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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20240910BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20240910BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/12 301
G02B6/125
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020102414
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021196478
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宗高
(72)【発明者】
【氏名】古川 将人
(72)【発明者】
【氏名】藤村 康
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0028046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の第1面を有するベースと、
第1方向に延びる平板状の外形を有し、平面状の第2面、及び前記第2面の反対側に位置する平面状の第3面を有する基板と、
前記第1方向に延びる平板状の外形を有し、平面状の第4面、及び前記第4面の反対側に位置する平面状の第5面を有し、前記第5面の前記第1方向における一端において前記第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ2つのポートを有する光回路素子と、
互いに同一の形状を有する2つのレンズが前記第2方向に沿って形成されたアレイレンズと、
を備え、
前記ベースの前記第1面は、前記基板の前記第2面と第1半田材によって接合されており、
前記基板の前記第3面は、互いに前記第1方向に沿って配置された金属製の第1パターン及び第2パターンを有し、
前記第1パターン及び前記第2パターンは、前記光回路素子の前記第4面と第2半田材によって接合されており、
前記アレイレンズは、前記2つのレンズの一方が前記光回路素子の前記2つのポートの一方と光学的に結合するとともに、前記2つのレンズの他方が前記光回路素子の前記2つのポートの他方と光学的に結合するように、前記ベースの前記第1面の面上に固定されており、
前記2つのポート、前記第1パターン、及び前記第2パターンを前記第5面の法線方向から見たときに、前記第1パターンは、前記第1方向において前記第2パターンより前記光回路素子の前記一端の近くに配置されるとともに前記第2方向において前記2つのポートの間にのみ配置されている、
光モジュール。
【請求項2】
前記基板及び前記光回路素子を前記法線方向から見たときに、前記光回路素子は、前記基板の内側に含まれている、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記基板の前記第2面と前記第3面との距離は、300μm以上且つ600μm以下であり、
前記光回路素子の前記第4面と前記第5面との距離は、50μm以上且つ200μm以下であり、
前記第1パターンの前記第2方向の幅は、前記2つのポートの間の距離の20%以上且つ80%以下である、
請求項1または請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第3面にて前記第1方向に延びる直線であって、前記第1パターンおよび前記第2パターンと交差する仮想線において、前記法線方向から平面視したとき、
前記第1パターンと交差する部分の長さは、0.3mm以上且つ0.6mm以下であり、
前記第2パターンと交差する部分の長さは、0.3mm以上且つ0.6mm以下である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記基板の材料は、窒化アルミニウムを含んでおり、
前記第1半田材及び前記第2半田材のそれぞれの材料は、金錫を含んでおり、
前記光回路素子の材料は、リン化インジウムを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第2パターンは、前記第2パターンの前記第2方向の両端から前記第1方向に沿って前記第1パターンに向かって延びるサイド部をさらに有し、
前記サイド部は、前記光回路素子及び前記基板を前記法線方向から見たとき、前記光回路素子と重なる重なり領域を有し、
前記第2半田材は、前記第2パターン上において前記重なり領域を含むよう形成されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記サイド部の前記第1方向における前記2つのポートとの距離Lsは、前記第1パターンの前記第1方向の長さをL1としたとき、0.5×L1より大きく、かつ、1.5×L1より小さい値となっている、
請求項6に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、PLCチップを備えた光モジュールが記載されている。光モジュールは、入力光導波路アレイ、VOAアレイ及び出力光導波路を有する第1のPLCチップと、入力光導波路アレイ、AWG及び出力光導波路を有する第2のPLCチップとを備える。第1のPLCチップの入力光導波路アレイは光モジュールの外部に位置する光ファイバアレイに光結合し、第2のPLCチップの出力光導波路は光ファイバアレイの反対側に延び出す光ファイバに光結合する。第1のPLCチップ及び第2のPLCチップの下方には、基板、第1のマウント及び第2のマウントが設けられる。第1のマウント及び第2のマウントは、共に基板上に配置されている。第1のマウントは、第1の固定ネジによって基板に固定されると共に、第2の固定ネジによって第2のマウントに接近又は離間する方向に移動可能に固定される。第2のマウントは、第3の固定ネジによって基板に固定されると共に、第4の固定ネジによって第1のマウントに接近又は離間する方向に移動可能に固定される。第1のマウントの基板からの高さは第2のマウントの基板からの高さよりも高くなっており、第1のマウントの上には第1のPLCチップが固定されている。第2のPLCチップは、第2のマウントから浮くように配置されており、第2のマウントに盛られた弾性接着剤によって第2のマウントに保持されている。
