(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両用電子回路及び車両用計器
(51)【国際特許分類】
H02H 3/16 20060101AFI20240910BHJP
H02H 3/24 20060101ALI20240910BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H02H3/16 A
H02H3/24 A
B60R16/02 650R
(21)【出願番号】P 2020123398
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慎也
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051475(WO,A1)
【文献】特開2014-118082(JP,A)
【文献】特開2013-033610(JP,A)
【文献】特開2012-011970(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H3/08-3/253
B60R16/00-17/02
B60K35/00-37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路を開閉する開閉器と、前記開閉器の電圧が入力される入力部と、の間の地点の開閉器電圧に
応じて動作する車両用電子回路であって、
リーク検出トリガー信号を出力するリーク検出トリガー回路と、
前記リーク検出トリガー信号が入力されると、前記開閉器電圧
の大きさに応じて、
トランジスタのスイッチング
が行われる電圧検出回路と、
前記地点とグラウンドの間で前記トランジスタと直列に接続され、前記スイッチング
に応じて、前記地点から前記グラウンドへ電流
が流れるリークパス抵抗と、
を備え
、
前記電圧検出回路では、少なくとも、前記開閉器がオフかつ前記リークが発生していない場合に、前記リークパス抵抗に電流が流れないようにスイッチングが行われ、前記開閉器がオフかつ前記リークが発生している場合に、前記リークパス抵抗に電流が流れるようにスイッチングが行われる
車両用電子回路。
【請求項2】
前記リーク検出トリガー信号は、間欠的な信号である
請求項1に記載の車両用電子回路。
【請求項3】
前記リーク検出トリガー信号は、Duty比が1%以下であり、より好ましくは前記リーク検出トリガー信号は、Duty比が0.1%以下である
請求項2に記載の車両用電子回路。
【請求項4】
前記リーク検出トリガー信号は、1周期あたりのオン時間が10μsecから500μsecの間である
請求項2に記載の車両用電子回路。
【請求項5】
前記リーク検出トリガー信号は、周期が1msecから500msecの間であり、より好ましくは周期が1msecから100msecの間である
請求項2に記載の車両用電子回路。
【請求項6】
前記入力部としてのアナログ入力ポートを有し、前記開閉器電圧に基づいて車両に搭載される電装部品を制御する制御手段と、
前記開閉器と前記入力部との間の前記地点の前記開閉器電圧に応じて動作する請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用電子回路と、
前記制御手段によって制御され、情報を報知する報知器と、
を備え、
前記開閉器電圧は、前記車両用電子回路の前記電圧検出回路の前記スイッチング及び前記開閉器の前記開閉に応じて変動し、
前記制御手段は、
前記開閉器電圧が第一の閾値以下の場合、前記開閉器がオフであると判定して、前記電装部品を制御し、
前記開閉器電圧が第一の閾値より大きい第二の閾値以上の場合、前記開閉器がオンであると判定して、前記電装部品を制御し、
前記電圧検出回路によって変動された前記開閉器電圧が第一の閾値と第二の閾値との間である場合、前記開閉器がリーク状態であると判定して、前記報知器を制御することで前記開閉器がリーク状態であることを報知する
