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特許7552106低周波治療器、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】低周波治療器、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240910BHJP
   A61N 1/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/08
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020116599
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014325
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 皓介
(72)【発明者】
【氏名】西田 知之
(72)【発明者】
【氏名】早河 浩平
(72)【発明者】
【氏名】井波 良和
(72)【発明者】
【氏名】福田 鑑介
(72)【発明者】
【氏名】浅井 義人
(72)【発明者】
【氏名】武石 直己
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 岳
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 真由美
(72)【発明者】
【氏名】水山 遼
(72)【発明者】
【氏名】野口 聡
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-262640(JP,A)
【文献】特表2014-527856(JP,A)
【文献】特開平09-262300(JP,A)
【文献】国際公開第2007/148845(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記低周波パルス電流による前記接触対象への刺激強度を含む前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力する出力部と、
を備え、前記低周波パルス電流を供給するためのパルス電圧波形に基づいて、前記光及び音の少なくともいずれかを生成する
低周波治療器。
【請求項2】
請求項1記載の低周波治療器であって、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給の制御と、前記低周波パルス電流の供給の制御と連動した、前記出力部による前記光及び音の少なくともいずれかの出力の制御と、を行う制御部を備える、
低周波治療器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の低周波治療器であって、
前記刺激強度は、前記低周波パルス電流の周波数を含む、
低周波治療器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の低周波治療器であって、
前記刺激強度は、前記低周波パルス電流の電圧を含む、
低周波治療器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の低周波治療器であって、
前記刺激強度は、前記低周波パルス電流のパルス幅を含む、
低周波治療器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の低周波治療器であって、
前記出力部は、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期して色、輝度、及び面積の少なくともいずれかが変化する光を出力する、
低周波治療器。
【請求項7】
請求項6記載の低周波治療器であって、
前記出力部は、前記低周波パルス電流の強度及び波形の少なくともいずれかに応じて変化する色の光を出力する、
低周波治療器。
【請求項8】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と出力部とを備える低周波治療器の制御方法であって、
前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、
前記低周波パルス電流を供給するためのパルス電圧波形に基づいて、前記低周波パルス電流による前記接触対象への刺激強度を含む前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した光及び音の少なくともいずれかを生成し、前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した前記光及び音の少なくともいずれかを出力させるステップと、
を含む制御方法。
【請求項9】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と出力部とを備える低周波治療器の制御プログラムであって、
前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、
前記低周波パルス電流を供給するためのパルス電圧波形に基づいて、前記低周波パルス電流による前記接触対象への刺激強度を含む前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した光及び音の少なくともいずれかを生成し、前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した前記光及び音の少なくともいずれかを出力させるステップと、
をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項10】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記パッド部における前記低周波パルス電流の供給位置を含む前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力する出力部と、
を備える低周波治療器。
【請求項11】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と出力部とを備える低周波治療器の制御方法であって、
前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記パッド部における前記低周波パルス電流の供給位置を含む前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力させるステップと、
を含む制御方法。
【請求項12】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と出力部とを備える低周波治療器の制御プログラムであって、
前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記パッド部における前記低周波パルス電流の供給位置を含む前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力させるステップと、
をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項13】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と、
前記パッド部に設けられ、前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力する出力部と、
を備える低周波治療器。
【請求項14】
請求項13記載の低周波治療器であって、
前記パッド部は、前記低周波パルス電流を供給可能な電極を有し、
前記出力部は、前記パッド部における、前記電極の位置に対応する位置に設けられ、前記電極による前記低周波パルス電流の供給に同期して発光する発光部を含む、
低周波治療器。
【請求項15】
請求項14記載の低周波治療器であって、
前記パッド部は、前記低周波パルス電流を供給可能な複数の電極を有し、
前記出力部は、前記パッド部における、それぞれ前記複数の電極の位置に対応する位置に設けられ、それぞれ対応する電極による前記低周波パルス電流の供給に同期して発光する複数の発光部を含む、
低周波治療器。
【請求項16】
請求項14又は15記載の低周波治療器であって、
前記パッド部は、前記接触対象とは反対側の面に、前記電極を覆う絶縁層を有し、
前記絶縁層は、前記発光部の光を拡散させる透明部材を含む、
低周波治療器。
【請求項17】
請求項14から16のいずれか1項記載の低周波治療器であって、
前記電極は、前記発光部の光を拡散させる透明導電膜により形成される、
低周波治療器。
【請求項18】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と、前記パッド部に設けられた出力部とを備える低周波治療器の制御方法であって、
前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力させるステップと、
を含む制御方法。
【請求項19】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と、前記パッド部に設けられた出力部とを備える低周波治療器の制御プログラムであって、
前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力させるステップと、
をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項20】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記低周波パルス電流の強度及び波形の少なくともいずれかに応じて変化する音色の音を出力する出力部と、
を備える低周波治療器。
【請求項21】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と出力部とを備える低周波治療器の制御方法であって、
前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記低周波パルス電流の強度及び波形の少なくともいずれかに応じて変化する音色の音を出力させるステップと、
を含む制御方法。
【請求項22】
接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と出力部とを備える低周波治療器の制御プログラムであって、
前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、
前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記低周波パルス電流の強度及び波形の少なくともいずれかに応じて変化する音色の音を出力させるステップと、
をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低周波治療器、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電層を有するパッドをユーザの身体に取り付けて、身体に低周波パルス電流を供給することで、ユーザの肩こりをほぐす等の治療を行う低周波治療器が知られている。
【0003】
特許文献1には、電気刺激や熱を発生させる回路に電力が供給されていることや、当該回路が人間又は動物の身体に刺激を加える準備が完了したことを発光ダイオードにより示す構成が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ユーザがパッドを身体に正しく取り付け終わる前に、ユーザが正しいパッドを身体の正しい領域に取り付けるのを補助するために、ユーザによって選択されたパッド上の発光ダイオードを点灯させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2015-514460号公報
【文献】特表2013-540543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低周波パルス電流による、肩こりをほぐす等の治療の効果は認められているものの、その治療の効果はユーザの体感にも左右される。このため、低周波パルス電流を用いた治療時のユーザの体感を向上させることが、治療の効果の向上に有効であると考えられる。
【0007】
また、肩こりなどの原因となる筋肉の萎縮を予防するためには、高い頻度で低周波パルス電流による治療を行うことにより症状の悪化を抑制することが望ましい。そのために、低周波パルス電流を用いた治療時のユーザの体感を向上させ、低周波パルス電流による治療に対するユーザのモチベーションを向上させることが有効であると考えられる。
【0008】
しかしながら、従来の技術においては、治療時のユーザの体感は低周波パルス電流の電圧や周波数等で作られる皮膚や筋への電気刺激のみに依存しており、治療時のユーザの体感を向上させることは困難であった。また、このような課題を解決するための手段は、特許文献1,2にも開示されていない。
【0009】
本発明は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、治療時のユーザの体感を向上させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0011】
すなわち、本発明の一側面に係る低周波治療器は、接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と、前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力する出力部と、を備える。
【0012】
上記構成では、低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した光や音が出力されるため、低周波パルス電流による電気的刺激と、電気的刺激とは異なる刺激(視覚及び聴覚の少なくともいずれか)と、の複合的な刺激をユーザに与えることができる。このため、低周波パルス電流による電気的刺激を単体でユーザに与える構成と比べて、低周波パルス電流による電気的刺激をユーザに効果的に知覚させ、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0013】
