(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】パルス発生回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/16 20060101AFI20240910BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240910BHJP
H03K 17/22 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H03K17/16 L
H03K17/687 F
H03K17/22 E
(21)【出願番号】P 2020118003
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-242769(JP,A)
【文献】特開2012-065235(JP,A)
【文献】特開2018-157084(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/045534(JP,A1)
【文献】特開平11-260423(JP,A)
【文献】特開2008-048298(JP,A)
【文献】特開2020-088842(JP,A)
【文献】特開2010-223796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイサイドスイッチング素子のオンオフを指令する入力信号の切り替わり時にのみセットパルス、リセットパルスを発生させ、レベルシフト回路を介して前記ハイサイドスイッチング素子のオン、オフ状態を駆動するパルス発生回路であって、
前記入力信号の第1状態から第2状態への変化に基づいて前記リセットパルスを出力するリセットパルス発生回路と、
前記入力信号の前記第2状態から前記第1状態への変化に基づいて前記セットパルスを出力するセットパルス発生回路と、
第1の電源電圧から前記第1の電源電圧より低い第2の電源電圧を生成し、前記リセットパルス発生回路及び前記セットパルス発生回路を含む信号伝達回路系の電源として供給する内部電源と、
前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との電圧差が所定の閾値以下に下がったことを検出して電圧低下信号を出力する差分検出器と、
前記電圧低下信号を受けて瞬断リセットパルスを生成し、前記リセットパルス発生回路が出力する前記リセットパルスに割り込ませる瞬断リセットパルス発生回路と、を備え
、
前記差分検出器は、第1のPNPトランジスタと第2のPNPトランジスタで構成され、前記第1のPNPトランジスタと前記第2のPNPトランジスタの各エミッタが前記第1の電源電圧の正極に接続され、前記第1のPNPトランジスタと前記第2のPNPトランジスタの各ベースと前記第1のPNPトランジスタのコレクタが接続され、前記第1のPNPトランジスタのコレクタは少なくとも1個のダイオードと第1の抵抗の直列回路を介して前記第2の電源電圧の正極に接続され、前記第2のPNPトランジスタのコレクタから前記電圧低下信号を出力し、
前記瞬断リセットパルス発生回路は、第3のPNPトランジスタと第4のPNPトランジスタと第5のNPNトランジスタから構成され、
前記第3のPNPトランジスタと前記第4のPNPトランジスタの各エミッタが前記第2の電源電圧の正極に接続され、
前記第3のPNPトランジスタと前記第4のPNPトランジスタの各ベースと前記第4のPNPトランジスタのコレクタが接続され、
前記第4のPNPトランジスタのコレクタは第3の抵抗を介してGNDに接地され、
前記第3のPNPトランジスタのコレクタは前記第5のNPNトランジスタのコレクタに接続され、
前記第5のNPNトランジスタのエミッタは前記GNDに接地され、前記第5のNPNトランジスタのベースは第2の抵抗を介して前記第2のPNPトランジスタのコレクタに接続されたことを特徴とするパルス発生回路。
【請求項2】
前記差分検出器は、前記第1のPNPトランジスタのコレクタに接続される前記ダイオードの数を選定することで、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との前記電圧差を調整することを特徴とする請求項
1に記載のパルス発生回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リセットパルス、セットパルス等を出力するパルス発生回路に関し、特にスイッチング素子がブリッジ接続されたパワーデバイスのハイサイドスイッチング素子を駆動するハイサイドレベルシフト回路に適したパルス発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PWMインバータ、LLC回路などといった応用回路において、フルブリッジあるいはハーフブリッジ構成される、高電位(ハイサイド)と低電位(ローサイド)との間に直列に接続された2つのスイッチング素子のうちハイサイドを駆動する回路として、高耐圧集積回路によるレベルシフト回路が使用されている。
