(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】記録方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20240910BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240910BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240910BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B41M5/00 112
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 100
C09D11/30
B41J2/01 501
B41J2/21
B41J2/01 123
(21)【出願番号】P 2020096026
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】石田 紘平
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069730(JP,A)
【文献】特開2016-014141(JP,A)
【文献】特開2019-177553(JP,A)
【文献】特開2019-156995(JP,A)
【文献】特開2020-049919(JP,A)
【文献】特開2019-147339(JP,A)
【文献】特開2019-042982(JP,A)
【文献】特開2011-231201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0362456(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0030295(US,A1)
【文献】特開2019-178322(JP,A)
【文献】特開2013-256050(JP,A)
【文献】特開2014-124842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00- 5/52
B41J 2/01
B41J 2/165-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色インク組成物をインクジェット法により記録媒体へ付着させる白色インク付着工程と、
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
を備え、
前記記録媒体が、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体であ
り、
前記白色インク組成物は、白色顔料を含有する水系のインクジェットインクであり、前記白色顔料を分散させる分散剤と、定着樹脂と、を含有し、
前記分散剤は、ノニオン性の分散剤であり、ポリオキシアルキレン構造、含窒素構造及びポリオール構造から選択される構造を有する、記録方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記定着樹脂が、ノニオン性、又は酸価が10.0mgKOH/g以下である、
記録方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記分散剤が、高分子分散剤である、
記録方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記定着樹脂の成分がポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂から選択される、
記録方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記分散剤は水溶性樹脂であり、前記定着樹脂は樹脂粒子である、
記録方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記定着樹脂の含有量が白色インク組成物の総量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下である、
記録方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記白色顔料の含有量が白色インク組成物の総量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下であり、前記分散剤の前記白色顔料に対する含有量が10.0質量%以上150.0質量%以下である、
記録方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記定着樹脂が樹脂粒子であり、前記樹脂粒子を酢酸カルシウム溶液と混合したときの体積平均粒子径の変化率が50.0%以下である、
記録方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項において、
含窒素有機溶剤を含有する、
記録方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項において、
標準沸点が160.0℃以上280.0℃以下の有機溶剤を含有する、
記録方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項において、
非白色顔料を含有する水系のインクジェットインクである非白色インク組成物
をインクジェット法により前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程を備え、
前記処理液は、前記非白色インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有するものである、
記録方法。
【請求項12】
請求項
1ないし請求項11のいずれか一項において、
非白色顔料を含有する水系のインクジェットインクである非白色インク組成物をインクジェット法により前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程を備え、
前記白色インク組成物と、前記非白色インク組成物と、を重ねて前記記録媒体に付着させる、記録方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記非白色インク組成物により前記記録媒体上に非白色インク組成物層を形成し、前記非白色インク組成物層上に前記白色インク組成物を付着させて白色インク組成物層を前記非白色インク組成物層に重ねて形成する、記録方法。
【請求項14】
請求項12又は請求項13のいずれか一項において、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程は、前記記録媒体に付着した組成物を加熱する加熱工程を備える、記録方法。
【請求項15】
請求項
1ないし請求項
14のいずれか一項において、
前記インクジェット法は、ライン方式の記録方式により行われる、記録方法。
【請求項16】
請求項
1ないし請求項
15のいずれか一項において、
前記記録方法により得られ記録物が、記録面にラミネート処理を施して用いられる、記録方法。
【請求項17】
請求項
1ないし請求項
16のいずれか一項において、
前記記録媒体が、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選択される材質のフィルムである、記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色インク組成物及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズルから微小なインク滴を吐出させて、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法が知られている。インクジェット記録方法は、ポリオレフィンフィルムなどの低吸収記録媒体又は非吸収記録媒体への適用も検討されている。特許文献1には、反応液及び白インクを用いた記録方法が開示され、白インクの発色性を反応液に含まれる凝集剤の作用により向上させる試みが為されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録媒体に、非白色画像と、白色画像とを重ねて形成することがある。これにより、白色画像の層が非白色画像の背景を隠蔽する下地層として働き、より良好な画質の画像が期待できる。
【0005】
ところが低吸収性記録媒体や非吸収性記録媒体に対して非白色画像と白色画像を重ねて形成する場合、さらなる画質の向上を図る等の目的で凝集剤を含む処理液を用いると、非白色画像の画質は向上するものの、背景の白色画像の埋まり性が不十分となる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る白色インク組成物の一態様は、
白色顔料を含有し、水系のインクジェットインクである白色インク組成物であって、
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させて行う記録に用いられ、
前記記録媒体が、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体であり、
前記白色顔料を分散させる分散剤と、定着樹脂と、を含有し、
前記分散剤が、ノニオン性の分散剤である。
【0007】
本発明に係る記録方法の一態様は、
上述の白色インク組成物をインクジェット法により記録媒体へ付着させる白色インク付着工程と、
前記処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
を備え、
前記記録媒体が、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のインクジェット記録装置の一例の概略図。
【
図2】実施形態のインクジェット記録装置の一例のキャリッジ周辺の概略図。
【
図3】実施形態のインクジェット記録装置の一例のブロック図。
【
図4】ライン記録方式の記録装置の一部分を模式的に示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0010】
1.白色インク組成物
本実施形態に係る白色インク組成物は、白色顔料を含有し、水系のインクジェットインクである白色インク組成物であって、凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させて行う記録に用いられる。
【0011】
白色インク組成物は、白色顔料と、白色顔料を分散させる分散剤と、定着樹脂と、を含有し、分散剤が、ノニオン性の分散剤である。
【0012】
これにより、白色画像の優れた埋まり性を得ることができる。さらには、ラミネート耐性、耐擦性、吐出安定性なども優れたものにできる。
【0013】
白色インクは、後述する非白色インク組成物及び凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させて行う記録に用いられるものとしてもよい。また、処理液は、非白色インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有するものであってもよい。
【0014】
1.1.白色顔料
白色インク組成物は、白色顔料を含有する。白色顔料は、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、白色顔料には、中空構造を有する粒子を用いてもよく、中空構造を有する粒子としては、公知のものを用いることができる。
【0015】
白色顔料の典型例としては、二酸化チタンが挙げられ、例えば、タイペークCR-50-2、CR-57、CR-58-2、CR-60-2、CR-60-3、CR-Super-70、CR-90-2、CR-95、CR953、PC-3、PF-690、PF-691、PF-699、PF-711、PF-728、PF-736、PF-737、PF-739、PF-740、PF-742、R-980、UT-771(いずれも石原産業株式会社製)等を例示できる。
【0016】
白色顔料としては、上記例示した中でも、白色度及び耐擦性が良好であるという観点から、二酸化チタンを用いることが好ましい。白色顔料は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0017】
白色顔料の体積基準の平均粒子径(D50)(「体積平均粒子径」ともいう。)は、好ましくは30.0nm以上600.0nm以下であり、より好ましくは100.0nm以上500.0nm以下、さらに好ましくは150.0nm以上400.0nm以下である。白色顔料の体積平均粒子径が上記範囲であれば、粒子が沈降しにくく、分散安定性を良好にすることができ、また、インクジェット記録装置に適用した際にノズルの目詰まり等を生じにくくすることができる。また、白色顔料の体積平均粒子径が前記範囲内であれば、画像の背景隠蔽性、視認性がより向上する。
【0018】
白色顔料の体積平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「ナノトラックシリーズ」マイクロトラックベル社製)が挙げられる。体積平均粒子径はD5
0値とする。
【0019】
なお、本明細書において、白色インク組成物、白色顔料等という際の「白色」という語句は、完全な白のみを指すものではなく、白と視認できる範囲であれば、有彩色や無彩色に着色した色や光沢を帯びた色も含む。また、インクや顔料の名称が、白色のインクや白色の顔料であることを窺わせるもので呼称、販売されるものを含む。
【0020】
より定量的には「白色」は、記録物が、例えばCIELABにおいて、L*が100である色のみならず、L*が60以上100以下であり、a*及びb*がそれぞれ±10以下の色も含まれる。
【0021】
例えば、白色インク組成物は、透明フィルム製の記録媒体の記録媒体表面が、該インクにより十分に被覆される量で記録された場合に、記録物の記録部分の明度(L*)及び色度(a*、b*)を、CIELABに準拠した分光測光器を用いて測色した場合に、上記の範囲であるものが好ましい。十分に被覆される量で記録された記録物は、例えば、15mg/inch2の付着量である。さらに好ましくは、80≦L*≦100、-4.5≦a*≦2、-10≦b*≦2.5である。透明フィルム製の記録媒体としては、例えばLAGジェットE-1000ZC(リンテック社製)が挙げられる。CIELABに準拠した分光測光器としては、例えばSpectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)があげられ、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測する。
【0022】
一方、本明細書における非白色インク組成物、非白色顔料等という際の「非白色」という語句は、上記の「白色」以外の色を指す。
【0023】
白色インク組成物における白色顔料の含有量(固形分)は、白色インク組成物の総量に対して、0.5質量%以上20.0質量%以下が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下であり、さらにより好ましくは5.0質量%以上20.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは10.0質量%以上20.0質量%以下である。白色顔料の含有量が上記範囲内であれば、十分な背景隠蔽性、発色性を有する画像を得ることができる。また、白色顔料の含有量が上記範囲内であれば、白色顔料のさらに良好な分散性を得ることができる。
