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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】建物及び設計法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20240910BHJP
   E04H 1/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
E04B1/26 A
E04H1/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020066919
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021161822
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.2019年7月10日付で、建築通信新聞が「横浜に木造研修所 大林組」と題して出願に係る発明の内容を公開。 2.2019年7月18日付で、日本経済新聞が「大林組、20年に純木造高層ビルを着工 国内初」と題して出願に係る発明の内容を公開。 3.2019年7月19日付で、日本経済新聞が「大林組、純木造高層ビル 20年着工」と題して出願に係る発明の内容を公開。 4.https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20190723_1.html 2019年7月23日付で上記URLにて株式会社大林組がプレスリリースを行い出願に係る発明の内容を公開。 5.2019年7月23日付で、建設通信新聞が「国内初、純木造耐火高層建築で研修施設」(朝刊1面)、「高層耐火木造実現へ 剛接合仕口ユニット」(朝刊3面)と題して出願に係る発明の内容を公開。 6.2019年7月23日付で、日刊建設工業新聞が「大林組が純木造の次世代研修施設 22年開設」(朝刊1面)、「純木造で11階建て 金物使わず柱梁一体化」(朝刊3面)と題して出願に係る発明の内容を公開。 7.2019年7月24日付で、日刊木材新聞が「国内初の高層純木造11階建てビル 大林組」と題して出願に係る発明の内容を公開。 8.2019年7月24日付で、日刊工業新聞が「構造部材 すべて木材 横浜に11階建て研修所 大林組、耐火技術を適用」と題して出願に係る発明の内容を公開。 9.http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000882.html 2019年7月26日付で上記URLにて国土交通省が出願に係る発明の内容を公開。 10.2019年7月29日付で、木材建材ウィークリーが「純木造で高層建築に取り組み」と題して出願に係る発明の内容を公開。 11.2019年8月5日付で、日刊建設工業新聞が 「木造先導型に7件国交省、サステナブル建築物事業」と題して出願に係る発明の内容を公開。 12.2019年8月26日付で、毎日新聞が「木造で高層耐火建築」と題して出願に係る発明の内容を公開。 13.2019年10月15日付で、一般社団法人 日本木造耐火建築協会、株式会社大林組が、森林を活かす都市の木造化推進トップセミナーにおいて、出願に係る発明の内容を公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀池 隆弥
(72)【発明者】
【氏名】賀持 剛一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】高山 俊
(72)【発明者】
【氏名】太田 真理
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-124454(JP,A)
【文献】特開平11-107367(JP,A)
【文献】特開2014-058813(JP,A)
【文献】特開2014-109117(JP,A)
【文献】特開2016-132949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0205266(US,A1)
【文献】Colin Shane,Enclosure Design for Mass Timber,米国,RDH Building Scienes Inc.,2019年06月19日,第1頁-第62頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/18
E04B 1/26
E04B 2/56-2/70
E04B 2/88-2/96
E04H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質構造材から構成される木造架構と、
前記木造架構の外周部に沿って配置される外周壁と、を備え、
前記木造架構の前記木質構造材のうち前記外周部に位置する外周構造材の屋外側の面には、木質材から構成される木質面が形成されており、