車両用計器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電子回路及び車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用電子回路としては、例えば特許文献1に開示される構成が知られている。特許文献1が示す車両用電子回路(車両用計器)は、フラッシャスイッチ(F)の操作状態を検出する車両用計器(A)である。車両用計器(A)が備える制御手段(4)は、フラッシャスイッチ(F)に接続される信号線に分岐して接続するとともに、抵抗体(1)の接地端子側に設けられるスイッチ手段(3)を駆動させて間欠制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用計器(A)のような構成においては、間欠通電時に間欠電流が抵抗体(1)を介してグランドへ流れる。間欠電流は50msecの周期で、1周期あたり10msecの間流れる。この構成では、間欠制御を用いない構成に比べて80%通電時間を低減することで消費電流を軽減しているが、制御手段(4)が電圧値を取り込むためのサイクルを考慮すると、通電時間の短縮には限界があった。その点で、この構成は未だ発熱の低減に関しては改善の余地があった。発熱が生じた場合、例えば電子回路を搭載する密閉容器内で結露が生じてしまったり、消費電流が増大してしまったりする。
【0005】
そこで本発明の目的とするところは、上述課題に着目し、発熱を低減した車両用電子回路及び車両用計器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用電子回路は、
回路を開閉する開閉器と、前記開閉器の電圧が入力される入力部と、の間の地点の開閉器電圧に応じて動作する車両用電子回路であって、
リーク検出トリガー信号を出力するリーク検出トリガー回路と、
前記リーク検出トリガー信号が入力されると、前記開閉器電圧の大きさに応じて、トランジスタのスイッチングが行われる電圧検出回路と、
前記地点とグラウンドの間で前記トランジスタと直列に接続され、前記スイッチングに応じて、前記地点から前記グラウンドへ電流が流れるリークパス抵抗と、
を備え、
前記電圧検出回路では、少なくとも、前記開閉器がオフかつ前記リークが発生していない場合に、前記リークパス抵抗に電流が流れないようにスイッチングが行われ、前記開閉器がオフかつ前記リークが発生している場合に、前記リークパス抵抗に電流が流れるようにスイッチングが行われる。
【0007】
また別の観点では、上記目的を達成するため、本発明に係る車両用計器は、
前記入力部としてのアナログ入力ポートを有し、前記開閉器電圧に基づいて車両に搭載される電装部品を制御する制御手段と、
前記開閉器と前記入力部との間の前記地点の前記開閉器電圧に応じて動作する前述の車両用電子回路と、
前記制御手段によって制御され、情報を報知する報知器と、
を備え、
前記開閉器電圧は、前記車両用電子回路の前記電圧検出回路の前記スイッチング及び前記開閉器の前記開閉に応じて変動し、
前記制御手段は、
前記開閉器電圧が第一の閾値以下の場合、前記開閉器がオフであると判定して、前記電装部品を制御し、
前記開閉器電圧が第一の閾値より大きい第二の閾値以上の場合、前記開閉器がオンであると判定して、前記電装部品を制御し、
前記電圧検出回路によって変動された前記開閉器電圧が第一の閾値と第二の閾値との間である場合、前記開閉器がリーク状態であると判定して、前記報知器を制御することで前記開閉器がリーク状態であることを報知する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態における車両用電子回路(スイッチ入力回路1)の回路構成を示す図。
【
図2】非リーク時の回路要部の状態推移を示すタイムチャート。
【
図3】リーク時の回路要部の状態推移を示すタイムチャート。
【
図4】スイッチ入力回路10と車両用計器100の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施形態における車両用電子回路について詳細に説明する。
[第一実施形態]
1-1.構成の説明
1-2.挙動の説明
1-3.効果例
[変形例]
2-1.第一変形例
2-2.その他の変形例
2-3.効果例
【0010】
[第一実施形態]
<1-1.構成の説明>
図1は、本開示の車両用電子回路の回路構成の一例を示す図である。本開示の車両用電子回路は、
図1が示すようなスイッチ入力回路1として適用されることを好適な適用形態の1つとする。
【0011】