上記一側面に係る低周波治療器において、例えば、前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給の制御と、前記低周波パルス電流の供給の制御と連動した、前記出力部による前記光及び音の少なくともいずれかの出力の制御と、を行う制御部を備える。当該構成によれば、低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した光や音を出力することができる。
【0014】
上記一側面に係る低周波治療器において、前記低周波パルス電流の供給状態は、例えば、前記低周波パルス電流による前記接触対象への刺激強度を含む。当該構成によれば、低周波パルス電流による刺激強度に同期した光や音を出力し、低周波パルス電流による電気的刺激をユーザに効果的に知覚させることができる。
【0015】
上記一側面に係る低周波治療器において、例えば、前記刺激強度は、前記低周波パルス電流の周波数を含む。
【0016】
上記一側面に係る低周波治療器において、例えば、前記刺激強度は、前記低周波パルス電流の電圧を含む。
【0017】
上記一側面に係る低周波治療器において、例えば、前記刺激強度は、前記低周波パルス電流のパルス幅を含む。
【0018】
上記一側面に係る低周波治療器において、例えば、前記低周波パルス電流の供給状態は、前記パッド部における前記低周波パルス電流の供給位置を含む。当該構成によれば、低周波パルス電流の供給位置の変化に同期した光や音を出力し、低周波パルス電流による電気的刺激をユーザに効果的に知覚させることができる。
【0019】
上記一側面に係る低周波治療器において、前記出力部は、前記パッド部に設けられてもよい。当該構成によれば、電気的刺激と、電気的刺激とは異なる刺激と、の両方がパッド部から出力されるため、両者が同期したものであることをユーザが容易に認識することができる。これにより、ユーザに対して電気的刺激をより効果的に知覚させ、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0020】
上記一側面に係る低周波治療器において、例えば、前記パッド部は、前記低周波パルス電流を供給可能な電極を有し、前記出力部は、前記パッド部における、前記電極の位置に対応する位置に設けられ、前記電極による前記低周波パルス電流の供給に同期して発光する発光部を含む。当該構成によれば、電気的刺激と、視覚的刺激と、の両方が互いに対応する各位置から出力されるため、両者が同期したものであることをユーザが容易に認識することができる。これにより、ユーザに対して電気的刺激をより効果的に知覚させ、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。なお、電極の位置に対応する位置とは、電極に近い位置であり、例えば、ユーザに取り付けられたパッド部におけるユーザから見える面のうち電極に最も近い位置である。
【0021】
上記一側面に係る低周波治療器において、前記パッド部は、前記低周波パルス電流を供給可能な複数の電極を有し、前記出力部は、前記パッド部における、それぞれ前記複数の電極の位置に対応する位置に設けられ、それぞれ対応する電極による前記低周波パルス電流の供給に同期して発光する複数の発光部を含んでもよい。当該構成によれば、低周波パルス電流が供給される位置の変化に伴って発光する位置も変化する。これにより、ユーザに対して電気的刺激をより効果的に知覚させ、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0022】
上記一側面に係る低周波治療器において、前記パッド部は、前記接触対象とは反対側の面に、前記電極を覆う絶縁層を有し、前記絶縁層は、前記発光部の光を拡散させる透明部材を含む。当該構成によれば、例えば発光部が小さくても、絶縁膜を発光させ、ユーザに対して印象的な視覚刺激を与えることができる。
【0023】
上記一側面に係る低周波治療器において、前記電極は、前記発光部の光を拡散させる透明導電膜により形成される。当該構成によれば、絶縁膜に加えて電極の透明導電膜も発光させ、ユーザに対して印象的な視覚刺激を与えることができる。
【0024】
上記一側面に係る低周波治療器において、例えば、前記出力部は、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期して色、輝度、及び面積の少なくともいずれかが変化する光を出力する。
【0025】
上記一側面に係る低周波治療器において、前記出力部は、前記低周波パルス電流の強度及び波形の少なくともいずれかに応じて変化する色の光を出力してもよい。当該構成によれば、低周波パルス電流の強度や波形に応じた治療内容の違いが視覚により強調されてユーザに認知され、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0026】
上記一側面に係る低周波治療器において、前記出力部は、例えば、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期して音圧、音高、及び音色の少なくともいずれかが変化する音を出力する。
【0027】
上記一側面に係る低周波治療器において、前記出力部は、前記低周波パルス電流の強度及び波形の少なくともいずれかに応じて変化する音色の音を出力してもよい。当該構成によれば、低周波パルス電流の強度や波形に応じた治療内容の違いが視覚により強調されてユーザに認知され、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0028】
本発明の一側面に係る制御方法は、接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と出力部とを備える低周波治療器の制御方法であって、前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力させるステップと、を含む。
【0029】
本発明の一側面に係る制御プログラムは、接触対象に低周波パルス電流を供給可能なパッド部と出力部とを備える低周波治療器の制御プログラムであって、前記パッド部に前記低周波パルス電流を供給させるステップと、前記パッド部による前記低周波パルス電流の供給中に、前記出力部に、前記低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力させるステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、治療時のユーザの体感を向上させることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の適用例である低周波治療器10を示す図である。
図2】低周波治療器10の一例である低周波治療器20の構成を示す斜視図である。
図3】低周波治療器20におけるパッド部2と本体部3とを分離した状態を示す分解斜視図である。