【0024】
白色顔料は、分散媒中に安定的に分散できることが好適であり、そのために本実施形態では分散剤を使用して分散させている。分散剤としては、樹脂分散剤等が挙げられ、上記の白色顔料を含む白色インク組成物中での白色顔料の分散安定性を良好とできるものから選択される。なお、白色顔料は、例えば、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して顔料粒子の表面を修飾することにより、自己分散型の顔料として使用してもよいが、その場合も本実施形態では分散剤を使用する。
【0025】
1.2.分散剤
本実施形態の白色インク組成物は、白色顔料を分散させる分散剤を含有する。分散剤は、ノニオン性である。ここで、ノニオン性の分散剤とは、一般的にノニオン性といえるものはノニオン性であるとする。分散剤は、白色顔料を分散させるものであり、インク中において、白色顔料の粒子の周囲に付着するなどして存在し、白色顔料と共に粒子を構成していることが好ましい。
【0026】
分散剤の化合物が、アニオン性基、カチオン性基を有しないものはノニオン性であるとする。
【0027】
又は、分散剤の化合物が、アニオン性基、カチオン性基を若干有していても、分散剤を水に溶解又は分散させた分散剤液、又は、分散剤を用いて白色顔料を水に分散させた顔料分散液(分散剤)が、液の全体としてノニオン性であればノニオン性であるものとする。例えば、上記液や分散液のゼータ電位を測定した場合に、ゼータ電位の値の絶対値が比較的大きくないものである。例えば、-30mV以上+30mV以下であるものである。さらには、-20mV以上+20mV以下が好ましく、-10mV以上+10mV以下がさらに好ましく、-5mV以上+5mV以下が特に好ましい。なお、例えばメーカー情報で分散剤がノニオン性とされているものはノニオン性であるとしてもよい。
【0028】
白色顔料を分散剤で分散させた状態のゼータ電位は、例えば、ゼータ電位及び粒径測定システム「ELSZ-2」(大塚電子株式会社製)、又は、「Zetasizer Nano ZS」(マルバーン社製)等を用いて定法により測定することができる。
【0029】
さらに、ノニオン性の分散剤の酸価は、10.0mgKOH/g以下が好ましく、さらには、好ましくは8.0mgKOH/g以下、より好ましくは5.0mgKOH/g以下であることが好ましい。また0mgKOH/g以上が好ましい。
【0030】
分散剤の酸価とは、分散剤1g中に含まれる酸を中和するために必要となる水酸化カリウム(KOH)のmg数であり、公知の装置を用いて電位差滴定法により測定することができる。具体的には、例えば京都電子工業社製「電位差自動滴定装置AT-610」を用い、エタノール/トルエン混合溶媒中で、KOH溶液にて滴定できる値である。
【0031】
ノニオン性の分散剤の酸価が上記範囲であると、埋まりや、白色顔料の分散性をより良好とすることができる。
【0032】
分散剤としては、低分子分散剤、高分子分散剤を用いることができる。これらのうちでも高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤の分子量は、2000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、1万以上がさらに好ましい。上限は限るものではないが例えば20万以下が好ましく、10万以下がより好ましい。一方、低分子の分散剤の分子量は、2,000未満が好ましく、限るものではないが例えば、100~1,500などであってもよい。
【0033】
分散剤としては、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂;スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のスチレン(メタ)アクリル酸エステル系樹脂;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物(樹脂)であって直鎖状及び/又は分岐状であってもよく、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂;ポリビニルアルコール類;酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体;等の水溶性樹脂を挙げることができる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0034】
スチレン系樹脂分散剤の市販品としては、例えば、DISPERBYK-190(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスコールN-509(第一工業製薬製)、K-30(日本触媒株式会社製:ポリビニルピロリドン)等が挙げられる。
【0035】
さらに、ウレタン系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-182、BYK-183、BYK-184、BYK-185(ビックケミー株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
ノニオン性の分散剤としては、例えば親水性部として、ポリオキシアルキレン構造、含窒素構造、ポリオール構造の何れかを有する化合物がより好ましい。
【0037】
ポリオキシアルキレン構造としては、例えばポリオキシエチレン構造、ポリオキシプロピレン構造などが挙げられる。
【0038】
含窒素構造としては、例えばポリアミド、ポリアミン、ポリビニルピロリドンなどの構造が挙げられる。
【0039】
ポリオール構造としては、分子中に水酸基を多数有するものであればよい。例えば分子の主骨格に水酸基を有する(置換された)化合物、分子の側鎖に水酸基を有する化合物などがあげられる。例えば、後者としては、水酸基を有するビニルモノマー又はアクリルモノマーの重合体が挙げられる。前者としては、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0040】
分散剤が、ポリオキシアルキレン構造、含窒素構造及びポリオール構造から選択される構造を有する場合、白色顔料の分散性をさらに良好とすることができる。
【0041】
分散剤の白色顔料に対する含有量は、10.0質量%以上150.0質量%以下、好ましくは15.0質量%以上120.0質量%以下、より好ましくは20.0質量%以上100.0質量%以下、さらに好ましくは30.0質量%以上90.0質量%以下である。分散剤の白色顔料に対する含有量が上記範囲であれば、白色画像の十分な発色性及び白色顔料の良好な分散性を得ることができる。
【0042】
1.3.定着樹脂
本実施形態の白色インク組成物は、定着樹脂を含有する。定着樹脂の機能の一つは、白色顔料を記録媒体に対して定着させることである、これにより白色画像の耐擦性やラミネート耐性を得ることができる。
【0043】
白色インク組成物は、定着樹脂として、白色インク組成物に溶解する水溶性樹脂を用いてもよいし、白色インク組成物に分散する樹脂粒子を用いてもよい。水溶性樹脂は、白色インク組成物の溶媒中に溶解するが、白色顔料の分散に用いる上述の分散剤とは区別する。定着樹脂の水溶性樹脂は、顔料を含む粒子を構成しておらず、インクの溶媒成分中に溶解して存在する。
【0044】
また定着樹脂が樹脂粒子の場合、白色顔料と共に粒子を構成する樹脂ではなく、白色顔料を含む粒子とは別の粒子である。
【0045】
定着樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル樹脂などが挙げられる。
【0046】
水溶性樹脂は、例えば、構造中の親水性部の含有率がより高く、水に溶解する樹脂があげられる。例えば、水に樹脂を、常温、1質量%で混合し攪拌後、混合液中に樹脂が個体で残っていたり混合液の全体が広く濁って見えたりしないものを、水溶性樹脂とする。
【0047】
水溶性ポリエステル樹脂の例として、互応化学プラスコートZ-221、Z-446、Z-561、Z―730、Z-687等が挙げられる。
【0048】
定着樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂(スチレンアクリル系樹脂を含む)、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹
脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等からなる樹脂粒子が挙げられる。なかでも、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオフレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。また、ウレタン系樹脂として、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840、E-2000、E-4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS-6021、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)などの市販品を用いてもよい。
【0050】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられる。また例えば、ビニル系単量体としては、スチレンなどが挙げられる。
【0051】
アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、中央理科工業社製)、モビニール952B、718A(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0052】
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、後述するスチレン・アクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリルとの表記は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0053】
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレン単量体と(メタ)アクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレン・アクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)、ビニブラン2586(日信化学工業社製)等を用いてもよい。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB-1200、CD-120
0(商品名、ユニチカ株式会社製)等を用いてもよい。
【0055】
また、樹脂粒子は、エマルジョンの形態で供給されてもよく、そのような樹脂エマルジョンの市販品の例としては、マイクロジェルE-1002、E-5002(日本ペイント社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート4001(DIC社製商品名、アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート5454(DIC社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAM-710、AM-920、AM-2300、AP-4735、AT-860、PSASE-4210E(アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP-7020(スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、ポリゾールSH-502(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAD-13、AD-2、AD-10、AD-96、AD-17、AD-70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールPSASE-6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)(昭和電工社製商品名)、ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK-200(商品名、アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、AE-120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルジョン)(日信化学工業社製商品名)、エリーテルKA-5071S、KT-8803、KT-9204、KT-8701、KT-8904、KT-0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、ハイテックSN-2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、タケラックW-6020、W-635、W-6061、W-605、W-635、W-6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、パーマリンUA-150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、NeoRez R-9660、R-9637、R-940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、アデカボンタイター HUX-380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、モビニール966A、モビニール7320、モビニール7470(日本合成化学株式会社製)、ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、NKバインダーR-5HN(新中村化学工業株式会社製)、ハイドランWLS-210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)、ジョンクリル7610(BASF社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0056】
定着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-50℃以上200℃以下であり、より好ましくは0℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上100℃以下である。また50℃以上80℃以下が特に好ましい。樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、耐久性及び耐目詰まり性により優れる傾向にある。ガラス転移温度の測定は、例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC7000」を用いて、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じて行われる。