車両Vは、自動車や自動二輪車などの車両であり、例えば動力と動力伝達系を備えることでユーザー(乗員や利用者)や積載された貨物などを移動できる。ユーザーは、操作部(後述の開閉器2など)を操作することで、電気信号としての操作情報を車両Vの制御手段(後述のマイコン5など)へ入力する。制御手段は、入力された操作情報に基づいて、車両Vに搭載された電装部品を制御し動作させる事ができる。
【0012】
車両Vは、スイッチ入力回路1、開閉器2、電源の一例であるバッテリ3、制御手段と入力部の一例であるマイコン5、ダイオード90、抵抗91、分圧抵抗92,93、そしてケース接地点を備える。ケース接地点は、その先で接地されていてもよいし、直接接地していても良い。
【0013】
スイッチ入力回路1は、開閉器2及び入力部6間の地点及びケース接地点の間に接続される。詳細な構成は後述する。
【0014】
開閉器2は、スイッチ素子21とリーク抵抗成分22を有する。開閉器2は、車両Vのユーザー(乗員、利用者)に操作されることで、回路の電気的な開閉を切り替えることができる。スイッチ素子21としては、押釦スイッチやトグルスイッチ、ロッカースイッチ、タクタイルスイッチ等、人の操作による入力を電気信号に変換する素子を適用可能である。開閉器2は、例えば2端子回路であり、一方の端子をバッテリ3、他方の端子を入力部6やスイッチ入力回路1と接続されている。他方の端子(入力部6,開閉器2、スイッチ入力回路1が互いに接続されている地点)とグランドとの電圧差は開閉器電圧Bと定義される。
【0015】
また開閉器2は、リーク抵抗成分22を有する。リーク抵抗成分22は、漏水などが原因でリークが生じた場合に開閉器2に発生する抵抗成分であり、例えば数百Ω、一例としては300Ω程度発生しうる。なお、リークが発生していない通常時は、スイッチ素子21が遮断されていれば、開閉器2は電気的に端子間を遮断しハイインピーダンス状態にすることができる。
【0016】
バッテリ3は、開閉器2へ電力を供給する電源の一例である。バッテリ3は、電力を供給可能な装置を適宜適用可能であるが、例えば13Vを発生する鉛バッテリ等が適用可能である。
【0017】
マイコン5(マイクロコンピュータ5)は、車両Vに搭載される電装部品と電気的に接続され、自身へと入力された電気信号に基づいて電装部品を電気的に制御する。マイコン5は、分圧抵抗92,93を介して開閉器2やスイッチ入力回路1と接続され、入力ポート5aに印加される開閉器電圧Bに基づいて、電装部品の挙動を制御する。すなわち、マイコン5は入力部の一例でもある。また、後述される通り、マイコン5はトリガーポート5bを有する。これは、スイッチ入力回路1が有するリーク検出トリガー回路15の一部を構成している。
【0018】
マイコン5は、例えば所定プログラムや各種データの格納、演算時の記憶領域などに用いるROMやRAM等の記憶部と、所定プログラムに従って演算処理するためのCPUと、入出力インターフェース等を設けたマイクロコンピュータを、入力部6やリーク検出トリガー回路15の一例として適用できる。
【0019】
ダイオード90は、整流素子の一例である。ダイオード90は、様々な要因(外乱等)に因って生じた逆電流がトランジスタ等の逆電流に対して脆弱な素子を保護するために接続されている。また、抵抗91はスイッチ素子21の通電電流をある程度確保するものである。ダイオード90及びスイッチ素子21は、省略可能である。
【0020】
分圧抵抗92,93は、開閉器電圧Bの大きさを、入力部(マイコン5等)が入力に耐えうる程度まで降圧するための抵抗である。分圧抵抗92,93の抵抗値は、分圧できれば大きさに制約は無いが、あまりに小さいと流れる電流が増大し、無駄に電力を消費するため、10kΩなど大きい抵抗が好適である。
【0021】
スイッチ入力回路1は、リークパス抵抗11、電圧検出回路14及びリーク検出トリガー回路15を有する。
【0022】
リークパス抵抗11は、一方の端子を開閉器電圧Bの地点、他方をトランジスタ12へと接続された抵抗である。当該抵抗に流れる電流は、リークパス抵抗電流Cと定義される。なお、一例として、リークパス抵抗11の抵抗値は100Ωである。
【0023】
電圧検出回路14は、開閉器電圧Bの電圧が、所定の閾値より大きいか小さいかを比較し、小さい場合に、リークパス抵抗11へ電流を流す。電圧検出回路14は、例えば、トランジスタ12、抵抗40,ツェナーダイオード41、抵抗42、トランジスタ43で構成できる。なお、トランジスタ43は信号の反転のために用いており、省略されても良い。その場合、後述のリーク検出トリガー信号Aの信号も反転すると良い。
