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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240910BHJP
   C08L 57/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240910BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L57/00
C08L53/02
C08L25/04
B60C1/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020071868
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167401
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】池尻 伸治
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117217(WO,A1)
【文献】特開2019-026712(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117168(WO,A1)
【文献】特開2019-182982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエン系ゴムを含有するゴム成分(A)と、C5系樹脂及び/又はC5-C9系樹脂(B)と、芳香族ビニル系重合体(C)とを含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記スチレンブタジエン系ゴムは、スチレン及びブタジエンを構成単位とするポリマーで、ポリマーの全構成単位100質量%中、スチレン単位及びブタジエン単位の合計単位量が95質量%以上で、かつ重量平均分子量が6万以上のポリマーであり、
前記C5系樹脂は、イソプレン及びスチレンの共重合体、及びナフサの熱分解によって得られるC5留分を重合又は共重合して得られる脂肪族系石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記芳香族ビニル系重合体は、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー、芳香族ビニル系化合物の単独重合体、及び芳香族ビニル系化合物とテルペン系化合物との共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー(ただし、前記スチレンブタジエン系ゴム、前記C5系樹脂、及び前記C5-C9系樹脂を除く)であり、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が30質量%以上であり、
前記スチレンブタジエン系ゴムは、スチレン含有量が30質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物(ただし、ゴム成分と、スチレン・アルキレンブロック共重合体と、を含み、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体は、スチレン単位の総含有量が30質量%以上であり、加硫後の発泡率が、5~30%であることを特徴とする、タイヤ用ゴム組成物を除く)。
【請求項2】
イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエン系ゴムを含有するゴム成分(A)と、C5系樹脂及び/又はC5-C9系樹脂(B)と、芳香族ビニル系重合体(C)と、液体可塑剤とを含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記スチレンブタジエン系ゴムは、スチレン及びブタジエンを構成単位とするポリマーで、ポリマーの全構成単位100質量%中、スチレン単位及びブタジエン単位の合計単位量が95質量%以上で、かつ重量平均分子量が6万以上のポリマーであり、
前記C5系樹脂は、イソプレン及びスチレンの共重合体、及びナフサの熱分解によって得られるC5留分を重合又は共重合して得られる脂肪族系石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記芳香族ビニル系重合体は、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー、芳香族ビニル系化合物の単独重合体、及び芳香族ビニル系化合物とテルペン系化合物との共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー(ただし、前記スチレンブタジエン系ゴム、前記C5系樹脂、及び前記C5-C9系樹脂を除く)であり、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が30質量%以上であり、
前記液体可塑剤の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記芳香族ビニル系重合体がスチレン単位を含むポリマーである請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記スチレンブタジエン系ゴムは、スチレン含有量が30質量%以上である請求項2又は3に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対する前記芳香族ビニル系重合体の含有量が10~60質量部である請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ゴム成分100質量部に対する前記C5系樹脂及び前記C5-C9系樹脂の合計含有量が10~60質量部である請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのウェットグリップ性能を改善する技術として、トレッドゴム組成物にシリカを配合する方法、低軟化点樹脂や液状ポリマー等の配合量を増量する方法、耐寒性可塑剤を配合する方法等が検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、近年では、ウェットグリップ性能の更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-159935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高速走行時のウェットグリップ性能が改善されるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエン系ゴムを含有するゴム成分(A)と、C5系樹脂及び/又はC5-C9系樹脂(B)と、芳香族ビニル系重合体(C)とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0006】
前記芳香族ビニル系重合体は、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー、芳香族ビニル系化合物の単独重合体、及び芳香族ビニル系化合物とテルペン系化合物との共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0007】
前記芳香族ビニル系重合体がスチレン単位を含むポリマーであることが好ましい。
【0008】
前記スチレンブタジエン系ゴムは、スチレン含有量が30質量%以上であることが好ましい。
【0009】
前記ゴム成分100質量部に対する前記芳香族ビニル系重合体の含有量が10~60質量部であることが好ましい。
【0010】
前記ゴム成分100質量部に対する前記C5系樹脂及び前記C5-C9系樹脂の合計含有量が10~60質量部であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエン系ゴムを含有するゴム成分(A)と、C5系樹脂及び/又はC5-C9系樹脂(B)と、芳香族ビニル系重合体(C)とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、高速走行時のウェットグリップ性能が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエン系ゴムを含有するゴム成分(A)と、C5系樹脂及び/又はC5-C9系樹脂(B)と、芳香族ビニル系重合体(C)とを含むタイヤ用ゴム組成物である。これにより、優れた高速走行時のウェットグリップ性能が得られる。
【0014】
上記ゴム組成物では、以下の作用機能によって上述の効果が得られると推測される。