【0003】
特許文献2には、半導体製のMMIカプラと、MMIカプラから引き出された半導体製の光導波路を含む光ハイブリッド素子と、光ハイブリッド素子を搭載するキャリアとを備えた光モジュールが記載されている。光モジュールには信号光及び局発光が入力し、入力された信号光及び局発光は2個の光ハイブリッド素子のそれぞれに振り分けられる。光ハイブリッド素子は、半導体基板を用いたPD集積型マルチモードハイブリッドである。光ハイブリッド素子は光電流を生成するPD(Photo Diode)を備え、PDによって生成された光電流は光ハイブリッド素子の外部に設けられたアンプによって電圧信号に変換される。2つの光ハイブリッド素子のそれぞれは、信号光が入力する信号光ポート、及び局発光が入力する局発光ポートを有する。信号光ポート及び局発光ポートのそれぞれは、光モジュールのパッケージの内部に配置された第1レンズ系、第2レンズ系、第3レンズ系及び第4レンズ系のそれぞれに光結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-265188号公報
【文献】特開2017-32629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2つのポートを有する光回路素子と、当該2つのポートのそれぞれに光結合する複数のレンズが形成されたアレイレンズとを備えた光モジュールにおいて、各ポートと各レンズとの光の結合効率を高めることが求められる。光モジュールでは、キャリアの上に基板及び上記の光回路素子が固定されており、光回路素子は半田材料を介して基板上に固定される。光回路素子を固定する基板の材料としては熱伝導率が高い材料が用いられることが多く、基板の材料と光回路素子の材料とは互いに異なっている。従って、基板の線膨張係数と光回路素子の線膨張係数とが互いに異なることにより、半田材料の加熱及び冷却に伴う温度変化時に2つのポートの間隔が変化しうる。光モジュールでは、半田材料によって光回路素子を実装するときに半田材料を加熱及び冷却するため、このときに2つのポートの間隔が変化することが想定される。2つのポートの間隔が変化すると、アレイレンズの各レンズを調心するときに2つのポートの一方がレンズに対してずれるので、光の結合損失を招来する可能性がある。また、温度変化に伴って光学的結合及び光学的特性が不安定となる懸念がある。
【0006】
本開示の一側面は、温度変化に対して光回路素子のポートとアレイレンズとの間の光学的結合を安定化して安定な光学的特性を得ることができる光モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る光モジュールは、平面状の第1面を有するベースと、第1方向に延びる平板状の外形を有し、平面状の第2面、及び第2面の反対側に位置する平面状の第3面を有する基板と、第1方向に延びる平板状の外形を有し、平面状の第4面、及び第4面の反対側に位置する平面状の第5面を有し、第5面の第1方向における一端において第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ2つのポートを有する光回路素子と、互いに同一の形状を有する2つのレンズが第2方向に沿って形成されたアレイレンズと、を備え、ベースの第1面は、基板の第2面と第1半田材によって接合されており、基板の第3面は、互いに第1方向に沿って配置された金属製の第1パターン及び第2パターンを有し、第1パターン及び第2パターンは、光回路素子の第4面と第2半田材によって接合されており、アレイレンズは、2つのレンズの一方が光回路素子の2つのポートの一方と光学的に結合するとともに、2つのレンズの他方が光回路素子の2つのポートの他方と光学的に結合するように、ベースの第1面の面上に固定されており、2つのポート、第1パターン、及び第2パターンを第5面の法線方向から見たときに、第1パターンは、第1方向において第2パターンより光回路素子の一端の近くに配置されるとともに第2方向において2つのポートの間に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一側面によれば、温度変化に対して光回路素子のポートとアレイレンズとの間の光学的結合を安定化して安定な光学的特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る光モジュールの内部構造を示す平面図である。
図2図2は、図1の光モジュールの光学部品、アレイレンズ及び光回路素子を示す斜視図である。
図3図3は、図2の光回路素子及び基板を示す斜視図である。
図4図4は、図3の基板を示す斜視図である。
図5図5は、図3の基板を示す平面図である。
図6図6は、図3の基板の変形例を示す平面図である。
図7図7は、基板の第2パターンのサイド部の長さと温度変化によるポート間の間隔の変動量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一実施形態に係る光モジュールは、平面状の第1面を有するベースと、第1方向に延びる平板状の外形を有し、平面状の第2面、及び第2面の反対側に位置する平面状の第3面を有する基板と、第1方向に延びる平板状の外形を有し、平面状の第4面、及び第4面の反対側に位置する平面状の第5面を有し、第5面の第1方向における一端において第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ2つのポートを有する光回路素子と、互いに同一の形状を有する2つのレンズが第2方向に沿って形成されたアレイレンズと、を備え、ベースの第1面は、基板の第2面と第1半田材によって接合されており、基板の第3面は、互いに第1方向に沿って配置された金属製の第1パターン及び第2パターンを有し、第1パターン及び第2パターンは、光回路素子の第4面と第2半田材によって接合されており、アレイレンズは、2つのレンズの一方が光回路素子の2つのポートの一方と光学的に結合するとともに、2つのレンズの他方が光回路素子の2つのポートの他方と光学的に結合するように、ベースの第1面の面上に固定されており、2つのポート、第1パターン、及び第2パターンを第5面の法線方向から見たときに、第1パターンは、第1方向において第2パターンより光回路素子の一端の近くに配置されるとともに第2方向において2つのポートの間に配置されている。
