(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】無端状ベルトの接地構造、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240910BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/00 552
(21)【出願番号】P 2020130925
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈太
(72)【発明者】
【氏名】春原 剛
(72)【発明者】
【氏名】金井 研司
(72)【発明者】
【氏名】杉野 瑞記
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏行
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰徳
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026883(JP,A)
【文献】特開2019-008159(JP,A)
【文献】特開2017-156609(JP,A)
【文献】特開2004-168515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する前記導電層と接触して導通させる導電性の導通手段と、
前記無端状ベルトの前記導電層の端面に前記導通手段を圧接させる圧接手段と、
前記導通手段を接地する接地手段と、
を備え
、
前記導通手段及び前記圧接手段は、導電性且つ弾性を有する導電性フェルト又は導電性発泡体からなる同一の手段によって構成される無端状ベルトの接地構造。
【請求項2】
導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する前記導電層と接触して導通させる導電性の導通手段と、
前記無端状ベルトの前記導電層の端面に前記導通手段を圧接させる圧接手段と、
前記導通手段を接地する接地手段と、
を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、導電性且つ弾性を有する導電性フェルト又は導電性発泡体からなる同一の手段によって構成され、
前記導電性フェルトは、前記無端状ベルトの前記導電層の厚さより外径が細い導電性繊維からなる
導電性且つ弾性を有する導電性フェルト又は導電性発泡体から構成される無端状ベルトの接地構造。
【請求項3】
導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する前記導電層と接触して導通させる導電性の導通手段と、
前記無端状ベルトの前記導電層の端面に前記導通手段を圧接させる圧接手段と、
前記導通手段を接地する接地手段と、
を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、導電性ブラシからなる
同一の手段によって構成される無端状ベルトの接地構造。
【請求項4】
前記導通手段は、前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面における前記無端状ベルトの厚さ方向に沿った全領域と接触するよう配置される
請求項1乃至3のいずれかに記載の無端状ベルトの接地構造。
【請求項5】
導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する前記導電層と接触して導通させる導電性の導通手段と、
前記無端状ベルトの前記導電層の端面に前記導通手段を圧接させる圧接手段と、
前記導通手段を接地する接地手段と、
を備え、
前記圧接手段は、板バネからなり、
前記導通手段は、前記板バネにより前記無端状ベルトの前記導電層の端面に圧接される無端状ベルトの接地構造。
【請求項6】
前記導通手段は、前記無端状ベルトの前記導電層の端面と前記板バネとの間に挟持されている
請求項5に記載の無端状ベルトの接地構造。
【請求項7】
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った少なくとも一端部を回転可能に案内する案内部材を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、前記案内部材に設けられる請求項1に記載の無端状ベルトの接地構造。
【請求項8】
前記案内部材は、前記無端状ベルトの内径より外径が小さい円筒部を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、前記案内部材の前記円筒部の外周面に設けられる
請求項7に記載の無端状ベルトの接地構造。
【請求項9】
前記無端状ベルトは、その内周面に潤滑剤を塗布され、
前記案内部材は、前記無端状ベルトの内周面に塗布される潤滑剤を保持する保持部材を備える
請求項8に記載の無端状ベルトの接地構造。
【請求項10】
前記案内部材の前記円筒部の外周には、前記保持部材を周方向に沿った一部を除いて全周にわたり設けるとともに、前記保持部材が設けられない一部に前記導通手段を設けた
請求項8に記載の無端状ベルトの接地構造。
【請求項11】
前記案内部材は、周方向に沿った少なくとも一部に外周面を窪ませた凹部を有し、
前記案内部材の凹部に前記導通手段を前記案内部材の外周面から半径方向に沿った外方へ突出するよう設けた
請求項8に記載の無端状ベルトの接地構造。
【請求項12】
導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトと接触して回転する回転体と、
前記無端状ベルト及び前記回転体の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、
を備え、
前記無端状ベルトの前記導電層を接地する無端状ベルトの接地構造として
請求項1乃至11のいずれかに記載の無端状ベルトの接地構造を用いた定着装置。
【請求項13】
記録媒体に未定着トナー像を形成する画像形成手段と、
前記未定着トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として
請求項12に記載の定着装置を用いた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無端状ベルトの接地構造、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置に関する技術としては、例えば、特許文献1~3等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、定着部材の導電性部材と接地の間にダイオード素子を介在させるとともに、定着ニップ付近に接地状態の導電性部材を配置したものである。
【0004】
特許文献2は、無端状ベルトの離型層を剥離して露出させた導電層を加圧手段の芯金を介して電気的に接地するよう構成したものである。
【0005】
特許文献3は、 少なくとも一方の定着ローラの近傍に、アースされた導電性繊維をこの定着ローラに対して非接触状態で配置するよう構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-019870号公報
【文献】特許第5116350号公報
【文献】特開2003-223073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、導電層が露出する無端状ベルトの端面から接地可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する前記導電層と接触して導通させる導電性の導通手段と、
前記無端状ベルトの前記導電層の端面に前記導通手段を圧接させる圧接手段と、
前記導通手段を接地する接地手段と、
を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、導電性且つ弾性を有する導電性フェルト又は導電性発泡体からなる同一の手段によって構成される無端状ベルトの接地構造である。
【0011】
請求項2に記載された発明は、導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する前記導電層と接触して導通させる導電性の導通手段と、
前記無端状ベルトの前記導電層の端面に前記導通手段を圧接させる圧接手段と、
前記導通手段を接地する接地手段と、
を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、導電性且つ弾性を有する導電性フェルト又は導電性発泡体からなる同一の手段によって構成され、