【0057】
樹脂粒子の体積平均粒子径は、10nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上300nm以下がより好ましく、30nm以上250nm以下がさらに好ましく、40n
m以上220nm以下が特に好ましい。体積平均粒子径は、前述の方法で測定することができる。
【0058】
定着樹脂が樹脂粒子である場合、樹脂粒子を酢酸カルシウム溶液と混合したときの体積平均粒子径の変化率が50.0%以下であることがより好ましい。かかる変化率は、まず、樹脂粒子の10質量%分散液を測定した場合の体積平均粒子径を分母とする。次に、酢酸カルシウムの5質量%水溶液に樹脂粒子の10質量%分散液を1:10の質量比で混合する。つまり酢酸カルシウムと樹脂粒子の固形分の質量比として5:100の質量比で混合する。この混合液で測定される体積平均粒子径を測定し、これを分子とする。分子/分母の比に、100をかけ100分率とした値である。
【0059】
混合後、攪拌を充分に行う、例えば1分間攪拌する。攪拌後、測定を速やかに行う。例えば1分後に測定を行う。測定は前述の顔料の体積平均粒子径の測定と同様に測定を行い、D50値である。
【0060】
体積平均粒子径の変化率は、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。下限は0%以上が好ましい。この場合、埋まりや、ラミネート耐性、耐擦性などがより優れ好ましい。
【0061】
この白色インク組成物によれば、樹脂粒子の凝集性がより抑制され、画像の埋まり性をさらに良好にすることができる。
【0062】
定着樹脂はノニオン性(ノニオン分散性)が好ましい。ノニオン性の定着樹脂は、前述のノニオン性の分散剤の説明において、分散剤を定着樹脂に置き換えて考えたものである。また分散剤を水に溶解又は分散させた分散剤液を、定着樹脂を水へ溶解又は分散させた定着樹脂液に置き換えて考えたものである。
【0063】
なお、定着樹脂が樹脂粒子である場合、定着樹脂液は、樹脂粒子の分散液である。この場合、樹脂粒子の分散液は、分散剤を用いて樹脂粒子を分散した分散液でも良いし、分散剤を用いずに樹脂粒子を分散した自己分散型の樹脂粒子の分散液でもよい。分散剤を用いて樹脂粒子を分散した分散液の場合、分散液の全体とは、分散剤も含めた分散液の全体である。例えば、樹脂粒子の分散に用いた分散剤がノニオン性の分散剤であって、分散液の全体がノニオン性であるものも挙げられる。
【0064】
一方、定着樹脂はアニオン性でもよい。アニオン性の定着樹脂は、前述のノニオン性の定着樹脂ではないものであり、定着樹脂を水へ溶解又は分散させた定着樹脂液が、アニオン性であるものである。
【0065】
例えば、定着樹脂の樹脂がアニオン性であるか、定着樹脂がアニオン性の分散剤により分散されている等であり、定着樹脂液の全体としてアニオン性を示すものである。
【0066】
定着樹脂の樹脂がアニオン性である場合、定着樹脂の樹脂が、アニオン性基を有するものである。また樹脂が酸価を有するものであることができる。
【0067】
低着樹脂が樹脂粒子の場合、樹脂粒子は、酸価を有する樹脂粒子が自己分散したものでもよい。樹脂粒子の樹脂の酸価は、反応性が大きすぎない様に、低い方が好ましく、30mgKOH/g以下が好ましく、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下である。樹脂粒子の樹脂の酸価の下限は、限定されないが0mgKOH/g以上である。なお、酸価は中和滴定法
で測定したものである。
【0068】
定着樹脂の樹脂の分子量は、1万以上が好ましい。定着樹脂は、ノニオン性樹脂、アニオン性樹脂がより好ましく、ノニオン性樹脂がさらに好ましい。ノニオン性樹脂の場合、酸価は10.0mgKOH/g以下が好ましく、5.0mgKOH/g以下がより好ましい。
【0069】
定着樹脂としては、アニオン性樹脂も用いることができる。アニオン性樹脂の場合も酸価は低い方が好ましく、例えば、50.0mgKOH/g以下、好ましくは20.0mgKOH/g以下、より好ましくは10.0mgKOH/g以下、さらに好ましくは5.0mgKOH/g以下である。
【0070】
定着樹脂の成分は、ポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂から選択されることがより好ましい。このように選択することで白色画像の定着がより良好となり、耐擦性をより良好にすることができる。
【0071】
白色インク組成物における定着樹脂の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、固形分として、0.1質量%以上30.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上15.0質量%以下である。定着樹脂の含有量がこの範囲であれば、十分な耐擦性の白色画像を形成することができる。
【0072】
1.4.その他の成分
白色インク組成物は、上記の成分以外に、有機溶剤、界面活性剤、水、ワックス、添加剤等を含んでもよい。
【0073】
(有機溶剤)
白色インク組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は水溶性を有することが好ましい。有機溶剤の機能の一つは、記録媒体に対する白色インク組成物の濡れ性を向上させることや、白色インク組成物の保湿性を高めることが挙げられる。また、有機溶剤は、浸透剤としても機能できる。
【0074】
有機溶剤としては、例えば、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、多価アルコール等を挙げることができる。これらの中でも、アルキレングリコールエーテル類、含窒素溶剤、多価アルコール等が好ましい。
【0075】
含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。白色インク組成物が含窒素有機溶剤を含有する場合には、画像の耐擦性や記録媒体上での濡れ拡がりをさらに良好にすることができる。有機溶剤が含窒素溶剤を含むことが好ましく、特に非環状アミドが好ましい。
【0076】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは凝集剤の溶解性や、後述する樹脂粒子の皮膜化を促進させる点で好ましく、特に2-ピロリドンがより好ましい。
【0077】
非環状アミド類としては、例えば、アルキルアミド類が挙げられ、例えば、アルコキシアルキルアミド類が挙げられる。なお、アルキルアミド類として、アルコキシアルキルアミド類以外のものとしては、アルコキシアルキルアミド類において、アルコキシ基を有さ
ない構造のもの等が挙げられる。
【0078】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、等を例示することができる。
【0079】
また、アルコキシアルキルアミド類として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることも好ましい。
【0080】
R1-O-CH2CH2-(C=O)-NR2R3 ・・・(1)
【0081】
上記式(1)中、R1は、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。「炭素数1以上4以下のアルキル基」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基であることができる。上記式(1)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0082】
式(1)で表される化合物の機能としては、例えば、低吸収性記録媒体上に付着させた白色インク組成物の表面乾燥性及び定着性を高めることが挙げられる。特に、上記式(1)で表される化合物は、塩化ビニル系樹脂を適度に軟化・溶解する作用に優れている。そのため、上記式(1)で表される化合物は、塩化ビニル系樹脂を含有する被記録面を軟化・溶解して、低吸収性記録媒体の内部に白色インク組成物を浸透させることができる。このように白色インク組成物が低吸収性記録媒体に浸透することで、白色インク組成物が強固に定着し、かつ、白色インク組成物の表面が乾燥しやすくなる。したがって、得られる画像は、表面乾燥性及び定着性に優れたものとなりやすい。
【0083】
また、上記式(1)中、R1は、炭素数1のメチル基であることがより好ましい。上記式(1)において、R1がメチル基である化合物の標準沸点は、R1の炭素数が2以上4以下のアルキル基である化合物の標準沸点と比較して低い。そのため、上記式(1)において、R1がメチル基である化合物を用いると、付着領域の表面乾燥性(特に高温多湿環境下で記録された場合の画像の表面乾燥性)を一層向上できる場合がある。
【0084】
含窒素溶剤の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、特に限定されないが、2質量%以上50質量%以下程度であり、4質量%以上30質量%以下であることが好ましい。上記範囲にあることで、画像の定着性及び表面乾燥性(特に高温多湿環境下で記録された場合の表面乾燥性)を一層向上できる場合がある。
【0085】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又は
ジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。アルキレングリコールエーテルは、アルキレングリコールの部分の炭素数は2~6が好ましく、エーテルの部分1つの炭素数は1以上4以下が好ましい。
【0086】
また、上記のアルキレングリコールは、モノエーテルのほうが、画質などがより優れ好ましい。
【0087】
多価アルコールとしては、1,2-アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール等のアルカンジオール類)、1,2-アルカンジオールを除く多価アルコール(ポリオール類)(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール(別名:1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等)等が挙げられる。
【0088】
多価アルコール類は、アルカンジオール類とポリオール類に分けることができる。アルカンジオール類は、炭素数5以上のアルカンのジオールである。アルカンの炭素数は好ましくは5~15であり、より好ましくは6~10であり、更に好ましくは6~8である。好ましくは1,2-アルカンジオールである。
【0089】
ポリオール類は炭素数4以下のアルカンのポリオールか、炭素数4以下のアルカンのポリオールの水酸基同士の分子間縮合物である。アルカンの炭素数は好ましくは2~3であ
る。ポリオール類の分子中の水酸基数は2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。ポリオール類が上記の分子間縮合物である場合、分子間縮合数は2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。多価アルコール類は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。
【0090】
アルカンジオール類及びポリオール類は、主に浸透溶剤及び/又は保湿溶剤として機能することができる。しかし、アルカンジオール類は浸透溶剤としての性質が強い傾向があり、ポリオール類は保湿溶剤としての性質が強い傾向がある。
【0091】
アルカンジオール類、アルキレングリコールエーテル類は、浸透溶剤として優れ、画質がより優れ好ましい。とくにアルカンジオール類が好ましい。有機溶剤が、アルカンジオール類、アルキレングリコールエーテル類の何れか1種以上を含むことが好ましい。
【0092】
また有機溶剤がポリオール類を含む場合、吐出安定性などがより優れ好ましい。有機溶剤がポリオール類を含むことが好ましい。
【0093】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0094】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、ε-デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1以上4以下のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0095】
白色インク組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤を一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。また、有機溶剤の、白色インク組成物全質量に対する合計の含有量は、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、10質量%以上45質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲内にあることで、濡れ拡がり性と乾燥性のバランスがさらによく、さらに高画質な画像を形成しやすい。
【0096】
また、白色インク組成物は、上記例示した有機溶剤のうち、標準沸点が160.0℃以上280.0℃以下の有機溶剤を含有することがより好ましい。このようにすれば、形成される画像の乾燥、定着がより早い記録を行うことができる。また、画像の耐擦性、記録
媒体上での濡れ拡がり及び/又は画像の乾燥性をさらに良好にすることができる。
【0097】
さらに、白色インク組成物は、標準沸点が280.0℃超のポリオール類の有機溶剤を1.0質量%を超えて含有しないことがより好ましい。白色インク組成物における、標準沸点が280℃を越えるポリオール類の有機溶剤の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下、より特に好ましくは0.1質量%以下である。標準沸点が280℃を越えるポリオール類の有機溶剤の含有量の下限は0質量%でもよい。X質量%を超えて含有しない、というとき、含有量がX質量%以下であるという意味であり、含有しない又はX質量%以下で含有するという意味である。
【0098】
このようにすれば、形成される画像の乾燥が良好となり、より早い記録を行うことができ、記録媒体との密着性も向上できる。さらには、白色インク組成物は、標準沸点が280.0℃超の有機溶剤(ポリオール類に限らず)を上記の範囲とすることも、より好ましい。標準沸点が280℃を越える有機溶剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0099】
(界面活性剤)
