(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】診療補助プログラムおよび診療補助システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20240910BHJP
【FI】
G16H50/00
(21)【出願番号】P 2020063069
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】水越 邦仁
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013245(JP,A)
【文献】特開2020-017120(JP,A)
【文献】特開2007-102743(JP,A)
【文献】特開2019-091219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医師による患者の診療を補助する診療補助システムにおいて実行される診療補助プログラムであって、
前記診療補助プログラムが前記診療補助システムのコントローラによって実行されることで、
患者を特定する患者特定ステップと、
複数の患者の医療情報が記憶されたデータベースから、前記患者特定ステップにおいて特定された特定患者の医療情報を取得する医療情報取得ステップと、
前記特定患者に提示する問診の内容を決定する問診内容決定ステップと、
前記問診内容決定ステップにおいて決定された問診の内容を、前記特定患者が使用する端末装置の表示部に表示させる問診表示ステップと、
前記問診表示ステップにおいて表示された問診に対する、前記特定患者からの回答の入力を受け付ける回答受付ステップと、
少なくとも前記回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて、医療従事者による前記特定患者の診察を補助する補助情報を生成する補助情報生成ステップと、
を前記診療補助システムに実行させ、
前記補助情報生成ステップでは、
前記回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて予測される、前記特定患者が受診する診療科である眼科の疾患が、眼科以外の他の診療科の特定疾患との間に関連が生じ得る関連疾患である場合に、前記特定患者の前記医療情報のうち、前記他の診療科の特定疾患に関する情報が、前記補助情報に含められることを特徴とする診療補助プログラム。
【請求項2】
医師による患者の診療を補助する診療補助システムであって、
前記診療補助システムの制御部は、
患者を特定する患者特定ステップと、
複数の患者の医療情報が記憶されたデータベースから、前記患者特定ステップにおいて特定された特定患者の医療情報を取得する医療情報取得ステップと、
前記特定患者に提示する問診の内容を決定する問診内容決定ステップと、
前記問診内容決定ステップにおいて決定された問診の内容を、前記特定患者が使用する端末装置の表示部に表示させる問診表示ステップと、
前記問診表示ステップにおいて表示された問診に対する、前記特定患者からの回答の入力を受け付ける回答受付ステップと、
少なくとも前記回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて、医療従事者による前記特定患者の診察を補助する補助情報を生成する補助情報生成ステップと、
を実行し、
前記補助情報生成ステップでは、
前記回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて予測される、前記特定患者が受診する診療科である眼科の疾患が、眼科以外の他の診療科の特定疾患との間に関連が生じ得る関連疾患である場合に、前記特定患者の前記医療情報のうち、前記他の診療科の特定疾患に関する情報が、前記補助情報に含められることを特徴とする診療補助システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療従事者(例えば、医師および補助者等)による患者の診療を補助するための診療補助プログラムおよび診療補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者による患者の診療を補助するための種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の診療予約システムでは、サーバは、利用者端末装置からアクセスがあったときに、予約申込画面と共に問診票画面をダウンロードする。