イソプレン系ゴムやスチレンブタジエン系ゴムのポリマーと、芳香族ビニル系重合体(スチレン系重合体等)は、低歪み領域では、分子間相互作用により疑似的な架橋を形成し、ゴムの弾性率が向上する一方で、高歪み領域では、分子間距離が離れ、相互作用が解消されることで弾性率が低下する。これに対し、C5系樹脂及び/又はC5-C9系樹脂は、ゴムの全歪み領域の弾性率を低下させる。以上により、低歪み領域では弾性率がほとんど変化せず、高歪み領域の弾性率のみが低下することにより、歪みのあまりかからない非接地面の剛性を確保しつつ、高速走行により高い歪みのかかる接地面は大きく変形し、トレッド面の摩擦係数が増加する。前記ゴム組成物では、このような作用機能が発揮されることで、高速走行時のウェットグリップ性能が改善されると推察される。
【0015】
(ゴム成分(A))
前記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエン系ゴムを含むゴム成分(成分(A))を含有する。
【0016】
イソプレン系ゴムは、イソプレンを構成単位とするポリマーで、ポリマーの全構成単位100質量%中、イソプレン単位の単位量が95質量%以上のポリマーである。該単位量は、好ましくは98質量%以上で、100質量%でもよい。
【0017】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0018】
イソプレン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは6万以上、より好ましくは8万以上、更に好ましくは10万以上である。該Mwの上限は、好ましくは300万以下、より好ましくは250万以下、更に好ましくは200万以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0019】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
スチレンブタジエン系ゴム(SBR)は、スチレン及びブタジエンを構成単位とするポリマーで、ポリマーの全構成単位100質量%中、スチレン単位及びブタジエン単位の合計単位量が95質量%以上のポリマーである。該合計単位量は、好ましくは98質量%以上で、100質量%でもよい。
【0021】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエン系ゴムの含有量は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましく、45質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0022】
スチレンブタジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは6万以上、より好ましくは20万以上、更に好ましくは30万以上、特に好ましくは35万以上である。該Mwの上限は、好ましくは150万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下、特に好ましくは45万以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0023】
スチレンブタジエン系ゴムのスチレン含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。特に、スチレン量が多い方が相互作用が起こりやすく、高速走行時のウェットグリップ性能の向上効果が得られやすいと推察される。
【0024】
スチレンブタジエン系ゴムのビニル結合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくのビニル結合量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0025】
スチレンブタジエン系ゴムとしては、非油展スチレンブタジエン系ゴム、油展スチレンブタジエン系ゴムのいずれも使用可能である。また、非変性スチレンブタジエン系ゴム、変性スチレンブタジエン系ゴムのいずれも使用可能である。
【0026】
非変性スチレンブタジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するものであればよく、例えば、スチレンブタジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性スチレンブタジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性スチレンブタジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性スチレンブタジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性スチレンブタジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端スチレンブタジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性スチレンブタジエン系ゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0028】
スチレンブタジエン系ゴムとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0029】
イソプレン系ゴム、スチレンブタジエン系ゴム以外に使用可能なゴム成分(成分(A))としては、タイヤ分野で使用されているゴム等を使用できる。例えば、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。
【0030】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定でき、スチレン含有量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0031】
(C5系樹脂、C5-C9系樹脂(B))
前記ゴム組成物は、C5系樹脂及び/又はC5-C9系樹脂(成分(B))を含有する。
C5系樹脂、C5-C9系樹脂は、常温(25℃)で固体状態、液体状態のいずれの樹脂でもよく、なかでも、固体状態の樹脂が好ましい。
【0032】
C5系樹脂とは、炭素数5の炭化水素及びその多量体(2量体等)の構成単位を含むポリマーである。炭素数5の炭化水素及びその多量体としては、イソプレン、ペンタン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。C5系樹脂の具体例としては、イソプレン及びスチレンの共重合体等が挙げられる。また、C5樹脂としては、石油化学工業のナフサの熱分解によって得られるC5留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂も挙げられる。C5留分には、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン等のジオレフィン系炭化水素等が含まれる。
【0033】
C5-C9系樹脂としては、前記C5系樹脂とC9系樹脂との混合物が挙げられる。C9系樹脂とは、炭素数9の炭化水素及びその多量体(2量体等)の構成単位を含むポリマーである。炭素数9の炭化水素及びその多量体(2量体等)としては、インデン、メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。C9樹脂として、具体的には、C9留分をフリーデルクラフツ型触媒等を用いて(共)重合して得られる固体重合体等が挙げられ、例えば、インデンを主成分とする共重合体、メチルインデンを主成分とする共重合体、α-メチルスチレンを主成分とする共重合体、ビニルトルエンを主成分とする共重合体等が挙げられる。C5樹脂は脂肪族系のもの、C9樹脂は脂環族系のものが好ましい。
【0034】
C5系樹脂及びC5-C9樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。特に、所定量以上の樹脂を配合することで、十分に弾性率が低下し、所定量以下に調整することで、剛性が確保できると推察される。なお、C5系樹脂、C5-C9系混合樹脂単独の含有量も同範囲が好ましい。
【0035】
C5系樹脂、C5-C9系樹脂の軟化点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
なお、本発明において、ポリマー(樹脂、重合体等)の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0036】
