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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2483 20160101AFI20240910BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240910BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240910BHJP
【FI】
H01M8/2483
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/2465
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020101637
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021197243
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 基
(72)【発明者】
【氏名】安武 明
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-045356(JP,A)
【文献】特開2008-166170(JP,A)
【文献】特開2016-162567(JP,A)
【文献】特開平08-306380(JP,A)
【文献】特開2006-147495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料入口マニホールドと第1集電板と第1エンドプレートと複数のセルとを備え、前記第1集電板にシステム側へ送電するバスバーに接続するための集電端子が設けられた固体酸化物形燃料電池スタックであり、
前記集電端子と連結され、前記燃料入口マニホールドの内部に配置される放熱部材を有し、前記セルは前記燃料入口マニホールドと連通する流入口を含むセパレータを備える、燃料電池スタック。
【請求項2】
前記燃料入口マニホールドに対応する燃料出口マニホールドと、
複数の前記セルを積層した積層セルと、
前記積層セルを挟むように前記第1集電板および前記第1エンドプレートに対応して設けられる第2集電板および第2エンドプレートと、をさらに備える、請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記放熱部材は、前記燃料入口マニホールドの入口側に、前記燃料入口マニホールド内の燃料の温度を均一にするための乱流発生手段を備える、請求項1または2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記放熱部材の放熱面積は、基端側から先端側に向かって変化する、請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記放熱部材の先端側の放熱面積は、前記放熱部材の基端側の放熱面積より大きい、請求項4に記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
前記放熱部材の長さは、前記燃料入口マニホールドの長さの半分以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池として固体酸化物形燃料電池(SOFC)が知られている。固体酸化物形燃料電池は、運転温度が高温(650度程度)であるため、燃料マニホールド内の燃料の温度を高温にする必要がある。そのため、例えば、下記特許文献1の燃料電池スタックには、投入燃料を昇温させることができる機器が導入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-177864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された燃料電池スタックによれば、温度管理手段として加熱器をさらに設ける必要がある。そのため、特許文献1に記載された温度管理手段を導入した場合、燃料電池システムがより大型になってしまい、燃料電池システムのレイアウト性が低下する虞がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、燃料電池システムのレイアウト性を向上することのできる燃料電池スタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の燃料電池スタックは、燃料入口マニホールドと第1集電板と第1エンドプレートと複数のセルとを備え、前記第1集電板にシステム側へ送電するバスバーに接続するための集電端子が設けられた固体酸化物形燃料電池スタックであり、前記集電端子と連結され、前記燃料入口マニホールドの内部に配置される放熱部材を有する。セルは燃料入口マニホールドと連通する流入口を含むセパレータを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放熱部材によって燃料入口マニホールド内の燃料が効率よく加熱されるとともに、燃料入口マニホールド内の燃料が効率よく加熱される。そのため、本発明の燃料電池スタックは、投入燃料を昇温させるための格別な装置を備えていない。したがって、本発明によれば、燃料電池システムを小型化することができ、燃料電池システムのレイアウト性を向上することのできる燃料電池スタックを提供することができる。
