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特許7552042車両用バッテリーケースおよび車両用バッテリー温度調節装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両用バッテリーケースおよび車両用バッテリー温度調節装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20240910BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240910BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20240910BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240910BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240910BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240910BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240910BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20240910BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240910BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240910BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240910BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALN20240910BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/6556
H01M10/6551
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M50/20
H01M10/647
B60K1/04 Z
B60K11/04 Z
H01M10/6554
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020047501
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021150105
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 道彦
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113410(JP,A)
【文献】特開2008-140630(JP,A)
【文献】特開2019-93940(JP,A)
【文献】特開2010-277863(JP,A)
【文献】特開2008-204990(JP,A)
【文献】特開2018-127087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/658
H01M 10/6556
H01M 10/6551
H01M 10/6569
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 50/20
H01M 10/647
B60K 1/04
B60K 11/04
H01M 10/6554
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側表面にバッテリーを載置可能に構成されている支持部材を有する車両用バッテリーケースであって、
前記支持部材
前記内側表面の側に位置しており冷媒が通過可能な冷媒経路が設けられている第一冷媒通過部と、
前記第一冷媒通過部よりも外側表面の側に位置しており前記冷媒が通過可能な冷媒経路が設けられている第二冷媒通過部と、
前記第一冷媒通過部と前記第二冷媒通過部との間に設けられている断熱部と、
を備え、
前記第一冷媒通過部と前記第二冷媒通過部とが互いに離間していることにより前記第一冷媒通過部と前記第二冷媒通過部との間に空気層が設けられており、前記空気層が前記断熱部である、
車両用バッテリーケース。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用バッテリーケースであって、
前記支持部材の外側表面には、前記第二冷媒通過部を通過する前記冷媒を前記車両用バッテリーケースの外部に放出するための放熱部が設けられている、
車両用バッテリーケース。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用バッテリーケースであって、
前記放熱部は前記車両用バッテリーケースの外側に向かって突出する立壁状のフィンである、
車両用バッテリーケース。
【請求項4】
内部に収容されているバッテリーと冷媒との間で熱交換可能に構成されている第一熱交換部と、外気と前記冷媒との間で熱交換可能に構成されている第二熱交換部と、を有する車両用バッテリーケースと、
前記冷媒を圧縮して吐出できる圧縮機と、
前記圧縮機が吐出した前記冷媒を前記第一熱交換部と前記第二熱交換部のいずれに流入させるかを切り替える切替弁と、
前記第一熱交換部と前記第二熱交換部とを前記冷媒が流通可能に接続する中間接続経路と、
を有し、
前記バッテリーを加熱する場合には、前記切替弁は前記圧縮機が吐出した前記冷媒が前記第一熱交換部に流入するように前記圧縮機と前記第一熱交換部とを接続し、前記圧縮機が吐出した前記冷媒を前記第一熱交換部、前記中間接続経路、前記第二熱交換部の順に流すことで、前記第一熱交換部において前記冷媒の熱を前記バッテリーに与え、