前記外周壁は、前記木質面の屋外側に配置される帳壁部を備え、
前記帳壁部は、前記木質面と対向する位置に、屋外から屋内に向かって視通可能な透明部を備え
建物の正面側の前記外周構造材は、木質柱及び第1木質梁により構成され、
建物の側面側の前記外周構造材は、前記木質柱、前記第1木質梁及び第2木質梁により構成される、建物。
【請求項2】
前記外周壁は、耐力壁部を更に備え、
前記帳壁部は、建物の前記正面側に配置されており、
前記耐力壁部は、建物の前記側面及び背面の少なくとも一方の面側に配置されている、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記帳壁部は、建物の前記側面のうち前記正面側に配置されており、
前記耐力壁部は、建物の前記側面のうち前記背面側に配置されている、請求項2に記載の建物。
【請求項4】
各階での前記外周構造材は、
立設されている前記木質柱と、
前記木質柱の上部に接合される前記第1木質梁と、を備え、
前記帳壁部の前記透明部は、前記木質柱に形成されている前記木質面、及び、前記第1木質梁に形成されている前記木質面、の両方に対向する位置に設けられている、請求項1から3のいずれか1つに記載の建物。
【請求項5】
前記帳壁部は、
所定間隔を隔てて配置されている複数の縦枠材と、
前記複数の縦枠材のうち隣接する2つの縦枠材の間に配置されており、前記透明部を構成するガラスパネルと、備え、
前記帳壁部を屋外側から屋内側に向かって見る正対視において、前記縦枠材は、前記木質柱と、左右方向で異なる位置に配置されている、請求項4に記載の建物。
【請求項6】
前記帳壁部は、前記複数の縦枠材を連結する横枠材を備え、
前記横枠材は、前記正対視において、前記横枠材の下端面の位置が前記第1木質梁の上端面の位置と略一致するように配置されている、請求項5に記載の建物。
【請求項7】
木質構造材から構成される木造架構と、前記木造架構の外周部に沿って配置される外周壁と、を備える建物の設計法であって、
前記外周壁は、屋外から屋内に向かって視通可能な透明部を有する帳壁部を備え、
前記木造架構の前記木質構造材のうち前記外周部に位置する外周構造材の屋外側の面に、木質材から構成される木質面を配置し、
前記木質面の屋外側で、前記木質面と対向する位置に、前記帳壁部の前記透明部を配置し、
建物の正面側の前記外周構造材を、木質柱及び第1木質梁により構成し、
建物の側面側の前記外周構造材を、前記木質柱、前記第1木質梁及び第2木質梁により構成する、設計法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物及び設計法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、意匠性の向上などの観点から、荷重支持のために木質材が用いられている構造材(以下、「木質構造材」と記載する。)を中高層建物の架構に利用する試みがなされている。特許文献1には、この種の木質構造材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-211325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の木質構造材を用いることで、中高層建物を、意匠性の高い木造架構により構築できる。しかしながら、木造架構の建物は、雨仕舞の観点で依然として改善の余地がある。
【0005】
本発明は、意匠性を保持しつつ、雨仕舞が容易な、木造架構を備える建物及び設計法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての建物は、木質構造材から構成される木造架構と、前記木造架構の外周部に沿って配置される外周壁と、を備え、前記木造架構の前記木質構造材のうち前記外周部に位置する外周構造材の屋外側の面には、木質材から構成される木質面が形成されており、前記外周壁は、前記木質面の屋外側に配置される帳壁部を備え、前記帳壁部は、前記木質面と対向する位置に、屋外から屋内に向かって視通可能な透明部を備え、建物の正面側の前記外周構造材は、木質柱及び第1木質梁により構成され、建物の側面側の前記外周構造材は、前記木質柱、前記第1木質梁及び第2木質梁により構成される
【0007】