【0008】
さらに本発明によれば、放熱部材は、システム(FCCシステムともいう、FCC:Fuel Cell Converter。以下、「電気制御部」と称する。)側へ送電するバスバーに接続するための集電端子と連結されているため、放熱部材は、集電端子の放熱によってバスバーの温度を抑制することができる。
【0009】
また、固体酸化物形燃料電池は、先に述べたように運転温度が高温であるため、バスバーの温度が燃料電池スタックからの熱伝導によって高温になってしまうが、電気制御部には高温のバスバーを接続することができない。一方で、本発明の放熱部材によれば、集電端子の放熱によってバスバーの温度を抑制することができるため、本発明にかかる燃料電池スタックシステムは、バスバーの温度を下げるためのバスバーの長さを確保する必要がなくなり、バスバーの長さを抑えることができる。したがって、本発明によれば、燃料電池システムを小型化することができ、燃料電池システムのレイアウト性を向上することのできる燃料電池スタックを提供することができる。
【0010】
また、バスバーの温度を下げる方法として燃料入口マニホールドの上流側からバスバーに接続される集電端子よりも低温の燃料を投入する場合、該燃料と集電端子との間で熱交換させることによって、バスバーの温度を下げつつ、燃料入口マニホールド内の燃料を加熱することができる。しかしながら、この方法によれば、燃料入口マニホールドの上流側と下流側との間で該燃料の温度の差が生じてしまうため、燃料電池スタックの発電性能が下がってしまう虞がある。一方で、本発明の放熱部材によれば、燃料入口マニホールドの内部に配置されるため、燃料入口マニホールド内の燃料を効率よく加熱することができる。したがって、本発明によれば、該燃料の温度の均一化を促進させることができる燃料電池スタックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムのシステム構成を部分的に示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの構成を示す模式図である。
図3図2に示す燃料電池スタックの分解斜視図である。
図4】積層セルを構成するセルユニットの分解斜視図である。
図5】燃料入口マニホールドの内部に配置された放熱部材を示す斜視図である。
図6】バスバーの温度を示す図である。
図7】燃料入口マニホールドの内の燃料の温度分布を示す図である。
図8A】放熱部材を燃料入口マニホールドの内部に配置しない場合における燃料電池スタックの内の燃料の温度分布を示す図である。
図8B】放熱部材を燃料入口マニホールドの内部に配置する場合における燃料電池スタックの内の燃料の温度分布を示す図である。
図9】放熱部材の変形例を示す斜視図である。
図10】放熱部材の変形例を示す斜視図である。
図11】放熱部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池スタックシステムについて説明する。
【0014】
以下の説明の便宜のため、XYZ直交座標系を図中に示す。X軸およびY軸は水平方向、Z軸は上下方向にそれぞれ平行な軸を示す。
【0015】
図1に示すように、燃料電池システム10は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の燃料電池スタック100と、電力伝達の制御(燃料電池スタックからの電流を伝達・遮断する制御)を行う電気制御部200と、を有する。燃料電池スタック100と電気制御部200とは、バスバー300を介して連結されている。
【0016】
(燃料電池スタック100)
図2図3は、本実施形態に係る燃料電池スタック100の構成を示す図である。燃料電池スタック100は、図2に示すように、複数のセルモジュール100Qを上下方向に積層して構成される。以下、図中にZ軸で示す燃料電池スタック100の上下方向を「積層方向」とも称する。また、セルモジュール100Qを構成する各層の面方向は、XY面方向に相当する。
【0017】
燃料電池スタック100は、図2に示すように、下部集電板140および上部集電板150によって挟み込んだスタック100Pを、下部エンドプレート160および上部エンドプレート170によって挟み込んで保持して、その下端に外部から燃料(ガス)を供給する外部マニホールド180を配置して構成している。
【0018】
燃料電池スタック100は、複数のセルモジュール100Q(「セル」に相当する)を積層して構成したスタック100P(「積層セル」に相当する)を、セルユニット100Rで発電された電力を外部に出力する下部集電板140と上部集電板150によって挟み込んで集電可能としている。なお、セルモジュール100Qは、図4に示すセルユニット100Rを積層して構成される。
【0019】
また、燃料電池スタック100は、セルユニット100R(図4を参照)の各々にアノードガスAGを供給する燃料入口マニホールド191の内部に配置された放熱部材152(図2を参照)を有している。放熱部材152は、上部集電板150に設けられ、バスバー300と接続される集電端子151と連結される。なお、以下において燃料電池スタック100を図2に示すようなプレート積層型の燃料電池として説明するが、燃料電池スタック100は、上部集電板150、集電端子151、上部エンドプレート170、セルモジュール100Qを有していればよく、下部集電板140や下部エンドプレート160を有さない構造であってもよい。