前記バッテリーを冷却する場合には、前記切替弁は前記圧縮機が吐出した前記冷媒が前記第二熱交換部に流入するように前記圧縮機と前記第二熱交換部とを接続し、前記圧縮機が吐出した前記冷媒を前記第二熱交換部、前記中間接続経路、前記第一熱交換部の順に流すことで、前記第二熱交換部において前記冷媒が有する熱を外部に放出し、前記第一熱交換部において前記冷媒により前記バッテリーの熱を奪うように構成されている、
車両用バッテリー温度調節装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用バッテリー温度調節装置において、
前記車両用バッテリーケースは、内側表面に前記バッテリーを載置可能に構成されている支持部材を有し、
前記支持部材には、
前記内側表面の側に位置しており前記冷媒が通過可能な冷媒経路が設けられている第一冷媒通過部と、
前記第一冷媒通過部よりも外側表面の側に位置しており前記冷媒が通過可能な冷媒経路が設けられている第二冷媒通過部と、
前記第一冷媒通過部と前記第二冷媒通過部との間に設けられている断熱部と、
が設けられており、
前記第一冷媒通過部が前記第一熱交換部であり、前記第二冷媒通過部が前記第二熱交換部である、
車両用バッテリー温度調節装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用バッテリー温度調節装置において、
前記第一熱交換部と前記第二熱交換部とは互いに離間していることにより前記第一熱交換部と前記第二熱交換部との間に空気層が設けられており、前記空気層が前記断熱部である、
車両用バッテリー温度調節装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の車両用バッテリー温度調節装置であって、
前記支持部材の外側表面には、前記第二熱交換部を通過する前記冷媒を前記車両用バッテリーケースの外部に放出するための放熱部が設けられている、
車両用バッテリー温度調節装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用バッテリー温度調節装置であって、
前記放熱部は前記車両用バッテリーケースの外側に向かって突出する立壁状のフィンである、
車両用バッテリー温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリーケースおよび車両用バッテリー温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両に用いられるバッテリー(例えばリチウムイオンバッテリー)は、低温環境下では内部抵抗が増加して取り出せる電力量が減少し、高温になると劣化(例えば負極表面のSEI被膜が成長することによるバッテリー容量の低下)が促進されて寿命が短くなる。また、バッテリーは充放電時には発熱する。このため、バッテリーの出力低下および劣化を防止または抑制するためには、バッテリーの温度が適切な範囲内におさまるように温度調節をしなければならない。
【0003】
特許文献1には、車両のバッテリーが熱交換器を介してキャビン空調用の冷媒回路に接続されており、冷媒回路はバッテリーを冷却または加熱できるように構成されているとともに、バッテリーの熱を冷媒回路に供給できるように構成されている電動車両用の空調システムが開示されている。この電動車両用の空調システムによれば、キャビンの空調ができるとともにバッテリーの温度を制御できる。
【0004】
特許文献2には、バッテリー用の冷媒の温度が目標温度よりも高い場合にはエアコン用の冷媒によってバッテリー用の冷媒を冷却し、バッテリー用の冷媒の温度が目標温度より低い場合には電気ヒータで加熱するように構成される電動車両用熱管理システムが開示されている。この電動車両用熱管理システムによれば、バッテリーが高温である場合にはエアコンの冷媒で間接的に冷却し、バッテリーが低温である場合には電気ヒータで加熱することにより、バッテリーの温度を調節できる。
【0005】
特許文献3には、バッテリーを冷却する車両用サーモサイフォン式の冷却装置が開示されている。この冷却装置によれば、バッテリーを低温に維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-68348号公報
【文献】特許第5860361号公報
【文献】特開2019-132456号公報
【発明の概要】
【0007】
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、特許文献1に開示されている空調システムでは、キャビンの空調とバッテリーの温度調節のための冷媒回路が共通であるため、バッテリーを適切な温度範囲に保つことが困難になる場合がある。同様に、特許文献2に開示されている電動車両用熱管理システムでは、バッテリー用の冷媒の冷却にエアコン用の冷媒を用いるため、バッテリーを適切な温度範囲に保つことが困難な場合がある。すなわち、一般的にバッテリーは10~25℃の範囲に保たれることが効率と劣化防止の観点から好ましいが、キャビンの空調が優先されると、バッテリーをこの温度範囲に保つことができないことがある。また、除霜などのために空調システムが停止すると、バッテリーの温度調節ができなくなる。また、特許文献2に開示されている電動車両用熱管理システムでは、バッテリー用の冷媒の加熱に電気ヒータを用いるため、電力の消費量が多くなる。特許文献3に開示されている冷却装置では、キャビンとは独立してバッテリーを冷却できるが、バッテリーの加熱はできないため、加熱のためには別途加熱器が必要になる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、キャビンと独立してバッテリーの加熱および冷却ができる車両用バッテリーケースおよび車両用バッテリー温度調節装置を提供することである。
【0009】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用バッテリーケース(10)は、
内側表面(上面)にバッテリー(15)を載置可能な支持部材(ロアケース(11))を有する車両用バッテリーケース(10)であって、
支持部材(ロアケース(11))は、