医療機関端末装置は、予約データと問診表データをサーバから取得し、患者の問診データをカルテと一緒に表示させる。問診表データは、患者が使用する端末からサーバに取り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医師による患者の診察が実際に行われる前に、患者に対する問診が端末等を用いて事前に実行されていれば、診察が円滑に行われ易い。しかし、例えば、単純な問診を行うだけでは有用な情報が得られない場合もある。従って、医療従事者は、問診の回答結果に基づいて追加の問診を行う場合もあった。また、患者が問診内容に対して回答を行わない場合等もある。以上のように、従来の方法では、患者の診察が行われる前に、診察の補助となる有用な情報を適切に取得することは困難であった。
【0005】
本開示の典型的な目的は、患者の診察が行われる前に、診察の補助となる有用な情報を適切に取得することが可能な診療補助プログラムおよび診療補助システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する診療補助プログラムは、医師による患者の診療を補助する診療補助システムにおいて実行される診療補助プログラムであって、前記診療補助プログラムが前記診療補助システムのコントローラによって実行されることで、患者を特定する患者特定ステップと、複数の患者の医療情報が記憶されたデータベースから、前記患者特定ステップにおいて特定された特定患者の医療情報を取得する医療情報取得ステップと、前記特定患者に提示する問診の内容を決定する問診内容決定ステップと、前記問診内容決定ステップにおいて決定された問診の内容を、前記特定患者が使用する端末装置の表示部に表示させる問診表示ステップと、前記問診表示ステップにおいて表示された問診に対する、前記特定患者からの回答の入力を受け付ける回答受付ステップと、少なくとも前記回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて、医療従事者による前記特定患者の診察を補助する補助情報を生成する補助情報生成ステップと、を前記診療補助システムに実行させ、前記補助情報生成ステップでは、前記回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて予測される、前記特定患者が受診する診療科である眼科の疾患が、眼科以外の他の診療科の特定疾患との間に関連が生じ得る関連疾患である場合に、前記特定患者の前記医療情報のうち、前記他の診療科の特定疾患に関する情報が、前記補助情報に含められる。
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する診療補助システムは、医師による患者の診療を補助する診療補助システムであって、前記診療補助システムの制御部は、患者を特定する患者特定ステップと、複数の患者の医療情報が記憶されたデータベースから、前記患者特定ステップにおいて特定された特定患者の医療情報を取得する医療情報取得ステップと、前記特定患者に提示する問診の内容を決定する問診内容決定ステップと、前記問診内容決定ステップにおいて決定された問診の内容を、前記特定患者が使用する端末装置の表示部に表示させる問診表示ステップと、前記問診表示ステップにおいて表示された問診に対する、前記特定患者からの回答の入力を受け付ける回答受付ステップと、少なくとも前記回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて、医療従事者による前記特定患者の診察を補助する補助情報を生成する補助情報生成ステップと、を実行し、前記補助情報生成ステップでは、前記回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて予測される、前記特定患者が受診する診療科である眼科の疾患が、眼科以外の他の診療科の特定疾患との間に関連が生じ得る関連疾患である場合に、前記特定患者の前記医療情報のうち、前記他の診療科の特定疾患に関する情報が、前記補助情報に含められる。
【0008】
本開示に係る診療補助プログラムおよび診療補助システムによると、患者の診察が行われる前に、診察の補助となる有用な情報が適切に取得される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】診療補助システム1の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態における診療補助処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図3】再診患者の医療情報の一例を説明するための説明図である。
