(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240910BHJP
A61M 25/092 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M25/092 500
(21)【出願番号】P 2020057773
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山口 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/195162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内に挿入して用いられる医療機器であって、
管状本体と、
前記管状本体の先端部に設けられている筒状の先端固定部材と、
前記管状本体に沿って設けられているサブルーメンと、
前記サブルーメンに摺動可能に挿通されている操作線と、
前記操作線の先端部を前記先端固定部材に対して固定している固定部と、
を備え、
前記固定部の少なくとも一部分は、前記先端固定部材の径方向において当該先端固定部材の外周面と内周面との間に配置されており、且つ、前記固定部の少なくとも一部分が前記先端固定部材の後端縁よりも遠位側に配置されて
おり、
前記先端固定部材は、嵌合凹部を有し、
前記固定部は、前記操作線の先端部に設けられていて前記嵌合凹部に対して嵌合している嵌合部を有し、
前記先端固定部材の先端側から視た前記嵌合部の形状は、円弧状であり、
前記嵌合部が前記嵌合凹部に対して嵌合している状態において、前記先端固定部材の内周面を含む仮想的な円筒面上に、前記嵌合部の内周面が配置されているとともに、前記先端固定部材の外周面を含む仮想的な円筒面上に、前記嵌合部の外周面が配置されている医療機器。
【請求項2】
前記嵌合凹部は、前記先端固定部材の基端側に向けて開放している請求項
1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記嵌合凹部は、第1領域と、前記第1領域よりも後端側に位置しているとともに前記第1領域よりも前記先端固定部材の周方向において幅狭に形成されている第2領域と、を含み、
前記嵌合部は、前記第1領域に嵌合している第1部分と、前記第2領域に配置されている第2部分と、を含む請求項
1又は
2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記嵌合部の厚み寸法は、前記操作線の直径と同等である請求項
1から
3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記嵌合部は、前記操作線の前記先端部を挟持している挟持部を有する請求項
4に記載の医療機器。
【請求項6】
前記固定部は、前記操作線の先端部を内包する状態で、金属材料又は樹脂材料により成形されており、前記操作線の先端部と一体化されている請求項1から
4のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項7】
血管内に挿入して用いられる医療機器であって、
管状本体と、
前記管状本体の先端部に設けられている筒状の先端固定部材と、
前記管状本体に沿って設けられているサブルーメンと、
前記サブルーメンに摺動可能に挿通されている操作線と、
前記操作線の先端部を前記先端固定部材に対して固定している固定部と、
を備え、
前記固定部の少なくとも一部分は、前記先端固定部材の径方向において当該先端固定部材の外周面と内周面との間に配置されており、且つ、前記固定部の少なくとも一部分が前記先端固定部材の後端縁よりも遠位側に配置されており、
前記操作線は、
複数本の素線が撚り合わされることによって構成されている撚線部と、
前記撚線部の遠位端から1本又は2本ずつ以上の前記素線が複数方向に分枝している複数の分枝部と、
を含み、
前記複数の分枝部の各々が前記固定部によって前記先端固定部材に対して固定されてい
る医療機器。
【請求項8】
前記固定部は、前記複数の分枝部を内包する状態で、金属材料又は樹脂材料により成形されており、前記複数の分枝部と一体化されている請求項
7に記載の医療機器。
【請求項9】
前記固定部が前記先端固定部材に対して接合されている請求項
6又は
8に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内に挿入して用いられる医療機器としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1の医療機器(同文献には、カテーテルと記載)は、長尺の管状本体(同文献には、カテーテルチューブと記載)と、管状本体の遠位部を屈曲させる操作部と、を備えて構成されている。
管状本体は、メインルーメンと、サブルーメン(同文献には、ワイヤルーメンと記載)と、管状本体の先端部に設けられている先端固定部材(同文献には、プルリングと記載)と、先端固定部材の内周面に固定されている操作線(同文献には、操作ワイヤと記載)と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者等の検討によれば、特許文献1の技術は、管状本体10の外径をより細径化する観点で、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、管状本体の外径をより細径化することが可能な構造の医療機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、血管内に挿入して用いられる医療機器であって、
管状本体と、
前記管状本体の先端部に設けられている筒状の先端固定部材と、
前記管状本体に沿って設けられているサブルーメンと、
前記サブルーメンに摺動可能に挿通されている操作線と、
前記操作線の先端部を前記先端固定部材に対して固定している固定部と、
を備え、
前記固定部の少なくとも一部分は、前記先端固定部材の径方向において当該先端固定部材の外周面と内周面との間に配置されており、且つ、前記固定部の少なくとも一部分が前記先端固定部材の後端縁よりも遠位側に配置されており、
前記先端固定部材は、嵌合凹部を有し、
前記固定部は、前記操作線の先端部に設けられていて前記嵌合凹部に対して嵌合している嵌合部を有し、
前記先端固定部材の先端側から視た前記嵌合部の形状は、円弧状であり、
前記嵌合部が前記嵌合凹部に対して嵌合している状態において、前記先端固定部材の内周面を含む仮想的な円筒面上に、前記嵌合部の内周面が配置されているとともに、前記先端固定部材の外周面を含む仮想的な円筒面上に、前記嵌合部の外周面が配置されている医療機器が提供される。
また、本発明によれば、血管内に挿入して用いられる医療機器であって、
管状本体と、
前記管状本体の先端部に設けられている筒状の先端固定部材と、
前記管状本体に沿って設けられているサブルーメンと、
前記サブルーメンに摺動可能に挿通されている操作線と、
前記操作線の先端部を前記先端固定部材に対して固定している固定部と、
を備え、
前記固定部の少なくとも一部分は、前記先端固定部材の径方向において当該先端固定部材の外周面と内周面との間に配置されており、且つ、前記固定部の少なくとも一部分が前記先端固定部材の後端縁よりも遠位側に配置されており、
前記操作線は、
複数本の素線が撚り合わされることによって構成されている撚線部と、