C5系樹脂、C5-C9系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは2500以上であり、また、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0037】
C5系樹脂、C5-C9系樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは800以上、更に好ましくは1000以上であり、また、好ましくは2000以下、より好ましくは1300以下、更に好ましくは1100以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0038】
(芳香族ビニル系重合体(C))
前記ゴム組成物は、芳香族ビニル系重合体(成分(C))を含む。
芳香族ビニル系重合体は、C5-C9系樹脂は、常温(25℃)で固体状態、液体状態のいずれの重合体でもよく、なかでも、固体状態の重合体が好ましい。芳香族ビニル系重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
芳香族ビニル系重合体とは、芳香族ビニル系化合物の構成単位(芳香族ビニル系化合物由来の構成単位(芳香族ビニル単位))を含むポリマーである。芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、スチレン、α-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。すなわち、芳香族ビニル単位は、スチレン単位であることが好ましい。
【0040】
芳香族ビニル系重合体としては、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(芳香族ビニル系化合物ブロックを有する熱可塑性エラストマー)を好適に使用できる。芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーは、架橋点の役割を果たすハードセグメントと、ゴム弾性を示すソフトセグメントとで構成された共重合体(ブロック共重合体)が挙げられる。
【0041】
ハードセグメントとしては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等が挙げられ、ソフトセグメントとしては、ビニル-ポリジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリクロロプレン、ポリ2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。これらは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0042】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル単位の他、非共役オレフィン単位を有することが好ましい。非共役オレフィン単位は、非共役オレフィン由来の構成単位であり、該非共役オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0043】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー中の非共役オレフィン単位は、エチレン等の非共役オレフィンを重合して得られたものでもよいし、1,3-ブタジエン等の共役ジエン化合物を重合し、得られた共役ジエン単位を水素添加したものでもよい。すなわち、非共役オレフィン単位を有する芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーは、非共役オレフィンと他のモノマー等との共重合体でもよいし、当該共重合体の水素添加物(水添共重合体)でもよい。
【0044】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー中の芳香族ビニル系化合物単位の比率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0045】
なお、芳香族ビニル系化合物単位、非共役オレフィン単位の比率は、H-NMR測定の結果から算出できる。
【0046】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンブロックを有する熱可塑性エラストマー(スチレン系熱可塑性エラストマー)を用いることが好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン-ビニルイソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソブチレンジブロック共重合体(SIB)、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレントリブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレントリブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレントリブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレントリブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレントリブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。
【0047】
また、芳香族ビニル系重合体としては、芳香族ビニル系化合物(スチレン等)の単独重合体、芳香族ビニル系化合物(スチレン等)と他のモノマーとの共重合体も挙げられる。他のモノマーとしては、テルペン系化合物、α-メチルスチレン等が挙げられる。なかでも、テルペン系化合物、すなわち、芳香族ビニル系化合物とテルペン系化合物との共重合体が好ましい。芳香族ビニル系化合物の単独重合体、芳香族ビニル系化合物とテルペン系化合物との共重合体の場合、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエン系ゴムの双方との相溶性が高い方が、互いの疑似的な架橋の形成を促しやすく、高速走行時のウェットグリップ性能の向上効果が得られやすいと推察される。
【0048】
テルペン系化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0049】
芳香族ビニル系重合体の軟化点は、好ましくは40℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、また、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0050】
芳香族ビニル系重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。特に、芳香族ビニル系重合体の量が多いほど、相互作用が起こりやすく、高速走行時のウェットグリップ性能の向上効果が得られやすいと推察される。
【0051】
なお、本明細書では、イソプレン単位を構成単位に含むポリマーは、ポリマーの全構成単位100質量%中、イソプレン単位の含有率が95質量%以上でかつMwが5000以上のポリマーはイソプレン系ゴムに該当し、該含有率が95質量%未満又はMwが5000未満のポリマーはC5系樹脂に該当するものとする。スチレン及びブタジエンを構成単位に含むポリマーは、ポリマーの全構成単位100質量%中、スチレン単位及びブタジエン単位の合計含有率が95質量%以上でかつMwが5000以上のポリマーはスチレンブタジエン系ゴムに該当し、該合計含有率が95質量%未満又はMwが5000未満のポリマーは芳香族ビニル系重合体に該当するものとする。芳香族ビニル単位と、炭素数9の炭化水素及び/又はその多量体の構成単位(インデン単位等)とを構成単位に含むポリマーは、C9系樹脂に該当し、芳香族ビニル系重合体には該当しないものとする。なお、これらのポリマー(イソプレン単位の含有率が95質量%以上でかつMwが5000以上のポリマー、スチレン単位及びブタジエン単位の合計含有率が95質量%以上でかつMwが5000以上のポリマー等)は、常温(25℃)で固体であっても液体であってもよい。
【0052】
芳香族ビニル系重合体としては、旭化成(株)、ヤスハラケミカル(株)等の製品を使用できる。
【0053】
前記ゴム組成物には、C5系樹脂、C5-C9系樹脂、芳香族ビニル系重合体以外の常温(25℃)で固体状態の樹脂(固体樹脂)を配合してもよい。固体樹脂としては、タイヤ工業で汎用されているものであれば特に限定されず、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0054】
