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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】非接触給電に用いられる伝送コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20240910BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20240910BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240910BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20240910BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F5/00 R
H01F5/00 F
H02J50/10
H02J50/70
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020128041
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025300
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】宇田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-021902(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145659(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/174864(WO,A1)
【文献】特開2020-098919(JP,A)
【文献】特開2020-047614(JP,A)
【文献】特開2020-047766(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 5/00
H02J 50/10
H02J 50/70
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電に用いられる伝送コイル(10,10B,10C)であって、
巻回されたコイル導体(21)で構成され、磁束と交わる一方の表面(23)と前記一方の表面と反対向きの他方の表面(24)とを有するコイル(20,20C)と、
前記一方の表面(23)に配置された第1磁性体(30)と、
前記第1磁性体の前記一方の表面(23)に配置された前記コイルの内周の側面(25)に沿って配置された内側磁性体(40i)及び外周の側面(26)に沿って配置された外側磁性体(40o)を含み、前記第1磁性体とともに前記コイルから発生する磁束を誘導する第2磁性体(40)と、備え、
前記第2磁性体の高さが前記コイルの高さの1.75倍以上3倍以下に設定されることにより、前記第2磁性体の端縁部分(44)が前記コイルの前記他方の表面(24)から離れるように構成される、伝送コイル。
【請求項2】
非接触給電に用いられる伝送コイル(10,10B,10C)であって、
巻回されたコイル導体(21)で構成され、磁束と交わる一方の表面(23)と前記一方の表面と反対向きの他方の表面(24)とを有するコイル(20,20C)と、
前記一方の表面(23)に配置された第1磁性体(30)と、
前記第1磁性体の前記一方の表面(23)に配置された前記コイルの内周の側面(25)に沿って配置された内側磁性体(40i)及び外周の側面(26)に沿って配置された外側磁性体(40o)を含み、前記第1磁性体とともに前記コイルから発生する磁束を誘導する第2磁性体(40)と、を備え、
前記第2磁性体の高さは、前記コイルの高さと同じであり、
前記第2磁性体が前記コイルの側面から側方に前記コイルの高さの0.25倍以上2倍以下に設定された間隔をおいて離間して配置されることにより、前記第2磁性体の端縁部分(44)が前記コイルの前記他方の表面(24)から離れるように構成される、伝送コイル。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の伝送コイルであって、
前記第2磁性体は10以上200以下の比透磁率の磁性体である、伝送コイル。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の伝送コイルであって、