【0011】
この光モジュールでは、ベースの平面状の第1面に基板の第2面が載せられており、基板の第2面の反対側の第3面に光回路素子の第4面が載せられる。基板の第3面には金属製の第1パターンが形成されており、第1パターンは第2半田材によって光回路素子の第4面に接合される。光回路素子は第1方向に沿って並ぶ2つのポートを備えており、2つのポートのそれぞれはベースの第1面に固定されるレンズアレイの各レンズと光結合する。光回路素子の第5面の法線方向から見たときに、基板と光回路素子の間に介在する第1パターン及び第2半田材は、第2方向において2つのポートの内側に配置される。従って、基板と光回路素子とは、第5面の法線方向から見たときにおける2つのポートの内側の部分で固定される。よって、第2半田材の領域が第5面の法線方向から見たときにおける2つのポートの内側に位置するので、第2半田材の加熱及び冷却に伴って温度変化が生じたときに、2つのポートの間隔が変わることを抑制することができる。従って、アレイレンズの各レンズを調心するときに各レンズが各ポートからずれる事態を抑制することができるので、光の結合損失を抑制することができる。その結果、温度変化に伴う光モジュールにおける光学的結合及び光学的特性を安定させることができる。
【0012】
また、基板及び光回路素子を法線方向から見たときに、光回路素子は、基板の内側に含まれていてもよい。
【0013】
また、基板の第2面と第3面との距離は、300μm以上且つ600μm以下であり、光回路素子の第4面と第5面との距離は、50μm以上且つ200μm以下であり、第1パターンの第2方向の幅は、2つのポートの間の距離の20%以上且つ80%以下であってもよい。この場合、第1パターンの幅が2つのポートの間の距離の80%以下であることにより、温度変化に伴う2つのポートの間の距離の変動を抑制することができる。また、第1パターンの幅が2つのポートの間の距離の20%以上であることにより、温度変化によって生じる光回路素子の反りをより確実に抑制することができる。
【0014】
また、第3面にて第1方向に延びる直線であって、第1パターンおよび第2パターンと交差する仮想線において、第5面の法線方向から平面視したとき、第1パターンと交差する部分の長さは、0.3mm以上且つ0.6mm以下であり、第2パターンと交差する部分の長さは、0.3mm以上且つ0.6mm以下であってもよい。
【0015】
また、基板の材料は、窒化アルミニウムを含んでおり、第1半田材及び第2半田材のそれぞれの材料は、金錫を含んでおり、光回路素子の材料は、リン化インジウムを含んでもよい。この場合、基板の材料が窒化アルミニウムを含むことにより、基板の熱伝導率を高くすると共に基板の放熱性能を高めることができる。また、第2半田材の材料が金錫を含むことにより、第2半田材の融点を高めて信頼性を高めることができる。
【0016】
また、第2パターンは、第2パターンの第2方向の両端から第1方向に沿って第1パターンに向かって延びるサイド部をさらに有し、サイド部は、光回路素子及び基板を法線方向から見たとき、光回路素子と重なる重なり領域を有し、第2半田材は、第2パターン上において重なり領域を含むよう形成されていてもよい。
【0017】
また、サイド部の第1方向における2つのポートとの距離Lsは、第1パターンの第1方向の長さをL1としたとき、0.5×L1より大きく、かつ、1.5×L1より小さい値となっていてもよい。
【0018】
[本願発明の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光モジュールの具体例を、以下で図面を参照しながら説明する。本発明は、以降の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化しており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る光モジュール1の内部構造を示す平面図である。光モジュール1は、略直方体状のパッケージ2と、信号光入力ポート3と、局発光入力ポート4とを備える。信号光入力ポート3及び局発光入力ポート4は、パッケージ2の一端面2bに設けられている。信号光入力ポート3は、例えば、パッケージ2の外部においてシングルモードファイバに接続されており、このシングルモードファイバから受信信号光(SIGnal;以下では信号光という)を受ける。局発光入力ポート4は、例えば、偏波保持ファイバに接続されており、この偏波保持ファイバから局発発振光(Local;以下では局発光という)を受ける。光モジュール1は光学部品5、第1アレイレンズ6、第2アレイレンズ7及び光ハイブリッド素子10を備える。光学部品5は、例えば、コリメートレンズ、ミラー、可変光減衰器、半波長板(λ/2板)、スキュー調整素子、偏光子、偏光ビームスプリッタ等のビームスプリッタ、及びパワーモニタ用フォトダイオード(モニタ用PD)を含む。信号光入力ポート3に入力した信号光、及び局発光入力ポート4に入力した局発光は、それぞれ、光学部品5を構成する各光部品によって第1アレイレンズ6及び第2アレイレンズ7のそれぞれに振り分けられ、第1アレイレンズ6及び第2アレイレンズ7の各レンズにおいて集光されて光ハイブリッド素子10のそれぞれに入射する。例えば、信号光入力ポート3に入力した信号光が、偏波多重されているとき、信号光に含まれる第1偏波成分(X偏波光)が光学部品5から光ハイブリッド素子10の一方に入射され、信号光に含まれ、第1偏波成分と直交する第2偏波成分(Y偏波光)が光学部品5から光ハイブリッド素子10の他方に入射される。なお、ここでいうX偏波及びY偏波は、便宜的に2つの偏波モードがあることを示しているだけであって、後述のX方向及びY方向との関連を表しているわけではない。
【0020】
光ハイブリッド素子10は、例えば、リン化インジウム(インジウムリン(InP)とも称される)によって構成された半導体基板を含む矩形板状のPD集積型マルチモードハイブリッドである。光ハイブリッド素子10の厚さは、例えば、50μm以上且つ200μm以下である。光ハイブリッド素子10に集積されたPDによって光電流が生成され、この光電流は光ハイブリッド素子10の外部に設けられたアンプ8によって電圧信号に変換される。アンプ8によって変換された電圧信号は、パッケージ2からパッケージ2の外方に延びる複数の端子9のいずれかから出力される。アンプ8は、例えば、トランスインピーダンスアンプである。