【
図4】初診患者の医療情報の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示で例示する診療補助システムは、患者特定ステップ、医療情報取得ステップ、問診内容決定ステップ、問診表示ステップ、回答受付ステップ、および補助情報生成ステップを実行する。患者特定ステップでは、診療補助システムにおける少なくともいずれかの制御部(以下、単に「制御部」という)は、診療の対象とする患者を特定する。医療情報取得ステップでは、制御部は、複数の患者の医療情報が記憶されたデータベースから、患者特定ステップにいて特定された特定患者の医療情報を取得する。問診内容決定ステップでは、制御部は、特定患者に提示する問診の内容を決定する。問診表示ステップでは、制御部は、問診内容決定ステップにおいて決定された問診の内容を、特定患者が使用する端末装置の表示部に表示させる。回答受付ステップでは、制御部は、問診表示ステップにおいて表示された問診に対する、特定患者からの回答の入力を受け付ける。補助情報生成ステップでは、制御部は、少なくとも回答受付ステップにおいて受け付けられた回答に基づいて、医療従事者による特定患者の診療を補助する補助情報を生成する。制御部は、問診内容決定ステップにおいて決定する問診の内容、および、補助情報生成ステップにおいて生成する補助情報の内容の少なくともいずれかを、特定患者に医療情報に応じて変更する。
【0011】
本開示に係る技術によると、患者に提示する問診の内容、および、問診の回答に基づいて生成される補助情報の内容の少なくともいずれかが、データベースから取得された患者の医療データに応じて変更される。従って、予め決められた内容の問診が単純に行われるのみの場合とは異なり、患者の医療情報に応じた適切な内容の補助情報が生成される。よって、医師による患者の診察がより適切に補助される。
【0012】
なお、本実施形態の診療補助システムは、各種情報を処理する少なくとも1つの情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という)、およびサーバ等の少なくともいずれか)と、患者によって使用される端末装置を備える。この場合、患者情報取得ステップ、医療情報取得ステップ、問診内容決定ステップ、および補助情報生成ステップ等の各ステップは、情報処理装置および端末装置のいずれで実行されてもよい。例えば、端末装置の制御部が、ネットワーク等を介して特定患者の医療情報をデータベースから取得し、取得した医療情報に基づいて問診の内容を変更してもよい。また、情報処理装置の制御部が、端末装置から取得した問診の回答と、データベースから取得した医療情報に基づいて、補助情報を生成してもよい。また、複数の制御部が協働して1つのステップを実行してもよい。患者が使用する端末装置には、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、PC等の種々のデバイスを使用することができる。
【0013】
補助情報生成ステップでは、制御部は、特定患者に提示された問診内容のうち、特定患者からの回答が入力されなかった問診内容(未回答問診内容)に対する回答の代用となる代用情報を、特定患者の医療情報から抽出してもよい。制御部は、代用情報が医療情報から抽出された場合に、抽出された代用情報を、未回答問診内容に対する回答として、補助情報を生成してもよい。この場合、少なくともいずれかの問診内容に対して患者が回答を行わなくても、問診内容に対する回答が医療情報から補完され得る。よって、医師による患者の診察がより適切に補助される。
【0014】
問診内容決定ステップでは、制御部は、特定患者に提示する予定の1つまたは複数の問診内容のうち、取得された医療情報の中に既に回答が含まれる既知問診内容を、特定患者の端末装置の表示部に表示させる問診内容(つまり、特定患者に提示する問診内容)から除外してもよい。補助情報生成ステップでは、制御部は、特定患者の医療情報のうち、特定患者に提示しなかった既知問診内容の回答となる情報を、補助情報に含めてもよい。この場合、患者に提示する問診内容の数が減少すると共に、医師は、患者に提示されなかった既知問診内容の回答となる情報も、補助情報によって確認することができる。よって、患者の診察がより効率よく補助される。