前記導電性フェルトは、前記無端状ベルトの前記導電層の厚さより外径が細い導電性繊維からなる導電性且つ弾性を有する導電性フェルト又は導電性発泡体から構成される無端状ベルトの接地構造である。
【0012】
請求項3に記載された発明は、導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する前記導電層と接触して導通させる導電性の導通手段と、
前記無端状ベルトの前記導電層の端面に前記導通手段を圧接させる圧接手段と、
前記導通手段を接地する接地手段と、
を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、導電性ブラシからなる同一の手段によって構成される無端状ベルトの接地構造である。
【0013】
請求項4に記載された発明は、前記導通手段は、前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面における前記無端状ベルトの厚さ方向に沿った全領域と接触するよう配置される請求項1乃至3のいずれかに記載の無端状ベルトの接地構造である。
【0014】
請求項5に記載された発明は、導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する前記導電層と接触して導通させる導電性の導通手段と、
前記無端状ベルトの前記導電層の端面に前記導通手段を圧接させる圧接手段と、
前記導通手段を接地する接地手段と、
を備え、
前記圧接手段は、板バネからなり、
前記導通手段は、前記板バネにより前記無端状ベルトの前記導電層の端面に圧接される無端状ベルトの接地構造である。
【0015】
請求項6に記載された発明は、前記導通手段は、前記無端状ベルトの前記導電層の端面と前記板バネとの間に挟持されている請求項5に記載の無端状ベルトの接地構造である。
【0016】
請求項7に記載された発明は、前記無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った少なくとも一端部を回転可能に案内する案内部材を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、前記案内部材に設けられる請求項1に記載の無端状ベルトの接地構造である。
【0017】
請求項8に記載された発明は、前記案内部材は、前記無端状ベルトの内径より外径が小さい円筒部を備え、
前記導通手段及び前記圧接手段は、前記案内部材の前記円筒部の外周面に設けられる請求項7に記載の無端状ベルトの接地構造である。
【0018】
請求項9に記載された発明は、前記無端状ベルトは、その内周面に潤滑剤を塗布され、
前記案内部材は、前記無端状ベルトの内周面に塗布される潤滑剤を保持する保持部材を備える請求項8に記載の無端状ベルトの接地構造である。
【0019】
請求項10に記載された発明は、前記案内部材の前記円筒部の外周には、前記保持部材を周方向に沿った一部を除いて全周にわたり設けるとともに、前記保持部材が設けられない一部に前記導通手段を設けた請求項8に記載の無端状ベルトの接地構造である。
【0020】
請求項11に記載された発明は、前記案内部材は、周方向に沿った少なくとも一部に外周面を窪ませた凹部を有し、
前記案内部材の凹部に前記導通手段を前記案内部材の外周面から半径方向に沿った外方へ突出するよう設けた請求項8に記載の無端状ベルトの接地構造である。
【0021】
請求項12に記載された発明は、導電層を有して移動する無端状ベルトと、
前記無端状ベルトと接触して回転する回転体と、
前記無端状ベルト及び前記回転体の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、
を備え、
前記無端状ベルトの前記導電層を接地する無端状ベルトの接地構造として請求項1乃至11のいずれかに記載の無端状ベルトの接地構造を用いた定着装置である。
【0022】
請求項13に記載された発明は、記録媒体に未定着トナー像を形成する画像形成手段と、
前記未定着トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として請求項12に記載の定着装置を用いた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載された発明によれば、導電層が露出する無端状ベルトの端面から接地可能とすることができる。
【0024】
また、請求項1に記載された発明によれば、導通手段及び圧接手段が別の手段からなる場合に比べて、構成を簡略化することができる。
【0025】
さらに、請求項1に記載された発明によれば、導通手段及び圧接手段を導電性且つ弾性を有する導電性フェルト又は導電性発泡体から構成しない場合に比べて、導通手段及び圧接手段を容易に構成することができる。
【0026】
請求項2に記載された発明によれば、導電性フェルトは、その導電性繊維の外径が無端状ベルトの導電層の厚さより大きい場合に比べて、無端状ベルトの導電層と確実に接触させることができる。
【0027】
請求項3に記載された発明によれば、導通手段及び圧接手段は、導電性ブラシから構成しない場合に比べて、導通手段及び圧接手段の選択が容易となる。
【0028】
請求項4に記載された発明によれば、導通手段は、無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面における無端状ベルトの厚さ方向に沿った一部の領域と接触するよう配置される場合に比べて、無端状ベルトの導電層と確実に導通をとることができる。
【0029】
請求項5に記載された発明によれば、導通手段は、板バネにより無端状ベルトの前記導電層の端面に圧接されない場合に比べて、簡単な構成で無端状ベルトの導電層と確実に導通をとることができる。
【0030】
請求項6に記載された発明によれば、導通手段は、無端状ベルトの導電層の端面と板バネとの間に挟持されていない場合に比べて、無端状ベルトの導電層との接触面積を確保することができる。
【0031】
請求項7に記載された発明によれば、導通手段及び圧接手段は、案内部材以外に設けた場合に比べて、容易に設置することが可能となる。
【0032】
請求項8に記載された発明によれば、導通手段及び圧接手段は、案内部材の円筒部の外周面に設けられない場合に比べて、無端状ベルトの導電層と確実に接触させることができる。
【0033】
請求項9に記載された発明によれば、案内部材は、無端状ベルトの内周面に塗布される潤滑剤を保持する保持部材を備えない場合に比べて、潤滑剤が導通手段に影響を及ぼすことが抑制できる。
【0034】
請求項10に記載された発明によれば、案内部材の円筒部の外周には、保持手段が設けられない一部に導通手段を設けない場合に比べて、潤滑剤が導通手段に影響を及ぼすことがより一層抑制できる。
【0035】
請求項11に記載された発明によれば、案内部材の凹部に導通手段を案内部材の外周面から半径方向に沿った外方へ突出するよう設けない場合に比べて、無端状ベルトの移動によって導通手段が離脱することが抑制される。
【0036】
請求項12に記載された発明によれば、無端状ベルトの接地構造として請求項1乃至11のいずれかに記載の無端状ベルトの接地構造を用いない場合に比べて、導電層が露出する無端状ベルトの端面から接地することができ、無端状ベルトの帯電等に起因した定着不良を抑制できる。
【0037】
請求項13に記載された発明によれば、定着手段として請求項12に記載の定着装置を用いない場合に比べて、記録媒体に定着されるトナー像の画質低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る無端状ベルトの接地構造及び定着装置を適用した画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置を示す断面構成図である。
【
図5】この発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す平面構成図である。
【
図7】この発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す斜視構成図である。
【
図10】この発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す概略構成図である。
【
図12】この発明の実施の形態1に係る定着装置の変形例の要部を示す概略構成図である。
【
図13】この発明の実施の形態2に係る定着装置の要部を示す平面構成図である。
【
図14】この発明の実施の形態3に係る定着装置の要部を示す平面構成図である。
【
図16】この発明の実施の形態3に係る定着装置の変形例の要部を示す平面構成図である。