前記撚線部の遠位端から1本又は2本ずつ以上の前記素線が複数方向に分枝している複数の分枝部と、
を含み、
前記複数の分枝部の各々が前記固定部によって前記先端固定部材に対して固定されている医療機器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、管状本体の外径をより細径化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は第1実施形態に係る医療機器の先端固定部材周辺の構造を示す模式的な斜視図であり、このうち
図1(a)は操作線の先端部が先端固定部材に固定される前の状態を示す図であり、
図1(b)は操作線の先端部が先端固定部材に固定されている状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る医療機器における管状本体の先端部を示す模式的な側断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は第1実施形態に係る医療機器の管状本体の先端部を示す模式的な横断面図であり、このうち
図3(a)は
図2のA-A線に沿った断面図、
図3(b)は
図2のB―B線に沿った断面図である。
【
図4】
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)は第1実施形態に係る医療機器の全体構図を示す模式図であり、このうち
図4(a)はホイール操作部がいずれの方向にも操作されていない状態を示す図、
図4(b)はホイール操作部を一方向に操作した状態を示す図、
図4(c)はホイール操作部を他方向に操作した状態を示す図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は第2実施形態に係る医療機器の先端固定部材周辺の構造を示す模式的な斜視図であり、このうち
図5(a)は嵌合部が嵌合凹部に対して嵌合する前の状態を示す図、
図5(b)は嵌合部が嵌合凹部に対して嵌合している状態を示す図である。
【
図6】
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)は第3実施形態に係る先端固定部材周辺の構造を示す模式的な図であり、このうち
図6(a)は挟持部を含む嵌合部と操作線の先端部とを示す側面図であり、
図6(b)は挟持部が操作線の先端部を挟持している状態を示す側面図であり、
図6(c)は嵌合部が嵌合凹部に対して嵌合している状態を示す斜視図である。
【
図7】第4実施形態に係る医療機器の先端固定部材周辺の構造を示す模式的な斜視図である。
【
図8】第4実施形態の変形例に係る医療機器の先端固定部材周辺の構造を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、
図1(a)から
図7を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
また、以下において、医療機器100の遠位側を先端側又は前側、医療機器100の近位側を基端側又は後側と称する場合がある。
また、本発明の医療機器100各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要は無く、一つの構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、医療機器100の各部の位置関係は、特に断りが無い限り、医療機器100の各部が相互に組み付けられて医療機器100が作製された状態での位置関係を説明したものである。
また、以下において、管状本体10の軸方向を単に軸方向と称したり、管状本体10の径方向を単に径方向と称したりする場合がある。
【0010】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1(a)から
図4(c)を用いて第1実施形態を説明する。
なお、
図1(a)及び
図1(b)において、管状本体10の図示を省略しており、先端固定部材20と操作線30の先端部30aを図示している。また、
図2は、
図3(a)のA-A線に沿った側断面図である。
【0011】
本実施形態に係る医療機器100は、血管内に挿入して用いられる。
医療機器100は、管状本体10(
図2、
図3等)と、管状本体10の先端部10a(
図2、
図3等)に設けられている筒状の先端固定部材20(
図1(a)、
図2等)と、管状本体10に沿って設けられているサブルーメン16(
図2、
図3等)と、サブルーメン16に摺動可能に挿通されている操作線30(
図1(a)、
図2等)と、操作線30の先端部30aを先端固定部材20に対して固定している固定部40(
図1(b)等)と、を備えている。
固定部40の少なくとも一部分は、先端固定部材20の径方向において先端固定部材20の外周面21と内周面22との間に配置されており、且つ、固定部40の少なくとも一部分が先端固定部材20の後端縁24(近位端)(
図1(a)、
図1(b))よりも遠位側に配置されている。
【0012】
本実施形態によれば、固定部40は、先端固定部材20の外周面21と内周面22との間に配置されているため、固定部40が先端固定部材20の外周面21又は内周面22に配置されている場合と比べて、管状本体10の外径を容易に細径化することができる。
【0013】
本実施形態の場合、医療機器100は、一例として、生体管腔に薬液等の液体を供給するために用いられるカテーテルである。後述の操作部60に対する操作により管状本体10の遠位部DE(
図4(a)等)を屈曲させて医療機器100(カテーテル)を一方向又は他方向に選択的に指向させることが可能である。
【0014】
管状本体10は、長尺な管状に形成されている。例えば、管状本体10の内径及び外径は軸方向における位置にかかわらず一定であり、したがって、管状本体10の肉厚は軸方向における位置にかかわらず一定である。ただし、管状本体10の外径や内径は、基端側に向けて徐々に又は段階的に大きくなっていてもよい。
図2及び
図3(b)に示すように、管状本体10は、例えば、メインルーメン11と、内層12と、内層12の周囲に設けられた外層13と、を備えている。内層12の内部空間が、メインルーメン11を構成している。すなわち、内層12の内壁面が、メインルーメン11を画定している。
メインルーメン11を中心として、管状本体10の内径側から順に内層12と、外層13と、が積層されて管状本体10は構成されている。よって、管状本体10の肉厚は、内層12の肉厚と、外層13の肉厚と、の合計値である。なお、外層の表面には親水層(不図示)が形成されていてもよい。
【0015】
内層12は、管状本体10の最内層であり、例えば、肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。内層12は、管状本体10の遠位端と近位端との両端において開口しており、内層12の内径、すなわちメインルーメン11の直径は、管状本体10の開口幅である。
内層12は、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマー樹脂により構成されている。フッ素系の熱可塑性ポリマー材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などとすることができる。内層12をこのようなフッ素系ポリマー材料で構成することにより、メインルーメン11を通じて薬液等を供給する際のデリバリー性が良好となる。または、メインルーメン11にガイドワイヤなどを挿通する際の摺動抵抗が低減される。