本発明の1つの実施形態として、前記外周壁は、耐力壁部を更に備え、前記帳壁部は、建物の前記正面側に配置されており、前記耐力壁部は、建物の前記側面及び背面の少なくとも一方の面側に配置されている。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記帳壁部は、建物の前記側面のうち前記正面側に配置されており、前記耐力壁部は、建物の前記側面のうち前記背面側に配置されている。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、各階での前記外周構造材は、立設されている前記木質柱と、前記木質柱の上部に接合される前記第1木質梁と、を備え、前記帳壁部の前記透明部は、前記木質柱に形成されている前記木質面、及び、前記第1木質梁に形成されている前記木質面、の両方に対向する位置に設けられている。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記帳壁部は、所定間隔を隔てて配置されている複数の縦枠材と、前記複数の縦枠材のうち隣接する2つの縦枠材の間に配置されており、前記透明部を構成するガラスパネルと、備え、前記帳壁部を屋外側から屋内側に向かって見る正対視において、前記縦枠材は、前記木質柱と、左右方向で異なる位置に配置されている。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記帳壁部は、前記複数の縦枠材を連結する横枠材を備え、前記横枠材は、前記正対視において、前記横枠材の下端面の位置が前記第1木質梁の上端面の位置と略一致するように配置されている。
【0012】
本発明の第2の態様としての建物の設計法は、木質構造材から構成される木造架構と、前記木造架構の外周部に沿って配置される外周壁と、を備える建物の設計法であって、前記外周壁は、屋外から屋内に向かって視通可能な透明部を有する帳壁部を備え、前記木造架構の前記木質構造材のうち前記外周部に位置する外周構造材の屋外側の面に、木質材から構成される木質面を配置し、前記木質面の屋外側で、前記木質面と対向する位置に、前記帳壁部の前記透明部を配置し、建物の正面側の前記外周構造材を、木質柱及び第1木質梁により構成し、建物の側面側の前記外周構造材を、前記木質柱、前記第1木質梁及び第2木質梁により構成する
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、意匠性を保持しつつ、雨仕舞が容易な、木造架構を備える建物及び設計法、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態としての建物の配置図である。
図2図1に示す建物の正面図である。
図3図1に示す建物の一方側の側面図である。
図4図1に示す建物の他方側の側面図である。
図5図1に示す建物の背面図である。
図6図1に示す建物の9階平面図である。
図7図1に示す建物の8階平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る建物及び設計法について図面を参照して例示説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0016】
図1は、本発明に係る建物の一実施形態としての建物100の配置図である。図1に示すように、建物100は、南側で道路101に面している。また、建物100は、東側、西側及び北側それぞれで隣地境界線を挟んで別の建物102と隣接している。以下、建物100の道路101に面する南側の面を建物100の「正面」と記載する。また、建物100の正面と反対側の北側の面を建物100の「背面」と記載する。更に、建物100の正面及び背面を連ねる東側及び西側の面を建物100の「側面」と記載する。なお、建物が2つ以上の道路に面する場合は、1つの道路に面する任意の面を正面とすればよい。
【0017】
図2は、建物100の正面図である。図3は、建物100の一方側(本実施形態では東側)の側面図である。図4は、建物100の他方側(本実施形態では西側)の側面図である。図5は、建物100の背面図である。図6は、建物100の9階平面図である。図7は、建物100の8階平面図である。
【0018】
建物100は、木造架構2と、外周壁3と、を備える。
【0019】
木造架構2は、木質構造材から構成される。具体的に、本実施形態の木造架構2は、木質構造材としての木質柱11及び木質梁12から構成されている。建物100の各階での木質構造材は、立設されている複数の木質柱11と、木質柱11に架設されている複数の木質梁12と、を備える。図3図4に示すように、木質梁12は、各階で木質柱11の上部に接合されている木質梁12aと、上階の木質梁12a及び下階の木質梁12aの間に設けられている木質梁12bと、を備える。以下、説明の便宜上、各階で木質柱11の上部に接合されている木質梁12aを「第1木質梁12a」と記載し、上下の2本の第1木質梁12aの間に設けられている木質梁12bを「第2木質梁12b」と記載する。また、第1木質梁12a及び第2木質梁12bを区別なく記載する場合は、単に「木質梁12」と記載する。木質構造材とは、荷重支持のために木質材が用いられている構造材を意味する。木質構造材は、例えば、木質材からなる荷重支持層と、この荷重支持層の外側に配置される燃え止まり層と、この燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる燃えしろ層と、を備える。
【0020】
荷重支持層は、断面略矩形状をなし、製材、集成材、LVL(Laminated Veneer Lumber)等の板状の木製ブロックを複数積層し、積層されている積層方向に締結部材としてのビスが貫入されて一体化されている。