内側表面(上面)の側に位置しており冷媒が通過可能な冷媒経路(112)が設けられている第一冷媒通過部(111)と、
第一冷媒通過部(111)よりも外側表面(下面)の側に位置しており冷媒が通過可能な冷媒経路(114)が設けられている第二冷媒通過部(113)と、
第一冷媒通過部(111)と第二冷媒通過部(113)との間に設けられている断熱部(115)と、
を備え、
第一冷媒通過部(111)と第二冷媒通過部(113)とが互いに離間していることにより第一冷媒通過部(111)と第二冷媒通過部(113)との間に空気層が設けられており、この空気層が断熱部(115)である。
【0010】
本発明がこのように構成されると、第一冷媒通過部(111)の冷媒経路(112)内を通過する冷媒と支持部材(ロアケース(11))に搭載されたバッテリー(15)とを熱交換させることができるとともに、第二冷媒通過部(113)の冷媒経路(114)を通過する冷媒と外気とを熱交換させることができる。つまり、第一冷媒通過部(111)が、バッテリー(15)と冷媒との熱交換部として機能し、第二冷媒通過部(113)が冷媒と外気との熱交換部として機能する。そのため、車両用バッテリーケース(10)とは別に熱交換器を使用することなく、バッテリー(15)の加熱および冷却が可能である。さらに、キャビンの空気調和機とは独立してバッテリー(15)の温度調節ができる。このため、キャビンの空気調和機の温度設定や動作状況の影響を受けることなく、バッテリー(15)を適切な温度に維持できる。また、バッテリー(15)をヒートポンプ方式によって加熱できるから、電熱ヒータを用いてバッテリー(15)を加熱する方式に比較して、バッテリー(15)の加熱時における電力消費量の低減を図ることができる。
【0011】
さらに、第一冷媒通過部(111)と第二冷媒通過部(113)との間に断熱部(115)が設けられる構成であると、第一冷媒通過部(111)と第二冷媒通過部(113)との間での熱移動を抑制できる。
【0013】
また、本発明がこのように構成されると、支持部材(ロアケース(11))の成形が容易であるとともに支持部材(ロアケース(11))の重量の増加を招かない。また、このような構成であると、支持部材(ロアケース(11))の下側に物体が衝突するなどして衝撃が加わった場合、断熱部(115)がクラッシャブルゾーンとして機能する。このため、バッテリー(15)に掛かる衝撃を低減できる。また、衝撃によって第二冷媒通過部(113)が損傷して冷媒が漏出した場合であっても、漏出した冷媒が支持部材(ロアケース(11))により形成される内部空間に侵入することが防止または抑制される。
【0014】
本発明は、支持部材(ロアケース(11))の外側表面に、第二冷媒通過部(113)を通過する冷媒を車両用バッテリーケース(10)の外部に放出するための放熱部(116)が設けられている、という構成であってもよい。
【0015】
本発明がこのように構成されると、第二冷媒通過部(113)を通過する冷媒と外気との間での熱交換の効率を高めることができる。したがって、バッテリー(15)の冷却および加熱の効率を高めることができる。
【0016】
放熱部(116)は車両用バッテリーケース(10)の外側に向かって突出する立壁状のフィンである、という構成であってもよい。
【0017】
本発明がこのように構成されると、放熱部(116)がクラッシャブルゾーンとして機能する。すなわち、車両用バッテリーケース(10)の下方から物体が衝突した場合、放熱部(116)であるフィンが変形することによって衝撃を吸収し、バッテリー(15)に掛かる衝撃を緩和する。
【0018】
本発明の車両用バッテリー温度調節装置(20)は、
内部に収容されているバッテリー(15)と冷媒との間で熱交換可能に構成されている第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))および外気と冷媒との間で熱交換可能に構成されている第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))を有する車両用バッテリーケース(10)と、
冷媒を圧縮して吐出できる圧縮機(22)と、
圧縮機(22)が吐出した冷媒を第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))または第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))に流入させるかを切り替える切替弁(四方弁(24))と、
第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))と第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))とを冷媒が流通可能に接続する中間接続経路(30)と、
を有し、
バッテリー(15)を加熱する場合には、切替弁(四方弁(24))は圧縮機(22)が吐出した冷媒が第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))に流入するように圧縮機(22)と第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))とを接続し、圧縮機(22)が吐出した冷媒を第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))、中間接続経路(30)、第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))の順に流すことで、第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))において冷媒からバッテリー(15)に熱を与え、