【0015】
なお、制御部は、未回答問診内容に対する回答の代用となる代用情報を補助情報に含める処理と、特定患者に提示する問診内容から既知問診内容を除外する処理を、問診内容等に応じて使い分けることも可能である。この場合、より適切に補助情報が生成される。
【0016】
取得される医療情報には、特定患者の診療の受診が初診であるか否かを示す受診情報、特定患者が診療を前回受診してからの経過期間を示す経過期間情報、および、特定患者に対して以前に行われた治療の内容を示す過去治療情報の少なくともいずれかが含まれていてもよい。問診内容決定ステップにおいて、制御部は、受診情報、経過期間情報、および過去治療情報の少なくともいずれか応じて、特定患者に提示する問診の内容を変更してもよい。この場合、患者および医療従事者に入力させる情報量の増加が抑制された状態で、患者に応じた適切な問診が行われる。
【0017】
例えば、制御部は、特定患者の診療の受診が初診である場合には、初診の患者に対するデフォルトの問診内容を提示し、再診である場合には、初診の患者に対する問診内容を省略してもよい。この場合、初診であるか否かの情報が患者等によって入力されなくても、初診であるか否かに応じた適切な問診が行われる。また、制御部は、前回の受診からの結果期間が閾値以下である場合には、前回の受診時に提示した問診内容の少なくとも一部を省略してもよい。この場合、短期間の間に複数回問診する必要が無い問診内容が、経過期間に応じて、患者に提示される問診内容から適切に省略される。また、制御部は、患者に対する過去治療内容に応じて、過去に行われた治療の効果を確認するための問診内容を患者に提示してもよい。この場合、過去治療内容に応じた適切な問診が患者に対して行われる。
【0018】
問診に対する回答に基づいて予測される、特定患者が受診する診療科の疾患が、他の診療科の特定疾患との間に関連が生じ得る関連疾患である場合に、制御部は、特定患者の医療情報のうち特定疾患に関する情報を、補助情報に含めてもよい。この場合、医師は、他の診療科の疾患との間に関連が生じ得る疾患の存在が疑われる場合に、他の診療科の情報も参照したうえで診察等を行うことができる。よって、医師による患者の診察がより適切に補助される。
【0019】
特定患者が受診する診療科の疾患に関連が生じ得る他の診療科の疾患の情報が、特定患者の医療情報に含まれる場合に、制御部は、他の診療科の疾患に関連が生じ得る疾患についての問診内容を、特定患者に提示する問診内容に含めてもよい。この場合、他の診療科の情報も考慮された適切な問診が、患者に対して実行される。
【0020】
<実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態における診療補助システム1のシステム構成の一例について概略的に説明する。本実施形態では、眼科で使用される眼科用診療補助システム1を例示して説明を行う。しかし、眼科以外の診療科(例えば、内科、外科、整形外科、皮膚科等)、または健康診断施設等で使用される診療補助システムにも、本開示で例示する技術の少なくとも一部を採用できる。本実施形態の診療補助システム1は、端末装置10、情報処理装置20、およびサーバ30を備える。
【0021】
端末装置10は、診療を受診する患者によって使用される。本実施形態では、患者は、診療よりも前に予め行われる問診への回答を行うために、端末装置10を使用する。また、患者は、医療機関で受診する診療の予約を行うために、端末装置10を使用してもよい。端末装置10には、通信機能を備えた各種デバイス(例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という)、携帯電話等の少なくともいずれか)を使用できる。本実施形態では、端末装置10は、情報処理装置20が使用される拠点(本実施形態では、医療機関である拠点B)とは異なる拠点で使用される。つまり、本実施形態では、患者が医療機関以外の自宅等にいる場合でも、ネットワーク5(インターネット等)を介して患者に対する問診(所謂「WEB問診」)が行われる。しかし、端末装置10は、情報処理装置20と同じ拠点で使用されてもよい。
【0022】
端末装置10は、各種制御処理を行う制御ユニット11と、通信I/F14を備える。制御ユニット11は、制御を司るコントローラであるCPU12と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置13を備える。記憶装置13には、後述する診療補助処理(