【0016】
メインルーメン11には、例えば、生体管腔に放出する薬液等を流通させることが可能である。
メインルーメン11の横断面形状は、特に限定されないが、本実施形態では円形である。メインルーメン11の内径及び外径は、管状本体10の軸心方向における位置にかかわらず均一でもよく、または管状本体10の軸心方向の位置に応じて異なっていてもよい。例えば、管状本体10の一部又は全部の長さ領域において、先端から基端に向かってメインルーメン11の直径が連続的に拡大しているテーパ状に形成されていてもよい。
【0017】
外層13は管状本体10の最外層である。例えば、管状本体10の肉厚の大部分は、外層の肉厚によって占められている。外層13は、例えば、その肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。
外層13には、例えば、熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。この熱可塑性ポリマー材料は、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)などのナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などであることが挙げることができる。
外層13には無機フィラーを混合してもよい。無機フィラーとしては、硫酸バリウムや次炭酸ビスマスなどの造影剤を例示することができる。外層13に造影剤を混合することにより、体腔内における管状本体10のX線造影性を向上することができる。
【0018】
図2に示すように、外層13は、例えば、内層12の外周面に沿って軸方向に延在しているサブルーメンチューブ15と、円筒状の先端固定部材20と、を内包している。より詳細には、サブルーメンチューブ15の直径は外層13の厚み内に収まって配置されている。また、先端固定部材20は、外層13と同軸に配置されているとともに、先端固定部材20の内径よりも外層13の内径の方が小さく、先端固定部材20の外径よりも外層13の外径の方が大きい。
【0019】
サブルーメンチューブ15は、長尺な中空管状の部材であり、サブルーメンチューブ15の内部空間が、上述のサブルーメン16を構成している。すなわち、サブルーメンチューブ15の内壁面が、サブルーメン16を画定している。上述のように、サブルーメン16には操作線30が挿通されている。すなわち、サブルーメンチューブ15に操作線30が挿通されている。
サブルーメンチューブ15の内径及び外径は、例えば、軸方向における位置にかかわらず一定であり、したがってサブルーメンチューブ15の肉厚は軸方向における位置にかかわらず一定である。
サブルーメンチューブ15の内径は、操作線30の外径よりも大きい。
【0020】
サブルーメンチューブ15は、例えば、熱可塑性ポリマー材料により構成されている。熱可塑性ポリマー材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又は四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などの低摩擦な樹脂材料などとすることができる。
なお、サブルーメンチューブ15は、外層13よりも曲げ剛性率及び引張弾性率が高い材料によって構成されていることが好ましい。
【0021】
また、サブルーメンチューブ15の外周面には、例えば、金属ナトリウム処理又はプラズマ処理などのエッチング処理が施されていることも好ましい。これにより、サブルーメンチューブ15と外層13との密着性を向上させることができる。
【0022】
図2及び
図3(b)に示すように、サブルーメンチューブ15の軸方向は、管状本体10の軸方向に沿って配置されている。また、サブルーメンチューブ15は、先端固定部材20よりも基端側に配置されている。より詳細には、サブルーメンチューブ15の先端は、先端固定部材20の後端縁24よりも基端側に配置されている。
【0023】
本実施形態の場合、医療機器100は、2本のサブルーメンチューブ15を備えている。したがって、医療機器100は、2つのサブルーメン16を備えている。
2本のサブルーメンチューブ15は、内層12の周囲において互いに180度対向して配置されている。つまり、2つのサブルーメン16は、内層12の周囲において互いに180度対向して配置されている。
ただし、2本のサブルーメンチューブ15(2つのサブルーメン16)は、管状本体10の軸心を基準線として、内層12の周囲において互いに非対称に配置されていてもよい。
【0024】
医療機器100は、各サブルーメンチューブ15の数と対応する本数(本実施形態の場合、2本)の操作線30を備えている。
図2及び
図3(b)に示すように、2本の操作線30は、それぞれ対応するサブルーメンチューブ15の内腔(サブルーメン16)に挿通されている。したがって、2本の操作線30も、内層12の周囲において互いに180度対向して配置されている。
操作線30は、サブルーメンチューブ15に対して摺動可能である。
操作線30の先端部30aは、管状本体10の先端部10a(遠位部DE)において先端固定部材20に固定されている。操作線30を基端側に牽引することで、管状本体10の軸心に対して偏心した位置に引張力が付与されるため、管状本体10は屈曲する。
【0025】
本実施形態の場合、操作線30は、例えば、複数本の素線を互いに撚り合わせることにより構成された撚り線である。操作線30を構成する素線の本数は特に限定されないが、3本以上であることが好ましい。本実施形態の場合、操作線30は、7本の素線を互いに撚り合わせた撚り線である。
【0026】
素線又は操作線30は、特に限定されないが、例えば、低炭素鋼(ピアノ線)、ステンレス鋼(SUS)、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタン若しくはチタン合金、又はタングステンなどの金属線であることが挙げられる。このほか、操作線30は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はボロン繊維などの高分子ファイバーであってもよい。
【0027】
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示すように、先端固定部材20は、例えば、前後方向を軸方向とする円筒状の筒部材である。
例えば、先端固定部材20の内径及び外径は軸方向における位置にかかわらず一定であり、先端固定部材20の肉厚は軸方向における位置にかかわらず一定である。
【0028】
先端固定部材20は、一例として、X線等の放射線が不透過の金属材料によって、その全体が一体形成されている。ただし、先端固定部材20を構成する材料は特に限定されず、例えば、先端固定部材20は、樹脂などのX線透過性の材料によって構成されていてもよい。
【0029】
本実施形態の場合、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、先端固定部材20には、基端側に向けて開放している切欠形状部25が形成されている。
切欠形状部25は、例えば、先端固定部材20の後端縁24から先端側に向けて、軸方向に沿って直線状に延在している。径方向に視た切欠形状部25の先端部の形状は、一例として、先端側に向けて凸の円弧状となっている。