白色インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、白色インク組成物の表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0100】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0101】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)、シルフェイスSAG002、005、503A、008(以上商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0102】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-3440(ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS-241、S-242、S-243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(ネオス社製)等が挙げられる。
【0103】
白色インク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。白色インク組成物に界面活性剤を含有させる場合の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下、好ましくは0.4質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以上1.0質量%以下とすることができる。
【0104】
(水)
本実施形態に係る記録方法で使用する白色インク組成物は、水を含有してもよい。白色インク組成物は水系のインク組成物であることが好ましい。水系とは主要な溶媒成分の1つとして水を含有する組成物である。このようにすれば、環境負荷を低減した、臭気等の少ない記録を行うことができる。
【0105】
水は、白色インク組成物の主となる溶媒成分として含んでもよく、乾燥により蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。水の含有量は白色インク組成物の総量に対して好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以上95質量%以下である。
【0106】
(ワックス)
白色インク組成物は、ワックスを含有してもよい。ワックスは、白色インク組成物による画像に滑沢を付与する機能を備えるので、白色インク組成物による画像の剥がれ等を低減できる。
【0107】
ワックスを構成する成分としては、例えばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α-オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。これらの中でも、後述する軟包装フィルムに対する定着性を高める効果により優れるという観点から、ポリオレフィンワックス(特に、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)及びパラフィンワックスを用いることが好ましい。
【0108】
ワックスとしては市販品をそのまま利用することもでき、例えば、ノプコートPEM-17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、539、593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0109】
また、記録方法に加熱工程等が含まれる場合に、ワックスが溶融しすぎて、その性能が低下することを抑制するという観点から、ワックスの融点は、好ましくは50℃以上200℃以下、より好ましくは融点が70℃以上180℃以下、さらに好ましくは融点が90℃以上150℃以下のワックスを用いることが好ましい。
【0110】
ワックスは、エマルジョンあるいはサスペンションの形態で供給されてもよい。ワックスの含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、固形分換算で0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。ワックスの含有量が上記範囲内にあると、上記ワックスの
機能を良好に発揮できる。なお、白色インク組成物及び後述する非白色インク組成物の一方又は両方が、ワックスを含有すれば、画像に滑沢を付与する機能を十分に得ることができる。
【0111】
(添加剤)
白色インク組成物は、添加剤として、尿素類、アミン類、糖類等を含有してもよい。尿素類としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等、及び、ベタイン類(トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、N,N,N-トリメチルアラニン、N,N,N-トリエチルアラニン、N,N,N-トリイソプロピルアラニン、N,N,N-トリメチルメチルアラニン、カルニチン、アセチルカルニチン等)等が挙げられる。
【0112】
アミン類としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。尿素類やアミン類は、pH調整剤として機能させてもよい。
糖類としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース等が挙げられる。
【0113】
(その他)
本実施形態に係る記録方法で使用する白色インク組成物は、さらに必要に応じて、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の成分を含有してもよい。
【0114】
白色インク組成物は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0115】
1.5.記録媒体
白色インク組成物は、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体に対して用いられる。低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体とは、インクを全く吸収しない、又はほとんど吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、本実施形態で使用する記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙-液体吸収性試験方法-ブリストー法」に述べられている。このような非吸収性の性質を備える記録媒体としては、インク吸収性を備えるインク受容層を記録面に備えない記録媒体や、インク吸収性の小さいコート層を記録面に備える記録媒体が挙げられる。
【0116】
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン等があげられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0117】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0118】
記録媒体が、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選択される材質のフィルムである場合、白色インク組成物の画像における埋まり性等の優れた効果がより顕著に現れ好ましい。また、記録媒体が、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選択される材質のフィルムである場合、ラミネート耐性や耐擦性が特に劣りやすい傾向があり、本発明が特に有用である。特に、記録媒体が、ポリオレフィン樹脂から選択される材質のフィルムである場合、特にこの傾向がある。
【0119】
低吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、表面に油性インクを受容するための塗工層が設けられた塗工紙が挙げられる。塗工紙としては、特に限定されないが、例えば、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
【0120】
本実施形態の白色インク組成物を用いれば、このような非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対しても、定着性が良好で耐擦過性が良好な所定の画像を高速に形成することができる。また、このような記録媒体は、インクの溶媒成分を吸収し難く、記録媒体上に残った有機溶剤によって、記録物の耐擦性や定着性などの堅牢性が特に課題となる傾向があるが、本実施形態の白色インク組成物を用いれば、優れた堅牢性が得られ好ましい。
【0121】
1.6.作用効果等
本実施形態の白色インク組成物によれば、分散剤がノニオン性であるので、処理液の凝集剤による作用を受けにくい。これにより、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体に処理液を付着させ、白色インク組成物を付着させた場合に、埋まり性に優れた白色画像を形成することができる。また、定着樹脂がノニオン性、又は酸価が10.0mgKOH/g以下である場合には、定着樹脂も凝集剤の影響を受けにくいので、埋まり性にさらに優れた白色画像を形成することができる。
【0122】
本実施形態は、上述の白色インク組成物と後述の非白色インク組成物とを有するインクセットとしてもよい。又は上述の白色インク組成物と後述の処理液とを有するインクセットとしてもよい。また、白色インク組成物と、後述の非白色インク組成物と、後述の処理液とを有するインクセットとしてもよい。
【0123】
2.記録方法
本実施形態の記録方法は、上述の白色インク組成物をインクジェット法により上述の記録媒体へ付着させる白色インク付着工程と、処理液を上述の記録媒体に付着させる処理液付着工程と、を備える。
【0124】
2.1.白色インク付着工程
白色インク付着工程は、記録ヘッドを記録媒体に対して走査しながら白色インク組成物を付着させる態様であれば、どのような方式で行われてもよい。例えば、記録ヘッドをインクジェットヘッドとし、インクジェットヘッドから白色インク組成物を吐出することにより行うことができ、好ましい。このようにすれば、小型の装置で少量多種類の印刷を効率よく行うことができる。
【0125】
白色インク組成物が、記録媒体にインクジェット法により付着される。そのため、白色インク組成物の粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。白色インク組成物が、インクジェット法によって記録媒体に付着される場合、所定の画像を効率的に記録
媒体に形成することが容易である。
【0126】
白色インク付着工程は、インクジェット記録装置により容易に実効できる。インクジェット記録装置の詳細については後述する
【0127】
2.2.処理液付着工程
処理液付着工程は、処理液を記録媒体へ付着させる工程である。
【0128】
2.2.1.処理液
処理液は、凝集剤を含む。
【0129】
(凝集剤)
処理液は、非白色インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する。上述した白色インク組成物、処理液の凝集剤による凝集性が比較的低く、優れた埋まりを得ることができる。
【0130】
凝集剤は、非白色インク組成物に含まれる顔料、非白色インク組成物に含まれ得る樹脂粒子などの成分と反応することで、顔料や樹脂粒子を凝集させる作用を有する。ただし、凝集剤による顔料や樹脂粒子の凝集の程度は凝集剤、顔料、樹脂粒子のそれぞれの種類によって異なり、調節することができる。また、凝集剤は、非白色インク組成物に含まれる顔料及び樹脂粒子と反応することで、顔料及び樹脂粒子を凝集させることができる。このような凝集により、例えば、顔料の発色を高めること、及び/又は、樹脂粒子の定着性を高めることができる。
【0131】
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩、酸、カチオン性化合物等が挙げられ、カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂(カチオン性ポリマー)、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。これらの中でも、金属塩としては多価金属塩が好ましく、カチオン性化合物としてはカチオン性樹脂が好ましい。酸としては有機酸、無機酸が挙げられ有機酸が好ましい。そのため、凝集剤としては、カチオン性樹脂、有機酸、及び多価金属塩から選ばれることが、得られる画質、耐擦性、光沢等が特に優れる点で好ましい。
【0132】
金属塩としては好ましくは多価金属塩であるが、多価金属塩以外の金属塩も使用可能である。これらの凝集剤の中でも、インクに含まれる成分との反応性に優れるという点から、金属塩、及び有機酸から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、カチオン性化合物の中でも、処理液に対して溶解しやすいという点から、カチオン性樹脂を用いることが好ましい。また、凝集剤は複数種を併用することも可能である。
【0133】
多価金属塩とは、2価以上の金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の金属イオンとしては、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの多価金属塩を構成する金属イオンの中でも、インクの成分の凝集性に優れているという点から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。
【0134】
多価金属塩を構成するアニオンとしては、無機イオン又は有機イオンである。すなわち、本発明における多価金属塩とは、無機イオン又は有機イオンと多価金属とからなるものである。このような無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。有機イオンとしては有機酸イオンが挙げられ、例えばカルボン酸イオンが挙げられる。
【0135】
なお、多価金属化合物はイオン性の多価金属塩であることが好ましく、特に、上記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩である場合、処理液の安定性がより良好となる。また、多価金属の対イオンとしては、無機酸イオン、有機酸イオンのいずれでもよい。
【0136】
上記の多価金属塩の具体例としては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム等が挙げられる。これらの多価金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、水への十分な溶解性を確保でき、かつ、処理液による跡残りが低減する(跡が目立たなくなる)ため、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、及び塩化カルシウムのうち少なくともいずれかが好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。なお、これらの金属塩は、原料形態において水和水を有していてもよい。
【0137】
多価金属塩以外の金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などの一価の金属塩が挙げられ、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0138】