【0021】
燃え止まり層は、荷重支持層の炭化を防止する燃え止まり機能を有する部材で構成される。燃え止まり層は、例えば、荷重支持層の外周面を覆うように各々の面に耐火材としての石膏ボードが締結部材としてのビスにより取り付けられている。燃え止まり層は、石膏ボードに限られず、例えば、高熱容量材であるモルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料の他、中空矩形断面の金属製のパイプ内に無機材料、液体金属、水、無機水和塩、消石灰等の蓄熱材料を充填して一体化したもの等であったり、断熱材である不燃木材、難燃処理材、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウール等であったり、熱慣性の大きい木材であるセランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等であってもよい。
【0022】
燃えしろ層は、荷重支持層と同様のひき板や単板等からなる単材またはこの単材を複数集成した集成材が燃え止まり層の外周面を覆うように各々の面に接着剤などにより取り付けられている。
【0023】
木造架構2の木質構造材のうち、木造架構2の外周部に位置する外周構造材4の屋外側の面には、木質材から構成される木質面5が形成されている。より具体的に、本実施形態の外周構造材4の屋外側の面は、上述した木質材からなる燃えしろ層により構成されている。したがって、本実施形態の外周構造材4の屋外側の面の木質面5は、燃えしろ層により構成されている。また、本実施形態の木質面5は、外周構造材4の屋外側の面の全域に亘って形成されている。
【0024】
外周壁3は、木造架構2の外周部に沿って配置される。本実施形態の外周壁3は、帳壁部6と、耐力壁部7と、を備える。
【0025】
本実施形態の外周壁3は、帳壁部6として、木質面5の屋外側に配置される帳壁部6aと、木質面5の屋内側に配置される帳壁部6bと、を備える。以下、説明の便宜上、木質面5の屋外側に配置される帳壁部6aを「第1帳壁部6a」と記載し、木質面5の屋内側に配置される帳壁部6bを「第2帳壁部6b」と記載する。また、第1帳壁部6a及び第2帳壁部6bを区別なく記載する場合は、単に「帳壁部6」と記載する。
【0026】
第1帳壁部6aは、木質面5と対向する位置に、屋外から屋内に向かって視通可能な透明部8を備える。つまり、建物100では、木造架構2の外周構造材4の屋外側に面する木質面5を、第1帳壁部6aの透明部8を通じて視認できる。そのため、第1帳壁部6aを設けても、木造架構2の屋外からの意匠性を保持できる。更に、第1帳壁部6を設けることで、木造架構2の雨仕舞についても容易に対応できる。なお、詳細は後述するが、本実施形態の透明部8は、ガラスパネル23により構成されている。
【0027】
本実施形態のように、第1帳壁部6aは、少なくとも建物100の正面側に配置されていることが好ましい。このようにすることで、建物100の道路101側からの意匠性が高められる。また、本実施形態のように、第1帳壁部6aは、建物100の側面側に配置されていてもよい。本実施形態の建物100では、第1帳壁部6aが、建物100の側面のうち正面側に配置されている。つまり、第1帳壁部6aは、建物100の南側の正面から、建物100の東側及び西側の側面の南側の一部分にまで設けられている。このようにすることで、道路101側から視認し得る建物100の正面及び側面の正面側の部分の両方に亘って、木造架構2の意匠性を強調できる。
【0028】
本実施形態の第1帳壁部6aの透明部8は、外周構造材4のうち木質柱11に形成されている木質面5、及び、外周構造材4のうち木質梁12に形成されている木質面5、の両方に対向する位置に設けられている。つまり、本実施形態の木造架構2の外周部を構成する外周構造材4としての木質柱11及び木質梁12は、いずれも、第1帳壁部6aの透明部8を通じて外部から視認可能である。そのため、建物100の木造架構2の意匠性を強調できる。
【0029】
更に、本実施形態の第1帳壁部6aは、縦枠材21と、横枠材22と、ガラスパネル23と、を備える。
【0030】
縦枠材21は、所定階(本実施形態では各階)において所定間隔を隔てて複数配置されている。複数の縦枠材21は、略平行に配置されており、各縦枠材21は鉛直方向に延在している。横枠材22は、所定階(本実施形態では各階)の上側に配置されている。各縦枠材21の上部は、横枠材22に連結されている。つまり、本実施形態の横枠材22は、水平方向に延在しており、各階で複数の縦枠材21の上部を連結している。なお、この横枠材22は、直上階の縦枠材21の下部にも連結されている。ガラスパネル23は、複数の縦枠材21のうち隣接する2つの縦枠材21の間に配置されている。また、ガラスパネル23は、上下階の横枠材22の間に配置されている。そして、本実施形態のガラスパネル23は、隣接する2つの縦枠材21と、上下の2つの横枠材22と、で区画される矩形枠内で、これら縦枠材21及び横枠材22により保持されている。