(シリカ)
上記ゴム組成物は、高速走行時のウェットグリップ性能の観点から、充填剤としてシリカを含むことが好ましい。シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは25質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0056】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは140m/g以上、更に好ましくは160m/g以上、特に好ましくは200m/g以上である。また、シリカのNSAの上限は、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0057】
ゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカ含有率は、高速走行時のウェットグリップ性能の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0058】
(シランカップリング剤)
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく、メルカプト系シランカップリング剤がより好ましい。
【0059】
メルカプト系シランカップリング剤としては、メルカプト基を有するシランカップリング剤、メルカプト基が保護化されているシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
好適なメルカプト系シランカップリング剤として、(i)下記式(2-1)で表されるシランカップリング剤、(ii)下記式(2-2)で示される結合単位Aと下記式(2-3)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤等が挙げられる。
【化1】
(式(2-1)中、R101は-Cl、-Br、-OR106、-O(O=)CR106、-ON=CR106107、-ON=CR106107、-NR106107及び-(OSiR106107(OSiR106107108)から選択される一価の基(R106、R107及びR108は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R102はR101、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R103は-[O(R109O)]-基(R109は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R104は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R105は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、xa、ya及びzaは、xa+ya+2za=3、0≦xa≦3、0≦ya≦2、0≦za≦1の関係を満たす数である。)
【化2】
【化3】
(式(2-2)及び(2-3)中、xbは0以上の整数、ybは1以上の整数である。R201は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R202は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
【0061】
上記式(2-1)におけるR102、R105、R106、R107及びR108の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記式(2-1)におけるR109の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0062】
上記式(2-1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(Momentive社製のNXT)が特に好ましい。上記シランカップリング剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記式(2-2)で示される結合単位Aと上記式(2-3)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤は、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC-S-C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0064】
また、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Aはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの-C15部分が結合単位Bの-SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0065】
上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、シリカとの反応性の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(2-2)、(2-3)と対応するユニットを形成していればよい。
【0066】
201のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などがあげられる。
【0067】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~12である。
【0068】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-オクテニル基などがあげられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0069】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などがあげられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0070】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~12である。
【0071】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基、2-プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、1-ペンテニレン基、2-ペンテニレン基、1-ヘキセニレン基、2-ヘキセニレン基、1-オクテニレン基などがあげられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0072】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0073】
式(2-2)で示される結合単位Aと式(2-3)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(xb)と結合単位Bの繰り返し数(yb)の合計の繰り返し数(xb+yb)は、3~300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの-C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0074】
式(2-2)で示される結合単位Aと式(2-3)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT-Z30、NXT-Z45、NXT-Z60などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
メルカプト系シランカップリング剤として、(iii)下記式(2-4)で表されるシランカップリング剤も好適に使用できる。
【0076】
【化4】
【0077】
(式(2-4)中、R~Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルコキシ基、又は-O-(R10-O)-R11(z個のR10は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30の2価の炭化水素基を表す。z個のR10はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、又は炭素数7~30のアラルキル基を表す。zは1~30の整数を表す。)で表される基を表す。R~Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【0078】
~Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルコキシ基、又は-O-(R10-O)-R11で表される基を表す。R~Rは、少なくとも1つが-O-(R10-O)-R11で表される基であることが好ましく、2つが-O-(R10-O)-R11で表される基であり、かつ、1つが分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0079】
~Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1~12(好ましくは炭素数1~5)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基などがあげられる。
【0080】
~Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1~12(好ましくは炭素数1~5)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトシキ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトシキ基、tert-ブトシキ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、へプチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基などがあげられる。
【0081】
~Rの-O-(R10-O)-R11において、R10は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30(好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~3)の2価の炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基、炭素数6~30のアリーレン基などがあげられる。中でも、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基が好ましい。
【0082】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30(好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。
【0083】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30(好ましくは炭素数2~15、より好ましくは炭素数2~3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1-プロペニレン基、2-プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、1-ペンテニレン基、2-ペンテニレン基、1-ヘキセニレン基、2-ヘキセニレン基、1-オクテニレン基などがあげられる。
【0084】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30(好ましくは炭素数2~15、より好ましくは炭素数2~3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。
【0085】
10の炭素数6~30(好ましくは炭素数6~15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などがあげられる。
【0086】
zは1~30(好ましくは2~20、より好ましくは3~7、さらに好ましくは5~6)の整数を表す。
【0087】
11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基を表す。中でも、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基が好ましい。
【0088】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30(好ましくは炭素数3~25、より好ましくは炭素数10~15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などがあげられる。
【0089】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30(好ましくは炭素数3~25、より好ましくは炭素数10~15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基などがあげられる。
【0090】
11の炭素数6~30(好ましくは炭素数10~20)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などがあげられる。
【0091】
11の炭素数7~30(好ましくは炭素数10~20)のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
【0092】
-O-(R10-O)-R11で表される基の具体例としては、例えば、-O-(C-O)-C1123、-O-(C-O)-C1225、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1429、-O-(C-O)-C1531、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1327などがあげられる。中でも、-O-(C-O)-C1123、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1531、-O-(C-O)-C1327が好ましい。
【0093】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1~6(好ましくは炭素数1~5)のアルキレン基としては、例えば、R10の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基と同様の基をあげることができる。
【0094】
上記式(2-4)で表される化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式で表される化合物(EVONIK-DEGUSSA社製のSi363)などがあげられ、下記式で表される化合物を好適に使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化5】
【0095】
前記ゴム組成物において、シランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、シリカ100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。また、該含有量は、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。下限以上にすることで、分散性の改善等の効果が十分に得られる傾向がある。上限以下にすることで、充分なカップリング効果が得られ、良好な補強性が得られる傾向がある。
【0096】
(カーボンブラック)
ゴム組成物は、充填剤としてカーボンブラックを含んでもよい。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
カーボンブラックを含む場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0098】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0099】
なお、ゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、高速走行時のウェットグリップ性能等の観点から、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、55質量部以上がより好ましく、60質量部以上が更に好ましい。上限は、120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下が更に好ましい。
【0100】
(液体可塑剤)
ゴム組成物は、液体可塑剤を含んでもよい。