【
図17】この発明の実施の形態3に係る定着装置の変形例の要部を示す平面構成図である。
【
図18】この発明の実施の形態4に係る定着装置の変形例の要部を示す平面構成図である。
【
図19】この発明の実施の形態5に係る定着装置の変形例の要部を示す断面構成図である。
【
図20】この発明の実施の形態6に係る定着装置の変形例の要部を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0040】
[実施の形態1]
図1はこの発明の実施の形態1に係る無端状ベルトの接地構造及び定着装置を適用した画像形成装置の全体の概要を示す構成図である。
【0041】
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、
図1に示されるように、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されたトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体の一例としての記録用紙5に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙5を収容して搬送する給紙装置30と、中間転写装置20で二次転写された記録用紙5上のトナー像を定着させる定着装置40等を備えている。なお、図中の1aは画像形成装置1の装置本体を示している。この装置本体1aは支持構造部材、外装カバー等で形成されている。また、図中の二点鎖線は、装置本体1a内において記録用紙5が搬送される主な搬送経路を示す。
【0042】
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。これらの4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、装置本体1aの内部空間において傾斜した状態で1列に並べた状態となるよう配置されている。
【0043】
4つの作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のカラーの作像装置10(Y,M,C)と、ブラック(K)の作像装置10Kとから構成されている。ブラックの作像装置10Kは、中間転写装置20の中間転写ベルト21の移動方向Bに沿った最も下流側に配置されている。画像形成装置1は、画像形成モードとして、カラーの作像装置10(Y,M,C)及びブラック(K)の作像装置10Kを動作させてフルカラーの画像を形成するフルカラーモードと、ブラック(K)の作像装置10Kのみを動作させて白黒(モノクロ)の画像を形成する白黒モードとを備える。
【0044】
各作像装置10(Y,M,C,K)は、
図2に示されるように、像保持体の一例としての回転する感光体ドラム11を備えている。感光体ドラム11の周囲に、次のようなトナー像形成手段の一例としての各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光体ドラム11の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置12と、感光体ドラム11の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光装置13と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像装置14(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置20に転写する一次転写手段の一例としての一次転写装置15(Y,M,C,K)と、一次転写後における感光体ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置16(Y,M,C,K)等である。
【0045】
感光体ドラム11は、接地処理される円筒状又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。この感光体ドラム11は、図示しない駆動装置から動力が伝達されて矢印Aで示す方向に回転するよう支持されている。
【0046】
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触した状態で配置される接触型の帯電ロールで構成される。帯電装置12には帯電用電圧が供給される。帯電用電圧としては、現像装置14が反転現像を行うものである場合、現像装置14から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧又は電流が供給される。なお、帯電装置12としては、感光体ドラム11の表面に非接触状態で配置されるスコロトロン等の非接触型の帯電装置を用いてもよい。
【0047】
露光装置13は、感光体ドラム11の軸方向に沿って配列された複数の発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)により感光体ドラム11に画像情報に応じた光を照射して静電潜像を形成するLEDプリントヘッドからなるものを用いている。なお、露光装置13としては、画像情報に応じて構成されるレーザー光を各感光体ドラム11の軸方向に沿って偏向走査するものを用いても良い。
【0048】
現像装置14(Y,M,C,K)はいずれも、開口部と現像剤の収容室が形成された筐体140の内部に、現像剤を保持して感光体ドラム11と向き合う現像領域まで搬送する現像ロール141と、現像剤を攪拌しながら現像ロール141を通過させるよう搬送する図示しない2つのスクリューオーガー等の攪拌搬送部材と、現像ロール141に保持される現像剤の量(層厚)を規制する図示しない層厚規制部材などを配置して構成したものである。この現像装置14には、現像ロール141と感光体ドラム11の間に現像用電圧が図示しない電源装置から供給される。また、現像ロール141や攪拌搬送部材は、図示しない駆動装置から動力が伝達されて所要の方向に回転する。さらに、上記4色の現像剤4(Y,M,C,K)としては、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が使用される。
【0049】
一次転写装置15(Y,M,C,K)は、感光体ドラム11の周囲に中間転写ベルト21を介して接触し回転するとともに一次転写用電圧が供給される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。一次転写用電圧としては、トナーの帯電極性と逆の極性を示す直流の電圧が図示しない電源装置から供給される。
【0050】
ドラム清掃装置16は、一部が開口する容器状の本体160と、一次転写後の感光体ドラム11の周面に所要の圧力で接触するように配置されて残留トナー等の付着物を取り除いて清掃する図示しない清掃板と、清掃板で取り除いたトナー等の付着物を回収して図示しない回収システムに送り出すよう搬送する図示しないスクリューオーガー等の送出部材等で構成されている。
【0051】
中間転写装置20は、
図1に示されるように、各作像装置10(Y,M,C,K)の上方の位置に存在するよう配置される。中間転写装置20は、
図2に示されるように、感光体ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内面から所望の状態に保持して回転可能に支持する複数のベルト支持ロール22~25と、ベルト支持ロール25に支持されている中間転写ベルト21の外周面(像保持面)側に配置されて中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に二次転写させる二次転写手段の一例としての二次転写装置26と、二次転写装置26を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置27とで主に構成されている。
【0052】
中間転写ベルト21としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボンブラック等の抵抗調整剤などを分散させた材料で製作される無端状のベルトが使用される。また、ベルト支持ロール22は図示しない駆動装置によって回転駆動される駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール23は中間転写ベルト21の画像形成面を形成する面出しロールとして構成され、ベルト支持ロール24は中間転写ベルト21に張力を付与する張力付与ロールとして構成され、ベルト支持ロール25は二次転写の背面支持ロールとして構成されている。また、ベルト支持ロール22はベルト清掃装置27と対向する対向ロールを兼ねている。