【0021】
図2は、光学部品5、第1アレイレンズ6、第2アレイレンズ7、アンプ8及び光ハイブリッド素子10を示す斜視図である。光ハイブリッド素子10は、例えば、信号光と局発光とを光結合する平面導波路によって形成されたMMI(Multi Mode Interference)カプラを含む90°ハイブリッド15を備えた光回路素子である。光ハイブリッド素子10は、2つの光入力ポート11(ポート)を備える。2つの光入力ポート11は、光ハイブリッド素子10内に形成されたそれぞれの光導波路14を介して90°ハイブリッド15と光学的に接続されている。すなわち、外部から光入力ポート11に入力された光は、光導波路14を伝搬して90°ハイブリッド15に入力される。2つの光入力ポート11のそれぞれには信号光及び局発光のそれぞれが入力し、入力した信号光及び局発光は90°ハイブリッド15によって干渉及び分離して4つの出力光(IP:In-Phase Positive、IN:In-Phase Negative、QP:Quadrature Positive、QN:Quadrature Negative)となる。このように、光ハイブリッド素子10に内蔵された90°ハイブリッド15は、受信信号光の0°成分の正位相及び逆位相、並びに90°成分の正位相及び逆位相、の4つの出力光を生成する。
【0022】
図3は、光モジュール1の内部に搭載される光ハイブリッド素子10の積層構造を示す斜視図である。図2及び図3に示されるように、光ハイブリッド素子10は基板20を介してベース30に搭載されている。ベース30は矩形板状とされている。例えば、ベース30の厚さは1.0mm以上且つ2.0mm以下であり、光ハイブリッド素子10の厚さ、及び基板20の厚さよりも厚い。ベース30の材料は、例えば、セラミックを含んでいる。ベース30は平面状の第1面31を有し、第1面31には光学部品5、第1アレイレンズ6、第2アレイレンズ7及び基板20が搭載されている。例えば、第1面31の法線方向から見たときに、基板20はベース30の内側に収まっており、光ハイブリッド素子10は基板20の内側に収まっている。すなわち、光ハイブリッド素子10は、基板20から第1面31に平行な方向に突出(オーバーハング)した形状とはされていない。光ハイブリッド素子10が、基板20からオーバーハングした形状を有する場合、オーバーハングしている部分は基板20によって支えられずに、オーバーハングしている部分と第1面31との間は中空となる。ベース30の第1面31には基板20以外に光学部品5が搭載されるため、第1面31の面積は、第1面31に平行な基板20の面(例えば、後述する第2面21、第3面22)の面積より広い。従って、ベース30の厚さは、光ハイブリッド素子10の厚さよりも厚いが、第1面31が基板20よりも面積が広い。ベース30は、矩形板状の形状を有する。
【0023】
第1アレイレンズ6は2つのレンズ6bを有する。2つのレンズ6bは、光ハイブリッド素子10の2つの光入力ポート11に光ハイブリッド素子10の長手方向に対向している。光ハイブリッド素子10の長手方向は、例えば、光入力ポート11に入力される光の光軸方向と同じである。第2アレイレンズ7は、2つのレンズ7bを有する。2つのレンズ7bは、光ハイブリッド素子10の2つの光入力ポート11に光ハイブリッド素子10の長手方向に対向している。第1アレイレンズ6は、2つのレンズ6bのそれぞれが光ハイブリッド素子10の2つの光入力ポート11のそれぞれと光学的に結合するように、ベース30の第1面31上に固定されている。例えば、2つのレンズ6bは、光ハイブリッド素子10の長手方向(例えば、後述するX方向)と交差する方向(例えば、後述するY方向)に並んでベース30の第1面31の上に配置される。2つのレンズ7bは、2つのレンズ6bと同じ方向に並んでベース30の第1面31の上に配置される。2つのレンズ6bの間隔は、2つの光入力ポート11の間隔と同じになるように設定される。ここでいう間隔は、例えば、2つのレンズ6bのそれぞれの光軸間の距離である。2つのレンズ6bの光軸のベース30の第1面31からの距離(高さ)は、光入力ポート11の第1面31からの距離(高さ)と同じになるように設定、調整される。2つのレンズ7bの光軸のベース30の第1面31からの距離(高さ)についても、2つのレンズ6bの光軸のベース30の第1面31からの距離(高さ)と同様に設定、調整される。第1アレイレンズ6及び第2アレイレンズ7の材料は、例えば、ガラス又はシリコンである。第1アレイレンズ6及び第2アレイレンズ7は、例えば互いに同一の構成とすることが可能であるため、以下の説明では第1アレイレンズ6及び第2アレイレンズ7をアレイレンズ6,7と称する。
【0024】
図4は、基板20を示す斜視図である。図3及び図4に示されるように、基板20は矩形板状とされており、例えば、基板20の厚さは300μm以上且つ600μm以下である。基板20の材料は、窒化アルミニウム(AlN:アルミナ)を含んでいる。基板20は、平面状の第2面21、及び第2面21の反対側に位置する平面状の第3面22を有し、第2面21は第1半田材41を介してベース30の第1面31に接合されている。例えば、第3面22は、第2面21と平行な平面である。上述の基板20の厚さは、第2面21と第3面22との距離に相当する。第3面22には第2半田材42を介して光ハイブリッド素子10が接合されている。第1半田材41及び第2半田材42の材料は、例えば、共に金錫(AuSn)である。この場合、第1半田材41及び第2半田材42の線膨張係数は例えば、17.5×10-6(/K)である。光ハイブリッド素子10は、メタライズされた平面状の第4面12と、第4面12の反対側に位置する第5面13とを有する。第4面12は、基板20の第3面22と第2半田材42を介して接合される。例えば、第5面13は、第4面12と平行な平面である。また、基板20の第3面22は第1パターン23と第2パターン24とを有し、第1パターン23及び第2パターン24は共に金属製である。第1パターン23及び第2パターン24は、例えば、チタン(Ti)、プラチナ(pt)、金(Au)の少なくともいずれか一つ、あるいはそれらの合金を含んでいてもよい。なお、基板20の第2面21も、例えば、チタン(Ti)、プラチナ(pt)、金(Au)の少なくともいずれか一つ、あるいはそれらの合金によってメタライズされていてもよい。図3に示すように、長手方向において、第1パターン23は、第2パターン24よりも2つの光入力ポート11に近い位置に配置されている。すなわち、第1パターン23と光入力ポート11との間の距離は、第2パターンと光入力ポート11との間の距離よりも短い。また、第1パターン23は、第2パターン24より光ハイブリッド素子11の長手方向の一端(例えば、光入力ポートの設けられている側)の近くに配置され、第2パターン24は、第1パターン23より光ハイブリッド素子11の長手方向の他端の近くに配置される。