前記コイルは前記コイル導体がヘリカル状に積層された構造を有するコイルである、伝送コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電に用いられる伝送コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非接触給電に用いられる伝送コイルの例が開示されている。この伝送コイルは、基板と、基板上に配置され渦巻状に巻回されたコイルとを備え、コイルのコイル導体断面の両側面および両端部上に磁性体を設けることにより、表皮効果や近接効果による高周波損失を低減して交流抵抗の増大を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-110252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構造の伝送コイルでは、コイル導体断面の両側面及び両端部上に設けられた磁性体の磁路における磁性体の内側の角部分から発生する磁界によって、交流抵抗が増加するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、非接触給電に用いられる伝送コイル10が提供される。この伝送コイル(10)は、巻回されたコイル導体(21)で構成され、磁束と交わる一方の表面(23)と前記一方の表面と反対向きの他方の表面(24)とを有するコイル(20,20C)と、前記一方の表面(23)に配置された第1磁性体(30)と、前記第1磁性体の前記一方の表面(23)に配置された前記コイルの内周の側面(25)に沿って配置された内側磁性体(40i)及び外周の側面(26)に沿って配置された外側磁性体(40o)を含み、前記第1磁性体とともに前記コイルから発生する磁束を誘導する第2磁性体(40)と、備え、前記第2磁性体の高さが前記コイルの高さの1.75倍以上3倍以下に設定されることにより、前記第2磁性体の端縁部分(44)が前記コイルの前記他方の表面(24)から離れるように構成される。
本開示の他の形態によれば、非接触給電に用いられる伝送コイル10が提供される。この伝送コイル(10)は、巻回されたコイル導体(21)で構成され、磁束と交わる一方の表面(23)と前記一方の表面と反対向きの他方の表面(24)とを有するコイル(20,20C)と、前記一方の表面(23)に配置された第1磁性体(30)と、前記第1磁性体の前記一方の表面(23)に配置された前記コイルの内周の側面(25)に沿って配置された内側磁性体(40i)及び外周の側面(26)に沿って配置された外側磁性体(40o)を含み、前記第1磁性体とともに前記コイルから発生する磁束を誘導する第2磁性体(40)と、を備え、前記第2磁性体の高さは、前記コイルの高さと同じであり、前記第2磁性体が前記コイルの側面から側方に前記コイルの高さの0.25倍以上2倍以下に設定された間隔をおいて離間して配置されることにより、前記第2磁性体の端縁部分(44)が前記コイルの前記他方の表面(24)から離れるように構成される。
上記の形態の非接触給電用の伝送コイルによれば、第2磁性体と外部空間との間を出入りする磁束の集中する磁性体部分が、外部空間に接する他方の表面から離れるように設けられるので、第2磁性体と外部空間との間を出入りする磁束の集中する磁性体部分とコイルとの間で出入りする磁束を低減することができ、コイルに発生する渦電流による交流抵抗の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の伝送コイルの構成を示す概略平面図。
図2図1の伝送コイルの2-2断面を示す概略断面図。
図3図2の伝送コイルの一部を拡大した概略断面図。
図4】第2磁性体無しの構成の問題点を示す説明図。
図5】第2磁性体とコイルの高さが等しい場合の問題点を示す説明図。
図6】実施形態の構成の効果について示す説明図。
図7図6の構成の効果を図4及び図5の構成と比較して示す説明図。
図8】第2磁性体の形状の変形例について示す説明図。
図9】第2磁性体の形状の別の変形例について示す説明図。
図10】第2磁性体の太さと交流抵抗との関係を示すグラフ。
図11】第2磁性体の高さと交流抵抗との関係を示すグラフ。
図12】第2磁性体の比透磁率と交流抵抗との関係を示すグラフ。
図13】第2実施形態の伝送コイルの構成を示す概略断面図。
図14】第2磁性体とコイルとの間の間隔と交流抵抗との関係を示すグラフ。
図15】第3実施形態の伝送コイルの構成を示す概略断面図。
図16】車両用の非接触給電装置に伝送コイルを適用した例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1の概略平面図及び図2の概略断面図に示す第1実施形態としての非接触給電用の伝送コイル10は、コイル20と、コイル20の磁束と交わる一方の表面23及び他方の表面24のうちの一方の表面23に配置された第1磁性体30と、コイル20の内周の側面25及び外周の側面26に配置された第2磁性体40と、備える。なお、内周の第2磁性体40を「第2磁性体40i」とし、外周の第2磁性体40を「第2磁性体40o」として、区別して示す場合もある。