【0020】
(セルユニット100R)
燃料電池スタック100は、セルユニット100Rに燃料を供給して発電を行う。セルユニット100Rは、図4に示すように、サポートセルアッセンブリー110、燃料(ガス)の流路を区画形成する流路部121を備えるセパレータ120、および集電補助層130を積層して構成される。なお、サポートセルアッセンブリー110と集電補助層130との間に両者を導通接触させる接点材を配置してもよいし、集電補助層130を省く構造としてもよい。
【0021】
(サポートセルアッセンブリー110)
サポートセルアッセンブリー110は、図4に示すように、サポートセル111と、サポートセル111の周囲を囲曉して保持する導電性を備えたセルフレーム112と、を有する。
【0022】
サポートセル111は、アノード層、電解質層、カソード層を積層して構成する発電セル(図示省略)と、発電セルを支持するサポートメタル(図示省略)と、から構成され、発電セルは、供給されたアノードガスAGおよびカソードガス(図示省略)によって発電する。
【0023】
セルフレーム112は、図4に示すように、アノードガスAGが流通するアノードガス流入口112aおよびアノードガス流出口112bと、カソードガス(図示省略)が流通するカソードガス流入口112cおよびカソードガス流出口112dと、を有している。
【0024】
(セパレータ120)
セパレータ120の流路部121は、図4に示すように、凹凸形状が一方向(Y方向)に延在するように略直線状に形成されている。したがって、流路部121に沿って流れる燃料(ガス)の流れ方向は、Y方向となる。
【0025】
セパレータ120は、アノードガスAGが流通するアノードガス流入口120aおよびアノードガス流出口120bと、カソードガス(図示省略)が流通するカソードガス流入口120cおよびカソードガス流出口120dと、を有している。
【0026】
(集電補助層130)
集電補助層130は、ガスを通す空間を形成しつつ面圧を均等にして、サポートセル111とセパレータ120との電気的な接触を補助する。集電補助層130は、例えば、金網状のエキスパンドメタル等によって形成することができる。
【0027】
(下部集電板140)
下部集電板140は、セルユニット100Rで発電された電力を外部に出力するものである。
【0028】
下部集電板140は、図2に示すように、スタック100Pの下端に配置している。下部集電板140は、セルユニット100Rと同様の外形形状からなる。下部集電板140は、外部の通電部材と接続される集電端子141を設けている。集電端子141は、下部集電板140の外縁を部分的に短手方向Xに突出させて積層方向Zに折り曲げることによって形成している。下部集電板140は、ガスを透過させない導電性材料からなり、セルユニット100Rの発電セルと対向する領域および集電端子141の部分を除いて、絶縁材またはコーティングを用いて絶縁している。絶縁材は、例えば、下部集電板140に酸化アルミニウムを固着させて構成する。
【0029】
下部集電板140は、セルユニット100Rと積層方向Zに沿って相対的な位置が合うように、アノードガスAGを通過させるアノードガス流入口140aおよびアノードガス流出口140bを対角線上に設けている(図3を参照)。また、下部集電板140は、セルユニット100Rと積層方向Zに沿って相対的な位置が合うように、カソードガス(図示省略)を通過させるカソードガス流入口140cおよびカソードガス流出口140dを対角線上に設けている(図3を参照)。
【0030】
(上部集電板150)
上部集電板150は、セルユニット100Rで発電された電力を外部に出力するものである。
【0031】
上部集電板150は、図2に示すように、スタック100Pの上端に配置している。上部集電板150は、下部集電板140と同様の外形形状からなる。上部集電板150は、外部の通電部材であるバスバー300と接続される集電端子151を設けている。集電端子151は、上部集電板150の外縁を部分的に短手方向Xに突出させて積層方向Zに折り曲げることによって形成している。上部集電板150は、下部集電板140と異なり、燃料の流入口および排出口を設けていない。上部集電板150は、ガスを透過させない導電性材料からなり、セルユニット100Rの発電セルと対向する領域および集電端子151の部分を除いて、絶縁材またはコーティングを用いて絶縁している。絶縁材は、例えば、上部集電板150に酸化アルミニウムを固着させて構成する。
【0032】
(下部エンドプレート160)
下部エンドプレート160は、下部集電板140および上部集電板150によって挟み込まれたスタック100Pを下方から保持するものである。
【0033】
下部エンドプレート160は、図2に示すように、下部集電板140の下方に配置している。下部エンドプレート160は、セルユニット100Rと同様の外形形状からなる。下部エンドプレート160は、セルユニット100Rよりも十分に厚く形成している。下部エンドプレート160は、例えば、金属からなり、下部集電板140と接触する上面を、絶縁材によって絶縁している。絶縁材は、例えば、下部エンドプレート160に酸化アルミニウムを固着させて構成する。
【0034】