有機酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸の塩で金属塩であるものは上記の金属塩に含める。有機酸の塩も同様である。
【0139】
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。無機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
カチオン性樹脂(カチオン性ポリマー)としては、例えば、カチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂、カチオン性のアミン系樹脂、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。カチオン性ポリマーは好ましくは水溶性である。
【0141】
カチオン性のウレタン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP-7010、CP-7020、CP-7030、CP-7040、CP-7050、CP-7060、CP-7610(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR-2120C、WBR-2122C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
【0142】
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0143】
カチオン性のアミン系樹脂(カチオン性ポリマー)としては、構造中にアミノ基を有するものであればよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリアミ
ン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂などが挙げられる。ポリアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアミノ基を有する樹脂である。ポリアミド樹脂は樹脂の主骨格中にアミド基を有する樹脂である。ポリアリルアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアリル基に由来する構造を有する樹脂である。
【0144】
また、カチオン性のポリアミン系樹脂としては、センカ株式会社製のユニセンスKHE103L(ヘキサメチレンジアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約5.0、粘度20~50(mPa・s)、固形分濃度50質量%の水溶液)、ユニセンスKHE104L(ジメチルアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約7.0、粘度1~10(mPa・s)、固形分濃度20質量%の水溶液)などを挙げることができる。さらにカチオン性のポリアミン系樹脂の市販品の具体例としては、FL-14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK-6810、6853、6885;WS-4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP-105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX-1(田岡化学工業社製)、カチオマスター(登録商標)PD-1、7、30、A、PDT-2、PE-10、PE-30、DT-EH、EPA-SK01、TMHMDA-E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)が挙げられる。
【0145】
ポリアリルアミン樹脂は、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
【0146】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級、第2級、及び第3級アミン塩型化合物、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オニウム塩、イミダゾリニウム塩等があげられる。具体的には、例えば、ラウリルアミン、ヤシアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジメチルエチルラウリルアンモニウムエチル硫酸塩、ジメチルエチルオクチルアンモニウムエチル硫酸塩、トリメチルラウリルアンモニウム塩酸塩、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミン、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0147】
これらの凝集剤は、複数種を使用してもよい。また、これらの凝集剤のうち、多価金属塩、有機酸、カチオン性樹脂の少なくとも一種を選択すれば、凝集作用がより良好であるので、より高画質な(特に発色性の良好な)画像を形成することができる。
【0148】
処理液における、凝集剤の合計の含有量は、例えば、処理液の全質量に対して、0.1
質量%以上20質量%以下であり、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。なお、凝集剤が溶液や分散体で共有される場合においても、固形分の含有量として上記範囲であることが好ましい。凝集剤の含有量が1質量%以上であれば、凝集剤がインクに含まれる成分を凝集させる能力が十分得られる。また、凝集剤の含有量が30質量%以下であることで、処理液中での凝集剤の溶解性や分散性がより良好になり、処理液の保存安定性等を向上できる。
【0149】
処理液に含まれる有機溶剤の疎水性が高い場合であっても、処理液中における凝集剤の溶解性が良好になるという点から、凝集剤には、25℃の水100gに対する溶解度が、1g以上であるものを使用することが好ましく、3g以上80g以下にあるものを使用することがより好ましい。
【0150】
(その他の成分)
処理液は、機能を損なわない限り、凝集剤の他に、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、界面活性剤、水、ワックス、添加剤、樹脂分散剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の成分を含有してもよい。これらの成分は、上述の白色インク組成物と同様であるので、詳細な説明を省略する。処理液は水系の処理液が好ましい。
【0151】
2.2.2.処理液の物性及び記録媒体へ付着させる方法
本実施形態の記録方法で使用する処理液は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0152】
処理液を記録媒体に付着させる方法としては、インクジェット法、塗布による方法、処理液を各種のスプレーを用いて記録媒体に塗布する方法、処理液に記録媒体を浸漬させて塗布する方法、処理液を刷毛等により記録媒体に塗布する方法等の非接触式及び接触式のいずれか又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0153】
処理液は、インクジェット法によって記録媒体に付着されることがより好ましい。その場合には、20℃における粘度を、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。処理液がインクジェット法によって記録媒体に付着される場合、所定の処理液付着領域を効率的に記録媒体に形成することが容易である。
【0154】
2.3.作用効果等
本実施形態の記録方法によれば、白色インク組成物に含まれる分散剤がノニオン性であるので、処理液に含まれる凝集剤による作用を受けにくい。これにより、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体に適用した場合であっても、埋まり性に優れた白色画像を形成することができる。
【0155】
2.4.その他の工程
本実施形態の記録方法は、上述の白色インク付着工程、処理液付着工程の他に、非白色インク付着工程、加熱工程、ラミネート工程等を備えてもよい。
【0156】
2.4.1.非白色インク付着工程
非白色付着工程は、非白色顔料を含有する水系のインクジェットインクである非白色インク組成物をインクジェット法により記録媒体に付着させる工程である。
【0157】
2.4.1.1.非白色インク組成物
非白色インク組成物は、非白色顔料を含有する。
【0158】
(非白色顔料)
非白色インク組成物に含有される非白色顔料は、前述の白色顔料以外の色材のことを指す。非白色顔料は、例えば、シアン、イエロー、マゼンタ、ブラックなどのカラー色材とすることが好ましい。
【0159】
非白色顔料は、耐光性、耐候性、耐ガス性などの保存安定性に優れ、さらにその観点から有機顔料であることが好ましい。
【0160】
具体的には、非白色顔料は、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、染料キレート、染色レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料、カーボンブラックなどが用いられる。上記顔料は、1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。さらに、非白色顔料として、光輝性顔料を用いてもよい。
【0161】
非白色顔料の具体例としては、特に限定されないが、例えば以下のものが挙げられる。
【0162】
ブラック顔料としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black
FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color
Black S170、Printex 35、Printex U、Printex
V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
【0163】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
【0164】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6
、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
【0165】
シアン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
【0166】
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
【0167】
パール顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
【0168】
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体又は合金からなる粒子が挙げられる。
【0169】
非白色顔料は、水中に安定的に分散又は溶解できることが好適であり、必要に応じて分散剤を使用して分散させてもよい。分散剤としては、上述の白色インク組成物の白色顔料の分散性を向上させるために用いる分散剤と同様のものを用いても良いが、これに限らず、処理液の凝集剤による作用を受けやすい種の分散剤を用いても良く好ましい。
【0170】
そのような分散剤としては、非ノニオン性、すなわちアニオン性又はカチオン性の分散剤が挙げられる。これらの中でも特にアニオン性が好ましい。非ノニオン性の分散剤とは、上述のノニオン性の分散剤ではない分散剤である。非ノニオン性の分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂及びその塩;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂及びその塩;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物(樹脂)であって直鎖状及び/又は分岐状であってもよく、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂及びその塩;ポリビニルアルコール類;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体及びその塩;酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体及びその塩;並びに;酢酸ビニル-クロトン酸共重合体及びその塩等の水溶性樹脂を挙げることができる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0171】
非白色顔料の含有量は、非白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.3質量
%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。さらに1質量%以上8質量%以下が好ましく、2質量%以上6質量%以下がさらに好ましい。非白色インク組成物に含む非白色顔料の凝集性は高いものも低いものも用いることができるが、耐滲み性などがより優れる点で、高いものであることが好ましい。
【0172】
非白色顔料に顔料を採用する場合の顔料粒子の体積平均粒子径(処理液混合前)は、10nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上250nm以下がより好ましく、50nm以上250nm以下がさらに好ましく、70nm以上200nm以下が特に好ましい。非白色顔料の体積平均粒子径は前述の体積平均粒子径の確認方法で初期状態として測定するものである。体積平均粒子径が上記範囲の場合、所望の色材を入手しやすい点や、色材の特性などを好ましいものにし易い点で好ましい。
【0173】
(その他の成分)
非白色インク組成物は、非白色顔料の他に、定着樹脂、水溶性有機溶剤、界面活性剤、水、ワックス、添加剤、樹脂分散剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の成分を含有してもよい。
【0174】
これらの成分は、いずれも上述の白色インク組成物と同様であるので、「白色インク組成物」を「非白色インク組成物」と読み替えることにより、詳細な説明を省略する。
【0175】
2.4.1.2.非白色インク組成物の物性及び記録媒体へ付着させる方法
非白色インク組成物は、白色インク組成物とは異なり、処理液と混合されることにより、凝集剤の作用によって、含有される成分が白色インク組成物に比較してより強く凝集する。また、非白色インク組成物は、処理液と混合されることにより、粘度が増大する。
【0176】
非白色インク組成物は、記録媒体にインクジェット法により付着される。この場合、非白色インク組成物の粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。非白色インク組成物は、インクジェット法によって記録媒体に付着されるので、所定の画像を効率的に記録媒体に形成することが容易である。
【0177】
本実施形態の記録方法で使用する非白色インク組成物は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。なお、表面張力の測定は、白色インク組成物と同様に行われる。