ツェナーダイオード41の降伏電圧は、開閉器電圧Bが比較される上述の「所定の閾値」と同値であり、例えば6Vなどに設定できる。また、後述のリーク時の降下後の開閉器電圧Bより大きいほうが望ましい。
詳しい挙動は後述する。
【0024】
リーク検出トリガー回路15は、電圧検出回路14がリーク検出動作をするきっかけとなる信号を出力する回路である。リーク検出トリガー回路15は、例えば、マイコン5のトリガーポート5b、抵抗50、トランジスタ51で構成できる。抵抗50は、トランジスタ51へ過度な電流が流れることを抑制している。
トリガーポート5bは、電気信号の出力ポートであり、電圧検出回路14がリーク検出動作を行うきっかけとなるリーク検出トリガー信号を出力する。トランジスタ51は、リーク検出トリガー信号がオンとなると、自身がオン状態になり、結果としてリーク検出トリガー回路15がオン状態となる。リーク検出トリガー回路15がオン状態となると、電圧検出回路14がリーク検出動作を行う。
【0025】
リーク検出トリガー回路15は、トランジスタのオンとオフに応じて、自身のオンとオフを切り替える例を示した。しかし、変形例で示すとおり、電圧のハイとローに応じて、自身のオンとオフを切り替えても良い。また、リーク検出トリガー信号は適宜反転されても良い。
【0026】
リーク検出トリガー信号Aは、リーク検出トリガー回路15がオン状態となる信号であればよい。リーク検出トリガー信号Aは、例えば電圧値であり、一例として50msec周期の間欠信号である。リーク検出トリガー信号Aは、1周期あたり50μsecの間オンとなる。
すなわち、リーク検出トリガー信号AのDuty比は0.1%ということになる。そしてオン時間は、50μsecである。
【0027】
従来の車両用回路の間欠通電方法は、一般的にマイコンの取り込み時間に起因して、10ミリ秒程度以上のオン時間が設定されていた。これは、マイコンの入力ポートの取り込みタイミングを間欠通電で制御していたためであり、マイコンの電圧取り込み時間の関係これ以上の短縮は困難であった。
【0028】
しかしながら、本開示の車両用回路では、入力ポート自体へは間欠通電のオン時間が影響を与えない。後述のように、本開示のリーク検出トリガー信号Aは、あくまで電圧検出回路が動作を開始するきっかけを与える信号であれば良い、換言するとトランジスタの応答さえ誘発することができるトリガー信号であれば良い。
【0029】
したがって、リーク検出トリガー信号Aは、Duty比(オン時間/周期)が1%以下であり、より好ましくは、前記リーク検出トリガー信号はDuty比が0.1%以下であることが望ましい。また、リーク検出トリガー信号Aは、1周期あたりのオン時間が10μsecから500μsecの間であると良い。また、リーク検出トリガー信号Aは、周期が1msecから500msecの間であり、より好ましくは周期が1msecから100msecの間である
【0030】
<1-2.挙動の説明>
図2及び
図3を用いて、車両用電子回路の一例であるスイッチ入力回路1の挙動を説明する。
【0031】
図2は、リークが発生していない状態(非リーク時)の、スイッチ状態(Switch Status)リーク検出トリガー信号A(Voltage A)及び開閉器電圧B(Voltage B)及びリークパス抵抗電流C(Voltage C)の状態推移を示している。
図3は、リークが発生している状態(リーク時、With Leakage)の、スイッチ状態(Switch Status)リーク検出トリガー信号A(Voltage A)及び開閉器電圧B(Voltage B)及びリークパス抵抗電流C(Voltage C)の状態推移を示している。
【0032】
図2及び
図3はともに横軸は時間[sec]を表す。目盛りは判読しやすさ向上のため、省略している。各状態は、同じ横軸位置においては同一タイミングの状態を示している。すなわち、図面内縦方向を見ると、その時点での各要部の状態を読み取ることができる。
【0033】
スイッチ状態は、縦軸において2値を取る状態情報である。