液体可塑剤としては、25℃で液体状態の可塑剤であれば特に限定されず、オイル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。
【0102】
液体可塑剤の含有量(液体可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。なお、液体可塑剤の総量は、油展ゴムの油展オイルも含む量である。
【0103】
(他の材料)
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0105】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時のウェットグリップ性能等が得られる傾向がある。
【0107】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。
【0109】
上記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0111】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0113】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0115】
上記ゴム組成物には、上記成分の他、ゴム工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0116】
上記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0117】
混練条件としては、硫黄及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。硫黄、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、硫黄、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0118】
上記ゴム組成物は、例えば、タイヤのトレッド(キャップトレッド)に好適に使用できる。
【0119】
本発明のタイヤ(空気入りタイヤ等)は、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを得る。
【0120】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バス等の重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)等に使用可能である。また、オールシーズンタイヤ、サマータイヤ、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ等)等にも使用できる。
【実施例
【0121】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に示す各種薬品を用いて、各表に従って配合を変化させたゴム組成物を、タイヤサイズが195/65R15のタイヤのトレッドに用いることを想定し、かかるタイヤの高速走行時のウェットグリップ性能を計算した。結果を各表の評価の欄に記載する。
【0122】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:RSS#3
SBR1:JSR(株)製のSBR1502(スチレン含有量25質量%、ビニル結合量16質量%、Mw49万)
SBR2:旭化成(株)製のタフデン3830(スチレン含有量33質量%、ビニル結合量31質量%、Mw42万、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
カーボンブラック:ダイアブラックN220(三菱化学(株)製、NSA114m/g)
シリカ1:エボニックデグッサ社製のウラトシルVN3(NSA175m/g)
シリカ2:エボニック社製のウルトラシル9000GR(NSA229m/g)
シランカップリング剤:モメンティブ社製のNXT(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)
C5系樹脂1:エクソンモービル社製のESCOREZ 1102B(イソプレンとスチレンとの共重合体、軟化点95℃)
C5-C9系樹脂1:東ソー(株)製のペトロタック100V(C5/C9樹脂、軟化点94℃、Mw3900、Mn1200)
C5系樹脂2:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT-100AS(C5系石油樹脂、軟化点102℃)
芳香族ビニル系重合体1:下記製造例(スチレン含有量19質量%、エチレン含有量78質量%、ブタジエン3.3質量%)
芳香族ビニル系重合体2:旭化成(株)製のタフテックH1521(SEBS(水添SBS)、スチレン含有量18質量%、エチレン・ブチレン・ブタジエン合計含有量82質量%)
芳香族ビニル系重合体3:ヤスハラケミカル社製のYSレジンSX100(スチレン単独重合体、軟化点100℃)
芳香族ビニル系重合体4:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂(テルペン化合物とスチレンとの共重合体)、軟化点125℃)
芳香族ビニル系重合体5:クラレ(株)製のハイブラー7125(SEPS(水添SIS)、スチレン含有量20質量%)
芳香族ビニル系重合体6:旭化成(株)製のタフテックH1043(SEBS(水添SBS)、スチレン含有量67質量%)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(アロマ系プロセスオイル)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0123】
<製造例>
十分に乾燥した耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレンとシクロヘキサンとを加える。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1-ベンジルジメチルシリル-3-メチルインデン[[1-(PhCH)MeSi]-3-Me]C、トリス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体Gd[N(SiHMe、トリメチルアルミニウムを仕込み、トルエンを加えて80℃で6時間反応させる。その後、ジイソブチルアルミニウムハイドライド及びトルエンを加えたのち、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]を加えて触媒溶液を得る。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、75℃に加温する。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン5gを含むトルエン溶液を投入し、75℃で計4時間、重合反応を行う。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)のイソプロパノール溶液を加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、芳香族ビニル系重合体1を得る。
【0124】
(製造条件)
表1に示す配合処方に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で4分間混練りし、次に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。得られた各未加硫ゴム組成物をそれぞれキャップトレッドの形状に成型し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて170℃で15分間加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造する。
【0125】
(高速走行時のウェットグリップ性能(シミュレーション上での実車評価の計算))
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着し、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離について、実車での高速走行時のウェットグリップ性能(制動距離)を計算した。比較例6の高速走行時のウェットグリップ性能(制動距離)を100として、各配合について指数表示する。指数が大きいほど、高速走行時のウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0126】
【表1】