図2参照)の一部を実行するための診療補助プログラムが記憶されている。通信I/F14は、ネットワーク5(例えばインターネット等)を介して、端末装置10を外部機器(例えば情報処理装置20)と接続する。
【0023】
端末装置10は、操作部16、モニタ(表示部)17、カメラ(撮影部)18、およびマイク(音声入力部)19を備える。操作部16は、ユーザが各種指示を端末装置10に入力するために、ユーザによって操作される。操作部16には、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等の少なくともいずれかを使用できる。モニタ17は、各種画像を表示することが可能な表示部の一例である。カメラ18は、各種画像を撮影する。マイク19は、各種音声を入力し、音声に応じた信号を制御ユニット11に出力する。なお、操作部16、モニタ17、カメラ18、およびマイク19の少なくともいずれかは、端末装置10に内蔵されていない外部機器であってもよい。また、操作部16の操作の代わりに、マイク19に入力される音声によって、各種指示が端末装置10に入力されてもよい。
【0024】
情報処理装置20は、通信機能を備えると共に、各種情報を処理する。本実施形態では、情報処理装置20として、医療機関である拠点Bに設置されたPCが用いられている。しかし、情報処理装置20はPCに限定されない。例えば、スマートフォンまたはタブレット端末等が情報処理装置20として用いられてもよい。また、複数の情報処理装置20が用いられてもよい、例えば、医師が使用する情報処理装置20と、看護師等の補助者が使用する情報処理装置20が、別で設けられていてもよい。
【0025】
情報処理装置20は、各種制御処理を行う制御ユニット21と、通信I/F24を備える。制御ユニット21は、制御を司るコントローラであるCPU22と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置23を備える。記憶装置23には、後述する診療補助処理(
図2参照)の少なくとも一部を実行するための診療補助プログラムが記憶されている。通信I/F24は、ネットワーク5を介して、情報処理装置20を外部機器(例えば、端末装置10、およびサーバ30等)と接続する。また、情報処理装置20は、操作部26およびモニタ27に接続されている。
【0026】
サーバ30は、通信機能を備えると共に、複数の患者の医療情報を記憶するデータベースとして機能する。サーバ30は、例えば、クラウドサービスを提供するメーカーのサーバ(所謂クラウドサーバ)であってもよいし、クラウドサーバ以外のサーバ(例えば、医療機関に設置されたサーバ、または、診療補助プログラムを提供するメーカーのサーバ等)であってもよい。一例として、本実施形態のサーバ30は、医療機関である拠点Bとは異なる拠点Cに設置されている。
【0027】
サーバ30は、各種制御処理を行う制御ユニット31と、通信I/F34を備える。制御ユニット31は、制御を司るコントローラであるCPU32と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置33を備える。記憶装置33には、後述する診療補助処理(
図2参照)の少なくとも一部を実行するための診療補助プログラムが記憶されていてもよい。さらに、記憶装置33には、複数の患者の医療情報が記憶されている。通信I/F34は、ネットワーク5を介して、サーバ30を外部機器(例えば情報処理装置20等)と接続する。
【0028】
図2から
図4を参照して、診療補助システム1が実行する診療補助処理の一例について説明する。本実施形態で例示する診療補助処理は、記憶装置13、23、33に記憶された診療補助プログラムに従って、端末装置10のCPU12、情報処理装置20のCPU22、およびサーバ30のCPU32によって実行される。なお、以下説明する各ステップを実行するコントローラを変更することも可能である。例えば、以下の説明において、情報処理装置20のCPU22が実行するステップの一部を、端末装置10のCPU12が代わりに実行してもよい。つまり、各ステップは、診療補助システム1が備える各デバイスのいずれかのコントローラによって実行されればよい。
【0029】