下部エンドプレート160は、セルユニット100Rと積層方向Zに沿って相対的な位置が合うように、アノードガスAGを通過させるアノードガス流入口160aおよびアノードガス流出口160bを対角線上に設けている(図3を参照)。また、下部エンドプレート160は、セルユニット100Rと積層方向Zに沿って相対的な位置が合うように、カソードガス(図示省略)を通過させるカソードガス流入口160cおよびカソードガス流出口160dを対角線上に設けている(図3を参照)。
【0035】
(上部エンドプレート170)
上部エンドプレート170は、下部集電板140および上部集電板150によって挟み込まれたスタック100Pを上方から保持するものである。
【0036】
上部エンドプレート170は、図2に示すように、上部集電板150の上方に配置している。上部エンドプレート170は、下部エンドプレート160と同様の外形形状からなる。上部エンドプレート170は、下部エンドプレート160と異なり、ガスの流入口および排出口を設けていない。上部エンドプレート170は、例えば、金属からなり、上部集電板150と接触する下面を、絶縁材によって絶縁している。絶縁材は、例えば、上部エンドプレート170に酸化アルミニウムを固着させて構成する。
【0037】
(外部マニホールド180)
外部マニホールド180は、外部から複数のセルユニット100Rにガスを供給するものである。
【0038】
外部マニホールド180は、図2に示すように、下部エンドプレート160の下方に配置している。外部マニホールド180は、セルユニット100Rと同様の外形形状からなる。外部マニホールド180は、下部エンドプレート160よりも十分に厚く形成している。外部マニホールド180は、例えば、金属からなる。
【0039】
外部マニホールド180は、セルユニット100Rと積層方向Zに沿って相対的な位置が合うように、アノードガスAGを通過させるアノード側流入口180aおよびアノード側流出口180bを設けている。外部マニホールド180は、セルユニット100Rと積層方向Zに沿って相対的な位置が合うように、カソード側流入口(図示省略)およびカソード側流出口(図示省略)を設けている。
【0040】
(燃料入口マニホールド191、燃料出口マニホールド192)
燃料入口マニホールド191は、アノード側流入口180aから積層方向Z方向に延びるアノードガス流入口(112a、120a、140a、160a)によって構成される。燃料入口マニホールド191から導入された燃料は、セパレータ120の流路部121へ導入され、アノードガス流出口(112b、120b、140b、160b)によって構成される燃料出口マニホールド192を通ってアノード側流出口180bに導出される。
【0041】
(放熱部材152)
放熱部材152は、集電端子151と連結され、燃料入口マニホールド191の内部に配置されている。放熱部材152は、図5に示すように略平板状であり、Z軸に沿って延在する基幹部152aと、基幹部152aに沿って延在する平坦部152bと、平坦部152bに設けられた複数の孔部152hと、を有している。なお、孔部152hの形状は、先端側152Bから基端側152Aにむかうにつれて大きくなるように設定されている限り特に限定されないが、円形であることが好ましい。
【0042】
放熱部材152は、放熱構造を有しているため、集電端子151と燃料入口マニホールド191の内部を流れる燃料との間の熱交換を促進させることができる。そのため、放熱部材152は、集電端子151の放熱を増加させることによって、集電端子151と連結されているバスバー300の温度を下げることができる(図6を参照)。バスバー300の全長のうち温度が最も高くなる部分は、バスバー300と集電端子151とが接続されている接続部であるため、放熱部材152が集電端子151の放熱を増加させることによって、バスバー300の温度を効率よく下げることができる。
【0043】
また、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191の内部に配置されることによって、燃料入口マニホールド191内の燃料が流れる方向を制御することができる。したがって、放熱部材152は、該燃料の温度の均一化を促進させることができ(図7を参照)、燃料電池スタック100全体の性能を向上させることができる。また、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191の内部に配置されることによって、該燃料を効率よく加温することができるため、該燃料をさらに加温するための加熱器や熱交換器を新たに設ける必要がない。そのため、本発明にかかる放熱部材152によれば、燃料電池スタック100を小型化することができ、燃料電池システム10のレイアウト性を向上することができる。
【0044】
また、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191の入口側(上流側)に、乱流発生手段を備えている。放熱部材152の先端側152Bは、燃料入口マニホールド191の入口側のZ軸方向から視た断面積を分割することができる(図5を参照)。そのため、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191の内に乱流を発生させることができる。これにより、放熱部材152は、放熱部材152を燃料入口マニホールド191の内部に配置しない場合(図8Aを参照)と比べて、燃料入口マニホールド191内の燃料の温度を効率よく均一にすることができる(図8Bを参照)。