【0025】
第1パターン23及び第2パターン24のそれぞれには、光ハイブリッド素子10の形状に合わせて第2半田材42がそれぞれに蒸着形成される。なお、第2半田材42は、クリーム状になっていて、光ハイブリッド素子10を基板20に接合するときにクリーム半田のようにメタルマスクによって第1パターン23及び第2パターン24の上に所定の形状になるように塗布されてもよい。第2半田材42は加熱によって溶融する。第1半田材41及び第2半田材42の加熱は、例えば、金属製の熱伝導部材(加熱治具)をベース30、基板20、及び光ハイブリッド素子10のそれぞれの第1半田材41又は第2半田材42に近接する部位に接触させ、熱伝導部材を加熱して接触部位を介して熱を伝導することにより行う。この第2半田材42の加熱溶融によって第1パターン23及び第2パターン24のそれぞれと光ハイブリッド素子10の第4面12とが互いに接合される。第2半田材42は、溶融して第4面12と接合したときにX方向およびY方向に広がるが、接合した状態の第2半田材42の形状は、法線方向(Z方向)から平面視したときに第1パターンの内側に収まっていることが好ましい。第2パターン24のY方向の長さ(幅)W2が、光ハイブリッド素子10のY方向の長さ(幅)W4よりも大きいとき、第2半田材42は、Z方向から平面視したとき第4面12と第2パターン24とが重なる領域(重なり領域)を含むように蒸着形成(あるいは塗布)される。重なり領域に塗布された第2半田材42は、溶融して第4面12と接合したときに重なり領域よりも広がる。よって、第2パターン24が第2半田材42を介して第4面12に接合する部分では、第2半田材42は重なり領域よりも広くなる。従って、この状態の第2パターン24上の第2半田材42のY軸方向の長さ(幅)W3は、光ハイブリッド素子10のY軸方向の幅W4よりも大きい。例えば、幅W3は、幅W4よりも100μm以上大きくてもよい。例えば、第2半田材42の領域のY方向の両端でそれぞれ50μm以上大きくてもよい。従って、第2パターン24上の第2半田材42の幅W3は、第2パターンの幅W2よりも小さく、光ハイブリッド素子10の幅W4は、幅W3よりも小さい。溶融した第2半田材42は、加熱を止めて温度が低下すると固化し、光ハイブリッド素子10は基板20に強固に固定される。この光ハイブリッド素子10が基板20に接合されている状態にて、第2半田材42の厚さは、例えば、5μm以上且つ10μm以下である。この厚さは、光ハイブリッド素子10が基板20に接合されたとき、第1パターン23及び第2パターン24と光ハイブリッド素子10の第4面12との距離に相当する。
【0026】
ところで、基板20に光ハイブリッド素子10を接合するときには、第2半田材42を加熱溶融するため、例えば、AuSnの融点である280℃から常温の25℃までの温度変化を伴う。前述したように、光ハイブリッド素子10の材料がInP、基板20の材料がアルミナである場合、光ハイブリッド素子10の線膨張係数は例えば4.5×10-6(/K)、基板20の線膨張係数は例えば7.2×10-6(/K)である。よって、2つの光入力ポート11の間隔が0.5mmである場合に280℃から25℃まで温度が変化すると、
(7.2-4.5)×10-6×0.5(mm)×(280-25)=-0.34(μm)
となり、2つの光入力ポート11の間隔が34μm収縮してしまう。
【0027】
ここで、線膨張係数の差をΔa、2つの光入力ポート11の間隔をL、第2半田材42の融点と室温(25℃)との温度差をΔT、第2半田材42の融点から室温に温度が下がるときの2つの光入力ポート11の間隔の収縮量をΔLとすると、ΔLは以下の式で表される。
ΔL=Δa×L×ΔT
以上のΔLの値が大きいと、2つの光入力ポート11のいずれか一方とアレイレンズ6,7との結合損失を招来する可能性がある。例えば、2つのレンズ6bの一方と2つの光入力ポート11の一方とについて、それぞれの光軸が重なるように調芯したとき、2つのレンズ6bの間隔が上述の温度変化の影響をほどんど受けないとすると、2つのレンズ6bの他方と2つの光入力ポート11の他方とはそれぞれの光軸が互いにΔLずれてしまい、結合効率が低下し得る。これに対し、本実施形態に係る光ハイブリッド素子10及び基板20では、上記の問題を解決可能であり、アレイレンズ6,7と光ハイブリッド素子10との光学結合について、例えば結合損失の許容値である-0.3dBよりも結合損失を低減させることができる。
【0028】
図5は、第3面22の法線方向において光ハイブリッド素子10のある側から見たときの基板20を示す平面図である。図5では、基板20に搭載される光ハイブリッド素子10を破線で示している。以下では、図4及び図5に示されるように、光ハイブリッド素子10及び基板20の長手方向をX方向(第1方向)、基板20の幅方向をY方向(第2方向)、基板20の厚さ方向をZ方向とすると共に、光ハイブリッド素子10の第5面13の法線方向(Z方向)から見たときにおける各部の位置関係について説明する。例えば、光ハイブリッド素子10のX方向の長さは2.0mm以上且つ5.0mm以下であり、光ハイブリッド素子10のY方向の幅は1.0mm以上且つ3.0mm以下である。図5に示される平面視において、第1パターン23及び第2パターン24は共に90°ハイブリッド15から長手方向に離れた位置に形成されている。
【0029】