図4】低周波治療器20におけるパッド部2を示す平面図である。
図5】低周波治療器20におけるパッド部2を示す底面図である。
図6】本体部3のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7】本体部3がパッド21に印加するパルス電圧の一例を示す図である。
図8】発光体を有するパッド21の一例を示す断面図である。
図9】多電極構造としたパッド21の一例を示す図である。
図10】パッド21を多電極構造とした場合の発光の一例を示す図である。
図11】低周波パルス電流に同期した音を出力する低周波治療器20の一例を示す図である。
図12】低周波治療器10の他の一例である低周波治療器200の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0033】
<適用例>
図1は、本発明の適用例である低周波治療器10を示す図である。
【0034】
低周波治療器10は、ユーザに対して低周波パルス電流を供給して電気的な刺激を与えることにより、ユーザの治療等を行うための装置である。低周波パルス電流の周波数は、例えば1~1200[Hz]程度である。低周波治療器10は、パッド部11と、制御部13と、光/音出力部12と、を備える。
【0035】
パッド部11は、ユーザの身体に取り付け可能である。また、パッド部11は、電極11aを有し、取り付け先(接触対象)であるユーザの身体に対して、電極11aから低周波パルス電流を供給可能である。パッド部11による低周波パルス電流の供給は、制御部13によって制御される。
【0036】
光/音出力部12は、パッド部11による低周波パルス電流の供給中に、その低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力する出力部である。例えば、光/音出力部12は、発光部及び発音部の少なくともいずれかを含む。光/音出力部12による光や音の出力は、制御部13によって制御される。同期とは、例えば、連動すること、すなわち同じタイミングで変化することである。
【0037】
発光部は、ユーザの視点から発光して見える部分であって、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光源である。又は、発光部は、光源と、その光源の光を導光する導光部材と、の組み合わせであってもよい。
【0038】
発音部は、ユーザに聞こえる音を発する部分であって、例えば電気信号を音に変換するスピーカである。又は、発音部は、スピーカと、そのスピーカの音を伝播させる伝播部材と、の組み合わせであってもよい。
【0039】
低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した光とは、例えば、低周波パルス電流の供給状態の変化に同期して、色、輝度、及び面積の少なくともいずれかが変化する光である。光の面積とは、発光する部分の面積である。例えば、光/音出力部12は、色、輝度、及び面積の少なくともいずれかが低周波パルス電流の刺激強度に比例する光を発する発光部である。一例としては、光/音出力部12は、制御部13からの制御により、低周波パルス電流が供給されている時に発光し、低周波パルス電流が供給されていない時に発光しない。
【0040】
低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した音とは、例えば、低周波パルス電流の供給状態の変化に同期して、音圧、音高、及び音色の少なくともいずれかが変化する音である。例えば、光/音出力部12は、音圧、音高、及び音色の少なくともいずれかが低周波パルス電流の刺激強度に比例する音を出力する発音部である。一例としては、光/音出力部12は、制御部13からの制御により、低周波パルス電流が供給されている時に音が鳴り、低周波パルス電流が供給されていない時に音が鳴らない。
【0041】
制御部13は、パッド部11による低周波パルス電流の供給を制御する第1の制御を行う。また、制御部13は、光/音出力部12による光及び音の少なくともいずれかの出力を制御する第2の制御を行う。
【0042】
また、制御部13は、第1の制御と第2の制御とを連動させて行う。すなわち、制御部13は、第1の制御の内容に基づいて第2の制御を行い、又は第2の制御の内容に基づいて第1の制御を行う。これにより、パッド部11による低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した光や音を光/音出力部12から出力させることができる。
【0043】
一例としては、制御部13は、第1の制御として、電極11aが低周波パルス電流を供給するためのパルス電圧波形を生成し、生成したパルス電圧波形を電極11aに印加する。そして、制御部13は、第2の制御として、生成したパルス電圧波形を、そのまま、又は電圧変換などの処理を加えたうえで、光/音出力部12が光や音を出力するための駆動信号として光/音出力部12に出力する。
【0044】
ただし、第1の制御と第2の制御とを連動させる方法はこれに限らない。例えば、制御部13は、電極11aが低周波パルス電流を供給するためのパルス電圧波形と、光/音出力部12が光や音を出力するための駆動信号と、を別々に生成し、生成したパルス電圧波形及び駆動信号をそれぞれ電極11a及び光/音出力部12に出力してもよい。
【0045】
このように、低周波治療器10は、低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した光や音を光/音出力部12から出力する。これにより、低周波パルス電流による電気的刺激と、電気的刺激とは異なる刺激(視覚及び聴覚の少なくともいずれか)と、の複合的な刺激をユーザに与えることができる。このため、低周波パルス電流による電気的刺激を単体でユーザに与える構成と比べて、低周波パルス電流による電気的刺激をユーザに効果的に知覚させ、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0046】
上記の低周波パルス電流の供給状態は、例えば、パッド部11が供給する低周波パルス電流によるユーザへの刺激強度を含む。すなわち、パッド部11は、供給する低周波パルス電流によるユーザへの刺激強度を調整可能であり、光/音出力部12は、パッド部11が供給する低周波パルス電流によるユーザへの刺激強度の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力する。
【0047】
また、上記の低周波パルス電流の供給状態は、例えば、パッド部11における低周波パルス電流の供給位置を含む。すなわち、パッド部11は、パッド部11がユーザに接触する領域のうち複数の位置から低周波パルス電流を供給可能であり、光/音出力部12は、パッド部11が低周波パルス電流を供給する位置の変化に同期した、光及び音の少なくともいずれかを出力する。
【0048】
低周波パルス電流の刺激強度は、例えば、低周波パルス電流の周波数(すなわち周期)、低周波パルス電流の電圧、及び低周波パルス電流のパルス幅の少なくともいずれかを含む。例えば、低周波パルス電流の周波数が高いほど、刺激の間隔が短くなり、強度が高い刺激となる。また、低周波パルス電流の電圧が高いほど、一回の刺激が大きくなり、強度が高い刺激となる。また、低周波パルス電流のパルス幅が長いほど、一回の刺激が長くなり、強度が高い刺激となる。