バッテリー(15)を冷却する場合には、切替弁(四方弁(24))は圧縮機(22)が吐出した冷媒が第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))に流入するように圧縮機(22)と第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))とを接続し、圧縮機(22)が吐出した冷媒を第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))、中間接続経路(30)、第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))の順に流すことで、第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))において前記冷媒の熱を外気に放出し、第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))において冷媒によりバッテリー(15)の熱を奪うように構成されている。この場合、本発明の車両用バッテリー温度調節装置(20)は、バッテリー(15)を加熱する場合に圧縮機(20)が吐出した冷媒が第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))に流入し、バッテリー(15)を冷却する場合に圧縮機(20)が吐出した冷媒が第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))に流入するように、切替弁(四方弁(24)を制御する制御装置(21)を有していると良い。
【0019】
本発明がこのように構成されると、車両用バッテリーケース(10)に設けられている第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))においてバッテリー(15)と熱交換され、第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))において車両用バッテリーケース(10)の外部の空気と熱交換される。したがって、別個独立した熱交換器が不要であるから、調温装置(20)の小型化を図ることができる。また、車両用バッテリーケース(10)においてバッテリー(15)と冷媒との熱交換および外気と冷媒との熱交換を完結することができるから、キャビン用の空気調和機の冷媒と熱交換させなくてもよい。このため、キャビン用の空気調和機の動作の影響を受けることなく、バッテリー(15)を適切な温度に調節できる。また、バッテリー(15)の加熱に冷媒を用いる構成であるため、例えば電熱ヒータを用いる構成と比較して加熱時の電力消費量を低減できる。
【0020】
この場合、車両用バッテリーケース(10)は、内側表面にバッテリー(15)を載置可能に構成されている支持部材(ロアケース(11))を有し、支持部材(ロアケース(11))には、内側表面の側に位置しており冷媒が通過可能な冷媒経路(112)が設けられている第一冷媒通過部(111)と、第一冷媒通過部(111)よりも外側表面の側に位置しており冷媒が通過可能な冷媒経路(114)が設けられている第二冷媒通過部(113)と、第一冷媒通過部(111)と第二冷媒通過部(113)との間に設けられている断熱部(115)と、が設けられており、第一冷媒通過部(111)が第一熱交換部であり、第二冷媒通過部(113)が第二熱交換部である、という構成であってもよい。
【0021】
第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))と第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))とは互いに離間していることにより第一熱交換部(第一冷媒通過部(111))と第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))との間に空気層が設けられており、空気層が前記断熱部(115)である、という構成であってもよい。
【0022】
支持部材(ロアケース(11))の外側表面には、第二熱交換部(第二冷媒通過部(113))を通過する冷媒を車両用バッテリーケース(10)の外部に放出するための放熱部(116)が設けられている、という構成であってもよい。
【0023】
放熱部(116)は車両用バッテリーケース(10)の外側に向かって突出する立壁状のフィンである、という構成であってもよい。
【0024】
本発明がこれらのように構成されると、上述の効果と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、バッテリーケースの構成例を示す分解斜視図である。
図2図2は、バッテリーケースの断面構造の例を示す図である。
図3図3は、調温装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る車両用バッテリーケースおよび車両用バッテリー温度調節装置について、図面を参照して説明する。本発明の実施形態に係る車両用バッテリーケースおよび車両用バッテリー温度調節装置は、電動車両に搭載される。本実施形態に係る車両用バッテリーケースには、電動車両の走行用の電源であるバッテリーが収容される。また、本実施形態に係る車両用バッテリー温度調節装置は、車両用バッテリーケースに収容されているバッテリーの温度を調節する。なお、説明の便宜上、以下の説明において、本発明の実施形態に係る車両用バッテリーケースを「バッテリーケース」と略して記し、車両用バッテリー温度調節装置を「調温装置」と略して記すことがある。
【0027】
(バッテリーケース)
図1は、バッテリーケース10の構成例を模式的に示す分解斜視図であり、下方から見た図である。図2は、バッテリーケース10の構成例を模式的に示す断面図である。図1および図2において、バッテリーケース10の上方を矢印Upで示し、下方を矢印Dwで示す。図1および図2に示すように、バッテリーケース10はロアケース11と、カバー12とを有している。
【0028】
ロアケース11は支持部材の例である。ロアケース11は所定の厚さを有する板状の構成を有しており、内側表面の例である上面にバッテリー15を載置できるように構成されている。なお、ロアケース11の上面はバッテリー15を載置できるように構成されていればよく、具体的な構成は限定されない。バッテリー15として、例えばリチウムイオンバッテリーを採用することができる。