第1パターン23は90°ハイブリッド15のX方向の一方側(図2における光学部品5側)に形成され、第2パターン24は90°ハイブリッド15の長手方向(X方向)の他方側(図2におけるアンプ8側)に形成される。すなわち、長手方向(X方向)において第1パターン23と第2パターン24との間に90°ハイブリッド15が配置されるように第1パターン23及び第2パターン24が形成される。このように、基板20の第1パターン23及び第2パターン24が90°ハイブリッド15から離れた位置に形成される場合、光ハイブリッド素子10の第1パターン23及び第2パターン24との接合に伴う90°ハイブリッド15への応力を緩和することができる。第1パターン23と90°ハイブリッド15とのX方向の距離を距離X1、90°ハイブリッド15と第2パターン24とのX方向の距離を距離X2とすると、距離X1及び距離X2の値が大きくなるほど90°ハイブリッド15への応力緩和の効果が顕著となる。距離X1及び距離X2は、例えば、0.2mm以上とすることが好ましい。
【0030】
Z方向から基板20を見たときに、第1パターン23は、Y方向(第2方向)において2つの光入力ポート11の間に配置される。2つの光入力ポート11はY方向に沿って並んでおり、例えば、2つの光入力ポート11は光ハイブリッド素子10の基準線Eに対して互いに線対称となる位置に配置されていてもよい。基準線Eは、光ハイブリッド素子10のY方向の中央を通ると共にX方向に延びる仮想線である。例えば、基準線Eは、光ハイブリッド素子10のY方向における中心線である。なお、基準線Eは、第3面にてX方向に延びる直線であって、第1パターンおよび第2パターンと交差する直線(仮想線)であってもよい。Y方向に沿って並ぶ2つの光入力ポート11の間隔(ピッチ)をP1、第1パターン23のY方向の幅をW1とすると、例えば、W1の値はP1の値の20%以上且つ80%以下である。一例として、P1は0.5mmであり、W1は0.1mm以上且つ0.4mm以下である。なお、上述の第2半田材42の溶融・固化による温度変化に伴う2つの光入力ポート11の間隔の変動を抑える観点では第1パターン23のY方向の幅W1は小さい方が好ましい。但し、光入力ポート11に生じうるZ方向への反りを抑える観点では第1パターン23のY方向の幅W1は小さすぎない方が好ましい。例えば、光ハイブリッド素子10の厚さは、50μm以上且つ200μm以下であるが、比較的薄いため、光ハイブリッド素子10は温度変化により応力を受けてZ方向に反りを生じ得る。そのような反りによって、第1面31からのアレイレンズ6,7のZ方向の位置(高さ)と光入力ポート11のZ方向の位置(高さ)との間にずれが生じると、結合損失を増加させる要因となる。そこで、本発明者らは、2つの光入力ポート11の間に第1パターン23を配置することで、光ハイブリッド素子10の反りを抑えられることを見出した。
【0031】
第1パターン23のX方向の長さをL1とすると、長さL1は、第1パターン23と90°ハイブリッド15との距離X1と光ハイブリッド素子10における90°ハイブリッド15のX方向の位置とによって定められる。例えば、長さL1は、0.3mm以上且つ0.6mm以下である。なお、光入力ポート11と90°ハイブリッド15とは2つの光導波路14を介して接続されており、90°ハイブリッド15に2つの光導波路14が接続されている部分において2つの光導波路14のY方向の間隔は、2つの光入力ポート11の間隔よりも小さくなっている。従って、2つの光導波路14は、2つの光入力ポート11から90°ハイブリッド15に向かうにつれて互いに近接する。第1パターン23の長さL1は、第1パターン23が2つの光導波路14から所定の距離以上離れているように設定される。
【0032】
第2パターン24は、例えば、長方形状の形状を有する。第2パターン24のY方向の長さ(幅)W2は、光ハイブリッド素子10のY方向の長さ(幅)W4よりも大きくされてもよい。Z方向から基板20を見たときに、光ハイブリッド素子10と第2パターン24とが重なる部分が第2半田材42によって接合される。第2パターン24のX方向の長さL2は、第2パターン24と90°ハイブリッド15との距離X2と光ハイブリッド素子10における90°ハイブリッド15のX方向の位置とによって定められる。例えば、長さL2は、0.3mm以上である。長さL2は、例えば、長さL1と同様に0.6mm以下とされてもよい。なお、第2パターン24は、Z方向から基板20を見たときに上述の光ハイブリッド素子10と重なる領域を少なくとも有していればよく、光ハイブリッド素子10と重ならない部分の形状は、基板20のY方向の縁の近くまで延びていなくてもよい。また、第2パターン24の光ハイブリッド素子10と重ならない部分の形状は、長方形状でなくてもよい。例えば、第2パターン24のX方向に平行な2辺は、X方向に傾斜していてもよく、第2パターン24は、そのような2辺を含む台形状の形状を有していてもよい。
【0033】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。本実施形態の変形例は、上述の本実施形態において基板20に替えて基板20Aを有している。基板20Aは、第2パターン24の代わりに第2パターン24Aを有している点で基板20と異なっている。以下、上述の本実施形態と相違する点を中心に説明する。図6に示すように、基板20Aの第2パターン24Aは、Z方向から見たときに図2における光学部品5側に光ハイブリッド素子10と重ならない部分を有するコの字型の形状を有している。すなわち、第2パターン24Aは、第2パターン24に対して、第2パターン24のY方向の両端から光学部品5側にX方向に沿って延びるサイド部Sをさらに有している。また、第2パターン24の上に形成される第2半田材42の形状は、Z方向から見たときにサイド部Sにおいても光ハイブリッド素子10に対して後述する重なり領域を含んでおり、コの字型となっている。
【0034】
サイド部Sは、Z方向から基板20を見たときに光ハイブリッド素子10と重なる領域(重なり領域)を有する。この重なり領域は、第2半田材42を介して光ハイブリッド素子10の第4面12と接合される。従って、第2パターン24Aにおいて、Z方向から見たときに光ハイブリッド素子10と重なる部分は、コの字型の形状を有しており、そのコの字型の部分が第2半田材42を介して光ハイブリッド素子10の第4面12と接合される。サイド部Sの光学部品5側の端Saは、例えば、X方向に沿って第1パターン23のアンプ8側の辺の位置まで延びている。Z方向から基板20を見たときに、第2パターン24Aはコの字部分の内側に90°ハイブリッド15を含み、90°ハイブリッド15を囲むように形成されている。従って、90°ハイブリッド15に対応する第4面12の領域は、第2パターン24Aと接合されないようになっている。サイド部Sは、90°ハイブリッド15からY方向に距離Y1及び距離Y2だけ離れている。あるいは、サイド部Sは、Y方向において距離Y1及び距離Y2の間隔をあけて90°ハイブリッド15を中に挟むように形成されている。距離Y1及び距離Y2の値が大きくなるほど90°ハイブリッド15への応力緩和の効果が顕著となる。距離Y1及び距離Y2は、例えば、0.2mm以上とすることが好ましい。距離Y1の長さは、距離Y2の長さと同じ値に設定されてもよい。