【0008】
コイル20は、図3の概略断面図に示すように、アルミニウムや銅等のプリント配線が樹脂22で構成される各基板の層に形成されることにより、コイル導体21がヘリカル状に形成されるプリント基板で構成される。一方の表面23と、一方の表面23とは反対向きの他方の表面24と、一方の表面23及び他方の表面24とコイル20の内周の側面25及び外周の側面26は、樹脂22で覆われている。
【0009】
コイル20の一方の表面23は巻回されたコイル導体21の一方端側の表面であり、他方の他方の表面24は巻回されたコイル導体21の他方端側の表面である。なお、一方端側の表面及び他方端側の表面には、コイル導体21を覆う樹脂22が介在されている。コイル20の内周の側面25及び外周の側面26は、積層されたコイル導体21の内周の側面及び外周の側面である。なお、コイル導体21の内周の側面及び外周の側面には、コイル導体21を覆う樹脂22が介在されている。
【0010】
なお、コイル20は、上述のようなプリント基板で構成されたコイルに限定されるものではなく、リッツ線を巻回したコイルや、平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイル等の種々のコイルを用いることができる。
【0011】
第1磁性体30及び第2磁性体40には、透磁率の高い磁性材料、例えば、Mn―Zn系のフェライトであるPC95(TDK社)を用いることができる。但し、これに限定されるものではなく、種々の磁性材料を用いることができる。なお、第2磁性体40の透磁率については、後述する。
【0012】
第1磁性体30は、図1及び図2に示すように、一方の表面23側のコイル20の全体を覆い、一方の表面23に接するように設けられている。
【0013】
第2磁性体40は、図2及び図3に示すように、第2磁性体40iがコイル20の内周の側面25及び第1磁性体30に接するように設けられ、第2磁性体40oがコイル20の外周の側面26及び第1磁性体30に接するように設けられている。
【0014】
また、第2磁性体40は、図3に示すように、コイル20側を向く端縁部分44がコイル20の他方の表面24から距離dh(dhは0よりも大きい)だけ離れるように、第2磁性体40の高さhmがコイル20の高さhcよりも高くなる構造を有している。なお、第2磁性体40の高さhm及び幅wmについては、後述する。
【0015】
第2磁性体40の高さhmがコイル20の高さhcよりも高くなる構造を有することにより、伝送コイル10は、以下で説明するように、課題で説明した交流抵抗の増加を抑制することができる。
【0016】
図4に示す第2磁性体40が無い構成の場合、図7の左上欄に示すように、コイル20の端部の磁束密度が高くなり、コイル20を鎖交する磁束は、図4に示すように、コイル20の側端部を貫く。コイル20の側端部を鎖交する磁束は渦電流を発生し、図7の左下欄に示すように、コイル20の側端部の電流密度の上昇を招く。この電流密度の増加は損失(渦電流損失)の増加、すなわち、コイル20の交流抵抗の増加を招く。
【0017】
また、図5に示す第2磁性体40(40i,40o)が設けられた構成の場合、図7の中央上欄に示すように、第2磁性体40の磁束密度が高くなり、コイル20を鎖交する磁束(図4参照)を、図5に示すように第2磁性体40に誘導することができる。このため、第2磁性体40が設けられた構成の場合、コイル20の側端部を鎖交する磁束により発生するコイル20の交流抵抗の増加を低減することができる。しかしながら、図5に示すように、第2磁性体40の端縁部分44は、図7の中央上欄に示すように、第2磁性体40と外部空間との間を出入りする磁束が集中し、磁束密度が高くなる磁性体部分となる。このため、図5に示すように、磁束密度が高くなる端縁部分44が、コイル20の他方の表面24に近接している場合、図7の中央下欄に示すように、端縁部分44と他方の表面24の側端部との間の空間の磁束密度が高くなり、他方の表面24を鎖交する漏れ磁束が発生する。他方の表面24を鎖交する漏れ磁束はコイル20の側端部の他方の表面24側の部分で渦電流を発生し、図7の中央下欄に示すように、他方の表面24側のコイル20の側端部の電流密度の上昇を招き、損失(渦電流損失)の増加、すなわち、コイル20の交流抵抗の増加を招く。
【0018】