【0029】
ロアケース11は、第一冷媒通過部111と、第二冷媒通過部113と、断熱部115と、放熱部116とを有している。第一冷媒通過部111および第二冷媒通過部113のそれぞれには、バッテリー15の温度を調節するための冷媒が通過可能な冷媒経路112,114が設けられている。具体的には、第一冷媒通過部111および第二冷媒通過部113は、図2に示すように、それぞれ所定の厚さを有する板状の構成を有している。そして、第一冷媒通過部111の冷媒経路112には、第一冷媒通過部111の厚さ方向(上下方向)に直角な方向に延伸する孔が適用される。同様に、第二冷媒通過部113の冷媒経路114には、第二冷媒通過部113の厚さ方向(上下方向)に直角な方向に延伸する孔が適用される。
【0030】
この場合、図2に示すように、第一冷媒通過部111には互いに略平行な複数の冷媒経路112が設けられる。さらに、ロアケース11には、第一冷媒通過部111に外部から冷媒を流入させるため、またはロアケース11の外部に冷媒を流出させるための2つの冷媒の出入口が設けられる。そして、複数の冷媒経路112のそれぞれの両端部は図略のU字管などにより互いに直列的に接続されているとともに、複数の冷媒経路112のうちのいずれか2つのそれぞれの一方の端部は、2つの冷媒の出入口のそれぞれに接続されている。このような構成であれば、一方の冷媒の出入口から流入した冷媒は、第一冷媒経路111に設けられている複数の冷媒経路112のそれぞれを通過し、他方の冷媒の出入り口からバッテリーケース10の外部に流出する。
【0031】
または、第一冷媒通過部111の複数の冷媒経路112のそれぞれの一方の端部は図略の多岐管(マニホールド)を介して一方の冷媒の出入口に接続され、第一冷媒通過部111の複数の冷媒経路112のそれぞれの他方の端部は図略の他の多岐管を介して他方の冷媒の出入口に接続されるという構成であってもよい。このような構成であれば、一方の冷媒の出入口に流入した冷媒は、多岐管を介して複数の冷媒経路112のそれぞれに流入し、複数の冷媒経路112のそれぞれを通過した冷媒は、他の多岐管を介して他方の冷媒の出入口からロアケース11の外部に流出する。
【0032】
なお、第一冷媒通過部111に設けられている複数の冷媒経路112どうしの接続構造、および冷媒経路112と冷媒の出入口との接続構造は、上述の構造に限定されない。要は、ロアケース11の外部から第一冷媒通過部111の冷媒経路112に外部から冷媒を流入させることができるとともに、冷媒経路112を通過した冷媒をロアケース11の外部に流出させることができればよい。また、説明を省略するが、第二冷媒通過部113の冷媒経路114も同様の構成が適用できる。
【0033】
図2に示すように、第一冷媒通過部111はバッテリー15が載置される面の側に設けられている。第二冷媒通過部113は第一冷媒通過部111よりもバッテリーケース10の外側(下側)に設けられている。そして、第一冷媒通過部111がバッテリーケース10の内側表面の一部を形成し、第二冷媒通過部113がバッテリーケース10の外側表面の一部を形成する。このため、ロアケース11の上面に載置されているバッテリー15と第一冷媒通過部111を通過する冷媒との間で熱交換が可能である。また、バッテリーケース10の外部の空気と第二冷媒通過部113を通過する冷媒との間で熱交換が可能である。
【0034】
第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113との間には断熱部115が設けられている。この断熱部115によって、第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113との間で熱が移動することを防止する。具体的には、図2に示すように、第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113とは互いに離間しており、このため、第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113との間に空気層(空洞)が存在する。そしてこの空気層が断熱部115として機能する。なお、断熱部115は空気層に限定されない。例えば、第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113との間に断熱部材(第一冷媒通過部111および第二冷媒通過部113よりも熱伝導率が低い材料からなる部材)が配置される構成であってもよい。要は、第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113との間に、第一冷媒通過部111および第二冷媒通過部113よりも熱伝導率が低い層が設けられる構成であればよい。
【0035】
なお、第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113とは、互いに接触する部分を有していてもよい。例えば図2に示すように、第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113とが周縁部において互いに結合していてもよい。
【0036】
このように、バッテリーケース10は、板状の第一冷媒通過部111および第二冷媒通過部113が重なっている二重底(二重構造)を有している。そして、二重底を構成する第一冷媒通過部111および第二冷媒通過部113のうちの第一冷媒通過部111がバッテリーケース10の内周側(上側)に位置することによりバッテリーケース10の内周面(底板の上面)を形成する。また、第二冷媒通過部113がバッテリーケース10の外周側(下側)に位置することによりバッテリーケース10の外周面(底板の下面)を形成する。
【0037】
放熱部116は、外部の空気と第二冷媒通過部113の冷媒経路114を通過する冷媒との間で熱交換の効率を高める機能(交換する熱量を多くする機能)を有する。放熱部116は、第二冷媒通過部113の下面(すなわち、バッテリーケース10の外側表面)から下側に突出する立壁状のフィンである。なお、放熱部116であるフィンは、第二冷媒通過部113に一体に設けられている。換言すると、放熱部116であるフィンは、ロアケース11に一体に設けられている。