【0035】
図7は、基板20Aの第2パターン24Aのサイド部Sの長さと温度変化による光入力ポート11間の間隔(ピッチ)の変動量との関係を示す図である。図7は、基板20Aの第3面22の上に光ハイブリッド素子10を搭載した状態で、上述の温度変化に対する2つの光入力ポート11の間隔(ピッチ)の変動量をシミュレーションした結果に基づいている。図7のグラフの横軸は、基板20Aの光学部品5側の端から第2パターン24Aの端Saまでの長さLsを表している。長さLsは、例えば、長手方向(X方向)における2つの光入力ポート11と第2パターン24Aのサイド部Sの端Saとの間の距離に等しい。なお、サイド部Sの長さL3は、長さLs=0としたときに最も長くなり、長さLsを長くして行き長さLsが最大値に達すると、サイド部Sの長さL3は0となる(長さL3が0のとき、第2パターン24Aは第2パターン24と同じになる)。図7のグラフの縦軸は、2つの光入力ポート11のピッチ変動量ΔP1を表している。ピッチ変動量ΔP1=0は、280℃から室温(25℃)まで基板20Aの温度が変化したときに、ピッチP1が変動しないことを意味する。ΔP1=0より下側はΔP1が負値となり、温度変化に対してピッチP1が小さくなる、すなわち狭くなることを表す。ΔP1=0より上側はΔP1が正値となり、温度変化に対してピッチP1が大きくなる、すなわち広くなることを表す。ピッチ変動量ΔP1は、絶対値が小さいほど好ましい。曲線Aは、基板20Aが第1パターン23及び第2パターン24Aによって光ハイブリッド素子10の第4面12と接合される場合の結果を示している。曲線Bは、基板20Aから第1パターン23が除かれて、第2パターン24Aだけが光ハイブリッド素子10の第4面12と接合される場合(比較例)の結果を示している。なお、Z方向から見たとき、サイド部Sは、光ハイブリッド素子10と重なる領域を有し、第2パターン24Aと光ハイブリッド素子10との重なり領域の形状は、光入力ポート11側が開いたコの字型となっている。したがって、第2パターン24上に形成される第2半田材42の形状は、そのコの字型の重なり領域を含むようにコの字型状に形成される。例えば、第2パターン24上に形成される第2半田材42のY方向の長さ(幅)W3は、光ハイブリッド素子10のY方向の長さ(幅)W4よりも大きい。また、幅W3は、第2パターン24AのY方向の長さ(幅)W2よりも小さい。なお、サイド部Sと光ハイブリッド素子10との重なり領域のY方向の長さ(幅)は、例えば、50μm以上であってもよい。
【0036】
曲線A及び曲線Bともに、長さLsを変えるとピッチ変動量ΔP1が変化することを示している。これは、サイド部Sが光ハイブリッド素子10と接合する長さL3が変わると、それによって光入力ポート11の受ける応力が変わることに起因している。曲線A及び曲線Bともに、長さLsが0から増えていくと暫くは増加し、長さLsが第1パターン23の長さL1よりも大きくなると減少していく。曲線Bは、ΔP1が正値をとったままで、長さLsを最大にするとΔP=0となる。これは、光ハイブリッド素子10の光学部品5側が基板20Aとは接合されておらず、中空に浮いた状態となっているために応力の影響を受けないことに起因する。しかし、この状態では、光ハイブリッド素子10は、基板20Aにしっかりと固定されないので実際にはこの状態にすることはできない。曲線Aは、曲線Bに比べて全体的に負側に位置している。曲線Aでは、長さLsを最大値にしたとき(サイド部Sが無い場合に相当する)よりも長さLsを小さくしていくと、ピッチ変動量ΔP1は0に近づいていき、絶対値は小さくなる。長さLsを第1パターン23の長さL1付近の値にすると、ピッチ変動量ΔP1=0とすることができる。従って、サイド部Sの長さL3を適当な大きさにすることによってピッチ変動量ΔP1が最小となるように抑えることができる。例えば、長さLsの大きさを第1パターン23の長手方向(X方向)の長さL1の0.5~1.5倍の範囲内で調整することでピッチ変動量ΔP1の絶対値が小さくなるようにすることができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る光モジュール1から得られる作用効果について詳細に説明する。光モジュール1では、ベース30の平面状の第1面31に基板20の第2面21が載せられており、基板20の第2面21の反対側の第3面22に光ハイブリッド素子10の第4面12が載せられる。基板20の第3面22には金属製の第1パターン23が形成されており、第1パターン23は第2半田材42によって光ハイブリッド素子10の第4面12に接合される。光ハイブリッド素子10はY方向に沿って並ぶ2つの光入力ポート11を備えており、2つの光入力ポート11のそれぞれはベース30の第1面31に固定されるアレイレンズ6,7の各レンズ6b,7bと光結合する。ここで、光結合とは、例えばレンズ6bの光学部品5側から入射した光が、レンズ6bによって光入力ポート11に集光され、光入力ポートに入力される光の強度がレンズ6bの光学部品5側から入射する光の強度に対して所定の値以上となっている状態を表す。光入力ポートに入力される光の強度のレンズ6bの光学部品5側から入射する光の強度に対する比率(割合)は、例えば結合効率によって表される。結合効率が大きくなるほど損失(結合損失)は小さくなるため、結合効率は大きい値となることが好ましい。光結合が所望通りに得られていることによって光モジュール1の内部で光信号が適切に伝達され、光モジュール1は所定の機能及び性能を発揮することができる。
【0038】