【0178】
本実施形態の録方法が、非白色インク付着工程を備える場合、白色インク組成物と、非白色インク組成物と、を重ねて記録媒体に付着させてもよい。このようにすれば、白色インク組成物によって形成される白色画像層が、非白色インク組成物によって形成される非白色画像の下地として機能するので、背景隠蔽性が得られる。そして既に述べたように白色画像層の埋まり性が良好となるので、視認性のより良好な記録物を形成することができる。
【0179】
また、本実施形態の録方法が、非白色インク付着工程を備える場合、非白色インク組成物により記録媒体上に非白色インク組成物層を形成し、非白色インク組成物層上に白色インク組成物を付着させて白色インク組成物層を非白色インク組成物層に重ねて形成してもよい。このようにすれば、非白色インク組成物及び白色インク組成物を付着させた記録媒
体の面と反対側の面から見た場合に視認性の良い画像を形成することができる。そして既に述べたように白色画像層の埋まり性が良好となるので、視認性のより良好な記録物を形成することができる。
【0180】
2.4.2.加熱工程
(一次加熱工程)
本実施形態の記録方法の白色インク付着工程及び非白色インク付着工程は、記録媒体に付着した組成物を加熱する加熱工程を備えてもよい。このような加熱工程を一次加熱工程という。一次加熱工程は、記録媒体に付着したインクを速やかに加熱し乾燥するものである。加熱された記録媒体にインクを付着するか、記録媒体にインクが付着後、早い時期に記録媒体を加熱する物であり、記録媒体にインクが付着後およそ1秒以内に加熱が始まるものである。
加熱工程は、処理液付着工程及び/又はインク付着工程の前又は付着工程の際に記録媒体を加熱する工程を備えてもよい。加熱工程は、加熱機構を用いて乾燥させる手段により行うことができる。加熱機構を用いて乾燥させる手段としては、記録媒体に対して常温の送風や温風の送風を行う手段(送風式)、及び、記録媒体に熱を発生する放射線(赤外線等)を照射する手段(輻射式)、記録媒体に接して記録媒体に熱を伝える部材(伝導式)、並びに、これらの手段の2種以上を組み合わせが挙げられる。加熱工程を有する場合、これらの中でも輻射式で行われることがより好ましい。加熱機構を用いた加熱工程は、記録媒体に付着した組成物を直ちに乾燥促進するものである。
【0181】
加熱工程は、後述するように各組成物が付着する直前又は付着した直後の位置に配置された加熱機構により行われることが好ましい。このようにすれば、インクジェットヘッドの加熱が抑制されるので、耐目詰まり性がより優れ、吐出安定性の向上を期待できる。
【0182】
各組成物の付着工程での付着時の記録媒体の表面温度は45.0℃以下が好ましく、43.0℃以下がより好ましく、40.0℃以下がさらに好ましく、38.0℃以下がさらにより好ましく、35.0℃以下が特に好ましく、32.0℃以下がさらに好ましく,30.0℃以下がより好ましく、28.0℃以下が特に好ましい。一方、下限は、20.0℃以上が好ましく、23.0℃以上がより好ましく、25.0℃以上がさらに好ましく、28.0℃以上が特に好ましく、30.0℃以上がさらに好ましく、32.0℃以上がより好ましい。
【0183】
該温度は付着工程における記録媒体の記録面の組成物の付着を受けた部分の表面温度であり、記録領域における付着工程の最高の温度である。表面温度が上記範囲以下の場合、目詰まり低減や高光沢の点でより好ましい。上記範囲以上の場合、画像の耐久性や、組成物の広がりが良く画質が優れる点でより好ましい。
【0184】
付着時の記録媒体の表面温度は、加熱機構を用いた加熱工程を行うことで比較的高くすることができ、行わないことで比較的低くすることができる。
【0185】
加熱工程を行う場合は、上述の付着工程の1つ又は2つ以上と同時に行われることができる。加熱工程が付着工程と同時に行われる場合には、記録媒体の表面温度は43.0℃以下とすることが好ましく、40.0℃以下とすることがより好ましい。加熱工程をこのように行う場合には、この工程を一次加熱工程という場合がある。
【0186】
(後加熱工程)
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記の各付着工程後の一次加熱工程後に、さらに記録媒体を加熱する後加熱工程を備えてもよい。後加熱工程は、二次加熱工程ともいう。後加熱工程は、記録媒体にインクが付着後およそ1秒超後に加熱が始まるもので
ある。
【0187】
後加熱工程は、例えば、適宜の加熱手段を用いて行うことができる。後加熱工程は、例えば、アフターヒーター(後述のインクジェット記録装置1の例では加熱ヒーター5が相当する。)により行われる。また、加熱手段は、インクジェット記録装置に備えられた加熱手段に限らず、他の乾燥手段を用いてもよい。これにより得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができるので、例えば、記録物を早期に使用できる状態にすることができる。
【0188】
この場合の記録媒体の温度は、特に限定されないが、例えば、記録物に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂成分のTg等を鑑みて設定し得る。樹脂粒子やワックスを構成する樹脂成分のTgを考慮する場合には、樹脂粒子を構成する樹脂成分のTgよりも5.0℃以上、好ましくは10.0℃以上に設定するとよい。
【0189】
後加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、30.0℃以上120.0℃以下、好ましくは40.0℃以上100.0℃以下、より好ましくは50.0℃以上95℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上90℃以下である。後加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、特に好ましくは80℃以上である。記録媒体の温度がこの程度の範囲であれば、記録物中に含まれる樹脂粒子の皮膜化、平坦化を行うことができるとともに、得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができる。
【0190】
2.4.3.ラミネート工程
前記記録方法により得られ記録物が、記録面にラミネート処理を施して用いられてもよい。記録媒体にラミネートするラミネート工程は、組成物を付着した記録媒体の記録面に対して、フィルムを貼り合わせる等してフィルムを積層して行うことができる。また、特に限定されないが、公知の接着剤を記録物の記録面に付着させ、そこにフィルムを貼り合わせてもよく、接着剤が付着しているフィルムを記録物の記録面に貼り合わせてもよい。他に、フィルムが溶融した溶融樹脂を用いて、記録物の記録面に溶融樹脂を押し出して、記録物の記録面上でフィルムとして成形することもできる。ラミネートに用いるフィルムなどの材料としては、例えば、樹脂製のフィルムを用いることができる。記録物をラミネートすることで、記録物の耐擦性がより良好となり、また記録物に固体物が当たるなど過度の扱われかたをする場合の保護性が優れる点で好ましい。また、記録物とフィルムを貼り合わせた後は、さらに加熱して又は常温で押圧して、充分に密着させることが好ましい。
【0191】
本実施形態の記録方法で得られる記録物に上述のラミネート工程のようなラミネート処理を行ってもラミネートフィルムを剥離しにくくすることができる。一方、本実施形態において、組成物が付着された記録媒体は、記録後にラミネートされずに、このまま、記録物として用いられるものであってもよい。本実施形態の記録方法が上述のラミネート工程を備えても良い。
【0192】
2.4.4.記録方法における工程の順序及び変形
上記の白色インク付着工程及び非白色インク付着工程の行われる順序は、特に限定されない。白色インク付着工程が、非白色インク付着工程よりも後に行われることがより好ましい。このようにすれば、記録媒体上に非白色画像が形成された上に、白色インク組成物によって白色画像が形成されて、白色インク組成物による背景画像が形成されるので、画像の鮮明度等がより良好になり、画質が向上する。また、透明な記録媒体の裏側から非白色画像を視認することができる記録物となる。非白色画像の側から見た時に視認性が優れる。
【0193】
一方、記録媒体上に白色画像が形成された上に、非白色インク組成物によって非白色画像が形成される場合、記録媒体の表側から非白色画像を視認することができる記録物とすることができる。
【0194】
特に、記録媒体上に非白色画像が形成された上に白色インク組成物による白色画像が形成される場合、ラミネート耐性や耐擦性が特に劣り易い傾向があり、本発明が特に有用である。
【0195】
また、処理液付着工程が、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程よりも先に行われることがより好ましい。このようにすれば、処理液に含まれる凝集剤を非白色インク組成物に対して十分に作用させることができる。
【0196】
2.4.5.その他の工程
本実施形態の記録方法は、必要に応じさらに処理液、白色インク組成物、及び、非白色インク組成物の1種以上を記録媒体へ付着させる工程を含んでいてもよい。その上、これらの工程の順序及び回数には制限はなく、必要に応じて適宜に行うことができる。なおこの場合、処理液及び各インク組成物は、互いに記録媒体上の同じ領域に付着されることが好ましい。
【0197】
3.インクジェット記録装置
本実施形態に係る記録方法は、記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いて行なうことができる。また、必要に応じて上述の処理液を記録媒体に付着させる工程を、インクジェット記録装置により行ってもよい。本実施形態に係る記録方法に用いることができるインクジェット記録装置について説明する。
【0198】
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを備えており、上述の各組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させることができる。以下本実施形態に係る記録方法に好適なインクジェット記録装置の例について図面を参照しながら説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材の縮尺や相対的な寸法を適宜変更している。
【0199】
図1は、インクジェット記録装置1を模式的に示す概略断面図である。
図2は、
図1のインクジェット記録装置1のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図である。
図1、2に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、加熱ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8と、キャリッジ9と、プラテン11と、キャリッジ移動機構13と、搬送手段14と、制御部CONTを備える。インクジェット記録装置1は、
図2に示す制御部CONTにより、インクジェット記録装置1全体の動作が制御される。
【0200】
インクジェットヘッド2は、処理液とインク組成物とをインクジェットヘッド2のノズルから吐出して付着させることにより記録媒体Mに記録を行う構成である。なお以下において単に「インク組成物」という場合、上述の白色インク組成物及び非白色インク組成物の少なくとも一方を指す。
【0201】
図2の例では、インクジェットヘッド2は、シリアル記録方式のインクジェットヘッドであり、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査して処理液とインク組成物とを記録媒体Mに付着させる。インクジェットヘッド2は
図2に示すキャリッジ9に搭載される。インクジェットヘッド2は、キャリッジ9を記録媒体Mの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構13の動作により、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査される。媒体幅方向とは、インクジェットヘッド2の主走査方向である。主走査方向への走査を主走査ともいう。
【0202】
またここで、主走査方向は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9の移動する方向である。
図1においては、矢印SSで示す記録媒体Mの搬送方向である副走査方向に交差する方向である。
図2においては、記録媒体Mの幅方向、つまりS1-S2で表される方向が主走査方向MSであり、T1→T2で表される方向が副走査方向SSである。なお、1回の走査で主走査方向、すなわち、矢印S1又は矢印S2の何れか一方の方向に走査が行われる。そして、インクジェットヘッド2の主走査と、記録媒体Mの搬送である副走査を複数回繰り返し行うことで、記録媒体Mに対して記録する。すなわち、処理液付着工程、インク付着工程は、インクジェットヘッド2が主走査方向に移動する複数回の主走査と、記録媒体Mが主走査方向に交差する副走査方向へ移動する複数回の副走査と、により行われる。
【0203】
インクジェットヘッド2に処理液やインク組成物を供給するカートリッジ12は、独立した複数のカートリッジを含む。カートリッジ12は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9に対して着脱可能に装着される。複数のカートリッジのそれぞれには異なる種類の処理液、インク組成物、必要に応じたその他の組成物が充填されており、カートリッジ12から各ノズルに各組成物が供給される。なお、カートリッジ12はキャリッジ9に装着される例を示しているが、これに限定されず、キャリッジ9以外の場所に設けられ、図示せぬ供給管によって各ノズルに供給される形態でもよい。
【0204】
インクジェットヘッド2による組成物の吐出には従来公知の方式を使用することができる。ここでは、圧電素子の振動を利用して液滴を吐出する方式、すなわち、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成する吐出方式を使用する。
【0205】
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2からの組成物を吐出して記録媒体Mに付着する際に記録媒体Mを乾燥するための加熱工程を行う加熱機構を備えることができる。加熱機構は、伝導式、送風式、放射式などを用いることができる。伝導式は記録媒体に接触する部材から熱を記録媒体に伝導する。例えばプラテンヒーター4などがあげられる。送風式は常温風又は温風を記録媒体Mに送り組成物を乾燥させる。例えば通気ファン8が挙げられる。放射式は熱を発生する放射線を記録媒体Mに放射して記録媒体Mを加熱する。例えばIRヒーター3が挙げられる。これら加熱機構は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
【0206】
例えば、インクジェット記録装置1では、加熱機構として、IRヒーター3及びプラテンヒーター4を備えている。加熱工程で記録媒体Mを乾燥する際には、IRヒーター3、プラテンヒーター4、通気ファン8等を用いることができる。
【0207】