図6に示す実施形態の構成(図3参照)の場合、端縁部分44が他方の表面24から離れている。端縁部分44と他方の表面24との間の磁束は、距離(間隔)の2乗で減衰するため、端縁部分44が他方の表面24に近接している構成(図5参照)の場合に比べて、図7の右上欄に示すように、端縁部分44と他方の表面24の端部との間の空間の磁束密度の上昇を大幅に低くすることができ、漏れ磁束を大幅に低減することが可能である。この結果、図7の右下欄に示すように、他方の表面24側のコイル20の側端部の電流密度の上昇を大幅に低くして、損失(渦電流損失)の大幅な低減、すなわち、コイル20の交流抵抗の大幅な低減を図ることができる。
【0019】
なお、第2磁性体40は、図8に示すように、端縁部分44が面取りされた形状であってもよい。また、第2磁性体40は、図9に示すように、端縁部分44がコイル20側に折れ曲がった形状であってもよい。第2磁性体40は、外部空間との間で出入りする磁束が集中する端縁部分44がコイル20の他方の表面24から離れるように構成された形状であればよい。
【0020】
以下では、図10のグラフを用いて、第2磁性体40の太さwm(図3参照)と交流抵抗Racとの関係について説明する。横軸の第2磁性体40の太さwmは、設定の太さwrに対する相対値wm/wrで表されており、縦軸の交流抵抗Racは、設定の太さwrにおける交流抵抗Rwrに対する相対値Rac/Rwrで表されている。
【0021】
図10からわかるように、第2磁性体40の太さWmは、交流抵抗Racにほとんど影響を与えない。このため、第2磁性体40の太さwmは、磁気飽和しないような大きさに設定されればよい。例えば、磁気飽和しない範囲で最小の大きさに設定されればよい。
【0022】
次に、図11のグラフを用いて、第2磁性体40の高さhm(図3参照)と交流抵抗Racとの関係について説明する。横軸の第2磁性体40の高さhmは、コイル20の高さhcに対する比hm/hcで表されており、縦軸の交流抵抗Racは、基準のコイル高さ比hm/hc=1.00における交流抵抗Rhrに対する相対値Rac/Rhrで表されている。
【0023】
図11からわかるように、第2磁性体40の高さhmがコイル20の高さhcよりも高く、第2磁性体40の端縁部分44がコイル20の他方の表面24から距離dh(=hm-hc,図3参照)だけ離すことができるので、交流抵抗Racを低くすることができる。特に、hm/hc≧1.75であれば、hm/hc=1の場合に比べて交流抵抗Racを1/2以下に小さくすることができる。なお、hm/hc>3の場合には、交流抵抗Racは1/3~1/4程度の値に収束し、交流抵抗Racの低減効果は変わらなくなる。従って、1<hm/hc≦3の範囲で第2磁性体40の高さhmを設定すれば、伝送コイル全体の高さ方向の体格の増加を抑制しつつ、十分な交流抵抗の低減効果を得ることができる。
【0024】
次に、図12を用いて、第2磁性体40の比透磁率μrと交流抵抗Racとの関係について説明する。図12は、第2磁性体40の比透磁率μrが、μr=1、すなわち、第2磁性体無しの場合、μr=10の場合、μr=20の場合、μr=50の場合、μr=100の場合、μr=200の場合、及び、μr>1000の磁性材料PC95(TDK社)の場合のそれぞれ交流抵抗Racを示している。なお、交流抵抗Racは、磁性体無しの場合の交流抵抗Rrに対する相対値Rac/Rrで表されている。
【0025】
図12からわかるように、10≦μr≦200の磁性体であれば、交流抵抗Racを30%以上の十分な低減効果を得ることができる。従って、上述の説明では、第2磁性体40として第1磁性体30と同じ磁性材料PC95を用いた磁性体を例として説明したが、例えば、フレキシブル磁性体シートのように、柔軟性があり設置の容易性が高いが、比透磁率μrが低い磁性体を第2磁性体として利用することができる。また、比透磁率が低い磁性塗布材料を用いて、コイルをプリント基板にて製造する際に、一体製造することも可能である。従って、10≦μr≦200の磁性体を第2磁性体40とすれば、第2磁性体を備える伝送コイル10の製造が容易である。
【0026】
B.第2実施形態:
図13の概略断面図に示す第2実施形態の伝送コイル10Bは、第1実施形態の伝送コイル10(図3参照)と同様に、コイル20と、第1磁性体30と、第2磁性体40(40i,40o)と、を備える。但し、伝送コイル10の第2磁性体40の高さhmがコイル20の高さhcよりも高いのに対して、伝送コイル10Bの第2磁性体40の高さhmはコイル20の高さhcに等しい構成となっている点が異なっている。また、伝送コイル10Bの第2磁性体40が、コイル20の内周側の側面25及び外周側の側面26から、間隔dsで側方に離間して配置されている点が異なっている。なお、間隔dsは、厳密には、コイル導体21の端部との間の距離であるが、コイル20の高さhc(厳密には、積層されたコイル導体21の高さ)に比べて樹脂22の厚さが十分に薄い場合には、コイル20の側面との間の距離としても差し支えない。
【0027】