切欠形状部25の先端固定部材20の周方向における幅寸法は、操作線30の直径よりも若干大きい寸法に設定されている。
本実施形態のように医療機器100が操作線30を2本備えている場合、切欠形状部25は、2つ形成されている。より詳細には、2つの切欠形状部25の各々は、周方向において、各サブルーメンチューブ15及び各操作線30と対応した位置に形成されている。よって、2つの切欠形状部25は、先端固定部材20の周方向において、互いに180度対向して配置されている。
【0030】
2本の操作線30の各々の先端部30aは、対応する切欠形状部25の内部に配置されている。すなわち、一方の操作線30の先端部30aは、一方の切欠形状部25の内部に配置されており、他方の操作線30の先端部30aは、他方の切欠形状部25の内部に配置されている。この状態において、操作線30の先端部30aの長手方向は、切欠形状部25の長手方向に沿って配置されており、操作線30の最先端は、切欠形状部25の先端部に配置されている。
【0031】
上述のように、医療機器100は、操作線30の先端部30aを先端固定部材20に対して固定している固定部40を備えている(
図1(b)及び
図3(a)参照)。
本実施形態の場合、固定部40は、一例として、半田である。ただし、固定部40は、特に限定されず、接着剤等であってもよい。
【0032】
固定部40は、例えば、各切欠形状部25の内周面と、先端部30aの周面において、各切欠形状部25の内周面に沿うように切欠形状部25と先端部30aとの間に介在しており、これらを相互に接合している。
固定部40は、少なくとも切欠形状部25の後端縁よりも遠位側に配置されており、好ましくは、固定部40は、切欠形状部25の内周面の全面に沿って配置されている。これにより、操作線30の先端部30aと固定部40との接合面の面積を十分に確保することができるため、操作線30の先端部30aを先端固定部材20に対して良好に固定することができる。
【0033】
ここで、本実施形態の場合、先端固定部材20の肉厚は、一例として、操作線30の直径と同等の寸法に設定されている。また、先端部30aの軸心は、先端固定部材20の周方向において、先端固定部材20の厚み方向における中央と同等の位置に配置されている。すなわち、先端部30aは、先端固定部材20の厚み内に収まるように、先端固定部材20に対して固定されている。このため、管状本体10の外径を容易に細径化することができる。しかも、先端固定部材20の配置領域において、メインルーメン11の内径を十分に確保でき、管状本体10の先端の開口寸法も十分に確保できる。
【0034】
更に、本実施形態の場合、操作線30の先端部30aが先端固定部材20の外周面21又は内周面22に固定されている場合と比べて、外層13の肉厚を大きくすることなく先端固定部材20の肉厚をより大きくすることができる。これにより、例えば、先端固定部材20がX線不透過の材料によって構成されている場合において、先端固定部材20のX線視認性を向上させることができる。
【0035】
なお、例えば、外層13は、内層12の周囲に巻回又は編組されているワイヤ補強層(不図示)を含んでいてもよい。
ワイヤ補強層は、例えば、管状本体10において、操作線30よりも径方向内方に設けられている。
更に、例えば、外層13は、サブルーメンチューブ15の位置ずれを規制するための保持ワイヤ(不図示)を含んでいてもよい。保持ワイヤは、例えば、サブルーメン16の周囲にコイル巻回又はメッシュ状に編組して形成されている。
【0036】
図4(a)に示すように、医療機器100は、医療機器100の基端部に設けられた操作部60を有している。操作部60は操作線30の基端部と接続されている。術者は、操作部60を操作することにより、管状本体10の遠位部DEの屈曲操作を行うことができる。
【0037】
本実施形態の場合、操作部60は、術者に手で把持される本体ケース62と、本体ケース62に対して回転可能に設けられているホイール操作部61と、を備えている。管状本体10の基端は、本体ケース62の内部に導入されている。
【0038】
サブルーメンチューブ15は、本体ケース62の前端部の内部において管状本体10から分枝している。サブルーメンチューブ15から引き出された操作線30の基端部は、ホイール操作部61に対して、直接的又は間接的に連結されている。
【0039】
ホイール操作部61を所定の方向に回転させることにより、2本の操作線30のうち一方を基端側且つ軸方向に牽引し張力を与え、他方を緩めることができる。これにより、管状本体10の遠位部DEを屈曲させることができる。
【0040】
より詳細には、
図4(b)に示すように、ホイール操作部61を一方向に回転させると、管状本体10の軸心を基準として、一方の操作線30が挿通されているサブルーメンチューブ15側に、管状本体10の遠位部DEが屈曲する。
また、
図4(c)に示すように、ホイール操作部61を他方向に回転させると、管状本体10の軸心を基準として、他方の操作線30が挿通されているサブルーメンチューブ15側に、管状本体10の遠位部DEが屈曲する。
このように、操作部60のホイール操作部61に対する操作によって、2本の操作線30のいずれかを選択的に牽引することにより、管状本体10の遠位部DEを、互いに同一平面に含まれる第1又は第2の方向に選択的に屈曲させることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、
図5(a)及び
図5(b)を用いて第2実施形態を説明する。
なお、
図5(a)及び
図5(b)において、医療機器100における管状本体10の先端部10aの構成のうち、先端固定部材20と、固定部40(嵌合部41)と、操作線30の先端部30aと、を抜粋して図示している。また、
図5(a)及び
図5(b)において、一方の先端部30a及び固定部40(嵌合部41)を図示しており、他方の先端部30a及び固定部40(嵌合部41)の図示を省略している。
以下の説明において、各構成要素の位置関係をわかりやすく説明するために、先端固定部材20の先端側を前方向、基端側を後方向と称する。また、先端固定部材20の周方向を単に周方向と称する場合がある。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に医療機器100と同様に構成されている。
【0042】
本実施形態の場合、先端固定部材20は、嵌合凹部26を有し、固定部40は、操作線30の先端部30aに設けられていて嵌合凹部26に対して嵌合している嵌合部41を有する。すなわち、本実施形態の場合、操作線30の先端部30aは、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合することにより、先端固定部材20に対して固定されている。
【0043】
嵌合凹部26は、先端固定部材20の基端側に向けて開放している。すなわち、嵌合凹部26は、先端固定部材20の後端縁24の一部分から先端側に向けて窪んで形成されており、嵌合凹部26は、先端固定部材20の外周面21と内周面22とを貫通している。
【0044】