【0003】
この種のレベルシフト回路においては、消費電力の低減のため、外部から入力されるハイサイドスイッチング素子のオン指令、オフ指令の切り替わり時にのみ数百ns程度の短いオンパルス、オフパルスを発生させ、それらのパルスをハイサイドスイッチング素子駆動回路に伝達し、ラッチ回路によってオン、オフ状態を保持するといった構成がとられている。
図6に従来技術の構成例を示す。
【0004】
図6に示す入力回路IPは、所定のタイミングで「H」、「L」の切り替わる入力信号Bを入力させ出力するものである。ここでは、入力回路IPに入力される入力信号Bは負論理の信号であり、入力信号が「L」から「H」に立ち上がったときにハイサイドスイッチング素子MN10が非導通とされ、入力信号が「H」から「L」に立ち下がったときにハイサイドスイッチング素子MN10が導通されるものとする。
図6に示す半導体回路1aでは、セットパルス(E)とリセットパルス(F)が入力信号Bの論理が切り替わるごとに交互に出力され、ハイサイドスイッチング素子MN10のオン、オフ状態が制御される。
なお、ローサイドスイッチング素子MN20は、ハイサイドスイッチング素子MN10のオン、オフ状態と相補的なオフ、オン状態となるように制御され、かつ、ハイサイドスイッチング素子MN10とローサイドスイッチング素子MN20が同時にオン状態となる期間が無いように、同時にオフ状態となるデッドタイム時間が設けられている。
【0005】
次に、
図6のエッジパルス発生回路EPの詳細な構成例を
図7(a)に示す。
図7(a)に示すように、エッジパルス発生回路EPは、リセットパルス発生回路RP1と、セットパルス発生回路SP1と、インバータ回路51とから構成される。(特許文献1参照。ここで、特許文献1を従来技術1とする。)
リセットパルス発生回路RP1とセットパルス発生回路SP1とは、前者がインバータ回路51を介して論理和回路13の出力信号Dを入力させているのに対し、後者はインバータ回路51を介さずに出力信号Dを入力させている点において異なり、その他の構成は同一である。
【0006】
リセットパルス発生回路RP1は、インバータ回路52、53、54と、NOR回路55とから構成される。インバータ回路53は、PMOSトランジスタMP1とNMOSトランジスタMN1からなるCMOSインバータ回路と、抵抗R1とキャパシタC1からなりこのCMOSインバータ回路の出力側に接続されるRC遅延回路とから構成されている。
RC遅延回路は、RC時定数により決まる過渡現象曲線に沿って出力信号を徐々に変化させ、インバータ回路54の閾値に達したところでインバータ回路54の出力信号の論理を切り替えることにより入力信号を所定時間遅延させるものである。
また、NOR回路55は、インバータ回路54の出力信号Tと、インバータ回路51の出力信号Qの論理和の否定値Uを出力するものである。ここで説明した一連のシーケンスを
図8(a)に示す。
なお、セットパルス発生回路SP1も、インバータ回路51を介さずに入力信号Dを入力させている点が異なるだけで、入力信号Dをリセットパルス発生回路RP1のインバータ回路52の出力信号Qに相応して同様の動作を行い、セットパルスを生成する。
【0007】
ここで、パルス発生回路の電源電圧VCCが変動する場合、例えば、パルス発生回路の入力信号が「L」から「H」に切り替わると同時に外来ノイズ等の影響により電源電圧VCCが0となるような場合がある。
図8(b)に電源電圧VCC変動時のシーケンス図を示す。このような場合には、リセットパルス発生回路RP1から出力されるべきリセットパルスFが出力されず、この結果出力回路BFからの出力信号Gが「H」から「L」に切り替わらない、という問題が生ずる。
【0008】
このように出力されるべきリセットパルスF が出力されないこととなると、ハイサイドスイッチング素子がオンからオフに切り替えることが出来ない。この状態が続くと、ローサイドドライバ2aの制御状態がオフからオンに切り替わり、ハイサイドスイッチング素子MN10、ローサイドスイッチング素子MN20が同時にオンしてしまうこととなり、これにより両スイッチング素子に貫通電流が流れてしまうという問題がある。即ち、貫通電流がスイッチング素子の電流定格を超えれば、両スイッチング素子が破損するという問題がある。
【0009】
この問題に鑑みて、パルス発生回路の電源電圧VCCが変動した場合においても確実にリセットパルスを出力させ、回路の誤動作を防止することが可能なパルス発生回路、およびそれを用いたハイサイドドライバ回路として、特許文献2が知られている。