【0053】
二次転写装置26は、中間転写装置20におけるベルト支持ロール25に支持されている中間転写ベルト21の外周面部分である二次転写位置において、中間転写ベルト21の周面に接触して回転するとともに二次転写用電圧が供給される二次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。また、二次転写ロール26又は中間転写装置20のベルト支持ロール25には、トナーの帯電極性と逆極性又は同極性を示す直流の電圧が二次転写用電圧として図示しない電源装置から供給される。
【0054】
定着装置40は、
図1に示されるように、記録用紙5の導入口及び排出口が形成された図示しない筐体の内部に、矢印で示す方向に回転するとともに表面温度が所定の温度に保持されるよう加熱手段によって加熱されるロール形態又はベルト形態の加熱用回転体41と、この加熱用回転体41の軸方向にほぼ沿う状態で所定の圧力で接触して従動回転するロール形態又はベルト形態の加圧用回転体42などを配置して構成されたものである。この定着装置40では、加熱用回転体41と加圧用回転体42が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着処理部となる。なお、定着装置40の構成については、後に詳述する。
【0055】
給紙装置30は、作像装置10(Y,M,C,K)の下方側の位置に存在するよう配置される。この給紙装置30は、所望のサイズ、種類等の記録用紙5を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体31と、用紙収容体31から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置32とで主に構成されている。用紙収容体31は、例えば、装置本体1aの使用者が操作時に向き合う側面である正面(図中、左側)に引き出すことができるよう取り付けられている。
【0056】
記録用紙5としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙やトレーシングペーパー等の薄紙、あるいはOHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録用紙5の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等の坪量が相対的に大きい所謂厚紙なども好適に使用することができる。
【0057】
給紙装置30と二次転写装置26との間には、給紙装置30から送り出される記録用紙5を二次転写位置まで搬送する単数又は複数の用紙搬送ロール対33や図示しない搬送ガイドで構成される給紙搬送路34が設けられている。給紙搬送路34において二次転写位置の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対33は、例えば記録用紙5の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。また、二次転写装置26と定着装置40との間には、二次転写装置26から送り出される二次転写後の記録用紙5を定着装置40まで搬送するための用紙搬送路35が設けられている。さらに、装置本体1aに形成される用紙の排出口に近い部分には、定着装置40から送り出される定着後の記録用紙5を装置本体1aの上部に設けられた用紙排出部36に排出するための用紙排出ロール対37を備えた排出搬送路38が設けられている。
【0058】
定着装置40と用紙排出ロール対37との間には、用紙搬送路を切り替える図示しない切替ゲートを備えている。用紙排出ロール対37は、その回転方向が正転方向(排出方向)と逆転方向に切り替え可能に構成されている。記録用紙5の両面に画像を形成する場合には、片面に画像が形成された記録用紙5の後端が切替ゲートを通過した後、用紙排出ロール対37の回転方向を正転方向(排出方向)から逆転方向に切り替える。用紙排出ロール対37によって逆転方向に搬送される記録用紙5は、切替ゲートによって搬送経路が切り替えられ、装置本体1aの背面に沿って略鉛直方向に沿うように形成された両面用搬送経路39へと搬送される。両面用搬送経路39は、表裏を反転させた状態で記録用紙5を用紙搬送ロール対33へと搬送する用紙搬送ロール対39aと図示しない搬送ガイド等を備えている。
【0059】
図1中、符号145(Y,M,C,K)は、紙面に直交する方向に沿って複数配列され、対応する現像装置14(Y,M,C,K)に供給する少なくともトナーを含む現像剤を収容したトナーカートリッジをそれぞれ示している。
【0060】
また、
図1中符号100は、画像形成装置1の動作を統括的に制御する制御装置を示している。制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、あるいはこれらCPUやROM等を接続するバス、通信インターフェイスなどを備えている。
【0061】
<画像形成装置の動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0062】
ここでは、前記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するフルカラーモードにおける動作を説明する。
【0063】
画像形成装置1は、図示しないユーザインターフェイスやプリンタドライバ等からフルカラーの画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、4つの作像装置10(Y,M,C,K)、中間転写装置20、二次転写装置26、定着装置40等が始動する。
【0064】
そして、各作像装置10(Y,M,C,K)においては、
図1に示されるように、まず各感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置12が各感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて発光される光を照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0065】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)が、感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーを現像ロール141からそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
【0066】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15(Y,M,C,K)が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21に対して順番に重ね合わされるような状態で一次転写させる。
【0067】
また、一次転写が終了した各作像装置10(Y,M,C,K)では、ドラム清掃装置16が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃する。これにより、各作像装置10(Y,M,C,K)は、次の作像動作が可能な状態にされる。
【0068】
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置30では、作像動作に合わせて所要の記録用紙5を給紙搬送路34に送り出す。給紙搬送路34では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対33が記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
【0069】
二次転写位置においては、二次転写装置26が、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置20では、ベルト清掃装置27が、二次転写後の中間転写ベルト21の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0070】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙5は、中間転写ベルト21から剥離された後に用紙搬送路35を介して定着装置40まで搬送される。定着装置40では、回転する加熱用回転体41と加圧用回転体42との間の接触部に二次転写後の記録用紙5を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙5に定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙5は、その片面への画像の形成を行うだけの画像形成動作のときは、用紙排出ロール対37により、装置本体1aの上部に設置された用紙排出部36に排出される。