【0045】
また、放熱部材152の孔部152hの各々は、燃料入口マニホールド191の入口側(上流側)で分断された流れを再合流させることができる。そのため、燃料入口マニホールド191内で温められた燃料を、セルユニット100R側へ効率よく流すことができる。
【0046】
また、放熱部材152の放熱面積は、図6などに示すように、基端側152A(バスバー300側、下流側とのいう)から先端側152B(燃料入口マニホールド191の入口側、上流側ともいう)に向かって変化している。放熱部材152の断面積を調整することによって、放熱部材152の放熱量を制御することができる。
【0047】
なお、図6などに示すように、放熱部材152の基端側152Aの放熱面積は、放熱部材152の先端側152Bの放熱面積より大きい。燃料入口マニホールド191内の燃料の温度は上流に行くほど低くなるが、放熱部材152の先端側152Bの放熱量を基端側152Aの放熱量より大きくすることによって、放熱部材152は燃料入口マニホールド191の上流側の燃料を下流側の燃料に比べて効率よく加熱することができる。そのため、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191内の燃料の温度を効率よく均一にすることができる。
【0048】
また、放熱部材152の形状は、放熱を効率よくできる構造であれば特に限定されない。
【0049】
例えば、放熱部材152は、図9に示すように平板状であり、基幹部152aと、平坦部152bと、平坦部152bのY方向の両端部に設けられた複数の凹部153a~153f(以下、凹部153と総称する。)と、を有していてもよい。凹部153の形状は、基端側152Aから先端側152Bにむかって大きくなるように設定されている限り、特に限定されない。なお、凹部153の位置はX方向から視て左右対称であってもよく、左右非対称であってもよい。また、凹部153の個数は特に限定されない。
【0050】
また、放熱部材152は、図10に示すように、基幹部152aと、基幹部152aに交差するように設けられた複数の凸部154a~154e(以下、凸部154と総称する。)と、を有していてもよい。凸部154の形状は、基端側152Aから先端側152Bにむかって大きくなるように設定されている限り、特に限定されない。例えば、Z軸から視た凸部154の形状は、図10に示すように、円形であることが好ましいが、多角形や、これらを組み合わせた形状であってもよい。また、凸部154の形状は、少なくとも部分的に連続的(例えば螺旋状)であってもよい。また、基幹部152aに対する(Z軸に対する)凸部154の傾斜角度は、特に限定されない。
【0051】
また、放熱部材152は、図11に示すように、基幹部152aと、基幹部152aの周方向に設けられた複数の壁部155a~155f(以下、壁部155と総称する。)を有する複数の枝部156と、を有していてもよい。枝部156のZ軸から視た大きさは、基端側152Aから先端側152Bにむかうにつれて大きくなるように設定されている限り、特に限定されない。また、壁部155の形状は、矩形であることが好ましいが、多角形であってもよく、特に限定されない。また、枝部156を構成する壁部155の個数や放熱部材152に設けられる枝部156の個数は、特に限定されない。また、壁部155a~155fは、基幹部152aの周方向に対して所定の間隔を置いて配置されていればよく、壁部155a~155fの間隔は一定であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
また、放熱部材152は、棒状であってもよく、基幹部152aのみを有していてもよい。
【0053】
また、放熱部材152の長さL1(Z方向の長さ)は、図2に示すように、少なくとも燃料入口マニホールド191の長さL2(Z方向の長さ)の半分以上であることが好ましい。これにより、放熱部材152は上流側を流れる燃料に対してより熱を伝えやすくなる。そのため、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191内の燃料の温度を効率よく均一にすることができる。
【0054】
また、放熱部材152の材料は、耐酸化性を有し、絶縁性を有する材料である限り特に限定されないが、アルミナや窒化アルミニウムなどの耐熱コーティングが施されていることが好ましい。これにより、放熱部材152と燃料入口マニホールド191との接触を防止し、放熱部材152の腐食劣化を防止することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池スタック100によれば、燃料入口マニホールド191と上部集電板150(第1集電板)と上部エンドプレート170(第1エンドプレート)と複数のセルモジュール100Q(セル)とを備え、上部集電板150に電気制御部200(システム)側へ送電するバスバー300に接続するための集電端子151が設けられた固体酸化物形燃料電池スタックであり、集電端子151と連結され、燃料入口マニホールド190の内部に配置される放熱部材152を有する。
【0056】