【0010】
特許文献2(従来技術2)では、パルス発生回路のリセットパルス回路の入力信号を所定時間遅延させるRC遅延回路のコンデンサを
図7(b)のようにGNDから電源電圧VCC側に変更する。これにより、
図8(d)に示すように、例えば、時刻t1において出力信号Dが「L」から「H」へ立ち上がるのと同時に電源電圧VCCが外来ノイズ等の影響で0になった場合には、次のように動作する。
まず、出力信号VCRは時刻t1において瞬時に「L」に変化する。この時刻t1ではキャパシタC1´には電荷が無いためである。しかし、時刻t5において電源電圧VCCが定常値に復帰すると、キャパシタC1´に電荷が無いことから、出力信号VCRも瞬時に「H」に復帰する。この時刻t5で出力信号Dが「H」であることから、出力信号VCRは、時刻t5以降、抵抗R1とキャパシタC1´で構成されるRC遅延回路の時定数で決定される過渡現象曲線に沿って「L」へ漸近する。
インバータ回路54の出力信号Tは、出力信号VCRが閾値以下となった時刻t10において「L」から「H」へ立ち上がる。
このため、NOR回路55の出力信号Uは、時刻t5で立ち上がり、時刻t10で立ち下がるパルス信号となり、これがリセットパルスFとして出力される。
このように、従来技術2の形態によれば、電源電圧VCCが変動した場合であっても、リセットパルス発生回路RP2よりリセットパルスFを発生させることができ、ハイサイドドライバ1aの動作の安定性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-124858号公報公報
【文献】特許第4077337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2(従来技術2)のようにリセットパルスを発生させ、そのパルス幅を伸長させることは上記回路で可能であるが、電源電圧VCCの瞬断直前にリセットの信号Dを受信しても、瞬断が続く間はリセットパルスを出力できない。そのようなタイミングは少ないにしても、瞬断時のリセット動作については上記回路のみでは瞬断復帰時にリセットパルスFを出力することになる。すなわち、リセットパルスFの出力は瞬断期間に左右されてしまう。前述したように、リセットパルスFの遅延は、ハイサイドスイッチング素子、ローサイドスイッチング素子が同時に導通してしまうこととなり、これにより両スイッチング素子に貫通電流が流れてしまうという問題がある。
【0013】
本発明の課題は、電源電圧VCCが瞬断をした場合でも、遅延することなくハイサイドスイッチング素子を駆動するハイサイドドライバ回路に適した瞬断リセットパルス発生回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明のパルス発生回路は、ハイサイドスイッチング素子のオンオフを指令する入力信号の切り替わり時にのみセットパルス、リセットパルスを発生させ、レベルシフト回路を介して前記ハイサイドスイッチング素子のオン、オフ状態を駆動するパルス発生回路であって、前記入力信号の第1状態から第2状態への変化に基づいて前記リセットパルスを出力するリセットパルス発生回路と、前記入力信号の前記第2状態から前記第1状態への変化に基づいて前記セットパルスを出力するセットパルス発生回路と、第1の電源電圧から前記第1の電源電圧より低い第2の電源電圧を生成し、前記リセットパルス発生回路及び前記セットパルス発生回路を含む信号伝達回路系の電源として供給する内部電源と、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との電圧差が所定の閾値以下に下がったことを検出して電圧低下信号を出力する差分検出器と、前記電圧低下信号を受けて瞬断リセットパルスを生成し、前記リセットパルス発生回路が出力する前記リセットパルスに割り込ませる瞬断リセットパルス発生回路と、を備え、前記差分検出器は、第1のPNPトランジスタと第2のPNPトランジスタで構成され、前記第1のPNPトランジスタと前記第2のPNPトランジスタの各エミッタが前記第1の電源電圧の正極に接続され、前記第1のPNPトランジスタと前記第2のPNPトランジスタの各ベースと前記第1のPNPトランジスタのコレクタが接続され、前記第1のPNPトランジスタのコレクタは少なくとも1個のダイオードと第1の抵抗の直列回路を介して前記第2の電源電圧の正極に接続され、前記第2のPNPトランジスタのコレクタから前記電圧低下信号を出力し、前記瞬断リセットパルス発生回路は、第3のPNPトランジスタと第4のPNPトランジスタと第5のNPNトランジスタから構成され、前記第3のPNPトランジスタと前記第4のPNPトランジスタの各エミッタが前記第2の電源電圧の正極に接続され、前記第3のPNPトランジスタと前記第4のPNPトランジスタの各ベースと前記第4のPNPトランジスタのコレクタが接続され、前記第4のPNPトランジスタのコレクタは第3の抵抗を介してGNDに接地され、前記第3のPNPトランジスタのコレクタは前記第5のNPNトランジスタのコレクタに接続され、前記第5のNPNトランジスタのエミッタは前記GNDに接地され、前記第5のNPNトランジスタのベースは第2の抵抗を介して前記第2のPNPトランジスタのコレクタに接続されたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のハイサイドスイッチング素子を駆動するハイサイドドライバ回路に適した瞬断リセットパルス発生回路は、前記差分検出器がカレントミラー回路で構成され、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧間に接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電源電圧VCCが瞬断をした場合でも遅延することなくハイサイドスイッチング素子を駆動するレベルシフト回路へ瞬断リセットパルスを提供できる。また、瞬断時に電源電圧Vccに対する瞬断リセットパルスを出力させる電圧範囲を低電圧まで広げることで、リセットを安定させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は実施形態のレベルシフト回路およびハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図である。
【
図2】
図2は実施形態の差分検出器と瞬断リセットパルス発生回路を示す回路図である。
【
図3】
図3は
図2に示す差分検出器と瞬断リセットパルス発生回路の応用回路図である。
【
図4】
図4は実施形態における電源電圧VCCが瞬断をした場合のタイミングチャートである。
【
図5】
図5は実施形態の瞬断リセットパルス発生回路とリセットパルス発生回路との接続を示す一例である。
【
図6】
図6は従来技術のレベルシフト回路およびハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図である。
【
図7】
図7は従来技術1および従来技術2のエッジパルス発生回路を示す図である。
【
図8】
図8は
図7の従来技術1および従来技術2のタイミングチャートである。
【0018】
以下、本発明の瞬断リセットパルス発生回路の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施形態)
図1は本発明の実施形態の瞬断補償のレベルシフト回路に適した瞬断リセットパルス発生回路およびそれを用いたハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図である。
図1に示す実施形態の構成において、従来技術と異なるのは、内部電源PreREG 13、差分検器(VCC-PreREG DET)17、瞬断リセットパルス発生回路(RESET PULSE Gen.)18が追加されている。
【0020】
差分検出器(VCC-PreREG DET)17は、電源電圧VCCの電圧と内部電源PreReGの電圧との電圧差を検知し、VCC電圧とPreReG電圧間が所定の電圧(例えば2.5V)になると、瞬断リセット発生回路18にVCC-PreReG間電圧低下信号を出力する。
瞬断リセットパルス発生回路18はVCC-PreReG間電圧低下信号を受信すると、瞬断リセットパルス信号を発生してパルス発生回路11のリセットパルス信号に割込みリセットパルスを出力する。
【0021】
本実施形態が従来技術と大きく異なる点は、パルス発生回路11を含む信号伝達回路系10~12、14~16、18の電源を電源電圧VCCから内部電源PreReGへ変更した点である。この変更により、電源電圧VCCが変動しても、VCC電圧が内部電源PreReGの動作可能電圧以下(0.3~1V程度)以下にならない限り、パルス発生回路11を含む信号伝達回路系10~12、14~16、18の電源を確保して安定に動作させることができる。
また、差分検出器(VCC-PreREG DET)17は、電源電圧VCCの電圧低下を検出することで、瞬断リセットパルス信号の生成につなげる。瞬断リセットパルス発生回路18は、後述する差分検出器(VCC-PreREG DET)17の構成にもよるが、内部電源PreReGの電圧が0.6V程度に低下するまで瞬断リセットパルスを出力する。
【0022】
差分検出器(VCC-PreREG DET)17と瞬断リセットパルス発生回路18の構成を示す回路図を