【0049】
また、図1に示す例では、光/音出力部12はパッド部11に設けられている。例えば、光/音出力部12は、パッド部11における、電極11aの位置に対応する位置に設けられた、上記の発光部を含む。電極11aの位置に対応する位置とは、電極11aに近い位置であり、例えば、ユーザに取り付けられたパッド部11におけるユーザから見える面のうち電極11aに最も近い位置である。また、光/音出力部12は、パッド部11に設けられた、上記の発音部を含んでもよい。
【0050】
このように、光や音を出力する光/音出力部12が、電気的刺激を供給するパッド部11に設けられていることで、出力される光や音が電気的刺激に同期したものであることを、ユーザが容易に認識することができる。これにより、ユーザに対して電気的刺激をより効果的に知覚させ、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0051】
また、パッド部11の電極11aは、複数の電極を含んでいてもよい。この場合に、光/音出力部12は、パッド部11の複数の電極にそれぞれ対応する複数の発光部を備えてもよい。光/音出力部12の複数の発光部は、パッド部11における、それぞれパッド部11の複数の電極の位置に対応する位置に設けられる。そして、光/音出力部12の複数の発光部は、それぞれ対応する電極による低周波パルス電流の供給に同期して発光するように、制御部13によって制御される。
【0052】
これにより、パッド部11における、電気的刺激が与えられている位置の近くから光や音が出力される。したがって、電気的刺激が与えられる位置の変化に伴って、光や音が出力される位置も変化し、電気的刺激が与えられる位置の変化をユーザにより効果的に知覚させることができる。このため、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0053】
なお、図1に示す例では光/音出力部12がパッド部11に設けられている構成について説明したが、光/音出力部12は、制御部13に設けられていてもよいし、パッド部11及び制御部13とは別の装置に設けられていてもよい。
【0054】
<低周波治療器10の一例である低周波治療器20の構成>
図2は、低周波治療器10の一例である低周波治療器20の構成を示す斜視図である。図3は、低周波治療器20におけるパッド部2と本体部3とを分離した状態を示す分解斜視図である。図4は、低周波治療器20におけるパッド部2を示す平面図である。図5は、低周波治療器20におけるパッド部2を示す底面図である。
【0055】
低周波治療器20は、コードレスタイプの低周波治療器であり、パッド部2及び本体部3を備える。パッド部2は、図1に示したパッド部11の一例である。本体部3は、図1に示した制御部13の一例である。
【0056】
この例では、低周波治療器20は、ユーザに供給する低周波パルス電流に同期して光を発することで、低周波パルス電流による電気的刺激をユーザに効果的に知覚させるものである。
【0057】
パッド部2は、パッド21及びホルダ22により構成されている。パッド21及びホルダ22は、この例では一体になっている。「一体」とは、通常の使用状態でパッド21とホルダ22とが互いに分離不能に組み合わされた状態をいう。ただし、パッド21及びホルダ22は、互いに分離可能になっていてもよい。
【0058】
パッド21は、ユーザの身体に取り付けられる部分である。このパッド21は、ユーザに低周波パルス電流を供給する導電層21aを備える。導電層21aは、図1に示した電極11aの一例である。導電層21aはパッド21の表裏各面の少なくとも一部に露出している。この例では、パッド21におけるユーザの身体側を向いた裏面211の全面と、パッド21における表面の一部と、に導電層21aが露出している。
【0059】
ユーザの身体へのパッド21の取り付けは、パッド21の裏面211を、図5にハッチングを付して示した範囲の治療部21Yに取り付けられた導電性のゲルを介してユーザの皮膚に貼り付けることにより行われる。
【0060】
パッド21は、例えば、軟質合成樹脂製の基材の表面に、印刷により導体であるカーボン層を積層したものであり、このカーボン層が導電層21aとなる。パッド21は可撓性を有する。導電層21aは、通電時の極性(+極と-極)別に設けられている。なお、パッド21には極性を交互に転換させて通電することもあるので、+極専用の導電層21aと-極専用の導電層21aが固定的に存在するのではなく、極性は可変的である。
【0061】
例えば、図3に示すように、パッド21は、ホルダ22上に取り付けられる取付部21Xと、この取付部21Xから少なくとも一方に延び導電層21aが露出した治療部21Yと、を備える。
【0062】
導電層21aは、パッド21の取付部21Xにおける本体部3を向いた面である表面にも露出しており、この露出部分がパッド側電極部212となる。このパッド側電極部212は、本体部3の電極(不図示)との電気的接続のために形成されている。
【0063】
この例では、取付部21Xにおける幅方向(図4における上下方向)の一端に一方の極(例えば+極)に対応した導電層21aが露出し、他端に他方の極(例えば-極)に対応した導電層21aが露出している。
【0064】
ホルダ22は、パッド21を保持する部分である。この例では、ホルダ22は、硬質樹脂製であり、両面粘着テープによりパッド21の取付部21Xを保持している。これにより、パッド21とホルダ22とが一体とされる。
【0065】
このホルダ22は、パッド21の取付部21Xを保持するパッド保持部221と、パッド保持部221の両端に位置する壁部222とを備える。なお、パッド21の保持は、両面粘着テープを用いる方法に限定されず、例えば熱溶着を用いる方法や、のりや接着剤を用いる方法でもよい。
【0066】
ホルダ22は硬質樹脂製であるため不導体である。このため、パッド21をユーザの背中において背骨を跨ぐように配置した場合、背骨に不導体であるホルダ22を一致させ、パッド21の治療部21Yが背骨に重ならないように配置できる。
【0067】
これにより、ユーザの背骨及び脊髄に低周波パルス電流が流れることを抑制できる。よって、背骨及び脊髄が電流により損傷を受けることを抑制し、低周波治療器20を安全に使用できる。また、パッド21の取付部21Xにおいて、背骨に重なる部分を別途絶縁部材で覆う必要がないため、パッド部2の構成を簡素化できる。
【0068】
パッド21は、消耗品であり、交換の際などに本体部3に対して着脱可能とされている。この例では、ホルダ22がパッド21と一体となってパッド部2を構成しており、ホルダ22に対して本体部3を着脱するよう構成されている。パッド21の交換は、例えばホルダ22ごと行われる。
【0069】
本体部3は、ホルダ22に取り付けられることで、パッド21の導電層21aに低周波パルス電流を印加する部分である。本体部3の内部には電池等の電源部、及び、所望の低周波パルス電流を形成するための電気回路(基板)が配置され、外部にはスイッチ類や表示部が設けられていてもよい。