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から赤外線の輻射により放射式で記録媒体Mを加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4等の記録媒体Mの裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体Mの厚さの影響を受けずに昇温することができる。また、温風又は環境と同じ温度の風を記録媒体Mにあてて記録媒体M上の組成物を乾燥させる各種のファン(例えば図示の通気ファン8)を備えてもよい。
【0208】
プラテンヒーター4は、インクジェットヘッド2によって吐出された組成物が記録媒体Mに付着された時点から早期に乾燥することができるように、インクジェットヘッド2に対向する位置において記録媒体Mを、プラテン11を介して加熱することができる。プラテンヒーター4は、インクジェットヘッド2からみて記録媒体Mの搬送方向下流側や上流側に配置されてもよい。このようにすればプラテンヒーター4によるインクジェットヘッド2の加熱が抑制され、ノズル内の液体の乾燥を抑えて目詰まり等を軽減できる場合があ
る。プラテンヒーター4は、記録媒体Mを伝導式で加熱可能なものであり、記録方法では、必要に応じて用いられ、用いる場合には、記録媒体Mの表面温度が45.0℃以下、好ましくは40.0℃以下となるように制御することが好ましい。なおライン記録方式のインクジェット記録装置においては、プラテンヒーター4は、アンダーヒーターに対応する。加熱機構を用いた加熱工程を行わない場合は、加熱機構を備えなくてもよい。
【0209】
なお、インク付着工程の加熱工程による、記録媒体Mの表面温度の上限は、45.0℃以下であることが好ましく、40.0℃以下であることがより好ましく、38.0℃以下であることがさらにより好ましく、35.0℃以下であることが特に好ましい。また、記録媒体Mの表面温度の下限は25.0℃以上であることが好ましく、28.0℃以上であることがより好ましく、30.0℃以上であることがさらに好ましく、32.0℃以上であることが特により好ましい。これによりインクジェットヘッド2内の組成物の乾燥及び組成変動を抑制でき、インクジェットヘッド2の内壁に対する組成物や含有される樹脂の溶着が抑制される。また、記録媒体M上で組成物を早期に固定することができ、耐ブロッキング性、ラミネート耐性を向上させ、画質を向上させることができる。
【0210】
記録方法では、インク付着工程後に、記録媒体Mを加熱して、組成物を乾燥させ、定着させる後加熱工程を備えてもよい。後加熱を二次加熱ともいう。
【0211】
後加熱工程に用いる加熱ヒーター5は、記録媒体Mに付着された組成物を乾燥及び固化させる、つまり、二次加熱又は二次乾燥用のヒーターである。加熱ヒーター5は、後加熱工程に用いることができる。加熱ヒーター5が、画像が記録された記録媒体Mを加熱することにより、組成物中に含まれる水分等がより速やかに蒸発飛散して、組成物中に樹脂が含まれる場合には樹脂によってインク膜が形成される。このようにして、記録媒体M上において組成物の膜が強固に定着又は接着して造膜性が優れたものとなり、優れた高画質な画像が短時間で得られる。
【0212】
加熱ヒーター5による記録媒体Mの表面温度の上限は120.0℃以下であることが好ましく、100.0℃以下であることがより好ましく、90.0℃以下であることがさらに好ましい。また、記録媒体Mの表面温度の下限は60.0℃以上であることが好ましく、70.0℃以上であることがより好ましく、80.0℃以上であることがさらに好ましい。温度が前記範囲にあることにより、高画質な画像が短時間で得られる。なおライン記録方式のインクジェット記録装置においては、加熱ヒーター5は、アフターヒーターに対応し、カーボンヒーター等により構成される。
【0213】
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。記録媒体Mに付着された組成物を乾燥後、冷却ファン6により記録媒体M上の組成物を冷却することにより、記録媒体M上に密着性よく塗膜を形成することができる。
【0214】
また、インクジェット記録装置1は、記録媒体Mに対して組成物が付着される前に、記録媒体Mを予め加熱するプレヒーター7を備えていてもよい。なおライン記録方式のインクジェット記録装置においても、加熱機構としてプレヒーター7を設けてもよい。
【0215】
キャリッジ9の下方には、記録媒体Mを支持するプラテン11と、キャリッジ9を記録媒体Mに対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構13と、記録媒体Mを副走査方向に搬送するローラーである搬送手段14を備える。キャリッジ移動機構13と搬送手段14の動作は、制御部CONTにより制御される。
【0216】
図3は、インクジェット記録装置1の機能ブロック図である。制御部CONTは、インクジェット記録装置1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部10
1(I/F)は、コンピューター130(COMP)とインクジェット記録装置1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU102は、インクジェット記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー103(MEM)は、CPU102のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU102は、ユニット制御回路104(UCTRL)により各ユニットを制御する。なお、インクジェット記録装置1内の状況を検出器群121(DS)が監視し、その検出結果に基づいて、制御部CONTは各ユニットを制御する。
【0217】
搬送ユニット111(CONVU)は、インクジェット記録の副走査(搬送)を制御するものであり、具体的には、記録媒体Mの搬送方向、搬送距離及び搬送速度を制御する。具体的には、モーターによって駆動される搬送ローラーの回転方向、回転量及び回転速度を制御することによって記録媒体Mの搬送方向、搬送距離及び搬送速度を制御する。
【0218】
キャリッジユニット112(CARU)は、インクジェット記録の主走査(パス)を制御するものであり、具体的には、インクジェットヘッド2を主走査方向に往復移動させるものである。キャリッジユニット112は、インクジェットヘッド2を搭載するキャリッジ9と、キャリッジ9を往復移動させるためのキャリッジ移動機構13とを備える。
【0219】
ヘッドユニット113(HU)は、インクジェットヘッド2のノズルからの組成物の吐出量を制御するものである。例えば、インクジェットヘッド2のノズルが圧電素子により駆動されるものである場合、各ノズルにおける圧電素子の動作を制御する。ヘッドユニット113により各組成物の付着のタイミング、組成物のドットサイズ等が制御される。また、キャリッジユニット112及びヘッドユニット113の制御の組合せにより、1走査あたりの組成物の付着量が制御される。
【0220】
乾燥ユニット114(DU)は、IRヒーター3、プレヒーター7、プラテンヒーター4、加熱ヒーター5等の各種ヒーターの温度を制御する。
【0221】
上記のインクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2を搭載するキャリッジ9を主走査方向に移動させる動作と、搬送動作(副走査)とを交互に繰り返す。このとき、制御部CONTは、各パスを行う際に、キャリッジユニット112を制御して、インクジェットヘッド2を主走査方向に移動させるとともに、ヘッドユニット113を制御して、インクジェットヘッド2の所定のノズル孔から組成物の液滴を吐出させ、記録媒体Mに組成物の液滴を付着させる。また、制御部CONTは、搬送ユニット111を制御して、搬送動作の際に所定の搬送量(送り量)にて記録媒体Mを搬送方向に搬送させる。
【0222】
インクジェット記録装置1では、主走査(パス)と副走査(搬送動作)が繰り返されることによって、複数の液滴を付着させた記録領域が徐々に搬送される。そして、アフターヒーター5により、記録媒体Mに付着させた液滴を乾燥させて、画像が完成する。その後、完成した記録物は、巻き取り機構によりロール状に巻き取られたり、フラットベット機構で搬送されたりしてもよい。
【0223】
なお図示しないがインクジェットヘッド2には、処理液やインク組成物を循環させる循環機構が備えられてもよい。このようにすれば、インクジェットヘッド2内において組成物の濃度の変動があった場合に、その変動量を小さくすることができ、例えば吐出安定性を向上することができる。
【0224】
上記ではシリアル型のインクジェットヘッドを搭載し、シリアル型の記録方法を行うシリアル型の記録装置について説明した。一方、インクジェットヘッド2は、ライン記録方式ヘッドであってもよい。ライン記録方式の記録装置のインクジェットヘッドは、記録媒
体Mの記録幅以上の長さにノズルが配置されたヘッドであり、記録媒体Mに対して1回のパスでインク組成物の付着を行う。
【0225】
図4は、ライン記録方式ヘッド(ライン型インクジェットヘッド)を搭載し、ライン記録方式の記録方法を行うライン記録方式の記録装置の一部分を模式的に示す概略断面図である。記録装置の部分200は、処理液のインクジェットヘッド221を含む処理液付着手段220、インク組成物のインクジェットヘッド231を含むインク付着手段230、記録媒体Mを搬送する搬送ローラー211を含む記録媒体搬送手段210、記録媒体に後加熱工程を行う後加熱手段240を備える。また、記録装置の部分200は、処理液付着工程の後に一次乾燥を行う送風機251を含む一次加熱手段250、及び、インク付着工程の後に一次乾燥を行う送風機261を含む一次加熱手段260を備える。インクジェットヘッド231,221は、図の手前-奥方向である記録媒体Mの幅方向にノズル列が伸びているライン記録方式のインクジェットヘッドである。
【0226】
ライン記録方式の記録装置は、記録媒体Mを、
図4の矢印方向である搬送方向に搬送させることで、インクジェットヘッド231,221と記録媒体Mの相対的な位置を移動させつつ、組成物をインクジェットヘッドから吐出し記録媒体Mへ付着させる。これを走査という。走査を主走査やパスともいう。ライン記録方式の記録方法は、搬送される記録媒体Mへ、インクジェットヘッド231,221を用いて処理液やインク組成物を1回のパスで付着させ記録を行う1パス記録方法である。
【0227】
ライン記録方式の記録装置は、ライン記録方式のインクジェットヘッドを備えライン記録方式の記録方法を行うこと以外は、前述のシリアル型のインクジェット記録装置1と同様にすることができる。またライン記録方式の記録装置は、3つ以上のインクジェットヘッドを備えてもよい。ライン記録方式の記録装置は、加熱工程を行う加熱手段をさらに備えてもよい。例えば、
図1のインクジェットヘッド2の上方にある通気ファン8やIRヒーター3などの加熱手段を、
図4のインクジェットヘッド231,221の上方に備えさせ、
図1のインクジェットヘッド2の下方にあるプラテンヒーター4に対応するアンダーヒーターなどの加熱手段を、
図4のインクジェットヘッド231,221の下方及び/又は記録媒体Mの搬送方向下流及び/又は上流側に備えさせてもよい。
【0228】
図示の記録装置の部分200の例では、加熱手段として処理液付着工程の後に一次乾燥を行う送風機251を含む一次加熱手段250、及び、インク付着工程の後に一次乾燥を行う送風機261を含む一次加熱手段260を備えているが、記録媒体に付着させる組成物の数に応じて、付着手段及び一次加熱手段の組を3つ以上配置してもよい。また、送風機に代えてアンダーヒーターを用いてもよい。
【0229】
本実施形態の記録方法でインクジェット法によりインク組成物や処理液を付着させる場合には、シリアル方式又はライン方式のいずれの記録方式の記録装置でも行うことができる。ライン方式の記録方式により行われることで、より高速に記録物を得ることができる。
【0230】
4.実施例及び比較例
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り種々の変更は可能であり、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお成分量に関して%、部と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0231】
4.1.インク組成物及び処理液の調製
表1、表2及び表3に示す材料組成にて、材料組成の異なる白色インク組成物(W1~
W13)、非白色インク組成物(C1~C3)及び処理液(R1~R3)を調製した。各インク及び処理液は、表1~3に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間撹拌混合した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表1~3中の数値は、全て質量%を示し、純水は組成物の全質量が100質量%となるように添加した。
【0232】
白色顔料分散液1は、分散剤としてディスコールN-509(ポリオキシエチレンアルキルアミン)ノニオン性、高分子型(第一工業製薬社製)を用いた。
白色顔料分散液2は、分散剤としてポリビニルピロリドン(ノニオン性樹脂)日本触媒社製K-30を用いた。
白色顔料分散液3は、分散剤としてアニオン性のDISPERBYK102(BYKケミー社製を用いた。酸性基を有するコポリマーである。
白色顔料分散液4は、分散剤としてノブコール5200(アニオン性:サンノプコ社製)を用いた。ポリカルボン酸アンモニウム塩である。
非白色顔料分散液は、分散剤としてDISPERBYK194N(BYKケミー社製)アニオン性分散剤を用いた。
【0233】
そして、各分散剤と白色顔料(二酸化チタン:ピグメントホワイト6)を、0.2:1の質量比で、水に混合し、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行なった。その後、遠心分離機による遠心濾過を行なって粗大粒子やゴミ等の不純物を除去して、白色系顔料の濃度が40質量%となるように調整し、各白色顔料分散液を得た。
非白色顔料分散液は、非白色顔料としてピグメントブルー15:3を用い、分散剤:顔料を0.5:1の質量比とし、同様に作成した。
【0234】
樹脂粒子1は、スーパーフレックスE-2000(第一工業製薬社製)、ウレタン樹脂、ノニオン性を用いた。
【0235】
樹脂粒子2は、モビニール7470(ジャパンコーティングレジン社製)、アクリル樹脂、ノニオン性を用いた。
【0236】
樹脂粒子3は、スチレン75質量部、メチルメタクリレート14.2質量部、シクロヘキシルメタクリレート10質量部、及びアクリル酸を混合し乳化共重合させることにより、得た樹脂エマルジョン(樹脂粒子分散液)を用いた。なお、乳化重合用界面活性剤としては、ニューコールNT-30(日本乳化剤株式会社製)を用い、その使用量は、モノマー全量を100質量部として、2質量部とした。酸価は、5mgKOH/gであった。なお、アクリル酸の添加量を調整して該酸価になるように調整した。アニオン性である。
【0237】
樹脂粒子4は、樹脂粒子3においてアクリル酸の添加量を調整して酸価13mgKOH/gとしたものを用いた。
【0238】
樹脂粒子5は、樹脂粒子3においてアクリル酸の添加量を調整して酸価20mgKOH/gとしたものを用いた。
【0239】