このように構成した燃料電池スタック100によれば、放熱部材152は、集電端子151と燃料入口マニホールド191に導入される燃料との間の熱交換を促進させることで集電端子151の放熱量を増加させることができる。そのため、放熱部材152は、バスバー300の温度を抑制することができる。したがって、本発明によれば、バスバー300の長さを抑えることができ、燃料電池システム10のレイアウト性を向上することができる。また、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191の内部に設けられているため、該燃料を効率よく加熱しながら該燃料の流れを制御することができる。したがって、本発明によれば、該燃料の温度の均一化を促進させることができる。また、本発明によれば、加熱器や熱交換器を新たに設ける必要がないため、燃料電池スタック100を小型化することができる。したがって、本発明によれば、燃料電池システム10のレイアウト性を向上することができる。
【0057】
また、燃料電池スタック100は、燃料入口マニホールド191に対応する燃料出口マニホールド192と、複数のセルモジュール100Qを積層したスタック100P(積層セル)と、スタック100Pを挟むように上部集電板150および上部エンドプレート170に対応して設けられる下部集電板140(第2集電板)および下部エンドプレート160(第2エンドプレート)と、をさらに備える。このように構成した燃料電池スタック100によれば、放熱部材152はバスバー300の温度を抑制することができる。また、放熱部材152は燃料入口マニホールド190内の燃料を効率よく加熱することができるため、該燃料の温度の均一化を促進させることができる。また、本発明によれば、加熱器や熱交換器を新たに設ける必要がないため、燃料電池スタック100を小型化することができる。したがって、本発明によれば、燃料電池システム10のレイアウト性を向上することができる。
【0058】
また、放熱部材152は、燃料入口マニホールド190の入口側に、燃料入口マニホールド190内の燃料の温度を均一にするための乱流発生手段を備える。放熱部材152の先端側152Bは、燃料入口マニホールド191の入口側のZ軸方向から視た断面積を分割することができる。そのため、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191の内に乱流を発生させることができる。これにより、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191内の燃料の温度を効率よく均一にすることができる。
【0059】
また、放熱部材152の放熱面積は、基端側152Aから先端側152Bに向かって変化する。放熱部材152の断面積を調整することによって、放熱部材152の放熱量を制御することができる。
【0060】
また、放熱部材152の先端側152Bの放熱面積は、放熱部材152の基端側152Aの放熱面積より大きい。燃料入口マニホールド191内の燃料の温度は上流に行くほど低くなるが、放熱部材152の先端側152Bの放熱量を基端側152Aの放熱量より大きくすることによって、放熱部材152は燃料入口マニホールド191の上流側の燃料を下流側の燃料に比べて効率よく加熱することができる。そのため、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191内の燃料の温度を効率よく均一にすることができる。
【0061】
また、放熱部材152の長さL1は、燃料入口マニホールドの長さL2の半分以上である。これにより、放熱部材152は上流側を流れる燃料に対してより熱を伝えやすくなる。そのため、放熱部材152は、燃料入口マニホールド191内の燃料の温度を効率よく均一にすることができる。
【0062】
以上、実施形態を通じて燃料電池スタック100を説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0063】
例えば、燃料入口マニホールド191の個数は単数として説明したが、複数であってもよい。また、各燃料入口マニホールド191のZ軸から視た断面積は、同一であってもよく、異なっていてもよい。各燃料入口マニホールド191のZ軸から視た断面積が異なっている場合、より大きい断面積を有する燃料入口マニホールド191の内部に放熱部材152が設けられていることが好ましい。なお、燃料電池スタック100に設置される放熱部材152の個数は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0064】
10 燃料電池システム、
100 燃料電池スタック、
100P スタック、
100Q セルモジュール、
100R セルユニット、
140 下部集電板(第2集電板)、
150 上部集電板(第1集電板)、
151 集電端子、
152 放熱部材、
160 下部エンドプレート(第2エンドプレート)、
170 上部エンドプレート(第1エンドプレート)、
191 燃料入口マニホールド、
192 燃料出口マニホールド、
200 電気制御部(システム)、
L1 放熱部材の長さ、
L2 燃料入口マニホールドの長さ。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8A
図8B
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図11