【0071】
以上の動作により、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成された記録用紙5が出力される。
【0072】
なお、ブラック(K)の作像装置10Kのみを動作させることにより、モノクロの画像が形成された記録用紙5が出力される。
【0073】
<定着装置の構成>
図2はこの実施の形態1に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置を示す断面構成図である。なお、
図2中、符号Xは画像形成装置1の水平方向を、符号Yは画像形成装置1の鉛直方向を、符号Zは画像形成装置1の奥行方向をそれぞれ示している。
【0074】
定着装置40は、
図2に示されるように、断面略矩形の細長い箱体状に形成された筐体の一例としての装置ハウジング43を備えている。装置ハウジング43の内部には、回転する無端状ベルトの一例としての加熱ベルト41と、加熱ベルト41と接触して定着ニップ部Nを形成する回転体の一例としての加圧ロール42が圧接された状態で配置されている。
【0075】
装置ハウジング43は、その下方に未定着トナー像Tが転写された記録用紙5を内部へ導入する導入口430を有している。導入口430の内部には、記録用紙5を加熱ベルト41と加圧ロール42が圧接する定着ニップ部Nへ案内する図示しないガイド板が必要に応じて配置される。また、装置ハウジング43は、その上方に加熱ベルト41及び加圧ロール42によって定着処理が施された記録用紙5を外部へ排出する排出口432を有している。なお、記録用紙5は、搬送方向Eと交差する方向である表面に沿った方向の中央を基準(所謂センターレジ)として搬送される。
【0076】
定着装置40は、大別して、加熱ベルト41を有する加熱ユニット44と、加熱ユニット44の加熱ベルト41に対して接離する方向C,Dに沿って図示しないリトラクト機構により移動可能に設けられた加圧ロール42を備えている。
【0077】
加熱ユニット44は、加熱ベルト41と、加熱ベルト41の内部に配置され、加熱ベルト41を加圧ロール42の表面に圧接させる加圧手段の一例である加圧部材45と、加熱ベルト41を電磁誘導作用により加熱する加熱手段の一例としての加熱部46と、加熱ベルト41の長手方向に沿った一端部を回転可能に案内する案内手段の一例としてのガイド部材47(
図5,6参照)と、加熱ベルト41の内部に配置され、加熱ベルト41の内周面に付与される潤滑剤を保持する潤滑剤保持手段の一例としてのフェルト等からなる保持部材48を備えている。
【0078】
加熱ベルト41は、
図3に示されるように、可撓性を有する材料からなり、装着前の状態である自由形状が薄肉円筒形の無端状ベルトとして構成されている。加熱ベルト41は、
図4に示されるように、基材層411と、基材層411の表面に被覆された導電層412と、導電層412の表面に被覆された弾性体層413と、弾性体層413の表面に被覆された離型層414とを備える。また、加熱ベルト41は、基材層411と、基材層411の表面に被覆された導電層412と、導電層412の表面に直接被覆された離型層414から構成しても良い。加熱ベルト41の導電層412は、移動(回転)方向と交差する方向である軸方向に沿った端面に露出している。基材層411は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性を有する合成樹脂などによって形成される。導電層412は、銅、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等の金属あるいは導電性が付与された合成樹脂などによって形成される。弾性体層413は、耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる。離型層414は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等によって形成される。加熱ベルト41は、例えば、その厚さが50~200μm程度に設定可能である。また、加熱ベルト41の導電層412は、例えば、その厚さが数10μm程度に設定可能である。
【0079】
加熱ベルト41は、例えば、
図3(b)に示されるように、移動方向と交差する方向である軸方向に沿った一端部に取り付けられたハスバ歯車や平歯車等の駆動歯車415によって回転駆動される。ただし、加熱ベルト41は、駆動歯車415を備えず加圧ロール42に圧接されることで従動回転するよう構成しても良い。
【0080】
加圧部材45は、
図2に示されるように、加熱ベルト41を加圧ロール42に圧接させるための部材である。加圧部材45は、加圧ロール42からの押圧力に対向することが可能な剛性を有するものであればその構成は限定されるものではない。この実施の形態1に係る加圧部材45は、断面L字形状の2つの板金からなる第1及び第2の加圧部材451,452を、断面矩形状に組み合わせて固定することにより構成されている。
【0081】
加圧部材45の加圧ロール42と対向する位置には、定着ニップ部Nを形成するシリコーンゴムやアクリロニトリルゴムやLCP、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの耐熱性樹脂等からなる断面矩形状の加圧パッド453が接着等の手段により設けられている。加圧パッド453は、第1の加圧部材451の定着ニップ部N側に延長された端縁と、第2の加圧部材452に取り付けられた固定部材454の定着ニップ部N側の端縁454aとの間に挟持された状態で保持されている。固定部材454は、第2の加圧部材452にネジ455止めにより固定されている。また、第1の加圧部材451の上端面には、保持部材48を取り付けるとともに、加熱部46の部材を支持する支持部材456がネジ457止めによって取り付けられている。
【0082】
加熱部46は、加熱ベルト41を挟んで加圧ロール42と対向する反対側の位置に配置されている。加熱部46は、図示しない高周波電源から交流電流が通電される励磁コイル461と、励磁コイル461が巻き回されたボビン462と、励磁コイル461の外周に円弧状に配置された外部磁性コア463と、励磁コイル461の内周且つ加熱ロール41の内周に配置された内部磁性コア464を備えている。
【0083】
ボビン462は、合成樹脂等の絶縁性材料によって形成されている。ボビン462は、加熱ベルト41の外周面と対向するよう配置されている。ボビン462は、加熱ベルト41の軸方向に沿ってその外周面を覆うよう円筒形状の一部を所要の中心角で切り欠いた断面円弧状に形成されている。また、ボビン462の周方向に沿った中央部には、装置ハウジング43の内壁面に向けて突出した凸部462aが設けられている。さらに、ボビン462の周方向に沿った両端部には、外部磁性コア463の両端部を固定するため半径方向外方向へ伸びた固定板部462bが設けられている。
【0084】
励磁コイル461は、ボビン462の凸部462aを中心として、加熱ベルト41の略全長にわたり複数回巻き回されている。励磁コイル461は、図示しない高周波電源に接続されている。
【0085】
外部磁性コア463は、フェライト系の磁性材料によって形成されている。外部磁性コア463は、ボビン462を挟んで加熱ベルト41の反対側に配置され、加熱ベルト41の軸方向に沿ってボビン462に倣った円弧状に形成されている。
【0086】
内部磁性コア464は、加熱ベルト41を挟んで外部磁性コア463と対向するよう配置されている。内部磁性コア464は、加熱ベルト41の内周面に倣った円弧状に形成されている。図示の実施形態では、内部磁性コア464が加熱ベルト41の内周面に接触するよう配置されている。内部磁性コア464は、第1及び第2の加圧部材451,452に取り付けられている。内部磁性コア464は、例えば、厚さ0.3mm程度の鉄-ニッケル合金等からなる感温層と、感温層の内周面に積層された厚さ0.1mm程度の炭素繊維等からなる拡散層と、拡散層の内周面に積層された厚さ0.3mm程度のアルミニウム等からなる蓄熱層とを含むよう形成されている。
【0087】
加熱部46は、加熱ベルト41が回転している状態において、励磁コイル461に図示しない高周波電源から交流電流を供給することにより、励磁コイル461によって外部磁性コア463と内部磁性コア464の間に加熱ベルト41を貫通するよう交番磁界Hが形成される。そして、加熱ベルト41は、交番磁界Hが当該加熱ベルト41の導電層412を横切ることで、交番磁界Hの変化を妨げるような磁界を生じさせる渦電流が導電層412に発生する。その結果、加熱ベルト41は、導電層412に発生する渦電流によるジュール熱によって発熱し加熱される。