【0031】
ここで、ガラスパネル23は、上述した第1帳壁部6aの透明部8を構成する。したがって、本実施形態の第1帳壁部6aの透明部8は、階高の略全域に亘って設けられている。そのため、本実施形態の建物100によれば、木造架構2の意匠性を、より一層強調できる。
【0032】
また、本実施形態の第1帳壁部6aを屋外側から屋内側に向かって見る正対視(図2図4参照)において、縦枠材21は、木質柱11と、左右方向で異なる位置に配置されている。なお、「第1帳壁部を屋外側から屋内側に向かって見る正対視」とは、第1帳壁部を屋外側から対向して見た場合を意味している。したがって、本実施形態において、「第1帳壁部を屋外側から屋内側に向かって見る正対視」とは、図2に示す正面視、並びに、図3及び図4に示す側面視、を意味する。
【0033】
具体的には、図2に示すように、本実施形態の縦枠材21は、建物100の正面視において、外周構造材4としての木質柱11と、左右方向で異なる位置に配置されている。換言すれば、本実施形態の縦枠材21は、建物100の正面視において、外周構造材4としての木質柱11と重ならない位置に配置されている。そのため、木質柱11の意匠性が、縦枠材21の存在によって阻害され難く、縦枠材21によって木造架構2の意匠性が損なわれ難くなる。
【0034】
また、建物100の側面視(図3及び図4参照)においても同様である。つまり、図3及び図4に示すように、本実施形態の縦枠材21は、建物100の側面視において、外周構造材4としての木質柱11と、左右方向で異なる位置に配置されている。換言すれば、本実施形態の縦枠材21は、建物100の側面視において、外周構造材4としての木質柱11と重ならない位置に配置されている。そのため、木質柱11の意匠性が、縦枠材21の存在によって阻害され難く、縦枠材21によって木造架構2の意匠性が損なわれ難くなる。
【0035】
更に、本実施形態の横枠材22は、上述の正対視(図2図4参照)において、横枠材22の下端面の位置L1が第1木質梁12aの上端面の位置L2と略一致するように配置されている。つまり、本実施形態の横枠材22は、上述の正対視(図2図4参照)において、横枠材22の下端面の水平ラインが、第1木質梁12aの上端面の水平ラインと略一致するように、配置されている。本実施形態の横枠材22は、各階の第1木質梁12aの上端面にビス等の締結部材により締結されている。そして横枠材22は、第1木質梁12aの上端面の位置L2と略等しい高さ位置で、その階のガラスパネル23の上端部を保持している。したがって、各階の横枠材22は、正対視(図2図4参照)において、第1木質梁12aの屋外側の面を構成する木質面5と、ほぼ重ならない。そのため、第1木質梁12aの意匠性が、横枠材22の存在によって阻害され難く、横枠材22によって木造架構2の意匠性が損なわれ難くなる。なお、横枠材22の上端面の位置L3は、上階の床面の位置と略等しく、上階において立設されるガラスパネル23の下端部を保持している。
【0036】
また、本実施形態の横枠材22は、正対視(図3及び図4参照)において、第1木質梁12aのみならず、第2木質梁12bとも重ならない。そのため、第2木質梁12bの意匠性についても、横枠材22の存在によって阻害され難い。
【0037】
縦枠材21及び横枠材22は、例えば、アルミ押出形材により構成可能である。ガラスパネル23は、厚み方向での可視光線透過率が70%以上とすることが好ましく、その無色透明であってもよく、有色透明であってもよい。なお、ガラスパネル23の可視光線透過率は、80%以上とすることが好ましく、85%以上とすることが特に好ましい。
【0038】
なお、図2図4及び図7に示すように、建物100の一部の階(例えば8階)では、第1帳壁部6aのガラスパネル23が設けられていない。このような階では、木造架構2の外周部の外周構造材4の一部が外部空間に露出するため、外周構造材4が雨水などで濡れる可能性がある。したがって、このような階では、外周構造材4としての木質柱11及び木質梁12に、特殊な防水加工を施せばよい。
【0039】
第2帳壁部6bは、第1帳壁部6aの屋内側で、第1帳壁部6aと所定間隔を隔てた位置で、第1帳壁部6aと対向して立設されている。また、第2帳壁部6bは、上述したように、外周構造材4の木質面5よりも屋内側に配置されている。より具体的に、第2帳壁部6bは、建物100の階によって、その配置されている位置が異なる。図6に示すように、9階の第2帳壁部6bは、9階の外周構造材4としての複数の木質柱11及び木質梁12の間に立設されている。これに対して、図7に示すように、8階の第2帳壁部6bは、8階の外周構造材4としての複数の木質柱11及び木質梁12よりも屋内側に立設されている。このように、第2帳壁部6bが配置される位置は、外周構造材4の木質面5よりも屋内側であれば特に限定されず、建物100の各階の平面計画等に応じて適宜配置すればよい。