図5(b)に示すように、嵌合部41は、嵌合凹部26と対応した形状に形成されている。ただし、嵌合部41の外形寸法は、嵌合凹部26の外形寸法よりも若干小さい寸法に設定されており、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合されている状態において、嵌合部41の外周面と嵌合凹部26の内周面との間には僅かな間隙が形成されていることが好ましい一例である。当該間隙に半田や接着剤などの接合剤を充填することによって、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合している状態をより良好に維持することができる。なお、半田などの接着剤は、先端固定部材20の外周面21及び内周面22からはみ出さず、先端固定部材20の厚み内に収まっていることが好ましい。
また、嵌合部41の後端面は、先端固定部材20の軸方向に対して直交している面であることが好ましい。
【0045】
先端側(もしくは基端側)から視た嵌合部41の形状は、例えば、円弧状である。また、嵌合部41の肉厚は、例えば、先端固定部材20の肉厚と同等の寸法に設定されている。また、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合している状態において、例えば、先端固定部材20の内周面22を含む仮想的な円筒面上に、嵌合部41の内周面42が配置されているとともに、先端固定部材20の外周面21を含む仮想的な円筒面上に、嵌合部41の外周面43が配置されている。すなわち、嵌合部41と先端固定部材20との集合体は、外周面及び内周面が実質的に平滑(凹凸のない状態)な筒状の形状となっている。
ただし、嵌合部41と先端固定部材20との集合体は、必ずしも外周面及び内周面が実質的に平滑(凹凸のない状態)な筒状の形状となっていなくてもよい。
また、嵌合部41の後端面は、先端固定部材20の後端面と同一平面上に配置されていることが好ましい。
【0046】
嵌合部41は、一例として、先端固定部材20と同様に、X線等の放射線が不透過の金属材料によって、その全体が一体形成されている。ただし、嵌合部41及び先端固定部材20を構成する材料は特に限定されない。すなわち、例えば、先端固定部材20は、樹脂などのX線透過性の材料によって構成されており、嵌合部41はX線不透過の材料によって構成されていてもよいし、その反対に、先端固定部材20は、X線不透過の材料によって構成されており、嵌合部41はX線透過性の材料によって構成されていてもよい。また、嵌合部41及び先端固定部材20が、それぞれX線透過性の材料によって構成されていてもよい。
【0047】
本実施形態の場合、嵌合凹部26は、第1領域27と、第1領域27よりも後端側(近位側)に位置しているとともに第1領域27よりも先端固定部材20の周方向において幅狭に形成されている第2領域28と、を含む。嵌合凹部26の前部が第1領域27を構成しており、嵌合凹部26の残部(後部)が第2領域28を構成している。
本実施形態の場合、第1領域27は、周方向における一方向へ、第2領域28よりも張り出した形状である。ただし、第1領域27は、周方向における双方向へ、第2領域28よりも張り出していてもよい。
【0048】
本実施形態の場合、嵌合部41は、第1領域27に嵌合している第1部分46と、第2領域28に配置されている第2部分47と、を含む。なお、第2部分47は、第2領域28に嵌合していることも好ましい。
嵌合部41の前部が第1部分46の前部を構成しており、嵌合部41の残部(後部)が第2部分47を構成している。
図5(b)に示すように、第1部分46は、第1領域27と対応した形状に形成されており、第2部分47は、第2領域28と対応した形状に形成されている。なお、対応した形状としては、同形状であるか、一回り小さい相似形であることが好ましい。
よって、第2部分47は、第1部分46よりも周方向において幅狭に形成されている。また、第1部分46は、周方向における一方向へ、第2部分47よりも張り出した形状である。ただし、第1領域27が、周方向における双方向へ、第2領域28よりも張り出している場合、第1部分46も、周方向における双方向へ、第2部分47よりも張り出していることが好ましい。
すなわち、第1部分46は、後端面46a(後方を向く面)を有している。
ここで、第1部分46の後端面46aは、先端固定部材20の軸方向に対して直交していることが好ましい。また、第1領域27の内周面のうち、第1部分46の後端面46aと対向している面(以下、対向面27aとする)も、先端固定部材20の軸方向に対して直交していることが好ましい。第1部分46の後端面46a及び第1領域27の対向面27aが、それぞれ先端固定部材20の軸方向に対して直交しているため、操作線30が軸方向に牽引される際に、嵌合部41が先端固定部材20(嵌合凹部26)から後方に脱落してしまうことを抑制できる。
なお、後端面46a及び対向面27aが、それぞれ先端固定部材20の軸方向に対して直交している例を説明したが、本発明はこの例に限らず、後端面46a及び対向面27aは、それぞれ先端固定部材20の周方向に対して傾斜した面であってもよい。この場合、後端面46aの傾斜角度(後端面46aに連接している第1部分46の外側面46bに対する角度)は、45度以上90度以下であることが好ましく、対向面27aの傾斜角度(対向面27aに連接している第1領域27の内側面27bに対する角度)は、後端面46aの当該傾斜角度と同等の角度であることが好ましい。
【0049】
径方向に視た第1領域27の形状は、例えば、略矩形状である。径方向に視た第2領域28も、例えば、略矩形状である。周方向における第1領域27の幅寸法は、第1領域27の前後幅寸法よりも大きいことが好ましく、周方向における第2領域28の幅寸法は、第2領域28の前後幅寸法よりも大きいことが好ましい。
【0050】
同様に、径方向に視た第1部分46の形状は、例えば、略矩形状である。径方向に視た第2部分47も、例えば、略矩形状である。周方向における第1部分46の幅寸法は、第1部分46の前後幅寸法よりも大きいことが好ましく、周方向における第2部分47の幅寸法は、第2部分47の前後幅寸法よりも大きいことが好ましい。
【0051】
本実施形態の場合、嵌合部41は、操作線30の先端部30aに対して固定されている。嵌合部41は、例えば、先端部30aに対して半田や接着剤などの接合剤によって固着されている。
操作線30の先端部30aは、例えば、操作線30の最先端が基端側に向けて屈曲したJ字形状に形成されている(
図5(a)及び
図5(b)参照)。
また、例えば、操作線30の先端部30aが嵌合部41に固定されている状態において、先端部30aの一部分は、嵌合部41の内周面42及び外周面43から露出している。
【0052】
なお、嵌合部41が操作線30の先端部30aに対して固定される手法は特に限定されず、先端部30aを、例えば、嵌合部41の内部に埋め込んだ状態で固定してもよい。
より詳細には、固定部40(嵌合部41)は、操作線30の先端部30aを内包する状態で、金属材料又は樹脂材料により成形されており、操作線30の先端部30aと一体化されていてもよい。この場合、固定部40が先端固定部材20に対して接合されていることが好ましい。より詳細には、嵌合部41の外周面と嵌合凹部26の内周面との間の間隙に、半田や接着剤等の接合剤が充填されており、嵌合部41の外周面は、嵌合凹部26の内周面に対して固着されていることが好ましい。
また、固定部40(嵌合部41)が先端部30aを内包している状態において、少なくとも先端部30aの一部分が固定部40に埋設されていればよく、例えば、先端部30aのその他の部分が固定部40から外部に露出していてもよい。