【0088】
加熱ベルト41は、
図2に示されるように、励磁コイル461への通電を図示しない温度制御回路によって変化させることで、その表面が所要の定着温度となるよう加熱状態が制御される。
【0089】
保持部材48には、加熱ベルト41の内周面に塗布された状態で供給するための潤滑剤が予め定められた量だけ含浸されている。潤滑剤は、加熱ベルト41と加圧パッド453との摺動抵抗を低減する。潤滑剤としては、例えば、粘度が100~350csのアミノ変性シリコーンオイル等が用いられる。潤滑剤は、予め保持部材48に含浸させることで、加熱ベルト41の内周面に塗布供給されるが、これに限定されるものではなく、初期的に加熱ベルト41の内周面に塗布した状態で供給されるように構成しても良い。
【0090】
ガイド部材47は、
図5に示されるように、加熱ベルト41の軸方向に沿った一端部に配置された装置ハウジング43のフレーム431に取り付けられている。ガイド部材47は、
図6に示されるように、加熱ベルト41を回転可能に案内する円筒形状に形成された案内部471と、案内部471の軸方向に沿った基端部に相対的に肉厚な円板状に形成されたフランジ部472と、フランジ部472の背面側に細長い矩形状に設けられた取付板部473と、取付板部473の背面側に平板状に設けられた把持部474を一体的に備えている。案内部471とフランジ部472との間には、半径方向に沿った環状の端面475が形成されている。ガイド部材47の端面475には、周方向に沿った定着ニップ部Nと略90度を成す位置に平面略U字形状の凸部475aが軸方向に沿った内側へ向けて突出するよう設けられている。凸部475aは、後述するように、端部フェルト部材49を設ける際の基準となる。なお、ガイド部材47の案内部471の外径は、端部フェルト部材49の厚さを含めて加熱ベルト41の内径より小さく設定されている。
【0091】
ガイド部材47の案内部471には、その軸方向に沿った内側の端部に、外径が小さくなるよう傾斜したテーパー部471aが設けられている。また、ガイド部材47のテーパー部471aには、周方向に沿って複数(図示例では、3つ)の切欠部471b~471dが形成されている。ガイド部材47の3つの切欠部471b~471dは、定着ニップ部Nに対応した第1の切欠部471bと、フェルト部材48に対応した第2の切欠部471cと、凸部475aの位置に対応した第3の切欠部471dからなる。
【0092】
ガイド部材47は、
図5乃至
図7に示されるように、取付板部473の長手方向に沿った両端部にそれぞれ開口された挿通孔473aに挿通されたネジ476及びワッシャー477を介して装置ハウジング43のフレーム431に取り付けられている。装置ハウジング43のフレーム431には、ガイド部材47の取付板部473を当該フレーム431の外側面に挿通するための図示しない切欠部が設けられている。
【0093】
ガイド部材47のフランジ部472には、
図6に示されるように、加圧部材45を挿通するための開口部472aが設けられている。加圧部材45の長手方向に沿った両端部は、装置ハウジング43のフレーム431に開口された凹部に挿通されることにより固定される。
【0094】
ガイド部材47の案内部471には、
図9に示されるように、加熱ベルト41の内周面に保持部材48によって供給される潤滑剤を保持する端部保持手段の一例としての端部フェルト部材49が、当該案内部471の外周面に周方向に沿って設けられている。端部フェルト部材49は、ガイド部材47の案内部471の外周面に、凸部475aの位置を基準として加熱ベルト41の回転方向に沿って後述する導電性フェルト50を除いた略全周にわたり両面テープや接着剤による粘着や接着等の手段により設けられている。
【0095】
端部フェルト部材49は、加熱ベルト41の内周面に供給される潤滑剤が当該加熱ベルト41の端部から漏れて記録媒体等を汚損するのを防止するためのものである。端部フェルト部材49は、導電性を有しない繊維からなる通常のフェルトから構成されている。端部フェルト部材49は、例えば、0.5~1.0mm程度の厚さに設定可能である。
【0096】
端部フェルト部材49は、ガイド部材47の案内部471の略全周にわたり設ける必要は必ずしもなく、定着ニップ部Nに対応した領域にのみ設けても良い。
【0097】
加圧ロール42は、
図2に示されるように、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円柱形状又は円筒形状の芯金421と、芯金421の外周に相対的に厚く被覆されたシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性を有する弾性体からなる弾性体層422と、弾性体層422の表面に薄く被覆されたパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層423を有している。加圧ロール42は、上述したように、芯金421を介して図示しないリトラクト機構により加熱ベルト41と接離する方向C,Dに沿って移動可能に構成されている。加圧ロール42の芯金421は、装置ハウジング43のフレーム431等を介して接地されている。
【0098】
加圧ロール42は、軸方向に沿った一端部に取り付けられた図示しない駆動歯車を介して図示しない駆動装置により矢印G方向に沿って所要の速度で回転駆動される。なお、加熱ベルト41は、上述したように、軸方向に沿った一端部に取り付けられた駆動歯車を介して図示しない駆動装置により矢印F方向に沿って所要の速度で回転駆動される。なお、加熱ベルト41及び加圧ロール42は、共に回転駆動される必要はなく、一方(例えば、加圧ロール42)を他方(例えば、加熱ベルト41)に対して従動回転するよう構成しても良い。
【0099】
ところで、上記の如く構成される定着装置40では、記録媒体として通常の記録用紙5ではなく、用紙を平坦な筒状に折り曲げて接着した文書などを封入する主として紙製の袋である封筒などに画像を定着する際、静電オフセットによる定着不良が発生する虞れがあるという技術的課題を有していた。
【0100】
すなわち、上記の如く構成される定着装置40を適用した画像形成装置1では、
図1に示されるように、定着処理を受ける記録媒体の一例としての封筒5aが二次転写位置を通過する際、中間転写ベルト21上のトナー像を封筒5aに確実に二次転写するため、二次転写装置26によって過剰に負極性の帯電を受けて負極性に帯電する傾向がある。その結果、定着装置40では、
図8に示されるように、封筒5aに未定着トナー像Tを定着する際、加熱ベルト41が封筒5aとの間に生じる摩擦帯電や封筒5aが剥離するときの剥離放電による分極等により正極性に帯電する傾向がある。
【0101】
そのため、定着装置40は、加熱ベルト41が正極性に帯電し、加圧ロール42に逆極性である負極性の電荷が誘起される。すると、定着装置40には、封筒5aに未定着トナー像Tを定着する際、正極性に帯電する加熱ベルト41と負極性に帯電する加圧ロール42との間に電位勾配(電界)が発生する。すると、定着ニップ部Nに封筒5aが進入するときには、その表面に保持され負極性に過剰に帯電された未定着トナー像Tのトナーが、加熱ベルト41と加圧ロール42との間の電位勾配(電界)により、プレニップ部において封筒5aから加熱ベルト41の表面へと飛翔し、加熱ベルト41の表面にトナーtが付着する。
【0102】
加熱ベルト41の表面に付着したトナーtは、定着ニップ部Nを通過する間にその一部が封筒5aの表面に定着される。また、封筒5aに定着されず加熱ベルト41の表面に転移したオフセットトナーt’は、加熱ベルト41が1回転した後に封筒5aの表面に定着され、所謂“静電オフセット”と呼ばれるディフェクトが現れるという技術的課題を有していた。
【0103】
そこで、この実施の形態1に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置は、加熱ベルトの導電層を簡単な構成で確実に接地させることによって、“静電オフセット”と呼ばれるディフェクトの発生を抑制するため、無端状ベルトの移動方向と交差する方向に沿った端面に露出する導電層と接して導通させる導通手段と、無端状ベルトの導電層の端面に導通手段を圧接させる圧接手段と、導通手段を接地する接地手段とを備えるよう構成されている。
【0104】
すなわち、この実施の形態1に係る定着装置40は、
図9に示されるように、ガイド部材47の案内部471の外周面に導通手段及び圧接手段の双方を兼ねる一例としての導電性フェルト50を備えている。この実施の形態1では、導電性フェルト50が導通手段及び圧接手段の双方を兼ねており、導通手段及び圧接手段が同一の手段から構成されている。
