調装置100が行う処理を示したフローチャートである。まず、ステップ200にて、車室内空調ユニット122のスイッチのON/OFFを判定する。車室内空調ユニット122がONの場合はステップ202に移行し、OFFの場合は処理を終了する。ステップ202では、シート空調102のスイッチのON/OFFを判定する。シート空調102のスイッチがONの場合はステップ204に移行し、OFFの場合はステップ200に戻る。
【0032】
図4は、
図3の発汗レベル判定(ステップ204)の処理を示すサブルーチンである。ステップ220では、発汗センサ118、120(
図1参照)の設置の有無が判定される。発汗センサ118、120が設置されている場合(ステップ220のYes)、ステップ222にて発汗センサ118、120によって車両に乗り込んできた乗員の発汗状態が検知され、発汗量が取得される。
【0033】
発汗センサ118、120が設置されていない場合(ステップ220のNo)、ステップ224にて環境センサ(
図2の外気温度センサ140等)から外気温度、車室内温度および日射量等の情報が取得される。これら環境センサとしては、一般的な車両に実装されている既存のセンサが利用できるため、発汗センサ118、120(
図1参照)を設置せずとも低コストで処理を実施することができる。
【0034】
ステップ226では、発汗推定部142(
図2参照)によって、上述した環境センサが取得した各情報から車両に乗り込んできた乗員の発汗状態が推定され、推定した発汗量が算出される。
【0035】
ステップ222およびステップ226は、共にステップ228に進む。ステップ228では、発汗センサ118が取得した発汗量に関する情報、または発汗推定部142が推定した乗員の発汗量から、乗員の発汗量のレベル(発汗レベル)が判定される。これによって、
図3の発汗量判定(ステップ204)の処理は終了し、続くステップ206に移行する。
【0036】
図3のステップ206では、ステップ204で算出した乗員の発汗レベルが低いか高いか判定される。乗員の発汗レベルが低い場合(ステップ206のYes)、ステップ208に移行する。ステップ208では、制御部144(
図2参照)は、夏季における通常の設定に沿って、シート空調102(
図1参照)における送風口114、116の送風量を高くし、車室内空調ユニット122の設定温度は低くする。そして、処理はステップ200に戻る。
【0037】
一方、ステップ206において乗員の発汗レベルが高い場合(ステップ206のNo)、ステップ210に移行する。ステップ210では、制御部144(
図2参照)は、ステップ208にて実行した設定に比べて、シート空調102(
図1参照)における送風口114、116の送風量を低くし、車室内空調ユニット122の設定温度も高くする。この構成によって、乗員に過度の冷風感を与えることを防ぐとともに、汗の蒸発時間を延ばして冷風感の持続時間を長くする。また、車室内空調ユニット122の設定温度を上げ、過度の冷風感の防止と省燃費効果の達成を図る。そして、処理はステップ200に戻る。
【0038】
図5は、
図3のステップ210における制御部144(
図2参照)の制御の例を示した図である。
図5(a)は、乗員の発汗レベルとシート空調102(
図1参照)の送風量の関係を示したグラフである。横軸はステップ204で取得する乗員の発汗レベルであり、縦軸はステップ210で制御するシート空調102の送風量である。
【0039】
図5(a)に示すように、制御部144は、乗員の発汗レベルが高いほど、すなわち乗員の発汗量が多いほど、シート空調102(
図1参照)の送風口114の風量を低くする。この構成によって、乗員の身体の汗をかいた部分に局所的な冷風感を与えることを防ぎ、かつ汗の蒸発時間を延ばして冷風感の持続時間を長くすることができるため、車室内の快適性の向上に貢献することが可能となる。
【0040】
図5(b)は、乗員の発汗レベルと車室内空調ユニット122(
図2参照)の設定温度との関係を示したグラフである。横軸はステップ204で取得する乗員の発汗レベルであり、縦軸はステップ210で制御する車室内空調ユニット122の設定温度である。
【0041】
図5(b)に示すように、制御部144(
図2参照)は、乗員の発汗レベルが高いほど、すなわち乗員の発汗量が多いほど、車室内空調ユニット122の設定温度を高くする。この構成によっても、乗員の身体の汗をかいた部分に局所的な冷風感を与えることを防ぎ、かつ汗の蒸発時間を延ばして冷風感の持続時間を長くすることができるため、車室内の快適性の向上に貢献することが可能となる。この制御は、車両の省燃費向上にも役立つ。
【0042】
図5(c)は、車室内空調ユニット122(
図2参照)の設定温度と車両の燃費との関係を示したグラフである。横軸はステップ210で制御する車室内空調ユニット122の設定温度であり、縦軸は車両の燃費である。冷房時は、設定温度を長時間高めに設定することで、
図2のA/Cコンプレッサ126(EVであれば電動A/Cコンプレッサ)の稼働時間や車室内空調ユニット122のファン風量が低減されるため、車両の燃費は良くなる。
【0043】
以上、当該車両用空調装置100では、
図3のステップ210に示されるように、車両に乗り込んできた乗員が所定の発汗量以上に発汗していると判定した場合、シート空調本体110、112(
図1参照)を制御して送風口114、116の風量を減少させる。この構成によれば、乗員の身体の汗が付着した箇所に過度の冷風感を与えることを防ぎ、かつ汗の蒸発時間を延ばして冷風感をより長く持続させることができるため、車室内の快適性の向上に貢献することが可能となる。また、この構成であれば、車室内空調ユニット122(
図2参照)の設定温度を下げずとも乗員に冷風感を与えることができるため、省燃費効果を得ることも可能になる。
【0044】
また、
図3のステップ206において、制御部144(
図2参照)は、乗員の発汗レベルは、低いか高いかを判定するだけでなく、複数の段階的なレベルに分けて判定してもよい。そして、制御部144は、各レベルに応じてシート空調102(
図1参照)の送風口114、116の送風量と車室内空調ユニット122の設定温度とを制御してもよい。いずれの場合においても、制御部144は、シート空調102の送風口114、116の送風量を乗員の発汗量に反比例した量に制御し、車室内空調ユニット122の設定温度を乗員の発汗量に比例した値に制御する。これら構成によって、当該車両用空調装置100では、より乗員の状態に即した空調制御を行うことが可能になっている。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車両用空調装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
100…車両用空調装置、102…シート空調、104…シート、106…背もたれ部、108…着座部、110、112…シート空調本体、114、116…送風口、118,120…発汗センサ、122…車室内空調ユニット、124…インストルメントパネル、126…A/Cコンプレッサ、128…コンデンサ、130…膨張弁、132…エバポレータ、134…送風用ダクト、136…日射量センサ、138…車室内温度センサ、140…外気温度センサ、142…発汗推定部、144…制御部