先端部30aを内包する状態で固定部40を成形する手法としては、特に限定されず、樹脂材料を用いて一体成形する手法や、金属部材を用いてダイカスト成形する手法などが挙げられる。
【0053】
ここで、嵌合部41の厚み寸法は、例えば、操作線30の直径と同等の寸法である。また、操作線30の先端部30aは、嵌合部41の厚み内に収まっている。したがって、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合している状態において、嵌合部41及び操作線30の直径がそれぞれ先端固定部材20の厚み内に収まった状態で、嵌合部41及び操作線30の各々は先端固定部材20に対して固定されている。これにより、管状本体10の外径をより容易に細径化することができる。
【0054】
〔第3実施形態〕
次に、
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)を用いて第3実施形態を説明する。
なお、
図6(a)及び
図6(b)において、医療機器100における管状本体10の先端部10aの構成のうち、嵌合部41と操作線30の先端部30aとを抜粋して示している。
図6(c)において、一方の先端部30a及び嵌合部41(嵌合凹部26)を図示しており、他方の先端部30a及び嵌合部41(嵌合凹部26)の図示を省略している。また、
図6(c)は、操作線30の先端部30aが嵌合部41の挟持部50によって挟持されている状態で、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合している状態を示している。
以下の説明は、特に断りが無い限り、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合している状態(
図6(c)の状態)での位置関係及び寸法関係を説明したものである。
本実施形態に係る医療機器は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100、又は第2実施形態に係る医療機器と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る医療機器100、又は第2実施形態に係る医療機器と同様に構成されている。
【0055】
図6(c)に示すように、本実施形態の場合、嵌合部41は、操作線30の先端部30aを挟持している挟持部50を有する。第1部分46が嵌合部41の前部を構成しており、挟持部50が嵌合部41の残部(後部)を構成している。
本実施形態の場合、嵌合部41は、第2部分47の代わりに挟持部50を備えている。第1部分46は、第1領域27に嵌合しており、挟持部50は、第2領域28に配置されている。なお、挟持部50は、第2領域28に嵌合していることも好ましい。
【0056】
本実施形態の場合、第1部分46は、周方向における双方向に向けて挟持部50(第2部分47)よりも張り出している。ただし、第1部分46は、周方向における一方向に向けて挟持部50(第2部分47)よりも張り出していてもよい。
挟持部50は、例えば、第1部分46の後端面46aの周方向における中央部から基端側に向けて延出している。挟持部50は、例えば、前後方向に長尺な矩形状に形成されている。すなわち、本実施形態の場合、径方向に視た嵌合部41の形状は、略T字形状となっている。
上述の構成によれば、先端固定部材20において、第1部分46の後端面46a及び第1領域27の対向面27aが、それぞれ周方向における双方向に形成されるため、操作線30が基端側に牽引される際に、嵌合部41が後方に脱落してしまうことをより良好に抑制できる。
【0057】
図6(b)に示すように、挟持部50は、操作線30の先端部30aを挟持している一対の挟持片51、52を有する。
一対の挟持片51、52は、それぞれ軸方向に長尺に形成されており、周方向において互いに並んで配置されている。
一方の挟持片51において、他方の挟持片52と対向している面には、他方の挟持片52側に向けて突出している複数の凸部53が形成されている。一方の挟持片51は、例えば、2つの凸部53を有しており、一方の挟持片51の長手方向において所定間隔に配置されている。凸部53の先端部は、例えば、他方の挟持片52側に向けて凸の円弧状に形成されている。
他方の挟持片52において、一方の挟持片51と対向している面には、一方の挟持片51とは反対側に向けて凹んでいる複数の凹部54が、各凸部53と対向する位置に形成されている。各凹部54は、例えば、一方の挟持片51とは反対側に向けて円弧状に凹んだ形状に形成されている。
【0058】
挟持部50は、
図6(a)に示すように、曲げ加工によって、一方の挟持片51と他方の挟持片52とが相互に開いた状態から、
図6(b)に示すように一方の挟持片51と他方の挟持片52とが相互に閉じた状態へと変換可能となっている。
一方の挟持片51と他方の挟持片52との間に操作線30の先端部30aを配置した状態で、一方の挟持片51と他方の挟持片52とを閉じることよって、一方の挟持片51と他方の挟持片52とによって先端部30aを挟持し、先端部30aを嵌合部41に固定することができる。すなわち、挟持部50をかしめることによって、先端部30aは一方の挟持片51と他方の挟持片52とにより挟持された状態で挟持部50に固定されている。
また、挟持部50が先端部30aを挟持している状態において、操作線30の先端部30aは、一方の挟持片51と他方の挟持片52とによって押圧されているとともに、各凸部53によって対応する各凹部54の内部に圧入されている。よって、
図6(b)に示すように、挟持部50によって挟持されている操作線30の先端部30aの形状は、側面視において、例えば、略蛇行状となっている。先端部30aの最先端は、第1挟持片51と第2挟持片52との間隙の先端部に配置されていることが好ましい。
操作線30の先端部30aは、凸部53及び凹部54によって係止されているため、操作線30が基端側に牽引される際にも、操作線30の先端部30aが挟持部50によって挟持されている状態を良好に維持することができる。
なお、操作線30の先端部30aが挟持部50によって挟持されている状態において、操作線30の先端部30aと挟持部50との間の間隙に半田や接着剤などの接合剤(不図示)が充填されていてもよい。
【0059】
図6(c)に示すように、本実施形態における挟持部50は、
図6(b)の状態、すなわち挟持部50が操作線30の先端部30aを挟持している状態で、嵌合凹部26に嵌合されている。
より詳細には、第2実施形態と同様に、嵌合凹部26は、先端部30aを挟持している状態の挟持部50を含む嵌合部41に対応した形状に形成されている。
また、嵌合部41の外周面と嵌合凹部26の内周面との間には間隙が形成されている。当該間隙には、半田や接着剤などの接合剤が充填されており、嵌合部41を嵌合凹部26に対して固定していることが好ましい。
【0060】
本実施形態の場合も、挟持部50を含む嵌合部41の厚み寸法は、例えば、操作線30の直径と同等の寸法である。また、嵌合部41の肉厚は、先端固定部材20の肉厚と同等の寸法である。したがって、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合している状態において、操作線30の直径は、先端固定部材20の厚み内に収まっている。これにより、管状本体10の外径をより容易に細径化することができる。
【0061】