【0070】
図示を省略するが、本体部3のホルダ22に正対する下面からは、パッド部2のパッド側電極部212と電気的に接続する電極が突出している。この本体部3の電極は極性別に設けられる。
【0071】
ここで、図5に示すように、ホルダ22が本体部3に係止された状態において、ホルダ22の幅寸法W22は、本体部3の幅寸法W3よりも小さく形成されている。ホルダ22は硬質樹脂製であるため可撓性に乏しい。一方、パッド21は可撓性を有するため、ホルダ22を本体部3よりも幅狭とすることにより、パッド21の可撓性が本体部3によって阻害されにくい。このため、使用者の身体の曲面にパッド21を沿わせやすいから、パッド部2の使用者の身体へのフィット性が良好である。
【0072】
<本体部3のハードウェア構成>
図6は、本体部3のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本体部3は、例えば、図6に示すように、プロセッサ61と、メモリ62と、ユーザインタフェース63と、電源部64と、パッド駆動部65と、を含む。
【0073】
プロセッサ61は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサである。プロセッサ61は、メモリ62に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、低周波治療器20の各部の動作を制御する制御部となる。なお、プロセッサ61は、複数のプロセッサの組み合わせであってもよい。図1に示した制御部13は、例えばプロセッサ61により構成される。
【0074】
メモリ62は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどによって実現される。メモリ62は、プロセッサ61によって実行されるプログラム、又はプロセッサ61によって用いられるデータなどを記憶する。
【0075】
ユーザインタフェース63は、例えば、ユーザからの操作入力を受け付ける入力デバイスや、ユーザへ情報を出力する出力デバイスなどを含む。入力デバイスは、例えばキーやリモコンなどにより実現することができる。出力デバイスは、例えばディスプレイやスピーカなどにより実現することができる。また、タッチパネルなどによって入力デバイス及び出力デバイスの両方を実現してもよい。ユーザインタフェース63は、プロセッサ61によって制御される。
【0076】
また、本体部3は、ユーザインタフェース63に代えて、又はユーザインタフェース63に加えて、通信インタフェースを備えてもよい。通信インタフェースは、無線通信のインタフェースであってもよいし、有線通信のインタフェースであってもよい。本体部3が通信インタフェースを備えることにより、例えば、スマートフォンなどの他の通信装置から本体部3に対してコマンドを送信して本体部3を制御したり、本体部3の情報を他の通信装置へ送信したりすることが可能になる。
【0077】
電源部64は、低周波治療器20の各構成要素に電力を供給する。電源としては、例えば、アルカリ乾電池、又は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池が用いられ、電池電圧を安定化して各構成要素に供給する駆動電圧を生成する。また、電源部64は、電池に限らず、家庭用電源などから供給される電力を用いて、低周波治療器20の各構成要素に電力を供給するものであってもよい。
【0078】
パッド駆動部65は、パッド21にパルス電圧を印加することで、パッド21によるユーザへの低周波パルス電流の供給を制御する。パッド駆動部65は、プロセッサ61によって制御される。図7において、本体部3のパッド駆動部65がパッド21に印加するパルス電圧について説明する。
【0079】
<本体部3がパッド21に印加するパルス電圧>
図7は、本体部3がパッド21に印加するパルス電圧の一例を示す図である。図7に示すパルス電圧波形70は、本体部3のパッド駆動部65がパッド21に印加するパルス電圧の波形の一例である。
【0080】
パルス電圧波形70のパラメータは、振幅(電圧)Vと、パルス幅Wと、パルス周期T(パルス周波数F=1/T)と、を含む。本体部3は、これらのパラメータのうち少なくとも1つのパラメータを変更することにより、ユーザに対する治療内容を変更できる。
【0081】
具体的には、本体部3は、電源電圧を所定の電圧に昇圧し、昇圧した電圧を、設定された振幅に対応する電圧に調整する。例えば、本体部3は、ユーザからの指示に従って所定数のレベル(10段階のレベル)でパルス電圧の振幅Vを調整できる。本体部3は、あるレベルの設定入力をユーザから受け付けると、そのレベルに対応する振幅Vに基づいて、治療モードに応じた治療波形(パルス波形)を生成し、当該治療波形をパッド21のパッド側電極部212に出力する。
【0082】
低周波治療器20には、複数の治療モードが予め用意されている。例えば、治療モードとしては、「もみ」、「たたき」、「押し」、「スイープ」モード等が挙げられる。本体部3は、パッド21に印加するパルス電圧の波形を変化させることにより、各種のモードに対応する電気刺激をパッド21からユーザに与える。
【0083】
また、本体部3は、パルス電圧の振幅V、パルス幅W、及びパルス周期Tの少なくともいずれかを変化させることにより、刺激強度を調整する。例えば、パルス電圧の振幅Vが大きいほど、パルス幅Wが広いほど、パルス周期Tが短い(パルス周波数が高い)ほど、パッド21がユーザに与える刺激強度は高くなる。
【0084】
<発光体を有するパッド21>
図8は、発光体を有するパッド21の一例を示す断面図である。
【0085】
図8に示すように、パッド21は、例えば、ゲル層81と、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜82と、PET(Polyethylene Terephthalate)層83と、の3層構造になっている。また、パッド21には、低周波端子84と、LED端子85と、LED86と、が設けられている。
【0086】
ゲル層81は、ユーザの身体に接触する導電性のゲルの層である。ITO膜82は、上記の導電層21aを構成する透明導電膜である。PET層83は、ITO膜82を覆う非導電性の透明部材である。低周波端子84、LED端子85、及びLED86のそれぞれは、ITO膜82に対して電気的に接触し、かつPET層83から露出するように設けられている。
【0087】
低周波端子84は、上記のパッド側電極部212を構成する。本体部3は、上記のパルス電圧を低周波端子84に印加する。また、本体部3は、パルス電圧と同期したLED86の駆動信号をLED端子85に印加する。LED86は、上記の光/音出力部12に含まれる発光部を構成する。
【0088】
ITO膜82には、本体部3から低周波端子84に印加されたパルス電圧に応じた低周波パルス電流を、ゲル層81を介してユーザに供給する電極(電極11a)が形成されている。また、ITO膜82には、本体部3からLED端子85に印加された駆動信号によってLED86を発光させる回路が形成されている。