【0038】
ロアケース11は、例えばアルミニウム合金からなり、例えば押し出しによって成形される。この場合には、第一冷媒通過部111、第二冷媒通過部113および放熱部116であるフィンは一体に成形される。そして、ロアケース11の端面に第一冷媒通過部111の冷媒経路112および第二冷媒通過部113の冷媒経路114の開口が現れるため、ロアケース11の端面にU字管または多岐管などが接続されることにより、ロアケース11の外部と冷媒経路112,114を接続するための冷媒の出入口が形成される。なお、ロアケース11はアルミニウム合金に限定されるものではなく、アルミニウム合金のほか、アルミまたは鋼などの各種金属材料が適用できる。ただし、ロアケース11は、断熱部115を除いては熱伝導率が高い材料により形成されることが好ましい。また、ロアケース11の製造方法も押し出しに限定されるものではなく、プレスまたはダイキャストなどといった各種製造方法が適用できる。
【0039】
カバー12は、ロアケース11の上側に取り付けられる部材である。カバー12は下側が開口している箱状(換言すると、ドーム状)の構成を有しており、ロアケース11の上面に載置されているバッテリー15を覆うことができる(換言すると、バッテリー15を収容できる)ように構成されている。なお、カバー12はバッテリー15をバッテリーケース10の外部に露出しないように覆うことができる構成であればよく、具体的な構成は特に限定されない。さらに、カバー12の材質も特に限定されるものではなく、アルミ、アルミニウム合金、鉄鋼材料、樹脂材料など、各種の材料が適用できる。
【0040】
このようなバッテリーケース10によれば、バッテリーケース10とは別に熱交換器を使用することなく、バッテリー15の加熱および冷却が可能である。具体的には、バッテリー15を加熱する場合には、高温の冷媒を第一冷媒通過部111を通過させることによりバッテリー15を加熱することができる。そして、第一冷媒通過部111を通過した冷媒を第二冷媒通過部113を通過させることにより、冷媒が外気から熱を受け取ることができる。また、バッテリー15を冷却する場合には、冷媒を第二冷媒通過部113を通過させることにより、冷媒の熱を外部の空気に放出することができ、外部の空気に熱を放出した冷媒を第一冷媒通過部111を通過させることにより、バッテリー15を冷却することができる。また、低温の冷媒を第一冷媒通過部111を通過させることにより、バッテリー15を冷却することができ、第一冷媒通過部111を通過した冷媒を第二冷媒通過部113を通過させることにより、バッテリーから奪った熱をバッテリーケース10の外部に放出することもできる。
【0041】
そして、このような構成によれば、キャビンの空気調和機とは独立してバッテリー15の温度調節ができる。このため、キャビンの空気調和機の温度設定や動作状況の影響を受けることなく、バッテリー15を適切な温度に維持できる。また、このような構成であれば、バッテリー15をヒートポンプ方式によって加熱できるから、電熱ヒータを用いてバッテリー15を加熱する方式に比較して、バッテリー15の加熱時における電力消費量の低減を図ることができる。
【0042】
第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113との間に断熱部115が設けられる構成であると、第一冷媒通過部111と第二冷媒通過部113との間での熱移動を抑制できる。したがって、バッテリー15の加熱時には、第一冷媒通過部111から第二冷媒通過部113に移動する熱量を少なくすることで、バッテリー15に与える熱量を多くできる(換言すると、熱量の減少を防止または抑制できる)。バッテリー15の冷却時には、第二冷媒通過部113から第一冷媒通過部111に移動する熱量を少なくすることで、冷媒がバッテリー15から奪う熱量を多くできる(換言すると、熱量の減少を防止または抑制できる)。
【0043】
断熱部115が空気層(ロアケース11の内部に設けられている空洞)であると、成形が容易であるとともにロアケース11の重量の増加を招かない。また、このような構成であると、ロアケース11の下側に物体が衝突するなどして衝撃が加わった場合、断熱部115がクラッシャブルゾーンとして機能する。このため、バッテリー15に掛かる衝撃を低減できる。また、衝撃によって第二冷媒通過部113が損傷して冷媒が漏出した場合であっても、漏出した冷媒がロアケース11とカバー12とより形成される内部空間に侵入することが防止または抑制される。
【0044】
第二冷媒通過部113の外側表面に放熱部116が設けられる構成であると、第二冷媒通過部113を通過する冷媒と外気との間での熱交換の効率を高めることができる(換言すると、冷媒と外気との間で交換する熱量を多くできる)。したがって、バッテリー15の冷却および加熱の効率を高めることができる。
【0045】
放熱部116が下側に突出する立壁状のフィンであると、放熱部116がクラッシャブルゾーンとして機能する。すなわち、バッテリーケース10の下方から物体が衝突した場合、放熱部116であるフィンが変形することによって衝撃を吸収し、バッテリー15に掛かる衝撃を緩和する。したがって、バッテリーケース10の下側から物体が衝突した場合に、バッテリー15を保護できる。
【0046】
(調温装置)
次に、調温装置20について説明する。調温装置20は、本実施形態に係るバッテリーケース10に収容されているバッテリー15の加熱および冷却ができるように構成されている。調温装置20はいわゆるヒートポンプ方式の装置であり、冷媒の蒸発と凝縮の際の潜熱を利用してバッテリー15を加熱および冷却できるように構成されている。図3は、調温装置20の構成例を示す図である。図3においては、バッテリー15の加熱動作時における冷媒の流れを実線の矢印により示し、バッテリー15の冷却動作時における冷媒の流れを破線の矢印により示す。図3に示すように、調温装置20は、本実施形態に係るバッテリーケース10と、制御装置21と、圧縮機22と、駆動力源23と、切替弁の例である四方弁24と、アキュムレータ26と、膨張弁ブリッジ回路25とを有している。