以上説明したように、第2磁性体40がコイル20の側面から側方に離間して配置されることにより、端縁部分44がコイル20の他方の表面24から離れるようにすることができるので、第1実施形態と同様に、交流抵抗の増加を抑制することができる。
【0028】
以下では、図14のグラフを用いて、第2磁性体40とコイル20の間隔dsと交流抵抗Racとの関係について説明する。横軸の間隔dsは、コイル20の高さhcに対する比ds/hcで表され、縦軸の交流抵抗Racは、コイル高さ比ds/hc=0における交流抵抗Rdrに対する相対値Rac/Rdrで表されている。
【0029】
図14からわかるように、ds/hc>0として、第2磁性体40をコイル20から離して配置することにより、交流抵抗Racを低くすることができる。特に、0.25≦ds/hc≦0.5とすれば、交流抵抗Racの低減効果を最も高めることができる。なお、ds>hc>2として、第2磁性体40をコイル20から離しすぎた場合には、交流抵抗Racの低減効果を得られなくなる。これは、第2磁性体40による磁束の誘導効果を得ることができなくなり、第2磁性体40が無い構成(図4参照)と同様となるからである。
【0030】
なお、上述した伝送コイル10Bは、第2磁性体40の高さhmがコイル20の高さhcに等しい構成を例に示したが、第1実施形態と同様に、第2磁性体40の高さhmをコイル20の高さhcよりも高くした構成としてもよい。この構成の場合には、第2磁性体40の高さhmをコイル20の高さhcよりも高くすることによる交流抵抗Racの低減効果に加えて、第2磁性体40をコイル20から離して配置することによる交流抵抗Racの低減効果を得ることができる。
【0031】
また、第1実施形態で説明した第2磁性体40の高さhmに関する限定や、第2磁性体40の比透磁率μrに関する限定は、伝送コイル10Bにおいても同様に適用可能である。
【0032】
C.第3実施形態:
図15に示す第3実施形態の伝送コイル10Cは、第1実施形態の伝送コイル10(図3参照)のコイル20に換えて、コイル導体21が渦巻状に巻回されたコイル20Cが用いられ、各コイル導体21の内周と外周の側面に第2磁性体40が配置されている点が異なっている。
【0033】
伝送コイル10Cにおいても、コイル導体21の両端部を通過する磁束を第2磁性体40に誘導するとともに、磁束が集中する端縁部分44を各コイル導体21の表面、すなわち、コイル20Cの他方の表面24から離すことにより、第1実施形態と同様に交流抵抗の増加を抑制することができる。但し、伝送コイル10Cの場合は、各コイル導体21の側面に第2磁性体を配置することが求められる。従って、第1実施形態の伝送コイル10のように、ヘリカル状に巻回されたコイル20を用いる構成の方が、コイルの内周及び外周の側面に配置する第2磁性体の数を低減できる点で有利である。
【0034】
D.伝送コイルの適用形態:
上記各実施形態で説明した伝送コイルは、非接触給電用の送電コイルあるいは受電コイルとして利用可能である。例えば、図16に示すように、車両に搭載された受電装置200に対して、車両走行路RSに設置された給電装置100から非接触で給電を行なう車両用非接触給電システムにおいて、給電装置100の送電コイル110に適用可能である。
【0035】
給電装置100では、電源回路130から供給される直流電力が送電回路120によって交流電力に変換され、変換された交流電力は送電コイル110に供給される。車両に搭載された受電装置200では、送電コイル110を含む送電共振回路と、受電コイル210を含む受電共振回路との間の磁界結合によって、受電コイル210に誘導された交流電力が、受電回路220によって直流電力に変換されて、バッテリ230に充電される。これにより、給電装置100から受電装置200に対して非接触での給電が実行される。
【0036】
なお、図16では、送電コイル110に第1実施形態の伝送コイル10を適用した例が示されている。送電コイル110は、車両走行路RSのアスファルト等で舗装された表層ALの下側の層PLで、樹脂等に覆われて設置されている。
【0037】
なお、以上の説明では、給電装置100の送電コイル110に第1実施形態の伝送コイル10を適用した構成を例に説明したが、他の実施形態の伝送コイルを送電コイル110に適用してもよい。また、受電コイル210に上記実施形態の伝送コイルを適用することも可能である。
【0038】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10,10B,10C…伝送コイル、20,20C…コイル、21…コイル導体、22…樹脂、23,24…表面、25,26…側面、30…第1磁性体、40…第2磁性体、44…端縁部分(磁性体部分)
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