【0105】
導電性フェルト50は、導電性が付与された繊維をニードルパンチ法などにより三次元的に配向させて構成されたフェルトである。導電性フェルト50は、導電性及び弾性を兼ね備えている。導電性が付与された繊維としては、導電性ニッケルコーティングを施した不織ポリエステル繊維や、アクリロニトリルの重合体であるPAN系炭素繊維(レイヨン繊維、アクリル繊維、可塑性樹脂繊維、その他各種繊維)などを挙げることができる。導電性フェルト50としては、焼成してカーボン状にした繊維を用いてフェルト状に形成したカーボンフェルトなどが、導電性及び耐熱性に優れているため好適に用いられる。なお、導電性フェルト50は、そのすべてが導電性繊維から構成されたものである必要はなく、その一部に導電性繊維を含むものであっても良い。
【0106】
導電性フェルト50は、導電性繊維を三次元的に配向させて構成されたフェルトであり、導電性繊維が三次元的に配向されてフェルトを構成することによって弾性を有している。導電性フェルト50としては、例えば、その反発弾性率が20%以上のものが用いられるが、反発弾性率はこれより低いものであっても良い。
【0107】
導電性フェルト50は、例えば、縦10mm×横10mm×厚さ2mmの平面略正方形状に形成されたものが用いられる。導電性フェルト50は、ガイド部材47の案内部471の外周面において、凸部475aの加熱ベルト41の回転方向に沿った上流側に隣接するよう両面テープや接着剤を用いた粘着や接着等の手段により設けられている。
【0108】
導電性フェルト50を設ける位置は、特に限定されるものではない。この実施の形態1では、導電性フェルト50を、ガイド部材47の案内部471の周方向に沿った定着ニップ部Nの上流側に対応した位置に配置している。導電性フェルト50をガイド部材47の案内部471の周方向に沿った定着ニップ部Nの上流側に対応した位置に配置した場合には、加熱ベルト41の導電層412を定着ニップ部Nの上流側に対応したプレニップ部において確実に接地させることが可能となる。
【0109】
導電性フェルト50は、上述したように、縦横10mmの平面略正方形状に形成されて加熱ベルト41の回転方向に沿った接触領域を確保するのに十分な面積を有し、しかも2mmの厚さを有して相対的に厚く形成されている。
【0110】
この実施の形態1では、
図10に示されるように、加熱ベルト41の軸方向に沿った一端部に露出した導電層412が導電性フェルト50の厚さ方向に沿った端面に圧接した状態で回転する。別言すれば、加熱ベルト41の軸方向に沿った一端部に露出した導電層412は、導電性フェルト50の厚さ方向に沿った下端面と上端面との間において当該導電性フェルト50の端面に圧接するよう構成されている。導電性フェルト50の端面は、加熱ベルト41の軸方向に沿った一端部が圧接することにより弾性変形し、加熱ベルト41の軸方向に沿った外側へ向けて弾性変形した状態(食い込んだ状態)で当該加熱ベルト41の軸方向に沿った一端部と圧接される。その結果、加熱ベルト41の軸方向に沿った端部に露出した導電層412は、常に、導電性フェルト51の厚さ方向に沿った中間に位置する面に当該導電性フェルト51の弾性に応じた所要の圧接力をもって圧接した状態となっている。
【0111】
このとき、導電性フェルト50の導電性繊維は、加熱ベルト41の導電層(数10μm)より外径が小さい(細い)。導電性フェルト50は、導電性を有する繊維が三次元的に絡み合って構成されている。よって、導電性フェルト50は、その複数本の繊維が加熱ベルト41の導電層412と確実に接触した状態となっており、電気的な導通が確保されている。
【0112】
導電性フェルト50の表面には、
図5及び
図7に示されるように、当該導電性フェルト50を接地する接地手段の一例としての板バネ51が所要の押圧力で圧接されている。板バネ51は、バネ性を有する薄い金属製の板材により形成されている。板バネ51は、平面略直角三角形状に形成された本体部511と、本体部511の互いに直角を成す二辺のうち、相対的に短い短辺の先端側から略90度をなすよう加熱ベルト41へ向けて折り曲げられた接触部512と、本体部511の互いに直角を成す二辺のうち、相対的に長い長辺の長手方向に沿った両端部から装置ハウジング43のフレーム431に沿うようそれぞれ略90度をなして折り曲げられた取付部513,514を備えている。
【0113】
板バネ51の接触部512は、本体部511の短辺の基端側との間に略U字形状の切欠部512aを介して、相対的に幅が広い基端部512bと、相対的に幅が狭い帯状の先端部512cとから構成されている。また、板バネ512の先端部512cは、その先端512c’,512c”が2つに分岐されて且つ導電性フェルト50の表面へ向けて折り曲げられている。板バネ51の接触部512は、その先端部512cの先端512c’,512c”が導電性フェルト50の表面に食い込むように接触している。
【0114】
板バネ51の取付部513,514は、
図7に示されるように、装置ハウジング43のフレーム431にネジ476止めにより固定されている。板バネ51は、ステンレス、鉄、銅等の金属からなるネジ476によって装置ハウジング43のフレーム431に電気的に接続されている。装置ハウジング43のフレーム431は、画像形成装置1の接地された装置本体1aに取り付けられており、アースに接続(接地)されている。その結果、導電性フェルト50は、板バネ511及び装置ハウジング43のフレーム431を介してアースに接続(接地)されている。
【0115】
<定着装置の作用>
この実施の形態に係る定着装置では、次のようにして、導電層が露出する無端状ベルトの端面から接地することが可能となっている。
【0116】
すなわち、この実施の形態1に係る定着装置40では、記録媒体の一例として普通紙以外に用紙を平坦な筒状に折り曲げて接着した文書などを封入する主として紙製の袋である封筒などが用いられる場合がある。
【0117】
上記の如く構成される定着装置40を適用した画像形成装置1では、
図1に示されるように、定着処理を受ける記録媒体の一例としての封筒5aが二次転写位置を通過する際、中間転写ベルト21上のトナー像を封筒5aに確実に二次転写するため、二次転写装置26によって過剰に負極性の帯電を受けて負極性に帯電する傾向がある。そのため、定着装置40では、封筒5aに未定着トナー像Tを定着する際、加熱ベルト14が封筒5aとの間に生じる摩擦帯電や封筒5aが剥離するときの剥離放電による分極等により正極性に帯電する傾向がある。
【0118】
そのため、定着装置40は、加熱ベルト41が正極性に帯電し、加圧ロール42に逆極性である負極性の電荷が誘起されることになる。
【0119】
ところで、この実施の形態1に係る定着装置40は、
図5及び
図10に示されるように、加熱ベルト41の軸方向に沿った一端部を回転可能に案内するガイド部材47に、加熱ベルト41の軸方向に沿った一端部に露出した導電層412と圧接する導電性フェルト50が設けられており、導電性フェルト50が接地されている。
【0120】
その結果、定着装置40では、
図11に示されるように、封筒5aに未定着トナー像Tを定着する際に、正極性に帯電する傾向がある加熱ベルト14が、その軸方向に沿った一端部に露出した導電層412と圧接する導電性フェルト50によって正極性の電荷が当該導電性フェルト50及び板バネ511を介して接地されることにより、正極性に帯電することが防止乃至抑制される。
【0121】
したがって、定着装置40では、封筒5aに未定着トナー像Tを定着する際、加熱ベルト41が正極性に帯電することが防止乃至抑制され、加熱ベルト41と加圧ロール42との間に電位勾配(電界)が発生することが回避される。そのため、定着ニップ部Nに封筒5aが進入するときには、その表面に保持され負極性に過剰に帯電された未定着トナー像Tのトナーが、プレニップ部において封筒5aから加熱ベルト41の表面へと飛翔して、加熱ベルト41の表面にトナーtが付着することが回避乃至低減される。
【0122】
よって、この実施の形態に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置40では、封筒5aに未定着トナー像Tを定着する際に、封筒5aに定着されず加熱ベルト41の表面に転移するオフセットトナーt’の発生が防止乃至抑制され、所謂“静電オフセット”と呼ばれるディフェクトが現れることが回避される。そのため、この実施の形態1に係る定着装置40を適用した画像形成装置1では、記録媒体の一例としての封筒5aなどに形成される画像の画質が向上する。
【0123】