【0089】
PET層83は、上記のように透明部材であり、かつパッド21がユーザの身体に取り付けられた状態でユーザから見える部材である。したがって、LED86から発せられた光は、PET層83によって導光されながらPET層83の全体に拡散し、その結果、ユーザからは、PET層83が発光して見える。この場合、PET層83も、LED86とともに発光部を構成する。
【0090】
このように、パッド21は、ユーザの身体に接触するゲル層81の面とは反対側の面に、ITO膜82を覆うPET層83(絶縁層)を有し、PET層83は、LED86(発光部)の光を拡散させる透明部材である。これにより、例えば光源であるLED86が小さくても、絶縁膜であるPET層83を発光させ、ユーザに対して印象的な視覚刺激を与えることができる。
【0091】
なお、図8に示す例ではLED86が直接ユーザに見えるようにPET層83から露出しているが、LED86が露出していない構成としてもよい。このような構成においてもPET層83を発光させることができるため、ユーザに対して印象的な視覚刺激を与えることができる。
【0092】
また、ITO膜82も透明であるため、LED86から発せられた光は、ITO膜82によって導光されながらITO膜82の全体に拡散する。この場合、ITO膜82も、LED86及びPET層83とともに発光部を構成する。PET層83及びITO膜82の2層で光を拡散させることで、ユーザにより印象的な視覚刺激を与えることができる。
【0093】
発光体を有するパッド21は、図8に示した例に限らない。例えば、パッド21において、LED86に代えて、絶縁性を有する各種の発光体を設けてもよい。
【0094】
<多電極構造としたパッド21>
図9は、多電極構造としたパッド21の一例を示す図である。例えば図9に示すように、パッド21の電極を、多電極構造としてもよい。
【0095】
図9に示す例では、パッド21は、複数の電極部がハニカム状に形成された電極群91,92を有する。電極群91は一方の治療部21Yに形成されており、電極群92は他方の治療部21Yに形成されている。電極群91,92の各々は、例えば、9つの電極を有する。
【0096】
例えば、本体部3(パッド駆動部65)は、電極群91(又は、電極群92)のうちの2つの電極間でパルス電圧を印加する。これにより、一方の電極がプラス極性となり、他方の電極がマイナス極性となる。
【0097】
電極群91,92はハニカム状に形成されているため、治療部21Yの面積を効率的に活用することができる。ただし、電極群91,92は、ハニカム形状に限られず、例えば、マトリクス状に形成されていてもよい。また、治療部21Yのそれぞれにおける電極の数は、9個に限らず、2個以上の任意の数とすることができる。
【0098】
<パッド21を多電極構造とした場合の発光>
図10は、パッド21を多電極構造とした場合の発光の一例を示す図である。
【0099】
例えばパッド21を図9に示したように多電極構造とした場合に、パッド21における各電極の位置にそれぞれ設けられた複数の発光部を設ける。例えば、図8のパッド21の構成において、ITO膜82によって図9に示した多電極構造を形成し、形成した多電極構造の電極のそれぞれの付近にLED86を設ける。図9に示した例では、それぞれ9つの電極を有する電極群91,92が形成されるため、18個のLED86が設けられる。
【0100】
そして、本体部3は、電極群91,92に含まれる電極のそれぞれについて、その電極から供給する低周波パルス電流に同期させて、その電極の付近のLED86を発光させる制御を行う。例えば、本体部3は、ある電極からユーザに低周波パルス電流を供給するタイミングで、図10に示すように、その電極の付近のLEDを発光させる。
【0101】
これにより、例えば多電極構造を用いて位置を変えながら低周波パルス電流を供給する構成において、パッド21のうち、低周波パルス電流により刺激される位置の付近が局所的に発光する。したがって、ユーザに対して、位置が移動する電気的刺激に加えて、その電気的刺激の位置と連動して位置が移動する視覚的刺激を与えることができる。
【0102】
このため、位置が移動する電気的刺激を単体でユーザに与える構成と比べて、低周波パルス電流による電気的刺激をユーザに効果的に知覚させ、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0103】
また、ある電極に対応するLEDの光が、他の電極に対応する領域にまで漏れないように、電極群91,92に含まれる各電極のエリアを区切るよう、PET層83やITO膜82に遮光部材を設けてもよい。これにより、電極群91,92に含まれる各電極に対応する各エリアを独立して発光させることができる。
【0104】
また、本体部3は、低周波パルス電流を供給する電極に対応するLEDだけでなく、例えばその電極の周辺の電極に対応するLEDを発光させる制御を行ってもよい。また、この場合に、本体部3は、供給する低周波パルス電流の強度に応じて、周辺のLEDのうちいくつのLEDを発光させるかを切り替えることで、発光面積を変化させてもよい。
【0105】
<低周波パルス電流の強度及び波形の少なくともいずれかに応じて変化する色の光>
本体部3は、低周波パルス電流に同期した光を出力する制御を行うとともに、低周波パルス電流の強度及び波形(治療モード)の少なくともいずれかに応じて、出力する光の色を変化させてもよい。この場合、例えばLED86として可変波長のものを用いる。
【0106】
例えば、本体部3は、ユーザに対して強い低周波パルス電流を供給する治療モードにおいては、ユーザに対して強い視覚的刺激を与える赤色等の光を出力するようにする。また、本体部3は、ユーザに対して弱い低周波パルス電流を供給する治療モードにおいては、ユーザに対して弱い視覚的刺激を与えるピンク色等の光を出力するようにする。これにより、刺激の強度や治療モードに応じた治療内容の違いが視覚により強調されて認知され、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0107】
<低周波パルス電流に同期した光を出力する発光部の変形例>
低周波パルス電流に同期した光を出力する発光部としてのLED86をパッド21に設ける構成について説明したがこのような構成に限らない。例えば、本体部3や、本体部3と通信可能なスマートフォンなどの装置に発光部を設けてもよい。また、発光部は、1つに限らず、複数設けられていてもよい。
【0108】
<低周波パルス電流に同期した音を出力する低周波治療器20>
図11は、低周波パルス電流に同期した音を出力する低周波治療器20の一例を示す図である。
【0109】
低周波治療器20が低周波パルス電流に同期した光を出力する構成について説明したが、低周波治療器20は、低周波パルス電流に同期した光に代えて、又は低周波パルス電流に同期した光に加えて、低周波パルス電流に同期した音を出力する構成としてもよい。
【0110】
図11に示す例では、低周波治療器20は、本体部3にスピーカ111を有している。本体部3は、パッド21からユーザに供給させる低周波パルス電流と同期した音をスピーカ111から出力する。
【0111】