その他の電圧及び電流の状態については、縦軸が電圧または電流を示す。詳細な数値は、グラフの実線に付記された数字によって表示されている。一部の数値は、判読しやすさ向上のため、省略されている。詳細された数値については明細書にて逐一表示を行う。なお、破線はスイッチの閾値を示す。
【0034】
>1 非リーク時(
図2)
>1-1 開閉器2がオンの時
まず、開閉器2がオンの時、開閉器電圧Bは終始バッテリ電圧(13V)からダイオードでの電圧降下分(0.7V)を差し引いた12.3V程度の電位となる。
リーク検出トリガー信号Aがオフ(0V)の時、トランジスタ51はオフとなり、リーク検出トリガー回路15はオフとなる。リーク検出トリガー回路15がオフ状態の時、電圧検出回路14は、リークパス抵抗11に電流が流れないように動作する。具体的には、トランジスタ51がオフのため、トランジスタ43がオンとなり、引き続いてトランジスタ12がオフとなる。
【0035】
リーク検出トリガー信号Aがオン(5V)の時、トランジスタ51はオンとなり、リーク検出トリガー回路15はオン状態となる。リーク検出トリガー回路15がオン状態の時、電圧検出回路14は、リークパス抵抗11に電流が流れるように動作する。具体的には、トランジスタ51がオンのため、トランジスタ43がオフとなり、引き続いてトランジスタ12がオンとなる。したがって、リーク検出トリガー信号Aがオンの間、リークパス抵抗電流は、端子間電圧を自身の抵抗値で割ることで導き出されるので、12.3V/100Ω、つまり123mAとなる。
【0036】
ここで、非リーク時かつ開閉器2がオンの時の状態での消費電力Pc_normalは、下記の通りになる。
Pc_normal =I^2 × R × Duty
=(123mA)^2 × 100Ω × 50μsec/50[msec] =0.0015[W]
【0037】
これは、車両用電子回路としてはほとんど無視できる程度の電力である。通常時の消費電力がこのように低減できた要因は、本開示の回路構成によって実現できたリークパス抵抗電流Cの発生時間の短さに因るものである。本開示の構成では、一例として50μsecしか電流を流さない構成としたが、使用するトランジスタの応答性能に応じて、更に短くすることも可能である。トランジスタのスイッチング能力は、一般に数μsecであるため、リーク検出トリガー信号の発生源からリークパス抵抗に至るまでのトランジスタの数に応じて、短縮が可能である。
【0038】
>1-2 開閉器2がオフの時
開閉器2がオフの時、開閉器電圧Bが0Vとなるため、リークパス抵抗電流Cは0Aとなる。
【0039】
上述のように、スイッチ入力回路1として適用された車両用電子回路は、リーク検出のために消費される通常時電力を非常に低減することができる。
【0040】
>2 リーク時(
図3)
>2-1 開閉器2がオンの時
まず、リーク時であっても、開閉器2がオンのときは、通電状態のスイッチ素子21とリーク抵抗成分22が並列状態になるため、リーク抵抗成分22は無視でき、各状態は前述の非リーク時と同じ推移を示す。
【0041】
>2-2 開閉器2がオフの時
まず、開閉器2がオンからオフへ遷移した瞬間は、リークパス抵抗11に電流が流れていないため、開閉器電圧Bは、約12.3Vを維持する。厳密には、スイッチ素子21がオフになるものの、リークが発生しているのでリーク抵抗成分22を伝って、バッテリ電圧が印加され、分圧抵抗92.93へと電流が流れる。ここで、リーク抵抗成分は一般に数百Ωであり、分圧抵抗92,93は十分大きい抵抗値を有しているため、開閉器電圧Bはほぼ12.3Vを維持する。
【0042】
その後、リーク検出トリガー信号Aがオンとなる。すると、トランジスタ51がオンとなり、トランジスタ43がオフ、そしてトランジスタ12はオンとなる。すると、バッテリ3からリーク抵抗成分22,リークパス抵抗11,トランジスタ12,グランドへと電流経路が形成される。このときのリークパス抵抗電流C及び開閉器電圧Bは、下記のようになる。
【0043】
リークパス抵抗電流C=(13V-0.7V)/(300Ω+100Ω)=30.75[mA]
開閉器電圧B=(30.75mA)×100Ω=3.075[V]
【0044】
次に、リーク検出トリガー信号Aが5Vから0Vとなる時、トランジスタ51はオフとなる。しかしながら、開閉器電圧Bは3.075Vと低いままであるため、ツェナーダイオード41及び抵抗42には電流が流れず、トランジスタ43はオフのままとなる。そして、トランジスタ12は引き続きオンを維持する。