〔第4実施形態〕
次に、
図7を用いて第4実施形態を説明する。
なお、
図7において、一方の操作線30及び嵌合部41(嵌合凹部26)を図示しており、他方の操作線30及び嵌合部41(嵌合凹部26)の図示を省略している。
本実施形態に係る医療機器は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100、又は、第2及び第3実施形態に係る医療機器と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る医療機器100、又は第2及び第3実施形態に係る医療機器と同様に構成されている。
なお、本実施形態の場合も、第2及び第3実施形態と同様に、固定部40は、すなわち嵌合部41である。
【0062】
図7に示すように、操作線30は、例えば、複数本の素線が撚り合わされることによって構成されている撚線部35と、撚線部35の遠位端から1本又は2本ずつ以上の素線が複数方向に分枝している複数の分枝部36と、を含み、複数の分枝部36の各々が固定部40によって先端固定部材20に対して固定されている。
【0063】
本実施形態の場合、例えば、操作線30を構成する7本の素線のうち、3本の素線は周方向における一方向に向けて分枝しており、4本の素線は周方向における一方向に対する反対方向に向けて分枝している。よって、操作線30が有する分枝部36の数は2つである。ただし、本発明において、分枝部36の数、分枝している方向、及び、各分枝部36を構成する素線の数は、この例に限らない。
ここで、周方向における一方向に分枝している分枝部36を第1分枝部37、周方向における一方向に対する反対方向に分枝している分枝部36を第2分枝部38と称する。換言すると、第1分枝部37及び第2分枝部38は、それぞれ軸方向に対して直交する方向に分枝している。これにより、操作線30が基端側に牽引される際に、操作線30は先端固定部材20に対して固定されている状態を良好に維持することができる。
【0064】
図7に示すように、本実施形態の場合、嵌合凹部26は、第1領域27よりも先端側に位置しているとともに第1領域27よりも先端固定部材20の周方向において幅狭に形成されている第3領域29を更に含んでいる。
より詳細には、径方向に視た第3領域29の形状は、略矩形である。周方向における第3領域29の幅寸法は、周方向における第1領域27の幅寸法よりも小さく、周方向における第2領域28の幅寸法よりも大きい。
また、第1領域27は、例えば、第2領域28及び第3領域29よりも、周方向における双方向に向けて張り出している。
第1領域27の前端面は、例えば、軸方向に対して直交している。また、第3領域29の前端面は、例えば、軸方向に対して直交している。
【0065】
図7に示すように、本実施形態の場合、嵌合部41は、例えば、第1領域27と嵌合している第1部分46と、第3領域29と嵌合している第3部分48と、を含む。
第3部分48が、嵌合部41の前部を構成しており、第1部分46が、嵌合部41の残部(後部)を構成している。
より詳細には、第3部分48は、例えば、第1領域27と第3領域29とに亘って配置されている。第1部分46の全体は、第1領域27に配置されている。第2領域28には、例えば、第2部分47の代わりに、操作線30の撚線部35の先端部が配置されている。
本実施形態の場合も、嵌合凹部26は、嵌合部41に対応した形状に形成されている。より詳細には、嵌合凹部26における第1領域27から第3領域29にかけての部分は、嵌合部における第1部分46から第3部分48にかけての部分と対応した形状に形成されており、第2領域28は、操作線30の撚線部35の先端部と対応した形状に形成されている。また、第1領域27と第3領域29との集合体の外形寸法は、第1部分46と第3部分48との集合体の外形寸法よりも一回り大きい寸法に設定されている。よって、第1領域27及び第3領域29の内周面と第1部分46と第3部分48との外周面との間には、間隙が形成されている。
【0066】
図7に示すように、分枝部36は、第1領域27及び第3領域29の内周面と第1部分46と第3部分48との外周面との間の間隙と嵌合している。より詳細には、第1分枝部37と第2分枝部38とが、それぞれ対応する嵌合凹部26の内周面に沿って配置されている状態で、嵌合部41を嵌合凹部26に圧入することによって、嵌合部41が嵌合凹部26に対して固定される。この状態において、分枝部36は、嵌合凹部26の内周面と嵌合部41の外周面との間に挟み込まれている。こうして、操作線30の先端部30aが先端固定部材20に対して固定されている。第1分枝部37と第2分枝部38とは、それぞれ対応する嵌合部41の外周面に沿って配置されている。また、第1分枝部37及び第2分枝部38の各々の先端は、第3領域29の先端まで延びていることが好ましい。
撚線部35の先端部は第2領域28の内周面に沿って配置されている。
【0067】
本実施形態の場合、嵌合凹部26の内周面と、分枝部36及び撚線部35の先端部との間には、例えば、半田や接着剤等の接合剤が充填されており、操作線30の先端部30aは、嵌合凹部26の内周面に対して固着されている。なお、嵌合部41の外周面と、分枝部36及び撚線部35の先端部との間隙にも、半田や接着剤等の接合剤が充填されており、操作線30の先端部30aは、嵌合部41の外周面に対して固着されていることも好ましい。
【0068】
なお、第2実施形態と同様に、嵌合部41が操作線30の先端部30aに対して固定される手法は特に限定されず、先端部30aを、例えば、嵌合部41の内部に埋め込まれた状態で固定してもよい。
より詳細には、
図8に示すように、固定部40(嵌合部41)は、例えば、複数の分枝部36を内包する状態で、金属材料又は樹脂材料により成形されており、複数の分枝部36と一体化されていてもよい。この場合、固定部40が先端固定部材20に対して接合されていることが好ましい。より詳細には、例えば、嵌合部41の外周面と嵌合凹部26の内周面との間の間隙に、半田や接着剤等の接合剤が充填されており、嵌合部41の外周面は、嵌合凹部26の内周面に対して固着されていることが好ましい。
各分枝部36は、例えば、先端側に向けて放射状に広がっており、互いに等角度間隔で配置されている。また、各分枝部36の長さ寸法(延在方向における寸法)は、互いに等しい寸法に設定されている。
固定部40(嵌合部41)が複数の分枝部36を内包している状態において、少なくとも複数の分枝部36の一部分が固定部40に埋設されていればよく、例えば、複数の分枝部36のその他の部分が固定部40から外部に露出していてもよい。
複数の分枝部36を内包する状態で固定部40を成形する手法としては、特に限定されず、樹脂材料を用いて一体成形する手法や、金属部材を用いてダイカスト成形する手法などが挙げられる。
【0069】
本実施形態の場合も、嵌合部41の肉厚は、一例として、操作線30の直径と同等である。より詳細には、撚線部35の直径は嵌合部41の肉厚と同等であり、第1分枝部37の直径及び第2分枝部38の直径は、嵌合部41の肉厚よりも小さい。また、嵌合部41の肉厚は、先端固定部材20の肉厚と同等である。したがって、嵌合部41が嵌合凹部26に対して嵌合している状態において、操作線30は、先端固定部材20の厚み内に収まっている。よって、管状本体10の外径を容易に細径化することができる。
【0070】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0071】