まず、患者は、診察補助システム1によって提示される問診に回答するために、端末装置10の操作部16を操作して診察補助システム1にログインし、自身の患者IDを入力する。端末装置10のCPU12は、診察補助システム1にログインした患者の患者IDを取得し(S1)、患者IDを情報処理装置20に送信する(S2)。
【0030】
情報処理装置20のCPU22は、端末装置10を使用して診察補助システム1にログインした患者(つまり、問診を行う対象とする患者)を特定する(S4)。一例として、本実施形態では、CPU22は、S2で端末装置10から受診した患者IDに基づいて、診察補助システム1にログインした患者を特定する。ただし、患者を特定する方法を変更することも可能である。例えば、CPU22は、端末装置10に入力された患者の情報(例えば、患者の氏名および生年月日等)に基づいて患者を特定してもよい。以下では、S4で特定された患者を特定患者と言う。
【0031】
情報処理装置20のCPU22は、複数の患者の医療情報を記憶するデータベースであるサーバ30に、特定患者の医療情報を要求する指示を送信する(S5)。なお、医療情報を記憶するデータベースはサーバ30に限定されない。例えば、情報処理装置20に接続されたハードディスクドライブ等の記憶装置が、医療情報を記憶するデータベースとして機能してもよい。以下では、複数の診療科を有する1つの総合病院内で使用される医療情報を例示して説明を行う。つまり、サーバ30は、1つの総合病院内における複数の診療科のデータを、患者毎に医療情報として管理する。しかし、患者の医療情報が、診療科毎に異なるデバイス(データベース)によって管理されていてもよい。この場合、S5では、複数のデバイス(データベース)の各々に対して特定患者の医療情報の要求指示を送信してもよい。また、複数の医療機関(例えば、近隣に位置し、互いに連携を取っている複数の関連医療機関)によって、複数の患者の医療情報が管理されていてもよい。この場合、患者毎の医療情報は、1つのデータベースに集約されていてもよいし、複数のデータベース(例えば、複数の関連医療機関の各々のデータベース等)によって管理されていてもよい。
【0032】
図3および
図4を参照して、データベースに記憶されている患者の医療情報の一例について説明する。
図3および
図4に示すように、本実施形態における患者の医療情報には、患者基本情報、患者が受診する診療科(以下、「受診科」という。本実施形態では眼科。)における過去の診断・治療情報、および、他の診療科の情報が含まれる。
【0033】
患者基本情報には、患者に関する氏名等の情報(例えば、ID、氏名、性別、生年月日、連絡先等)が含まれる。患者の住所等の情報が患者基本情報に含まれていてもよいことは言うまでもない。
【0034】
受診科における過去の診断・治療情報には、受診情報、経過期間情報、および過去治療情報が含まれる。受診情報は、患者の受診科への受診が初診および再診のいずれであるかを示す。経過期間情報は、患者の受診科への受診が再診である場合に、患者が診療を前回受診してからの経過期間を示す。過去治療情報は、患者の受診科への受診が再診である場合に、患者に対して以前に行われた治療の内容を示す。
【0035】
他の診療科の情報には、診療補助システム1を導入している医療機関内の、受診科以外の他の診療科、および、他の医療機関における他の診療科についての患者の情報が含まれる。例えば、
図3に示す例では、患者が過去に内科を受診した際の診断内容および処方内容が、他の診療科の情報として記憶されている。また、
図4に示す例では、患者が過去に内科を受診した際の診断内容、および、治療を行わずに経過観察中である旨が記憶されている。
【0036】
図2の説明に戻る。サーバ30のCPU32は、記憶装置33に記憶された複数の患者の医療情報のうち、情報処理装置20から要求された特定患者の医療情報を、情報処理装置20に送信する(S6)。
【0037】
情報処理装置20のCPU22は、サーバ30から受診(取得)した特定患者の医療情報に含まれる受診情報に基づいて、特定患者の受診科への受診が初診であるか否かを判断する(S7)。初診である場合には(S7:YES)、初診の患者に対して予め用意されたデフォルトの複数の問診内容(初診用の基本問診内容)を、特定患者に提示する問診内容の候補として取得する(S8)。初診用の基本問診内容には、例えば、「右眼と左眼のどちらの調子が悪いですか?」「どのような症状がありますか?」「いつ頃からそのような症状がありますか?」「過去に眼の病気、怪我、手術などをしたことはありますか?」「コンタクトレンズを使用していますか?」「現在服用している薬はありますか?」「アレルギーはありますか?」「糖尿病と診断されたことはありますか?」等の、初診の患者に対して適した問診内容が含まれている。