【0045】
したがって、電圧検出回路14が低電圧を検出しトランジスタ12が一度オンとなると、リーク検出トリガー信号Aの状態とは関係なく、オン状態となり、開閉器電圧Bは3.075Vを保持し続ける。
【0046】
なお、その後スイッチ素子21が通電を開始すると、横軸において0msecの挙動へと回帰する。
【0047】
本開示の車両用電子回路は、リーク検出動作開始時にリーク検出トリガー信号を出力する構成であったが、リーク検出トリガー信号によって開閉器電圧が変動しない点でも優れている。このことは、入力部に例えば光源を用いたインジケータを適用した構成であっても、電圧が変動してフリッカー(チラツキ)が生じる虞がないので、汎用性に優れる。
【0048】
<1-3.効果例>
上述した車両用電子回路は、
回路を開閉する開閉器2と、開閉器2の電圧が入力される入力部6と、の間の地点の開閉器電圧Bに基づいて、開閉器2のリークの発生を検出するスイッチ入力回路1であって、
リーク検出トリガー信号Aを出力するリーク検出トリガー回路15と、
リーク検出トリガー信号Aが入力されると、開閉器電圧Bと所定の電圧との高低を比較し、スイッチングを行う電圧検出回路14と、
電圧検出回路14が開閉器電圧Bの低下を検出したときに、電圧検出回路14のスイッチング動作に基づいて電流を流すリークパス抵抗と、
を備えるスイッチ入力信号である。
【0049】
この構成に依れば、低消費電力でありながら、開閉器のリークの有無を検出することができる車両用電子回路となる。
【0050】
[変形例]
ここまでの説明では、車両用電子回路を車両に搭載したときの形態の一例が説明された。本開示の説明では、一部の周知技術の説明が省略されている。
また、本願発明はこの形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜種々の改良、ならびに変更が可能なことは勿論である。以降、本発明の車両用電子回路が変形されて適用された構成が例示される。なお、重複する説明を少なくするため、同じ符号が付された構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0051】
<2-1.第一変形例>
本開示の車両用電子回路は、
図4に示されるようなスイッチ入力回路10のように構成されてもよい。また、
図4に示されるような車両用計器100として適用されてもよい。
【0052】
車両用計器100は、開閉器2へ接続された状態で車両Vへ搭載され、スイッチ入力回路10を備えることで、開閉器2のリーク状態を少ない消費電力で検出することができる。
【0053】
車両用計器100は、図示されない報知器を備える。報知器は、ユーザーへ情報を伝える電装部品である。報知器は、例えば音や光、触覚等でユーザーへ情報を伝える。そのような報知器としては、スピーカーや、ディスプレイを適用できる。ディスプレイは、光源と透光性有色文字板を用いたインジケータや、種々の電子ディスプレイ(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ)を含む。
【0054】
入力部にマイコン等の制御手段が適用されている場合は、制御手段と報知器は電気的に接続され、例えば開閉器のリーク状態を報知してもよい。
【0055】
また、本変形例では、入力部6としてLEDインジケータモジュールのような構成が適用された構成が示されている。入力部6は、LED61(Light Emitting Diode)、制限抵抗62、抵抗63、コンデンサ64、ツェナーダイオード65,制限抵抗66を有する。
【0056】
ツェナーダイオード65は、リーク検出時に開閉器電圧Bが低下し、中間電圧とも言えるリーク検出時電圧へ移行した際に、LED61が誤点灯しないように設けられている。本構成であると、より確実にリーク時かつ開閉器2がオフの時に入力部が誤動作(誤ってオンを検出して行うオン動作)を低減することが可能である。
【0057】
このような入力部6では、開閉器電圧Bに基づいて、自身の状態(LED61の発光状態)を変化する。
【0058】
すなわち、入力部6は、開閉器電圧Bの状態に基づいて、自身の状態を変化したり、車両Vに搭載される電装部品を制御したりする構成であればよい。その例として、LED61やマイコン5へ開閉器電圧Bが入力される構成を示した。