光ハイブリッド素子10の第5面13の法線方向であるZ方向から見たときに、基板20と光ハイブリッド素子10の間に介在する第1パターン23、及び第1パターン23内に含まれる第2半田材42は、Y方向において2つの光入力ポート11の内側に配置される。従って、基板20と光ハイブリッド素子10とは、Z方向から見たときにおける2つの光入力ポート11の内側の部分で固定される。よって、第1パターン23内に含まれる第2半田材42の領域がZ方向から見たときにおける2つの光入力ポート11の内側に位置する。よって、第2半田材42の加熱及び冷却に伴って温度変化が生じたときにおける2つの光入力ポート11の間隔が変動することを抑制することができる。従って、アレイレンズ6,7の各レンズ6b,7bを調心するときに各レンズ6b,7bが各光入力ポート11からずれる事態を抑制することができるので、光の結合損失を低減することができる。その結果、温度変化に伴う光モジュール1における光学的結合及び光学的特性を安定化させることができる。
【0039】
また、前述したように、ベース30の厚さは、例えば、1.0mm以上且つ2.0mm以下であり、光ハイブリッド素子10の厚さ、及び基板20の厚さよりも厚い。よって、例えば、基板20を第1半田材41を介してベース30の第1面31に接合するとき、第1半田材41を溶融・固化するためにベース30は温度変化を受けるが、ベース30の厚さが大きいためベース30の反りが起こり難く、温度変化に伴うアレイレンズ6,7のそれぞれにおける2つのレンズ6b,7bのZ方向の位置の変化は無視できるほど小さい。従って、アレイレンズ6,7と光ハイブリッド素子10の光入力ポート11との光学結合は、2つの光入力ポート11の間の距離の温度変化による収縮を抑えることによって安定化される。
【0040】
また、2つの光入力ポート11の間の距離(ピッチP1)を0.5mmとし、2つの光入力ポート11の内側に第1パターン23が配置される実施形態(実施例)の光モジュール1で、基板20の材料を窒化アルミとした場合で、280℃から25℃までの温度変化を与えるシミュレーションを行った。その結果、実施形態では2つの光入力ポート11の間隔の収縮が0.2μm以下に抑えられた。このように、2つの光入力ポート11の間隔の収縮量を低減させることができる。
【0041】
基板20の第2面21と第3面22との距離(基板20のZ方向への厚さ)は、300μm以上且つ600μm以下であり、光ハイブリッド素子10の第4面12と第5面13との距離(光ハイブリッド素子10のZ方向への厚さ)は、50μm以上且つ200μm以下であり、第1パターン23のY方向への幅Wは、2つの光入力ポート11の間の距離(ピッチP1)の20%以上且つ80%以下であってもよい。この場合、第1パターン23の幅Wが2つの光入力ポート11の間の距離の80%以下であることにより、温度変化に伴う2つの光入力ポート11の間の距離のY方向の変動をより確実に低減することができる。また、第1パターン23の幅Wが2つの光入力ポート11の間の距離の20%以上であることにより、温度変化によって生じる光ハイブリッド素子10の反りをより確実に低減することができる。光ハイブリッド素子10の反りを抑えることによって、2つの光入力ポート11のレンズ6b,7bに対するZ方向の位置のずれを抑え、2つの光入力ポート11とレンズ6b,7bとの光学的結合を安定化することができる。
【0042】
また、基板20の材料は、窒化アルミニウムを含んでおり、第2半田材42の材料は、金錫を含んでおり、光ハイブリッド素子10の材料は、リン化インジウムを含んでもよい。この場合、基板20の材料が窒化アルミニウムを含むことにより、基板20の熱伝導率を高くすると共に基板20の放熱性能を高めることができる。また、第2半田材42の材料が金錫を含むことにより、第2半田材42の融点を高めて信頼性を高めることができる。
【0043】
また、変形例に係る光モジュールは、コの字型の形状を有する第2パターン24Aが形成された基板20Aを備え、Z方向から見たときに第2パターン24Aは、コの字部分の内側に90°ハイブリッド15を含み、90°ハイブリッド15を囲むように形成されている。第2パターン24Aは、第2パターン24に対してY方向に延びるサイド部Sを有する。Z方向から基板20Aを見たとき、サイド部Sと光ハイブリッド素子10とは重なり領域を有し、光ハイブリッド素子10は重なり領域が第2半田材42によってサイド部Sに接続されることにより基板20により確実に固定される。サイド部Sと光ハイブリッド素子10との重なり領域のY方向の長さ(幅)は、例えば50μm以上とされてもよい。このように、90°ハイブリッド15を囲むように第2パターン24Aが配置されていることにより、90°ハイブリッド15への応力をより効果的に緩和することができる。
【0044】
以上、本開示に係る光モジュールの実施形態について説明した。しかしながら、本発明は前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、前述の実施形態では、基板20が第1パターン23及び第2パターン24の2つのパターンを有する例について説明した。しかしながら、基板に形成されるパターンの態様は第1パターン23及び第2パターン24に限られず適宜変更可能である。また、光学部品5の各光部品の構成も適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、P1は0.5mmであり、Wは0.1mm以上且つ0.4mm以下であり、長さL1は0.3mm以上且つ0.6mm以下である光モジュール1について説明した。しかしながら、光モジュールの各部の大きさ、形状、材料及び配置態様は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…光モジュール、2…パッケージ、2b…一端面、3…信号光入力ポート、4…局発光入力ポート、5…光学部品、6…第1アレイレンズ(アレイレンズ)、6b,7b…レンズ、7…第2アレイレンズ(アレイレンズ)、8…アンプ、9…端子、10…光ハイブリッド素子(光回路素子)、11…光入力ポート(ポート)、12…第4面、13…第5面、14…光導波路、15…90°ハイブリッド、20、20A…基板、21…第2面、22…第3面、23…第1パターン、24、24A…第2パターン、30…ベース、31…第1面、41…第1半田材、42…第2半田材、S…サイド部、E…基準線、W1、W2,W3,W4…幅、X1…距離、X2…距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7