【0047】
バッテリーケース10は、上述のように第一冷媒通過部111および第二冷媒通過部113を有している。調温装置20においては、第一冷媒通過部111が第一熱交換部として機能し、第二冷媒通過部113が第二熱交換部として機能する。
【0048】
制御装置21は、調温装置20に含まれる機器を制御する。制御装置21は、CPUとROMとRAMとを有するコンピュータを有している。ROMには、調温装置20に含まれる各機器を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。CPUは、ROMにあらかじめ格納されているコンピュータプログラムを読み出し、RAMに展開して実行する。これにより、調温装置20に含まれる各機器が制御され(すなわち、調温装置20の制御が実現され)、調温装置20によるバッテリー15の温度調節が実現する。
【0049】
圧縮機22は、駆動力源23が出力する駆動力によって作動するように構成されている。圧縮機22は、冷媒吸入口221および冷媒吐出口222を備えており、冷媒吸入口221から吸入した冷媒を圧縮して冷媒吐出口222から吐出するように構成されている。駆動力源23には電動モータが適用できる。なお、圧縮機22および駆動力源23の構成は特に限定されるものではなく、公知の各種の構成が適用できる。
【0050】
四方弁24は、第一ポート241、第二ポート242、第三ポート243、および第四ポート244の4つのポートを備えている。第一ポート241は、圧縮機吐出口経路27を介して圧縮機22の冷媒吐出口222と接続されている。第二ポート242は、第一接続経路28を介してバッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112の一方の端部(冷媒の出入口)に接続されている。第三ポート243は、第二接続経路29を介してバッテリーケース10の第二冷媒通過部113の冷媒経路114の一方の端部(冷媒の出入口)に接続されている。第四ポート244は、アキュムレータ26の冷媒入口261に接続されている。
【0051】
四方弁24は、第一の状態と第二の状態とを選択的に実現可能に構成されている。第一の状態は、第一ポート241と第二ポート242が連通するとともに、第三ポート243と第四ポート244とが連通する状態である。第二の状態は、第一ポート241と第三ポート243とが連通するとともに、第二ポート242と第四ポート244とが連通する状態である。四方弁24は、制御装置21によって、バッテリー15を加熱する場合には第一の状態にされ、バッテリー15を冷却する場合には第二の状態にされる。
【0052】
バッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112の他方の端部(四方弁24の第三ポート243と接続されている側とは反対側の冷媒の出入口)と、第二冷媒通過部113の冷媒経路114の他方の端部(四方弁24の第二ポート242に接続されている側とは反対側の冷媒の出入口)とは、中間接続経路30によって接続されている。この中間接続経路30上には膨張弁ブリッジ回路25が設けられている。膨張弁ブリッジ回路25は、所定の一方向に流れる冷媒を膨張させる膨張弁251と、この膨張弁251を流れる冷媒の方向を前記所定の一方向に規制するための4つの逆止弁252(一方向弁)を有する。なお、膨張弁ブリッジ回路25の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。要は、膨張弁ブリッジ回路25は、第一冷媒通過部111から第二冷媒通過部113に向かって冷媒が流れる場合および第二冷媒通過部113から第一冷媒通過部111に向かって冷媒が流れる場合のいずれにおいても、膨張弁251に冷媒が所定の一方向(冷媒を膨張させる方向に)に向かって流れるように構成されていればよい。
【0053】
アキュムレータ26は、冷媒入口261および冷媒出口262を有している。アキュムレータ26は、冷媒入口261から流入した冷媒(気液二相の冷媒)が気相の冷媒と液相の冷媒に分離され、気相の冷媒が冷媒出口262から流出するように構成されている。アキュムレータ26の冷媒入口261は、アキュムレータ入口経路31を介して四方弁24の第四ポート244と接続されている。アキュムレータ26の冷媒出口262は、圧縮機吸入口経路32を介して圧縮機22の冷媒吸入口221に接続されている。
【0054】
次に、調温装置20によるバッテリー15の加熱動作について説明する。バッテリー15の加熱動作時には、制御装置21は四方弁24を第一の状態に保持する。圧縮機22は、駆動力源23の駆動力によって作動すると、低温低圧の気相の冷媒を冷媒吸入口221から吸入して圧縮し、高温高圧の気相の冷媒を冷媒吐出口222から吐出する。冷媒吐出口222から吐出された冷媒は、圧縮機吐出口経路27を通過して四方弁24の第一ポート241に流入し、第二ポート242から流出し、第一接続経路28を通過してバッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112に流入する。そして、高温高圧の冷媒は、バッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112を通過している間に、バッテリーケース10に収容されているバッテリー15と熱交換して一部が凝縮(液化)する。このとき冷媒経路112を通過する冷媒が熱を放出することによりバッテリー15を加熱する。
【0055】
バッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112を通過した冷媒は、中間接続経路30上に設けられている膨張弁ブリッジ回路25の膨張弁251を通過することにより低圧化される。低圧化された冷媒は、バッテリーケース10の第二冷媒通過部113の冷媒経路114に流入する。そして、バッテリーケース10の第二冷媒通過部113の冷媒経路114に流入した冷媒は、バッテリーケース10の外部の空気と熱交換して蒸発(気化)する。このとき冷媒経路114を通過する冷媒が外部の空気の熱を奪う。気化した冷媒は、第二接続経路29を通過して四方弁24の第三ポート243に流入する。