【0059】
スイッチ入力回路10は、スイッチ入力回路1と同様に、リークパス抵抗及び電圧検出回路及びリーク検出トリガー回路を含んでいれば良い。本変形例では、電圧検出回路及びリーク検出トリガー回路の変形例についても示すが、これはスイッチ入力回路1に適用されても良いことは勿論である。
【0060】
スイッチ入力回路10は、電圧検出回路140と、リーク検出トリガー回路150を備える。
【0061】
電圧検出回路140は、第一実施形態と同様に、開閉器電圧Bが所定の閾値に対して大きいか小さいかを比較し、スイッチングを行うことでリークパス抵抗11に電流を流すか流さないかを切り替える。電圧検出回路140は、リセットIC8及びトランジスタ12を有する。
【0062】
リセットIC8は、リーク検出トリガー回路150が発したリーク検出トリガー信号A(電圧値)がハイになったことに起因して、開閉器電圧Bがリファレンス電圧(所定の閾値)より大きいか小さいかを比較する。開閉器電圧Bが大きい場合、リセットIC8はトランジスタ12をオフするべく信号を出力する。開閉器電圧Bが小さい場合、リセットIC8はトランジスタ12をオンするべく信号を出力する。
【0063】
リーク検出トリガー回路150は、パルス発生器9を有する。パルス発生器9は、所定のパルス信号を出力する。すなわち、電圧検出回路140へリーク検出トリガー信号として電圧を印加する。印加される電圧は、間欠的、周期的な信号であると良い。なお、パルス発生器9は、マイコン5のような制御手段が有するデジタル信号出力ポートで構成されても良い。
【0064】
<2-2.その他の変形例>
実施形態ではマイコン5の入力ポート5aが適用される構成を示したが、入力ポート5aはアナログ入力ポートであってもよい。
この場合は、開閉器電圧Bが第一の閾値以下の場合、開閉器2がオフであると判定して、マイコン5が電装部品を制御してもよい。
開閉器電圧Bが第一の閾値より大きい第二の閾値以上の場合、開閉器2がオンであると判定して、電装部品を制御してもよい。
開閉器電圧Bが第一の閾値と第二の閾値との間である場合、開閉器2がリーク状態であると判定して、報知器を制御することで開閉器2がリーク状態であることを報知してもよい。
【0065】
なお、報知器がリーク状態を報知する方法としては、一般故障情報としてユーザーに報知する方法も適用可能である。その場合、ユーザーは、具体的な故障の発生がわからずとも、何らかの故障が発生していることを認識し、ディーラーなどサービス店や自動車整備工場などへ車両を持ち込むことができ、これにより専門のスタッフが故障を突き止めるきっかけとする事ができる。
【0066】
<2-3.効果例>
上述した車両用計器100は、
アナログ入力ポートである入力ポート5aを有し、開閉器電圧Bに基づいて車両Vに搭載される電装部品を制御するマイコン5と、
マイコン5によって制御され、情報を報知する報知器と、
を備える車両用計器100であって、
マイコン5は、
開閉器電圧Bが第一の閾値以下の場合、開閉器2がオフであると判定して、電装部品を制御し、
開閉器電圧Bが第一の閾値より大きい第二の閾値以上の場合、開閉器2がオンであると判定して、前記電装部品を制御し、
開閉器電圧Bが第一の閾値と第二の閾値との間である場合、開閉器2がリーク状態であると判定して、報知器を制御することで開閉器2がリーク状態であることを報知する車両用計器。
【符号の説明】
【0067】
V 車両
A リーク検出トリガー信号
B 開閉器電圧
C リークパス抵抗電流
1,10 スイッチ入力回路
11 リークパス抵抗
14,140 電圧検出回路
12 トランジスタ
40 抵抗
41 ツェナーダイオード
42 抵抗
43 トランジスタ
15,150 リーク検出トリガー回路
50 抵抗
51 トランジスタ
2 開閉器
21 スイッチ素子
22 リーク抵抗
3 バッテリ
5 マイクロコンピュータ(制御部の一例)
5a 入力ポート
5b トリガーポート
6 入力部
61 LED
62 抵抗
63 抵抗
64 コンデンサ
65 ツェナーダイオード
66 抵抗
67 トランジスタ
8 リセットIC
9 パルス発生回路
90 ダイオード
91 抵抗
92 分圧抵抗
93 分圧抵抗
100 車両用計器