このように、実施の形態1に係る定着装置40では、導電層412が露出する加熱ベルト41の端面から接地することが可能となっている。
【0124】
なお、導電性フェルト50は、例えば、
図12に示されるように、加熱ベルト41の軸方向に沿った一端部に露出した導電層412と少なくとも接触するよう配置されていれば良い。なお、
図12等では、便宜上、離型層414の図示を省略している(以下、同様)。
【0125】
[実施の形態2]
図13はこの発明の実施の形態2に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置の要部を示す構成図である。
【0126】
すなわち、この実施の形態2に係る定着装置40は、
図13に示されるように、ガイド部材47の案内部471の外周面に設けられる導電性フェルト50が、板バネ411によって加熱ベルト41の軸方向に沿った端面に露出した導電層に向けて圧接するよう付勢されている。
【0127】
更に説明すると、板バネ51の接触部512は、その先端部512cの先端512c’,512c”が導電性フェルト50の表面に食い込むように接触(圧接)しているのみではなく、当該接触部512自体が加熱ベルト41の軸方向に沿った端面に露出した導電層に向けて圧接するよう予め弾性変形されている。板バネ51の接触部512は、予め弾性変形された反力として加熱ベルト41の軸方向に沿った端面に露出した導電層に圧接されている。
【0128】
この実施の形態2に係る定着装置40では、
図13に示されるように、導電性フェルト50が、板バネ51によって加熱ベルト41の軸方向に沿った端面に露出した導電層に向けて圧接するよう付勢されているため、加熱ベルト41がウオーク現象によって軸方向に沿って移動した場合であっても、導電性フェルト50と加熱ベルト41の導電層412との接触(導通)を確保することができる。
【0129】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0130】
[実施の形態3]
図14及び
図17はこの発明の実施の形態3に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置の要部を示す構成図である。
【0131】
すなわち、この実施の形態3に係る定着装置40は、
図14及び
図15に示されるように、ガイド部材47の案内部471の全周にわたり端部フェルト部材49を設け、端部フェルト部材49の外側に導電性フェルト50を設けるよう構成されている。
【0132】
導電性フェルト50は、前記実施の形態1と同様に、加熱ロール41の回転方向に沿った定着ニップ部Nの上流側に対応した位置にのみ設けられている。
【0133】
この実施の形態2に係る定着装置40では、
図15に示されるように、ガイド部材47の案内部471の略全周にわたり端部フェルト部材49を設けているため、加熱ベルト41の内周面に供給された潤滑剤が導電性フェルト50に含侵し、当該導電性フェルト50と加熱ベルト41の導電層412との電気的接続である導通が阻害されるのを抑制することができる。
【0134】
導電性フェルト50は、
図16に示されるように、端部フェルト部材49の一部にのみ積層するよう配置しても良い。
【0135】
また、端部フェルト部材49は、
図17に示されるように、導電性フェルト50の加熱ベルト41の軸方向に沿った内側の端部にのみ設けるように構成しても良い。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0136】
[実施の形態4]
図18はこの発明の実施の形態4に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置の要部を示す構成図である。
【0137】
すなわち、この実施の形態4に係る定着装置40は、
図18に示されるように、導通手段及び圧接手段が同一の手段の一例としての導電性ブラシ60により構成されている。
【0138】
導電性ブラシ60は、シート状の導電性基材61の表面に導電性繊維62を所要の密度で植毛して構成されたものである。導電性ブラシ60は、ガイド部材47の案内部47の外周面に両面テープ等により接着固定される。
【0139】
導電性ブラシ60は、シート状の導電性基材61の表面に導電性繊維62を植毛して構成されているため、当該導電性ブラシ60の導電性繊維62を加熱ロール41の軸方向に沿った一端部に露出した導電層412に確実に接触させて導通を確保することができる。また、導電性ブラシ60は、導通性フェルト50と異なり潤滑剤を含侵し難いため、この点からも加熱ロール41の導電層412と確実に接触させて導通を確保することができる。また、導電性ブラシ60を採用した場合には、板バネ51が不要となり、構成を簡略化することも可能となる。
【0140】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0141】
[実施の形態5]
図19はこの発明の実施の形態5に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置の要部を示す構成図である。
【0142】
前記実施の形態に係る定着装置40では、導電性フェルト50をガイド部材47の案内部471の外周面に設けるように構成したが、この発明の実施の形態5に係る定着装置40では、
図19に示されるように、ガイド部材47の案内部471の外周面に凹部471eを設けて、当該凹部471eに導電性フェルト50を配置するよう構成している。
【0143】
すなわち、この実施の形態5に係る定着装置40は、
図19に示されるように、ガイド部材47の案内部471の外周面に設けられた凹部471eに導電性フェルト50を埋設するように構成しているため、加熱ベルト41が軸方向に沿った一端部に移動する所謂ウオーク現象が発生した場合であっても、加熱ベルト41が軸方向に沿った一端部がガイド部材47の案内部471の凹部471eに埋設された導電性フェルト50の厚さ方向に沿った中間部に必ず当接する。そのため、加熱ベルト41に所謂ウオーク現象が発生した場合においても、加熱ベルト41の端部がガイド部材47の案内部471に設けられた導電性フェルト50を剥離させるような力が働くことが回避され、長期間にわたり導電性フェルト50による導通を確保することが可能となる。
【0144】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0145】
[実施の形態6]
図20はこの発明の実施の形態6に係る無端状ベルトの接地構造を適用した定着装置の要部を示す構成図である。
【0146】
この実施の形態6に係る定着装置40では、
図20に示されるように、導通手段と付勢手段は、異なる手段から構成されている。例えば、端部フェルト部材49の表面に導通手段の一例としての導電性シート70を積層し、加熱ベルト41の長手方向に沿って端面に露出した導電層412を導電性シート70に接触させることにより、加熱ベルト41の導電層412と導通させるように構成しても良い。この場合には、板バネ51を導電性シート70の表面に接触させることにより接地が確保されている。
【0147】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0148】
なお、前記実施の形態では、画像形成装置の一例としてのフルカラーの画像を形成する画像形成装置について説明したが、これに限定されるものではなく、画像形成装置としてはモノクロの画像を形成するものであっても良いことは勿論である。
【0149】
また、前記実施の形態では、無端状ベルトの一例としての加熱ベルトに適用した場合について説明したが、無端状ベルトは加熱ベルトに限定されるものではなく、加圧ベルトあるいは加熱ベルトと加圧ベルトの双方に適用しても良い。
【0150】
さらに、前記実施の形態では、無端状ベルトの一例として定着装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、導電層を有するベルトであれば、記録媒体を搬送する搬送ベルトなどにも適用することができることは勿論である。
【0151】
また、前記実施の形態では、接地手段として板バネを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、接地手段としては導通手段を接地可能な手段であればリード線で接続するなど、任意の手段を用いて良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0152】
1…画像形成装置
1a…装置本体
40…定着装置
41…加熱ベルト
412…導電層
42…加圧ロール
47…ガイド部材
50…導電性フェルト
51…板バネ