【0040】
また、本実施形態の外周壁3は、第1帳壁部6a及び第2帳壁部6bを備えるが、この構成に限られない。外周壁3は、第1帳壁部6aを有し、第2帳壁部6bを備えない構成であってもよい。
【0041】
第2帳壁部6bは、例えば、第1帳壁部6aと同様、縦枠材、横枠材及びガラスパネルにより構成可能であるが、その構成は特に限定されない。
【0042】
本実施形態の外周壁3は、上述した帳壁部6が設けられた位置とは別の位置に、耐力壁部7を備える。本実施形態の耐力壁部7は、建物100の側面側に配置されている。まず、本実施形態の建物100において、帳壁部6及び耐力壁部7が設けられている位置の詳細について説明する。
【0043】
図2に示すように、本実施形態の建物100の正面側の外周壁3は、帳壁部6により構成されており、耐力壁部7では構成されていない。このようにすることで、上述したように、木造架構2の外周構造材4の意匠性を保持しつつ、外周構造材4の雨仕舞についても容易に対応可能となる。
【0044】
これに対して、図3図4図6及び図7に示すように、本実施形態の建物100の側面側の外周壁3は、帳壁部6及び耐力壁部7の両方により構成されている。より具体的に、本実施形態の建物100の側面側の外周壁3は、正面に連なる正面側(本実施形態では南側)の部分が帳壁部6により構成されており、背面に連なる背面側(本実施形態では北側)の部分が耐力壁部7により構成されている。このように、帳壁部6を建物100の側面のうち正面側に配置し、耐力壁部7を、建物100の側面のうち背面側に配置することで、建物100の正面のみならず、外部から視認され得る側面の正面側の部分についても、意匠性を高めることができる。その一方で、外部から視認され難い側面の背面側の部分に耐力壁部7を配置することで、建物100の意匠性を損なうことなく、建物100の構造安定性を高めることができる。
【0045】
耐力壁部7は、外周構造材4としての木質柱11及び木質梁12により区画される矩形状の空間に、例えばCLT(Cross Laminated Timber)パネルなどの木質面材を配置する構成としてもよく、上記の矩形状の空間にブレース材を配置するブレース構造としてもよい。このように、耐力壁部7の具体的な構成は特に限定されない。
【0046】
なお、上述したように、本実施形態の建物100の正面側、及び、側面のうち正面側の部分、の両方の外周壁3は、いずれも帳壁部6により構成されているが、それぞれの位置での外周構造材4の構成については相違している。具体的には、図2に示すように、正面側の外周構造材4は、木質柱11及び第1木質梁12aにより構成されているが、図3及び図4に示すように、側面側の外周構造材4は、木質柱11、第1木質梁12a及び第2木質梁12bにより構成されている。このようにすることで、側面側の外周構造材4が正面側と同様の木質柱11及び第1木質梁12aのみで構成されている構成と比較して、建物100の正面側での外周構造材4の部材断面を小型化することが可能となる。これにより、建物100の正面視での意匠性を、より高めることができる。
【0047】
なお、本実施形態の耐力壁部7は、建物100の側面側のみに配置されているが、建物100の側面側に加えて又は代えて、背面側に設けてもよい。図5に示すように、本実施形態の建物100の背面側の外周壁3は、外周構造材4としての木質柱11及び第1木質梁12aの相互間に設けられた第2帳壁部6bにより構成されており、第1帳壁部6aは設けられていない。そのため、外周構造材4としての木質柱11及び第1木質梁12aの屋外側の木質面5は、金属板を覆い被せることにより雨仕舞が施されているが、その雨仕舞の構成は特に限定されない。
【0048】
以上のとおり、本実施形態の建物100の設計法としては、木造架構2の木質構造材のうち外周部に位置する外周構造材4の屋外側の面に、木質材から構成される木質面5を配置する。そして、この木質面5の屋外側で、木質面5と対向する位置に、第1帳壁部6aの透明部8を配置する。このようにすることで、意匠性を保持しつつ、雨仕舞が容易な、木造架構2を備える建物100を実現できる。
【0049】
本発明に係る建物及び設計法は、上述した実施形態で示す具体的な構成及び工程に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は建物及び設計法に関する。
【符号の説明】
【0051】
2:木造架構
3:外周壁
4:外周構造材
5:木質面
6:帳壁部
6a:第1帳壁部(帳壁部)
6b:第2帳壁部
7:耐力壁部
8:透明部
11:木質柱
12:木質梁
12a:第1木質梁(木質梁)
12b:第2木質梁
21:縦枠材
22:横枠材
23:ガラスパネル(透明部)
100:建物
101:道路
102:隣接する建物
L1:横枠材の下端面の位置
L2:第1木質梁(木質梁)の上端面の位置
L3:横枠材の上端面の位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7