例えば、本体部3は、低周波パルス電流が供給されるときにスピーカ111から音を出力し、低周波パルス電流が供給されていないときに音を出力しない。又は、本体部3は、供給される低周波パルス電流の強度に応じて、スピーカ111から出力される音の音圧、音高、及び音色の少なくともいずれかを変化させてもよい。
【0112】
低周波パルス電流と同期してスピーカ111から出力される音は、「ピー、ピー」などの電子音でもよいし、「トン、トン」、「ドン、ドン」、「グイッ、グイッ」、「ギュッ、ギュッ」などの特定種類の刺激を想起させる音などであってもよい。
【0113】
このように、低周波治療器20は、低周波パルス電流に同期した音を出力する。これにより、低周波パルス電流による電気的刺激と、聴覚的刺激と、の複合的な刺激をユーザに与えることができる。このため、低周波パルス電流による電気的刺激を単体でユーザに与える構成と比べて、低周波パルス電流による電気的刺激をユーザに効果的に知覚させ、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0114】
また、低周波パルス電流に同期した音を出力する出力部は、スピーカ111に限らず、例えば振動する物体をユーザの頭部や頸部に接触させることで音をユーザに出力する骨伝導方式のヘッドホンやイヤホンなどであってもよいし、バイブレータ等によって振動を発生することにより音を出力するものであってもよい。
【0115】
<低周波パルス電流の強度及び波形の少なくともいずれかに応じて変化する音色>
本体部3は、低周波パルス電流に同期した音を出力する制御を行うとともに、低周波パルス電流の強度及び波形(治療モード)の少なくともいずれかに応じて、出力する音の音色を変化させてもよい。
【0116】
例えば、本体部3は、ユーザに対して強い低周波パルス電流を供給する治療モードにおいては、ユーザに対して強い聴覚刺激を与える「ドン、ドン」等の音を出力するようにする。また、本体部3は、ユーザに対して弱い低周波パルス電流を供給する治療モードにおいては、ユーザに対して弱い聴覚刺激を与える「トン、トン」等の音を出力するようにする。これにより、刺激の強度や治療モードに応じた治療内容の違いが聴覚により強調されて認知され、低周波パルス電流による治療の体感を向上させることができる。
【0117】
<低周波パルス電流に同期した音を出力する発光部の変形例>
低周波パルス電流に同期した音を出力するスピーカ111を本体部3に設ける構成について説明したがこのような構成に限らない。例えば、パッド21や、本体部3と通信可能なスマートフォンなどの装置にスピーカ111を設けてもよい。
【0118】
図12は、低周波治療器10の他の一例である低周波治療器200の構成を示す図である。
【0119】
低周波治療器10の一例としてコードレスタイプの低周波治療器20について説明したが、低周波治療器10は、例えば図12に示すような、有線タイプの低周波治療器200であってもよい。
【0120】
低周波治療器200は、治療器の本体部205と、治療部位に貼り付けるための一対のパッド270と、本体部205とパッド270とを電気的に接続するためのコード280と、を含む。低周波治療器200も、低周波治療器20と同様に、低周波パルス電流を供給することで、ユーザの肩凝りをほぐす等の治療を行う低周波治療器である。
【0121】
パッド270は、シート状の形状を有し、ユーザの身体に取り付けられる。パッド270の一方の面(身体と接触しない面)には、他方の面(身体と接触する面)に形成されている電極(図示しない)に対応したプラグが設けられている。電極は、例えば、導電性のゲル状材料等により形成される。
【0122】
コード280のプラグ282とパッド270側のプラグとを接続し、コード280を本体部205のジャックに差し込むことにより、本体部205とパッド270とが接続される。なお、一方のパッド270に形成されている電極の極性がプラスの場合、他方のパッド270に形成されている電極の極性はマイナスとなる。
【0123】
本体部205には、各種ボタンで構成される操作インタフェース230と、ディスプレイ260とが設けられている。操作インタフェース230は、電源のオン/オフを切り替えるための電源ボタン232と、治療モードの選択を行うためのモード選択ボタン234と、治療開始ボタン236と、電気刺激の強さ(刺激強度)の調整を行うための調整ボタン238とを含む。
【0124】
なお、操作インタフェース230は、上記構成に限られず、後述するユーザによる各種操作を実現できる構成であればよい。操作インタフェース230は、例えば、その他のボタン、ダイヤルやスイッチ等により構成されていてもよい。
【0125】
ディスプレイ260には、電気刺激強度、治療の残り時間、治療モード、パッド270の装着状態等が表示されたり、各種メッセージが表示されたりする。
【0126】
低周波治療器200において、本体部205及びパッド270が、低周波治療器20における本体部3及びパッド21に対応する機能を有する。すなわち、本体部205は、パッド270から供給する低周波パルス電流に同期した光及び音の少なくともいずれかを出力部から出力する。光や音を出力する出力部は、パッド270に設けられてもよいし、本体部205に設けられてもよいし、本体部205と通信可能なスマートフォンなどの装置に設けられてもよい。
【0127】
また、図12に示した低周波治療器200において、低周波パルス電流の供給状態の変化に同期した光を出力する出力部として、プラグ282やコード280に発光部を設けた構成としてもよい。
【0128】
<制御プログラム>
低周波治療器10、低周波治療器20、及び低周波治療器200の制御プログラムは、プログラムをコンピュータが読取可能な一時的でない(non-transitory)記憶媒体に記憶される。このような「コンピュータ読取可能な記憶媒体」は、例えば、CD-ROM(Compact Disc-ROM)等の光学媒体や、USB(Universal Serial Bus)メモリ又はメモリカード等の磁気記憶媒体等を含む。また、このようなプログラムを、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供することもできる。
【符号の説明】
【0129】
2,11 パッド部
3,205 本体部
10,20,200 低周波治療器
11a 電極
12 光/音出力部
13 制御部
21,270 パッド
21X 取付部
21Y 治療部
21a 導電層
22 ホルダ
61 プロセッサ
62 メモリ
63 ユーザインタフェース
64 電源部
65 パッド駆動部
70 パルス電圧波形
81 ゲル層
82 ITO膜
83 PET層
84 低周波端子
85 LED端子
86 LED
91,92 電極群
111 スピーカ
211 裏面
212 パッド側電極部
221 パッド保持部
222 壁部
230 操作インタフェース
232 電源ボタン
234 モード選択ボタン
236 治療開始ボタン
238 調整ボタン
260 ディスプレイ
280 コード
282 プラグ
W3,W22 幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12