その他、表1~3に記載の化合物名以外の成分は、以下の通りである。
AQ515:水系ワックスエマルジョン(ビッグケミー・ジャパン社製)
BYK348:シリコーン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン社製)
【0240】
表1~3中、顔料分散液、樹脂粒子、ワックスの欄は、それぞれの固形分濃度から換算し、それぞれ顔料、樹脂粒子、ワックスの固形分の質量%を記載した。
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
4.2.評価方法
4.2.1.記録試験
記録試験機として、L-4533AW(セイコーエプソン製インクジェットプリンター)を改造したライン方式のプリンターを用いた。
図4のようにインクジェットヘッドの記録媒体搬送方向の直後に一次加熱ヒーターを設置した。ただし、インクジェットヘッドと一次加熱ヒーターは、処理液用、白色インク用、非白色インク用と、3組を記録媒体搬送走方向に沿って順番に配置した。
【0245】
記録解像度は、600×600dpiとした。記録媒体への付着量は、白色インク組成物が10mg/inch2、非白色インク組成物が7mg/inch2とした。処理液の付着量は、インク組成物の合計の付着量の30質量%となるようにした。一次加熱温度は、表4~6に記載した。二次加熱温度は、用いた記録媒体の種類に応じて変更した。
【0246】
各例で用いた記録媒体を表4~6に記載した。
M1:表面処理ポリプロピレンフィルム(OPP)[東洋紡株式会社製「パイレンP-2161」
M2:表面処理ポリエステルフィルム(PET)[東洋紡株式会社製「エスペットE-5102」
M3:スコッチカルグラフィックスフィルムIJ8150(3M社製)塩化ビニルフィルム
二次加熱温度は、M1では、65℃とし、M2では90℃とし、M3では65℃とした。
【0247】
表4~6には、各例で用いた白色インク組成物、非白色インク組成物及び処理液を記載した。また、表中、印刷順の欄には、処理液を付着させた後に、記録媒体に付着させるインク組成物の順序を記載した。例えば、実施例1の「C→W」は、処理液を付着させた後、非白色インク組成物を付着させ、その後に白色インク組成物を付着させている。
【0248】
4.2.2.白画像埋まり性の評価
非白色(シアン)画像と白色画像を重ねたパターンと、白色画像だけ記録したパターンとを用意した。重ねたパターンを白い紙の上に、白色画像が非白色画像の上になるように置き、白色画像の側から目視で以下の評価を行い、結果を表に記載した。
A:重ねたパターンが、白色画像の隙間にシアン色の部分は見えない。白色画像だけのパターンと同じに見える。
B:重ねたパターンが、白色画像の隙間にシアン色の部分は見えないが、白色画像だけのパターンと比べると、全体がややシアン色を帯びている。
C:重ねたパターンが、白色画像の隙間に僅かにシアン色の部分が見える。
D:重ねたパターンが、白色画像の隙間からシアン色の部分がかなり見える。
【0249】
4.2.3.ラミネート耐性の評価
ラミネート耐性を評価した。記録した画像部にドライラミネート用接着剤(主剤TM-329/硬化剤CAT-8B、東洋モートン株式会社製)をバーコーターを用いて塗工し、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)フィルム(商品名:パイレンP1128、東洋紡株式会社製)を貼りあわせた後、40℃で48時間エージングした。積層物を15mm幅にカットし、T型はく離試験(試験機:(エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機RTG‐1250A)により、強度を測定し、下記の評価基準に基づいて、「ラミ耐性」(ラミネート耐性)を評価した。
A:5N/15mm以上の強度が得られる
B:3N/15mm以上5N/15mm未満の強度が得られる
C:1N/15mm以上3N/15mm未満の強度が得られる
D:1N/15mm未満の強度しか得られない
【0250】
4.2.4.耐擦性の評価
画像(記録パターン部分)に、学振型摩擦権老成試験機(テスター産業株式会社AB-
301)にて乾燥状態の摩擦用白綿布に200gの加重をかけて毎分30回往復の速度で 100回往復摩擦し、目視により観察して、下記の評価基準に基づいて、「耐擦性」を評 価した。
A:100回以上擦っても画像が変化しない
B:100回擦った段階で多少の傷が残るが画像には影響しない
C:51回以上99回以下で画像が変化する
D:50回以下で画像が変化する
【0251】
4.2.5.非白画像画質
非白画像(非白色画像)の側から目視で確認した。下記の評価基準で評価して結果を表に記載した。
A:パターン内にインクが均一になっておらず濃淡むらになっているように見える箇所が無い。
B:細かな濃度むらが若干ある
C:大きな濃度ムラが若干ある
D:大きな濃度ムラがかなりある
【0252】
4.2.6.吐出安定性の評価
記録を2時間連続で行い。記録後、白色インク組成物のノズルの不吐出の発生を確認した。下記の評価基準で評価して結果を表に記載した。
A:不突出ノズルなし
B:ノズル数の1%以下で不吐出ノズルが発生
C:ノズル数の2%以上4%以下で不吐出ノズルが発生
D:ノズル数の5%以上で不吐出ノズルが発生
【0253】
4.2.7.樹脂粒子の体積平均粒子径の変化率
樹脂粒子10質量%水分散液、酢酸カルシウムの水溶液(5質量%)を用意し、これを前述の質量比で混合し、前述の方法で体積平均粒子径(D50)を測定し、樹脂粒子の体積平均粒子径の変化率を算出した。その結果は下記の通りであった。
樹脂粒子1 0%
樹脂粒子2 0%
樹脂粒子3 9%
樹脂粒子4 28%
樹脂粒子5 47%
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
4.3.評価結果
ノニオン性の分散剤を用いて分散させた白色インク組成物を用いた各実施例では、良好な白画像埋まり性が得られた。これに対してノニオン性の分散剤を用いていない白色インク組成物を用いた各比較では、白画像埋まり性が劣った。
【0258】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0259】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0260】
白色インク組成物の一態様は、
白色顔料を含有し、水系のインクジェットインクである白色インク組成物であって、
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させて行う記録に用いられ、
前記記録媒体が、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体であり、
前記白色顔料を分散させる分散剤と、定着樹脂と、を含有し、
前記分散剤が、ノニオン性の分散剤である。
【0261】
この白色インク組成物によれば、分散剤がノニオン性であるので、処理液の凝集剤による作用を受けにくい。これにより、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体に処理液を付着させ、白色インク組成物を付着させた場合に、埋まり性に優れた白色画像を形成することができる。
【0262】
上記白色インク組成物の態様において、
前記定着樹脂が、ノニオン性、又は酸価が10.0mgKOH/g以下であってもよい
。
【0263】
この白色インク組成物によれば、定着樹脂が処理液の凝集剤による作用をより受けにくく、埋まり性により優れた白色画像を形成することができる。
【0264】
上記白色インク組成物の態様において、
前記分散剤が、高分子分散剤であってもよい。
【0265】
この白色インク組成物によれば、白色インク組成物の白色顔料の分散性をより良好とすることができる。
【0266】
上記白色インク組成物の態様において、
前記定着樹脂の成分がポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂から選択されてもよい。
【0267】
この白色インク組成物によれば、白色画像の定着がより良好であり、耐擦性をより良好にすることができる。
【0268】
上記白色インク組成物の態様において、
前記分散剤が、ポリオキシアルキレン構造、含窒素構造及びポリオール構造から選択される構造を有してもよい。
【0269】
この白色インク組成物によれば、白色インク組成物の白色顔料の分散性をより良好とすることができる。
【0270】
上記白色インク組成物の態様において、
前記定着樹脂の含有量が白色インク組成物の総量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下であってもよい。
【0271】
この白色インク組成物によれば、十分な耐擦性の白色画像を形成することができる。
【0272】
上記白色インク組成物の態様において、
前記白色顔料の含有量が白色インク組成物の総量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下であり、前記分散剤の前記白色顔料に対する含有量が10.0質量%以上150.0質量%以下であってもよい。
【0273】
この白色インク組成物によれば、白色画像の十分な発色性及び白色顔料の良好な分散性を得ることができる。
【0274】
上記白色インク組成物の態様において、
前記定着樹脂が樹脂粒子であり、前記樹脂粒子を酢酸カルシウム溶液と混合したときの体積平均粒子径の変化率が50.0%以下であってもよい。
【0275】
この白色インク組成物によれば、樹脂粒子の凝集性がより抑制され、画像の埋まり性をさらに良好にすることができる。
【0276】
上記白色インク組成物の態様において、
含窒素有機溶剤を含有してもよい。
【0277】
この白色インク組成物によれば、画像の耐擦性や記録媒体上での濡れ拡がりをさらに良好にすることができる。
【0278】
上記白色インク組成物の態様において、
標準沸点が160.0℃以上280.0℃以下の有機溶剤を含有してもよい。
【0279】
この白色インク組成物によれば、画像の耐擦性、記録媒体上での濡れ拡がり及び/又は画像の乾燥性をさらに良好にすることができる。
【0280】
上記白色インク組成物の態様において、
非白色顔料を含有する水系のインクジェットインクである非白色インク組成物と、前記凝集剤を含有する処理液と、を記録媒体に付着させて行う記録に用いられ、
前記処理液は、前記非白色インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有するものであってもよい。
【0281】
この白色インク組成物によれば、当該白色インク組成物によって形成される白色画像層が、非白色インク組成物によって形成される非白色画像の下地として機能し得るので、良好な背景隠蔽性が得られる。そして白色画像層の埋まり性を良好とすることができるので、視認性のより良好な記録物を形成することができる。。
【0282】
記録方法の一態様は、
上記態様の白色インク組成物をインクジェット法により記録媒体へ付着させる白色インク付着工程と、
前記処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
を備え、
前記記録媒体が、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体である。
【0283】
この記録方法によれば、白色インク組成物に含まれる分散剤がノニオン性であるので、処理液に含まれる凝集剤による作用を受けにくい。これにより、低吸収性記録媒体又は非吸収性記録媒体に適用した場合であっても、埋まり性に優れた白色画像を形成することができる。
【0284】
上記記録方法の態様において、
非白色顔料を含有する水系のインクジェットインクである非白色インク組成物をインクジェット法により前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程を備え、
前記白色インク組成物と、前記非白色インク組成物と、を重ねて前記記録媒体に付着させてもよい。
【0285】
この記録方法によれば、白色インク組成物によって形成される白色画像層が、非白色インク組成物によって形成される非白色画像の下地として機能するので、背景隠蔽性が得られる。そして白色画像層の埋まり性を良好とすることができるので、視認性のより良好な記録物を形成することができる。
【0286】
上記記録方法の態様において、
前記非白色インク組成物により前記記録媒体上に非白色インク組成物層を形成し、前記非白色インク組成物層上に前記白色インク組成物を付着させて白色インク組成物層を前記非白色インク組成物層に重ねて形成してもよい。
【0287】
この記録方法によれば、非白色インク組成物及び白色インク組成物を付着させた記録媒体の面と反対側の面から見た場合に視認性の良い画像を形成することができる。
【0288】
上記記録方法の態様において、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程は、前記記録媒体に付着した組成物を加熱する加熱工程を備えてもよい。
【0289】
この記録方法によれば、得られる画像における非白色画像の画質をさらに良好にすることができる。
【0290】
上記記録方法の態様において、
前記インクジェット法は、ライン方式の記録方式により行われてもよい。
【0291】
この記録方法によれば、より高速に記録物を得ることができる。
【0292】
上記記録方法の態様において、
前記記録方法により得られ記録物が、記録面にラミネート処理を施して用いられてもよい。
【0293】
この記録方法によれば、記録物にラミネート処理を行ってもラミネートフィルムを剥離しにくくすることができる。
【0294】
上記記録方法の態様において、
前記記録媒体が、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選択される材質のフィルムであってもよい。
【0295】
この記録方法によれば、記録媒体がポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選択される材質のフィルムであっても埋まり性の良好な白色画像を形成でき、良好な画質の画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0296】
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、2a…ノズル面、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…加熱ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、9…キャリッジ、11…プラテン、12…カートリッジ、13…キャリッジ移動機構、14…搬送手段、101…インターフェース部、102…CPU、103…メモリー、104…ユニット制御回路、111…搬送ユニット、112…キャリッジユニット、113…ヘッドユニット、114…乾燥ユニット、121…検出器群、130…コンピューター、200…ライン記録方式記録装置の部分、210…記録媒体搬送手段、211…搬送ローラー、220…処理液付着手段、221…インクジェットヘッド、230…組成物付着手段、231…インクジェットヘッド、240…後加熱手段、250,260…一次加熱手段、251,261…送風機、CONT…制御部、MS…主走査方向、SS…副走査方向、M…記録媒体