【0038】
特定患者の受診科への受診が再診である場合には(S7:NO)、再診の患者に対して予め用意されたデフォルトの複数の問診内容(再診用の基本問診内容)を、特定患者に提示する問診内容の候補として取得する(S9)。再診用の基本問診内容には、「症状は改善しましたか?」等の、再診の患者に対して適した問診内容が含まれている。
【0039】
次いで、再診であり、且つ、特定患者の医療情報に過去治療情報が含まれている場合には、CPU22は、過去に行われた治療の効果を確認するための問診内容を、特定患者に提示する問診内容に含める(S10)。例えば、「薬を飲み始めてから症状は改善されましたか?」「手術後の痛みは改善されましたか?」等の問診内容が、過去治療情報に応じて適宜追加されてもよい。また、コンタクトレンズの使用を中断するよう過去の診察時に患者に指示している旨の過去治療情報が含まれている場合には、「コンタクトレンズの使用は中断していますか?」等の問診内容が追加されてもよい。
【0040】
次いで、再診であり、且つ、特定患者が診療を前回受診してからの経過期間が閾値以下である場合には(S11:YES)、前回の受信時に提示した問診内容の少なくとも一部を除外(省略)する(S12)。例えば、経過期間が所定の閾値以下であり、アレルギーの有無が変化する可能性が低い場合には、前回の受信時に提示した「アレルギーはありますか?」という問診内容が省略されてもよい。経過期間と比較する閾値は、複数の問診内容の各々について別々に設定されていてもよい。その後、処理はS14へ移行する。
【0041】
次いで、情報処理装置20のCPU22は、S8~S12で特定患者に提示する候補として作成された(つまり、特定患者に提示する予定の)問診内容のうち、S6で取得された医療情報の中に既に回答が含まれる既知問診内容が、特定患者に提示する問診内容から除外される(S14)。例えば、
図4に示す例では、医療情報の中に、アレルギー検査の結果を示す情報が含まれている。この場合、S8で取得された初診用の基本問診内容のうち、「アレルギーはありますか?」の問診内容が、特定患者に提示する問診内容から除外される。その結果、患者に提示する問診内容の数が減少する。
【0042】
なお、CPU22は、問診内容の回答となり得る情報が医療情報に含まれている場合でも、問診内容に応じて、患者に対する問診を行うか否かを適宜決定してもよい。例えば、薬を処方した情報が医療情報に含まれている場合でも、処方した薬以外に他の医療機関で処方された薬をさらに特定患者が服用している場合もあり得る。従って、CPU22は、薬を処方した情報が医療情報に含まれていても、「現在服用している薬はありますか?」の問診内容を除外せずに、特定患者にそのまま提示してもよい。
【0043】
次いで、情報処理装置20のCPU22は、S6で取得した特定患者の医療情報の中に、受診科(本実施形態では眼科)の疾患に関連が生じ得る他の診療科の疾患(以下、「影響疾患」という)の情報が含まれているか否かを判断する(S15)。影響疾患の情報が含まれている場合には(S15:YES)、CPU22は、受診科における疾患のうち、特定患者が有する影響疾患に関連する関連疾患についての問診内容が、特定患者に提示する問診内容に追加される(S16)。例えば、
図4に示す例では、特定患者の医療情報の中に、眼科における糖尿病性網膜症(関連疾患)に関連が生じ得る、他科の糖尿病(影響疾患)と診断された旨の情報が含まれる。この場合、糖尿病性網膜症(関連疾患)に関する問診内容(例えば、糖尿病性網膜症の症状を確認するための「視界がかすむことはありますか?」等の問診内容)が、特定患者に提示する問診内容に追加される。その結果、受診科以外の診療科の情報も考慮された適切な問診が、特定患者に対して実行される。
【0044】
次いで、情報処理装置20のCPU22は、S8~S16で決定した特定患者に対する問診内容のデータを、特定患者が使用する端末装置10に送信する(S18)。端末装置10のCPU12は、情報処理装置20から受診した問診内容をモニタ17に表示させると共に、表示された問診内容に対する特定患者からの回答の入力を受け付ける(S19)。その結果、患者に対するWEB問診が、ネットワークを介して実行される。CPU12は、特定患者によって入力された回答のデータを、情報処理装置20に送信する(S20)。
【0045】