【0056】
バッテリー15の加熱動作時には、四方弁24は第一の状態にされており、第三ポート243と第四ポート244とが連通している。このため、四方弁24の第三ポート243に流入した冷媒は、第四ポート244とアキュムレータ入口経路31とを通過し、アキュムレータ26の冷媒入口261に流入する。このように、アキュムレータ26には、バッテリーケース10から戻ってきた低温低圧の冷媒が流入する。
【0057】
アキュムレータ26に流入した冷媒は、気相の冷媒と液相の冷媒に分離される。そして、低温低圧の気相の冷媒は、圧縮機吸入口経路32を通過し、圧縮機22の冷媒吸入口221に流入する。このような冷媒の循環サイクルが繰り返されることにより、バッテリー15の加熱が継続される。
【0058】
次に、調温装置20によるバッテリー15の冷却動作について説明する。加熱動作時と同様に、圧縮機22の冷媒吐出口222から高温高圧の気相の冷媒が吐出され、吐出された冷媒は、圧縮機吐出口経路27を通過して四方弁24の第一ポート241に流入する。バッテリー15の冷却動作時には四方弁24は第二の状態(第一ポート241と第三ポート243が連通している状態)にされる。このため四方弁24の第一ポート241に流入した冷媒は、第三ポート243から流出し、第二接続経路29を通過してバッテリーケース10の第二冷媒通過部113の冷媒経路114に流入する。そして、冷媒は、バッテリーケース10の第二冷媒通過部113の冷媒経路114を通過する間に、バッテリーケース10の外部の空気と熱交換して一部が凝縮(液化)する。このとき冷媒経路114を通過する冷媒がバッテリーケース10の外部に熱を放出する。
【0059】
バッテリーケース10の第二冷媒通過部113の冷媒経路114を通過した冷媒は、中間接続経路30を通過してバッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112に流入する。中間接続経路30には膨張弁ブリッジ回路25が設けられており、冷媒は膨張弁ブリッジ回路25を通過することによって膨張する(低圧化される)。このため、バッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112には、蒸発しやすいように膨張した(低圧化された)冷媒が流入する。バッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112に流入した冷媒は、そこを通過する間にバッテリー15と熱交換して蒸発(気化)する。このとき冷媒経路112を通過する冷媒がバッテリー15の熱を奪うことにより、バッテリー15が冷却される。バッテリーケース10の第一冷媒通過部111の冷媒経路112を通過した冷媒は、第一接続経路28を通過して四方弁24の第二ポート242に流入する。
【0060】
バッテリー15の冷却動作時には、四方弁24は第二の状態にされており、第二ポート242と第四ポート244とが連通している。このため、四方弁24の第二ポート242に流入した冷媒は第四ポート244から流出し、アキュムレータ入口経路31を通過してアキュムレータ26の冷媒入口261に流入する。このように、アキュムレータ入口経路31には、バッテリー15の加熱運転時と同様に、バッテリーケース10から戻ってきた低温低圧の冷媒が流れる。そして、バッテリー15の加熱運転時と同様に、アキュムレータ26において冷媒が気液分離され、低温低圧の気相の冷媒が圧縮機吸入口経路32を介して圧縮機22に流入する。このような冷媒の循環サイクルが繰り返されることにより、バッテリー15の冷却が継続される。
【0061】
このように、バッテリーケース10に設けられている第一冷媒通過部111においてバッテリー15と熱交換され、第二冷媒通過部113においてバッテリーケース10の外部の空気と熱交換される。したがって、別個独立した熱交換器が不要であるから、調温装置20の小型化を図ることができる。また、バッテリーケース10においてバッテリー15と冷媒との熱交換および外気と冷媒との熱交換を完結させることができるから、キャビン用の空気調和機の冷媒と熱交換させなくてもよい。このため、キャビン用の空気調和機の動作の影響を受けることなく、バッテリー15を適切な温度に調節できる。また、バッテリー15の加熱に冷媒を用いる構成であるため、例えば電熱ヒータを用いる構成と比較して加熱時の電力消費量を低減できる。
【0062】
なお、調温装置20に上記構成を有するバッテリーケース10が適用される構成であると、調温装置20は上記バッテリーケース10が有する効果と同様の効果を有する。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
例えば、前記実施形態では、カバー12が下側が開口する箱状の形状を有し、ロアケース11が板状の形状を有する構成を示したが、カバー12が板状であり、ロアケース11が上側が開口する箱状の形状を有していてもよい。また、カバー12が下側が開口する箱状の形状を有し、ロアケース11が上側が開口する箱状の形状を有していてもよい。これらの場合には、ロアケース11の底部が、第一冷媒通過部111および第二冷媒通過部113を有していればよい。
【0065】
また、前記実施形態では、バッテリーケース10が上下方向視において略四辺形である例を示したが、バッテリーケース10の形状は特に限定されるものではない。バッテリーケース10の形状は、バッテリーケース10の設置スペースの形状に応じて適宜設定される。
【符号の説明】
【0066】
10…バッテリーケース、11…ロアケース、111…ロアケースの第一冷媒通過部、112…ロアケースの第一冷媒通過部の冷媒経路、113…ロアケースの第二冷媒通過部、114…ロアケースの第二冷媒通過部の冷媒経路、115…断熱部、116…放熱部、15…バッテリー、20…車両用バッテリー温度調節装置、22…圧縮機、24…四方弁

図1
図2
図3