例えば、第1~第3実施形態においては、操作線30が撚り線により構成されている例を説明したが、本発明はこの例に限らず、操作線30は、単一の線材により構成されていてもよい。
【0072】
例えば、上記においては、医療機器100は、2本のサブルーメンチューブ15を備えている例を説明したが、本発明はこの例に限らず、医療機器100は、3本又は4本のサブルーメンチューブ15を備えていてもよい。この場合、各サブルーメンチューブ15は、メインルーメン11の周囲において周方向等間隔で配置されることが好ましい。また、すべてのサブルーメンチューブ15にそれぞれ操作線30が挿通されていてもよいし、一部のサブルーメンチューブ15にそれぞれ操作線30が挿通されていてもよい。
【0073】
例えば、上記の第1実施形態において、管状本体10は、内層12及び外層13を備えている例を説明したが、本発明はこの例に限らず、管状本体10は、3つ以上の層が積層されることによって構成されていてもよい。
【0074】
また、上記の第1実施形態において、操作線30の先端部30aは、半田によって、先端固定部材20に対して固定されている例を説明したが、本発明はこの例に限らず、操作線30の先端部30aは、かしめ固定や、溶接などによって、先端固定部材20(切欠形状部25)に対して固定されていてもよい。
【0075】
また、上記の第2~4実施形態において、嵌合部41は、半田等の接着剤によって、嵌合凹部26に対して固定されている例を説明したが、本発明はこの例に限らず、嵌合部41は、かしめ固定や、溶接などによって、嵌合凹部26に対して固定されていてもよい。
【0076】
また、第1~第4実施形態においては、操作線30の直径が、先端固定部材20の肉厚と同等の寸法に設定されている例を説明したが、本発明はこの例に限らず、操作線30の直径と先端固定部材20の肉厚とは、互いに異なる寸法に設定されていてもよい。この場合、操作線30の直径が、先端固定部材20の肉厚よりも大きい寸法に設定されていてもよいし、先端固定部材20の肉厚が、操作線30の直径よりも大きい寸法に設定されていてもよい。
なお、操作線30の直径が先端固定部材20の肉厚よりも大きい寸法に設定されている場合、操作線30の直径は、先端固定部材20の肉厚の3倍以下であることが好ましい。
また、先端固定部材20の肉厚が操作線30の直径よりも大きい寸法に設定されている場合、先端固定部材20の肉厚は、操作線30の直径の1.5倍以下であることが好ましい。
【0077】
また、第2~第4実施形態においては、操作線30の直径が、嵌合部41の肉厚と同等の寸法に設定されている例を説明したが、本発明はこの例に限らず、操作線30の直径と嵌合部41の肉厚とは、互いに異なる寸法に設定されていてもよい。この場合、操作線30の直径が、嵌合部41の肉厚よりも大きい寸法に設定されていてもよいし、嵌合部41の肉厚が、操作線30の直径よりも大きい寸法に設定されていてもよい。
なお、操作線30の直径が嵌合部41の肉厚よりも大きい寸法に設定されている場合、操作線30の直径は、嵌合部41の肉厚の1.5倍以下であることが好ましい。
また、嵌合部41の肉厚が操作線30の直径よりも大きい寸法に設定されている場合、嵌合部41の肉厚は、操作線30の直径の1.5倍以下であることが好ましい。
【0078】
また、第2~第4実施形態においては、嵌合部41が、先端固定部材20の肉厚と同等の寸法に設定されている例を説明したが、本発明はこの例に限らず、嵌合部41の肉厚と先端固定部材20の肉厚とは、互いに異なる寸法に設定されていてもよい。この場合、嵌合部41の肉厚が、先端固定部材20の肉厚よりも大きい寸法に設定されていてもよいし、先端固定部材20の肉厚が、嵌合部41の肉厚よりも大きい寸法に設定されていてもよい。
なお、嵌合部41の肉厚が先端固定部材20の肉厚よりも大きい寸法に設定されている場合、嵌合部41の肉厚は、先端固定部材20の肉厚の3倍以下であることが好ましい。また、先端固定部材20の肉厚が嵌合部41の肉厚よりも大きい寸法に設定されている場合、先端固定部材20の肉厚は、嵌合部41の肉厚の1.5倍以下であることが好ましい。
【0079】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)血管内に挿入して用いられる医療機器であって、
管状本体と、
前記管状本体の先端部に設けられている筒状の先端固定部材と、
前記管状本体に沿って設けられているサブルーメンと、
前記サブルーメンに摺動可能に挿通されている操作線と、
前記操作線の先端部を前記先端固定部材に対して固定している固定部と、
を備え、
前記固定部の少なくとも一部分は、前記先端固定部材の径方向において当該先端固定部材の外周面と内周面との間に配置されており、且つ、前記固定部の少なくとも一部分が前記先端固定部材の後端縁よりも遠位側に配置されている医療機器。
(2)前記先端固定部材は、嵌合凹部を有し、
前記固定部は、前記操作線の先端部に設けられていて前記嵌合凹部に対して嵌合している嵌合部を有する(1)に記載の医療機器。
(3)前記嵌合凹部は、前記先端固定部材の基端側に向けて開放している(2)に記載の医療機器。
(4)前記嵌合凹部は、第1領域と、前記第1領域よりも後端側に位置しているとともに前記第1領域よりも前記先端固定部材の周方向において幅狭に形成されている第2領域と、を含み、
前記嵌合部は、前記第1領域に嵌合している第1部分と、前記第2領域に配置されている第2部分と、を含む(2)又は(3)に記載の医療機器。
(5)前記嵌合部の厚み寸法は、前記操作線の直径と同等である(2)から(4)のいずれか一項に記載の医療機器。
(6)前記嵌合部は、前記操作線の前記先端部を挟持している挟持部を有する(5)に記載の医療機器。
(7)前記固定部は、前記操作線の先端部を内包する状態で、金属材料又は樹脂材料により成形されており、前記操作線の先端部と一体化されている(1)から(5)のいずれか一項に記載の医療機器。
(8)前記操作線は、
複数本の素線が撚り合わされることによって構成されている撚線部と、
前記撚線部の遠位端から1本又は2本ずつ以上の前記素線が複数方向に分枝している複数の分枝部と、
を含み、
前記複数の分枝部の各々が前記固定部によって前記先端固定部材に対して固定されている(1)から(6)のいずれか一項に記載の医療機器。
(9)前記固定部は、前記複数の分枝部を内包する状態で、金属材料又は樹脂材料により成形されており、前記複数の分枝部と一体化されている(8)に記載の医療機器。
(10)前記固定部が前記先端固定部材に対して接合されている(7)又は(9)に記載の医療機器。
【符号の説明】
【0080】
10 管状本体
10a 先端部
11 メインルーメン
12 内層
13 外層
15 サブルーメンチューブ
16 サブルーメン
20 先端固定部材
21 外周面
22 内周面
24 後端縁
25 切欠形状部
26 嵌合凹部
27 第1領域
27a 対向面
27b 内側面
28 第2領域
29 第3領域
30 操作線
30a 先端部
35 撚線部
36 分枝部
37 第1分枝部
38 第2分枝部
40 固定部
41 嵌合部
42 内周面
43 外周面
46 第1部分
46a 後端面
46b 外側面
47 第2部分
48 第3部分
50 挟持部
51、52 一対の挟持片
53 凸部
54 凹部
60 操作部
61 ホイール操作部
62 本体部
100 医療機器
DE 遠位端