情報処理装置20のCPU22は、S20で取得した問診に対する回答に基づいて、医療従事者による特定患者の診察を補助する補助情報を生成する(S22)。従って、医療従事者は、診療補助システム1によって行われた特定患者に対する問診の回答を、補助情報によって適切に把握することができる。本実施形態の補助情報は、医療従事者が患者の情報を管理する電子カルテシステムに追加される。従って、医療従事者は、電子カルテシステムで特定患者のカルテを閲覧することで、電子カルテシステムに追加された補助情報によって、問診の回答等の有用な情報を把握することができる。つまり、本実施形態の診療補助システム1は、電子カルテシステムに組み込まれているか、または電子カルテシステムと連携している。
【0046】
次いで、情報処理装置20のCPU22は、S19で特定患者に提示された1つまたは複数の問診内容のうち、特定患者からの回答が入力されなかった未回答問診内容があるか否かを判断する(S23)。未回答問診内容がある場合(S23:YES)、CPU22は、未回答問診内容の回答の代用となる代用情報を、S6で取得した医療情報から抽出する(S24)。代用情報が抽出された場合には、CPU22は、抽出された代用情報を、未回答問診内容に対する回答として、補助情報に追加する(S25)。例えば、「糖尿病と診断されたことはありますか?」の問診内容に対する回答が未回答である場合に、
図4に例示するように、糖尿病の疑いありと診断されたことを示す情報が医療情報に含まれていれば、CPU22は、糖尿病の疑いありと診断されたことを回答として、補助情報に追加する。その結果、未回答問診内容に対する回答が医療情報から適切に補完される。
【0047】
次いで、情報処理装置20のCPU22は、S20で取得した回答に基づいて予測される受診科の疾患が、他の診療科の特定疾患との間に関連が生じ得る関連疾患である場合には(S26:YES)、特定患者の医療情報のうち、他の診療科の特定疾患に関する情報を、補助情報に追加する(S27)。例えば、問診の回答に基づいて予測される受診科(眼科)の疾患が、糖尿病性網膜症(関連疾患)である場合には、特定患者の医療情報から、他の診療科の糖尿病(特定疾患)に関する情報(例えば、特定疾患の病状の程度等を示す情報)が抽出されて、補助情報に含められる。その結果、医師は、他の診療科の情報も適切に参照したうえで診察等を行うことができる。
【0048】
次いで、情報処理装置20のCPU22は、S14で既知問診内容を除外している場合に、除外した既知問診内容の回答となる情報を医療情報から抽出し、補助情報に追加する(S28)。その結果、特定患者に提示されなかった既知問診内容の回答に相当する情報も、医療従事者によって適切に把握される。
【0049】
次いで、情報処理装置20のCPU22は、生成した補助情報をモニタ27に表示させることで、補助情報を医療従事者に提示する(S29)。前述したように、本実施形態の補助情報は、電子カルテシステムにおける特定患者のカルテに追加される。生成された補助情報は、サーバ30に送信されて、特定患者の医療情報に追加される(S30)。
【0050】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態で例示された技術の一部のみを実行することも可能である。具体的には、上記実施形態の診療補助処理(
図2参照)では、既知問診内容を除外する処理(S14)と、未回答問診内容の回答となる代用情報を補助情報に追加する処理(S23~S25)が共に実行される。しかし、これらの処理の一方のみが実行される場合でも、医師による患者の診察が医療情報によって適切に補助される。
【0051】
なお、
図2のS4で患者を特定する処理は、「患者特定ステップ」の一例である。
図2のS6で特定患者の医療情報を取得する処理は、「医療情報取得ステップ」の一例である。
図2のS7~16で問診内容を決定する処理は、「問診内容決定ステップ」の一例である。
図2のS19で問診内容を表示部に表示させて回答の入力を受け付ける処理は、「問診表示ステップ」および「回答受付ステップ」の一例である。
図2のS22~S28で補助情報を生成する処理は、「補助情報生成ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0052】
1 診療補助システム
10 端末装置
12 CPU
17 モニタ
20 情報処理装置
22 CPU
23 記憶装置
30 サーバ
32 CPU
33 記憶装置