図2に示す。差分検出器(VCC-PreREG DET)17は、PNPトランジスタTR1、TR2から成る電流ミラー回路から構成される。PNPトランジスタTR1,TR2のエミッタは電源電圧VCCの正極に接続され、PNPトランジスタTR1、TR2のベースとPNPトランジスタTR1のコレクタは接続され、さらにダイオードD1~D3と抵抗R11の直列回路を介して内部電源PreREG13の正極に接続されている。
PNPトランジスタTR2のコレクタは抵抗R12を介して、瞬断リセットパルス発生回路18の抵抗R13とNPNトランジスタTR5のベースに接続される。すなわち、PNPトランジスタTR2のコレクタは抵抗R12を介して、VCC-PreReG間電圧低下信号として出力する。
【0023】
次に瞬断リセットパルス発生回路18は、PNPトランジスタTR3,TR4から成る電流ミラー回路とNPNトランジスタTR5などから構成される。PNPトランジスタTR3、TR4のエミッタは内部電源PreREG13の正極に接続され、PNPトランジスタTR3、TR4のベースと、PNPトランジスタTR4のコレクタは接続され、さらに抵抗R14を介してGNDに接地されている。
PNPトランジスタTR3のコレクタは、NPNトランジスタTR5のコレクタに接続され、かつ、瞬断リセットパルス信号として出力される。NPNトランジスタTR5のベース・エミッタ間には抵抗R13が並列接続され、エミッタと抵抗R13の一方はGNDに接地されている。
なお、NPNトランジスタTR5のベースは、前述の差分検出器(VCC-PreREG DET)17のVCC-PreReG間電圧低下信号出力である抵抗R12と接続されている。
【0024】
ここで、
図4に実施形態における電源電圧VCCが瞬断をした場合のタイミングチャートを示す。
時刻t10~t19にかけて瞬断が生じた場合を想定する。時刻t10から電源電圧VCCは低下し始め、時刻t11において電源電圧VCC-PreREG間電圧が所定の電圧に達すると、差分検出器(VCC-PreREG DET)17からVCC-PreREG間電圧低下信号VCC-PreREG DETが出力され、瞬断リセットパルス発生回路18から瞬断リセットパルス信号が出力され、時刻t14まで継続して出力される。
これは、VCC電圧とPreREG電圧間が所定の電圧(例えば2.5V)になるとパルス発生回路11のリセットパルス出力信号に割込みの信号を発生させ、内部電源PreREGの電圧が0.6V程度に低下するまで瞬断リセットパルスを出力する。すなわち、瞬断リセットパルス発生回路18の動作可能電圧は低いため、C-MOS回路で構成された論理回路よりも長いパルスを出力できる利点がある。
【0025】
図3は
図2に示す差分検出器と瞬断リセットパルス発生回路の応用回路図である。
図2と異なる点は差分検出器(VCC-PreREG DET)17の回路において、ダイオードD1~D3を削除している。このダイオードD1~D3の数量を調整することにより電源電圧VCC-PreREG間電圧の電圧を調整し、瞬断時の検出タイミングを調整することができる。なお、瞬断リセットパルス発生回路18の動作可能電圧に影響はでない。
【0026】
図5は、実施形態の瞬断リセットパルス発生回路とリセットパルス発生回路との接続を示す一例である。レベルシフト回路のリセットパルス入力端子に、瞬断リセットパルス発生回路の瞬断リセットパルス信号とリセットパルス信号をNAND回路NAND2とインバータ回路INV2を介して接続する。これにより、瞬断リセットパルス発生回路18の瞬断リセットパルス信号を割り込ませることができる。
なお、レベルシフト回路のリセットパルス入力回路の構成によっては、瞬断リセットパルス発生回路18の出力を接続してもよい。
【0027】
このように、実施形態の瞬断補償のレベルシフト回路に適した瞬断リセットパルス発生回路によれば、電源電圧VCCが瞬断をした場合でも遅延することなくハイサイドスイッチング素子を駆動するレベルシフト回路へ瞬断リセットパルスを提供できる。また、瞬断時に電源電圧Vccに対する瞬断リセットパルスを出力させる電圧範囲を低電圧まで広げることで、リセットを確実に行なうことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、PWMインバータに使用されるIPM等に適用可能である。
符号の説明
【0029】
1 、1a レベルシフト回路およびハイサイドドライバの回路
12 パルス発生回路
13 内部電源PreReG
17 差分検出器(VCC-PreREG DET)
18 瞬断リセットパルス発生回路
D1~D3 ダイオード
MN10 ハイサイドスイッチング素子
MN20 ローサイドスイッチング素子
TR1~TR4 PNPトランジスタ
TR5 NPNトランジスタ
R11~14 抵抗